説明

異種刺激依存性イオンチャンネル及びその使用方法

in vivo又はin vitroで遺伝子指定した標的細胞(又は標的細胞の集団)を人工的に活性化させる方法及び組成物は、異種刺激依存性イオンチャンネルの誘発を利用して細胞を活性化させる。刺激依存性イオンチャンネルは、適切にはTRPV1、TRPM8又はP2X2である。イオンチャンネルの開口又は「作動」をもたらす刺激は、物理的刺激又は化学的刺激であってよい。物理的刺激は、熱、又は機械的な力によって与えることができ、一方、化学的刺激は、適切にはTRPV1用のカプサイシン又はP2X2用のATPなどのリガンド、或いは「ケージ化リガンド」、例えば感光性リガンド誘導体であってよく、その場合、光の形の物理的シグナルは、化学的シグナルを与えるために使用する。細胞の選択的な活性化は、ニューロン及び神経内分泌マッピング並びに薬物スクリーニングを含む様々な用途に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる2002年5月31日出願の米国仮出願第60/384670号及び2003年1月21日出願の第60/441452号の恩典を請求する。
【0002】
本出願は、異種刺激依存性イオンチャンネル、及び細胞中で発現した場合にこうしたチャンネルを誘発してそれらの細胞を選択的に活性化させることに関する。
【背景技術】
【0003】
細胞の活性化は、細胞の原形質膜間の電位の静止(又は分極)値から励起(又は脱分極)値へのシフト、或いはカルシウムイオンの細胞内濃度の静止(又は基底)値から高い値への増大として定義される。膜電位シフトによる細胞活性化は、例えば、ニューロンの活性;知覚伝達;骨格、心臓、及び平滑筋の収縮;並びに膵臓のβ細胞によるグルコースセンシングの基礎をなしている。カルシウムイオン濃度の増大による細胞活性化は、例えば、外分泌、内分泌、及びパラ分泌;化学神経伝達;骨格、心臓、及び平滑筋の収縮;細胞死;並びにT細胞活性化の基礎をなしている。これらのいずれか又はすべてのプロセスを選択的に調節できることには、生物学的調査、薬物発見及び医薬品に対して重要な意味がある。
【0004】
機械論的には、細胞の活性化は、物理的又は化学的刺激に応じて穴を開閉する(「依存性」)膜貫通イオンチャンネルによってもたらされる。イオンチャンネルを作動する既知の物理的刺激には、膜電位の変化(電位依存性チャンネル)、機械的応力(機械感覚性チャンネル)、又は温度(温度感受性チャンネル)がある。イオンチャンネルを作動する既知の化学的刺激には、細胞内メッセンジャー濃度の変化(例えば、カルシウム及び環状ヌクレオチド依存性チャンネル)又は細胞外シグナル伝達分子(例えば、イオンチャネル型神経伝達物質受容体)がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、in vivo又はin vitroで遺伝子指定した標的細胞(又は標的細胞の集団)を人工的に活性化させる方法及び組成物を提供する。この方法は、異種刺激依存性イオンチャンネルの誘発を利用して細胞を活性化させる。刺激依存性イオンチャンネルは、適切にはTRPV1、TRPM8又はP2Xである。イオンチャンネルの開口又は「作動」をもたらす刺激は、物理的刺激又は化学的刺激であってよい。物理的刺激は、熱、又は機械的な力によって与えることができ、一方、化学的刺激は、適切にはTRPV1用のカプサイシン又はP2X用のATPなどのリガンド、或いは「ケージ化リガンド」、例えば感光性リガンド誘導体であってよく、その場合、光の形の物理的シグナルは、化学的シグナルを与えるために使用する。
【0006】
本発明は、その細胞又は細胞群が刺激依存性イオンチャンネルを発現し、したがってそれらのチャンネルに特異的な物理的刺激又は化学的リガンドによって活性化され得る遺伝子改変した動物、好ましくはマウスを生成する方法を提供する。こうした動物は、その細胞が一過的に刺激依存性イオンチャンネルを発現するノックイン、トランスジェニック、又は非トランスジェニック動物であってよい。
【0007】
本発明は、遺伝子改変した動物又はこれらの動物由来の外植した組織中で異種刺激依存性イオンチャンネルを発現している細胞を活性化する方法を提供する。本発明はまた、外植した組織又は細胞培養物中で異種刺激依存性イオンチャンネルを発現しているトランスフェクトした又は感染した細胞を活性化させる方法を提供する。さらに、本発明は、こうした任意の細胞活性化の形態学的、生理学的、生化学的、及び遺伝学的効果をモニタリングする方法を提供する。
【0008】
本発明は、特定の細胞を活性化させ、外植した組織又は動物内の下流の細胞の応答をモニタリングすることによってニューロン経路をマッピングする方法を提供する。こうした経路には、神経伝達物質経路、細胞シグナル伝達経路、及びニューロン回路が含まれていてよい。
【0009】
本発明は、無作為に神経細胞を活性化させ、外植した組織又は動物内の下流の細胞の応答をモニタリングすることによって新規のニューロン経路を特定する方法を提供する。こうした経路には、神経伝達物質経路、細胞シグナル伝達経路、既知のニューロン回路及び今まで知られていなかったニューロン回路が含まれていてよい。
【0010】
本発明は、その活性化により特定の生理学的、行動、又は疾患状態がもたらされる細胞を特定する方法を提供する。本発明は、さらにその活性化により特定の生理学的、行動、又は疾患状態の緩和或いは応答がもたらされる細胞を特定する方法を提供する。こうした状態又は応答には、外分泌、内分泌及びパラ分泌;骨格、心臓、及び平滑筋の収縮;膵臓のβ細胞によるグルコースセンシング、細胞死、及びT細胞活性化;痛みの感覚及び知覚、運動、性行動、報酬追求及び嗜癖、注意、攻撃、抑うつ、就眠、栄養補給、飢餓、認識、情動、学習、記憶、ホメオスタシスなどが含まれていてよい。
【0011】
本発明は、特定タイプの細胞の純粋な集団の特定及び単離において、ノックイン、トランスジェニック、又は非トランスジェニック非ヒト生物及びこうした生物から外植した組織中で活性化細胞を利用する方法を提供する。本発明はさらに、こうした単離細胞を提供する。こうした細胞は、例えば、特定の真核組織又は組織の領域に由来していてよい。この真核細胞又は組織は、好ましくは哺乳動物、例えばマウス、ラット又はヒトであるが、それだけには限らないが、線虫(C.elegans)、ゼブラフィッシュ又はショウジョウバエを含む他のタイプであってもよい。本発明はさらに、こうした単離細胞を、薬物スクリーニングアッセイ、薬理学的、生化学的、生理学的、形態学的、及び遺伝子発現アッセイなどのアッセイで使用する方法を提供する。単離細胞は、刺激依存性イオンチャンネルを発現していてよく、或いはこれらは同じタイプの未改変細胞であってよい。刺激依存性イオンチャンネルを発現している細胞は、さらに、刺激又は非刺激状態であってよい。
【0012】
本発明は、刺激依存性イオンチャンネルに使用できる新規の改変(「ケージ化」)リガンドを提供する。改変は、リガンドへの感光結合によって付着した感光性群からなり、光によって非ケージ化するまでリガンドを不活性にする。特に、本発明は、改変(ケージ化)カプサイシンを提供する。さらに、本発明は、メントール及びイシリン(icilin)を含む他の化学的リガンドをケージ化し、それによって光によって非ケージ化するまでそれらを不活性にする方法を提供する。
【0013】
本発明は、ケージ化リガンドを用いて、選択した瞬間及び/又は繰り返して選択した間隔で刺激依存性イオンチャンネルを刺激する方法を提供する。さらに、本発明は、真核生物又はこうした生物の組織内の選択した位置の刺激依存性イオンチャンネルを刺激する方法を提供する。特に、本発明は、選択した瞬間又は位置で光を用いてケージ化リガンドを非ケージ化し、それによって機能的リガンドを遊離し、それらのイオンチャンネルを発現する近接細胞又は細胞群を活性化させることによってイオンチャンネルを刺激する方法を提供する。
【0014】
本発明は、異種刺激依存性イオンチャンネルを非ヒト生物の細胞中に導入するのに有用な発現ユニットを提供する。こうした発現ユニットにより、刺激依存性イオンチャンネルの発現をある指定したタイプ又はクラスの細胞に制限することができ;発現ユニットにより、刺激依存性イオンチャンネルを発現すべき期間に生物の発生のタイミング又は時期の制御を可能にすることができる。
【0015】
本発明はさらに、遺伝子療法によってヒトの特定の生理学的、行動、又は疾患状態或いは応答を治療する目的で異種刺激依存性イオンチャンネルをヒト細胞中に導入するのに有用な発現ユニットを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、異種刺激依存性イオンチャンネルの誘発を利用して細胞を感作する真核細胞を活性化させる方法を提供する。本出願では、「細胞」という用語は、細胞培養物、外植した器官又は構造中の生細胞及び生物中の細胞を意味する。真核細胞は、好ましくは哺乳動物、例えばマウス、ラット又はヒトであるが、それだけには限らないが、線虫、ゼブラフィッシュ又はショウジョウバエを含む他のタイプであってもよい。
【0017】
本発明は、刺激を加えることにより、最適な時間及び場所で選択的に制御可能な刺激によって直接誘発されるイオンチャンネルを利用した種々の応用例で異種刺激依存性イオンチャンネルを利用する方法を提供する。本出願の明細書及び特許請求の範囲では、「刺激を加える」という用語は、所与の形質導入細胞の正常な環境においてこうした介入がない場合に存在しない刺激のヒト介入による適用を意味する。したがって、この刺激は、通常は存在しない、即ち、観察可能な刺激に必要とされるレベルで通常存在しない化学的リガンド、或いは局在加熱又は冷却などの通常存在しない物理的刺激への曝露であってよい。したがって、本発明は、例えばHIV−1ゲノムによってコードされるカルシウムチャンネルなどの内因性又は異種イオンチャンネルと相互作用する薬物を評価するためのスクリーニング手順について記載した米国特許第6548272号及び対応するPCT公開WO 00/06289に開示されているような方法と異なる。それとは対照的に、本発明は、異種刺激依存性イオンチャンネル及びそれらの同族刺激を人工的に細胞を活性化させるツールとして使用し、薬物と異種イオンチャンネルそれら自体との相互作用よりも特定の細胞型の活性又はこうした活性の結果に影響する薬物を評価するためのスクリーニング手順を説明する。
【0018】
本出願では、「活性化する」又は「活性化」(或いはある場合には「感作する」又は「感作」)という用語は、イオンチャンネルを誘発した後の細胞からの特定の応答を誘導することを意味する。神経細胞では、この応答は、分極及び/又は脱分極であってよい。他の細胞では、応答は、分泌の開始又は停止、細胞内Ca2+濃度の上昇、収縮又は弛緩(即ち、筋肉又は他の収縮細胞における)、或いは感覚応答であってよい。
【0019】
本出願では、「異種刺激依存性イオンチャンネル」という用語は、活性化するように細胞中で発現され、熱などの物理的刺激、又はチャンネルへのリガンドの結合などの化学的刺激の形で選択的に制御可能な刺激によって直接的に誘発される膜貫通イオンチャンネルを意味する。チャンネルは、細胞の原形質膜及び/又は小胞体(ER)などの細胞内区画の膜上で発現され得る(Liu、Liuら、2003年;Marshall、Owenら、2003年)。
【0020】
本出願では、「誘発する」という用語は、イオンがチャンネルを受動的に通ってより高イオン濃度の領域からより低濃度の領域へ移動することを可能にするための物理的又は化学的刺激とその後のチャンネル開口を意味する。カルシウムの場合では、イオンは、原形質膜を通過して細胞質に、又はERなどの細胞内区画から細胞質に移動することができる。
【0021】
刺激依存性イオンチャンネルは、ヒト介入によって細胞に導入する場合、「異種」と考えられる。イオンチャンネルは、標的細胞と同じ種又は異なる種由来であってよい。異種刺激依存性イオンチャンネルはまた、ヒト介入がない場合に細胞内で天然に存在しないものであることも好ましい。例えば、イオンチャンネルは、そのアミノ酸組成の変化によって改変されて、外来又は人工リガンド、或いは通常必要とされるものより高温又は低温などの異なる物理的刺激によって誘発され得る。刺激依存性イオンチャンネルは、以下の7基準の適用によって本発明で使用するのに選択することが好ましい。理想的なチャンネルは、(i)適当な極性及び/又はイオン組成の電流を通し、(ii)光、熱、機械的な力などの物理的刺激、又は(iii)中枢神経系(特に細胞が活性化されるべき場所は神経細胞である)で神経伝達物質として使用されていない小さな薬物様化学的アゴニストによって直接作動するはずである。チャンネルの(iv)非又は低速脱感作性伝導度は、その(vi)サブユニットが偶数個の膜貫通セグメントを含む(v)モノマー又はホモオリゴマータンパク質によって形成されるはずである。この膜貫通トポロジーは、チャンネルポリペプチドの両端が原形質膜の同一側に現れ、サブユニットを共有結合させマルティマーにしてサブユニットが内因性チャンネルと混合するのを防止することを確実にする。(vii)最後に、チャンネルは、分子を生物学的に不活性にする感光性ブロック基(「ケージ」)で誘導体化できるアゴニストによって作動させることができる。次いで、細胞は、アゴニストの直接適用によって薬理学的に、又は間接的に、例えばケージ化前駆体からのアゴニストの光放出によって光学的に刺激することができる。
【0022】
TRPV1及びTRPM8、即ち末梢神経系の侵害受容性ニューロンによって発現されるバニロイド及びメントール受容体(Caterina、Schumacherら、1997年;McKemy、Neuhausserら、2002年;Peier、Moqrichら、2002年)は、このフィルターにほぼ完全に一致する。両チャンネル及びそれらの主要なアゴニスト(それぞれカプサイシン及びメントールなどの冷却化合物)は、実質的には中枢神経系に存在しない(Caterina、Schumacherら、1997年;McKemy、Neuhausserら、2002年;Peier、Moqrichら、2002年)が、Mezey(Mezey、Tothら、2000年)も参照のこと。両チャンネルは、非選択的、ナトリウム及びカルシウム浸透性ホモテトラマーの役目を果たすと考えられる(Caterina、Schumacherら、1997年;Clapham、Runnelsら、2001年;McKemy、Neuhausserら、2002年;Montell、Birnbaumerら、2002年;Peier、Moqrichら、2002年)。両方とも温度の変化並びに化学的リガンド結合によって誘発することができる。最後に、カプサイシン並びにメントール及びイシリンを含むいくつかの冷却化合物は、感光性ブロック基に対する潜在的なアクセプター部位を含む(図9)。感光性ブロック基のこのようなアクセプターとの会合は、活性リガンドを放出することによって光が間接的な引き金として働く刺激依存性イオンチャンネルをもたらすはずである。
【0023】
P2X、即ちその低速の脱感作(Ding及びSachs、2000年;North、2002年)によって区別されるATP依存性非選択的陽イオンチャンネル(Brake、Wagenbachら、1994年;Valera、Hussyら、1994年)は、イオンチャンネルのTRPスーパーファミリーではなくチャンネルファミリーの候補に相当する。脱分極性電流の選択的に処理可能な供給源としてのP2Xの有用性は、ある中枢シナプスにおける内因性プリン受容体の存在によってある程度限定されているかもしれない(Brake、Wagenbachら、1994年;Valera、Hussyら、1994年;Brake及びJulius、1996年;North、2002年)。それにもかかわらず、P2Xは、全体的に天然アゴニストを欠く人工チャンネル−リガンドの組合せの生成に理想的なプラットフォームを示す。
【0024】
P2XのようなATP依存性イオンチャンネルは、最も単純な既知のチャンネル構築の1つ(Brake、Wagenbachら、1994年;Valera、Hussyら、1994年;Brake及びJulius、1996年;Hille、2001年;North、2002年)、及びその原子構造が相対的に容易に決定できる大きな細胞外リガンド−結合ドメイン(Brake、Wagenbachら、1994年;Valera、Hussyら、1994年;Newbolt、Stoopら、1998年;North、2002年)を持つ。高分解能構造は、ATPへの感受性を無効にするチャンネルのリガンド−結合ドメインにおける変異の設計を導くのに使用することができる(Shah、Liuら、1997年;Bishop、Buzkoら、2000年)。ヌクレオチドリガンドの「第2点」置換(Shah、Liuら、1997年;Bishop、Buzkoら、2000年)により、これらの変異を補完し、機能的な(しかし完全に不自然な)受容体−リガンド対を修復することができる。より標的にしていない、又はさらにはランダムな変異は、天然アゴニストに対する親和性を欠く突然変異種を形成するのに使用することもできる。次いで、潜在的なアゴニスト化合物のライブラリをスクリーニングして、有用な非自然アゴニストを特定することができる。同様の化学的遺伝的手法も、イオン選択性などのイオンチャンネルの導電性を変化させるのに有用である。
【0025】
化学的遺伝的手法は、異種刺激依存性イオンチャンネルのリガンド結合、物理的活性化特性、又は導電性を変化させるのに有用である。例えば、変異体チャンネルは、ナトリウム又はカルシウムイオンの代わりにカリウムイオンを伝導する能力について選択することができる。ニューロン内で発現され、物理的又は化学的刺激によって誘発された場合、こうした変異体イオンチャンネルは、ニューロンを過分極化及び不活性化させるだろう。
【0026】
TRPV1、TRPM8及びP2Xの遺伝子配列は、例えばCaterinaら(Caterina、Schumacherら、1997年)、McKemy(McKemy、Neuhausserら、2002年)、Valeraら(Valera、Hussyら、1994年)、及びBrakeら(Brake、Wagenbachら、1994年)から当技術分野で周知である。この配列はまた、GenBankアクセッション番号AF029310、NM134371及びNM053656で記載されており、ここに添付されている(配列番号:1、2及び3)。
【0027】
TRPV1、TRPM8及びP2Xは、構造特徴並びに作動原理を共有するイオンチャンネルの大きなファミリーのメンバーである。例えばTRPV1に類似のTRPV4は、熱によっても誘発されるが、カプサイシンによって誘発されない(Guler、Leeら、2002年)。さらに、P2Xは、P2Xもそうであるように、ATPによって誘発されるが、より急速に脱感作される(North、2002年)。本発明は、標的細胞中でホモオリゴマーチャンネルを形成するための個々のイオンチャンネル遺伝子の使用並びに特定の生物学的用途に必要とされるような新規な特性をもつ混合ヘテロオリゴマーチャンネル(North、2002年)を形成するためのイオンチャンネル遺伝子の組合せを予測している。したがって、TRPV1、TRPM8及びP2Xは、非限定的な例である。
【0028】
本発明による細胞を活性化させるためには、異種刺激依存性イオンチャンネルをコードする遺伝子配列を標的細胞集団中に導入し、発現させる。この導入は、「ノックイン」動物、好ましくはマウスの形態をとることができ、その場合、動物のゲノム内のROSA26座位(Zambrowicz、Imamotoら、1997年;Soriano、1999年)などの特定の座位への相同置換によって異種刺激依存性イオンチャンネルをコードする遺伝子配列が挿入されているノックイン構造が、発現パターンが既知の内因性配列を分裂、除去、又は追跡しており;その場合、異種刺激依存性イオンチャンネルをコードする遺伝子配列の発現は、ROSA26座位(Zambrowicz、Imamotoら、1997年;Soriano、1999年;Awatramani、Sorianoら、2001年)と同様に、内因性遺伝子の発現を引き起こすプロモーターの制御下にあってよく、その内因性遺伝子の発現パターンに実質的に類似している。刺激依存性イオンチャンネル遺伝子がゲノム中の内因性遺伝子の停止コドンの後ろに挿入されている場合、刺激依存性イオンチャンネル遺伝子は、ECMV(脳心筋炎ウイルス)IRES(Jang、Krausslichら、1988年;Jackson、Howellら、1990年)などのリボソーム内部進入部位(IRES)によって先行されていなければならない。或いは、異種プロモーターと動作可能に結合した刺激依存性イオンチャンネル遺伝子は、動物のゲノム内に相同置換によって挿入することができ、内因性配列を分裂、除去又は追跡しており;その場合、異種刺激依存性イオンチャンネルをコードする遺伝子配列の発現は、異種プロモーターの制御下にあってよく、非トランスジェニック動物中のこのプロモーターと動作可能に結合している遺伝子の発現パターンに実質的に類似している。或いは、刺激依存性イオンチャンネル遺伝子及びそれが動作可能に結合した異種プロモーターは、宿主のゲノム内にランダム(非相同的)に挿入し、「トランスジェニック」動物を形成することができ;その場合、異種刺激依存性イオンチャンネルをコードする遺伝子配列の発現は、異種プロモーターの制御下にあってよく、非トランスジェニック動物中のこのプロモーターと動作可能に結合している遺伝子の発現パターンに実質的に類似している。或いは、プロモーターを欠く刺激依存性イオンチャンネル遺伝子は、宿主のゲノム内にランダム(非相同的)に挿入することができ;その場合、異種刺激依存性イオンチャンネルをコードする遺伝子配列の発現は、挿入部位近くのプロモーターの制御下にあってよく、挿入部位近くの内因性遺伝子の発現パターンに実質的に類似している。或いは、刺激依存性イオンチャンネル遺伝子及びそれが動作可能に結合した異種プロモーターは、ウイルス又は他のベクター中に導入することができる。この目的で使用できるレンチウイルスベクターの例を以下に示す。(トランスジェニック動物を生成し、導入遺伝子発現を制御する方法の概要は、Houdebine(Houdebine、2002年)を参照のこと。)
【0029】
これらすべての場合において、本出願によって、異種刺激依存性イオンチャンネルの発現をある種の定義した細胞型に限定することは、所望の特異性を本質的にもつ細胞特異的又は組織特異的プロモーターの使用によって決まる。こうしたプロモーターの例には:抑制性ニューロンに特異的なGABAデカルボキシラーゼ用のプロモーター(Makinae、Kobayashiら、2000年);どちらもマウス神経冠に特異的なWnt−1用のプロモーター/エンハンサー及びエンドセリン受容体Bプロモーター(Zinyk、Mercerら、1998年;Jiang、Rowitchら、2000年);小胞性グルタミン酸トランスポータープロモーター(Takamori、Rheeら、2001年);小脳のプルキンエ細胞に特異的なカルビンジンプロモーター(Arnold及びHeintz、1997年);非神経細胞系ではなく神経芽細胞腫及び他の神経細胞系中で導入遺伝子を発現するのに使用されているシナプス小胞タンパク質シナプシン1用の2kbプロモーター(Kugler、Meynら、2001年);皮質、小脳及び海馬中のニューロンを優先的に標的にするのに使用されている血小板由来増殖因子B鎖(PDGF B)プロモーター(Georgopoulos、McKeeら、2002年;Rockenstein、Malloryら、2002年);マウス網膜及び脊髄中で導入遺伝子を発現するのに使用されている1.8kb神経細胞特異エノラーゼ(NSE)プロモーター(Sakai、Thomeら、2002年);マウス心臓中で導入遺伝子発現を誘導するのに使用されているミオシン重鎖遺伝子由来の29kbの上流非コーディングDNA(MHCプロモーター/増強)(Matsui、Liら、2002年);網膜神経節細胞層、小脳のニューロン、視床のグリア細胞及び大腿筋のミオサイトをラベルするのに使用されている1.6kbの網膜芽細胞腫遺伝子(RB)プロモーター(Jiang、Guoら、2001年);乳房上皮細胞を標的にするのに使用されている0.9kbの乳清酸性タンパク質(WAP)プロモーター(Ozturk−Winder、Rennerら、2002年);マウス海馬、皮質、小脳及び嗅球中で導入遺伝子を発現するのに使用されている8.5kbのCa2+カルモジュリン依存性プロテインキナーゼIIサブユニット(CaMKII)プロモーター(Jerecic、Schulzeら、2001年);膵島中でヒト成長ホルモンを発現するのに使用されているグルカゴン(Gcg)プロモーター(Yamaoka、Yoshinoら、2002年);膵臓のb細胞中でヒト成長ホルモンを発現するのに使用されているインシュリン(Ins2)プロモーター(Herrera、2000年);マウス心臓細胞に特異的なMyh6プロモーター(Lee、Morleyら、1998年);マウス肝細胞に特異的なLapプロモーター(Lavon、Goldbergら、2000年);並びにマウス小腸細胞に特異的なFabpプロモーター(Saam及びGordon、1999年)がある。
【0030】
別のプロモーター、並びに特定の細胞型及び/又は2成分遺伝子発現系(例えば、転写トランス活性化又は部位特異的DNA組換えを含む)に特異的なプロモーターを決定する技術は、DeFalcoら、(DeFalco、Tomishimaら、2001年);Zemelmanら、(Zemelman及びMiesenbock、2001年);Sandbergら、(Sandberg、Yasudaら、2000年);Lewandoski、(Lewandoski、2001年);及びStanfordら、(Stanford、Cohnら、2001年)に開示されている。
【0031】
細胞型特異的プロモーターの使用に代わる方法は、Cre−lox系などの細胞型特異性をもたらす多成分発現系の使用である(Hoess及びAbremski、1984年;Hoess及びAbremski、1985年)。Cre−lox系では、一般的なプロモーター(動物の全体にわたって遺伝子発現を支持するもの)を使用するが、それは発現が通常起こらないように、loxP−stop−loxP領域によって、例えば、異種刺激依存性イオンチャンネルをコードする遺伝子配列と分離されている。「stop」配列は、転写又は翻訳「stop」配列であってよい。次いで、細胞特異的又は組織特異的プロモーターと動作可能に結合した細菌Creタンパク質をコードする遺伝子配列を含む第2の配列を導入する。そのCreタンパク質が定義された細胞のサブセット中で発現される場合、それは、loxP部位の間のstop配列を切除するように働き、したがってそれらの細胞中で刺激依存性イオンチャンネル遺伝子などの異種遺伝子の発現を活性化させる。loxP−stop−loxPカセットを用いたトランスジェニック又はノックイン動物への第2のDNA配列の導入及び一般的なプロモーターとの結合は、ウイルス又は別のベクターを用いて一過的に行うことができる。或いは、子孫がすべての細胞中のloxP−stop−loxPカセット(親1由来)及びそれらの細胞のサブセット(親2由来)中のstopを切除するためのCreを有し、刺激依存性イオンチャンネル遺伝子などの異種遺伝子の定義された発現パターンをもたらすように、2匹のトランスジェニック又はノックイン動物を交尾させてもよい(この方法の例は、Srinivas(Srinivas、Watanabeら、2001年)を参照のこと)。
【0032】
異種刺激依存性イオンチャンネルの発現は、誘導性プロモーター、即ち、外部シグナルに対して選択した時間に作動させ停止させることができるものを用いて時間的に制御することもできる。こうしたプロモーターは、ステロイド、抗生物質、4−OHタモキシフェン、及び重金属に応答することが周知である(Hofmann、Russellら、1988年;Lewandoski、2001年;Vallier、Mancipら、2001年;Bex、Vooijsら、2002年;Gossen及びBujard、2002年;Roscilli、Rinaudoら、2002年)。
【0033】
ベクターを用いて異種刺激依存性イオンチャンネルを導入する目的で、本発明は、有用な発現ユニットを提供している。本出願では、「発現ユニット」という用語は発現ユニットによってコードされる異種タンパク質又はペプチドの発現をもたらす、ウイルスベクター、プラスミドなどを意味する。この発現は、発現ユニットが標的細胞のゲノム内に組み込まれた場合、又は発現ユニットから直接起こり得る。各発現ユニットは、機能的刺激依存性イオンチャンネルをコードする配列;並びに標的細胞中のイオンチャンネルの発現をもたらすのに有効なプロモーター及び細胞型特異的及び/又は時間的発現調節要素を含む。発現調節要素は、プロモーターと同一又はプロモーターと別であってよく、特定のタイプ又は特徴の細胞内及び/又は指定の時間を除き、イオンチャンネルの発現を制限するのに有効である。細胞型特異的プロモーター及び他の調節要素の例は、上記で論じられている。
【0034】
本発明の発現ユニットは、別の配列も含むことができる。例えば、以下で論じているプラスミドにおいて、プラスミドは、2つの遺伝子を相前後して保有している:第1の遺伝子は、刺激依存性イオンチャンネル(TRPV1(Caterina及びJulius、2001年)、TRPM8(McKemy、Neuhausserら、2002年)、又はP2X(Valera、Hussyら、1994年))をコードし、プロモーター及び適切な発現調節要素と動作可能に結合しており、第2の遺伝子は、GAP43−EGFP(膜関連変異型緑色蛍光タンパク質)(Moriyoshi、Richardsら、1996年)をコードし、IRES(リボソーム内部進入部位)に先行されたトランスフェクションマーカーとして働く。こうしたトランスフェクションマーカー(例えば、GFP、EGFP、DsRed、DsRed2を含む蛍光タンパク質又はlacZ及びβラクタマーゼを含む酵素)は、細胞の選択的活性化における異種刺激依存性イオンチャンネルの機能に必要とされないが、トランスフェクション及び異種タンパク質発現の程度の確認並びにFACS(蛍光活性化細胞選別機)によって感作細胞を発見及び単離する能力を含む他の目的に、以下で論じているin vitro用途で使用するのに好都合である。必要に応じて組み込む可能性がある他の別の配列には、それだけには限らないが、トランスフェクトした及びトランスフェクトされなかった細胞の混合集団からのトランスフェクトした細胞の選択を容易にする選択マーカー、例えばグルタミンシンセターゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、又はジヒドロ葉酸レダクターゼ、並びに細胞が特定物質による攻撃を受けやすくなり、それによってトランスフェクトした細胞の制御された排除を可能にする自殺遺伝子がある。細胞活性の遺伝子をコードしたレポーターも発現ユニットに含むことができる。例えば、細胞活性化を光学的に検出可能にするタンパク質をコードする遺伝子配列は、発現ユニット中に適切に含まれている。例には、synapto−pHluorin、cameleon、camgaroo、pericam、G−CaMP、及びclomeleonがある。(Miyawaki、Llopisら、1997年;Miesenbock、De Angelisら、1998年;Miyawaki、Griesbeckら、1999年;Kuner及びAugustine、2000年;Nagai、Sawanoら、2001年;Nakai、Ohkuraら、2001年;Sankaranarayanan及びRyan、2001年;Zemelman及びMiesenbock、2001年;Shimozono、Fukanoら、2002年)。
【0035】
ノックイン又はトランスジェニック動物、好ましくはマウスを形成するための異種遺伝子配列の導入に関する一般的な手順は、よく知られており、本発明による細胞/動物の作成に容易に適用している(トランスジェニック法の概説は、Houdebine(Houdebine、2002年)及びHoganら(Hogan、Beddingtonら、1994年)を参照のこと)。これらの技術には、それだけには限らないがトランスフェクション、ウイルス感染及び微量注入を含む少なくとも一過性の発現をもたらす任意の方法があるが、それだけには限定されない。局部的な遺伝子発現を実現するためのウイルスベクターを用いたマウスの注入は、Watsonら(Watson、Kobingerら、2002年)、Bainbridge(Bainbridge、Stephensら、2001年)、Gusella(Gusella、Fedorovaら、2002年)、及びFollenziら(Follenzi、Sabatinoら、2002年)に記載されている。マウスのコレクションは周知で(http://www.mshri.on.ca/nagy/Cre−pub.html)、市販されており、そのタンパク質マーカー又はCreタンパク質は、細胞型特異的プロモーターの使用によって異なるタイプの細胞中で選択的に発現される。不足しているのは、特定の細胞型を活性化させるためのこの選択的発現の利用法である。異種刺激依存性イオンチャンネルを既に確認されている細胞の集団に入れるのに既存の細胞型特異的発現技術を使用することを可能にすることによって、本発明をこの有用性から発展させる。本発明の別の利益は、水疱性口内炎ウイルス(VSV−G)の外被コートタンパク質を用いて偽型化したウイルスベクター、好ましくはレンチウイルスベクターをもたらすことである(Naldini、Blomerら、1996年;Zufferey、Nagyら、1997年)。これらのレンチウイルスは、ほとんどの哺乳動物の細胞に自由に感染する。VSVの広い宿主範囲により、従来の場合のように、マウスに限らず、異なる種のトランスジェニック動物を作成するのが可能になる。さらに、VSVコートタンパク質は、ビリオンに対して十分な機械的安定性を付与して、超遠心機中でそれらの濃縮を可能にする。レンチウイルスベクターの代替偽型化選択肢は、エボラウイルス(Wool−Lewis及びBates、1998年)、モコラウイルス(Mochizuki、Schwartzら、1998年)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)(Beyer、Westphalら、2002年)、ネズミ白血病ウイルス(MuLV)(Kobinger、Weinerら、2001年)、及びロスリバーウイルス(RRV)(Kang、Steinら、2002年)由来の外被糖タンパク質を含む。外被コートタンパク質の選択により、得られたウイルスが感染するはずの細胞及び組織のタイプが影響される。
【0036】
動物モデルでは、異種刺激依存性イオンチャンネルをコードする遺伝子配列の導入は、前駆細胞で行うことができるので、動物内のこれらの前駆細胞由来のすべての細胞が刺激依存性イオンチャンネルを発現するようになる。神経細胞もシナプス接触によってトランスフェクトすることができる。適切なウイルス(単純疱疹ウイルスI型又は仮性狂犬病ウイルスなど)を使用して1個のニューロンを感染させる場合、ウイルスは、シナプスを通ってその近隣に広がり、それによってその後これらのニューロンも同様に刺激依存性イオンチャンネルを発現し始めることになる(Lowenstein及びEnquist、1996年)。細胞特異的調節要素が遺伝子配列を与えたプロモーター内にある場合、イオンチャンネルは、制限された細胞集団中でだけ発現されることになる。しかし、同じ動物内の多数の細胞集団では、異なる細胞集団中で異なるチャンネルを発現するトランスジェニック又はノックイン動物を交尾させることによって、或いは1種又は複数のチャンネルを既に発現している動物中で別の刺激依存性イオンチャンネルを一過的に発現させるためにウイルス又は他のベクターを用いることによって、それぞれ独立に活性化できる異なる刺激依存性イオンチャンネルを発現させることができる。
【0037】
上記の方法の1つを用いて刺激依存性イオンチャンネルの異種発現が動物中で確立された後、刺激依存性イオンチャンネルを発現している動物の細胞を回収し、子宮内の動物の胎仔中に細胞を注射することによってトランスジェニック、「ノックイン」、又は非トランスジェニック動物中に移植することができる(Nery、Fishellら、2002年)。このために、刺激依存性イオンチャンネルを含む発現ユニットは、変異型緑色蛍光タンパク質(EGFP)遺伝子をコードするものなどの第2の遺伝も含むことになり、それは、刺激依存性チャンネルの機能には必要ではないが、異種刺激依存性イオンチャンネルを発現する細胞を単離及び追跡するのに好都合となる。EGFP又は別の発現マーカータンパク質の検出に基づくドナー動物から単離した細胞を、超音波誘導注射器又は注射部位を決定するのに好都合な別の方法を用いて子宮内の宿主動物の胎仔内の選択した部位に注射する。宿主動物が成長するにつれて、ドナー動物由来の細胞は、宿主の組織中に組み込まれ、宿主動物の指定の細胞及び組織中の刺激依存性イオンチャンネルの発現をもたらす。
【0038】
本発明に基づく異種刺激依存性イオンチャンネルを発現する細胞及び動物は:(1)活性依存性形態学的、生理学的、生化学的、及び遺伝学的変化、例えば、遺伝子発現の変化の研究、(2)ニューロン経路のマッピング、(3)異なる疾患及び症状に関係する細胞型の研究;(4)こうした疾患又は症状を治療するための別の又は代替の療法として使用できる組成物のスクリーニング方法;並びに(5)こうした疾患又は症状の治療上の処置の一部を含む様々な目的に使用することができる。
【0039】
本発明の第1の実施形態では、感作細胞は、「正常」細胞であり、in vivo又はin vitroにおけるこれらの細胞の活性化の結果として生じる形態学的、生理学的、生化学的、及び遺伝子発現変化をモニターする。こうした変化の確認により、活性依存性細胞プロセスのメカニズムへの洞察力がもたらされるはずであり、その例を以下に挙げている。
【0040】
本出願では、「疾患又は症状」という用語は、原因に関係なく許容されている基準と異なる生理学的状態を意味する。一般に、関係がある疾患又は症状は、疾患又は症状によって個体に有害な影響を与えるものである。
【0041】
多くの場合、定義された表現型は、疾患又は症状と関連があるように認識されているが、その疾患又は症状を生じる特定の欠陥は知られていない。こうした表現型には、特に神経細胞における不適当な分極又は脱分極;特定の生理学的、行動的、又は疾患状態或いは応答がある。こうした状態又は応答には、外分泌、内分泌、及びパラ分泌;骨格、心臓、及び平滑筋の収縮;膵臓のβ細胞によるグルコースセンシング、細胞死、及びT細胞活性化;痛みの感覚及び知覚、運動、性行動、報酬追求及び嗜癖、注意、攻撃、抑うつ、就眠、栄養補給、飢餓、認識、情動、学習、記憶、ホメオスタシスなどが含まれていてよい。本発明は、(a)動物の細胞(in vivo)、或いは外植した組織又は動物由来の細胞(in vitro)中で異種刺激依存性イオンチャンネルを発現させるステップ;(b)特定の刺激を用いてイオンチャンネルを誘発するステップ;並びに(c)イオンチャンネルを誘発し、それによってイオンチャンネルを発現する細胞が活性化される効果があれば、それを観察するステップを含む、疾患又は症状に関与する細胞型を評価する方法を提供する。個々の細胞群をそれぞれ独立に、又はグループで感作できる上記で論じた動物モデルは、異なる細胞群が、異なる時間に、異なる範囲まで、或いは同一動物中で異なる組合せで活性化できるという点でより優れた多用性を可能にする。また、それぞれの効果が明らかに分かるように同一動物中の細胞の活性化前後で観察可能である。
【0042】
この方法の第2の実施形態では、関与する細胞は、所定の表現型を示さない「正常」細胞、特に「正常」動物である。これらの細胞は、物理的又は化学的刺激への曝露によって選択的に活性化させ、予期する効果は、疾患又は症状に関連する表現型の作成である。表現型が作成された場合、異種刺激依存性イオンチャンネルを発現している細胞が疾患又は症状において重要であり、したがってそれらが適切な治療標的であることが示唆される。以下で論じているように、治療は、刺激依存性イオンチャンネルの使用によるものかもしれないが、むしろ特定のクラスの細胞に対するその選択的な活性について選択した特定の小分子アゴニストの発生によるものである。
【0043】
第3の実施形態では、関与している細胞又は動物は、疾患又は症状に関連する表現型を示す。この場合、異種刺激依存性イオンチャンネルを発現している細胞のグループの活性化とその後の表現型特徴の低減又は排除を予期する。このような低減又は排除は、異種刺激依存性イオンチャンネルを発現している細胞が疾患又は症状において重要であり、したがってそれらが適切な治療標的であることを示す。この場合もやはり、以下で論じているように、治療は、刺激依存性イオンチャンネルの使用によるものかもしれないが、むしろ特定のクラスの細胞に対するその選択的な活性について選択した特定の小分子アゴニストの発生によるものである。
【0044】
以下の例は、本発明の考えられる応用例を例示するものであり、限定するものとみなすべきではない。
【0045】
神経生物学の分野から得た本発明の使用の第1の実施形態の一具体例では、外植した神経組織又は無傷神経系の遺伝子指定したニューロン(又はニューロンのグループ)の人工活性化は、刺激を受けた細胞又はそれらのシナプス標的において新しい樹状突起棘又はシナプスの形成(活性依存性形態学的変化)、既存のシナプスの強化(活性依存性生理学的変化)、或いは神経伝達物質受容体のリン酸化(活性依存性生化学的変化)をもたらす。形態学的、生理学的、及び生化学的変化は、遺伝子発現における変化と相関関係があると予想される(活性依存性遺伝学的変化)。DNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現プロファイリングにより、活性調節された遺伝子を特定でき、ニューロン成長及び分枝(修復及び再生に重要)、シナプス形成、並びに可塑性(学習及び記憶に重要)のメカニズムへの洞察力がもたらされる。このことにより、これらの遺伝子及びそれらの産物を潜在的な薬物標的と見なされる。
【0046】
神経生物学の分野から得た本発明の使用の第2の実施形態の一具体例では、外植した神経組織又は無傷神経系の遺伝子指定したニューロン(又はニューロンのグループ)の人工活性化は、その下流のすべてのシナプス標的に伝達される。したがって、本発明の感作方法は、ニューロン経路をマッピングするのに使用することができる。このような方法は、(a)細胞集団が異種刺激依存性イオンチャンネルを発現するニューロン経路の細胞集団を感作するステップ;及び(b)下流の細胞の応答が観察されることによって、細胞が実際にニューロン経路の下流にあることを示す、下流にあると想定される細胞の細胞集団の感作に対する応答をモニタリングするステップを含む。神経細胞の感作は、本明細書において論じている方法のいずれによっても実現することができる。下流にあると想定される細胞のモニタリングは、予想された応答の性質に依存する方法で実現される。下流の標的の活性の変化は、当技術分野でよく知られている方法(電気生理学的又は光学的記録)を用いて検出することができる。しかし、予想された応答がホルモン分泌の調節(上向き又は下向き)の場合、モニタリングは、ホルモンレベルの検出を適切に伴うはずである。したがって、本発明は、機能的神経回路を特定及びマップする方法を提供し、これは神経系機能及び挙動を理解(及び干渉)するための必要条件である。
【0047】
より具体的には、本発明は、肥満及び摂食障害に影響するレプチンニューロン回路に関与するニューロンを特定及びマップするのに使用することができる。ホルモンレプチンは、身体の代謝状態を脳へ伝える(Friedman及びHalaas、1998年;Schwartz、Woodsら、2000年)。脂肪細胞によって血流に分泌されたレプチンは、代謝及びエネルギー均衡に関連するシグナルの主要な挿入部位である視床下部の弓状核内のニューロンによって発現された受容体と結合する。レプチンのレベルの変化により、すべての哺乳動物に共通して保存されている経路によって摂食、代謝、体温、エネルギー消費、活性のレベル、骨形成の速度、及び受精能が変化する。レプチン感受性ニューロンは、神経ペプチドY及びメラノコルチンを含む様々な神経ペプチドを介して下流の標的を信号で伝える。これらは、その出力ニューロンがこれまで知られていない同化及び異化経路に作用する。レプチン回路を形成するニューロンを特定するためには、外因的に加えたレプチンを用いてレプチン応答性ニューロンを活性化させて外植した脳組織を刺激する。或いは、レプチン応答性ニューロンは、刺激依存性イオンチャンネルの発現及びリガンドの追加又はチャンネルを開くように作動できる物理的刺激の適用によって活性化させる。この場合、外植した組織は、レプチン応答性細胞中で刺激依存性イオンチャンネルを発現するトランスジェニック又はノックイン動物由来であり、ウイルス又は他のベクターで処理した非トランスジェニック動物は、刺激依存性イオンチャンネルをレプチン応答性ニューロンで発現させ、或いはウイルス又は他のベクターで処理した外植した組織は、刺激依存性イオンチャンネルをレプチン応答性ニューロンで発現させる。レプチン応答性ニューロンを刺激している間、外植した組織内の他のニューロンの活性をモニターして、その活性がレプチン応答性ニューロンによって変化するニューロンを特定する(これらのニューロンは、レプチン応答性ニューロンの下流のシナプス標的として知られている)。レプチン応答性ニューロンの下流のシナプス標的の活性は、電気生理学的記録(Nicolelis及びRibeiro、2002年)又は光学的光イメージング(Peterlin、Kozloskiら、2000年;Kozloski、Hamzei−Sichaniら、2001年)を用いてモニターすることができる。或いは、例えば、上記の技術を用いて外植した組織内のいくつか又はすべてのニューロンにおいて、上記で列挙した(Zemelmanら(Zemelman及びMiesenbock、2001年)も参照のこと)ニューロン活性の遺伝学的にコード可能な光センサーを発現させることができる。このようなセンサーは、synapto−pHluorinと呼ばれている(Miesenbock、De Angelisら、1998年)。synapto−pHluorinは、構造特異的組合せ変異誘発によって生じ、小胞膜タンパク質VAMPの内腔末端と結合した緑色蛍光タンパク質のpH感受性変異体(「pHluorin」)であり、神経伝達物質が放出される前にニューロンのシナプス小胞の内側に、かつ小胞脱顆粒及び神経伝達物質放出後に細胞の外側に置かれている。小胞の低pHでは、pHluorinは蛍光を発しない。しかし、小胞がニューロン原形質膜と融合した後、pHluorinは、最後には中性の細胞外媒質中に存在し、そこで蛍光を発し始める。その活性が変化したニューロンの位置を正確に示す蛍光は、顕微鏡下で観察する。次いで、特定したニューロンを遺伝学的にプロファイルする。しばしばSAGE(遺伝子発現の連続分析)と呼ばれるこの技術は、重要なニューロン中で活性な遺伝子のスナップショットをもたらす(Eberwine、Kacharminaら、2001年)。この情報は、特定したニューロン中でのみ活性なプロモーターの選択、及びニューロンが脳内でどのような役割を果たすか決定するために使用する(Cao及びDulac、2001年)。プロモーター情報を利用できた後、刺激依存性イオンチャンネルは、新しく特定したニューロン中で発現され、それらの下流のニューロン標的は、直前に記載した手法の反復を用いて発見される。
【0048】
やはり神経生物学の分野から得た第2の実施形態の第2の例では、動いている動物、好ましくはマウスの遺伝子指定したニューロン(又はニューロンのグループ)の人工活性化は、痛みの感覚及び知覚、運動、性行動、報酬追求及び嗜癖、注意、攻撃、抑うつ、就眠、栄養補給、飢餓、認識、情動、学習、記憶、ホメオスタシスなどの変化をもたらす。これらの変化は、神経、精神、又は行動障害を模倣する特徴的な表現型をもたらし得る(Crawley及びPaylor、1997年;Crawley、1999年)。感作細胞の人工活性化とその後のこれらの表現型の誘導は、したがってこれらの細胞を行動関連情報及び潜在的な治療標的の担体として関係付けられる。この方法は、これらの潜在的な標的の特定を可能にするだけでなく;同時に、細胞活性化又は得られた行動表現型を調節するそれらの能力についてin vivo又はin vitroでスクリーニングできる小分子を用いて(以下に記載のように、これらの動物由来の細胞又は組織培養物を用いて)発見プラットフォームを形成する。チャート1及びチャート2に一般的な手法の概要を記述している。
【0049】
特に、本発明は、例えば、肥満及び摂食障害の新規な治療を見つけるために使用することができる。刺激依存性イオンチャンネルは、例えば、POMC受容体を発現させるためにニューロンが使用するように、刺激依存性イオンチャンネルを発現させるための同一プロモーターを用いて、上記のように、プロオピオメラノコルチン(POMC)センシングニューロン(Campfield、Smithら、1998年)などのレプチンセンシングニューロンの下流の標的ニューロン中でin vivoで発現する。次いで、選択したニューロンは、注射又は光を用いた非ケージ化、局部加熱などの任意の好都合な手段を用いて適切な物理的刺激又はリガンドを与えることによって、或いはプロドラッグ製剤を動物に補給することによってin vivoで刺激する。リガンド又は他の刺激を与えた後の動物の表現型を、初期の表現型と比較する。次いで、リガンドで刺激したときに動物が体重を増減させるニューロンを回収する。上記のように、刺激依存性イオンチャンネルをコードするDNAベクターは蛍光タンパク質もコードするので、感作したニューロンも蛍光標識されている。ニューロンを回収するためには、動物の脳を個々の細胞に分離し、その細胞懸濁液を蛍光活性化細胞選別機(FACS)に通して、それによって蛍光標識されたニューロンをその残りから分離することができる(St John、Kellら、1986年;Tomomura、Riceら、2001年)。次いで、これらのニューロンは、上記のように外植した組織中のニューロンについてそれらの活性をモニターしている間、in vitroで化学的化合物に曝露する。in vitroでニューロンを活性化又は抑制する化合物を健康な動物で試験して、動物が体重を増減させるかどうか判定する。化合物を肥満及び摂食障害動物でも試験する。次いで、体重調節に影響することがわかった化合物をヒトで試験する。或いは、その活性が体重調節に影響することが明らかになったニューロンは、遺伝子療法(例えば、ウイルスベクター及び適切なプロモーターを用いて)を用いてそれらにおいて刺激依存性イオンチャンネルを発現することによって、並びに特定のチャンネルリガンド又は物理的手段を用いてそれらを刺激することによって、動物及びヒトにおいて直接刺激することができる。
【0050】
本発明はまた、例えば、遺伝子トラッピング(Leighton、Mitchellら、2001年)を用いてin vivoでニューロンをランダムに感作することによって体重の調節に新規なニューロン経路を関係付ける方法を提供する。ここでは、プロモーターを欠く刺激依存性イオンチャンネルのDNA配列を、非相同組換えによってランダムに幹細胞のゲノムDNAに挿入する。偶然に、これらの細胞のいくつかに、内因性ニューロンプロモーターの近くに刺激依存性イオンチャンネル遺伝子が挿入される。トランスジェニック動物を作成するためにトランスフェクトした幹細胞を使用する場合、刺激依存性イオンチャンネルは、各プロモーターによって決定された各動物の脳内のニューロンのサブセット中で発現される。初期のゲノム挿入がランダムであるため、刺激依存性イオンチャンネルを発現する神経細胞の同一性を事前に知ることはできない。ゲノム内の挿入ポイント及びプロモーターは、相補的DNA末端の5’急速増幅(5’RACE)及び配列決定を用いて特定する(Frohman、Dushら、1988年;Townley、Averyら、1997年)。次いで、既に記載のように、ニューロンをin vivoで刺激し、得られた表現型を観察する。刺激したときに動物が体重を増減させるニューロンは、蒸気のようにFACSを用いて回収し、遺伝学的にプロファイルする。次いで、in vitroにおけるニューロンに対する有効性について化学的化合物を試験し、次いで、in vivoにおける健康及び肥満及び摂食障害動物に対して試験する。続いて体重調節に影響することがわかっている化合物をヒトで試験する。或いは、その活性が体重調節に影響することが明らかになったニューロンは、遺伝子療法(例えば、ウイルスベクター及び適切なプロモーターを用いて)を用いてそれらのニューロンにおいて刺激依存性イオンチャンネルを発現することによって、並びに特定のチャンネルリガンド又は物理的手段を用いて感染したニューロンを刺激することによって、動物及びヒトにおいて直接刺激することができる。
【0051】
したがって、本発明の感作手法は、疾患及び症状を治療するための治療薬として使用できる組成物をスクリーニングする方法に使用することもできる。細胞のグループが疾患又は症状に関与すると、上記の方法の適用の結果として、或いは他の方法から、それらの細胞が異種刺激依存性イオンチャンネルを発現する細胞系及び動物モデルがもたらされ、適切な手段を用いたイオンチャンネルのそのような誘発が弛緩表現型を誘導する。潜在的な治療薬をスクリーニングして、表現型を治療するそれらの能力を評価する。この方法は、多数の試験において同一の動物を用いる利点を提供する。独立して制御可能な異種刺激依存性イオンチャンネルの複数の細胞型への導入並びにそれらの独立した及び組合せた誘発によって、多数の細胞型の関与及び併用療法の有効性を同一の動物で評価でき、それによって異なる動物を試験することによって引き起こされる実験的なばらつきが減少する。
【0052】
異種刺激依存性イオンチャンネルは、治療手法に使用することもできる。発現が上記のように所望の細胞に限られることができ、かつチャンネルの誘発が疾患を模倣又は疾患表現型を緩和するのに使用できるので、疾患又は症状に関連する細胞又は疾患又は症状に関連する細胞の挙動に影響し得る細胞を活性化或いは抑制することによって治療利益を得ることができる。さらに、異種刺激依存性イオンチャンネルを発現している細胞は、アゴニスト(化学的又は物理的)刺激の適用に対して治療物質、例えばペプチド又はタンパク質の分泌をもたらす移植片内に閉じ込めることができる。この刺激は、アゴニストの有効性を制御するために、インシュリン分泌の場合のグルコースモニタリングシステムなどのin vivoモニタリングシステムからのシグナルに対して利用可能であり得る。ケージ化又はケージ化されていないリガンド、或いはそのプロドラッグ製剤も経口又は非経口的に与えることができる。局部加熱、冷却、又は照明などの物理的刺激も、移植デバイスを用いて与えることができる。
【0053】
治療手法の一例には、膵島細胞を刺激に敏感にすることが含まれる。刺激依存性イオンチャンネルを発現する島細胞は、例えば、糖尿病患者に移植し、食事の前又は血糖値がセンサーによって検出して高すぎる場合に適切な刺激を与えることによって活性化させ、それによって膵島細胞にインシュリンを分泌させる。このレジメンは、インシュリンを非経口的に投与する必要性を省くことになる。
【0054】
治療手法の別の例には、天然オピエート生成神経細胞を刺激に敏感にすることが含まれる。患者において、こうした細胞は、上記のように、適切なプロモーターに動作可能に結合した刺激依存性イオンチャンネルを含むウイルスベクターによって感染している。刺激の投与は、患者によって手動制御可能である。この方法では、患者が痛みの軽減を望む場合、化学的又は物理的刺激を与え、細胞に内因性オピエートを分泌させる。このような痛みのための治療は、現在処方されている鎮痛剤よりも常習性がはるかに少ないことが期待されている。
【0055】
本発明を利用した治療手法のさらに別の例では、失禁を治療する方法を提供している。この方法は、外因的に与えた刺激に敏感になるように、適切なプロモーターに動作可能に結合した刺激依存性イオンチャンネルを含むウイルスベクターを用いて膀胱制御に関連する筋肉細胞を感作することを含む。次いで、これらの筋肉細胞は、刺激のレジメンによって強化される。
【0056】
本発明を利用した治療手法のさらに別の例では、パーキンソン病を治療する方法を提供している。この方法は、外因的に与えた刺激によって活性化又は非活性化に敏感になるように、筋肉振戦に影響を与える神経細胞を感作することを含む。次いで、刺激のレジメンによってこれらの神経細胞の発射(firing)を制御する(Birder、Nakamuraら、2002年;Carbon及びEidelberg、2002年)。
【0057】
上記のそれぞれの応用例では、異種刺激依存性イオンチャンネルを発現している細胞を適切なリガンドと接触させることによって、或いは局所効果が光又は温度などの物理的刺激の適用によって実現され得るある種の環境で細胞活性化が実現される。この接触は、リガンドの全身導入によって(だが、これは活性化の時間的経過の細かい制御を実現する能力を制限する)又はリガンドの局所送達によって生じ得る。リガンドの局所送達は、いくつかの方法によって実現することができる。未改変リガンドの場合、局所注射又は移植による導入を利用して、時間的制御の基準をもたらすことができる。しかし、リガンドは、活性化シグナルを最適な時間及び部位にもたらし得る不活性形態で与えることが好ましい。光活性性ケージ化リガンドは、この目的に特に適しており、経口又は非経口的に投与できるリガンドのプロドラッグ製剤も同様である。
【0058】
光活性性ケージ化リガンドは、二次的刺激として光に対してリガンドの放出をもたらす。ケージ化リガンドの具体例には、それだけには限らないが、DMNB−カプサイシン、DMNB−メントールなどのDMNB−誘導体及び大きな2光子断面を有するメトキシ−ニトロインドリノ誘導体などの他の発色団を含むリガンド誘導体がある。これらのケージ化種への合成経路は、以下の実施例で示す。ケージ化感光性ATP、ATPのP−(1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニルエチル)(DMNPE)エステル(Kaplan、Forbushら、1978年;Ding及びSachs、2000年)は、分子Probesから市販されており、さらに精製することなく実験に使用することができる。
【0059】
Zemelmanら(Zemehman、Leeら、2002年)の発明者らによって記載されているいわゆるchARGeシステムと比較した場合、本発明は、細胞、特に定義した細胞集団の感作について多くの有益な特徴を提供している。第1に、単一異種遺伝子の発現は(例えば、chARGeの場合の3つの遺伝子とは対照的に)、細胞を刺激に対して感作するのに十分である。たった1つの導入遺伝子への依存により、相対的な発現レベルを平衡にする必要性が除かれ、遺伝子操作の複雑さが関与した遺伝子の数によって強く増大するので、遺伝子組み換え細胞、組織、及び生物の作成が簡単になる。
【0060】
第2に、細胞応答の「オン」及び「オフ」速度論が刺激のものと密接にかつ再現可能に関連付けられることが実証されている(実施例並びに図2及び4を参照のこと)。これは、例えばスパイク時間にわたってミリ秒制御をもたらすためにDMNBカプサイシン又はDMNPE−ATPの高輝度閃光分解(Rapp、1998年)を用いて光学的刺激を制御することによってさらに高めることができる。
【0061】
第3に、以下の実施例で、導入した脱分極性電流の量又は得られた発射速度として神経細胞中で実験的に定量した応答の強度は、アゴニストの濃度を変えることによって等級に分けることができる。chARGeしたニューロンに対する光子入射線量により電気応答の強度が制御できるが、線量応答関係はやや緩い:同一照度におけるchARGeしたニューロンの発射パターン及び発射頻度は、大幅に異なる(Zemelman、Leeら、2002年)。
【0062】
第4に、実施例で使用している3対の受容体−リガンド対は、相互干渉なく異なる感作をもたらす(図2)。単独又はCre−lox系などの二次的選択成分と組み合わせて、かつ将来的に明らかに利用可能になる別の天然又は人工受容体−リガンド組合せと一緒に選択したこれらの受容体−リガンド対は、多数の異なるニューロンの集団を同時にかつ独立的に扱うことを可能にする。
【0063】
第5に、非相同的発現されたチャンネルを作動させるための多数の誘発モードが利用可能である。アゴニストは、薬理学的又は光学的にもたらすことができ;TRPV1及びTRPM8は、さらに温度シフトによって制御することができる(Caterina、Schumacherら、1997年;McKemy、Neuhausserら、2002年;Peier、Moqrichら、2002年)。光分解非ケージ化の速度、付加空間分解能、及び「遠隔作用」により、光がin vitroにおける大部分の実験及びin vivoにおける多くの応用例に最適な誘因になるが、光ビーム又は光導波路を標的領域に誘導するのに非現実的又は不必要であるかもしれない状況がある。動いている動物、又は応答に対して正確な時間的制御が必須ではない場合のこれらの状況では、薬理学的刺激が有力な代替法を与える。例えば、線虫の侵害受容器ニューロン中で異所的に発現されたTRPV1に作用するカプサイシンは、野生型動物が欠く「合成」回避挙動を誘発する(Tobin、Madsenら、2002年)。アゴニストは、その薬理学的分布量によって有効になるので、その作用の解剖学的部位をあらかじめ知る必要はない。これは、細胞基質の挙動を調べる遺伝子ショットガンの可能性を開く:それらの正常な動作可能な状況にあるニューロンのグループは、刺激に対して遺伝学的に感作でき、それらの活性化が特徴表現型を生成する場合、行動関連情報の担体として関連付けられる。
【0064】
次に、本発明を、以下の非限定的な実施例に関してさらに説明する。
【実施例1】
【0065】
各種が哺乳動物発現ベクターpCI−neo(Promega)の誘導体であるpCI−fluor中のCMVプロモーターの制御下にある刺激依存性イオンチャンネルを含む(ラットTRPV1、ラットTRPM8又はラットP2X)、3つのプラスミド種を調製した。pCI−fluorを作成するために、pCI−neoのアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼコード配列を、20アミノ酸N末端GAP43タグを有するEGFPのものと置換した。(Zemelman、Leeら、2002年)。ラットTRPV1及びラットTRPM8は、モノマーとして発現し;ラットP2Xサブユニットは、トリペプチド−Ser−Gly−Gly−の縦列反復によって共有結合三量体に結合した。
【実施例2】
【0066】
E19ラットから得て解離培養で増殖させた海馬ニューロンを、実施例1に記載のように(pH7.08)20分間リン酸カルシウム沈降プラスミドDNA42μgcm−2に曝露してプラスミドを吸収させた。播種した8日後にトランスフェクションを行い;トランスフェクションの6〜10日後に免疫細胞化学的分析及び電気生理学的記録を行った。マウス脳中のニューロンを感染させるためのレンチウイルス注射について以下に説明する。
【0067】
培養物中のトランスフェクトしたニューロン及び脳切片中の感染させたニューロンをGAP43−EGFP蛍光によって同定し、全細胞パッチクランプ配置に記録した。パッチピペット(〜2.5メガオーム)は、120mM K−グルコン酸、10mM KCl、5mM ATP、0.3mM GTP、及び10mM K−HEPES(pH7.2)を含んでいた。細胞外記録溶液は、119mM NaCl、2.5mM KCl、2mM CaCl2、1mM MgCl2、30mMグルコース、25mM Na−HEPES(pH7.4)、50μM D,L−2−アミノ−5−ホスホノ吉草酸(AP−5)、及び10μM 6−シアノ−7−ニトロキノキサリン−2,3−ジオン(CNQX)からなっていた。膜電位及び膜貫通電流を、それぞれ橋絡形及び連続単極電圧固定モードでAxoclamp−2B増幅器(Axon Instruments)を用いて記録し、フィルタリングしないで5kHzでデジタル化した(Digidata 1200、Axon Instruments)。ブレークイン後にベースライン電流を調節して電流固定記録における膜電位を−65mVにセットし;−65mVの保持電位で電圧固定記録を行った。
【0068】
1つの外来性チャンネルタンパク質、TRPV1の細胞内分布を培養したニューロン中で形態学的に検討した。TRPV1は、完全にニューロン原形質膜を装飾しており;樹状突起、細胞体、及び軸索で検出された。この分布は、アゴニスト誘発電流が少なくとも部分的に、樹状突起及び細胞体で興奮シナプス入力を模倣できることを示唆した。さらに、スパイク発生部位(初期軸索セグメントなど)でのTRPV1チャンネルの開口は、ニューロンのスパイク発生器を直接短絡させると予想されるはずである。
【実施例3】
【0069】
培養したニューロンを4%パラホルムアルデヒド中で固定し、0.1%トライトンX−100中で透過させ、5%ウシ血清及び0.2ゼラチンを含むブロッキング溶液に曝露し、GFPに対するウサギポリクローナル親和性精製抗体(1:250)及びTRPV1に対するモルモットポリクローナル抗体(1:1,000;Chemicon)で染色した。結合した抗体は、AlexaFluor−488及びAlexaFluor−594結合体(1:500;分子Probes)を用いて検出し、広視野エピ蛍光顕微鏡法によって可視化した。
【実施例4】
【0070】
光放出性ケージ化アゴニストを調製させるために、図1の反応スキームに基づくカプサイシン(Fluka)を4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジルクロロホルメート(Aldrich)と反応させた。カプサイシン(10.7mg、0.035mmol)の塩化メチレン(CH2Cl2;2ml)溶液に0℃で約5当量の4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジルクロロホルメート(46.9mg、0.170mmol)、続いて約2当量のトリエチルアミン(10μl、0.072mmol)を加えた。室温で2時間暗闇の中で反応混合物を撹拌し、これはカプサイシンをケージ化産物に定量的に添加させるのに十分であった。反応は、移動相として50%酢酸エチル/ヘキサンを用いて、シリカゲルによる薄層クロマトグラフィーによってモニターした。DMNB−カプサイシンは、この系でRf 0.10で移動する。反応混合物を暗闇の中でアルゴン流下で約100μlまで濃縮し、50%酢酸エチル/ヘキサン1mlで希釈し、シリカゲルカラム(E.Merck、230〜400メッシュ)上でクロマトグラフにかけた。このカラムは、50〜70%酢酸エチル/ヘキサンの勾配で発達させ、Rf 0.10における画分を加え、ロータリーエバポレータで濃縮し、DMNB−カプサイシンを定量的に得た(18.9mg、99%)。化合物を100mMで無水ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、アルゴン下で−80℃で保存した。光刺激実験では、5mM DMNB−カプサイシンのDMSO溶液の通常在庫を新たに細胞外記録溶液で5μMに希釈した。DMNB−カプサイシンを1H NMR及び質量分析によって特徴付けを行い、結果は、その構造に予想されたものと整合した。
【実施例5】
【0071】
異種刺激依存性イオンチャンネルを発現している細胞に薬理学的刺激を与える能力を評価するために、アゴニストの1−ml大型丸剤を、約6mlmin−1の層流速度でトランスフェクトした細胞又はウイルスに感染した脳切片を含むRC−26G記録チャンバー(Warner Instruments)中に灌流させた。
【0072】
存在する異種チャンネルのタイプに関係なく、グルタミン酸受容体アンタゴニストの存在下で全細胞電流固定下で記録した(50μM AP−5+10μM CNQX)ニューロンの膜電位は、リガンドの不在下で静止レベルで安定なままであった。
【0073】
トランスフェクトしたニューロンの静止電位(−50.6±9.6mV;平均値±s.d.、n=30)は、トランスフェクトされなかった細胞のものよりもよりプラスの傾向があり(−59.7±2.9mV;平均値±s.d.、n=4)、異種チャンネルの存在が小さな脱分極漏れ電流をもたらしたことを示唆する。アゴニストの大型丸剤(50nMカプサイシン、100μMメントール、50μM ATP)の適用により、その時間的経過がアゴニスト送達の「薬物動態学」(潅流装置の死空間、アゴニスト含有大型丸剤の体積、及び記録チャンバーの交換時間)を反映した、脱分極、スパイキング、及び再分極の特徴的配列がもたらされた(図2)。刺激の薬理学的特異性は、絶対的であった:試験した9つの考えられる受容体アゴニストの組合せのうち、図2の対角線上に示された3つの同族マッチだけが応答を誘発した。ATPを含む3つのアゴニストのどれも同族外来性受容体を欠く海馬ニューロンを刺激することができなかった(図2の非対角線記載事項を参照のこと):目的どおり、広く加えた薬理学的刺激への応答性は、遺伝学的に区切られた標的集団に限られていた。
【0074】
用量作用相関を決定するために、ピーク振幅並びに異なるアゴニスト濃度で脱分極性電流によって運ばれる統合電荷を、全細胞電圧固定下で一定保持電位−65mVで測定した。図3AでTRPV1について示しているように、電流振幅及び電荷移動は飽和した:最大半減応答が約150nMカプサイシンで見られ;擬線形応答範囲が70〜200nMにわたっていた。TRPM8は、150μMメントールで最大半減応答をもつ定性的に類似の用量作用曲線を示した(結果を図示せず)。最大アゴニスト誘発電流は、おそらくトランスフェクトしたプラスミドの可変コピー数によるニューロン表面積及びチャンネル密度の差の結果としてニューロンごとにかなり異なっていた(範囲:360〜2457nA、n=8)。−65mVにおける35−pSシングルチャンネル伝導度の仮説(Caterina、Schumacherら、1997年)及び電流の線形加重に基づいて、我々は、トランスフェクトしたニューロンが160,000〜1,000,000の機能的TRPV1チャンネルを発現することを推定する。ニューロンに注射した脱分極性電流の量は、アゴニストの濃度を滴定することによって制御できるので(図3A)、活動電位の振動数も同様に調整可能であるべきである。図3Bに示す電流固定記録は、これが事実そうであることを実証している。200−msウィンドウをスライドさせて評価したスパイク速度は、アゴニスト濃度の増大に応じて上昇し、我々のデータセットにおいて40Hzの振動数でピークに達した(60ニューロンに対して382アゴニストを適用)。ピーク及び統合チャンネル電流を特徴付けた単純なS字形用量作用相関(図3A)とは対照的に、アゴニスト濃度と発射振動数の関係は、スパイク発生のメカニズムに固有の非線形性によって複雑であった。S字形挙動からの逸脱は、高いアゴニスト濃度で特に明らかであった(図3B、500及び5,000nMカプサイシン)。急速な脱分極速度により、高振動数でスパイクの短いバーストがもたらされ、その後プラトーが長く続き、その間膜は脱分極のままであったが、活動電位は存在しなかった(図3B、下)。おそらく、プラトー期中の興奮性の欠如は、不活性化状態における電位依存性ナトリウムチャンネルの集積を反映しており、それらは膜が再分極するまでトラップされたままである。アゴニストの断続的送達は、不活性化を解消し、長期間にわたって高発射速度を維持するのに役立つかもしれない。
【実施例6】
【0075】
アゴニストのパルスを送達するための特に魅力的な方法は、不活性な感光性前駆体から活性化合物を光放出させることである(Kaplan、Forbushら、1978年;Walker、McCrayら、1986年;McCray及びTrentham、1989年;Wilcox、Violaら、1990年;Callaway及びKatz、1993年)。こうした前駆体の1つ、ATPのP3−(1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)エチル)(DMNPE)エステル(Kaplan、Forbushら、1978年;Ding及びSachs、2000年)は、商業供給源(分子Probes)から入手可能であり;別の前駆体は、カプサイシンを4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル(DMNB)クロロホルメートと反応させて、炭酸エステル結合のDMNBブロック基をアゴニスト活性に重要な分子特徴であるカプサイシンのフェノール性ヒドロキシル官能基と結合させることによって合成した(図1及び実施例3)(Walpole、Wrigglesworthら、1993年;Walpole、Bevanら、1996年)。DMNB及びDMNPE発色団による近紫外波長範囲における光子の吸収(吸収極大約355nm)は、反応性aci−ニトロ中間体を生成すると予想され、それは、一連の律速暗反応で遊離アゴニストを遊離させる(McCray及びTrentham、1989年)。
【0076】
DMNB又はDMNPEブロック基の存在により、おそらくケージ化リガンドがそれらの個々の受容体に結合するのを立体的に妨げることによってカプサイシン及びATPが生物学的に不活性になった。全細胞電流又は電圧固定モードでそれぞれ記録したTRPV1又はP2Xを発現しているニューロンの膜電位及び膜貫通伝導度は、5μM DMNBカプサイシン及び1mM DMNPE−ATPの存在によって影響されず、図3Aで決定した遊離アゴニストの飽和レベルを超えた濃度は、10〜20倍であった。ケージ化化合物の化学的又は酵素的分解による生物学的活性の痕跡は、30分以上続いた記録で検出されなかった。
【0077】
水銀アークランプの平行なフィルターにかけていない出力を用いた全領域照明は、波長<400nmで光パワー26mWmm−2を送った。5μM DMNB−カプサイシンの存在下で、トランスフェクトされなかったニューロンではなく、被照領域内のTRPV1−陽性ニューロンは、光学的刺激に活性の変動を伴って応答した(図4A)。1秒続く単一光パルスに続いて、活動電位を15〜40Hzの振動数で発射した。活性は、予測可能な間隔(5,035±2,061ms;平均値±s.d.、n=10)でその開始が光学的刺激のものに遅れており、その期間(2,651±383ms;平均値±s.d.、n=10)が露光量のものをわずかに超える時間ではっきりと区切ったウィンドウに限定した。同じニューロンの繰り返された光刺激の後に、減衰しなかった定型応答が続いた(図4A)。
【0078】
1mM DMNPE−ATPの存在下で1−s光パルスに曝露したP2X−陽性ニューロンは、DMNB−カプサイシンの存在下におけるTRPV1−陽性ニューロンのものと定量的に類似した光誘発応答を示したが、特徴的な時間特性を示した(図4B)。活性のウィンドウはより短い遅滞期後の光学的刺激に続き(1,136±96ms;平均値±s.d.、n=16)、わずかに短い時間のスパン持続し(2,456±1,273ms;平均値±s.d.、n=16)、TRPV1応答よりも段階的にベースラインに戻った。異なる非ケージ化及びチャンネル作動速度論は、これらの特徴的な時間応答パターンの根底にある可能性が高い。観察された応答潜時の機械的基準は、現在知られていないが、比較的低い照度が役割を果たし得る。我々の実験で使用した光パルスは、1−s露光中にスペクトルバンド<400nmで光エネルギー26mJmm−2を運んでおり;高輝度フラッシュランプ又はUVレーザーは、同等のエネルギーを数百マイクロ秒に圧縮し(Callaway及びKatz、1993年;Rapp、1998年)、したがって瞬時の正確に測った応答が誘発され得る。
【0079】
in vivoで光刺激するために、感作した標的細胞をマルチモード光ファイバーを通した連続波ダイオードレーザーの紫外線(波長:355nm)出力によって照明する。ファイバー中に発射した低エネルギーレーザーパルスは、少量の組織中でケージ化から活性リガンドまで突然の濃度ジャンプを生成する。
【実施例7】
【0080】
遺伝子導入及び一過性イオンチャンネル発現のためのレンチウイルスベクターを生成するために、二本鎖クローニングカセットGGATCCCGTACGATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAAGTTATCGTACGGGCGCGCCCGGACCGGAATTC(配列番号:4)をBamH1及びEcoR1で消化し、5’及び3’LTR、ユビキチンプロモーター、flap、及びWRE配列からなる既存のレンチウイルスバックボーンpFUGW中の同一制限部位に挿入した(Lois、Hongら、2002年)。PCRを用いてGAP43−EGFP配列(Zemelman、Leeら、2002年)及びDsRed2配列(Clontech)を増幅し、ECMV IRES配列(Clontech)と融合させた。PCRプライマーを用いてEcoR1及びPac1制限部位を、それぞれ5’及び3’末端に導入した。イオンチャンネルcDNAもPCRを用いて増幅し、Asc1制限部位を遺伝子の両端に加えた。P2X共有結合三量体の構築は、既に記載されている(Zemelman、Nesnasら、2003年)。蛍光タンパク質遺伝子を、レンチウイルスクローニングカセット中のEcoR1−Pac1部位に挿入した。次いで、各イオンチャンネル遺伝子をAsc1部位に挿入して、一過性発現レンチウイルスベクターを生成した(図5A〜D)。
【0081】
遺伝子導入のためのレンチウイルスベクターを生成するために、5’loxPクローニングカセットAAGCTTCGTACGATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAAGTTATAGAAACAGGGATCCTCTAGAGCCACCATGG(配列番号:5)を、pEGFPベクター(Clontech)中のHindIII−Nco1制限部位に挿入した。3つの各読み枠中に翻訳停止コドンを含む3’loxPクローニングカセットGCGGCCGCTAATTAGTTGAATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAAGTTATCGTACGGAATTC(配列番号:6)に、同じベクター中にNot1−EcoR1を挿入した。得られた構築体は、BsiW1で消化し、レンチウイルスベクター中の同一制限部位に挿入し、loxP−stop−loxPカセットをプロモーターとイオンチャンネル遺伝子の間に導入した(図6A)。
【0082】
ユビキチンプロモーターをβ−アクチンプロモーター(Miyazaki、Takakiら、1989年)と置き換えるために、PCRを用いて後者を増幅して、プロモーターの5’及び3’末端で、それぞれPac1及びSpe1部位を生成した。ユビキチンプロモーターを同じ制限酵素を用いて除去した。プロモーター置換は、レンチウイルスベクターバックボーンへの他の配列の挿入に先行した(図6B)。
【0083】
場合によっては、IRES及び後端の蛍光タンパク質遺伝子をレンチウイルスベクター中に導入しなかった(図6C、D)。
【0084】
感染性ウイルス粒子の濃縮在庫を、既に記載のように(Naldini、Blomerら、1996年;Zufferey、Nagyら、1997年)調製した。簡単に言えば、293T細胞を、3つのプラスミドを用いて同時にトランスフェクトする:プラスミドの1つは、刺激依存性イオンチャンネル遺伝子を含むpFUGW由来であり(図6を参照のこと)、パッケージングプラスミドpCMVデルタR8.2(Naldini、Blomerら、1996年)、及び外被糖タンパク質をコードするプラスミドがある。外被糖タンパク質の例には、水疱性口内炎ウイルス(VSV)(Naldini、Blomerら、1996年)、エボラウイルス(Wool−Lewis及びBates、1998年)、モコラウイルス(Mochizuki、Schwartzら、1998年)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)(Beyer、Westphalら、2002年)、ネズミ白血病ウイルス(MuLV)(Kobinger、Weinerら、2001年)、ロスリバーウイルス(RRV)(Kang、Steinら、2002年)などのウイルスのものがある。トランスフェクションは、Fugene(Roche)を用いて行う。細胞上清をトランスフェクションの48〜60時間後に捕集し、0.45μm低タンパク質結合膜(Nalgene)を用いてフィルターにかけ、25,000rpmで90分回転させてウイルス粒子をペレットにする。力価は、HeLa細胞の段階希釈によって決定し、続いて免疫蛍光顕微鏡法によって異種刺激依存性イオンチャンネルの発現又は蛍光マーカータンパク質の検出を行う。
【実施例8】
【0085】
ゲノム標的構築体を、ゲノムイオンチャンネル遺伝子を用いて作成した。TRPV1ラットゲノムBACライブラリを含むゲノム領域を見つけるために、遺伝子の最初のエクソンを表すDNAプローブ
【化1】


を用いてRPCI23(BACPAC Resource Center、Children’s Hospital Oakland Research Institute、米国カリフォルニア州Oakland)をスクリーニングした。スクリーニングで同定したBACクローンは、BsiW1を用いて消化し、必要とされるゲノム領域を確実に含ませるために同じプローブを用いてサザンブロット法にかけた。最終ゲノム標的ベクターのサイズを縮小するために、遺伝子のエクソン7中のSacII制限部位を用いてハイブリッドゲノム−cDNA TRPV1遺伝子を構築した。その結果、ハイブリッドTRPV1遺伝子は、エクソン7まで及びエクソン7から停止コドンまでのcDNAでゲノムであった。PCRを用いて、ハイブリッドTRPV1をECMV IRES及び蛍光タンパク質cDNAと融合した。同時に、得られたDNA分子の5’及び3’末端にそれぞれSal1及びNot1部位を加えた。このDNA断片を、トランスファープラスミドpBigT(Srinivas、Watanabeら、2001年)中のSal1−Not1部位に挿入した。得られたベクターをPac1及びAsc1制限酵素で消化し、pROSA26PAゲノム標的ベクター(Srinivas、Watanabeら、2001年)中に挿入した。ROSA26ゲノム領域は、導入した遺伝子の遍在性発現に十分な内因性プロモーターを含むが、いくつかの構築体では、PCRを用いて別のCAGプロモーター(Miyazaki、Takakiら、1989年)を増幅し、配列の両端でPac1制限部位を作成し、pROSA26PAのPac1部位に挿入した。得られたベクター(図7A)を使用して、G418選択を用いて安定に組み込んだイオンチャンネル遺伝子とそれに続くIRES及び蛍光タンパク質配列をもつES細胞を生成した(Hogan、Beddingtonら、1994年;Ausubel、Brentら、2003年)。相同組換え体だけを選択したことを確実にするために、ベクターは、ベクターの相同ゲノム組込み後に失われるジフテリア毒素遺伝子(DTA)を含んでいた(Soriano、1999年)。得られたES細胞を他に記載のように(Ausubel、Brentら、2003年)処理した。
【0086】
P2X遺伝子ラットゲノムBACライブラリを含むゲノム領域を同定するために、遺伝子の最後のエクソンを表すDNAプローブ
【化2】


を用いてRPCI23をスクリーニングした。スクリーニングで発見したBACクローンは、Apa1制限酵素を用いて消化し、必要とされるゲノム領域を確実に含ませるために同じプローブを用いてサザンブロット法にかけた。PCRを用いてゲノムP2Xを増幅し、ECMV IRES及び蛍光 タンパク質と融合し、TRPV1について前述したように、分子の5’及び3’末端にそれぞれSal1及びNot1部位を作成した。しかし、PCR中速やかに別のXho1制限部位もP2X停止コドンの5’側に導入した。P2X、IRES及び蛍光タンパク質を含む増幅したDNA断片を、トランスファープラスミドpBigT(Srinivas、Watanabeら、2001年)中のSal1−Not1部位に挿入した。得られたベクターをPac1及びAsc1制限酵素で消化し、pROSA26PAゲノム標的ベクター(Srinivas、Watanabeら、2001年)中に挿入した。いくつかの構築体では、PCRを用いて別のCAGプロモーター(Miyazaki、Takakiら、1989年)を増幅し、配列の両端でPac1制限部位を作成し、pROSA26PAのPac1部位に挿入した。P2Xゲノム標的ベクター(図7B)を使用して、G418選択を用いて安定に組み込んだイオンチャンネル遺伝子とそれに続くIRES及び蛍光タンパク質配列をもつES細胞を生成した(Hogan、Beddingtonら、1994年;Ausubel、Brentら、2003年)。相同組換え体だけを選択したことを確実にするために、ベクターは、ベクターの相同ゲノム組込み後に失われるジフテリア毒素遺伝子(DTA)を含んでいた(Soriano、1999年)。得られたES細胞を他に記載のように(Ausubel、Brentら、2003年)処理した。
【0087】
三量体ゲノムP2X(図7C)を生成するために、pBluescriptII(Stratagene)をBamH1で消化し、その部位をT4 DNAポリメラーゼで埋め、ベクターを再び環状にした。次いで、このベクターをXho1で消化し、BamH1制限部位を含むクローニングカセットを挿入した。三量体cDNA P2Xの第2及び第3のサブユニット(Zemelman、Nesnasら、2003年)を、BamH1で切断し、このベクター中に挿入した。次いで、2つのサブユニットをXho1で取り出し、ゲノムP2X、IRES及び蛍光タンパク質配列を含むpBigT(Srinivas、Watanabeら、2001年)トランスファーベクターのXho1クローニング部位に挿入した。得られた構築体をPac1及びAsc1制限酵素で消化し、pROSA26PAゲノム標的ベクター(Srinivas、Watanabeら、2001年)中に挿入し、上記のように処理した。
【実施例9】
【0088】
単一光子非ケージ化に最も一般に使用する発色団は、実質的に任意の化学的官能基(カルボキシレート、アミン、フェノール、ヒドロキシル、スルフヒドリル、カルバメート、アミド、ホスフェートなど)に結合できる、4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル(DMNB)又はP3−(1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)エチル)(DMNPE)基などのニトロベンジル誘導体である(Walker、McCrayら、1986年;Walker、Reidら、1989年)。これらの光子の発色団による近紫外波長範囲の吸収(ピーク約355nm)は、反応性aci−ニトロ中間体を作成し、それは、一連の律速暗反応で活性アゴニストを放出する(McCray及びTrentham、1989年)。
【0089】
非ケージ化前駆体、(−)−メントール([1R,2S,5R]−5−メチル−2−[1−メチルエチル]シクロ−ヘキサノール;Sigma)及びイシリン(1−[2−ヒドロキシフェニル]−4−[3−ニトロフェニル]−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−2−オン;Phoenix Pharmaceuticals)は市販されている。両方の分子は、我々の以前のDMNB−カプサイシンの合成(Zemelman、Nesnasら、2003年)で使用したものと同一の反応スキームで4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジルクロロホルメート(Aldrich)を用いて誘導体化され得るヒドロキシル基を含む。ケージ化イシリンでは5%メタノール/塩化メチレン、ケージ化メントールでは10%酢酸エチル/ヘキサンを用いて、生成物をシリカゲル上で精製する。精製した化合物をロータリーエバポレータ上で濃縮し、アルゴン下で−80℃で保存する。すべての手順を安全光条件下で行い;1H NMR(Bruker 500MHz)及び質量分析(JEOL LCmate)によってDMNB誘導体を特徴付ける。生物学的活性をブロックするケージ化基の能力、並びに光分解非ケージ化の物理的パラメーターを以下のように分析する。
【0090】
非ケージ化反応をモニターするために、我々は、4,5−ジメトキシ−(2−ニトロフェニル)−エチル又は4,5−ジメトキシ−(2−ニトロベンジル)ケージ化基のそれぞれのニトロソ光産物、4,5−ジメトキシ−(2−ニトロソアセトフェノン)及び4,5−ジメトキシ−(2−ニトロソベンズアルデヒド)、並びにDTTを伴うそれらの付加物への光分解(図8)後の約360−nm吸収バンドの強度の減少を記録する簡単な分光学アッセイ(Walker、Reidら、1989年;Marriott、1994年)を採用した。このアッセイは、モノクロメーター(Jovin−SPEX)及び光パワーメーター(Newport、1930−C)と併せて使用して、我々のすべてのケージ化アゴニストについての非ケージ化の作用スペクトル及びエネルギー要件を測定する。
【実施例10】
【0091】
脳切片は、P15〜P20のマウスから得る。120mg/kgケタミン(Sigma)及び10mg/kgキシラジン(Sigma)の混合物を溶かした食塩水の腹膜内注射によってマウスに麻酔をかける。動物が痛み(足指をつまむ)に応答しなくなったら、ハサミを用いてそれらを断頭する。メスを用いた正中切開によって頭骨を露出する。中型のハサミを用いて頭骨を慎重に正中線で切断し、2枚のフラップを横に折り、皮質をむき出しにする。曲がったスパチュラで脳神経及び脳幹を優しく切断した後、95%O及び5%COで泡立たせた氷冷重炭酸−ACSFで満たしたビーカーに脳を移す;この溶液は、124mM NaCl、3mM KCl、1mM CaCl、3mM MgSO、1.25mM NaHPO、26mM NaHCO、及び10mMグルコースを含む。脳を少なくとも2分間冷却し、次いで、カミソリの刃を用いてトリミングした。2回の冠状切断によって小脳及び前頭葉を取り出す;1回の水平切断で中脳及び大部分の間脳を含む腹側構造を取り出す。
【0092】
トリミングした脳をスライスするために固定するには、寒天キューブ(ACSF中5%)をビブラトームの金属床に接着する。次いで、組織ブロックを垂直方向に(前面が上を向いている)定着させ、後方(後頭)面をシアノアクリレート(Superglue)で金属床に接着する。腹側(水平)面は、寒天ブロックに面している。チャンバーを氷冷ACSFであふれさせ、ビブラトーム(Carl Zeiss)を用いて脳を300−μm厚の冠状切片にスライスする。個々の切片をパスツールピペットのブラントエンドで優しく取り出し、95%O及び5%COで泡立たせて室温で保持した重炭酸−ACSFで満たされた、内側がナイロン網で補強されたプラスチック製ビーカーからなるインキュベーションチャンバー内に置く。スライスした後1〜11時間以内に実験を行う。
【実施例11】
【0093】
培養したニューロン又は外植した神経組織に温度刺激を加えるために、記録チャンバーを灌流させるのに使用した細胞外記録溶液(上記を参照のこと)を、温度調節器(Melcor;Alpha Omega Series 800コントローラー)に接続し、インライン熱電素子(CSC32、Omega)によってフィードバック制御された特注のペルティエ加熱/冷却素子によって誘導した。温度調節された(即ち加熱又は冷却された)記録溶液で灌流させた培養物又は外植した組織中のニューロンの活性を、上記のように電気的にモニターした。
【0094】
in vivoで温度刺激を加えるために、少量の組織中に任意の形の双極性(加熱又は冷却)熱スイングを生成できる熱シグナル発生器プローブと感作した標的細胞を接触させる。プローブの加熱又は冷却は、ペルティエ熱電デバイスによって達成される。熱電素子によって接触部位で直接測定するプローブ温度は、閉ループ回路を用いて制御する。或いは、感作した標的細胞は、マルチモード光ファイバーを通した連続波ダイオードレーザーの赤外線(波長範囲:808〜1064nm)出力によって照明する。ファイバー中に発射した低エネルギーレーザーパルスは、少量の組織中で、熱電素子によって照明部位で直接測定できる突然の温度上昇をもたらす。
【実施例12】
【0095】
レンチウイルスベクターを用いてマウス脳の特定領域で一過性イオンチャンネル発現を誘発するために、以下のプロトコルを使用する。ケタミン−キシラジン(ケタミン、100mg/kg;キシラジン、10mg/kg)を用いてマウスに麻酔をかけた。頭と首の背側部を削り、無菌方法で調製する。動物は、手順の間ずっと暖かくする。実質内又は心室内注射では、頭骨の上に重なった正中切開を行って、冠状、矢状、及びラムダ状縫合を露呈する。次いで、水平面に縫合を維持する定位固定装置(David Kopf Instruments)中にマウスを置く。ブレグマを特定し、零座標として用いる。実質内注射では、ブレグマに対して座標+2.0mm外側、−0.3mm尾側で1−mm骨孔を作成する。他の座標は、マウス脳のアトラス(Atlas of the Mouse Brain)(第2版、Academic Press)から導く。次いで、10−mlハミルトン注射器上の26−ゲージ針を、骨孔を介して硬膜から3mmの深さで右線条体中に定位的に挿入する。20%スクロース中に懸濁した5マイクロリットルのウイルス(最終濃度、2x10IU/ml)を、精密ポンプを用いて10分間にわたって(0.5μ1/分)注射した。針を5分間入れたままにし、次いでゆっくりと引き抜く。骨孔に骨ろうを塗り、4〜0ナイロン縫合糸で創傷を閉じる。加熱ランプ下で動物を回復させる。手術の7〜10日後に縫合糸を取り除く。注射の2週間後、動物を屠殺し、その脳を抽出し、実施例10に記載のようにミクロトームを用いて速やかにスライスする。
【実施例13】
【0096】
レンチウイルスベクターを用いてトランスジェニックマウスを作成するために、以下のプロトコルを使用する。雌マウスを過排卵させ、繁殖可能なオスと交尾させて、胚を生成させる。この場合、およそ25日齢で体重が12.5〜14グラムの青春期直前の雌マウスに、−2日目の午後1〜3時に5IUのPMS(Sigma G 4527、0.9%NaCl中25IU/ml)を、続いて0日目の48時間後に5IUのHCG(Sigma C 8554、0.9%NaCl中25IU/mlを腹膜内注射する。ホルモン処理したメスを繁殖可能なオスと同じ檻に入れて終夜交尾させる。1日目の朝に、メスを交尾プラグについてチェックする。雌マウスを2日目に屠殺し、4〜6細胞期の胚をウイルス感染のために捕集する。
【0097】
室温で酸性タイロード液中でのインキュベーションによって受精卵の透明帯を取り出す。この帯が溶解したように見えたら、胚を培地中で洗浄し、次いでペトリ皿中の鉱油下のウイルス懸濁液50μlマイクロドロップに移す。ホールピペットのガラス壁への付着による胚の損失を防ぐため、1%アルブミンのPBS溶液でプレコートし、或いは、プラスチック製ホールピペットを使用する。5〜10個の胚を別々のマイクロドロップ中で個々に培養して、互いに密着するのを防ぐ。ウイルス懸濁液を種々の濃度に希釈して、トランスジェニックゲノム1セット当りに予想される平均プロウイルス組込み数を大まかに制御することができる。接合体をウイルス懸濁液中で12〜24時間インキュベートし、洗浄するために使い捨てホールピペットによって培地皿に取り出す。胚を2日間培養して、色マーカーを保有する、導入したウイルスゲノムの存在と整合する遺伝子発現についてチェックすることが有用である。培地中での大規模洗浄の後、感染した胚を偽妊娠メスに移入する。
【0098】
上記に基づき、本発明が、それだけには限らないが、
(1)各発現ユニットが機能的刺激依存性イオンチャンネルをコードする配列を含む、新規な発現ユニットを含む化学的組成物;哺乳動物細胞中でイオンチャンネルの発現をもたらすのに有効なプロモーター、及び特定タイプ又は特徴の細胞を除きイオンチャンネルの発現を制限する細胞型特異的調節要素;並びにケージ化された又はされていない、刺激依存性イオンチャンネルを作動させる物理的又は化学的リガンド、
(2)(a)機能的刺激依存性イオンチャンネルをコードする配列を含む発現ユニットを得るステップ;哺乳動物細胞中でイオンチャンネルの発現をもたらすのに有効なプロモーター、及び特定の細胞型の細胞を除きイオンチャンネルの発現を制限する細胞型特異的調節要素、(b)細胞中に発現ユニットを導入し(好ましくはin vivo)、イオンチャンネルを発現するステップ;(c)特定の刺激を用いてイオンチャンネルを誘発するステップ;並びに(d)イオンチャンネルの誘発の効果があれば、それを観察するステップを含む、疾患又は症状における特定の細胞型の役割を研究する方法、
(3)(a)機能的刺激依存性イオンチャンネルをコードする配列を含む発現ユニットを得るステップ;哺乳動物細胞中でイオンチャンネルの発現をもたらすのに有効なプロモーター、及び特定の細胞型の細胞を除きイオンチャンネルの発現を制限する細胞型特異的調節要素、(b)疾患又は症状を示す生物の細胞中に発現ユニットをin vivoで導入し、イオンチャンネルを発現するステップ;(c)特定の刺激を用いてイオンチャンネルを誘発するステップ;並びに(d)示された疾患又は症状に対してイオンチャンネルの誘発の効果があれば、それを観察するステップを含む、疾患又は症状を緩和する特定の細胞型の役割を研究する方法、
(4)特定の細胞型の不適当な活性に関連する疾患又は症状を治療する方法(上記の(2)のように、特定の細胞型が疾患又は症状で役割を果たすことを確認した後、異種刺激依存性イオンチャンネルを疾患又は症状に苦しむ個体の特定の細胞型で発現される発現ユニット中に導入する。これらのイオンチャンネルは、選択的に誘発されて個体に治療利益をもたらす。)、
(5)特定の細胞型の不適当な活性に関連する疾患又は症状を治療するために組成物を評価する方法(上記の(2)のように、特定の細胞型が疾患又は症状で役割を果たすことを確認した後、その細胞型をスクリーニング手順に使用して、異種刺激依存性イオンチャンネルを誘発することによって得られるものと同じ又は反対の応答をもたらす化学的合成に適した他の分子、好ましくは小分子を選択することができる。)、
(6)異種刺激依存性イオンチャンネルを発現している非ヒト哺乳動物のノックイン及びトランスジェニック哺乳動物を含む遺伝子改変された細胞及び生物、
(7)ケージ化された又はされていない、刺激依存性イオンチャンネルを作動させる化学的リガンド
を含む、当技術分野で多くの発明性のある進歩を提供することが理解されよう。
【0099】
以下の参考文献は、本明細書に引用されており、上記のようにそれぞれ参照によって本明細書に組み込まれている。
【0100】
(参考文献)



















【0101】

【0102】

【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】DMNB−カプサイシンを調製するための反応スキームを示す図である。
【図2】遺伝子指定した標的ニューロンの薬理学的刺激を示す図である。
【図3】TRPV1発現ニューロンのカプサイシン応答の用量依存性を示す図である。
【図4】TRPV1(A、黒色トレース)又はP2X(B、黒色トレース)を発現している海馬ニューロン、或いはトランスフェクトされなかった制御ニューロン(A及びB、灰色トレース)の膜電位を示した、遺伝子指定した標的ニューロンの光刺激を示す図である。
【図5】指定のイオンチャンネル遺伝子をコードし、組織へ注射するために培養した真核細胞及び組織を感染するのに、かつトランスジェニック動物を生成するのに使用するレンチウイルス2シストロン性ベクターを示す図である。このベクターは、蛍光タンパク質をコードして、感染した細胞の同定及び追跡に役立つ。
【図6】指定のイオンチャンネル遺伝子をコードし、トランスジェニック動物を生成するのに使用するレンチウイルス単シストロン性及び2シストロン性ベクターを示す図である。プロモーターとイオンチャンネル遺伝子の間に、各ベクターは、loxP配列が隣接する3つの読み枠中に翻訳停止を含み、細菌Creリコンビナーゼが同じ細胞中で発現されていなければ、イオンチャンネルの発現を抑制する。Creタンパク質に関する要求により、イオンチャンネルを発現する細胞が正確に特定される。感染した細胞をマークし、正常な停止カセット欠失の信頼できる指標をもたらすために、loxP部位の間で蛍光タンパク質もコードされている。
【図7】ROSA26ゲノム標的ベクターを示す図である。このベクターは、1つのイオンチャンネル遺伝子のゲノムコピー(及びP2Xの場合に共有結合三量体)及び2シストロン性カセット中でイオンチャンネルを発現する細胞を追跡するための蛍光タンパク質をコードする。内因性ROSA26プロモーター又は異種CAGプロモーターの間に、各ベクターは、loxP配列が隣接する転写停止配列を含み、細菌Creリコンビナーゼが同じ細胞中で発現されていなければ、イオンチャンネルの発現を抑制する。Creタンパク質に関する要求により、イオンチャンネルを発現する細胞が正確に特定される。このベクターはまた、G418を用いた安定な組み込み体の選択のためのNeo遺伝子、及び非相同組み込み体に対して選択するためのジフテリア毒素遺伝子を含む。
【図8】光分解非ケージ化の分光学測定を示す図である。5μM DMNB−カプサイシンの100mM DTTを補充した細胞外記録溶液の試料の波長<400nmにおける0.371mJの光エネルギーへの曝露により、44%の光分解がもたらされる。光分解したDMNB−カプサイシンの断片は、350〜370nm波長バンド(斜線部分)の吸光度の減少として定量化される。
【図9】本明細書に示した方法に基づくメントール及びイシリンケージ化の化学的構造を示す図である。
【配列表】








【特許請求の範囲】
【請求項1】
真核標的細胞を活性化する方法であって、
a.それらの標的細胞中で異種刺激依存性イオンチャンネルを発現させることによって標的細胞を感作するステップ、及び
b.前記感作した標的細胞に刺激を与えてイオンチャンネルを誘発し、それによって前記標的細胞を活性化させて前記イオンチャンネルの誘発後に前記標的細胞の前記イオンチャンネルの誘発とは異なる応答を誘導するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記刺激依存性イオンチャンネルがリガンド依存性イオンチャンネルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イオンチャンネルを作動させるリガンドに前記標的細を曝露することによって前記刺激を前記リガンド依存性イオンチャンネルに与える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記刺激依存性イオンチャンネルが、TRPV1及びTRPM8からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記刺激依存性イオンチャンネルがTRPV1であり、前記細胞をカプサイシンと接触させることによって前記標的細胞を刺激する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記刺激依存性イオンチャンネルがTRPM8であり、前記細胞をメントール又はイシリンと接触させることによって前記標的細胞を刺激する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記刺激依存性イオンチャンネルがP2Xである、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞をATPと接触させることによって前記標的細胞を刺激する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記リガンドが最初は感光性ケージ化リガンドの形であり、前記感光性ケージ化リガンドの光への曝露後に前記刺激を前記リガンド依存性イオンチャンネルに与える、請求項3から8までのいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記感光性ケージ化リガンドを光のパルスに曝露する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記刺激依存性イオンチャンネルがTRPV1であり、前記リガンドがDMNB−カプサイシンである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記刺激依存性イオンチャンネルがTRPM8であり、前記リガンドがDMNB−メントールである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記刺激依存性イオンチャンネルがP2Xであり、前記リガンドがDMNPE−ATPである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
定義した細胞型内でのみ起こるように前記異種刺激依存性イオンチャンネルの前記発現を制御する、請求項1から13までのいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記発現を誘導性又は抑制性プロモーターによって制御する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記プロモーターがステロイド、抗生物質、4−OHタモキシフェン、又は重金属に応答するプロモーターのうちから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記異種刺激依存性イオンチャンネルの前記発現を細胞型特異的プロモーターによって制御する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記異種刺激依存性イオンチャンネルの前記発現を二次的細胞型特異的調節要素によって制御する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記二次的細胞型特異的調節要素が、前記異種刺激依存性イオンチャンネルをコードする遺伝子配列とその配列に関連するプロモーターの間に配置されたloxP−stop−loxP配列、並びに細菌Creタンパク質をコードする遺伝子配列の制御発現に関連する細胞型特異的プロモーターを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記刺激依存性イオンチャンネルがTRPV1であり、前記細胞を熱又は放射線と接触させることによって前記標的細胞を刺激する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記刺激依存性イオンチャンネルがTRPM8であり、前記細胞を冷熱と接触させることによって前記標的細胞を刺激する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記標的細胞をin vitroで活性化させる、請求項1から21までのいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記標的細胞をin vivoで活性化させる、請求項1から21までのいずれかに記載の方法。
【請求項24】
ケージ種との結合がない場合に刺激依存性イオンチャンネルを誘発するのに有効なリガンドと感光性結合によって結合したケージ種を含む光活性性ケージ化リガンドであって、前記リガンドがカプサイシン、メントール及びイシリンからなる群から選択される、光活性性ケージ化リガンド。
【請求項25】
前記ケージ種が、DMNB及びDMNPEからなる群から選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記リガンドがカプサイシンであり、前記ケージ種がDMNBである、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記リガンドがメントールであり、前記ケージ種がDMNBである、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
機能的刺激依存性イオンチャンネルをコードする配列;真核標的細胞中のイオンチャンネルの発現をもたらすのに有効なプロモーター;及び前記プロモーターと同一又は異なっていてよい細胞型特異的発現調節要素を含む発現ユニット。
【請求項29】
前記刺激依存性イオンチャンネルを発現している細胞の追跡又は選択に役立つタンパク質をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項28に記載の発現ユニット。
【請求項30】
刺激依存性イオンチャンネルをコードする前記ヌクレオチド配列と細胞の追跡に役立つタンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列とをリボソーム内部進入部位によって分離している、請求項29に記載の発現ユニット。
【請求項31】
前記刺激依存性イオンチャンネルがリガンド依存性イオンチャンネルである、請求項28に記載の発現ユニット。
【請求項32】
前記刺激依存性イオンチャンネルが、TRPV1、TRPM8、及びP2Xからなる群から選択される、請求項31に記載の発現ユニット。
【請求項33】
前記刺激依存性イオンチャンネルを発現している細胞の追跡に役立つタンパク質をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項31に記載の発現ユニット。
【請求項34】
細胞の追跡又は選択に役立つタンパク質が、GFP、EGFP、GAP43−EGFP、DsRed、DsRed2、synapto−pHluorin、cameleon、camgaroo、pericam、G−CaMP、clomeleon、lacZ、βラクタマーゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、グルタミンシンセターゼ、及びジヒドロ葉酸レダクターゼからなる群から選択される、請求項33に記載の発現ユニット。
【請求項35】
前記プロモーターが誘導性又は抑制性プロモーターである、請求項28に記載の発現ユニット。
【請求項36】
前記プロモーターが、ステロイド、抗生物質、4−OHタモキシフェン、又は重金属に応答するプロモーターのうちから選択される、請求項28に記載の発現ユニット。
【請求項37】
前記プロモーターが細胞型特異的である、請求項28に記載の発現ユニット。
【請求項38】
前記プロモーターによる前記発現が、二次的細胞型特異的調節要素によって制御される、請求項28に記載の発現ユニット。
【請求項39】
前記二次的細胞型特異的調節要素が、前記異種刺激依存性イオンチャンネルをコードするヌクレオチド配列と前記プロモーターの間に配置されたloxP−stop−loxP配列を含む、請求項38に記載の発現ユニット。
【請求項40】
遺伝子改変したウイルスである、請求項28に記載の発現ユニット。
【請求項41】
前記ウイルスがレトロウイルスである、請求項40に記載の発現ユニット。
【請求項42】
前記ウイルスがレンチウイルスである、請求項41に記載の発現ユニット。
【請求項43】
前記ウイルスが、それ自体の外被コートタンパク質又は別のウイルスの外被コートタンパク質を用いて偽型化している、請求項42に記載の発現ユニット。
【請求項44】
前記ウイルスが、水疱性口内炎ウイルスの外被コートタンパク質を用いて偽型化している、請求項43に記載の発現ユニット。
【請求項45】
異種刺激依存性イオンチャンネルを発現している感作細胞であって、前記異種刺激依存性イオンチャンネルに関連したプロモーターと同一又は異なっていてよい発現調節要素によって前記異種刺激依存性イオンチャンネルの発現が制御されており、前記細胞の環境へのヒト介入がない場合に存在しない刺激に前記イオンチャンネルが応答し、前記イオンチャンネルの誘発によって前記感作細胞から前記イオンチャンネルの前記誘発とは異なる応答が誘導される、感作細胞。
【請求項46】
前記感作細胞が神経細胞である、請求項45に記載の感作細胞。
【請求項47】
前記刺激依存性イオンチャンネルがリガンド依存性イオンチャンネルである、請求項45に記載の感作細胞。
【請求項48】
前記刺激依存性イオンチャンネルが、TRPV1、TRPM8、及びP2Xからなる群から選択される、請求項47に記載の感作細胞。
【請求項49】
前記調節要素が、前記異種刺激依存性イオンチャンネルをコードする前記ヌクレオチド配列と前記プロモーターの間に配置されたloxP−stop−loxP配列を含む、請求項45に記載の感作細胞。
【請求項50】
前記細胞が培養細胞である、請求項45に記載の感作細胞。
【請求項51】
前記細胞が外植した組織中にある、請求項45に記載の感作細胞。
【請求項52】
請求項45から49までのいずれかに記載の感作細胞を含む生物。
【請求項53】
前記生物が、前記異種刺激依存性イオンチャンネルのためにトランスジェニックである非ヒト動物である、請求項52に記載の生物。
【請求項54】
前記生物が、前記異種刺激依存性イオンチャンネルのためにノックイン遺伝子を有する非ヒトノックイン動物である、請求項52に記載の生物。
【請求項55】
ニューロン及び神経内分泌経路をマッピングする方法であって、
(a)それらの標的細胞中で異種刺激依存性イオンチャンネルを発現させることによって標的細胞を感作するステップ、及び
(b)前記感作した標的細胞に刺激を与えて前記イオンチャンネルを誘発し、それによって前記標的細胞を活性化させて前記イオンチャンネルの誘発後に前記標的細胞の前記イオンチャンネルの前記誘発とは異なる応答を誘導するステップ;及び
(c)下流にあると想定される細胞の前記感作細胞の活性化に対する前記応答をモニタリングするステップ(下流の細胞の応答が観察されることによって、実際にこれらの細胞がニューロン又は神経内分泌経路の感作細胞の下流にあることを示す)
を含む方法。
【請求項56】
特定の細胞型の細胞を評価して、前記細胞が疾患又は症状に関連する表現型をもたらすのに関与しているかどうか判定する方法であって、
(a)それらの標的細胞中で異種刺激依存性イオンチャンネルを発現させることによって標的細胞を感作するステップ、及び
(b)前記感作した標的細胞に刺激を与えて前記イオンチャンネルを誘発し、それによって前記標的細胞を活性化させて前記イオンチャンネルの誘発後に前記標的細胞の前記イオンチャンネルの前記誘発とは異なる応答を誘導するステップ;及び
(c)前記イオンチャンネルの誘発の効果があれば、それを観察するステップ(前記表現型の出現又は低減に対応する効果が前記細胞型の前記疾患又は症状への関与を示唆する)
を含む方法。
【請求項57】
特定の細胞型の細胞を特定して、前記細胞が疾患又は症状に関連する表現型をもたらすのに関与しているかどうか判定する方法であって、
(a)それらの標的細胞中で異種刺激依存性イオンチャンネルを発現させることによって標的細胞を感作するステップ、及び
(b)前記感作した標的細胞に刺激を与えて前記イオンチャンネルを誘発し、それによって前記標的細胞を活性化させて前記イオンチャンネルの誘発後に前記標的細胞の前記イオンチャンネルの前記誘発とは異なる応答を誘導するステップ;及び
(c)前記イオンチャンネルの誘発の効果があれば、それを観察するステップ(前記表現型の出現又は低減に対応する効果が前記細胞型の前記疾患又は症状への関与を示唆する)
を含む方法。
【請求項58】
細胞型に対する効果について候補分子をスクリーニングする方法であって、
(a)前記分子を前記細胞型の異種刺激依存性イオンチャンネルを発現している感作細胞と接触させるステップ(前記異種刺激依存性イオンチャンネルに関連したプロモーターと同一又は異なっていてよい発現調節要素によって前記異種刺激依存性イオンチャンネルの発現が制御され、前記細胞の環境へのヒト介入がない場合に存在しない刺激に前記イオンチャンネルが応答し、前記イオンチャンネルの誘発によって前記感作細胞から前記イオンチャンネルの前記誘発とは異なる応答が誘導される)、及び
(b)前記接触に対して前記細胞において変化が存在する場合、それを検出するために前記感作細胞をモニタリングするステップ
を含む方法。
【請求項59】
前記異種イオンチャンネルを誘発するために前記細胞に刺激を与えるステップ、及び前記接触に対して前記刺激された細胞において変化が存在する場合、それを検出するステップをさらに含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記細胞を形態学的、生理学的、生化学的、及び遺伝子発現変化についてモニターする、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記細胞を形態学的、生理学的、生化学的、及び遺伝子発現変化についてモニターする、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
1種又は複数の細胞型に対する効果について候補分子をスクリーニングする方法であって、
(a)異種イオンチャンネルを誘発することによって(前記イオンチャンネルの誘発によって感作細胞から前記イオンチャンネルの前記誘発とは異なる応答が誘導される)、異種刺激依存性イオンチャンネルを発現している前記感作細胞を含む生物で表現型を誘発するステップ(前記異種刺激依存性イオンチャンネルに関連したプロモーターと同一又は異なっていてよい発現調節要素によって前記異種刺激依存性イオンチャンネルの発現が制御され、前記細胞の環境へのヒト介入がない場合に存在しない刺激に前記イオンチャンネルが応答する)、及び
(b)前記生物に前記候補分子を投与するステップ、及び
(c)前記候補分子を投与していない生物と比較して、前記分子を投与した生物における前記疾患又は症状に関連する前記表現型の変化を検出するために前記生物をモニタリングするステップ
を含む方法。
【請求項63】
前記生物を形態学的、生理学的、生化学的、行動、又は遺伝子発現変化についてモニターする、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
細胞型に対する効果について候補分子をスクリーニングする方法であって、
(a)それらの細胞中で異種刺激依存性イオンチャンネルを発現させることによって潜在的なスクリーニング細胞を感作し、前記イオンチャンネルを誘発するために前記感作細胞に刺激を与え、それによって前記細胞を活性化させるステップを含む方法によってスクリーニング細胞のグループを選択し(前記イオンチャンネルの誘発が前記細胞を活性化させ、それによって前記細胞から前記イオンチャンネルの前記誘発とは異なる応答が誘導される);前記細胞の活性化の前記応答があれば、それを観察するステップ(効果が観察される細胞を選択する)、
(b)前記異種刺激依存性イオンチャンネルを含まない前記選択した細胞と同じタイプのスクリーニング細胞を単離するステップ、
(c)前記分子を前記単離したスクリーニング細胞に接触させるステップ、及び
(d)前記接触に対して前記細胞において変化が存在する場合、それを検出するために前記単離したスクリーニング細胞をモニタリングするステップ
を含む方法。
【請求項65】
前記細胞を形態学的、生理学的、生化学的、及び遺伝子発現変化についてモニターする、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記標的細胞が、ニューロン細胞、分泌細胞、収縮細胞及び感覚細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−511197(P2006−511197A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−510398(P2004−510398)
【出願日】平成15年6月2日(2003.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/017448
【国際公開番号】WO2003/102156
【国際公開日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【出願人】(500516056)スローン − ケッタリング インスティチュート フォー キャンサー リサーチ (14)
【Fターム(参考)】