説明

異種非含有hBS細胞株を得るための方法

安定な異種非含有hBS細胞株を得るための方法、当該方法に従って得られる異種非含有hBS細胞株、およびその使用。方法は以下の工程:i)異種非含有手順により、胚盤胞から透明帯を除去し、栄養外胚葉で囲まれた内細胞塊を得る工程、ii)異種非含有手順により、栄養外胚葉を少なくとも部分的に除去して内細胞塊の細胞を得る工程、iii)内細胞塊の細胞を異種非含有培地中のヒト支持細胞の層上に置く工程、iv)異種非含有培地中で約5日間から約50日間、内細胞塊の細胞と、ヒト支持細胞とを共存培養する工程、v)もしあれば、栄養外胚葉過増殖から、内細胞塊の細胞またはそれらの由来する細胞を、異種非含有手順により解放する工程、vi)内細胞塊の細胞またはその由来する細胞を、異種非含有培地の新鮮な層に選択的に移して異種非含有hBS細胞を得る工程、vii)異種非含有培地中で、ヒト支持細胞と共存培養することにより、異種非含有hBS細胞を増殖して異種非含有hBS細胞株を得る工程、を包含する。異種非含有hBS細胞株は、医薬における、およびインビトロ試験における使用に適切である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定な異種非含有hBS細胞株を得るための方法、当該方法に従って得られる異種非含有hBS細胞株、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞は、それ自身を新しくする、および特異化されたまたは分化された細胞を生じる独特の能力を有する。心臓細胞または皮膚細胞のような、身体のほとんどの細胞が特異的な機能を行うよう拘束されるが、幹細胞は、それが特異的な細胞型に発達するためのシグナルを受けるまで未拘束のままである。幹細胞を独特にしているものは、特殊化されるようになるそれらの能力と合わせて、それらの増殖能力である。何年もの間、研究者たちは、喪失された、障害された、または罹患された細胞または組織を置き換えるために、幹細胞を使用するための方法を発見することに専念してきた。今までのところ、ほとんどの研究は、2つのタイプの幹細胞、胚性幹細胞および体性幹細胞に専念されている。胚性幹細胞は、着床前の受精卵母細胞、すなわち、胚盤胞に由来するのに対し、体性幹細胞は、成体器官、例えば、骨髄、表皮、腸に存在する。多分化能試験は、胚性または胚盤胞由来の幹細胞(以後、胚盤胞由来の幹細胞またはBS細胞という)は、生殖細胞を含む、生物体の全ての細胞を生じ得たのに対し、体性幹細胞は、異なる細胞型においてより制限されたレパートリーを有することが示された。
【0003】
おそらく、hBS細胞の最も広範囲な適用の可能性は、いわゆる細胞治療のために使用され得る細胞および組織の生成である。多くの疾患および異常は、細胞機能の破壊、または身体の組織の破壊から生じる。今日、提供された器官および組織はしばしば、罹患したまたは破壊された組織を置き換えるために使用される。残念なことに、これらの方法による処置に適切な異常を被る人の数は、移植可能な器官の数をはるかに上回る。hBS細胞の利用可能性およびこれらの細胞を異なる細胞運命、例えば、インスリン産生β細胞、心筋細胞、およびドーパミン産生ニューロン、に導くために効果的な方法を開発することに対する熱烈な研究は、糖尿病、心筋梗塞、およびパーキンソン病のような変性疾患の細胞ベースの処置における未来の適用についての益々の見込みを保持する。
【0004】
しかし、現在利用可能な全てのヒト胚胞盤由来の幹細胞(hBS)株は、それらの誘導および/または維持の間、いくつかの点で、動物材料に直接的にまたは間接的に曝露されている。患者において異種混入hBS細胞を使用する1つの潜在的重要性は、移植片拒絶の可能性の増大である(Martin JMら、2005)。さらに、異種曝露は、任意の臨床的適用における非ヒト病原体の移入の危険性を増加する。従って、患者において異種に曝露されたhBS細胞を使用することに関連される予測される危険性は、臨床的適用についてこれらの細胞を不適切にする。これらの問題を克服するための試みにおいて、いくつかのグループは、支持非含有マトリクス(Xu Cら、2001)、または派生のためにヒト起源の支持細胞(Richards Mら、2002、Inzunza Jら)、およびhBS細胞株の培養(Richards Mら、2003)を使用してきた。しかし、完全な異種非含有系にhBS細胞株を導き、そして継続的に培養することは、これまでのところ可能でない。hBS細胞を得、そして培養するために、完全に、異種非含有の、3つ主な問題が克服されなくてはならない。まず、異種非含有条件下での新規なhBS細胞株の派生についてのプロトコルが開発されなくてはならない。内細胞塊(ICM)の単離は、免疫手術、モルモット血清の使用を包含する手順、により伝統的に行われてきた。本発明者らは、免疫手術手順が除外され得、それゆえICM細胞の単離は動物成分への曝露を伴わずに行われ得ることを以前に報告している(Heinsら、2004)。第2および第3は、異種非含有培地の使用と組合せた異種非含有培養系が必要である。これは、異種混入を引き起こす基本培地ではないが、一般的に使用される胎児ウシ血清(FBS)または種々の動物タンパク質を含む血清置換物であるので、本発明者らはhBS細胞が長期間、ヒト血清中で培養され得るかどうか試験することにした。hBS細胞培養のためのヒト血清の使用に対する以前の報告はほとんどなく、そして短期間、すなわち、10継代未満についての培養安定性を示すのみである(Richardsら、2002および2004)。他の研究者らにより報告される、ヒト血清補充培地を使用して未分化の状態にhBS細胞を維持するための困難性は、ヒトおよび合成成分を使用するhBS細胞培養系を開発する代わりに、異種非含有培養物、ならびに完全に規定された培養条件、すなわち、完全に公知の組成および濃度を有する培養培地(規定された培養培地)の開発を探求することを促した。しかし、本発明者らは、本明細書中に記載されるように、ヒト線維芽細胞および血清を含有する培養培地に基づいたhBS細胞の増殖のための系を開発し得た。hBS細胞株SA121(WO2003055992の手順に従って確立される)は現在、この血清ベースの培地中で50継代を超えて首尾よく培養されている。
【0005】
さらに、本発明者らは、完全に異種非含有のヒト支持細胞の派生および培養のための系を開発した。ヒト包皮線維芽細胞の支持細胞のような、異種非含有ヒト支持細胞の存在が以前に報告されているが、多くの場合において、FBSのような支持細胞は、支持細胞の実質的な確立および培養の間に動物材料と接触される。
【0006】
本発明は、ヒトにまたは合成的に由来する成分のような、調節要件を満たす成分をのみ使用する、hBS細胞の派生および培養の維持のための完全な異種非含有系の首尾よい開発を報告する。本明細書中に記載される方法は、動物成分への任意の直接的なまたは間接的な曝露を回避し、それにより完全な異種非含有hBS細胞を得ることができ、細胞治療の開発のための制限されない供給源として、また、例えば、薬物発見および開発における、毒性試験における、他の適用のために、抗体およびワクチンのような医薬品の製造のために、さらに使用される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、異種非含有hBS細胞株を得るための方法に関し、方法は以下:
i)異種非含有手順により、胚盤胞から透明帯を除去し、栄養外胚葉で囲まれた内細胞塊を得る工程、
ii)異種非含有手順により、栄養外胚葉を少なくとも部分的に除去して単離された内細胞塊の細胞を得る工程、
iii)内細胞塊の細胞を異種非含有培地中のヒト支持細胞の層上に置く工程、
iv)異種非含有培地中で約5日間から約50日間、内細胞塊の細胞と、ヒト支持細胞とを共存培養する工程、
v)もしあれば、栄養外胚葉過増殖から、内細胞塊の細胞またはそれらの由来する細胞を、異種非含有手順により解放する工程、
vi)内細胞塊の細胞またはその由来する細胞を、異種非含有培地中のヒト支持細胞の新鮮な層に選択的に移して異種非含有hBS細胞を得る工程、
vii)異種非含有培地中で、ヒト支持細胞と共存培養することにより、異種非含有hBS細胞を増殖して異種非含有hBS細胞株を得る工程を包含する。
【0008】
特定の実施態様において、本発明は、上記のような異種非含有hBS細胞株を得るための方法を提供するが、方法における開始点は、上記の任意の工程であり得、すなわち、本発明の方法は、工程ii)〜工程vii)、工程iii)〜工程vii)、工程iv)〜工程vii)、工程v)〜工程vii)、工程vi)〜工程vii)、または工程vii)(または以下に記載されるように工程viii))を包含し得る。
【0009】
本明細書中で使用されるように、用語「異種非含有」は、非ヒト動物起源の材料、例えば、細胞、組織、および/または体液、ならびにそれらの派生体に、直接的にまたは間接的に決して曝露されないことを意味するために意図される。
【0010】
本発明に従って得られた異種非含有hBS細胞株を維持するために、方法はさらに以下の工程
viii)異種非含有hBS培地中で、異種非含有hBS細胞株を、ヒト支持細胞とともに共存培養することによって増殖し、そして約2日間〜約20日間、例えば、約4日間〜約12日間にわたる適切な間隔にて細胞を継代する工程を包含し得る。
【0011】
工程viii)において選択される間隔は、細胞増殖に依存する。
【0012】
上記の工程viii)はまた、本発明の特定の局面である。
【0013】
得られた異種非含有hBS細胞株を、支持細胞非含有培養系において維持することが所望され得、従って本発明に従う方法は、さらに以下の工程
ix)異種非含有hBS細胞株を、異種非含有および支持細胞非含有培養系に移す工程を包含する。
【0014】
工程ix)は、WO2004099394に従って行われ得、これは本明細書中に参考として援用される。
【0015】
工程i)
透明帯は、厚い細胞外マトリクスであり、糖タンパク質に富み、哺乳動物の卵子(卵)を取り囲む。工程i)における栄養外胚葉で囲まれた内細胞塊を得るための受精卵からの透明帯の除去は、a)酸性溶液、b)例えばヒアルロニダーゼまたはプロナーゼのような組換え酵素、またはc)機械的手順を使用することにより行われ得る。透明帯の分解の過程後、顕微鏡において外観検査が行われ得る。
【0016】
本明細書中で使用されるように、用語「栄養外胚葉で囲まれた内細胞塊」は、工程i)に受精卵を供した後に得られる材料を意味するために意図され、ここでは透明帯は、酸性加水分解、酵素的消化、または機械的手順により除去される。
【0017】
本明細書中で使用される組換え酵素は、これらの酵素についてのヒトアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有することが意図され、すなわち、本明細書中で使用される組換え酵素は、ヒトアミノ酸配列を有するが、組換え的に産生される。
【0018】
透明帯が、酸性溶液を使用することにより取り除かれる場合、胚盤胞は、約5秒間〜約180秒間、例えば、約10秒間〜約120秒間、約15秒間〜約90秒間、約20秒間〜約60秒間、約30秒間〜約50秒間のように、酸性溶液に供される。
【0019】
重要なことに、酸性溶液のpHは、透明帯の炭化水素構造を加水分解するに関して十分低く、すなわち、酸性溶液のpHは、約2〜約3、例えば約2.5〜約2.8、例えば2.5である。任意の適切な酸が使用され得る。本発明の好ましい実施態様において、酸性溶液は、pH2.5+/−0.3を伴う酸タイロード溶液(Sigma)である。
【0020】
透明体が、1つ以上の組換え酵素を使用することにより除去される場合、胚盤胞は、1つ以上の組換え酵素の溶液に供される。1つ以上の組換え酵素は、これらの酵素についてのヒトアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有することが意図される。
【0021】
適切な酵素の例は、例えば、組換えプロナーゼ、組換えヒアルロニダーゼ、および組換えトリプシンである。工程i)における適切な細胞酵素溶液のさらなる例は、組換えまたは異種非含有の、および潜在的に組み合わされるタンパク質分解酵素およびコラーゲン分解酵素、例えば、Accutase(商標)(Chemicon)、ならびに組換えまたは異種非含有の、潜在的に組み合わされるタンパク質分解酵素、コラーゲン分解酵素、およびDNアーゼ活性物、例えば、Accumax(商標)(Innovative Cell Technologies)の酵素溶液である。
【0022】
適切な濃度および処理時間は、以下に与えられる:
プロテアーゼ:10U/ml、約2〜約20分間、例えば、約2〜約10分間、約2分間〜約5分間、または約3〜4分間(最適)。
【0023】
ヒアルロニダーゼ:70.000U/ml、約2〜240分間。
【0024】
ヒト組換えトリプシン:5〜10.000U、約0.5〜約30分間。
【0025】
透明帯はまた、機械的手順により除去され得、ここでは例えばガラスキャピラリーが顕微鏡における外観検査のもとに使用される。
【0026】
工程ii)
透明帯の除去後、胚盤胞の残されたもの、すなわち、栄養外胚葉で囲まれた内細胞塊は、栄養外胚葉を少なくとも部分的に除去するために、工程ii)に供される。あるいは、自発的に孵化される胚盤胞は、直接的に工程ii)に供され得、それにより工程i)を省略する。
【0027】
工程ii)は、a)酸性溶液、b)1つ以上の組換え酵素、またはc)機械的手順を使用することにより行われ得る。
【0028】
工程ii)が酸性溶液を使用することにより行われる場合、工程i)において得られた栄養外胚葉で囲まれた内細胞塊は、約5秒間〜約180秒間、例えば、約10秒間〜約120秒間、約15秒間〜約90秒間、約20秒間〜約60秒間、約30秒間〜約50秒間のように、酸性溶液に供される。
【0029】
重要なことに、酸性溶液のpHは、栄養外胚葉のタンパク質構造を加水分解するに関して十分低く、すなわち、酸性溶液のpHは、約2〜約3、例えば約2.5〜約2.8、例えば2.5である。任意の適切な酸が使用され得る。本発明の好ましい実施態様において、酸性溶液は、pH2.5+/−0.3を伴う酸タイロード溶液(Sigma)である。
【0030】
栄養外胚葉が、1つ以上の組換え酵素を使用することにより少なくとも部分的に除去される場合、栄養外胚葉で囲まれた内細胞塊は、1つ以上の組換え酵素の溶液に供される。1つ以上の組換え酵素は、これらの酵素についてのヒトアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する組換え酵素であることが意図される。
【0031】
適切な酵素は、組換えタンパク質分解酵素、例えば、組換えトリプシンおよびTrypLE(商標)Selectを含むセリンプロテアーゼである。TrypLE(商標)Selectを使用する場合、工程ii)は、典型的に、工程i)において得られた栄養外胚葉で囲まれた内細胞塊を、未希釈の直ぐに使用できる濃度のTrypLE(商標)Selectに、約0.5〜約10分間、例えば、約0.5〜約8分間、約0.5〜約5分間、約1〜約3分間、例えば1.5分間、供することにより行われる。組換えトリプシンを使用する場合、工程ii)は典型的に、工程i)において得られた栄養外胚葉で囲まれた内細胞塊を、約5.000U〜約10.000Uの組換えトリプシンに、約0.5分間〜約30分間供することにより行われる。
【0032】
工程(ii)における適切な細胞酵素溶液のさらなる例は、組換えまたは異種非含有の、潜在的に組み合わされるタンパク質分解酵素およびコラーゲン分解酵素、例えば、Accutase(商標)(Chemicon)、ならびに組換えまたは異種非含有の、潜在的に組み合わされるタンパク質分解酵素、コラーゲン分解酵素、およびDNアーゼ活性物、例えば、Accumax(商標)(Innovative Cell Technologies)の酵素溶液である。
【0033】
栄養外胚葉はまた、機械的手順により少なくとも部分的に除去され得、これはガラスキャピラリーを切断道具として使用することにより行われ得る。内細胞塊の細胞の検出は、顕微鏡により、可視的に容易に行われ得る。
【0034】
工程iii)
工程iii)において、工程ii)後に得られる材料は、典型的に、顕微鏡の下でガラスキャピラリーを使用することにより、ヒト支持層上に置かれる。さらに、必要であれば、ヒト支持層は、例えば、PRIMARIA(登録商標)プラスチック皿のような適切な培養皿中に含まれ得る。必要であれば、皿の培養表面は、適切なマトリクス材料で、この材料が異種非含有であれば、コートされ得る。この情況における使用に適切な材料としては、組換えヒトゼラチンが挙げられる。
【0035】
工程iv)
本発明に従う方法の工程iv)において、内細胞塊の細胞は、細胞集団を増殖するために、約5日間〜約50日間、例えば、約5日間〜約30日間、例えば、約5日間〜約20日間、または約5日間〜約15日間、共存培養される。本発明の1つの実施態様において、内細胞塊の細胞は、工程iv)において10日間、共存培養される。
【0036】
1回以上の培地交換が、工程iv)における内細胞塊の細胞の共存培養の間に、約20%〜約100%、例えば、約30%〜約80%、約40%〜約60%の培地を交換することにより行われ得る。本発明の1つの実施態様において、1回以上の培地の交換が、工程iv)における内細胞塊の細胞の共存培養の間に、約50%の培地を交換することにより行われる。1回以上の培地の交換は、約2日間〜約14日間、例えば、約4日間〜約7日間の間隔で行われ得る。
【0037】
残余の栄養外胚葉細胞は、工程iii)において内細胞塊の細胞を置く場合、ヒト支持細胞層上に置かれ得たので、顕微鏡による外観検査が、栄養外胚葉が内細胞塊の細胞または内細胞塊由来の細胞の増殖を妨げるか否かを見るために、一定の間隔で行われ得る。細胞を工程v)に持ち込むのに適切な時点は、顕微鏡における検査により、かなりの細胞増殖が数日にわたって注目される時である。
【0038】
工程iv)において行われる内細胞塊の細胞の増殖の間、これらの細胞のいくつかは、胚盤胞由来の幹(BS)細胞へのそれらの形質転換を開始するかもしれない。従って、工程iv)において得られた細胞集団は、内細胞塊の細胞およびそれらの由来する細胞、すなわち、BS細胞を含み得る。
【0039】
工程v)およびvi)
上記のように、内細胞塊の細胞およびそれらの由来する細胞は、残余の栄養外胚葉が混入され得る。この場合であれば、栄養外胚葉は、内細胞塊の細胞またはそれらの由来する細胞を取り囲む傾向がある。内細胞塊の細胞またはその由来する細胞は、a)機械的手順またはb)1つ以上の組換え酵素を使用することにより、このような栄養外胚葉過増殖から解放され得る。
【0040】
適切な機械的手順は、ガラスキャピラリーを切断道具として使用することである。内細胞塊の細胞またはその由来する細胞は、顕微鏡における外観検査において選択的に切り出され、そして異種非含有培地中のヒト支持細胞の新鮮な層に移されて、異種非含有hBS細胞を得る(工程vi)。
【0041】
あるいは、もしあれば、栄養外胚葉過増殖から、内細胞塊の細胞またはその由来する細胞は、工程v)において、組換えトリプシンおよびTrypLE(商標)Selectを含む1つ以上の組換えタンパク質分解酵素を使用することにより解放される。工程v)において組換えトリプシンが、内細胞塊の細胞またはその由来する細胞を解放するために使用される場合、内細胞塊の細胞またはその由来する細胞は典型的に、約5.000U〜約10.000Uの組換えトリプシンとともに、約0.5分間〜約30分間インキュベートされる。工程v)においてTrypLE(商標)Selectが、内細胞塊の細胞またはその由来する細胞を解放するために使用される場合、内細胞塊の細胞またはその由来する細胞は典型的に、未希釈の直ぐに使用できる濃度のTrypLE(商標)Selectとともに、約0.5〜約15分間インキュベートされる。
【0042】
工程v)およびvi)における適切な細胞酵素溶液のさらなる例は、組換えまたは異種非含有の、および潜在的に組み合わされるタンパク質分解酵素およびコラーゲン分解酵素、例えば、Accutase(商標)(Chemicon)、ならびに組換えまたは異種非含有の、潜在的に組み合わされるタンパク質分解酵素、コラーゲン分解酵素、およびDNアーゼ活性物、例えば、Accumax(商標)(Innovative Cell Technologies)の酵素溶液である。
【0043】
内細胞塊の細胞またはその由来する細胞を栄養外胚葉から、もしあれば、解放した後、内細胞塊の細胞またはその由来する細胞は、顕微鏡における外観検査において選択され、そして異種非含有培地中のヒト支持細胞の新鮮な層に移されて、異種非含有hBS細胞を得る(工程vi)。
【0044】
工程vii)
工程vii)において、異種非含有hBS細胞は、ヒト支持細胞と共存培養することにより増殖されて、異種非含有hBS細胞株を得る。1回以上の継代が、工程vii)における異種非含有hBS細胞の増殖の間に行われ得、ここではhBS細胞は、顕微鏡における外観検査において選択的に継代される。これらの継代は、ガラスキャピラリーを切断道具として使用することにより行われ得る。あるいは、工程vii)における1回以上の継代は、1つ以上の組換え酵素、例えば、TrypLE(商標)Select、組換えトリプシン、および/または組換えコラゲナーゼを使用することにより行われ得る。
【0045】
TrypLE(商標)Selectを使用する場合、工程vii)は典型的に、未希釈の直ぐに使用できる濃度のTrypLE(商標)Selectを、約0.5〜約15分間使用することにより行われる。
【0046】
組換えトリプシンを使用する場合、工程vii)は典型的に、約5.000U〜約10.000Uの組換えトリプシンを、約0.5分間〜約30分間使用することにより行われる。
【0047】
組換えコラゲナーゼを使用する場合、工程vii)は典型的に、約200U/mlの組換えコラゲナーゼを、約1分間〜約40分間使用することにより行われる。工程(vii)における適切な細胞酵素溶液のさらなる例は、組換えまたは異種非含有の潜在的に組み合わされるタンパク質分解酵素およびコラーゲン分解酵素、例えば、Accutase(商標)(Chemicon)、ならびに組換えまたは異種非含有の潜在的に組み合わされるタンパク質分解酵素、コラーゲン分解酵素、およびDNアーゼ活性物、例えば、Accumax(商標)(Innovative Cell Technologies)である。
【0048】
個々の継代において使用される培地は、同じであるかまたは異なり得る。
【0049】
工程viii)
異種非含有hBS細胞株の増殖は、工程vii)において記載される増殖に従う。
【0050】
本発明の1つの実施態様において、工程viii)における細胞の継代は、機械的解体により、例えば、ガラスキャピラリーを切断道具として使用することにより、行われ得る。あるいは、工程viii)における細胞の継代は、1つ以上の組換え酵素、例えば、TrypLE(商標)Select、組換えトリプシン、および/または組換えコラゲナーゼを使用することにより行われ得る。TrypLE(商標)Select、組換えトリプシン、および組換えコラゲナーゼを使用するための濃度およびインキュベーション時間は、工程vii)について記載されたようである。
【0051】
工程(viii)における適切な細胞酵素溶液のさらなる例は、組換えまたは異種非含有の、および潜在的に組み合わされるタンパク質分解酵素およびコラーゲン分解酵素、例えば、Accutase(商標)(Chemicon)、ならびに組換えまたは異種非含有の、潜在的に組み合わされるタンパク質分解酵素、コラーゲン分解酵素、およびDNアーゼ活性物、例えば、Accumax(商標)(Innovative Cell Technologies)の酵素溶液である。
【0052】
工程ix)
本発明の特定の実施態様において、得られたhBS細胞株は、工程ix)において異種非含有の、支持非含有細胞系に移され、当該培養系は、例えば、組換えヒトゼラチン、組換えヒトフィブロネクチン、ヒト胎盤細胞外マトリクスのような適切な異種非含有支持マトリクスと、hBS細胞株の確立の際(工程iii)、iv)、vi)、vii))、またはヒト支持細胞上の維持の際(viii))に用いられた異種非含有培地と同じであり得るか、またはそれとは異なり得る、適切な異種非含有培地とを含み得る。hBS細胞株の未分化の増殖を維持するために、異種非含有培地は、ヒト支持細胞により馴化され得るか、またはこれは、例えば、高濃度における組換えbFGFおよび/またはWNT経路の活性化因子のような、適切な因子が補充され得る。
【0053】
ヒト支持細胞の調製
工程iii)、vi)、vii)、およびviii)のいずれにおいても使用されるヒト支持細胞は、異種非含有条件下で得られる。ヒト支持細胞は、健常なヒト組織に由来し、そしてバイオプシーにより獲得され得る。
【0054】
ヒト支持細胞が由来し得るヒト組織は、肺性、胎児、新生児、幼若、または成体の細胞を包含し、そしてこれはさらに、包皮を含む皮膚、臍帯、筋肉、肺、上皮、胎盤、卵管、腺、間質、または胸部に由来する組織を包含する。ヒト支持細胞は、ヒト線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、ケラチン生成細胞、内皮細胞、および上皮細胞からなる群に関する細胞タイプに由来し得る。ヒト支持細胞を派生するために使用され得る特定の細胞タイプの例は、胎性線維芽細胞、胚外内胚葉細胞、胚外中胚葉細胞、胎児線維芽細胞および/または線維細胞、胎児筋細胞、胎児皮膚細胞、胎児肺細胞、胎児内皮細胞、胎児上皮細胞、臍帯間葉細胞、胎盤線維芽細胞および/または線維細胞、胎盤内皮細胞、出生後ヒト包皮線維芽細胞および/または線維細胞、出生後筋細胞、出生後皮膚細胞、出生後内皮細胞、成体皮膚線維芽細胞および/または線維細胞、成体筋細胞、成体卵管内皮細胞、成体腺内皮細胞、成体子宮内膜間質細胞、成体乳ガン実質細胞、成体内皮細胞、成体上皮細胞、または成体ケラチン生成細胞を包含する。
【0055】
本発明において使用される支持細胞はさらに、不死化され得るか、または遺伝的に改変され得る。支持細胞の不死化は、培養において理論的に無期限の数の分裂を介して増殖する能力の獲得を意味する。不死化を行うためのいくつかの方法があり、および1つのアプローチは、例えば、ウイルス、レトロウイルスで細胞を形質転換することであるか、および/またはテロメラーゼ逆転写酵素タンパク質(TERT)の発現による。TERTは、ほとんどの細胞において不活性であるが、hTERTが外因的に発現される場合、細胞は複製老化を回避するのに十分なテロメア長を維持し得る。
【0056】
さらに、支持層はゲノムに取り込まれる特異的な遺伝子を有するように遺伝的に改変され得る。これらの遺伝子は、目的のマーカー、またはhBS細胞に有利であることが知られる生体分子、例えばbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)のような増殖因子の合成をコードし得る。
【0057】
ヒト支持細胞がhBS細胞に由来する場合、hBS細胞に由来する細胞は線維芽細胞であり得る。
【0058】
本発明の1つの実施態様において、ヒト支持細胞は、新生児ヒト包皮に由来する。
【0059】
本発明の特定の実施態様において、ヒト支持細胞は、線維芽細胞であり、好ましくはヒト新生児包皮線維芽細胞に由来する。
【0060】
ヒト包皮サンプルは、割礼された男児から得ることができる。サンプルは、2×Gentamycin(Invitrogen)を含有する滅菌IMDM培地(Invitrogen)のような、適切な滅菌培地中で無菌的に選択され得る。皮膚外殖片は、IMDM培地(Invitrogen)、1%ペニシリン−ストレプトミオシン(Gibco Invitrogen Corporation)、および10%のヒト血清(Tallhedenら、2005)を含有する、25cmprimaria組織培養フラスコ(Becton Dickinson)のような、組織培養フラスコ中に置かれる。約10日後、コンフルエントな単層が確立される。細胞は、TrypLE(商標)Select(Invitrogen)を使用して連続的に継代された。本発明者らは、各継代間の適切な期間は、約2〜約20日間であり、通常、最大が20継代のように、少なくとも15継代が適切であることを見出した。増殖後、それらはマイコプラズマ、1型および2型HIV、B型およびC型肝炎、サイトメガロウイルス、1型および2型単純ヘルペスウイルス、エプスタインバールウイルス、およびヒトパピローマウイルスを含むヒト病原体の標準パネルについて試験された。
【0061】
異種非含有培地
培地は、ヒト内細胞塊の細胞の増殖に適切な任意の基本培地であり得る。1つの適切な培地は、1〜30%v/vヒト血清および2〜100ng/ml組換えbFGFが補充されたDulcecco改変Eagle培地である(DMEM)。1つの実施態様において、基本培地は、20%v/vヒト血清を含む。別の実施態様において、基本培地は10ng/ml組換えbFGFを含む。他の基本培地が、それらが液体の形態において栄養成分、すなわち、微量元素のような無機成分およびアミノ酸のような有機成分、塩、ビタミン、エネルギー提供剤、糖を含む炭水化物などを伴う基剤を、内細胞塊の細胞に提供する限り、使用され得る。重要なことは、培地は異種非含有である。
【0062】
工程iii)、iv)、vi)、vii)、および/またはviii)のいずれにおいても使用される異種非含有培地は、ヒト内細胞塊の細胞の増殖に適切な基本培地を含む。1つの適切な基本培地は、Dulbecco改変Eagle培地である(DMEM)である。しかし、他の基本培地が同様に作用し得る。異種非含有基本培地に加えて、異種非含有培地はさらに、ヒト血清、組換えbFGF、L−グルタミン、またはglutamax、非必須アミノ酸、β−メルカプトエタノール、ペニシリン、および/またはストレプトマイシンを含み得る。
【0063】
異種非含有培地におけるヒト血清の濃度は、好ましくは、約1%〜30%v/vのヒト血清、例えば、約10%v/v〜約30%v/vヒト血清、約15%v/v〜約25%v/vヒト血清、およびより好ましくは20%v/vヒト血清である。
【0064】
異種非含有培地における組換えbFGFの濃度は、好ましくは、約2ng/ml〜約100ng/ml組換えbFGF、例えば、約5ng/ml〜約50ng/ml組換えbFGF、約5ng/ml〜約25ng/ml組換えbFGF、約5ng/ml〜約15ng/ml組換えbFGF、例えば、約10ng/ml組換えbFGFである。
【0065】
異種非含有培地におけるL−グルタミンまたはGlutamax(登録商標)の濃度は、好ましくは、約0.5mM〜約20mM、例えば、約0.75mM〜約10mM、約1mM〜約5mM、例えば、2mMである。
【0066】
異種非含有培地における非必須アミノ酸の濃度は、好ましくは、約0.01mM〜約1mM、例えば、約0.03mM〜約0.8mM、約0.05mM〜約0.6mM、約0.07mM〜約0.4mM、約0.09mM〜約0.2mM、例えば、0.1mMのようである。
【0067】
異種非含有培地におけるβ−メルカプトエタノールの濃度は、好ましくは、約10μM〜約200μM、例えば、約25μM〜約175μM、約50μM〜約150μM、約75μM〜約125μM、例えば、100μMである。
【0068】
異種非含有培地におけるペニシリンの濃度は、好ましくは、約5単位/ml〜約200単位/ml、例えば、約10単位/ml〜約150単位/ml、約25単位/ml〜約100単位/ml、約25単位/ml〜約75単位/ml、例えば、約50単位/mlである。
【0069】
異種非含有培地におけるストレプトアビジンの濃度は、好ましくは、約5μg/ml〜約200μg/ml、例えば、約10μg/ml〜約150μg/ml、約25μg/ml〜約100μg/ml、約25μg/ml〜約75μg/ml、例えば、約50μg/mlである。
【0070】
また、他の異種非含有培地が、増殖工程(vii)および(viii)におけるような、本発明の1つ以上の個々の工程において使用され得る。このような培地は、塩、ビタミン、エネルギー供給源(例えば、グルコース)、鉱物、およびアミノ酸を含み得る。培地に添加される適切な増殖因子は、例えば、GABA,ピペコール酸、塩化リチウム、およびトランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)、およびbFGFであり得る。さらに、その培地は化学的に規定され得る。従って、本発明において派生される異種非含有hBS細胞株は、血清を含有する培地以外の培地において、継代培養または増殖され得る。
【0071】
ヒト血清の調製
高質のヒト血清(Tallhedenら、2005)が、本発明者らの実験室において繰り返し産生された。血液は、病院の血液センターにて多数の標準病原体について試験された(BおよびC型肝炎、HIV、HTLV、および梅毒)。
【0072】
従って、工程iii)、iv)、vi)、vii)、およびviii)のいずれにおいても使用されるヒト血清は、以下の工程により調製される
a)ヘパリンでコートされていないバッグ中に健常なヒト血液を回収する工程
b)約0.5時間〜約5時間、例えば、約0.5時間〜約2時間、ヘパリンでコートされていないバッグを攪拌する工程、
c)少なくとも10時間、ほぼ5℃の温度にて、ヘパリンでコートされていないバッグをインキュベートする工程、
d)必要に応じて、例えば、非凝固フィブリンの不在のような凝固の質、液相の不透明度に基づいて選択する工程
e)凝固材料から血清を分離する工程
f)工程d)において得られた血清を滅菌濾過する工程
g)少なくとも15ドナーから血清をプールする工程
h)使用の前に血清を凍結する工程。
【0073】
本発明の特定の実施態様において、異種非含有hBS細胞株を得るための方法は、以下の工程:
1)約10秒間〜約10分間、好ましくは約30秒間〜約60秒間、室温での、胚盤胞と酸タイロード溶液とのインキュベーションにより、透明帯および栄養外胚葉の少なくとも一部分を除去して、単離された内細胞塊の細胞を得る工程、
2)DMEM、ヒト血清、組換えbFGF、L−グルタミン、またはglutamax、非必須アミノ酸、β−メルカプトエタノール、ペニシリン、およびストレプトマイシンを含む異種非含有培地中のヒト包皮線維芽細胞の支持細胞の層上に内細胞塊の細胞を置く工程、
3)約5日間〜約15日間、少なくとも50%の異種非含有培地を3〜5日毎に交換して、内細胞塊の細胞と、ヒト包皮線維芽細胞の支持細胞とを共存培養する工程、
4)内細胞塊の細胞またはその由来する細胞を、もしあれば、栄養外胚葉過増殖から、TrypLE(商標)Select(Invitrogen)を酵素処理として使用することにより、解放する工程、
5)内細胞塊またはその由来する細胞を、異種非含有培地中のヒト包皮線維芽細胞の支持細胞の新鮮な層に選択的に移して、異種非含有hBS細胞を得る工程、
6)異種非含有hBS細胞を、異種非含有培地中でヒト包皮線維芽細胞の支持細胞と共存培養することにより増殖して、異種非含有hBS細胞株を得る工程、を包含する。
【0074】
特定の実施態様において、本発明は、上記のように異種非含有hBS細胞株を得るための方法を提供するが、方法における開始点は、上記の任意の工程であり得、すなわち、本発明の方法は、工程2)〜工程6)、工程3)〜工程6)、工程4)〜工程6)、工程5)〜工程6)、または工程6)(または以下に記載されるように工程7))を包含し得る。
【0075】
工程6)において得られた異種非含有hBS細胞株の維持は、さらなる工程
7)異種非含有培地中でヒト包皮線維芽細胞の支持細胞と共存培養することにより、異種非含有hBS細胞株を増殖し、少なくとも50%の異種非含有培地を3〜5日毎に交換し、そして適切な間隔にて、例えば3〜8日毎に細胞を継代する工程により行われ得る。
【0076】
工程1)における透明帯の除去後に顕微鏡における外観検査が行われ得る。
【0077】
上記の異種非含有培地における個々の成分の好ましい濃度に関する詳細および事項は、変更すべきところは変更して、工程2)、3)、5)、6)、および7)において使用される異種非含有培地に適用される。
【0078】
工程3)において、外観検査は、栄養外胚葉が、内細胞塊の細胞またはその由来する細胞の増殖を干渉するか否かをみるために、一定の間隔にて行われ得る。
【0079】
本発明の1つの実施態様において、内細胞塊の細胞またはその由来する細胞は、顕微鏡における外観検査の際にガラスキャピラリーを切断道具として使用することにより、工程5)において選択的に移される。
【0080】
工程7)における異種非含有hBS細胞株の増殖に適切な継代間隔は、細胞増殖に依存し、そしてガラスキャピラリーを使用する手作業の移動により行われ得る。
【0081】
さらなる局面
以下に記載される本発明のさらなる局面において、上記の主要な局面の下に記載される詳細および事項が、変更すべきところは変更してしかるべく適用される。
【0082】
本発明の別の局面は、異種非含有hBS細胞を得るための方法に関し、以下の工程:
i)異種非含有手順により、透明帯を有しない胚盤胞から、栄養外胚葉を少なくとも部分的に除去して内細胞塊の細胞を得る工程、
ii)内細胞塊の細胞を異種非含有培地中のヒト支持細胞の層上に置く工程、
iii)異種非含有培地中で約5日間〜約50日間、内細胞塊の細胞と、ヒト支持細胞とを共存培養する工程、
iv)もしあれば、栄養外胚葉過増殖から、内細胞塊の細胞またはそれらの由来する細胞を、異種非含有手順により解放する工程、
v)内細胞塊の細胞またはその由来する細胞を、異種非含有培地中のヒト支持細胞の新鮮な層に選択的に移して異種非含有hBS細胞を得る工程、
vi)異種非含有培地中で、ヒト支持細胞と共存培養することにより、異種非含有hBS細胞を増殖して異種非含有hBS細胞株を得る工程を包含する。
【0083】
本発明のなお別の局面は、異種非含有hBS細胞株を得るための方法に関し、以下の工程:
i)少なくとも部分的に栄養外胚葉非含有の内細胞塊の細胞を異種非含有培地中のヒト支持細胞の層上に置く工程、
ii)異種非含有培地中で約5日間〜約50日間、内細胞塊の細胞と、ヒト支持細胞とを共存培養する工程、
iii)もしあれば、栄養外胚葉過増殖から、内細胞塊の細胞またはそれらの由来する細胞を、異種非含有手順により解放する工程、
iv)内細胞塊の細胞またはその由来する細胞を、異種非含有培地中のヒト支持細胞の新鮮な層に選択的に移して異種非含有hBS細胞を得る工程、
v)異種非含有培地中で、ヒト支持細胞と共存培養することにより、異種非含有hBS細胞を増殖して異種非含有hBS細胞株を得る工程を包含する。
【0084】
本発明のなお別の局面は、異種非含有hBS細胞株を得るための方法に関し、以下の工程:
i)異種非含有培地中で約5日間〜約50日間、少なくとも部分的に栄養外胚葉非含有の内細胞塊の細胞と、ヒト支持細胞とを共存培養する工程、
ii)もしあれば、栄養外胚葉過増殖から、内細胞塊の細胞またはそれらの由来する細胞を、異種非含有手順により解放する工程、
iii)内細胞塊の細胞またはその由来する細胞を、異種非含有培地中のヒト支持細胞の新鮮な層に選択的に移して異種非含有hBS細胞を得る工程、
iv)異種非含有培地中で、ヒト支持細胞と共存培養することにより、異種非含有hBS細胞を増殖して異種非含有hBS細胞株を得る工程を包含する。
【0085】
本発明はまた、当該異種非含有hBS細胞株を得るための方法とは別に、異種非含有hBS細胞株の増殖および培養の維持に関する。本明細書中に記載されるヒト血清ベースの培地、およびヒト支持細胞は、変更すべきところは変更して、増殖の方法に適用され得る。さらなる詳細は、以下の工程vii)および工程viii)の下での記載から明らかである。
【0086】
異種非含有hBS細胞株の特徴づけ
本発明はさらに、本発明に従う方法により得られる異種非含有hBS細胞株に関する。このような異種非含有hBS細胞株は、任意の非ヒト動物材料に直接的にまたは間接的に決して曝露されておらず、方法の全ての工程における全ての成分がまた、任意の非ヒト動物材料、例えば、非ヒト哺乳動物に由来する任意の材料に曝露されていないことを意味する。従って、本発明に従って使用されたヒト支持細胞は、任意の非ヒト動物材料への任意の曝露を伴わずに派生され得る。ヒト起源の異種非含有hBS細胞株の確立および維持の間に使用される任意の有機材料は、ヒト起源であるか、または合成、半合成、または組換えの材料であり得る。
【0087】
本発明に従う異種非含有hBS細胞株は、自己再生および多分化能を適切な期間維持し、したがって、これは適切な期間安定である。この情況において、用語「安定な」は、本発明に従うヒト支持細胞の層上で増殖される場合、50週間よりも多く、例えば、40週間よりも多く、30週間よりも多く、20週間よりも多く、15週間よりも多く、未分化の状態における増殖能力を示すことが意図される。従って、本発明に従う異種非含有hBS細胞株は、理論的に不死である。
【0088】
本発明の方法に従う方法により得られる異種非含有hBS細胞株は、分化された細胞の調製のために使用され得る。それゆえ、本発明はまた、このような分化された細胞に関する。
【0089】
さらに、本発明に従う異種非含有hBS細胞または細胞株は、凍結および解凍を受け得る。特定の実施態様において、本発明において得られる異種非含有hBS細胞株は、本明細書中で参考として援用されるCellartis、WO2004098285により以前に示されるガラス化法に従って、凍結および解凍され得る。
【0090】
hBS細胞培養物の均質性を増すために、本発明において得られた細胞は、本明細書中に参考として援用されるWO2005059116において記載されるクローンの派生に供され得る。
【0091】
本発明により得られる異種非含有hBS細胞株は、一般的な要件を満たす。細胞株は、1つ以上の以下の、特に少なくとも以下の特徴の4、5、6、7、または8の特徴を有する
i)分裂が不活性化された支持細胞上で増殖される場合、15週間よりも多く、未分化の状態における増殖能力を示す、および/または
ii)正常な正倍数性の染色体核型を示す、および/または
iii)培養の間、安定な染色体核型を示す、および/または
iv)インビトロおよびインビボの両方で全てのタイプの胚葉の派生体に分化する可能性を維持する、および/または
v)少なくとも2つの以下の分子マーカー、OCT−4、アルカリホスファターゼ、カルボヒドレートエピトープSSEA−3、SSEA−4、TRA 1−60、TRA 1−81、およびモノクローナル抗体GCTM−2により認識されるケラチン硫酸/コンドロイチン硫酸の細胞周囲マトリクスのプロテイングリカンのタンパク質核を示す、ならびに/または
vi)分子マーカーSSEA−1または他の分化マーカーを示さない、ならびに/または
vii)その多分化能性を維持し、そして免疫不全マウスに注入される場合、インビボで奇形腫を形成する、ならびに/または
viii)分化し得る。
【0092】
本発明の異種非含有hBS細胞株は、少なくとも1つの、例えば、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つの、または少なくとも6つの以下の基準:Oct−4、TRA−1−60、TRA−1−81、SSEA−3、およびSSEA−4についてのポジティブな反応、ならびにSSEA−1についてのネガティブな反応を示す。
【0093】
以下の、分化段階に関して異種非含有hBS細胞を特徴づけするための方法において、多分化能および核型が記載される。これらの方法は、本発明の方法に従って得られたhBS細胞が上記の基準を満たすか否かを調査するために使用され得る。
【0094】
免疫組織化学
本発明に従う異種非含有hBS細胞は、それらの分化の状態を監視するために、未分化の細胞についての免疫組織化学的のマーカー、Oct−4、TRA−1−60、TRA−1−81、SSEA−3、およびSSEA−4に対して分析され得る。
【0095】
アルカリホスファターゼ
アルカリホスファターゼおよびテロメラーゼ活性はしばしば、未分化のhBS細胞についてのマーカーとして考慮される。活性は、任意の利用可能な市販のキットにより測定され得る。
【0096】
インビトロでの多分化能
異種非含有hBS細胞株の多分化能は、2〜7日毎の培地の交換を伴う約3〜4週間の培養の間、組織皿においてコロニーを自発的に分化させることにより試験される。コロニーは、3つの異なる胚葉からの細胞を同定するために、免疫組織化学により分析される。適切な抗体は、外胚葉についてβチューブリン、中胚葉についてASMA(α平滑筋アクチン)、および内胚葉についてHNF3β(肝臓核因子3β)である。
【0097】
インビボでの多分化能−奇形腫
ヒトhBS細胞株が多分化能を有したままであったか否かを分析するための1つの方法は、腫瘍、奇形腫を得るために免疫不全マウスに細胞を外殖することである。腫瘍において見出される種々のタイプの組織は、全ての3つの胚葉を示すべきである。重症複合免疫不全(SCID)マウス、Bリンパ球およびTリンパ球を欠損する系統は、奇形腫形成の分析のために使用され得る。ヒトBS細胞は、精巣中または腎臓被膜下のいずれかに外科的に置かれ得る。精巣または腎臓において、BS細胞は、10 000〜100 000細胞の範囲において移植され得る。腫瘍は通常、約1ヶ月後に触診可能である。次いで、マウスは1〜4ヶ月後に屠殺され、そして腫瘍が切り出され、そしてパラフィン−または凍結−切片法のために固定化される。続いて、腫瘍組織は免疫組織化学法により分析される。全ての3つの胚葉について特異的なマーカーが使用され得る。
【0098】
遺伝子特徴づけ:染色体分析、および蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、およびテロメラーゼ活性
試験される異種非含有hBS細胞株の染色体は、トリプシン−GiemsaまたはDAPI染色を使用して可視化され得る。蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)分析について、第12、13、17、18、20、21染色体、および性染色体(XおよびY)についてのプローブを含む市販のキットが、製造業者の指示に従って、僅かな改変を伴って使用され得る。スライドは、適切なフィルターおよびソフトウェアを備える倒立顕微鏡においてさらに分析され得る。幹細胞、および胚盤胞由来の幹細胞はさらに、酵素テロメラーゼのそれらの活性について特徴付けられ得、これは例えば、テロメラーゼPCR ELISAキット(Roche)を用いて試験され得る。キットは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による産物の増殖によるテロメラーゼの内部活性、および酵素免疫吸着法(ELISA)を用いるその検出を使用する。テロメアーゼ活性は、QPCRにより測定されても良い。
【0099】
遺伝的特徴づけ:QPCR
本発明の細胞の分化の状態は、特異的遺伝子についてのQPCRによりさらに試験され得る。以下においてこれがどのように行われ得るのかを簡潔に記載する。未分化のまたは分化されたhBS細胞コロニーは、全コロニーとして培養プレートから機械的に分離され得、そしてPBS中で洗浄され得、そして−80℃において保存され得る。RNAは、例えば、Qiagen RNeasy Mini Kitを、製造業者の指示に従い使用してさらに抽出され得る。それゆえ、逆転写が、Rotorgene3000(Corbett Research)においてBio−Rad iScript First Strand Synthesisキット(製造業者の指示に従う)のような、適切なキットを使用して行われ、そしてQPCRが適切な条件下で行われる。全ての遺伝子は同じ泳動において定量され得、そして−可能であれば−いくつかのサンプルの分化の状態が、遺伝子マーカーに基づく個々のサンプルについての数学的指数を算定することにより比較され得る。(より詳細なプロトコルは、WO2006094798において記載される)。
【0100】
ヒト病原体のパネルについての試験
本発明において使用される、支持細胞、血清、および胚盤胞のような個々の成分は、使用の前に、ならびに異種非含有hBS細胞株は、一旦確立されると、ヒト病原体、例えば、マイコプラズマ、1型および2型ヒト免疫不全ウイルス、B型およびC型肝炎、サイトメガロウイルス、1型および2型単純ヘルペスウイルス、エプスタインバールウイルス、およびヒトパピローマウイルスについて試験され得る。ヒト病原体の不在は、もちろん、異種非含有hBS細胞株および細胞、または細胞株に由来する他の生物学的材料の任意の臨床的使用に非常に重要である。
【0101】
シアル酸 Neu5Gc試験
本発明に従って派生される異種非含有hBS細胞は、膜結合糖分子であるシアル酸Neu5Gcについてさらに試験され得る。この試験のネガティブな結果は、非ヒト動物材料への直接的なまたは間接的な曝露が何ら生じなかったことの指標として見られ得る。
【0102】
本発明に従う異種非含有hBS細胞または細胞株の使用
本発明に従う異種非含有hBS細胞株は、その分化された派生体の調製、例えば、全ての3つの胚葉の前駆体細胞、および異なって分化された細胞タイプについて特有の特徴、例えば、肝細胞様特徴、心筋細胞様特徴、ニューロン様特徴を示すより分化された細胞を使用し得る。
【0103】
GMP(良好な製造手順)産生
本発明に従う異種非含有hBS細胞株は、GMP産生、例えば、hBS細胞および/またはその分化された細胞の臨床的なGMP産生にさらに使用され得る。さらに、本明細書中に記載される異種非含有派生のための方法は、臨床的に適用可能な細胞株および派生体を提供するためのGMPおよび/またはcGMP条件下で行われ得る(Martinら、 Nat.Med 2005)。
【0104】
医学的使用
本発明に従う異種非含有hBS細胞株、またはその分化された派生体は、医療において使用され得る。例えば、異種非含有hBS細胞株またはその分化された派生体は、組織変性により引き起こされる病変および/または疾患の予防および/または処置のための医薬品を製造するために使用され得る。さらに、異種非含有hBS細胞株、またはその分化された派生体は、代謝的な病変および/または疾患の処置および/または予防のための医薬品を製造するために使用され得る。
【0105】
本発明の方法に従う方法により得られるhBS細胞は、疾患の予防および/または処置について、哺乳動物への異種非含有hBS細胞の移植のための医薬を製造するために使用され得る。特定の局面は、自家移植における異種非含有hBS細胞の使用であり、すなわち、問題の特定の患者からのヒト材料のみが、異種非含有hBS細胞および/または細胞株の調製において使用されている。
【0106】
多くの異なる種類の疾患が想定され得、ここでは本発明に従う異種非含有細胞または細胞株は使用に適切であり、肝臓疾患、心筋梗塞を含む心臓血管疾患;例えば、パーキンソン病およびアルツハイマー病を含む神経変性疾患のような変性疾患;糖尿病が挙げられる。
【0107】
このような医薬は、水性媒体のような薬学的に受容される媒体中に分散された未分化の異種非含有hBS細胞または分化された異種非含有hBS細胞を含み得る。媒体は、pH調節剤、安定化剤、保存剤、浸透圧調節剤、および生理学的に受容される塩からなる群より選択される1つ以上の添加剤;ならびに/または治療的に活性な物質、予防的に活性な物質、移植改良剤、生存能力改良剤、分化改良剤、および免疫抑制剤からなる群より選択される1つ以上の薬剤を含み得る。
【0108】
再生医療および細胞治療
それらの多分化能および十分に分化された組織細胞型および/または前駆体細胞型に分化する(特定の組織タイプに拘束される細胞型を増殖する)能力により、本明細書中で示される異種非含有法により派生されるような細胞は、再生医療に極めて有用であることが証明され得た。例えば多能性心臓前駆体細胞に対して、ある生物学的経路に沿って細胞を分化した後に、心臓関連疾患の処置が想定され得るか、または例えば、肝臓前駆体に対して細胞を分化した後に(例えば、WO2006034873において示されるように)、肝臓関連疾患の処置が想定され得るか、または神経前駆体に対して細胞を分化した後に、神経疾患、例えば、多発性硬化症、低酸素傷害、虚血性傷害、外傷性傷害、パーキンソン病、および脱髄異常の処置が想定される。
【0109】
本明細書中に記載されるように得られる異種非含有hBS細胞株に由来するさらなる前駆体細胞型は、心臓細胞型以外の例えば、骨および軟骨をまた生じる能力を備える中胚葉である得るか、またはβ細胞のような膵細胞型をまた生じる能力を備える内胚葉であり得る。
【0110】
心筋梗塞を被っている心臓において機能を回復するために、心筋細胞および新しい血管を置き換える必要がある。本明細書中で示される方法に従って派生されるhBS細胞のような、臨床的に適合されるhBS細胞株が利用可能であり、これらの細胞を前駆体細胞の派生のために使用することが可能であり、前駆体細胞は後にヒトにおいて移植され得、そして使用の可能性について評価され得る。このような前駆体細胞は、心筋梗塞の部位のような、変性された組織の細胞型にさらにインサイチュで分化する可能性を有し得る。
【0111】
さらに、異種非含有hBS細胞株から分化された細胞は、例えば、壊死性の、アポトーシス性の、障害性の、機能不全性の、または形態学的に異常な心筋と関連される異常を処置するために使用され得る。このような異常としては、虚血性心疾患、心筋梗塞、リウマチ性心疾患、心内膜炎、自己免疫心疾患、心臓弁膜症、先天性心臓異常、心律動異常、および心不全が挙げられるが、これらに制限されない。これらの分化された細胞は、増殖し得、そして心臓細胞型(心筋細胞、内皮細胞、および平滑筋細胞を含む)に分化する可能性を有し、それゆえ、心筋梗塞から生じる虚血により引き起こされる心臓傷害を、逆転、阻害、または予防することにより、多数の心臓異常および疾患を処置するのに適切であり得る。
【0112】
なおさらなる局面において、本明細書中で示される異種非含有細胞から分化された細胞は、異常な心律動、例えば、心不整脈により特徴付けられる心臓異常を処置するために使用され得る。
【0113】
処置は、好ましくは、治療的に有効な用量の細胞を被験体の心臓に投与することにより、好ましくは心臓に注射することにより、行われ得る。治療的に有効な用量は、有利なまたは所望される臨床結果を生じるのに十分な量であり、この用量は1回以上の投与において投与され得た。注射は、心臓の種々の領域に投与され得、修復が必要とされる心臓組織のタイプに依存する。投与は、胸腔を切開した後にカテーテルベースのアプローチを使用して行われ得るか、または任意の適切な血管を介して投入され得る。細胞の有効な用量は、体重、年齢、生理学的状態、病歴、梗塞面積、および虚血の発生後の経過時間のような因子に基づき得る。細胞の投与は、好ましくは、被験体を免疫抑制レジメで、好ましくはこのような拒絶を阻害するように、このような投与の前に処置することを包含する。
【0114】
他の使用
本発明に従う方法により得られる異種非含有hBS細胞株、またはその分化された派生体はまた、例えば、ヒト変性疾患のような、ヒト疾患を研究するためのインビトロモデルにおける使用にこれらが非常に適切であるので、医学研究のために使用され得る。
【0115】
異種非含有hBS細胞自体、ならびにそれらに由来する細胞株および細胞集団の適用の可能性は、例えば、医薬品産業における薬物発見および薬物開発プロセスにおいて、ならびに全種類の化学薬品の毒性を試験するにおいて、見出され得る。今日、薬物候補の大規模なおよび高性能なスクリーニングは通常、化学結合親和性および特異性に対する情報を提供する生化学アッセイに依存するが、機能に対する情報はほとんどまたは全くない。機能的なスクリーニングは、細胞ベースのスクリーニングに依存し、そして通常、安価および迅速に、高容量にて産生され得る細菌または酵母のような、臨床的な関連性が不十分な生物体を使用する。各回のスクリーニングは、臨床的により優れた関連性のモデル種を使用するが、これらはより費用がかかり、そしてスクリーニングプロセスは時間を要する。ヒト原発細胞または不死化細胞型に基づくスクリーニング技術が存在するが、これらの細胞は、インビトロ培養および形質転換の結果としての生存機能の喪失に起因して供給または有用性が制限される。異種非含有hBS細胞および操作された条件下で分化されたhBS細胞への接近手段は、ヒト細胞ベースのアッセイを、大容量であるが、臨床的な関連性を妥協することなく行う、新規なおよび独特な能力を提供する。
【0116】
異種非含有hBS細胞は、高容量と改良された臨床的有意性とを組み合わせることにより、高処理能のスクリーニングにおいて使用され得る。hBS細胞において、遺伝的に改変された細胞の種々の細胞型への分化を伴ってまたは伴わないで、遺伝子ターゲティングを使用してゲノムを正確に改変する能力は、一次および二次スクリーニングを介する新規な治療的に活性な物質の同定への、この技術の適用を許容する。
【0117】
従って、別の局面において、本発明は、本発明に従う方法により得られるhBS細胞の、以下に規定される使用に関する
i)モノクローナル抗体の産生
ii)インビトロ毒性スクリーニング
iii)潜在的な薬物原料のインビトロスクリーニング、または
iv)潜在的な薬物原料の同定。
【実施例】
【0118】
(実施例1)
異種非含有hBS細胞の獲得および培養
臨床的な体外受精(IVF)処置からの余剰なヒト胚は、インフォームドコンセント、およびエーテボリ大学での地方倫理委員会からの承認後に提供された。提供された胚は、5日齢まで、IVF処置において伝統的に使用される培地中で、胚盤胞に培養された。胚盤胞は、Gardnerに従って4AAとして、およびWO2003055992に従ってA品質の胚盤胞として等級付けされた(多くの異なる密集されたICM細胞を伴う増殖された胚盤胞、および多くの細胞を伴う密集された栄養外胚葉)。胚盤胞は、約270のオスモル濃度で、20%(v/v)ヒト血清、4ng/mLヒト組換えbFGF、1%ペニシリン−ストレプトミオシン、1%Glutamax、0.5mmol/Lβ−メルカプトエタノール、および1%非必須アミノ酸が補充された、異種非含有血清を含むDMEM(Gibco Invitrogen Corporation)中、マイトマイシン−C不活化の異種非含有ヒト包皮線維芽細胞の支持層上に内細胞塊の細胞を置く前に、透明帯および栄養外胚葉の部分を除去するために、酸タイロード溶液(Medicult)溶液(すぐに使用できる濃度)で、15〜30秒間、室温において処理された(図1および2を参照のこと)。次いで、胚盤胞は、37℃にて空気中の5%CO濃度中で、インキュベートされた。培地の50%が、2〜3日毎に交換され、そして10日後、細胞は新鮮なhFF支持層に機械的に継代された。第2継代から、hBS細胞(細胞株SA611)は、ガラスキャピラリーを切断および移動の道具として使用して、機械的に継代された。それらは、1週間に約1回継代され、そして優先出願時(2005年10月)に第11継代よりも多く培養された。(図3を参照のこと)。総じて、異種非含有SA611 hBS細胞株は、PCT出願時(2006年10月)には第30継代を超えて培養された。
【0119】
(実施例2)
ヒト包皮線維芽細胞の支持細胞株(例えば、細胞株hFF003)の確立
ヒト包皮サンプルは、割礼された8週例の男児から、2×ゲンタマイシンを含有する滅菌IMDM(Invitrogen)中に無菌で回収された。皮膚外殖片は、IMDM培地(Invitrogen)、1%ペニシリン−ストレプトミオシン(Gibco Invitrogen Corporation)、および10%のヒト血清を含有する25cm2のprimaria組織培養フラスコ(Becton Dickinson)の内部に置かれた。約10日後、コンフルエントな単層が確立された。細胞は、TrypLE(商標)Select(Invitrogen)を使用して連続的に継代された。増殖後、それらはヒト病原体(マイコプラズマ、1型および2型HIV,B型およびC型肝炎、サイトメガロウイルス、1型および2型単純ヘルペスウイルス、エプスタインバールウイルス、ヒトパピローマウイルス)の標準パネルについて試験された。
【0120】
(実施例3)
支持層の調製
異種非含有ヒト線維芽細胞支持層をプレートする前に、組織培養ウェルは、0.1%組換えヒトゼラチン(Fibrogen)で、最低1時間、室温にてコートされる。IMDM、10%ヒト血清、および1%ペニシリン−ストレプトミオシン中で増殖された異種非含有hFF003(第5継代〜第8継代)細胞のコンフルエントな単層は、次いで、マイトマイシン−C(Sigma)で2.5時間処理された。マイトマイシン−Cで処理された支持層は、IVFウェル中(Becton Dickinson)に、10%(v/v)ヒト血清、1%ペニシリン−ストレプトミオシン、1%Glutamax、0.5mmol/Lβメルカプトエタノール、および1%非必須アミノ酸(Gibco Invitrogen Corporation)が補充されたDMEM(上記)に基づく培地中で、2.89cm2当たり200 000細胞でプレートされた。胚盤胞を、それらの内細胞塊およびそれらに由来する細胞またはhBS細胞とともに置く前に、培地はDMEM(上記)に交換され、ここでは代わりに20%(v/v)ヒト血清、10ng/mLヒト組換えbFGF、1%ペニシリン−ストレプトミオシン、1%Glutamax、0.5mmol/Lβメルカプトエタノール、および1%非必須アミノ酸(Gibco Invitrogen Corporation)が補充された。(実施例1において記載される培地と同じ)。
【0121】
(実施例4)
血清ベースの培地の調製
ヒト血清は、約8℃にて一晩ヘパリンでコートされていないプラスチックバッグを回収することにより、少なくとも15人の健常な個体からの血液サンプルから得られ(Blodcentralen、Sahlgrenska University Hospital)、それにより血清は凝固材料から分離され得た。血清はさらに、滅菌濾過され、プールされ、そして適切な分量において凍結された。(使用の前に血液は、Blodcentralen、Sahlgrenska University Hospitalにて、BおよびC型肝炎、HIV、HTLV、および梅毒を含む病原体の標準バッテリーについて試験された)。培地は、20%(v/v)の解凍血清を、実施例1において記載されるような他の成分とともに、DMEM(上記)に添加することによりさらに調製された。
【0122】
(実施例5)
異種非含有hBS細胞のガラス化による凍結および解凍
hBS細胞株SA611は、WO2004098285において記載される方法に従っていくつかの継代、例えば、第25継代において凍結および解凍されている。2つの溶液AおよびBが調製される(溶液A:Cryo−PBS中の滅菌濾過された10%エチレングリコール、10%DMSO;溶液B:Cryo−PBS中の滅菌濾過された0.3Mトレハロース、20%エチレングリコール、10%DMSO)。hBS細胞株SA611の選択されたコロニーは、幹細胞切断道具(Swemed Labs International、Billdal、Sweden)を使用して、細胞が定期的な継代について切断されるのと同じ方法において切断された。細胞片は先ず、500mlの予め加熱された(37℃)溶液A中で1分間、インキュベートされ、次いで25mlの溶液Bに移され、そして30秒間インキュベートされ、次いで、溶液Bの新鮮な液滴に再度移され、そして20〜30秒の間でインキュベートされる。容量は約40〜50μlであった。細胞片は、ガラス化のために調製されたわら中に吸引され、次いでわらはボンドで密閉された。わらは、液体窒素中にさらに浸された。
【0123】
数日後、凍結されたSA611を含むわらは、記載されるように解凍された:2つの溶液CおよびDが調製された(溶液C:Cryo−PBS中の滅菌濾過された0.2Mトレハロース;溶液D:Cryo−PBS中の滅菌濾過された0.1Mトレハロース)。溶液CおよびD、ならびにhBS細胞培地は、37℃に予め加熱された。ガラス化されたSA611を含む密閉されたわらは、液体窒素タンクから取り出された。わらは、室温に10秒間静置され、次いで40℃の水浴中で迅速に解凍された(数秒内)。わらは、オートクレーブされたはさみを使用して、閉じられた端で切り開かれ、そして内容物は、シリンジを使用して、わらから溶液C中に押し出された。hBS細胞は、1分間、500μlの溶液C中でインキュベートされ、そして500μlの溶液Dに移され、そして5分間インキュベートされた。立体顕微鏡の下、異種非含有血清ベースの培地中にhBS細胞片は迅速にリンスされ、次いで培養皿において、血清ベースの培地中の異種非含有ヒト線維芽の支持細胞の表面に播種された。次いで細胞は培養され(37℃にてインキュベートされた)、そして確立された新規なコロニーの数が計数され、そしてガラス化後のhBS細胞の生存能を検証するために継代された。
【0124】
(実施例6)
異種非含有hBS細胞株の特徴づけ
免疫組織化学的および組織化学的分析
hBS細胞コロニー培養物は、4%パラホルムアルデヒド中に固定され、続いて細胞膜を浸透化された。連続的な洗浄およびブロッキング工程後、細胞は、一晩4℃にて、一次抗体とともにインキュベートされた。使用された一次抗体は、Oct−4、Tra−1−60、TRA−1−81、SSEA−1、SSEA−3、およびSSEA−4(Santa Cruz Biotechnology;Santa Cruz、CA;http://www.southernbiotech.com)に特異的であった。FITC−またはCy3結合二次抗体が検出のために使用された。核は、DAPI(Vactashield;Vector Laboratories、Burlingame、CA;http://www.vectorlabs.com)で対比染色された。アルカリホスファターゼ(ALP)の活性は、製造業者のプロトコル(Sigma−Aldrich、Stockholm、Sweden;http://www.sigmaaldrich.com)に従って決定された。3つの異なる胚葉からの細胞を同定するために、免疫組織化学的分析が以下の抗体を用いて、上述で概説されるように行われた:内胚葉について、HNF3β(Santa Cruz Biotechnology;Santa Cruz;http://www.southernbiotech.com)が使用された。中胚葉細胞は、ASMA(会社)により検出され、そして神経外胚葉細胞は、β−チューブリン−III mAb(Sigma−Aldrich)により同定された。アルカリホスファターゼ(ALP)反応は、市販のキットを使用し、そして製造業者のプロトコル(Sigma−Aldrich)に従って検出された。未分化のコロニーにおけるポジティブな反応は、ALP(図4を参照のこと)、Oct−4、Tra−1−60、Tra−1−81、SSEA−3、およびSSEA−4について検出されたが、SSEA−1(図5、6、8を参照のこと)はネガティブであった。(図4〜6を参照のこと)。
【0125】
染色体分析およびFISH
遺伝子特徴づけのために指定されたhBS細胞は、2つの継代についてマウス胚線維芽細胞に移されるか、またはMatrigelプレート(Becton Dickinson)に移され、そしてさらに約10日間培養された。次いで細胞は、CalyculinAの存在下でインキュベートされ、遠心分離により回収され、低張処理により溶解され、そしてエタノールおよび氷酢酸を使用して固定された。染色体は、トリプシン−GiemsaまたはDAPI染色を使用して可視化された。蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)分析のために、第12、13、17、18、20、21染色体、ならびに性染色体(XおよびY)についてのプローブを含む市販のキットが、製造業者の指示に従い、少しの改変を伴って使用された。スライドは、適切なフィルターおよびソフトウェアを備える逆位顕微鏡(CytoVision;Applied Imaging;Santa Clara CA;http://www.appliedimagingcorp.com)において分析された。hBS細胞株SA611は第9〜10継代にて遺伝的に特徴づけられた。核型分析により実証されるように、hBS細胞株SA611は二倍体の正常な核型を有する。核型は46XYである。選択された染色体に対するFISH分析は、この知見を確認した。SA611の核型が正常と確認された。(図9を参照のこと)。
【0126】
インビトロでの多分化能
SA611の多分化能は最初に、hBS細胞コロニーが支持層上で自発的に分化することを許容することによるか、または未分化のhBS細胞コロニーを、それらが自発的に分化することを許容されたMatrigel(商標)コート化プレート(Becton Dickinson)に移すことによるかのいずれかで、インビトロで試験された。両方の場合において、培地は、分化が誘導された場合にVitroHESTM(Vitrolife、Kungsbacka、Sweden)に切り替えられた。3〜4週間の培養後、コロニーは3つの異なる胚葉からの細胞を同定するために免疫組織化学により解析された。ポジティブな反応が、初期の内胚葉マーカーHN3β(Foxa1ともまた呼ばれる)、外胚葉マーカーβ−チューブリン、およびASMA(α−平滑筋アクチン)について同定された。(HNF3βおよびβ−チューブリン反応については図7、および全ての3つのマーカーについては図10(B、D、F)を参照のこと。
【0127】
インビボでの多分化能
異種非含有hBS細胞株SA611のインビボでの多分化能の性質を研究するために、未分化のhBS細胞の塊をSCIDマウスの腎臓被膜下に移植した。奇形腫内の外胚葉(神経外胚葉、図10A)、中胚葉(軟骨、図10C)、および内胚葉(腸管様の上皮、図10E)の組織の出現は、SA611が多能性hBS細胞の特徴的なインビボ分化能力を示すことを実証する。
【0128】
まとめると、異種非含有hBS細胞株SA611は、未分化の多分化能のヒトBS細胞の遺伝型特徴および表現型特徴を安定に発現した。
【0129】
参考文献
WO2004098285−密閉されたわらでのガラス化法によるヒト胚盤胞由来の幹細胞の低温保存。
【0130】
WO2003055992−多分化能性のヒト胚盤胞由来の幹細胞株の確立のための方法。
【0131】
WO2005059116 ヒト胚盤胞由来の(hBS)細胞株のクローン派生体のための方法。
【0132】
WO2006094798 細胞分化のレポーター遺伝子に相補的なプライマーの対のパネルの使用。
【0133】
WO2006034873 ヒト胚盤胞由来の(hBS)細胞株からの肝細胞様細胞の生成のための改善された方法。
【0134】
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【0135】
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【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】透明帯および栄養外胚葉の一部分を除去するための酸タイロード溶液での処置の前の胚盤胞を、40倍の倍率において示す。
【図2】透明帯および栄養外胚葉の一部分を除去するための酸タイロード溶液での処置の後の胚盤胞を、40倍の倍率において示す。
【図3】A)第7継代、4日目のhBS細胞株SA611を10倍の倍率において示す。
【図4】未分化のhBS細胞マーカーA)ALPについてのポジティブな反応を示す。
【図5】未分化のhBS細胞マーカーSSEA−4についてのポジティブな反応、および分化されたhBS細胞マーカーSSEA−1についてのネガティブな反応を示し、両方ともに第6継代および20倍の倍率における。
【図6】未分化のhBS細胞マーカーTra 1−60およびTra 1−81についてのポジティブな反応を示し、両方ともに第6継代および20倍の倍率における。
【図7】内胚葉マーカーHNF−3βについての、および神経外胚葉マーカーβチューブリンについての、21〜28日間の自発的な分化を受けた後の第6継代におけるポジティブな反応を、20倍の倍率において示す。
【図8】異種非含有hBS細胞株SA611のさらなる形態学的および免疫組織的な化学特徴を示す。(A)は、胚盤胞を示す(尺度=25μm)。(B)は、異種非含有条件下で第12継代後のSA611の構造を示す(尺度=100μm)。(C〜H)は、Oct−4(C)、SSEA−1(D)、Tra 1−60(E)、Tra 1−81(F)、SSEA−3(G)、SSEA−4(H)を使用した、第12継代後の未分化のSA611の免疫蛍光を示す((C)および(E)における画像は、異なる二次抗体を使用する二重染色の画像であることに留意のこと)。尺度=(C)、(E)、および(G)において50μm、ならびに(F)および(H)において100μm。
【図9】第9継代における異種非含有hBS細胞株SA611の遺伝子特徴を示す。(A)は、染色体が二倍体および正常であることを示す。(B)および(C)は、SA611からの選択された染色体の蛍光インサイチュハイブリダイゼーションを示し、これは細胞はXYであり、そして正常な第12および第17染色体について二倍体であったことを実証する。(C)青色においてX染色体、金色においてY染色体、赤色において第13染色体、水色において第18染色体、および緑色において第21染色体をさらに示す(黒色および白色において可視化することはほとんど不可能である)。
【図10】(A)、(C)、および(E)においてインビボでの、ならびに(B)、(D)、および(F)においてインビトロでの、異種非含有hBS細胞株SA611の多分化能性の確認を示す:異種非含有条件下で第11継代後のSA611からの奇形腫の組織学的分析:(A)神経外胚葉(外胚葉)、(C)軟骨(中胚葉)、(E)腺上皮(内胚葉)。インビトロで分化されたSA611は、継代の2〜4週間後に免疫蛍光により分析された:(B)β−III−チューブリンポジティブなニューロン(外胚葉)、(D)ASMAポジティブな平滑筋アクチン(中胚葉)、および(F)HNF3β(Foxa2)−ポジティブな細胞(内胚葉)。尺度50μm(A、B,D、E,F)、尺度100μm(C)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種非含有hBS細胞株を得るための方法であって、方法は以下の工程:
i)異種非含有手順により、胚盤胞から透明帯を除去し、栄養外胚葉で囲まれた内細胞塊を得る工程、
ii)異種非含有手順により、栄養外胚葉を少なくとも部分的に除去して単離された内細胞塊の細胞を得る工程、
iii)内細胞塊の細胞を異種非含有培地中のヒト支持細胞の層上に置く工程、
iv)異種非含有培地中で約5日間から約50日間、内細胞塊の細胞と、ヒト支持細胞とを共存培養する工程、
v)もしあれば、栄養外胚葉過増殖から、内細胞塊の細胞またはそれらの由来する細胞を、異種非含有手順により解放する工程、
vi)内細胞塊の細胞またはその由来する細胞を、異種非含有培地中のヒト支持細胞の新鮮な層に選択的に移して異種非含有hBS細胞を得る工程、
vii)異種非含有培地中で、ヒト支持細胞と共存培養することにより、異種非含有hBS細胞を増殖して異種非含有hBS細胞株を得る工程、を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
viii)異種非含有培地中で、異種非含有hBS細胞株を、ヒト支持細胞とともに共存培養することによって増殖し、そして約2日間〜約20日間にわたる、例えば、約4日間〜約12日間のような適切な間隔にて細胞を継代する工程をさらに包含する、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、
ix)異種非含有hBS細胞株を、適切な異種非含有支持マトリクスおよび異種非含有培地を含む、異種非含有および支持細胞非含有培養系に移す工程をさらに包含する、方法。
【請求項4】
工程i)が、a)酸性溶液、b)例えばヒアルロニダーゼまたはプロナーゼのような1つ以上の組換え酵素、またはc)機械的手順を使用することにより行われる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程i)が酸性溶液を使用することにより行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程i)が、胚盤胞を、約5秒間〜約180秒間、例えば、約10秒間〜約120秒間、約15秒間〜約90秒間、約20秒間〜約60秒間、約30秒間〜約50秒間、酸性溶液に供することにより行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
酸性溶液のpHが約2〜約3、例えば約2.5〜約2.8、例えば2.5である、請求項5または6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
酸性溶液が、酸タイロード溶液である、請求項5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
工程ii)が、a)酸性溶液、b)1つ以上の組換え酵素、またはc)機械的手順を使用することにより行われる、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
工程ii)が酸性溶液を使用することにより行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程ii)が、工程i)において得られた栄養外胚葉で囲まれた内細胞塊を、約5秒間〜約180秒間、例えば、約10秒間〜約120秒間、約15秒間〜約90秒間、約20秒間〜約60秒間、約30秒間〜約50秒間、酸性溶液に供することにより行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
酸性溶液のpHが約2〜約3、例えば約2.5〜約2.8、例えば2.5である、請求項10または11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
酸性溶液が、酸タイロード溶液である、請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
工程ii)が1つ以上の組換え酵素を使用することにより行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
1つ以上の組換え酵素が組換えタンパク質分解酵素である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
1つ以上の組換えタンパク質分解酵素が、組換えトリプシンおよびTrypLE(商標)Selectからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程ii)が、工程i)において得られた栄養外胚葉で囲まれた内細胞塊を、約5.000U〜約10.000Uの組換えトリプシンに、約0.5分間〜約30分間供することにより行われる、請求項14〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
工程ii)が、工程i)において得られた栄養外胚葉で囲まれた内細胞塊を、未希釈の直ぐに使用できる濃度のTrypLE(商標)Selectに、約0.5〜約10分間、例えば、約0.5〜約8分間、約0.5〜約5分間、約1〜約3分間、例えば1.5分間、供することにより行われる、請求項14〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
工程iv)における時間が、約5日間〜約30日間、例えば、約5日間〜約20日間、または約5日間〜約15日間である、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
工程iv)における内細胞塊の細胞の共存培養の間に、約20%〜約100%、例えば、約30%〜約80%、約40%〜約60%の培地を交換することにより、1回以上の培地の交換が行われる、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
工程iv)における内細胞塊の細胞の共存培養の間に、約50%の培地を交換することにより、1回以上の培地の交換が行われる、請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
1回以上の培地の交換が、約2日間〜約14日間、例えば、約4日間〜約7日間の間隔で行われる、請求項20または21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
もしあれば、栄養外胚葉過増殖から、内細胞塊の細胞またはそれらの由来する細胞が、工程v)において機械的手順を使用することにより解放される、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
機械的手順が、ガラスキャピラリーを切断道具として使用する工程を包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
もしあれば、栄養外胚葉過増殖から、内細胞塊の細胞またはそれらの由来する細胞が、工程v)において1つ以上の組換え酵素を使用することにより解放される、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
1つ以上の組換え酵素が、組換えタンパク質分解酵素である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
1つ以上の組換え酵素が、組換えトリプシンおよびTrypLE(商標)Selectからなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
工程v)が、内細胞塊の細胞またはその由来する細胞を、約5.000U〜約10.000Uの組換えトリプシンとともに、約0.5分間〜約30分間インキュベートすることにより行われる、請求項25〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
工程v)が、内細胞塊の細胞またはその由来する細胞を、未希釈の直ぐに使用できる濃度のTrypLE(商標)Selectとともに、約0.5分間〜約15分間インキュベートすることにより行われる、請求項25〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
1回以上の継代が、工程vii)における異種非含有hBS細胞の増殖の間に行われる、請求項1〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
hBS細胞が選択的に継代される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
継代が機械的手順を使用することにより行われる、請求項30または31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
継代が1つ以上の組換え酵素を使用することにより行われる、請求項30〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
1つ以上の組換え酵素が、TrypLE(商標)Select、組換えトリプシン、および組換えコラゲナーゼからなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
工程vii)が、約5.000U〜約10.000Uの組換えトリプシンを、約0.5分間〜約30分間使用することにより行われる、請求項33〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
工程vii)が、未希釈の直ぐに使用できる濃度のTrypLE(商標)Selectを、約0.5〜約15分間使用することにより行われる、請求項33〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
工程vii)が、約200U/mlの組換えコラゲナーゼを、約1分間〜約40分間使用することにより行われる、請求項33〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
工程viii)における細胞の継代が、機械的解体により行われる、請求項1〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
機械的解体が、ガラスキャピラリーを切断道具として使用することにより行われる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
工程viii)における細胞の継代が、1つ以上の組換え酵素を使用することにより行われる、請求項1〜39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
1つ以上の組換え酵素が、TrypLE(商標)Select、組換えトリプシン、および組換えコラゲナーゼからなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
工程viii)が、約5.000U〜約10.000Uの組換えトリプシンを、約0.5分間〜約30分間使用することにより行われる、請求項40〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
工程viii)が、未希釈の直ぐに使用できる濃度のTrypLE(商標)Selectを、約0.5〜約15分間使用することにより行われる、請求項40〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
工程viii)が、約200U/mlの組換えコラゲナーゼを、約1分間〜約40分間使用することにより行われる、請求項40〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
工程ix)において使用される異種非含有支持マトリクスが、組換えヒトゼラチン、組換えヒトフィブロネクチン、ヒト胎盤細胞外マトリクスからなる群より選択され得る、請求項1〜44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
工程ix)において使用される異種非含有培地が、工程iii)、iv)、vi)、vii)、およびviii)のいずれかにおいて用いられる異種非含有培地と同じであり得るか、またはそれとは異なり得る、請求項1〜45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
工程ix)において使用される異種非含有培地が、ヒト支持細胞により馴化され得るか、またはこれは未分化の増殖を維持するために適切な因子が補充され得る、請求項1〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
適切な因子が、組換えbFGFおよびWNT経路の活性化因子からなる群より選択され得る、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
工程iii)、iv)、vi)、vii)、およびviii)のいずれかにおいて使用されるヒト支持細胞が、異種非含有条件下で得られる、請求項1〜48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
ヒト支持細胞が健常なヒト組織に由来する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
ヒト支持細胞が、ヒト新生児包皮に由来する皮膚線維芽細胞である、請求項49または50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
工程iii)、iv)、vi)、vii)、および/またはviii)のいずれかにおいて使用される異種非含有培地が、ヒト内細胞塊の細胞の増殖に適切な基本培地を含む、請求1〜51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
基本培地がDMEMである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
異種非含有培地が、約2ng/ml〜約100ng/mlの組換えbFGF、例えば、約5ng/ml〜約50ng/ml組換えbFGF、約5ng/ml〜約25ng/ml組換えbFGF、約5ng/ml〜約15ng/ml組換えbFGFをさらに含む、請求項52または53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
異種非含有培地が、10ng/mlの組換えbFGFをさらに含む、請求項52〜54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
異種非含有培地が、約1%v/v〜約30%v/vヒト血清、例えば、約10%v/v〜約30%v/vヒト血清、約15%v/v〜約25%v/vヒト血清をさらに含む、請求項52〜55のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
異種非含有培地が、約20%v/vヒト血清をさらに含む、請求項52〜56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
請求項1〜57のいずれかに記載の方法であって、ここで工程iii)、iv)、vi)、vii)、およびviii)のいずれかにおいて使用されるヒト血清が、以下の工程
a)ヘパリンでコートされていないバッグ中に健常なヒト血液を回収する工程
b)約0.5時間〜約5時間、例えば、約0.5時間〜約2時間、ヘパリンでコートされていないバッグを攪拌する工程、
c)少なくとも10時間、高くとも5℃の温度にて、ヘパリンでコートされていないバッグをインキュベートする工程
d)必要に応じて、例えば、非凝固フィブリンの不在のような凝固の質、液相の不透明度に基づいて選択する工程
e)凝固材料から血清を分離する工程
f)工程d)において得られた血清を滅菌濾過する工程
g)少なくとも15ドナーから血清をプールする工程
h)使用の前に血清を凍結する工程
により調製される、方法。
【請求項59】
異種非含有hBS細胞株を得るための方法であって、方法は以下の工程:
1)約10秒間〜約10分間、好ましくは約30秒間〜約60秒間、室温での、胚盤胞と酸タイロード溶液とのインキュベーションにより、胚盤胞から透明帯および栄養外胚葉の少なくとも一部分を除去して、単離された内細胞塊の細胞を得る工程、
2)DMEM、ヒト血清、組換えbFGF、L−グルタミン、またはグルタマックス、非必須アミノ酸、β−メルカプトエタノール、ペニシリン、およびストレプトマイシンを含む異種非含有培地中のヒト包皮線維芽細胞の支持細胞の層上に内細胞塊の細胞を置く工程、
3)約5日間〜約15日間、少なくとも50%の異種非含有培地を3〜5日毎に交換して、異種非含有培地中で内細胞塊の細胞とヒト包皮線維芽細胞の支持細胞とを共存培養する工程、
4)内細胞塊の細胞またはその由来する細胞を、もしあれば、栄養外胚葉過増殖から、TrypLE(商標)Select(Invitrogen)を酵素処理として使用して、解放する工程、
5)内細胞塊の細胞またはその由来する細胞を、異種非含有培地中のヒト包皮線維芽細胞の支持細胞の新鮮な層に選択的に移して、異種非含有hBS細胞を得る工程、
6)異種非含有hBS細胞を、異種非含有培地中でヒト包皮線維芽細胞の支持細胞と共存培養することにより増殖して、異種非含有hBS細胞株を得る工程、
を包含する、方法。
【請求項60】
請求項59に記載の方法であって、
7)異種非含有培地中でヒト包皮線維芽細胞の支持細胞と共存培養することにより、異種非含有hBS細胞株を増殖し、少なくとも50%の異種非含有培地を3〜5日毎に交換し、そして適切な間隔にて、例えば3〜8日毎に細胞を継代する工程、
をさらに含む、方法。
【請求項61】
請求項1〜60のいずれかにおいて規定されるような方法により得られる、異種非含有hBS細胞株。
【請求項62】
任意の非ヒト動物材料に直接的にまたは間接的に一度も曝露されていない、請求項61に記載の異種非含有hBS細胞株。
【請求項63】
使用される任意の有機材料が、ヒト起源であるか、または合成、半合成、もしくは組換え材料である、請求項61または62のいずれかに記載の異種非含有hBS細胞株。
【請求項64】
動物が哺乳動物である、請求項61〜63のいずれかに記載の異種非含有hBS細胞株。
【請求項65】
少なくとも1つの、例えば、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つの、または少なくとも6つの以下の基準:Oct−4、TRA−1−60、TRA−1−81、SSEA−3、および/またはSSEA−4についてのポジティブな反応、ならびにSSEA−1についてのネガティブな反応を示す、請求項61〜64のいずれかに記載の異種非含有hBS細胞株。
【請求項66】
その分化された派生体の調製のための、請求項61〜65のいずれかに規定されるような異種非含有hBS細胞株の使用。
【請求項67】
医薬における、その分化されたな派生体の調製のための、請求項1〜60のいずれか、または分化された派生体に記載される方法により得られる異種非含有hBS細胞株の使用。
【請求項68】
組織の変性により引き起こされる病変および/または疾患を予防および/または処置するための医薬品の製造における、請求項1〜60のいずれかに記載される方法により得られる異種非含有hBS細胞株、またはその特異的な派生体の使用。
【請求項69】
代謝の病変および/または疾患の処置および/または予防のための医薬品の製造における、請求項1〜60のいずれかに記載される方法により得られる異種非含有hBS細胞株、またはその分化された派生体の使用。
【請求項70】
医学研究のための、請求項1〜60のいずれかに記載される方法により得られる異種非含有hBS細胞株、またはその分化された派生体の使用。
【請求項71】
ヒト疾患、例えば、ヒト変性疾患を研究するためのインビトロモデルにおける、請求項1〜60のいずれかに記載される方法により得られる異種非含有hBS細胞株、またはその分化された派生体の使用。
【請求項72】
薬物発見プロセスにおける使用のための、請求項1〜60のいずれかに記載される方法により得られる異種非含有hBS細胞株、またはその分化された派生体の使用。
【請求項73】
インビトロ毒性試験のための、請求項1〜60のいずれかに記載される方法により得られる異種非含有hBS細胞株、またはその分化された派生体の使用。
【請求項74】
スクリーニング目的のための、請求項1〜60のいずれかに記載される方法により得られる異種非含有hBS細胞株、またはその分化された派生体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−509554(P2009−509554A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533946(P2008−533946)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009697
【国際公開番号】WO2007/042225
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(503071598)セルアーティス アーベー (10)
【Fターム(参考)】