説明

画像読取装置

【課題】スペクトラム拡散クロックの周波数による取り込みタイミングの変動を抑制できる画像読取装置において、上記取り込みタイミングを大幅に遅延する必要がある場合でもその遅延量を正確に制御可能とすること。
【解決手段】遅延回路12は、取り込みタイミングを示すAD変換クロックADCLKを入力され、そのAD変換クロックADCLKを4つの経路に分岐させている。そして、各経路の信号を0〜6個の遅延素子17を介してセレクタ回路11に入力する。遅延回路13は、フリップフロップ14によって拡散クロックSSCG_CLKの1周期分遅延されたAD変換クロックADCLKを入力され、遅延回路12と同様に遅延補正を行う。異なる遅延量でセレクタ回路11に入力されたAD変換クロックADCLKのうち、拡散クロックSSCG_CLKの周波数レベルに応じたものがセレクタ回路11から出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿画像を読み取ってその原稿画像に対応したアナログ信号を出力する光電変換素子と、その光電変換素子が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、を備えた画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿画像を読み取ってその原稿画像に対応したアナログ信号を出力する光電変換素子と、該光電変換素子が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、を備えた画像読取装置が考えられている。このように構成された画像読取装置では、光電変換素子が読み取った原稿画像に対応して出力するアナログ信号を、A/D変換部を介してデジタル信号に変換することにより、各種処理が実行可能となる。
【0003】
また、この種の画像読取装置では、光電変換素子がアナログ信号の出力を開始すると、そのアナログ信号はある程度の遅延時間を持って変化した後、安定期間に入る。このため、上記A/D変換部によりデジタル信号に変換されるアナログ信号の取り込みタイミングがずれると取り込まれるアナログ信号の値が変動する可能性がある。
【0004】
一方、この種の画像読取装置を含めた各種電子機器では、EMI(電磁波干渉)対策の一環として、周波数が変動するスペクトラム拡散クロックを使用することも提案されている。ところが、このスペクトラム拡散クロックに基づいて上記取り込みタイミングを設定すると、そのときのスペクトラム拡散クロックの周波数によって上記取り込みタイミングが前後し、取り込まれるアナログ信号の値が変動する可能性がある。
【0005】
そこで、スペクトラム拡散クロックの周波数レベルに応じた個数の遅延素子によって上記取り込みタイミングが遅延されるようにセレクタによって回路を切り替え、その遅延補正後の取り込みタイミングで上記アナログ信号を取り込むことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−87805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、遅延素子による取り込みタイミングの遅延量は温度等の影響を受け易く、遅延素子を多数用いて上記取り込みタイミングを大幅に遅延させると、その遅延量を正確に制御できない可能性がある。そこで、本発明は、スペクトラム拡散クロックの周波数による上記取り込みタイミングの変動を抑制できる画像読取装置において、上記取り込みタイミングを大幅に遅延する必要がある場合でもその遅延量を正確に制御可能とすることを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達するためになされた本発明の画像読取装置は、原稿画像を読み取ってその原稿画像に対応したアナログ信号を出力する光電変換素子と、該光電変換素子が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、スペクトラム拡散クロックを生成するスペクトラム拡散クロック生成部と、該スペクトラム拡散クロック生成部が生成したスペクトラム拡散クロックを基準として、上記A/D変換部によりデジタル信号に変換されるアナログ信号の取り込みタイミングを設定する取り込みタイミング設定部と、該取り込みタイミング設定部によって設定された上記取り込みタイミングを、上記スペクトラム拡散クロックの1または複数周期分遅延させるフリップフロップ回路と、該フリップフロップ回路によって上記いずれかの周期分遅延された上記取り込みタイミングと、上記フリップフロップ回路による遅延がなされていない上記取り込みタイミングとを、それぞれ複数の段階に遅延させる遅延素子による遅延回路と、該遅延回路により上記いずれかの段階に遅延された上記取り込みタイミングを、上記アナログ信号出力中の上記スペクトラム拡散クロックの周波数に応じて選択し、補正後取り込みタイミングとして出力するセレクタ部と、を備え、上記セレクタ部から出力された上記補正後取り込みタイミングで取り込まれた上記アナログ信号を、上記A/D変換部がデジタル信号に変換することを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明では、取り込みタイミング設定部は、スペクトラム拡散クロック生成部が生成したスペクトラム拡散クロックを基準としてアナログ信号の取り込みタイミングを設定するが、その取り込みタイミングは次のように補正される。すなわち、フリップフロップ回路は、上記取り込みタイミングを、上記スペクトラム拡散クロックの1または複数周期分遅延させる。更に、遅延回路は、フリップフロップ回路によって上記いずれかの周期分遅延された上記取り込みタイミングと、上記フリップフロップ回路による遅延がなされていない上記取り込みタイミングとを、それぞれ複数の段階に遅延させる。そして、上記アナログ信号出力中の上記スペクトラム拡散クロックの周波数に応じて、上記遅延回路により上記いずれかの段階に遅延された上記取り込みタイミングがセレクタ部により選択され、補正後取り込みタイミングとして出力される。
【0010】
すると、A/D変換部は、上記セレクタ部から出力された補正後取り込みタイミングで取り込まれた光電変換素子のアナログ信号を、デジタル信号に変換する。このようにして得られたデジタル信号は、各種処理に利用することができる。
【0011】
このように、本発明の画像読取装置では、スペクトラム拡散クロックの周波数に応じて取り込みタイミングが遅延補正されるので、スペクトラム拡散クロックの周波数による取り込みタイミングの変動を抑制することができる。しかも、本発明では、スペクトラム拡散クロックの1または複数周期分に相当する遅延は温度等の影響を受け難いフリップフロップ回路によって行っているので、遅延素子による遅延量は少なくすることができる。従って、上記取り込みタイミングを大幅に遅延する必要がある場合でも、その遅延量を正確に制御することができる。
【0012】
なお、上記スペクトラム拡散クロックの周波数を複数のレベルに分類するレベル分け部を、更に備え、上記遅延回路は、予め設定された複数の異なる補正量で上記取り込みタイミングを遅延補正する複数の遅延素子を備え、上記セレクタ部は、上記各遅延素子によって個々に遅延補正された上記取り込みタイミングがそれぞれ入力され、その複数の入力を、上記レベル分け部による分類に応じて選択して上記補正後取り込みタイミングとして出力してもよい。
【0013】
この場合、各遅延素子によって複数の異なる補正量で遅延補正された上記取り込みタイミングのうち、スペクトラム拡散クロックの周波数のレベルに応じたものがセレクタ部によって選択され、上記補正後取り込みタイミングとして出力される。従って、この場合、遅延回路による最小の遅延量(補正量)を小さく設定することができ正確に補正が行える。
【0014】
そして、その場合、上記フリップフロップ回路によって遅延される上記取り込みタイミングを、上記レベル分け部による分類に応じて、上記スペクトラム拡散クロックの1周期の範囲内で遅延補正する1クロック内遅延補正部を、更に備え、上記遅延回路は、上記フリップフロップ回路による遅延と上記1クロック内遅延補正部による遅延補正との双方がなされた上記取り込みタイミングと、上記フリップフロップ回路による遅延も上記1クロック内遅延補正部による遅延補正もなされていない上記取り込みタイミングとを、それぞれ上記複数の段階に遅延させてもよい。
【0015】
この場合、1クロック内遅延補正部は、上記フリップフロップ回路によって遅延される上記取り込みタイミングを、スペクトラム拡散クロックの周波数のレベルに応じて、上記スペクトラム拡散クロックの1周期の範囲内で遅延補正する。このため、上記フリップフロップ回路による遅延と上記1クロック内遅延補正部による遅延補正との双方がなされた上記取り込みタイミングからは、フリップフロップ回路の動作に対してスペクトラム拡散クロックの周波数変動が与える影響を排除することができる。
【0016】
そこで、上記遅延回路は、上記フリップフロップ回路と1クロック内遅延補正部との双方で補正された上記取り込みタイミングと、それらの補正がいずれもなされていない上記取り込みタイミングとを、それぞれ上記複数の段階に遅延させる。従って、この場合、上記取り込みタイミングの遅延量を一層正確に制御することができる。
【0017】
また、本発明において、上記フリップフロップ回路は、上記取り込みタイミングを上記スペクトラム拡散クロックの1周期毎に段階的に遅延させ、上記遅延回路は、上記フリップフロップ回路によって上記各段階に遅延された上記各取り込みタイミングと、上記フリップフロップ回路による遅延がなされていない上記取り込みタイミングとを、それぞれ複数の段階に遅延させてもよい。
【0018】
この場合、上記フリップフロップ回路は、上記取り込みタイミングを上記スペクトラム拡散クロックの1周期毎に段階的に遅延させる。そして、上記遅延回路は、上記フリップフロップ回路によって上記各段階に遅延された上記各取り込みタイミングと、上記フリップフロップ回路による遅延がなされていない上記取り込みタイミングとを、それぞれ複数の段階に遅延させる。このため、上記取り込みタイミングをスペクトラム拡散クロックの2周期分以上遅延させる制御も、簡単な回路によって正確に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明が適用された画像読取装置の回路構成を表すブロック図である。
【図2】その画像読取装置における拡散クロックの周波数変化を表す説明図である。
【図3】その周波数変化によって生じる課題を表すタイムチャートである。
【図4】上記画像読取装置のタイミング調整回路の構成を表すブロック図である。
【図5】そのタイミング調整回路の変形例の構成を表すブロック図である。
【図6】そのタイミング調整回路の更なる変形例の構成を表すブロック図である。
【図7】そのタイミング調整回路の動作を表すタイムチャートである。
【図8】そのタイミング調整回路の更なる変形例の構成を表すブロック図である。
【図9】上記画像読取装置の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[画像読取装置の外観]
次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図9は、本発明が適用された画像読取装置910の断面図である。図9に示すように、この画像読取装置910は、フラットベッド機構(FB)及び自動給紙機構(ADF:Automatic Document Feed)の双方を備えたタイプのものであり、この画像読取装置910は、フラットベッド部910aに対してカバー部910bを開閉可能に取り付けてなるクラムシェル構造となっている。
【0021】
そして、この画像読取装置910において、フラットベッド部910aには、密着型イメージセンサ(読取ヘッド)912や第1プラテンガラス914等が設けられており、カバー部910bには、原稿供給トレイ916、原稿搬送装置918、原稿搬出トレイ920等が設けられている。
【0022】
イメージセンサ912は、光電変換素子の一例としてのCIS(Contact Image Sensor)1、セルフォックレンズ924及び光源926を備えており、読取位置に存在する原稿に対して光源926から光を照射し、原稿からの反射光をセルフォックレンズ924によってCIS1に結像することで画像を読み取るように構成されている。
【0023】
また、イメージセンサ912は、図示しない駆動機構により図9における左右方向に駆動されるようになっており、実際に原稿を読み取る際には、CIS1が読取位置の真下となる位置へ移動する。
【0024】
[画像読取装置の回路構成]
次に、図1は、画像読取装置910のCIS1に係る回路構成を表すブロック図である。なお、本実施の形態の画像読取装置910は、1チャンネルのCIS1を使用した画像読取装置である。図1に示すように、本実施の形態の画像読取装置910は、図示省略したクロックから一定周波数で発生された基準クロックの一例としての基本クロックCLOCKを周波数変調させてスペクトラム拡散クロック(以下、単に拡散クロックという)SSCG_CLKを生成するスペクトラム拡散クロック生成部の一例としてのSSCG(スペクトラム拡散クロックジェネレータ)2を備えている。SSCG2が出力する拡散クロックSSCG_CLKは、取り込みタイミング設定部の一例としてのクロック生成回路3に入力され、そのクロック生成回路3は、上記拡散クロックSSCG_CLKを基準にして次のような信号を出力する。
【0025】
すなわち、このクロック生成回路3は、拡散クロックSSCG_CLKを元に1画素周期をカウントする画素周期カウンタと、その画素周期をカウントするライン周期カウンタとを備えている。そして、クロック生成回路3は、1画素周期内で変化する画素転送クロックDEVCLKや、ライン周期信号SHを生成してCIS1へ出力する。ここで、画素転送クロックDEVCLKは、画素周期の1/2でHとLとが入れ替わる信号である。また、クロック生成回路3は、AD変換クロックADCLKも生成して後述のタイミング調整回路10へ出力する。AD変換クロックADCLKは、CIS1から出力される読取データ(アナログ信号)をデジタル信号に変換するタイミング(取り込みタイミングの一例)を与える信号で、画素転送クロックDEVCLKが立ち上がって画素周期が開始された後、所定個の拡散クロックSSCG_CLKがカウントされたときに出力される。
【0026】
また、SSCG2が出力する拡散クロックSSCG_CLKは、基本クロックCLOCKと共に周波数検出回路4(レベル分け部の一例)に入力されている。拡散クロックSSCG_CLKの周波数は、図2に示すように周期的に変化する。そこで、周波数検出回路4では、拡散クロックSSCG_CLKと基本クロックCLOCKとを比較することにより、その時点で発生されている拡散クロックSSCG_CLKを周波数が低い側からレベル1〜レベル8の8段階に分類し、その分類に応じて0〜7の出力値をSSCG周波数レベル信号として出力する。
【0027】
一方、CIS1が出力する読取データは、A/D変換部の一例としてのAD変換器7にてデジタルデータに変換された後、デジタル画像処理回路8に入力される。デジタル画像処理回路8は、SSCG2が出力する拡散クロックSSCG_CLKを用いて、シェーディング補正,γ補正等の補正処理や、解像度変換処理、フィルタ処理、色変換処理、2値化処理などの各種画像処理を実行する。
【0028】
ここで、クロック生成回路3からAD変換クロックADCLKが出力されたタイミングでAD変換器7によるAD変換を実行すると、次のような課題が発生する。すなわち、図3のタイムチャートに2つ並べて示したように、拡散クロックSSCG_CLKの間隔は随時変化している。このため、画素転送クロックDEVCLKの立ち上がりでCIS1が読取データの出力を開始し、それから20クロック目の拡散クロックSSCGの立ち上がりでAD変換クロックADCLKが立ち上がってAD変換が実行されるとすると、図3に示すように拡散クロックSSCGの周波数によってAD変換タイミングがずれる。このAD変換タイミングが、読取データのアナログ信号に傾斜があるタイミングとなっていると、AD変換タイミングが上記のようにずれることによって得られるデジタルデータの値も変動する。
【0029】
[タイミング調整回路の構成及び効果]
そこで、本実施の形態では、図1に示すように、AD変換クロックADCLKをタイミング調整回路10にて遅延補正した補正後AD変換クロックnew_ADCLKを、AD変換クロックADCLKの代わりにAD変換器7に入力することにより、AD変換タイミングのずれを次のように抑制している。
【0030】
図4は、タイミング調整回路10の構成を詳細に表すブロック図である。図4に示すように、タイミング調整回路10は、セレクタ回路11(セレクタ部の一例)と、互いに同様に構成された2つの遅延回路12,13と、D型のフリップフロップ回路(以下単にフリップフロップという)14と、セレクト信号保持回路15とを備えている。
【0031】
遅延回路12は、AD変換クロックADCLKを入力され、そのAD変換クロックADCLKを4つの経路に分岐させている。そして、1つの経路はそのままセレクタ回路11の0番ポートに接続され、もう1つの経路は2つの遅延素子17を介してセレクタ回路11の1番ポートに接続されている。上記分岐した更に1つの経路は4つの遅延素子17を介してセレクタ回路11の2番ポートに接続され、残る1つの経路は6つの遅延素子17を介してセレクタ回路11の3番ポートに接続されている。
【0032】
フリップフロップ14は、クロック端子に拡散クロックSSCG_CLKを入力されることにより、AD変換クロックADCLKを拡散クロックSSCG_CLKの1周期分遅延させて遅延回路13に入力する。
【0033】
遅延回路13は、上記1周期分遅延されたAD変換クロックADCLKを入力され、そのAD変換クロックADCLKを4つの経路に分岐させている。そして、1つの経路はそのままセレクタ回路11の4番ポートに接続され、もう1つの経路は2つの遅延素子18を介してセレクタ回路11の5番ポートに接続されている。上記分岐した更に1つの経路は4つの遅延素子18を介してセレクタ回路11の6番ポートに接続され、残る1つの経路は6つの遅延素子18を介してセレクタ回路11の7番ポートに接続されている。
【0034】
なお、遅延素子17,18は、いずれも1個経由する毎に予め設定された同様の補正量だけAD変換クロックADCLKを遅延させるものである。その補正量は、遅延素子17,18の素子遅延とそれをつなぐ配線遅延とから決定される量で決まるのもである。
【0035】
また、セレクタ回路11にセレクト信号を継続的に入力するセレクト信号保持回路15には、前述のSSCG周波数レベル信号,画素転送クロックDEVCLK,拡散クロックSSCG_CLKが入力されている。セレクト信号保持回路15は、拡散クロックSSCG_CLKに基づいて動作し、画素転送クロックDEVCLKの立ち上がりタイミングで出力されているSSCG周波数レベル信号の値(図2に示す出力値)をセレクト信号の値とする。すると、セレクタ回路11は、セレクト信号の値に応じたポートに入力されたAD変換クロックADCLKを、補正後AD変換クロックnew_ADCLK(補正後取り込みタイミングの一例)としてAD変換器7(図1参照)に入力する。
【0036】
このため、拡散クロックSSCG_CLKの周波数が高いほど、すなわちSSCG周波数レベル信号の値が大きいほど、AD変換クロックADCLKをより多く遅延補正した補正後AD変換クロックnew_ADCLKがAD変換器7に入力される。具体的には、拡散クロックSSCG_CLKの周波数が最も低いレベル1(図2参照)の場合は、セレクト信号の値が0となる。セレクタ回路11の0番ポートに入力されているのは、全く遅延がなされていないAD変換クロックADCLKであり、そのAD変換クロックADCLKがそのまま補正後AD変換クロックnew_ADCLKとしてセレクタ回路11から出力される。次に周波数の低いレベル2の場合は、セレクト信号の値が1となり、2個の遅延素子17によって遅延されたAD変換クロックADCLKが補正後AD変換クロックnew_ADCLKとして出力される。
【0037】
なお、遅延素子17または18の8個分の補正量(遅延量)が、拡散クロックSSCG_CLKの平均的な1周期分の時間に相当する。そこで、画素転送クロックDEVCLKの立ち上がりにおける周波数レベルが5でセレクト信号の値が4となると、フリップフロップ14によって拡散クロックSSCG_CLKの1周期分遅延されたAD変換クロックADCLKが補正後AD変換クロックnew_ADCLKとしてセレクタ回路11から出力される。
【0038】
更に周波数の高いレベル6の場合は、セレクト信号の値が5となり、フリップフロップ14によって上記1周期分遅延された上に2個の遅延素子18によって遅延されたAD変換クロックADCLKが補正後AD変換クロックnew_ADCLKとして出力される。そして、最も周波数が高いレベル8の場合は、セレクト信号の値が7となり、フリップフロップ14によって上記1周期分遅延された上に6個の遅延素子18によって遅延されたAD変換クロックADCLKが補正後AD変換クロックnew_ADCLKとして出力される。
【0039】
このように、本実施の形態では、AD変換クロックADCLKを拡散クロックSSCG_CLKの周波数レベルに応じて遅延補正しているので、拡散クロックSSCG_CLKの周波数の変動によってAD変換タイミングがずれるのを抑制することができる。このため、AD変換によって得られるデジタルデータの値が変動するのを良好に抑制することができる。
【0040】
しかも、拡散クロックSSCG_CLKの1周期分に相当する遅延は温度等の影響を受け難いフリップフロップ14によって行っているので、遅延素子17,18による遅延量は少なくすることができる。すなわち、遅延素子17,18を10個,20個と多数直列接続すると温度の影響が受け易くなるが、本実施の形態ではフリップフロップ14を利用したことにより、そのような課題を解決することができる。従って、上記AD変換タイミングを大幅に遅延する必要がある場合でも、その遅延量を正確に制御することができる。
【0041】
また、本実施の形態では、フリップフロップ14と遅延素子17,18とによって複数の異なる補正量で遅延補正されたAD変換クロックADCLKが個々にセレクタ回路11に入力される。そして、そのうち、上記周波数レベルに応じたものがセレクタ回路11によって選択され、上記補正後AD変換クロックnew_ADCLKとして出力される。従って、遅延素子17,18による最小の遅延量(補正量)を小さく設定することができ、正確に補正が行える。
【0042】
[本発明の他の実施の形態]
なお、本発明は上記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、セレクト信号保持回路15は、少なくともAD変換クロックADCLKの変化するタイミングでセレクト信号が変化しないようにそのセレクト信号を保持するものであればよい。従って、セレクト信号の保持は、必ずしも画素転送クロックDEVCLKに同期する必要はない。
【0043】
また、セレクタ回路に入力される遅延補正されたAD変換クロックADCLKの種類(遅延量の種類)は、拡散クロックSSCG_CLKのレベル数以上あってもよい。図5に示すタイミング調整回路110は、前述の遅延回路12,13の代わりに、次のような遅延回路112,113を備えている。遅延回路112は、AD変換クロックADCLKを入力され、そのAD変換クロックADCLKを8つの経路に分岐させている。そして、1つの経路はそのままセレクタ回路111の0番ポートに接続され、他の7つの経路は、それぞれ1個,2個,…,7個の遅延素子17を介してセレクタ回路111の2〜7番ポートに接続されている。
【0044】
遅延回路113は、フリップフロップ14によって拡散クロックSSCG_CLKの1周期分遅延されたAD変換クロックADCLKを入力され、そのAD変換クロックADCLKを8つの経路に分岐させている。そして、1つの経路はそのままセレクタ回路111の8番ポートに接続され、他の7つの経路は、それぞれ1個,2個,…,7個の遅延素子17を介してセレクタ回路111の9〜15番ポートに接続されている。
【0045】
また、タイミング調整回路110は、セレクト信号保持回路15が出力する3bitのセレクト信号をセレクタ回路111に対応した4bitのセレクト信号に変換するためのテーブル変換部119を備えている。このテーブル変換部119は、CPU120から出力されるテーブル書き換え命令によって書き換え可能なテーブルを有し、そのテーブルに従って上記3bitのセレクト信号を4bitのセレクト信号に変換する回路である。
【0046】
このため、例えば、AD変換タイミングのずれ(図3参照)が拡散クロックSSCG_CLKの1周期分に満たないような系では、セレクト信号保持回路15が出力する0〜7のセレクト信号をそのままセレクタ回路111の0〜7番ポートに対応付けてもよい。このように上記テーブルを設定した場合、AD変換タイミングのずれを、拡散クロックSSCG_CLKの1周期に満たない範囲で詳細に調整することができる。また、セレクト信号保持回路15が出力する0〜7のセレクト信号を、上記テーブルの書き換えによりセレクタ回路111の偶数番ポートに対応付ければ、図4に示したタイミング調整回路10と同様の作用・効果が生じる。
【0047】
また、前述のように、拡散クロックSSCG_CLKの周波数は変動しているので、フリップフロップ14によってなされる拡散クロックSSCG_CLKの1周期分の遅延量も同様に変動する。そこで、図6(A)に示すタイミング調整回路210のように、フリップフロップ14と遅延回路113との間に、1クロック内タイミング調整回路230(1クロック内遅延補正部の一例)を設けてもよい。
【0048】
図6(B)は、1クロック内タイミング調整回路230の構成を詳細に表すブロック図である。図6(B)に示すように、1クロック内タイミング調整回路230も、遅延回路112,113と同様に構成されている。すなわち、1クロック内タイミング調整回路230は、入力信号を8つの経路に分岐させ、1つの経路はそのままセレクタ回路231へ、他の経路は1個〜7個の遅延素子232を介してセレクタ回路231へ、それぞれ接続されている。但し、個々の遅延素子232による補正量(遅延量)は、遅延素子17,18による補正量(遅延量)よりも小さく設定されている。また、セレクタ回路231は、セレクト信号保持回路15から入力されるセレクト信号に応じたポートの入力を出力信号として出力する。
【0049】
このため、1クロック内タイミング調整回路230では、拡散クロックSSCG_CLKの周波数が高いほど、すなわちSSCG周波数レベル信号の値が大きいほど、フリップフロップ14からの入力信号をより多く上記1周期の範囲内で遅延補正した出力信号が遅延回路13に入力される。
【0050】
ここで、タイミング調整回路210に入力されたAD変換クロックADCLKをADCLK_INとし、遅延回路112の遅延素子17によって遅延されたADCLK_INを遅延素子17の個数に応じてADCLK_IN+遅延1,ADCLK_IN+遅延2,…とする。すると、図7に示すように、ADCLK_IN+遅延1,ADCLK_IN+遅延2,…は一定の補正量ずつ遅くなる。
【0051】
ところが、フリップフロップ14によって上記1周期分遅延されたADCLK_1CKDLYは、図7に示すように拡散クロックSSCG_CLKの周波数に応じて変動してしまう。そこで、本実施の形態では、拡散クロックSSCG_CLKの最小周波数に対応するADCLK_1CKDLY(以下、ADCLK_1CKDLY_FIXという)がADCLK_IN+遅延8に相当する補正量(遅延量)となるように遅延素子17,18の補正量を調整している。そして、拡散クロックSSCG_CLKの周波数に応じて変動するADCLK_1CKDLYを、1クロック内タイミング調整回路230によって、ADCLK_1CKDLY_FIXに遅延補正しているのである。従って、本実施の形態では、AD変換タイミングの遅延補正を一層正確に行うことができる。
【0052】
また、フリップフロップ14は、複数直列に接続することで、拡散クロックSSCG_CLKの2周期分,3周期分等の遅延補正を行えるように構成してもよい。図8に示すタイミング調整回路310では、クロック端子に拡散クロックSSCG_CLKを入力されたフリップフロップ14を3個直列に接続している。フリップフロップ14を1個経由した経路からはAD変換クロックADCLKを上記1周期分遅延したADCLK_1CKDLYが出力される。フリップフロップ14を2個経由した経路からは、AD変換クロックADCLKを上記2周期分遅延したADCLK_2CKDLYが出力される。フリップフロップ14を3個経由した経路からは、AD変換クロックADCLKを上記3周期分遅延したADCLK_3CKDLYが出力される。
【0053】
そして、ADCLK_1CKDLYは、タイミング調整回路210と同様に1個の1クロック内タイミング調整回路230経由することで、ADCLK_1CKDLY_FIXに遅延補正されてセレクタ回路311に入力される。同様に、ADCLK_2CKDLYは、直列に接続された2個の1クロック内タイミング調整回路230経由することで、ADCLK_2CKDLY_FIXに遅延補正されてセレクタ回路311に入力される。また、ADCLK_3CKDLYは、直列に接続された3個の1クロック内タイミング調整回路230経由することで、ADCLK_3CKDLY_FIXに遅延補正されてセレクタ回路311に入力される。
【0054】
これによって、図7の下4行に示すように、ADCLK_2CKDLY,ADCLK_3CKDLYも、拡散クロックSSCG_CLKの最小周波数に対応するADCLK_2CKDLY_FIX,ADCLK_3CKDLY_FIXに遅延補正されるのである。
【0055】
図8に戻って、このように、1クロック内タイミング調整回路230によって遅延補正されたADCLK_1CKDLY_FIX,ADCLK_2CKDLY_FIX,ADCLK_3CKDLY_FIXは、何ら補正されていないAD変換クロックADCLKと共にセレクタ回路311に入力される。セレクタ回路311は、セレクト信号保持回路15とテーブル変換部319とを経由して入力されるセレクト信号に応じてADCLK_1CKDLY_FIX,ADCLK_2CKDLY_FIX,ADCLK_3CKDLY_FIXのいずれかを選択し、タイミング調整回路340(遅延回路の一例)に入力する。
【0056】
タイミング調整回路340は、遅延素子232による補正量(遅延量)が遅延素子17,18と同様である点を除いて1クロック内タイミング調整回路230と同様に構成されている。そして、このタイミング調整回路340は、セレクト信号保持回路15とテーブル変換部319とを経由して入力されるセレクト信号に応じて入力信号を遅延素子0〜7個分遅延して、補正後AD変換クロックnew_ADCLKとして出力する。
【0057】
なお、テーブル変換部319からタイミング調整回路340のセレクタ回路及びセレクタ回路311へは、別個のセレクト信号が入力される。このようなタイミング調整回路310では、拡散クロックSSCG_CLKの2周期分以上の広範な遅延補正も、温度等の影響を抑制して正確に実行することができる。
【0058】
また、上記各実施の形態では、光電変換素子としてCISを使用しているが、光電変換素子としてCCDを使用した画像読取装置にも同様に適用することができる。更に、上記各実施の形態では、AD変換クロックADCLKを遅延補正しているが、一旦サンプルホールドを行ってからAD変換を行う画像読取装置では、サンプルホールドタイミングを遅延補正してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…CIS 2…SSCG 3…クロック生成回路
4…周波数検出回路 7…AD変換器 8…デジタル画像処理回路
10,110,210,310,340…タイミング調整回路
11,111,231,311…セレクタ回路
12,13,112,113…遅延回路
14…フリップフロップ 15…セレクト信号保持回路
17,18,232…遅延素子 119,319…テーブル変換部
230…クロック内タイミング調整回路 910…画像読取装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿画像を読み取ってその原稿画像に対応したアナログ信号を出力する光電変換素子と、
該光電変換素子が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、
スペクトラム拡散クロックを生成するスペクトラム拡散クロック生成部と、
該スペクトラム拡散クロック生成部が生成したスペクトラム拡散クロックを基準として、上記A/D変換部によりデジタル信号に変換されるアナログ信号の取り込みタイミングを設定する取り込みタイミング設定部と、
該取り込みタイミング設定部によって設定された上記取り込みタイミングを、上記スペクトラム拡散クロックの1または複数周期分遅延させるフリップフロップ回路と、
該フリップフロップ回路によって上記いずれかの周期分遅延された上記取り込みタイミングと、上記フリップフロップ回路による遅延がなされていない上記取り込みタイミングとを、それぞれ複数の段階に遅延させる遅延素子による遅延回路と、
該遅延回路により上記いずれかの段階に遅延された上記取り込みタイミングを、上記アナログ信号出力中の上記スペクトラム拡散クロックの周波数に応じて選択し、補正後取り込みタイミングとして出力するセレクタ部と、
を備え、
上記セレクタ部から出力された上記補正後取り込みタイミングで取り込まれた上記アナログ信号を、上記A/D変換部がデジタル信号に変換することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
上記スペクトラム拡散クロックの周波数を複数のレベルに分類するレベル分け部を、
更に備え、
上記遅延回路は、予め設定された複数の異なる補正量で上記取り込みタイミングを遅延補正する複数の遅延素子を備え、
上記セレクタ部は、上記各遅延素子によって個々に遅延補正された上記取り込みタイミングがそれぞれ入力され、その複数の入力を、上記レベル分け部による分類に応じて選択して上記補正後取り込みタイミングとして出力することを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
上記フリップフロップ回路によって遅延される上記取り込みタイミングを、上記レベル分け部による分類に応じて、上記スペクトラム拡散クロックの1周期の範囲内で遅延補正する1クロック内遅延補正部を、
更に備え、
上記遅延回路は、上記フリップフロップ回路による遅延と上記1クロック内遅延補正部による遅延補正との双方がなされた上記取り込みタイミングと、上記フリップフロップ回路による遅延も上記1クロック内遅延補正部による遅延補正もなされていない上記取り込みタイミングとを、それぞれ上記複数の段階に遅延させることを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
上記フリップフロップ回路は、上記取り込みタイミングを上記スペクトラム拡散クロックの1周期毎に段階的に遅延させ、
上記遅延回路は、上記フリップフロップ回路によって上記各段階に遅延された上記各取り込みタイミングと、上記フリップフロップ回路による遅延がなされていない上記取り込みタイミングとを、それぞれ複数の段階に遅延させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−54705(P2012−54705A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194708(P2010−194708)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】