説明

異常脂質血症を治療または予防するためのアミン、アミンとバナジウムの組み合わせ、およびアミンバナジウム塩

バナジウム(IV)/(V)化合物と医薬的に許容されるアミンを含む組み合わせを提供する。その組み合わせは、異常脂質血症、糖尿病、肥満、代謝症候群、または心血管疾患を治療または予防するために提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミン、アミンと医薬的に許容されるバナジウム化合物の組み合わせ、またはアミンバナジウム塩を含む、異常脂質血症薬として使用する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
異常脂質血症は、特にII型糖尿病患者の冠状動脈性心臓病(CHD)のリスクの増加を伴う種々の血液脂質含有量の障害の一般名である。異常脂質血症は、血清トリグリセリドの上昇(これは膵炎を生じうる)、LDLコレステロールの上昇、またはLDLコレステロールとトリグリセリドの両方の上昇と関連がある。該病状は、冠状動脈性心臓病、末梢動脈疾患、および脳血管疾患を含むアテローム性動脈硬化症のリスクの増加をもたらす。異常脂質血症は、インスリン抵抗性を特徴とする病状にも関連し、これはII型糖尿病代謝症候群(メタボリックシンドローム)の重要な特徴の1つである。実際に、インスリン抵抗性は異常脂質血症をもたらすことがあると考えられ、これは代謝症候群を有する対象の心血管系リスクの増加の多くをもたらす代謝異常に関与する。
【0003】
これに関して、脂質プロフィールの目標を得る重要性が強く強調され、例えばヨーロッパでは該目標は、総コレステロール5mmol/L、低密度(LDL)コレステロール3mmol/Lであり、米国では、該目標は総コレステロール200mg/dL以下、LDL 100mg/dL以下である。しかしながら、これら目標値の扱いが限られた健康管理資源を最大限に活用する信頼性の改善が当該分野で引き続き求められている。
【0004】
近年、in vivoと単離細胞および組織でインスリンの効果によく似た(mimic)種々の無機化合物が記載されており、II型糖尿病に関連するインスリン抵抗性を克服するその能力が評価されてきた。これらには、バナジウム(IV)/(V)化合物(Heyliger et al., 「Effect of vanadate on elevated blood glucose and depressed cardiac performance of diabetic rats」、Science 1985, vol. 227, pp. 1474-7参照)、セレネート(McNeill et al., 「Insulin-like effects of sodium selenate in streptozotrocin-induced diabetic rats」、Diabetes 1991, vol. 40, pp. 1675-8参照)、リチウム塩 (Rodriguez-Gil et al., 「Lithium restores glycogen synthesis from glucose in hepatocytes from diabetic rats」、Arch. Biochem. Biophys. 1993, vol. 301, pp. 411-5参照)、およびタングステン(VI)化合物(US5,595,763参照)。
【0005】
インスリン模倣物質として研究されてきたバナジウム誘導体には、バナデートおよびパーオキソバナジウム錯体(酸素と結合した+5酸化状態のバナジウム、特にオルソバナデートVO43-。US4,882,171参照)、およびバナジルVO2+塩、および錯体(+4酸化状態のバナジウム、US5,300,496参照)がある。本発明者らは、アミン(例えばベンジルアミンまたはチラミン)と低濃度のバナデートのある組み合わせはラット脂肪細胞におけるグルコース輸送を刺激することを先に示した(Enrique-Tarancon et al., 1998, J Biol. Chem. 273: 8025-8032; Marti et al., 1998, J Pharmacol. Exp. Ther. 285:342-349参照)。さらに、ベンジルアミンおよびバナデートによる慢性処置は、ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラット(Marti et al., 2001, Diabetes 50: 2061-2068)またはGoto-Kakizaki糖尿病ラット(Abella et al., 2003 Diabetes 52: 1004-1013)で有効な抗糖尿病効果を示す。
【0006】
バナジウム化合物の使用は、治療的有効量で毒性があるという根本的欠点がある。動物でインスリン模倣効果を達成するには毒性レベルに近い投与濃度でなければならない。バナジウム処置は使用するバナジウムの形と無関係に常に顕著な副作用を伴う(Domingo et al., 1991,「Oral vanadium administration to streptozocin-diabetic rats has marked negative side-effects which are independent of the form of vanadium used」, Toxicology 66: 279-87)。著しい死亡率を含むバナジウム化合物の顕著な毒性徴候が血液グルコースを低下させることができる全ての用量で観察される。インスリン模倣物として有効なバナジウム化合物濃度は異常脂質血症の改善または緩和効果を達成するのにも必要であると予期される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち、当該分野において、異常脂質血症同時に減少させるのに十分なインスリン模倣物の活性を維持しながら、バナジウム化合物の用量の実質的な減少を達成するのに十分なバナジウム化合物製剤を開発する緊急の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要約)
本発明は、セミカルバジド感受性アミンオキシダーゼ(SSAO)または他の銅含有アミンオキシダーゼの基質である医薬的に許容されるバナジウム(IV)/(V)化合物および医薬的に許容されるアミンを、医薬的に許容される賦形剤または担体と共に含む医薬組成物および製剤を提供する。該組成物および製剤は、哺乳動物、特にヒトの異常脂質血症を治療および/または予防するのに有用である。ある態様において、異常脂質血症はI型またはII型糖尿病と関連がある。本明細書に記載のごとく、該組成物または製剤を含む組み合わせの活性成分は、同時、分離、または逐次投与される。本発明の組成物または製剤は、非経口的にまたは経口投与により(これが好ましい)投与することができる。
【0009】
好ましい態様において、該医薬的組み合わせまたは製剤は、バナデート、パーオキソバナジウム錯体、バナジル塩またはバナジル錯体であるバナジウム化合物を含む。特に好ましい態様は、バナデートを含む医薬的組み合わせまたは製剤であり、ナトリウムオルソバナデートNa3VO4を含むものがより好ましい。
【0010】
好ましい態様において、該医薬組成物および製剤は、アミン、すなわち、チラミン、ベンジルアミン、3-フェニル-プロピルアミン、2-(4-フルオロ-フェニル)-エチルアミン、4-フェニル-ブチルアミン、4-フルオロ-ベンジルアミン、2,3-ジメトキシベンジルアミン、1-ナフタレンメチルアミン、デオキシエピネフリン、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、ヒスタミン、β-フェニルエチルアミン、N-アセチルプトレシン、トリプタミン、n-オクチルアミン、n-ペンチルアミン、キヌラミン、3-メトキシチラミン、またはn-デシルアミン、ヘキシルエタノールアミン、オクトパミン、スペルミン、スペルミジン、N-アセチルスペルミン、またはN-アセチルスペルミジンを含む。
【0011】
ベンジルアミン、3-フェニル-プロピルアミン、2-(4-フルオロ-フェニル)-エチルアミン、4-フェニル-ブチルアミン、4-フルオロ-ベンジルアミン、2,3-ジメトキシベンジルアミン、または1-ナフタレンメチルアミンを含む混合物および製剤が特に好ましい。該アミンは当該分野で知られている医薬的に許容されるあらゆる有機酸または無機酸との塩の形でもあり得る。特に好ましいアミンは、共有の同時係属米国特許出願No. 60/598010(2004年8月2日出願)に開示のセミカルバジド感受性アミンオキシダーゼまたは他の銅含有アミンオキシダーゼの基質である。
【0012】
本発明の実施に用いるさらに好都合なアミンは、共有の同時係属米国特許出願No. 10/430,235 (No. US2004-0224031 A1として2004年11月11日に公開)に開示されている。
【0013】
本発明の別の局面は、本発明の医薬的組み合わせまたは製剤を投与する工程を含む、哺乳動物、特にヒトにおける異常脂質血症を治療および/または予防する方法に関する。異常脂質血症を治療および/または予防するための医薬を製造するための医薬的に許容されるバナジウム(IV)/(V)化合物および医薬的に許容されるアミン、またはその塩の混合物の使用も本発明の一部である。
(図面の簡単な説明)
【0014】
結果を一部以下の図に図示的に示す。
【0015】
図1は、非糖尿病ラット(C)、ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラット(D)、または1日1回経口用量のヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデート (第0日〜第7日の処置は5μmol/kg/日、第8日〜第17日の処置は10μmol/kg/日)で17日間処置した糖尿病ラット(BV)において測定した血漿コレステロール濃度(mmol/Lで示す)の棒グラフである。D群のコレステロール濃度はC群と統計的に有意(p<0.05)である。
【0016】
図2A〜2Dは、非糖尿病ラット(C)、ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラット(Diab)または2つの異なる用量(1.25μmol/kg/日または2.5μmol/kg/日)のデカバナデート (V10、1.25μmol/kg/日)またはヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデート(B6V10)の皮下注入で28日間処置した糖尿病ラットにおいて測定したインスリン(図2A)、グルコース(図2B)、遊離脂肪酸(図2C)、およびトリグリセリド(図2D)の血漿濃度を示す棒グラフである。*は、Diab群からの統計的有意差の存在(p<0.05)を示す。
【0017】
図3A〜3Dは、非糖尿病ラット(C)、ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラット(Diab)または2つの異なる用量(1.25μmol/kg/日または2.5μmol/kg/日)のデカバナデート (V10、1.25μmol/kg/日)またはヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデート (B6V10)の皮下注入で28日間処置した糖尿病ラットにおいて測定した総コレステロール(図3A)、非エステル化コレステロール(図3B)、エステル化コレステロール(図3C)、およびHDL-コレステロール(図3D)の血漿中濃度を示す棒グラフである。*は、Diab群からの統計的有意差の存在(p<0.05)を示す。
(好ましい態様の詳細な説明)
【0018】
本発明は、異常脂質血症、特にI型またはII型糖尿病に関連する異常脂質血症を治療または予防し、またはその両方のめのバナジウム含有化合物およびアミンの組み合わせまたは製剤を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
本明細書に記載の用語「バナジウム含有化合物」は、あらゆる酸化状態のバナジウム原子を含むあらゆる有機または無機化合物を含むことを意図する。具体的には、本明細書に記載のバナジウム化合物はバナデート、パーオキソバナジウム錯体、バナジル塩またはバナジル錯体を含む。特に、バナデート、特にナトリウムオルソバナデート Na3VO4を含む医薬的組み合わせまたは製剤を提供する。
【0020】
具体的には、本発明はバナジウム(IV)/(V)化合物を提供する。本明細書に記載の用語「医薬的に許容されるバナジウム(IV)/(V)化合物」は、それ自身医薬的に許容される化学構造と結合した+4または+5酸化状態の1またはいくつかのバナジウム原子により形成されるあらゆる化学的存在物を含むことを意図する。カチオンV4+およびV5+は、単離されては観察されず、常に配位圏により部分的に形成される化学的部分を伴う。配位圏は、無機リガンド(オキシド、ヒドロオキシド、パーオキシドなど)により、例えば、オルソバナデートアニオンVO43-(バナジウム+5、および4個のオキシドイオンにより形成される配位圏)、およびバナジルカチオンVO2+(バナジウム+4、および1個のオキシドイオンにより形成される配位圏)として形成することができる。該配位圏は、異なる医薬的に許容される有機化合物に属するO、SまたはNを通してバナジウム原子と結合した分子またはイオンである有機リガンド(例えば、医薬的に許容されるアルコール、チオール、カルボキシル酸、アミン、アミノ酸、N含有複素環など)により形成することもできる。混合無機/有機配位圏は、例えばパーオキソバナジウム錯体イオン[VO(O2)2L-L']n-(ここで、L-L'はビデンテート有機リガンド、例えば1,10-フェナントロリンである)でありうる。バナジウム原子とその配位圏により形成される構造が中性でない場合は、用語「化学的部分」は、化合物全体を中性にするあらゆる医薬的に許容されるイオン種も含む。例えば、バナデートアニオンは常にカチオン(例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム)を伴って中性塩を形成し、該塩は本発明のバナジウム含有化合物に含まれる。用語「医薬的に許容されるバナジウム(IV)/(V)化合物」は、該化合物のあらゆる医薬的に許容される溶媒和物(例えば水和物)も含む。
【0021】
本明細書に記載の医薬組成物中のバナデートまたはその混合物の有効濃度は、バナデートを単独で投与する時に必要な濃度より1桁低い(またはそれ以下)。これは、該バナジウム化合物と該アミンの間に相乗作用があることを意味する。実用上の観点から、そのような相乗作用は、アミン+バナジウム含有化合物の混合物を投与すると投与するバナジウム含有化合物の量、従って該薬剤の毒性がバナジウム含有化合物の単独投与に比べてはるかに低く、特定の異常脂質血症改善効果が達成されることを意味する。これは、異常脂質血症を治療および/または予防するための当該分野で知られたバナジウム組成物に対する本発明の医薬混合物の重要な利点である。
【0022】
本明細書で用いる用語「アミン」または「アミン含有化合物」は、あらゆる化合物、好ましくは第1または置換アミン部分を含む有機化合物を含むことを意図する。具体的には、本発明は、第1アミン、例えばチラミン、ベンジルアミン、3-フェニル-プロピルアミン、2-(4-フルオロ-フェニル)-エチルアミン、4-フェニル-ブチルアミン、4-フルオロ-ベンジルアミン、2,3-ジメトキシベンジルアミン、1-ナフタレンメチルアミン、デオキシエピネフリン、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、ヒスタミン、β-フェニルエチルアミン、N-アセチルプトレシン、トリプタミン、n-オクチルアミン、n-ペンチルアミン、キヌラミン、3-メトキシチラミン、またはn-デシルアミン、ヘキシルエタノールアミン、オクトパミン、スペルミン、スペルミジン、N-アセチルスペルミン、またはN-アセチルスペルミジンを提供する。特に好ましいアミンは、共有の同時係属米国特許出願No.10/430,235(No.US 2004-0224031 A1として2004年11月11日に公開)および米国特許出願No.60/598010(2004年8月2日出願)に開示のセミカルバジド感受性アミンオキシダーゼまたは他の銅含有アミンオキシダーゼの基質がある。
【0023】
本発明により提供される医薬組成物および製剤を含む特定のアミンには、式:
【化1】

を有するセミカルバジド感受性アミンオキシダーゼまたは他の銅含有アミンオキシダーゼの基質である化合物が含まれる
[式中、R1、R2、R3、R4、およびR5は、独立してH、OH、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、NR6R7、(CH2)pNR8R9、O(CH2)qPh、CONR10R11、COR12、CF3、OCF3、F、Cl、Br、NO2、またはCH2NHC(=NH)NH2であるラジカルであるか、またはR1とR2が一緒になって融合ベンゼンを有する環を形成する;
pおよびqは1〜3の整数である;
R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12は、独立してH、(C1-C4)-アルキルまたはアリール、具体的にはフェニルであるラジカルである;
nは1〜3の整数である。]。
【0024】
本明細書に記載のごとく、該アミンはさらに医薬的に許容されるバナジウム(IV)/(V)化合物、好ましくはバナデート、パーオキソバナジウム錯体、バナジル塩またはバナジル錯体と好都合に同時、分離、または逐次投与される。ある態様において、該バナジウム化合物は、式[HxV10O28]y-を有する(式中、xは0〜2の整数である。yは4〜6の整数である。ただし、x+y=6。]。
【0025】
本発明において「アルキル」、「C1-C6アルキル」、および「C1-C6アルキル」は、炭素数1-6の直鎖または分岐鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、2-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、および3-メチルペンチルを意味する。
【0026】
本発明において「アルコキシ」、「C1-C6アルコキシ」、および「C1-C6アルコキシ」は、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖アルコキシ基、例えばメトシキ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、2-ペンチル、イソペントキシ、ネオペントキシ、ヘキソキシ、2-ヘキソキシ、3-ヘキソキシ、および3-メチルペントキシを意味する。
【0027】
本発明において用語「ハロゲン」はフッ素、臭素、塩素、およびヨウ素を意味する。
【0028】
本発明において「シクロアルキル」、例えばC3-C7シクロアルキルは、3〜7個の原子を有するシクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルを意味する。
【0029】
「アリール」は、単環(例えば、フェニル)、多環(例えば、ビフェニル)、または少なくとも一つが芳香族である多縮合環を有する芳香族炭素環基(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、ナフチル、アントリル、またはフェナントリル)を意味し、これは所望により例えば、ハロゲン、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルキルチオ、トリフルオロメチル、C1-C6アシルオキシ、アリール、ヘテロアリール、およびヒドロキシでモノ、ジ、またはトリ置換されている。好ましいアリール基には、フェニル、インダニル、ビフェニル、およびナフチルがあり、そのそれぞれが所望により本明細書に記載のごとく置換されている。より好ましいアリール基には、フェニルおよびナフチルがあり、そのそれぞれが所望により本明細書に記載のごとく置換されている。
【0030】
「ヘテロアリール」は、芳香族環または芳香族環系を意味し、その各環は、5、6、または7員のものを含み、少なくとも1および4個までの環のメンバーは窒素、酸素、または硫黄から選ばれる。そのようなヘテロアリール基には、例えば、チエニル、フラニル、チアゾリル、イミダゾリル、(イス)オキサゾリル、ピリジル、ピリミジニル、(イソ)キノリニル、インドリル、ナプチリジニル、ベンズイミダゾリル、およびベンゾキサゾリルがある。好ましいヘテロアリールは、チアゾリル、ピリミジニル、ピリミジン-2-イル、インドリル、ピリジル、1-イミダゾリル、2-チエニル、1-または2-キノリニル、1-または2-イソキノリニル、1-または2-テトラヒドロイソキノリニル、2-または3-フラニル、および2-テトラヒドロフラニルがある。
【0031】
「ヘテロシクロアルキル」は、3、4、5、6、または7員環の1またはそれ以上の炭素環系を意味し、これには窒素、酸素、および硫黄から選ばれる少なくとも1個〜4個までのヘテロ原子を含む9〜11原子の縮合環系が含まれる。本発明の好ましいヘテロ環には、モルホリニル、チオモルホリニル、チオモルホリニルS-オキシド、チオモルホリニルS-オキシド、チオモルホリニルS,S-ジオキシド、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ピロリジニル、ピロリニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ホモピペリジニル、ホモモルホリニル、ホモチオモルホリニル、ホモチオモルホリニルS,S-ジオキシド、オキサゾリジノニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドラピロリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロフリル、ジヒドロピラニル、アゼパニル、ジアゼパニル、テトラヒドロチエニルS-オキシド、テトラヒドロチエニルS,S-ジオキシド、およびホモチオモルホリニルS-オキシドがある。
【0032】
本明細書に記載のごとく、バナジウム含有化合物およびアミンを含む医薬組成物は、2つの分離した化合物、その2つの塩、またはバナジウム含有化合物およびアミンの両方を含む単一化合物として提供される。
【0033】
本発明の化合物は、医薬として有用であり、医薬組成物として提供することができる。該医薬組成物は、それ自体知られた方法で、例えば常套的な混合、溶解、顆粒化、糖衣錠化、微粒子化(levigating)、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥工程により製造することができる。
【0034】
医薬組成物は、医薬的に用いることができ、活性化合物を製剤に加工するのを促す賦形剤および補助剤を含む1またはそれ以上の医薬的に許容される担体を用いて常套的方法で製剤化することができる。適切な製剤は選んだ投与経路に依存する。
【0035】
無毒性の医薬的塩には、酸、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸、スルフィン酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硝酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、ヨウ化水素酸、アルカン酸、例えば酢酸、HOOC-(CH2)n-CH3(ここで、nは0〜4である)などの塩が含まれる。無毒性の医薬的塩基付加塩には、塩基、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウムなどの塩が含まれる。当業者は種々の無毒性の医薬的に許容される付加塩を認識するであろう。
【0036】
注射用の、本発明の方法に従って製造される化合物は、適切な水性溶液、例えば生理学的に適合性の緩衝液、例えばハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理食塩水緩衝液を用いて製剤化することができる。経粘膜および経皮投与用には、透過するバリアーに適した浸透剤を製剤に用いる。そのような浸透剤は一般に当該分野で知られている。
【0037】
経口投与用には、該化合物は活性化合物と当該分野でよく知られた医薬的に許容される担体を混合することにより容易に製剤化することができる。そのような担体は、本発明化合物を治療する患者により経口摂取されるように錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液体剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、サスペンジョン剤などとして製剤化するのを可能にする。経口使用のための医薬製剤は、固体賦形剤を用いて得、所望により得られた混合物を粉末にし、所望により適切な助剤を加えた後顆粒の混合物を加工し、錠剤または糖衣コアを得ることができる。適切な賦形剤は、具体的には充填剤、例えばラクトース、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールを含む糖;セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などである。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、カンテン、またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムのような崩壊剤を加えることができる。
【0038】
糖衣コアは適切なコーティングを用いて提供される。この目的に濃縮糖溶液を用いることができ、これは、所望によりアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含むことができる。染料または色素を錠剤または糖衣コーティングに加え、活性化合物用量の種々の組み合わせを識別または特徴付けることができる。
【0039】
経口的に用いることができる医薬製剤には、ゼラチン製プッシュフィットカプセル、およびゼラチンおよび可塑剤、例えばグリセロールまたはソルビトールでできた密封軟カプセルがある。該プッシュフィットカプセルは、活性化合物を充填剤、例えばラクトース、結合剤、例えばデンプン、および/または潤滑剤、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム、および所望により安定化剤とともに含み得る。軟カプセルでは、活性化合物を、適切な溶液、例えば脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールに溶解または懸濁させることができる。さらに、安定化剤を加えることができる。経口投与用のすべての製剤は、そのような投与に適した用量であるべきである。バッカル投与用の組成物は常套的方法で製剤化した錠剤またはローゼンジー剤の形を取りうる。
【0040】
吸入投与用には、本発明の方法にしたがって製造した化合物は、加圧パックまたはネブライザーから適切なプロペラント、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切なガスを用いてエアロゾルスプレーの形で好都合に送達される。加圧エアロゾルの場合は、用量単位は定量を供給するバルブを与えることにより決定することができる。該化合物とラクトースやデンプンのような適切な粉末基剤の粉末混合物を含む、吸入器(inhaler)または吸入器(insufflator)で使用する、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジを製剤化することができる。
【0041】
該化合物は、注射、例えばボーラス注射または連続注入により非経口投与するために製剤化することができる。注射用の製剤は、保存料を加え、例えばアンプルまたは多用量容器中に単位剤形で存在しうる。該組成物は、油状または水性ビークル中のサスペンジョン、溶液、またはエマルジョンのような形をとることができ、懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤のような製剤化剤を含みうる。
【0042】
非経口投与用の医薬製剤は、水溶性の活性化合物の水性溶液を含む。さらに、活性化合物のサスペンジョンは、適切な油状注射サスペンジョンとして製剤化することができる。適切な脂溶性溶媒またはビークルには、脂肪油、例えばゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えばエチルオレエートまたはトリグリセリド、またはリポソームがある。水性注射用サスペンジョンは、該サスペンジョンの粘性を増加させる物質、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、またはデキストランを含みうる。所望により、該サスペンジョンは、高濃縮溶液の製造を可能にするために該化合物の溶解性を増加させる適切な安定剤または物質も含むことができる。あるいはまた、活性成分は、使用前に、適切なビークル、例えば無菌発熱物質不含水で再構築するために粉末の形でありうる。該化合物は、例えばココアバターや他のグリセリドのような常套的坐剤基剤を用い、坐剤や滞留浣腸のような直腸用組成物に製剤化することもできる。
【0043】
前記製剤に加えて、該化合物はデポー製剤として製剤化することもできる。そのような長期作用製剤は、移植(例えば皮下または筋肉内に)または筋肉内注射により投与することができる。すなわち、例えば、該化合物は、適切なポリマーまたは疎水性物質(例えば許容される油中エマルジョン)またはイオン交換樹脂を用いて、またはやや溶けにくい誘導体、例えばやや溶けにくい塩として製剤化することができる。
【0044】
式Iの疎水性化合物のための医薬担体は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水溶性有機ポリマー、および水性相を含む共溶媒系である。該共溶媒系はVPD共溶媒系でありうる。VPDは、無水エタノール中の、3% w/vベンジルアルコール、8% w/v非極性界面活性剤ポリソルベート80、および65% w/vポリエチレングリコール300の溶液である。VPD共溶媒系(VPD:5W)は、水溶液中の5%デキストロースで1:1に希釈したVPDからなる。この共溶媒系は、疎水性化合物をよく溶解し、それ自身全身投与で低毒性である。もちろん、共溶媒系の割合はその溶解性および毒性特性を壊さずにかなり変更することができる。さらに、共溶媒成分の同一性は変化しうる。例えば他の低毒性非極性表面活性剤をポリソルベート80の代わりに用いることができ、ポリエチレングリコールの分画サイズを変更することができ、他の生体適合性ポリマーをポリエチレングリコール、例えばポリビニルピロリドンに代えることができ、他の糖または多糖でデキストロースを置き換えることができる。
【0045】
あるいはまた、疎水性医薬化合物のための他の送達系を用いることができる。リポソームおよびエマルジョンは、疎水性薬のための送達用ビークルまたは担体のよく知られた例である。ジメチルスルホキシドのようなある種の有機溶媒も、通常毒性がより高いという代償があるが使用することができる。さらに、該化合物は持続放出系、例えば治療薬を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを用いて送達することができる。種々の持続放出物質が樹立されており、当業者によく知られている。持続放出カプセルは、その化学的性質に応じて数週間から100日間までにわたり化合物を放出することができる。治療的試薬の化学的性質と生物学的安定性に応じて、タンパク質および核酸の安定化のためのさらなる戦略を用いることができる。
【0046】
医薬組成物は適切な固体またはゲル相担体または賦形剤を含むこともできる。そのような担体または賦形剤の例には、限定されるものではないが炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリマー、例えばポリエチレングリコールがある。
【0047】
本発明化合物は、医薬的に適合性の対イオンとの塩として提供することができる。医薬的に適合性の塩は、限定されるものではないが以下のものを含む多くの酸で形成することができる:塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、リン酸、臭化水素酸、スルフィン酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硝酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、ヨウ化水素酸、アルカン酸、例えば酢酸、HOOC-(CH2)n-CH3(ここで、nは0〜4である)など。対応する遊離塩基の形の塩は、水性または他のプロトン性溶媒により可溶性の傾向がある。無毒性の医薬的塩基付加塩にはナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウムなどのような塩基の塩が含まれる。当業者は種々の無毒性の医薬的に許容される付加塩を認識するであろう。
【0048】
本発明の方法に従って製造される該化合物の医薬組成物を製剤化し、全身、局所(localiszed)、または局所(topical)投与を含む種々の手段を通して投与することができる。製剤化および投与の技術は「Remington's Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA)にみることができる。身体の所望の標的部位への送達を最大限にするために投与方法を選択することができる。適切な投与経路は、例えば経口、直腸、経粘膜、経皮、または腸投与;筋肉内、皮下、髄内注射、およびクモ膜下、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻内、または眼内注射を含む可能な送達を含みうる。
【0049】
あるいはまた、該化合物は、全身的より局所的に、しばしばデポーまたは持続放出製剤で例えば特定組織内に化合物を直接注射することにより投与することができる。
【0050】
使用に適した医薬組成物には、活性成分がその意図する目的を達成するのに有効な量で含まれる組成物がある。より具体的には、治療的有効量は、治療する対象の存在する症状を改善し、またはその進行を抑制するのに有効な量を意味する。有効量の決定は、特に本明細書に記載の詳細な開示に照らして十分当業者の能力内である。
【0051】
非ヒト動物に投与するには、該薬剤または該薬剤を含む医薬組成物を動物の飼料や飲用水に加えてもよい。動物が飼料と共に該薬剤の適切な量を摂取するように薬剤の予め決定した用量を含む動物飼料および飲用水製品を製剤化することは好都合であろう。動物が消費するほぼ直前に飼料または飲用水に薬剤を含むプレミックスを加えることも好都合であろう。
【0052】
本発明の方法にしたがって製造される好ましい化合物は、ある種の医薬特性を有するであろう。そのような特性には、限定されるものではないが、経口バイオアベイラビリティ、低毒性、低血清タンパク質結合性、および望ましいin vitroおよびin vivo半減期がある。アッセイを用いてこれら望ましい医薬特性を推定することができよう。バイオアベイラビリティを推定するのに用いるアッセイには、Caco-2細胞単層を含むヒト腸細胞単層を横切る輸送がある。血清タンパク質結合性はアルブミン結合アッセイから予測することができよう。そのようなアッセイは、Oravcova et al.の総説 (1996、Journal of Chromatography B-Biomedical Applications 677: 1-28)に記載されている。化合物の半減期は、化合物の投与頻度に逆比例する。化合物のin vitro半減期は、KuhnzおよびGieschen (1998、Drug Metabolism and Disposition 26: 1120-1127)に記載のミクロソーム半減期のアッセイから予測することができよう。そのような化合物の毒性および治療効果は、細胞培養または実験動物を用いる常套的医薬的方法、例えばLD50(個体群の50%が致死的な用量)、およびED50(個体群の50%における治療的有効用量)の測定により決定することができる。毒性作用と治療効果の用量比が治療指数であり、LD50とED50の比で表すことができる。高治療指数を示す化合物が好ましい。これら細胞培養アッセイおよび動物試験から得たデータを用いてヒトに使用する用量範囲を処方することができる。そのような化合物の用量は、毒性が全くまたはほとんどないED50を含む循環濃度範囲内にあることが好ましい。用量は、用いる剤形および用いる投与経路に応じてこの範囲内で変更しうる。正確な製剤、投与経路および用量は患者の病状に応じて個々の担当医師が選択することができる(例えば、Fing et al.、1975、THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS、Ch.1、p.1参照)。
【0053】
投与量および間隔を個々に調節し、細菌細胞の増殖阻害効果を維持するのに十分な活性部分の血漿レベルを提供することができる。全身投与のための通常の患者への投与量は、1〜200mg/日の範囲である。患者の体表面積で示すと、通常用量は、50〜910mg/m2/日、より好ましくは0.06〜0.25mg/kg/日、または2〜40mg/日の範囲である。通常の平均血漿レベルは、0.1〜1000μM内に維持すべきである。
【0054】
局所投与または選択的取り込みの場合は、該化合物の有効局所濃度は血漿濃度と関連し得ない。
【0055】
本発明の化合物は、I型またはII型糖尿病、または代謝症候群と関連するかもしくは関連しない異常脂質血症を治療または予防するのに有用である。
【0056】
予防は、異常脂質血症またはI型またはII型糖尿病に以前罹患したことがあるか、またはそのリスクの増加が考えられるヒトの治療に特に関連すると予期される。一般に、特定の疾患または病状を発現するリスクのあるヒトには、該疾患または病状の家族歴のあるヒト、または該疾患または病状を特に発現しやすいと一般検査またはスクリーニングで確認されたヒトが含まれる。
【0057】
本明細書で用いている疾患の用語「治療(処置)すること」または「治療(処置)」には、
(1)疾患を予防すること、すなわち、疾患に曝されるかまたは罹りやすくなっているがまだ該疾患の症状を経験していないか示していない哺乳動物において疾患の臨床症状を発現しないようにすること、(2)疾患を阻止すること、すなわち、疾患またはその臨床症状の発現を止めるかまたは減らすこと、または(3)疾患を軽減すること、すなわち、該疾患またはその臨床症状を緩解させることが含まれる。
【0058】
本明細書で用いている用語「医薬的有効量」は、疾患を治療するために哺乳動物に投与した時に疾患をそのように治療するのに十分な化合物の量を意味する。「治療的有効量」は、化合物、疾患とその重症度、および治療する哺乳動物の年齢、体重、または他の関連特性に応じて異なるであろう。
【0059】
本発明化合物は、既知の化学反応および方法を用いて製造することができる。本発明化合物の典型的合成方法を以下に示す。望ましい目的化合物に必要な置換基の性質は、しばしば好ましい合成方法を決定すると理解される。該方法のすべての可変基は、以下に特に定義しない限り一般的説明に記載した通りである。
【0060】
本発明の方法に従って製造される典型的化合物には、限定されるものではないが、本明細書に記載の化合物、およびその医薬的に許容される酸および塩基付加塩が含まれる。さらに、化合物が酸付加塩として得られる場合は、該酸塩の溶液を塩基性化することにより遊離塩基を得ることができる。反対に、生成物が遊離塩基である場合は、塩基化合物から酸付加塩を製造するための常套的方法に従って、遊離塩基を適切な有機溶媒に溶解し、該溶液を酸で処理することにより付加塩、特に医薬的に許容される付加塩を生成してよい。
【0061】
本願中の特許を含むすべての論文や参考文献の開示は、本明細書の一部を構成する。
【0062】
以下の実施例は、例示のために提供し、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、例示した態様の範囲に限定されるものではなく、該態様は本発明の個々の局面の例示を意図している。特に、本明細書に示し、記載するものに加え、本発明の種々の変更は、前記説明と添付の図面から当業者に明らかになるであろう。そのような変更は特許請求の範囲の範囲内にあることを意図する。
【実施例】
【0063】
実施例1
糖尿病ラットの血漿コレステロールレベルに対するヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデートの経口および慢性投与の効果
ヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデートの経口投与が糖尿病に関連する異常脂質血症を改善するか否かを検討する試験を行った。ストレプトゾトシンの静脈内投与によりラットに糖尿病を誘発し、非糖尿病ラットに比べて血漿コレステロール濃度の実質的な増加をもたらした(図1)。この条件下でヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデートの1日用量による経口処置は、血漿コレステロールレベルを実質的に低下させ、コントロールとヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデート処置ラットの差は検出されなかった。
実施例2
糖尿病ラットの血漿トリグリセリドおよび遊離脂肪酸レベルに対するヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデートの皮下および慢性投与の効果
【0064】
ヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデートの皮下投与が糖尿病に関連する異常脂質血症を改善するかを検討する試験を行った。大用量のストレプトゾトシン(100 mg/kg)の静脈内投与によりラットに糖尿病を誘発し、血漿インスリンの完全な消失と、非常に高濃度の血漿グルコースを生じた(図2Aおよび2B)。糖尿病の誘発は、非糖尿病ラットに比べて血漿遊離脂肪酸およびトリグリセリド濃度の実質的な増加にも関連していた(図2Cおよび2D)。この条件下で、種々の用量のヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデートによる皮下処置は、遊離脂肪酸およびトリグリセリドの血漿濃度を正常化し、コントロールとヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデート処置ラットの差は検出されなかった(図2Cおよび2D)。この条件下で、デカバナデートによる処置は、トリグリセリドや遊離脂肪酸の血漿濃度を変化させなかった(図2Cおよび2D)。
実施例3
糖尿病ラットの血漿コレステロールレベルに対するヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデートの皮下および慢性投与の効果
【0065】
糖尿病に関連するコレステロールの血漿濃度変化に対するヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデートの皮下投与の効果の検討を行った。大用量のストレプトゾトシン(100mg/kg)の静脈内投与によりラットに糖尿病を誘発した。実験的に誘導した糖尿病は、非糖尿病ラットに比べて総血漿コレステロールおよび非エステル化コレステロールの実質的な増加とエステル化コレステロール濃度の低下と関連していた(図3A)。HDL-コレステロール濃度は糖尿病により変化しなかった(図3B)。この条件下で、種々の濃度のヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデートによる皮下処置は、総コレステロールおよび非エステル化コレステロールの血漿濃度を低下させ、エステル化コレステロール濃度を増加させた。これらにコントロールとヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデート処置ラットの差は検出されなかった(図3C)。この条件下で、デカバナデートによる処置も総コレステロールの有意な低下をもたらしたが、非エステル化およびエステル化コレステロールレベルは非処置糖尿病ラットと有意差はなかった(図3D)。
【0066】
前記開示は本発明のある特定の態様を強調し、それらと等価なすべての変更または代替物は特許請求の範囲に記載の本発明の範囲と精神内にあると理解すべきである。
【0067】
本発明およびその製造方法および使用方法は、あらゆる当業者がそれを製造および使用できるように完全、明確、簡潔、および正確な用語を用いて説明されている。前記のものは本発明の好ましい態様を説明し、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲や精神から逸脱することなくそれを変更してよいと理解すべきである。発明の対象を具体的に指摘し、個々にクレームするために、特許請求の範囲が本明細書を結論づける。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】非糖尿病ラット(C)、ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラット(D)、または1日1回経口用量のヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデート (第0日〜第7日の処置は5μmol/kg/日、第8日〜第17日の処置は10μmol/kg/日)で17日間処置した糖尿病ラット(BV)において測定した血漿コレステロール濃度(mmol/Lで示す)の棒グラフである。
【図2】非糖尿病ラット(C)、ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラット(Diab)または2つの異なる用量(1.25μmol/kg/日または2.5μmol/kg/日)のデカバナデート (V10、1.25μmol/kg/日)またはヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデート(B6V10)の皮下注入で28日間処置した糖尿病ラットにおいて測定したインスリン(図2A)、グルコース(図2B)、遊離脂肪酸(図2C)、およびトリグリセリド(図2D)の血漿濃度を示す棒グラフである。
【図3】非糖尿病ラット(C)、ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラット(Diab)または2つの異なる用量(1.25μmol/kg/日または2.5μmol/kg/日)のデカバナデート (V10、1.25μmol/kg/日)またはヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデート (B6V10)の皮下注入で28日間処置した糖尿病ラットにおいて測定した総コレステロール(図3A)、非エステル化コレステロール(図3B)、エステル化コレステロール(図3C)、およびHDL-コレステロール(図3D)の血漿中濃度を示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セミカルバジド感受性アミンオキシダーゼまたは他の銅含有アミンオキシダーゼの基質である医薬的に許容されるアミンまたは該アミンの医薬的に許容される塩を医薬的に許容される賦形剤または担体と共に含む抗異常脂質血症製剤。
【請求項2】
さらに医薬的に許容されるバナジウム(IV)/(V)化合物を含む請求項1記載の抗異常脂質血症製剤。
【請求項3】
該アミンおよび該バナジウム化合物が同時、分離、または逐次投与用に製剤化される請求項2に記載の抗異常脂質血症製剤。
【請求項4】
該バナジウム化合物がバナデート、パーオキソバナジウム錯体、バナジル塩またはバナジル錯体である請求項1、2、または3に記載の抗異常脂質血症製剤。
【請求項5】
該バナジウム化合物がバナデートである請求項2、3、または4に記載の抗異常脂質血症製剤。
【請求項6】
該バナジウム化合物がナトリウムオルソバナデートである請求項5に記載の抗異常脂質血症製剤。
【請求項7】
該アミンがベンジルアミン、チラミン、3-フェニル-プロピルアミン、2-(4-フルオロ-フェニル)-エチルアミン、4-フェニル-ブチルアミン、4-フルオロ-ベンジルアミン、2,3-ジメトキシベンジルアミン、1-ナフタレンメチルアミン、デオキシエピネフリン、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、ヒスタミン、β-フェニルエチルアミン、N-アセチルプトレシン、トリプタミン、n-オクチルアミン、n-ペンチルアミン、キヌラミン、3-メトキシチラミン、またはn-デシルアミン、ヘキシルエタノールアミン、オクトパミン、スペルミン、スペルミジン、N-アセチルスペルミン、またはN-アセチルスペルミジンである請求項1、2、3、4、5、または6に記載の抗異常脂質血症製剤。
【請求項8】
該アミンがベンジルアミン、チラミン、3-フェニル-プロピルアミン、2-(4-フルオロ-フェニル)-エチルアミン、4-フェニル-ブチルアミン、4-フルオロ-ベンジルアミン、2,3-ジメトキシベンジルアミン、または1-ナフタレンメチルアミンである請求項7に記載の抗異常脂質血症製剤。
【請求項9】
該アミンが3-フェニル-プロピルアミン、2-(4-フルオロ-フェニル)-エチルアミン、4-フェニル-ブチルアミン、4-フルオロ-ベンジルアミン、2,3-ジメトキシベンジルアミン、または1-ナフタレンメチルアミンである請求項7に記載の抗異常脂質血症製剤。
【請求項10】
セミカルバジド感受性アミンオキシダーゼまたは他の銅含有アミンオキシダーゼの基質である医薬的に許容されるアミンまたは該アミンの医薬的に許容される塩を投与することにより動物の異常脂質血症を治療または予防する方法。
【請求項11】
さらに、医薬的に許容されるバナジウム(IV)/(V)化合物を投与する工程を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
該アミンおよび該バナジウム化合物が同時、分離、または逐次投与される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該バナジウム化合物がバナデート、パーオキソバナジウム錯体、バナジル塩またはバナジル錯体である請求項10、11、または12に記載の方法。
【請求項14】
該バナジウム化合物がバナデートである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該バナジウム化合物がナトリウムオルソバナデートである請求項11、12、または13に記載の方法。
【請求項16】
該アミンがチラミン、ベンジルアミン、3-フェニル-プロピルアミン、2-(4-フルオロ-フェニル)-エチルアミン、4-フェニル-ブチルアミン、4-フルオロ-ベンジルアミン、2,3-ジメトキシベンジルアミン、1-ナフタレンメチルアミン、デオキシエピネフリン、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、ヒスタミン、β-フェニルエチルアミン、N-アセチルプトレシン、トリプタミン、n-オクチルアミン、n-ペンチルアミン、キヌラミン、3-メトキシチラミン、またはn-デシルアミン、ヘキシルエタノールアミン、オクトパミン、スペルミン、スペルミジン、N-アセチルスペルミン、またはN-アセチルスペルミジンである請求項10、11、12、13、14、または15に記載の方法。
【請求項17】
該アミンがチラミン、ベンジルアミン、3-フェニル-プロピルアミン、2-(4-フルオロ-フェニル)-エチルアミン、4-フェニル-ブチルアミン、4-フルオロ-ベンジルアミン、2,3-ジメトキシベンジルアミン、または1-ナフタレンメチルアミンである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
該アミンが3-フェニル-プロピルアミン、2-(4-フルオロ-フェニル)-エチルアミン、4-フェニル-ブチルアミン、4-フルオロ-ベンジルアミン、2,3-ジメトキシベンジルアミン、または1-ナフタレンメチルアミンである請求項16に記載の方法。
【請求項19】
セミカルバジド感受性アミンオキシダーゼまたは他の銅含有アミンオキシダーゼの基質である医薬的に許容されるアミンまたは該アミンの医薬的に許容される塩、および医薬的に許容される賦形剤を含む、異常脂質血症を治療および/または予防するための医薬組成物。
【請求項20】
さらに医薬的に許容されるバナジウム(IV)/(V)化合物を含む請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
同時、分離、または逐次投与のための、該アミンおよび該バナジウム含有化合物の組み合わせ調製物を含む請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
該バナジウム化合物がバナデート、パーオキソバナジウム錯体、バナジル塩またはバナジル錯体である請求項20または21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
該バナジウム化合物がバナデートである請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
該バナジウム化合物がナトリウムオルソバナデートである請求項20または21に記載の医薬組成物。
【請求項25】
該アミンがチラミン、ベンジルアミン、3-フェニル-プロピルアミン、2-(4-フルオロ-フェニル)-エチルアミン、4-フェニル-ブチルアミン、4-フルオロ-ベンジルアミン、2,3-ジメトキシベンジルアミン、1-ナフタレンメチルアミン、デオキシエピネフリン、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、ヒスタミン、β-フェニルエチルアミン、N-アセチルプトレシン、トリプタミン、n-オクチルアミン、n-ペンチルアミン、キヌラミン、3-メトキシチラミン、またはn-デシルアミン、ヘキシルエタノールアミン、オクトパミン、スペルミン、スペルミジン、N-アセチルスペルミン、またはN-アセチルスペルミジンである請求項19、20、21、22、23、または24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
該アミンがチラミン、ベンジルアミン、3-フェニル-プロピルアミン、2-(4-フルオロ-フェニル)-エチルアミン、4-フェニル-ブチルアミン、4-フルオロ-ベンジルアミン、2,3-ジメトキシベンジルアミン、または1-ナフタレンメチルアミンである請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
該アミンが3-フェニル-プロピルアミン、2-(4-フルオロ-フェニル)-エチルアミン、4-フェニル-ブチルアミン、4-フルオロ-ベンジルアミン、2,3-ジメトキシベンジルアミン、または1-ナフタレンメチルアミンである請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項28】
該アミンが、ヒトを含む哺乳動物の脂質障害を治療または予防するための医薬を製造するための、式:
【化1】

で示される化合物またはその医薬的に許容される溶媒和物(水和物を含む)である、請求項1、2、3、4、5、または6に記載の抗異常脂質血症製剤
[式中、R1、R2、R3、R4、およびR5は、独立してH、OH、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、NR6R7、(CH2)pNR8R9、O(CH2)q-フェニル、CONR10R11、COR12、CF3、OCF3、F、Cl、Br、NO2、またはCH2NHC(=NH)NH2であるラジカルであるか、または
R1とR2が一緒になって融合ベンゼンを有する環を形成する;
pおよびqは1〜3の整数である;
R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12は、独立してH、(C1-C4)-アルキルまたはフェニルまたは他のアリールであるラジカルである;
nは1〜3の整数である;
xは0〜2の整数である;
yは4〜6の整数である;
ただし、x+y=6である。]。
【請求項29】
該式(I)の化合物において、R1、R2、R3、R4、およびR5が、独立してH、(C1-C6)アルキル、OH、(C1-C6)アルコキシ、O(CH2)qPh、CF3、OCF3、F、Cl、Br、およびNO2であるラジカルであるか、または
R1およびR2が一緒になって融合ベンゼンを有する環を形成する
請求項28に記載の抗異常脂質血症製剤。
【請求項30】
該式(I)の化合物においてn=1である、請求項28に記載の抗異常脂質血症製剤。
【請求項31】
該式(I)の化合物においてx=0およびy=6である、請求項28に記載の抗異常脂質血症製剤。
【請求項32】
該式(I)の化合物がヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデート(V)2水和物である請求項31に記載の抗異常脂質血症製剤。
【請求項33】
該式(I)の化合物においてx=1およびy=5である、請求項28に記載の抗異常脂質血症製剤。
【請求項34】
該式(I)の化合物がヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデート(V)2水和物である請求項33に記載の抗異常脂質血症製剤。
【請求項35】
該式(I)の化合物においてx=2およびy=4である、請求項22に記載の抗異常脂質血症製剤。
【請求項36】
該式(I)の化合物がヘキサキス(ベンジルアンモニウム)デカバナデート(V)2水和物である請求項35に記載の抗異常脂質血症製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−524169(P2008−524169A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546080(P2007−546080)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056888
【国際公開番号】WO2006/064061
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(507005001)ジェンメディカ・セラピューティックス・ソシエダッド・リミターダ (6)
【氏名又は名称原語表記】GENMEDICA THERAPEUTICS SL
【Fターム(参考)】