説明

畦塗り機

【課題】適切な畦塗り作業ができる畦塗り機を提供する。
【解決手段】畦塗り機1は、土を耕耘して盛り上げる盛土体12と、この盛土体12を支持する盛土体支持体31とを備える。畦塗り機1は、盛土体12による盛土を締め固めて畦を形成する畦形成体13と、この畦形成体13を支持する畦形成体支持体32とを備える。盛土体支持体31の畦形成体支持体32に対する上下動により、盛土体12の耕耘深さが調整可能となっている。盛土体支持体31の畦形成体支持体32に対する左右回動により、盛土体12の向きが調整可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な畦塗り作業ができる畦塗り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された畦塗り機が知られている。
【0003】
この従来の畦塗り機は、土を耕耘して盛り上げる盛土体と、盛土体を支持する盛土体支持体と、盛土体にて盛り上げられた盛土を締め固めて畦を形成する畦形成体と、畦形成体を支持する畦形成体支持体とを備え、盛土体支持体の畦形成体支持体に対する上下平行移動により盛土体の耕耘深さが調整可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−118747号公報(図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の畦塗り機では、盛土体の耕耘深さを調整できるものの、盛土体の向きは常に一定であるため、例えば作業条件によっては、盛土量が不足したり多過ぎたりして、適切な畦塗り作業ができないおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、適切な畦塗り作業ができる畦塗り機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の畦塗り機は、土を耕耘して盛り上げる盛土体と、この盛土体を支持する盛土体支持体と、前記盛土体にて盛り上げられた盛土を締め固めて畦を形成する畦形成体と、この畦形成体を支持する畦形成体支持体とを備え、前記盛土体支持体の前記畦形成体支持体に対する上下動により前記盛土体の耕耘深さが調整可能となっており、かつ、前記盛土体支持体の前記畦形成体支持体に対する左右回動により前記盛土体の向きが調整可能となっているものである。
【0008】
請求項2記載の畦塗り機は、請求項1記載の畦塗り機において、盛土体支持体を畦形成体支持体に対して上下動させるための耕耘深さ調整手段と、前記盛土体支持体を前記畦形成体支持体に対して左右回動させるための向き調整手段とを備えるものである。
【0009】
請求項3記載の畦塗り機は、請求項1または2記載の畦塗り機において、盛土体支持体は、上側連結部および下側連結部を有し、畦形成体支持体は、上側取付部および下側取付部を有し、前部が前記盛土体支持体の前記上側連結部にボールジョイントを介して回動可能に連結されかつ後部が前記畦形成体支持体の前記上側取付部に左右方向の軸を介して回動可能に取り付けられた上側回動体と、この上側回動体と平行に配設され、前部が前記盛土体支持体の前記下側連結部にボールジョイントを介して回動可能に連結されかつ後部が前記畦形成体支持体の前記下側取付部に左右方向の軸を介して回動可能に取り付けられた下側回動体とを備え、盛土体の耕耘深さの調整の際には、前記上側回動体および前記下側回動体が前記畦形成体支持体に対して前記軸を通る水平軸線を中心として上下回動し、前記盛土体の向きの調整の際には、前記盛土体支持体が前記上側回動体および前記下側回動体に対して前記ボールジョイントを通る鉛直軸線を中心として左右回動するものである。
【0010】
請求項4記載の畦塗り機は、請求項2記載の畦塗り機において、耕耘深さ調整手段および向き調整手段は、いずれも流体圧シリンダにて構成されているものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、盛土体支持体の畦形成体支持体に対する上下動により盛土体の耕耘深さを調整できるばかりでなく、盛土体支持体の畦形成体支持体に対する左右回動により盛土体の向きを調整できるため、適切な畦塗り作業ができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、耕耘深さ調整手段を利用して盛土体の耕耘深さを適切に調整でき、向き調整手段を利用して盛土体の向きを適切に調整できる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、上側回動体および下側回動体が畦形成体支持体に対して軸を通る水平軸線を中心として上下回動するため、盛土体の耕耘深さをより一層適切に調整でき、盛土体支持体が上側回動体および下側回動体に対してボールジョイントを通る鉛直軸線を中心として左右回動するため、盛土体の向きをより一層適切に調整できる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、耕耘深さ調整手段および向き調整手段はいずれも流体圧シリンダにて構成されているため、耕耘深さ調整手段および向き調整手段を手動で伸縮させる構成等に比べて、盛土体の耕耘深さおよび向きを容易に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る畦塗り機の平面図である。
【図2】同上畦塗り機の部分平面図である。
【図3】同上畦塗り機の部分側面図である。
【図4】同上盛土体の耕耘深さを浅くした状態時の部分側面図である。
【図5】同上盛土体の耕耘深さを深くした状態時の部分側面図である。
【図6】同上畦塗り機の盛土体の向きを左斜め前方に向けた状態時の部分平面図である。
【図7】同上盛土体の向きを右斜め前方に向けた状態時の部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1ないし図7において、1は畦塗り機で、この畦塗り機1は、走行車であるトラクタ2の後部に連結された状態で、トラクタ2の前進走行により圃場の畦に沿って前方(進行方向)に移動しながら畦塗り作業(畦修復作業)をする。
【0018】
トラクタ2は、図1に示されるように、エンジン等を搭載したトラクタ本体3を備えている。トラクタ本体3の前部には左右1対の前輪4が設けられ、後部には左右1対の後輪5が設けられている。
【0019】
トラクタ本体3の後端部には、油圧機構(図示せず)によって作動して上下回動する油圧式のヒッチ部である3点リンクヒッチ部(作業機昇降支持装置)6およびエンジンからの動力で回転するPTO軸(図示せず)が設けられている。3点リンクヒッチ部6は、伸縮可能な1つのトップリンク7および左右1対のロワリンク8を有している。
【0020】
畦塗り機1は、図1ないし図3に示されるように、トラクタ2の後部の3点リンクヒッチ部6にクイックカプラ9を介して連結された機体11を備えている。
【0021】
また、畦塗り機1は、機体11に回転可能に設けられ回転しながら田面(圃場表面)および畦(元畦)の土を耕耘して畦上に盛り上げるロータリ式の耕耘体である盛土体12と、機体11に回転可能に設けられ盛土体12の後方で回転しながら盛土体12にて盛り上げられた盛土を締め固めて新たな畦(新畦)を形成する畦形成体13と、機体11に回転可能に設けられ盛土体12の前方で回転しながら畦上面を削る上面削り体14とを備えている。
【0022】
機体11は、トラクタ2の後部の3点リンクヒッチ部6にクイックカプラ9を介して連結された固定機枠16と、盛土体12、畦形成体13および上面削り体14をそれぞれ回転可能に支持する可動機枠17と、これら固定機枠16と可動機枠17とを連結する連結手段18とを有している。
【0023】
連結手段18は、例えば互いに平行に配設された左右1対の回動アーム(平行リンク)19にて構成されている。回動アーム19の前端部が固定機枠16に回動可能に取り付けられ、回動アーム19の後端部が可動機枠17に回動可能に取り付けられている。
【0024】
また、機体11は、回動アーム19を固定機枠16に対して左右回動させるための第1伸縮体である第1シリンダ21と、可動機枠17を回動アーム19に対して左右回動させるための第2伸縮体である第2シリンダ22とを有している。なお、第1シリンダ21および第2シリンダ22は、いずれも油圧等の流体圧で伸縮する流体圧シリンダ、例えば電動油圧シリンダにて構成されている。
【0025】
固定機枠16は、トップマスト24およびロワアーム25等にて構成されたトラクタ連結部23を有し、このトラクタ連結部23がトラクタ2の3点リンクヒッチ部6にクイックカプラ9を介して連結されている。固定機枠16は、左右方向中央部に軸支部26を有し、この軸支部26にて入力軸(図示せず)が回転可能に支持され、この入力軸がトラクタ2のPTO軸にジョイント等の動力伝達手段を介して接続されている。
【0026】
可動機枠17は、盛土体12を回転可能に支持する前側フレームである盛土体支持体31と、畦形成体13を回転可能に支持する後側フレームである畦形成体支持体32と、これら盛土体支持体31と畦形成体支持体32とを連結する連結手段(平行リンク)33と有している。畦形成体支持体32には、回動アーム19の後端部が回動可能に取り付けられている。
【0027】
また、可動機枠17は、盛土体支持体31を畦形成体支持体32に対して上下動、すなわち例えば上下平行移動させるための耕耘深さ調整手段である耕耘深さ調整用シリンダ36と、盛土体支持体31を畦形成体支持体32に対して左右回動させるための向き調整手段である向き調整用シリンダ37とを有している。
【0028】
なお、耕耘深さ調整用伸縮体である耕耘深さ調整用シリンダ36および向き調整用伸縮体である向き調整用シリンダ37は、いずれも油圧等の流体圧で伸縮する伸縮可能な流体圧シリンダ、例えば電動油圧シリンダにて構成されている。耕耘深さ調整用シリンダ36は、畦形成体支持体32と連結手段33との間に配設されている。向き調整用シリンダ37は、盛土体支持体31と畦形成体支持体32との間に配設されている。
【0029】
そして、耕耘深さ調整用シリンダ36の伸縮に基づく盛土体支持体31の畦形成体支持体32に対する上下平行移動により盛土体12の耕耘深さが調整可能となっており、かつ、向き調整用シリンダ37の伸縮に基づく盛土体支持体31の畦形成体支持体32に対する左右回動により盛土体12の前後方向に対する向きが調整可能となっている。つまり、この畦塗り機1では、盛土体12の耕耘深さの調整および盛土体12の向きの調整をそれぞれ独立して無段階的に行うことが可能となっている。
【0030】
ここで、畦形成体支持体32は、ミッションケース等の軸支部41を有し、この軸支部41にて入力軸側からの動力で回転する中間出力軸42が回転可能に支持されている。また、この軸支部41によって、畦形成体13の回転軸(駆動軸)43が回転可能に支持されている。
【0031】
つまり、畦形成体13は、畦形成体支持体32の軸支部41にて回転可能に支持され入力軸側からの動力で回転する水平な左右方向の回転軸43と、この回転軸43に取り付けられたディスク等の畦形成部材44とを有している。
【0032】
畦形成部材44は、回転軸43と一体となって回転しながら盛土体12による盛土を締め固めて田面側に向って下り傾斜面状の畦側面を形成する略円錐台状の畦側面形成部(いわゆる側面ディスク)45と、この畦側面形成部45の縮径側端部に一体に連設され回転軸43と一体となって回転しながら盛土体12による盛土を締め固めて水平面状の畦上面を形成する略円柱状(中空でも中実でもよい)の畦上面形成部(いわゆる上面ローラ)46とを有している。なお、畦形成体13の畦側面形成部45の上方部が、畦形成体支持体32の畦形成体カバー部にて覆われている。
【0033】
また、畦形成体支持体32は、左右1対の上側取付部51およびこれら上側取付部51の下方に位置する左右1対の下側取付部52を有している。上側取付部51および下側取付部52は、いずれもフレーム部53の前面に前方に向って突設されている。なお、フレーム部53の左端部には、方向輪50が取り付けられている。
【0034】
さらに、畦形成体支持体32は、耕耘深さ調整用シリンダ取付部54を有し、この耕耘深さ調整用シリンダ取付部54に耕耘深さ調整用シリンダ36が取り付けられている。また、畦形成体支持体32は、向き調整用シリンダ取付部55を有し、この向き調整用シリンダ取付部55に向き調整用シリンダ37が取り付けられている。
【0035】
盛土体支持体31は、軸支部61を有し、この軸支部61にて中間入力軸62が回転可能に支持され、この中間入力軸62は中間出力軸42にジョイント等の動力伝達手段63を介して接続されている。また、この軸支部61によって、盛土体12の回転軸(駆動軸)65が回転可能に支持され、この回転軸65は中間入力軸62に直結されている。
【0036】
つまり、盛土体12は、盛土体支持体31の軸支部61にて回転可能に支持され中間入力軸62と一体となって回転する水平な前後方向の回転軸65と、この回転軸65に放射状に取り付けられた複数の耕耘爪である盛土爪66とを有している。なお、盛土体12の耕耘爪66の上方部が、盛土体支持体31の盛土体カバー部67にて覆われている。
【0037】
また、盛土体支持体31は、軸支部61の上部から後方に向って突出するアーム状の上側突出フレーム部71を有し、この上側突出フレーム部71の先端部(後端部)には上側連結部72が設けられている。また、盛土体支持体31は、軸支部61の下部から後方に向って突出するアーム状の下側突出フレーム部73を有し、この下側突出フレーム部73の先端部(後端部)には下側連結部74が設けられている。
【0038】
さらに、盛土体支持体31は、軸支部61の上下方向中央部から左側方に向って突出するシリンダ取付部75を有している。
【0039】
また、盛土体支持体31は、チェーンケース等の伝動ケース部76を有し、この伝動ケース部76の先端部にて上面削り体14の回転軸(駆動軸)77が盛土体12の回転軸65と平行に位置するように支持され、この回転軸77は伝動ケース部76内のチェーン等の動力伝達手段を介して盛土体12の回転軸65に接続されている。
【0040】
つまり、上面削り体14は、盛土体支持体31の伝動ケース部76にて回転可能に支持され回転軸65側からの動力で回転する水平な前後方向の回転軸77と、この回転軸77に放射状に取り付けられた複数の削り爪78とを有している。なお、上面削り体14の削り爪78の上方部が、盛土体支持体31の上面削り体カバー部にて覆われている。また、盛土体支持体31には、サイドカバー体80が取り付けられている。
【0041】
連結手段33は、前部が盛土体支持体31の上側連結部72にボールジョイント(リンクボール)83を介して全方向に回動可能に連結されかつ後部が畦形成体支持体32の上側取付部51に水平な左右方向の軸84を介して上下方向に回動可能に取り付けられた上側アーム等の上側回動体81と、この上側回動体81と平行に配設され前部が盛土体支持体31の下側連結部74にボールジョイント(リンクボール)85を介して全方向に回動可能に連結されかつ後部が畦形成体支持体32の下側取付部52に水平な左右方向の軸86を介して上下方向に回動可能に取り付けられた下側アーム等の下側回動体82とにて構成されている。つまり、連結手段33は、常に互いに平行に位置する同一形状の上下1対の回動体81,82のみにて構成されている。
【0042】
上側回動体81は、平面視で後方に向って開口する略コ字状のもので、互いに離間対向する前後方向長手状の左右1対の対向アーム部87と、これら両対向アーム部87の前端部同士を一体に連結する左右方向長手状の連結アーム部88とを有している。
【0043】
そして、各対向アーム部87の後端部が畦形成体支持体32の上側取付部51に軸84を介して回動可能に取り付けられ、連結アーム部88の左右方向略中央部が盛土体支持体31の上側連結部72の上面側にボールジョイント83を介して回動可能に連結されている。ボールジョイント83は、上側連結部72の上面側に固着されている。
【0044】
下側回動体82は、上側回動体81と同様、平面視で後方に向って開口する略コ字状のもので、互いに離間対向する前後方向長手状の左右1対の対向アーム部91と、これら両対向アーム部91の前端部同士を一体に連結する左右方向長手状の連結アーム部92とを有している。
【0045】
そして、各対向アーム部91の後端部が畦形成体支持体32の下側取付部52に軸86を介して回動可能に取り付けられ、連結アーム部92の左右方向略中央部が盛土体支持体31の下側連結部74の下面側にボールジョイント85を介して回動可能に連結されている。ボールジョイント85は、下側連結部74の下面側に固着されている。
【0046】
また、下側回動体82の両対向アーム部91の前後方向略中央部同士が、左右方向長手状で板状の連結部材93にて連結されている。連結部材93の左右方向略中央部には、棒状のシリンダ取付部材94の下端部が左右方向の軸95を介して回動可能に取り付けられている。
【0047】
耕耘深さ調整用シリンダ36は、シリンダ本体96と、このシリンダ本体96の先端面開口96aから突出するロッド97とを有している。ロッド97のシリンダ本体96内に位置する基端部にはピストン98が固着され、このピストン98はシリンダ本体96内で移動可能となっている。
【0048】
そして、シリンダ本体96の基端部が畦形成体支持体32の耕耘深さ調整用シリンダ取付部54に水平な左右方向の軸99を介して回動可能に取り付けられている。また、ロッド97の先端部がシリンダ取付部材94の上端部に固着されている。
【0049】
このため、盛土体12の耕耘深さの調整の際には、耕耘深さ調整用シリンダ36の伸縮に応じて(耕耘深さ調整手段の作動に応じて)、上側回動体81および下側回動体82が畦形成体支持体32に対して軸84,86の軸芯を通る水平軸線(回動支点)Xを中心として上下回動し、これにより、盛土体支持体31が盛土体12と一体となって畦形成体支持体32に対して水平軸線Xを中心として上下平行移動する。
【0050】
向き調整用シリンダ37は、シリンダ本体101と、このシリンダ本体101の先端面開口101aから突出するロッド102とを有している。ロッド102のシリンダ本体101内に位置する基端部にはピストン103が固着され、このピストン103はシリンダ本体101内で移動可能となっている。
【0051】
そして、シリンダ本体101の基端部が畦形成体支持体32の向き調整用シリンダ取付部55にボールジョイント104を介して全方向に回動可能に取り付けられている。また、ロッド102の先端部が盛土体支持体31のシリンダ取付部75の上面側にボールジョイント105を介して全方向に回動可能に取り付けられている。
【0052】
このため、盛土体12の向きの調整の際には、向き調整用シリンダ37の伸縮に応じて(向き調整手段の作動に応じて)、盛土体支持体31が上側回動体81および下側回動体82に対してボールジョイント83,85の中心を通る鉛直軸線Yを中心として左右回動する。つまり、盛土体支持体31が盛土体12と一体となって畦形成体支持体32に対して鉛直軸線Yを中心として左右回動する。なお、各シリンダ21,22,36,37は、トラクタ2に乗った作業者による遠隔操作によって伸縮可能となっている。
【0053】
次に、畦塗り機1の作用等を図面を説明する。
【0054】
畦塗り機1をトラクタ2の後部に連結してトラクタ2の前進走行により元畦に沿って前方に移動させると、上面削り体14にて元畦の畦上面が削られて雑草等が除去され、この上面削り体14の後方では盛土体12にて田面および元畦の土が耕耘されて元畦上に盛り上げられ、この盛土体12の後方では畦形成体13にて盛土が締め固められて新畦が形成される。
【0055】
ここで、例えば田面の土質や元畦の土質等の作業条件に合わせて、所望の盛土量が得られるようにするために、図3に示す状態(基準状態)に比べて、盛土体12の耕耘深さを浅くする場合、作業者は、操作ボックスの操作部を操作し、耕耘深さ調整用シリンダ36を縮ませる。
【0056】
耕耘深さ調整用シリンダ36が縮むと、図4に示すように、上側回動体81および下側回動体82が、互いに平行なまま、畦形成体支持体32に対して左右水平方向の水平軸線(軸84,86)Xを中心として上方に回動する。
【0057】
両回動体81,82が上方に回動すると、盛土体支持体31が、盛土体12と一体となって畦形成体支持体32に対して水平軸線Xを中心として円弧を描くように上方に平行移動する。その結果、盛土体12の向きが上下に傾くことなく盛土体12の作業姿勢が一定に維持されたまま、盛土体12の耕耘深さが浅くなる。
【0058】
また逆に、図3に示す状態に比べて、盛土体12の耕耘深さを深くする場合、作業者は、操作ボックスの操作部を操作し、耕耘深さ調整用シリンダ36を伸ばす。
【0059】
耕耘深さ調整用シリンダ36が伸びると、図5に示すように、上側回動体81および下側回動体82が、互いに平行なまま、畦形成体支持体32に対して水平軸線(軸84,86)Xを中心として下方に回動する。
【0060】
両回動体81,82が下方に回動すると、盛土体支持体31が、盛土体12と一体となって畦形成体支持体32に対して水平軸線Xを中心として円弧を描くように下方に平行移動する。その結果、盛土体12の向きが上下に傾くことなく盛土体12の作業姿勢が一定に維持されたまま、盛土体12の耕耘深さが深くなる。
【0061】
なお、盛土体12の耕耘深さを最も深くした場合と最も浅くした場合との高低差は、例えば約150mmである。
【0062】
また、例えば図6に示すように、元畦が田面側である左側に少し曲がっていた場合、図2に示す状態(基準状態)のように、盛土体12の向きが真直ぐ前方を向いた状態、つまり平面視で盛土体12の回転軸65の軸方向が前後方向に一致した状態のまま、畦塗り作業を行うと、盛土体12が元畦にくいこみ、盛土体12による盛土量が必要以上に多くなる。
【0063】
このため、作業者は、所望の盛土量が得られるよう、操作ボックスの操作部を操作し、向き調整用シリンダ37を縮ませる。
【0064】
向き調整用シリンダ37が縮むと、図6に示されるように、盛土体支持体31が、上側回動体81および下側回動体82に対して上下方向の鉛直軸線Yを中心として左方向に回動する。つまり、盛土体支持体31が、盛土体12と一体となって畦形成体支持体32に対して鉛直軸線Yを中心として左方向に回動する。その結果、盛土体12の耕耘深さが一定に維持されたまま、盛土体12の向きが真直ぐ前方を向いた状態から左斜め前方を向いた状態となる。つまり盛土体12がやや左側に首を振る。
【0065】
また、例えば図7に示すように、元畦が田面側とは反対側である右側に少し曲がっていた場合、図2に示す状態(基準状態)のままで畦塗り作業を行うと、盛土体12が元畦から離れ、盛土体12による盛土量が不足する。
【0066】
このため、作業者は、所望の盛土量が得られるよう、操作ボックスの操作部を操作し、向き調整用シリンダ37を伸ばす。
【0067】
向き調整用シリンダ37が伸びると、図7に示されるように、盛土体支持体31が、上側回動体81および下側回動体82に対して上下方向の鉛直軸線Yを中心として右方向に回動する。つまり、盛土体支持体31が、盛土体12と一体となって畦形成体支持体32に対して鉛直軸線Yを中心として右方向に回動する。その結果、盛土体12の耕耘深さが一定に維持されたまま、盛土体12の向きが真直ぐ前方を向いた状態から右斜め前方を向いた状態となる。つまり盛土体12がやや右側に首を振る。
【0068】
なお、基準状態からの盛土体支持体31の鉛直軸線Yを中心とする回動角度θは、最大で例えば約25度である。
【0069】
そして、このような畦塗り機1によれば、盛土体支持体31の畦形成体支持体32に対する上下動により盛土体12の耕耘深さを調整できるばかりでなく、盛土体支持体31の畦形成体支持体32に対する左右回動により盛土体12の向きを調整できるため、作業条件に拘らず、所望の盛土量を得ることが可能となり、よって、適切な畦塗り作業ができる。
【0070】
また、耕耘深さ調整用シリンダ36を利用して盛土体12の耕耘深さを適切に調整でき、かつ、向き調整用シリンダ37を利用して盛土体12の向きを適切に調整できる。
【0071】
さらに、耕耘深さ調整用シリンダ36の伸縮に応じて上側回動体81および下側回動体82が畦形成体支持体32に対して軸84,86を通る水平軸線Xを中心として上下回動するため、耕耘深さ調整用シリンダ36を利用して盛土体12の耕耘深さをより一層適切に調整でき、向き調整用シリンダ37の伸縮に応じて盛土体支持体31が上側回動体81および下側回動体82に対して球面軸受であるボールジョイント83,85を通る鉛直軸線Yを中心として左右回動するため、向き調整用シリンダ37を利用して盛土体12の向きをより一層適切に調整できる。
【0072】
また、耕耘深さ調整用シリンダ(伸縮体)36および向き調整用シリンダ(伸縮体)37はいずれも電動油圧シリンダ等の流体圧シリンダにて構成されているため、作業者が手動で伸縮体を直接的に伸縮させる構成等に比べて、盛土体12の耕耘深さおよび向きを容易に調整できる。
【0073】
なお、畦塗り機1が有する調整手段である伸縮体(耕耘深さ調整用伸縮体、向き調整用伸縮体)は、電動油圧シリンダ等の流体圧シリンダにて構成されたものには限定されず、例えば作業者が手動でハンドルを回動操作することで伸縮するようなねじ式の伸縮ロッドにて構成されたもの等でもよい。
【0074】
また、耕耘深さ調整用シリンダ36の縮み動作で盛土体12が上動しかつ耕耘深さ調整用シリンダ36の伸び動作で盛土体12が下動する構成には限定されず、例えば耕耘深さ調整用シリンダ36の縮み動作で盛土体12が下動しかつ耕耘深さ調整用シリンダ36の伸び動作で盛土体12が上動する構成でもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 畦塗り機
12 盛土体
13 畦形成体
31 盛土体支持体
32 畦形成体支持体
36 耕耘深さ調整手段である耕耘深さ調整用シリンダ
37 向き調整手段である向き調整用シリンダ
51 上側取付部
52 下側取付部
72 上側連結部
74 下側連結部
81 上側回動体
82 下側回動体
83 ボールジョイント
84 軸
85 ボールジョイント
86 軸
X 水平軸線
Y 鉛直軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土を耕耘して盛り上げる盛土体と、
この盛土体を支持する盛土体支持体と、
前記盛土体にて盛り上げられた盛土を締め固めて畦を形成する畦形成体と、
この畦形成体を支持する畦形成体支持体とを備え、
前記盛土体支持体の前記畦形成体支持体に対する上下動により前記盛土体の耕耘深さが調整可能となっており、かつ、前記盛土体支持体の前記畦形成体支持体に対する左右回動により前記盛土体の向きが調整可能となっている
ことを特徴とする畦塗り機。
【請求項2】
盛土体支持体を畦形成体支持体に対して上下動させるための耕耘深さ調整手段と、
前記盛土体支持体を前記畦形成体支持体に対して左右回動させるための向き調整手段とを備える
ことを特徴とする請求項1記載の畦塗り機。
【請求項3】
盛土体支持体は、上側連結部および下側連結部を有し、
畦形成体支持体は、上側取付部および下側取付部を有し、
前部が前記盛土体支持体の前記上側連結部にボールジョイントを介して回動可能に連結されかつ後部が前記畦形成体支持体の前記上側取付部に左右方向の軸を介して回動可能に取り付けられた上側回動体と、
この上側回動体と平行に配設され、前部が前記盛土体支持体の前記下側連結部にボールジョイントを介して回動可能に連結されかつ後部が前記畦形成体支持体の前記下側取付部に左右方向の軸を介して回動可能に取り付けられた下側回動体とを備え、
盛土体の耕耘深さの調整の際には、前記上側回動体および前記下側回動体が前記畦形成体支持体に対して前記軸を通る水平軸線を中心として上下回動し、
前記盛土体の向きの調整の際には、前記盛土体支持体が前記上側回動体および前記下側回動体に対して前記ボールジョイントを通る鉛直軸線を中心として左右回動する
ことを特徴とする請求項1または2記載の畦塗り機。
【請求項4】
耕耘深さ調整手段および向き調整手段は、いずれも流体圧シリンダにて構成されている
ことを特徴とする請求項2記載の畦塗り機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−97858(P2011−97858A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253757(P2009−253757)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】