説明

畜産及び水産用飼料

【課題】栄養価の高い海苔を広く活用するべく、家畜および養殖魚介類のいずれに対しても利用可能な畜産及び水産用飼料を提供する。
【解決手段】少なくとも食用として供されている量まで塩分が除去された色落ち海苔を含む原料を使用して乾燥海苔の状態に加工し、更に原料にゲル化剤を添加することによりゲル化すると共に、これらを固形状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜や養殖魚介類に用いられる畜産及び水産用飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、収穫した生海苔を生餌として直接養殖魚に与えることが行なわれていた。また、海苔には、タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素が豊富に含まれているため、この海苔の高い栄養価に着目し、養殖魚の成長促進や耐病性の改善を図ることを目的として、海苔を人工飼料に混ぜて養殖魚に与える提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−135910号公報(明細書段落番号0004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の生海苔や人工飼料に混ぜていた海苔は、塩分を洗い落とす加工がなされていないため塩分を多く含み、家畜に対しては健康被害を及ぼすおそれがあり、主に水産用飼料としての利用にとどまっている。
【0005】
そこで、本発明は、栄養価の高い海苔を広く活用すべく、家畜および養殖魚介類のいずれに対しても利用可能な畜産及び水産用飼料の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る畜産及び水産用飼料は、少なくとも食用として供されている量まで塩分が除去された海苔を含む原料からなることを特徴としているため、前記海苔の塩分による健康被害の心配がなく、水産動物に限らず家畜などにも使用することができる。塩分は低いほど好ましい。また、前記海苔は、タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素を豊富に含み栄養価が高いため、家畜や養殖魚介類に与えれば生育状態を向上させることができる。例えば、アワビに与えると、養殖アワビに特有の緑色を帯びた貝殻を、天然物アワビのような茶色を帯びた色に変化させることができる。さらに、養殖アワビの生存率を改善することができ、身が厚い良質のアワビに育成することができる。なお、塩分を除去する処理としては、例えば、収穫した前記海苔を、真水を循環させたタンク内で攪拌しながら洗浄する方法がある。
【0007】
請求項2に係る畜産及び水産用飼料は、海苔が色落ち海苔であることを特徴としているため、これまでは使い道がなく廃棄物として処分されていた前記色落ち海苔を有効活用することができる。即ち、前記色落ち海苔は、プランクトンの異常増殖や水温低下などの異常気象が原因で海苔が栄養不足となり、茶褐色や黄色を帯びた色に退色したものである。退色した前記色落ち海苔は、商品価値がないうえに海洋投棄や規定の価格以下での入札が禁止されているため、乾海苔の状態に加工されたあと焼却処分されている。この焼却処分にかかる費用は海苔の生産業者が負担しなければならず、また、折からの海苔の価格低迷から、生産業者にとっては重い負担となっている。このため、前記色落ち海苔を有効活用することで、上記負担を軽減することが可能になる。なお、前記色落ち海苔にも退色していない通常の海苔と同様に、タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素が豊富に含まれている。
【0008】
請求項3に係る畜産及び水産用飼料は、海苔が乾海苔の状態に加工されていることを特徴としているため、原料としての前記海苔を室温において長期保存することが可能になる。これにより、生海苔の場合のように冷凍設備で冷凍保管する必要がなく、保管にかかる手間や費用などを軽減することができる。
【0009】
請求項4に係る畜産及び水産用飼料は、原料に前記海苔以外の海藻類が含まれていることを特徴としているため、前記海藻類に豊富に含まれるミネラルや食物繊維などの栄養素により、免疫力を強化したり、整腸作用を促進したりすることができ、生育状態を改善することができる。
【0010】
請求項5に係る畜産及び水産用飼料は、前記原料にゲル化剤が添加されゲル化されていることを特徴としているため、陸上においては風などで飛散しにくく、水中では水に溶けて分散しにくいので、給餌が効率良く行えるようになる。また、飼料が散乱して周囲を汚すこともない。
【0011】
請求項6に係る畜産及び水産用飼料は、ゲル化剤として寒天が用いられていることを特徴としているため、前記寒天に豊富に含まれる食物繊維により整腸作用を促進することができる。
【0012】
請求項7に係る畜産及び水産用飼料は、原料が固形状に形成されてなることを特徴としているため、陸上では風などによって飛散しにくく、水中では水に溶けて分散しにくいので、給餌が効率良く行えるようになる。また、飼料が散乱して周囲を汚すことがない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の畜産及び水産用飼料によれば、栄養価の高い海苔を含む飼料を、家畜と養殖魚介類との区別なく安心して与えることができる。そして、海苔を水産用飼料の原料としてだけでなく、畜産用飼料の原料としても利用可能になるため、海苔の用途が広がり、水産資源の有効利用を促進することができる。
【0014】
請求項2記載の畜産及び水産用飼料によれば、従来廃棄処分されていた水産資源の有効利用を図ることができるとともに、色落ち海苔の廃棄にかかる海苔生産業者の負担を軽減することができる。そして、色落ち海苔は、正常な海苔と同様に栄養価が高いため、家畜や養殖魚介類の成育状態が改善され、肉付きが良く良質の肉質を備えた家畜や養殖魚介類に育成することができる。また、本来廃棄物として処分される商品価値がないものであるため安価で入手でき、海苔の豊富な栄養素を含む良質の飼料を低コストで製造することができる。このように、本来廃棄物として処分されていた色落ち海苔を利用して、家畜と養殖魚介類とを区別すること無く安心して与えられるため使いやすく、かつ良質の飼料を安価で製造することができるため、色落ち海苔を活用した新たな事業展開を図ることができる。
【0015】
請求項3記載の畜産及び水産用飼料は、原料としての海苔を常温で長期間保存することができるため、原料の在庫管理がしやすくなるとともに、保管にかかる費用や手間を軽減することができる。
【0016】
請求項4記載の畜産及び水産用飼料は、栄養価の高い海苔だけでなく、ミネラルや食物繊維を豊富に含む海藻類を与えることができるので、肉付き・肉質共に優れた高品質の家畜および養殖魚介類に育成することができる。
【0017】
請求項5記載の畜産及び水産用飼料は、給餌作業が簡単になり、特に、水中においては原料が水に溶けて分散しにくいため、養殖魚介類を短期間で成長させることができる。
【0018】
請求項6記載の畜産及び水産用飼料は、寒天に含まれる食物繊維によって整腸作用を促進することができ、生育状態を改善することができる。
【0019】
請求項7記載の畜産及び水産用飼料は、給餌作業が簡単になり、特に、水中においては原料が水に溶けて分散しにくいため、養殖魚介類を短期間で成長させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る畜産及び水産用飼料の実施形態について説明する。この実施形態の畜産及び水産用飼料は、色落ち海苔を主原料とし、寒天でゲル状に固めたものである。詳しくは、乾海苔の状態に加工した色落ち海苔を粉砕して粉末状にし、これに粉末寒天および水を加えて火にかけて煮立て、そのあと型に流し込んで冷ましたのち、型から取り出して複数の小さなブロック状にカットしたものである。
【0021】
このように製造した畜産及び水産用飼料は、寒天によってゲル化されているため、陸上においては風などで飛散することがなく、水中では水に溶けて分散しにくいため、給餌を効率良く行なうことができる。また、飼料が散乱して周囲を汚すことがない。
主原料の色落ち海苔は、プランクトンの異常発生や水温低下などによって栄養不足となり、海苔本来の黒い色が茶褐色や黄色を帯びた色に退色したものである。しかしながら、色落ち海苔には、正常な海苔と同様に、タンパク質やビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素が豊富に含まれている。そして、海中の海苔網から収穫した色落ち海苔を、異物を除去したのちにミンチで細かく裁断し、付着している海水を真水で洗い流して塩分を取り除く。この際、海苔の塩分が、少なくとも食用として供することができる量(例えば、100g当り4.3g以下。)になるまで洗浄を行う。その後、抄製機にかけて四角形の板状に抄き上げ、スポンジ等で脱水した後に乾燥機にかけて水分を除去し乾海苔の状態にしたものである。
【0022】
このように、乾海苔の状態に加工された色落ち海苔は、食用として供されている量以下まで塩分が取り除かれているため、家畜に与えたとしても健康被害を及ぼすおそれがなく、安心して使用することができる。しかも、栄養価が高くてミネラルや食物繊維を豊富に含むため、免疫力を高めたり、整腸作用を促進したりして、家畜や養殖魚介類の生育状態を改善し、短期間のうちに肉付きが良く良質の肉質を備えた家畜や養殖魚介類に育成することができる。例えば、養殖アワビの稚貝に与えると、短期間で身が厚く良好な肉質のアワビに成長する。しかも、貝殻が、養殖アワビ特有の緑色から天然物に近い茶色を帯びた色に変化し、天然アワビのような外観を備えた成貝に成長する。
【0023】
原料の色落ち海苔は、乾海苔の状態に加工され室温下における長期保存が可能であるため、保管にかかる費用面での負担が少なく、原料としての色落ち海苔の在庫管理を容易に行うことができ、色落ち海苔を安定して供給することができる。しかも、従来廃棄物として扱われていた色落ち海苔が、家畜や養殖魚介類の飼料として利用しやすくなるため、従来行なわれている焼却処分にかかる負担を削減することができる。また、家畜用飼料としての事業展開も可能になるため、水産資源の有効活用を促進することができる。
【0024】
なお、畜産及び水産用飼料をゲル化している寒天にも食物繊維が豊富に含まれているため、寒天が整腸作用の促進に寄与している。ゲル化剤としては、寒天の他に、海藻を原料とするカラギーナン、ペクチン、ゼラチンなどを用いることができる。
【0025】
原料に、色落ち海苔以外のわかめや昆布などの海藻類を加えると、これらに豊富に含まれるミネラルや食物繊維などの栄養素によって、免疫力をより高め、整腸作用をより一層促進することができ、生育状態をさらに改善することができるため、肉付きが良く、高品質の肉質を備えた家畜や養殖魚介類に育てることができる。なお、海藻類は、真水で洗浄して塩分を低く抑えたものを使用することが生育状態を良好に保つうえで好ましい。
【0026】
本発明に係る畜産及び水産用飼料は、ゲル化剤で固めた形態のほか、ペレットなど固形状の形態にすることも可能である。例えば、原料に結合剤を配合して圧縮成形機などによって造粒してペレット状に形成する。このように、飼料を固形状に形成することによって、陸上においては風などで飛散することがなく、水中では分散して水に溶けにくいため、給餌を効率良く行なうことができる。また、飼料が散乱して周囲を汚すことがなく、清掃の手間が省け、かつ水質悪化を防止することができる。
【0027】
上記の色落ち海苔は、乾海苔の状態に加工したものだけでなく、乾燥前の生海苔の状態のものを使用することもできる。また、色落ち海苔の代わりに、退色していない通常の海苔を使用することも可能である。この場合、穴が開いていたり、欠損部分があるなどの理由によって廃棄処分される乾海苔の不良品を使用すれば、廃棄物の有効活用を図ることができる。
【0028】
原料には、海藻類のほかに、一般的な飼料に使用されている粗蛋白質、粗灰分、粗脂肪、カルシウム、リン等を、給餌する家畜や養殖魚介類の生育状態などに応じて配合しても良い。
【0029】
本発明の畜産及び水産用飼料は、家畜としては牛、豚、鶏などに使用することができ、養殖魚介類としてはハマチ、タイ、フグ、ウナギ、アユ、ニジマス、ホタテ、カキ、エビ、カニなどに対して使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも食用として供されている量まで塩分が除去された海苔を含む原料からなることを特徴とする家畜及び水産用飼料。
【請求項2】
前記海苔が色落ち海苔であることを特徴とする請求項1記載の家畜及び水産用飼料。
【請求項3】
前記海苔が乾海苔の状態に加工されていることを特徴とする請求項1または2記載の畜産及び水産用飼料。
【請求項4】
前記原料に前記海苔以外の海藻類が含まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の畜産及び水産用飼料。
【請求項5】
前記原料にゲル化剤が添加されゲル化されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれにかに記載の畜産及び水産用飼料。
【請求項6】
前記ゲル化剤として寒天が用いられていることを特徴とする請求項5記載の畜産及び水産用飼料。
【請求項7】
前記原料が固形状に形成されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の畜産及び水産用飼料。