説明

異物フィルタ及びバルク車用ホース

【課題】デュラムセモリナのような比較的粒子径が大きな粉粒体を搬送する場合であっても、食品用の粉粒体が通過する際の抵抗が小さくかつ高強度な異物フィルタを提供する。
【解決手段】食品用の粉粒体を搬送するための空気搬送配管の流路内に配設され、前記粉粒体に含まれる異物を除去する異物フィルタ12であって、外枠は、前記粉粒体の流入側の平面部14aの内周側の縁部が所定の曲面形状であり、粉粒体の流入側の平面部の外周側の縁部14c、流出側の平面部の内周側の縁部及び外周側の縁部が略直角形状であり、前記粉粒体の流れ方向における前記隔壁の幅が粉粒体の流れ方向における前記外枠の幅よりも小さく、隔壁は前記粉粒体の流入側及び流出側に所定の曲面を有し、前記粉粒体の流入側及び流出側において、前記隔壁の前記曲面の頂部の位置が前記外枠の前記平面部の位置よりも前記粉粒体の流れ方向における内側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用の粉粒体内の異物を除去する異物フィルタ及び該異物フィルタを備えたバルク車用ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、デュラムセモリナや小麦粉等の粉粒体をユーザの工場まで輸送する際には、その粉粒体を袋詰めして輸送する方法や、粉粒体をそのままの状態でバルク車のタンク内に積載して輸送する方法が用いられている。このバルク車による輸送方法においてバルク車から粉粒体を荷降ろしする際には、バルク車にバルク車用ホースの一端を接続し、バルク車用ホースの他端を輸送先のサイロに付設した配管の受入口に接続した後、バルク車のタンクを傾け、タンク内に圧縮空気を送り込みバルク車用ホースを介して粉粒体をサイロに搬送している。
【0003】
ところで、バルク車用ホースを用いて粉粒体を搬送する場合、万一バルク車のタンク内に異物が紛れ込んでもその異物が搬送先のサイロ内に送り込まれることがないよう、バルク車のタンクに接続するバルク車用ホースの流入口に配置される異物除去装置が存在する(例えば、特許文献1参照)。この異物除去装置は、筒状の空間が形成された外枠と、この外枠により形成された空間を流路の流れ方向に格子状に区画する隔壁とを備え隔壁により粉粒体中の異物を除去している。
【0004】
また、食用粉粒体搬送用ホースに設置されるフィルタとして四角柱の貫通孔が格子状に形成されたフィルタが存在する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−82961号公報
【特許文献2】特開2009−18936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上述の異物除去装置においては、デュラムセモリナのような比較的粒子径が大きな粉粒体を搬送する場合、粉粒体が流入する側の外枠の内周縁部や外枠と隔壁の接続部分等などにおいて粉粒体が通過する際の抵抗が大きくなり粉粒体がスムーズに通過せず隔壁に付着し目詰まりを起こす恐れがあった。
【0007】
本発明の目的は、デュラムセモリナのような比較的粒子径が大きな粉粒体を搬送する場合であっても、食品用の粉粒体が通過する際の抵抗が小さくかつ高強度な異物フィルタ及び該異物フィルタを備えたバルク車用ホースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の異物フィルタは、食品用の粉粒体を搬送するための空気搬送配管の流路内に配設され前記流路を通過する前記粉粒体に含まれる異物を除去する異物フィルタであって、前記粉粒体の流入側及び流出側に所定の幅の平面部を有する環形状の外枠と、前記外枠によって形成された空間を格子状に区画する隔壁とを備え、前記外枠は、前記粉粒体の流入側の平面部の内周側の縁部が所定の曲面形状であり、前記粉粒体の流入側の平面部の外周側の縁部、前記粉粒体の流出側の平面部の内周側の縁部及び外周側の縁部が略直角形状であり、前記粉粒体の流れ方向における前記隔壁の幅が前記粉粒体の流れ方向における前記外枠の幅よりも小さく、前記隔壁は、前記粉粒体の流入側及び流出側に所定の曲面を有し、前記粉粒体の流入側及び流出側において、前記隔壁の前記曲面の頂部の位置が前記外枠の前記平面部の位置よりも前記粉粒体の流れ方向における内側に位置していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の異物フィルタは、前記外枠の内周面と前記隔壁の端部との接続部が所定の凹状曲面であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の異物フィルタは、前記粉粒体の流れ方向における前記隔壁の幅が前記粉粒体の流れ方向に垂直な方向の前記隔壁の幅と同じか、それより大きいことが必要であるが、それより大きいことが好ましい。
【0011】
また、本発明の異物フィルタは、金属製の円板部材を一体成型して、前記外枠と前記隔壁とに機械加工することにより形成されたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明のバルク車用ホースは、前記粉粒体を搬送するバルク車のタンクに着脱自在に連結して使用するジョイント部を有するバルク車用ホースであって、前記ジョイント部の流入口の断面に本発明の異物フィルタを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、デュラムセモリナのような比較的粒子径が大きな粉粒体を搬送する場合であっても、食品用の粉粒体が通過する際の抵抗が小さくかつ高強度な異物フィルタ及び該異物フィルタを備えたバルク車用ホースを提供することができる。すなわち、デュラムセモリナのような比較的粒子径が大きな粉粒体を搬送する場合であっても、粉粒体が流入する側の外枠の内周縁部や外枠と隔壁の接続部分等などにおいて粉粒体が通過する際の抵抗が大きくなって、粉粒体がスムーズに通過せず隔壁に付着し目詰まりを起こす恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係るバルク車用ホースのジョイント部の斜視図である。
【図2】実施の形態に係るバルク車用ホースのジョイント部の断面図である。
【図3】実施の形態に係る異物フィルタを粉粒体の流入側から視た図である。
【図4】実施の形態に係る異物フィルタを粉粒体の流出側から視た図である。
【図5】実施の形態に係る異物フィルタの図3におけるA−A断面図である。
【図6】実施の形態に係る異物フィルタの図5におけるD部の拡大図である。
【図7】実施の形態に係る異物フィルタの図3におけるB−B断面図である。
【図8】実施の形態に係る異物フィルタの図3におけるC部の拡大図である。
【図9】実施の形態に係る異物フィルタの隔壁の他の断面形状図を示す図である。
【図10】実施の形態に係る異物フィルタの隔壁の他の断面形状図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る異物フィルタ及びバルク車用ホースについて説明する。図1は本発明の実施の形態に係るバルク車用ホースのジョイント部の斜視図、図2は本発明の実施の形態に係るバルク車用ホースのジョイント部の断面図である。
【0016】
バルク車のタンクに積載されたデュラムセモリナの粉粒体をサイロに排出する際に空気圧送式排出法を用いる場合には、バルク車のタンク排出口30とサイロとの間がバルク車用ホース2により接続され、バルク車のタンクを傾け更にコンプレッサやブロア駆動による圧縮空気をバルク車のタンク内に送入し、タンク内を所定の圧力に加圧した後、圧縮空気によりデュラムセモリナの粉粒体をバルク車外に約10〜30m/secの空気速度で圧送排出する。排出された粉粒体はバルク車用ホース2を介して搬送され、サイロへ投入される。
【0017】
図1及び図2に示すように、バルク車のタンク排出口30とバルク車用ホース2とのジョイント部は、バルク車用ホース2のラッパ状部4と、このラッパ状部4を円筒形状のゴムパッキン6を介してバルク車のタンク排出口30に連結するカップリング8とで構成されている。ここでカップリング8は、リングを二つ割にした二つ割リングであり、図2に示すようにその断面が山形をなしている。ゴムパッキン6を介してバルク車のタンク排出口30とバルク車用ホース2のラッパ状部4とを連結する際には、ゴムパッキン6の一方の端部がバルク車用ホース2のラッパ状部4内に挿入され、他方の端部がタンク排出口30の拡張部内に挿入される。そしてカップリング8の内側においてバルク車用ホース2のラッパ状部4の拡張部とタンク排出口30の拡張部とを突き合わせて、二つ割リングを締め付けて両者を連結する。なお、ラッパ状部4には、直径約100〜120mmのゴムホース部10が接続されている。ゴムホース部10の他端にはデュラムセモリナの粉粒体を受入れるサイロに付属する配管と接続するカップリング(図示せず)が備えられている。
【0018】
バルク車用ホース2のラッパ状部4の流路内には、後述の金属製の異物フィルタ12が設置されている。即ち、ラッパ状部4の内壁には、平面部を有するリング状のフランジ部4aが形成されており、このフランジ部4aに異物フィルタ12の外枠14の粉流体の排出側の平面部14d(図4参照)が押し当てられて設置されている。
【0019】
次に図3〜図8を参照して異物フィルタ12について説明する。ここで図3は異物フィルタ12を粉粒体の流入側から視た図、図4は異物フィルタ12を粉粒体の流出側から視た図、図5は異物フィルタ12の図3におけるA−A断面図、図6は異物フィルタ12の図5のD部の拡大図、図7は異物フィルタ12の隔壁16の図3におけるB−B断面図、図8は異物フィルタ12の図3におけるC部の拡大斜視図である。
【0020】
図3、図4及び図6に示すように、異物フィルタ12は、環形状の外枠14と、外枠14によって形成された空間を格子状に区画する隔壁16とを備えている。外枠14の粉粒体の流入側には所定の幅(4.0mm〜5.0mm)を有する平面部14aが形成されており、平面部14aの内周側の縁部14bが所定の曲面形状(R1mm)を有し、平面部14aの外周側の縁部14cが略直角形状を有している。また、外枠14の粉粒体の流出側には所定の幅(5.0mm〜6.0mm)を有する平面部14dが形成されており、平面部14dの内周側の縁部14e及び外周側の縁部14fが略直角形状を有している。
【0021】
図5及び図7に示すように、粉粒体の流れ方向における隔壁16の幅X(3.0mm〜6.0mm)は、粉粒体の流れ方向における外枠14の幅Y(9mm〜12mm)よりも小さく形成されている。また隔壁16は、粉粒体の流れ方向における幅Xが、粉粒体の流れ方向に垂直な方向の幅Z(2.0mm〜3.0mm)よりも大きく、隔壁16の断面は、粉流体の流れ方向に長辺を有する長方形の粉粒体の流入側及び流出側に所定の曲面16aを形成した形状を有している。なお隔壁16の断面は、粉粒体の流れ方向を長手方向とする紡錘形状であってもよい。
【0022】
図5及び図8に示すように隔壁16は、粉粒体の流入側及び流出側において、隔壁16の曲面16aの頂部の位置が外枠14の平面部14a,14dの位置よりも外枠14の粉粒体の流れ方向における内側に位置している。また、隔壁16の端部はそれぞれ外枠14の内周面に接続されているが、隔壁16の端部と外枠14の内周面との接続部には所定の凹状曲面(R1mm)が形成されている。
【0023】
なお、異物フィルタ12は、一枚の金属製の円板部材を一体成型して外枠14と隔壁16に機械加工することにより形成されたものである。
【0024】
バルク車のタンク排出口30から排出されたデュラムセモリナの粉粒体は、バルク車用ホース2を介してサイロへ投入される。ここで万一デュラムセモリナの粉粒体に異物が混入した場合には、異物はバルク車用ホース2のラッパ状部4の流路内に設置された異物フィルタ12により除去される。
【0025】
本発明によれば、デュラムセモリナのような比較的粒子径が大きな粉粒体を搬送する場合であっても、食品用の粉粒体が通過する際の抵抗が小さくかつ高強度な異物フィルタ及び該異物フィルタを備えたバルク車用ホースを提供することができる。即ち、外枠14は、粉粒体の流入側において平面部14aの内周側の縁部14bが所定の曲面形状を有しているため、粉粒体が通過する際の抵抗を小さくすることができる。また、隔壁16は、粉粒体の流入側及び流出側に所定の曲面16aを形成した形状を有しているため、粉粒体が隔壁16を通過する際の抵抗を小さくすることができる。
【0026】
更に、隔壁16の粉粒体の流れ方向における幅Xが、粉粒体の流れ方向における外枠14の幅Yよりも小さく形成され、粉粒体の流入側及び流出側における曲面16aの頂部の位置が外枠14の平面部14a及び平面部14dの位置よりも内側に位置するため、外枠14と隔壁16の接続部分に、隔壁16の粉粒体の流れ方向における幅Xを小さくすることなく、所定の凹状曲面を形成することができる。従って、異物フィルタ12の強度を低下させることなく、粉粒体が異物フィルタ12を通過する際の抵抗を小さくすることができる。
【0027】
従って、デュラムセモリナのような比較的粒子径が大きな粉粒体を搬送する場合であっても、粉粒体が流入する側の外枠の内周縁部や外枠と隔壁の接続部分等などにおいて粉粒体が通過する際の抵抗が大きくなって、粉粒体がスムーズに通過せず隔壁に付着し目詰まりを起こす恐れがない。
【0028】
また、隔壁16の断面において、粉粒体の流れ方向における幅Xが、粉粒体の流れ方向に垂直な方向の幅Zよりも大きいため、高強度な異物フィルタ12を実現することができる。
【0029】
また、外枠14は、粉粒体の流出側における平面部14dの内周側の縁部14e及び外周側の縁部14fが略直角形状を有しているため、異物フィルタ12とバルク車用ホース2のラッパ状部4のフランジ部4aとの接触面積を大きくすることができ、異物フィルタ12をフランジ部4aに確実に固定することができる。
【0030】
なお、上述の実施の形態においては、デュラムセモリナの粉粒体をバルク車からサイロへ排出する場合を例に説明したが、小麦粉等の他の食品用の粉粒体を排出する際に、本発明の異物フィルタ12及びバルク車用ホース2を用いてもよい。
【0031】
また、上述の実施の形態においては、図7に示すように、隔壁16の断面において、粉粒体の流れ方向における幅Xが、粉粒体の流れ方向に垂直な方向の幅Zよりも大きい場合を例に説明したが、図9に示すように、隔壁16の断面において粉粒体の流れ方向における幅Xと、粉粒体の流れ方向に垂直な方向の幅Zが略同一の円形であってもよい。また、図10に示すように、隔壁16の断面において粉粒体の流れ方向における幅Xと、粉粒体の流れ方向に垂直な方向の幅Zが略同一の四隅に丸みをつけた四角形であってもよい。
【0032】
また、上述の実施の形態においては、異物フィルタ12をバルク車用ホース2の流路内に設置する場合について説明したが、バルク車用ホース2に限らず他の空気搬送配管内に設置してもよい。
【符号の説明】
【0033】
2…バルク車用ホース、4…ラッパ状部、6…ゴムパッキン、8…カップリング、10…ゴムホース部、12…異物フィルタ、14…外枠、14a…平面部、14b…縁部、14c…縁部、14d…平面部、14e…縁部、14f…縁部、16…隔壁、16a…曲面、30…タンク排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品用の粉粒体を搬送するための空気搬送配管の流路内に配設され前記流路を通過する前記粉粒体に含まれる異物を除去する異物フィルタであって、
前記粉粒体の流入側及び流出側に所定の幅の平面部を有する環形状の外枠と、
前記外枠によって形成された空間を格子状に区画する隔壁とを備え、
前記外枠は、前記粉粒体の流入側の平面部の内周側の縁部が所定の曲面形状であり、前記粉粒体の流入側の平面部の外周側の縁部、前記粉粒体の流出側の平面部の内周側の縁部及び外周側の縁部が略直角形状であり、
前記粉粒体の流れ方向における前記隔壁の幅が前記粉粒体の流れ方向における前記外枠の幅よりも小さく、
前記隔壁は、前記粉粒体の流入側及び流出側に所定の曲面を有し、前記粉粒体の流入側及び流出側において、前記隔壁の前記曲面の頂部の位置が前記外枠の前記平面部の位置よりも前記粉粒体の流れ方向における内側に位置していることを特徴とする異物フィルタ。
【請求項2】
前記外枠の内周面と前記隔壁の端部との接続部は所定の凹状曲面であることを特徴とする請求項1に記載の異物フィルタ。
【請求項3】
前記粉粒体の流れ方向における前記隔壁の幅は、前記粉粒体の流れ方向に垂直な方向の前記隔壁の幅と同じ、またはそれより大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の異物フィルタ。
【請求項4】
金属製の円板部材を一体成型して前記外枠と前記隔壁とに機械加工することにより形成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の異物フィルタ。
【請求項5】
前記粉粒体を搬送するバルク車のタンクに着脱自在に連結して使用するジョイント部を有するバルク車用ホースであって、
前記ジョイント部の流入口の断面に請求項1〜4の何れか一項に記載の異物フィルタを備えることを特徴とするバルク車用ホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−20812(P2012−20812A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158362(P2010−158362)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(301049777)日清製粉株式会社 (128)
【Fターム(参考)】