説明

画像読取装置及び画像処理装置

【課題】読み取りムラの発生を防止する。
【解決手段】 原稿Pを読み取るCIS14aと、そのCIS14aと対向する位置で原稿Pを非読み取り面側から支持する白色ローラ14bとを備え、CIS14aと白色ローラ14bとの間に原稿Pを搬送して、その原稿Pを読み取る画像読取装置において、白色ローラ14bを、CIS14aとの間隔Dより厚い原稿を搬送する場合に、所定の力に抗してCIS14aと反対側に移動することにより、その原稿を、CIS14aに向けて圧力を加えつつ支持するものとし、原稿PがCIS14aに達する前の光沢度の情報を取得して、その光沢度に基づいて、白色ローラ14bを移動させてCIS14aと白色ローラ14bとの間隔Dを調整すると共に、白色ローラ14bを保持する力の大きさを調整する調整処理とを行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原稿の画像を読み取る画像読取装置及びこのような画像読取装置を備えた画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像処理装置において、ADF(自動原稿給装装置)を用いて、所定の載置位置に載置された原稿を1枚ずつ分離しながら順次搬送し、原稿画像を読み取ることが広く行われている。
このようなADFで原稿画像の両面を読み取る場合、原稿のおもて面に形成された画像については、コンタクトガラス上の原稿の読み取りに用いるものと共通のスキャナ部で読み取るようにし、原稿の裏面に形成された画像については、画像読取装置のADF内部にある、光源、レンズ及びイメージセンサが一体となったカラー用のコンタクトイメージセンサ(以下「CIS」という)で読み取ることが知られている。
【0003】
このような両面読み取り可能な画像処理装置において、例えば特許文献1には、CISに相当する第2固定読取部にて原稿を安定して走行させるために、第2固定読取部と、その第2固定読取部の対向位置にある第2読取ローラとの距離を調整することが開示されている。
また、特許文献2には、読取手段としてCISに相当する密着イメージセンサ部を用いる画像読取装置において、原稿読み取り時の白基準となり且つ原稿を押さえる白基準板を備え、その白基準板の原稿に対する押さえ力を調整することが開示されている。
【0004】
CISと関連する上記特許文献1及び2とは別に、特許文献3には、効率的に光沢を表わす量を取得するために、照射位置を変更しながら原稿に光源からの光を照射し、原稿からの反射光の正反射成分をイメージセンサで受光して光電変換することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したCISは、ADF内部に固定された等倍の読取部であり、縮小光学系のスキャナ部と比べて被写界深度が浅いので、ピンボケなどを防ぐために、原稿を読み取る際にはその原稿をCISのガラス面に接触させながら読み取るのが望ましい。
しかし、CISで読み取る原稿として、光沢紙を読み取るような場合は、読み取りムラが発生するという問題が知られている。
【0006】
この問題について、図14を参照しながら説明する。図14は、CISを用いて普通紙を読み取る場合と光沢紙を読み取る場合のそれぞれの光の軌跡を示した模式図であり、(a)は普通紙Paを読み取る場合を、(b)は光沢紙Pbを読み取る場合をそれぞれ示している。
【0007】
ここで、図14(a)及び(b)に共通するCIS500は、画像読取に必要な部材をユニット化したものであって、センサ基板501、イメージセンサ502、レンズアレイ503、光源504a,504b(以下、単に「光源504」という)及びガラス505を備えている。
なお、このCIS500は、上述した問題を説明するために、簡易的な構成に留めて示したものであり、実際のCISは、図示以外の構成も含むものである。また、図中実線で示す矢印は、光源504からの入射光を、破線で示す矢印は、普通紙Pa又は光沢紙Pbからの反射光をそれぞれ示している。
【0008】
このようなCIS500において、ADFにより普通紙Paが搬送されてくる場合、図14(a)に示すように、光源504から照射された光は、ガラス505を介して普通紙Paに照射され、普通紙Pa上で拡散反射して、反射光の一部がレンズアレイ503を介して集光された後、イメージセンサ502に受光される。
一方、ADFにより光沢紙Pbが搬送されてくる場合、図14(b)に示すように、光源504から照射された光は、ガラス505を介して光沢紙Pbに照射され、光沢紙Pb上で正反射してしまい、反射光がレンズアレイ503に入射しない現象が発生する。
【0009】
これは、光沢紙Pbの場合、ガラス面と密着している箇所が鏡面状態となるからである。実際には、鏡ほど完全に正反射する訳ではなく、拡散光もあるものの、ほとんどレンズアレイ503に反射光が入射しないので、ガラス面と光沢紙Pbが密着している箇所については、ところどころ水たまり状に黒っぽくなる箇所が出現する。
この現象は、例えば鏡を複写機のコンタクトガラス上に置いてコピーをとると、鏡を置いた部分が真っ黒になるのと同じ原理である。
【0010】
一方で、光沢紙Pbとガラス面の接触する角度によっては、正反射光がそのままレンズアレイ503に入射するので、イメージセンサ502に蓄えられる電荷が周囲よりも高くなり白っぽい箇所が出現するが、通常地肌は白いため、その差が分かりにくい。
ただし、地肌が黒い場合は、正反射光が入射する箇所が白くなり、ところどころに白ポチがでる。
【0011】
このように、光沢紙PbをCISにて読み取るような場合、読み取りムラが発生するという問題があった。例えば写真の印画紙のように光沢度が高く、かつ厚紙のような場合は、印画紙がガラス面に対して押さえ付けられることが多くなり、読み取りムラが発生し易くなる。
この点、特許文献1乃至3には、この読み取りムラの問題を解決するための手段については記載されていない。
【0012】
この発明は、このような問題を解決し、原稿の画像を読み取る画像読取装置において、光沢紙を読み取る場合に発生するおそれのある読み取りムラを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、この発明の画像読取装置は、原稿の画像を読み取る読取手段と、その読取手段と対向する位置で上記原稿を非読み取り面側から支持する支持手段と、上記原稿を搬送する搬送手段とを備え、その搬送手段により上記読取手段と上記支持手段との間に上記原稿を搬送して、その原稿の画像を読み取る画像読取装置であって、上記支持手段は、上記読取手段との間隔より厚い原稿を搬送する場合に、所定の力に抗して上記読取手段と反対側に移動することにより、その原稿を、上記読取手段に向けて圧力を加えつつ支持する手段であり、上記原稿が上記読取手段に達する前に上記原稿の光沢度の情報を取得する光沢度情報取得手段を備え、その光沢度情報取得手段により取得した光沢度に基づいて、上記支持手段を移動させて上記読取手段と上記支持手段との間隔を調整すると共に上記所定の力の大きさを調整する調整処理を行うものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のようなこの発明の画像読取装置によれば、原稿の画像を読み取る画像読取装置において、光沢紙を読み取る場合に発生するおそれのある読み取りムラを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の第1実施形態である画像処理装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した画像処理装置が備える画像読取装置の概略構成を示す図である。
【図3】図2に示した紙厚測定部の拡大図である。
【図4】図2に示した光沢度測定部の拡大図である。
【図5】図2に示した裏面読取部の拡大図である。
【図6】図2に示した裏面読取部における原稿搬送機構について説明するための図である。
【図7】図2に示した画像読取装置の制御系のハードウェア構成のブロック図である。
【図8】図7に示したコンパレータのより詳細な回路図である。
【図9】第1の実施形態において両面読み取りを行う場合に制御部が実行する調整処理を示したフローチャートである。
【0016】
【図10】第2実施形態における裏面読取部の構成を示す図である。
【図11】第2の実施形態において両面読み取りを行う場合に制御部が実行する、図9と対応する調整処理を示したフローチャートである。
【図12】第3実施形態における裏面読取部の構成を示す図である。
【図13】第3の実施形態において両面読み取りを行う場合に制御部が実行する、図9と対応する調整処理を示したフローチャートである。
【図14】CISを用いて普通紙を読み取る場合と光沢紙を読み取る場合のそれぞれの光の軌跡を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
まず、この発明の第1実施形態である画像処理装置の概略構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、その画像処理装置の概略構成を示す断面図である。
【0018】
図1において、この画像処理装置100は、コピー、スキャン、ファクシミリ通信、文書蓄積等の機能を備えたデジタル複合機(MFP)であり、画像読み取り部である画像読取装置10及び本体部50を備えている。なお、図中破線で示すRは、原稿からの反射光の光路を示しており、Lは書き込み用のレーザ光の光路を示している。
このうち、画像読取装置10は、原稿を自動搬送して、その原稿の両面に形成された画像の読み取りを行うことができる画像読取装置である。この画像読取装置10の詳細な構成については後述する。
【0019】
本体部50は、給紙ユニット51、搬送ユニット52、レジストローラ53、画像形成ユニット54、書き込みユニット55、搬送ベルト56、定着ユニット57、排紙ユニット58及び排紙トレイ59を備えている。
このうち、給紙ユニット51は、3段ある各トレイにそれぞれ設けられた3つの給紙部からなり、各トレイに積載された原稿のうち最上面にある原稿を、いずれかの給紙部により一枚繰り出して搬送ユニット52に給紙する給紙手段である。
【0020】
搬送ユニット52は、複数の搬送ローラ及び図示しないガイド板などからなり、給紙ユニット51から給紙された原稿をレジストローラ53まで搬送するための搬送手段である。
レジストローラ53は、搬送ユニット52により搬送された原稿をいったん突き当てて止めることによりスキュー補正を行うとともに、スキュー補正後の原稿を、画像形成ユニット54の感光体ドラムと搬送ベルト56との間のニップ部に対して、感光体ドラムに現像されたトナー像がくるタイミングに合わせて送り込むためのローラである。
【0021】
画像形成ユニット54は、感光体ドラム、この感光体ドラム表面を所定の電位に帯電するためのチャージャ、書き込みユニット55により形成された静電潜像に対してトナー像を現像させるための現像部などを一体として備えた画像形成手段である。
書き込みユニット55は、画像読取装置10で読み取った画像情報に応じたレーザ光Lを、帯電した感光体ドラム表面に照射して露光し、これによって感光体ドラム表面に静電潜像を形成するためのものである。
【0022】
搬送ベルト56は、感光体ドラムと等速で回転し、トナー像転写後の原稿を定着ユニット57に搬送するためのものである。
定着ユニット57は、定着ローラと加圧ローラからなり、搬送ベルト56により搬送された原稿を加熱加圧することにより原稿上の未定着トナーを定着させるため定着手段である。
排紙ユニット58は、定着後の原稿を排紙トレイ59にまで導くための排紙手段であり、排紙トレイ59は、排紙された原稿を積載保持するためのものである。
【0023】
以上のような画像処理装置100において、原稿に画像形成を行う場合、まずいずれかのトレイに積載された原稿のうち最上面にある原稿1枚を、給紙ユニット51で給紙し、搬送ユニット52によってレジストローラ53に接する位置まで搬送される。
一方、画像読取装置10で読み取られた画像情報は、書き込みユニット55からのレーザ光Lによって感光体ドラムに書き込まれ、現像部を通過することによってトナー像が形成される。
【0024】
そして、原稿は、現像されたトナー像が転写位置にくるタイミングに合わせてレジストローラにより搬送され、感光体ドラムの回転と等速で回転する搬送ベルト56によって搬送されながら、感光体ドラム上のトナー像が原稿に転写されていく。
その後、定着ユニット57にて未定着トナーを定着させ、排紙ユニット58にて排紙トレイ59に排紙される。
【0025】
次に、この発明の第1実施形態である画像読取装置10の詳細構成について図2を参照しながら説明する。図2は、その画像読取装置10の概略構成を示す図である。
図2において、この画像読取装置10は、自動原稿搬送装置(ADF)11、紙厚測定部12、光沢度測定部13、裏面読取部14、おもて面読取窓15、コンタクトガラス16、基準白板17、第1キャリッジ18、第2キャリッジ19、レンズユニット20、及びCCD21を備えている。
【0026】
なお、図中破線で示すRは、原稿からの反射光の光路を示している。
また、図中2点鎖線で示すPは原稿であり、ここでいう原稿とは、課題の項で説明した普通紙Pa及び光沢紙Pbを含む任意の材質や厚さのものでよく、材質や厚さを特定して説明する必要がない場合は、原稿Pとして説明するものとする。
【0027】
このうち、ADF11は、原稿台に載置された原稿Pを1枚ずつ順次自動的に給紙して搬送するための搬送手段である。
紙厚測定部12は、2個の対向するローラを用いて原稿Pの厚さを測定する紙厚測定手段である。この紙厚測定部12の詳細な構成については後述する。
光沢度測定部13は、原稿Pの光沢度を測定する光沢度測定手段である。この光沢度測定部13の詳細な構成についても後述する。
【0028】
裏面読取部14は、原稿Pの裏面に形成された画像を光学的に読み取るためのものである。この裏面読取部14の詳細な構成についても後述する。
おもて面読取窓15は、ADF11により自動搬送される原稿Pのおもて面に形成された画像を読み取るための読み取り位置に設けられた窓であって、光が透過する部材(例えばガラス)を通して、光源18aからの出射光を原稿Pに照射し、原稿Pからの反射光を第1反射ミラー18bに入射させることができるようにしている。
コンタクトガラス16は、ADF11を用いずに原稿読み取りを行う場合に、その原稿Pを載置するためのものである。
基準白板17は、読み取った画像について、シェーディング補正を行うためのシェーディングデータを生成するために原稿Pの読み取りに先立って読み取られる基準部材である。
【0029】
第1キャリッジ18は、原稿露光用の光源18a及び第1反射ミラー18bを含んでおり、図示しないステッピングモータにより駆動され、コンタクトガラス16上に載置された原稿Pを矢示A方向(副走査方向)に移動しながら光学走査することができる。また、おもて面読取窓15の読み取り位置に停止して、ADF11により自動搬送される原稿Pの画像読み取りに用いることもできる。
なお、光源としては、LEDや蛍光ランプあるいはキセノンランプなど公知の照明手段を用いることができる。
【0030】
第2キャリッジ19は、第2反射ミラー19aと第3反射ミラー19bとを含んでおり、第1キャリッジ18と同様に図示しないステッピングモータにより駆動され、第1キャリッジ18に追随して矢示A方向に移動するものである。
レンズユニット20は、第1反射ミラー18bから第3反射ミラー19bに順次反射偏向された反射光をCCD21に集光して結像させるためのものである。
CCD21は、集光した反射光をアナログ電気信号に光電変換する1次元ライン状のラインイメージセンサである。
【0031】
このような画像読取装置10において、コンタクトガラス16に載置された原稿Pの画像を読み取る場合、光源18aを点灯し、第1キャリッジ18及び第2キャリッジ19を図示しないステッピングモータにより右方向に移動走査して原稿Pを読み取る。
一方、ADF11により搬送される原稿Pの両面を読み取る場合、光源18aを点灯し、第1キャリッジ18をおもて面読取窓15の読み取り位置にて停止した状態で待機しておく。
【0032】
そして、ADF11の複数のローラによって原稿Pを矢印Bの方向へガイドすることで、おもて面読取窓15の読み取り位置において原稿Pのおもて面を走査し、おもて面に形成された画像を読み取る。
そして、原稿Pの裏面に形成された画像は、裏面読取部14で読み取るようにしている。
このようにして、原稿の両面に形成された画像を読み取るようにしている。
【0033】
次に、紙厚測定部12の詳細な構成について、図3を参照しながら説明する。図3は、図2に示した紙厚測定部12の拡大図である。
図3に示すように、この紙厚測定部12は、プルアウトローラ12a、プルアウト従動ローラ12b、回転軸12c、支持機構12d及び変位センサ12eを備えている。
【0034】
このうち、プルアウトローラ12aとプルアウト従動ローラ12bは、原稿Pの進入時には、その原稿Pの先端をニップ部分に撓みをもって押し当てることにより原稿先端の整合をとってスキュー補正を行うとともに、スキュー補正後の原稿Pを下流にあるローラに搬送するためのものである。
回転軸12cは、プルアウト従動ローラ12bの長手方向の両端からそれぞれ突出する回転軸である。
【0035】
支持機構12dは、回転軸12cの突出した部分に挿入された上段の棒材と、その上段の棒材と対向する位置にあって固定された下段の棒材と、上段と下段の棒材を繋ぐバネとからなる。このうち、上段の棒材は、固定された下段の棒材とバネとにより矢印方向に移動可能な構成になっており、この移動に合わせて回転軸12c及びプルアウト従動ローラ12bも一緒に矢印方向に移動できる構成になっている。
変位センサ12eは、バネの変位量を検知して、原稿Pの紙厚を検知するためのセンサである。
【0036】
このような紙厚測定部12においては、まずプルアウトローラ12aとプルアウト従動ローラ12bのニップ部分により原稿Pのスキュー補正がなされ、その後、その原稿Pが進入すると、プルアウト従動ローラ12b及び回転軸12cが、その原稿Pの厚みに応じた距離だけ矢印方向に移動する。
そして、支持機構12dのバネが縮んで、その変位量を変位センサ12eで検知することにより、原稿Pの紙厚を測定することができる。
【0037】
次に、光沢度測定部13の詳細な構成について、図4を参照しながら説明する。図4は、図2に示した光沢度測定部13の拡大図である。なお、図中に示す実線矢印は光源13bからの照射光を、破線矢印は原稿Pからの反射光をそれぞれ示している。
図4に示すように、この光沢度測定部13は、光沢度計13aからなり、その光沢度計13aは、光源13bと受光センサ13cとを備えている。
【0038】
そして、原稿Pの光沢度を測定する際には光源13bから光を照射して、その照射光に対する正反射光の比率を測定し、原稿Pの光沢度を測定するようにしている。このことにより、例えば、正反射光の比率が低ければ普通紙Paと判断したり、正反射光の比率が高ければ光沢紙Pbと判断したりすることができる。
なお、原稿Pがある程度波打って搬送されてくることを考慮して、受光センサ13cの受光面はある程度大きくするようにするとよい。また、この光沢度計13aは簡易的なものでよく、照射光に対する正反射光の比率が測定できれば、ADF11内に内蔵される他のセンサで代用しても構わない。
【0039】
次に、裏面読取部14の詳細な構成について、図5を参照しながら説明する。図5は、図2に示した裏面読取部14の拡大図である。
図5に示すように、この裏面読取部14は、カラー用のCIS14aと白色ローラ14bとを備える。なお、図5に示した光源14e、白テープ14f及び集光レンズ14gはそれぞれ2つずつあるが、左右対称に配置された同じ部材であるので、同じ符号で示す。また、Dは、CIS14aと白色ローラ14bの間隔である。
【0040】
CIS14aは、画像読み取りに必要な各種部材を一体とした等倍の読み取りセンサであって、ガラス14c、レンズアレイ14d、光源14e、白テープ14f、集光レンズ14g、イメージセンサ14h、センサ基板14i、信号処理基板14j及びアルミダイキャスト14kを備えている。
このうち、ガラス14cは、搬送されてくる原稿Pの裏面に形成された画像を読み取る際の読み取り面となる透過部材である。
【0041】
レンズアレイ14dは、光源14eから照射された光の反射光を集光してイメージセンサ14hに結像させるための円筒状のレンズである。
光源14eは、搬送されてくる原稿Pの裏面に対して光を照射するためのものである。
白テープ14fは、光源14eから照射された光のうち、原稿Pとは反対側に照射された光を反射して、効率的に光を原稿Pにあてるための反射材である。
集光レンズ14gは、光源14eから照射される光を集光して効率的に原稿Pに光をあてるためのレンズである。
イメージセンサ14hは、集光された光を光電変換してアナログ電気信号に変換する1次元ライン状のイメージセンサである。
【0042】
センサ基板14iは、イメージセンサ14hを搭載するための基板である。
信号処理基板14jは、イメージセンサ14hから得られたアナログ電気信号に対して、各種の信号処理を施す信号処理回路が搭載された基板である。
アルミダイキャスト14kは、上述した各種部材を収納するための筺体である。
白色ローラ14bは、原稿Pの読み取り時に、その原稿Pを非読み取り面側(おもて面側)から支持するとともに、原稿Pの読み取り前には、シェーディングデータを生成するためにCIS14aにより読み取られるものである。この白色ローラ14bが、支持手段に相当する。
【0043】
なお、この白色ローラ14bには、CIS14aとの間隔Dを調整するための図示しない間隔調整機構及び白色ローラ14bに弾性を持たせるとともにその弾性力を調整することができる図示しない弾性力調整機構とが取り付けられている。これらの機構については、後述する。
【0044】
このような、裏面読取部14においては、CIS14aの被写界深度が浅いため、原稿Pを読み取る場合はピンボケを防ぐために、原則ガラス14cの読み取り面に接触させながら読み取るのが好ましい。このことを考慮して、間隔Dは、普通紙Paが通れるくらいの間隔に設定することが考えられる。
例えば、普通紙Paが0.08mmの厚さであった場合、間隔Dをそれと同じか、あるいは少し余裕を持った間隔に設定しておきガラス14cと接触しながら読み取れるようにすることが考えられる。
【0045】
ここで、間隔Dよりも厚い例えば0.1mmの厚さを持つ厚紙が搬送されてきた場合、白色ローラ14bは弾性を持つため、通紙中は図中矢印a方向に移動するとともに、逆に厚紙に対しては矢印b方向に圧力を加えてガラス面に接触させながら読み取るようにしている。
しかし、写真の印画紙などの場合は、通常の厚紙よりもさらに厚く、かつ光沢があるため、例えば白色ローラ14bの弾性により間隔Dをなんとか通過できたとしてもガラス14cに強く押しつけられることになって課題の項で説明したような読み取りムラが発生することになる。
【0046】
次に、この読み取りムラの問題を解決するための上述した間隔調整と弾性力調整の機構について、図6を参照しながら説明する。図6は、裏面読取部14における原稿搬送機構について説明するための図である。
なお、図6におけるCIS14aは、説明の便宜上、筺体であるアルミダイキャスト14kの部分についてのみ示す。
まず、この裏面読取部14においては、原稿Pの進入口に上ガイド板31と下ガイド板32とを設けて、原稿Pを間隔Dにスムーズに導くようにしている。
【0047】
また、白色ローラ14bには、上述した間隔調整と弾性力調整とを行うための機構が取り付けられており、間隔調整を行うための機構については、例えばソレノイド200を用いて実現するようにしている。
このソレノイド200は、定常状態でピン200aが突出した状態になっており、そのピン200aの一端(実線で示す先端部分)が図に示すように白色ローラ14bの両端から突出する軸に挿入された軸受け200bと一体となっている。
一方で、ソレノイド200のピン200aの他端(破線で示す先端部分)には、突起部200cがあり、この突起部200cが、一点鎖線で示す可動ストッパ210と接している構成となっている。
【0048】
そして、この可動ストッパ210は、間隔調整モータ430(図7参照)を正転駆動することにより、矢印E方向に移動可能な構成となっており、この移動と連動して可動ストッパ210と接する突起部200cも矢印E方向に移動し、ピン200aを除々に引っ込めることが可能となっている。そして、ピン200aが引っ込むのに合わせて白色ローラ14bも矢印F方向に移動し、間隔Dを広げるようにしている。
また、ピン200aには不図示のバネ等で矢印Eと逆方向に力を加えており、可動ストッパ210を矢印Eと逆方向に移動させると、それに連れてピン200aも徐々に突出させ、間隔Dを狭める(元に戻す)ことができる。
この実施形態では、このようにして間隔調整を行うようにしている。
【0049】
また、弾性力調整を行うための機構については、例えばバネ定数可変バネ300を用いて実現するようにしている。このバネ定数可変バネ300は、可動部300aと固定部300bとを備えている。この可動部300aは、永久磁石を含んだ構成となっており、一端が棒材320に固定され、他端は固定されずにガイド板310に固定された固定部300bの凹部に挿入されている。
この固定部300bは、対のコイルとその周りを囲む強磁性体(例えば鉄など)から構成されており、図中のように可動部300aが挿入された状態においては、可動部300aの永久磁石が強磁性体を引きつけることにより図中の状態を保持している。
【0050】
その保持しようとする保持力は弾性力に見立てることができ、特に力が加わらない限りは、図中の定常状態を保持する。仮に矢印G方向に力が加わっても弾性力が矢印G方向と反対方向に働いて元の定位置を保持しようとする。
そして、この弾性力を弱める場合は、固定部300bの対のコイルを通電することで磁束(図中破線矢印)を打ち消して、磁気バネのバネ定数を低くし弾性力を弱めるようにする。このことにより、棒材320の一端と固定された白色ローラ14bの軸にかかる弾性力も小さくなり、白色ローラ14b自体の弾性力も小さくすることができる。このような構成は、磁気バネと呼ばれる。
【0051】
ここで、例えば固定部300bのコイルを通電した状態で、間隔Dよりも厚い紙が搬送されてくると、白色ローラ14bが厚い紙により押し上げられて矢印G方向に力が加わるものの、矢印G方向と反対方向に働く弾性力が弱いため、その厚い紙に与える圧力も小さくなる。
この実施形態では、このようにして弾性力調整を行い、紙に対して与える圧力を調整するようにしている。
【0052】
なお、間隔Dよりも厚い紙が搬送されている状態においては、ソレノイド200のピン200aは、可動ストッパ210を用いることなく、わずかに矢印E方向に移動することが可能であり、このため突起部200cと可動ストッパ210との間にはわずかな空隙ができる。そしてこの空隙は、厚い紙が通過後にバネ定数可変バネ300の弾性力により埋められる。この関係は、可動ストッパ210を用いて間隔Dを広げた後の状態において、その広げた間隔よりもさらに厚い紙が搬送されてきた場合も同じである。
【0053】
なお、バネ定数可変バネ300を用いた弾性力調整の手法については、例えば特許文献4に記載されている。
また、上述した間隔調整を行うためのソレノイド200を用いた機構については、一例であって、他の公知の機械部材等の組み合わせにより間隔調整を行ってもよいことはもちろんである。また、弾性力調整を行うためのバネ定数可変バネ300を用いた可動部300aと固定部300bからなる構成も一例であって、他の構成を用いたバネ定数可変バネにより弾性力調整を行ってもよいことはもちろんである。
以上のような、間隔調整及び弾性力調整については、以後特段両者を区別する必要がない限りまとめて調整処理と称して以下に説明する。
【0054】
次に、画像読取装置10の制御系のハードウェア構成について、図7を参照しながら説明する。図7は、図2に示した画像読取装置10のハードウェア構成のブロック図である。
図7に示すように、画像読取装置10は、制御部400、操作部410、記憶部420、間隔調整モータ430、バネ定数制御スイッチ440、コンパレータ450a,450b、変位センサ12e及び受光センサ13cを備えている。
【0055】
なお、紙厚測定部12の変位センサ12e及び光沢度測定部13の受光センサ13cについては上述した通りなので、その説明を省略する。
また、図中に示したハードウェア構成は、本願の発明と関連のあるハードウェア構成を中心に示したものであり、この構成とは別にADF11の各種ローラを回転させるためのモータ群や各種センサ群も別途備えている。
【0056】
まず、制御部400は、CPUを中核として、画像読取装置10が備える各種ハードウェア(センサ群及びモータ群など)を制御して、原稿Pの搬送、画像の読み取り、読み取りで得た画像データに対する補正などの機能を実現するための処理を行うものである。
この制御部400は、以上の処理を実行するためのプログラムやデータを記憶したROM等の記憶手段と、そのプログラムを展開して実行するためのワークエリアとなるRAMも備える。
【0057】
操作部410は、液晶ディスプレイ等による表示部と、タッチパネルあるいはボタン等とを備えるものであり、画像読取装置10の状態をユーザに画面表示で通知したり、ユーザからの片面読取や両面読取の実行指示等の操作を受け付けたりするものである。
記憶部420は、CCD21により読み取ったおもて面の画像データ及び裏面読取部14により読み取った裏面の画像データ等を格納するための画像メモリである。
間隔調整モータ430は、正転駆動により可動ストッパ210を矢印E方向に移動させ、逆転駆動により可動ストッパ210を矢印E方向と逆方向に移動させるための間隔調整用のモータである。
【0058】
バネ定数制御スイッチ440は、バネ定数可変バネ300のバネ定数を変えるためのスイッチであって、固定部300bの対のコイルへの通電のオン又はオフを制御するためのものである。このバネ定数制御スイッチ440は、定常状態でオフであって、オンに切り替えることにより可動部300aのバネ定数を低くして、白色ローラ14の持つ弾性力を小さくするようにしている。
コンパレータ450は、光沢度用と紙厚用とでそれぞれ1つずつ設けられた比較器であって、制御部400により設定される閾値と、変位センサ12e及び受光センサ13cからそれぞれ得られる紙厚及び光沢度とを比較して、HighかLowかを出力するためのものである。
【0059】
このコンパレータ450の使用例について、図8の回路図を参照しながら具体的に説明する。
図8に示すように、コンパレータ450は、光沢度用のコンパレータ450aと紙厚用のコンパレータ450bとからなり、それぞれ2入力1出力である。そして、光沢度用のコンパレータ450aの入力の一方には、制御部400から光沢度閾値が入力され、他方には受光センサ13cで測定した光沢度測定値が入力される。
【0060】
そして、光沢度用のコンパレータ450aは、光沢度閾値に対して光沢度測定値がHighかLowかを2値化して出力する。
この場合、例えば光沢度閾値に対して光沢度測定値がHighであると、制御部400が搬送中の原稿は光沢が大きいためCIS14aに密着させないようにする必要がある判断して、間隔調整モータ430及びバネ定数制御スイッチ440を制御して調整処理を行うようにする。
【0061】
ただし、紙厚用のコンパレータ450bも同様に、紙厚閾値と紙厚測定値とを入力して比較を行う。そして、最終的には、紙厚の判定結果も参照して、間隔調整モータ430あるいはバネ定数制御スイッチ440を制御して調整処理を行うようにしている。
以上、図2乃至図8を参照しながら説明した画像読取装置10において、特徴的な点は、紙厚測定部12の変位センサ12eで測定した紙厚と、光沢度測定部13の受光センサ13cで測定した光沢度とに基づいて行う調整処理である。そこで、以下この点に関連して、制御部400が実行する調整処理について図9を参照しながら説明する。
【0062】
図9は、両面読み取りを行う場合に制御部400が実行する調整処理を示したフローチャートである。なお、この調整処理は、制御部400のCPUが実行するが、説明の便宜上制御部400が行うものとして説明する。
画像読取装置10において、原稿Pがセットされた状態でユーザが操作部410の図示しないタッチパネル等により両面読み取りを指示すると、制御部400が、図9に示す処理を開始する。
【0063】
まず、制御部400は、コンパレータ450a,450bに入力する光沢度閾値と、紙厚閾値とをそれぞれ適当な値に設定し(S101)、原稿搬送を開始する(S102)。そして、紙厚測定部12の変位センサ12eで測定した原稿Pの紙厚を取得し(S103)、光沢度測定部13の受光センサ13cで測定した原稿Pの光沢度を取得する(S104)。
そして、制御部400は、S103及びS104で取得した紙厚及び光沢度を、測定値としてコンパレータ450a,450bに対してそれぞれ入力する(S105)。
そして、制御部400は、光沢度測定値が光沢度閾値を超えているか否か判断する(S106)。ここでは光沢度用のコンパレータ450aの出力値がHigh(光沢度測定値の方が光沢度閾値よりも大きい)か否かによりこの判断を行うことができる。
【0064】
制御部400は、このステップS106の判断において、光沢度測定値が光沢度閾値を超えていると判断した場合(S106のYes方向)、CIS14aにおける原稿の密着防止が必要な可能性があると判断して、ステップS107に進む。
ステップS107においては、紙厚測定値が紙厚閾値を超えているか否か判断する。ここでは紙厚用のコンパレータ450bの出力値がHigh(紙厚測定値の方が紙厚閾値よりも大きい)か否かによりこの判断を行うことができる。
【0065】
制御部400は、このステップS107の判断において、紙厚測定値が紙厚閾値を超えていると判断した場合(S107のYes方向)、CIS14aにおける原稿の密着防止が必要であると判断して、ステップS108に進む。
そして、制御部400は、ステップS108において、原稿Pが裏面読取部14に進入する前までに、間隔調整モータ430を正転駆動するとともに、バネ定数制御スイッチ440をオンにする。
【0066】
これにより、ソレノイド200のピン200aが引っ込んで白色ローラ14bが移動し間隔Dが広がるとともに、バネ定数可変バネ300の固定部300bにおける対のコイルが通電されて白色ローラ14bの弾性力が小さくなる。
このようにステップS108においては、光沢度と紙厚の双方が閾値を超えていると判断された場合、白色ローラ14bの間隔と弾性力の大きさとを調整する調整処理を行うようにし、その調整処理の後、ステップS110に進む。
【0067】
一方で、制御部400は、ステップS106の判断において、光沢度測定値が光沢度閾値以下であると判断した場合(S106のNo方向)、あるいはステップS107の判断において、紙厚測定値が紙厚閾値以下であると判断した場合(S107のNo方向)、CIS14aにおける原稿の密着防止は不要と判断し、ステップS109に進む。
そして、間隔調整モータ430を逆転駆動するとともに、バネ定数制御スイッチ440をオフにして(S109)、白色ローラ14bの間隔と弾性力とを初期値に戻す調整を行った後、ステップS110に進む。
【0068】
そして、制御部400は、ステップS110において、次の原稿があるかないかを判断し、なければ(S110のYes方向)、処理を終了する。次の原稿があれば(S110のNo方向)、ステップS102に戻って次の原稿Pの搬送を開始する(S102)。
以上の図9で説明した処理においては、制御部400が、測定した光沢度と紙厚の双方が閾値以上と判断した場合、白色ローラ14bの間隔を大きくし、白色ローラ14bの位置を保持する弾性力を小さくする調整処理を行うようにしている。このことにより、読み取りムラの発生が予想される厚紙の光沢紙Pbをスムーズに通紙することができ、読み取りムラの発生を未然に防止することができる。
【0069】
なお、この図9の処理では、測定した光沢度と紙厚の双方が閾値を超えていると判断した場合に調整処理を行うようにしたが、これに限られる訳ではない。例えば、紙厚に関わらず、測定した光沢度に基づいて、光沢度が閾値を超えていると判断した場合に調整処理を行うことが考えられる。
この場合、厚紙の光沢紙にターゲットを絞って調整処理を行うことはできないものの、読み取りムラの発生防止という観点からは、特に問題ない。さらに、図9の紙厚閾値を設定する処理、原稿の紙厚を取得する処理、紙厚測定値と紙厚閾値を比較する処理等(S103及びS107等)が不要になり、処理がより単純になるとともに、紙厚用のコンパレータ450bも使わなくて済むので回路を単純化することができる。
【0070】
また、ステップS101で行う光沢度閾値と紙厚閾値の設定は、必ずしもユーザが両面読み取りの指示を行ったタイミングで行う必要はなく、例えばデフォルトとしてそれぞれの閾値を予めコンパレータ450a,450bに設定しておいてもよい。
また、図9では、調整処理として白色ローラ14bの間隔及び弾性力の大きさを同時に調整するようにしたが、いずれか一方のみの調整を行うようにすることも考えられる。この例について、以下の第2実施形態及び第3実施形態で詳述する。
【0071】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、第1実施形態において行った白色ローラ14bの間隔及び弾性力の調整処理のうち、間隔の調整処理のみを行うものである。
このため、第1実施形態における裏面読取部14の構成及び制御部400が行う図9の処理と対応する調整処理が若干異なるものの、それ以外は同じであるので、この異なる点を中心に図10及び図11を参照しながら説明する。
【0072】
まず、第2実施形態における裏面読取部14′の構成について説明する。図10は、その構成を示した図である。なお、第2実施形態における裏面読取部14′において、第1実施形態の裏面読取部14と同じ構成は同じ符号を付してある。
この裏面読取部14′は、間隔Dの調整に特化しており、このため間隔調整を行うソレノイド200を用いた機構は第1実施形態と同じで、異なる点はバネ定数可変バネ300が通常のバネ300′になった点だけである。この裏面読取部14′のソレノイド200の可動ストッパ210により、第1実施形態と同様、間隔Dを広げることができる。
なお、通常のバネ300′を設けることにより、バネ定数を可変することはできないものの、白色ローラ14bに弾性力を持たせるようにしている。
【0073】
次に、第2実施形態において、制御部400が行う調整処理について説明する。図11は、両面読み取りを行う場合に制御部400が実行する、図9と対応する調整処理を示したフローチャートである。
なお、この第2実施形態における調整処理は、間隔調整だけを行うものであり、ステップS201乃至S207までの処理は図9のステップS101乃至S107までの処理と同じであるため、異なるステップを中心に説明する。
画像読取装置10において、原稿Pがセットされた状態でユーザが操作部410の図示しないタッチパネル等により両面読み取りを指示すると、制御部400が、図11に示す処理を開始する。
【0074】
まず、制御部400は、ステップS201乃至S207までの処理を順に行って、その結果、搬送した原稿Pについて、光沢度と紙厚の双方が閾値を超えていると判断した場合(S207のYes方向)、調整処理として間隔調整モータ430を正転駆動するようにする(S208)。
これにより、図10に示した裏面読取部14′のソレノイド200のピン200aが引っ込み、白色ローラ14bが矢印F方向に移動し間隔Dが広がる。この調整処理の後、ステップS210に進む。
【0075】
一方で、制御部400が、原稿Pの光沢度と紙厚のいずれかが閾値以下であると判断した場合(S206又はS207のNo方向)、ステップS209に進む。そして、間隔調整モータ430を逆転駆動して(S209)、白色ローラ14bの間隔を初期値に戻す調整を行った後、ステップS210に進む。
そして、制御部400は、ステップS210において、次の原稿があるかないか判断して、次の原稿がなければ(S210のYes方向)、処理を終了する。次の原稿があれば(S210のNo方向)、ステップS202に戻って次の原稿搬送を開始する。
【0076】
以上の図11で説明した処理においては、制御部400が、測定した光沢度と紙厚の双方が閾値以上と判断した場合、CIS14aと白色ローラ14bの間隔Dを広げるように調整するようにしている。このことにより、読み取りムラの発生を抑えることができる。
また、この第2実施形態の場合も第1実施形態と同様に、紙厚については判断せずに、光沢度が閾値を超えた場合に間隔Dを広げる調整処理を行うようにしてもよい。
【0077】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態について説明する。この第3実施形態は、第1実施形態において行った間隔及び弾性力の調整処理のうち、弾性力の調整処理のみを行うものである。このため、第1実施形態における裏面読取部14の構成及び制御部400が行う図9の処理と対応する調整処理が若干異なるものの、それ以外は同じであるので、この異なる点を中心に図12及び図13を参照しながら説明する。
【0078】
まず、第3実施形態における裏面読取部14″の構成について説明する。図12は、その構成を示した図である。なお、第3実施形態における裏面読取部14″において、第1実施形態の裏面読取部14と同じ構成は同じ符号を付してある。
この裏面読取部14″は、白色ローラ14bの弾性力の調整に特化しており、このため間隔調整を行うソレノイド200を用いた機構は設けず、弾性力の調整を行うバネ定数可変バネ300を用いた機構のみで構成している。ただし、白色ローラ14bの軸を、矢印G方向に移動可能に保持する不図示の部材は設けている。
【0079】
このため、第3実施形態における裏面読取部14″では、白色ローラ14bに力が加わらない状態(定位置)での間隔Dは調整できないが、第1実施形態と同様、バネ定数可変バネ300の固定部300bにおける対のコイルに通電することにより、白色ローラ14bをその定位置に保持する弾性力を調整することできる。
このため、間隔Dよりも厚い紙が搬送されてきた場合にその紙に与える圧力を小さくすることができる。
【0080】
次に、第3実施形態において、制御部400が行う調整処理について説明する。図13は、両面読み取りを行う場合に制御部400が実行する、図9と対応する調整処理を示したフローチャートである。
なお、この第3実施形態における調整処理は、弾性力の調整だけを行うものであり、ステップS301乃至S307までの処理は図9のステップS101乃至S107までの処理と同じであるため、異なるステップを中心に説明する。
【0081】
画像読取装置10において、原稿Pがセットされた状態でユーザが操作部410の図示しないタッチパネル等により両面読み取りを指示すると、制御部400が、図13に示す処理を開始する。
まず、制御部400は、ステップS301乃至S307までの処理を順に行って、その結果、光沢度と紙厚の双方が閾値を超えていると判断した場合(S307のYes方向)、調整処理としてバネ定数制御スイッチ440をオンするようにする(S308)。
これにより、図12に示した裏面読取部14″のバネ定数可変バネ300のバネ定数が低くなって、白色ローラ14bの弾性力が小さくなる。この調整処理の後、ステップS310に進む。
【0082】
一方で、制御部400が、原稿Pの光沢度と紙厚のいずれかが閾値以下であると判断した場合(S306又はS307のNo方向)、ステップS309に進む。そして、バネ定数制御スイッチ440をオフにして白色ローラ14bを保持する弾性力を初期値に戻す調整を行った後(S309)、ステップS310に進む。
そして、制御部400は、ステップS310において、次の原稿があるかないか判断して、次の原稿がなければ(S310のYes方向)、処理を終了する。次の原稿があれば(S310のNo方向)、ステップS302に戻って次の原稿搬送を開始する。
【0083】
以上の図13で説明した処理においては、制御部400が、測定した光沢度と紙厚の双方が閾値以上と判断した場合、バネ定数可変バネ300の固定部300bにおける対のコイルに通電するようにし、白色ローラ14bの弾性力を小さくするようにしている。
このことにより、原稿がCIS14aのガラス14cに強く押しつけられることがなくなり、読み取りムラの発生を抑えることができる。
また、この第3実施形態の場合も第1実施形態と同様に、紙厚については判断せずに、光沢度が閾値を超えた場合に白色ローラ14bの弾性力の大きさを調整する調整処理を行うようにしてもよい。
【0084】
以上で第1乃至第3実施形態の説明を終了するが、画像読取装置10の具体的な構成や制御部400が行う処理の内容等が上述の実施形態で説明したものに限られないことはもちろんである。
例えば、上述した第1乃至第3実施形態における画像読取装置10においては、紙厚測定部12を、プルアウトローラ12aとプルアウト従動ローラ12bにより構成するようにしたが、裏面読取部14よりも上流側にある他の対となっているローラにより代用しても構わない。
また、第1乃至第3実施形態においては何れも、原稿Pの裏面を読み取る場合を例にとって説明したが、原稿Pのおもて面を読み取る場合にも上述した各実施形態における調整処理を行っても構わない。
【0085】
また、第1乃至第3実施形態においては何れも、光沢度や紙厚が閾値を超えているか否かの2段階で白色ローラ14bの間隔や弾性力を調整するようにしたが、これを多段階で行うようにしてもよいことはもちろんである。
光沢度や紙厚を3段階以上に区分して、それぞれの段階に対応する間隔や弾性力を設定するようにしてもよいし、光沢度や紙厚と、間隔及び弾性力との関係式を定めておき、それら関係式に基づいて、光沢度や紙厚から、設定すべき間隔や弾性力の値を定めるようにしてもよい。
【0086】
このような多段階の調整を行えば、より精密に、読み取りムラの発生を防止することができる。白色ローラ14bとCIS14aとの間隔を広げすぎたり、白色ローラ14bの位置を保持する弾性力が弱すぎたりすると、原稿がCIS14aの読み取り面から大きく浮き上がってボケが生じる原因となったりすることも考えられるので、原稿の特性に合った精密な調整を行うことが好ましいと言える。
【0087】
また、上述した実施形態では、原稿の光沢度や紙厚を都度測定する例について説明したが、予め登録されている紙種のデータを参照して光沢度や紙厚の値を取得するようにしてもよい。例えば、普通紙、厚紙、光沢紙、写真紙のような紙種毎に光沢度や紙厚の値を予め登録しておき、読み取り時にユーザが選択した紙種と対応する光沢度や紙厚の値を用いて調整処理を行う等である。また、光沢度や紙厚ではなく、紙種毎に好適な白色ローラ14bの間隔や弾性力を直接登録しておくことも考えられる。
【0088】
また、この発明が、単体の画像読取装置として実施可能であることも勿論である。
また、以上説明してきた各実施形態及び変形例の構成が、相互に矛盾しない限り任意に組み合わせて実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0089】
100:画像処理装置 10:画像読取装置
11:自動原稿搬送装置(ADF) 12:紙厚測定部
12a:プルアウトローラ 12b:プルアウト従動ローラ
12c:回転軸 12d:支持機構 12e:変位センサ
13:光沢度測定部 13a:光沢度計 13b:光源
13c:受光センサ 14:裏面読取部 14a:CIS
14b:白色ローラ 14c:ガラス 14d:レンズアレイ
14e:光源 14f:白テープ 14g:集光レンズ
14h:イメージセンサ 14i:センサ基板 14j:信号処理基板
14k:アルミダイキャスト 15:おもて面読取窓
16:コンタクトガラス 17:基準白板17 18:第1キャリッジ
19:第2キャリッジ 20:レンズユニット 21:CCD
31:上ガイド板 32:下ガイド板
200:ソレノイド 200a:ピン 200b:軸受け
200c:突起部 210:可動ストッパ
300:バネ定数可変バネ 300′:バネ
300a:可動部 300b:固定部
310:ガイド板 320:棒材
400:制御部 410:操作部 420:記憶部
430:間隔調整モータ 440:バネ定数制御スイッチ
450a、b:コンパレータ
500:CIS 501:センサ基板 502:イメージセンサ
503:レンズアレイ 504a、b:光源 505:ガラス
【先行技術文献】
【特許文献】
【0090】
【特許文献1】特開2009−21715号公報
【特許文献2】特開2005−159482号公報
【特許文献3】特開2010−245917号公報
【特許文献4】特開2004−360747号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の画像を読み取る読取手段と、該読取手段と対向する位置で前記原稿を非読み取り面側から支持する支持手段と、前記原稿を搬送する搬送手段とを備え、該搬送手段により前記読取手段と前記支持手段との間に前記原稿を搬送して、該原稿の画像を読み取る画像読取装置であって、
前記支持手段は、前記読取手段との間隔より厚い原稿を搬送する場合に、所定の力に抗して前記読取手段と反対側に移動することにより、該原稿を、前記読取手段に向けて圧力を加えつつ支持する手段であり、
前記原稿が前記読取手段に達する前に前記原稿の光沢度の情報を取得する光沢度情報取得手段を備え、
該光沢度情報取得手段により取得した光沢度に基づいて、前記支持手段を移動させて前記読取手段と前記支持手段との間隔を調整すると共に前記所定の力の大きさを調整する調整処理を行うことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
原稿の画像を読み取る読取手段と、該読取手段と対向する位置で前記原稿を非読み取り面側から支持する支持手段と、前記原稿を搬送する搬送手段とを備え、該搬送手段により前記読取手段と前記支持手段との間に前記原稿を搬送して、該原稿の画像を読み取る画像読取装置であって、
前記原稿が前記読取手段に達する前に前記原稿の光沢度の情報を取得する光沢度情報取得手段を備え、
該光沢度情報取得手段により取得した光沢度に基づいて、前記支持手段を移動させて前記読取手段と前記支持手段との間隔を調整する調整処理を行うことを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
原稿の画像を読み取る読取手段と、該読取手段と対向する位置で前記原稿を非読み取り面側から支持する支持手段と、前記原稿を搬送する搬送手段とを備え、該搬送手段により前記読取手段と前記支持手段との間に前記原稿を搬送して、該原稿の画像を読み取る画像読取装置であって、
前記支持手段は、前記読取手段との間隔より厚い原稿を搬送する場合に、所定の力に抗して前記読取手段と反対側に移動することにより、該原稿を、前記読取手段に向けて圧力を加えつつ支持する手段であり、
前記原稿が前記読取手段に達する前に前記原稿の光沢度の情報を取得する光沢度情報取得手段を備え、
該光沢度情報取得手段により取得した光沢度に基づいて、前記所定の力の大きさを調整する調整処理とを行うことを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の画像読取装置において、
前記原稿が前記読取手段に達する前に前記原稿の厚さの情報を取得する紙厚情報取得手段を備え、
前記光沢度に加えて、前記紙厚情報取得手段により取得した前記原稿の紙厚にも基づいて、前記調整処理を行うことを特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像読取装置を画像読取手段として備えた画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−62645(P2013−62645A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199145(P2011−199145)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】