説明

画像読取装置

【課題】被撮像物の質感を読み取る機能と、被撮像物の色を読み取る機能とを、より少ない部品点数で実現する。
【解決手段】色読取モードにおいては、2つの方向から被撮像物Oに光を照射し、その被撮像物Oからの拡散反射光に基づいて被撮像物Oの像(主に色)を表す画像データを生成する。一方、質感読取モードにおいては、或る一定の方向から被撮像物Oに光を照射し、その被撮像物Oからの正反射光に基づいて被撮像物Oの像(種に質感)を表す画像データを生成する。よって、色読取モードでは被撮像物の色を読み取ってそれを再現することが可能となり、質感読取モードでは被撮像物の質感を読み取って再現することが可能となる。そして、色読取モード及び質感読取モードを併用すれば被撮像物の色と質感を同時に再現することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置において被撮像物の質感に関する情報を入力するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
物体表面はそれぞれ「質感」を有している。例えば、研磨された金属の表面はつやのある「光沢感」を観察者に与え、布や織物の表面はつやのない「マット感」を与える。物体をより実物らしく、リアルに表現するためには、実物の光沢や風合いなどの質感に関する情報(質感情報)を入力することが必要となる。そのため、スキャナや複写機等の画像読取装置においては、物体の色だけでなく質感をも読み取るための試みがなされている。
【0003】
物体の質感は、主に物体表面における光の反射状態に依存する。一般に、物体表面における反射光は、指向性の高い正反射光(あるいは鏡面反射光)と指向性の低い拡散反射光の和によって表すことができるが、物体の質感はこれらの比率によって異なってくる。例えば、研磨された金属の表面では正反射光の比率が比較的高くなっており、それゆえ金属の表面には光沢感がある。逆に、布や織物などのような光沢のない物体の表面では、拡散反射光の比率が比較的高くなっている。つまり、物体表面からの反射光を測定して正反射光と拡散反射光の比率を求めることにより、物体の質感、特に光沢度をより忠実に表現できるようになる。
【0004】
一般的に、画像読取装置においては、被撮像物となる物体の拡散反射光を用いて読み取りを行っている。すなわち、画像読取装置においては、被撮像物からの拡散反射光を多く含む反射光を受光し、この拡散反射光に基づいて物体の色情報が生成されている。これに対して、被撮像物からの正反射光を多く含む反射光を受光するように構成すると、被撮像物の表面状態によっては正反射光成分が過大となる場合が生じ、拡散反射光に基づく被撮像物画像の読取性能が低下してしまう。このため、被撮像物からの正反射光を極小化し、なるべく多くの拡散反射光を含む反射光を受光するべく結像光学系部材が設計されている。
【0005】
一方、被撮像物表面の質感を読み取るためには、被撮像物からの拡散反射光と正反射光の両方を受光し、各々の反射光成分に基づいて色情報と質感情報とを取得できるようにすればよい。例えば、特許文献1においては、光源を被写体(被撮像物)に照射することで主に拡散反射光を含む画像(拡散反射画像)を読み取り、光源を被写体に照射することで主に正反射光を含む画像(鏡面反射画像)を読み取ったあと、これらの画像信号に基づいて光沢を示す光沢信号が生成されている。つまりここでは、拡散反射光に基づいて被写体の色情報を求め、正反射光に基づいて被写体の質感情報を求めていると言える。
【0006】
【特許文献1】特開2003−132350号公報(図6等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
画像読取装置においては、上記のように被撮像物の色及び質感を読み取る機能の他にも、従来のように一般的な紙原稿の像(色)だけを読み取る機能も求められる。従って、製造メーカはこの両者の機能を有する画像読取装置を提供する必要がある。
【0008】
ところで、一般的な画像読取装置において紙原稿の像を読み取る場合には、1つの方向からその原稿に光を照射するのではなく、2つの方向から同時に原稿に光を照射するようにしている。なぜなら、2つの方向から光を照射することで十分な光量を確保するとともに、1つの方向から光を照射した場合、たとえば原稿に切り貼り部などが含まれていると、その段差に起因する影が発生してしまい、原稿そのものの像を忠実に読み取ることができないからである。このため、画像読取装置は光源を2つ備えたり、2つの方向から照射するように、別途リフレクタを設置している場合が多い。
【0009】
以上のことから、上記の両者の機能を有する画像読取装置を製造しようとした場合には、それぞれの機能を実現するために、被撮像物に対し2つの異なる条件で照明を行うとともに、2つの異なる角度の反射光を各々読み取ることができる構造にする必要がある。本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、主として被撮像物の色を読み取るという本来の機能を低下させることなく披撮像物の質感を読み取る機能の追加をより簡易な構成で実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明は、被撮像物の方向へ光を照射する位置に設けられた光源と、光を反射する反射面と、光を吸収する吸収面とを有する光学部材と、前記光源によって光が照射された被撮像物からの反射光を受光し、その反射光に基づいて画像信号を生成して出力する信号生成手段と、自装置における画像読取モードを、前記光源から発せられた光を少なくとも2つの方向から前記被撮像物に照射し、当該被撮像物からの拡散反射光に基づいて当該被撮像物の像を表す画像信号を生成する第1の画像読取モードと、前記光源から発せられた光を或る一定の方向から前記被撮像物に照射し、当該被撮像物からの正反射光に基づいて当該被撮像物の像を表す画像信号を生成する第2の画像読取モードとのいずれかに切り替える切替手段と、前記第1の画像読取モードにおいて、前記被撮像物からの拡散反射光を前記信号生成手段へと導く第1の光学系部材と、前記第2の画像読取モードにおいて、前記被撮像物からの正反射光を前記信号生成手段へと導く第2の光学系部材と、前記光学部材の位置又は姿勢を変化させる駆動手段であって、前記第1の画像読取モードにおいては、前記光源から発せられた光を前記反射面にて前記被撮像物に向かう方向に反射させ、且つ、前記被撮像物からの拡散反射光を前記第1の光学系部材によって前記信号生成手段へと導かせるような位置又は姿勢に変化させる一方、前記第2の画像読取モードにおいては、前記光源から発せられた光が前記被撮像物で拡散反射して前記非反射面に向かい、且つ、前記被撮像物からの正反射光を前記第2の光学系部材によって前記信号生成手段へと導かせるような位置又は姿勢に変化させる駆動手段とを備えることを特徴とする画像読取装置を提供する。
【0011】
この画像読取装置によれば、第1の画像読取モードにおいては、少なくとも2つの方向から被撮像物に光を照射し、その被撮像物からの拡散反射光に基づいて被撮像物の像を表す画像信号を生成する。一方、第2の画像読取モードにおいては、一定の方向から被撮像物に光を照射し、その被撮像物からの主に正反射光に基づいて被撮像物の像を表す画像信号を生成する。第1の画像読取モードで生成された画像信号は主として被撮像物の色を表しており、第2の画像読取モードで生成された画像信号は主として被撮像物の光沢(質感)を表している。よって、第1の画像読取モードでは被撮像物の色を読み取ることが可能となり、第1の画像読取モード及び第2の画像読取モードでは被撮像物の色と質感とを読み取ることが可能となる。
【0012】
また、第1の画像読取モードにおいては、駆動手段が、光源から発せられた光を光学部材の反射面にて被撮像物に向かう方向に反射させ、且つ、被撮像物からの拡散反射光を第1の光学系部材によって信号生成手段へと導かせるような位置又は姿勢になるように、光学部材の位置又は姿勢を変化させる。一方、第2の画像読取モードにおいては、駆動手段が、光源から発せられた光が被撮像物で拡散反射して光学部材の非反射面に向かい、且つ、被撮像物からの正反射光を第2の光学系部材によって信号生成手段へと導かせるような位置又は姿勢になるように、光学部材の位置又は姿勢を変化させる。つまり、駆動手段が光学部材の位置又は姿勢を変化させることで、2種類の画像読取モードにおいてその光学部材を共用することができる。よって、2種類の画像読取の機能ごとに専用の部品を実装するような場合に比較して構成が簡易であるため、例えば部品点数を少なくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(1)第1実施形態
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像読取装置100の装置構成を示した図である。同図に示されているように、画像読取装置100は、プラテンガラス11と、プラテンカバー12と、フルレートキャリッジ13と、ハーフレートキャリッジ14と、結像レンズ15と、ラインセンサ16と、操作部17とを備える。
【0014】
プラテンガラス11は透明なガラス板であり、読み取るべき被撮像物Oが載置される。プラテンガラス11の両面には、例えば多層誘電体膜等の反射抑制層が形成されており、プラテンガラス11表面での反射が軽減されるようになっている。プラテンカバー12はプラテンガラス11を覆うようにして設けられており、外光を遮断してプラテンガラス11上に載置された被撮像物Oの読み取りを容易にする。なお、本発明においては、被撮像物Oは紙に限定されるものではなく、プラスティックや金属板、あるいは布地や織物であってもよい。
【0015】
図2,3はフルレートキャリッジ13の構成を示した図である。
画像読取装置100の画像読取モードには、主として被撮像物の色を読み取る色読取モード(第1の画像読取モード)と、主として被撮像物の質感(光沢)を読み取る質感読取モード(第2の画像読取モード)とがある。図2は、色読取モードにおけるフルレートキャリッジ13の構成を示しており、図3は、質感読取モードにおけるフルレートキャリッジ13の構成を示している。なお、本実施形態のフルレートキャリッジ13においては、ライン状光源131から被撮像物に対する光の入射角を約45°とし、この光に対して約45°の反射角で反射される光を正反射(SpecularReflection)光とする。より厳密に言えば、この反射光には正反射光に加えて拡散反射光も含まれているが、この反射光のうちの拡散反射光に相当する成分については、この光に基づいて生成される画像信号に所定の演算を施すことによって減殺すればよい。一方、被撮像物Oの色だけを読み取る通常の画像読取装置と同様に、被撮像物Oに入射する光に対して約0°の反射角で反射する光を拡散反射(Diffuse Reflection)光とする。
【0016】
フルレートキャリッジ13は、ライン状光源131と、回動リフレクタ132と、ミラー133,134とを備えている。ライン状光源131は例えばハロゲンランプまたはキセノン蛍光ランプであり、図示のように、被撮像物Oの方向へ光を照射する位置に設けられている。回動リフレクタ132は中央部分が折れ曲がった「く」の字状の光学部材であり、モータ136の駆動によって軸135を中心に回動し、図2に示す姿勢(向き)と図3に示す姿勢(向き)をとることが可能である(なお、図2,3及び後述する図4〜8においてはモータ136の図示を省略している)。この回動リフレクタ132は、光を反射する反射面132mと、光を吸収する吸収面132tとを有している。吸収面132tは、例えば黒色の多孔質ポリウレタンシートなどのいわゆる光トラップであり、ここに入射した光のほとんどは表面で捕捉(トラップ)されて吸収されるようになっている。
【0017】
ミラー133,134は被撮像物Oからの反射光をさらに反射し、この光をハーフレートキャリッジ14へと導く光学系部材である。より具体的には、ミラー133(第1の光学系部材)は、色読取モードにおいて被撮像物Oからの拡散反射光を反射してハーフレートキャリッジ14の方向へと進行させる。これに対し、ミラー134(第2の光学系部材)は、質感読取モードにおいて被撮像物Oからの正反射光を反射してハーフレートキャリッジ14の方向へと進行させる。
【0018】
回動リフレクタ132は、色読取モードで図2に示す位置にあるときには、点線r1に示すようにライン状光源131からの光を反射面132mで被撮像物Oの方向に反射する。この際、被撮像物Oは、点線r0で示すようにライン状光源131からの直接光によっても照射されるから、結局、2つの方向(点線r0,r1)から同時に照らされることになる。被撮像物Oからの拡散反射光は、点線r2で示すように、ミラー133によって反射された後、さらに回動リフレクタ132の反射面132mによって反射されてハーフレートキャリッジ14の方向へと進行する。つまり、色読取モードにおいて、回動リフレクタ132の姿勢は、ライン状光源131から発せられた光を反射面132mにて被撮像物Oに向かう方向に反射させ、且つ、被撮像物Oからの拡散反射光をミラー133によって反射させることでハーフレートキャリッジ14へと導かせるような姿勢となる。
【0019】
一方、回動リフレクタ132が質感読取モードで図3に示す位置にあるときには、反射面132mはライン状光源131から発せられる光を受けない位置に移動するので、被撮像物Oはライン状光源131の方向(つまり一定の方向)からのみ照らされることになる。よって被撮像物Oの表面の微細な形状による正反射光となり、被撮像物の質感を表した光となる。この正反射光は、点線r5に示すようにミラー134によって反射されてハーフレートキャリッジ14の方向へと進行する。さらに、回動リフレクタ132の吸収面132tが被撮像物Oに向き合うような位置に移動するので、点線r4に示すように被撮像物Oからの拡散反射光は吸収面132tによって吸収される。このように、質感読取モードにおいて、回動リフレクタ132の姿勢は、ライン状光源131から発せられた光が被撮像物Oで拡散反射して吸収面132tの方向に向かい、且つ、被撮像物Oからの正反射光をミラー134によってハーフレートキャリッジ14へと導かせるような姿勢となる。
【0020】
なお、回動リフレクタ132の姿勢や、これらの部材132〜134の位置は、被撮像物Oの表面で拡散反射した光がミラー133及び回動リフレクタ132を介してラインセンサ16によって受光されるに至るまでの光路長と、被撮像物Oの表面で正反射した光がミラー134を介してラインセンサ16によって受光されるに至るまでの光路長とは等しい。このようにすることで、画像読取モードに応じて回動リフレクタ132の姿勢が変化させられた場合であっても、結像光学系の焦点位置が変わらないので、拡散反射光・正反射光を同一のラインセンサ16(信号生成手段)面でその都度、焦点位置を調整することなく受光することが可能となる。
【0021】
上述のフルレートキャリッジ13の各構成要素は、図2の紙面垂直方向にプラテンガラス11とほぼ同程度の幅を有して延在している。また、フルレートキャリッジ13は、図示せぬ駆動部によって図1中の矢印C方向に速度vで移動される。駆動部がフルレートキャリッジ13を矢印C方向に移動させることによって、フルレートキャリッジ13は被撮像物Oの全面を走査することができる。
【0022】
ここで再び図1を参照し、画像読取装置100の各部の説明を続ける。
ハーフレートキャリッジ14はミラー141,142を備え、フルレートキャリッジ13からの光を結像レンズ15へと導く。また、ハーフレートキャリッジ14は図示せぬ駆動部によって駆動され、フルレートキャリッジ13の半分の速度(すなわちv/2)でフルレートキャリッジ13と同じ方向へと移動される。結像レンズ15はミラー142とラインセンサ16とを結ぶ光路上に設けられており、被撮像物Oからの光をラインセンサ16の位置で結像する。ラインセンサ16は例えばR(レッド)G(グリーン)B(ブルー)3色の光を分離して受光し、それぞれを光電変換する3ラインカラーCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の受光素子であり、受光量に応じた画像信号を生成して出力する。操作部17は液晶ディスプレイなどの表示装置や各種のボタン等を備えており、ユーザのための情報を表示してユーザからの入力指示を受け付ける。
【0023】
上述した各部の動作は、図示せぬ制御部によって制御される。制御部はCPU(Central Processing Unit)等の演算装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の各種メモリとを備えており、ユーザの入力指示に応じて上述した駆動部に指示を供給し、画像を読み取るための所定の動作を行わせる。また、制御部はラインセンサ16の出力した画像信号にAD変換やγ変換、あるいはシェーディング補正等の各種の画像処理を施して画像データを生成する。ラインセンサ16が出力する画像信号には、拡散反射光に基づく画像信号と、正反射光(厳密には拡散反射光をも含む)に基づく画像信号とがある。制御部は、前者の画像信号に所定の演算を施すことで、色に関する情報を含んだ画像データを生成する。また、制御部は、後者の画像信号に所定の演算を施すことで、質感に関する情報を含んだ画像データを生成する。よって、制御部は、前者及び後者の画像信号から得られる画像データを重畳することで色と質感に関する情報を含んだ画像データを生成することが可能となる。なお、制御部は、この画像データの生成時に、正反射光(厳密には拡散反射光をも含む)の画像信号から拡散反射光に相当する成分を減殺する演算処理を実行する。
【0024】
以上の第1実施形態によれば、色読取モードにおいては、2つの方向から被撮像物Oに光を照射し、その被撮像物Oからの拡散反射光に基づいて被撮像物Oの像(主に色)を表す画像データを生成する。一方、質感読取モードにおいては、或る一定の方向から被撮像物Oに光を照射し、その被撮像物Oからの正反射光に基づいて被撮像物Oの像(主に質感)を表す画像データを生成する。よって、色読取モードでは被撮像物の色を読み取ることが可能となり、質感読取モードでは被撮像物の質感を読み取ることが可能となる。そして、色読取モード及び質感読取モードを併用すれば被撮像物の色と質感を同時に読み取ることが可能となる。
【0025】
また、モータ136(駆動手段)によって回動リフレクタ132(光学部材)の姿勢を変化させることで、2種類の画像読取モードにおいて回動リフレクタを共用することができる。よって、例えば2種類の画像読取モードごとに専用の部品を実装するような場合と比較すると、構成が簡易であるため、部品点数を少なくすることが可能となる。
【0026】
なお、第1実施形態を次のように変形してもよい。
図4,5は変形例に係るフルレートキャリッジ13aの構成を示した図である。図4は、色読取モードにおけるフルレートキャリッジ13aの構成を示しており、図5は、質感読取モードにおけるフルレートキャリッジ13aの構成を示している。図4,5において、第1実施形態と同様の構成要素については、その構成要素と同一の符号を付している。この変形例に係るフルレートキャリッジ13aは、ミラー134に代えて、2枚のミラー134a,134bを備えている。このように2枚のミラー134a、134bを備えることにより、被撮像物Oの表面で拡散反射した光がミラー133及び回動リフレクタ132を介してラインセンサ16によって受光されるに至るまでに経た反射の回数と、被撮像物Oの表面で正反射した光がミラー134a,134bを介してラインセンサ16によって受光されるに至るまでに経た反射の回数とが、共に偶数(2回)となる。このように色読取モードと質感読取モードとにおいて光の反射回数を偶数或いは奇数に一致させることにより、それぞれの反射光の副走査方向の像方向を一致させることができる。上述した第1実施形態では、色読取モードにおける反射回数が2回であるのに対し、質感読取モードにおける反射回数が1回となり、偶数と奇数で一致していないから、両者の副走査方向の像方向も一致しない。このような場合には、ラインセンサ上に結像される副走査方向像の方向が一致しないため、例えばR、G、Bの3列の画素列を有するラインセンサ上に結像される像の副走査方向の順序が反転してしまうことになり、後段の遅延メモリによるライン合わせの処理の条件を変更せねばならず、処理回路の切り替えや遅延メモリの増加を伴ってしまうなどの不都合が生じる。この変形例によれば、そのような処理が不要となるから便利である。
【0027】
(2)第2実施形態
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る画像読取装置は、フルレートキャリッジの構成のみが上述の第1実施形態の画像読取装置100と異なっている。そのため、以下ではフルレートキャリッジの構成のみ説明を行い、第1実施形態と同様の構成要素については、その構成要素と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0028】
図6,7は、第2実施形態のフルレートキャリッジ13bの構成を示した図である。フルレートキャリッジ13bは、第1実施形態における回動リフレクタ137に代えて回動リフレクタ137を備えている点と、ビームスプリッタ139を備えている点が第1実施形態と異なる。回動リフレクタ137は平面状の光学部材であり、図示せぬモータ136の駆動によって軸138を中心に回動し、図6に示す姿勢(向き)と図7に示す姿勢(向き)をとることが可能である。この回動リフレクタ137は、回動リフレクタ137と同様に、光を反射する反射面137mと、光を吸収する吸収面137tとを有している。
【0029】
ビームスプリッタ139は、入射する光の一部を反射させ、一部を透過させる。ビームスプリッタ139は、その構造上、一方の面からの光の反射率を高く設定するほど光の透過率が低くなる。つまり、表側(一方の面)に入射する光の反射率が閾値以上であり、透過率が閾値以下である(なお、それぞれの閾値は同じである必要はない)。この性質を利用して、色読取モードでは被撮像物Oからミラー133を経て進行してくる拡散反射光を、ビームスプリッタ139の表側で閾値以上の反射率で反射してハーフレートキャリッジ14の方向へと進行させる。一方、質感読取モードでは、被撮像物Oからミラー134を経て進行してくる正反射光を、ビームスプリッタ139の裏側から表側へ閾値以下の透過率で透過させてハーフレートキャリッジ14の方向へと進行させる。一般的には、被撮像物Oからの正反射光は、拡散反射光のダイナミックレンジよりも数桁大きい場合が考えられる。よって、ビームスプリッタ139の設計に際しては、表側の反射率及び裏側の透過率が適切な値となるようにすればよい。また、このビームスプリッタ139の位置は、図6の点線で示すように被撮像物Oの表面で拡散反射した光が進行する光路(第1の光路)と、図7の点線で示すように被撮像物Oの表面で正反射した光が進行する光路(第2の光路)とが重なっている位置である。
【0030】
回動リフレクタ137は、色読取モードで図6に示す位置にあるときには、ライン状光源131からの光を反射面137mで被撮像物Oの方向に反射する。この際、被撮像物Oは、ライン状光源131からの直接光によっても照射されるから、結局、2つの方向から同時に照らされることになる。被撮像物Oからの拡散反射光は、ミラー133によって反射された後、さらにビームスプリッタ139によって反射されてハーフレートキャリッジ14の方向へと進行する。つまり、色読取モードにおいて、回動リフレクタ137の姿勢は、ライン状光源131から発せられた光を反射面137mにて被撮像物Oに向かう方向に反射させ、且つ、被撮像物Oからの拡散反射光をミラー133及びビームスプリッタ139によって反射させることでハーフレートキャリッジ14へと導かせるような姿勢となる。
【0031】
一方、回動リフレクタ137が質感読取モードで図7に示す位置にあるときには、反射面137mはライン状光源131から発せられる光を受けない位置に移動するので、被撮像物Oはライン状光源131の方向(つまり一定の方向)からのみ照らされることになる。よって被撮像物Oの表面の凹凸によって陰影が生じ、その被撮像物Oからの正反射光は被撮像物の質感を表した光となる。この正反射光は、ミラー134によって反射され、ビームスプリッタ139を透過してハーフレートキャリッジ14の方向へと進行する。さらに、回動リフレクタ137の吸収面137tが被撮像物Oに向き合うような位置に移動するので、被撮像物Oからの拡散反射光は吸収面137tによって吸収される。このように、質感読取モードにおいて、回動リフレクタ137の姿勢は、ライン状光源131から発せられた光が被撮像物Oで拡散反射して吸収面137tの方向に向かい、且つ、被撮像物Oからの正反射光をミラー134によってハーフレートキャリッジ14へと導かせるような姿勢となる。
【0032】
なお、第1実施形態と同様に、回動リフレクタ137の姿勢や各部材の位置は、被撮像物Oの表面で拡散反射した光がミラー133及び回動リフレクタ137を介してラインセンサ16によって受光されるに至るまでの光路長と、被撮像物Oの表面で正反射した光がミラー134を介してラインセンサ16によって受光されるに至るまでの光路長とは等しい。このようにすることで、画像読取モードに応じて回動リフレクタ137の姿勢が変化させられた場合であっても、結像光学系の焦点位置が変わらないので、拡散反射光・正反射光を同一のラインセンサ16(信号生成手段)面で都度焦点位置を調整することなく受光することが可能となる。
【0033】
以上の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、色読取モードでは被撮像物の色を読み取ることが可能となり、質感読取モードでは被撮像物の質感を読み取ることが可能となる。そして、色読取モード及び質感読取モードを併用すれば被撮像物の色と質感を同時に読み取ることが可能となる。また、モータ136(駆動手段)によって回動リフレクタ137(光学部材)の姿勢を変化させることで、2種類の画像読取モードにおいて回動リフレクタを共用することができる。よって、例えば2種類の画像読取モードごとに専用の部品を実装するような場合と比較すると、構成が簡易であるため、部品点数を少なくすることが可能となる。
【0034】
なお、上記第2実施形態を、第1実施形態の変形例と同じ発想に基づき、次のように変形してもよい。
図8,9は第2実施形態の変形例に係るフルレートキャリッジ13cの構成を示した図である。図8は、色読取モードにおけるフルレートキャリッジ13cの構成を示しており、図9は、質感読取モードにおけるフルレートキャリッジ13cの構成を示している。フルレートキャリッジ13cは、ミラー134に代えて、2枚のミラー134c,134dを備えている。このように2枚のミラー134c、134dを備えることにより、被撮像物Oの表面で拡散反射した光がミラー133及びビームスプリッタ139を介してラインセンサ16によって受光されるに至るまでに経た反射の回数と、被撮像物Oの表面で正反射した光がミラー134a,134bを介してラインセンサ16によって受光されるに至るまでに経た反射の回数とが、共に偶数(2回)となる。このように色読取モードと質感読取モードとにおいて光の反射回数を偶数或いは奇数に一致させることにより、それぞれの反射光の像方向を一致させることができる。
【0035】
なお、上述した第1実施形態及び第2実施形態では、画像読取モードに応じて、回動リフレクタなる光学部材を軸を中心に回動させてその姿勢を変化させていた。このように、回動リフレクタの姿勢を変化させるだけであれば、その制御は簡易となるため、好ましいと言える。ただし、画像読取装置の内部スペースの状況に応じて、回動リフレクタの姿勢ではなく、その回動リフレクタの位置そのものを変化させるようにしてもよいし、姿勢と位置の両方を同時に変化させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像読取装置の装置構成を示した図である。
【図2】同実施形態に係るフルレートキャリッジの構成を示した図である。
【図3】同実施形態に係るフルレートキャリッジの構成を示した図である。
【図4】同実施形態の変形例に係るフルレートキャリッジの構成を示した図である。
【図5】同実施形態の変形例に係るフルレートキャリッジの構成を示した図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るフルレートキャリッジの構成を示した図である。
【図7】同実施形態に係るフルレートキャリッジの構成を示した図である。
【図8】同実施形態の変形例に係るフルレートキャリッジの構成を示した図である。
【図9】同実施形態の変形例に係るフルレートキャリッジの構成を示した図である。
【符号の説明】
【0037】
100…画像読取装置、11…プラテンガラス、12…プラテンカバー、13,13a,13b,13c…フルレートキャリッジ、14…ハーフレートキャリッジ、15…結像レンズ、16…ラインセンサ、17…操作部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被撮像物の方向へ光を照射する位置に設けられた光源と、
光を反射する反射面と、光を吸収する吸収面とを有する光学部材と、
前記光源によって光が照射された被撮像物からの反射光を受光し、その反射光に基づいて画像信号を生成して出力する信号生成手段と、
自装置における画像読取モードを、前記光源から発せられた光を少なくとも2つの方向から前記被撮像物に照射し、当該被撮像物からの拡散反射光に基づいて当該被撮像物の像を表す画像信号を生成する第1の画像読取モードと、前記光源から発せられた光を或る一定の方向から前記被撮像物に照射し、当該被撮像物からの正反射光に基づいて当該被撮像物の像を表す画像信号を生成する第2の画像読取モードとのいずれかに切り替える切替手段と、
前記第1の画像読取モードにおいて、前記被撮像物からの拡散反射光を前記信号生成手段へと導く第1の光学系部材と、
前記第2の画像読取モードにおいて、前記被撮像物からの正反射光を前記信号生成手段へと導く第2の光学系部材と、
前記光学部材の位置又は姿勢を変化させる駆動手段であって、前記第1の画像読取モードにおいては、前記光源から発せられた光を前記反射面にて前記被撮像物に向かう方向に反射させ、且つ、前記被撮像物からの拡散反射光を前記第1の光学系部材によって前記信号生成手段へと導かせるような位置又は姿勢に変化させる一方、前記第2の画像読取モードにおいては、前記光源から発せられた光が前記被撮像物で拡散反射して前記非反射面に向かい、且つ、前記被撮像物からの正反射光を前記第2の光学系部材によって前記信号生成手段へと導かせるような位置又は姿勢に変化させる駆動手段と
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記光学部材は前記反射面として第1の反射面と第2の反射面とを有しており、
前記移動手段は、前記第1の画像読取モードにおいて、前記光源から発せられた光を前記第1の反射面にて前記被撮像物に向かう方向に反射させるような位置であって、前記被撮像物からの拡散反射光を前記第1の光学系部材によって反射し、さらにその反射光を前記第2の反射面で反射して前記信号生成手段へと導かせるような位置に前記光学部材を移動させることを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記第1の画像読取モードにおいて、前記信号生成手段が前記被撮像物からの拡散反射光に基づいて生成した画像信号を用いて前記被撮像物の色を表す情報を生成し、前記第2の画像読取モードにおいて、前記信号生成手段が前記被撮像物からの正反射光に基づいて生成した画像信号を用いて、前記被撮像物の光沢を表す画像データを生成する画像処理手段を備えることを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記被撮像物の表面で拡散反射した光が前記第1の光学系部材を介して前記信号生成手段によって受光されるに至るまでの光路長と、前記被撮像物の表面で正反射した光が前記第2の光学系部材を介して前記信号生成手段によって受光されるに至るまでの光路長とが等しいことを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記被撮像物の表面で拡散反射した光が前記第1の光学系部材を介して前記信号生成手段によって受光されるまでに経た反射の回数と、前記被撮像物の表面で正反射した光が前記第2の光学系部材を介して前記信号生成手段によって受光されるまでに経た反射の回数とが、共に偶数あるいは奇数であることを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項6】
一方の面に入射する光の反射率が閾値以上で他方の面に入射する光の透過率が閾値以下の第2の光学部材であって、前記被撮像物の表面で拡散反射した光が前記第1の光学系部材を介して前記信号生成手段によって受光されるに至るまでの第1の光路と、前記被撮像物の表面で正反射した光が前記第2の光学系部材を介して前記信号生成手段によって受光されるに至るまでの第2の光路とが重なっている位置であって、前記第1の画像読取モードにおいて前記被撮像物からの拡散反射光を前記一方の面で反射して前記信号生成手段へと導かせ、且つ、前記第2の画像読取モードにおいて前記被撮像物からの正反射光を前記他方の面から入射させて前記信号生成手段へと導かせるような位置に設けられた第2の光学部材を備えることを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−116535(P2007−116535A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307415(P2005−307415)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】