留置針組立体
【課題】製造から長期間を経た場合にも、外針を通じての血液の漏出防止が実現され得る、改良された構造の留置針組立体を提供すること。
【解決手段】弾性弁体80に対して相対移動可能とされて弾性弁体80の外周面上に位置することで弾性弁体80の外周側への変形を制限する拘束リング118が外針ハブ16に設けられている一方、弾性弁体80よりも先端側に外れて位置させられた拘束リング118に対して係合し、内針ハブ12を外針ハブ16から取り外すに際してかかる係合に基づいて拘束リング118を弾性弁体80側に移動させて弾性弁体80の外周面上に位置させる係止作用部106が設けられている。
【解決手段】弾性弁体80に対して相対移動可能とされて弾性弁体80の外周面上に位置することで弾性弁体80の外周側への変形を制限する拘束リング118が外針ハブ16に設けられている一方、弾性弁体80よりも先端側に外れて位置させられた拘束リング118に対して係合し、内針ハブ12を外針ハブ16から取り外すに際してかかる係合に基づいて拘束リング118を弾性弁体80側に移動させて弾性弁体80の外周面上に位置させる係止作用部106が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化や輸液、採血の際に血管に穿刺されて、留置される留置針組立体の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者等に対して血液浄化や輸液、輸血等の処置を行う際には、多くの場合、その処置器具として、留置針組立体が用いられている。この留置針組立体は、良く知られているように、先端から内針が延び出す内針ハブと、先端から中空の外針が延び出す、中空の外針ハブとを有し、内針が外針に挿通された状態下で、内針ハブの先端部が外針ハブの基端側開口部に挿入されることによって、内針ハブと外針ハブとが互いに組み付けられて、構成されている。そして、内針と外針とを、共に、患者等の血管に穿刺した後、内針を、血管から引き抜きつつ、外針からも抜去することによって、外針を血管に留置して、使用されているのである。
【0003】
ところで、このような留置針組立体を用いる場合には、内針が抜去された外針を通じて、血液が患者等の体外に漏れ出すことがある。そこで、従来の留置針組立体には、外針ハブ内に止血弁が収容配置されて、外針ハブの基端側開口部から外部への血液の漏出防止が図られているものもある。例えば、特開2002−263197号公報(特許文献1)や特開2010−88521号公報(特許文献2)に示されているのが、それである。
【0004】
このような特許文献1や特許文献2に記載された留置針組立体では、単体での自由形状において閉鎖状態とされる止血弁に内針が挿通されており、内針が引き抜かれることによって、止血弁自体の弾性に基づいて血液の漏出が防止されるようになっている。しかしながら、このような構造では、止血弁に内針、特に太い内針が挿通された状態で長期間に亘って保持されると、止血弁が内針の断面形状に沿って塑性変形してしまい、内針の引抜き後にも止血弁が完全な遮断状態には復元しなくなるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−263197号公報
【特許文献2】特開2010−88521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、製造から長期間を経た場合にも、外針を通じての血液の漏出防止が実現され得る、改良された構造の留置針組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の第1の態様は、外針ハブの基端側に内針ハブが組み付けられて、該外針ハブに突設された外針に対して該内針ハブに突設された内針が挿通されている一方、該外針ハブの内腔を遮断する弾性弁体が配設されており、該弾性弁体に形成された閉スリットを貫通して該内針が該外針に挿通されていると共に、該外針ハブから該内針ハブが取り外されて該外針から該内針が抜去されることで該弾性弁体の該閉スリットが閉塞状態となって該外針を通じての流出流路が遮断される留置針組立体において、前記弾性弁体に対して相対移動可能とされて該弾性弁体の外周面上に位置することで該弾性弁体の外周側への変形を制限する拘束リングが前記外針ハブに設けられている一方、該弾性弁体よりも先端側に外れて位置させられた該拘束リングに対して係合し、前記内針ハブを該外針ハブから取り外すに際してかかる係合に基づいて該拘束リングを該弾性弁体側に移動させて該弾性弁体の外周面上に位置させる係止作用部が設けられていることを、特徴とする。
【0008】
このような第1の態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、内針ハブを外針ハブから取り外す際に、拘束リングが係止作用部によって弾性弁体の外周面上に移動させられるようになっている。これにより、弾性弁体の外周側への変形が拘束リングによって制限されて、弾性弁体に形成された閉スリットが閉塞状態で保持される。それ故、患者の血管等に内針および外針を穿刺してから内針を外針から抜去するに際して、血液が外針および押し子を通じて外針ハブ内に漏れ出すのを防ぐことができて、医療用器材の汚染等を回避することができる。
【0009】
特に、長期間に亘って内針が挿通された状態に保持されることによって、弾性弁体の単体での自由形状において閉スリットが完全には閉鎖されなくなったとしても、閉スリットを閉鎖する方向の外力が拘束リングから弾性弁体に及ぼされるようにすることで、閉スリットが閉塞されて、血液等の漏出の防止が高い信頼性を持って実現される。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載された留置針組立体において、前記弾性弁体には、前記拘束リングの該弾性弁体側への移動を規制して該拘束リングを該弾性弁体の外周面上に位置決めする係止突部が設けられているものである。
【0011】
第2の態様によれば、係止作用部によって移動させられる拘束リングが、係止突部との係止によって弾性弁体の外周面上に位置決めされる。このように係止突部との当接係止による拘束リングの位置決め機構を採用することにより、拘束リングが弾性弁体の外周面上の所定位置まで移動させられて、内針が外針から抜去される際に閉スリットがより確実に閉塞される。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載された留置針組立体において、前記拘束リングにおける前記弾性弁体側への移動方向前方側の開口部内周面が、開口方向に向かって次第に拡径する案内面とされているものである。
【0013】
第3の態様によれば、拘束リングが係止作用部によって弾性弁体の外周面上に移動させられる際に、拘束リングの基端側の開口周縁部が弾性弁体の外周面に引っ掛かるのを防ぐことができて、拘束リングを所定の位置までスムーズに移動させることができる。それ故、弾性弁体の閉スリットが拘束リングによってより確実に閉鎖されて、血液等の漏出が効果的に防止される。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の何れか1つの態様に記載された留置針組立体において、前記外針ハブには基端側に延びる筒状の押し子が設けられていると共に、前記弾性弁体には先端側に向かって延び出して該押し子に外挿される弾性筒部が形成されているものである。
【0015】
第4の態様によれば、弾性弁体の閉スリットが押し子によって押し開けられるようになっていることから、弾性弁体の開作動が高い信頼性をもって実現される。しかも、押し子が弾性弁体の弾性筒部に挿入されて、押し子が弾性弁体に対して位置決めされていることにより、押し子の弾性弁体への当接位置の安定化が図られて、より安定した閉スリットの開作動が実現される。
【0016】
本発明の第5の態様は、第4の態様に記載された留置針組立体であって、前記弾性弁体の外周部分において、前記弾性筒部と反対の基端側に向かって突出する環状突部が形成されているものである。
【0017】
第5の態様によれば、外針ハブに接続された輸液ラインの雄コネクタ等で弾性弁体が押圧される際に、雄コネクタ等から弾性弁体に入力される押圧力が押し子の基端部よりも外周側に及ぼされる。これにより、弾性弁体が押し子の外周面上で軸方向に圧縮されて、閉スリットが弾性弁体の変形によって安定して連通状態に切り替えられる。
【0018】
しかも、弾性弁体が押し子と雄コネクタ等との間で直接的に挟み込まれるのを回避できることから、弾性弁体に不要な変形拘束力が及ぼされるのを防ぐことができる。それ故、輸液ラインの雄コネクタ等と外針ハブを接続する際に入力される押圧力によって、弾性弁体が容易に変形させられて、閉スリットが効率的に連通状態に切り替えられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、内針ハブが外針ハブから取り外される際に、拘束リングが係止作用部によって弾性弁体の外周面上に移動させられることにより、弾性弁体における閉スリットを開放する方向での変形が制限される。これにより、閉スリットが不必要に開くのを防いで、血液等が外針を通じて外針ハブの基端側開口部から漏れ出すのをより確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の1実施形態としての留置針組立体を示す縦断面図。
【図2】図1に示された留置針組立体の要部を拡大して示す縦断面図。
【図3】図1に示された留置針組立体を構成する止血弁の縦断面図。
【図4】図3に示された止血弁の背面図。
【図5】図1に示された留置針組立体を構成する拘束リングの斜視図。
【図6】図5に示された拘束リングを別角度で示す斜視図。
【図7】図5に示された拘束リングの正面図。
【図8】図5に示された拘束リングの右側面図。
【図9】図5に示された拘束リングの平面図。
【図10】図5に示された拘束リングの縦断面図。
【図11】図5に示された拘束リングの配設状態を拡大して示す要部の縦断面図。
【図12】図1に示された留置針組立体において、内針を外針から抜去した状態の要部を示す縦断面図。
【図13】図1に示された留置針組立体を構成する内針ハブに、輸液ラインの雄ルアーチップが取り付けられた状態の要部を拡大して示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
先ず、図1には、本発明に従う構造を有する留置針組立体の一実施形態が、その縦断面形態において示されており、また、図2には、その一部が拡大して示されている。それらの図から明らかなように、本実施形態の留置針組立体は、内針10と、この内針10の基端部(図1及び図2中の右側端部)を固定する内針ハブ12と、内針10に外挿される外針14と、この外針14の基端部を固定する外針ハブ16とを有している。なお、本明細書では、留置針組立体を使用して患者への針の穿刺手技を行う際に、施術者よりも遠位の側を先端側、及びそのような遠位側に位置する留置針組立体の端部、或いはそれらを構成する各部材の端部を先端部と言い、また、施術者の近位の側を基端側、及びそのような基端側の端部を基端部と言う。
【0023】
より詳細には、内針10は、所定長さを有し、先端が鋭利な針先18とされた中空針からなっている。なお、内針10の形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ステンレス鋼やアルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金等の金属材料が、適宜に用いられる。
【0024】
内針ハブ12は、全体として、略円筒形状を呈し、内腔26が、先端側開口部28と基端側開口部30とを通じて、外方に開口している。この内針ハブ12の内部の軸方向中間部には、内腔26を先端側部分と基端側部分とに、軸方向に2つに仕切る仕切壁部32が一体形成されている。そして、内針ハブ12の仕切壁部32の形成部位よりも先端側部分が、先端側開口部28を通じて外部に連通する収容筒部34とされている一方、仕切壁部32よりも基端側部分が、基端側開口部30を通じて外部に連通する取付筒部36とされている。
【0025】
一方、取付筒部36の内部には、仕切壁部32の基端側端面に対して、固定筒部42が、取付筒部36と同軸上で一体的に立設されている。そして、この固定筒部42の内腔44に対して、仕切壁部32を貫通して延びる内針10が、その基端部を取付筒部36の内腔内に突入位置させるように挿通されて、固定されている。これによって、取付筒部36の内腔が、内針10の内腔(細孔)内に連通している。
【0026】
内針ハブ12には、キャップ24が組み付けられている。キャップ24は、全体として、先端側部分が基端側部分よりも小径とされた略段付円筒形状を有しており、基端側の開口部には、血液を外部に漏らさないための通気フィルタ46が設けられている。
【0027】
そして、かかるキャップ24が、通気フィルタ46の装着側とは反対側の小径の先端側部分において、内針ハブ12の基端側開口部30に圧入される等して、内針ハブ12に、取外し可能に組み付けられている。
【0028】
そのような内針ハブ12とキャップ24との組付状態下で、内針ハブ12の取付筒部36の内腔とキャップ24の内腔とが相互に連通されて、それらの両内腔にて、チャンバ48が形成されている。このチャンバ48は、内針ハブ12の先端側において、固定筒部42に固定された内針10の内腔に連通し、且つキャップ24の基端側の開口部が、通気フィルタ46にて閉塞されている。これにより、後述するように、内針10を患者に穿刺した際のフラッシュバックによって、内針10内に流入した血液が、キャップ24内のチャンバ48内に流れ込んで貯留されて、外部に漏れ出さないようになっている。なお、内針ハブ12とキャップ24の材質は、何等限定されるものでない。しかしながら、フラッシュバックによるチャンバ48内への血液の流入を確認できるように、透明または半透明の樹脂製であることが、望ましい。
【0029】
一方、外針14は、内針10よりも短い長さを有する、内針10に外挿可能な細管からなっている。この外針14は、内針10とは異なって、鋭利な針先を有していないものの、先端面が、先端側に向かうに従って次第に小径化するテーパ面とされている。これによって、内針10と共に、患者の血管に穿刺される際の抵抗が、できるだけ小さくされている。なお、外針14の先端部付近には、内部を流れる流体の出入りの効率化を図るために、1個または複数の穴が設けられていても良い。
【0030】
このような外針14の材質も、何等限定されるものではないものの、患者の血管に留置される際に、血管壁等を傷付けないようにするために、適度な可撓性を有しているものであることが望ましい。その点からして、外針14の形成材料としては、例えば、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリウレタン、ポリエーテルナイロン、ポリプロピレン等の各種の軟質樹脂が、好適に用いられる。外針14は、患者の血管に留置された後において、内部を流通する液体の流れが把握できるように、透明性を有していることが好ましい。また、外針14は、患者の血管内への留置部分の位置が把握できるように、形成材料中に、硫酸バリウムや炭酸バリウム等のX線造影剤が配合されていても良い。
【0031】
外針ハブ16は、略円筒状の全体形状を有しており、その内腔が収容部50とされて、基端側開口部52を通じて外方に開口している。この外針ハブ16の基端部には、ルアーロックの突部54が一体形成されて、外周側に突出している。外針ハブ16の先端面には、円柱状の固定用突起56が、同軸上で一体形成されている。この固定用突起56の外針ハブ16の先端部58に対して、それらを貫通して軸方向に延びる貫通孔60が設けられている。
【0032】
この貫通孔60に対して、外針14が、その基端部において、挿入されている。また、そのような状態において、貫通孔60内に、カシメピン68が、貫通孔60の基端側の開口部から圧入されている。これによって、貫通孔60内に挿入された外針14が、貫通孔60内で、カシメピン68の先端部外周面と貫通孔60の内周面との間で挟圧保持されている。以て、外針14が、外針ハブ16の先端部に固定されている。
【0033】
カシメピン68は、内部が中空部70とされた中空のテーパ筒形状を有している。これによって、外針ハブ16の先端部に固定された外針14の内腔が、かかる中空部70を通じて、外針ハブ16の前記収容部50内に連通している。
【0034】
外針ハブ16の内周面の軸方向中間部には、全周に亘って周方向に連続して延びる環状溝72が、形成されている。この環状溝72は、外針ハブ16の基端側に位置する側面が、基端側に向かうに従って次第に小径化するテーパ面形状を呈するテーパ状係止面74とされている。
【0035】
そして、内針10が、外針ハブ16の基端側開口部52を通じて、外針ハブ16の収容部50内に挿入され、更に、この収容部50内に連通する外針14に挿通されている。内針10の基端部に固定された内針ハブ12の先端面は、外針ハブ16の基端面に当接するように配置される。内針ハブ12と外針ハブ16とが、容易に着脱可能な状態で、互いに組み付けられている。
【0036】
そして、本実施形態の留置針組立体では、上記のようにして内針ハブ12と外針ハブ16とが互いに組み付けられた状態下において、外針ハブ16の収容部50の先端部分に、外針ハブ16の内腔を遮断する止血弁76が収容配置されている。また、内針ハブ12の収容筒部34内に、針先保護用プロテクタ78が、内針10に装着された状態で、収容配置されている。
【0037】
より具体的には、止血弁76は、例えば、特開2010−88521号公報に開示されたものと同様な構造を有している。即ち、止血弁76は、各種のゴム材料や熱可塑性エラストマ材料等の弾性体材料を用いて一体成形された単一品からなり、図3,図4に示されているように、弾性弁体80と弾性筒部82とを有している。
【0038】
弾性弁体80は、外針ハブ16の収容部50の内径よりも所定寸法小さな外径を有する略厚肉円板形状を呈している。この弾性弁体80の中央には、単体の自由形状において閉鎖される閉スリットとしての切込み84が形成されており、内針10が挿通されることによって押し広げられている。弾性筒部82は、略薄肉の円筒形状を呈し、円板状の弾性弁体80の厚さ方向一方側の面から、先端側に向かって同軸上で一体的に延び出している。この弾性筒部82の先端部には、収容部50の内径よりも僅かに大きな外径を有する円環板状の外フランジ部86が、一体的に周設されている。なお、切込み84は、図4に示されているように、弾性筒部82の内径寸法よりも小さい幅寸法で形成されて、弾性弁体80を厚さ方向に貫通している。尤も、弾性筒部82の内径寸法と同じ幅寸法の切込みが形成されて、弾性筒部82にまで至っていても良い。
【0039】
また、止血弁76における弾性弁体80よりも基端側には、環状突部88が一体形成されて突出している。環状突部88は、略円環形状乃至は略円筒形状を有しており、弾性筒部82の外周部分において弾性弁体80の厚さ方向他方側の面から延び出している。なお、環状突部88は、内径寸法が弾性筒部82と略同じとされていると共に、外径寸法が後述する係止突部90の最大外径寸法と略同じとされており、弾性筒部82に比して厚肉とされている。
【0040】
また、止血弁76における弾性弁体80の外周面上には、係止突部90が突設されている。係止突部90は、その突出高さが基端側に行くに従って次第に大きくなっており、その外周側の端面が基端側に向かって次第に拡径するテーパ筒形状の当接面92とされている。これにより、止血弁76は、弾性弁体80上に設けられたテーパ状の当接面92を挟んで、軸方向先端側が外径寸法の小さい小径部とされていると共に、軸方向基端側が外径寸法の大きい大径部とされている。
【0041】
かくの如き止血弁76には、押し子94が組み付けられている。この押し子94は、硬質の樹脂材料等からなり、全体として、止血弁76の弾性筒部82の内腔内に挿入可能な円筒形状を有している。この押し子94の軸方向一端部の外周面が、軸方向一端側に向かうに従って次第に小径となるテーパ面形状とされている。また、押し子94の軸方向他端部には、円環板状の外フランジ部96が、一体的に周設されている。
【0042】
そして、止血弁76の弾性筒部82の内腔内に、押し子94が同軸的に挿入されている。その状態下で、外周面がテーパ面形状とされた押し子94の一端部の端面が、止血弁76の弾性弁体80に接触させられ、且つ押し子94の外フランジ部96が止血弁76の外フランジ部86に重ね合わされて、押し子94が、止血弁76に組み付けられている。また、本実施形態では、押し子94の外周面が弾性筒部82の内周面に密着しているが、それら押し子94の外周面と弾性筒部82の内周面の間には、多少の隙間があっても、止血弁76の基端部(外フランジ部86)等によってシールされていれば良い。
【0043】
なお、押し子94の一端部の端面は、止血弁76の弾性弁体80に対して、僅かに離隔した状態で近接して配置されていても良いし、充分に離隔した状態で配置されていても良い。尤も、後述する切込み84の開口面積などを安定させるためには、弾性弁体80と押し子94の一端部の端面が、当接しているか、或いは近接状態で配置されていることが望ましい。
【0044】
そして、このような止血弁76と押し子94との組付品が、止血弁76の外フランジ部86の外周面を、外針ハブ16の収容部50の内周面に圧接させ、且つ押し子94の外フランジ部96を外針ハブ16の先端部58の内面に当接させた状態で、収容部50の先端側に挿入されて、収容配置されている。かかる収容状態下において、止血弁76は、収容部50の内周面に圧接された外フランジ部86の復元力に基づく摩擦抵抗によって、収容部50内での軸方向の容易な移動が阻止されている。押し子94も、外フランジ部96が、外針ハブ16の先端部58と止血弁76の外フランジ部86との間で挟持されて、収容部50内での軸方向の移動が規制されている。或いは、外針ハブ16の内周面に係合部が設けられ、この係合部に対して、止血弁76や押し子94が係合することにより、それら止血弁76と押し子94の移動が規制されている。そして、収容部50内に挿入された内針10が、止血弁76の切込み84を押し広げるように弾性弁体80を弾性変形させて、切込み84に挿通されつつ、止血弁76の弾性筒部82内の押し子94の内腔と、外針ハブ16の先端部58の貫通孔60に挿通され、更に、外針14内に挿通されているのである。
【0045】
一方、内針ハブ12の収容筒部34内に収容される針先保護用プロテクタ78は、図1及び図2に示されているように、特開2010−88521号公報や特開2010−88522号公報などに示されているものと同様の構造を有しており、プロテクタ本体98と、このプロテクタ本体98に外挿された作用リング100とを有している。なお、プロテクタ本体98については、略同一の構造が上記公開公報に開示されていることから、ここでは説明を省略する。
【0046】
プロテクタ本体98に外挿される作用リング100は、特開2010−88521号公報や特開2010−88522号公報に示されているように、矩形の内腔が形成されてなる枠状形態を有している。
【0047】
また、作用リング100の対向する2つの壁部からは、弾性変形可能な係止用突出部102が、先端側に向かって軸方向に延び出すようにして、作用リング100に一体形成されている。この係止用突出部102は、作用リング100から延び出す基端側の部分が、何れも長手矩形の平板形状を呈して互いに対向する2つの平板部104,104からなり、且つその先端側の部分が、軸方向一方側の端面において、2つの平板部104,104の各先端面と一体的に接続された略円筒形状の係止作用部106からなっている。
【0048】
また、この係止作用部106の先端側には、径方向において互いに対向する2つの部位に、矩形の切欠部108,108がそれぞれ設けられている。これによって、2つの切欠部108,108が設けられた係止作用部106の先端側部分の2つの残余部位にて、分割円筒形状を有して、軸方向に延びる、径方向内方に弾性変形可能とされた延出係止片110,110が、それぞれ形成されている。また、それら各延出係止片110の先端部の外周面には、外フランジ状の凸部112が一体的に設けられている。また、係止作用部106の先端側に2つの切欠部108,108が設けられていることによって、2つの平板部104,104との接続側である、係止作用部106の基端側部分が、環状補強部114とされている。この環状補強部114には、内周面に開口して周方向環状に延びる係合溝116が形成されている。
【0049】
要するに、作用リング100から延び出す係止用突出部102は、その延出方向の中間部に、環状補強部114が設けられて、この環状補強部114の軸方向の一方側に、2つの平板部104,104が、互いに対向して軸方向に延び出している一方、環状補強部114の軸方向の他方側に、2つの延出係止片110,110が、互いに対向して軸方向に延び出している。これによって、係止用突出部102の全長が十分に長くされても、各延出係止片110の自由長が有利に短くされている。その結果、各延出係止片110,ひいては係止用突出部102の強度の向上が有利に図られている。
【0050】
なお、このような作用リング100の材質も、特に限定されるものではないが、弾性を有していることが好適とされる係止用突出部102が作用リング100に一体形成されていることから、作用リング100の形成材料としては、例えば、弾性を有する樹脂材料や金属材料、或いはゴム材料やエラストマ材料等が、適宜に用いられる。
【0051】
そして、作用リング100は、プロテクタ本体98の基端側部分に外挿されている。換言すれば、作用リング100に一体形成された係止用突出部102の2つの平板部104,104の間に、プロテクタ本体98が、その基部側部分を除いて挿入されている。こうして、針先保護用プロテクタ78が、それらプロテクタ本体98と作用リング100との組付品として、構成されている。
【0052】
そして、内針ハブ12の先端から延び出す内針10の基端側部位が、プロテクタ本体98に挿通されることにより、針先保護用プロテクタ78が、内針10に対して、その針軸方向(プロテクタ本体98の中心軸と一致)に移動可能に装着されている。そのような内針10への装着状態下で、針先保護用プロテクタ78が、内針ハブ12の収容筒部34内に、収容配置されている。収容筒部34内に収容された針先保護用プロテクタ78は、作用リング100が、収容筒部34の内周面に対して非接触または接触して配置されている。
【0053】
そして、内針10が外針14に挿通されて、内針ハブ12が外針ハブ16に組み付けられている。これによって、内針ハブ12と外針ハブ16とが相互に組み付けられてなる留置針組立体が形成され、このような留置針組立体の内部に、止血弁76と針先保護用プロテクタ78と、外針ハブ16の収容部50内と内針ハブ12の収容筒部34内にそれぞれ収容された状態で組み込まれている。
【0054】
内針ハブ12と外針ハブ16との組付下では、針先保護用プロテクタ78の作用リング100の係止用突出部102が、内針ハブ12の収容筒部34の先端側開口部28を通じて、外針ハブ16の収容部50内に延び出している。そして、係止用突出部102の2つの延出係止片110,110の各凸部112が、収容部50の内周面に設けられた環状溝72内に突入して、かかる環状溝72のテーパ状係止面74に係止している。
【0055】
また、外針ハブ16の内周側には、拘束リング118が配設されて、止血弁76に外挿されており、内針ハブ12と外針ハブ16との組付下において止血弁76と作用リング100の径方向間に挿入されている。拘束リング118は、図5〜図10に示されているように、円環形状乃至は円筒形状の環状拘束部120を有しており、硬質の合成樹脂やニッケル−チタン合金やステンレス鋼等の金属で形成されて、環状拘束部120の径方向への拡縮を含む変形が殆ど生じないようになっている。
【0056】
さらに、拘束リング118には、径方向一方向で対向する周上の2箇所にそれぞれ係合突片122が設けられている。係合突片122は、環状拘束部120の一方の端部から軸方向外側に突出するように一体形成されている。より詳細には、係合突片122の基端部分は、突出先端側に向かって次第に拡径するテーパ状の案内部124とされており、その内周面がテーパ面で構成された案内面126とされている。更に、案内部124の突出先端側には、略軸直角方向で外周側に向かって突出する係合部128が一体形成されている。なお、案内部124は、内周側に向かって凸となる湾曲板状とされており、案内部124と係合部128が屈折することなくなだらかに連設されている。
【0057】
そして、拘束リング118は、図1,図2,図11に示されているように、止血弁76と係止作用部106の径方向間に配設されている。より詳細には、拘束リング118の環状拘束部120が、止血弁76の弾性筒部82に対して、径方向で接触して或いは微小な隙間を持って外挿されており、止血弁76に対する軸方向への相対変位を許容されている。一方、拘束リング118が係止作用部106の内周側に挿入されて、係合突片122の係合部128が環状補強部114の係合溝116に係合されている。要するに、拘束リング118は、止血弁76に対する軸方向への相対変位を許容されていると共に、係止作用部106によって支持されている。その結果、後述する内針ハブ12の外針ハブ16に対する軸方向での移動に際して、止血弁76に対して係止作用部106と一体的に相対移動するようになっている。
【0058】
また、係合溝116が浅底の凹溝とされていることから、係合部128と係合溝116の軸方向での係止作用によって拘束リング118が係止作用部106に対して位置決めされていると共に、規定値を超える大きさの軸方向基端側への外力が作用リング100に対して作用して、作用リング100が拘束リング118に対して軸方向基端側へ相対変位する際に係合部128が容易に係合溝116から抜け出して、拘束リング118が係止作用部106から先端側に分離するようになっている。
【0059】
上記のような構造を有する留置針組立体は、例えば、輸液処置や輸血処置等の実施に際して、患者等の血管に外針14を穿刺して、留置する手技の使用に供される。次に、留置針組立体の使用方法について詳述する。
【0060】
先ず、図1に示されるように、内針ハブ12と外針ハブ16とを組み付けて、内針10の針先18が外針14の先端側開口から出た状態下で、内針10と外針14とを患者等の血管に穿刺する。
【0061】
その後、内針ハブ12を外針ハブ16から引き抜いて後退移動させることにより、図12に示されているように、内針10を外針14から抜去する。これによって、外針14だけを患者等の血管に穿刺させたままで留置する。このとき、抜去された内針10の針先18は、針先保護用プロテクタ78のプロテクタ本体98内に収容される。これによって、内針10の針先18を含む先端部の全体が、プロテクタ本体98にて覆われて、保護される。
【0062】
また、内針10が止血弁76の切込み84から抜去されることにより、図12に示されているように、切込み84が閉鎖されて、外針14を通じての患者等の血液の外部への漏出が阻止されるようになっている。
【0063】
すなわち、止血弁76の弾性弁体80の切込み84と弾性筒部82及び押し子94のそれぞれの内腔を経て外針14内に挿通された内針10が、外針14から抜去される際に、止血弁76の切込み84が弾性弁体80の弾性的な復元力によって閉鎖される。このとき、外針ハブ16の収容部50の内周面と止血弁76の外周面との間の隙間は、収容部50の内周面に圧接された止血弁76の外フランジ部86によって液密にシールされている。これによって、外針ハブ16の内腔と外針14の内腔とによって構成された流出流路が閉鎖される。その結果、内針10が抜去された外針14を通じての血液の外部への漏出が、阻止されるようになっている。
【0064】
さらに、本実施形態の留置針組立体では、内針10が切込み84から抜去された状態で、切込み84がより確実に閉鎖されて、血液等の外部への漏出が効果的に防止されるようになっている。
【0065】
具体的には、先ず、内針ハブ12を外針ハブ16から引き抜いて後退移動させることにより、係止作用部106が基端側に後退移動する。これによって、係止作用部106に係合された拘束リング118は、止血弁76の弾性筒部82の外周面上を、止血弁76の係止突部90に当接するまで係止作用部106と共に後退移動する。そして、拘束リング118を後退移動させて、その基端側の面を止血弁76の係止突部90の当接面92に当接係止させることによって、拘束リング118の止血弁76に対する相対的な後退移動が弾性弁体80の外周面上において停止する。
【0066】
係止作用部106を更に後退移動させ続けて外針ハブ16から取り外すことにより、拘束リング118を、係止作用部106の内腔内から先端側の開口部を通じて抜け出させて、係止作用部106から分離させ、止血弁76の弾性弁体80の外周面上に位置決めする。これにより、拘束リング118は、弾性弁体80の外周側に突設された係止突部90に径方向での変形拘束力を及ぼして、切込み84を閉塞状態に保持する。特に本実施形態では、拘束リング118が、弾性弁体80に対して内周側への圧縮力を及ぼして、切込み84をより効果的に閉塞させるようになっている。なお、拘束リング118の一部だけが弾性弁体80の外周面上に位置していても良いし、弾性弁体80の外周面の一部に拘束リング118が重ね合わされていても良い。
【0067】
このようにして、止血弁76に外挿された拘束リング118から弾性弁体80に変形拘束力が及ぼされることにより、切込み84の開放が効果的に防止されて、血液等の外部への漏出がより確実に防止されるのである。
【0068】
また、止血弁76に外挿された拘束リング118は、係止作用部106によって後退移動させられることで、先端側が小径となるテーパ形状の当接面92に押し付けられて、少なくとも基端部が当接面92上に位置せしめられるようになっている。加えて、拘束リング118は、係合突片122の係合部128が係止作用部106の係合溝116に挿入されて軸方向で係止されている。これらによって、拘束リング118から当接面92に及ぼされる径方向内側への押圧力が充分に大きく発揮されて、該押圧力が弾性弁体80に伝達されることで切込み84が閉鎖状態に保持される。
【0069】
しかも、拘束リング118の基端部の内周面が基端側に向かって拡径するテーパ状の案内面126とされており、同じく基端側に向かって拡径するテーパ状の当接面92に軸方向で先端側から当接するようになっている。それ故、案内面126の案内作用と、当接面92の案内作用によって、拘束リング118がよりスムーズに弾性弁体80の外周面上(当接面92上)に位置させられる。更に、拘束リング118の基端部が当接することによる止血弁76の損傷も、拘束リング118の基端部に形成された案内面126によって防止されており、信頼性の向上が図られ得る。
【0070】
ところで、患者等の血管に穿刺された状態で留置された外針ハブ16には、図13に示されているように、輸液ラインの雄ルアーチップ132が装着されて、血液の採取や薬液の注入等に用いられる。
【0071】
この雄ルアーチップ132には、チップ132の周囲を取り囲むように支持筒部134が形成されている。チップ132は、外針ハブ16の基端部分に挿入されて嵌着される小径の筒形状とされており、突出先端側に向かって次第に小径となっている。更に、チップ132の内径寸法が、押し子94の基端側端部の外径寸法よりも大きくされており、外針ハブ16への装着時に、押し子94の基端面よりも外周側において止血弁76に当接するようになっている。支持筒部134は、外針ハブ16の基端縁部に形成された突部54が係合される部分であって、内周面に突部54を固定するためのねじ山が形成されている。そして、雄コネクタは、チップ132が外針ハブ16の内腔に挿入されて嵌着されると共に、支持筒部134に対して外針ハブ16の突部54が螺着されることによって、外針ハブ16にルアーロック接続されている。
【0072】
このような雄コネクタの外針ハブ16への装着下において、外針ハブ16に挿入されたチップ132の先端部分が止血弁76に押し付けられることにより、図13に示されているように、切込み84が開放されて、チップ132の内腔と押し子94および外針14の内腔が相互に連通される。
【0073】
すなわち、チップ132は、先端部分が止血弁76の環状突部88に押し付けられており、止血弁76が押し子94の外フランジ部96とチップ132の間で軸方向に圧縮されている。更に、環状突部88は、図1,図2,図11に示されているように、押し子94の基端側端面を外周側に外れた位置に形成されている。また、押し子94の基端部の外周面がテーパ形状とされていることによって、押し子94が弾性弁体80の径方向中間部分に当接させられている。
【0074】
これらによって、止血弁76にチップ132からの押圧力が及ぼされると、図13に示されているように、拘束リング118が、止血弁76の軸方向での収縮変形と基端部分の拡径変形によって弾性弁体80の外周面上から先端側に送られて、弾性筒部82の外周面上に前進移動させられ、弾性弁体80の拘束が解除される。そして、押し子94のテーパ筒状の端部にて切込み84が押し広げられて、かかる端部の外周面に切込み84の内面が係合される。これにより、押し子94の基端部が弾性弁体80の切込み84に挿入されて、押し子94の基端側開口部が切込み84を通じてチップ132の内腔に連通される。なお、止血弁76の外周側には、係止作用部106が抜き取られることによって、外針ハブ16との間に隙間が形成されており、押し子94が切込み84に挿入されることによる、止血弁76の軸直角方向外側への変形(拡径変形)が、不必要に拘束されることなく許容されている。
【0075】
以上によって、止血弁76が連通状態に切り替えられて、輸液ラインからの薬液等の投与や血液の採取等を行うことができる。この際、押し子94の基端側開口部の全体が弾性弁体80によって覆われることなく開放されていることにより、薬液や血液等を効率的に流動させることができる。
【0076】
また、拘束リング118の基端部に設けられた係合部128が曲げ加工によって環状拘束部120と一体形成されており、案内面126が折れ点や角を持たない滑らかな形状となっている。それ故、止血弁76が弾性変形して拘束リング118を先端側に押し出す際に、止血弁76の外周面における拘束リング118の基端部との当接箇所に亀裂等が生じるのを防ぐことができる。
【0077】
また、止血弁76の弾性弁体80よりも基端側に形成された環状突部88が、チップ132によって押圧されるようになっていることから、弾性弁体80が押し子94とチップ132の間で挟み込まれるのを回避して、弾性弁体80に不要な拘束力が及ぼされるのを防ぐことができる。それ故、弾性弁体80の変形によって切込み84が容易に且つ充分に開口させられて、輸液ラインが押し子94および外針14に連通される。
【0078】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、拘束リングにおいて係合突片122は必須ではない。即ち、例えば、拘束リングが円筒形状の環状拘束部120のみからなっており、係止作用部106の内周側に嵌入されることで、環状拘束部120の外周面と係止作用部106の内周面との摩擦力等によって、拘束リングが係止作用部106と軸方向に一体的に移動するようになっていても良い。
【0079】
また、拘束リング118は、必ずしも最初から止血弁76に外挿されている必要はなく、係止作用部106によって移動させられることによって、止血弁76に外挿されて、弾性弁体80の外周面上に位置させられるようになっていても良い。
【0080】
また、拘束リング118には、基端側の開口縁部にのみ案内面126が形成されていたが、先端側の開口周縁部にも、先端側に向かって次第に拡径する案内面が形成されていても良い。これにより、輸液ラインの雄コネクタの外針ハブ16への接続時に、拘束リングが引っ掛かることなく先端側に移動させられて、切込み84がスムーズに開口される。なお、拘束リングの案内面は全周に亘って形成されていても良い。
【0081】
また、輸液ラインの雄コネクタの外針ハブ16への接続によって、押し子94の端部が切込み84を貫通することで、押し子94の基端側開口部の全面が弾性弁体80によって覆われることなく開放されるようになっていたが、弾性弁体80を押圧することで必要とされる切込み84の開口量を確保することができれば、必ずしも押し子94の基端部が切込み84に突入する必要はない。
【0082】
また、留置針組立体においては、内針10を外針14から抜去した後、再び係止作用部106を外針ハブ16に挿入し、拘束リング118を係止作用部106で先端側に押し込むと共に、拘束リング118の係合部128を係止作用部106の係合溝116に嵌め入れることによって、初期の状態に復帰させることが可能とされていても良い。
【符号の説明】
【0083】
10:内針、12:内針ハブ、14:外針、16:外針ハブ、52:基端側開口部、76:止血弁、80:弾性弁体、82:弾性筒部、84:切込み(閉スリット)、88:環状突部、90:係止突部、94:押し子、106:係止作用部、118:拘束リング、126:案内面
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化や輸液、採血の際に血管に穿刺されて、留置される留置針組立体の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者等に対して血液浄化や輸液、輸血等の処置を行う際には、多くの場合、その処置器具として、留置針組立体が用いられている。この留置針組立体は、良く知られているように、先端から内針が延び出す内針ハブと、先端から中空の外針が延び出す、中空の外針ハブとを有し、内針が外針に挿通された状態下で、内針ハブの先端部が外針ハブの基端側開口部に挿入されることによって、内針ハブと外針ハブとが互いに組み付けられて、構成されている。そして、内針と外針とを、共に、患者等の血管に穿刺した後、内針を、血管から引き抜きつつ、外針からも抜去することによって、外針を血管に留置して、使用されているのである。
【0003】
ところで、このような留置針組立体を用いる場合には、内針が抜去された外針を通じて、血液が患者等の体外に漏れ出すことがある。そこで、従来の留置針組立体には、外針ハブ内に止血弁が収容配置されて、外針ハブの基端側開口部から外部への血液の漏出防止が図られているものもある。例えば、特開2002−263197号公報(特許文献1)や特開2010−88521号公報(特許文献2)に示されているのが、それである。
【0004】
このような特許文献1や特許文献2に記載された留置針組立体では、単体での自由形状において閉鎖状態とされる止血弁に内針が挿通されており、内針が引き抜かれることによって、止血弁自体の弾性に基づいて血液の漏出が防止されるようになっている。しかしながら、このような構造では、止血弁に内針、特に太い内針が挿通された状態で長期間に亘って保持されると、止血弁が内針の断面形状に沿って塑性変形してしまい、内針の引抜き後にも止血弁が完全な遮断状態には復元しなくなるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−263197号公報
【特許文献2】特開2010−88521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、製造から長期間を経た場合にも、外針を通じての血液の漏出防止が実現され得る、改良された構造の留置針組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の第1の態様は、外針ハブの基端側に内針ハブが組み付けられて、該外針ハブに突設された外針に対して該内針ハブに突設された内針が挿通されている一方、該外針ハブの内腔を遮断する弾性弁体が配設されており、該弾性弁体に形成された閉スリットを貫通して該内針が該外針に挿通されていると共に、該外針ハブから該内針ハブが取り外されて該外針から該内針が抜去されることで該弾性弁体の該閉スリットが閉塞状態となって該外針を通じての流出流路が遮断される留置針組立体において、前記弾性弁体に対して相対移動可能とされて該弾性弁体の外周面上に位置することで該弾性弁体の外周側への変形を制限する拘束リングが前記外針ハブに設けられている一方、該弾性弁体よりも先端側に外れて位置させられた該拘束リングに対して係合し、前記内針ハブを該外針ハブから取り外すに際してかかる係合に基づいて該拘束リングを該弾性弁体側に移動させて該弾性弁体の外周面上に位置させる係止作用部が設けられていることを、特徴とする。
【0008】
このような第1の態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、内針ハブを外針ハブから取り外す際に、拘束リングが係止作用部によって弾性弁体の外周面上に移動させられるようになっている。これにより、弾性弁体の外周側への変形が拘束リングによって制限されて、弾性弁体に形成された閉スリットが閉塞状態で保持される。それ故、患者の血管等に内針および外針を穿刺してから内針を外針から抜去するに際して、血液が外針および押し子を通じて外針ハブ内に漏れ出すのを防ぐことができて、医療用器材の汚染等を回避することができる。
【0009】
特に、長期間に亘って内針が挿通された状態に保持されることによって、弾性弁体の単体での自由形状において閉スリットが完全には閉鎖されなくなったとしても、閉スリットを閉鎖する方向の外力が拘束リングから弾性弁体に及ぼされるようにすることで、閉スリットが閉塞されて、血液等の漏出の防止が高い信頼性を持って実現される。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載された留置針組立体において、前記弾性弁体には、前記拘束リングの該弾性弁体側への移動を規制して該拘束リングを該弾性弁体の外周面上に位置決めする係止突部が設けられているものである。
【0011】
第2の態様によれば、係止作用部によって移動させられる拘束リングが、係止突部との係止によって弾性弁体の外周面上に位置決めされる。このように係止突部との当接係止による拘束リングの位置決め機構を採用することにより、拘束リングが弾性弁体の外周面上の所定位置まで移動させられて、内針が外針から抜去される際に閉スリットがより確実に閉塞される。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載された留置針組立体において、前記拘束リングにおける前記弾性弁体側への移動方向前方側の開口部内周面が、開口方向に向かって次第に拡径する案内面とされているものである。
【0013】
第3の態様によれば、拘束リングが係止作用部によって弾性弁体の外周面上に移動させられる際に、拘束リングの基端側の開口周縁部が弾性弁体の外周面に引っ掛かるのを防ぐことができて、拘束リングを所定の位置までスムーズに移動させることができる。それ故、弾性弁体の閉スリットが拘束リングによってより確実に閉鎖されて、血液等の漏出が効果的に防止される。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の何れか1つの態様に記載された留置針組立体において、前記外針ハブには基端側に延びる筒状の押し子が設けられていると共に、前記弾性弁体には先端側に向かって延び出して該押し子に外挿される弾性筒部が形成されているものである。
【0015】
第4の態様によれば、弾性弁体の閉スリットが押し子によって押し開けられるようになっていることから、弾性弁体の開作動が高い信頼性をもって実現される。しかも、押し子が弾性弁体の弾性筒部に挿入されて、押し子が弾性弁体に対して位置決めされていることにより、押し子の弾性弁体への当接位置の安定化が図られて、より安定した閉スリットの開作動が実現される。
【0016】
本発明の第5の態様は、第4の態様に記載された留置針組立体であって、前記弾性弁体の外周部分において、前記弾性筒部と反対の基端側に向かって突出する環状突部が形成されているものである。
【0017】
第5の態様によれば、外針ハブに接続された輸液ラインの雄コネクタ等で弾性弁体が押圧される際に、雄コネクタ等から弾性弁体に入力される押圧力が押し子の基端部よりも外周側に及ぼされる。これにより、弾性弁体が押し子の外周面上で軸方向に圧縮されて、閉スリットが弾性弁体の変形によって安定して連通状態に切り替えられる。
【0018】
しかも、弾性弁体が押し子と雄コネクタ等との間で直接的に挟み込まれるのを回避できることから、弾性弁体に不要な変形拘束力が及ぼされるのを防ぐことができる。それ故、輸液ラインの雄コネクタ等と外針ハブを接続する際に入力される押圧力によって、弾性弁体が容易に変形させられて、閉スリットが効率的に連通状態に切り替えられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、内針ハブが外針ハブから取り外される際に、拘束リングが係止作用部によって弾性弁体の外周面上に移動させられることにより、弾性弁体における閉スリットを開放する方向での変形が制限される。これにより、閉スリットが不必要に開くのを防いで、血液等が外針を通じて外針ハブの基端側開口部から漏れ出すのをより確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の1実施形態としての留置針組立体を示す縦断面図。
【図2】図1に示された留置針組立体の要部を拡大して示す縦断面図。
【図3】図1に示された留置針組立体を構成する止血弁の縦断面図。
【図4】図3に示された止血弁の背面図。
【図5】図1に示された留置針組立体を構成する拘束リングの斜視図。
【図6】図5に示された拘束リングを別角度で示す斜視図。
【図7】図5に示された拘束リングの正面図。
【図8】図5に示された拘束リングの右側面図。
【図9】図5に示された拘束リングの平面図。
【図10】図5に示された拘束リングの縦断面図。
【図11】図5に示された拘束リングの配設状態を拡大して示す要部の縦断面図。
【図12】図1に示された留置針組立体において、内針を外針から抜去した状態の要部を示す縦断面図。
【図13】図1に示された留置針組立体を構成する内針ハブに、輸液ラインの雄ルアーチップが取り付けられた状態の要部を拡大して示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
先ず、図1には、本発明に従う構造を有する留置針組立体の一実施形態が、その縦断面形態において示されており、また、図2には、その一部が拡大して示されている。それらの図から明らかなように、本実施形態の留置針組立体は、内針10と、この内針10の基端部(図1及び図2中の右側端部)を固定する内針ハブ12と、内針10に外挿される外針14と、この外針14の基端部を固定する外針ハブ16とを有している。なお、本明細書では、留置針組立体を使用して患者への針の穿刺手技を行う際に、施術者よりも遠位の側を先端側、及びそのような遠位側に位置する留置針組立体の端部、或いはそれらを構成する各部材の端部を先端部と言い、また、施術者の近位の側を基端側、及びそのような基端側の端部を基端部と言う。
【0023】
より詳細には、内針10は、所定長さを有し、先端が鋭利な針先18とされた中空針からなっている。なお、内針10の形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ステンレス鋼やアルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金等の金属材料が、適宜に用いられる。
【0024】
内針ハブ12は、全体として、略円筒形状を呈し、内腔26が、先端側開口部28と基端側開口部30とを通じて、外方に開口している。この内針ハブ12の内部の軸方向中間部には、内腔26を先端側部分と基端側部分とに、軸方向に2つに仕切る仕切壁部32が一体形成されている。そして、内針ハブ12の仕切壁部32の形成部位よりも先端側部分が、先端側開口部28を通じて外部に連通する収容筒部34とされている一方、仕切壁部32よりも基端側部分が、基端側開口部30を通じて外部に連通する取付筒部36とされている。
【0025】
一方、取付筒部36の内部には、仕切壁部32の基端側端面に対して、固定筒部42が、取付筒部36と同軸上で一体的に立設されている。そして、この固定筒部42の内腔44に対して、仕切壁部32を貫通して延びる内針10が、その基端部を取付筒部36の内腔内に突入位置させるように挿通されて、固定されている。これによって、取付筒部36の内腔が、内針10の内腔(細孔)内に連通している。
【0026】
内針ハブ12には、キャップ24が組み付けられている。キャップ24は、全体として、先端側部分が基端側部分よりも小径とされた略段付円筒形状を有しており、基端側の開口部には、血液を外部に漏らさないための通気フィルタ46が設けられている。
【0027】
そして、かかるキャップ24が、通気フィルタ46の装着側とは反対側の小径の先端側部分において、内針ハブ12の基端側開口部30に圧入される等して、内針ハブ12に、取外し可能に組み付けられている。
【0028】
そのような内針ハブ12とキャップ24との組付状態下で、内針ハブ12の取付筒部36の内腔とキャップ24の内腔とが相互に連通されて、それらの両内腔にて、チャンバ48が形成されている。このチャンバ48は、内針ハブ12の先端側において、固定筒部42に固定された内針10の内腔に連通し、且つキャップ24の基端側の開口部が、通気フィルタ46にて閉塞されている。これにより、後述するように、内針10を患者に穿刺した際のフラッシュバックによって、内針10内に流入した血液が、キャップ24内のチャンバ48内に流れ込んで貯留されて、外部に漏れ出さないようになっている。なお、内針ハブ12とキャップ24の材質は、何等限定されるものでない。しかしながら、フラッシュバックによるチャンバ48内への血液の流入を確認できるように、透明または半透明の樹脂製であることが、望ましい。
【0029】
一方、外針14は、内針10よりも短い長さを有する、内針10に外挿可能な細管からなっている。この外針14は、内針10とは異なって、鋭利な針先を有していないものの、先端面が、先端側に向かうに従って次第に小径化するテーパ面とされている。これによって、内針10と共に、患者の血管に穿刺される際の抵抗が、できるだけ小さくされている。なお、外針14の先端部付近には、内部を流れる流体の出入りの効率化を図るために、1個または複数の穴が設けられていても良い。
【0030】
このような外針14の材質も、何等限定されるものではないものの、患者の血管に留置される際に、血管壁等を傷付けないようにするために、適度な可撓性を有しているものであることが望ましい。その点からして、外針14の形成材料としては、例えば、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリウレタン、ポリエーテルナイロン、ポリプロピレン等の各種の軟質樹脂が、好適に用いられる。外針14は、患者の血管に留置された後において、内部を流通する液体の流れが把握できるように、透明性を有していることが好ましい。また、外針14は、患者の血管内への留置部分の位置が把握できるように、形成材料中に、硫酸バリウムや炭酸バリウム等のX線造影剤が配合されていても良い。
【0031】
外針ハブ16は、略円筒状の全体形状を有しており、その内腔が収容部50とされて、基端側開口部52を通じて外方に開口している。この外針ハブ16の基端部には、ルアーロックの突部54が一体形成されて、外周側に突出している。外針ハブ16の先端面には、円柱状の固定用突起56が、同軸上で一体形成されている。この固定用突起56の外針ハブ16の先端部58に対して、それらを貫通して軸方向に延びる貫通孔60が設けられている。
【0032】
この貫通孔60に対して、外針14が、その基端部において、挿入されている。また、そのような状態において、貫通孔60内に、カシメピン68が、貫通孔60の基端側の開口部から圧入されている。これによって、貫通孔60内に挿入された外針14が、貫通孔60内で、カシメピン68の先端部外周面と貫通孔60の内周面との間で挟圧保持されている。以て、外針14が、外針ハブ16の先端部に固定されている。
【0033】
カシメピン68は、内部が中空部70とされた中空のテーパ筒形状を有している。これによって、外針ハブ16の先端部に固定された外針14の内腔が、かかる中空部70を通じて、外針ハブ16の前記収容部50内に連通している。
【0034】
外針ハブ16の内周面の軸方向中間部には、全周に亘って周方向に連続して延びる環状溝72が、形成されている。この環状溝72は、外針ハブ16の基端側に位置する側面が、基端側に向かうに従って次第に小径化するテーパ面形状を呈するテーパ状係止面74とされている。
【0035】
そして、内針10が、外針ハブ16の基端側開口部52を通じて、外針ハブ16の収容部50内に挿入され、更に、この収容部50内に連通する外針14に挿通されている。内針10の基端部に固定された内針ハブ12の先端面は、外針ハブ16の基端面に当接するように配置される。内針ハブ12と外針ハブ16とが、容易に着脱可能な状態で、互いに組み付けられている。
【0036】
そして、本実施形態の留置針組立体では、上記のようにして内針ハブ12と外針ハブ16とが互いに組み付けられた状態下において、外針ハブ16の収容部50の先端部分に、外針ハブ16の内腔を遮断する止血弁76が収容配置されている。また、内針ハブ12の収容筒部34内に、針先保護用プロテクタ78が、内針10に装着された状態で、収容配置されている。
【0037】
より具体的には、止血弁76は、例えば、特開2010−88521号公報に開示されたものと同様な構造を有している。即ち、止血弁76は、各種のゴム材料や熱可塑性エラストマ材料等の弾性体材料を用いて一体成形された単一品からなり、図3,図4に示されているように、弾性弁体80と弾性筒部82とを有している。
【0038】
弾性弁体80は、外針ハブ16の収容部50の内径よりも所定寸法小さな外径を有する略厚肉円板形状を呈している。この弾性弁体80の中央には、単体の自由形状において閉鎖される閉スリットとしての切込み84が形成されており、内針10が挿通されることによって押し広げられている。弾性筒部82は、略薄肉の円筒形状を呈し、円板状の弾性弁体80の厚さ方向一方側の面から、先端側に向かって同軸上で一体的に延び出している。この弾性筒部82の先端部には、収容部50の内径よりも僅かに大きな外径を有する円環板状の外フランジ部86が、一体的に周設されている。なお、切込み84は、図4に示されているように、弾性筒部82の内径寸法よりも小さい幅寸法で形成されて、弾性弁体80を厚さ方向に貫通している。尤も、弾性筒部82の内径寸法と同じ幅寸法の切込みが形成されて、弾性筒部82にまで至っていても良い。
【0039】
また、止血弁76における弾性弁体80よりも基端側には、環状突部88が一体形成されて突出している。環状突部88は、略円環形状乃至は略円筒形状を有しており、弾性筒部82の外周部分において弾性弁体80の厚さ方向他方側の面から延び出している。なお、環状突部88は、内径寸法が弾性筒部82と略同じとされていると共に、外径寸法が後述する係止突部90の最大外径寸法と略同じとされており、弾性筒部82に比して厚肉とされている。
【0040】
また、止血弁76における弾性弁体80の外周面上には、係止突部90が突設されている。係止突部90は、その突出高さが基端側に行くに従って次第に大きくなっており、その外周側の端面が基端側に向かって次第に拡径するテーパ筒形状の当接面92とされている。これにより、止血弁76は、弾性弁体80上に設けられたテーパ状の当接面92を挟んで、軸方向先端側が外径寸法の小さい小径部とされていると共に、軸方向基端側が外径寸法の大きい大径部とされている。
【0041】
かくの如き止血弁76には、押し子94が組み付けられている。この押し子94は、硬質の樹脂材料等からなり、全体として、止血弁76の弾性筒部82の内腔内に挿入可能な円筒形状を有している。この押し子94の軸方向一端部の外周面が、軸方向一端側に向かうに従って次第に小径となるテーパ面形状とされている。また、押し子94の軸方向他端部には、円環板状の外フランジ部96が、一体的に周設されている。
【0042】
そして、止血弁76の弾性筒部82の内腔内に、押し子94が同軸的に挿入されている。その状態下で、外周面がテーパ面形状とされた押し子94の一端部の端面が、止血弁76の弾性弁体80に接触させられ、且つ押し子94の外フランジ部96が止血弁76の外フランジ部86に重ね合わされて、押し子94が、止血弁76に組み付けられている。また、本実施形態では、押し子94の外周面が弾性筒部82の内周面に密着しているが、それら押し子94の外周面と弾性筒部82の内周面の間には、多少の隙間があっても、止血弁76の基端部(外フランジ部86)等によってシールされていれば良い。
【0043】
なお、押し子94の一端部の端面は、止血弁76の弾性弁体80に対して、僅かに離隔した状態で近接して配置されていても良いし、充分に離隔した状態で配置されていても良い。尤も、後述する切込み84の開口面積などを安定させるためには、弾性弁体80と押し子94の一端部の端面が、当接しているか、或いは近接状態で配置されていることが望ましい。
【0044】
そして、このような止血弁76と押し子94との組付品が、止血弁76の外フランジ部86の外周面を、外針ハブ16の収容部50の内周面に圧接させ、且つ押し子94の外フランジ部96を外針ハブ16の先端部58の内面に当接させた状態で、収容部50の先端側に挿入されて、収容配置されている。かかる収容状態下において、止血弁76は、収容部50の内周面に圧接された外フランジ部86の復元力に基づく摩擦抵抗によって、収容部50内での軸方向の容易な移動が阻止されている。押し子94も、外フランジ部96が、外針ハブ16の先端部58と止血弁76の外フランジ部86との間で挟持されて、収容部50内での軸方向の移動が規制されている。或いは、外針ハブ16の内周面に係合部が設けられ、この係合部に対して、止血弁76や押し子94が係合することにより、それら止血弁76と押し子94の移動が規制されている。そして、収容部50内に挿入された内針10が、止血弁76の切込み84を押し広げるように弾性弁体80を弾性変形させて、切込み84に挿通されつつ、止血弁76の弾性筒部82内の押し子94の内腔と、外針ハブ16の先端部58の貫通孔60に挿通され、更に、外針14内に挿通されているのである。
【0045】
一方、内針ハブ12の収容筒部34内に収容される針先保護用プロテクタ78は、図1及び図2に示されているように、特開2010−88521号公報や特開2010−88522号公報などに示されているものと同様の構造を有しており、プロテクタ本体98と、このプロテクタ本体98に外挿された作用リング100とを有している。なお、プロテクタ本体98については、略同一の構造が上記公開公報に開示されていることから、ここでは説明を省略する。
【0046】
プロテクタ本体98に外挿される作用リング100は、特開2010−88521号公報や特開2010−88522号公報に示されているように、矩形の内腔が形成されてなる枠状形態を有している。
【0047】
また、作用リング100の対向する2つの壁部からは、弾性変形可能な係止用突出部102が、先端側に向かって軸方向に延び出すようにして、作用リング100に一体形成されている。この係止用突出部102は、作用リング100から延び出す基端側の部分が、何れも長手矩形の平板形状を呈して互いに対向する2つの平板部104,104からなり、且つその先端側の部分が、軸方向一方側の端面において、2つの平板部104,104の各先端面と一体的に接続された略円筒形状の係止作用部106からなっている。
【0048】
また、この係止作用部106の先端側には、径方向において互いに対向する2つの部位に、矩形の切欠部108,108がそれぞれ設けられている。これによって、2つの切欠部108,108が設けられた係止作用部106の先端側部分の2つの残余部位にて、分割円筒形状を有して、軸方向に延びる、径方向内方に弾性変形可能とされた延出係止片110,110が、それぞれ形成されている。また、それら各延出係止片110の先端部の外周面には、外フランジ状の凸部112が一体的に設けられている。また、係止作用部106の先端側に2つの切欠部108,108が設けられていることによって、2つの平板部104,104との接続側である、係止作用部106の基端側部分が、環状補強部114とされている。この環状補強部114には、内周面に開口して周方向環状に延びる係合溝116が形成されている。
【0049】
要するに、作用リング100から延び出す係止用突出部102は、その延出方向の中間部に、環状補強部114が設けられて、この環状補強部114の軸方向の一方側に、2つの平板部104,104が、互いに対向して軸方向に延び出している一方、環状補強部114の軸方向の他方側に、2つの延出係止片110,110が、互いに対向して軸方向に延び出している。これによって、係止用突出部102の全長が十分に長くされても、各延出係止片110の自由長が有利に短くされている。その結果、各延出係止片110,ひいては係止用突出部102の強度の向上が有利に図られている。
【0050】
なお、このような作用リング100の材質も、特に限定されるものではないが、弾性を有していることが好適とされる係止用突出部102が作用リング100に一体形成されていることから、作用リング100の形成材料としては、例えば、弾性を有する樹脂材料や金属材料、或いはゴム材料やエラストマ材料等が、適宜に用いられる。
【0051】
そして、作用リング100は、プロテクタ本体98の基端側部分に外挿されている。換言すれば、作用リング100に一体形成された係止用突出部102の2つの平板部104,104の間に、プロテクタ本体98が、その基部側部分を除いて挿入されている。こうして、針先保護用プロテクタ78が、それらプロテクタ本体98と作用リング100との組付品として、構成されている。
【0052】
そして、内針ハブ12の先端から延び出す内針10の基端側部位が、プロテクタ本体98に挿通されることにより、針先保護用プロテクタ78が、内針10に対して、その針軸方向(プロテクタ本体98の中心軸と一致)に移動可能に装着されている。そのような内針10への装着状態下で、針先保護用プロテクタ78が、内針ハブ12の収容筒部34内に、収容配置されている。収容筒部34内に収容された針先保護用プロテクタ78は、作用リング100が、収容筒部34の内周面に対して非接触または接触して配置されている。
【0053】
そして、内針10が外針14に挿通されて、内針ハブ12が外針ハブ16に組み付けられている。これによって、内針ハブ12と外針ハブ16とが相互に組み付けられてなる留置針組立体が形成され、このような留置針組立体の内部に、止血弁76と針先保護用プロテクタ78と、外針ハブ16の収容部50内と内針ハブ12の収容筒部34内にそれぞれ収容された状態で組み込まれている。
【0054】
内針ハブ12と外針ハブ16との組付下では、針先保護用プロテクタ78の作用リング100の係止用突出部102が、内針ハブ12の収容筒部34の先端側開口部28を通じて、外針ハブ16の収容部50内に延び出している。そして、係止用突出部102の2つの延出係止片110,110の各凸部112が、収容部50の内周面に設けられた環状溝72内に突入して、かかる環状溝72のテーパ状係止面74に係止している。
【0055】
また、外針ハブ16の内周側には、拘束リング118が配設されて、止血弁76に外挿されており、内針ハブ12と外針ハブ16との組付下において止血弁76と作用リング100の径方向間に挿入されている。拘束リング118は、図5〜図10に示されているように、円環形状乃至は円筒形状の環状拘束部120を有しており、硬質の合成樹脂やニッケル−チタン合金やステンレス鋼等の金属で形成されて、環状拘束部120の径方向への拡縮を含む変形が殆ど生じないようになっている。
【0056】
さらに、拘束リング118には、径方向一方向で対向する周上の2箇所にそれぞれ係合突片122が設けられている。係合突片122は、環状拘束部120の一方の端部から軸方向外側に突出するように一体形成されている。より詳細には、係合突片122の基端部分は、突出先端側に向かって次第に拡径するテーパ状の案内部124とされており、その内周面がテーパ面で構成された案内面126とされている。更に、案内部124の突出先端側には、略軸直角方向で外周側に向かって突出する係合部128が一体形成されている。なお、案内部124は、内周側に向かって凸となる湾曲板状とされており、案内部124と係合部128が屈折することなくなだらかに連設されている。
【0057】
そして、拘束リング118は、図1,図2,図11に示されているように、止血弁76と係止作用部106の径方向間に配設されている。より詳細には、拘束リング118の環状拘束部120が、止血弁76の弾性筒部82に対して、径方向で接触して或いは微小な隙間を持って外挿されており、止血弁76に対する軸方向への相対変位を許容されている。一方、拘束リング118が係止作用部106の内周側に挿入されて、係合突片122の係合部128が環状補強部114の係合溝116に係合されている。要するに、拘束リング118は、止血弁76に対する軸方向への相対変位を許容されていると共に、係止作用部106によって支持されている。その結果、後述する内針ハブ12の外針ハブ16に対する軸方向での移動に際して、止血弁76に対して係止作用部106と一体的に相対移動するようになっている。
【0058】
また、係合溝116が浅底の凹溝とされていることから、係合部128と係合溝116の軸方向での係止作用によって拘束リング118が係止作用部106に対して位置決めされていると共に、規定値を超える大きさの軸方向基端側への外力が作用リング100に対して作用して、作用リング100が拘束リング118に対して軸方向基端側へ相対変位する際に係合部128が容易に係合溝116から抜け出して、拘束リング118が係止作用部106から先端側に分離するようになっている。
【0059】
上記のような構造を有する留置針組立体は、例えば、輸液処置や輸血処置等の実施に際して、患者等の血管に外針14を穿刺して、留置する手技の使用に供される。次に、留置針組立体の使用方法について詳述する。
【0060】
先ず、図1に示されるように、内針ハブ12と外針ハブ16とを組み付けて、内針10の針先18が外針14の先端側開口から出た状態下で、内針10と外針14とを患者等の血管に穿刺する。
【0061】
その後、内針ハブ12を外針ハブ16から引き抜いて後退移動させることにより、図12に示されているように、内針10を外針14から抜去する。これによって、外針14だけを患者等の血管に穿刺させたままで留置する。このとき、抜去された内針10の針先18は、針先保護用プロテクタ78のプロテクタ本体98内に収容される。これによって、内針10の針先18を含む先端部の全体が、プロテクタ本体98にて覆われて、保護される。
【0062】
また、内針10が止血弁76の切込み84から抜去されることにより、図12に示されているように、切込み84が閉鎖されて、外針14を通じての患者等の血液の外部への漏出が阻止されるようになっている。
【0063】
すなわち、止血弁76の弾性弁体80の切込み84と弾性筒部82及び押し子94のそれぞれの内腔を経て外針14内に挿通された内針10が、外針14から抜去される際に、止血弁76の切込み84が弾性弁体80の弾性的な復元力によって閉鎖される。このとき、外針ハブ16の収容部50の内周面と止血弁76の外周面との間の隙間は、収容部50の内周面に圧接された止血弁76の外フランジ部86によって液密にシールされている。これによって、外針ハブ16の内腔と外針14の内腔とによって構成された流出流路が閉鎖される。その結果、内針10が抜去された外針14を通じての血液の外部への漏出が、阻止されるようになっている。
【0064】
さらに、本実施形態の留置針組立体では、内針10が切込み84から抜去された状態で、切込み84がより確実に閉鎖されて、血液等の外部への漏出が効果的に防止されるようになっている。
【0065】
具体的には、先ず、内針ハブ12を外針ハブ16から引き抜いて後退移動させることにより、係止作用部106が基端側に後退移動する。これによって、係止作用部106に係合された拘束リング118は、止血弁76の弾性筒部82の外周面上を、止血弁76の係止突部90に当接するまで係止作用部106と共に後退移動する。そして、拘束リング118を後退移動させて、その基端側の面を止血弁76の係止突部90の当接面92に当接係止させることによって、拘束リング118の止血弁76に対する相対的な後退移動が弾性弁体80の外周面上において停止する。
【0066】
係止作用部106を更に後退移動させ続けて外針ハブ16から取り外すことにより、拘束リング118を、係止作用部106の内腔内から先端側の開口部を通じて抜け出させて、係止作用部106から分離させ、止血弁76の弾性弁体80の外周面上に位置決めする。これにより、拘束リング118は、弾性弁体80の外周側に突設された係止突部90に径方向での変形拘束力を及ぼして、切込み84を閉塞状態に保持する。特に本実施形態では、拘束リング118が、弾性弁体80に対して内周側への圧縮力を及ぼして、切込み84をより効果的に閉塞させるようになっている。なお、拘束リング118の一部だけが弾性弁体80の外周面上に位置していても良いし、弾性弁体80の外周面の一部に拘束リング118が重ね合わされていても良い。
【0067】
このようにして、止血弁76に外挿された拘束リング118から弾性弁体80に変形拘束力が及ぼされることにより、切込み84の開放が効果的に防止されて、血液等の外部への漏出がより確実に防止されるのである。
【0068】
また、止血弁76に外挿された拘束リング118は、係止作用部106によって後退移動させられることで、先端側が小径となるテーパ形状の当接面92に押し付けられて、少なくとも基端部が当接面92上に位置せしめられるようになっている。加えて、拘束リング118は、係合突片122の係合部128が係止作用部106の係合溝116に挿入されて軸方向で係止されている。これらによって、拘束リング118から当接面92に及ぼされる径方向内側への押圧力が充分に大きく発揮されて、該押圧力が弾性弁体80に伝達されることで切込み84が閉鎖状態に保持される。
【0069】
しかも、拘束リング118の基端部の内周面が基端側に向かって拡径するテーパ状の案内面126とされており、同じく基端側に向かって拡径するテーパ状の当接面92に軸方向で先端側から当接するようになっている。それ故、案内面126の案内作用と、当接面92の案内作用によって、拘束リング118がよりスムーズに弾性弁体80の外周面上(当接面92上)に位置させられる。更に、拘束リング118の基端部が当接することによる止血弁76の損傷も、拘束リング118の基端部に形成された案内面126によって防止されており、信頼性の向上が図られ得る。
【0070】
ところで、患者等の血管に穿刺された状態で留置された外針ハブ16には、図13に示されているように、輸液ラインの雄ルアーチップ132が装着されて、血液の採取や薬液の注入等に用いられる。
【0071】
この雄ルアーチップ132には、チップ132の周囲を取り囲むように支持筒部134が形成されている。チップ132は、外針ハブ16の基端部分に挿入されて嵌着される小径の筒形状とされており、突出先端側に向かって次第に小径となっている。更に、チップ132の内径寸法が、押し子94の基端側端部の外径寸法よりも大きくされており、外針ハブ16への装着時に、押し子94の基端面よりも外周側において止血弁76に当接するようになっている。支持筒部134は、外針ハブ16の基端縁部に形成された突部54が係合される部分であって、内周面に突部54を固定するためのねじ山が形成されている。そして、雄コネクタは、チップ132が外針ハブ16の内腔に挿入されて嵌着されると共に、支持筒部134に対して外針ハブ16の突部54が螺着されることによって、外針ハブ16にルアーロック接続されている。
【0072】
このような雄コネクタの外針ハブ16への装着下において、外針ハブ16に挿入されたチップ132の先端部分が止血弁76に押し付けられることにより、図13に示されているように、切込み84が開放されて、チップ132の内腔と押し子94および外針14の内腔が相互に連通される。
【0073】
すなわち、チップ132は、先端部分が止血弁76の環状突部88に押し付けられており、止血弁76が押し子94の外フランジ部96とチップ132の間で軸方向に圧縮されている。更に、環状突部88は、図1,図2,図11に示されているように、押し子94の基端側端面を外周側に外れた位置に形成されている。また、押し子94の基端部の外周面がテーパ形状とされていることによって、押し子94が弾性弁体80の径方向中間部分に当接させられている。
【0074】
これらによって、止血弁76にチップ132からの押圧力が及ぼされると、図13に示されているように、拘束リング118が、止血弁76の軸方向での収縮変形と基端部分の拡径変形によって弾性弁体80の外周面上から先端側に送られて、弾性筒部82の外周面上に前進移動させられ、弾性弁体80の拘束が解除される。そして、押し子94のテーパ筒状の端部にて切込み84が押し広げられて、かかる端部の外周面に切込み84の内面が係合される。これにより、押し子94の基端部が弾性弁体80の切込み84に挿入されて、押し子94の基端側開口部が切込み84を通じてチップ132の内腔に連通される。なお、止血弁76の外周側には、係止作用部106が抜き取られることによって、外針ハブ16との間に隙間が形成されており、押し子94が切込み84に挿入されることによる、止血弁76の軸直角方向外側への変形(拡径変形)が、不必要に拘束されることなく許容されている。
【0075】
以上によって、止血弁76が連通状態に切り替えられて、輸液ラインからの薬液等の投与や血液の採取等を行うことができる。この際、押し子94の基端側開口部の全体が弾性弁体80によって覆われることなく開放されていることにより、薬液や血液等を効率的に流動させることができる。
【0076】
また、拘束リング118の基端部に設けられた係合部128が曲げ加工によって環状拘束部120と一体形成されており、案内面126が折れ点や角を持たない滑らかな形状となっている。それ故、止血弁76が弾性変形して拘束リング118を先端側に押し出す際に、止血弁76の外周面における拘束リング118の基端部との当接箇所に亀裂等が生じるのを防ぐことができる。
【0077】
また、止血弁76の弾性弁体80よりも基端側に形成された環状突部88が、チップ132によって押圧されるようになっていることから、弾性弁体80が押し子94とチップ132の間で挟み込まれるのを回避して、弾性弁体80に不要な拘束力が及ぼされるのを防ぐことができる。それ故、弾性弁体80の変形によって切込み84が容易に且つ充分に開口させられて、輸液ラインが押し子94および外針14に連通される。
【0078】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、拘束リングにおいて係合突片122は必須ではない。即ち、例えば、拘束リングが円筒形状の環状拘束部120のみからなっており、係止作用部106の内周側に嵌入されることで、環状拘束部120の外周面と係止作用部106の内周面との摩擦力等によって、拘束リングが係止作用部106と軸方向に一体的に移動するようになっていても良い。
【0079】
また、拘束リング118は、必ずしも最初から止血弁76に外挿されている必要はなく、係止作用部106によって移動させられることによって、止血弁76に外挿されて、弾性弁体80の外周面上に位置させられるようになっていても良い。
【0080】
また、拘束リング118には、基端側の開口縁部にのみ案内面126が形成されていたが、先端側の開口周縁部にも、先端側に向かって次第に拡径する案内面が形成されていても良い。これにより、輸液ラインの雄コネクタの外針ハブ16への接続時に、拘束リングが引っ掛かることなく先端側に移動させられて、切込み84がスムーズに開口される。なお、拘束リングの案内面は全周に亘って形成されていても良い。
【0081】
また、輸液ラインの雄コネクタの外針ハブ16への接続によって、押し子94の端部が切込み84を貫通することで、押し子94の基端側開口部の全面が弾性弁体80によって覆われることなく開放されるようになっていたが、弾性弁体80を押圧することで必要とされる切込み84の開口量を確保することができれば、必ずしも押し子94の基端部が切込み84に突入する必要はない。
【0082】
また、留置針組立体においては、内針10を外針14から抜去した後、再び係止作用部106を外針ハブ16に挿入し、拘束リング118を係止作用部106で先端側に押し込むと共に、拘束リング118の係合部128を係止作用部106の係合溝116に嵌め入れることによって、初期の状態に復帰させることが可能とされていても良い。
【符号の説明】
【0083】
10:内針、12:内針ハブ、14:外針、16:外針ハブ、52:基端側開口部、76:止血弁、80:弾性弁体、82:弾性筒部、84:切込み(閉スリット)、88:環状突部、90:係止突部、94:押し子、106:係止作用部、118:拘束リング、126:案内面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外針ハブの基端側に内針ハブが組み付けられて、該外針ハブに突設された外針に対して該内針ハブに突設された内針が挿通されている一方、該外針ハブの内腔を遮断する弾性弁体が配設されており、該弾性弁体に形成された閉スリットを貫通して該内針が該外針に挿通されていると共に、該外針ハブから該内針ハブが取り外されて該外針から該内針が抜去されることで該弾性弁体の該閉スリットが閉塞状態となって該外針を通じての流出流路が遮断される留置針組立体において、
前記弾性弁体に対して相対移動可能とされて該弾性弁体の外周面上に位置することで該弾性弁体の外周側への変形を制限する拘束リングが前記外針ハブに設けられている一方、
該弾性弁体よりも先端側に外れて位置させられた該拘束リングに対して係合し、前記内針ハブを該外針ハブから取り外すに際してかかる係合に基づいて該拘束リングを該弾性弁体側に移動させて該弾性弁体の外周面上に位置させる係止作用部が設けられていることを特徴とする留置針組立体。
【請求項2】
前記弾性弁体には、前記拘束リングの該弾性弁体側への移動を規制して該拘束リングを該弾性弁体の外周面上に位置決めする係止突部が設けられている請求項1に記載の留置針組立体。
【請求項3】
前記拘束リングにおける前記弾性弁体側への移動方向前方側の開口部内周面が、開口方向に向かって次第に拡径する案内面とされている請求項1又は2に記載の留置針組立体。
【請求項4】
前記外針ハブには基端側に延びる筒状の押し子が設けられていると共に、前記弾性弁体には先端側に向かって延び出して該押し子に外挿される弾性筒部が形成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の留置針組立体。
【請求項5】
前記弾性弁体の外周部分において、前記弾性筒部と反対の基端側に向かって突出する環状突部が形成されている請求項4に記載の留置針組立体。
【請求項1】
外針ハブの基端側に内針ハブが組み付けられて、該外針ハブに突設された外針に対して該内針ハブに突設された内針が挿通されている一方、該外針ハブの内腔を遮断する弾性弁体が配設されており、該弾性弁体に形成された閉スリットを貫通して該内針が該外針に挿通されていると共に、該外針ハブから該内針ハブが取り外されて該外針から該内針が抜去されることで該弾性弁体の該閉スリットが閉塞状態となって該外針を通じての流出流路が遮断される留置針組立体において、
前記弾性弁体に対して相対移動可能とされて該弾性弁体の外周面上に位置することで該弾性弁体の外周側への変形を制限する拘束リングが前記外針ハブに設けられている一方、
該弾性弁体よりも先端側に外れて位置させられた該拘束リングに対して係合し、前記内針ハブを該外針ハブから取り外すに際してかかる係合に基づいて該拘束リングを該弾性弁体側に移動させて該弾性弁体の外周面上に位置させる係止作用部が設けられていることを特徴とする留置針組立体。
【請求項2】
前記弾性弁体には、前記拘束リングの該弾性弁体側への移動を規制して該拘束リングを該弾性弁体の外周面上に位置決めする係止突部が設けられている請求項1に記載の留置針組立体。
【請求項3】
前記拘束リングにおける前記弾性弁体側への移動方向前方側の開口部内周面が、開口方向に向かって次第に拡径する案内面とされている請求項1又は2に記載の留置針組立体。
【請求項4】
前記外針ハブには基端側に延びる筒状の押し子が設けられていると共に、前記弾性弁体には先端側に向かって延び出して該押し子に外挿される弾性筒部が形成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の留置針組立体。
【請求項5】
前記弾性弁体の外周部分において、前記弾性筒部と反対の基端側に向かって突出する環状突部が形成されている請求項4に記載の留置針組立体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−130523(P2012−130523A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285239(P2010−285239)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】
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