説明

画像読取装置

【課題】 結像ミラーの一端が1点支持、他端が2点支持の構成にした場合においても、各結像ミラーの端部において結像性能が変化しても、端部の画像歪みを防止することができる画像読み取り装置を提供する。
【解決手段】 結像ミラーの一端を1点で支持し、他端を2点で支持する構成を備える画像読取装置において、複数枚の結像ミラーのうち少なくとも一つの結像ミラーの1点支持部と他の結像ミラーの2点支持部とを前記結像ミラーの主走査方向の中央部に関して同じ側になるように配置するとともに、一つの結像ミラーの支持部2点支持部と他の結像ミラーの1点支持部とを前記結像ミラーの主走査方向の中央部に関して同じ側になるように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の結像ミラーにより原稿の画像を読取手段に結像させる画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザービームプリンタ、ファクシミリ、複写機の画像形成装置に設けられる画像読取装置は、光源、ミラー、レンズ、ラインセンサにより原稿面を走査していた(例えば、特許文献1参照)。原稿面からの反射光は、レンズによってラインセンサに結像される。このようなレンズを用いた構成の代わりに、基準軸光線の入射方向と射出方向が異なり、かつ曲率を有するオフアキシャル反射面を有する結像ミラーを設けた画像読取装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この結像ミラーを複数枚設けることでより小さなスペースで原稿からの反射光を結像させることができるため、画像読取装置を小型化することができる。
【0003】
上記画像読取装置に用いられる結像ミラーは精度良く支持されないと読取画像に影響が出る。そのため、結像ミラーを走査枠体あるいは画像読取装置本体に対していかに高精度に支持するかが課題であった。この課題を解決しようとする技術として、反射鏡の一端を1点で、他端を2点で支持するものがある(例えば、特許文献3参照)。この方法によれば、反射鏡を支持する3点の高さ及び位置の精度を一定に保つことにより、過大な力を加えることなく、反射鏡を精度良く固定することができる。
【特許文献1】特開平3−113961号公報
【特許文献2】特開2004−126448号公報
【特許文献3】特開2005−164906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にオフアキシャル反射面を有する結像ミラーは、結像ミラー形状に成型した樹脂にメッキ処理したものを用いることが好ましい。これは樹脂が鉄などの金属材料に比べて安価で加工し易いためである。また、樹脂は金属材料よりも軽量であるため、走査速度の向上を図る上で結像ミラーへの樹脂の使用は欠かせない。
【0005】
しかしながら、樹脂からなる結像ミラーは強度が低いため、読取装置内の温度変化、湿度変化などにより若干変形することがあり、高温多湿のような過酷な環境下において画像の歪みを招く可能性がある。結像ミラーの変形により画像歪みを招く一例を次に示す。図9は4枚のミラーから結像ミラーユニットを形成したときの斜視図である(結像ミラーを保持する保持体や絞りは省略)。この結像ミラーユニットにおいて、4枚のミラーの材質に鉄を使用して結像ミラーユニットを形成した場合と、3枚のミラーの材質に鉄及び1枚の材質に樹脂を使用して結像ミラーユニットを形成した場合との画質を比較する実験を行った。この実験の結果、全て鉄製ミラーを使用した結像ミラーユニットに比べて、樹脂製ミラーを使用した結像ミラーユニットの画像が歪むというデータが得られた。
【0006】
上記画像の歪みは結像ミラーの1点支持側の画像端部に生じる。その原因としては次に示す理由が考えられる。装置の動作時に発生する熱で結像ミラーの温度が上昇した場合、1点支持部周囲の結像ミラーの部材は副走査方向において支持部を中心に両端部が撓み、1点支持部側のオフアキシャル反射面の副走査方向における曲率が大きくなる方向、つまり結像性能が低下するように変形する(図8参照、図8は結像ミラーの1点支持部側副走査方向断面図)。その結果、1点支持部側では曲率の変化により画像端部が歪む。一方、2点支持側では結像ミラー端部は2点で拘束されているため結像ミラーの曲率が変化するほどの変形は生じない。そのため、2点支持側の端部画像は1点支持側の端部画像よりも歪まない。
【0007】
従って、全ての結像ミラーの1点支持部を結像ミラーユニットの一方の側に配置すると、1点支持部側の画像歪みが累積されるために、1点支持側の端部画像の歪みが顕在化してしまうという問題が生じる。
【0008】
本発明は以上の問題点を鑑みて考案されたものであり、結像ミラーに使用する樹脂の変形による画像端部の歪みを最小限に抑える画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像読み取り装置は、原稿の画像を読み取る読取部と、原稿の画像を連続して反射させて前記読取部に結像させる複数のミラーと、前記複数のミラーそれぞれを前記ミラーの中央部に関して左右非対称に支持する支持部と、を有し、少なくとも2つのミラーの支持部の非対称性が互いに向かって左右逆の関係になるように前記複数のミラーの支持部を配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明提案の画像読取装置は、読取装置に結像させるために設置するミラーユニットを構成する複数のミラーそれぞれをミラー中央部に関して左右非対称に支持する構成とした。さらに、少なくとも2つのミラーの支持部の非対称性が互いに向かって左右逆の関係になるように、複数のミラーの支持部を配置する構成とした。この構成によって、温度変化、湿度変化によって結像ミラーが変形した場合でも、結像ミラーユニットの結像性能の変化を抑え、画像端部の画像歪みを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1から図5を用いて本発明を実施形態について説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本実施形態の画像読み取り装置の断面図である。101は原稿を載置する原稿台ガラス、102は原稿を照明する光源である。原稿台ガラス101は読取ユニット枠体116に支持されている。103、104、105は原稿にて拡散した光を後述する結像ミラーユニットに導く平面ミラー、106は平面ミラー103、104、105を保持する平面ミラー保持体である。107、108、109、110はオフアキシャル反射面が形成された結像ミラーである。結像ミラー107、108、109、110は、結像ミラー形状に成型した樹脂にメッキ処理が施されたものである。111は複数の結像ミラーを保持する保持体であり、この保持体111には絞り112が取り付けられ、光量の調節が可能になっている。結像ミラー保持体111に結像ミラー107、108、109、110、及び絞り112が取り付けられて、結像ミラーユニット115が形成される。113は受光した光を光電変換する読取部であるところのラインセンサ(例えばCCD(Charge Coupled Device))であり、結像ミラーユニット115を介して入射した光を光電変換する。114は光源102、平面ミラー103・104・105、結像ミラーユニット115、ラインセンサ113を保持する走査枠体である。走査枠体114は画像読取装置枠体116内に配置される。走査枠体114は駆動モーター117、駆動ベルト118の働きにより画像読取装置枠体116内で副走査方向に往復動作を行う。
【0013】
原稿台ガラス101上に載置された原稿Sを読み取る際には、光源102を点灯させて原稿を照明し、駆動モーター116及び駆動ベルト117により走査枠体114が原稿Sを走査する。光源102が原稿Sに照射した光は原稿S上で拡散し、その拡散光が平面ミラー103・104・105により結像ミラーユニット115に導かれる。結像ミラーユニット115に導かれた光は結像ミラー107、108、109、110で連続して反射される過程で、各結像ミラーにより結像された後、ラインセンサ113に入射する。ラインセンサが受光した光は光電変換され、画像処理部に送られる。
【0014】
図2は本実施形態における画像読取装置に用いられる結像ミラーの側面図である。201、202、203は、結像ミラーそれぞれの保持体111に対する位置決めを行う支持部であり、各結像ミラーに設けられている。これらの支持部は反射面と略同一方向を向く、反射面とは異なる面に設けられ、支持部201は結像ミラーの一端を支持し、支持部202、及び支持部203は支持部201が支持する端部とは異なる側の端部を支持する。つまり、各結像ミラーは主走査方向のミラー中央部に関して左右非対称に支持される。これらの支持部201、202、203は半球状に加工されており、結像ミラー107、108、109、110は一体的に設けられている。これらの支持部は保持体111と点接触し接点の周囲に接着剤が塗布されて、各結像ミラーは上記支持部201、202,203を介して結像ミラー保持体111上に固定される。このような構成で各結像ミラーを支持することによって、保持体111に対する各結像ミラーの反射面方向の位置が一義的に決定する。なお、支持部は例えばごく小さい面積を有する平面からなる突起など、各結像ミラーを精度よく支持できる形状であれば半球状に限られるものではない。また、図10に示すように支持部201、202、203は保持体111と一体に設けるようにしても良い。また、結像ミラー及び保持体とは別部材として構成されていても良い。別部材として設けている場合、支持位置を任意に設定することができる。また、各支持部は反射面と略同一方向を向く面に設けられているが、反射面と反対側の面に設ける構成としても良い。
【0015】
続いて、結像ミラーについてさらに詳しく説明する。図3は結像ミラー107、108、109、110の斜視図である。前述したように、支持部201、202、203は各結像ミラーと一体的に設けられている。図3中斜線部はオフアキシャル反射面である。オフアキシャル反射面とは、前記複数の結像ミラーの反射面は基準軸光線の入射方向と射出方向とが異なり、かつ反射面が曲面であるオフアキシャル反射面である。言い換えると、物体面から像面にいたる基準波長の基準光線の基準軸が曲面と交わる点において面法線が基準軸と一致しない、平面ではない反射曲面を指す。本実施形態の結像ミラーは入射する光をオフアキシャル反射面で反射して光路を形成する。この結像ミラーを複数用いて連続的に光を反射させることによってラインセンサに入射可能な幅まで光を結像させる。
【0016】
図4は結像ミラーユニット115の副走査方向断面図である。図中一点鎖線は、結像ミラーに入射する光の基準軸であり、結像ミラーユニット115に入射した光は次のような経路を辿る。図示しない平面ミラー106を通過した光は、まず結像ミラー107に入射する。結像ミラー107により反射された光は、結像ミラー108、結像ミラー109、結像ミラー110を順次通過し、図示しないラインセンサに入射する。各結像ミラーを保持体111の所定の場所に設置することによって、図4に示されるような光路が形成されるようになっている。
【0017】
続いて、図5を用いて各結像ミラーの支持部の配置について説明する。図5は、結像ミラーユニットから保持体111、及び絞り112を除いた図である。前述したように、各結像ミラーは図5の矢印方向に光路が形成されるように配置される。ここで、複数のミラーのうち少なくとも2つのミラーの支持部の非対称性が互いに向かって左右逆の関係になるように、複数のミラーの支持部を配置する。本実施形態では、結像ミラー107の支持部の非対称性と結像ミラー108、109、110の支持部の非対称性とが互いに向かって左右逆になるように、結像ミラー107、108、109、110が保持体111上に支持されている。つまり、結像ミラー107の1点支持部を結像ミラー108、109、110の2点支持部と結像ミラーの主走査方向の中央部に関して同じ側になるように配置する。また、結像ミラー107の2点支持部を結像ミラー108、109、110の1点支持部と結像ミラーの主走査方向の中央部に関して同じ側になるように配置する。上記の構成では1点支持部側の画像歪みが累積されることがないために、温度変化又は湿度変化により各結像ミラーの1点支持部周辺部が変形しても、1点支持側の端部画像の歪みを抑えることができる。
【0018】
本実施形態では結像ミラーユニット115を形成する結像ミラーの枚数が4枚である構成について説明したが、結像ミラーの枚数は4枚に限られるものではない。2枚や3枚、5枚といった複数の結像ミラーを組み合わせた結像ミラーユニットにおいても適用できる。2枚の場合、一方の結像ミラーの支持部の非対称性と他方の結像ミラーの支持部の非対称性とが互いに向かって左右逆の関係になるように、2つのミラーの支持部を配置する構成とする。つまり、一方の結像ミラーの1点支持部は、他方の結像ミラーの2点支持部と結像ミラーの主走査方向の中央部に関して同じ側になるように配置される。3枚以上の場合、3つのミラーのうち少なくとも2つのミラーの支持部の非対称性が互いに向かって左右逆の関係になるように、複数のミラーの支持部を配置する構成とする。
【0019】
また、本実施例では結像ミラー107を支持する支持部の非対称性と結像ミラー108、109、110を支持する支持部の非対称性とが左右逆の関係になるように、各結像ミラーを支持する支持部を配置する構成を説明した。しかしながら、支持部の非対称性が他の結像ミラーの非対称性と互いに向かって左右逆の関係になるようになるように配置する結像ミラーは1枚に限られるものではない。つまり、図6、図7に示すように結像ミラー107及び109を支持する支持部の非対称性が結像ミラー108及び110を支持する支持部の非対称性と互いに向かって逆の関係になるような構成にしても良い。
【0020】
なお、上述した実施形態では、走査枠体114を副走査方向に移動させることにより原稿を走査する構成であったが、本発明は、走査枠体114を副走査方向に移動させずに原稿を走査枠体114に沿って搬送し原稿を読み取る構成の読取装置にも適用可能である。
【0021】
また、本実施例では複数の結像ミラーから結像ミラーユニットを形成する構成について説明したが、ミラーは結像ミラーに限られるものではない。つまり、構成するミラーが全て平面ミラーで構成されるミラーユニットとしてもよい。また、曲面を有する結像ミラーと平面ミラーとで構成される結像ミラーユニットとしても良い。本実施例と同様の構成とすることにより画像の歪みを最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るミラーを備える画像読み取り装置の断面図である。
【図2】本発明に係る結像ミラーの断面図である。
【図3】本発明に係る第1実施形態における結像ミラーの斜視図である。
【図4】本発明に係る第1実施形態における結像ミラーユニット115の副走査方向断面図である。
【図5】本発明に係る第1実施形態における結像ミラーユニット115の斜視図である。
【図6】本発明に係る第2実施形態における結像ミラーユニット部115の副走査方向断面図である。
【図7】本発明に係る第2実施形態における結像ミラーユニット115の斜視図である。
【図8】本発明に係る1点支持部側副走査方向の結像ミラー断面図である。
【図9】各結像ミラーの1点支持部を主走査方向の片側の端部に揃えた結像ミラーユニット115の斜視図である。
【図10】各支持部を保持体111と一体的に設けた結像ミラーユニットの断面図である。
【符号の説明】
【0023】
102 光源
103、104、105 平面ミラー
107、108、109、110 結像ミラー
111 保持体
112 絞り
113 CCD
115 結像ミラーユニット
201,202,203 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の画像を読み取る読取部と、
原稿の画像を連続して反射させて前記読取部に結像させる複数のミラーと、
前記複数のミラーそれぞれを前記ミラーの中央部に関して左右非対称に支持する支持部と、を有し、
少なくとも2つのミラーの支持部の非対称性が互いに向かって左右逆の関係になるように前記複数のミラーの支持部を配置することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記複数のミラーの反射面は基準軸光線の入射方向と射出方向とが異なり、かつ反射面が曲面であるオフアキシャル反射面であることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記ミラーの中央部に関して一方の側の1点を支持する1点支持部と、前記ミラーの中央部に関して他方の側の2点を支持する2点支持部とで構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記ミラーは樹脂製であることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記画像読取装置は、前記ミラーを保持する保持体を有する画像読取装置であって、
前記ミラーは前記支持部を介して前記保持体に保持されることを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれか1項に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−10891(P2009−10891A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172750(P2007−172750)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】