説明

畦形成機

【課題】 畦上面を形成する円筒状回転体と畦側面を形成する円錐面を有する回転板とからなる畦形成装置において、畦上面部をより強固に成形できる畦形成装置を提供する。
【解決手段】 畦上面を形成する円筒状回転体の外周表面は、回転軸芯に対して略円弧状の曲面部を有する複数枚の分割片を互いに隣接する分割片の回転方向前方側に後方側を重ね合せて連結して構成した。また分割片の回転方向後端部は、分割片の曲面部外周より外側に突設した突設部を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旧畦及びその下方部の壌土の一部を掘削して旧畦に盛り上げ、この盛り上げた壌土を円弧状及び円錐状回転体とからなる畦形成部で締め固めて畦形成作業を行う畦形成機に関するもので、特に畦上面部を形成する上面形成体の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の畦形成機の畦形成ディスクの構成として、同一出願人による特許第3148678号公報によるものが知られている。この公報による畦形成機は、トラクタに装着され畦形成箇所に沿って移動され、畦形成箇所に土を盛り上げ状態に供給する土盛装置と、土盛装置の移動方向の後方に設置される畦形成装置とを有し、畦形成装置は土を盛り上げ状態とされた畦形成箇所の上を回転しながら通過させる円筒回転体と、円筒回転体の回転駆動力供給側に取り付けられ回転駆動供給側にいく程径大となり、円筒回転体の中央に向けた傾斜面を有するとともに、表面は放射状の分割片に分割され各々の分割片は進行方向に対して前進角を設けてなり、隣接する分割片の相互は逃げ角をもち、側面視にてジグザグ状に連結される円錐回転体とからなるものである。
【特許文献1】特許第3148678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の畦形成装置は、畦と直交して回転して畦上面を通過する円筒回転体と、畦側面を通過し畦側面を形成する円錐面を有する内側回転板とからなり、前記畦形成回転体の周速を走行車の走行速度よりも速く設定し、スリップ作用によって畦を締め固めようとするものである。前記従来技術では、さらに畦傾斜面を堅く締め固めるために円錐回転体を放射状の分割片とし、側面視ジグザグ状としたり、進行方向に対して前進角を設け隣接する分割片相互は逃げ角をもって連結させ断続圧を加えて練り込んでいた。
【0004】
これらは崩れやすい畦の傾斜面をより堅く成形しようとするものであるが、傾斜面に塗り付けた土壌と旧畦土壌は、両者の水分や密度を均一に同じにして塗り付けて一体化することは困難であり、これにより両者の土質の違いが生じこの境界面部より剥がれ落ちようとする現象が発生する。また、境界面部に上方より雨水等が浸透するとさらに前記現象が助長されることになる。これらを防止するために、畦上面部と傾斜面を一体で塗り付けて上面土壌で傾斜面土壌の剥がれを押えてやる必要がある。従来の畦形成装置では傾斜面をより堅く成形する技術は提案されているが、畦上面部を堅くすることをあまり重要視しておらず、傾斜面を強固に成形しても、畦上面部が軟弱であると傾斜面部を支えることができなかったり、上面部より境界面への雨水の浸透が起こりやすくなり畦の剥がれ落ち現象を発生させることになる。
【0005】
このため本発明の目的は、畦上面部をより堅く成形できる畦形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、畦形成箇所に沿って移動され、畦形成箇所に土を盛り上げ状態に供給する土盛装置と、土盛装置の移動方向の後方に設置される畦形成装置とを有し、畦形成装置は、土を盛り上げ状態とされた畦形成箇所上を回転しながら通過させる円筒状回転体と、円筒状回転体の回転駆動力供給側に取り付けられ回転駆動力供給側にいく程径大となり、円筒状回転体の中央に向けた傾斜面を有する円錐回転体とからなり、前記円筒状回転体の外周表面は、回転軸芯に対して略円弧状の曲面部を有する複数枚の分割片を互いに隣接する分割片の回転方向前方側の上面に後方側を重ね合わせて連結して構成されていることを特徴とする畦形成機。
【0007】
また、前記畦形成機において、分割片の回転方向後端部は、分割片の回転軸芯に対して略円弧状の曲面部外周より外側に突設した突設部を設けたことを特徴とする畦形成機を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のような構成にしたことにより、土盛装置によって旧畦の畦形成箇所に盛り上げ状態に供給された土を円錐回転体と円筒状回転体を回転するとともに、走行車を進行させて新畦を形成していくが、畦上面部を形成する円筒状回転体の隣接する複数枚の分割片は、回転方向前方側に後方側を重ね合わせて連結されているため、前方側が低く後方側が高く構成されて、前方側の低い部分で盛土を抱き込みながら後方側の高い部分で除々に圧力を加え、またこれが回転することにより繰り返されるため、断続圧が作用しながら練り込まれ、盛土内の空気や水分が逃げやすくなり、強固な畦上面部を形成することができる。
【0009】
これにより、畦傾斜面を強固に支え、また旧畦との境界面への雨水等の浸透を押えることができ、剥がれ落ち現象も防止することができる。また、分割片の後端部を突設することにより、さらに強い断続圧を作用させて畦上面部を形成することができるとともに、分割片表面に連続して吸着した土壌を突設部で切り離すことができ、畦形成部への吸着性の強い土壌においても、吸着による土の持ち回りが無く、また塗り付けた土を剥ぎ落とすこともなく畦の形成ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明を実施した畦形成機の平面図、図2は同畦形成機の畦形成装置を一部断面した斜視図、図3は円筒状回転体を断面した側面図、図4は畦形成装置で成形した畦の断面図、図5は円筒状回転体の分割片の後端部を突設させた横断面図を示したものである。
【0011】
図1において、畦形成機の一例として、1の装着部、2の土盛装置、3の畦形成装置から構成される。1の装着部は、水平方向に延設したフレーム11と、このフレーム11より前方に突設され、図示されていないが走行車であるトラクタの三点リンクに装着される装着マスト12と、フレーム11の略中央部にはミッションケース13が配置され構成される。
【0012】
ミッションケース13には前方に向けた入力軸13aが設けられ、この入力軸13aは、図示されていないがトラクタPTO軸よりユニバーサルジョイント14を介しトラクタの駆動力を畦形成機へ入力するものである。
【0013】
2の土盛装置は、砕土爪21を爪軸22の軸芯に対し放射状に複数設けたロータリ23と、このロータリ23を回転駆動するためのロータリ23の一端を固着するロータリ出力軸24を有したロータリ駆動ケース25により構成され、前記装着部1のフレーム11の一端にロータリ23を作業進行方向に対し前方に配置するよう支持される。前記ロータリ駆動ケース25の内部には、チェーン減速部26が備えてある。
【0014】
3の畦形成装置は、前記土盛装置2の後方に配置され、旧畦の上面を形成する円筒状回転体である上面形成体31と、旧畦の側面を形成する側面形成体32と、この上面形成体31と側面形成体32を回転駆動するための畦形成出力軸33を有した畦形成駆動ケース34とから構成され、前記装着部1のフレーム11の一端に前記ロータリ駆動ケース25とともに支持される。前記畦形成駆動ケース34の内部には、チェーン減速部35が備えてある。
【0015】
駆動伝達について説明すると、前記ミッションケース13より前方に突設させた入力軸13aに図示されていないが、トラクタPTO軸よりユニバーサルジョイント14を介し駆動力が入力されると、ミッションケース13の内部に設けたベベルギヤ13b,13cを介し減速され、水平方向に延設したパイプ体にて構成されたフレーム11の内部に回転可能に設けた駆動軸13dへと伝達する。
【0016】
ロータリ駆動ケース25内部に備えたチェーン減速部26は、前記駆動軸13dに固着されたスプロケット26aと、前記ロータリ出力軸24の内方端に固着したスプロケット26bと、これらスプロケット26a,26bに巻架したチェーン26cから構成され駆動軸13dが駆動することにより、ロータリ出力軸24に固着されたロータリ23をチェーン減速部26により減速し回転させる。
【0017】
畦形成駆動ケース34の内部に備えたチェーン減速部35は、前記駆動軸13dに固着したスプロケット35aと、畦形成駆動ケース34から水平方向に突出する畦形成出力軸33の内方端に固着したスプロケット35bと、これらスプロケット35a,35bに巻架したチェーン35cから構成され、駆動軸13dが駆動することにより、畦形成出力軸33に固着された上面形成体31及び側面形成体32をチェーン減速部35によりさらに減速し回転させる。
【0018】
側面形成体32は、円錐形状を呈し円錐面を放射状に分割した円錐分割片32cを連結して組み合せ構成されている。
【0019】
図2において畦形成装置3について説明する。上面形成体31は、前記畦形成出力軸33の外方端部に取り付けられるボス31aと、このボス31aに嵌合する円筒状回転体31bから構成され、側面形成体32は、前記上面形成体31の一端部となるボス31aの外周部より畦形成出力軸33側となる外方へ向け徐々に径大となる円錐面を形成するよう放射状に複数設けたスポーク32aと、このスポーク32aの外周端を連結するリング32bと、スポーク32aを基盤とし円錐面となる表面を放射状に分割し連続させた複数の円錐分割片32cを着脱自在とし構成される。
【0020】
円錐分割片32cは、回転方向fに対して後端縁は隣接する円錐分割片32cの始端部の前縁に重ね合せてボルト36によって組み合せスポーク32aに固着されている。円錐分割片32cは弾性力のある樹脂部材等で構成されていても良い。
【0021】
円筒状回転体31bは、回転軸芯に対して略円弧状の曲面部を有する複数枚の分割片31cを互いに隣接する分割片31cの回転方向前方側の上面に後方側を重ね合せて連結して一体で構成されている。
【0022】
図3は円筒状回転体31bを断面した側面図で、分割片31cは互いに重ね合せて連結することで、円筒状回転体31bの回転最大外周より回転方向前方側が低くなり前進角Gが形成され、前方側の低い部分で盛土を抱き込みながら後方側の高い部分で除々に圧力が加えられ畦上面を押圧する。さらにこれが回転することにより、盛土の抱き込みおよび押圧が繰り返され断続圧が作用し練り込まれ、強固な畦上面部が形成される。
【0023】
図4において、畦形成装置で成形された畦の構造を説明する。畦形成装置の前方に配置された土盛装置により、旧畦40の一部と旧畦40の下方部の圃場面44の一部を掘削して旧畦40に盛り上げた土壌は、旧畦上の畦上面部41と畦傾斜面42に畦形成装置により締め固められ塗り付けられる。
【0024】
畦傾斜面42は圃場面44に対して急勾配となっているため崩れやすく、また畦傾斜面42部を堅く成形しても、旧畦40との密度や水分の違いを完全に同一とすることは困難であり、旧畦と新しく塗り付けた傾斜面との間の境界部43部分より剥がれ落ちる現象が発生する場合がある。このため、畦上面部41を強固にすることにより畦傾斜面42を上方で支えることができ、上方よりの境界部43への雨水等の浸透を防止することができる。
【0025】
図5は円筒状回転体の分割片の後端部を突設させた場合の一例を示した断面図で、分割片31cの回転方向後端部に、分割片31cの回転軸芯に対して略円弧状の曲面部外周より外側へ突設させた突設部31dを設けることにより、分割片の前記前進角Gの作用と相俟ってさらに強い断続圧を作用させて畦上面部を強固に形成することができるとともに、円筒回転体を走行車の速度よりも速く回転させて起きるスリップ作用と相俟って、突設部31dにより分割片の表面に連続して吸着した土壌を切り離す作用が働き、吸着性の強い土壌においてもより良い畦の形成ができる。
【0026】
突設部31dは、円筒状回転体の主外周面より突設した形状であれば良く、図5に示すような外側より内側に巻き込むようなカール状のもの、逆に外側にカールさせたもの、分割片の曲面部に接する平面を後方側に延長させて突設させたもの、前記平面部をさらに外側に折り曲げたものであっても良い。また分割片31cは弾性力のある樹脂部材等で構成されていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を実施した畦形成機の平面図
【図2】同畦形成機の畦形成装置を一部断面した斜視図
【図3】円筒状回転体を断面した側面図
【図4】畦形成装置で成形した畦の断面図
【図5】円筒状回転体の分割片の後端部を突設させた横断面図
【符号の説明】
【0028】
1 装着部
11 フレーム
12 装着マスト
13 ミッションケース
13a 入力軸
13b,13c ベベルギヤ
13d 駆動軸
14 ユニバーサルジョイント
2 土盛装置
21 砕土爪
22 爪軸
23 ロータリ
24 ロータリ出力軸
25 ロータリ駆動ケース
26 チェーン減速部
26a,26b スプロケット
26c チェーン
3 畦形成装置
31 上面形成体
31a ボス
31b 円筒状回転体
31c 分割片
31d 突設部
32 側面形成体
32a スポーク
32b リング
32c 円錐分割片
33 畦形成出力軸
34 畦形成駆動ケース
35 チェーン減速部
35a,35b スプロケット
35c チェーン
36 ボルト
40 旧畦
41 畦上面部
42 畦傾斜面
43 境界部
44 圃場面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畦形成箇所に沿って移動され、畦形成箇所に土を盛り上げ状態に供給する土盛装置と、土盛装置の移動方向の後方に設置される畦形成装置とを有し、畦形成装置は、土を盛り上げ状態とされた畦形成箇所上を回転しながら通過させる円筒状回転体と、円筒状回転体の回転駆動力供給側に取り付けられ回転駆動力供給側にいく程径大となり、円筒状回転体の中央に向けた傾斜面を有する円錐回転体とからなり、前記円筒状回転体の外周表面は、回転軸芯に対して略円弧状の曲面部を有する複数枚の分割片を互いに隣接する分割片の回転方向前方側の上面に後方側を重ね合わせて連結して構成されていることを特徴とする畦形成機。
【請求項2】
前記請求項1記載の畦形成機において、分割片の回転方向後端部は、分割片の回転軸芯に対して略円弧状の曲面部外周より外側に突設した突設部を設けたことを特徴とする請求項1記載の畦形成機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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