説明

留め具および該留め具を有する袋体

【課題】袋体の開口部の緊締後、被収容物の所有者の知らない間に他人によって該開口部が不正に開放されたときに、上記所有者によるその事実の認識を可能とする袋体の留め具を提供する。
【解決手段】締め紐2で絞って緊締された袋体の開口部を緊締状態に維持する留め具3は、可動部材10および案内部材20は、付勢部材30の付勢力に抗する押圧力が解除されているときに、紙条片4の挿通を可能とする条片挿通孔13,23が該可動部材10および案内部材20を貫通して形成されており、上記紙条片4の挿通後に、可動部材10に上記押圧力が加えられると、該可動部材10の条片挿通孔13の内面13Aで紙条片4を押圧して破断することを可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締め紐で絞って緊締された袋体の開口部を緊締状態に維持する留め具および該留め具を有する袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の留め具としては、特許文献1に開示されているものが知られている。特許文献1には、二つの袋体の側面同士を重ね合わせて縫製し、それぞれの袋体の開口部の縁に沿って形成されている長孔部に紐を挿通させ、該紐の両端部を長孔部の開口両端から出し、該紐をその両端部から係止具へ挿通させて該係止具を該紐に取り付けた形態が開示されている。係止具は該係止具のボタンを押しながら紐に対して移動させることが可能となっており、この係止具の移動により、袋体の開口部を開放したり緊締したりすることが可能となっている。かかる係止具によれば、袋体の開口部を絞って緊締した位置で、該係止具のボタンの押圧を解除することにより、該係止具が紐に係止して該紐に対する移動が阻止され、その結果、袋体の開口部が緊締されて封止される。
状態が維持される。
【特許文献1】特開平7−291305
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の袋体では、例えば、袋体に収容された被収容物の所有者が袋体の開口部を緊締状態とした後、該所有者の知らない間に他人が係止具を移動させて袋体の開口部を開放して、該袋体の中から被収容物の一部を盗み出したり該袋体の中へ異物を混入したりしても、上記所有者が他人によって袋体の開口部が開放されていたことをすぐに認識できない。該他人が袋体の開放後に係止具を元の位置に戻して袋体の開口部を緊締状態にしていれば、袋体は一見すると元の状態と何ら変わらないからである。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑み、袋体の開口部の緊締後、被収容物の所有者の知らない間に他人によって不正に該開口部が開放されたときに、上記所有者によるその事実の認識を可能とする袋体の留め具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る留め具は、締め紐で絞って緊締された袋体の開口部を緊締状態に維持する留め具であって、可動部材と、該可動部材を収容し該可動部材を案内する案内部材と、該可動部材と該案内部材との間に位置して該可動部材を一方向へ付勢する付勢部材とを備え、可動部材および案内部材は、締め紐を挿通させるための紐挿通孔が該可動部材および案内部材を貫通して形成されており、上記付勢部材の付勢力に抗する押圧力が可動部材に加えられているとき、該可動部材の紐挿通孔および案内部材の紐挿通孔が重複する範囲を有して、両紐挿通孔に挿通されている締め紐に対する留め具の移動が許容され、上記押圧力が解除されているとき、可動部材が上記付勢部材に付勢されて可動部材の紐挿通孔および案内部材の紐挿通孔の相対位置がずれて、該可動部材および案内部材が締め紐を挟持することにより留め具の該締め紐に対する移動が阻止される。
【0006】
かかる留め具において、本発明では、可動部材および案内部材は、上記押圧力が解除されているときに、紙条片の挿通を可能とする条片挿通孔が該可動部材および案内部材を貫通して形成されており、上記紙条片の挿通後に、可動部材に上記押圧力が加えられると、該可動部材の条片挿通孔の内面で紙条片を押圧して破断することを可能としていることを特徴としている。
【0007】
このような構成を有する留め具では、可動部材に対する押圧力が解除されているときに、条片挿通孔に紙条片を挿通しておくことにより、その後、可動部材に押圧力が加えられたときに、該可動部材が条片挿通孔の内面で紙条片を押圧して破断する。そして、これを発見した者は、袋体の開口部が不正に開放された可能性があることを知る。
【0008】
付勢部材は、可動部材および案内部材の少なくとも一方の部材の一部として形成することができる。これによって、付勢部材を別途設ける必要がなくなるので、部品点数を減少させることができ、留め具の構造の簡便化および製造コストの削減につながる。
【0009】
本発明において、可動部材の紐挿通孔の内面と案内部材の紐挿通孔の内面の少なくとも一方は、締め紐の挟持の際に、該締め紐に喰い込んで該締め紐に対する留め具の移動の阻止力を高める喰込部が形成されていることが好ましい。これによって、可動部材を押圧せずに袋体の開口部を開放する方向へ留め具を移動させようとしても、喰込部が締め紐に喰い込んで留め具の移動の阻止力が高められているので、該留め具を移動させることは困難となる。したがって可動部材を押圧せずに袋体の開口部を開放することを有効に防止できる。また、このような状態で袋体の開口部を開放するには、付勢力に抗して可動部材に大きな力を加えなければならず、これによって紙条片は確実に破断される。
【0010】
喰込部は、例えば、袋体の開口部を開放する方向への留め具の移動方向成分をもって突出している突起とすることができる。この方向に突出する喰込部を形成すると、袋体の開口部を緊締する方向に留め具を移動させることは容易にできても、可動部材を押圧せずに袋体の開口部を開放する方向へ留め具を移動させようするときには、突起が該留め具の移動方向成分をもって締め紐に喰い込むので、上記留め具の移動の阻止力を向上させることができる。
【0011】
可動部材の条片挿通孔の内面は、紙条片を押圧する部分に、紙条片を破断するための尖鋭部を有していることとすることが好ましい。これによって、可動部材が押圧された際に、上記尖鋭部によって紙条片を容易に破断することができる。例えば、上記尖鋭部は、カッター刃とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、以上のように、条片挿通孔への紙条片の挿通後に、可動部材に押圧力が加えられると、該可動部材が条片挿通孔の内面で紙条片を押圧して破断するので、被収容物の所持者が紙条片の破断の有無を確認した結果、該紙条片が破断していた場合には、該所持者は、該所有者の知らない間に他人によって袋体の開口部が不正に開放された可能性があることを認識できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0014】
図1は、締め紐で絞って緊締された袋体の開口部が本実施形態に係る留め具によって緊締状態に維持された形態を示す図である。箱状の被収容物Pを収容した袋体1の開口部1Aは、締め紐2が巻き付けられていて、該締め紐2で絞られて緊締されている。該締め紐2には留め具3が取り付けられており、該留め具3は締め紐2が上記開口部1Aを絞っている位置にて該締め紐2に係止することにより、該開口部1Aの緊締状態を維持している。また、留め具3には紙条片4が取り付けられている。
【0015】
本実施形態では、袋体1の開口部1Aに締め紐2を巻き付けて緊締することとしたが、緊締の形態はこれに限られず、例えば、開口部1Aの縁部で該開口部1Aに沿って形成した孔部に締め紐2を挿通し、該開口部1Aの縁部を押さえながら締め紐2を引っ張ることにより該開口部1Aを絞って緊締するような形態であってもよい。また、本実施形態では被収容物Pは箱状をなしているが、被収容物Pの形状は箱状に限られず、どのような形状であってもよい。
【0016】
図2は、本実施形態に係る留め具3の全体斜視図である。同図では、説明の便宜上、留め具3の一部を破断して示している。また、方向の表示を容易とするために、立体空間に直交座標XYZを設定し図示した。留め具3は、X方向の幅寸法に対してY方向に長い直方体外形をなす可動部材10と、同じく直方体外形をなし該可動部材10を収容するとともにY方向で該可動部材10を案内する案内部材20と、Y方向にて該可動部材10と該案内部材20との間に位置する付勢部材30とを備えている。
【0017】
可動部材10は、案内部材20におけるY方向での一端に開口して形成された受入孔部21から進入して案内部材20内に収容されている。可動部材10が案内部材20に収容された状態において、可動部材10におけるX方向一端側から案内部材20外へ突出している。この可動部材10の突出部分は後述の被押圧部11を形成する。
【0018】
可動部材10および案内部材20は、図2に示されているように、締め紐2の両端側(図2にて二点鎖線で二本のように図示)を挿通させるための四角形状の紐挿通孔12,22が該可動部材10および案内部材20をX方向で貫通して形成されている。本実施形態では、可動部材10の紐挿通孔12のY方向での寸法は、案内部材20の紐挿通孔22の同方向での寸法よりも大きく、また、上記両紐挿通孔12,22のZ方向での寸法はほぼ同じである。可動部材10の紐挿通孔12のY正方向側の内面12Aには、Y負方向に突出し先端が凸円弧状をなす喰込部12A−1が形成されている。案内部材20の紐挿通孔22のY負方向側の内面22Aには、Y正方向に突出し先端が凸円弧状をなす喰込部22A−1が形成されている。なお、該喰込部22A−1は、図示されている紐挿通孔22のみならず該挿通孔とX方向で対向して位置するもう一つの紐挿通孔22にも設けられている。
【0019】
可動部材10および案内部材20は、上記紐挿通孔12,22よりもY正方向位置に、紙条片4(図2にて二点鎖線で図示)を挿通させるための四角形状の条片挿通孔13,23が該可動部材10および案内部材20をX方向で貫通して形成されている。本実施形態では、可動部材10の条片挿通孔13のY方向での寸法は、案内部材20の条片挿通孔23の同方向での寸法よりも大きく、また、上記両条片挿通孔13,23のZ方向での寸法はほぼ同じである。なお、本実施形態では、図2にて二点鎖線で示されているように、紙条片4は条片挿通孔13,23への挿通後、輪状に丸められて、互いに対向する両端部の面同士が接着部4Aにて接着される。
【0020】
付勢部材30は、コイルばねとして形成されており、案内部材20内に設けられている。該付勢部材30の一端は可動部材10の端部に取り付けられて、該付勢部材30の他端は案内部材20の内面に取り付けられている。該付勢部材30は、Y方向での弾性変形が可能となっており、可動部材10をY方向にて図2における右方へ向けて付勢している。
【0021】
可動部材10の紐挿通孔12と案内部材20の紐挿通孔22とのY方向における位置関係、そして可動部材10の条片挿通孔13と案内部材20の条片挿通孔23とのY方向における位置関係は、上記付勢部材30の付勢状態により変化する。この点については、以下の使用要領にて説明する。
【0022】
次に、このように構成された留め具の使用要領について説明する。
【0023】
図3は、図2に示されている留め具のX−Y平面での断面図であり、留め具3に締め紐2および紙条片4が挿通されるまでの過程を示している。そして、図3(A)は締め紐2および紙条片4が挿通されていない状態、図3(B)は締め紐2が紐挿通孔12,22に挿通された状態、図3(C)は、さらに紙条片4が条片挿通孔13,23に挿通された状態を示している。
【0024】
可動部材10の被押圧部11に押圧力が加えられていない状態では、付勢部材30によって可動部材10がY負方向にて下方(図2における右方)へ付勢されていることにより、該可動部材10の紐挿通孔12は、図3(A)に示されるように、該案内部材20の紐挿通孔22に対して下方へずれて位置している。具体的には、紐挿通孔12における喰込部12A−1が形成されている内面12Aが上記紐挿通孔22のY方向中間位置に位置している。この状態において、Y方向での上記紐挿通孔12,22の重複範囲の寸法は締め紐2の太さ寸法よりも小さく、紐挿通孔12,22への締め紐2の挿通は許容されていない。
【0025】
また、可動部材10の条片挿通孔13は、図3(A)に示されるように、案内部材20の条片挿通孔23に対してY方向にて下方へずれている。図3(A)に示されるように、Y方向において上記条片挿通孔13,23は全く重複しておらず、該条片挿通孔13,23への紙条片4の挿通は許容されていない。
【0026】
図3(B)に示されるように、同図における上方(図2における左方)への押圧力、すなわち付勢部材30の付勢力に抗する押圧力が被押圧部11に加えられると、図3(B)における上方に向けて可動部材10が移動する(矢印A)。これによって、Y方向において可動部材10の紐挿通孔12が案内部材20の紐挿通孔22を含むように位置して、両紐挿通孔12,22が重複する。この結果、図3(B)に示されるように上記両紐挿通孔12,22への締め紐2の挿通が可能となる。
【0027】
一方、可動部材10の条片挿通孔13は、図3(B)に示されるように、案内部材20の条片挿通孔23に対してY方向にて上方へずれて位置する。同図に示されるように、上記条片挿通孔13,23はY方向において全く重複しておらず、該条片挿通孔13,23への紙条片4の挿通は許容されていない。
【0028】
紐挿通孔12,22に締め紐2が挿通された後、可動部材10の被押圧部11に押圧力が加えられた図3(B)の状態が維持されたまま、留め具3は袋体1の開口部1Aを緊締する方向へ締め紐2に対して移動させられることにより、袋体1の開口部1Aが締め紐2で絞られて緊締される。
【0029】
被押圧部11に対する上記押圧力が解除されると、図3(C)に示されるように、可動部材10は付勢部材30に付勢されて同図における下方へ向けて移動し、Y方向にて可動部材10の紐挿通孔12および案内部材20の紐挿通孔22の相対位置が図3(B)の位置からずれる。この結果、可動部材10の喰込部12A−1および案内部材20の喰込部22A−1が締め紐2に対してY方向にて両側から喰い込み、該喰込部12A−1,22A−1が締め紐2を挟持する。これによって、締め紐2に対する留め具3の移動が阻止される。すなわち、袋体1の開口部1Aを開放できない。
【0030】
このように、本実施形態では、Y方向にて互いに反対方向に突出する喰込部12A−1および喰込部22A−1を可動部材10および案内部材20に設けているので、該喰込部12A−1,22A−1を設けない場合と比較して、締め紐2に対する喰込量が増加する分、該締め紐2の挟持力が向上し、その結果、該締め紐2に対する留め具3の移動の阻止力も高まっている。
【0031】
また、可動部材10は付勢部材30に付勢されて図3(C)における下方へ向けて移動した状態では、同図に示されるように、Y方向において可動部材10の条片挿通孔13が案内部材20の条片挿通孔23を含むように位置している。この結果、図3(C)に示されるように、上記両条片挿通孔13,23への紙条片4の挿通が可能となる。そして、図2にて二点鎖線で示されているように、紙条片4が、条片挿通孔13,23へ挿通され、輪状に丸められて、互いに対向する両端部の面同士が接着部4Aにて接着される。
【0032】
以上のように、紐挿通孔条12,22に締め紐2をそして条片挿通孔13,23に紙条片を挿通させることにより、袋体1への留め具3の取付けは完了する。該留め具3の取付け後、袋体1の開口部1Aを開口するためには、紐挿通孔12,22による締め紐2に対する挟持力を解除すべく、可動部材10の被押圧部11に対して図3(B)の矢印Aの方向へ押圧力を加える必要がある。被押圧部11に対して該押圧力が加えられると、可動部材10の条片挿通孔13は、図3(C)に示される案内部材20の条片挿通孔23とY方向にて重複した位置から、図3(B)に示される上記条片挿通孔23に対してY方向にて同図における上方へずれた位置へ移動する。そして、該条片挿通孔13の移動過程において、該条片挿通孔13の内面13Aが紙条片4を同図における下方側から押圧して破断することとなる。
【0033】
すなわち、袋体1の留め具3の取付けが完了した後に、該留め具3を取り付けた者、例えば、被収容物Pの所有者が知らない間に他人によって袋体1の開口部1Aが開放された場合には、たとえ該開口部1Aの開放後に留め具3が元の位置に戻されていたとしても、紙条片4が破断していることを視認することによって、何者かによって袋体1が不正に開放されたことを認識することができる。
【0034】
また、被押圧部11を押圧することなく、袋体1の開口部1Aを開放する方向への留め具3を移動させようとしても、可動部材10の喰込部12A−1および案内部材20の喰込部22A−1が締め紐2にしっかりと喰い込んで該締め紐2を挟持しているので、該留め具3の移動は阻止される。したがって、被押圧部11を押圧することなく袋体1の開口部1Aが容易に開放されることを効果的に防止できる。
【0035】
本実施形態では、可動部材の紐挿通孔の内面と案内部材の紐挿通孔の内面に喰込部が形成されていることとしたが、該喰込部は必須ではなく、該喰込部を設けずに、単に可動部材の紐挿通孔の内面と案内部材の紐挿通孔の内面とによって締め紐を挟持することとしてもよい。これによっても、締め紐に対する挟持力は十分に確保できる。また、喰込部は上記紐挿通孔の内面と上記紐挿通孔の内面の一方にのみ形成されていてもよい。これによっても、締め紐に対する挟持力は十分に確保できる。
【0036】
また、上記喰込部を設ける代わりに、可動部材の紐挿通孔の内面と案内部材の紐挿通孔の内面を粗い面として形成してもよい。これによって、締め紐を挟持したとき、締め紐が延びる方向において上記両内面の該締め紐に対する摩擦抵抗が大きくなるので、袋体の開口部を開放する方向への留め具の移動の阻止力を高めることができる。
【0037】
本実施形態では、喰込部は紐挿通孔の内面に対して直角な方向に突出する突起として形成されたが、これに代えて、喰込部は袋体の開口部を開放する方向への留め具の移動方向成分をもって突出している突起として形成されていてもよい。このように喰込部を形成すると、袋体の開口部を緊締する方向へ留め具を容易に移動させることはできても、可動部材を押圧せずに袋体の開口部を開放する方向へ留め具を移動させようするときには、突起が該留め具の移動方向成分をもって締め紐に喰い込むので、上記留め具の移動の阻止力を向上させることができる。したがって、可動部材を押圧せずに袋体の開口部の開放することが効果的に防止される。
【0038】
本実施形態では、可動部材の条片挿通孔の内面は、紙条片を押圧する部分が平坦面として形成されていたが、これに代えて、上記内面に紙条片を破断するための尖鋭部を設けてもよい。例えば、上記内面を尖端を有する形状としてもよく、また、該内面に別途カッター刃を設けることとしてもよい。これによって、可動部材が押圧された際に、上記尖鋭部によって紙条片を容易に破断することができる。
【0039】
本実施形態では、付勢部材をコイルばねとしたが、付勢部材の形態はこれに限られず、例えば、板ばねや皿ばね等、他のばね部材であってもよい。また、付勢部材を別部材として設けずに、可動部材や案内部材の一部として設けて両者の協働によって弾性力が生じるような形態としてもよい。これによって、付勢部材を別途設ける必要がなくなるので、部品点数を減少させることができ、留め具の構造の簡便化および製造コストの削減につながる。例えば、可動部材の端部および該端部に対向する案内部材の端部の一方に、先端に向けて薄くなっているテーパ状の外面を有する突部を形成し、他方に、開口側へ向けて拡がるテーパ状の内面を有する凹部を形成することができる。この形態では、可動部材に対して押圧力が加えられると、上記凹部が上記突部によって押し拡げられるように弾性変形して該突部の進入を受け入れ、上記押圧力が解除されると、上記凹部が弾性変形状態から戻りながら該凹部の内面が突部を押圧することにより可動部材を押し戻すようになっている。
【0040】
本実施形態では、可動部材が案内部材に対して直動することとしたが、可動部材の移動形態はこれに限られない。例えば、可動部材および該可動部材を収容する案内部材を円筒状に形成し、可動部材が案内部材内にて軸線周りに所定角だけ回転するようにしてもよい。この場合、可動部材を周方向にて一方向に付勢する付勢部材が該可動部材の外周面と案内部材の内周面との間に設けられている。また、紐挿通孔および条片挿通孔がそれぞれ該可動部材および案内部材を貫通して形成されている。このような形態であっても、紐挿通孔に挿通された締め紐は該紐挿通孔の内面によって周方向で挟持され、また、条片挿通孔に挿通された紙条片は、可動部材が周方向に回転させられたときに、該可動部材の条片挿通孔の内面に周方向で押圧されて破断する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】締め紐で絞って緊締された袋体の開口部が本実施形態に係る留め具によって緊締状態に維持された形態を示す図である。
【図2】実施形態に係る留め具の全体斜視図である。
【図3】留め具に締め紐および紙条片が挿通されるまでの過程を示す図であり、(A)は締め紐および紙条片が挿通されていない状態、(B)は締め紐が紐挿通孔に挿通された状態、(C)は、さらに紙条片が条片挿通孔に挿通された状態を示している。
【符号の説明】
【0042】
1 袋体
1A 開口部
2 締め紐
3 留め具
4 紙条片
10 可動部材
12 紐挿通孔
12A 内面
12A−1 喰込部
13 条片挿通孔
20 案内部材
22 紐挿通孔
22A 内面
22A−1 喰込部
23 条片挿通孔
30 付勢部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
締め紐で絞って緊締された袋体の開口部を緊締状態に維持する留め具であって、可動部材と、該可動部材を収容し該可動部材を案内する案内部材と、該可動部材と該案内部材との間に位置して該可動部材を一方向へ付勢する付勢部材とを備え、可動部材および案内部材は、締め紐を挿通させるための紐挿通孔が該可動部材および案内部材を貫通して形成されており、上記付勢部材の付勢力に抗する押圧力が可動部材に加えられているとき、該可動部材の紐挿通孔および案内部材の紐挿通孔が重複する範囲を有して、両紐挿通孔に挿通している締め紐に対する留め具の移動が許容され、上記押圧力が解除されているとき、可動部材が上記付勢部材に付勢されて可動部材の紐挿通孔および案内部材の紐挿通孔の相対位置がずれて、該可動部材および案内部材が締め紐を挟持することにより留め具の該締め紐に対する移動が阻止される該留め具において、可動部材および案内部材は、上記押圧力が解除されているときに、紙条片の挿通を可能とする条片挿通孔が該可動部材および案内部材を貫通して形成されており、上記紙条片の挿通後に、可動部材に上記押圧力が加えられると、該可動部材の条片挿通孔の内面で紙条片を押圧して破断することを可能としていることを特徴とする留め具。
【請求項2】
付勢部材は、可動部材および案内部材の少なくとも一方の部材の一部として形成されていることとする請求項1に記載の留め具。
【請求項3】
可動部材の紐挿通孔の内面と案内部材の紐挿通孔の内面の少なくとも一方は、締め紐の挟持の際に、該締め紐に喰い込んで該締め紐に対する留め具の移動の阻止力を高める喰込部が形成されていることとする請求項1または請求項2に記載の留め具。
【請求項4】
喰込部は、袋体の開口部を開放する方向への留め具の移動方向成分をもって突出している突起であることとする請求項3に記載の留め具。
【請求項5】
可動部材の条片挿通孔の内面は、紙条片を押圧する部分に、紙条片を破断するための尖鋭部を有していることとすることとする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の留め具。
【請求項6】
尖鋭部は、カッター刃であることとする請求項5に記載の留め具。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の留め具を有する袋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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