説明

異常検出装置

【課題】映像出力処理における異常状態を低コストで検出することができる異常検出装置を提供する。
【解決手段】映像受信兼画像表示器1は、ユーザに対する映像情報の表示処理における異常状態を検出する異常検出装置であって、外部から映像情報を受信する映像受信部4と、映像受信部4により受信された映像情報のうち、ユーザに表示されない非表示エリア22の情報である非表示情報が、予め定められた通信規則に従っているか否かを判定する動作監視部5と、動作監視部5により非表示情報は通信規則に従っていないと判定された場合に、異常状態の発生を示す情報を出力する画像表示部2と、を備える。これにより、映像出力処理における異常状態を低コストで検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザに対する映像情報の表示処理における異常状態を検出する異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、現用系及び予備系により二重化された映像音声収録再生機器において現用系の送出異常が検出された場合、現用系から予備系に切替えるシステムが提案されている。例えば、下記の特許文献1には、現用映像音声信号が異常再生状態の場合、システム切替器により現用系と予備系の切替えを行なう送出システムが開示されている。この送出システムでは、補助データ重畳器からの映像音声信号を受信する受信器としてのシステム切替器と、システム切替器からの映像音声信号を外部出力する出力器としての放送システムとが別構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−108875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載の発明では、補助データ重畳器からの映像音声信号を受信する受信器としてのシステム切替器と、システム切替器からの映像音声信号を外部出力する出力器としての放送システムとが別構成となっている。これにより、現用映像音声信号が異常再生状態であることを検知するために、映像通信ルートとしての送出映像音声信号のルートとは別に、再生状態検知ルートとしての送出中識別信号のルートが追加で必要となっている。このように、ルートの追加が必要となっているため、送出システムの設置コストが比較的高いものとなってしまう。
【0005】
そこで本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、映像出力処理における異常状態を低コストで検出することができる異常検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る異常検出装置は、ユーザに対する映像情報の表示処理における異常状態を検出する異常検出装置であって、外部から映像情報を受信する受信手段と、受信手段により受信された映像情報のうち、ユーザに表示されない非表示エリアの情報である非表示情報が、予め定められた通信規則に従っているか否かを判定する規則判定手段と、規則判定手段により非表示情報は通信規則に従っていないと判定された場合に、異常状態の発生を示す情報を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成により、受信手段により受信された映像情報のうち非表示情報が通信規則に従っているか否かが判定されて、非表示情報は通信規則に従っていないと判定された場合に、異常状態の発生を示す情報が出力される。このように、ユーザに表示されない非表示情報を用いて異常状態の検出が行なわれるため、異常状態の検出を行なうための通信ルートが不要である。この結果、この異常検出装置を用いることにより、映像出力処理における異常状態を低コストで検出することが可能になる。
【0008】
また、異常検出装置は、受信手段により受信された映像情報のうち、ユーザに表示される表示エリアの情報である表示情報が、変化したか否かを判定する変化判定手段を更に備え、規則判定手段は、変化判定手段により表示情報は変化していないと判定された場合に、非表示情報が通信規則に従っているか否かを判定し、出力手段は、変化判定手段により表示情報は変化したと判定された場合に、当該表示情報を出力するのも好ましい。
【0009】
これにより、変化判定手段により表示情報は変化していないと判定された場合に、非表示情報が通信規則に従っているか否かが判定されるとともに、変化判定手段により表示情報は変化したと判定された場合に、当該表示情報が出力される。このため、表示情報は変化したと判定された場合に、この変化したと判定された表示情報の通常の出力を行なうことが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、映像出力処理における異常状態を低コストで検出することができる異常検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】映像受信兼画像表示器による機能の概略を説明するための説明図である。
【図2】映像受信兼画像表示器を含む映像表示システムの機能構成を説明するための機能構成図である。
【図3】映像出力器で実行される映像出力処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】映像受信兼画像表示器で実行される異常検出処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
(1)異常検出装置による機能の概略
まず、本実施形態である異常検出装置としての映像受信兼画像表示器による機能の概略について、図1を用いて説明する。図1は、映像受信兼画像表示器1による機能の概略を説明するための説明図である。映像受信兼画像表示器1は、例えば自動車等の車両(以下、自車両という。)に取り付けられて、自車両の車室内でユーザに対してナビゲーション情報といった表示用の映像情報(表示情報)を受信しつつ当該画像の表示再生を行なうとともに、この表示再生処理における異常状態を検出する情報表示装置である。
【0014】
ここで、映像受信兼画像表示器1は、ディスプレイ画面としての画像表示部2を備え、この画像表示部2は、ユーザに対して表示されて視認可能な表示エリア21と、画像歪み対策等のために設けられていてユーザに対して表示されない非表示エリア22とを有している。そして、映像受信兼画像表示器1は、ユーザに表示されない非表示エリア22に対応する情報であるとともに映像受信兼画像表示器1の動作状態を示す情報である非表示の映像情報(非表示情報)を用いて、映像出力器7の異常状態の検出を行なう。
【0015】
(2)映像受信兼画像表示器の構成
次に、映像受信兼画像表示器1の構成について、図2を用いて説明する。図2は、映像受信兼画像表示器1を含む映像表示システム100の機能構成を説明するための機能構成図である。なお、映像表示システム100による機能は、例えば、自車両の内部に搭載された電子制御装置であるECUにより実現される。ECUは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(RandomAccess Memory)等からなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするユニットである。
【0016】
図2に示されるように、映像表示システム100は、映像受信兼画像表示器1とサーバ機能を有する映像出力器7とを別構成で備えており、映像受信兼画像表示器1及び映像出力器7は、映像データ伝送路としての映像ルート6によって互いに通信接続されている。
【0017】
映像受信兼画像表示器1は、画像表示部2(出力手段)、重畳画像作成部3(変化判定手段)、映像受信部4(受信手段)、及び動作監視部5(規則判定手段)を有しており、映像出力器7は、映像出力部8(送信手段)、映像作成部9(作成手段)、及び動作状態重畳部10(作成手段)を有している。
【0018】
まず、映像出力器7の各構成要素を説明する。映像作成部9は、ユーザに対して表示される表示エリア21内に表示するための表示用の映像情報を生成する部分である。表示用の映像情報は、例えば、ナビゲーション情報等である。
【0019】
動作状態重畳部10は、ユーザに対して表示されない非表示エリア22に対応する情報であるとともに動作状態を示す情報である非表示の映像情報を生成する部分である。この非表示の映像情報は、例えば、所定時間(例えば1秒)毎に白黒反転して変動する1ドットの画像データによって正常に動作中の状態であることを示す、所定の通信ルール(通信規則)に従った情報である。
【0020】
映像出力部8は、映像作成部9により作成された表示用の映像情報に、動作状態重畳部10により作成された非表示の映像情報を重畳処理して出力映像として生成し、この出力映像を同期出力する部分である。映像出力部8により同期出力された出力映像は、映像データ伝送路としての映像ルート6を経由して映像受信部4に入力される。
【0021】
次に、映像受信兼画像表示器1の各構成要素を説明する。映像受信部4は、映像出力器7といった外部機器から、非表示の映像情報が重畳された表示用の映像情報である出力映像を受信する部分である。
【0022】
重畳画像作成部3は、映像受信部4により受信された出力映像のうち、表示用の映像情報が、変化したか否かを判定する部分である。表示用の映像情報が変化したか否かの判定は、重畳画像作成部3が、今回受信された映像情報と前回受信された映像情報との比較処理を実行することによって行なわれる。
【0023】
動作監視部5は、重畳画像作成部3により表示用の映像情報は変化していないと判定された場合に、非表示の映像情報が、予め定められた通信ルールに従っているか(即ち、上記した所定時間毎に白黒反転する1ドットの画像データであるか)否かを判定する部分である。この通信ルールは、例えば、上記したECU内のROMやRAMに予め記憶されている。
【0024】
画像表示部2は、動作監視部5により非表示の映像情報は通信ルールに従っていないと判定された場合に、異常状態の発生を示す情報を表示出力するディスプレイ部分である。この表示出力により、異常状態を検知するための信頼性を高めることが可能になる。一方、動作監視部5により非表示の映像情報は通信ルールに従っていると判定された場合に、画像表示部2は、映像受信部4により前回受信された表示用の映像情報を継続して表示出力することにより、同一の映像情報の保持を行なう。
【0025】
また、画像表示部2は、重畳画像作成部3により表示用の映像情報は変化したと判定された場合に、変化したと判定された今回受信された表示用の映像情報を表示出力する。
【0026】
(3)映像出力器における映像出力処理の流れ
次に、映像出力器7で実行される映像出力処理の流れ(映像出力方法)について、図3を用いて説明する。図3は、映像出力器7で実行される映像出力処理の流れを示すフローチャートである。図3のフローチャートに示される処理は、主として上記したECUによって行われるものであり、映像表示システム100の電源がオンされてからオフされるまでの間、所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0027】
まず、映像作成部9が、ユーザに表示される表示エリア21内に表示するための表示用の映像情報を作成する(ステップS01)。そして、動作状態重畳部10が、ユーザに表示されない非表示エリア22に対応する情報であるとともに動作状態を示す情報である非表示の映像情報(動作状態データ)を作成する(ステップS02)。
【0028】
次に、映像出力部8が、映像作成部9により作成された表示用の映像情報に、動作状態重畳部10により作成された非表示の映像情報を重畳処理して出力映像として作成する(ステップS03)。そして、映像出力部8が、この出力映像を映像ルート6経由で映像受信部4に出力する(ステップS04)。これにより、一連の映像出力処理が完了する。
【0029】
(4)映像受信兼画像表示器における異常検出処理の流れ
次に、映像受信兼画像表示器1で実行される異常検出処理の流れ(異常検出方法)について、図4を用いて説明する。図4は、映像受信兼画像表示器1で実行される異常検出処理の流れを示すフローチャートである。図4のフローチャートに示される処理は、主として上記したECUによって行われるものであり、映像表示システム100の電源がオンされてからオフされるまでの間、所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0030】
まず、映像受信部4が、映像出力器7から、非表示の映像情報が重畳された表示用の映像情報である出力映像を受信する(ステップS11)。そして、重畳画像作成部3が、映像受信部4により受信された出力映像のうち、表示エリア21内に表示するための表示用の映像情報が、変化したか否かを判定する(ステップS12)。表示用の映像情報は変化したと判定された場合は、後述のステップS13に移行する。一方、表示用の映像情報は変化していないと判定された場合は、後述のステップS14に移行する。
【0031】
ステップS13では、画像表示部2が、映像受信部4により今回受信された表示用の映像情報を表示出力する。これにより、一連の異常検出処理が完了する。
【0032】
ステップS14では、動作監視部5が、ユーザに表示されない非表示エリア22に対応する非表示の映像情報は通信ルールに従っているか否かを判定する。非表示エリア22に対応する非表示の映像情報は通信ルールに従っていると判定された場合は、後述のステップS15に移行する。一方、非表示エリア22に対応する非表示の映像情報は通信ルールに従っていないと判定された場合は、後述のステップS16に移行する。
【0033】
ステップS15では、画像表示部2が、映像受信部4により前回受信された表示用の映像情報を継続して表示出力することにより、同一の映像情報の保持を行なう。これにより、一連の異常検出処理が完了する。
【0034】
ステップS16では、画像表示部2が、映像出力器7の異常状態の発生を示す情報を表示出力する。これにより、ユーザが異常状態を認識することが可能となり、一連の異常検出処理が完了する。
【0035】
(5)映像受信兼画像表示器による作用及び効果
映像受信兼画像表示器1により、映像受信部4により受信された映像情報のうち、ユーザに表示されない非表示エリア22の情報である非表示の映像情報が、予め定められた通信ルールに従っているか否かが判定されて、非表示の映像情報は通信ルールに従っていないと判定された場合に、異常状態の発生を示す情報が表示出力される。
【0036】
このように、ユーザに表示されない非表示の映像情報だけを有効活用して異常状態の検出が行なわれるため、異常状態の検出を行なうための通信ルートの追加が不要である。この結果、この映像受信兼画像表示器1を用いることにより、映像出力処理における異常状態を低コストで検出することが可能になる。
【0037】
また、重畳画像作成部3により表示用の映像情報は変化していないと判定された場合に、非表示の映像情報が通信ルールに従っているか否かが判定されるとともに、重畳画像作成部3により表示用の映像情報は変化したと判定された場合に、この表示用の映像情報が出力される。このため、表示用の映像情報は変化したと判定された場合に、この変化したと判定された表示用の映像情報の通常の出力を行なうことが可能になる。
【0038】
(6)変形例
上記の実施例では、映像受信部4は映像出力器7から出力映像を受信する構成としているが、映像受信部4は自車両の外部から出力映像を無線通信により受信する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、映像出力処理における異常状態を低コストで検出することができる異常検出装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…映像受信兼画像表示器、2…画像表示部、3…重畳画像作成部、4…映像受信部、5…動作監視部、6…映像ルート、7…映像出力器、8…映像出力部、9…映像作成部、10…動作状態重畳部、21…表示エリア、22…非表示エリア、100…映像表示システム。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに対する映像情報の表示処理における異常状態を検出する異常検出装置であって、
外部から前記映像情報を受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された前記映像情報のうち、前記ユーザに表示されない非表示エリアの情報である非表示情報が、予め定められた通信規則に従っているか否かを判定する規則判定手段と、
前記規則判定手段により前記非表示情報は前記通信規則に従っていないと判定された場合に、異常状態の発生を示す情報を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする異常検出装置。
【請求項2】
前記受信手段により受信された前記映像情報のうち、前記ユーザに表示される表示エリアの情報である表示情報が、変化したか否かを判定する変化判定手段を更に備え、
前記規則判定手段は、前記変化判定手段により前記表示情報は変化していないと判定された場合に、前記非表示情報が前記通信規則に従っているか否かを判定し、
前記出力手段は、前記変化判定手段により前記表示情報は変化したと判定された場合に、当該表示情報を出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の異常検出装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−234296(P2011−234296A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105361(P2010−105361)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】