畳用隙間充填器具及び畳状マット
【課題】畳と壁との間隙の巾を容易にかつ確実に調整できる畳み用隙間充填具を提案する。
【解決手段】部屋の壁と畳との間隙又は畳同士の間隙に挟み込み、各間隙の巾のばらつきを調整するための線状の挟着材において、巾方向にそれぞれ圧縮及び復元可能な複数の層からなる積層構造を有し、第1の層は、ゴム弾性を有する素材からなる弾力層6であって、畳との挟着力を十分に発揮できる巾及び弾性を有しており、第2の層は、多数の連続気泡を含み、第1の層より圧縮容易な柔軟な素材からなる巾調整層4であって、上記壁ないし畳と畳との間隙の調整に十分な巾を有しており、その積層構造全体として、連続気泡が押し潰されるまでは圧縮応力に対する圧縮比率が大きく、連続気泡が押し潰され切った後には圧縮応力に対する圧縮比率が小となるように構成した。
【解決手段】部屋の壁と畳との間隙又は畳同士の間隙に挟み込み、各間隙の巾のばらつきを調整するための線状の挟着材において、巾方向にそれぞれ圧縮及び復元可能な複数の層からなる積層構造を有し、第1の層は、ゴム弾性を有する素材からなる弾力層6であって、畳との挟着力を十分に発揮できる巾及び弾性を有しており、第2の層は、多数の連続気泡を含み、第1の層より圧縮容易な柔軟な素材からなる巾調整層4であって、上記壁ないし畳と畳との間隙の調整に十分な巾を有しており、その積層構造全体として、連続気泡が押し潰されるまでは圧縮応力に対する圧縮比率が大きく、連続気泡が押し潰され切った後には圧縮応力に対する圧縮比率が小となるように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畳用隙間充填器具及び畳状マットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畳を作るときには、予め室内の寸法を測り、その部屋の各部分の寸法に合致するような縦・横幅を有する畳を個々に製造する。従って、遠目には同形・同寸の畳であっても厳密には一枚ごとに形も大きさも異なる。
【0003】
何故このようにするかと言えば、住居を建てる際にどうしても部屋の縦横の寸法に施工誤差が発生してしまうからである。そうした誤差は、8畳程度の大きさの部屋で通常0.5〜1.5cm程度、場合によってはそれ以上にもなることがある。こうした誤差を無視して、事前に規則正しい矩形の一定サイズの畳を製造すると、部屋の周縁との間に隙間を生じたり、無理に畳を敷き詰めようとしても畳を敷ききることができないおそれがあるからである。
【0004】
不整な部屋の周縁と畳端との隙間を埋める間詰め材として、鋭角三角形状のプラスチック製のものが提案されているが(特許文献1)、もともと部屋の形状が設計図通りの長方形状からどの程度ずれているかは現場に行かなければ判らない。プラスチック製の間詰め材では、形状の自由度に乏しいので、まず現場に行って部屋の形状を正確に測り、次に施工誤差にあった形の間詰め材を製作し、再び現場に出向いて間詰め材を用いながら畳を敷くということが必要となり、作業が煩雑である。
【0005】
こうした不便を避けるために、畳と壁との間、又は畳と畳との間に弾性を有する棒状の間詰め材が提案されている(特許文献2、特許文献3)。特許文献2は、出願人が提案したものであって畳端と同じ長さの厚さ20〜50mm、巾25〜35mm程度の断面方形のものであり、樹脂発泡体やゴム発泡体で形成されている。特許文献3は、断面逆V字形で内側に空間を有する間詰め材であり、巾方向に弾性圧縮可能に形成している。
【特許文献1】特開2001−207627
【特許文献2】特開2006−152779
【特許文献3】実開平02−118033
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の様な断面矩形の間詰め材をゴムなどで形成すると圧縮可能な巾が不足し、またスポンジなどで形成すると十分な挟持力が得られない。これに対して特許文献3の間詰め材は、畳端沿いの間隔が大きすぎると、逆V字形の間詰め材が十分に圧縮されないので、逆V字の頂部と畳端との間に隙間が残り、埃が溜まる可能性がある。
【0007】
こうした問題点を改良するため、本出願人は、隙間を生じにくい断面矩形の間詰め材であって、ゴムよりは圧縮し易くスポンジよりは弾性のある素材で形成したものを、試作した。ところが一種類の材料で必要な誤差を吸収できるものを作ろうとすれば、かなりの柔軟性が必要となる。柔らかい間詰め材を堅い畳の縁に沿って配置すると、居住者のつま先が間詰め材を踏んだときに間詰め材が沈み込み、歩きにくいことが判った。
【0008】
そこで本発明は、弾力層と巾調整層とを組み合わせた積層構造の間詰め材を用いた畳用隙間充填器具を提案して、畳端沿いの間隙の巾を容易にかつ確実に調整できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の手段は、畳用隙間充填器具であり、
部屋の周縁と畳端との間隙又は畳端同士の間隙内に挟み込み、各間隙の巾のばらつきを調整するための棒状の間詰め材2を具備し、
この間詰め材2は、巾方向にそれぞれ圧縮及び復元可能な複数の層からなる積層構造3となっており、
第1の層は、ゴム弾性を有する素材からなる弾力層4であって、畳との挟着力を十分に発揮できる巾及び弾性を有しており、
第2の層は、多数の連続気泡を含み、第1の層より圧縮容易な柔軟な素材からなる巾調整層6であって、上記畳端沿いの間隙内にフィットさせるために十分な巾を有しており、
その積層構造3全体として、連続気泡が押し潰されるまでは圧縮応力に対する圧縮比率が大きく、連続気泡が押し潰され切った後には圧縮応力に対する圧縮比率が小となるように構成したことを特徴としている。
【0010】
本手段では、畳端沿いの間隙内に挿入する間詰め材であって、異種の材料からなる複数の層からなるものを提案している。前述の如く間詰め材を単一材料では部屋の成形誤差に対応しにくいからである。例えば縦4cm×巾3cmのサイズの軟質ゴム製とすると、人の力で圧縮できる巾はおおよそ0.5〜1cm程度であり、部屋の施工誤差が1cm以上あると間隙をぴったり埋めることができない。また柔らかい発泡ウレタンなどを用いると、圧縮比率が大きくなるが、弾性力が弱くなって畳と部屋の縁(枠)との間隙から抜け出し易い。本手段の如く、巾方向(水平方向)に柔らかい素材と弾性のある素材とを層状に重ねることで適当な圧縮比率が得られ、また踏み抜きにくい構成を実現できる。
【0011】
「弾力層」は、積層構造のうち主として弾力を発揮する機能を担う部分である。もっとも弾性変化の結果として巾調整機能も果たすことはもちろんである。弾力層はゴム弾性を有する素材で形成する。板バネやスプリングなどの弾性(エネルギー弾性)を利用する場合と比べて構造がシンプルとなり、好適である。望ましい材料は、ゴム(天然ゴム・合成ゴム)であって人の指の力で圧縮可能な程度のものである。
【0012】
弾力層は「畳との挟着力を十分に発揮できる巾及び弾性」を有する。このようにしたのは、柔軟な巾調整層に比べて弾力層の巾が短すぎると、十分な挟着力を発揮できないからである。少なくとも下記の巾調整層が限界まで圧縮された状態で(本願図3(C)参照)、部屋の周縁と畳端との間に間詰め材をしっかり保持できるように設けるものとする。例えば軟材質の巾は0.5〜1cm程度であれば十分である。この数値の範囲は、少ない材料で巾調整層の巾を十分にはこの範囲が合理的であるという程度の意味であり、これより広いものを除外する意図ではない。巾が狭いときには、硬度の高いものを選択するようにすると足で踏んだときの沈みを少なくすることができる。
【0013】
「巾調整層」は、積層構造のうち主として圧縮による巾調整の機能を担う部分である。もちろん巾調整層も圧縮後に原形状に復元する性質を有する。巾調整層の素材は、多数の連続気泡を有する多孔材料である。圧縮により多孔材料中の空間(孔)が押し潰されることで、ゴムより簡単に圧縮することができる。「連続気泡」と限定しているのは、圧縮したときに気泡内のエアが外部に排出されないと、圧縮しにくいからである。この巾調整層は、スポンジ、ウレタンフォームなどで形成することができる。
【0014】
巾調整層は「畳端沿いの間隙内にフィットさせるために十分な巾」を有する。ここでフィットとは上記間隙内に隙間無く嵌め込むということである。また、フィットさせるために十分な巾とは、部屋の縦横の寸法の施工誤差を吸収するのに十分な巾という程度の意味であり、おおよそ施工誤差と同程度とすれば足りる。通常は、2cm〜5cm程度である。好適な一例として、例えば矩形の部屋の相互に対向する二辺の長さの差がΔLであるとして、部屋の四辺に渡って部屋の周縁と畳端との間にのみ間詰め材を設置するときには、2辺の長さ方向の誤差を2本の間詰め材で吸収することになるので、各間詰め材の巾調整層の巾Dは、D=ΔL/2とすることができる。しかし、例えばその部屋が大広間であって、Dが大きすぎれば畳と畳との間に間詰め材を挿入し、3本以上の間詰め材に巾の調整分を分担させることもできる。
【0015】
「積層構造」は、ゴム弾性を有する第1の層(弾力層)とこれより柔軟で圧縮し易い第2の層(巾調整層)とを組み合わせて、2段階の圧縮変形をするようにしている。即ち、巾調整層の気泡が押し潰されるまでは巾調整層の縮巾により容易に圧縮することができる。巾調整層内の気泡が押し潰された後は、弾力層の圧縮が本格的に開始し、外部の圧縮力に対して大きな弾発力を発揮する。積層構造としては、弾力層−巾調整層の2層構造でもよく、後述のような弾力層−巾調整層−弾力層、或いは巾調整層−弾力層−巾調整層の3層構造でもよい。この積層構造全体としての巾は、好適な一例として、力を加えていない状態で4〜4.5cm、限界まで圧縮された状態で1〜1.5cmとすることができる。
【0016】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ、
上記積層構造3を、巾調整層6の両側に2枚の弾力層4を接着してなる3層構造とするとともに、
各弾力層4は、巾調整層よりも屈曲しにくい巾を有する弾性板としている。
【0017】
本手段では、巾調整層の両側にそれぞれ弾力層を接着することで、これらの弾力層の保護層として機能するようにしている。柔軟な巾調整層が外側にむき出しになっていると、この層が他物に触れて千切れたり、磨耗する可能性があるからである。また、弾力層は保形性を有する板材とすることで、作業途中で弾力層がみだりに曲がることを防止できる。
【0018】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ
上述の3層構造の間詰め材2と、この間詰め材の少なくとも長手方向の一部上面に載置するための耐力板12とを含み、
この耐力板12は、圧縮していない状態での巾調整層よりも巾が広く、積層構造3の巾方向の伸縮を妨げないように2枚の弾力層4の各上面の間に架け渡されており、
さらに耐力板12は、人の体重を支えることが可能な程度の強度を有する。
【0019】
本手段では、利用者が3層構造のうちの巾調整層をつま先で踏み、踏んだ場所が沈みこむことがないように2枚の弾力層の間に耐力板を架設している。もっとも間詰め材の長手方向のうち強く圧縮された部分では、巾調整層も踏み込みによって沈み込むことがないので耐力板は不要である。従って間詰め材の長手方向のうち圧縮の程度の低い箇所にだけ耐力板を取り付けるようにすることもできる。この場合には、耐力板は現場で長さを調整できるようにカッターなどで切断可能な材料で形成するとよい。また間詰め材の長手方向全長に亘って耐力板を設けるときには、圧縮された状態の積層構造よりも巾の狭く設ける。
【0020】
「耐力板」は、居住者の体重を支えることができる程度の強度に形成する。体重を支えるとは足で踏んで破損しないということであり、多少屈曲しても構わない。硬質のゴムや合成樹脂で形成することができる。積層構造に対する取り付け方は、単純に積層構造の上に載せるだけでもよいが、例えば巾調整層の上面に接着してもよく、また積層構造の上に耐力板を載せ、さらに耐力板の上から積層構造の両側面へ覆い(例えば後述の化粧カバー)を取り付け、この覆いにより保持してもよい。
【0021】
第4の手段は、第1の手段を有し、かつ
上記間詰め材2を、弾力層4の両側に2枚の巾調整層6を接着してなる3層の積層構造3に形成するとともに、
この両巾調整層を保護するための補剛材20を有しており、
この補剛材は、間詰め材2の巾方向の伸縮を妨げないように、各巾調整層6を保護する2つのピース20A、20Bで形成されており、
各ピースは、各巾調整層の巾方向外側面を覆う側板22を有し、かつ各側板の下端から内方へ積層構造3の下面に接する底板24を、かつ側板の上端から積層構造3の上面に沿って頂板26をそれぞれ内方へ突出し、
間詰め材2を巾方向に最大限圧縮したときに、2つのピースが合わさって間詰め材2の上面全体を覆うように構成している。
【0022】
本手段では、2つの巾調整層を弾力層の両側に設置することで、巾調整層のもともとの長さ(原寸)の和を大きくとることができるようにしている。こうすることで部屋の施工誤差が大きいケースに容易に対応することができる。
【0023】
「補剛材」は、2つの巾調整層の保護手段としての機能を有し、柔らかい巾調整層が擦り切れることを防止している。好ましい一例として、補剛材は、断面長方形の管材を巾方向に二つのピースに分割し、このピースを間詰め材の巾方向両側に取り付けるようにするとよい。巾方向に圧縮した状態では2つのピースは相互に接合し、その内部に間詰め材が保持される。後述の好適な実施例では、2つのピースを、長手方向から見て、下辺(底板)に比べて上辺(頂板)の長い変形コ字形のピースと、L字形のピースとに形成しているが、その形状は適宜変更することができ、例えば相互に向かい合うコ字形としてもよい。尚、補剛材は、側板の上下長を間詰め材の上下厚みとほぼ同じとし、間詰め材を巾方向に圧縮したときに上記底板と頂板との間に間詰め材が挟持されるようにすることができる。これにより間詰め材の圧縮比率が高まり、十分な弾発力が得られる。
【0024】
第5の手段は、
第1の手段から第4の手段の何れかを有し、かつ
上記間詰め材2と、この間詰め材の積層構造3の少なくとも上半部を覆う化粧カバー14とで形成され、
かつこの化粧カバーにしわ加工を施している。
【0025】
圧縮されていない状態でしわのない素材で包装したときには、間詰め材の長手方向のうち圧縮された箇所のみしわが生じ、体裁を損なう。最初からシワのある素材を用いることで、間詰め材の長手方向全体にしわを模様の如く表すことができ、良好な外観が得られる。なお、「しわ加工」とは、機械で生地に凹凸を付けてそのかたちを保つことをいい、従来公知の技術である。
【0026】
「化粧カバー」は、積層構造の上半部のみを覆う断面コ字形のものでもよいが、積層構造の周囲全体を覆うものでもよい。前者の場合には材料の節減に役立ち、後者の場合には間詰め材を表裏反対にして使用できるというメリットがある。化粧カバーは、和紙などの紙や布、あるいはプラスチックで形成することができる。
【0027】
第6の手段は、畳状マットであり、
第1の手段から第5の手段の何れかとして記載した畳用間隙充填器具20を端部材として、長方形の畳状マット体30の1辺側の側面全長、或いは畳状マット体30の隣接する2辺の各側面全長に付設している。
【0028】
このようにすることで、部屋の周囲に畳用間隙充填器具を設置し、次に畳を敷き詰めるという手間が不要となり、畳を敷設する作業が大幅に簡略化される。特に利用者が畳を敷きかえるときに有利である。後述の如く畳状マットは、床板と畳、じゅうたんと畳のような2種類の異なる表面仕上げとすることができるが、その場合に利用者でも部屋の施工誤差に煩わされることなく、簡単に敷き替えが可能となる。なお、畳状マット体は畳そのものでもよい。
【発明の効果】
【0029】
第1の手段に係る発明によれば次の効果を奏する。
○弾力層と巾調整層とを組み合わせたから、簡単で構造で十分な挟着力を確保することができ、かつ畳と畳又は壁との巾を調整することが容易であり、部屋の縦横の寸法に合わせて畳をオーダーメードする必要がないので作業工程が単純化される。
○この間詰め材を用いて畳を裏返して使用することができ、資源の有効利用に役立つ。
○間詰め材の巾方向の一部をゴム弾性を有する材料だけで形成したから、上方からの荷重に対する抵抗が大きく、間詰め材の上につま先を載せても沈み込みにくい。
【0030】
第2の手段に係る発明によれば、次の効果を奏する。
○巾調整層の両側に弾力層を形成したから、弾力層が巾調整層の保護層となって、他物と接触により巾調整層が切れたりすることを防止することができる。
○弾力層4は、巾調整層よりも屈曲しにくい巾を有する弾性板としたから、柔軟な多孔材料で形成した場合に比べて間詰め材を扱うときに曲がりにくく、使い勝手がよい。
【0031】
第3の手段に係る発明によれば、2枚の弾力層4の上面間に架設する耐力板12を設けたから、巾調整層付近を足で踏んでも荷重が弾力層へ分散され、巾調整層のみが圧縮されることを防止できるので、歩行者に違和感を与えない。
【0032】
第4の手段に係る発明によれば、2つの巾調整層を弾力層の両側に設置したから、調整可能な巾を大きくすることができる。
【0033】
第5の手段に係る発明によれば、上記弾力層4と巾調整層6とからなる積層構造3の少なくとも上半部を覆う化粧カバー14を設け、かつこの化粧カバーにしわ加工を施したから、体裁がよい。
【0034】
第6の手段に係る発明によれば、畳状マット体に予め間隙調整器具を端部材として組み込んだから、敷き替え作業が一層容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1から図5は、本発明に係る畳用隙間充填器具の第1の実施形態を示している。 本実施形態の畳用充填器具1は、間詰め材2のみで形成されている。
【0036】
間詰め材2は、畳の一辺(長辺又は短辺)と同じ長さかやや長く設け、畳端E2と部屋の周縁E1との間に挟みこむことができるように形成されている。この間詰め材2は、図2に示す如く2本の弾力層4を外側に、1本の巾調整層6を内側に配した3層の積層構造3として構成している。本明細書において「巾」とは、別段の説明がない限り、間詰め材の長手方向に直角な水平方向における長さをいう。また、部屋の周縁とは、畳の設置スペースの外周であり、一般的には畳の厚さ分低くなった設置スペースの枠の部分を指す。
【0037】
弾力層4は、畳よりも軟質の弾性材料(特にゴム)で形成する。畳の周囲に挟着させたときに畳を歪ませないようにするためである。この弾力層の巾は、畳と部屋の周縁とのクッションの役目を果たすことができ、かつ十分な挟着力を確保できる程度の長さで足りる。図2に示す如く、各弾力層は、左右の巾に比べて上下の厚みが大きい縦長の形状にすると、間詰め材全体として屈曲しにくく、好適である。また図示の弾力層は、長手方向に連続した一枚の弾性帯板としている。もっとも例えば厚さ方向に2枚以上の薄板材を重ねて剥離可能に接着し、建築現場において必要により薄板材を剥がして厚さを調節するような構造とすることも可能である。弾力層は、例えば耐候性のよいEPDM(エチレンプロピレンゴム)で形成することができる。なお、EPDMゴムには、独立気泡型と連続気泡型とがあるが柔軟性に勝る連続気泡型を用いるとよい。EPDM系のゴムとしては、日本ゴム境界標準規格(SRIS)で硬度7〜35、引っ張り強さが0.25〜0.98Mpa(JISK6251)、見かけ密度0.10〜0.24g/cm3のものが従来公知である。これらの範囲においてゴムの巾(厚み)や高さなどに応じて必要な素材を選択すればよい。
【0038】
巾調整層6は、柔軟な多孔材料で形成する。巾調整層の巾は、予想される部屋の縦横の寸法の施工誤差に応じて設定する。部屋の何畳ほどの大きさと分かれば誤差もある程度推測できる。従って3〜6畳の部屋用の間詰め材、それ以上の大きな部屋用の間詰め材というように、巾調整層の巾を変えてバリエーションを用意しておくこともできる。
【0039】
また上記弾力層4及び巾調整層6はそれぞれ接着自在により接合する。また弾力層4及び巾調整層6はそれぞれカッターなどの切断具で切断可能な素材で形成し、現場で長さの微調整をすることができるようにすることが望ましい。
【0040】
以上の構成において、間詰め材2を巾方向に圧搾すると、図3(A)からまず巾調整層6が主に圧縮され、次に弾力層4が圧縮される。このときの作用を、圧縮応力σと歪εとの関係を表す図4を用いて説明する。この図は、σとεとの関係を、弾力層4について同図(A)に、巾調整層6について同図(B)に、両者を積層したものについて同図(C)にそれぞれ単純化して模式的に表している。即ち(A)及び(B)に示すように巾調整層は弾力層に比べて圧縮し易いので、圧縮力が小さいときには、主として巾調整層が圧縮される。この過程は同図(C)にS1で表されており、巾調整層内の空隙(孔)が周囲から押されて収縮されている。この空隙がほぼ押し潰され、巾調整層の圧縮が限界に近づくと、今度は弾力層4が圧縮されていく。この状態では弾性力が増大する。この過程は図4(C)のS2に表れている。
【0041】
この間詰め材を用いて畳を敷くときには、まず部屋の壁面の内周全体に間詰め材2を取り付ける。次に間詰め材を敷設した箇所の内側に畳を敷きつめる。そうすると、上記間詰め材は上記の通り、圧縮過程の初期には弱く、その後は強く反発する性質を有するため、容易に畳をセットすることができるとともに、所定の場所に確実に保持することができる。図5に間詰め材を使用した畳の設置例を示している。もっとも同図は間詰め材の役割を強調するために、部屋の寸法の不整さを誇張して描いている。作図の都合上、部屋の各辺は直線としているが、現実には弯曲することも有り得る。この図によれば部屋の各辺において、部屋の周縁と畳端との間隙のうち少なくとも一部で間詰め材2がしっかり挟持されていれば間詰め材の抜出しを防止することができる。
【0042】
また間詰め材2を畳端沿いの間隙から取り外すときには、間詰め材の両端部のうち余り圧縮されていない一端部において、巾調整層6の縁に指を押し込み、間詰め材の端面に指をかけて引っ張り上げればよい。
【0043】
以下本発明の他の実施形態を説明する。その説明において、第1の実施形態と同じ構成については、同一の符号を付することで説明を省略する。
【0044】
図6及び図7は、本発明に係る畳用隙間充填器具の第2の実施形態を示している。
【0045】
この畳用隙間充填器具1は、図1に示す間詰め材2と耐力板12とからなり、耐力板12は間詰め材の積層構造3の上に設けられている。この耐力板は間詰め材の長手方向に長い帯板形状である。もっとも間詰め材と同じ長さであることが望ましい。また耐力板12は、2つの弾力層4の上面の間に架け渡され、歩行者の体重を支えることができるような強度を有する。この耐力板の上に歩行者の体重が掛ったときに、弾力層が巾調整層側へ座屈することなく、垂直方向に圧縮されるように、弾力層4上面と耐力板下面との重なり代、及び弾性層4の強度を設定することが望ましい。
【0046】
図示例では、耐力板12の巾方向両端部を単に弾力層4の上に載置しているだけであり、間詰め材2と耐力板12とは別体である。これらは、セット物である畳用隙間充填器具として販売される。そして利用者が間詰め材2を用いて畳を部屋に敷いた後に、設置した間詰め材の圧縮の程度をチェックし、圧縮の程度の少ない個所の間詰め材2の上に耐力板12を設置すればよい。もっとも、この使用方法及び構成は好適な一例である。例えば耐力板12を例えば巾調整層6の上面の適所に接着し、図7のように左右側面から圧縮されても巾調整層の上面から外れないように設計することも可能である。
【0047】
図8及び図9は、本発明に係る畳用隙間充填器具の第3の実施形態を示している。この畳用隙間充填器具1は、上述の間詰め材2の上に耐力板12を載せ、その外周面を化粧カバー14で覆っている。この化粧カバー14は、間詰め材の外観を良好とするものである。なお、耐力板は省略することができる。
図8の例では、弾力層4及び巾調整層6からなる積層構造3の上半部を覆っている。この化粧カバーにはシワ加工を施す。しわ加工に代えてギャザーを寄せたものを用いてもよい。横向きコ字形の化粧カバー14の内面両端部を、積層構造3の両側面に接着している。
【0048】
また図9の例では、化粧カバー14は、積層構造3の周面全体を覆っている。
【0049】
図10から図12は、本発明に係る畳用隙間充填器具の第4の実施形態を示している。この実施形態では、弾力層4の両側に2つの巾調整層6を重ね合わせ、接合している。
【0050】
また、この積層構造3には、巾調整層を保護する補剛材20を取り付けている。この補剛材20は、上辺側の長い断面変形コ字形の第1のピース20Aと、断面L字形の第2のピース20Bとで形成している。
【0051】
第1のピース20Aは、側板22と底板24と頂板26とで形成している。ここで側板は巾調整層6を磨耗などから保護する保護板である。底板24は、部屋の畳敷設スペースに設置する接地板であり、この底面により側板の起立状態を維持している。頂板26は、上から踏まれたときに間詰め材が過剰に沈み込まないようにするためのものであり、先の実施形態の耐力板と同様の機能を有する。
【0052】
第2のピース20Bは、側板22と底板24とで形成している。側板及び底板の機能は20Aと同じである。
【0053】
この図示例では、変形コ字形のピース20Aに取り付けられる側の巾調整層(図左側の巾調整層)6を、20Bに取り付けられる側の巾調整層(図右側の巾調整層)6よりも巾長に形成している。これは、畳用隙間充填器具の要部平面図である図11に示すように、頂板26から露出した積層構造3の上面部分において、上方に露出した左側巾調整層の上面部分と、他方の巾調整層の上面とが同じ巾になるようにするためである。この巾は1cm程度とすることが望ましい。1cm程度であれば、その上面を踏んでも、違和感がないからである。
【0054】
補剛材20は、ステンレスなどの金属、硬質のプラスチック、或いは木材などで形成することができる。また、補剛材の各ピースと間詰め材とは接着剤などで接合してもよく、また別体でも構わない。
【0055】
上記構成において、図10の状態より、巾方向に圧縮力がかかると、間詰め材2が圧縮されると同時に2つのピース20A、20Bが接近する。そして巾の最も狭いところでは、図12に示す如くピース20Aの頂板26の先端部がピース20Bの側板2の上端に載る。これにより垂直荷重に対する耐力が増大する。それ以外の個所でもピース20A自体の弾力層4とで荷重を支える。また、図12の状態で間詰め層は底板24と頂板26との間に挟持され、弾性が高まる。
【0056】
好適な一例として、間詰め材の弾力層の巾を1cm、図左側の巾調整層の巾を2cm、図右側の巾調整層の巾を1cmとし、また図示例では、補剛材は、側板から底板先端までの距離を、側面から頂板先端までの距離の半分としている。
[実施例]
図13及び図14は、本発明の実施例として、間詰め材及びこの間詰め材とともに使用することが可能な畳状マット体を提案している。
【0057】
本実施例では、図13に示す如く上方から見てほぼ正方形の半畳分の畳状マット体30を用いている。このようにすることで、部屋の回りに間詰め材を設置した後に畳状マット体を簡単に敷設することができる。半畳分のマットとしたのは、重量が小さくなり、反転作業が容易となるからである。
【0058】
畳状マット体30は、図14に示す如く床材32の表面に畳表34を、床材の裏面に床板36をそれぞれ貼り付け、各畳状マット体をひっくり返すだけで畳の部屋から板の間へ部屋のデザインを変更することができる。図面中38は、ロウなどで形成する仕上げの層であり、ひっくり返したときに床板同士に隙間が生じないようにするものである。また畳表又は床板のいずれか一方を絨毯に置き換え、絨毯敷きの部屋に模様換えすることもできる。ここでいう畳状マット体30とは、畳のように部屋に敷いて用いるものをいい、床板と絨毯の組み合わせの如く必ずしも外観上畳に見えることを要しない。
【0059】
図15から図17は、本発明に係る畳状マットの実施形態を示している。この畳状マットは、図1から図12までに示す畳用間隙充填器具2と図13から図14に示す畳状マット体30とを組み合わせたものである。
【0060】
図15には、12枚の畳状マットMを敷き詰めている状態を示しているが、そのうち角部にある畳状マットMは、畳状マット体30の隣接する2辺に畳用間隙充填器具2を端部材として接合している。また角部以外にある畳状マットは、畳状マット体30の1辺に畳用間隙充填器具でなる端部材を接合している。また図示の畳状マット体20は正方形に形成しているが、短辺と長辺の比が1:2の長方形であってもよい。
【0061】
図示の畳用間隙充填器具は、図1に示す3層構造の間詰め材2のみで形成している。この間詰め材は畳隣り合う2辺に間詰め材2を取り付けるときには、各間詰め材を畳状マット材の各辺から角方向に延長し、この延長部分を図15に示す如く45度にカットして、各延長部分の角部分を接合するとよい。こうすると、部屋の隅部にぴったりと合うように間詰め材を設計することができる。
【0062】
図16は、図15の間詰め材を端部材として取り付けた場合の拡大図を示している。
【0063】
図17は、間詰め材のみで構成される間隙充填器具2に代えて図10の補剛材付き間隙充填器具を示している。この場合には、畳状マットの2辺方向の伸縮を邪魔しないようにピース20Bをゴム板などの弾性材で形成するとよい。
【0064】
上記構成において、畳状マットMを裏返すときには、図15において、部屋の1辺の両隅にある2つの畳状マットMを矢示の如く交換し、裏返すようにするとよい。また一辺のみ間隙充填器具2を付した畳状マットMはその場でひっくり返すようにすればよい。これにより畳を引いた和風の部屋からフローリングの部屋に簡単に模様替えすることができる。
【0065】
図18は、従来の畳の敷設例を示す。すなわち、従来の畳では、不規則な部屋の寸法形状に合わせて図18(A)の如く個々の畳を作成したいたため、各畳をひっくり返すと図18(B)に想像線で示す如く各畳の形状が部屋の形状と一致しなくなってしまう。それに対して本発明の場合には、そうした不都合を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1実施形態に係る畳用隙間充填器具の平面図である。
【図2】図1の間隙充填器具の使用例の斜視図である。
【図3】図1の間隙充填器具の作用説明図である。
【図4】図1の間隙充填器具の巾調整層、弾力層、及び全体の応力−歪み特性の概念図である。
【図5】図1の間隙充填器具の使用例を示す平面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る畳用隙間充填器具の縦断面である。
【図7】図6の隙間充填器具の作用説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る畳用隙間充填器具の縦断面である。
【図9】図8の畳用隙間充填器具の変形例を示す要部斜視図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る畳用隙間充填器具の縦断面である。
【図11】図11の間隙充填器具の要部平面図である。
【図12】図11の間隙充填器具の圧縮時の縦断面図である。
【図13】本発明の実施例として畳状マットの敷設例を示している。
【図14】図13の畳状マット体の断面図である。
【図15】本発明に係る畳状マットの敷設例を示すものである。
【図16】図15の畳状マットの要部拡大縦断面図である。
【図17】図15の要部の変形例を示す図である。
【図18】従来の畳の敷設例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
2…間隙充填器具 3…積層構造 4…弾力層 6…巾調整層 8…耐力板
10…畳用隙間充填器具 12…耐力板 14…化粧カバー
20…補剛材 20A…第1ピース 20B…第2ピース
22…側板 24…底板 26…頂板
30…畳状マット体 32…床材 34…畳表 36…床板
M…畳 B…壁 E1…部屋の周縁 E2…畳端
【技術分野】
【0001】
本発明は、畳用隙間充填器具及び畳状マットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畳を作るときには、予め室内の寸法を測り、その部屋の各部分の寸法に合致するような縦・横幅を有する畳を個々に製造する。従って、遠目には同形・同寸の畳であっても厳密には一枚ごとに形も大きさも異なる。
【0003】
何故このようにするかと言えば、住居を建てる際にどうしても部屋の縦横の寸法に施工誤差が発生してしまうからである。そうした誤差は、8畳程度の大きさの部屋で通常0.5〜1.5cm程度、場合によってはそれ以上にもなることがある。こうした誤差を無視して、事前に規則正しい矩形の一定サイズの畳を製造すると、部屋の周縁との間に隙間を生じたり、無理に畳を敷き詰めようとしても畳を敷ききることができないおそれがあるからである。
【0004】
不整な部屋の周縁と畳端との隙間を埋める間詰め材として、鋭角三角形状のプラスチック製のものが提案されているが(特許文献1)、もともと部屋の形状が設計図通りの長方形状からどの程度ずれているかは現場に行かなければ判らない。プラスチック製の間詰め材では、形状の自由度に乏しいので、まず現場に行って部屋の形状を正確に測り、次に施工誤差にあった形の間詰め材を製作し、再び現場に出向いて間詰め材を用いながら畳を敷くということが必要となり、作業が煩雑である。
【0005】
こうした不便を避けるために、畳と壁との間、又は畳と畳との間に弾性を有する棒状の間詰め材が提案されている(特許文献2、特許文献3)。特許文献2は、出願人が提案したものであって畳端と同じ長さの厚さ20〜50mm、巾25〜35mm程度の断面方形のものであり、樹脂発泡体やゴム発泡体で形成されている。特許文献3は、断面逆V字形で内側に空間を有する間詰め材であり、巾方向に弾性圧縮可能に形成している。
【特許文献1】特開2001−207627
【特許文献2】特開2006−152779
【特許文献3】実開平02−118033
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の様な断面矩形の間詰め材をゴムなどで形成すると圧縮可能な巾が不足し、またスポンジなどで形成すると十分な挟持力が得られない。これに対して特許文献3の間詰め材は、畳端沿いの間隔が大きすぎると、逆V字形の間詰め材が十分に圧縮されないので、逆V字の頂部と畳端との間に隙間が残り、埃が溜まる可能性がある。
【0007】
こうした問題点を改良するため、本出願人は、隙間を生じにくい断面矩形の間詰め材であって、ゴムよりは圧縮し易くスポンジよりは弾性のある素材で形成したものを、試作した。ところが一種類の材料で必要な誤差を吸収できるものを作ろうとすれば、かなりの柔軟性が必要となる。柔らかい間詰め材を堅い畳の縁に沿って配置すると、居住者のつま先が間詰め材を踏んだときに間詰め材が沈み込み、歩きにくいことが判った。
【0008】
そこで本発明は、弾力層と巾調整層とを組み合わせた積層構造の間詰め材を用いた畳用隙間充填器具を提案して、畳端沿いの間隙の巾を容易にかつ確実に調整できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の手段は、畳用隙間充填器具であり、
部屋の周縁と畳端との間隙又は畳端同士の間隙内に挟み込み、各間隙の巾のばらつきを調整するための棒状の間詰め材2を具備し、
この間詰め材2は、巾方向にそれぞれ圧縮及び復元可能な複数の層からなる積層構造3となっており、
第1の層は、ゴム弾性を有する素材からなる弾力層4であって、畳との挟着力を十分に発揮できる巾及び弾性を有しており、
第2の層は、多数の連続気泡を含み、第1の層より圧縮容易な柔軟な素材からなる巾調整層6であって、上記畳端沿いの間隙内にフィットさせるために十分な巾を有しており、
その積層構造3全体として、連続気泡が押し潰されるまでは圧縮応力に対する圧縮比率が大きく、連続気泡が押し潰され切った後には圧縮応力に対する圧縮比率が小となるように構成したことを特徴としている。
【0010】
本手段では、畳端沿いの間隙内に挿入する間詰め材であって、異種の材料からなる複数の層からなるものを提案している。前述の如く間詰め材を単一材料では部屋の成形誤差に対応しにくいからである。例えば縦4cm×巾3cmのサイズの軟質ゴム製とすると、人の力で圧縮できる巾はおおよそ0.5〜1cm程度であり、部屋の施工誤差が1cm以上あると間隙をぴったり埋めることができない。また柔らかい発泡ウレタンなどを用いると、圧縮比率が大きくなるが、弾性力が弱くなって畳と部屋の縁(枠)との間隙から抜け出し易い。本手段の如く、巾方向(水平方向)に柔らかい素材と弾性のある素材とを層状に重ねることで適当な圧縮比率が得られ、また踏み抜きにくい構成を実現できる。
【0011】
「弾力層」は、積層構造のうち主として弾力を発揮する機能を担う部分である。もっとも弾性変化の結果として巾調整機能も果たすことはもちろんである。弾力層はゴム弾性を有する素材で形成する。板バネやスプリングなどの弾性(エネルギー弾性)を利用する場合と比べて構造がシンプルとなり、好適である。望ましい材料は、ゴム(天然ゴム・合成ゴム)であって人の指の力で圧縮可能な程度のものである。
【0012】
弾力層は「畳との挟着力を十分に発揮できる巾及び弾性」を有する。このようにしたのは、柔軟な巾調整層に比べて弾力層の巾が短すぎると、十分な挟着力を発揮できないからである。少なくとも下記の巾調整層が限界まで圧縮された状態で(本願図3(C)参照)、部屋の周縁と畳端との間に間詰め材をしっかり保持できるように設けるものとする。例えば軟材質の巾は0.5〜1cm程度であれば十分である。この数値の範囲は、少ない材料で巾調整層の巾を十分にはこの範囲が合理的であるという程度の意味であり、これより広いものを除外する意図ではない。巾が狭いときには、硬度の高いものを選択するようにすると足で踏んだときの沈みを少なくすることができる。
【0013】
「巾調整層」は、積層構造のうち主として圧縮による巾調整の機能を担う部分である。もちろん巾調整層も圧縮後に原形状に復元する性質を有する。巾調整層の素材は、多数の連続気泡を有する多孔材料である。圧縮により多孔材料中の空間(孔)が押し潰されることで、ゴムより簡単に圧縮することができる。「連続気泡」と限定しているのは、圧縮したときに気泡内のエアが外部に排出されないと、圧縮しにくいからである。この巾調整層は、スポンジ、ウレタンフォームなどで形成することができる。
【0014】
巾調整層は「畳端沿いの間隙内にフィットさせるために十分な巾」を有する。ここでフィットとは上記間隙内に隙間無く嵌め込むということである。また、フィットさせるために十分な巾とは、部屋の縦横の寸法の施工誤差を吸収するのに十分な巾という程度の意味であり、おおよそ施工誤差と同程度とすれば足りる。通常は、2cm〜5cm程度である。好適な一例として、例えば矩形の部屋の相互に対向する二辺の長さの差がΔLであるとして、部屋の四辺に渡って部屋の周縁と畳端との間にのみ間詰め材を設置するときには、2辺の長さ方向の誤差を2本の間詰め材で吸収することになるので、各間詰め材の巾調整層の巾Dは、D=ΔL/2とすることができる。しかし、例えばその部屋が大広間であって、Dが大きすぎれば畳と畳との間に間詰め材を挿入し、3本以上の間詰め材に巾の調整分を分担させることもできる。
【0015】
「積層構造」は、ゴム弾性を有する第1の層(弾力層)とこれより柔軟で圧縮し易い第2の層(巾調整層)とを組み合わせて、2段階の圧縮変形をするようにしている。即ち、巾調整層の気泡が押し潰されるまでは巾調整層の縮巾により容易に圧縮することができる。巾調整層内の気泡が押し潰された後は、弾力層の圧縮が本格的に開始し、外部の圧縮力に対して大きな弾発力を発揮する。積層構造としては、弾力層−巾調整層の2層構造でもよく、後述のような弾力層−巾調整層−弾力層、或いは巾調整層−弾力層−巾調整層の3層構造でもよい。この積層構造全体としての巾は、好適な一例として、力を加えていない状態で4〜4.5cm、限界まで圧縮された状態で1〜1.5cmとすることができる。
【0016】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ、
上記積層構造3を、巾調整層6の両側に2枚の弾力層4を接着してなる3層構造とするとともに、
各弾力層4は、巾調整層よりも屈曲しにくい巾を有する弾性板としている。
【0017】
本手段では、巾調整層の両側にそれぞれ弾力層を接着することで、これらの弾力層の保護層として機能するようにしている。柔軟な巾調整層が外側にむき出しになっていると、この層が他物に触れて千切れたり、磨耗する可能性があるからである。また、弾力層は保形性を有する板材とすることで、作業途中で弾力層がみだりに曲がることを防止できる。
【0018】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ
上述の3層構造の間詰め材2と、この間詰め材の少なくとも長手方向の一部上面に載置するための耐力板12とを含み、
この耐力板12は、圧縮していない状態での巾調整層よりも巾が広く、積層構造3の巾方向の伸縮を妨げないように2枚の弾力層4の各上面の間に架け渡されており、
さらに耐力板12は、人の体重を支えることが可能な程度の強度を有する。
【0019】
本手段では、利用者が3層構造のうちの巾調整層をつま先で踏み、踏んだ場所が沈みこむことがないように2枚の弾力層の間に耐力板を架設している。もっとも間詰め材の長手方向のうち強く圧縮された部分では、巾調整層も踏み込みによって沈み込むことがないので耐力板は不要である。従って間詰め材の長手方向のうち圧縮の程度の低い箇所にだけ耐力板を取り付けるようにすることもできる。この場合には、耐力板は現場で長さを調整できるようにカッターなどで切断可能な材料で形成するとよい。また間詰め材の長手方向全長に亘って耐力板を設けるときには、圧縮された状態の積層構造よりも巾の狭く設ける。
【0020】
「耐力板」は、居住者の体重を支えることができる程度の強度に形成する。体重を支えるとは足で踏んで破損しないということであり、多少屈曲しても構わない。硬質のゴムや合成樹脂で形成することができる。積層構造に対する取り付け方は、単純に積層構造の上に載せるだけでもよいが、例えば巾調整層の上面に接着してもよく、また積層構造の上に耐力板を載せ、さらに耐力板の上から積層構造の両側面へ覆い(例えば後述の化粧カバー)を取り付け、この覆いにより保持してもよい。
【0021】
第4の手段は、第1の手段を有し、かつ
上記間詰め材2を、弾力層4の両側に2枚の巾調整層6を接着してなる3層の積層構造3に形成するとともに、
この両巾調整層を保護するための補剛材20を有しており、
この補剛材は、間詰め材2の巾方向の伸縮を妨げないように、各巾調整層6を保護する2つのピース20A、20Bで形成されており、
各ピースは、各巾調整層の巾方向外側面を覆う側板22を有し、かつ各側板の下端から内方へ積層構造3の下面に接する底板24を、かつ側板の上端から積層構造3の上面に沿って頂板26をそれぞれ内方へ突出し、
間詰め材2を巾方向に最大限圧縮したときに、2つのピースが合わさって間詰め材2の上面全体を覆うように構成している。
【0022】
本手段では、2つの巾調整層を弾力層の両側に設置することで、巾調整層のもともとの長さ(原寸)の和を大きくとることができるようにしている。こうすることで部屋の施工誤差が大きいケースに容易に対応することができる。
【0023】
「補剛材」は、2つの巾調整層の保護手段としての機能を有し、柔らかい巾調整層が擦り切れることを防止している。好ましい一例として、補剛材は、断面長方形の管材を巾方向に二つのピースに分割し、このピースを間詰め材の巾方向両側に取り付けるようにするとよい。巾方向に圧縮した状態では2つのピースは相互に接合し、その内部に間詰め材が保持される。後述の好適な実施例では、2つのピースを、長手方向から見て、下辺(底板)に比べて上辺(頂板)の長い変形コ字形のピースと、L字形のピースとに形成しているが、その形状は適宜変更することができ、例えば相互に向かい合うコ字形としてもよい。尚、補剛材は、側板の上下長を間詰め材の上下厚みとほぼ同じとし、間詰め材を巾方向に圧縮したときに上記底板と頂板との間に間詰め材が挟持されるようにすることができる。これにより間詰め材の圧縮比率が高まり、十分な弾発力が得られる。
【0024】
第5の手段は、
第1の手段から第4の手段の何れかを有し、かつ
上記間詰め材2と、この間詰め材の積層構造3の少なくとも上半部を覆う化粧カバー14とで形成され、
かつこの化粧カバーにしわ加工を施している。
【0025】
圧縮されていない状態でしわのない素材で包装したときには、間詰め材の長手方向のうち圧縮された箇所のみしわが生じ、体裁を損なう。最初からシワのある素材を用いることで、間詰め材の長手方向全体にしわを模様の如く表すことができ、良好な外観が得られる。なお、「しわ加工」とは、機械で生地に凹凸を付けてそのかたちを保つことをいい、従来公知の技術である。
【0026】
「化粧カバー」は、積層構造の上半部のみを覆う断面コ字形のものでもよいが、積層構造の周囲全体を覆うものでもよい。前者の場合には材料の節減に役立ち、後者の場合には間詰め材を表裏反対にして使用できるというメリットがある。化粧カバーは、和紙などの紙や布、あるいはプラスチックで形成することができる。
【0027】
第6の手段は、畳状マットであり、
第1の手段から第5の手段の何れかとして記載した畳用間隙充填器具20を端部材として、長方形の畳状マット体30の1辺側の側面全長、或いは畳状マット体30の隣接する2辺の各側面全長に付設している。
【0028】
このようにすることで、部屋の周囲に畳用間隙充填器具を設置し、次に畳を敷き詰めるという手間が不要となり、畳を敷設する作業が大幅に簡略化される。特に利用者が畳を敷きかえるときに有利である。後述の如く畳状マットは、床板と畳、じゅうたんと畳のような2種類の異なる表面仕上げとすることができるが、その場合に利用者でも部屋の施工誤差に煩わされることなく、簡単に敷き替えが可能となる。なお、畳状マット体は畳そのものでもよい。
【発明の効果】
【0029】
第1の手段に係る発明によれば次の効果を奏する。
○弾力層と巾調整層とを組み合わせたから、簡単で構造で十分な挟着力を確保することができ、かつ畳と畳又は壁との巾を調整することが容易であり、部屋の縦横の寸法に合わせて畳をオーダーメードする必要がないので作業工程が単純化される。
○この間詰め材を用いて畳を裏返して使用することができ、資源の有効利用に役立つ。
○間詰め材の巾方向の一部をゴム弾性を有する材料だけで形成したから、上方からの荷重に対する抵抗が大きく、間詰め材の上につま先を載せても沈み込みにくい。
【0030】
第2の手段に係る発明によれば、次の効果を奏する。
○巾調整層の両側に弾力層を形成したから、弾力層が巾調整層の保護層となって、他物と接触により巾調整層が切れたりすることを防止することができる。
○弾力層4は、巾調整層よりも屈曲しにくい巾を有する弾性板としたから、柔軟な多孔材料で形成した場合に比べて間詰め材を扱うときに曲がりにくく、使い勝手がよい。
【0031】
第3の手段に係る発明によれば、2枚の弾力層4の上面間に架設する耐力板12を設けたから、巾調整層付近を足で踏んでも荷重が弾力層へ分散され、巾調整層のみが圧縮されることを防止できるので、歩行者に違和感を与えない。
【0032】
第4の手段に係る発明によれば、2つの巾調整層を弾力層の両側に設置したから、調整可能な巾を大きくすることができる。
【0033】
第5の手段に係る発明によれば、上記弾力層4と巾調整層6とからなる積層構造3の少なくとも上半部を覆う化粧カバー14を設け、かつこの化粧カバーにしわ加工を施したから、体裁がよい。
【0034】
第6の手段に係る発明によれば、畳状マット体に予め間隙調整器具を端部材として組み込んだから、敷き替え作業が一層容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1から図5は、本発明に係る畳用隙間充填器具の第1の実施形態を示している。 本実施形態の畳用充填器具1は、間詰め材2のみで形成されている。
【0036】
間詰め材2は、畳の一辺(長辺又は短辺)と同じ長さかやや長く設け、畳端E2と部屋の周縁E1との間に挟みこむことができるように形成されている。この間詰め材2は、図2に示す如く2本の弾力層4を外側に、1本の巾調整層6を内側に配した3層の積層構造3として構成している。本明細書において「巾」とは、別段の説明がない限り、間詰め材の長手方向に直角な水平方向における長さをいう。また、部屋の周縁とは、畳の設置スペースの外周であり、一般的には畳の厚さ分低くなった設置スペースの枠の部分を指す。
【0037】
弾力層4は、畳よりも軟質の弾性材料(特にゴム)で形成する。畳の周囲に挟着させたときに畳を歪ませないようにするためである。この弾力層の巾は、畳と部屋の周縁とのクッションの役目を果たすことができ、かつ十分な挟着力を確保できる程度の長さで足りる。図2に示す如く、各弾力層は、左右の巾に比べて上下の厚みが大きい縦長の形状にすると、間詰め材全体として屈曲しにくく、好適である。また図示の弾力層は、長手方向に連続した一枚の弾性帯板としている。もっとも例えば厚さ方向に2枚以上の薄板材を重ねて剥離可能に接着し、建築現場において必要により薄板材を剥がして厚さを調節するような構造とすることも可能である。弾力層は、例えば耐候性のよいEPDM(エチレンプロピレンゴム)で形成することができる。なお、EPDMゴムには、独立気泡型と連続気泡型とがあるが柔軟性に勝る連続気泡型を用いるとよい。EPDM系のゴムとしては、日本ゴム境界標準規格(SRIS)で硬度7〜35、引っ張り強さが0.25〜0.98Mpa(JISK6251)、見かけ密度0.10〜0.24g/cm3のものが従来公知である。これらの範囲においてゴムの巾(厚み)や高さなどに応じて必要な素材を選択すればよい。
【0038】
巾調整層6は、柔軟な多孔材料で形成する。巾調整層の巾は、予想される部屋の縦横の寸法の施工誤差に応じて設定する。部屋の何畳ほどの大きさと分かれば誤差もある程度推測できる。従って3〜6畳の部屋用の間詰め材、それ以上の大きな部屋用の間詰め材というように、巾調整層の巾を変えてバリエーションを用意しておくこともできる。
【0039】
また上記弾力層4及び巾調整層6はそれぞれ接着自在により接合する。また弾力層4及び巾調整層6はそれぞれカッターなどの切断具で切断可能な素材で形成し、現場で長さの微調整をすることができるようにすることが望ましい。
【0040】
以上の構成において、間詰め材2を巾方向に圧搾すると、図3(A)からまず巾調整層6が主に圧縮され、次に弾力層4が圧縮される。このときの作用を、圧縮応力σと歪εとの関係を表す図4を用いて説明する。この図は、σとεとの関係を、弾力層4について同図(A)に、巾調整層6について同図(B)に、両者を積層したものについて同図(C)にそれぞれ単純化して模式的に表している。即ち(A)及び(B)に示すように巾調整層は弾力層に比べて圧縮し易いので、圧縮力が小さいときには、主として巾調整層が圧縮される。この過程は同図(C)にS1で表されており、巾調整層内の空隙(孔)が周囲から押されて収縮されている。この空隙がほぼ押し潰され、巾調整層の圧縮が限界に近づくと、今度は弾力層4が圧縮されていく。この状態では弾性力が増大する。この過程は図4(C)のS2に表れている。
【0041】
この間詰め材を用いて畳を敷くときには、まず部屋の壁面の内周全体に間詰め材2を取り付ける。次に間詰め材を敷設した箇所の内側に畳を敷きつめる。そうすると、上記間詰め材は上記の通り、圧縮過程の初期には弱く、その後は強く反発する性質を有するため、容易に畳をセットすることができるとともに、所定の場所に確実に保持することができる。図5に間詰め材を使用した畳の設置例を示している。もっとも同図は間詰め材の役割を強調するために、部屋の寸法の不整さを誇張して描いている。作図の都合上、部屋の各辺は直線としているが、現実には弯曲することも有り得る。この図によれば部屋の各辺において、部屋の周縁と畳端との間隙のうち少なくとも一部で間詰め材2がしっかり挟持されていれば間詰め材の抜出しを防止することができる。
【0042】
また間詰め材2を畳端沿いの間隙から取り外すときには、間詰め材の両端部のうち余り圧縮されていない一端部において、巾調整層6の縁に指を押し込み、間詰め材の端面に指をかけて引っ張り上げればよい。
【0043】
以下本発明の他の実施形態を説明する。その説明において、第1の実施形態と同じ構成については、同一の符号を付することで説明を省略する。
【0044】
図6及び図7は、本発明に係る畳用隙間充填器具の第2の実施形態を示している。
【0045】
この畳用隙間充填器具1は、図1に示す間詰め材2と耐力板12とからなり、耐力板12は間詰め材の積層構造3の上に設けられている。この耐力板は間詰め材の長手方向に長い帯板形状である。もっとも間詰め材と同じ長さであることが望ましい。また耐力板12は、2つの弾力層4の上面の間に架け渡され、歩行者の体重を支えることができるような強度を有する。この耐力板の上に歩行者の体重が掛ったときに、弾力層が巾調整層側へ座屈することなく、垂直方向に圧縮されるように、弾力層4上面と耐力板下面との重なり代、及び弾性層4の強度を設定することが望ましい。
【0046】
図示例では、耐力板12の巾方向両端部を単に弾力層4の上に載置しているだけであり、間詰め材2と耐力板12とは別体である。これらは、セット物である畳用隙間充填器具として販売される。そして利用者が間詰め材2を用いて畳を部屋に敷いた後に、設置した間詰め材の圧縮の程度をチェックし、圧縮の程度の少ない個所の間詰め材2の上に耐力板12を設置すればよい。もっとも、この使用方法及び構成は好適な一例である。例えば耐力板12を例えば巾調整層6の上面の適所に接着し、図7のように左右側面から圧縮されても巾調整層の上面から外れないように設計することも可能である。
【0047】
図8及び図9は、本発明に係る畳用隙間充填器具の第3の実施形態を示している。この畳用隙間充填器具1は、上述の間詰め材2の上に耐力板12を載せ、その外周面を化粧カバー14で覆っている。この化粧カバー14は、間詰め材の外観を良好とするものである。なお、耐力板は省略することができる。
図8の例では、弾力層4及び巾調整層6からなる積層構造3の上半部を覆っている。この化粧カバーにはシワ加工を施す。しわ加工に代えてギャザーを寄せたものを用いてもよい。横向きコ字形の化粧カバー14の内面両端部を、積層構造3の両側面に接着している。
【0048】
また図9の例では、化粧カバー14は、積層構造3の周面全体を覆っている。
【0049】
図10から図12は、本発明に係る畳用隙間充填器具の第4の実施形態を示している。この実施形態では、弾力層4の両側に2つの巾調整層6を重ね合わせ、接合している。
【0050】
また、この積層構造3には、巾調整層を保護する補剛材20を取り付けている。この補剛材20は、上辺側の長い断面変形コ字形の第1のピース20Aと、断面L字形の第2のピース20Bとで形成している。
【0051】
第1のピース20Aは、側板22と底板24と頂板26とで形成している。ここで側板は巾調整層6を磨耗などから保護する保護板である。底板24は、部屋の畳敷設スペースに設置する接地板であり、この底面により側板の起立状態を維持している。頂板26は、上から踏まれたときに間詰め材が過剰に沈み込まないようにするためのものであり、先の実施形態の耐力板と同様の機能を有する。
【0052】
第2のピース20Bは、側板22と底板24とで形成している。側板及び底板の機能は20Aと同じである。
【0053】
この図示例では、変形コ字形のピース20Aに取り付けられる側の巾調整層(図左側の巾調整層)6を、20Bに取り付けられる側の巾調整層(図右側の巾調整層)6よりも巾長に形成している。これは、畳用隙間充填器具の要部平面図である図11に示すように、頂板26から露出した積層構造3の上面部分において、上方に露出した左側巾調整層の上面部分と、他方の巾調整層の上面とが同じ巾になるようにするためである。この巾は1cm程度とすることが望ましい。1cm程度であれば、その上面を踏んでも、違和感がないからである。
【0054】
補剛材20は、ステンレスなどの金属、硬質のプラスチック、或いは木材などで形成することができる。また、補剛材の各ピースと間詰め材とは接着剤などで接合してもよく、また別体でも構わない。
【0055】
上記構成において、図10の状態より、巾方向に圧縮力がかかると、間詰め材2が圧縮されると同時に2つのピース20A、20Bが接近する。そして巾の最も狭いところでは、図12に示す如くピース20Aの頂板26の先端部がピース20Bの側板2の上端に載る。これにより垂直荷重に対する耐力が増大する。それ以外の個所でもピース20A自体の弾力層4とで荷重を支える。また、図12の状態で間詰め層は底板24と頂板26との間に挟持され、弾性が高まる。
【0056】
好適な一例として、間詰め材の弾力層の巾を1cm、図左側の巾調整層の巾を2cm、図右側の巾調整層の巾を1cmとし、また図示例では、補剛材は、側板から底板先端までの距離を、側面から頂板先端までの距離の半分としている。
[実施例]
図13及び図14は、本発明の実施例として、間詰め材及びこの間詰め材とともに使用することが可能な畳状マット体を提案している。
【0057】
本実施例では、図13に示す如く上方から見てほぼ正方形の半畳分の畳状マット体30を用いている。このようにすることで、部屋の回りに間詰め材を設置した後に畳状マット体を簡単に敷設することができる。半畳分のマットとしたのは、重量が小さくなり、反転作業が容易となるからである。
【0058】
畳状マット体30は、図14に示す如く床材32の表面に畳表34を、床材の裏面に床板36をそれぞれ貼り付け、各畳状マット体をひっくり返すだけで畳の部屋から板の間へ部屋のデザインを変更することができる。図面中38は、ロウなどで形成する仕上げの層であり、ひっくり返したときに床板同士に隙間が生じないようにするものである。また畳表又は床板のいずれか一方を絨毯に置き換え、絨毯敷きの部屋に模様換えすることもできる。ここでいう畳状マット体30とは、畳のように部屋に敷いて用いるものをいい、床板と絨毯の組み合わせの如く必ずしも外観上畳に見えることを要しない。
【0059】
図15から図17は、本発明に係る畳状マットの実施形態を示している。この畳状マットは、図1から図12までに示す畳用間隙充填器具2と図13から図14に示す畳状マット体30とを組み合わせたものである。
【0060】
図15には、12枚の畳状マットMを敷き詰めている状態を示しているが、そのうち角部にある畳状マットMは、畳状マット体30の隣接する2辺に畳用間隙充填器具2を端部材として接合している。また角部以外にある畳状マットは、畳状マット体30の1辺に畳用間隙充填器具でなる端部材を接合している。また図示の畳状マット体20は正方形に形成しているが、短辺と長辺の比が1:2の長方形であってもよい。
【0061】
図示の畳用間隙充填器具は、図1に示す3層構造の間詰め材2のみで形成している。この間詰め材は畳隣り合う2辺に間詰め材2を取り付けるときには、各間詰め材を畳状マット材の各辺から角方向に延長し、この延長部分を図15に示す如く45度にカットして、各延長部分の角部分を接合するとよい。こうすると、部屋の隅部にぴったりと合うように間詰め材を設計することができる。
【0062】
図16は、図15の間詰め材を端部材として取り付けた場合の拡大図を示している。
【0063】
図17は、間詰め材のみで構成される間隙充填器具2に代えて図10の補剛材付き間隙充填器具を示している。この場合には、畳状マットの2辺方向の伸縮を邪魔しないようにピース20Bをゴム板などの弾性材で形成するとよい。
【0064】
上記構成において、畳状マットMを裏返すときには、図15において、部屋の1辺の両隅にある2つの畳状マットMを矢示の如く交換し、裏返すようにするとよい。また一辺のみ間隙充填器具2を付した畳状マットMはその場でひっくり返すようにすればよい。これにより畳を引いた和風の部屋からフローリングの部屋に簡単に模様替えすることができる。
【0065】
図18は、従来の畳の敷設例を示す。すなわち、従来の畳では、不規則な部屋の寸法形状に合わせて図18(A)の如く個々の畳を作成したいたため、各畳をひっくり返すと図18(B)に想像線で示す如く各畳の形状が部屋の形状と一致しなくなってしまう。それに対して本発明の場合には、そうした不都合を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1実施形態に係る畳用隙間充填器具の平面図である。
【図2】図1の間隙充填器具の使用例の斜視図である。
【図3】図1の間隙充填器具の作用説明図である。
【図4】図1の間隙充填器具の巾調整層、弾力層、及び全体の応力−歪み特性の概念図である。
【図5】図1の間隙充填器具の使用例を示す平面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る畳用隙間充填器具の縦断面である。
【図7】図6の隙間充填器具の作用説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る畳用隙間充填器具の縦断面である。
【図9】図8の畳用隙間充填器具の変形例を示す要部斜視図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る畳用隙間充填器具の縦断面である。
【図11】図11の間隙充填器具の要部平面図である。
【図12】図11の間隙充填器具の圧縮時の縦断面図である。
【図13】本発明の実施例として畳状マットの敷設例を示している。
【図14】図13の畳状マット体の断面図である。
【図15】本発明に係る畳状マットの敷設例を示すものである。
【図16】図15の畳状マットの要部拡大縦断面図である。
【図17】図15の要部の変形例を示す図である。
【図18】従来の畳の敷設例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
2…間隙充填器具 3…積層構造 4…弾力層 6…巾調整層 8…耐力板
10…畳用隙間充填器具 12…耐力板 14…化粧カバー
20…補剛材 20A…第1ピース 20B…第2ピース
22…側板 24…底板 26…頂板
30…畳状マット体 32…床材 34…畳表 36…床板
M…畳 B…壁 E1…部屋の周縁 E2…畳端
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋の周縁と畳端との間隙又は畳端同士の間隙内に挟み込み、各間隙の巾のばらつきを調整するための棒状の間詰め材2を具備し、
この間詰め材2は、巾方向にそれぞれ圧縮及び復元可能な複数の層からなる積層構造3となっており、
第1の層は、ゴム弾性を有する素材からなる弾力層4であって、畳との挟着力を十分に発揮できる巾及び弾性を有しており、
第2の層は、多数の連続気泡を含み、第1の層より圧縮容易な柔軟な素材からなる巾調整層6であって、上記畳端沿いの間隙内にフィットさせるために十分な巾を有しており、
その積層構造3全体として、連続気泡が押し潰されるまでは圧縮応力に対する圧縮比率が大きく、連続気泡が押し潰され切った後には圧縮応力に対する圧縮比率が小となるように構成したことを特徴とする、畳用隙間充填器具。
【請求項2】
上記積層構造3を、巾調整層6の両側に2枚の弾力層4を接着してなる3層構造とするとともに、
各弾力層4は、巾調整層よりも屈曲しにくい巾を有する弾性板としたことを特徴とする、請求項1記載の畳用隙間充填器具。
【請求項3】
上述の3層構造の間詰め材2と、この間詰め材の少なくとも長手方向の一部上面に載置するための耐力板12とを含み、
この耐力板12は、圧縮していない状態での巾調整層よりも巾が広く、積層構造3の巾方向の伸縮を妨げないように2枚の弾力層4の各上面の間に架け渡されており、
さらに耐力板12は、人の体重を支えることが可能な程度の強度を有することを特徴とする、請求項2記載の畳用隙間充填器具。
【請求項4】
上記間詰め材2を、弾力層4の両側に2枚の巾調整層6を接着してなる3層の積層構造3に形成するとともに、
この両巾調整層を保護するための補剛材20を有しており、
この補剛材は、間詰め材2の巾方向の伸縮を妨げないように、各巾調整層6を保護する2つのピース20A、20Bで形成されており、
各ピースは、各巾調整層の巾方向外側面を覆う側板22を有し、かつ各側板の下端から内方へ積層構造3の下面に接する底板24を、かつ側板の上端から積層構造3の上面に沿って頂板26をそれぞれ内方へ突出し、
間詰め材2を巾方向に最大限圧縮したときに、2つのピースが合わさって間詰め材2の上面全体を覆うように構成したことを特徴とする、請求項1記載の畳用隙間充填器具。
【請求項5】
上記間詰め材2と、この間詰め材の積層構造3の少なくとも上半部を覆う化粧カバー14とで形成され、
かつこの化粧カバーにしわ加工を施したことを特徴とする、請求項1から請求項4の何れかに記載の畳用隙間充填器具。
【請求項6】
請求項1から請求項5に記載した畳用間隙充填器具20を端部材として、長方形の畳状マット体30の1辺側の側面全長、或いは畳状マット体30の隣接する2辺の各側面全長に付設したことを特徴とする、畳状マット。
【請求項1】
部屋の周縁と畳端との間隙又は畳端同士の間隙内に挟み込み、各間隙の巾のばらつきを調整するための棒状の間詰め材2を具備し、
この間詰め材2は、巾方向にそれぞれ圧縮及び復元可能な複数の層からなる積層構造3となっており、
第1の層は、ゴム弾性を有する素材からなる弾力層4であって、畳との挟着力を十分に発揮できる巾及び弾性を有しており、
第2の層は、多数の連続気泡を含み、第1の層より圧縮容易な柔軟な素材からなる巾調整層6であって、上記畳端沿いの間隙内にフィットさせるために十分な巾を有しており、
その積層構造3全体として、連続気泡が押し潰されるまでは圧縮応力に対する圧縮比率が大きく、連続気泡が押し潰され切った後には圧縮応力に対する圧縮比率が小となるように構成したことを特徴とする、畳用隙間充填器具。
【請求項2】
上記積層構造3を、巾調整層6の両側に2枚の弾力層4を接着してなる3層構造とするとともに、
各弾力層4は、巾調整層よりも屈曲しにくい巾を有する弾性板としたことを特徴とする、請求項1記載の畳用隙間充填器具。
【請求項3】
上述の3層構造の間詰め材2と、この間詰め材の少なくとも長手方向の一部上面に載置するための耐力板12とを含み、
この耐力板12は、圧縮していない状態での巾調整層よりも巾が広く、積層構造3の巾方向の伸縮を妨げないように2枚の弾力層4の各上面の間に架け渡されており、
さらに耐力板12は、人の体重を支えることが可能な程度の強度を有することを特徴とする、請求項2記載の畳用隙間充填器具。
【請求項4】
上記間詰め材2を、弾力層4の両側に2枚の巾調整層6を接着してなる3層の積層構造3に形成するとともに、
この両巾調整層を保護するための補剛材20を有しており、
この補剛材は、間詰め材2の巾方向の伸縮を妨げないように、各巾調整層6を保護する2つのピース20A、20Bで形成されており、
各ピースは、各巾調整層の巾方向外側面を覆う側板22を有し、かつ各側板の下端から内方へ積層構造3の下面に接する底板24を、かつ側板の上端から積層構造3の上面に沿って頂板26をそれぞれ内方へ突出し、
間詰め材2を巾方向に最大限圧縮したときに、2つのピースが合わさって間詰め材2の上面全体を覆うように構成したことを特徴とする、請求項1記載の畳用隙間充填器具。
【請求項5】
上記間詰め材2と、この間詰め材の積層構造3の少なくとも上半部を覆う化粧カバー14とで形成され、
かつこの化粧カバーにしわ加工を施したことを特徴とする、請求項1から請求項4の何れかに記載の畳用隙間充填器具。
【請求項6】
請求項1から請求項5に記載した畳用間隙充填器具20を端部材として、長方形の畳状マット体30の1辺側の側面全長、或いは畳状マット体30の隣接する2辺の各側面全長に付設したことを特徴とする、畳状マット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
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【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−133165(P2009−133165A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311805(P2007−311805)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(505007515)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(505007515)
【Fターム(参考)】
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