説明

畦成形機

【課題】水田等の圃場の畦成形作業において、圃場の土壌条件に左右されずに強固な崩れにくい畦を成形できる畦成形機を提供する。
【解決手段】盛土部と、盛土部の移動方向の後方に設置される成畦部41とを有し、成畦部41は、上面ローラ413と、上面ローラ413の回転駆動力供給側に取り付けられ上面ローラ413の回転中心に向けた傾斜面を有する円錐状であり、表面は放射状の分割片414に分割され、それぞれの分割片414は回転方向に対して前進角を設けて側面視ジグザグ状に連結される円錐回転体411とからなる畦成形機において、円錐回転体411の分割片414の回転方向後端と隣接する分割片414の前端で形成される段差部Hは、円錐状面の頂部側である上面ローラ413側から円錐状面外端に向け段差寸法が徐々に増加するように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の走行機に連結されて牽引され水田等の畦成形作業を行う畦成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
水田等の圃場の畦成形作業において、トラクタ等の走行機に連結されて、走行機の進行方向に沿って進行し畦成形作業を行う畦成形機は、様々な形態が知られている。この種の従来技術としては、特許第3148678号公報(従来技術1)に記載されているように「土を盛り上げ状態とされた畦形成箇所上を回転しながら通過させる円筒回転体と、円筒回転体の回転駆動力供給側に取り付けられた回転駆動力供給側にいく程径大となり円筒回転体の中央に向けた傾斜面を有するとともに、表面は放射状の分割片に分割され、各々の分割片は進行方向に対して前進角を設けてなり、隣接する分割片相互は逃げ角をもって側面視ジグザグ状に連結される円錐回転体とからなる」畦成形機が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3148678号公報(従来技術1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術1のように「隣接する分割片相互は逃げ角をもって側面視ジグザグ状に連結される円錐回転体」で構成したことで盛土を抱き込みながら、断続圧を加えて練り込むので強固な畦を形成可能であるが、地域ごとに異なる土の種類や土壌の水分の状態などの各条件の違いにより、条件によっては必ずしも満足できる畦の成形が得られないという問題があった。
【0005】
このため、水田等の圃場の畦成形作業において、圃場の土壌条件や土質に左右されずに強固な崩れにくい畦を成形できる畦成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、畦成形箇所に沿って移動され、畦形成箇所に土を盛上げ状態に供給する盛土部と、盛土部の移動方向の後方に設置される成畦部とを有し、成畦部は、土を盛上げ状態とした畦形成箇所上を回転しながら通過する上面ローラと、上面ローラの回転駆動力供給側に取り付けられ回転駆動力供給側に行くほど径大となり上面ローラの回転中心に向けた傾斜面を有する円錐状であるとともに、表面は放射状の分割片に分割され、それぞれの分割片は回転方向に対して前方側が低く、後方側が高い前進角を設けて側面視ジグザグ状に連結された円錐回転体とからなる畦成形機において、円錐回転体の分割片の回転方向後端と隣接する分割片の前端で形成される段差部は、円錐状面の頂部側である上面ローラ側から円錐状面外端に向け段差寸法が徐々に増加するように形成されていることを特徴とする畦成形機を提案する。
【0007】
また、円錐回転体の分割片の回転方向後端と隣接する分割片の前端で形成される段差部は、円錐状面の頂部側である上面ローラ側から円錐状面外端に向け段差寸法が徐々に増加するように形成されているとともに、段差部の段差が大きい段差と小さい段差とで回転方向に交互に形成されていることを特徴とした0006欄に記載の畦成形機を提案する。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、分割片が回転方向に対して前方側が低く、後方側が高い前進角を設けて側面視ジグザグ状に連結された円錐回転体により、進行方向前方に盛り上げられた盛土を前進角が設けられた分割片それぞれにより抱き込みながら畦側面に押し込みつつ塗り込んでいくとともに、側面視ジグザグ状の段差により断続圧を加え成形土内部の空気や水分を押出し強固な畦を形成する。
【0009】
また、円錐回転体の分割片の回転方向後端と隣接する分割片の前端で形成される段差部は、円錐状面の頂部側である上面ローラ側から円錐状面外端に向け段差寸法が徐々に増加するように形成されていることにより、畦成形時には、それぞれ前進角が設けられた分割片により抱き込まれた盛土が、畦斜面下方側が上方側よりも強く押圧されるとともに、圧力の弱い上方に移動され上面ローラで形成される畦の上面との交差部に向け押圧される。これにより、従来円錐回転体の外側に逃げていた一部の盛土が畦面に取り込まれるとともに、土が移動しにくいために土量不足から比較的押圧力が弱くなりやすい畦傾斜面と畦上面との交差部に形成される角部に向け下方から押圧力が作用する為、畦の斜面の下から上まで均一に強固な畦が形成できる。側面視ジグザグ状の段差が外端に向け変化することで、畦の斜面の断続圧が変化し土の移動や内部の空気や水分の押出効果がより向上する。
【0010】
さらに、段差部の段差が大きい段差と小さい段差とで回転方向に交互に形成されていることにより、側面視ジグザグ状の段差寸法が変化し断続圧が変化することで、一定の断続圧よりもさらに成形土内部の空気や水分を押出し強固な畦を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を実施した畦成形機の側面図
【図2】本発明を実施した畦成形機の平面図
【図3】成畦部の斜視図
【図4】円錐回転体の段差部の要部斜視図
【図5】円錐回転体の外周端部の側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明を実施した畦成形機の側面図、図2は本発明を実施した畦成形機の平面図、図3は成畦部の斜視図、図4は円錐回転体の段差部の要部斜視図、図5は円錐回転体の外周端部の側面図を示したものである。
【0013】
図1は、本発明を実施した畦成形機をトラクタへ装着した状態を示したもので、トラクタ1後部の左右一対のロアーリンク12と中央上方に設けたトップリンク10とからなる3点リンクヒッチ機構に、これらを定型化する連結枠2(クイックカプラー又はオートヒッチと称される)を前記ロアーリンク12に水平方向に設けたロアーリンクピン13と前記トップリンク10に同じく水平方向に設けたトップリンクピン11をそれぞれ挿入して取り付け、畦成形機の装着フレーム3前方に設けた左右一対のロアーピン20と該中央上方に設けたトップマスト30の前端部に設けたアッパーピン22に前記連結枠2の係合部を係合させ連結される。
【0014】
連結手順は、先ず連結枠2上方のフックを前記トップマスト30のアッパーピン22に係合させ、トラクタの3点リンク機構を上昇させこれに連結された連結枠2を上昇させると、前記畦成形機側のロアーピン20が連結枠2側に引き寄せられ連結枠2の下部の係合部と係合し連結される。下部の係合部は、連結枠2に設けたフック21をロアーピン20に引掛けて外れ防止をする。
【0015】
図2は連結枠2を外した状態の平面視の本発明の畦成形機を示したもので、トップマスト30やロアーピン20は、装着フレーム3の前方に突設されて設けられていて、装着フレーム3から後方へ延設され、装着フレーム3に対し第1水平回動軸51を回動中心に第1水平回動手段50、この実施形態では旋回シリンダ501によって後方側を水平回動自在に設けられた支持フレーム5と、支持フレーム5の後端側に設けられた第2水平回動軸53を中心に、第2水平回動手段の回動シリンダ521によって水平方向に回動可能である畦成形作業部4と、第1水平回動手段50と第2水平回動手段52とをそれぞれ制御する制御部(図示せず)とを有し、トラクタ1からの側方へのオフセット量を制御する。
【0016】
畦成形作業部4の駆動は、トラクタ1から装着フレーム3前方に突設された入力軸31にユニバーサルジョイント(図示せず)を連結して動力が伝達され、さらに装着フレーム3側と畦成形作業部4側との間に連結されたユニバーサルジョイント7により動力が伝達され駆動される。
【0017】
この発明の1つの実施形態である畦成形機は、畦成形作業部4をトラクタ1の側方にオフセットさせ、畦と平行にトラクタ1を走行させ畦成形作業を行う。
【0018】
畦成形作業部4は、作業進行方向前方側に設けられる盛土部40と、盛土部40の後方側に設けられる成畦部41とからなる。盛土部40は、掘削爪401を多数放射状に設けたローター軸を回転させ、旧畦の一部と圃場面の一部を掘削しながら旧畦上に土を盛上げ、盛上げられた土は後方に位置する成畦部41により新畦に成形される。成畦部41は畦斜面成形用の円錐面を有する円錐回転体411と畦上面成形用の上面ローラ413を有し、これをトラクタ1の進行速度より速い速度で進行方向に回転させ畦を成形する。
【0019】
装着フレーム3の後方には、垂直方向に設けた第1水平回動軸51が設けてあり、これを中心に水平回動可能に後方側に延設された支持フレーム5が設けられている。さらに支持フレーム5の回動外端側には垂直方向に設けた第2水平回動軸53が設けてあり、これを中心に畦成形作業部4が水平回動可能に設けられている。
【0020】
支持フレーム5の回動は、装着フレーム3と支持フレーム5とにそれぞれ端部を水平回動自在に連結された第1水平回動手段である旋回シリンダ501の伸縮により行われる。また、畦成形作業部4を水平回動させる第2水平回動手段は、一端を支持フレーム5に水平回動自在に設けられたプレート状の回動アーム522と、回動アーム522の回動外端側と支持フレーム5とにそれぞれ端部を水平回動自在に連結された回動シリンダ521と、プレート状の回動アーム522に設けた水平方向のガイド穴523に嵌合する畦成形作業部4側に保持された係合ピン524で構成されている。
【0021】
係合ピン524は、平面視において畦成形作業部4の回動中心である第2水平回動軸53と離間して設けられていて、回動シリンダ521を伸縮させると、これに連結された回動アーム522が第2水平回動軸近傍の第1水平回動軸寄りに設けられた回動軸を中心に水平回動を行い、回動アーム522に設けたガイド穴523に嵌合した係合ピン524が回動され、係合ピン524を保持している畦成形作業部4が第2水平回動軸53を中心に回動される。
【0022】
畦成形作業部4の成畦部41の内側には、略進行方向に回転自在の円板状の抵抗輪412が設けてあり、抵抗輪412の外周は作業時圃場面に刺さり込み、成畦部41の畦成形時の押し付け反力を受け止める役目を行う。
【0023】
制御部は、畦成形作業部4を第1水平回動手段50である旋回シリンダ501と、第2水平回動手段の回動シリンダ521とを予め設定された標準作業位置に固定して作業を行うようにプログラミングされている。第1水平回動軸51部と第2水平回動軸53部には、その回動角を検知するポテンショメータ(図示せず)が設けてあり、標準作業位置の支持フレーム5の位置と畦成形作業部4の位置を制御部は検知して記憶可能である。また、畦成形作業部4を左右に移動させた場合に、支持フレーム5の回動に対し進行方向に平行に移動させるようにプログラミングされている。
【0024】
第1水平回動手段50及び第2水平回動手段52は、油圧ポンプや油圧バルブ等を介して行なわれるが、この作動の制御はトラクタ1の運転席から操作できる制御部(図示せず)によって自動操作又は遠隔操作する。
【0025】
成畦部41は、上面ローラ413と、上面ローラ413の回転駆動力供給側に取り付けられ回転駆動力供給側に行くほど径大となり上面ローラ413の回転中心に向けた傾斜面を有する円錐状であるとともに、表面は放射状の分割片414に分割され、それぞれの分割片414は回転方向に対して前方側が低く後方側が高い前進角Aを設けて側面視ジグザグ状に連結された円錐回転体411とからなる。それぞれの分割片414の側面視の断面は円弧状断面となっている。本発明の一つの実施形態においては、円錐回転体411の上面ローラ413側である頂部側に外周側の円錐角度と異なる角度の円錐部を設けて、畦の傾斜部と上面との交差部の角部を面取り状に成形できるようになっている。成畦部41は、盛土部40によって土を盛上げ状態とした畦形成箇所上をトラクタ1の進行速度よりも速く回転しながら通過して土を押圧するとともにスリップ作用により塗りつけて畦を成形する。
【0026】
また、円錐回転体411の分割片414の回転方向後端と隣接する分割片414の前端で形成される段差部Hは、円錐状面の頂部側である上面ローラ413側から円錐状面外端に向け段差寸法が徐々に増加するように形成されていて、図4に示すように段差寸法が頂部側のhより外周端のh′の寸法が大きくなるように分割片414がそれぞれ連続的に連結されて円錐回転体411が構成されている。
【0027】
図5は、円錐回転体411の外周端の側面視を示したもので、回転方向Sに対し前方側が低く、後方側が高い前進角Aを設けて側面視ジグザグ状に連結されて円錐回転体411が構成されている。また、段差部が上面ローラ413側から円錐状面外端に向け寸法が徐々に増加するように形成されているため、前進角Aは円錐状面に沿って半径方向に徐々に変化している。このため、畦傾斜面に土が押圧され塗りつけられるときは、従来の平行な段差のものに比較して上下方向にも土が移動されながら塗り付けられ土の円錐回転体への付着が少なく粘性の強い土壌でも良好に作業が可能である。
【0028】
分割片414が回転方向に対して前方側が低く、後方側が高い前進角Aを設けて側面視ジグザグ状に連結された円錐回転体411により、進行方向前方に盛り上げられた盛土を前進角Aが設けられた分割片414それぞれにより抱き込みながら畦側面に押し込みつつ塗り込んでいくとともに、側面視ジグザグ状の段差により断続圧が加えられ成形土内部の空気や水分を押出し強固な畦が形成される。
【0029】
また、円錐回転体411の分割片414の回転方向後端と隣接する分割片414の前端で形成される段差部Hは、円錐状面の頂部側である上面ローラ413側から円錐状面外端に向け段差寸法が徐々に増加するように形成されていることにより、畦成形時には、それぞれ前進角が設けられた分割片414により抱き込まれた盛土が、畦斜面下方側が上方側よりも強く押圧されるとともに、圧力の弱い上方に移動され上面ローラ413で形成される畦の上面との交差部に向け押圧される。これにより、従来円錐回転体411の外側に逃げていた一部の盛土が畦面に取り込まれるとともに、比較的押圧力が弱くなりやすい畦斜面と畦上面との交差部に形成される角部に向け下方から押圧力が作用する為、畦の斜面の下から上まで均一に強固な畦が形成できる。側面視ジグザグ状の段差が外端に向け変化することで、畦の斜面の断続圧が上下で変化し土の移動や内部の空気や水分の押出効果がより向上する。
【0030】
さらに、段差部Hの段差を大きい段差と小さい段差とで回転方向に交互に形成すると、側面視ジグザグ状の段差による断続圧がさらに変化することで、一定の断続圧よりもさらに成形土内部の空気や水分を押出し強固な畦を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明は、水田等の圃場において、その周囲に設ける畦の成形作業を行う場合に利用できる畦成形機に利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0032】
1 トラクタ
10 トップリンク
11 トップリンクピン
12 ロアーリンク
13 ロアーリンクピン
2 連結枠
20 ロアーピン
21 フック
22 アッパーピン
3 装着フレーム
30 トップマスト
31 入力軸
4 畦成形作業部
40 盛土部
401 掘削爪
41 成畦部
411 円錐回転体
412 抵抗輪
413 上面ローラ
414 分割片
5 支持フレーム
50 第1水平回動手段
501 旋回シリンダ
51 第1水平回動軸
52 第2水平回動手段
521 回動シリンダ
522 回動アーム
523 ガイド穴
524 係合ピン
53 第2水平回動軸
7 ユニバーサルジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畦成形箇所に沿って移動され、畦形成箇所に土を盛上げ状態に供給する盛土部と、盛土部の移動方向の後方に設置される成畦部とを有し、
成畦部は、土を盛上げ状態とした畦形成箇所上を回転しながら通過する上面ローラと、
上面ローラの回転駆動力供給側に取り付けられ回転駆動力供給側に行くほど径大となり上面ローラの回転中心に向けた傾斜面を有する円錐状であるとともに、表面は放射状の分割片に分割され、それぞれの分割片は回転方向に対して前方側が低く、後方側が高い前進角を設けて側面視ジグザグ状に連結された円錐回転体とからなる畦成形機において、
円錐回転体の分割片の回転方向後端と隣接する分割片の前端で形成される段差部は、円錐状面の頂部側である上面ローラ側から円錐状面外端に向け段差寸法が徐々に増加するように形成されていることを特徴とする畦成形機。
【請求項2】
円錐回転体の分割片の回転方向後端と隣接する分割片の前端で形成される段差部は、
円錐状面の頂部側である上面ローラ側から円錐状面外端に向け段差寸法が徐々に増加するように形成されているとともに、段差部の段差が大きい段差と小さい段差とで回転方向に交互に形成されていることを特徴とした請求項1記載の畦成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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