説明

畦塗り機

【課題】作業性を低下させることなく散布ノズルの土詰まりを解消できる畦塗り機を提供する。
【解決手段】畦塗り機1は、畦形成手段22を有する作業機本体10を備える。畦塗り機1は、畦形成手段22に向けて液体を散布する散布ノズル36を有する散布手段31を備える。畦塗り機1は、散布手段31から散布する液体の散布量を設定する設定操作手段41を備える。畦塗り機1は、散布手段31を制御して液体の散布量を調整する制御手段42を備える。制御手段42は、液体の散布開始の指令を受けたと判断した場合に、散布手段31を制御して、調整可能な範囲内での最大散布量で液体を所定時間散布させた後、設定操作手段41による設定散布量で畦形成手段22に向けて液体を散布させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散布ノズルから畦形成部に向けて散布される液体の散布量を調整できる畦塗り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の畦塗り機は、走行車に連結され盛土部および畦形成部を有する作業機本体と、ポンプをアクチュエータにより作動させて散布ノズルから作業機本体の畦形成部に向けて液体を散布する散布手段と、この散布手段からの散布量を設定する設定操作手段と、散布手段からの液体の散布量を設定操作手段により設定された散布量に調整する制御手段とを備えた畦塗り機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−82050号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
畦塗り機においては、作業機本体を上方へと回動させて一旦非作業状態とした状態とすることがあり、この状態で放置すると、畦塗り作業時に散布ノズルに付着した土が固まって散布ノズルを詰まらせるおそれがある。
【0005】
しかしながら、上述の畦塗り機では、散布ノズルに土が詰まった際、この散布ノズルを分解して土を除去したり、設定操作手段により液体の散布量を調整可能な最大散布量へと手動で調整して土を除去したりすることしかできない。このような場合、散布ノズルに土が詰まる度に分解作業および再組立作業が必要になったり、手動で液体の散布量を最大に調整した後、所望の液体の散布量へと再度手動で戻すような煩雑な作業が必要になったりする等、作業性が低下するという問題点を有している。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、作業性を低下させることなく散布ノズルの土詰まりを解消できる畦塗り機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の畦塗り機は、畦形成部を有する作業機本体と、液体を散布する散布ノズルを有する散布手段と、この散布手段からの液体の散布量を設定する設定操作手段と、前記散布手段を制御して液体の散布量を調整する制御手段とを備え、前記制御手段は、液体の散布開始の指令を受けたと判断した場合に、前記散布手段を制御して、調整可能な範囲内での最大散布量で液体を所定時間散布させた後、前記設定操作手段による設定散布量で液体を散布させるものである。
【0008】
請求項2記載の畦塗り機は、請求項1記載の畦塗り機において、作業機本体は、一の動作により作業状態になり、この一の動作と異なる他の動作により非作業状態になり、制御手段は、前記作業機本体が非作業状態になったと判断した場合に、散布手段を制御して液体の散布を自動停止し、前記作業機本体が非作業状態から作業状態になったと判断した状態で液体の散布開始の指令を受けたと判断した場合に、前記散布手段を制御して、調整可能な範囲内での最大散布量で液体を所定時間散布させた後、前記設定操作手段による設定散布量で液体を散布させるものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、制御手段は、液体の散布開始の指令を受けたと判断した場合に、散布手段を制御して、調整可能な範囲内での最大散布量で液体を所定時間自動的に散布させるため、作業性を低下させることなく散布ノズルの土詰まりを解消できるとともに、この土詰まりを解消した後、設定操作手段による設定散布量で液体を散布することにより、散布ノズルから散布される液体の散布量を調整できる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、制御手段は、作業機本体が非作業状態から作業状態になったと判断した状態で液体の散布開始の指令を受けたと判断した場合に、散布手段を制御して、調整可能な範囲内での最大散布量で液体を所定時間散布させるため、より適切なタイミングで散布ノズルの土詰まりを効果的に解消できるとともに、作業機本体が非作業状態になったと判断した場合に、散布手段を制御して液体の散布を自動停止するため、作業機本体の非作業状態時に散布手段が無駄に液体の散布をし続けることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係る畦塗り機の作業状態の平面図である。
【図2】同上畦塗り機の非作業状態の平面図である。
【図3】同上畦塗り機のブロック図である。
【図4】同上畦塗り機の設定操作手段の正面図である。
【図5】同上畦塗り機の制御を示すフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施の形態に係る畦塗り機の作業状態時の側面図である。
【図7】同上畦塗り機の非作業状態時の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1ないし図3において、1は畦塗り機で、この畦塗り機1は、図示しない走行車であるトラクタの後部の3点リンクヒッチ部(作業機昇降支持装置)に連結されトラクタの走行により圃場の畦に沿って進行方向前方に移動しながら畦塗り作業をするものである。
【0014】
畦塗り機1は、トラクタの3点リンクヒッチ部に連結される機枠2と、機枠2に前端部が上下方向の軸部3を中心として回動可能に取り付けられた互いに平行な2本の回動アーム4と、回動アーム4の後端部に上下方向の軸部5を中心として回動可能に取り付けられた回動機枠6と、この回動機枠6と機枠2との間に接続され回動機枠6を機枠2に対して左右方向に平行移動させる駆動手段7と、回動機枠6と機枠2との間に接続された伸縮可能なロック装置8と、回動機枠6にて支持され進行方向前方に移動しながら畦塗り作業をする作業手段9とを備えた作業機本体10を有している。
【0015】
機枠2は、トラクタの3点リンクヒッチ部に連結される3点連結部11を有している。3点連結部11は、トラクタの3点リンクヒッチ部にクイックカプラ等を介して回動可能に連結されるトップマスト12および左右1対2本のロワアーム13等にて構成されている。また、機枠2は軸支部14を有し、この軸支部14にて前後方向の入力軸15が回転可能に支持されている。入力軸15はトラクタのPTO軸に対して、ジョイントおよび伝動シャフト等にて構成された動力伝達手段(図示せず)により接続されている。
【0016】
駆動手段7は、例えば電動油圧シリンダ等で、筒状のシリンダ本体17と、このシリンダ本体17内に出入りするロッド18とを有し、このロッド18の先端部は機枠2に上下方向の軸19を中心として回動可能に連結されている。シリンダ本体17の基端部は、回動機枠6に一方の軸部5と同軸状の軸20を中心として回動可能に連結されている。
【0017】
ロック装置8は、基端部が他方の軸部5に、先端部が軸支部14に、それぞれ回動可能に連結されている。そして、このロック装置8は、図1に示す作業状態では収縮されており、図2に示す非作業状態では伸張された状態で固定されることにより作業機本体10を固定する。
【0018】
作業手段9は、所定方向に回転しながら田面および元畦の側面を切削して元畦上に土を盛り上げる盛土用ロータリ等の盛土手段21と、盛土手段21にて盛り上げられた土である盛土を所定方向に回転しながら締め固めて新畦を形成するディスク等の畦形成部としての畦形成手段22とを有している。盛土手段21の上方部はロータリカバー23にて覆われ、畦形成手段22の上方部はディスクカバー24にて覆われている。
【0019】
盛土手段21は、入力軸15に接続した動力伝達手段側から動力を受けて回転する回転軸25と、この回転軸25の爪ホルダ部に脱着可能に取り付けられ回転軸25とともに回転して元畦上に土を盛り上げる複数の切削爪26とを有している。
【0020】
畦形成手段22は、入力軸15に接続した動力伝達手段側から動力を受けて回転する左右方向の回転軸(図示せず)と、この回転軸に取り付けられこの回転軸とともに回転して盛土を締め固めて新畦の傾斜状の側面を形成する略円錐台状の側面形成体28と、回転軸に取り付けられ回転軸とともに回転して盛土を締め固めて新畦の水平状の上面を形成する略円筒状の上面形成体29とを有している。
【0021】
また、畦塗り機1は、畦水分調節および畦形成手段22への土付着防止のために、畦形成手段22の側面形成体28の表面および上面形成体29の表面に向けて液体を散布する散布手段31を備えている。なお、液体は、例えば水であるが、液状の有機肥料、或いは液状の除草剤等の薬剤でもよい。
【0022】
散布手段31は、図1ないし図4に示されるように、水等の液体を貯留するタンク32と、タンク32内の液体を吸い込んで高圧にして吐出するポンプ33と、ポンプ33を作動させる電動モータ等のアクチュエータ34と、一端側がポンプ33に接続され他端側が畦形成手段22と対向して位置する可撓性のパイプ等の配管35と、配管35の他端側に固定して取り付けられ畦形成手段22の後方に位置しポンプ33の作動により配管35内を流れてくる液体を畦形成手段22に向けて散布する同一形状の複数、例えば2つの散布ノズル36とを有している。
【0023】
タンク32および配管35は、回動機枠6に固着された支持フレーム38にて支持されている。また、ポンプ33は、例えばプランジャポンプやピストンポンプ等の往復ポンプ、或いはベーンポンプや歯車ポンプ等の回転ポンプ等である。
【0024】
2つの散布ノズル36,36のうちの一方の散布ノズル36は畦形成手段22の側面形成体28の表面と対向して位置し、その側面形成体28の表面に向けて液体を散布する。他方の散布ノズル36は畦形成手段22の上面形成体29の表面と対向して位置し、その上面形成体29の表面に向けて液体を散布する。なお、図1に示されるように、一方の散布ノズル36は平面視で側面形成体28の左右方向に対して傾斜する方向に沿った後端縁28aの略中央と対向する位置に配置され、他方の散布ノズル36は平面視で上面形成体29の左右方向に沿った後端縁29aの略中央と対向する位置に配置されている。
【0025】
さらに、畦塗り機1は、散布ノズル36から散布される液体の散布量を設定する設定操作手段41と、この設定操作手段41の設定に応じて散布手段31のアクチュエータ34を制御して液体の散布量を調整するコントローラ等の制御手段42とを備えている。
【0026】
設定操作手段41は、図4に示すように、例えば制御手段42に接続コード43を介して接続された操作ボックスで、トラクタの運転席に座った作業者が操作可能な位置に配置されている。また、設定操作手段41は、正面視で略矩形状のボックス本体部45を有し、このボックス本体部45には、電源のオンオフを切り換える切換スイッチ等の指令入力部である電源用切換操作部46および電源のオン時に点灯するランプ47が設けられている。また、ボックス本体部45には、アクチュエータ34によるポンプ33の作動速度(往復速度、回転速度等)を設定する回動操作可能な操作摘み等の作動速度設定操作部48が設けられている。ボックス本体部45の表面には、ポンプ33の作動速度を示すための数字等の目盛りが付されている。そして、設定操作手段41の作動速度設定操作部48の設定によって、散布ノズル36から散布される液体の散布量を無段階に調整できるようになっている。
【0027】
制御手段42は、アクチュエータ34を例えばPWM(Pulse Width Modulation)制御するものであり、設定操作手段41の作動速度設定操作部48により設定された作動速度を得るためのデューティ比によりアクチュエータ34を作動させることが可能となっている。また、この制御手段42は、例えば機枠2の軸部3等に固定的に取り付けられた検知手段49に基づき、作業機本体10が図1に示す作業状態になっているか、図2に示す非作業状態になっているかを判断することが可能となっている。さらに、この制御手段42は、例えば計時手段であるタイマ(図示せず)を内蔵している。なお、このタイマは、例えば制御手段42の外部に設けて制御手段42と電気的に接続してもよい。
【0028】
検知手段49は、例えば回動アーム4の軸に接続されたポテンショメータ等であり、回動アーム4(回動機枠6)の回動角度αに対応した抵抗値を設定することにより、制御手段42が作業機本体10の回動角度を検知可能に構成されている。なお、この検知手段49は、例えば角度センサ(傾斜センサ)等でもよい。
【0029】
そして、制御手段42、ポンプ33およびアクチュエータ34は、回動機枠6に固着された収容ケース50内に収容されている。
【0030】
次に、畦塗り機1の作用等を図5のフローチャートも参照して説明する。
【0031】
畦塗り機1をトラクタの3点リンクヒッチ部に連結し、駆動手段7のロッド18をシリンダ本体17に対して伸長させることにより、つまり、駆動手段7の伸長に基づく右方回動(一の動作)により回動機枠6を回動アーム4,4を介して機枠2に対して側方へと突出させるように回動させて作業機本体10を作業状態とし、トラクタの走行により畦塗り機1を元畦に沿って移動させる。
【0032】
畦塗り機1が元畦に沿って移動すると、盛土手段21の切削爪26によって田面および元畦の側面等が切削され、この切削土が盛土となって元畦上に盛り上げられ、その盛土が畦形成手段22の側面形成体28および上面形成体29によって締め固められ、新畦が形成される。
【0033】
この畦塗り作業時に、作業者が設定操作手段41の電源用切換操作部46を操作して電源がオンされたかどうかを制御手段42が判断する(ステップ1)。ここで、電源がオンされていないと判断した場合にはステップ1のループを繰り返し、電源がオンされていると判断した場合(第1開始指令)には、次のステップ2に進む。なお、この電源オンと同時にランプ47が点灯する。
【0034】
続いて、作業機本体10が駆動手段7の伸張により作業状態となっているかどうかを制御手段42が判断する(ステップ2)。この判断は、回動アーム4(回動機枠6)の回動角度αに対応して設定される検知手段49の抵抗値に基づいて制御手段42が判断することにより行われる。ここで、作業機本体10が作業状態になっていないと判断した場合には、ステップ2のループを繰り返す。
【0035】
また、ステップ2において作業機本体10が作業状態になっていると判断した場合(第2開始指令)には、制御手段42には、第1開始指令および第2開始指令がともに入力されている状態、すなわち散布開始の指令を受けた状態となるため、この制御手段42が設定操作手段41の作動速度設定操作部48の回動操作により設定されたポンプ33の作動速度に拘らず、調整可能な範囲内での最大散布量、ここではデューティ比(オンデューティ)が100%の状態でPWM制御によりアクチュエータ34を作動させ、このアクチュエータ34によりポンプ33を作動させる。この結果、タンク32内の液体が配管35内を流れて各散布ノズル36のノズル開口から勢いよく吐出され、散布ノズル36のノズル開口の土詰まりを解消する(クリーニング動作、ステップ3)。
【0036】
そして、クリーニング動作の開始からタイマのタイムアップまでの所定時間、例えば1〜10秒、好ましくは3〜5秒程度経過すると、制御手段42は、散布手段31のポンプ33の作動速度が設定されているかどうかを判断する(ステップ4)。
【0037】
例えば畦水分調節および畦形成手段22への土付着防止のために、散布手段31で畦形成手段22の表面側に向けて水等の液体を散布する場合、トラクタの運転席に座った作業者は、散布手段31の停止状態で、元畦の土質等に応じて、設定操作手段41の作動速度設定操作部48を回動操作して散布手段31のポンプ33の作動速度を設定する。作業者は、この設定操作を任意のタイミングで行うことができる。
【0038】
ステップ4において作動速度が設定されていない、換言すれば作動速度設定操作部48の設定位置が目盛り0であると判断した場合には、制御手段42は、設定操作手段41の電源用切換操作部46の操作により電源がオフされたかどうかを判断する(ステップ5)。
【0039】
このステップ5において、電源がオフされていないと制御手段42が判断した場合にはステップ4に戻り、電源がオフされたと制御手段42が判断した場合にはランプ47を消灯させて制御を終了する。
【0040】
また、ステップ4において作動速度が設定されている(作動速度設定操作部48の設定位置が目盛り0でない)と判断した場合には、制御手段42は、作動速度設定操作部48により設定された作動速度を得るためのデューティ比でアクチュエータ34(ポンプ33)を作動させる。ポンプ33が作動すると、タンク32内の液体が配管35内を流れて散布ノズル36のノズル開口から吐出され、側面形成体28の表面および上面形成体29の表面に散布される(ステップ6)。クリーニング動作を行う所定時間は、例えば予め固定値に設定されていてもよいし、予め設定された複数の固定値から作業者が選択してもよいし、作業者が任意に設定してもよい。
【0041】
この状態で、制御手段42は、電源がオフされたかどうかを判断する(ステップ7)。つまり、液体の散布中に作業者が設定操作手段41の電源用切換操作部46を操作して電源をオフにすると、ランプ47が消灯するとともにアクチュエータ34およびポンプ33が停止し(ステップ8)、制御が終了する。
【0042】
また、電源がオフされていないと判断した場合でも、制御手段42は、作業機本体10が非作業状態となっているかどうかを判断する(ステップ9)。このステップ9では、ステップ2と同様に、回動アーム4(回動機枠6)の回動角度αに対応して設定される検知手段49の抵抗値に基づいて制御手段42が判断することにより行われる。作業機本体10が非作業状態でない、すなわち作業状態であると判断した場合には、ステップ4に戻り、作業機本体10が非作業状態であると判断した場合には、制御手段42がアクチュエータ34(ポンプ)を制御して液体の散布を自動停止し(ステップ10)、ステップ2に戻る。
【0043】
つまり、畦塗り作業が一時的に中断され、作業機本体10が駆動手段7の収縮に基づく左方回動(一の動作と異なる他の動作)により図1に示す作業状態から図2に示す非作業状態になった際には、作業者による操作を何ら必要とせず、すなわち例えば作業者が電源用切換操作部46のオフ操作等の操作を行わなくても、制御手段42がアクチュエータ34を制御して液体の散布を自動停止する。
【0044】
詳細には、ステップ10において、制御手段42は、作業機本体10の回動に伴う回動アーム4(回動機枠6)の回動角度αに対応する検知手段49の抵抗値が予め設定された所定角度以上、或いは所定角度以下に対応した値になると(図2)、制御手段42は作業機本体10が作業状態でない、すなわち非作業状態であると判断し、アクチュエータ34への通電阻止によりアクチュエータ34を制御して作動中のポンプ33を自動停止させる。その結果、散布手段31の散布ノズル36,36からの液体の噴射散布が自動的に中断される。
【0045】
また、作業機本体10による畦塗り作業の再開のために、作業機本体10が作業状態に戻され、作業機本体10の回動に伴う回動アーム4(回動機枠6)の回動角度αに対応する検知手段49の抵抗値が予め設定された所定角度以下、或いは所定角度以上になると(図1)、電源用切換操作部46がオンされたままの状態であれば制御手段42に散布開始の指令が入力されているため、ステップ2の判断により、制御手段42がアクチュエータ34をデューティ比(オンデューティ)100%で制御してポンプ33を作動させる。その結果、散布手段31の散布ノズル36,36からの液体の調整可能な範囲内での最大散布量での噴射散布によるクリーニング動作が所定時間行われた後、作動速度設定操作部48により設定された作動速度を得るためのデューティ比で散布手段31の散布ノズル36,36からの液体の散布が自動的に再開される。
【0046】
このように畦塗り機1によれば、制御手段42が、液体の散布開始の指令を受けたと判断した場合にアクチュエータ34を制御して、調整可能な範囲内での最大散布量で液体を所定時間散布させるクリーニング動作を行うため、散布ノズル36,36を分解したり、設定操作手段41の作動速度設定操作部48を手動で操作して液体を一定時間最大散布量で散布したりする等、作業性を低下させることなく、これら散布ノズル36,36の土詰まりを解消できる。よって例えば畦塗り作業の開始時等に、散布ノズル36,36の分解および再組立作業や、設定操作手段41の作動速度設定操作部48を手動で操作して一旦最大散布量に調整した後、所望の散布量に再調整し直す作業等の煩雑な作業を必要とせず、所定時間のクリーニング動作終了後、直ちに畦塗り作業に入ることができ、作業効率を向上できる。
【0047】
特に、散布手段31の散布ノズル36,36からの液体の散布開始時には前回の液体の散布から時間が経過していることがあり、このような時間の経過に伴い、畦塗り作業時等に散布ノズル36に付着した土が固まってノズル開口が詰まる場合があるため、上記のように所定時間クリーニング作業をすることにより、クリーニング作業後の散布ノズル36,36からの液体の散布を効率よく、確実に行うことができる。
【0048】
また、この土詰まりを解消した後、設定操作手段41の作動速度設定操作部48による設定散布量で畦形成手段22の側面形成体28の表面および上面形成体29の表面に向けて液体を散布することにより、散布ノズル36からこれら側面形成体28の表面および上面形成体29の表面に向けて散布される液体の散布量を調整でき、よって例えばタンク32内の液体を効率良く散布でき、容量の大きな大型のタンク32を用いる必要がない。
【0049】
さらに、制御手段42は、作業機本体10が非作業状態から作業状態になったと判断した状態で液体の散布開始の指令を受けたと判断した場合に、散布手段31を制御して、上記クリーニング動作を行うため、より適切なタイミングで散布ノズル36の土詰まりを効果的に解消できる。
【0050】
つまり、畦を形成する際に田面の隅部等では、作業機本体10を一時的に非作業状態としてトラクタが走行方向を転換する作業が必要になることがある。このような場合、散布ノズル36のノズル開口からの液体の散布を一時的に中止することにより、このノズル開口に畦塗り作業時に付着した土等が固まって、ノズル開口が詰まるおそれがある。よって一時的に非作業状態とした後、再度作業状態とした場合には、所定時間クリーニング作業をすることで、散布ノズル36の土詰まりを、より確実に解消できる。
【0051】
しかも、作業機本体10が非作業状態になった際には設定操作手段41の作動速度設定操作部48や電源用切換操作部46を操作することなく散布手段31から畦形成手段22の側面形成体28の表面および上面形成体29の表面に向けての液体の散布を自動停止するため、作業機本体10の非作業状態時に散布手段31が畦形成手段22の側面形成体28の表面および上面形成体29の表面に向けて無駄に液体の散布をし続けることを適切に防止できる。よって例えば作業機本体10のポジションを非作業状態とするだけで、散水が自動停止するため、容易に節水が可能となり、畦塗り作業中におけるタンク32への注水回数を減らすことができる。さらには、この状態で作業機本体10のポジションを作業状態とするだけでクリーニング動作の後散水が自動的に再開するため、その都度作業者が設定操作手段41によりポンプ33の作動速度を設定し直したり電源用切換操作部46により電源を再投入したりする等の作業を要さず、作業効率をより向上できる。
【0052】
また、検知手段49としてポテンショメータ等を用いることにより、畦塗り機1の構成を必要以上に複雑化させたり大幅な設計変更を行ったりすることなく検知手段49を容易に設置できる。
【0053】
なお、畦塗り機1は、例えば図6および図7に示すように、上下回動により非作業状態と作業状態とを切り換えるものとしてもよい。
【0054】
この図6および図7に示す畦塗り機1は、走行車であるトラクタ54の前輪(図示せず)および後輪56を有するトラクタ本体57の後端部に上下回動可能に設けられ油圧機構(図示せず)によって作動して上下回動する3点リンクヒッチ部(作業機昇降支持装置)58にクイックカプラ59を介して接続されている。また、畦塗り機1の入力軸15はトラクタ54のPTO軸60に対して動力伝達手段(図示せず)により接続されている。
【0055】
3点リンクヒッチ部58は、伸縮可能な1本のトップリンク61と、左右1対で2本のロワリンク62,62とを有している。
【0056】
そして、作業機本体10は、3点リンクヒッチ部58の作動に基づく下方回動により図6に示す略水平状の作業状態になり、3点リンクヒッチ部58の作動(作業機持上げ動作)に基づく上方回動により図7に示す前後水平方向に対する前下りの傾斜状の非作業状態になる。
【0057】
また、回動機枠6には、上下動可能な方向輪64が設けられている。さらに、この回動機枠6には、側面形成体28の上部は、回動機枠6のディスクカバー24により覆われている。
【0058】
また、この畦塗り機1は、上記実施の形態の検知手段49に代えて、作業機本体10の前後水平方向に対する傾斜角度βを検知する検知手段67を有し、この検知手段67に電気的に接続された制御手段42がその検知手段67にて検知された傾斜角度βに応じてアクチュエータ34を制御するものである。
【0059】
検知手段67は、例えば傾斜センサ或いはポテンショメータ等にて構成されたもので、作業機本体10の機枠2の側面部に固定的に取り付けられている。
【0060】
なお、図7に示す作業機本体10の非作業状態時における作業機本体10の前後水平方向に対する最小の傾斜角度βは、例えば略10度である。つまり、作業機本体10は、その傾斜角度βが略10度以上となった場合に非作業状態となる。なお、この傾斜角度βは、トラクタ54と畦塗り機1とのマッチング状態に応じて設定されるもので、トラクタ54の種類等によっては10度を越える傾斜角度でもよく、例えば15度或いは20度でもよい。また、図6および図7に示す畦塗り機1のその他の構成は、前記図1等に示す畦塗り機1と基本的に同一である。
【0061】
そして、図6および図7に示す畦塗り機1の場合には、作業機本体10による畦塗り作業が一時的に中断され、作業機本体10がトラクタ54の3点リンクヒッチ部58の作動に基づく上方回動により図6に示す作業状態から図7に示す非作業状態(例えば傾斜角度βが略10度の状態)になった際には、散布手段31は、作業者による操作を何ら必要とせず、すなわち例えば作業者が散布停止用の操作ボタン等の操作部を操作しなくても、畦形成手段22の側面形成体28の表面および上面形成体29の表面に向けての液体の散布を自動停止する。
【0062】
つまり、作業機本体10が図7に示す傾斜状の非作業状態(予め設定された最小の傾斜角度β以上の傾斜角度をもつ傾斜状の非作業状態)になると、検知手段67により検知した作業機本体10の傾斜角度βにより、作業機本体10が非作業状態になったと制御手段42が判断し、アクチュエータ34への通電阻止によりアクチュエータ34を制御して作動中のポンプ33を自動停止させる。その結果、散布手段31の散布ノズル36からの液体の噴射散布が自動的に中断される。
【0063】
なお、作業機本体10による畦塗り作業の再開のために、作業機本体10が作業状態に戻されると、検知手段67により検知した作業機本体10の傾斜角度βにより、作業機本体10が作業状態になったと制御手段42が判断してアクチュエータ34をデューティ比(オンデューティ)100%で制御してポンプ33を作動させる。その結果、散布手段31の散布ノズル36,36からの液体の調整可能な範囲内での最大散布量での噴射散布によるクリーニング動作が所定時間行われた後、作動速度設定操作部48により設定された作動速度を得るためのデューティ比で散布手段31の散布ノズル36,36からの液体の散布が自動的に再開される。
【0064】
そして、このような図6および図7に示す畦塗り機1であっても、散布によって散布ノズル36,36を分解することなくこれら散布ノズル36,36の土詰まりを解消でき、例えば畦塗り作業の開始時等に煩雑な散布ノズル36,36の分解および再組立作業を必要とせず、所定時間のクリーニング動作終了後、直ちに畦塗り作業に入ることができ、作業効率を向上できる等、前記図1等に示す畦塗り機1と同様の作用効果をそれぞれ奏することができる。
【0065】
なお、上記図6および図7に示す実施の形態では、検知手段67の取付け位置は、作業機本体10の傾斜角度βを検知できる任意の位置とすることができる。例えば作業機本体10の機枠2の立上りフレーム部であるマスト部69に取り付けてもよいし(想像線L1)、或いはタンク32を支持する取付フレーム(図示せず)等に取り付けてもよい(想像線L2)。
【0066】
また、上記各実施の形態では、散布ノズル36が固定された構成について説明したが、散布ノズル36から吐出される液体が畦形成手段22の側面形成体28の表面略全体および上面形成体29の表面略全体に散布されるように、散布ノズル36が畦形成手段22に対して上下方向の回動中心軸線を中心として一定角度(例えば10〜360度)の範囲内で往復回動可能(往復作動可能)、つまり首振り可能になっている構成でもよい。この首振り動作においては、散布ノズル36の回動速度を任意に設定(変更)可能としてもよく、また、往復回動をさせるかどうかを作業者が選択できるように構成してもよく、ポンプ33を連続作動或いは間欠作動させてもよく、そのポンプ33の作動時間を任意に設定(変更)可能としてもよい。さらに、散布ノズル36が往復回動するものではなく、散布ノズル36が側面形成体28の表面や上面形成体29の表面に沿って往復直線移動するもの等でもよい。したがって、クリーニング動作時には、散布ノズル36のノズル開口の土詰まりを解消できれば、例えば散布ノズル36から散布される液体は、畦形成手段22の側面形成体28の表面や上面形成体29の表面に向けていなくてもよい。
【0067】
また一方、散布手段31は、ポンプ33およびこのポンプ33を作動させるアクチュエータ34を有する構成には限定されず、例えば、制御手段42に接続されこの制御手段42の制御に基づき散布ノズル36のノズル開口の開口量を可変する電動モータ等のアクチュエータを有する構成でもよい。すなわち例えば散布量が少量の場合は、ノズル開口から拡散角度が小さい状態で液体が吐出され、散布量が多量の場合は、ノズル開口から拡散角度が大きい状態で液体が吐出される。
【0068】
なお、ノズル開口から液体が所望の吐出圧をもって吐出できるように、電源オン時にタンク32内の液体を散布ノズル36に向けて圧送するポンプ等の圧送手段を設けてもよい。
【0069】
さらに、いずれの実施の形態においても、散布手段31の散布ノズル36の数は任意であり、1個でもよく、3個以上でもよい。
【0070】
また、設定操作手段41の設定によって液体の散布量を無段階に調整可能な構成には限定されず、その調整が有段階のものであってもよい。
【0071】
さらに、前記各実施の形態を適宜組み合わせることもできる。例えば、作業機本体10を左右回動および上下回動可能とした場合、検知手段49,67のそれぞれに基づいて作業機本体10を作業状態にあると制御手段42が判断した場合、すなわち検知手段49により作業機本体10の右方回動を検知しかつ検知手段67により作業機本体10の下方回動を検知した場合にのみ、散布手段31からの液体の散布を許可するように構成することで、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0072】
そして、作業機本体10を作業状態としたり非作業状態としたりする構成としては、作業機本体10を回動させる構成以外でも、互いに異なる任意の動作をさせる構成を適用することができる。
【0073】
また、作動速度設定操作部48を目盛り0に設定している場合には、クリーニング動作をしないように制御することも可能である。なお、散布ノズル36から散布される液体の散布量を0に設定できない(目盛り0がない)構成、すなわち電源用切換操作部46により電源をオンすると散布手段31から必ず液体を散布する構成とすることもできる。この場合には、上記ステップ4および5の処理が不要となるため、制御をより簡略化できる。
【0074】
さらに、散布手段31は、畦形成手段22に向けて液体を散布する構成としたが、例えば畦形成手段22の前方の元畦のみに向けて液体を散布する構成、あるいは畦形成手段22と元畦とのそれぞれに向けて液体を散布する構成、すなわち畦形成手段22および元畦の少なくともいずれか一方に向けて液体を散布する構成等、任意の位置に向けて液体を散布する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 畦塗り機
10 作業機本体
22 畦形成部としての畦形成手段
31 散布手段
36 散布ノズル
41 設定操作手段
42 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畦形成部を有する作業機本体と、
液体を散布する散布ノズルを有する散布手段と、
この散布手段からの液体の散布量を設定する設定操作手段と、
前記散布手段を制御して液体の散布量を調整する制御手段とを備え、
前記制御手段は、液体の散布開始の指令を受けたと判断した場合に、前記散布手段を制御して、調整可能な範囲内での最大散布量で液体を所定時間散布させた後、前記設定操作手段による設定散布量で液体を散布させる
ことを特徴とする畦塗り機。
【請求項2】
作業機本体は、一の動作により作業状態になり、この一の動作と異なる他の動作により非作業状態になり、
制御手段は、前記作業機本体が非作業状態になったと判断した場合に、散布手段を制御して液体の散布を自動停止し、前記作業機本体が非作業状態から作業状態になったと判断した状態で液体の散布開始の指令を受けたと判断した場合に、前記散布手段を制御して、調整可能な範囲内での最大散布量で液体を所定時間散布させた後、前記設定操作手段による設定散布量で液体を散布させる
ことを特徴とする請求項1記載の畦塗り機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−72195(P2011−72195A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223708(P2009−223708)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】