説明

疎水性ポリウレタンフォームマットレス

【課題】汗を吸い取らないが蒸れず、例え洗濯しても振る程度で乾燥でき、しかも抗菌性のあるマットレスを提供する。
【解決手段】少なくても疎水性ポリオールとポリイソシアナート、気泡安定剤、触媒等とから製造してなる疎水性ポリウレタンフォームであって、発泡後ポリウレタンフォームの気泡膜を後処理法により取り除いた膜無し疎水性ポリウレタンフォームを使用する膜無し疎水性ウレタンフォームマットレス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は疎水性ポリウレタンフォームマットレスに関するものである。
【技術背景】
【0002】
ポリウレタンフォームマットレス(以後ポリウレタンマットレスと呼ぶ)に関しては多くの提案がなされ、多くの種類が実用化されている。これらのポリウレタンマットレスは主にポリエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合やプロピレンオキサイドの単独重合で合成されたポリエーテルポリオールとポリイソシアネートを主原料として製造されたものであり、親水性ポリウレタンマットレスと呼ぶべきものである。
この理由は古くからポリウレタンマットレスは人間が寝ている間にでる汗を吸い取る必要があると考えられ親水性のポリウレタンマットレスを使用してきた。またポリウレタンフォームのみでは不十分としてより多くの汗を吸い取りやすくする為の工夫が長年に渡りなされてきた。
例えば特開平7−88022には前述のポリエーテル系ポリウレタンフォームのみでは汗の吸水や尿がこぼれた場合の吸水が足りないとして吸水ポリマーシートをも併用される提案もなされている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−88022号公報
【0004】
汗を吸いやすいマットレスは失禁時、あるいは水等をこぼした時に吸水し易く、しかも乾燥し難い欠点を更に強くする結果となった。
またこの種のポリウレタンマットレスは汗を吸い易くなり、乾燥し難くなることから細菌が繁殖しやすく不衛生になる。このため頻繁に洗濯を要すことになるが吸水性を高めているため逆に乾き難くなってしまっている。
【0005】
耐洗濯性を高めたタイプのポリウレタンマットレスも洗濯をすればするほど強度は低下すると共に、この種の親水性のポリエーテルポリオールを使用している限り洗濯後の乾燥が遅い欠点は残る。
また抗菌剤を加えた抗菌性タイプのポリウレタンマットレスも高湿度下で長期に渡り使用すればやはり細菌が繁殖しやすい。
以上のことから更に洗濯性が高く、抗菌性の高いポリウレタンマットレスの開発が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は汗を吸い取らないが、蒸れにくくない衛生的なポリウレタンマットレスを提供することである。
また他の課題は例え洗濯してもマットレスを振る程度で乾燥可能なポリウレタンマットレスを提供することである。
また他の課題は例え汚染しても汚染物が付着しにくいポリウレタンマットレスを提供することである。
また他の課題は長期に渡り高度の洗濯性並びに抗菌性を維持できるポリウレタンマットレスを提供することである。
また他の課題は失禁や水をこぼした時にウレタンフォームが水を吸い込まないポリウレタンマットレスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は少なくても疎水性ポリオールとポリイソシアネート、セル安定剤、触媒とから発泡製造してなる疎水性ポリウレタンフォームであって、しかも発泡後ポリウレタンフォームの気泡膜を後処理法で取り除いた膜無の疎水性ポリウレタンマットレスである。
【0008】
一般に本疎水性ウレタンフォームはセル膜の残存量が多く通気性が少ない。この種の疎水性ポリウレタンフォームは通気度が30cc/cm/sec以下では高度の止水性を有するため、水をこぼしても容易に吸水しない性質があるが、通気性が低いため汗をフォーム気泡穴を通して十分に逃がすことが出来ず睡眠時蒸れ易い。
本発明の疎水性ポリウレタンマットレスは気泡膜を取ることによって蒸れ易さを改善し、しかも改善された通気性で睡眠時の汗を疎水性ウレタンフォームマットレスの気泡を通して逃がすものである。
即ち本発明のポリウレタンマットレスは従来のポリウレタンマットレスが水分を吸収しなくてはならないという概念を取り除くものであり、汗は気泡穴を通してのみ外部に放出するものである。
また本発明のポリウレタンマットレスは疎水性のため、通気性を大きくしても疎水性は変わらない為容易には水を吸水せず、例え吸水したとしても樹脂自体が疎水性のため、振り払う程度でとることが出来る。
【0009】
更に本発明の疎水性ポリウレタンマットレスは発泡後本疎水性ポリウレタンフォームの気泡膜を除去することにより睡眠時の蒸れが大幅に改善され快適な睡眠が可能となった。
一般にポリウレタンフォームは通気性が大きいほど蒸れが少なくなるが、同一通気度であっても膜を除去した場合には大幅に蒸れにくいことが判明した。これはセル膜がある場合には睡眠時フォームに体圧がかかった時に膜がセル穴を塞ぐため実質的の通気度は極端に低下し易くなるものと考えられる。
本発明の疎水性ポリウレタンマットレスの通気度はJIS K6400−7で60cc/cm/sec以上、好ましくは150cc/cm/sec以上、更に好ましくは200cc/cm/sec以上が良い。
【0010】
疎水性ウレタンフォームは汎用の親水性のウレタンフォームに較べて静電気を帯び易く、従って放電し易い。この放電は体に害を与えることはないが好ましくない。
帯電を軽減する為にはポリウレタンフォーム発泡時に静電防止剤を添加するのが良い。静電防止剤としては汎用に使用しているものでも良いが種類あるいは使用量に注意を払う必要がある。種類によっては使用量が多くなると帯電し難くなるが疎水性が低下して本目的の疎水性を損なうことになるのでそのバランスをとる必要がある場合もある。
【0011】
帯電防止剤としてはメトキシポリオキシエチレンラウリルエステル、ドデシルベンゼンスルホン酸Na等の有機スルホン酸金属塩、4級アンモニウム化合物などのノニオン、アニオン及び両性界面活性剤、またアルミニウム、チタン、銅、銀、ニッケル、グラファイト活性カーボン、酸化チタン等の粉末あるいは繊維状物,またポリエステルあるいはアクリル繊維等の表面に銅やニッケル等の金属を無電解メッキ等によりコーティングした繊維、また繊維樹脂中に金属粉、ポリビニルピロリドン等を練り込んだ導電性の繊維等があるがこれらに限定されるものではなく要はポリウレタンフォームに添加して帯電性を低下できるものであれば良い。
【0012】
これらの帯電防止剤のうちノニオン、アニオン界面活性剤及び両性界面活性剤は多量に添加すると疎水性が低下する為疎水性を維持できる範囲で使用するのが良い。
これに対して粉末活性カーボン、繊維状カーボン、金属粉、金属酸化物、金属繊維、金属メッキ繊維及び活性カーボンや金属粉あるいは金属酸化物を練り込んだ繊維等は疎水性を低下させることなく静電気を除去することが出来るので好ましい。
【0013】
また他の除電方法として帯電防止剤を添加しない疎水性ウレタンフォームあるいは帯電防止剤を添加した疎水性ポリウレタンフォームの除電を更にすすめる為、両疎水性ポリウレタンフォームを除電布あるいは除電フィルム等の除電材に接触して重ねるかあるいは全体を包む方法あるいは導電性の接着剤で接着一体化することでも目的を達成することができる。
除電布としては前述したように各種繊維の表面に金属をメッキした繊維、金属単独繊維、導電性繊維と通常の繊維とを併用した布、あるいは導電剤を練り込んだ除電性繊維等が好ましい。
また除電フィルムとしては前述の導電材を樹脂に練り込んだフィルムあるいは表面金属メッキ等をほどこしたフィルムが好ましい。
【0014】
本発明の疎水性ウレタンフォームを製造するに当たり、ポリオールとしては疎水性ポリオールであれば良く、具体的にはダイマー酸系ポリオール、ポリジエン系ポリオール、ポリイソプレン系ポリオール等がある。また疎水性を壊さない範囲で汎用のポリオールを添加しても良い。この場合疎水性ポリオールとして全ポリオール重量の30%以上の範囲が良く更に好ましくは50%以上が好ましい。
【0015】
汎用のポリオールとしては主にポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールがあり、ポリエーテルポリオールとしてはグリセリンやトリメチロールプロパンにアルキレンオキサイドを付加したポリオール、更にスチレンモノマーをグラフト重合したポリマーポリオールが好ましい。
ポリエステルポリオールとしては1.6ヘキサンジオール、1.4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコールとアジビン酸、マレイン酸等のエステルが好ましい。
ポリイソシアネートとしては汎用のイソシアネートで良く、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックMDI等があり特に限定されない。
発泡剤としては水、低沸点炭化水素、CO等の汎用の発泡剤で良く、触媒としては汎用のトリエチレンジアミン等の3級アミン化合物、スタナスオクトエート等の有機金属化合物で良い。
【0016】
本発明に用いられる整泡剤としてはポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合化合物が良く、特にポリオキシアルキレン末端はイソシアネート基と反応するものが良く、末端OH基、末端COOH、末端NH、末端CHCHO等がある。
その他添加剤としては疎水性を損なわない範囲で高分子量炭化水素化合物、炭酸カルシウム等の充填剤、ポリビニルスチレン等の石油樹脂あるいは長鎖脂肪酸エステルを含む合成あるいは天然油脂等を添加することが出来る。
また発泡方式としてはワンショット法でもプレポリマー法でも良く、またブロック方式でもモールド方式でも良い。
【0017】
本発明の疎水性ポリウレタンの気泡膜を取る方法としては一般の爆発法でよい。
一般の爆発法は部屋の中に疎水性ポリウレタンフォームを入れ、水素ガスと酸素を充満させて点火する方法で行われ、いわゆるスケルトンフォームを作る。また他の方法としてはアルカリ分解法であるケミカル方法もあり本発明の範囲に入る。
【0018】
本発明のマットレスとは畳等の上に敷く通常のマットレス、ベットの上に敷く通常のマットレス、野外でも使用可能なマットレスを指す。またこれらのマットレスは膜無し疎水性ポリウレタンフォームを布で包んだ形状となっているが内部のポリウレタンフォームとしては全て膜無の疎水性ポリウレタンフォームでも、汎用のポリウレタンフォームとの重ね合わせ併用、部位による併用でも良く本発明に含まれる。
また汎用の薄いポリウレタンフォームを布で包み、疎水性膜無しポリウレタンフォームを別々に布で包んで重ねる方法も良く、本方法も汎用ポリウレタンフォームと疎水性ポリウレタンフォームとの併用の範囲に入り本発明の範囲に含まれる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によるマットレスは汗や水を吸水することが無く、常に乾燥している状態で使用することから細菌が繁殖しづらく、しかも汚れにくく、例え洗濯をしても簡単に振る程度で乾燥することが出来る。
【本発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明の膜無し疎水性ポリウレタンマットレスの1例である。1は導電性繊維を織り込んだ布カバーであり、3は疎水性ポリオールとイソシアネート等から製造された疎水性ポリウレタンフォームを爆発法にて気泡膜を除去した膜無し疎水性ポリウレタンフォームである。
図2は本発明の別の膜無し疎水性ポリウレタンマットレスの1例である。1は導電性繊維を織り込んだ布カバーであり、3は膜無し疎水性ポリウレタンフォーム、4は汎用のポリウレタンフォームである。
図3は本発明の別の膜無し疎水性ポリウレタンマットレスの1例である。2は汎用の布カバーであり、3は膜無し疎水性ポリウレタンフォーム、5は導電性繊維を織り込んだ除電布である。
図4は本発明の別の膜無し疎水性ポリウレタンマットレスの1例である。2は汎用の布カバーであり、6は活性カーボン粉末を原料中に混合して製造された除電性膜無し疎水性ポリウレタンフォーム、6aはポリウレタン気泡、6bは活性カーボンである。
図5は従来の汎用のポリウレタンマットレスであり、2の汎用の布カバーで汎用の親水性ポリウレタンフォームが包まれている。
【実施例1】
【0021】
ダイマー酸、ジエチレングリコール及びグリセリンとから合成されたOH価57のポリオール100g、末端OH基を有するポリジメチルシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合(信越化学工業社製商品名F303)2.0g.HO 3.8g、トリエチレンジアミン0.2g、スタナスオクトエート 0.35g、トリレンジイソシアナート(T−65)46.8gの割合で撹拌混合して密度38Kg/m、通気度27cc/cm/secの疎水性ポリウレタンフォームを得た。
本疎水性ポリウレタンフォームブロックを密閉した室内に入れて水素ガスと酸素ガスを充満させた後、爆発させて通気度208cc/cm/secの膜無し疎水性ポリウレタンフォームを得た。
本疎水性ポリウレタンフォームを厚さ70mmのマットレス形状に裁断し、布カバーを付けてマットレスとして使用したところ蒸れることも無く快適であった。
【実施例2】
【0022】
実施例1で製造した膜無し疎水性ポリウレタンフォームを厚さ30mmにスライスし、また汎用の厚さ40mmのポリエーテルポリウレタンフォームを用意して図2に示した形状の厚さ70mmのマットレスを製造した。本マットレスを使用したところ蒸れることも無く快適の睡眠を得ることが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の膜無し疎水性ポリウレタンマットレスの断面図である。
【図2】本発明の別の膜無し疎水性ポリウレタンマットレスの断面図である。
【図3】本発明の別の膜無し疎水性ポリウレタンマットレスの断面図である。
【図4】本発明の別の膜無し疎水性ポリウレタンマットレスの断面図である。
【図5】従来のポリウレタンマットレスの断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 導電性繊維を織り込んだ布カバー
2 汎用の布カバー
3 膜無し疎水性ポリウレタンフォーム
4 汎用のポリウレタンフォーム
5 導電性繊維を織り込んだ除電布
6 活性カーボン粉末を原料中に混合して製造された除電性膜無し疎水性ポリウレタンフォーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも主に疎水性ポリオール、ポリイソシアネート、セル安定剤、発泡剤、触媒、から製造してなる疎水性ポリウレタンフォームであって、しかも発泡後フォームの気泡セル膜を後処理で取り除いた膜無し疎水性ポリウレタンフォームからなる膜無し疎水性ポリウレタンフォームマットレス。
【請求項2】
請求項1の膜無し疎水性ポリウレタンフォームと汎用のポリウレタンフォームとを併用してなる膜無し疎水性ポリウレタンフォームマットレス。
【請求項3】
該疎水性ポリウレタンフォームが原料中に帯電防止剤を添加、製造してなる疎水性ポリウレタンフォームである請求項1乃至2記載の疎水性ポリウレタンフォームマットレス。
【請求項4】
該帯電防止剤が1種類以上から選ばれた粉末カーボン、繊維状カーボン、金属粉末、金属繊維である請求項3記載の疎水性ポリウレタンフォームマットレス。
【請求項5】
該疎水性ポリウレタンフォームに接した状態で除電材を一体化してなる請求項1乃至4いずれか記載の疎水性ポリウレタンフォームマットレス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−297015(P2006−297015A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−148680(P2005−148680)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(592144180)大鳳株式会社 (6)
【出願人】(593174674)有限会社サン・イースト・リサーチ (10)
【Fターム(参考)】