説明

画像読取装置

【課題】装置全高を低く構成可能な画像読取装置を提供する。
【解決手段】複合機10は、原稿が載置されるコンタクトガラス20と、コンタクトガラス20の下側で往復動して、原稿から画像を読み取るCISユニット38とを有している。CISユニット38は、スキャナベース23のレール27に支持されたキャリッジ39にイメージセンサ52が搭載されたものである。キャリッジ39とイメージセンサ52との間に2つのコイルバネ57,58が介設されて、イメージセンサ52はコンタクトガラス20に圧接されている、コイルバネ57,58は共にイメージセンサ52の長手方向における中央61よりも一端側に配置されている。中央61に近い位置に配置されたコイルバネ57のバネ定数が、コイルバネ58のバネ定数よりも大きい。中央61よりも他端側において、スキャナベース23の下方には回路空間59が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレートに載置された原稿から画像を読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットベッド方式の画像読取装置では、原稿が載置された透光性のコンタクトガラスの下方に細長形状のイメージセンサが設けられている。イメージセンサによって、原稿の画像が光学的に読み取られる。
【0003】
イメージセンサは、ベルトユニットなどによって駆動伝達されて往復動するキャリッジに搭載されており、キャリッジと一体に移動する。キャリッジは、移動方向に沿ってシャフトやレールに支持されている。
【0004】
画像の読み取りのためにキャリッジ及びイメージセンサが移動する間、イメージセンサは、長手方向に亘ってコンタクトガラスとの距離が一定に維持される必要がある。移動中にイメージセンサとコンタクトガラスとの距離が変化したり、イメージセンサとコンタクトガラスとの距離が他と異なる位置が存在すると、原稿からイメージセンサに到る光路長や焦点位置が変化し、読み取られた画像にピントずれが生じてしまうおそれがある。
【0005】
イメージセンサとコンタクトガラスとの距離を一定に維持するため、一般的な構成では、キャリッジとイメージセンサとの間にコイルバネが介設されている。イメージセンサは、コイルバネによってコンタクトガラス側に付勢されている。それにより、イメージセンサの一部やイメージセンサに設けられたローラなどがコンタクトガラスの下側面に圧接されている。つまり、イメージセンサは、一部がコンタクトガラスの下側面に接触した状態でキャリッジによって移動される。
【0006】
このような構成の画像読取装置として、イメージセンサの撓みによってコンタクトガラスとの距離が変化することを防止するために、イメージセンサに撓み矯正器具が取り付けられた画像読取装置が知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−92661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したような構成では、コイルバネは、イメージセンサの長手方向の両端付近に設けられている。コイルバネは、高さ方向を軸線方向として配置されるため、画像読取装置の内部において一定の高さ方向のスペースを占有する。
【0009】
画像読取装置の内部に回路基板を配置する際、コイルバネの移動経路を避けて配置することが必要であるが、コイルバネがイメージセンサの長手方向の両端に離間されている場合、コイルバネの移動経路と重なる位置に回路基板を配置することになり、画像読取装置の全高を高くせざるを得ない。
【0010】
一方で、コイルバネをあまり離間させずに配置したり、コイルバネを1つのみ配置した場合、イメージセンサを支持する力に偏りが生じてしまい、イメージセンサとコンタクトガラスとが遊離してしまうことがある。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置全高を低く構成可能な画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1) 本発明に係る画像読取装置は、原稿が載置される透光性のプレートと、上記プレートの下側において、第1位置及び第2位置の間を上記プレートに沿って往復動するキャリッジと、細長形状の外形であり、上記キャリッジの移動方向と直交する方向を長手方向として上記プレートと接離する方向に移動可能に上記キャリッジに搭載されており、上記プレートに載置された原稿の画像を光学的に読み取るイメージセンサと、上記キャリッジと上記イメージセンサとの間に介設されており、上記イメージセンサを上記プレート側へ付勢する弾性部材と、を備えている。上記弾性部材は、上記イメージセンサの長手方向における中央より一端側に2つが配置されており、中央側に配置された一方が上記イメージセンサを付勢する付勢力が、一端側に配置された他方が上記イメージセンサを付勢する付勢力よりも大きい。
【0013】
ここで、本発明における透光性とは、少なくともイメージセンサが画像読み取りに使用する波長の光を、画像読み取り可能な程度に透過させる性質のことであり、あらゆる波長の光を完全に透過させる性質に限定されるものではない。
【0014】
本構成によると、弾性部材は、イメージセンサの長手方向の中央よりも一端側に2つが設けられる。つまり、当該一端側と反対側には弾性部材が設けられていないため、イメージセンサの下側には、装置に必要な回路基板を設けるためのスペースが確保される。つまり、画像記録装置の全高を低く構成できる。
【0015】
また、2つの弾性部材のうち、中央側にある一方の付勢力が、他方の付勢力よりも大きいため、イメージセンサを付勢する力に偏りが生じることなく、イメージセンサとプレートとが遊離してしまうことが回避される。
【0016】
(2) 2つの上記弾性部材はコイルバネであり、中央側に配置された一方のバネ定数が、一端側に配置された他方のバネ定数よりも大きいものであってもよい。
【0017】
2つの弾性部材はコイルバネであってもよい。2つのコイルバネのうち、中央側に配置されたコイルバネの付勢力を、一端側に配置されたコイルバネの付勢力よりも大きくするため、互いにバネ定数の異なるコイルバネが使用されてもよい。
【0018】
(3) 上記キャリッジは、上記イメージセンサを収容可能な形状であって、上記弾性部材を保持する保持部が上記キャリッジの底から下方へ突出されていてもよい。
【0019】
弾性部材は、保持部によって保持される。保持部はキャリッジの底から下方へ突出されている。本構成では、保持部はイメージセンサにおける長手方向の中央よりも一端側に2つが設けられる。そのため、当該一端側と反対側には保持部が存在せず、装置に必要な回路基板を設けるためのスペースがイメージセンサの下側に確保される。
【0020】
(4) 本発明に係る画像読取装置は、上記キャリッジの下方に設けられたスキャナベースをさらに備えていてもよい。上記スキャナベースは、上記キャリッジを移動方向に沿って支持するレールが設けられたものであってもよい。
【0021】
(5) 上記スキャナベースには、下側面が上記保持部の突出先端よりも上方に位置する隆起部が設けられていてもよい。上記隆起部の下方には、当該装置を制御する回路基板を配置可能な空間が形成されていてもよい。
【0022】
弾性部材の移動経路と重ならない位置においては、スキャナベースを保持部よりも上方へ隆起させることができる。本構成では、イメージセンサにおける長手方向の中央よりも一端側にのみ保持部が設けられているため、他端側に広く隆起部を設けることが可能である。隆起部の下側には、装置に必要な回路基板を設けるためのスペースを確保することができる。
【0023】
(6) 本発明に係る画像読取装置は、上記スキャナベースの下方に設けられており、シートに画像を記録可能なプリンタ部をさらに備えていてもよい。上記隆起部と上記プリンタ部との間に、上記回路基板が配置されていてもよい。
【0024】
本構成によると、隆起部とプリンタ部との間に形成されたスペースに回路基板が配置される。隆起部が上方へ隆起しているため、画像読取装置の全高を高くせずとも、回路基板を配置するための高さ方向のスペースを確保することが容易である。
【発明の効果】
【0025】
本発明においては、イメージセンサにおける長手方向の中央よりも一端側にのみ弾性部材が設けられているため、当該一端側と反対側には、装置に必要な回路基板を設けるためのスペースがイメージセンサの下側に確保され、画像読取装置の全高を低く構成できる。また、弾性部材のうち、中央側にある一方の付勢力が、他方の付勢力よりも大きいため、イメージセンサを付勢する力に偏りが生じることなく、イメージセンサとプレートとが遊離してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る複合機10の外観斜視図である。
【図2】図2は、読取ユニット22の外観斜視図である。
【図3】図3は、図2のA−A切断面における断面図である。
【図4】図4は、図3の要部拡大図である。
【図5】図5は、CISユニット38を上下に分解した状態を示す斜視図である。
【図6】図6は、イメージセンサ52に作用するモーメントを比較例と共に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。以下の説明においては、複合機10(本発明の画像読取装置の一例)が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7を定義し、操作パネル13が設けられている側を手前側として前後方向8を定義し、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9を定義する。
【0028】
[複合機10の概略構成]
図1に示される複合機10は、プリンタ機能とスキャナ機能とを一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)である。複合機10は、概ね直方体の本体フレーム14を備えている。本体フレーム14の内部には、プリンタ部11(本発明のプリンタ部の一例)及び、フラットベッド方式のスキャナ部12が収容されている。スキャナ部12は、プリンタ部11の上方に設けられている。プリンタ部11としては、例えば、インクジェット記録方式や熱転写方式などの記録方式のうちのいずれかが採用されている。プリンタ部11は、上記のような公知な記録方式に基づいて当業者が任意に設計することができるものであるため、プリンタ部11の詳細な説明は省略される。
【0029】
本体フレーム14の正面側には、操作パネル13が設けられている。操作パネル13は、各種操作ボタン及び液晶表示部を備える。プリンタ部11及びスキャナ部12は、操作パネル13からの指示によって動作するようになっている。なお、複合機10は、パーソナルコンピュータと接続され得る。その場合、プリンタ部11及びスキャナ部12は、操作パネル13からの指示のほか、パーソナルコンピュータからデバイスドライバ等を介して送信される操作信号によって動作することも可能である。
【0030】
[スキャナ部12]
スキャナ部12は、フラットベッドスキャナ(FBS:Flatbed Scanner)として機能する読取載置台17を備えており、読取載置台17に対して原稿押さえカバー21が開閉自在に取り付けられている。原稿押さえカバー21は、例えば蝶番(不図示)を介して読取載置台17に連結されている。原稿押さえカバー21は、蝶番を中心に回動することで、読取載置台17を開閉する。原稿押さえカバー21は、原稿トレイ(不図示)から排紙トレイ(不図示)へ原稿を連続搬送するオート・ドキュメント・フィーダ(ADF:Auto Document Feeder)を備えているが、オート・ドキュメント・フィーダは任意の構成である。
【0031】
読取載置台17は、本体フレーム14の上半部を構成する上カバー16と、上カバー16の上面に設けられたコンタクトガラス20(本発明のプレートの一例)と、本体フレーム14に内蔵された画像読取ユニット22(図2)とを有する。
【0032】
本体フレーム14は、上面が開放された容器状の下フレーム15と、開口19を有する上カバー16とを備えている。下フレーム15及び上カバー16は、共に合成樹脂により構成されている。下フレーム15の上に上カバー16が嵌め合わされることにより、本体フレーム14が構成されている。コンタクトガラス20は、上カバー16に取り付けられており、開口19から露出している。コンタクトガラス20は、原稿(本発明の原稿の一例)が載置される原稿載置面を構成し、開口19が原稿載置面を区画している。
【0033】
原稿は、コンタクトガラス20上に載置される。原稿は、原稿押さえカバー21が閉じられることによって、原稿押さえカバー21によってコンタクトガラス20上に固定される。上記画像読取ユニット22は、コンタクトガラス20の下方から、原稿の画像を光学的に読み取る。
【0034】
図2,3,4に示される画像読取ユニット22は、下フレーム15の内側において最上部に配設されている。上カバー16の上面からは、コンタクトガラス20を通して、画像読取ユニット22の一部が視認可能である。画像読取ユニット22は、スキャナベース23(本発明のスキャナベースの一例)と、ベルト駆動機構31と、CISユニット38とを備えている。以下、画像読取ユニット22を構成する各部材をより詳細に説明する。なお、図2,3,4においては、読取ユニット22が複合機10に搭載された状態に基づいて、上下方向7、前後方向8、及び左右方向9が定義されている。
【0035】
[スキャナベース23]
スキャナベース23は、概ね薄平な板状の底板24と、底板24の周縁から立設された側壁25(図2,3)とを有している。スキャナベース23は、底板24が側壁25よりも下方に位置するように下フレーム15の内部に配設されている。スキャナベース23は、上方から見て下フレーム15の内径と一致する寸法に形成されている。下フレーム15の内部空間は、底板24によって上下に区画されている。底板24よりも下方には、プリンタ部11(図1)、電源ユニット(不図示)、及び後述される回路基板(不図示)などが設けられている。底板24よりも上方には、画像読取ユニット22の一部を為すベルト駆動機構31及びCISユニット38が設けられている。ベルト駆動機構31及びCISユニット38がスキャナベース23と一体に組み付けられて、画像読取ユニット22が構成されている。
【0036】
底板24のうち、左右方向9における右側の7割程度の領域は、CISユニット38が移動するための移動領域26(図2)である。移動領域26は、CISユニット38が移動可能となるように、左右方向9に概ね平坦に形成されている。ここで、移動領域26の左端が本発明の第1位置であり、右端が第2位置である。移動領域26のうち前後方向8の中央よりもやや後方にはレール27(本発明のレールの一例)が形成されている。レール27は、左右方向9に沿って直線状に設けられている。CISユニット38は、レール27によって、下方から支持されている。
【0037】
レール27の後方側であって、移動領域26よりも左側に張り出す位置には、凹陥部28が形成されている。凹陥部28は、底板24が凹状に陥没された位置である。底板24の上面及び下面は、凹陥部28において最も低い位置に存在する。凹陥部28の内側には、ベルト駆動機構31を構成する駆動部32が配設されている。駆動部32は、CISユニット38よりも下方に位置するように設けられている
【0038】
移動領域26のうち、レール27の前方側には、溝29が形成されている。溝29は、レール27と平行な直線状に形成されている。溝29の前後方向8の幅は、凹陥部28の前後方向8の幅よりも短く、溝29の深さは、凹陥部28の深さよりも浅い。溝29は、スキャナベース23が後述されるバネ座44の移動を阻害しないためのものである。
【0039】
溝29よりも前方側には、隆起部30(本発明の隆起部の一例)が形成されている。隆起部30は、底板24が他の部分に対して隆起された位置である。底板24の上面及び下面は、隆起部30において最も高い位置に存在する。隆起部30の下方には、回路空間59(本発明の空間の一例,図3を参照)が形成されている。なお、図3では省略されているが、回路空間59には、回路基板(本発明の回路基板の一例)が配設されている。
【0040】
回路空間59に配置された回路基板は、例えば、複合機10の全体動作を制御する制御回路の一部を為すものである。回路基板は上下方向7において、凹陥部28や溝29と部分的に重なる位置に設けられている。また、回路空間59及び凹陥部28の直下には、プリンタ部11の構成部材が設けられている。
【0041】
[ベルト駆動機構31]
ベルト駆動機構31は、駆動プーリ35と、駆動プーリ35を駆動するモータ34を有した駆動部32と、従動プーリ36(図1)と、駆動プーリ35と従動プーリ36との間に巻き架けられたタイミングベルト37とを備えている。タイミングベルト37は、内側に歯が形成された無端ベルトである。上記駆動部32のモータが駆動プーリ35を回転させることにより、上記タイミングベルト37が周運動するように構成されている。
【0042】
駆動部32及び駆動プーリ35は、上述されたスキャナベース23の凹陥部28に配設されている。一方、従動プーリ36は、底板24の右端付近に配設されている。タイミングベルト37は、移動領域26を左右に横断するようにして、駆動プーリ35と従動プーリ36との間に巻き架けられている。
【0043】
タイミングベルト37の駆動プーリ35と従動プーリ36との間の部分、すなわち左右方向9に沿った部分は、CISユニット38を構成する後述されるキャリッジ39に連結されている。CISユニット38は、駆動プーリ35及びタイミングベルト37を介して駆動部32から駆動伝達される。CISユニット38は、タイミングベルト37と共にレール27の軌道に沿って移動する。なお、タイミングベルト37としては、無端ベルト以外に、ベルトの両端部がキャリッジ39に固着された有端ベルトが採用されてもよい。
【0044】
[CISユニット38]
図5に示されるように、CISユニット38は、キャリッジ39(本発明のキャリッジの一例)と、キャリッジ39に搭載されたイメージセンサ52(本発明のイメージセンサの一例)と、キャリッジ39とイメージセンサ52との間に介設された2つのコイルバネ57,58(本発明の弾性部材,コイルバネの一例)とを有している。なお、図5においては、CISユニット38が複合機10に搭載された状態に基づいて、上下方向7、前後方向8、及び左右方向9が定義されている。
【0045】
キャリッジ39は、細長の平板形状を呈しており、前後方向8を長手方向として、スキャナベース23に組み付けられている。キャリッジ39の左右方向9の中央周辺は、他の部分よりも凹んでおり、凹んだ部分にイメージセンサ52を搭載する台座40が形成されている。台座40は、前後方向8におけるキャリッジ39の後方側に形成されている。台座40よりも前方においては、キャリッジ39が矩形の形状に刳り抜かれて貫通孔41が形成されている。つまり、キャリッジ39は貫通孔41を有する矩形の枠体として捉えることもできる。
【0046】
台座40及び貫通孔41の外側の部分、すなわち、枠体の周縁である枠部42において、左右方向9の右側であって、前後方向8の両端に対向する位置に2つの軸受部43がそれぞれ設けられている。軸受部43は、それぞれ縦長な楕円形状の孔を有している。2つの軸受部43の孔は、前後方向8において互いに重なり合う位置に形成されている。軸受部43は、後述されるイメージセンサ52の軸片53を回転可能に保持するものである。
【0047】
キャリッジ39の下側であって前後方向8の中央周辺には、レール受け部50が設けられている。レール受け部50には、左右方向9に沿ったレール溝51が形成されている。レール溝51は、スキャナベース23のレール27に嵌め合わされており、それにより、キャリッジ39がスキャナベース23に支持されている。なお、レール溝51には、レール27との摩擦を軽減し、相対移動をスムースにするためのローラやボールなどが設けられていてもよい。
【0048】
図4に示されるように、レール受け部50の上方には、2つのバネ座44,45(本発明の保持部の一例)が設けられている。バネ座44,45は、台座40が下方へ陥没されることで形成されている。つまり、バネ座44,45は、台座40から下方へ突出されている。バネ座44,45の突出先端は、スキャナベース23の隆起部30よりも下方に位置している。
【0049】
バネ座44,45の奥面46,47から、上方に向かって中空な円柱形状の支持棒48,49が突出されている。支持棒48,49は、コイルバネ57,58の軸線方向から挿入されるものである。
【0050】
2つのバネ座44,45のうち前後方向8の前方に位置するバネ座44は、台座40の前端付近に設けられている、もう一方のバネ座45は、バネ座44よりも僅かに後方に設けられている。つまり、2つのバネ座44,45は、前後方向8に並べられている。また、レール受け部50のレール溝51は、2つのバネ座44,45の間に設けられている。
【0051】
前方側のバネ座44は、スキャナベース23の溝29と対応する位置にあり、部分的に溝29の内部に位置している。画像記録の際、バネ座44は、左右方向9に沿って溝29の内部を移動する。
【0052】
図5に示されるように、イメージセンサ52は、概ね細長な直方体形状を呈している。イメージセンサ52は、合成樹脂により構成されたフレームの内部に光源(不図示)、及び受光素子(不図示)などを備えている。イメージセンサ52は、コンタクトガラス20上の原稿から画像を光学的に読み取るものである。
【0053】
イメージセンサ52内部の光源は、典型的には、LED(Light Emitting Diode)(不図示)及びライトガイド(不図示)を備えている。LEDは、イメージセンサ52の内奥部に配置されている。ライトガイドは、典型的には透明な合成樹脂からなる。ライトガイドは、前後方向8全体に延びている。LEDから発せられた光は、ライトガイドによってイメージセンサ52の長手方向全体に導かれる。それにより、LEDから発せられた光は、イメージセンサ52の長手方向全体に略均等に分散され、コンタクトガラス20上の原稿に照射される。
【0054】
イメージセンサ52には、複数の受光素子(不図示)が設けられている。各受光素子は、イメージセンサ52の内底部において前後方向8に並設されている。各受光素子は、光電変換素子であって、受光に基づいて電気信号を出力するものである。各受光素子は、集光レンズ(不図示)を備えている。集光レンズは、イメージセンサ52の上面から入射した光を各受光素子に導くものである。
【0055】
イメージセンサ52の前後方向8(長手方向)及び左右方向9(短手方向)の寸法は、キャリッジ39の枠部42の内側に収まる寸法である。イメージセンサ52は、枠部42の内側、つまり、キャリッジ39の台座40及び貫通孔41の上部に位置している。
【0056】
イメージセンサ52は、前後方向8の両端の2箇所が部分的に左右方向9の右側へ張り出されている。その張り出された部分から前後方向8の後方に向かって円柱形状の軸片53がそれぞれ突出されている。軸片53は、矢印62,63に沿ってそれぞれキャリッジ39の軸受部43の孔に挿入され、回転可能に保持されている。これにより、イメージセンサ52は、軸片53を中心として回動し、部分的にキャリッジ39から接離可能となっている。また、軸受部43の孔は、縦長な楕円形状であるため、軸片53は、孔の内部を所定距離だけ上下方向7に移動自在である。このように、イメージセンサ52は、キャリッジ39に対して一定の自由度を有して取り付けられている。
【0057】
図4に示されるように、キャリッジ39のバネ座44,45には、コイルバネ57,58が保持されている。つまり、コイルバネ57,58は、キャリッジ39とイメージセンサ52との間に介設されている。コイルバネ57,58は、軸線方向の一端側(下端側)から支持棒48,49が挿入されて、立脚状態に維持されている。コイルバネ57,58は、当該一端側がバネ座44,45の奥面46,47に当接し、他端側が、イメージセンサ52の下面に当接している。こうして、イメージセンサ52は、コイルバネ57,58によって上方に付勢された状態となっている。なお、図には示されないが、イメージセンサ52の下面がコイルバネ57,58を受ける部分には、コイルバネ57,58の滑りを防止可能な形状として、例えば凹状や凸状の形状が採用されてもよい。
【0058】
バネ座44,45は、それぞれ、前後方向8におけるイメージセンサ52の中央61(図3)よりも後方側に位置している。ここで、前方側のバネ座44に配置されたコイルバネ57の付勢力は、後方側のバネ座45に配置されたコイルバネ58の付勢力よりも強い。
【0059】
詳細には、2つのコイルバネ57,58は、自然長が同じ長さであるが、バネ定数が互いに相違する。つまり、前方側のバネ座44に配置されたコイルバネ57のバネ定数が、後方側のバネ座45に配置されたコイルバネ58のバネ定数よりも大きい。バネ定数の具体的な値は、イメージセンサ52の長手方向の長さ、2つのバネ座44,45の相対位置、及びバネ座44,45の奥面46,47からコンタクトガラス20までの距離などに基づいて適宜決定されるが、概ね、イメージセンサ52の重心位置に近づくほど大きなバネ定数のものが使用される。
【0060】
コイルバネ57,58の付勢力によって、イメージセンサ52の上面の一部が、コンタクトガラス20の下面に圧接されている。図5では省略されているが、本実施形態においては、前後方向8におけるイメージセンサ52の両端に、軸を中心に回転可能なローラ56(図3)が設けられている。ローラ56の軸は、前後方向8と平行に取り付けられている。コイルバネ57,58の付勢力によって、ローラ56がコンタクトガラス20の下面にそれぞれ圧接されている。ローラ56は、イメージセンサ52がコンタクトガラス20を摺動する際の抵抗力を軽減するためのものである。
【0061】
画像読取の際、イメージセンサ52は、ローラ56がコンタクトガラス20の下面にそれぞれ圧接された状態においてベルト駆動機構31によって移動される。これにより、ローラ56は、圧接状態において回転する。イメージセンサ52が移動する過程において、光源が原稿に光を照射し、反射された光が各集光レンズによって集光され、対応する各受光素子によって受光される。受光素子が出力した電気信号が、原稿に表された画像の情報を含むものである。この電気信号が複合機10の全体動作を制御する制御回路などに送られて、画像データの形成が行われる。
【0062】
[実施形態の作用効果]
コイルバネ57,58が共に中央61よりも前後方向8の後方にある場合、仮に、2つのコイルバネ57,58の付勢力が同じであると、後端側のローラ56が、前端側のローラ56に比べて大きな力でコンタクトガラス20に圧接されることになる。
【0063】
そうすると、コイルバネ57,58の付勢力が十分ではない場合、前端側のローラ56がコンタクトガラス20から遊離しやすくなる。前端側のローラ56がコンタクトガラス20から遊離すると、原稿から受光素子に到るまでの光路長や焦点位置が変化し、読み取られた画像にピントずれが生じてしまうおそれがある。
【0064】
また、ユーザが書籍などの厚めの原稿をコンタクトガラス20に押しつけた状態で画像読取を行った場合、コンタクトガラス20の中央側が下方に湾曲することで、前端側のローラ56はより遊離しやすくなる。
【0065】
一方、前端側のローラ56が遊離しない程度の付勢力のコイルバネ57,58を使用した場合、後端側のローラ56が過度に大きな力でコンタクトガラス20に圧接されてしまう。これにより、イメージセンサ52の後端側が摩擦によって前端側に比べて移動しにくくなり、イメージセンサ52は、長手方向が左右方向9に対して傾いてしまう。イメージセンサ52にこのような傾きが生じると、読み取られた画像が歪んでしまう。
【0066】
本実施形態においては、コイルバネ57,58の付勢力を互いに異なるものとすることで、上記問題を解決している。以下、詳細に説明する。
【0067】
図6(A)は、本実施形態との比較対象として、同じ付勢力のコイルバネ57,58がCISユニット38に使用された例を示している。P1は、後端側のローラ56の位置であり、P2は、前端側のローラ56の位置である。P3は、イメージセンサ52の重心位置である。F1は、イメージセンサ52に作用する重力である。2つのF2は、それぞれコイルバネ57,58がイメージセンサ52を付勢する力である。コンタクトガラス20からの反作用による力は省略されている。また、2・F2>F1が成立しているものとする。
【0068】
ここで、イメージセンサ52を矢印64の向きに回転させるP1周りの力のモーメントの大きさM1は、M1=F2・L2+F2・L3−F1・L1によって表される。なお、簡単のため、P1から力の作用点までの距離L1,L2,L3を1次元(前後方向8)に限定している。
【0069】
図6(B)は、本実施形態に係るCISユニット38を示している。コイルバネ57,58の付勢力がそれぞれF3及びF4である点が 図6(A)の例と相違している。ここで、F3>F4である。コイルバネ57,58の付勢力の合計は、図6(A)の例から変化していないものとする。つまり、2・F2=F3+F4が成立している。
【0070】
ここで、イメージセンサ52を矢印64の向きに回転させるP1周りの力のモーメントの大きさM2は、M2=F3・L2+F4・L3−F1・L1によって表される。図から、L2>L3なので、複雑な計算を経ずともM2>M1であることが分かる。このように、コイルバネ57,58の付勢力の合計を大きくせずとも、コイルバネ57の付勢力をコイルバネ58の付勢力よりも大きくすることで、イメージセンサ52を矢印64の向きに回転させるP1周りのモーメントを大きくすることができる。即ち、前端側のローラ56がコンタクトガラス20から遊離しにくくすることができるとともに、後端側のローラ56が過度に大きな力でコンタクトガラス20に圧接されることが防止される。
【0071】
また、本実施形態によると、コイルバネ57,58は、前後方向8におけるイメージセンサ52の中央61よりも後方側に2つが設けられている。つまり、中央61よりも前方側にはコイルバネ57,58が設けられていないため、スキャナベース23の下方に回路基板を設けるための回路空間59を確保しやすくなる。
【0072】
特に、コイルバネ57,58を保持するバネ座44,45が中央61よりも前方側に設けられていないため、バネ座44が移動するためのスキャナベース23の溝29が、中央61よりも前方側に必要ない。したがって、移動領域26のうち中央61よりも前方側を全て隆起部30とすることができ、スキャナベース23の下方に回路空間59を広く確保できる。したがって、溝29の下方に回路空間59を確保した場合と比較して、画像記録装置の全高を低く構成できる。
【0073】
また、例えば、キャリッジ39をシャフトなどに移動可能に取り付けた場合、キャリッジ39とスキャナベース23との間に一定の隙間が発生する。本実施形態では、キャリッジ39がスキャナベース23のレール27に支持されているため、キャリッジ39とスキャナベースとの間に隙間が発生することなく、画像記録装置の全高を低く構成できる。
【0074】
[変形例]
上述された実施形態において、イメージセンサ52をコンタクトガラス20側に付勢するためにコイルバネ57,58が使用されたが、コイルバネ57,58とは異なる弾性部材として、例えば、異なる種類のバネやゴムが用いられてもよい。その場合においても、イメージセンサ52の中央61側に位置する一方が他方よりも強い付勢力を有する点は、上述された実施形態と同様である。
【0075】
また、コイルバネ57,58の付勢力を互いに異なるものとするために、自然長が互いに異なるコイルバネ57,58が使用されてもよい。自然長が長いコイルバネほど、キャリッジ39とイメージセンサ52との間に介設された状態においてより長く縮まされるため、付勢力が強くなる。
【0076】
また、上述された実施形態におけるキャリッジ39及びスキャナベース23の形状は一例であり、細部の形状は、本発明の範囲内で当業者が適宜変更してもよい。
【0077】
また、上述された実施形態のように、必ずしもローラ56がコンタクトガラス20の下面に圧接される必要はない。例えば、イメージセンサ52の上面には、ローラ56に代わってイメージセンサ52とコンタクトガラス20との摩擦を軽減するボールが回転可能に保持されていてもよい。
【0078】
また、上述された実施形態に係る複合機10は、スキャナ部12の下方にプリンタ部11を備えているが、本発明に係る画像読取装置は、必ずしもプリンタ部11を備えている必要はなく、スキャナ部12のみを備えていてもよい。あるいは、プリンタ機能に代わる異なる機能を有して構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10・・・複合機(画像読取装置)
11・・・プリンタ部
20・・・コンタクトガラス(プレート)
23・・・スキャナベース
27・・・レール
30・・・隆起部
39・・・キャリッジ
52・・・イメージセンサ
57,58・・・コイルバネ(弾性部材,コイルバネ)
59・・・回路空間(空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿が載置される透光性のプレートと、
上記プレートの下側において、第1位置及び第2位置の間を上記プレートに沿って往復動するキャリッジと、
細長形状の外形であり、上記キャリッジの移動方向と直交する方向を長手方向として上記プレートと接離する方向に移動可能に上記キャリッジに搭載されており、上記プレートに載置された原稿の画像を光学的に読み取るイメージセンサと、
上記キャリッジと上記イメージセンサとの間に介設されており、上記イメージセンサを上記プレート側へ付勢する弾性部材と、を備えており、
上記弾性部材は、上記イメージセンサの長手方向における中央より一端側に2つが配置されており、中央側に配置された一方が上記イメージセンサを付勢する付勢力が、一端側に配置された他方が上記イメージセンサを付勢する付勢力よりも大きい画像読取装置。
【請求項2】
2つの上記弾性部材はコイルバネであり、中央側に配置された一方のバネ定数が、一端側に配置された他方のバネ定数よりも大きいものである請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
上記キャリッジは、上記イメージセンサを収容可能な形状であって、上記弾性部材を保持する保持部が上記キャリッジの底から下方へ突出されている請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
上記キャリッジの下方に設けられたスキャナベースをさらに備え、
上記スキャナベースは、上記キャリッジを移動方向に沿って支持するレールが設けられたものである請求項1から3のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項5】
上記キャリッジの下方に設けられたスキャナベースをさらに備え、
上記スキャナベースには、下側面が上記保持部の突出先端よりも上方に位置する隆起部が設けられており、
上記隆起部の下方には、当該装置を制御する回路基板を配置可能な空間が形成されている請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項6】
上記スキャナベースの下方に設けられており、シートに画像を記録可能なプリンタ部をさらに備え、
上記隆起部と上記プリンタ部との間に、上記回路基板が配置されている請求項5に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−58979(P2013−58979A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197177(P2011−197177)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】