説明

界面層を形成するためのコーティング溶液及び画像形成部材

【課題】感光体装置内での粘着性の悪化や画像形成プロセス時の電荷のリークを引き起こさず、薄くて強固な界面層(IFL)を提供することである。
【解決手段】画像形成部材であるベルト構造は、支持基材10と、支持基材10上に配置されたホールブロッキング層14と、ホールブロッキング層14上に配置された界面層16と、電荷発生層18、及び電荷輸送層20を備え、粘着性の界面層16は、ホールブロッキング層14と電荷発生層18との間に配置され、界面層16は、電荷制御剤、界面活性剤、ポリエステル樹脂、及び任意の溶媒を含む水系のコーティング溶液により架橋形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面層を形成するためのコーティング溶液及び画像形成部材に関し、より具体的には、デジタルを含む静電複写装置で使用される画像形成装置部材(及び部品)に好適な層に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真又は静電複写印刷では、典型的に感光体として知られた電荷保持表面を静電帯電させ、次に、オリジナル画像の光パターンに露光して、それに従って表面を選択的に放電させる。感光体上に得られた帯電及び放電領域のパターンは、オリジナル画像に対応する静電荷のパターン(潜像)を形成する。潜像は、微細で静電気に引き寄せられるパウダー(トナー)と接触させることによって現像される。トナーは、感光体表面上の静電荷によって画像領域上に保持される。したがって、トナー画像は、再生又は印刷されるべきオリジナルの光画像と一致したものが作成される。次に、当該トナー画像を、基材又は支持部材(例えば、紙)に直接的に又は中間転写部材を用いて転写することができ、画像をその上に定着させて、再生又は印刷されるべき画像の永久記録を形成することができる。なお、現像に次いで、電荷保持表面上に残った過剰のトナーを表面から取り除く。この処理は、例えば、オリジナルからコピーする、又はラスタ出力スキャナ(ROS)を用いて電気的に発生させ又は記憶していたオリジナルを印刷する光レンズに有効であり、ここでは帯電した表面を各種方法で潜像放電させてもよい。
【0003】
積層感光体又は画像形成部材は、少なくとも2つの層を有し、柔軟性のあるベルト形態か堅いドラム構造のいずれかにおいて、基材、導電性層、任意のアンダーコート層(しばしば、「電荷ブロッキング層」又は「ホールブロッキング層」と呼ばれる)、任意の粘着性層、光発生層(しばしば、「電荷発生層」と呼ばれる)、電荷輸送層、及び任意のオーバーコーティング層を含む。多層構造では、感光体の活性層は電荷発生層(CGL)及び電荷輸送層(CTL)である。これらの層全体にわたる電荷輸送を促進することで、より良好な感光体機能を提供することができる。柔軟な積層感光体部材は、電気的活性層の反対側であって基材の裏側にカール防止層を備え、所望の感光体の平坦性を実現してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4387980号明細書
【特許文献2】米国特許第7295797号明細書
【特許文献3】米国特許第5660961号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、積層感光体は界面層を備えてもよい。有機感光体における界面層(IFL)のロールは、電荷ブロッキング層と電荷発生層間との粘着を促進するためのものである。IFLは一般的に800Å(80nm)より薄い。ベルト感光体では、IFLの材料はポリエステル樹脂であり、これは電荷発生層コーティングに使用される溶媒に非常に可溶性でもある。したがって、電荷発生層コーティングの乾燥条件はIFLの機能に影響する。例えば、電荷発生層の乾燥が遅すぎると、IFLは電荷発生層に溶解し、電荷発生層内の感光性顔料がシランブロッキング層又は導電性基材にまで侵入し得る。この現象は、(1)感光体装置内での粘着性の悪化、(2)画像形成プロセス時の電荷のリーク、という2つの問題を引き起こす。このような問題の解決方法の1つは厚みのあるIFLをコートすることである。しかし、IFLをより厚くすれば、通常、光誘発性放電時の残留電圧が高くなる。したがって、高速で高機能感光体を提供することが可能な薄いが強いIFLを開発することが望ましい。
即ち、本発明の目的は、感光体装置内での粘着性の悪化や画像形成プロセス時の電荷のリークを引き起こさず、薄くて強固な界面層(IFL)を提供することである。
なお、本明細書では、「感光体」又は「光導電体」という用語は、一般的に、「画像形成部材」という用語と互換可能に使用される。また、「静電複写」という用語は、「電子写真」を包含する。また、「電荷輸送分子」という用語は、一般的に、「ホール輸送分子」という用語と互換可能に使用される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコーティング溶液は、電荷制御剤と、界面活性剤と、ポリエステル樹脂と、溶媒と、を含む界面層を形成するためのコーティング溶液であって、コーティング溶液は、水系であることを特徴とする。
【0007】
また、界面層を形成する方法としては、転相乳化によってポリエステルの水エマルジョンを調製することを含み、ポリエステル樹脂を1以上の有機溶媒中に溶解して有機溶液を形成し、塩基性溶液(例えば、水酸化アンモニウム溶液又は水酸化ナトリウム溶液)を添加して、ポリエステル樹脂内のカルボン酸基を中和し、ある種の水溶液を添加してエマルジョンを形成し、有機溶媒をポリエステルの水エマルジョンから除去して、第2の水エマルジョンを形成し、第2の水エマルジョンを、界面活性剤及び他の任意の添加剤(例えば、フリーラジカル開始剤又は電荷制御剤)と混合して、コーティング溶液を形成し、かつ当該コーティング溶液を基材上にコーティングして界面層を形成する界面層形成方法である。
即ち、本発明に係る画像形成部材の界面層を形成するコーティング溶液は、例えば、電荷制御剤と、界面活性剤と、ポリエステルと、水又は水を主成分とする溶媒と、を備え、ポリエステルのカルボン酸基が中和されて、当該ポリエステルが水中に分散したエマルジョンを含む水分散性或いは水溶性の水系コーティング溶液である。
【0008】
また、本発明に係る画像形成部材は、基材と、基材上に配置された電荷ブロッキング層と、電荷ブロッキング層上に配置された界面層と、帯電画像形成層と、を備える画像形成部材であって、粘着性の界面層は、電荷ブロッキング層と帯電画像形成層との間に配置され、界面層は、電荷制御剤、界面活性剤、ポリエステル樹脂、及び任意の溶媒を含む水系のコーティング溶液により架橋形成されることを特徴とする。
即ち、本発明に係る画像形成部材の界面層を形成するコーティング溶液は、例えば、電荷制御剤と、界面活性剤と、ポリエステルと、水又は水を主成分とする溶媒と、を備え、ポリエステルのカルボン酸基が中和されて、当該ポリエステルが水中に分散したエマルジョンを含むと共に、ポリエステルは不飽和C=C二重結合を有し、好ましくは当該不飽和C=C二重結合の重合を開始させる開始剤、例えば、ラジカル開始剤(熱重合開始剤)を含有する水分散性或いは水溶性の水系コーティング溶液である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態であるベルト構造の画像形成部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態は、界面活性剤と電荷制御剤とを含む水性のポリエステルコーティング溶液であって、基材上にコートして乾燥したときに、架橋して有機感光体において粘着性を促進する界面層として機能するのに好適な層を形成するコーティング溶液を開示するものである。本実施形態は、例えば、均一性及び粘着性が増加するといったコーティング特性及び組成が改良された水系のコーティング溶液により形成される改良された界面層を有する静電複写画像形成部材、及びこれを製造するための環境に優しい方法に関する。
このコーティング溶液は、界面層の形成において、有機揮発成分を用いずに処理でき、薄いが強く均一な界面層を提供することができる。さらに、本実施形態の感光体の電気特性試験は、放電残留電圧が低く、反復性能が非常に安定しており、暗減衰が少なくかつ消耗が少ないことを示す。したがって、本実施形態は、有機感光体における電荷ブロッキング層の低コストで環境に優しい処理を提供するものである。
【0011】
感光体を用いた静電複写再生又はデジタル印刷装置では、光画像を静電潜像の形態で感光性部材上に記録し、この潜像を現像剤混合物によって可視化する。その内部にトナー粒子を含有する現像剤を静電潜像と接触するようにして、電荷保持表面を有する静電複写画像形成部材上の画像を現像する。そして、現像されたトナー画像をコピー基材、例えば、紙に転写部材を介して転写することができる。
【0012】
図1は、実施形態であるベルト構造を有する画像形成部材を示す。同図に示されるように、ベルト構造は、カール防止背面コーティング1、支持基材10、導電性接地面層12、ホールブロッキング層14(アンダーコート層14とも称する)、界面層(粘着性界面層)16、帯電画像形成層である電荷発生層18、及び電荷輸送層20を備える。また、任意のオーバーコート層32及び接地ストリップ19を備えてもよい。ベルト構造を有する感光体としては、例えば、米国特許第5,069,993号公報に開示されている。
【0013】
画像形成部材の他の層としては、例えば、任意のオーバーコート層32が挙げられる。必要により、任意のオーバーコート層32を電荷輸送層20の上に配置して、画像形成部材表面を保護するとともに耐磨耗性を改良してもよい。本実施態では、オーバーコート層32は、約0.1μm〜約10μm、約1μm〜約10μmの範囲、又は約3μmの厚さであってもよい。これらのオーバーコーティング層には、電気的に絶縁性又は僅かに半導電性の熱可塑性の有機ポリマー又は無機ポリマーを含むことができる。例えば、オーバーコート層32を、樹脂中に粒子添加剤を含む分散体から作成してもよい。オーバーコート層32に好適な粒子添加剤としては、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム)、非金属酸化物(例えば、シリカ又は低表面エネルギーのポリテトラフルオロエチレン(PTFE))、及びその組み合わせが挙げられる。好適な樹脂としては、光発生層及び/又は電荷輸送層に好適な樹脂、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマー、カルボキシル変性塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー、ヒドロキシル変性塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー、カルボキシル及びヒドロキシル変性塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリスルホン、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、アミノ樹脂、酸化フェニレン樹脂、テレフタル酸樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、フェノール性樹脂、ポリスチレン及びアクリロニトリルコポリマー、ポリ−N−ビニルピロリジノン、アクリレートコポリマー、アルキド樹脂、セルロース性フィルムフォーマ、ポリ(アミドイミド)、スチレン−ブタジエンコポリマー、塩化ビニリデン−塩化ビニルコポリマー、酢酸ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、スチレン−アルキド樹脂、ポリビニルカルバゾール、及びそれらの組み合わせがある。オーバーコーティング層は連続しており、少なくとも約0.5μm〜10μm以下の厚さ、或いは少なくとも約2μm〜6μm以下の厚さであってもよい。
【0014】
感光体の支持基材10は、非透過性でも実質的に透過性でもよく、必要な機械特性を有するものであれば、いずれの好適な有機又は無機材料からなるものでもよい。基材全体が導電性表面となるように同じ材料からなるものでもよく、又は導電性表面は単なる基材上のコーティングであってもよい。導電性材料としては、例えば、金属又は合金を好適に用いることができる。導電性材料には、銅、真鍮、ニッケル、亜鉛、クロム、ステンレススチール、導電性プラスチック、導電性ゴム、アルミニウム、半透過性アルミニウム、スチール、カドミウム、銀、金、ジルコニウム、ニオビウム、タンタル、バナジウム、ハフニウム、チタン、ニオビウム、タングステン、モリブデン、好適な材料を内部に含むことで導電性にした紙、湿った大気内で調節し十分な水含有量があることを確保することで導電性にした紙、インジウム、錫、金属酸化物(例えば、酸化錫及びインジウム錫オキサイド)等がある。また、導電性材料は、単一の金属化合物であってもよく、異なる金属及び/又は酸化物の2層であってもよい。
【0015】
また、支持基材10は、全体が導電性材料で構成されてもよく、又は絶縁材料、例えば、無機又は有機ポリマー状材料、例えば、デュポンから市販入手可能な二軸性ポリエチレンテレフタレートであるマイラー(商標)、又はカルデックス2000(商標)として入手可能なポリエチレンナフタレートであってもよい。基材は、導電性チタン又はチタン/ジルコニウムコーティングを備える導電性接地面層12を有してもよい。場合によっては、基材は有機又は無機材料層を有してもよく、これは、半導電性表面層、例えば、インジウム錫オキサイド、アルミニウム、チタン等を有するか、又は導電性材料、例えば、アルミニウム、クロム、ニッケル、真鍮、他の材料等から形成された導電性表面層を有する。支持基材10の厚さは、多くの要因、例えば、機械的性能及びコストに依存する。
【0016】
また、支持基材10は、多くの異なる構造、例えば、平面、筒、ドラム、スクロール、柔軟性のある無端ベルト等をであってもよい。同図に示されるように、支持基材10がベルト形態である場合には、ベルトは継ぎ目があってもなくてもよい。実施形態において、感光体はドラム構造である。
【0017】
支持基材10の厚さは、多くの要因、例えば、例えば、柔軟性、機械的性能及びコストに依存する。本実施形態では、支持基材10の厚さは、少なくとも約500μm〜約3000μm以下、又は少なくとも約750μm〜約2500μm以下であってもよい。
【0018】
また、支持基材10は、各コーティング層溶液に使用されるいずれの溶媒にも溶解せず、光学的に透過性又は半透過性で、約150℃までの高温で熱的に安定である。画像形成部材の作成に使用される支持基材10は、約1×10-5/℃〜約3×10-5/℃の範囲の熱収縮率、及び約5×10-5psi(3.5×10-4Kg/cm2)〜約7×10-5psi(4.9×10-4Kg/cm2)のヤング率を有するものであってもよい。
【0019】
導電性接地面の成膜後、ホールブロッキング層14を塗布することができる。正に帯電する感光体では、電子ブロッキング層がホールを感光体の画像形成表面から導電性層へと移動させることができる。負に帯電する感光体では、導電性層から反対側の光導電性層へのホール注入を防止するためのバリアを形成できるものであれば、いずれの好適なホールブロッキング層を用いてもよい。ホールブロッキング層14としては、例えば、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリウレタン等のポリマー、米国特許第4,338,387号公報、4,286,033号公報及び4,291,110号公報に開示される窒素含有シロキサン又は窒素含有チタン化合物(例えば、トリメトキシシリルプロピレンジアミン、加水分解されたトリメトキシシリルプロピルエチレンジアミン、N−ベータ−(アミノエチル)ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、イソプロピル4−アミノベンゼンスルホニル、ジ(ドデシルベンゼン スルホニル)チタネート、イソプロピルジ(4−アミノベンゾイル)イソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−エチルアミノ−エチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリアントラニルチタネート、イソプロピルトリ(N,N−ジメチルエチルアミノ)チタネート、チタン−4−アミノベンゼンスルホネートオキシアセテート、チタン4−アミノベンゾエートイソステアレートオキシアセテート、[H2 N(CH24]CH3Si(OCH32、(ガンマ−アミノブチル)メチルジエトキシシラン、及び[H2N(CH23]CH3Si(OCH32(ガンマ−アミノプロピル)メチルジエトキシシラン)が挙げられる。
【0020】
アンダーコート層は、金属酸化物及び樹脂バインダを含んでもよい。金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化モリブデン、及びそれらの混合物が挙げられる。アンダーコート層のバインダ材料としては、例えば、モルトン・インターナショナル社のポリエステル(MOR−エステル49,000)、グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー社のバイテルPE−100、バイテルPE−200、バイテルPE−200D、及びバイテルPE−222(いずれも商標)、ポリアリレート、例えば、アコモ・プロダクション・プロダクツ社のアルデル(商標)、アコモ・プロダクション・プロダクツ社のポリスルホン、ポリウレタン等が挙げられる。
【0021】
ホールブロッキング層は、連続で、約0.5μm以下の厚さを有する。ホールブロッキング層の厚さが厚すぎれば、高い残留電圧につながるからである。ゆえに、露光工程後の電荷中和を促進し最適な電気特性を達成するために、約0.005μm〜約1μmのホールブロッキング層を用いる。最適な電気特性を得るためには、特に、約0.03μm〜約0.06μmの厚さのホールブロッキング層を用いる。ブロッキング層は、いずれの好適な技術、例えば、スプレイング、ディップコーティング、ドローバーコーティング、グラビアコーティング、シルクスクリーニング、エアナイフコーティング、リバースロールコーティング、真空蒸着、化学処理等によって塗布されてもよい。薄層を得るために、ブロッキング層を希釈溶液の形態で塗布して、コーティングの成膜後に公知技術、例えば、真空、加熱等によって溶媒を除去する。一般的に、ホールブロッキング層の材料と溶媒との重量比は、約0.05:100〜約0.5:100であり、これはスプレイコーティングで十分対応可能である。
【0022】
電荷発生層18は、アンダーコート層14に塗布されてもよい。電荷発生/光導電性材料を含むいずれかの好適な電荷発生バインダを用いてもよく、電荷発生/光導電性材料は粒子の形態であって、不活性樹脂等のフィルム形成バインダに分散されてもよい。電荷発生材料の例としては、例えば、無機光導電性材料(例えば、アモルファスセレン、三方晶系セレン、及びセレン−テルル、セレン−テルル−ヒ素、ヒ化セレン及びその混合物からなる群から選択されるセレン合金)、有機光導電性材料(例えば、各種フタロシアニン顔料、例えば、X型の金属フリーフタロシアニン、金属フタロシアニン例えば、バナジルフタロシアニン、及び銅フタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、チタニルフタロシアニン、キナクリドン、ジブロモアンタンスロン顔料、ベンズイミダゾールペリレン、置換2,4−ジアミノ−トリアジン、多核芳香族キノン、ベンズイミダゾールペリレン等)、及びそれらの混合物があり、これがフィルム形成ポリマー状バインダ中に分散される。セレン、セレン合金、ベンズイミダゾールペリレン等及びそれらの混合物を均一な連続電荷発生層として形成してもよい。ベンズイミダゾールペリレン組成物は、例えば、米国特許第4,587,189号公報に記載されるように公知である。光導電性材料が電荷発生層の特性を向上させ又は低下させる場合には、複数の電荷発生層組成物を用いてもよい。また、必要により、公知の他の好適な電荷発生材料を用いてもよい。選択される電荷発生材料は、電子写真画像形成法における潜像放射線露光工程時の約400〜約900nmの波長を有する活性放射線に感応して静電潜像を形成するものである。例えば、ヒドロキシガリウムフタロシアニンは、米国特許第5,756,245号公報に開示されるように、約370〜約950nmの波長の光を吸収する。
【0023】
例示の光導電体用のチタニルフタロシアニン又はオキシチタンフタロシアニンの多くは、800nm付近の近赤外光を吸収することで知られる光発生顔料であり、他の顔料、例えば、ヒドロキシガリウムフタロシアニンに比べて改良された感応性を有する。一般的に、チタニルフタロシアニンは、タイプI、II、III、X及びIVとして知られる主に5つの結晶形態を有する。例えば、米国特許第5,189,155号公報及び5,189,156号公報は、チタニルフタロシアニンの各種多形体を得るための多くの方法を開示している。さらに、米国特許第5,189,155号公報及び5,189,156号公報は、タイプI、X及びIVのフタロシアニンを得るための方法を開示している。米国特許第5,153,094号公報は、チタニルフタロシアニン多形体、例えば、タイプI、II、III及びIV多形体の調製に関する。米国特許第5,166,339号公報は、タイプI、IV及びXのチタニルフタロシアニン多形体を調製する方法、さらにはタイプZ−1及びタイプZ−2として示される2つの多形体の調製を開示している。
【0024】
例えば、米国特許第3,121,006号公報に記載されるものを含むいずれの好適な不活性樹脂材料を電荷発生層18のバインダとして使用してもよい。有機樹脂バインダとしては、熱可塑性及び熱硬化性樹脂、例えば、1以上のポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルホン、ポリブタジエン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、アミノ樹脂、酸化フェニレン樹脂、テレフタル酸樹脂、エポキシ樹脂、フェノール性樹脂、ポリスチレンとアクリロニトリルのコポリマー、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマー、アクリレートコポリマー、アルキド樹脂、セルロース性フィルムフォーマ、ポリ(アミドイミド)、スチレン−ブタジエンコポリマー、塩化ビニリデン/塩化ビニルコポリマー、酢酸ビニル/塩化ビニリデンコポリマー、スチレン−アルキド樹脂等が挙げられる。別のフィルム形成ポリマーバインダは、PCZ−400、(ポリ(4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−1−1−シクロヘキサン)であり、これは40,000の粘度平均分子量を有し、三菱ガス化学社から入手可能である。
【0025】
電荷発生材料は、樹脂状バインダ組成物中に様々な量で存在してもよい。一般的に、少なくとも約5体積パーセント〜約90体積パーセント以下の電荷発生材料を、少なくとも約95体積パーセント〜約10体積パーセント以下の樹脂状バインダ中に分散させ、より好ましくは、少なくとも約60体積パーセント〜約20体積パーセント以下の電荷発生材料を、少なくとも約80体積パーセント〜約40体積パーセント以下の樹脂状バインダ組成物中に分散させる。
【0026】
電荷発生層18は、例えば、少なくとも約0.01μm〜約2μm以下、又は少なくとも約0.2μm〜約1μm以下の厚さであり、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、又はそれらの混合物からなるものでもよい。電荷発生材料と樹脂状バインダ材料とを含む電荷発生層18は、一般的に、乾燥時で少なくとも約0.01μm〜約5μm以下、例えば、約0.2μm〜約3μmの厚さ範囲である。電荷発生層の厚さは、一般的に、バインダ含有量に関係する。バインダ含有量が高い組成物ほど、一般的に、電荷発生により厚い層を使用する。
【0027】
ドラムの感光体では、電荷輸送層は同じ組成の単一層からなる。したがって、電荷輸送層は、単一層である電荷輸送層20に関して説明するが、詳細は二重に電荷輸送層を有する実施形態にも当てはまる。電荷輸送層20は、電荷発生層18上に塗付される。そして、電荷輸送層20は、電荷発生層18からの光発生したホール又は電子の注入をサポートすることができ、各ホール/電子の輸送を行い、選択的に画像形成部材表面上の表面電位を放電することができるものであれば、いずれの好適な透過性有機ポリマー又は無機ポリマー状材料からなるものでもよい。ある実施形態では、電荷輸送層20は、ホールを輸送する機能を果たすだけでなく、電荷発生層18を磨耗や化学的腐食から保護して、画像形成部材の機能寿命を伸ばすことができる。電荷輸送層20は、実質的に光導電性材料ではなく、光発生した電荷発生層18からのホールの注入をサポートするものである。
【0028】
電荷輸送層20は、通常、電子写真画像形成部材が露光を行う際に使用する波長範囲について透過性であり、下にある電荷発生層18によって、大部分の入射した放射線が確実に使用されるようにする。電荷輸送層20は、電子写真で有用な光波長、例えば、400〜900nmで露光したときに、僅かしか光吸収せずかつ電荷発生や電荷トラッピングすることのない優れた光透過性を有することが好ましい。感光体が透過性の支持基材10と透過性又は部分的透過性の導電性接地面層12を用いて調製される場合には、潜像露光又は消去は、全ての光を基材の裏側に通すことで達成される。この場合、電荷発生層18が支持基材10と電荷輸送層20との間にサンドイッチされるなら、電荷輸送層20の材料は使用する波長領域の光を透過する必要はない。電荷発生層18と連係する電荷輸送層20は、光の照射が存在しない状態では電荷輸送層20上にある静電荷を伝導させない程度の絶縁体である。電荷輸送層20は、放電処理時には電荷がそこを通るように、最小限の電荷をトラップすることが好ましい。
【0029】
電荷輸送層20は、添加剤として有用な電荷輸送成分又は活性化化合物が、電気的に不活性なポリマー状材料、例えば、ポリカーボネートバインダ中に溶解又は分子レベルで分散して固溶体(固形溶解)を形成し、材料を電気的に活性化させてなるものでもよい。「溶解」とは、例えば、小さい分子がポリマー中に溶解して均一相を形成する溶体を形成することを意味し、「分子レベルで分散」とは、例えば、電荷輸送分子がポリマー中に分散することを意味し、小さい分子がポリマー中に分子スケールで分散する。電荷輸送成分は、フィルム形成ポリマー状材料に添加されてもよい。なお、フィルム形成ポリマー状材料は、光発生した電荷発生材料からのホールの注入をサポートすることができず、かつこれらのホールの輸送ができないものである。この添加によって、電気的に不活性なポリマー状材料は、光発生した電荷発生層18からのホールの注入をサポートすることができ、かつ電荷輸送層上の表面電位を放電するために、電荷輸送層20を通じてこれらのホールの輸送を可能にする材料へと変化させる。移動度の高い電荷輸送成分は、小さい分子の有機化合物からなるものでもよく、これは共同して電荷輸送層の表面へと電荷を輸送する。例えば、電荷輸送成分は、これに限定されないが、N,N’−ジフェニル−N,N−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)、他のアリールアミン、例えば、トリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TM−TPD)等である。
【0030】
多くの電荷輸送化合物は、電荷輸送層中に含まれ、この層は、一般的に、約5μm〜約75μmの厚さ、より好ましくは約15μm〜約40μmの厚さを有する。電荷輸送成分の例は、(化1)及び(化2)のアリールアミンである。
【化1】

(ここで、Xは好適な炭化水素、例えば、アルキル、アルコキシ、アリール、又はそれら誘導体;ハロゲン、又はそれらの混合物であり、特にこれら置換基はCl及びCH3からなる群から選択される)
【化2】

(ここで、X、Y及びZは独立して、アルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、又はそれらの混合物であり、Y及びZの少なくとも1つのは存在する)
【0031】
アルキル及びアルコキシは、例えば、1個〜約25個の炭素原子、より好ましくは1個〜約12個の炭素原子、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及び対応するアルコキシドを含む。アリールは、6個〜約36個の炭素原子、例えば、フェニル等を含む。ハロゲンには、塩素、臭素、ヨウ素、及びフッ素がある。また、置換アルキル、アルコキシ、及びアリールが選択されてもよい。
【0032】
電荷輸送層用に選択される特定のアリールアミンの例には、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(アルキルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミン(ここでアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル等からなる群から選択される);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(ハロフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(ここでハロ置換基はクロロ置換基である);N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−p−トリル−[p−ターフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−m−トリル−[p−ターフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−o−トリル−[p−ターフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(4−イソプロピルフェニル)−[p−ターフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(2−エチル−6−メチルフェニル)−[p−ターフェニル]−4,4”−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(2,5−ジメチルフェニル)−[p−ターフェニル]−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−クロロフェニル)−[p−ターフェニル]−4,4”−ジアミン等がある。他の公知の電荷輸送層分子を、例えば、米国特許第4,921,773号公報及び4,464,450号公報を参照して選択してもよい。
【0033】
電荷輸送層用に選択されるバインダ材料の例には、米国特許第3,121,006号公報に記載されるような成分がある。ポリマーバインダ材料の特定の例には、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリレートポリマー、ビニルポリマー、セルロースポリマー、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(シクロオレフィン)、エポキシ、及びそれらランダム又は交互コポリマーがある。電荷輸送層、例えば、ホール輸送層は、少なくとも約10μm〜約40μm以下の厚さであってもよい。
【0034】
例えば、横方向への電荷移動(LCM)を改良に好適な電荷輸送層又は少なくとも1つの電荷輸送層に任意に導入される成分の例としては、ヒンダードフェノール性酸化防止剤、例えば、テトラキスメチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート)メタン(チバ・スペシャリティ・ケミカルから入手可能なイルガノックス(登録商標)1010)、ブチレート化ヒドロキシトルエン(BHT)、及び他のヒンダードフェノール性酸化防止剤、例えば、サミライザ(商標)BHT−R、MDP−S、BBM−S、WX−R、NW、BP−76、BP−101、GA−80、GM、及びGS(住友化学社から入手可能)、イルガノックス1035、1076、1098、1135、1141、1222、1330、1425WL、1520L、245、259、3114、3790、5057、及び565(チバ・スペシャリティ・ケミカルズから入手可能)、及びアデカ・スタブ(商標)AO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60、AO−70、AO−80、及びAO−330(アサヒ電化社から入手可能);ヒンダードアミン酸化防止剤、例えば、サノール(商標)LS−2626、LS−765、LS−770、及びLS−744(三共社から入手可能)、チヌビン(登録商標)144、及び622LD(チバ・スペシャリティ・ケミカルズから入手可能)、マーク(商標)LA57、LA67、LA62、LA68、及びLA63(アサヒ電化社から入手可能)、及びサミライザTPS(住友化学社から入手可能);チオエーテル酸化防止剤、例えば、サミライザTP−D(住友化学社から入手可能);ホスフィト酸化防止剤、例えば、マー2112、PEP−8、PEP−24G、PEP−36、329K、及びHP−10(アサヒ電化社から入手可能);他の分子、例えば、ビス−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン(BDETPM)、ビス−[2−メチル−4−(N−2−ヒドロキシエチル−N−エチル−アミノフェニル)]−フェニルメタン(DHTPM)等がある。少なくとも1つの電荷輸送層中における酸化防止剤の重量パーセントは、約0〜約20、約1〜約10、又は約3〜約8重量パーセントである。
【0035】
電荷輸送層は、光の照光がなければ、ホール輸送層上にある静電荷を十分な速さで伝導させず、その上への静電潜像の形成及び保持を妨げる程度の絶縁体であることが好ましい。電荷輸送層は、実質的に使用予定の範囲内の可視光又は放射線を吸収しないが、電気的に「活性」であり、電荷発生層である光導電性層からの光発生したホールの注入を可能にし、電荷輸送層を通じて輸送されるこれらのホールは、活性層の表面上の表面電位を選択的に放電することができる。
【0036】
いずれの好適な公知技術を用いて、電荷輸送層混合物を形成し、その後支持基材層に塗布してもよい。電荷輸送層を単一のコーティング工程又は複数のコーティング工程で形成してもよい。ディップコーティング、リングコーティング、スプレイ、グラビア又はいずれの他のドラムコーティング法を用いてもよい。
【0037】
成膜したコーティングの乾燥は、いずれの好適な公知技術、例えば、オーブン乾燥、赤外線乾燥、空気乾燥等によって行われてもよい。乾燥後の電荷輸送層の厚さは、最適な光電子的特性かつ機械的特性を得るために、約10μm〜約40μm、又は約12μm〜約36μmであることが好ましい。或いは、厚さを約14μm〜約36μmにすることもできる。
【0038】
任意の別個の粘着性界面層は、特定構造、例えば、柔軟性のあるウェブ構造で提供されてもよい。図1に示される形態では、界面層はホールブロッキング層14と電荷発生層18の間に配置される。界面層はコポリマー樹脂を含んでもよい。界面層用に使用することができる例示的なポリエステル樹脂としては、ポリアクリレートポリビニルブチラール、例えば、アルデル・ポリアクリレート (U−100;トヨタフツウ社から市販入手可能)、バイテルPE−100、バイテルPE−200、バイテルPE−200D、及びバイテルPE−222(全てボスティックから入手可能)、49,000ポリエステル(ローム・ハースから入手可能)、ポリビニルブチラールがある。粘着性の界面層は、ホールブロッキング層14に直接塗布されてもよい。したがって、粘着性の界面層は、実施の形態では、下にあるホールブロッキング層14と上にある電荷発生層18の両方に直接接触し、両者の粘着的接着を促進して結合を提供する。また別の実施の形態では、粘着性界面層を全体的に除いてもよい。
【0039】
粘着性界面層用のポリエステルコーティング溶液の形成(作成)において、適当な溶媒又は溶媒混合物を用いることができる。溶媒としては、テトラヒドロフラン、トルエン、モノクロロベンゼン、塩化メチレン、シクロヘキサノン等、及びそれらの混合物が挙げられる。いずれの他の好適な公知技術を用いて、粘着性界面層コーティング混合物を混合し、その後ホールブロッキング層に塗布してもよい。塗布技術には、スプレイング、ディップコーティング、ロールコーティング、巻線型ロッドコーティング等がある。成膜された湿潤コーティングの乾燥は、いずれの好適な公知の方法、例えば、オーブン乾燥、赤外線乾燥、空気乾燥等によって行われてもよい。
【0040】
粘着性の界面層は、乾燥後、少なくとも約0.01μm〜約5μm以下の厚さを有してもよい。実施形態では、乾燥後の厚さは、約0.03μm〜約1μmである。
【0041】
本実施形態では、界面層は、転相法により調製されたポリエステルの水性コーティング溶液から架橋形成される。このコーティング溶液から形成された界面層は、従来のコーティング溶液から形成された界面層を上回る多くの利点を有する。IFL用のポリエステル樹脂の化学構造では、繰り返しユニット内に不飽和C=C二重結合がある。ポリエステル樹脂中のC=C二重結合は、フリーラジカル開始剤、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、又はUV放射線によって重合させることができる。コーティングの熱乾燥によって架橋を促進し、それぞれの層の形成時に電荷発生層に溶解しない界面層を形成する。
【0042】
コーティング溶液中に、他の要素を導入して、さらにコーティングの品質を改良してもよい。例えば、界面活性剤を入れて、コーティングの均一性を向上させてもよい。例えば、約3%の電荷制御剤(例えば、サリチル酸亜鉛)を添加することで、後に形成される感光体の電気特性を改良する。サリチル酸亜鉛は(化3)の化学構造を有する。
【化3】

【0043】
手作業で作成した装置をゼロックス−4000スキャナで試験したところ、10,000サイクル後に得られた電気特性は非常に良好であった。また、IFLを高い相対湿度で保管し粘着性について剥離試験を行ったところ、相対湿度は、粘着性に影響しないことが分かった。
【0044】
界面層を形成するためのコーティング溶液は、ポリエステル樹脂、電荷制御剤、界面活性剤、及び溶媒を含み、コーティング溶液は水系である。当該水系コーティング溶液は、例えば、ポリエステル樹脂のカルボン酸が中和されることで、水(又は水を主成分とする溶媒)に溶解する水溶性のコーティング溶液、或いは水に分散する水分散性のコーティング溶液である。
ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とジオールとの反応によって調製される。ジカルボン酸は、フマル酸、マロン酸、イタコン酸、2−メチルイタコン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、アジピン酸、コハク酸、スベリン酸、2−エチルコハク酸、グルタル酸、ドデシルコハク酸、2−メチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,2−シクロヘキサンジオン酸、1,3−シクロヘキサンジオン酸、1,4−シクロヘキサンジオン酸から選択でき、又はジアルキルエステルを選択できる。ここで、アルキルは約2個〜約22個の炭素原子を含み、マロネート、スクシネート、フマレート、イタコネート、テレフタレート、イソフタレート、フタレート、シクロヘキサンジオエート、それらの混合物のエステルが挙げられる。ジカルボン酸は、使用される有機ジオール1モル当量に基づいて、例えば、約0.95モル当量〜約1.1モル当量の量で選択される。
【0045】
ジオールは、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジフェノール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(5−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールA、エトキシレート化ビスフェノールA、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、シス−1,4−ジヒドロキシ−シクロヘキサン、トランス−1,4−ジヒドロキシ−シクロヘキサン、シス−1,2−ジヒドロキシ−シクロヘキサン、トランス−1,2−ジヒドロキシ−シクロヘキサン、トランス−1,3−ジヒドロキシ−シクロヘキサン、シス−1,3−ジヒドロキシ−シクロヘキサンから選択できる。ジオールは、使用されるジカルボン酸1モル当量に基づいて、例えば、約0.90モル当量〜約1.1モル当量の量で選択される。ポリエステル樹脂は、コーティング溶液中に、例えば、その全重量の約0.05重量%〜約50重量%の量で含まれる。IFL用に適用されるポリエステル樹脂は、例えば、テレフタル酸、ドデシルコハク酸無水物、トリメリット酸、フマル酸、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のコポリマーである。このポリエステル樹脂の重量平均分子量(MW)は約45,000であり、このポリエステル樹脂のガラス転移温度は約56℃であり、このポリエステル樹脂の酸価は約15mgKOH/gである。また、ポリエステル樹脂は、約5000〜約100,000の重量平均分子量(MW)、約0〜約100℃のガラス転移温度、及び約1〜約50mgKOH/gの酸価を有するものとすることもできる。電荷制御剤は、例えば、サリチル酸亜鉛、サリチル酸カルシウム、サリチル酸アルミニウム、サリチル酸クロム、サリチル酸ホウ素、サリチル酸ジルコニウム、サリチル酸鉄等、及びそれらの混合物からなる群より選択される。電荷制御剤は、コーティング溶液中に、その全重量の約0.005重量%〜約20重量%の量で存在してもよい。
【0046】
界面活性剤は、例えば、陰イオン性界面活性剤である。界面活性剤としては、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルスルフェート、ナトリウムドデシルナフタレンスルフェート、ジアルキルベンゼンアルキルスルフェート、スルホネート、アジピン酸、ヘキサデシルジフェニルオキサイドジスルホネート、及びそれらの混合物からなる群より選択することができる。界面活性剤は、コーティング溶液中に、その全重量の約0.0001重量%〜約10重量%の量で存在してもよい。
【0047】
溶媒は、脱イオン水、メタノール、メチルエチルケトン、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン及びその混合物からなる群より選択できる。例えば、溶媒としては、後述の実施例に示すように、脱イオン水(水)或いは水を主成分とする溶媒が好ましい。溶媒は、例えば、コーティング溶液中に、その全重量の約10重量%〜約99.9重量%の量で存在する。
【0048】
カール防止背面コーティング1は、電気的に絶縁性又は僅かに半導電性の有機ポリマー又は無機ポリマーを含んでもよい。カール防止背面コーティングは、平坦性及び/又は磨耗耐性を提供する。
【0049】
カール防止背面コーティング1は、基材2の背面である画像形成層の反対側に形成されてもよい。カール防止背面コーティング1は、フィルム形成樹脂バインダ及び粘着促進剤添加物を含んでいてもよい。樹脂バインダは、上記の電荷輸送層の樹脂バインダと同じ樹脂であってもよい。フィルム形成樹脂の例には、ポリアクリレート、ポリスチレン、ビスフェノールベースのポリカーボネート、ポリ(4,4’−イソプロピリデンジフェニルカーボネート)、4,4’−シクロヘキシリデンジフェニルポリカーボネート等がある。添加剤として使用される粘着促進剤の例には、49,000(デュポン)、バイテル(商標)PE−100、バイテルPE−200、バイテルPE−307(グッドイヤー)等がある。通常、約1〜約15重量%の粘着促進剤がフィルム形成樹脂に添加される。カール防止背面コーティングの厚さは、少なくとも約3μm〜約35μm以下、又は約14μmである。
【0050】
さらに、ベルト構造を用いた本実施形態では、電荷輸送層は、単一パスの電荷輸送層でも、同じ又は異なる輸送分子比を有する二重パスの電荷輸送層(又は2層の電荷輸送層)からなるものでもよい。2層の電荷輸送層は、約10μm〜約40μmの全体厚さを有する。或いは、2層の電荷輸送層の各層は、2μm〜約20μmの厚さを有してもよい。さらに、電荷輸送層は、感光体の上層として使用され、電荷輸送層とオーバーコート層間の界面での結晶化を抑制するように構成されてもよい。また、電荷輸送層は、第1パス電荷輸送層として使用され、第1パス層と第2パス層間の界面で起こるミクロ結晶化を抑制するように構成されてもよい。
【実施例】
【0051】
<実施例1>
実施例1では、ポリエステル樹脂77.0kg、イソプロパノール6.9kg、及びメチルエチルケトン38.5kgを40℃で約2時間混合して、透明なポリマー溶液を得た。激しく攪拌しながら、10重量%のNH4OH(2.57kg)をゆっくりと添加した。約10分間の添加後、231kgの脱イオン水を2時間かけて添加した。水の添加後、乳白色の混合物を減圧(38KPaの絶対圧力)下で蒸留して有機溶媒を除去した。最終的に得られたポリエステルの水エマルジョンは、50ppm以下の有機揮発分を含有し、約29重量%の固形分含有量、及び約187nmの体積中間粒子サイズD50を有していた。
【0052】
サンプル#1の架橋IFLについて、フリーラジカル開始剤のベンゾイルパーオキサイド0.035g及びサリチル酸亜鉛0.013gを3gのメチルエチルケトンに溶解した。次に、この溶液を54.2gの脱イオン水、1.5gの上記ポリエステルエマルジョン、及び界面活性剤のナトリウムドデシルベンゼンスルホネート0.003gの混合物中に添加した。30分間の混合後には、水エマルジョンはコーティング可能である。
【0053】
サンプル#2の非架橋IFLについて、サンプル#1と同じ手順を用いた。しかし、配合では、開始剤(ベンゾイルパーオキサイド)と電荷制御剤(サリチル酸亜鉛)を溶液に添加しなかった。
【0054】
調製したポリエステル水溶液を、チタン/ジルコニウムで金属化されて表面上にシラン電荷ブロッキング層を備えたポリエステル基材上に、0.0005milのバーを用いてコートした。コートされた基材は、エアフローイングフード内で乾燥した後、120℃のオーブン中で1分間乾燥した。
【0055】
電荷発生層と電荷輸送層は、IFL層を備える上記基材上に、米国特許第7344809号公報に記載されるように、それぞれの層に常套的な溶液を用いて、手作業でコーティングすることによって形成した。完成品装置は、上記IFLコーティング処理によりサンプル#1及びサンプル#2を組み入れた。
【0056】
完成品の感光体装置をゼロックス4000スキャナで試験した。各サンプルの電気特性を表1に示す。表1は、10,000サイクル試験後の感光体装置の電気特性を含み、V0は時間0での印加電圧であり、Vcyc-upは10,000サイクル試験後の消去電圧電位である。サンプルは手作業でコートしたものであるが、装置は、例えば、低サイクルアップ電圧(Vcyc-up)、低暗減衰電圧(Vdd)といった、非常に良好な電気特性を依然として有していた。
【表1】

【符号の説明】
【0057】
1 カール防止背面コーティング、10 支持基材、12 導電性接地面層、14 ホールブロッキング層(アンダーコート層)、16 界面層、18 電荷発生層、19 接地ストリップ、20 電荷輸送層、32 オーバーコート層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷制御剤と、
界面活性剤と、
ポリエステル樹脂と、
溶媒と、
を含む界面層を形成するためのコーティング溶液であって、
コーティング溶液は、水系であることを特徴とする界面層を形成するためのコーティング溶液。
【請求項2】
請求項1に記載のコーティング溶液において、
ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とジオールの反応によって調製されることを特徴とするコーティング溶液。
【請求項3】
請求項1に記載のコーティング溶液において、
ポリエステル樹脂は、テレフタル酸、ドデシルコハク酸無水物、トリメリット酸、フマル酸、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のコポリマーであることを特徴とするコーティング溶液。
【請求項4】
基材と、
基材上に配置された電荷ブロッキング層と、
電荷ブロッキング層上に配置された界面層と、
帯電画像形成層と、
を備える画像形成部材であって、
粘着性の界面層は、電荷ブロッキング層と帯電画像形成層との間に配置され、
界面層は、電荷制御剤、界面活性剤、ポリエステル樹脂、及び任意の溶媒を含む水系のコーティング溶液により架橋形成されることを特徴とする画像形成部材。

【図1】
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【公開番号】特開2010−270332(P2010−270332A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115016(P2010−115016)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】