説明

留置針組立体

【課題】外針から内針を抜去した状態で、外針ハブの基端から液体が流出するのを確実に防止することができる留置針組立体を提供すること。
【解決手段】留置針組立体1は、内針と、内針の基端部に設けられた内針ハブと、内針が挿通される中空の外針2と、外針2の基端部に設けられ、外針内と連通する内腔部34を有する外針ハブ3と、外針ハブ3の内腔部34を封止するように設置され、外針2とともに内針を挿通可能なスリット84を有し、弾性材料で構成された弁体8と、外針ハブ3の内腔部34に設置され、弾性を有し、外針2およびスリット84から内針が抜去された際に、弁体8を先端側から挟んでスリット84を閉じる閉塞部材9とを備えている。閉塞部材9は、先端側にU字状に湾曲した湾曲部92を有する2つの板バネ91a、91bで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば輸液の際に血管に穿刺し、留置する留置針組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
患者に対し薬液の投与を行う際などには、留置具を患者の血管に穿刺、留置してこれを行う。
【0003】
このような留置具は、薬液が充填されたシリンジが接続されるシリンジボートと、ガイドワイヤが挿入されるガイドワイヤポートとを有するハブを備えている(例えば、特許文献1参照)。そして、ガイドワイヤポートには、当該ガイドワイヤポートを液密に封止する弁体(止血弁)が設置されている。この弁体により、穿刺針内を通ってガイドワイヤポートに流入するフラッシュバックが生じた際に、血液がガイドワイヤポートから流出するのを防止することができる。
【0004】
ところで、弁体には、ガイドワイヤが挿通可能なスリットが形成されている。このスリットは、ガイドワイヤを抜き取った際に自己閉塞性を有するものである。しかしながら、スリットにガイドワイヤが長期間にわたって挿入された場合、スリットにガイドワイヤによる癖がつき、ガイドワイヤを抜去しても、スリットが閉塞しない、すなわち、スリットのシール性(シール機能)が低下してしまう。そして、このスリットから血液が漏れ出すことがあるという問題がった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−232916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、外針から内針を抜去した状態で、外針ハブの基端から液体が流出するのを確実に防止することができる留置針組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(5)の本発明により達成される。
(1) 先端に鋭利な針先を有する内針と、
前記内針の基端部に設けられた内針ハブと、
前記内針が挿通される中空の外針と、
前記外針の基端部に設けられ、該外針内と連通する内腔部を有する外針ハブと、
前記外針ハブの内腔部を封止するように設置され、収斂形状をなし、その先端に前記外針とともに前記内針が挿通され、開閉可能な開閉部を有する、弾性材料で構成された弁体と、
前記外針ハブの内腔部に設置され、弾性を有し、前記外針および前記開閉部から内針が抜去された際に、前記弁体を先端側から挟んで前記開閉部を閉じる閉塞部材とを備え、
前記閉塞部材は、先端側に湾曲または屈曲した湾曲部を有する少なくとも1つの板バネで構成されていることを特徴とする留置針組立体。
【0008】
(2) 前記弁体の外周部は、前記外針の中心軸に対し傾斜しており、
前記閉塞部材は、前記弁体の外周部に当接し、該外周部の傾斜方向に沿った当接部を有する上記(1)に記載の留置針組立体。
【0009】
(3) 前記外針ハブは、前記内針が抜去された状態で、その基端側から前記内腔部に管体を挿入可能なものであり、
前記外針ハブの内腔部に前記管体が挿入されたとき、該管体によって前記弁体は、前記閉塞部材の前記弁体を挟む力に抗して前記開閉部が開くよう構成されている上記(1)または(2)に記載の留置針組立体。
【0010】
(4) 前記外針ハブに設けられ、前記外針を押圧する長尺な押圧部材をさらに備える上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の留置針組立体。
【0011】
(5) 前記内針ハブに設けられ、該内針ハブから先端方向に突出する把持部材をさらに備える上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の留置針組立体。
【0012】
本発明の留置針組立体では、前記板バネは、前記弁体を介して一対配置されているのが好ましい。
【0013】
本発明の留置針組立体では、前記板バネは、その一端部が前記外針ハブに係合しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外針から内針を抜去した抜去状態では、閉塞部材によって弁体の孔が強制的に閉じられる。これにより、抜去状態では、例えば外針が生体を穿刺した際に当該外針から流入した血液等の体液が、外針ハブの基端から流出するのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の留置針組立体の第1実施形態(組立状態)を示す斜視図である。
【図2】本発明の留置針組立体の第1実施形態(抜去状態)を示す斜視図である。
【図3】図1に示す留置針組立体の使用方法の一例を説明するための斜視図である。
【図4】図1に示す留置針組立体の使用方法の一例を説明するための斜視図である。
【図5】図1に示す留置針組立体の使用方法の一例を説明するための斜視図である。
【図6】図1に示す留置針組立体の使用方法の一例を説明するための斜視図である。
【図7】図1中のA−A線断面図である。
【図8】図2中のB−B線断面図である。
【図9】図2に示す留置針組立体の外針ハブに管体を挿入した状態を示す縦断面図である。
【図10】本発明の留置針組立体の第2実施形態(抜去状態)の外針ハブの内側を示す縦断面図である。
【図11】本発明の留置針組立体の第3実施形態(組立状態)を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の留置針組立体を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明の留置針組立体の第1実施形態(組立状態)を示す斜視図、図2は、本発明の留置針組立体の第1実施形態(抜去状態)を示す斜視図、図3〜図6は、それぞれ、図1に示す留置針組立体の使用方法の一例を説明するための斜視図、図7は、図1中のA−A線断面図、図8は、図2中のB−B線断面図、図9は、図2に示す留置針組立体の外針ハブに管体を挿入した状態を示す縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図6中の左下側を「先端」、右上側を「基端」と言い、図7〜図9中の左側を「先端」、右側を「基端」と言う。また、図1〜図6では、血管の図示は省略されている。
【0018】
図1、図2に示すように、留置針組立体1は、留置針11と、穿刺針12とを備え、図1に示す第1の状態(組立状態)と、図2に示す第2の状態(抜去状態)とを取り得るものである。第1の状態は、留置針11にその基端側から穿刺針12を挿入して組み立てた状態である。第2の状態は、第1の状態から穿刺針12を基端方向に抜去した状態である。
【0019】
留置針11は、中空の外針2と、外針2の基端部に固定された外針ハブ3と、外針ハブ3に接続された押圧部材6と、外針ハブ3内に設置された弁体8および閉塞部材9とを有している。穿刺針12は、外針2内に挿通される内針4と、内針4の基端部に固定された内針ハブ5と、内針ハブ5に接続された把持部材7とを有している。以下、各部の構成について説明する。
【0020】
まず、穿刺針12について説明する。
図1に示すように、内針4は、その先端に鋭利な針先41を有するものである。内針4の長さは、第1の状態としたとき、少なくとも針先41が外針2の先端開口22から突出する程度の長さとされる。
【0021】
内針4は、図7に示す構成では中空針であるが、これに限定されず、例えば、中実針で構成されたものであってもよいし、中空部と中実部との双方を有する構成(例えば、中空針の内腔の一部を充填することにより、先端側を中空とし、基端側を中実とする構成等)のものであってもよい。
【0022】
また、内針4は、その外径が一定のものでもよく、また、その外径が異なる複数の部分を有していてもよい。
【0023】
内針4の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金のような金属材料が挙げられる。
【0024】
内針4の基端部には、例えば、嵌合、カシメ、融着、接着剤による接着等の方法、あるいはこれらを併用した方法により、内針ハブ5が固定されている。
【0025】
内針ハブ5は、筒状の部材で構成されている。そして、内針ハブ5の基端側の開口52には、その開口52を覆うように、通気フィルタが設置されているのが好ましい。この通気フィルタは、気体は透過するが液体は遮断する性質を有するものであり、例えば、各種焼結多孔体で構成されている。これにより、血液が内針4内を流下して通気フィルタに到達した場合、当該血液との接触により通気も遮断されるので、外部からの空気の侵入を防止することができる。
【0026】
内針ハブ5の外周側には、把持部材7が配置されている。この把持部材7は、その基端部75が内針ハブ5に接続され、内針ハブ5から先端方向に突出している。これにより、外針2を留置する操作の際、把持部材7を手で把持することができ、その操作を容易かつ確実に行うことができる。
【0027】
把持部材7は、長尺状をなし、底板71と、底板71に立設された2つの壁部72、73とで構成されている。
【0028】
第1の状態では、把持部材7の内側の空間、すなわち、底板71と壁部72、73とで囲まれた空間に、留置針11が収納される(図1参照)。これにより、押圧部材6がその幅方向にずれるのを防止することができる。図3に示すように、押圧部材6を先端方向に押圧操作した際、当該押圧部材6は、把持部材7で案内されつつその方向に移動することとなり、よって、その押圧操作を容易に行なうことができる。
【0029】
また、各側壁72、73の先端部の外側の表面には、それぞれ、滑り止め部材として、上下方向に延在する複数のリブ721、731が並設されている。これにより、把持部材7を手で把持する際、手が滑ってしまうことを防止することができる。
【0030】
内針ハブ5および把持部材7の構成材料としては、それぞれ、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール等の各種樹脂材料が挙げられる。
【0031】
次に、留置針11について説明する。前述したように、この留置針11は、外針2と、外針ハブ3と、押圧部材6と、弁体8と、閉塞部材9とを有している(図1、図2参照)。
【0032】
図7〜図9に示すように、外針2は、内腔部(中空部)21を有する可撓管で構成されている。
【0033】
外針2は、ある程度の可撓性を有し、その構成材料としては、樹脂材料、特に、軟質樹脂材料が好適であり、その具体例としては、例えば、PTFE、ETFE、PFA等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂またはこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、前記オレフィン系樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体との混合物等が挙げられる。このような外針2は、その全部または一部が内部の視認性を有していてもよい。また、外針2の構成材料中には、例えば硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸ビスマス、タングステン酸のようなX線造影剤を配合し、造影機能を持たせることもできる。
【0034】
外針2の基端部には、例えば、カシメ、融着(熱融着、高周波融着等)、接着剤による接着等の方法により、外針ハブ3が液密に固定されている。
【0035】
外針ハブ3は、筒状の部材で構成され、その内腔部34が外針2の内腔部21と連通している。
【0036】
外針ハブ3の基端部の外周部には、その外径が拡径したフランジ31が形成されている。図7に示すように、組立状態では、フランジ31に穿刺針12の把持部材7の基端部75が当接している。これにより、内針4の針先41の外針2の先端開口22からの突出長さが規制される。
【0037】
また、外針ハブ3の内周部36の基端部には、その内径が先端方向に向かって漸減したテーパ部35が形成されている。図9に示すように、抜去状態では、このテーパ部35(内腔部34)にその基端側から管体20を挿入することができる。管体20もその外径が先端方向に向かって漸減したものであり、例えば、薬液が充填されたシリンジの口部、三方活栓等のコネクタの接続ポート、輸液ラインを構成するチューブが挙げられる。
【0038】
図1、図2に示すように、外針ハブ3の外周部には、押圧部材6が配置されている。この押圧部材6は、外針2を留置する操作において当該外針2を押圧する部材である。押圧部材6は、外針2の長手方向に沿って配置され、外針2上に位置する長尺な板状をなす本体部61と、本体部61の表側の面に設けられ、指を掛ける複数の指掛け突起62と、本体部61の裏側の面の一部で構成された押圧部64とを有している。
【0039】
複数の指掛け突起62は、図1、図2の上方に向かって突出するように形成されている。また、これらの指掛け突起62は、本体部61の長手方向に沿って等間隔に配置されている。このような指掛け突起62が形成されていることにより、外針2を血管に留置する操作において、内針4に対して外針2を先端方向に移動させる際、指で指掛け突起62をその方向に押圧することができる。そして、この押圧力で外針2を移動させることができる(図3参照)。また、各指掛け突起62の穿刺針12の把持部材7に対する位置を確認することより、外針2の血管への挿入長さを把握することができる。このように、各指掛け突起62は、外針2の血管への挿入長さを示す目盛りとしての機能を有する。
【0040】
押圧部64は、本実施形態では、本体部61の裏側の面の一部をそのまま利用したものであるが、これに限らず、例えば、本体部61の裏側の面から突出形成された突起等で構成してもよい。押圧部64が形成されていることにより、外針2の長さが比較的長い場合でも、穿刺操作の際、押圧部材6の押圧部64を介して外針2の長手方向の途中の部分が押圧部64で図3中の下方に押し付けられ、外針2の撓みを抑制することができ、容易かつ確実に、その穿刺操作を行うことができる。
【0041】
また、押圧部材6は、外針ハブ3に対し回動し得るように接続されている。この回動支持部の構成としては、特に限定されないが、例えば、本実施形態では、本体部61の基端部に設けられた軸63と、外針ハブ3の外周部に設けられ、軸63を支持する軸受け32とで構成することができる。
【0042】
そして、押圧部材6は、外針2に接近した図1〜図5に示す第1の位置と、外針2から退避した図6に示す第2の位置とに変位することができる。穿刺操作を行なう際には、押圧部材6は、第1の位置にある。また、例えば外針2が留置された後等、術者(使用者)や患者(被使用者)にとって、押圧部材6が邪魔になった場合には、押圧部材6を第2の位置に回動させることができる。
なお、押圧部材6は、外針ハブ3に対して着脱自在に構成されていてもよい。
【0043】
外針ハブ3および押圧部材6の構成材料としては、特に限定されず、例えば、内針ハブ5や把持部材7の構成材料として例示したものと同様のものを用いることができる。
【0044】
内針ハブ5、把持部材7、外針ハブ3は、それぞれ、好ましくは透明(無色透明)、着色透明または半透明の樹脂で構成され、内部の視認性が確保されている。これにより、外針2が血管を確保した際、内針4の内腔を通り、透明な内針ハブ5の内部に血液が流入するフラッシュバックを目視で確認することができる。
【0045】
図7〜図9に示すように、外針ハブの内腔部34には、弁体8が収納されている。弁体8は、その内周部81および外周部82がそれぞれ外針2の中心軸に対し傾斜した収斂形状(漏斗形状)をなすダックビル弁を用いることができ、内腔部34の長手方向の途中を封止することができる。
【0046】
弁体8の先端には、開閉可能なスリット(開閉部)83が形成されている。弁体8は、弾性材料で構成されており、これにより、スリット84が自己閉塞性を有する。また、図7に示すように組立状態では、スリット84は、外針2とともに内針4が挿通された状態となる。そして、スリット84に内針4を挿通した状態では、弁体8自身の弾性により、スリット84の内面が内針4の外周面に密着し、液密性を保持する。
【0047】
また、弁体8の外周部82には、その基端部に外径が拡径したフランジ83が形成されている。このフランジ83は、外針ハブ3の内周部36にその周方向に沿って形成されたリング状の溝361に挿入されている。これにより、弁体8が外針ハブ3に対し固定される。
【0048】
スリット84の形状としては、特に限定されず、例えば、一文字状、十文字状、Y字状(ト字状)とすることができる。また、このような形状の他には、ピンホール状とすることもできる。
【0049】
弁体8を構成する弾性材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、またはイソプレンゴム、シリコ−ンゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等の各種合成ゴム、ポリテトラフルオロエチレンの多孔質体、ポリアミド系、ポリエステル系等の各種熱可塑性エラストマー、ポリウレタンの多孔質体等の弾性材料が挙げられる。
【0050】
図7〜図9に示すように、外針ハブの内腔部34には、弁体8とともに閉塞部材9が収納されている。閉塞部材9は、弁体8のスリット84を閉じるものである。この閉塞部材9は、弁体8を介して配置された一対の板バネ91a、91bで構成されている。板バネ91aと板バネ91bとは、構成が同じであるため、以下、板バネ91aについて代表的に説明する。
【0051】
板バネ91aは、その長手方向の途中がU字状に湾曲(またはV字状に屈曲)した湾曲部92を有している。そして、板バネ91aは、この湾曲部92が先端側に配置されている。
【0052】
また、板バネ91aの一端部93は、外側に向かって折り曲げられている。この折り曲げられた一端部93は、外針ハブの内周部36に形成された溝362に係合している。これにより、板バネ91aは、外針ハブに片持支持された状態となる。なお、溝362は、外針ハブの内周部36において、溝361と異なる位置、すなわち、溝361よりも先端側に形成されている。
【0053】
一方、板バネ91aの他端部94は、弁体8の外周部82にその傾斜方向に沿うように当接している。このように板バネ91aでは、他端部94は、弁体8の外周部82に当接する当接部となっている。
【0054】
以上のような構成の板バネ91aおよび91bは、それぞれ、外針ハブ3に設置された際に、湾曲部92の曲率が自然状態よりも大となり、他端部94で弁体8の外周部82を付勢することができる。これにより、弁体8は、その先端側から板バネ91a、91bの他端部94によって挟まれることとなり、図8に示す抜去状態では、スリット84が閉じられる。ここで、前記「自然状態」とは、外力を付与しない状態のことを言う。
【0055】
例えば組立状態が長期間わたって維持された、すなわち、スリット84を内針4が長期間わたって挿通していた場合にスリット84に内針4による癖がついてしまったとしても、抜去状態では、前述したスリット84が閉じられることと、スリット84が自己閉塞性を有することとが相まって、前記癖によってスリット84が十分かつ確実に閉塞しないという不具合を解消することができる。これにより、抜去状態では、外針2が血管を確保した際に当該外針2の先端開口22から流入した血液が、弁体8を越えて、外針ハブ3の基端から流出するのを確実に防止することができる。
【0056】
板バネ91aおよび91bの構成材料としては、弁体8の構成材料よりも弾性率が高い材料が好ましく、例えば、ステンレス鋼、Ni−Ti系合金、Cu−Zn系合金、Ni−Al系合金等のような弾性を有する金属材料、シリコーンゴム、ポリアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のような弾性を有する樹脂材料が挙げられる。
【0057】
次に、留置針組立体1の使用方法の一例(血管に穿刺する場合)について説明する。
[1] 図1に示すように、留置針組立体1を組立状態とし、押圧部材6を第1の位置に位置させ、内針ハブ5に設けられた把持部材7の先端部を例えば一方の手で把持し、一方の手の人差し指を押圧部材6の最先端の指掛け突起62に掛け、その人差し指で指掛け突起62の根元部付近を下方に押圧しつつ、留置針組立体1の先端部を、患者に押し当てるようにして、血管に向かって、表皮を穿刺する。この際、押圧部64が外針2の基端と先端との間の部位を下方に押し付けることにより、内針4および外針2の撓みを抑制することができる。
【0058】
[2] 内針4の針先41が血管に穿刺されると、血圧により血液が内針4内を基端方向へ流入し、内針ハブ5内に導入され、視認性を有する内針ハブ5を介してこのフラッシュバックを視認することができる。これにより内針4の針先41が血管を確保したことを知ることができる。
【0059】
また、血液は外針2内にも流入し、この流入によってもフラッシュバックを視認することができる。なお、外針2を介して流入した血液は、外針ハブ3の内腔部34では弁体8によって当該弁体8から基端側への流下は防止される(図7参照)。
【0060】
[3] 次に、図3に示すように、内針4をガイドとし、内針4に沿って、さらに外針2を微小距離先端方向へ進める。この際、人指し指で、最先端の指掛け突起62を先端方向に押圧し、外針2を先端方向へ移動させる。
【0061】
[4] 次に、図4に示すように、人指し指で、1つ基端側の指掛け突起62を先端方向に押圧し、外針2を微小距離先端方向へ移動させ、これを順次行い、外針2の先端部を血管内の目的位置まで挿入する。
【0062】
[5] 次に、図5に示すように、血管に留置されている外針2側の押圧部材6を他方の手で押さえつつ、一方の手で把持部材7の基端部や内針ハブ5を把持し、基端方向へ引っ張る。これにより、内針4が外針2から抜き取られ、留置針組立体1が抜去状態となる。このようにして外針2から内針4を抜き取った後は、内針4および内針ハブ5は不用となるため、廃棄処分される。
【0063】
また、前述したように、抜去状態では、スリット84が十分かつ確実に閉じられる(図8参照)。これにより、外針2から流入した血液が外針ハブ3の基端から流出するのが確実に防止される。
【0064】
[6] 内針4を外針2から抜去した後は、必要に応じて、押圧部材6を、図6に示すように回動させ、第2の位置に位置させてもよく、回転させずに、第1の位置のままとしてもよい。
【0065】
また、図9に示すように、内針4が抜き取られた外針ハブ3には、そのテーパ部35に管体20を接続することができる。このとき、管体20は、弁体8の途中まで挿入され、板バネ91a、91bの付勢力、すなわち、弁体8を挟む力に抗して、スリット84を開くことができる。そして、管体20を介して、例えば患者への輸液の投与を開始することができる。このように、抜去状態の留置針組立体1では、管体20で弁体8を貫通させなくとも、当該弁体8のスリット84を開けることができる。
【0066】
<第2実施形態>
図10は、本発明の留置針組立体の第2実施形態(抜去状態)の外針ハブの内側を示す縦断面図である。なお、説明の都合上、図10中の左側を「先端」、右側を「基端」と言う。
【0067】
以下、この図を参照して本発明の留置針組立体の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、閉塞部材の形状が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0068】
図10に示す留置針組立体1Aでは、板バネ91aおよび91bは、それぞれ、他端部94の途中に、湾曲変形した変形部941が形成されている。各変形部941は、弁体8の外周部82から離間している。
【0069】
このような変形部941が形成されていることにより、弁体8に管体20が挿入された際に、管体20の先端方向への押圧力によって、弁体8の外周部82の一部がその外側の各変形部941に容易に入り込むことができる。これにより、弁体8のスリット84が容易かつ確実に開くことができる。
【0070】
<第3実施形態>
図11は、本発明の留置針組立体の第3実施形態(組立状態)を示す縦断面図である。なお、説明の都合上、図11中の左側を「先端」、右側を「基端」と言う。
【0071】
以下、この図を参照して本発明の留置針組立体の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、閉塞部材の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0072】
図11に示す留置針組立体1Bでは、閉塞部材9が1枚の板バネ91cで構成されている。
【0073】
板バネ91cには、その長手方向の中央部が先端側でU字状に湾曲して、湾曲部92が形成されている。この湾曲部92には、その板厚方向に貫通する貫通孔921が形成されている。この貫通孔921は、組立状態で内針4が挿通する挿通孔として機能する。
【0074】
また、板バネ91cの一端部93および他端部94は、それぞれ、内側に向かって折り曲げられて、弁体8の外周部82の斜面に沿うように当接している。
【0075】
このような板バネ91cで構成された閉塞部材9は、外針ハブ3に設置された際に、湾曲部92の曲率が自然状態よりも大となり、一端部93および他端部94が互いに接近して弁体8の外周部82を付勢することができる。これにより、弁体8は、一端部93および他端部94によって挟まれることとなり、抜去状態ではスリット84が閉じられ、前述したように、血液が、弁体8を越えて、外針ハブ3の基端から流出するのを確実に防止することができる。
【0076】
以上、本発明の留置針組立体を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、留置針組立体を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0077】
また、本発明の留置針組立体は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0078】
また、本発明の留置針組立体は、血管内に挿入して使用されるものに限定されず、例えば、腹腔内、胸腔内、リンパ管内、脊柱管内等に挿入して使用されるものに適用することもできる。
【0079】
また、閉塞部材は、U字状をなす一対の板バネで構成されているのに限定されず、例えば、U字状をなす1つの板バネで構成されていてもよい。
【0080】
また、把持部材の各壁部内面には、それぞれ、側方に向って突出し、押圧部材と係合するリブ(係合部)が形成されていてもよい。このリブにより、組立状態において、押圧部材が外針からその外針の径方向に離間する方向に変位すること、すなわち、押圧部材が上側に持ち上がってしまうことを防止することができる。
【0081】
また、外針ハブの内腔部には、弁体の周囲に当該弁体よりも軟質の充填材が充填されていてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1、1A、1B 留置針組立体
11 留置針
12 穿刺針
2 外針
21 内腔部(中空部)
22 先端開口
3 外針ハブ
31 フランジ
32 軸受け
34 内腔部
35 テーパ部
36 内周部
361、362 溝
4 内針
41 針先
5 内針ハブ
52 開口
6 押圧部材
61 本体部
62 指掛け突起
63 軸
64 押圧部
7 把持部材
71 底板
72、73 壁部
721、731 リブ
75 基端部
8 弁体
81 内周部
82 外周部
83 フランジ
84 スリット(開閉部)
9 閉塞部材
91a、91b、91c 板バネ
92 湾曲部
921 貫通孔
93 一端部
94 他端部
941 変形部
20 管体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に鋭利な針先を有する内針と、
前記内針の基端部に設けられた内針ハブと、
前記内針が挿通される中空の外針と、
前記外針の基端部に設けられ、該外針内と連通する内腔部を有する外針ハブと、
前記外針ハブの内腔部を封止するように設置され、収斂形状をなし、その先端に前記外針とともに前記内針が挿通され、開閉可能な開閉部を有する、弾性材料で構成された弁体と、
前記外針ハブの内腔部に設置され、弾性を有し、前記外針および前記開閉部から内針が抜去された際に、前記弁体を先端側から挟んで前記開閉部を閉じる閉塞部材とを備え、
前記閉塞部材は、先端側に湾曲または屈曲した湾曲部を有する少なくとも1つの板バネで構成されていることを特徴とする留置針組立体。
【請求項2】
前記弁体の外周部は、前記外針の中心軸に対し傾斜しており、
前記閉塞部材は、前記弁体の外周部に当接し、該外周部の傾斜方向に沿った当接部を有する請求項1に記載の留置針組立体。
【請求項3】
前記外針ハブは、前記内針が抜去された状態で、その基端側から前記内腔部に管体を挿入可能なものであり、
前記外針ハブの内腔部に前記管体が挿入されたとき、該管体によって前記弁体は、前記閉塞部材の前記弁体を挟む力に抗して前記開閉部が開くよう構成されている請求項1または2に記載の留置針組立体。
【請求項4】
前記外針ハブに設けられ、前記外針を押圧する長尺な押圧部材をさらに備える請求項1ないし3のいずれかに記載の留置針組立体。
【請求項5】
前記内針ハブに設けられ、該内針ハブから先端方向に突出する把持部材をさらに備える請求項1ないし4のいずれかに記載の留置針組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−29974(P2012−29974A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173552(P2010−173552)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】