説明

畝成形装置と畝成形前処理板

【課題】畝の端部に、畝に交差する別の畝を簡単に形成する畝成形装置と畝成形前処理板を提供する。
【解決手段】走行装置12に取り付けられ走行装置12の回転駆動系で回転駆動される耕耘ロータリ26と、耕耘ロータリ26の後方に配置され畝の谷部と谷部の両側に法面を形成する土押体30と、耕耘ロータリ26の前方に配置される畝成形用前処理板46を備える。畝成形用前処理板46は、走行方向に対して傾斜し、走行方向の前側の端部は走行装置12の後輪16の後方外側に位置し、走行方向の後側の端部は耕耘ロータリ26の前方内側に位置するとともに、土押体30の谷底部30dの進行方向延長線上に達している。畝成形用前処理板46は、走行装置12に係止された支持部材44に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗用トラクタ等の走行装置に取り付けられ、走行しながら土を移動させて盛り上げて畝を作る畝成形装置と畝成形前処理板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の畝成形装置は、乗用トラクタ等の走行装置に、走行装置の回転駆動系で回転する耕耘ロータリが取り付けられ、耕耘ロータリの後方には土押体が設けられている。このような畝成形装置は、走行しながら耕耘ロータリで土を側方へ飛ばして溝を形成し側方に土を盛り上げ、土押体で盛り上げた土の法面を鎮圧し、畝を成形する。
【0003】
畝成形装置には、畝を均整に成形するためにいろいろな工夫が施されている。特許文献1に開示されている畦・畝付け機は、土押体が、走行装置の回転駆動系で開閉揺動運動して盛り上げた土の法面を鎮圧して畦や畝の法面を鎮圧することができる。
【0004】
このような畝成形装置で広い耕地に複数本の畝を作るときの一例を、図4に示す。先ず一方向に乗用トラクタ等により畝成形装置1を走行させる。ここでは、畝成形装置1には3個の土押体2が設けられ、一回走行させると耕地に3本の谷部3が形成され、3本の谷部3の間に2本の山頂部4が形成される。山頂部4と谷部3の間には傾斜面である法面5が設けられ、山頂部4と一対の法面5により第一畝Aが設けられる。畝成形装置1の走行方向の両脇には、法面5が片方だけ山頂部4へ向かう傾斜に設けられる。そして、畝成形装置1が耕地の周縁部付近に来ると、畝成形装置1をきり返して、第一畝Aに隣接して、平行に戻りながらその隣に平行な第一畝Aを形成する。畝成形装置1の走行方向の両脇に形成された片方だけの法面5は、次に形成された法面5により第一畝Aとなる。これを繰り返して互いに平行な複数の第一畝Aを耕地のほぼ全面に形成する。しかし、耕地の周縁部には畝成形装置1が折り返すスペースが残る。そこで、耕地面積を有効に活用するために、畝成形装置1を第一畝Aに対してほぼ直角に走行させ、第一畝Aの端部付近に、第一畝Aにほぼ直交する第二畝Bを形成することがある。
【特許文献1】特開2001−16905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4に示すように、第一畝Aの端部に第二畝Bを形成するとき、第一畝Aの端部に土押体2で押出されて土の盛り上がり部6ができ、第一畝Aの谷部3を埋めてしまい第一畝Aの水はけが悪くなるという問題があった。これを解消するために、作業者が手作業で土を移動させて谷部3を再び形成し、水はけを良好にしていた。しかし、手作業であるため作業者の負担が大きく、大変であった。
【0006】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、畝の端部に、畝に交差する別の畝を簡単に形成する畝成形装置と畝成形前処理板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、走行装置に取り付けられ前記走行装置の回転駆動系で回転駆動される耕耘ロータリと、前記耕耘ロータリの後方に配置され畝の谷部と谷部の両側に法面を形成する土押体と、前記耕耘ロータリの前方に配置される畝成形用前処理板が設けられ、前記畝成形用前処理板は走行方向に対して傾斜し、走行方向の前側の端部は前記走行装置の車輪の後方外側に位置し、走行方向の後側の端部は前記耕耘ロータリの前方内側に位置し、前記土押体の谷底部の進行方向延長線上に達している畝成形装置である。
【0008】
前記畝成形用前処理板は、前記走行装置に係止された支持部材に取り付けられ、前記畝成形用前処理板は、前記支持部材に軸止された自由回転可能な円板である第一前処理板と、前記支持部材に固定され前記第一前処理板の走行方向の後側の端部よりも後方内側に延出する板体である第二前処理板から成る。前記第一処理板には、前記走行方向の内側に向かって凹となる湾曲面が形成されている。
【0009】
またこの発明は、耕耘ロータリの後方に配置され畝の谷部と谷部の両脇の一対の法面を形成する土押体が取り付けられた走行装置に設けられ、走行方向に対して傾斜し、走行方向の前側は前記走行装置の車輪の後方外側に位置し、走行方向の後側は前記耕耘ロータリの前方内側に位置し、前記土押体の谷底部の進行方向延長線上に達している畝成形用前処理板である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の畝成形装置と畝成形用前処理板は、畝の端部に、畝に直行する別の畝を簡単に形成することができる。先に作られた畝の谷部が、直行する後に作られた畝に埋められることが無く、水はけを確保することができる。先に作られた畝の谷部を掘って修正する手間がかからず、作業者の負担が軽く、作業効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1、図2はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の畝成形装置10は、乗用トラクタ等の走行装置12が設けられ、走行装置12には一対の前輪14と、図示しない回転駆動系により駆動される一対の後輪16が設けられている。
【0012】
走行装置12の後部には、連結部材18が後方へ向かって突出し、連結部材18の先端には枠部材20が取り付けられている。枠部材20は、ほぼ水平方向に保持された矩形であり、走行装置12の走行方向に対してほぼ平行で所定間隔開けて互いに平行に位置する一対の横枠20aと、横枠20aの端部同士を連結する連結枠20bで組み立てられている。
【0013】
枠部材20の、走行装置12から離れている方の連結枠20bには、棒状の耕耘ロータリ保持部材22が設けられている。耕耘ロータリ保持部材22は下方に延出し、延出した先端には覆い部材24が設けられている。覆い部材24は、例えばトレイを伏せたような形状の金属板と、金属板の周囲に貼り付けられた泥はね防止用のゴムシートが設けられている。覆い部材24の下には、耕耘ロータリ26が設けられている。耕耘ロータリ26は、走行装置12の回転駆動系により回転駆動される。
【0014】
覆い部材24には、コの字形の土押体保持部材28が連結されている。土押体保持部材28は耕耘ロータリ26の上面から上方に延出し、コの字形に折り曲げられて下方へ延出し、延出した先端には土押体30が設けられている。土押体30は、例えば金属製の板で作られ、図2に示すように上方から見たときに土押体保持部材28を中心として、走行方向の後側に開くハの字に折り曲げられている。土押体30は、図1に示すように水平方向横から見たときは三角形であり、一辺30aは土押体保持部材28に沿って垂直に位置し、他方の辺30bは水平で土押体保持部材28よりも後方に延出し、残りの辺30cは、下方は土押体保持部材28の先端近傍に位置し上方は辺30bの端部に位置し、辺30cのこの角度は、畝成形装置10が作る畝の法面の角度となる。土押体30の、ハの字の中間部分は、畝の谷底を形成する谷底部30dである。
【0015】
耕耘ロータリ保持部材22の基端部付近には、前処理板保持部材32が設けられている。前処理板保持部材32は、耕耘ロータリ保持部材22の前側の下方に延出する棒状の第一部材32aと、第一部材32aの延出した先端に設けられ上方に延出する棒状の第二部材32bが設けられている。第二部材32bの先端には、走行方向に対面する保持板34が固定され、保持板34には水平方向にボルト用の穴が複数個並べて設けられている。
【0016】
保持板34には、後述する畝成形用前処理板46の位置を調整する調整部材36が係止されている。調整部材36には、保持板34に重ねられる板状の横調整部38が設けられ、横調整部38には、保持板34のボルト用の穴に連通する穴が、水平方向に複数個並べられて設けられている。横調整部38の、保持板34と反対側の面には、板状の取付部40が一体に溶接されている。取付部40は、水平方向に前方へ突出する直角三角形の板状であり、直角の頂点が横調整部38から離れて前方に位置している。取付部40の直角の頂点は、この頂点を一つの角部とする正方形状に切り欠かかれ、切り欠かれた部分に四角筒状の高さ調整部42が一体に溶接されている。高さ調整部42は、四角筒の挿通方向が取付部40に対してほぼ直角に位置し、垂直方向に下方に延出している。高さ調整部42の一つの角部は、走行方向の前方に位置し、この前方に位置した角部の、走行方向の外側に連続する側面42aには、垂直方向にボルト用の穴が複数個並べて設けられている。
【0017】
調整部材36の高さ調整部42には、四角筒状の支持部材44が挿通されて設けられている。支持部材44には、高さ調整部42の側面42aに重ねられる側面に、高さ調整部42のボルト用の穴に連通する穴が、垂直方向に複数個並べられて設けられている。支持部材44の下方の先端には、畝成形用前処理板46が設けられている。畝成形用前処理板46は、自由回転可能な円板である第一前処理板48と、矩形の板体である第二前処理板50が設けられている。畝成形用前処理板48と第二前処理板50は、地面に対して、耕耘ロータリ26とほぼ同じ深さに達して保持されている。
【0018】
第一前処理板48は、支持部材44の、走行方向の前側で走行装置12内側に面している側面44aに軸止されている。第一前処理板48の角度は走行方向に対して傾斜し、走行方向の前側の端部は走行装置12の後輪16の後方外側に位置し、走行方向の後側の端部は耕耘ロータリ26の前方内側に位置している。第一前処理板48は、走行方向の内側に向かって凹となる湾曲面が形成されている。第二前処理板50は、支持部材44の、第一前処理板48が取り付けられた側面44aと反対側の側面44bに面一に溶接されて固定され、第一前処理板48に対してほぼ平行に位置している。第二前処理板50は、側面44bから走行方向の後方内側に延出し、後側の端部は、第一前処理板48の後側の端部を通過して土押体30の谷底部30dの進行方向前方延長線上に達している。
【0019】
畝成形用前処理板46は、調整部材36のボルト用穴にボルトを挿通することにより畝成形装置10に着脱自在であり、畝成形装置10の走行方向の両脇のどちらにでも取り付けることができる。畝成形用前処理板46の位置は、調整部材36の横調整部38と高さ調整部42の位置を変えて、土の状態や耕耘ロータリ26の大きさにあわせて調整する。
【0020】
枠部材20の、走行装置12から離れている方の連結枠20bには、連結枠20bに沿って耕耘ロータリ26を走行方向に対して直角方向に移動させるネジ部材52が設けられている。ネジ部材52は、連結枠20bから横枠20aに対して平行に設けられ、ネジ部材52の途中に、耕耘ロータリ26が設けられた耕耘ロータリ保持部材22の図示しないナット部材が螺合されて取り付けられている。ネジ部材52の、横枠20aと反対の端部は、連結枠20bに固定されたモータ54に連結され、回転駆動される。ネジ部材52は、連結枠20bに取り付けられた3個の耕耘ロータリ26のうち、両側の2個に設けられ、各々独立に連結枠20bに沿って位置調整可能に設けられている。
【0021】
次に、畝成形装置10で広い耕地に複数本の畝を作るときの例を、図3に基づいて説明する。先ず、一方向に畝成形装置10を走行させる。畝成形装置10には3個の土押体30が設けられているため、一回走行させると耕地に3本の谷部3が形成され、3本の谷部3の間に2本の山頂部4が形成される。山頂部4と谷部3の間には、傾斜面である法面5が設けられ、山頂部4と一対の法面5により第一畝Aが設けられる。畝成形装置1の走行方向の両脇には、法面5が片方だけ山頂部4へ向かう傾斜に設けられる。そして、畝成形装置10が耕地の周縁部付近に来ると、畝成形装置10をきり返して、第一畝Aに隣接して、平行に戻りながらその隣に平行な第一畝Aを形成する。畝成形装置1の走行方向の両脇に形成された片方だけの法面5は、次に形成された法面5により第一畝Aとなる。これを繰り返して互いに平行な複数の第一畝Aを耕地のほぼ全面に形成する。このとき、耕地の周縁部には畝成形装置10が折り返すスペースが残る。そこでこの部分に、畝成形装置10を第一畝Aに対してほぼ直角に走行させ、第一畝Aの端部付近にほぼ直交する第二畝Bを形成する。
【0022】
第二畝Bを形成するとき、走行方向の第一畝Aに面する側に、畝成形用前処理板46を取り付けて走行させる。このとき、第一畝Aの端部の耕土は、畝成形用前処理板46に当接して走行方向の内側へ移動し、第一畝Aに一番近い土押体30の谷底部30d付近に置かれるため、土押体30が通過するときに第一畝A側へ耕土が押出されることがない。これにより、第一畝Aの端部に法面5が形成されず、図4に示すような従来の盛り上がり部6が生成されることがない。このため、第一畝Aの谷部3が埋められることが無く、谷部3は側方に開放され、第一畝Aの水はけが確保される。
【0023】
この実施形態の畝成形装置10と畝成形用前処理板46によれば、第一畝Aの端部に、第一畝Aに交差する第二畝Bを、簡単に形成することができる。畝成形用前処理板46の第一前処理板48は自由回転の円板であり、耕土を少ない抵抗で移動させることができる。第一前処理板48の第一前処理板48で移動した耕土は、第二前処理板50により、確実に土押体30の谷底部30d付近に移動され、確実に第一畝Aへ耕土の盛り上がり部6ができることを防ぐ。第一畝Aの谷部3が埋められないため、第一畝Aの水はけを確保することができる。盛り上がり部6を手作業で取り除く作業が不要であり、作業者の負担がなく、作業効率もよい。
【0024】
畝成形用前処理板46の位置は、調整部材36により、垂直方向と、走行方向に対して略直角な水平方向に調整可能であり、耕耘ロータリ26の大きさや第一畝Aとの間隔等に合わせて自由に変更することができる。畝成形用前処理板46は、走行方向の両脇のどちらにでも取り付けることができ、耕地の形状等に合わせて変更することができる。不要なときは、簡単に外すことができる。畝成形用前処理板46は、支持部材44に第一前処理板48と第二前処理板50をとりつけた簡単な構造であり、いろいろな種類の走行装置12に取り付け、使用することができる。
【0025】
なお、この発明の畝成形装置と畝成形用前処理板は、上記実施の形態に限定されるものではなく、歩行式などいろいろな種類の走行装置に取り付けることができ、耕耘ロータリや土押体の数や形状等も変更可能である。畝成形用前処理板の形状も変更可能であり、第一前処理板または第二前処理板のいずれか一方でもよい。畝成形用前処理板を走行装置に取り付ける前処理板保持部材や調整部材も、適宜変更可能である。畝成形装置は第一畝に直交する第二畝を形成する場合に限定されず、耕地の横に用水路や他の作物が植えられている区画がある場合などでも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の一実施形態の畝成形装置と畝成形用前処理板の正面図である。
【図2】この実施形態の畝成形装置と畝成形用前処理板の上面図である。
【図3】この実施形態の畝成形装置と畝成形用前処理板の使用方法を示す上面図である。
【図4】従来の畝成形装置の使用方法を示す上面図である。
【符号の説明】
【0027】
3 谷部
4 山頂部
5 法面
10 畝成形装置
12 走行装置
16 後輪
26 耕耘ロータリ
30 土押体
30d 谷底部
32 前処理板保持部材
36 調整部材
44 支持部材
46 畝成形用前処理板
48 第一前処理板
50 第二前処理板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置に取り付けられ前記走行装置の回転駆動系で回転駆動される耕耘ロータリと、前記耕耘ロータリの後方に配置され畝の谷部と谷部の両側に法面を形成する土押体と、前記耕耘ロータリの前方に配置される畝成形用前処理板が設けられ、前記畝成形用前処理板は走行方向に対して傾斜し、走行方向の前側の端部は前記走行装置の車輪の後方外側に位置し、走行方向の後側の端部は前記耕耘ロータリの前方内側に位置し、前記土押体の谷底部の進行方向延長線上に達していることを特徴とする畝成形装置。
【請求項2】
前記畝成形用前処理板は、前記走行装置に係止された支持部材に取り付けられ、前記畝成形用前処理板は、前記支持部材に軸止された自由回転可能な円板である第一前処理板と、前記支持部材に固定され前記第一前処理板の走行方向の後側の端部よりも後方内側に延出する板体である第二前処理板から成ることを特徴とする請求項1記載の畝成形装置。
【請求項3】
前記第一処理板は、前記走行方向の内側に向かって凹となる湾曲面が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の畝成形装置。
【請求項4】
耕耘ロータリの後方に配置され畝の谷部と谷部の両脇の一対の法面を形成する土押体が取り付けられた走行装置に設けられ、走行方向に対して傾斜し、走行方向の前側は前記走行装置の車輪の後方外側に位置し、走行方向の後側は前記耕耘ロータリの前方内側に位置し、前記土押体の谷底部の進行方向延長線上に達していることを特徴とする畝成形用前処理板。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−95299(P2009−95299A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271131(P2007−271131)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(507345114)有限会社アグリ池田 (1)
【Fターム(参考)】