説明

界面層を有する膜電極複合体

本発明は、ナノワイヤ担持触媒を含む膜電極複合体に使用するための界面層と、そのような膜電極複合体を含む燃料電池とに関するものである。また、本発明は、界面層およびナノワイヤ担持触媒を含む膜電極複合体および燃料電池の製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜電極複合体と、膜電極複合体を備える燃料電池とに関する。本発明は、また、膜電極複合体および燃料電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素やメタノールのような燃料の化学エネルギーを直接、電気エネルギーへ変換する装置である。燃料電池の基本的な物理構造或いは構成要素は、両側で多孔性のアノード及びカソードに接する電解質層から成る。典型的な燃料電池では、燃料(例えば、メタノールまたは水素)は、アノード触媒に供給され、そこで燃料分子をプロトン(メタノール燃料電池の場合は、それに加えて二酸化炭素)に変換し、プロトンは電池のカソード側へプロトン交換膜を通過する。カソード触媒では、プロトン(例えば、電子の無い水素原子)は酸素に反応して、水を生成する。アノード側からカソード側へ導電線を繋ぐことにより、アノード側で水素またはメタノール燃料から分離した電子が、カソード側へ移動することができ、そして酸素と結合し、電気を発生する。アノード側での水素またはメタノール燃料の電気化学的な酸化とカソード側での還元によって作動する燃料電池は、高変換効率、低公害、軽量設計、高エネルギー密度のため、魅力的な電力源である。
【0003】
例えば、直接メタノール型燃料電池(DMFC)において、液体メタノール(CHOH)は、アノードで水の存在下で酸化され、CO、水素イオン、および、燃料電池の電気出力として外部の回路を通って移動する電子を発生する。水素イオンは、電解質を通過し、空気中の酸素および外部回路からの電子と反応し、アノードで水を生成し、回路は完結する。
アノード反応: CHOH+HO→CO+6H+6e
カソード反応: 3/2O+6H+6e→3H
電池全体の反応: CHOH+3/2O→CO+2H
1990年代初期に最初に開発されたDMFCは、低効率と低エネルギー密度並びにその他の問題のため採用されなかった。触媒の改良およびその他の最近の開発は、電力密度を20倍に増加し、効率は最終的に40%に達し得る。これらの電池は、約50℃〜120℃の温度範囲でテストされてきた。この低い動作温度と燃料改質装置の必要がないことで、DMFCは、携帯電話、ノート型パソコン、カメラ、そして他の消費者製品、自動車電力装置に至るまで、といった超小型から中規模サイズの応用に対して、優れた候補となる。DMFCの欠点の一つは、メタノールから水素イオンと二酸化炭素への低温の酸化に、より活性な触媒が必要とされ、一般的により大量に高価な白金(および/またはルテニウム)触媒を必要とすることを意味している。
【0004】
DMFCは一般的に、高い一酸化炭素(CO)耐性と反応性のため、ルテニウム(Ru)を触媒要素として使用することを必要とする。Ruは水を解離し、メタノールから生成されるCOからCOへの酸化処理を促進する酸素種を生成する。既存のDMFCの中には、粒子の体積比に対して表面積が大きいため、電気酸化触媒としてナノメートルサイズの二つの金属から成るPtRu粒子を使用する。PtRuナノ粒子は一般的に、炭素担体(例えば、カーボンブラック、フラーレン煤煙、または、脱硫カーボンブラック)上に供給され、充填粒子複合触媒構造を生成する。PtRu炭素充填粒子複合材を生成するために最も一般的に使われる技術は、白金とルテニウム塩化物を含む溶液中での炭素担体の含浸と、それに続く熱還元である。
【0005】
多相界面あるいは接点は、多孔性電極の領域で、燃料電池反応物、電解質、活性PtRuナノ粒子、そして炭素担体の間に設けられる。この界面の性質は、燃料電池の電気化学的性能において重大な役割を果たす。充填粒子複合材内の触媒粒子部位の一部しか利用されていないことが知られている。なぜなら、他の部位は、反応物質へアクセス可能でないか、炭素担体ネットワーク(電子経路)および/または電解質(プロトン経路)へ接続されないためである。事実、現時の充填粒子複合材は、触媒粒子の約20〜30%のみが利用されている。従って充填粒子複合構造を利用したDMFCの多くは、非常に非効率である。
【0006】
加えて、アノードおよび/またはカソードへの接続性は一般に、現在、充填粒子複合構造内に制限されている。これは、粒子間の接触が悪いため、および/または、密集して充填した粒子間の燃料電池反応物質のための複雑な拡散経路のためである。電解質または支持マトリクスの密度の増加は、反応性を増すが、触媒部位へのメタノール拡散を減少もさせる。よって、妥当なコストで燃料電池反応効率を最大限にするために、多孔性電解質構造内の、電極、電解質、および気相の間で、デリケートなバランスを維持させなければならない。燃料電池技術の開発における最近の努力の多くは、コストをより低くするがより高くより安定した電気化学的な効率を得ることを目指して、電極構造および電解質相の効率化や改良の一方で、セル構成要素の厚みを減らすことに捧げられてきている。商業的に成り立つようなDMFCを開発するために、触媒の電極触媒活性は改良されなければならない。
【0007】
ナノワイヤ、例えば半導体ナノワイヤ、とグラフェン層とを組み合わせた構造は、米国特許出願公開第2007-0212538号と米国特許出願公開第2008-0280169号で開示されている。両文献の開示内容のすべては、あらゆる目的で、参照により本明細書に援用される。これらの文書は、通して表記される様々な構造を備えたナノワイヤ複合膜電極触媒担体複合体も開示している。その構造は、大きい表面積、高い構造安定性、および連続構造を持つ高い多孔性物質を提供する。複合構造は、電解質ネットワークと互いに浸透した、高く相互接続された結合ナノワイヤ担持触媒構造として供給され、触媒の利用、触媒のアクセスし易さ、そして電気・イオン結合性を最大にし、それにより低コスト等において燃料電池の全効率を改良する。しかしながら、膜電極複合体の様々な層の間、とりわけプロトン交換膜とナノワイヤ担持触媒間の界面、の付着力改善の必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【0008】
一実施形態において、本発明は、燃料電池用膜電極複合体(MEA)を提供する。MEAは、プロトン伝導性膜層とプロトン伝導性膜層に隣接した界面層とを好適に備える。MEAはまた、界面層に隣接した一以上のナノワイヤ担持電気化学的触媒も備える。より好適には、プロトン伝導性膜は炭化水素を含む。
【0009】
典型的な実施形態において、炭素担持電気化学的触媒を備える界面層は、全フッ素置換ポリマー電解質、または、カーボンブラックを含むことができる。好適には、電気化学的触媒は、約1nm〜10nmのナノ粒子、例えば、Pt,Au,Pd,Ru,Re,Rh,Os,Ir,Fe,Co,Ni,Cu,Ag,V,Cr,Mo,W、およびその合金または化合物から成る群から選ばれる金属を含むナノ粒子、を備える。典型的な実施形態では、ナノ粒子はPtRuを含む。
【0010】
好適な実施形態において、ナノワイヤ担持電気化学的触媒および炭素担持電気化学的触媒は、Pt,Au,Pd,Ru,Re,Rh,Os,Ir,Fe,Co,Ni,Cu,Ag,V,Cr,Mo,W、およびその合金または化合物、から成る群から選ばれる金属を含むナノ粒子を備え、PtRuを含む。好適にはナノワイヤは、C,RuO,SiC,GaN,TiO,SnO,WCx,MoC,ZrC,WN,およびMoNナノワイヤから成る群から選ばれる。ここで、xは正の整数である。
【0011】
典型的な実施形態において、燃料電池用膜電極複合体は、更に、アノードおよび/またはカソード電極を備え、より好適には、MEAは、メタノール燃料電池、ギ酸燃料電池、エタノール燃料電池、水素燃料電池、またはエチレングリコール燃料電池における構成要素である。
【0012】
更なる実施形態で、本発明は、燃料電池用膜電極複合体の製造方法を提供する。好適にはプロトン伝導性膜層が提供される。それから、界面層はプロトン伝導性膜層に隣接して配置され、一以上のナノワイヤ担持電気化学的触媒は界面層に隣接して配置される。好適には、ナノワイヤ担持電気化学的触媒は、界面層に噴霧される(スプレーされる)。
【0013】
本発明の更なる実施形態、特徴、および利点は、発明の様々な実施形態の構造および動作と同様に、添付図面を参照して以下詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は添付図面を参照して記載される。図面において、同じ参照番号は、同一または機能的に同様の構成要素を示す。ある構成要素が最初に現れた図面は、対応する参照番号の左端の数字で示される。
【図1A】ナノワイヤ担持電気化学触媒を備えた膜電極複合体を示す図である。
【図1B】ナノワイヤ担持電気化学触媒を備えた膜電極複合体を示す図である。
【図1C】本発明の一実施形態に従って界面層を備えた膜電極複合体を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に従う膜電極複合体の製造方法を示す図である。
【図3】EW1000ナフィオンイオノマーを利用した燃料電池における、ナノワイヤ結合PtRu触媒の電圧および電力密度(PD)を示す図である。
【図4】Pt触媒とPtRu触媒の比率と密度とを異ならせた、本発明の四種類のナノワイヤ結合触媒に対する、電流密度と電位対DHEとの関係を表すアノード分極化の結果を示す図である。
【図5】PtおよびPtRuナノワイヤ結合触媒に対する電流密度の関数としての電圧と電力密度との比較(性能に対するEW1000ナフィオンの影響を含む)を示す図である。
【図6】本発明の濃度を異ならせた二種類のPt触媒結合ナノワイヤのカソード分極化を、Pt炭素結合触媒(TKK)と比較して示した図である。
【図7】炭素担持PtRu触媒(TKKおよび172−9D)における電位対DHEと電流密度の関係を、本発明の三種類のナノワイヤ担持PtRu電気化学触媒と比較して示した図である。
【図8】アノード電極で炭素担持電気化学触媒層の有無における、DMFC分極化性能(電位(V)対、電流密度(mA/cm))を示す図である。
【図9A】可溶化全フッ素置換イオノマー溶液(含浸)を用いた膜処理の有無における、アノード性能を示す図である。
【図9B】可溶化全フッ素置換イオノマー溶液(含浸)を用いた膜処理の有無における、DMFC分極化性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここに図示および記載された特定の実施例は、本発明の例であり、さもなければいかなる方法でも本発明の範囲を制限する意図はないことを認識されたい。実際、簡潔化のために、従来の電子工業、製造、半導体素子、ナノワイヤ(NW)、ナノロッド、ナノチューブ、ナノリボン技術、およびシステムの他の機能的側面(およびシステムの各作動要素の構成要素)は、詳細はここに記載されない。更に、簡潔化の目的で、本発明は、ナノワイヤに適用されるように頻繁にここに記載されるが、他の同様の構成もここに含まれる。
【0016】
ナノワイヤは頻繁に参照されるにも関わらず、その技術もまた、ナノロッド、ナノチューブ、ナノテトラポッド、ナノリボン、および/または、その組み合わせのような他のナノ構造へ適用可能である。更に、製造技術は、米国特許出願公開第2007-0212538号と米国特許出願公開第2008-0280169号に記載されている。あらゆる目的で、参照により本明細書に援用される両文献の開示内容のすべては、炭素ベースの層(結晶ナノグラファイトコーティングと同様、非平面炭素(non-basal plane carbon)のような非結晶炭素を含む)をさまざまな材料の表面に生成するため使われうる。上記さまざまな物質としては、従来の繊維および繊維構造、平面、曲面、不規則な表面、および金属、半導体、セラミック発砲体、網状金属および網状セラミックのような様々な材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。更に、この技術は、触媒としての応用、エネルギーの貯蔵および変換、分離、医療装置のための電極、保護用の表面、または他の応用に対して好適である。
【0017】
本明細書中の『アスペクト比』は、ナノ構造の第1軸の長さを第2軸と第3軸と長さの平均で割ったものである。ここで、第2、第3軸はこの長さは互いにほぼ等しい二軸である。例えば、完全な棒のアスペクト比は、長軸の長さを長軸と垂直な断面の直径で割ったものである。
【0018】
ナノ構造に関連して使われる場合の用語『ヘテロ構造』とは、少なくとも二種類の異なったかつ/または区別可能な物質により特徴付けられるナノ構造をいう。一般的に、ナノ構造の一つの領域が第1の種類の物質を含み、一方でナノ構造の第二の領域が第2の種類の物質を含む。他の実施形態において、ナノ構造は、第1の物質のコアと第2(または第3)の物質の少なくとも一つのシェルとを備える。ここで、異なる種類の物質は、例えばナノワイヤの長軸、分岐ナノ結晶のアームの長軸、または、ナノ結晶の中心、に放射状に分布する。シェルがシェルと見なされるために、あるいは、ナノ構造がヘテロ構造と見なされるためにも、シェルが隣接した物質を完全に覆う必要はない。例えば、一つの物質のコアを第二の物質の複数の小さな島状のもので覆うナノ結晶は、ヘテロ構造である。他の実施形態において、異なる種類の物質は、ナノ構造内で異なる位置に分布する。例えば、物質の種類は、ナノワイヤの主軸(長軸)に沿って、あるいは、分岐ナノ結晶の長軸のアームに沿って分布しうる。ヘテロ構造内の異なる領域は、完全に異なる物質を含むことができる。または、異なる領域は、基礎物質を備えることができる。
【0019】
本明細書中の『ナノ構造』とは、大きさが約500nm未満、例えば、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、あるいはさらに約20nm未満、の少なくとも一つの領域、または、特有の大きさを有する構造である。一般的に、上記領域や特有の大きさは、その構造の最小の軸に沿っている。そのような構造の例は、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブ、分岐ナノ結晶、ナノテトラポッド、トライポッド(三脚)、バイポッド(二脚)、ナノ結晶、ナノドット、量子ドット、ナノ粒子、分岐テトラポッド(例えば無機デンドリマー)、などを含む。ナノ構造は、物質の特性において実質的に同質であってもよいし、あるいは、他の実施形態においては異質(例えばヘテロ構造)であってもよい。ナノ構造は、例えば、実質的に結晶、実質的に単結晶、多結晶、アモルファス、またはそれらの組み合わせでありうる。一つの側面において、ナノ構造の三つの寸法のうち一つは、約500nm未満、例えば、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、あるいはさらに約20nm未満、である。
【0020】
本明細書中の用語『ナノワイヤ』とは、通常、細長い導体または半導体材料(またはここに記載された他の材料)を言う。そして、少なくとも一つの断面の大きさが500nm未満、できれば100nm未満、そして、10を超え、できれば50を超え、更にできれば100を超えるアスペクト比(縦/横)であるものを含む。
【0021】
ナノワイヤは材料の特性において実質的に同質であってもよく、あるいは、他の実施形態においては異質(例えばナノワイヤヘテロ構造)であってもよい。ナノワイヤは、基本的には手ごろな一つあるいは複数の物質から作り上げることができ、そして例えば、実質的に結晶、実質的に単結晶、多結晶、アモルファス、またはそれらの組み合わせでありうる。ナノワイヤは、可変の直径を有してもよいし、あるいは、実質的に単一の直径を有してもよい。すなわち、直径の変動が最大の領域かつ長さ寸法が少なくとも5nm(例えば、少なくとも10nm、少なくとも20nm、あるいは少なくとも50nm)の領域において、直径は約20%未満(例えば約10%未満、約5%未満、または約1%未満)の相違を示す。一般的には、直径は、ナノワイヤの両端から(例えば、ナノワイヤの中心部20%、40%、50%、または80%を通って)測られる。ナノワイヤは、直線であってもよく、または、長軸の全長またはその一部で、例えば曲がったり折れたりしてもよい。他の実施形態では、ナノワイヤまたはその一部は、2次元または3次元の量子閉じ込めを表すことができる。
【0022】
そのようなナノワイヤの例は、国際特許出願公開WO 02/17362, WO 02/48701, および WO 01/03208に記載されているように半導体ナノワイヤを含む。そして、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維、そして、他の細長い導体あるいは半導体構造の同サイズの構造を含む。各文献は、参照により本明細書に援用される。
【0023】
本明細書中の用語『ナノロッド』は、通常、ナノワイヤと同様に細長い導体または半導体材料(またはここに記載した他の材料)で、ナノワイヤより小さいアスペクト比(縦/横)を有するものを言う。ここで、二以上のナノロッドは、自身の縦軸に沿って互いに結合されてもよい。あるいは、二以上のナノロッドは、実質的に自身の縦軸に沿って並べてもよいが、二以上のナノロッドの端の間に小さなすき間が存在するように互いに結合しない。この場合、電子は、一つのナノロッドから他のナノロッドへ跳ぶことにより一つのナノロッドから他のナノロッドへと流れることができ、その小さなすき間を移動する。電子が電極間を移動する経路を形成するように、二以上のナノロッドを実質的に一直線に並べてもよい。
【0024】
ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブ、および、ナノリボンのため広範囲の種類の材料を使うことができ、以下から選んだ半導体材料を含む。例えば、Si, Ge, Sn, Se, Te, B, C (ダイヤモンドを含む), P, B-C, B-P(BP6), B-Si, Si-C, Si-Ge, Si-Sn and Ge-Sn, SiC, BN, BP, BAs, AlN, AlP, AlAs, AlSb, GaN, GaP, GaAs, GaSb, InN, InP, InAs, ZnO, ZnS, ZnSe, ZnTe, CdS, CdSe, CdTe, HgS, HgSe, HgTe, BeS, BeSe, BeTe, MgS, MgSe, GeS, GeSe, GeTe, SnS, SnSe, SnTe, PbO, PbS, PbSe, PbTe, CuF, CuCl, CuBr, CuI, AgF, AgCl, AgBr, AgI, BeSiN2, CaCN2, ZnGeP2, CdSnAs2, ZnSnSb2, CuGeP3, CuSi2P3, (Cu, Ag)(Al, Ga, In, Tl, Fe)(S, Se, Te)2, Si3N4, Ge3N4, Al2O3, (Al, Ga, In)2 (S, Se, Te)3, Al2CO、および、そのような半導体の二以上の適切な組み合わせたもの。
【0025】
ナノワイヤは、金、ニッケル、パラジウム、イリジウム、コバルト、クロム、アルミニウム、チタン、錫等といった金属、金属合金、ポリマー、導電性ポリマー、セラミック、および/または、それらの組み合わせ、といった他の材料から形成されることもできる。他の、現在良く知られた、あるいは、後に開発される、伝導性あるいは半導体材料を利用してもよい。
【0026】
ナノワイヤはまた、有機ポリマー、セラミック、炭化物と窒化物そして(TiOまたはZnOといった)酸化物といった無機半導体、カーボンナノチューブ、生物に由来した繊維性タンパク質のような化合物、などを含んでもよい。例えば、ある実施形態において、米国特許出願公開第2007-0212538号と米国特許出願公開第2008-0280169号に開示されたようなナノワイヤが利用されている。半導体ナノワイヤは、IV族、III-IV族、またはII-VI族の半導体またはその酸化物の多数で構成されうる。ある実施形態で、ナノワイヤは、金属導体、半導体、炭化物、窒化物、または酸化物を含んでもよく、RuO2, SiC, GaN, TiO2, SnO2, WCx, MoCx, ZrC, WNx, MoNxなどが挙げられる。本明細書を通して使われているように、化学式で使われる場合下付き文字『x』は、正の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、など)全てを表す。ナノワイヤは弱酸で劣化しない材料から作られ、それにより、ナノワイヤは様々な異なる燃料電池の反応物と共用できることが適切である。更なる実施形態において、カーボンナノチューブおよびカーボンナノ繊維は、『ウィスカ』または『ナノウィスカ』、特に直径100nmを超える、または直径約200nmを超えるウィスカを除き、本発明の実施で利用されうる。
【0027】
他の側面において、半導体は以下から成る族からのドーパントを含んでもよい。周期表のIII族からp型ドーパント、周期表のV族からn型ドーパント、B、Al、Inから成る族から選ばれるp型ドーパント、P、As、Sbから成る族から選ばれるn型ドーパント、周期表のII族からp型ドーパント、Mg、Zn、CdおよびHgから成る族から選ばれるp型ドーパント、周期表のIV族からp型ドーパント、CとSiから成る族から選ばれるp型ドーパント、または、Si、Ge、Sn、S、SeおよびTeから成る族から選ばれるn型ドーパント。現在良く知られたあるいは後に開発される他のドーパント材料を利用してもよい。
【0028】
さらに、ナノワイヤまたはナノリボンは、カーボンナノチューブ、または導体または半導体有機ポリマー材料(例えばペンタセンおよび遷移金属酸化物)で形成されたナノチューブを含むことができる。
【0029】
ここで使われる空間的な記述(例えば『上方』『下方』『上』『下』『てっぺん』『底』)は、描写のみを目的としており、そして、本発明の装置は、いかなる方向や方法で空間的に配置されてもよい。
【0030】
ナノ材料は、広範囲の異なる方法で製造されてきた。例えば、溶液をベースにして界面活性剤を媒介させた結晶成長は、量子ドットのような球形の無機ナノ材料や、ナノロッドやナノテトラポッドのような細長いナノ素材の製造のために記載されている。気相法を含む他の方法も、ナノ素材を製造するために利用されている。例えば、シリコンナノ結晶は、伝えられるところによると、シランガスのレーザー熱分解によって製造されている。
【0031】
他の方法は、基質をベースにした合成法を利用する。例えばGreene等により記載されたような、例えばZnOナノワイヤ製造のための低温合成法("Low-temperature wafer scale production of ZnO nanowire arrays," L. Greene, M. Law, J. Goldberger, F. Kim, J. Johnson, Y. Zhang, R. Saykally, P. Yang, Angew. Chem. Int. Ed. 42, 3031-3034, 2003)や、触媒金粒子を利用した比較的高温のVLS方法が挙げられる。この触媒金粒子は、例えば、コロイドとして、あるいは熱せられることによって粒子を形成する薄膜として堆積する。そのようなナノワイヤ製造のVLS方法は、例えば、国際特許出願公開WO 02/017362で記載されており、文献の開示内容のすべては、あらゆる目的で、参照により本明細書に援用される。
【0032】
ナノ構造は組み立てることができ、そのサイズは調整可能であるが、これは異なる素材に適応可能な多数の便利な方法による。例えば、様々な構成のナノ結晶の合成は、例えば、以下に記載されている。Peng等(2000)"Shape Control of CdSe Nanocrystals" Nature 404, 59-61; Puntes等(2001) "Colloidal nanocrystal shape and size control: The case of cobalt" Science 291, 2115-2117; USPN 6,306,736 Alivisatos 等(October 23, 2001) 題名 "Process for forming shaped group III-V semiconductor nanocrystals, and product formed using process;" USPN 6,225,198 to Alivisatos 等 (May 1, 2001) 題名 "Process for forming shaped group II-VI semiconductor nanocrystals, and product formed using process;" USPN 5,505,928 to Alivisatos 等 (April 9, 1996) 題名"Preparation of III-V semiconductor nanocrystals;" USPN 5,751,018 to Alivisatos 等 (May 12, 1998) 題名"Semiconductor nanocrystals covalently bound to solid inorganic surfaces using self-assembled monolayers;" USPN 6,048,616 Gallagher 等 (April 11, 2000) 題名 "Encapsulated quantum sized doped semiconductor particles and method of manufacturing same;" および USPN 5,990,479 Weiss 等 (November 23, 1999) 題名 "Organo luminescent semiconductor nanocrystal probes for biological applications and process for making and using such probes."
【0033】
様々なアスペクト比を有すナノワイヤ(調整した直径のナノワイヤを含む)の成長は、例えば以下に記載されている。Gudiksen 等 (2000) "Diameter-selective synthesis of semiconductor nanowires" J. Am. Chem. Soc. 122, 8801-8802; Cui 等. (2001) "Diameter-controlled synthesis of single-crystal silicon nanowires" Appl. Phys. Lett. 78, 2214-2216; Gudiksen 等 (2001) "Synthetic control of the diameter and length of single crystal semiconductor nanowires" J. Phys. Chem. B 105,4062-4064; Morales 等 (1998) "A laser ablation method for the synthesis of crystalline semiconductor nanowires" Science 279, 208-211; Duan 等 (2000) "General synthesis of compound semiconductor nanowires" Adv. Mater. 12, 298-302; Cui 等 (2000) "Doping and electrical transport in silicon nanowires" J. Phys. Chem. B 104, 5213-5216; Peng 等 (2000) "Shape control of CdSe nanocrystals" Nature 404, 59-61; Puntes 等 (2001) "Colloidal nanocrystal shape and size control: The case of cobalt" Science 291, 2115-2117; USPN 6,306,736 to Alivisatos 等 (October 23, 2001) 題名 "Process for forming shaped group III-V semiconductor nanocrystals, and product formed using process;" USPN 6,225,198 to Alivisatos 等 (May 1, 2001) 題名"Process for forming shaped group II-VI semiconductor nanocrystals, and product formed using process"; USPN 6,036,774 to Lieber 等 (March 14, 2000) 題名 "Method of producing metal oxide nanorods"; USPN 5,897,945 to Lieber 等 (April 27, 1999) 題名 "Metal oxide nanorods"; USPN 5,997,832 to Lieber 等 (December 7, 1999) "Preparation of carbide nanorods;" Urbau 等 (2002) "Synthesis of single-crystalline perovskite nanowires composed of barium titanate and strontium titanate" J. Am. Chem. Soc., 124, 1186; Yun 等 (2002) "Ferroelectric Properties of Individual Barium Titanate Nanowires Investigated by Scanned Probe Microscopy" Nanoletters2, 447; C. E. Baddour and C. Briens (2005) “Carbon nanotube synthesis: A review” International Jpurnal of Chemical Reactor Enginering 3 R3; および K. P De Jong and J.W.Geus (2000) “Carbon Nanofibers: Catalytic Synthesis and Applications”42 481.
【0034】
ある実施形態において、ナノワイヤは、基質表面にこれらの細長い構造を成長することまたは合成することによって製造される。例えば、米国特許出願公開第US-2003-0089899-A1号は、気相エピキタシー法を用いて固体基質へ付着した金属コロイドから半導体ナノワイヤの一様な集合の成長方法を開示している。Greene 等 ("Low-temperature wafer scale production of ZnO nanowire arrays", L. Greene, M. Law, J. Goldberger, F. Kim, J. Johnson, Y. Zhang, R. Saykally, P. Yang, Angew. Chem. Int. Ed. 42, 3031-3034, 2003) は、溶液をベースにした比較的低温のワイヤ成長工程を用いてナノワイヤを合成する代替方法が開示されている。様々な他の方法は、他の細長いナノ材料の合成のために使われる。米国特許第5,505,928号, 第6,225,198号, 第6,306,736号で開示された界面活性剤をベースにしてより短いナノワイヤを製造するための合成法、そして、例えばUS-2002/0179434 Dai 等参照の、カーボンナノチューブの既知の製造方法、そして同様に例えばMorales and Lieber, Science, V.279, p. 208 (Jan. 9, 1998) 参照の、成長基質を使用しないナノワイヤ成長のための方法、を含む。ここに述べるように、これらの異なる材料のどれでもあるいは全てを、本発明での使用のため、ナノワイヤを製造することにおいて利用することができる。応用のために、様々な種類のIII-V族、II-VI族、およびIV族の半導体は、利用されうるし、これは製造される基質あるいは物の最終的な応用により決まる。一般的に、そのような半導体ナノワイヤは例えばUS-2003-0089899-A1で記載され、ここに参照される。
【0035】
分岐ナノワイヤ(例えば、ナノテトラポッド、トライポッド、バイポッド、そして分岐テトラポッド)の成長は、例えば以下に記載されている。Jun 等 (2001) "Controlled synthesis of multi-armed CdS nanorod architectures using monosurfactant system" J. Am. Chem. Soc. 123, 5150-5151; Manna 等 (2000) "Synthesis of Soluble and Processable Rod-,Arrow-, Teardrop-, and Tetrapod-Shaped CdSe Nanocrystals" J. Am. Chem. Soc. 122, 12700-12706。
【0036】
ナノ粒子の合成は、例えば以下に記載されている。USPN 5,690,807 to Clark Jr. 等 (November 25, 1997) 題名 "Method for producing semiconductor particles"; USPN 6,136,156 to El-Shall, 等 (October 24, 2000) 題名 "Nanoparticles of silicon oxide alloys;" USPN 6,413,489 to Ying 等 (July 2, 2002) 題名"Synthesis of nanometer-sized particles by reverse micelle mediated techniques;" and Liu 等 (2001) "Sol-Gel Synthesis of Free-Standing Ferroelectric Lead Zirconate Titanate Nanoparticles" J. Am. Chem. Soc. 123, 4344.ナノ粒子の合成もまた、ナノ結晶、ナノワイヤ、および、分岐ナノワイヤの成長について述べた上記の引用文に記載されている。ここで、結果として生じるナノ構造は、約1.5未満のアスペクト比を有する。
【0037】
コアシェルナノ構造へテロ構造、つまり、ナノ結晶およびナノワイヤ(例えばナノロッド)のコアシェルヘテロ構造の合成は、例えば以下に記載されている。Peng 等 (1997) "Epitaxial growth of highly luminescent CdSe/CdS core/shell nanocrystals with photostability and electronic accessibility" J. Am. Chem. Soc. 119, 7019-7029; Dabbousi 等 (1997) "(CdSe)ZnS core-shell quantum dots: Synthesis and characterization of a size series of highly luminescent nanocrysallites" J. Phys. Chem. B 101, 9463-9475; Manna 等 (2002) "Epitaxial growth and photochemical annealing of graded CdS/ZnS shells on colloidal CdSe nanorods" J. Am. Chem. Soc. 124, 7136-7145; and Cao 等 (2000) "Growth and properties of semiconductor core/shell nanocrystals with InAs cores" J. Am. Chem. Soc. 122, 9692-9702.同様のアプローチは他のコアシェルナノ構造の成長に適用されることも可能である。
【0038】
異なる材料がナノワイヤの長軸に沿って異なる場所に分布されるナノワイヤへテロ構造の成長は、例えば以下に記載されている。Gudiksen 等 (2002) "Growth of nanowire superlattice structures for nanoscale photonics and electronics" Nature 415, 617-620; Bjork 等 (2002) "One-dimensional steeplechase for electrons realized" Nano Letters 2, 86-90; Wu 等 (2002) "Block-by-block growth of single-crystalline Si/SiGe superlattice nanowires" Nano Letters 2, 83-86; および US特許出願第60/370,095号 (April 2, 2002) to Empedocles 題名 "Nanowire heterostructures for encoding information." 同様のアプローチは他のヘテロ構造の成長に適用されることも可能である。
【0039】
本明細書に記載するように、また共同譲渡された2005年11月21日出願の仮特許出願第60/738,100号(その全内容は参照によって本明細書に援用される)に記載するように、複数のシェルを持つナノワイヤ構造も製造することができる。例えば、導電性内核(inner core)ワイヤ(ドープされていてもされていなくてもよい)(例えば、電子伝達に必要な導電性を与えるため)と、触媒(および/またはポリマー電解質)を結びつけるのに適した表面を提供する一以上の外側のシェル層と挙げられる。例えば、多層、または多壁カーボンナノチューブ(MWCN)は、形成されうる。この中で、触媒(および/またはポリマー電解質)を結びつけるための表面(SiC)と、必要な伝導性を与えるための導電性カーボンナノチューブ核(コア)とを供給するために、最も外側のシェル層は炭化ケイ素に換えられる。他の実施形態において、コア(核)は高ドープ材料、例えばドープしたシリコン、から成る。そして、炭化物、窒化物などの材料(例えばSiC)のシェルは、コアの上に形成してもよい。コア材料としてのシリコンを用いることは、シリコンナノワイヤの組み立てのために知られた広範にわたる経験とインフラとを活用する。SiC、WC、MoC、または混合炭化物(WSiC)のような炭化物シェルは、制御された表面反応を用いてコア材料の周りに形成されてもよい。SiC、WC、および、MoCは、高い伝導率と化学的安定性のため知られている。加えて、これらの材料は、メタノールの酸化におけるPtのような貴金属と同様の触媒特性を有することが示され、それゆえ、鳥の巣型ナノワイヤMEAで、更なる性能強化を提供しうる。シェルのための前記材料は、原子層堆積(ALD)によってコアナノワイヤ表面(例えばシリコン)上に堆積させてもよく、その後、例えば高温炭素熱還元により炭化物に換えられうる。
【0040】
本発明の実施において使われることができる典型的なナノワイヤは、米国特許出願公開第2007-0212538号と米国特許出願公開第2008-0280169号で開示されているような、カーボンから成るナノワイヤを含む。両文献の開示内容のすべては、あらゆる目的で、参照により本明細書に援用される。米国特許出願公開第2007-0212538号と米国特許出願公開第2008-0280169号で開示されているように、適切な実施形態において、ナノワイヤは、複数のナノワイヤ構造を備えた、相互接続されたナノワイヤネットワークを形成することができる。この中で、様々なナノワイヤコアに添付したナノグラファイト(黒鉛)板の形状の炭素ベースの構造は、ナノワイヤ構造を結び付ける。
【0041】
密集して充填したナノワイヤの構造は、相互に連結するナノグラファイト板の有無によらず、『鳥の巣』構造と言う。この構造は、多孔性構造の形をとり、ナノワイヤとナノグラファイト板の間の孔のサイズは、メソ細孔およびマクロ孔が適切である。ここで使われる用語『メソ細孔』はマイクロ細孔(マイクロ細孔は直径約2nm未満と定義される)より大きく、マクロ細孔(マクロ細孔は、直径約50nmより大きいと定義される)より小さく、そのため、直径約2nmより大きく約50nm未満である孔のサイズを有する孔を言う。好適には、相互接続されたナノワイヤネットワーク300は、実質的にはマイクロ細孔が無い。すなわち、マイクロ細孔(つまり直径約2nm未満)は全細孔の約0.1%未満であり、ナノワイヤネットワーク300は、約100nmのサイズの細孔を好適に有する。
【0042】
〔膜電極複合体〕
米国特許出願公開第2007-0212538号と米国特許出願公開第2008-0280169号の至る所に記載されているように、そこで開示されるナノワイヤ構造および相互接続されたナノワイヤネットワークは、様々な燃料電池の用途と構成において使われることができる。例えば、ナノワイヤまたは相互接続されたナノワイヤネットワークを有する触媒、および、ナノワイヤ/ネットワークの表面に分散される活性触媒ナノ粒子を、生成することができる。典型的な触媒ナノ粒子は、Pt, Pd, Ru, Rh, Re, No, Fe, Co, Ag, Au, Cu, Zn、Sn、そのような構成要素を二以上の含む金属合金ナノ粒子、を含むが、これに限定されない。これらの触媒は、燃料電池カソードとして用いられることができ、例えばカソードは、ナノワイヤまたは相互接続されたナノワイヤネットワークおよびPt触媒ナノ粒子を備える。触媒は、例えばPtRu触媒ナノ粒子を使用することにより、燃料電池アノードとしても用いられうる。
【0043】
膜電極複合体(MEA)もまた、米国特許出願公開第2007-0212538号と米国特許出願公開第2008-0280169号の至る所に記載されており、カソード触媒およびアノード触媒、そしてプロトン伝導性膜(例えば、ナフィオン(登録商標)膜、デュポン社製、Wilmington, DE)も備える。そのようなMEAは、当技術分野で周知の方法、例えば、米国特許第6,933,033号; 第6,926,985号; 第6,875,537号に記載、を用いて組み立てられることができる。各文献の開示内容のすべては、参照により本明細書に援用される。典型的な実施例において、プロトン伝導性膜は、カソード触媒とともに一方の面に、そして、もう一方の面にアノード触媒が設けられる。そのようなMEA、加えて気体拡散膜(例えば、炭素繊維紙、または、炭素布)、バイポーラプレートおよびエンドプレート(例えば、機械加工のグラファイトまたは成形導電性ポリマー複合材)を備える燃料電池もまた、当技術分野で周知のように組み立てられることができる。ここに開示したナノワイヤと相互接続されたナノワイヤネットワークとを用いて組み立てることができる典型的な燃料電池は、プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)と直接メタノール型燃料電池(DMFC)とを含む。ナノワイヤおよび相互接続されたナノワイヤネットワークは、例えば、リチウム電池や電気化学的コンデンサで使用するために、アノードとカソードを作製するために使うこともできる。そのような電池やコンデンサの構成要素や構造は、当技術分野で周知である。
【0044】
一実施形態において、本発明は、燃料電池用膜電極複合体を提供する。好適には、複合体は、プロトン伝導性膜、プロトン伝導性膜に隣接した界面層、および一以上のナノワイヤ担持電気化学的触媒を備える。
【0045】
米国特許出願公開第2007-0212538号と米国特許出願公開第2008-0280169号の至る所で議論されているように、ナノワイヤ担持電気化学的触媒(本明細書と米国特許出願公開第2007-0212538号と米国特許出願公開第2008-0280169号で、触媒金属結合ナノワイヤとも呼ぶ)は、プロトン伝導性膜に隣接して配置されうる。ナノワイヤ担持電気化学的触媒はプロトン伝導性膜と結合できる一方で、膜とナノワイヤ担持電気化学的触媒間との間の付着力は幾分低くなる場合もあり、そのため、ナノワイヤ担持電気化学的触媒は裂けうる。それにより燃料電池の効率が下がる。一実施形態において、本発明はこれらの付着問題を克服するための解決策提供する。
【0046】
図1Aに示すように、燃料電池用膜電極複合体100は、好適には、プロトン伝導性膜102、電極104(例えば、アノードまたはカソード)、および、複数のナノワイヤ担持電気化学的触媒106を備える。ナノワイヤ担持電気化学的触媒は、米国特許出願公開第2007-0212538号と米国特許出願公開第2008-0280169号とで開示された炭素から成るナノワイヤを含むナノワイヤ110、および一以上の電気化学的触媒108を好適に備える。
【0047】
図1Bに示すように、ナノワイヤ担持電気化学的触媒とプロトン伝導性膜間との間の付着力が低いことから、MEAおよび/または燃料電気で利用される場合、例えば、112で、ナノワイヤは、しばしば裂けるか、膜の表面から引き離される。このことで膜とナノワイヤとの間の抵抗が増し、それよってMEAおよびそれを有するあらゆる燃料電池の効率は下がる。
【0048】
図1Cに示すように、界面層116は、膜電極複合体114を形成するために、プロトン伝導性膜102とナノワイヤ担持電気化学的触媒106との間に配置されうる。本明細書中に使われるように『界面層』とは、ナノワイヤ担持電気化学的触媒のナノワイヤとプロトン伝導性膜との間の構造を提供する物質を言い、両方の構造と互換性があり、表面積、および/または、ナノワイヤと膜との間の付着を増加する。界面層は、プロトン交換膜102に接するように膜上に、噴霧(スプレー)、培養、堆積、塗り、レイヤー、コート(回転塗布を含む)、ペイント、スパッタ等されうる。
【0049】
典型的な実施形態おいて、プロトン伝導性膜102は、ポリ炭化水素膜のような炭化水素膜を備える。プロトン伝導性膜102として使用するための追加材料は、当技術分野で周知であり、例えばポリベンゾイミダゾール(PBI)あるいはリン酸をベースにしたポリマーを含む。
【0050】
プロトン伝導性膜102として使用するための材料は、当技術分野で周知であり、フッ化膜を含み、例えば、ナフィオン(デュポン)、Hyflon PFA(Solvay Solexis)、Flemion(旭硝子)、または、Aciplex(旭硝子)、が挙げられる。プロトン伝導性膜102として使用するための追加材料は、非フッ化炭化水素電極ポリマーを含む炭化水素膜を含み、例えば、スルホン化ポリエーテル・エーテル・ケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルイミド、スルホン化ポリフェニレン・エーテル、スルホン化ポリ(アリール・エーテル・スルホン(arylene ether sulfone))、スルホン化ポリ(フェニレン硫酸物)、アルキルスルホン化ポリ(ベンゾイミダゾール)などが挙げられる。好適には、本発明のプロトン伝導性膜102は炭化水素膜である。プロトン伝導性膜に関する詳細は、例えば、V. Neburchilov 等 (2007) “A review of polymer electrolyte membranes for direct methanol fuel cell” J Power Sources 169 221, および B. Smitha 等 (2005) “Solid polymer electrolyte membranes for fuel cell applications - a review” J. Membrane Science 259 10 に見出され、各文献のすべては、参照により本明細書に援用される。
【0051】
更なる実施形態において、燃料電池用膜電極複合体は、プロトン伝導性膜、プロトン伝導性膜に隣接した界面層、および界面層に隣接した一以上のナノワイヤ担持電気化学的触媒を備える。
【0052】
いかなる理論にも制約されないことを願い、界面層116の使用は、プロトン伝導性膜とナノワイヤ担持電気化学的触媒との間の接触表面積を増し、そのため、ナノワイヤ担持電気化学的触媒とプロトン伝導性膜との間の付着をより強くすると考えられている。一般的に、MEAのナノワイヤ担持電気化学的触媒は、触媒担持用のナノワイヤ使用の結果、表面積が限られている。従って、ナノワイヤとプロトン伝導性膜との間の相互作用は、この表面積の合計に制限される。界面層の使用は、(現在、界面層に接触した)ナノワイヤとプロトン伝導性膜との間の接触表面積を増やすことができる。
【0053】
更に、プロトン伝導性膜の表面に界面層116を設けることにより、メタノールクロスオーバーを防ぐ。メタノールクロスオーバーとは、メタノールがプロトン伝導性膜を通って移動する現象を言う。メタノールクロスオーバーを防ぐことは、全ての電流密度でセルの電位を増やす。更に、メタノールクロスオーバーを防ぐことは、特に電流密度が高い場所で、セルの性能が、カソードのフラッディング(flooding)により低下することを防ぐ。
【0054】
更には、プロトン伝導性膜102とナノワイヤ担持電気化学的触媒106との間の界面で、化学反応は他の領域より活発に起こる。それゆえ、界面層116としてその界面で炭素担持触媒を設けることにより、炭素担持触媒はその中で化学反応を誘発するため追加触媒として作用するが、セルの性能は向上し、その一方で、触媒使用量の減少によりコストダウンを達成できる。
【0055】
同様に、プロトン伝導性膜102とナノワイヤ担持電気化学的触媒106との間の界面で、プロトン電流は、他の領域より大きい。それゆえ、界面層116としてその界面に全フッ素置換ポリマー電極を設けることにより、全フッ素置換ポリマー電極はその中で追加のイオン誘導体として作用するが、セルの性能は向上し、その一方で、触媒使用量の減少によりコストダウンを達成できる。
【0056】
更には、ナノワイヤ担持電気化学的触媒106は、針形状を有している。そのため、ナノワイヤ担持電気化学的触媒106とプロトン伝導性膜102とを加熱プレス工程により結合すると、この加熱プレス工程でナノワイヤ担持電気化学的触媒106はプロトン伝導性膜102に対して加圧プレスされ、プロトン伝導性膜102に貫通孔ができる。その一方で、界面に界面層116を設けることにより、プロトン伝導性膜102への貫通孔が阻止され、信頼性が向上する。
【0057】
界面層116は、好適には、炭素担持電気化学的触媒を備える。好適には、炭素担持電気化学的触媒の炭素は、カーボンブラック、カーボンパウダー、または、カーボン粒子を含む。ここに使われるように、カーボンブラックは、石油製品の不完全燃焼により生成される物質を言う。カーボンブラックは、体積比に対して極めて高い表面積を有するアモルファス(非晶質)炭素の一形態である。好適な実施形態において、炭素は、カーボンブラック−Cabot VULCAN(登録商標)XC72 (Billerica, MA)である。界面層116としてプロトン伝導性膜上でカーボンブラックまたはカーボンパウダーを使用することにより、膜の表面積が増加する一助となる。それにより、ナノワイヤ担持電気化学的触媒のナノワイヤと膜の表面との間で相互作用をより多くし(潜在的には、追加的な非共有結合性の相互作用に終わる)、それにより担体と膜の間の付着が増す。
【0058】
本発明において、ナノワイヤ担持電気化学的触媒106と界面層116とに異なる役割を与えることが重要である。ナノワイヤ担持電気化学的触媒106は、効果的な化学反応を促進するために層として働く。ナノワイヤにより形成された相互接続されたネットワーク構造は、物質の拡散のために適切な孔を提供し、それにより多孔性が増す。これにより、発電が効率的に行われる。他方では、界面層116は、ナノワイヤ担持電気化学的触媒106とプロトン伝導性膜102との間の付着性が向上する。界面層116は、カーボンブラックのような微粒子材料から作られているきめの細かい層である。これにより、ナノワイヤ担持電気化学的触媒106とプロトン伝導性膜102との間の付着性が向上する。発電効率の観点から、より小さい厚みを有する界面層116がよりよく、界面層116の厚みは、ナノワイヤ担持電気化学的触媒106の厚みより比較的小さい。
【0059】
更なる実施形態において、界面層116は、単にカーボンブラック―Cabot VULCAN(登録商標)XC72 (Billerica, MA)のようなカーボンブラックを備えうる。
【0060】
更なる実施形態において、界面層116は、全フッ素置換ポリマー電極のようなポリマーを備える。界面層116として用いられうるポリマーの例は、ナフィオン(登録商標)(市販先:デュポンケミカルズ社、Wilmington)のようなスルホン化フッ素重合体、および、HYFLON(登録商標)PFA and MFA (入手先:Solvay Solexis社, West Deptford, NJ)のような半結晶性完全フッ素化した溶融加工可能なフッ素重合体を含む。
【0061】
好適には、本発明の実施において用いるための電気化学的触媒ナノ粒子は、Pt, Au, Pd, Ru, Re, Rh, Os, Ir, Fe, Co, Ni, Cu, Ag, V, Cr, Mo, Wおよびその合金または化合物から成る群から選ばれる少なくとも一つの金属を含む。例えば、電気化学的触媒ナノ粒子は、PtとRuの化合物を適切に備え、そして、PtRuナノ粒子が適切である。典型的な実施形態において、PtRuナノ粒子は、同時係属の米国仮出願第61/108,304号,filed October 24, 2008, 題名"Electrochemical Catalysts for Fuel Cells," Atty. Docket No. 2132.0610000に開示されているような特定比の原子状酸素を備えるPtRuナノ粒子である。
【0062】
本明細書中の『ナノ粒子』とは、大きさが、約500nm未満、好適には、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20nm未満、あるいは、約10nm未満の、少なくとも一つの領域または特有の大きさを有する粒子、結晶、球、または他の形状の構造を指す。好適には、本発明の実施において用いるための電気化学的触媒ナノ粒子は、約1nm〜約10nm、約1nm〜約9nm、約1nm〜約8nm、約1nm〜約7nm、約1nm〜約6nm、約1nm〜約5nm、約1nm〜約4nm、約1nm〜約3nm、または約1nm〜約2nm、例えば、約1nm、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、または約10nmのサイズを有する。
【0063】
典型的な実施形態において、ナノワイヤ担持電気化学的触媒および炭素担持電気化学的触媒の両者は、Pt, Au, Pd, Ru, Re, Rh, Os, Ir, Fe, Co, Ni, Cu, Ag, V, Cr, Mo, Wおよびその合金または化合物から成る群から選ばれる金属を含むナノ粒子を備える。好適には、両者は同じ金属のナノ粒子を備え、例えば、両者はPtRuナノ粒子を備えることができる。
【0064】
米国特許出願公開第2007-0212538号と米国特許出願公開第2008-0280169号および至る所に記載されているように、好適には、ナノワイヤ担持電気化学的触媒のナノワイヤは、C, RuO2, SiC, GaN, TiO2, SnO2, WCx, MoCx, ZrC, WNx, および MoNxナノワイヤから成る群から選ばれるナノワイヤである。ここで、『x』は、正の整数である。好適には、ナノワイヤは、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維、そしてSiCナノワイヤのような炭素を含むナノワイヤである。
【0065】
更なる実施形態において、本発明の燃料電池用膜電極複合体は、アノードおよび/またはカソード電極、例えば図1A−1Cに示すような104、を更に備える。本発明の燃料電池用膜電極複合体は、メタノール燃料電池、ギ酸燃料電池、エタノール燃料電池、水素燃料電池、または、エチレングリコール燃料電池などのあらゆる燃料電池の構成要素となり得る。
【0066】
アノード(および/またはカソード)電極のナノワイヤ部分は、増殖基質上に合成され、それから、燃料電池の膜電極複合体構造の中に、移動し組み入れうる。例えば、ある側面では、無機半導体または半導体酸化物ナノワイヤは、米国特許出願公開第2007-0212538号と米国特許出願公開第2008-0280169号に記載され、当技術分野で周知のVLS合成法に基づいたコロイド触媒を使って増殖基質の表面で増殖される。この合成技術に従って、コロイド触媒(例えば、金、白金などの粒子)は、基質の所望の表面に堆積する。コロイド触媒を含む基質は、それから、基質の表面に付着したナノワイヤを発生する合成過程に従う。他の合成方法は、例えば、50nm以下で、基質の表面を覆って置かれた薄い触媒フィルムの使用を含む。それからVLS過程の熱はフィルムを溶かし、ナノワイヤを形成する触媒の小滴を形成する。一般的には、この後者の方法が利用されるかもしれない。ここで、繊維の直径が均質であることは、最終の用途に対してさほど重要でない。一般的には、増殖基質は、金属、例えば、金または白金、を含み、基質の表面に金属メッキ、または、蒸着されうる。あるいは、多数の他のよく知られた金属付着技術のいずれかで、例えばスパッタリングなどで堆積してもよい。コロイド堆積の場合、基質の表面を最初に処理することにより、コロイドは通常、堆積し、それによりコロイドは表面に付着する。そのような処理は、以前に詳細が記載されているもの、すなわち、ポリリシン処理などを含む。処置した表面を有する基質は、その後、コロイドの懸濁液に浸される。
【0067】
ナノワイヤは、成長した後に、合成場所から採取される。その後、独立したナノワイヤは、ガス拡散層やプロトン交換膜上の界面層のような燃料電池の構成要素の関連表面に、例えば、スプレー/ブラシ・ペインティング、溶液コーティング、キャスティング、電解析出、ナノワイヤの流体懸濁液のフィルタリング、および、それらの方法の組み合わせによって導入あるいは堆積される。例えば、そのような堆積は、問題の構成要素(例えば一層以上の、ガス拡散層または、界面層を有するプロトン交換膜)をそのようなナノワイヤの懸濁液に浸すことのみで行ってもよい。あるいは、それに加えて構成要素の全てまたは一部を予め処理しておくことで、ワイヤ付着のために表面あるいは表面の一部に官能性を持たせてもよい。ナノワイヤを、溶液(例えば、メタノール、ポリエチレングリコール、または、水)に導入し、ろ過(例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜を通して真空ろ過)することにより、乾燥および洗浄後にフィルターから分離した上記ナノワイヤに高密度で絡み合ったマットまたは『鳥の巣構造』が得られ、その後、高温で熱処理(例えばアニール)される。結果として生じたナノワイヤの多孔性シート(ナノグラフィック板と相互接続されたもの、またはされないもの)は、その後、燃料電池の膜電極複合体に組み込むことができる。以下に記載されているような、他のいろいろな堆積法を用いることもできる。例えば、米国特許出願公開第20050066883号(公開日:2005年3月31日)と米国特許第6,962,823号が挙げられ、これらの開示内容すべては、あらゆる目的で参照によって本明細書に援用される。ナノワイヤは、一以上のバイポーラプレート、ガス拡散板、および/または、プロトン交換膜の界面層のような、一以上の燃料電池の構成要素上に直接成長させてもよい。
【0068】
もしメタノールが燃料として使われると、液体メタノール(CHOH)は、アノードで水の存在下で酸化され、CO、水素イオン、および、燃料電池の電気出力として外部回路を通過する電子を発生する。水素イオンは、電解質膜を通過し、空気中の酸素と外部回路からの電子と反応し、カソードで水を生成し、回路を完成させる。アノードおよびカソード電極はそれぞれバイポーラプレートと接触する。バイポーラプレートは、自身の表面にチャネルおよび/または溝を一般的に有し、そのチャネルおよび/または溝はそれぞれの触媒電極に燃料およびオキシダントを供給し、残物、例えば水やCOを排出させる。そして、バイポーラプレートは、熱交換のためにコンジット(管)も含んでもよい。一般的に、バイポーラプレートは電気伝導性が高く、グラファイト、金属、伝導性ポリマー、およびそれらの合金と化合物から作製されうる。ステンレススチール、アルミ合金、炭素、および化合物のような材料は、コーティングの有無によらず、PEM燃料電池のバイポーラエンドプレートのために実現可能な良い選択である。バイポーラプレートは、複合構造(例えば、金属、導電性ポリマーなど)に組み込まれた高伝導性または半導体ナノワイヤを備える複合材料から形成されうる。燃料電池の構成要素の形とサイズは、特定のデザインにより広範囲にわたって変えることができる。
【0069】
米国特許出願公開第2007-0212538号と米国特許出願公開第2008-0280169号の至る所に議論されているように、ナノワイヤ、例えばSiCまたはGaNのようなナノワイヤ、の表面の官能基の生成は比較的簡単であるため、Ptおよび/またはPtRu(プロトン伝導性ポリマー(例えばナフィオン(登録商標))と同様)のような触媒ナノ粒子は、ナノワイヤ上に例えば粒子が密集することなく簡単に堆積しうる。個々の触媒粒子は、その後、ナノワイヤコアを通ってアノード(およびカソード)へ直接繋がる。多数の相互接続されたナノワイヤの電気接続性により、Ptから電子伝導層への電子の経路が確保される。ナノワイヤの使用および結果として保証された電子の経路は、プロトン伝導性媒体(例えばナフィオン(登録商標))が電解質層でカーボン粒子を分離するといった従来のPEMFCストラテジーと共に以前に述べられた問題を排除する。電極層を支持するカーボン粒子の分離を取り除くことにより、Ptの利用率は向上する。
【0070】
図1Cに示すように、複数のMEAは結合可能であり、これにより、界面層を備えるプロトン交換膜それぞれにより分けられた別々のアノード電極とカソード電極を有する燃料電池スタックが形成される。スタック内のセルは、個々の燃料電池の電圧が加算されるようなバイポーラプレートにより直列に接続される。
【0071】
個々のナノワイヤネットワークのナノワイヤは、物理的かつ/または電気的にネットワーク内で一以上の他のワイヤに接続され、開いた、より分岐した、多孔性の、絡まり合った構造を形成する。上記構造は、反応物と排出物の拡散のための全体的に低い拡散抵抗、高い構造安定性、そして、電子のための高い電気的接続可能性を伴い、高い触媒効率を保証する。これにより、高電力密度と低い全体コストが得られる。例え二本のワイヤが互いに(または触媒粒子と)実際に直接物理的に接続してなくとも、いくらか小さく離れた距離で(例えば、電気的接続において)電荷を送ることがなお可能であることに留意することが重要である。選択的に、個々のナノワイヤは、ネットワーク内で少なくとも一以上の他のナノワイヤに物理的かつ/または電気的に接続されている。ナノワイヤの多数の接続可能性は、以下を保証する。つまり、システム内で一本のワイヤが切れるかダメージを受けると、例えば、ワイヤに沿った全ての点が異なる経路に沿って(例えばネットワーク内の他のナノワイヤを経由し)アノード(そしてカソード)電極になお接続している。これは、以前の充填粒子複合構造と比較して、向上した電気的接続可能性と安定性とを充分に提供する。ワイヤは、アノード(およびカソード)ガス拡散層バイポーラプレートとプロトン交換膜上の界面層との間の全ての方向(または一部方向のみ)に延長できる。ワイヤは、ガス拡散層と界面層との間の全ての方向に伸びない場合、ガス拡散層から界面層に向かって伸びることができるが、界面層には届かない。そして界面層は、膜からガス拡散層に向かって伸びうるが、ガス拡散層には届かない(しかし周りの他の方向でない)。それにより、電子は効果的にアノードに移動し、プロトンは確実にカソードに移動する。
【0072】
ナノワイヤは、分岐ナノワイヤネットワーク内でナノワイヤの表面に塗るポリマー電解質材料の中に好適に分散し、プロトン(例えば、H+)移動ために充分な接触点を提供する。ポリマー電解質は、例えば、ポリエチレン酸化物、ポリ(エチレン・コハク酸塩)、ポリ(β−プロピオラクトン)、ナフィオン(登録商標)デュポンケミカルズ社、ウィルミントン、より販売)のようなスルホン化フッ素重合体を含む様々なポリマーから作ることができる。好適な陽イオン交換膜は、例えば米国特許第5,399,184号で記載され、その開示内容は、参照によって本明細書に援用される。あるいは、プロトン伝導性膜は、多孔性の微細構造を有する発泡膜(expanded membrane)であってもよく、ここで、イオン交換材料が膜に浸入して膜の内部体積(interior volume)を効果的に満たす。参照によってその開示内容が本明細書に含まれる米国特許第5,635,041号は、発砲ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から形成されたそのような膜を記載している。発砲PTFE膜は、小繊維により相互接続されたノード(節)からなる微細構造を有す。同様の構造は米国特許第4,849,311号に記載され、その開示内容は、参照によって本明細書に援用される。さらなる実施形態において、プロトンシャトル分子(proton shuttle molecules)は、ナノワイヤに付着させてもよい。例えば、−SOH基を含む短い炭化水素鎖(例えば2〜6個の炭素の長さ)は、ナノワイヤに融合することができる。そのようなプロトンシャトル分子の使用は、必要とされるナフィオン(登録商標)または他のイオノマーの量を減らすことができ、それにより、触媒ナノ粒子の利用可能な表面積を増やす。
【0073】
−SOH基を備える短い炭化水素鎖を融合するための一般的な方法は、米国特許出願公開第2007-0212538号と米国特許出願公開第2008-0280169号に記載されている。相互接続されたナノワイヤネットワークの多孔性構造は、ナノワイヤ上に堆積した触媒(例えば、触媒粒子)に対する燃料電池反応物のための開いた(曲がりくねっていない)拡散経路を提供する。相互接続されたナノワイヤ間の隙間は、より多孔性の構造を形成する。効果的な孔のサイズは、ナノワイヤ個体数の密度、電解質層の厚さ、および、ある広さに対して用いたナノワイヤの幅とに通常依存する。これら全てのパラメータは容易に変化し、それにより、所望の効果的な多孔性を有するナノワイヤネットワークをもたらす。例えば、よりよいナノワイヤネットワークは、要求に見合うだけの電気伝導性および機械的強度を維持する間、反応物の一定の流れに備えるのに充分な多孔性を有する。同様に、ナノワイヤネットワークの多孔性によって、セル内の水分が管理される。分岐ナノワイヤネットワークは、むしろ、ネットワークの孔を塞ぎ蒸気移動を妨げる水分凝縮のための部位を提供することなく、燃料ガスおよび水蒸気が通過するのに充分に多孔性である。平均孔サイズは、通常約0.002μm〜約10.0μmの範囲であり、例えば1μm未満、例えば0.2μm未満、例えば0.005〜0.2μmが挙げられる。分岐ナノワイヤ構造の全体の多孔度は、約30%〜95%、例えば約40%〜60%、に簡単に制御できるが、アノードおよびカソードへの電気伝導性をなお保証している。
【0074】
ナノワイヤネットワークは、次の金属(例えば、白金、ルテニウム、金、または他の金属)の電気化学的触媒のための担体として好適に利用される。ここで触媒は、例えばナノワイヤ上に、塗布さまたは堆積されうる。燃料電池のための好適な触媒は、通常、選択した反応物に依存する。例えば金属触媒(本明細書を通して触媒金属とも呼ぶ)は、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、金(Au)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、およびその化合物や合金(二つの金属からなるPtRuナノ粒子など)の一つまたは複数からなる群から選ばれるが、それらに限定されるものではない。水素またはメタノール燃料の酸化に適した触媒材料は、例えばPd、Pt、Ru、Rh、そしてその合金といった金属を特に含む。
【0075】
金属触媒は、様々な触媒堆積技術を使って、薄膜(例えば、厚さ約10オングストローム未満)(または、一連の触媒粒子)として堆積したり、さもなければナノワイヤ担体と結合させてもよい。上記触媒堆積技術は、例えば、化学蒸着、電気化学析出(例えば、電気めっき、または、無電解化学めっき)、物理的蒸着、溶液含浸と析出、コロイド粒子吸収と沈殿、原子層堆積、およびその組み合わせ、を含む。ここに記載した方法によって付着した触媒金属の量は、触媒金属と担体(例えばナノワイヤ)の総量に対して、好ましくは重量で約0.5〜85重量%の範囲、適切には約10〜85重量%、さらに好適には約20〜40重量%、である。
【0076】
触媒は、溶液中の複数のナノメーターサイズの金属触媒粒子(例えば直径約1〜50nm、例えば直径約10nm未満、例えば直径1〜5nm)として、ナノワイヤ構造に堆積してもよい。一以上のカルボン酸基、硝酸基、水酸基、アミン基、スルホン酸基等のような一以上の機能的リンカー部分(例えば、化学反応基)を用いて、ナノワイヤ担体の外側表面を誘導体化することによって、ナノ粒子は担体の表面に結合する。触媒粒子(またはフィルム)は、均一か不均一かにナノワイヤ担体に付着させることができる。触媒粒子は、球形、半球形、または非球形であってもよい。触媒粒子は、担体の表面に複数の島状のものを形成してもよく、または、ナノワイヤ担体の表面に連続したコーティングを形成してもよい(例えば、コア・シェル配置、またはナノワイヤの長さに沿った縞または輪、などのような)。ナノワイヤネットワークが燃料電池のMEAに組み込まれる/堆積される前か後に、触媒粒子はナノワイヤ表面に付着されうる。
【0077】
触媒堆積の後、ナフィオン(登録商標)のようなプロトン伝導性ポリマーは、触媒粒子部位間のナノワイヤ表面に任意に堆積してもよい。これは、例えば、(使用時に、触媒官能基とは異なる)第二の官能基を用いて、ナノワイヤ表面に官能性を持たせることによって行われ、上記第二の官能基は電解質を選択的に結合するか、あるいは、一貫したおよび/または制御された湿潤(wetting)を促進する。ポリマーは、担体の表面の、連続のまたは非連続のフィルムのいずれかになりうる。例えば、ポリマー電解質は、ナノワイヤの表面に一様に湿らせてもよいし、または、ナノワイヤの長さに沿って点接触を形成してもよい。ナノワイヤは、例えばシラン化学反応を経てナノワイヤ表面に付着されうるスルホン酸炭化水素分子、フッ化炭素分子、分子の両タイプの短鎖ポリマー、または、分岐炭化水素鎖を用いて、官能性を持たされうる。当業者は、本明細書で任意に用いられる数多くの官能化そして官能基化技術(例えば、分離カラム、バイオアッセイなどを作る技術に類似した技術)を熟知している。あるいは、化学的結合部分を通してイオノマーをナノワイヤに結合する代わりに、ナノワイヤをプロトン伝導性にするために直接官能化してもよい。例えば、ナノワイヤは、良く知られた官能基化化学を使って、全フッ素置換スルホン化炭化水素のような表面コーティングを伴い官能化することができる。
【0078】
例えば、関連する部分および他の化学に関する詳細は、そのような部及び化学の構成/使用のための方法と同様に、以下で見つけられる。例えば、Hermanson Bioconjugate Techniques Academic Press (1996), Kirk-Othmer Concise Encyclopedia of Chemical Technology (1999) Fourth Edition by Grayson 等 (ed.) John Wiley & Sons, Inc., New York and in Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology Fourth Edition (1998 and 2000) by Grayson 等 (ed.) Wiley Interscience (print edition)/ John Wiley & Sons, Inc. (e-format)。更なる関連情報は、CRC Handbook of Chemistry and Physics (2003) 83rd edition by CRC Pressに見出される。プラズマ法などによるナノワイヤ表面に組み込むことができる伝導性および他のコーティングの詳細は、以下で見出される。H. S. Nalwa (ed.), Handbook of Organic Conductive Molecules and Polymers, John Wiley & Sons 1997. "ORGANIC SPECIES THAT FACILITATE CHARGE TRANSFER TO/FROM NANOCRYSTALS," 米国特許第6,949,206号も参照されたい。例えば官能化した表面への追加部分のカップリングについて関連する有機化学に関する詳細は、以下で見出される。例えば、Greene (1981) Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley and Sons, New York, およびSchmidt (1996) Organic Chemistry Mosby, St Louis, MO, and March’s Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure, Fifth Edition (2000) Smith and March, Wiley Interscience New York ISBN 0-471-58589-0, および米国特許公開第20050181195号, August 18, 2005公開。当業者は、ここに表面の官能化のために適用できる他の多くの関連文献および技術を熟知している。
【0079】
ポリマー電解質コーティングは、例えばシラン基を通って、ナノワイヤの表面に直接リンクされてもよいし。または、リンカー結合基または他の適当な化学反応基を経て結合されてもよい。それにより、例えば、置換シラン、ジアセチレン、アクリル酸塩、アクリルアミド、ビニル、スチリル、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化リン、N−(3−アミノプロピル)3−メルカプト−ベンズアミド、3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−マレイミドプロピル−トリメトキシシラン、3−ヒドラジドプロピル−トリメトキシシラン、トリクロロ−パーフルオロオクチルシラン、ヒドロキシコハク酸イミド、マレイミド、ハロアセチル、ヒドラジン、エチルジエチルアミノプロピルカルボジイミド、などのような結合剤との結合化学反応(誘導体化)に加わる。当業者に知られている他の表面官能基化学反応(surface functional chemistries )を用いてもよい。
【0080】
さらに、可溶化パーフルオロスルホン酸イオノマー(例えばナフィオン(登録商標))は、ナノワイヤ間のスペースに配置されてもよい。相互接続されたナノワイヤは、バイポーラプレート、ガス拡散層、および/または、プロトン伝導性膜上の界面層の一つの上の本来の位置に形成されない場合は、プロトン伝導性膜の両側のガス拡散層の間に配置されてもよい。そして複合体がホットプレスされ、本発明による完全な膜電極複合体燃料電池を形成する。プレス温度は、プロトン交換膜が軟化する温度帯、例えば、ナフィオン(登録商標)には125℃まで、のように決定される。圧力レベルは約200kgf/cmである。アノード/カソード電極の表面に燃料/酸素を効率よく供給するために、ガス拡散層は、従来の燃料電池において一般的に必要とされる。通常、炭素繊維布がガス拡散層として使われる。本発明の相互接続されたナノワイヤ複合膜電極触媒担体複合体を用いれば、ナノワイヤベースの電極の優れた構造により、このガス拡散層を除くことができる。そのような場合は、相互接続されたナノワイヤは、プロトン交換膜の両側のバイポーラプレート間に配置されうる。
【0081】
〔膜電極複合体の製造方法〕
燃料電池用膜電極複合体の製造方法もまた、例えば、図1A−1Cを参照して図2のフローチャート200に示すように提供される。好適な実施形態において、フローチャート200の202で、プロトン伝導性膜層102が準備される。その後、フローチャート200の204で、界面層116は、プロトン伝導性膜層に隣接して配置される。フローチャート200の206で、一以上のナノワイヤ担持電気化学的触媒106は、その後、界面層116に隣接して配置される。
【0082】
本明細書中で使われるように、用語『配置される』と『隣接して配置される』とは、構成要素が、膜電極複合体として作用するために構成要素が互いに作用し合えるように、互いに隣に並べられることを意図して使われている。互いに隣接して構成要素を配置することは、積層、塗布、噴霧(スプレー)、コーティング、拡散、または、様々な構成要素のいかなる他の応用形式を含む。
【0083】
ここに適切に記載されたように、プロトン伝導性膜は、ポリ炭化水素膜のような、例えば炭化水素ポリマー膜といった、炭化水素プロトン伝導性膜である。典型的な実施形態において、界面層116は、例えばここに記載されているようなカーボンブラック担持PtまたはPtRuのような炭素担持電気化学的触媒を備える。更なる実施形態において、界面層は、全フッ素置換ポリマー電解質のようなポリマーを含むことができる。使用可能なポリマーの例は、ナフィオン(登録商標)のようなスルホン酸フッ素重合体、および、HYFLON(登録商標)PFAおよびMFAのような半結晶完全フッ素化した溶融加工可能なフッ素重合体を含む。更なる実施形態において、界面層は、カーボンブラック−Cabot VULCAN(登録商標) XC72(Billerica, MA)のようなカーボンブラックを含むことができる。
【0084】
プロトン導電性膜上に界面層を配置する方法は、積層、噴霧、拡散、スピンコーティング、ディッピング、ペインティング、スパッタリングなどを含む。好適な実施形態において、界面層は、例えばコンピュータ制御されたスプレーノズルを使って、プロトン伝導性膜に噴霧される。
【0085】
本明細書を通して議論されるように、好適には、ナノワイヤ担持電気化学的触媒は、約1nm〜約30nm、例えば約1nm〜約10nm、のナノ粒子を含む。好適には、ナノ粒子は、 Pt, Au, Pd, Ru, Re, Rh, Os, Ir, Fe, Co, Ni, Cu, Ag, V, Cr, Mo, Wおよびその合金または混合物からなる群から選ばれる金属、例えば、PtRuナノ粒子、を含む。本明細書を通して記載されるように、本発明の実施で使用するのための典型的なナノワイヤは、C, RuO2, SiC, GaN, TiO2, SnO2, WCx, MoCx, ZrC, WNx, および MoNxナノワイヤから成る群から選ばれ、ここで、xは正の整数である。
【0086】
典型的な実施形態において、界面層は、炭素担持電気化学的触媒を含む。例えば、カーボンブラック担持電気化学的触媒ナノ粒子は、Pt, Au, Pd, Ru, Re, Rh, Os, Ir, Fe, Co, Ni, Cu, Ag, V, Cr, Mo, Wおよびその合金または混合物からなる群から選ばれる金属を含む。好適には、界面層は、カーボンブラック担持PtRuナノ粒子を含む。
【0087】
米国特許出願公開第2007-0212538号と米国特許出願公開第2008-0280169号の至る所に記載されているように、ナノワイヤ担持電気化学的触媒は、コーティング、拡散、積層、噴霧、ディップコーティング、スピンコーティングなどを含むあらゆる適切な方法を経て、界面層上に配置できる。典型的な実施形態において、ナノワイヤは、界面層にナノワイヤ溶液を噴霧することにより配置される。ナノワイヤ噴霧のための方法は、当技術分野で周知であり、例えば、米国特許第7,135,728号参照されたい。その開示内容は参照により本明細書に援用される。好適には、噴霧方法は、溶液中でナノワイヤが集合するのを妨げるための超音波浴と、表面にナノワイヤ溶液を届けるためのコンピュータ制御されたスプレーノズルとを利用する。噴霧は、最終的なMEAでナノワイヤの複数の層を作るために、ナノワイヤ(および一以上のイオノマー)の多数の層を噴霧することを含むことができる。
【0088】
更なる実施形態において、ナノワイヤ担持電気化学的触媒を含むガス拡散膜は、MEAを生成するために、界面層に直接配置できる。
【0089】
追加の実施形態において、既に界面層を備えるプロトン伝導性膜が提供されうる。担持電気化学的触媒(例えば、カーボンパウダー、ナノワイヤ、または、カーボンパウダー・ナノワイヤ複合)は、その後、予めコートされた膜または複合プロトン伝導性膜に配置される(例えば噴霧される)ことができる。
【0090】
好適には、ナノワイヤ担持電気化学的触媒は、ナノワイヤ担持電気化学的触媒(触媒結合ナノワイヤとも呼ばれる)の溶液、例えば、ナノワイヤインク溶液、を含む。本発明のナノワイヤ溶液は、界面活性剤またはポリマー(例えば、ナノワイヤの分散を助けるため)および/またはナフィオン(登録商標)のようなイオノマーといった一以上の追加構成要素を更にまた含みうる。好適には、様々なナノワイヤ溶液中のナノワイヤの濃度は、体積比で約0.01%〜約50%、例えば体積比で約0.1%〜約20%である。好適には、触媒金属結合ナノワイヤの第一および第二構成は、ナフィオン(登録商標)のようなイオノマーを一以上を更に含むナノワイヤ溶液である。
【0091】
本発明の方法で使うための典型的なナノワイヤ担持電気化学的触媒は、米国特許出願公開第2007-0212538号と米国特許出願公開第2008-0280169号の至る所に記載されているものを含む。好適には、ナノワイヤ担持電気化学的触媒の一構成は、アノード触媒金属結合ナノワイヤの溶液を含み、そしてナノワイヤ担持電気化学的触媒の第二の構成は、カソード触媒金属結合ナノワイヤの溶液を含む。好適には、二つの溶液は、ここに記載されるような界面層を含むプロトン伝導性膜の反対側に配置される。
【0092】
本明細書を通して記載されているように、MEAの様々な層を配置するための方法は、積層、ブラッシングなど、および、好適な実施形態での様々な層の噴霧(スプレー)を含む。ナノワイヤ担持電気化学的触媒の溶液(例えば、水溶性またはアルコールベースの溶液中のナノワイヤ)の噴霧は、層の厚みと密度の調整を可能にする。更に、一以上のイオノマーは、噴霧のための溶液に供給してもよく、それにより、ナノワイヤ担持電気化学的触媒と一以上のイオノマーとの溶液の噴霧を可能にする。典型的なイオノマーは、本明細書を通して記載されおり、スルホン酸ポリマー(例えば、ナフィオン(登録商標))などを含む。
【0093】
好適な実施形態において、ナノワイヤ担持電気化学的触媒の濃度は、配置する/噴霧する間、一定または比較的一定を維持する。そして、イオノマー濃度は、層が噴霧されるのに従い増加または減少し、イオノマー濃度の勾配を発生する。他の実施形態において、イオノマー濃度は、一定または比較的一定を維持することができ、一方、ナノワイヤ担持電気化学的触媒の濃度は、層が噴霧されるのに従い、増加または減少し、それにより、イオノマー濃度の勾配を発生する。更なる実施形態において、イオノマーおよび触媒結合ナノワイヤの両方の濃度は、層が配置されるように調整でき、イオノマー濃度の勾配を発生する。
【0094】
本発明はまた、本発明の方法で準備される膜電極複合体(MEA)を提供する。本発明の方法で準備される膜電極複合体は、様々な燃料電池電極の準備で、例えば、燃料電池電極スタックで利用されうる。典型的な燃料電池は、酸化燃料電池を含み、例えば、メタノール燃料電池、ギ酸燃料電池、エタノール燃料電池、水素燃料電池、エチレングリコール燃料電池、および、当業者に周知のその他の燃料電池が挙げられる。本発明の方法、好適にはナノワイヤ噴霧(スプレー)法は、膜電極複合体の準備のために素早いかつ簡単な製造技術を提供する。
【0095】
例えば、本発明はまた、ここに開示した方法に従って配置された(例えば、噴霧された)様々な要素を備える燃料電池用膜電極複合体を提供する。例えば、適切なMEAは、ガス拡散層を備え、そのガス拡散層は一以上のナノワイヤを含む。MEAは更に、ガス拡散層に隣接したナノワイヤ担持電気化学的触媒とイオノマーとの第一の構成を備える。典型的なMEAはまた、第一の触媒金属結合構成に隣接した拡散層を備えるプロトン伝導性膜と、プロトン伝導性膜の他の面に隣接したナノワイヤ担持電気化学的触媒およびイオノマーの第二の構成とを備え、プロトン伝導性膜もまた界面層を備える。更なる実施形態において、MEAは、担持電気化学的触媒の第2の構成に隣接した追加のガス拡散層を更に備えてもよい。
【0096】
MEAで利用されるイオノマー上でスルホン酸基の密度の増加、および、イオノマー側鎖の変化により、イオノマー(例えばナフィオン)の表面官能基(surface groups)および平衡重量(equivalent weight)を含む特性は、ナノワイヤ担持電気化学的触媒に合わすことができる。これは、電解質イオノマーに接触する触媒の比率を上げることができる。例えば、平衡重量(EW)が1000のナフィオンイオノマー、または、EWがより小さく(例えば850)より短い側鎖イオノマー(例えばHyflon)を、直接メタノール燃料電池においてナノワイヤ担持電気化学的触媒と共に利用できる。電気化学的触媒は、ナノワイヤ担体上に一列に並ぶ。それにより、ナノワイヤ構造内の大きな細孔に触媒を露出し、従って、調整されたイオノマーが効果的に触媒に接触でき、イオノマーと接触する触媒の比率を増加する。ここに使われるように、『調整されたイオノマー』とは、本発明のナノワイヤの特性に合うイオノマーを言い、イオノマーが適切に合わない場合に比べ、より多量のイオノマーが触媒に到達することができる。適切には、イオノマーは、平衡重量が1000または850のである。
【0097】
本明細書の至る所で記載しているように、MEAで使用するための典型的なナノワイヤは、ナノワイヤネットワーク内の個々のナノイヤーが、ナノワイヤネットワーク内で少なくとも一つの他のナノワイヤにより接触され、ナノワイヤネットワーク内で一以上の他のナノワイヤに電気的に接続されるナノワイヤである。例えば、ネットワーク内で少なくとも一つのナノワイヤは分岐した構造を有する。
【0098】
更なる実施形態において、本発明は、本明細書の至る所で開示される様々な膜電極複合体を利用する燃料電池電極スタックの製造方法を提供する。本発明の方法は、燃料電池電極スタック形成する場合、追加のMEA層(例えば、2、3、4、5、6、など、n番目のMEAまで)の組み立てを含むことができる。つまり、燃料電池電極スタックにおいて、n番目までのあらゆる数のMEA層、または、最終的に所望のMEA層を形成できる。
【0099】
一般的には、本発明の実施で使用するためのバイポーラプレートおよびエンドプレートは、電気伝導率が高く、グラファイト、金属、伝導性ポリマー、および、その合金と混合物から作ることができる。ステンレススチール、アルミ合金、炭素、および、混合物といった材料は、コーティングの有無によらず、燃料電池でのバイポーラエンドプレートのための実行可能なよい選択肢である。バイポーラプレートおよびエンドプレートもまた、複合構造に組み込まれる高伝導性または半導体ナノワイヤを有する複合材料から形成されてもよい(例えば、金属、伝導性ポリマーなど)。バイポーラプレートは好適には両側にチャネル及び/または溝を有しているが、エンドプレートは通常、燃料電池の部品と接している側(つまり、内表面)にだけチャネル及び/または溝を有しており、外表面はそのようなチャネルまたは溝を有していない。
【0100】
本発明の最終的な燃料電池スタックをそれから締め合わせ(clamped together)、燃料を適切な電解質(例えば、エチレングリコール溶液、メタノール、蟻酸、ホルムアルデヒド、あるいは小アルコール)に含浸させる。本明細書を通して開示されている構成、本技術分野において知られている構成をさらに加えて、実用的な燃料電池にしてもよい。
【0101】
本発明はまた、本明細書の至る所および米国特許出願公開第2007-0212538号と米国特許出願公開第2008-0280169号に記載されている様々な方法で作成される燃料電池を供給する。本明細書で議論するように、適切な実施形態において、本発明の燃料電池は、酸化燃料電池、例えばメタノール燃料電池、蟻酸燃料電池、エタノール燃料電池、水素燃料電池、エチレングリコール燃料電池である。
【0102】
当業者ならば、本明細書に記載された方法及び応用例に対して、他の適当な修正及び調整を、本発明及びその実施形態の範囲から外れることなしに行いうることは容易に理解できるであろう。本発明を詳細に記載してきたので、本発明は以下の実施例を参照することでより明確に理解できるであろう。以下の実施例はあくまでも説明のために本明細書に記すものであり、本発明を限定するものではない。
【0103】
〔実施例〕
実施例1:界面層を有するMEAの形成
アノード噴霧前の準備
1.真空プレート、アノード噴霧マット、イソプロパノールを有する噴霧テンプレートを洗浄する。
【0104】
2.真空プレート上に繊維噴霧テンプレートを被覆したPTFEを置き、1分間乾燥させる。
【0105】
3.繊維を被覆したPTFE上にナフィオン膜を置く。皺および気泡を除去する。
【0106】
4.真空をオンする。
【0107】
5.上記膜の表面上に噴霧マットを置き、固定する。
【0108】
6.真空プレートを90℃に設定する。
【0109】
アノードインクの準備
1.クリーンバイアル内で必要となるRtRu/CまたはPtRu/NWの量を測定する。
【0110】
2.バイアルに適切なミリポア水を加える。
【0111】
3.別のクリーンバイアル内で必要となるイオノマー溶液の量を測定する。
【0112】
4.イオノマー溶液を含むバイアル内に適切なIPAを加え、それらを十分に混合する。
【0113】
5.触媒/水の混合物のバイアル内にIPA希釈イオノマー溶液を加える。
【0114】
6.音波ホモジナイザーの電力設定を、要求される20%〜40%の間での設定、3/4“プローブにあわせる。
【0115】
7.1〜5分間、バイアル内の混合物を超音波にて分解する。
【0116】
8.これがアノードインクであり、均一の液体懸濁液として現れるであろう。
【0117】
アノード噴霧
1.温度が摂氏90℃になった後、噴霧プログラムを開始する。
【0118】
2.上記膜上に3層を作製するためにRtRu/Cインクを噴霧する。
【0119】
3.噴霧中、触媒の沈殿を回避するために、RtRu/Cインクがかき混ぜられる。
【0120】
4.その後、上記膜上にPtRu/NWインクを噴霧する。
【0121】
5.必要となる触媒充填を作り出すために、準備されたインクの全てが上記膜上に噴霧されるまでステップ3を繰り返す。
【0122】
6.触媒層を確実に乾燥させるために、噴霧後、10分間、摂氏90℃にプレート温度を維持する。
【0123】
7.ヒーターをオフし、室温になるまで電極を冷却する(摂氏30℃未満)。
【0124】
8.真空をオフする。
【0125】
9.上記膜を反転し、その膜上にカソードを作製するためにステップ1〜8を繰り返す。
【0126】
10.バッグ内にMEAを置き、使用されるまでそれを水平に保つ。
【0127】
実施例2:適合するイオノマーを有するMEAの形成
本発明のナノワイヤ担持電気化学的触媒(例:PtRu/ナノワイヤ触媒)は、市販の炭素担持触媒(例:PtRu/カーボンブラックまたはカーボンペーパー)に比べて明確な利点を有している。その利点としては、一次孔(primary pores)がないこと(例:20nm未満の細孔がないこと)、ナノワイヤ触媒の多孔性構造と使用されるイオノマーとの間で大きさが適合していること、浸炭ナノワイヤから電流を効率的に回収できることが挙げられる。
【0128】
イオノマー上のスルホン基の密度を増大させてイオノマーの側鎖を変化させることによって、イオノマー(例:ナフィオン)をナノワイヤ担持電気化学的触媒に適合させることができ、それによって、電解質イオノマーと接触している触媒の比率を上げることができる。例えば、平衡重量(equilibrant weight)(EW)が1000であるナフィオンイオノマー、あるいはより低いEW(例:850)のより短い側鎖イオノマー(例:Hyflon)は、直接メタノール型燃料電池におけるナノワイヤ担持電気化学的触媒の性能を上げる。ナノワイヤ担持電気化学的触媒はナノワイヤ担持体上で一直線に並び、それによって触媒をナノワイヤ構造における大きな細孔に露出させ、それによって調節されたイオノマーが効率的に触媒に接触でき、イオノマーと接触している触媒の比率を上げる。
【0129】
本発明のナノワイヤ結合電気化学的触媒を含む5cmのメタノール燃料電池の性能特性をさまざまな方法で決定する。図3に、EW1000ナフィオンイオノマーを用いた燃料電池におけるナノワイヤに結合したPtRu触媒の電圧と出力密度(PD)とを示す。40℃で3Mメタノール溶液のDMFCにおいて0.5mg/cmの非常に低い充填率で28%のPtRu結合ナノワイヤ触媒を含む触媒の0.23VにおけるPDは、48mW/cmと計算された。
【0130】
図4は、Pt触媒及びPtRu触媒とナノワイヤ密度の比率とを異ならせた本発明の4種類のナノワイヤ結合触媒のそれぞれについての、電流密度と電位対DHEとの関係を示すアノード分極化の結果である。32%PtRu/NW触媒はPtRu/C触媒よりもより高い性能を示した。これは32%PtRu/NWの充填率が2mg/cmで52%PtRu/C(2.4mg/cmまたは3mg/cm)よりも低いためである。図4において使用されるMEAは、次のものを含む。52%PtRu/C(TKK)−アノード/26%Pt/NW−カソード,2.4 mg/cm,EW1100イオノマー;52%PtRu/C(TKK)−アノード/40%Pt/NW−カソード,3mg/cm,EW1100;32%PtRu/NW−アノード/46%Pt/C(TKK)−カソード,EW1000,2mg/cm;28%PtRu/NW−アノード/46%Pt/C(TKK)−カソード,EW1100,0.5mg/cm
【0131】
図5に示すのは、Pt及びPtRuのナノワイヤ結合触媒に対する電流密度の関数としての、電圧と出力密度とを比較(性能に対するEW1000ナフィオンの影響を含む)したものである。図5において使用されるMEAは、次のものを含む。52%PtRu/C(TKK)−アノード/26%Pt/NW−カソード,2.4mg/cm,EW1100イオノマー;52%PtRu/C(TKK)−アノード/40%Pt/NW−カソード,2mg/cm,EW1100;32%PtRu/NW−アノード/46%Pt/C(TKK)−カソードEW1000,2mg/cm。同じアノードPtRu/C触媒が使用された場合、40%Pt/NWカソードは26%Pt/NWカソード触媒よりも高い性能を示した。46%Pt/Cカソードが使用された場合、32%PtRu/NWアノードは、PtRu/Cアノードと同様のDMFC性能を与えた。PtRu/NWアノード層におけるイオノマー(EW1000)は触媒においても良好な性能を示した。この図における結果は、Pt/NWカソード触媒が有望な結果を示したことを示している。
【0132】
図6は、本発明の濃度を異ならせた2種類のPt触媒結合ナノワイヤのカソード分極化を、Pt炭素結合触媒(TKK)と比較しながら示している。0.3A/cmの電流密度で0.71Vの電圧となった。これは、40%Pt/NW及び26%Pt/NWカソード触媒の両方が、水素‐空気燃料電池条件下で、従来のPt/C触媒と同様の性能を示す直接的な証拠を提示するものである。
【0133】
図7は、PtRuカーボン担持触媒(TKK)におけるアノード電位とPtRu金属重量あたりの総電流量(mA/mg−PtRu)との関係を、本発明の4種類のPtRuナノワイヤ担持アノード触媒と比較しながら示している。EW1000のナフィオンをカーボン担持触媒並びにナノワイヤ担持触媒(それぞれ0.45mg/cm、2mg/cmの充填率)に使用した。上記ナノワイヤ担持PtRu触媒は、同じイオノマーEW1000のカーボン担持触媒よりもはるかに良好な全体活性(mass activity)を示した。EW1100及びEW1000のナフィオンと、EW850のHyflonとをナノワイヤ担持PtRu触媒に使用し比較を行った。PtRu/NW触媒に関してEW850>EW1000>EW1100という性能における明確な傾向が観察された。PtRuナノワイヤ担持電気化学的触媒の金属の含有量は30%だった。3mol/Lのメタノールをアノードに、水素をカソードに供給し、40℃でアノードの分極性能を評価した。また、その結果を表1に示す。
【0134】
【表1】

【0135】
実施例3:界面層を有するMEAの性能
膜電極複合体のアノード電極は、次の手順により製造される。炭化水素膜は、真空テーブル上に置かれ、開口5cmのマスクにより被覆される。真空テーブルは60℃に熱せられている。
【0136】
炭素担持電気化学的触媒の分散は、炭素担持電気化学的触媒(例えば、田中貴金属工業社製Ketjenblackに担持された50wt%のPtRu)、可溶化パーフルオロスルホン酸イオノマー(例えば、Sigma-Aldrichから購入したナフィオン)、水、およびイソプロピルアルコールを混ぜて超音波処理することにより用意する。得られた炭素担持電気化学的触媒の分散は、ブラシ・ペインティングにより炭化水素膜の表面に塗布される。炭素担持電気化学的触媒層の触媒金属の付加(loading)は、0.5mg−RtRu/cmであった。
【0137】
ナノワイヤ担持電気化学的触媒の分散は、炭素担持電気化学的触媒(例えば、炭素を含むナノワイヤに担持された30wt%のPtRu)、可溶化パーフルオロスルホン酸イオノマー(例えば、Sigma-Aldrichから購入したナフィオン)、水およびイソプロピルアルコールを混ぜて超音波処理することにより用意する。得られた炭素担持電気化学的触媒の分散は、ブラシ・ペインティングにより炭素担持電気化学的触媒層の表面に塗布される。ナノワイヤ担持電気化学的触媒層の触媒金属の付加(loading)は、2mg−RtRu/cmであった。
【0138】
膜電極複合体のカソード電極は、アノード電極の他の面に炭素担持電気化学的触媒の分散をブラシ・ペインティングすることにより用意された。上記カソード電極については、炭素担持電気化学的触媒は、田中貴金属工業社製Ketjenblackに担持された50wt%のPtである。
【0139】
得られた膜電極複合体を、ガス拡散層(例えば、SGL carbon社製GDL35BC)で挟み、Fuel Cell Technologies Inc.社製のテストセルにインストールした。直接メタノール型燃料電池(DMFC)性能は、3mol/Lのメタノールをアノードに、空気をカソードに供給することにより40℃で評価される。
【0140】
図8は、アノード電極での炭素担持電気化学的触媒層の有無におけるDMFC分極化性能(電位(V)対電流密度(mA/cm))を示す。炭素担持電気化学的触媒層を有するDMFCは、炭素担持電気化学的触媒層を有していないDMFCに比べてより多くの電流を生成した。これの考えられる理由は、炭素担持電気化学的触媒層によって与えられる付着が増すことによりセルの抵抗が減少したことである。これのもう一つ考えられる理由は、炭素担持電気化学的触媒層がメタノールクロスオーバーを防ぎ、それによりカソードのフラッディング(flooding)を防いだことである。
【0141】
更なる例を以下に示す。
【0142】
炭化水素膜を、可溶化パーフルオロスルホン酸イオノマー溶液(Solvay Solexis社製HYFLON PFA)に一週間含浸させる。処理した炭化水素膜は、真空テーブル上に置かれ、開口5cmのマスクにより被覆される。真空テーブルは60℃に熱せられている。
【0143】
炭素担持電気化学的触媒の分散は、炭素担持電気化学的触媒(例えば、田中貴金属工業社製Ketjenblackに担持された50wt%のPtRu)、可溶化パーフルオロスルホン酸イオノマー(例えば、Sigma-Aldrichから購入したナフィオン)、水およびイソプロピルアルコールを混ぜて超音波処理することにより用意する。得られた炭素担持電気化学的触媒の分散は、ブラシ・ペインティングにより炭化水素膜の表面に塗布され、アノード電極を形成する。アノードの触媒金属の付加(loading)は、0.6mg−RtRu/cmであった。
【0144】
膜電極複合体のカソード電極は、アノード電極の他の面に炭素担持電気化学的触媒の分散をブラシ・ペインティングすることにより用意された。上記カソード電極については、炭素担持電気化学的触媒は、田中貴金属工業社製Ketjenblackに担持された50wt%のPtである。
【0145】
得られた膜電極複合体を、ガス拡散層(例えば、SGL carbon社製GDL35BC)で挟み、Fuel Cell Technologies Inc.社製のテストセルにインストールした。直接メタノール型燃料電池(DMFC)性能は、3mol/Lのメタノールをアノードに、空気をカソードに供給することにより40℃で評価される。
【0146】
図9Aおよび9Bは、可溶化全フッ素置換イオノマー溶液(含浸)を用いた膜処理の有無における、アノードおよびDMFCの分極化性能を順に示す。その結果は、イオノマー溶液を用いた処理により性能が向上したことを証明する。炭化水素膜を可溶化全フッ素置換イオノマー溶液に含浸することにより、炭化水素膜の表面に全フッ素置換イオノマーの層が形成される。含浸後の炭化水素膜は、アノード分極化性能が含浸後の炭化水素膜の分極化性能より劣ることを示しているにも関わらず、含浸後の炭化水素膜を有する直接メタノール型燃料電池は、より高い発電性能を示した。これの考えられる理由は、炭化水素膜の表面に全フッ素置換イオノマー層を与えることにより、炭化水素膜とプロトン伝導性膜102との間の付着性が向上し、それによりセルの抵抗が減少したことである。更に、少ない量の触媒を有している場合でさえ、含浸後の炭化水素膜は、含浸前の炭化水素膜と比較して、発電テストにおいて、直接メタノール型燃料電池に対して高い発電性能を与える。
【0147】
以上、本発明の実施形態の様々な例を提示した。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。これらの実施例を本明細書で提示したのは説明のためであり、限定のためではない。本明細書に含まれる教示内容に基づけば、代替の実施形態(本明細書で記載された内容の同等物、延長案、変形、逸脱等)は当業者には明らかであろう。そのような代替案も、本発明の範囲と精神に含まれる。
【0148】
本明細書で言及したすべての刊行物、特許、特許出願は本発明が属する技術分野における当業者の技術レベルを示しており、それらは参照によって本明細書に援用され、それは、個々の刊行物、特許、特許出願が参照によって援用されると具体的かつ個別に示された場合と同等の効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)プロトン伝導性膜層と、
(b)上記プロトン伝導性膜層に隣接する界面層と、
(c)上記界面層に隣接する1つ以上のナノワイヤ担持電気化学的触媒と、を含む燃料電池用膜電極複合体。
【請求項2】
上記プロトン伝導性膜は、炭化水素を含む請求項1に記載の燃料電池用膜電極複合体。
【請求項3】
上記界面層は、炭素担持電気化学的触媒を含む請求項1に記載の燃料電池用膜電極複合体。
【請求項4】
上記界面層は、全フッ素置換ポリマー電解質を含む請求項1に記載の燃料電池用膜電極複合体。
【請求項5】
上記界面層は、カーボンブラックを含む請求項1に記載の燃料電池用膜電極複合体。
【請求項6】
上記電気化学的触媒は、約1nmから約10nmのナノ粒子を含む請求項1に記載の燃料電池用膜電極複合体。
【請求項7】
上記電気化学的触媒は、Pt、Au、Pd、Ru、Re、Rh、Os、Ir、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、V、Cr、Mo、W、および、それらの合金または混合物からなる群から選択された金属を含むナノ粒子を含む請求項1に記載の燃料電池用膜電極複合体。
【請求項8】
上記ナノ粒子は、PtRuを含む請求項7に記載の燃料電池用膜電極複合体。
【請求項9】
上記ナノワイヤ担持電気化学的触媒および上記炭素担持電気化学的触媒は、Pt、Au、Pd、Ru、Re、Rh、Os、Ir、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、V、Cr、Mo、W、および、それらの合金または混合物からなる群から選択された金属を含むナノ粒子を含む請求項3に記載の燃料電池用膜電極複合体。
【請求項10】
上記ナノ粒子は、PtRuを含む請求項7に記載の燃料電池用膜電極複合体。
【請求項11】
上記ナノワイヤは、C、RuO、SiC、GaN、TiO、SnO、WC、MoC、ZrC、WNおよびMoNナノワイヤからなる群から選択され、xは正の整数である請求項1に記載の燃料電池用膜電極複合体。
【請求項12】
アノード電極および/またはカソード電極をさらに含む請求項1に記載の燃料電池用膜電極複合体。
【請求項13】
上記膜電極複合体は、メタノール燃料電池、蟻酸燃料電池、エタノール燃料電池、水素燃料電池、またはエチレングリコール燃料電池内の部品である請求項1に記載の燃料電池用膜電極複合体。
【請求項14】
上記ナノワイヤ担持電気化学的触媒は、平衡重量が1000以下の電解質イオノマーと接触している請求項1に記載の燃料電池用膜電極複合体。
【請求項15】
上記ナノワイヤ担持電気化学的触媒は、相互接続されたネットワークを形成している請求項1に記載の燃料電池用膜電極複合体。
【請求項16】
上記ナノワイヤ担持電気化学的触媒は、電解質イオノマーと接触している請求項1に記載の燃料電池用膜電極複合体。
【請求項17】
(a)プロトン伝導性膜層を設ける設置工程と、
(b)上記プロトン伝導性膜層に隣接する界面層を配置する配置工程と、
(c)上記界面層に隣接する1つ以上のナノワイヤ担持電気化学的触媒を配置する配置工程と、を含む燃料電池用膜電極複合体の製造方法。
【請求項18】
上記設置工程は、炭化水素のプロトン伝導性膜を設ける工程を含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記(b)の配置工程は、炭素担持電気化学的触媒を配置する工程を含む請求項17に記載の方法。
【請求項20】
上記(b)の配置工程は、全フッ素置換ポリマー電解質を配置する工程を含む請求項17に記載の方法。
【請求項21】
上記(b)の配置工程は、カーボンブラックを配置する工程を含む請求項17に記載の方法。
【請求項22】
上記(b)の配置工程は、上記プロトン伝導性膜層上に上記界面層を噴霧する工程を含む請求項17に記載の方法。
【請求項23】
上記(c)の配置工程は、約1nmから約10nmのナノワイヤ担持電気化学的触媒のナノ粒子を配置する工程を含む請求項17に記載の方法。
【請求項24】
上記(c)の配置工程は、ナノワイヤ担持電気化学的触媒のナノ粒子を配置する工程を含み、
上記ナノ粒子は、Pt、Au、Pd、Ru、Re、Rh、Os、Ir、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、V、Cr、Mo、W、および、それらの合金または混合物からなる群から選択された金属を含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
上記配置工程は、ナノワイヤ担持電気化学的触媒のナノ粒子を配置する工程を含み、
上記ナノ粒子は、PtRuを含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
上記(b)の配置工程は、Pt、Au、Pd、Ru、Re、Rh、Os、Ir、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、V、Cr、Mo、W、および、それらの合金または混合物からなる群から選択された金属を含むナノ粒子を含む炭素担持電気化学的触媒を配置する工程を含む請求項19に記載の方法。
【請求項27】
上記(b)の配置工程は、炭素担持電気化学的触媒を配置する工程を含み、
上記ナノ粒子は、PtRuを含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
上記(c)の配置工程は、ナノワイヤ担持電気化学的触媒のナノ粒子を配置する工程を含み、
上記ナノ粒子は、C、RuO、SiC、GaN、TiO、SnO、WC、MoC、ZrC、WN及びMoNナノワイヤからなる群から選択され、xは正の整数である請求項17に記載の方法。
【請求項29】
上記(c)の配置工程は、上記界面層上に上記ナノワイヤ担持電気化学的触媒を噴霧する工程を含む請求項17に記載の方法。


【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【公表番号】特表2012−507119(P2012−507119A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533334(P2011−533334)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/061684
【国際公開番号】WO2010/048405
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(505082822)ナノシス・インク. (32)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】