説明

疎水性薬物検出法

【課題】疎水性薬物を検出するためのアッセイ法を提供する。
【解決手段】疎水性薬物の生物学的利用能を前記疎水性薬物の代謝産物の生物学的利用能よりも選択的に高める方法であって、(a)媒体中に、(i)前記試料、(ii)前記疎水性薬物及び前記代謝産物を内在性結合成分から遊離させるための遊離剤、及び(iii)前記疎水性薬物のための選択的可溶化剤であって、前記選択的可溶化剤が水混和性の不揮発性有機溶媒を含み、前記媒体中の前記選択的可溶化剤の濃度が、前記媒体中、前記疎水性薬物の生物学的利用能を前記代謝産物の生物学的利用能よりも高めるのに十分である選択的可溶化剤を組み合わせて提供すること、ならびに(b)前記媒体を、前記媒体中、前記疎水性薬物の生物学的利用能を前記代謝産物の生物学的利用能よりも高めるための条件下で、インキュベートすることを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つ以上の疎水性薬物を含有することが知られる、又は疑われる試料、たとえば患者試料中の疎水性薬物、たとえば免疫抑制薬の測定のための化合物、方法及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
体は、自身を非自身から区別するために複雑な免疫反応系に依存する。ときには、体の免疫系は、不十分な反応を増強したり、過度な反応を抑制したりするために制御されなければならない。たとえば、腎臓、心臓、心肺系、骨髄及び肝臓のような臓器がヒトに移植される場合、体は、多くの場合、同種異系移植片拒絶反応と呼ばれるプロセスにより、移植された組織を拒絶しようとする。
【0003】
同種異系移植片拒絶反応を処理する際、免疫系は、しばしば、薬物療法により、制御されたやり方で抑制される。非自身組織に対する同種異系移植片拒絶反応を防ぎやすくするために、免疫抑制薬が注意深く被移植者に投与される。移植患者における臓器拒絶反応を防ぐためにもっとも一般的に投与される二つの免疫抑制薬がシクロスポリン(CSA)及びKF−506(FK又はタクロリムス)である。米国及び他の国々で免疫抑制剤としての使用が見られるもう一つの薬が、ラパマイシンとしても知られるシロリムスである。シロリムスの誘導体もまた、免疫抑制剤として有用であるといわれている。そのような誘導体としては、たとえばエベロリムスなどがある。
【0004】
一部の免疫抑制薬に伴う副作用は、患者中に存在する薬物のレベルを注意深く制御することによって部分的には抑制することができる。最大限の免疫抑制を最小限の毒性で保証するように投与計画を最適化するためには、血液中の免疫抑制薬及び関連薬物の濃度の治療的モニタリングが必要である。免疫抑制薬は非常に有効な免疫抑制剤であるが、有効用量範囲が狭いことが多く、過剰投与が深刻な副作用を生じさせるため、その使用は注意深く管理されなければならない。他方、不十分な投与量の免疫抑制剤は組織拒絶反応を招くおそれがある。免疫抑制薬の分散及び代謝は患者間で大きく異なることができ、有害反応の広い範囲及び重篤度のために、薬物レベルの正確なモニタリングは必須である。
【0005】
治療的薬物モニタリングの分野において、多くの場合、親薬物をその代謝産物よりも選択的に検出することが、イムノアッセイ(免疫学的測定法)を設計する場合の重要な目標である。これは、免疫抑制薬の場合に特に当てはまる。その理由のため、HPLCタンデムMSアッセイが、親薬物を選択的に計測する能力のせいで、シロリムス及び他の免疫抑制薬の計測のための標準的方法になった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
免疫抑制薬のための大部分の全血アッセイは、試薬を使用して薬物を血液成分から抽出する手作業によるステップを要する。その結果、薬物分子及び薬物代謝産物分子は内在性の結合タンパク質から解離され、比較的清浄な溶液中に抽出され、その溶液の中で、血漿タンパク質及びリポタンパク質粒子ならびに大部分の他の分子が除去される。通常は沈殿技術が使用されるため、抽出された試料は、基本的に、薬物結合タンパク質をはじめとする大部分の血中高分子を含まない。したがって、抽出試料中、親薬物及びその代謝産物は、非結合状態の個々の分子として溶解しており、免疫反応混合物中のアッセイ抗体との反応を求めて互いに競合する。これらのアッセイにおいて、薬物へのアッセイ抗体の結合は、大部分の内在性物質が存在しない中で起こる。そのようなアッセイにおいて、薬物代謝産物の交差反応性は主にその抗体結合親和力に依存する。
【0007】
血液成分からの薬物の手作業による抽出又は分離がない免疫抑制薬のための均一アッセイにおいては、免疫抑制薬のための抗体が、大部分又はすべての血液成分が存在する中で薬物を検出しなければならず、それらの血液成分の存在が、免疫抑制薬への抗体の結合に干渉するおそれがある。さらには、試料は薬物の代謝産物を含有し、高い代謝産物交差反応性が、免疫抑制薬のアッセイにおいて深刻な精度問題を呈する。
【0008】
したがって、患者中の免疫抑制薬又はその誘導体のレベルを計測するための迅速かつ正確な診断法を開発する必要が絶えずある。方法は、全自動化されるべきであり、アッセイで使用される抗体が、大部分又はすべての血液成分が存在する中で、かつ薬物代謝産物が存在する中で薬物を検出しなければならない均一アッセイを使用して抽出なしで全血試料に対して実施される場合でも正確であるべきである。アッセイは、親薬物を、その代謝産物の交差反応性から生じる誤差を最小限にしながら、選択的に検出するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
本発明の一つの実施態様は、疎水性薬物の生物学的利用能をその疎水性薬物の代謝産物よりも選択的に高める方法である。組み合わせが媒体中に提供される。組み合わせは、(i)試料、(ii)疎水性薬物及びその代謝産物を内在性結合成分から遊離させるための遊離剤、及び(iii)媒体中、代謝産物の生物学的利用能に対する疎水性薬物の生物学的利用能の向上を提供する選択的可溶化剤を含む。選択的可溶化剤は、水混和性の不揮発性有機溶媒を含み、媒体中、疎水性薬物の生物学的利用能を代謝産物の生物学的利用能よりも高めるのに十分な濃度で媒体中に存在する。媒体は、疎水性薬物の生物学的利用能を代謝産物の生物学的利用能よりも高めるための条件下で、インキュベート(培養)される。
【0010】
本発明のもう一つの実施態様は、疎水性薬物を含有することが疑われる試料中の疎水性薬物を測定する方法である。組み合わせが媒体中に提供される。組み合わせは、試料、疎水性薬物及びその代謝産物を内在性結合成分から遊離させるための遊離剤、及び媒体中、代謝産物の生物学的利用能に対する疎水性薬物の生物学的利用能の向上を提供する選択的可溶化剤を含み、選択的可溶化剤は、水混和性の不揮発性有機溶媒を含み、媒体中の選択的可溶化剤の濃度は、媒体中、疎水性薬物の生物学的利用能を代謝産物の生物学的利用能よりも高めるのに十分である。媒体中の組み合わせはさらに溶血剤を含む。媒体は、試料中の細胞を溶血し、疎水性薬物の生物学的利用能を代謝産物の生物学的利用能よりも高めるための条件下で、インキュベートされる。媒体には、試料中の疎水性薬物の存在及び/又は量を測定するための試薬が加えられ、試薬は、疎水性薬物のための少なくとも一つの抗体を含む。媒体は、疎水性薬物及び疎水性薬物のための抗体を含む複合体の存在に関して試験され、複合体の存在及び/又は量が試料中の疎水性薬物の存在及び/又は量を示す。
【0011】
本発明のもう一つの実施態様は、免疫抑制薬を含有することが疑われる試料中の免疫抑制薬を測定する方法である。組み合わせが媒体中に形成され、組み合わせは、試料、免疫抑制薬とその代謝産物とを内在性結合成分から遊離させるための遊離剤、及び媒体中、代謝産物の生物学的利用能に対する疎水性薬物の生物学的利用能の向上を提供する選択的可溶化剤を含む。選択的可溶化剤は、水混和性の不揮発性有機溶媒を含む。媒体中の選択的可溶化剤の濃度は、媒体中、代謝産物の生物学的利用能に対する疎水性薬物の生物学的利用能の向上を提供するのに十分である。媒体は、免疫抑制薬及びその代謝産物を内在性結合成分から遊離させるための条件下で、インキュベートされる。媒体には、(i)(I)免疫抑制薬のための抗体及び(II)酵素を含む試薬ならびに(ii)免疫抑制薬又はその類似体を含む磁性粒子が加えられる。媒体は、免疫抑制薬及び免疫抑制薬のための抗体を含む複合体の存在に関して試験され、複合体の存在及び/又は量が試料中の免疫抑制薬の存在及び/又は量を示す。
【0012】
本発明のもう一つの実施態様は、免疫抑制薬を含有することが疑われる試料中の免疫抑制薬を測定する方法である。組み合わせが媒体中に形成され、組み合わせは、試料、免疫抑制薬とその代謝産物とを内在性結合成分から遊離させるための遊離剤、及び媒体中、代謝産物の生物学的利用能に対する疎水性薬物の生物学的利用能の向上を提供する選択的可溶化剤を含む。選択的可溶化剤は、水混和性の不揮発性有機溶媒を含み、媒体中の選択的可溶化剤の濃度は、媒体中、代謝産物の生物学的利用能に対する疎水性薬物の生物学的利用能の向上を提供するのに十分である。媒体は、疎水性薬物の生物学的利用能を代謝産物の生物学的利用能よりも高めるための条件下で、インキュベートされる。媒体には、(i)第一の粒子と会合しており、一重項酸素を発生させることができる光増感剤、及び(ii)一重項酸素によって活性化されえ、第二の粒子と会合している化学発光組成物が加えられ、免疫抑制薬のための抗体が、第一の粒子又は第二の粒子又はそれら両方と会合する。組み合わせは、免疫抑制薬(存在するならば)への抗体の結合のための条件に付される。光増感剤は光を照射され、化学発光組成物によって生成されるルミネセンスの量が検出される。ルミネセンスの量は試料中の免疫抑制薬の量に相関する。
【0013】
あるいはまた、上記実施態様においては、第一の粒子又は第二の粒子の一方が抗体を含み、他方の粒子が、免疫抑制薬のための薬物類似体を含む。組み合わせは、薬物のための抗体への薬物類似体コートされた粒子と免疫抑制薬(存在するならば)との競合のための条件に付される。あるいはまた、上記実施態様において、第一の粒子又は第二の粒子はストレプトアビジンを含み、これが、媒体中の免疫抑制薬のためのビオチン化類似体と組み合わさる。組み合わせは、ビオチン化薬物類似体と薬物のための抗体のための免疫抑制薬との競合のための条件に付される。上記代替態様のいずれにおいても、光増感剤は光を照射され、化学発光組成物によって生成されるルミネセンスの量が検出される。ルミネセンスの量は試料中の免疫抑制薬の量に相関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
具体的な実施態様の詳細な説明
概要説明
本発明者らは、薬物及び代謝産物のタンパク質結合性を低下させることにより、そして、アッセイ混合物中の疎水性薬物の溶解性を、疎水性薬物そのものよりも親水性であると本発明者らが認識した疎水性薬物の代謝産物の溶解性に対して高めることにより、薬物代謝産物の交差反応性を低下させうることを認識した。薬物代謝産物のより高い親水性は、薬物代謝から肝臓を介して脱メチル化及びヒドロキシル化によって生じる余分なヒドロキシル基のせいであると思われる。疎水性相互作用は、水性血液中の薬物−タンパク質結合にとって重要かつ一般的な機構である。本発明者らは、親水性代謝産物が結合タンパク質に対してより低い親和力を有し、水性血液及びアッセイ混合物中でより自由に拡散する傾向を示すことを観測した。その理由のため、代謝産物分子のより大きな部分は自由な非タンパク質結合状態であり、水性アッセイ混合物中、親薬物よりもアッセイ抗体によりアクセス可能である。薬物代謝産物がアッセイ抗体に対して親薬物と同じ結合親和力を有すると仮定すると、代謝産物は、そのより高いアクセス可能性のおかげで、親薬物よりも抗体とでより多くの免疫複合体を形成する。上記認識は、代謝産物交差反応性は抗体結合親和力の関数でしかないという一般的信念に反するものである。本発明者らは、そのようなアッセイにおける代謝産物の交差反応性が、その抗体結合親和力に依存するだけでなく、内在性結合タンパク質に対するその結合親和力にも依存すると判定した。
【0015】
本明細書に記載されるアッセイの実施態様は、本質的に無分配のイムノアッセイとも言われる均一イムノアッセイである。本アッセイの実施態様は、親薬物を、その薬物のための抗体のその薬物の代謝産物に対する交差反応性を最小限にしながら、選択的に検出する。試料無分配アッセイにおける、水混和性の不揮発性有機溶媒である選択的可溶化剤の使用は、親薬物の生物学的利用能を代謝産物の生物学的利用能よりも選択的に高め、アッセイ抗体への疎水性薬物のアクセス可能性を代謝産物への疎水性薬物のアクセス可能性よりも選択的に高める。通常の水性試薬に対する上記選択的可溶化剤によって再構成される溶解性の差が、より親水性の代謝産物の検出を最小限にし、疎水性親薬物の検出を高める。すなわち、本発明の選択的可溶化剤は、親薬物の生物学的利用能を代謝産物よりも選択的に高める。したがって、アッセイ媒体に加えられる選択的可溶化剤は、疎水性薬物の選択性又は生物学的利用能をそのようなアッセイで慣用される水性媒体に対して調整する。選択的可溶化剤はまた、アッセイで使用される疎水性抗体の生物学的利用能をも高める。
【0016】
本方法は、イムノアッセイで使用される抗体試薬との薬物代謝産物の交差反応性によって生じる不正確なアッセイの結果の軽減に重点を置く。本方法は、アッセイの前に、薬物代謝産物をはじめとする試料の他の成分からの疎水性薬物の抽出又は分離が行われない全自動化均一アッセイへの用途を有する。「非手作業抽出」アッセイでは、全血試料のような試料を媒体中で溶血剤と遊離剤とを組合わせ、他の血液成分からの薬物の溶血及び遊離を可能にするためのインキュベーション期間ののち、疎水性薬物のためのアッセイを実施するための試薬を媒体に加え、アッセイを実施する。疎水性薬物を含有することが疑われる試料を遊離剤及びアッセイ中に薬物のための抗体へのその後の結合のための疎水性薬物の生物学的利用能を高める選択的可溶化剤とともにインキュベートして、試料の他の成分が存在する薬物の存在及び/又は量を検出することにより、薬物のアッセイにおける疎水性薬物の生物学的利用能を薬物の代謝産物に対して高めることができることがわかった。
【0017】
本明細書で使用される語「疎水性薬物」とは、薬物、通常は治療薬をいい、その薬物は親油性成分、たとえばリポタンパク質による吸収又は極性溶媒への溶解度の低下の特徴を示す。吸収又は溶解性の欠如は、薬物のアッセイにおいて薬物の定量化に干渉するようなものである。薬物の定量化の干渉とは、アッセイにおける薬物の正確な定量的測定を実施する能力が少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%など低下することをいう。「疎水性抗体」とは、水性媒体中、他の抗体に比べて溶解性の低下を示す抗体である。
【0018】
免疫抑制薬が疎水性薬物の一例である。免疫抑制薬とは、非自身組織に対する同種異系拒絶反応を防ぎやすくするために被移植者に投与される治療薬である。免疫抑制薬は以下のように分類することができる。糖質コルチコイド、細胞増殖抑制物質、抗生物質、イムノフィリンに作用する薬物及びその他の薬物、たとえばインターフェロン、アヘン製剤、INF結合タンパク質、ミコフェノレート、FTY720など。免疫抑制薬の特定のクラスは、イムノフィリンに作用する薬物を含む。イムノフィリンは、生理学的重要性を有する高親和力特異的結合タンパク質の例である。現在、二つの異なるイムノフィリンのファミリー、シクロフィン及びマクロフィリンが知られており、マクロフィリンは、たとえばタクロリムス又はシロリムスに特異的に結合する。イムノフィリンに作用する免疫抑制薬としては、たとえば、シクロスポリン(シクロスポリンA、シクロスポリンB、シクロスポリンC、シクロスポリンD、シクロスポリンE、シクロスポリンF、シクロスポリンG、シクロスポリンH、シクロスポリンIを含む)、タクロリムス(FK506、PROGRAF(登録商標))、シロリムス(ラパマイシン、RAPAMUNE(登録商標))、エベロリムス(RAD、CERTICAN(登録商標))などがある。
【0019】
「疎水性薬物」に関して本明細書で使用される語「生物学的利用能」とは、特に、試料中の疎水性薬物の量をいい、その疎水性薬物は分析される試料中に、薬物のための抗体と交差反応する成分、たとえば薬物の代謝産物があり、それにより、その薬物のアッセイの精度が干渉を受けるようなアッセイにおいて、計測に利用可能であり、たとえば疎水性薬物のための抗体への結合に利用可能である。本方法の生物学的利用能に影響する重要な主要因は、薬物代謝産物が試料中に存在することであり、その薬物代謝産物は、特に、薬物から代謝産物がほとんど又は全く分離されず、試料中の他の成分がほとんど又は全く分離されない場合、薬物のための抗体に結合し、その薬物のアッセイを不正確にする。「疎水性抗体」に関して本明細書で使用される語「生物学的利用能」とは、アッセイで使用され、分析対象物への結合に利用可能である疎水性抗体の量をいう。
【0020】
本実施態様にしたがって、疎水性薬物に関していう「高められた生物学的利用能」又は「生物学的利用能の向上」又は「生物学的利用能を高める」とは、薬物のための抗体と公差反応する薬物の代謝産物を含有する試料中、検出に利用可能な疎水性薬物の量の向上又は増大があることを意味する。本実施態様にしたがって、疎水性抗体に関していう「高められた生物学的利用能」又は「生物学的利用能の向上」又は「生物学的利用能を高める」とは、分析対象物への結合に利用可能な疎水性抗体の量の向上又は増大があることを意味する。
【0021】
本実施態様にしたがって、疎水性薬物に関していう「選択的に高められた生物学的利用能」又は「生物学的利用能の選択的向上」又は「生物学的利用能を選択的に高める」とは、薬物のための抗体と公差反応し、疎水性薬物のための抗体との公差反応に利用可能である疎水性薬物の代謝産物の量に対して、試料中、疎水性薬物のための抗体への結合、ひいては検出に利用可能な疎水性薬物の量の向上又は増大があることを意味する。
【0022】
本明細書で使用される語「少なくとも」とは、指定された項目の数が、挙げられた数に等しくてもよいし、それよりも大きくてもよいことを意味する。本明細書で使用される語「約」は、挙げられた数値が±10%まで異なってもよいことを意味する。たとえば、「約5」は、4.5〜5.5の範囲を意味する。
【0023】
したがって、上述したように、本発明の実施態様は、疎水性薬物の生物学的利用能を疎水性薬物の代謝産物よりも選択的に高める方法である。組み合わせが媒体中に提供され、組み合わせは、試料、遊離剤、及び疎水性薬物のための選択的可溶化剤を含む。遊離剤は、疎水性薬物及びその代謝産物を内在性結合成分から移動させる。選択的可溶化剤は、媒体中、疎水性薬物の生物学的利用能と代謝産物の生物学的利用能との均一化を促進する。選択的可溶化剤は、水混和性の不揮発性有機溶媒を含み、媒体中、疎水性薬物の生物学的利用能を代謝産物の生物学的利用能よりも選択的に高めるのに十分な濃度で媒体中に存在する。
【0024】
分析される試料は、一つ以上の疎水性薬物分析対象を含有することが疑われる試料である。試料は通常、疎水性薬物に結合する一つ以上の内在性結合成分を含む。内在性結合成分は、疎水性薬物に結合する結合タンパク質、たとえばリポタンパク質、たとえば脂質成分又は疎水性薬物に結合する他の物質を含むタンパク質、たとえばコレステロール、トリグリセリドなどであってもよい。試料は、好ましくは、ヒト又は動物からの試料であり、生物学的流体、たとえば全血、血清、血漿、淡、リンパ液、精液、膣粘液、糞便、尿、髄液、唾液、糞便、脳髄液、涙液、粘液など、生物学的組織、たとえば毛髪、皮膚、臓器又は他の体部位からの切片又は切除組織などを含む。多くの場合、試料は全血、血漿又は血清であり、特定の実施態様において、試料は全血である。試料は、そのような内在性結合成分を除去するために前処理されない。
【0025】
試料は、アッセイに干渉しない好都合な媒体中で調製することができる。水性媒体が一般に使用される。媒体の性質は以下さらに詳細に説明する。本方法の疎水性薬物のための遊離剤及び選択的可溶化剤は、溶血剤をも含んでもよい媒体中で組合わされる。
【0026】
溶血剤
溶血剤とは、赤血球の膜の結着性を崩壊させて、それにより、細胞の内容物を放出させる化合物の配合物又は混合物である。数多くの溶血剤が当該技術で公知である。溶血剤としては、たとえば、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、低イオン強度水溶液(低張溶液)、細菌剤、補体依存性溶菌を生じさせる抗生物質などがある。溶血剤として使用することができる非イオン界面活性剤としては、合成界面活性剤及び天然界面活性剤の両方がある。合成界面活性剤の例は、TRITON(商標)X-100、TRITON(商標)N-101、TRITON(商標)X-114、TRITON(商標)X-405、TRITON(商標)SP-135、TWEEN(登録商標)20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、TWEEN(登録商標)80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、DOWFAX(登録商標)、ZONYL(登録商標)、ペンタエリトリチルパルミテート、ADOGEN(登録商標)464、ALKANOL(登録商標)6112界面活性剤、アリルアルコール1,2−ブトキシレート−ブロック−エトキシレートHLB6、BRIJ(登録商標)、エチレンジアミンテトラキス(エトキシレート−ブロック−プロポキシレート)テトロール、IGEPAL(登録商標)、MERPOL(登録商標)、ポリ(エチレングリコール)、2−[エチル[(ヘプタデカフルオロオクチル)スルホニル]アミノ]エチルエーテル、ポリエチレン−ブロック−ポリ(エチレングリコール)、ポリオキシエチレンソルビタンテトラオレエート、ポリオキシエチレンソルビトールヘキサオレエート、TERGITOL(登録商標)NP-9、GAFAC(登録商標)(RHODAFAC(登録商標)、アルキルポリエチレングリコールリン酸エステル、たとえばアルファ−ドデシル−オメガ−ヒドロキシポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)ホスフェート)及びEP110(登録商標)などを含む。溶血剤として使用することができる天然界面活性剤としては、たとえば、サポニン、ナトリウム又はカリウム中和された脂肪酸、中和リン脂質、ジアシルグリセロール、中和ホスファチジルセリン、ホスファチデート、中和ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルコリン、胆汁酸塩、非エステル化コレステロール、中和スフィンゴシン、セラミドなどがある。一つ以上の合成界面活性剤又は一つ以上の天然界面活性剤の組み合わせ及び合成界面活性剤と天然界面活性剤との組み合わせを使用することもできる。
【0027】
使用される溶血剤の性質及び量又は濃度は、試料の性質、疎水性薬物の性質、試薬成分の残りの性質、反応条件などに依存する。溶血剤の量は、少なくとも、赤血球の溶菌を生じさせて細胞内容物を放出させるのに十分な量である。いくつかの実施態様において、溶血剤の量は、約0.0001%〜約0.5%、約0.001%〜約0.4%、約0.01%〜約0.3%、約0.01%〜約0.2%、約0.1%〜約0.3%、約0.2%〜約0.5%、約0.1%〜約0.2%などである(%は重量/容量である)。
【0028】
遊離剤
遊離剤は、疎水性薬物を内在性結合成分から移動させる。遊離剤は、疎水性薬物の代謝産物を内在性結合成分から移動させることができ、多くの場合、そのように移動させる。多くの実施態様において、遊離剤は、内在性結合タンパク質に対して高い結合親和力を有し、そのため、疎水性薬物及びその代謝産物を内在性結合タンパク質から容易に移動させる。加えて、遊離剤は、アッセイで使用される薬物のための抗体には有意な程度には結合しない。「有意な程度には結合しない」とは、結合の程度が、薬物の正確なアッセイを実施するのに十分な低さであるべきであることをいう。遊離剤は、アッセイ抗体に有意に結合することなく所望の移動の結果を達成する任意の成分、単一の化合物又は化合物の混合物であることができる。多くの実施態様において、遊離剤は、疎水性薬物及びその代謝産物を内在性結合物質から移動させて、疎水性薬物及び代謝産物の両方を疎水性薬物のための抗体に実質的に等しくアクセス可能にする。「実質的に等しくアクセス可能」とは、抗体への結合に利用可能な疎水性薬物の量が、抗体への結合に利用可能な疎水性薬物の代謝産物の全量から有意な程度には異ならないことをいう。疎水性薬物のための抗体への結合に利用可能な代謝産物の量は、たとえば、疎水性薬物のための抗体に対する具体的な代謝産物の結合親和力のような考慮事項に依存する。上記の見込みは、薬物代謝産物が、疎水性薬物のための抗体に対し、疎水性薬物そのものとほぼ同じ結合親和力を有するという仮定に基づく。そうでなければ、上記の見込みは、疎水性薬物代謝産物の実際の結合親和力に基づいて調節されるべきである。
【0029】
いくつかの実施態様において、遊離剤は、疎水性薬物の、構造類似体を含む類似体である。疎水性薬物類似体は、類似疎水性薬物を結合タンパク質から移動させることができるが、疎水性薬物のための抗体のような受容体を求めて実質的な程度には競合しない修飾された薬物である。修飾は、疎水性薬物類似体を別の分子に接合するための手段を提供する。疎水性薬物類似体は通常、薬物類似体をハブ又は標識に結合する結合手によって水素を置換することの他にも疎水性薬物とは異なるが、そのように異なる必要はない。疎水性薬物類似体は、たとえば、連結基を介して別の分子にコンジュゲートした疎水性薬物などであることができる。ヒドロキシ又はカルボン酸官能基を含む疎水性薬物の場合、遊離剤は、疎水性薬物のエステルであることができ、検出される疎水性薬物よりも内在性結合タンパク質に対して高い結合親和力を有し、疎水性薬物のための抗体に対して有意な結合親和力を有しない。たとえば、シロリムスの測定においては、上記要件を満たす限り、シロリムスのエステルを遊離剤として使用することができる。構造類似体とは、疎水性薬物の類似体と同じ又は同様な結果を達成するような、疎水性薬物と同じ又は類似した構造的又は空間的特徴を有する成分である。構造類似体は、たとえば、疎水性薬物に関連する別の化合物であってもよい。たとえば、シロリムスの測定においては、タクロリムスのエステルを遊離剤として使用することもできる。エステルは、たとえば、カルバミド酸エステル、炭酸エステル、C1〜C6カルボン酸のエステルなどであることができる。たとえば、関連する開示内容が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,186,518号を参照すること。遊離剤の他の例は、シクロスポリンAの場合の[Thr2、Leu5、D-Hiv8、Leu10]シクロスポリン、シロリムスの場合のFK506、FK506の場合のシロリムスなどを含む。たとえば、関連する開示内容が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,187,547号を参照すること。
【0030】
媒体中の遊離剤の濃度は、先に説明したように、疎水性薬物及び、多くの場合、疎水性薬物の代謝産物を内在性結合分子から移動させて、薬物及び代謝産物を薬物のための抗体にアクセス可能にする所望の結果を達成するのに十分である。使用される遊離剤の量又は濃度は、試料の性質、疎水性薬物の性質、薬物代謝産物の性質、他の試薬成分の性質、反応条件などに依存する。いくつかの実施態様において、遊離剤の量は、約0.000001%〜約0.5%、約0.0001%〜約0.4%、約0.001%〜約0.3%、約0.01%〜約0.2%、約0.1%〜約0.3%、約0.2%〜約0.5%、約0.1%〜約0.2%などである(%は重量/容量である)。
【0031】
選択的可溶化剤
選択的可溶化剤は、媒体中、疎水性薬物の生物学的利用能と代謝産物の生物学的利用能との均等化を促進する。選択的可溶化剤の性質は、遊離剤によって内在性結合成分から遊離される薬物及び/又は薬物代謝産物を溶解させるための準疎水性環境を提供するような性質である。選択的可溶化剤を使用することにより、薬物及び代謝産物はアッセイ抗体に同様にアクセス可能になり、そうでなければ、親薬物に比較して低いタンパク質結合及び高純度の水溶液中での高い可溶性のせいでより高くなるであろう代謝産物交差反応性の低下が得られる。本明細書の実施態様の選択的可溶化剤の存在は、遊離された薬物及び代謝産物の両方が前処理媒体及び/又はアッセイ媒体中に実質的に等しく溶解することを保証する。いくつかの実施態様において、選択的可溶化剤は、アッセイで使用される疎水性抗体の生物学的利用能を高める。
【0032】
選択的可溶化剤は、水混和性の不揮発性有機溶媒を含み、通常、室温(約18℃〜約23℃)で液体である。選択的可溶化剤は、水と混和性になるために親水性又は極性領域を分子中に含み、また、疎水性薬物を溶解することができるよう疎水性又は非極性領域を含むべきであり、したがって、疎水性薬物溶解能力を有する。それにもかかわらず、全体の極性は、有機溶媒が水と混和性であるような極性である。有機溶媒は、約1〜約50℃の温度で水に全部が溶解することができるとき、水に対して混和性である。選択的可溶化剤として使用することができる有機溶媒は、水性媒体中では無限の溶解性を有する。
【0033】
上述したように、選択的可溶化剤は、前処理媒体又はアッセイ媒体に加えられると、疎水性薬物を媒体に溶解させやすくする。選択的可溶化剤を含有する媒体中に、疎水性薬物が溶解する程度は、同じ媒体が選択的可溶化剤を有しない場合に比べ、約80%を超える、又は約85%を超える、又は約90%を超える、又は約95%を超える、又は約100%以上の大きさである。たとえば、疎水性薬物2ng/mLが選択的可溶化剤なしの媒体に溶解し、疎水性薬物4ng/mLが、適切な範囲の選択的可溶化剤を含有する媒体に溶解するならば、増加率は100%である。
【0034】
用語「不揮発性」とは、有機溶媒が所与の温度の純水の蒸気圧以下の蒸気圧を有し、本方法にしたがって一定の割合の水と組合わされたのち、得られる媒体が所与の温度で純水の蒸気圧以下の蒸気圧を有することをいう。たとえば、8℃のDMSOの蒸気圧は21.7Paであり、8℃の水の蒸気圧は1044Paであり、水中15%DMSOの蒸気圧は978Paであり、純水の蒸気圧よりも低い。他方、たとえばエタノールは、8℃でのその蒸気圧が純水の蒸気圧よりもずっと高い2754Paであるため、本方法に適当な選択的可溶化剤にはならない。水中10%エタノールの混合物の蒸気圧は、純水の蒸気圧よりも高い1115Paの蒸気圧を有する。
【0035】
選択的可溶化剤として使用される有機溶媒は、炭素及び水素に加えて、酸素、硫黄、窒素、リンの一つ以上の含有することができ、これらが様々な組み合わせで存在して、官能基、たとえばヒドロキシル、アミン、アミド、チオール、スルホキシド、スルホン、ホスフェート、ホスファイト、カルボン酸エステル、エーテルなどを形成することができる。いくつかの実施態様において、選択的可溶化剤は、2個の炭素原子又は3個の炭素原子又は4個の炭素原子又は5個の炭素原子又は6個の炭素原子及び上記官能基の一つ以上を含有する。選択的可溶化剤の実施態様としては、非限定的な例として、2個のヒドロキシ基又は3個のヒドロキシ基を含むC2又はC3又はC4又はC5又はC6ポリオール、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコールなど、C2又はC3又はC4又はC5又はC6スルホキシド、たとえばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなど、C2又はC3又はC4又はC5又はC6スルホン、たとえばジメチルスルホン、ジエチルスルホンなど、C2又はC3又はC4又はC5又はC6アミド、たとえばホルムアミド、たとえばジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラメチルウレア、ジメチルアセトアミドなど、2個のヒドロキシ基又は3個のヒドロキシ基を含むポリオールのC2〜C6モノ、ジ及びトリエーテル、たとえば1−メトキシ−2−プロパノール、1,2−ジメトキシプロパノールなど、ならびに2個のヒドロキシ基又は3個のヒドロキシ基を含むポリオールのC2〜C6モノ、ジ及びトリエステル、たとえば2−ヒドロキシプロピルアセテート、ビス(2−メトキシエチル)エーテル(ジグリム)などがある。選択的可溶化剤は、前述の性質を有する単一の有機溶媒又は有機溶媒の組み合わせであることができる。
【0036】
媒体中の選択的可溶化剤の濃度は、媒体中、代謝産物の生物学的利用能に対する疎水性薬物の生物学的利用能を選択的向上を達成するのに十分である。代謝産物の生物学的利用能に対する疎水性薬物の生物学的利用能の選択的向上は、検出可能である疎水性薬物の量が、選択的可溶化剤が存在しないときに得られる量に対し、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約125%、少なくとも約150%、少なくとも約175%、少なくとも約200%、少なくとも約225%、少なくとも約250%、少なくとも約275%、少なくとも約300%、少なくとも約325%、少なくとも約350%、少なくとも約375%、少なくとも約400%など増加した場合に達成される。換言するならば、代謝産物の生物学的利用能に対する疎水性薬物の生物学的利用能の選択的向上は、検出可能である疎水性薬物の量が、選択的可溶化剤が存在しないときに得られる量に対し、約0.5〜約4倍又は約0.75〜約4倍又は約1〜約4倍又は約0.5〜約3.5倍又は約0.5〜約3倍又は約0.5〜約2.5倍又は約0.5〜約2倍又は約0.75〜約3.5倍又は約0.75〜約3倍又は約0.75〜約2.5倍又は約0.75〜約2倍又は約1〜約3.5倍又は約1〜約3倍又は約1〜約2.5倍又は約1〜約2倍など増加した場合に達成される。
【0037】
使用される選択的可溶化剤の量又は濃度は、試料の性質、疎水性薬物の性質、有機溶媒の性質、他の試薬成分の性質、反応条件、媒体が前処理媒体であるのかアッセイ媒体であるのかなどに依存する。いくつかの実施態様において、前処理媒体中の選択的可溶化剤の量は、約10%〜約30%、約11%〜約25%、約12%〜約20%、約13%〜約19%、約14%〜約18%、約15%〜約17%、約15%〜約25%、約16%〜約24%、約17%〜約23%、約18%〜約22%、約19%〜約21%、約15%〜約20%、約16%〜約19%など(容量〜容量)である。いくつかの実施態様において、アッセイ媒体中の選択的可溶化剤の量は、約1.0%〜約10%、約2.0%〜約9.0%、約2.1%〜約8.0%、約2.2%〜約7.0%、約2.3%〜約6.0%、約2.4%〜約5%、約2.5%〜約4.5%、約3.0%〜約6.0%、約3.1%〜約5.0%、約3.2%〜約4.9%、約3.3%〜約4.8%、約3.4%〜約4.7%、約3.5%〜約4.5%など(容量〜容量)である
【0038】
試料の前処理
試料、溶血剤(使用する場合)、遊離剤及び選択的可溶化剤を、上述したように通常は水性媒体であり、本明細書では前処理媒体と呼ばれる媒体中で組合わせる。上記のすべては、媒体中で同時に組合わせることもできるし、上記試薬の一つ以上を上述したような濃度で順次に加えることもできる。媒体はまた、当該技術で公知であるような一つ以上の保存剤、たとえばアジ化ナトリウム、硫酸ネオマイシン、PROCLIN(登録商標)300、ストレプトマイシンなどを含むこともできる。媒体のpHは、通常は約4〜約11の範囲、より通常は約5〜約10の範囲、好ましくは約6.5〜約9.5の範囲である。
【0039】
所望のpHを達成し、そのpHをインキュべーション期間中に維持するために様々な緩衝剤を使用することができる。例示的な緩衝剤としては、ボレート、ホスフェート、カーボネート、トリス、バルビタール、PIPES、HEPES、MES、ACES、MOPS、BICINEなどがある。媒体はまた、血餅の形成を防ぐための薬剤を含むこともできる。そのような薬剤は当該技術で周知であり、たとえば、EDTA、EGTA、シトレート、ヘパリンなどがある。様々な補助的物質を上記方法で使用することができる。たとえば、媒体は、緩衝剤及び保存剤に加えて、媒体及び使用される試薬のための安定剤を含むこともできる。上記物質はすべて、所望の効果又は機能を達成するのに十分な濃度又は量で存在する。
【0040】
媒体は、試料中の細胞を溶血させ、疎水性薬物及びその代謝産物を内在性結合成分から遊離し、疎水性薬物の生物学的利用能を高めるための条件下、インキュベートされる。インキュベーション期間は、約1秒〜約60分又は約1秒〜約6分又は約1秒〜約5分又は約1秒〜約3分又は約1秒〜約2分又は約1秒〜約1分又は約1秒〜約30秒又は約1秒〜約20秒又は約1秒〜約10秒又は約5秒〜約60分又は約5秒〜約6分又は約5秒〜約5分又は約5秒〜約3分又は約5秒〜約2分又は約5秒〜約1分又は約5秒〜約30秒又は約5秒〜約20秒又は約5秒〜約10秒又は約10秒〜約60分又は約10秒〜約6分又は約10秒〜約5分又は約10秒〜約3分又は約10秒〜約2分又は約10秒〜約1分又は約10秒〜約30秒又は約10秒〜約20秒又は約20秒〜約60分又は約20秒〜約6分又は約20秒〜約5分又は約20秒〜約3分又は約20秒〜約2分又は約20秒〜約1分又は約20秒〜約30秒又は約30秒〜約60分又は約30秒〜約6分又は約30秒〜約5分又は約30秒〜約3分又は約30秒〜約2分又は約30秒〜約1分又は約1分〜約30分又は約1分〜約20分又は約1分〜約10分などであることができる。
【0041】
インキュベーション中の温度は、通常、約10℃〜約45℃又は約10℃〜約35℃又は約10℃〜約25℃又は約15℃〜約45℃又は約15℃〜約35℃又は約15℃〜約25℃又は約20℃〜約45℃又は約20℃〜約35℃又は約20℃〜約25℃などである。
【0042】
疎水性薬物のアッセイの概要説明
上記インキュベーション期間ののち、試料中の疎水性薬物の存在及び/又は量を測定するための試薬が媒体に加えられる。試薬の性質は、実施されるアッセイの具体的なタイプに依存する。一般に、アッセイは、疎水性分析対象の存在及び/又は量を決定又は測定するための方法である。以下、様々なアッセイを非限定的な例として説明する。
【0043】
多くの実施態様において、試薬は、疎水性薬物のための少なくとも一つの抗体を含む。「疎水性薬物のための抗体」とは、疎水性薬物に特異的に結合し、他の物質には、疎水性薬物の分析を狂わせるような有意な程度には結合しない抗体をいう。
【0044】
イムノアッセイで使用するための疎水性薬物のための特異的抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることができる。そのような抗体は、たとえば血清のホスト及び集合体の免疫化(ポリクローナル)のような当該技術で周知である技術によって又は連続ハイブリッド細胞系を調製し分泌されたタンパク質を捕集すること(モノクローナル)によって、又は、少なくとも天然抗体の特異的結合に必要なアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列もしくはその突然変異誘起バージョンをクローン化し発現させることによって、調製することができる。
【0045】
抗体は、完全な免疫グロブリン又はそのフラグメントを含むことができ、免疫グロブリンは、様々なクラス及びイソタイプ、たとえばIgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3、IgMなどを含む。そのフラグメントは、Fab、Fv及びF(ab′)2、Fab′などを含むことができる。加えて、特定の分子に対する結合親和力が維持される限り、適宜、免疫グロブリン又はそのフラグメントの凝集物、ポリマー及びコンジュゲートを使用することもできる。
【0046】
抗体(ポリクローナル)を含有する抗血清が十分に確立された技術によって得られ、その技術は、たとえばウサギ、モルモット又はヤギのような動物を適切な免疫原で免疫化し、免疫化された動物の血液から適切な待機期間ののち、抗血清を得ることを含む。最先端技術の考察が、Parker, Radioimmunoassay of Biologically Active Compounds, Prentice-Hall (Englewood Cliffs, N.J., U.S., 1976)、Butler, J. Immunol. Meth. 7: 1-24 (1975)、Broughton and Strong, Clin. Chem. 22: 726-732 (1976)及びPlayfair, et al., Br. Med. Bull. 30: 24-31 (1974)によって提供されている。
【0047】
また、抗体、たとえば一般にモノクローナル抗体と呼ばれる抗体を、体細胞ハイブリダイゼーション技術によって得ることもできる。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilsteinの標準的技術(Nature 265:495-497, 1975)にしたがって産生することができる。モノクローナル抗体技術の考察は、Lymphocyte Hybridomas, ed. Melchers, et al. Springer-Verlag (New York 1978)、Nature 266: 495 (1977)、Science 208: 692 (1980)及びMethods of Enzymology 73 (Part B): 3-46 (1981)に見られる。
【0048】
抗体の調製のためのもう一つの手法においては、抗体結合部位の配列コードが、染色体DNAから切除され、クローニングベクターに挿入され、対応する抗体結合部位を有する組み換えタンパク質を産生するためにバクテリア中で発現させられる。
【0049】
上述したように、疎水性薬物のイムノアッセイにおける使用のために選択される抗体は、たとえば、他の代謝産物又は関連薬物のような他の配位子よりも疎水性薬物及びその薬学的に活性な代謝産物に特異的かつ優先的に結合するべきである。たとえば、タクロリムスのための抗体は、たとえばラパマイシンよりもタクロリムスに特異的かつ優先的に結合するべきである。一般に、抗体は、一つの疎水性薬物を第二の疎水性薬物に対して区別されえるべきである。抗体が疎水性薬物を含有する試料と組合わされるならば、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍又は少なくとも約20倍の第一の疎水性薬物がその抗体に結合する。結合はまた、疎水性薬物の相対濃度にも依存するが、第一の疎水性薬物の場合の結合定数が第二の疎水性薬物の場合の結合定数よりも大きいならば、結合は、第一の疎水性薬物の場合により高くなり、少なくとも約10倍又は少なくとも約50倍高くなり、1000倍以上高くなる。
【0050】
実施されるアッセイの性質に依存して、他の試薬がアッセイ媒体に含められる。そのようなアッセイは通常、結合パートナー、たとえば疎水性薬物分析対象と対応する抗体との間の反応又は抗体と対応する結合パートナー、たとえば第一の抗体に結合する第二の抗体との間の結合を含む。したがって、結合パートナーは、抗体又は抗原であってもよいタンパク質であってよい。結合パートナーは、特異的結合対のメンバー(「sbpメンバー」)であってもよく、それは表面上又はキャビティ中に区域を有し、二つの異なる分子の一方であり、その区域は他方の分子に特異的に結合し、それにより、他方の分子の特定の空間的及び極性組織とで相補的であるように画定される。特異的結合対のメンバーは、通常、抗原−抗体のような免疫学的対のメンバーであるが、他の特異的結合対、たとえばビオチン−アビジン、ホルモン−ホルモン受容体、酵素−基質、核酸二重鎖、IgGタンパク質A、ポリヌクレオチド対、たとえばDNA−DNA、DNA−RNAなどは免疫学的対ではないが、sbpメンバーの範囲に含まれる。
【0051】
したがって、特異的結合は、二つの異なる分子の一方の他方に対する、他方の分子の実質的に低い認別と比較した場合の特異的識別を含む。他方、非特異的結合は、特定の表面構造から相対的に独立した、分子間の非共有結合的結合を含む。非特異的結合は、分子間の疎水性相互作用をはじめとするいくつかの要因から生じえる。好ましい結合パートナーは抗体である。
【0052】
疎水性薬物分析対象を含有することが疑われる試料中の疎水性薬物分析対象の存在及び/又は量を測定するために、多くのタイプのイムノアッセイを本方法で使用することができる。イムノアッセイは、標識試薬又は非標識試薬を含むことができる。非標識試薬を含むイムノアッセイは、通常、一つ以上の抗体を含む比較的大きな複合体の形成を含む。そのようなアッセイとしては、たとえば、抗体複合体の検出のための、免疫沈降及び凝集法ならびに対応する光散乱技術、たとえば比濁法及び濁度分析法がある。標識イムノアッセイとしては、酵素イムノアッセイ、蛍光偏光イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、阻止アッセイ、誘起ルミネセンス、蛍光酸素チャネリングアッセイなどがある。
【0053】
本明細書で説明されるアッセイの多くにおいては、標識が使用される。標識は通常、シグナル生成系(「sps」)の一部である。標識の性質は具体的なアッセイフォーマットに依存する。spsは通常、一つ以上の成分を含み、少なくとも一つの成分が検出可能な標識であり、この検出可能な標識が、結合及び/又は非結合標識の量、すなわち検出される疎水性薬物又は検出される疎水性薬物の量を反映する薬剤に結合した又は結合していない標識の量に相関する検出可能なシグナルを生成する。標識は、シグナルを生成する、又はシグナルを生成するように誘起されえる任意の分子であり、たとえば、発蛍光体、放射性標識、酵素、化学発光体又は光増感剤であることができる。したがって、シグナルは、場合に応じて酵素活性、ルミネセンス、吸光度又は放射能などを検出することによって検出及び/又は計測される。
【0054】
適当な標識としては、非限定的な例として、酵素、たとえばアルカリホスファターゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(「G6PDH」)及びセイヨウワサビペルオキシダーゼ、リボザイム、QBレプリカーゼのようなレプリカーゼのための基質、プロモータ、染料、発蛍光体、たとえばフルオレセイン、イソチオシアネート、ローダミン化合物、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒド及びフルオレサミン、錯体たとえば量子ドットとして知られる半導体ナノ結晶中に存在するCdSe及びZnSから調製される錯体、化学発光体たとえばイソルミノール、増感剤、補酵素、酵素基質、放射性標識たとえば125I、131I、14C、3H、57Co及び75Se、粒子たとえばラテックス粒子、炭素粒子、磁性粒子を含む金属粒子たとえば二酸化クロム(CrO2)粒子など、金属ゾル、微結晶、リポソーム、細胞などがあり、これらは、染料、触媒又は他の検出可能な基でさらに標識されていてもよい。適当な酵素及び補酵素が、Litmanらの米国特許第4,275,149号の19〜28欄及びBoguslaskiらの米国特許第4,318,980号の10〜14欄に開示されており、適当な発蛍光体及び化学発光体が、Litmanらの米国特許第4,275,149号の30及び31欄に開示されている。これらの米国特許明細書は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0055】
標識は、シグナルを直接生成することができ、したがって、シグナルを生成するためにさらなる成分は不要である。数多くの有機分子、たとえば発蛍光体が、紫外線及び可視光線を吸収することができ、光の吸収がエネルギーをこれらの分子に移動させ、これらの分子を励起エネルギー状態に高める。そして、この吸収されたエネルギーは、第二の波長の光の放出によって散逸される。シグナルを直接生成する他の標識としては、放射性同位体及び染料がある。
【0056】
あるいはまた、標識は、シグナルを生成するために他の成分を要するかもしれず、その場合、シグナル生成系は、計測可能なシグナルを生成するために必要なすべての成分を含むであろう。そのような他の成分としては、基質、補酵素、エンハンサ(増強因子)、さらなる酵素、酵素産物と反応する物質、触媒、アクチベータ(活性化因子)、補因子、インヒビタ(抑制因子)、スカベンジャ(捕捉物質)、金属イオン及びシグナル生成物質の結合に必要な特異的結合物質がある。適当なシグナル生成系の詳細な説明は、参照によって本明細書に組み込まれるUllmanらの米国特許第5,185,243号の11〜13欄に見ることができる。
【0057】
標識又は他のspsメンバーは、担体に結合させることができる。疎水性薬物誘導体又は類似体は、当該技術で公知のやり方で固体担体に結合させることができ、その結合が、抗体と結合する類似体の能力に実質的に干渉しない場合のみ供給される。いくつかの実施態様において、疎水性薬物誘導体又は類似体は、固相にコート又は共有結合的に直接結合させることもできるし、一つ以上の担体分子、たとえば、血清アルブミンもしくは免疫グロブリンのようなタンパク質をはじめとするポリ(アミノ酸)、又はデキストランもしくはデキストラン誘導体のような多糖類(炭水化物)の層を有することもできる。また、連結基を使用して、固体担体と疎水性薬物とを共有結合させることもできる。また、疎水性薬物誘導体を結合する他の方法が可能である。たとえば、固体担体が、小分子、たとえばアビジン、抗体などのための結合剤のコーティングを有することができ、小分子、たとえばビオチン、ハプテンなどが疎水性薬物誘導体に結合されることも可能であり、逆もまた同様である。担体の表面への成分の結合は、直接的又は間接的、共有結合的又は非共有結合的であることができ、一般に文献に見られる周知の技術によって達成することができる。たとえば、"Immobilized Enzymes," Ichiro Chibata, Halsted Press, New York (1978)及びCautrecasas, J. Biol. Chem., 245:3059 (1970)を参照すること。
【0058】
担体は、有機又は無機の固体又は流体の水不溶性物質で構成されることができ、この不溶性物質は透明又は部分的に透明であってもよい。担体は、多数の形状、たとえばビーズを含む粒子、フィルム、膜、チューブ、ウェル、ストリップ、ロッド、たとえばプレート、紙などのような平坦面、繊維などのいずれを有することもできる。アッセイのタイプに依存して、担体は、使用される媒体中に懸濁可能であっても懸濁可能でなくてもよい。懸濁可能な担体の例は、たとえばラテックスのようなポリマー材料、脂質二分子膜もしくはリポソーム、油滴、細胞及びハイドロゲル、磁性粒子などである。他の担体組成物としては、ポリマー、たとえばニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリ(塩化ビニル)、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルブテン)、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ナイロン、ポリ(酪酸ビニル)などがあり、これらは単独で使用されるか、他の材料とともに使用される。
【0059】
担体は粒子であってもよい。粒子は、少なくとも約0.02ミクロンかつ約100ミクロン以下の平均直径を有するべきである。いくつかの実施態様において、粒子は、約0.05ミクロン〜約20ミクロン又は約0.3ミクロン〜約10ミクロンの平均直径を有する。粒子は、有機又は無機であり、膨潤性又は非膨潤性であり、多孔性又は無孔性であり、好ましくは水に近い密度、一般には約0.7g/mL〜約0.5g/mLの密度を有するものであり、透明、部分的に透明又は不透明でありえる材料で構成されていてよい。粒子は、生物学的物質であってよく、たとえば細胞及び微生物、たとえば赤血球、白血球、リンパ球、ハイブリドーマ、連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌、ウイルスなどであってよい。粒子はまた、有機及び無機ポリマー、リポソーム、ラテックス粒子、磁性又は非磁性粒子、リン脂質小胞、カイロミクロン、リポタンパク質などで構成された粒子であることもできる。いくつかの実施態様においては、粒子は二酸化クロム(クロム)粒子又はラテックス粒子である。
【0060】
ポリマー粒子は、付加又は縮合ポリマーで形成されることができる。粒子は、水性媒体中に易分散性であり、直接的に又は連結基を介して間接的に疎水性薬物類似体へのコンジュゲーションを可能にするために吸着性又は官能化性であることができる。粒子はまた、天然物質、合成的に改質された天然物質及び合成物質から誘導することもできる。特に該当する有機ポリマーとしては、多糖類、特に架橋多糖類、たとえばSepharoseとして市販されているアガロース、Sephadex及びSephacrylとして市販されているデキストラン、セルロース、デンプンなど;付加ポリマー、たとえばポリスチレン、ポリビニルアルコール、アクリレート及びメタクリレートの誘導体のホモポリマー及びコポリマー、特に遊離ヒドロキシル官能基を有するエステル及びアミドなどがある。
【0061】
標識及び/又は他のspsメンバーは、sbpメンバー又は別の分子に結合させることができる。たとえば、標識は、sbpメンバー、たとえば抗体、抗体のための受容体、抗体にコンジュゲートした小分子に結合することができる受容体又はリガンド類似体に共有結合させることができる。sbpメンバーへの標識の結合は、標識の水素原子をsbpメンバーへの結合手で置換することを生じさせる化学反応によって達成することもできるし、標識とspbメンバーとの間の連結基を含むこともできる。他のspsメンバーもまた、sbpメンバーに共有結合させることができる。たとえば、二つのspsメンバー、たとえば発蛍光体及び消光剤それぞれを、分析対象とで特異的複合体を形成する異なる抗体に結合させることができる。複合体の形成は、発蛍光体と消光剤とを近接させて、それにより、消光剤が発蛍光体と相互作用してシグナルを生成することを可能にする。コンジュゲーションの方法は当該技術で周知である。たとえば、参照によって本明細書に組み込まれるRubensteinらへの米国特許第3,817,837号を参照すること。
【0062】
標識タンパク質として特に該当する酵素は、酸化還元酵素、特にデヒドロゲナーゼ、たとえばグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼなど、ならびに染料前駆体を染料へと酸化させるための過酸化水素の生成とその過酸化水素の使用を含む酵素である。具体的な組み合わせは、糖類オキシダーゼ、たとえばグルコース及びガラクトースオキシダーゼ又は複素環式オキシダーゼ、たとえばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼを、過酸化水素を使用して染料前駆体を酸化させる酵素、すなわちセイヨウワサビペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ又はミクロペルオキシダーゼと結合したものを含む。さらなる酵素組み合わせが当該技術で公知である。一つの酵素を標識として使用する場合、他の酵素を使用することができ、たとえばヒドロラーゼ、トランスフェラーゼ及びオキシドレダクターゼ、好ましくはヒドロラーゼ、たとえばアルカリホスファターゼ及びβ−ガラクトシダーゼが使用できる。あるいはまた、ホタルルシフェラーゼ及びバクテリアルシフェラーゼのようなルシフェラーゼを使用することもできる。
【0063】
使用することができる例示的な補酵素としては、NAD[H]、NADP[H]、ピリドキサルリン酸、FAD[H]、FMN[H]など、通常、環化反応を含む補酵素がある。たとえば、開示内容が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第4,318,980号を参照すること。
【0064】
たとえば酵素のような標識タンパク質を用いる場合、その分子量範囲は約10,000〜約600,000又は約10,000〜約300,000である。通常、約200,000分子量あたり、又は、約150,000分子量あたり、又は、約100,000分子量あたり、又は、約50,000分子量あたり少なくとも約1個の疎水性薬物類似体があるなどである。酵素の場合、疎水性薬物類似体グループの数は、通常、1〜約20、約2〜約15、約3〜約12又は約6〜約10である。
【0065】
用語「非ポリ(アミノ酸)標識」は、タンパク質ではない標識(たとえば酵素)を含む。非ポリ(アミノ酸)標識は、直接的に検出されることもできるし、検出可能なシグナルを生成する特異的結合反応を介して検出されることもできる。非ポリ(アミノ酸)標識としては、たとえば、放射性同位体、発光化合物、たとえば粒子、プレート、ビーズなどの担体、ポリヌクレオチドなどがある。より具体的には、非ポリ(アミノ酸)標識は、同位体又は非同位体標識、通常は非同位体標識であることができ、触媒をコードするポリヌクレオチド、プロモータ、染料、補酵素、酵素基質、放射性基、小さな有機分子(たとえばビオチン、蛍光分子、化学発光分子などを含む)、増幅可能なポリヌクレオチド配列、たとえばラテックスもしくは炭素粒子又は二酸化クロム(クロム)粒子などのような粒子である担体、金属ゾル、微結晶、リポソーム、細胞などであることができ、これらは、染料、触媒又は他の検出可能な基などでさらに標識されていてもよい。
【0066】
使用することができるイムノアッセイの一つの一般的なグループは、制限された濃度の抗体を使用するイムノアッセイを含む。イムノアッセイのもう一つのグループは、一つ以上の主要試薬の過剰、たとえば免疫抑制薬のための抗体の過剰の使用を含む。イムノアッセイのもう一つのグループは、疎水性薬物−抗体結合反応が起こると、標識された試薬が標識シグナルを修飾する、分離なしの均一アッセイである。アッセイのもう一つのグループは、問題のある標識ハプテンの使用を回避する疎水性薬物のための標識抗体試薬制限競合アッセイを含む。このタイプのアッセイにおいては、固相固定化疎水性薬物分析対象物が一定の制限量で存在する。固定化疎水性薬物分析対象と遊離疎水性薬物分析対象との間での標識の分配は、試料中の分析対象の濃度に依存する。
【0067】
アッセイは、アッセイ成分又は産物のいずれかの分離なし(均一)での実施をすることもできるし、分離とともに(不均一)での実施をすることもできる。均一イムノアッセイは、Rubensteinらの米国特許第3,817,837号の3欄6行目〜6欄64行目に開示されているEMIT(登録商標)アッセイ(Synva Company, San Jose, CA)、Ullmanらの米国特許第3,996,345号の17欄59行目〜23欄25行目に開示されている免疫蛍光法、Maggioらの米国特許第4,233,402号の6欄25行目〜9欄63行目に開示されている酵素チャネリングイムノアッセイ(「ECIA)アッセイ、たとえばとりわけの米国特許第5,354,693号に開示されている蛍光偏光イムノアッセイ(「FPIA」)などによって例示される。
【0068】
他の酵素イムノアッセイは、Ngo and Lenhoff, FEBS Lett. (1980) 116:285-288によって論じられている酵素変調媒介イムノアッセイ(「EMMIA」)、Oellerich, J. Clin. Chem. Clin. Biochem. (1984) 22:895-904によって開示されている基質標識蛍光イムノアッセイ(「SLFIA」)、Khanna, et al., Clin. Chem. Acta (1989) 185:231-240によって開示されている組み合わせ酵素ドナーイムノアッセイ(「CEDIA」)、均一粒子標識イムノアッセイ、たとえば粒子増強比濁阻止イムノアッセイ(「PETINIA」)、粒子増強比濁イムノアッセイ(「PETIA」)などである。
【0069】
他のアッセイとしては、ゾル粒子イムノアッセイ(「SPIA」)、分散染料イムノアッセイ(「DIA」)、金属イムノアッセイ(「MIA」)、酵素膜イムノアッセイ(「EMIA」)、ルミノイムノアッセイ(「LIA」)などがある。他のタイプのアッセイとしては、疎水性薬物が結合したときの抗体固定化表面の光学的、音響的及び電気的性質の変化のモニタリングを含むイムノセンサアッセイがある。そのようなアッセイとしては、たとえば、光学イムノセンサアッセイ、音響イムノセンサアッセイ、半導体イムノセンサアッセイ、電気化学的変換器イムノセンサアッセイ、電位差測定イムノセンサアッセイ、電流測定電極アッセイなどがある。
【0070】
一つの実施態様において、アッセイは、誘起ルミネセンスイムノアッセイ(誘起ルミネセンスアッセイ)であり、それは開示内容が参照によって本明細書に組み込まれる「Assay Method Utilizing Photoactivated Chemiluminescent Label」と題する米国特許第5,340,716号(Ullmanら)に記載されている。一つの手法において、アッセイは、光増感剤を配合した粒子と化学発光化合物とを配合した標識粒子を使用する。標識粒子は、疎水性薬物分析対象の存在に関して、sbpメンバー、たとえば、疎水性薬物分析対象に結合することができる疎水性薬物のための抗体にコンジュゲートされて複合体を形成するか、第二の抗体にコンジュゲートされて複合体を形成する。疎水性薬物分析対象が存在するならば、光増感剤と化学発光化合物とが近接する。二つの標識が近接すると、光増感剤は一重項酸素を生成し、化学発光化合物を活性化する。その後、活性化された化学発光化合物は光を生成する。生成される光の量は形成された複合体の量に相関し、その複合体の量は他方で存在する疎水性薬物分析対象の量に相関する。
【0071】
さらなる例として、化学発光粒子が使用され、この粒子は、それへの配合又はそれへの付着などによってそれと会合した化学発光化合物を含む。疎水性薬物分析対象に結合するsbpメンバー、たとえば疎水性薬物のための抗体を、粒子をコートする多糖類に結合させる。疎水性薬物分析対象に結合する第二のsbpメンバーがビオチンコンジュゲートの一部である。ストレプトアビジンを、それと会合した光増感剤を有する第二のセットの粒子にコンジュゲートさせる。この第二のセットの粒子(光増感剤粒子)へのストレプトアビジンの結合は、粒子上の多糖類を含むものでもよいし、含まないものでもよい。化学発光粒子を、疎水性薬物分析対象を含有することが疑われる試料と光増感剤粒子とを混合する。反応媒体をインキュベートして、疎水性薬物分析対象へのsbpメンバーの結合のせいで、粒子を疎水性薬物分析対象に結合させる。そして、媒体に光を照射して光増感剤を励起させると、光増感剤は、その励起状態で、酸素を一重項状態に活性化することができる。粒子のセットの一つの化学発光化合物は、今や疎水性薬物分析対象の存在のせいで光増感剤に近接しているため、一重項酸素によって活性化され、ルミネセンスを放出する。そして、放出されたルミネセンス又は光の存在及び/又は量に関して媒体を試験する。ルミネセンス又は光の存在は疎水性薬物分析対象の存在及び/又は量に相関する。
【0072】
疎水性薬物分析対象の測定に使用することができるアッセイのもう一つの具体的な例が、蛍光酸素チャネリングイムノアッセイを記載する米国特許第5,616,719号(Davalianら)で論じられている。
【0073】
いくつかの実施態様においては、疎水性薬物分析対象が、一つ以上の他の分析対象、たとえば他の薬物などとともに検出の対象になることができる多分析対象イムノアッセイを使用することもできる。そのような多分析対象系は、たとえば、Loor, et al., J. Anal. Toxicol. 12: 299 (1988)に記載されている。
【0074】
上述したアッセイは通常、適度なpH、すなわち一般に最適なアッセイ感度を提供するpHの水性緩衝媒体中で実施される。アッセイ媒体のpHは、通常は約4〜約11の範囲、より通常には約5〜約10の範囲、好ましくは約6.5〜約9.5の範囲である。pHは通常、特異的結合対の結合メンバーの最適な結合、アッセイの他の試薬、たとえばシグナル生成系のメンバーに最適なpHなどの間で妥当する。
【0075】
所望のpHを達成し、そのpHを測定中に維持するために各種緩衝剤を使用することができる。例示的な緩衝剤としては、ボレート、ホスフェート、カーボネート、トリス、バルビタールなどがある。使用される具体的な緩衝剤は決定的ではないが、個々のアッセイにおいて、ある緩衝剤又は別の緩衝剤が好まれるかもしれない。各種補助的物質を上記方法で使用することができる。たとえば、媒体は、緩衝剤に加えて、媒体及び使用される試薬のための安定剤を含むこともできる。多くの場合、これらの添加物に加えて、タンパク質、たとえばアルブミン、第四級アンモニウム塩、ポリアニオン、たとえば硫酸デキストラン、結合エンハンサなどを含めてもよい。
【0076】
一つ以上のインキュベーション期間が、上述した各種試薬の添加の間の間隔を含む一つ以上の間隔で、媒体に適用されてよい。媒体は通常、試薬の各種成分の結合が起こるのに十分な温度で十分な期間、インキュベートされる。通常、計測期間中、方法を実施するための適度な温度、通常は一定温度、好ましくは室温を使用する。インキュベーション温度は通常、約5℃〜約99℃、通常は約15℃〜約70℃、より通常には20℃〜約45℃の範囲である。インキュベーションの期間は、約0.2秒〜約24時間又は約1秒〜約6時間又は約2秒〜約1時間又は約1〜約15分である。期間は、媒体の温度及び各種試薬の結合の速度に依存し、会合速度定数、濃度、結合定数及び解離速度定数によって決まる。計測中の温度は一般に約10〜約50℃又は約15〜約40℃の範囲である。
【0077】
アッセイすることができる分析対象の濃度は一般に、約10-5〜約10-17M、より通常には約10-6〜約10-14Mの範囲で異なる。通常、アッセイが定性的であるのか、半定量的であるのか、定量的であるのか(試料中に存在する疎水性薬物分析対象の量に対して)、具体的な検出技術及び分析対象の濃度のような考慮事項が各種試薬の濃度を決定する。
【0078】
アッセイ媒体中の各種試薬の濃度は一般に、疎水性薬物分析対象の対象濃度範囲、アッセイの性質などによって決まる。しかし、各試薬の最終濃度は通常、その範囲でのアッセイの感度を最適化するように経験的に決定される。すなわち、重要である疎水性薬物分析対象の濃度の変動が正確に計測可能なシグナル差を提供するべきである。通常、シグナル生成系の性質及び分析対象の性質のような考慮事項が各種試薬の濃度を決定する。
【0079】
添加の順序は広く異なることができるが、アッセイの性質に依存して特定の優先順位があるであろう。もっとも簡単な添加順序は、均一アッセイにおけるように、すべての材料を同時に添加し、アッセイ媒体がシグナルに及ぼす効果を決定することである。あるいはまた、試薬を順次に組み合わせることもできる。場合によっては、上述したように、各添加ののち、インキュベーションステップを含めることもできる。
【0080】
試験ステップ
本開示の方法による次のステップで、媒体を、疎水性薬物及び疎水性薬物のための抗体を含む複合体の存在に関して試験する。複合体の存在及び/又は量は試料中の疎水性薬物の存在及び/又は量を示す。
【0081】
「疎水性薬物分析対象の量を計測する」とは、疎水性薬物分析対象の定量的、半定量的及び定性的測定をいう。定量的、半定量的及び定性的である方法ならびに疎水性薬物分析対象を測定するための他の方法が、疎水性薬物分析対象の量を計測する方法であると考えられる。たとえば、疎水性薬物分析対象を含有することが疑われる試料中の疎水性薬物分析対象の存在又は非存在のみを検出する方法は本発明の範囲に含まれると考えられる。「検出」及び「測定」の語ならびに計測を意味する他の一般的同義語は本発明の範囲内であると考えられる。
【0082】
多くの実施態様において、媒体の試験は、媒体からのシグナルの検出を含む。シグナルの存在及び/又は量は試料中の疎水性薬物の存在及び/又は量に相関する。具体的な検出モードはspsの性質に依存する。上述したように、spsの標識が、外部手段によって、望ましくは目視試験によって検出可能なシグナルを生成する数多くの方法があり、たとえば、電磁放射線、電気化学、熱、放射能検出、化学試薬などを含む。
【0083】
シグナル生成系の活性化はシグナル生成系メンバーの性質に依存する。光によって活性化されるシグナル生成系のメンバーの場合、メンバーは光を照射される。粒子の表面にあるシグナル生成系のメンバーの場合、塩基の添加が活性化を生じさせることができる。本明細書の開示を考慮すると、他の活性化方法が当業者に示唆されよう。一部のシグナル生成系、たとえば放射性標識、酵素などである標識を含む系の場合、活性化のための薬剤は不要である。酵素系の場合、基質及び/又は補因子の添加が必要になるかもしれない。
【0084】
シグナルの存在及び/又は量の試験はまた、一般にはシグナルを読み取る単なるステップであるシグナルの検出を含む。シグナルは通常、計器を使用して読み取られ、計器の性質はシグナルの性質に依存する。計器は、分光光度計、蛍光光度計、吸収分光計、ルミノメータ、ケミルミノメータ、アクチノメータ、写真計器などであることができる。検出されるシグナルの存在及び量は、試料中に存在する疎水性薬物化合物の存在及び量に相関する。計測中の温度は一般に約10℃〜約70℃又は約20℃〜約45℃又は約20℃〜約25℃の範囲である。一つの手法においては、スクリーニングされる分析対象の既知の濃度を使用して標準曲線を形成する。上述したように、較正物質及び他の対照を使用してもよい。
【0085】
アッセイの具体的な実施態様
以下の実施例は、本発明の具体的な実施態様を例として記載するが、本発明を説明することを意図したものであり、その範囲を限定することを意図したものではない。
【0086】
均一アッセイにおいては、すべての試薬を組合わせたのち、シグナルを測定し、試料中の分析対象の量に相関させる。たとえば、疎水性薬物のEMIT(登録商標)アッセイにおいては、疎水性薬物を含有することが疑われる試料を、水性媒体中、同時又は順次に、疎水性薬物の酵素コンジュゲート、すなわち、疎水性薬物の類似体と疎水性薬物とを認識することができる抗体と組合わせる。一般に、酵素のための基質を加え、それが、酵素触媒反応と同時に、色素生成又は蛍光原生成物の形成を生じさせる。好ましい酵素は、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ及びアルカリホスファターゼであるが、他の酵素を使用してもよい。疎水性薬物分析対象と酵素コンジュゲートの成分とが抗体上の部位への結合を求めて競合する。そして、媒体中の酵素活性を、通常は分光光度測定手段によって測定し、既知の量の疎水性薬物が存在する較正物質又は基準試料を試験したときに測定された酵素活性に比較する。通常、較正物質は、疎水性薬物分析対象を含有することが疑われる試料の試験と同様なやり方で試験される。較正物質は通常、測定される疎水性薬物分析対象を様々な既知の濃度で含有する。好ましくは、較正物質中に存在する濃度範囲は、未知の試料中の疑われる疎水性薬物分析対象濃度の範囲に及ぶ。
【0087】
前述のアッセイは、酵素コンジュゲートの酵素として突然変異グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼを使用して実施することができる。この突然変異酵素は、関連する開示内容が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,090,567号及び第6,033,890号に記載されている。さらには、アッセイは、疎水性薬物のための抗体を使用して、関連する開示内容が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,328,828号及び第5,135,863号に開示されている手順を使用して実施することもできる。
【0088】
均一アッセイは通常、一つ以上の分離ステップを含み、競合的又は非競合的であることができる。多様な競合的及び非競合的アッセイフォーマットがDavalianらの米国特許第5,089,390号の14欄25行目〜15欄9行目に開示されており、この開示内容が参照によって本明細書に組み込まれる。一つのタイプの競合的アッセイにおいては、本明細書で説明するような、疎水性薬物のための抗体を自らに結合させて有する担体を、試料及び疎水性薬物の適切な酵素コンジュゲートを含有する媒体と接触させる。担体と媒体とを分離したのち、担体又は媒体の酵素活性を従来技術によって測定し、試料中の疎水性薬物の存在及び/又は量に相関させる。
【0089】
特定の実施態様においては、酵素コンジュゲートの酵素に加えて、第二の酵素を使用することもできる。酵素の対の酵素は、第一の酵素の産物が第二の酵素のための基質として働くように関連する。
【0090】
アッセイフォーマットのもう一つの実施態様は捕獲アッセイである。このアッセイフォーマットにおいては、疎水性薬物のための抗体を磁性粒子に共有結合させる。試料をこれらの粒子とともにインキュベートして、試料中の疎水性薬物を疎水性薬物のための抗体に結合させる。その後、共有結合した疎水性薬物又は疎水性薬物の誘導体を有する酵素を磁性粒子とともにインキュベートする。洗浄後、磁性粒子に結合した酵素の量を計測し、試料中の疎水性薬物の存在及び/又は量に逆比例的に相関させる。
【0091】
以下の具体的なアッセイ説明は、本発明を例示するものであり、本発明の範囲に対する限定ではない。また、疎水性薬物としてのシロリムスの選択は例示であり、限定ではない何故なら、本発明は、一般には疎水性薬物、特に免疫抑制薬の検出に用途を有するためである。
【0092】
一つの実施態様において、試料又はシロリムス標準をシロリムスコンジュゲート、すなわち、たとえば、ビオチンに付着したシロリムスの類似体と混合する。試料のシロリムス及びシロリムスの類似体を、シロリムス又はシロリムスの類似体に結合することができるシロリムスのための抗体への結合を求めて競合させる。適切な洗浄緩衝剤ですすいだのち、酵素、蛍光もしくは化学発光分子又は放射性成分にコンジュゲートしたストレプトアビジン又はアビジンからなる検出分子を媒体に加えることができ、その後、シグナルの存在及び/又は量に関して媒体を試験する。シグナルの存在及び/又は量はシロリムスの存在及び/又は量に相関する。
【0093】
一つの実施態様において、使用されるアッセイは、上記のような誘起ルミネセンスアッセイである。試薬は、二つのラテックスビーズ試薬及びビオチン化抗シロリムスマウスモノクローナル抗体を含む。第一のビーズ試薬はシロリムス又はシロリムス類似体でコートされ、化学発光染料を含有する。第二のビーズ試薬はストレプトアビジンでコートされ、光増感剤染料を含有する。第一ステップで、シロリムスを含有することが疑われる試料をシロリムスのためのビオチン化抗体とともにインキュベートすると、試料からのシロリムスが、ビオチン化抗体のうち、シロリムス濃度に直接的に相関する一部分を飽和させることができる。第二ステップで、第一のビーズ試薬を加え、ビオチン化抗体の非飽和部分とでビーズ/ビオチン化抗体免疫複合体を形成させる。そして、第二のビーズ試薬を加えると、それがビオチンに結合してビーズ対免疫複合体を形成する。680nmの光を照射されると、第二のビーズ試薬は、反応溶液中の溶存酸素を、よりエネルギーのある一重項酸素形態に転換する。ビーズ対中、一重項酸素が第一のビーズ試薬中に拡散して、それにより、化学発光反応を誘発する。得られた化学発光シグナルは612nmで計測され、試料中のシロリムスの濃度の逆関数である。このシグナルの量は、試料中のシロリムスの存在及び/又は量に相関する。
【0094】
もう一つのアッセイフォーマットの具体例がACMIA(Affinity Chromium dioxide Mediated Immuno Assay)である。ACMIAアッセイフォーマットの場合、シロリムス又はシロリムス類似体でコートされたクロム粒子を第一の成分として使用する。第二の成分はシロリムスのための抗体である。レポータ酵素(たとえばβ−ガラクトシダーゼ)に架橋したこの抗体を、過剰量、すなわち、試料中に存在するかもしれない分析対象すべてに結合するために必要な量よりも多い量で反応容器に加える。抗体−酵素コンジュゲートを、シロリムスを含有することが疑われる試料と混合して、シロリムス分析対象を抗体に結合させる。次に、クロム粒子試薬を加えて、過剰な抗体−酵素コンジュゲートを拘束する。そして、磁石を適用し、クロム粒子のすべて及び過剰な抗体−酵素を懸濁液から抜き出し、上澄みを最終反応容器に移す。レポータ酵素の基質を最終反応容器に加え、酵素活性を吸光度の経時的変化として分光測光的に計測する。このシグナルの量は試料中のシロリムスの存在及び/又は量に相関する。
【0095】
サンドウィッチアッセイフォーマットにおいては、抗シロリムス抗体でコートされたクロム粒子を含む第一の試薬と、レポータ酵素にコンジュゲートした第一の抗体のための第二の抗体(又は結合タンパク質)とを含む第二の試薬を使用する。このフォーマットにおいては、シロリムスを含有することが疑われる試料をクロム粒子とともにインキュベートして、試料中のシロリムス(存在するならば)のすべてがクロム粒子に結合するようにする。結合した分析対象を磁石を使用して上澄みから分離しながらクロム粒子を洗浄する。そして、第二の試薬、すなわち、レポータ酵素にコンジュゲートした抗体(又は結合タンパク質)をクロム粒子とともにインキュベートして「サンドウィッチ」を形成する。洗浄後、クロムに結合している酵素の量を計測し、試料中のシロリムスの存在及び/又は量に相関させる。
【0096】
もう一つのアッセイフォーマットがEMIT(登録商標)(Enzyme-Mediated Immunoassay Technology)である。このアッセイフォーマットにおいては、酵素コンジュゲート、たとえばG−6−PDHとシロリムス類似体とのコンジュゲートを形成する。シロリムスのための抗体を酵素コンジュゲート及びシロリムスを含有することが疑われる試料とともにインキュベートする。シロリムスのための抗体は、酵素コンジュゲートに結合する代りに、試料中のシロリムス分析対象に結合し、それが、そうでなければ試料中のシロリムスの存在しない中で起こるかもしれない酵素活性の阻止の量を減らす。このようにして、より多くのシロリムス分析対象を有する試料は、より高い酵素活性を生じさせ、シロリムス分析対象を有しない試料は、最大限の阻止及び最低の酵素活性を有する。酵素活性の阻止の減少量は試料中のシロリムスの量に相関する。
【0097】
特定のアッセイを実施するための試薬は、疎水性薬物分析対象の測定のためのアッセイを簡便に実施するのに有用なキットの中に存在してもよい。一つの実施態様において、キットは、パッケージングされた組み合わせ中に、疎水性薬物分析対象のための抗体及びアッセイを実施するための他の試薬を含み、それらの性質は具体的なアッセイフォーマットに依存する。試薬は、試薬の交差反応性及び安定性に依存して、それぞれが別個の容器に入れられてもよいし、各種試薬が一つ以上の容器中に組み合わされてもよい。キットはさらに、アッセイを実施するための他の別個にパッケージングされた試薬、たとえばさらなるsbpメンバー、補助的試薬、たとえば補助的酵素基質などを含むことができる。
【0098】
キット中の各種試薬の相対量は、本方法中に起こらなければならない反応を実質的に最適化する試薬の濃度を提供し、さらに、アッセイの感度を実質的に最適化するために、広く異なることができる。適切な状況下、キット中の試薬の一つ以上が、添加剤を含む通常は凍結乾燥された乾燥粉末として提供されることができ、この乾燥粉末が、溶解すると、本発明による方法又はアッセイを実施するのに適切な濃度を有する試薬溶液を提供する。キットはさらに、上記のような本発明による方法の説明書を含むことができる。
【0099】
他の実施態様
本発明の一つの実施態様は、疎水性薬物を検出するためのアッセイ法を実施するために、疎水性薬物を含有することが疑われる試料を前処理する方法である。組み合わせが媒体中に提供される。組み合わせは、(i)試料、(ii)疎水性薬物及びその代謝産物を内在性結合成分から遊離させるための遊離剤、及び(iii)媒体中に疎水性薬物及びその代謝産物の実質的に等しい溶解性を提供する選択的可溶化剤を含む。選択的可溶化剤は、水混和性の不揮発性有機溶媒を含み、媒体中に疎水性薬物及びその代謝産物の実質的に等しい溶解性を提供するのに十分な濃度で媒体中に存在する。媒体は、免疫抑制薬及びその代謝産物を内在性結合成分から遊離させるための条件下で、インキュベートされる。
【0100】
本発明のもう一つの実施態様は、疎水性薬物を含有することが疑われる試料中の疎水性薬物を測定する方法である。組み合わせが媒体中に提供される。組み合わせは、(i)試料、(ii)疎水性薬物及びその代謝産物を内在性結合成分から遊離させるための遊離剤、及び(iii)媒体中に疎水性薬物及びその代謝産物の実質的に等しい溶解性を提供する選択的可溶化剤を含み、選択的可溶化剤は、水混和性の不揮発性有機溶媒を含み、媒体中の選択的可溶化剤の濃度は、媒体中に疎水性薬物及びその代謝産物の実質的に等しい溶解性を提供するのに十分である。媒体中の組み合わせはさらに溶血剤を含む。媒体は、試料中の細胞を溶血し、疎水性薬物及びその代謝産物を内在性結合成分から遊離させるための条件下で、インキュベートされる。媒体には、試料中の疎水性薬物の存在及び/又は量を測定するための試薬が加えられ、試薬は、疎水性薬物のための少なくとも一つの抗体を含む。媒体は、疎水性薬物及び疎水性薬物ための抗体を含む複合体の存在に関して試験され、複合体の存在及び/又は量が試料中の疎水性薬物の存在及び/又は量を示す。
【0101】
本発明のもう一つの実施態様は、免疫抑制薬を含有することが疑われる試料中の免疫抑制薬を測定する方法である。組み合わせが媒体中に形成され、組み合わせは、試料、免疫抑制薬とその代謝産物とを内在性結合成分から遊離させるための遊離剤、及び免疫抑制薬及びその代謝産物のための選択的可溶化剤を含む。選択的可溶化剤は、水混和性の不揮発性有機溶媒を含む。媒体中の選択的可溶化剤の濃度は、媒体中に免疫抑制薬及びその代謝産物の実質的に等しい溶解性を提供するのに十分である。媒体は、免疫抑制薬及びその代謝産物を内在性結合成分から遊離させるための条件下で、インキュベートされる。媒体には、(i)(I)免疫抑制薬のための抗体と(II)酵素とを含む試薬、ならびに(ii)免疫抑制薬又はその類似体を含む磁性粒子が加えられる。媒体は、免疫抑制薬及び免疫抑制薬のための抗体を含む複合体の存在に関して試験され、複合体の存在及び/又は量が試料中の免疫抑制薬の存在及び/又は量を示す。
【0102】
本発明のもう一つの実施態様は、免疫抑制薬を含有することが疑われる試料中の免疫抑制薬を測定する方法である。組み合わせが媒体中に形成され、組み合わせは、試料、免疫抑制薬及びその代謝産物を内在性結合成分から遊離させるための遊離剤、及び免疫抑制薬及びその代謝産物のための選択的可溶化剤を含む。選択的可溶化剤は、水混和性の不揮発性有機溶媒を含み、媒体中の選択的可溶化剤の濃度は、媒体中に免疫抑制薬及びその代謝産物の実質的に等しい溶解性を提供するのに十分である。媒体は、媒体中に免疫抑制薬及びその代謝産物の実質的に等しい溶解性を提供するための条件下、インキュベートされる。媒体には、(i)第一の粒子と会合しており、一重項酸素を発生させることができる光増感剤、及び(ii)一重項酸素によって活性化されることができ、第二の粒子と会合している化学発光組成物が加えられ、免疫抑制薬のための抗体が、第一の粒子又は第二の粒子又はそれら両方と会合している。組み合わせは、免疫抑制薬(存在するならば)への抗体の結合のための条件に付される。光増感剤は光を照射され、化学発光組成物によって生成されるルミネセンスの量が検出される。ルミネセンスの量は試料中の免疫抑制薬の量に相関する。
【0103】
あるいはまた、上記実施態様において、第一の粒子又は第二の粒子の一方が抗体を含み、他方の粒子が免疫抑制薬の薬物類似体を含む。組み合わせは、薬物のための抗体への薬物類似体コートされた粒子と免疫抑制薬(存在するならば)との競合のための条件に付される。あるいはまた、上記実施態様において、第一の粒子又は第二の粒子はストレプトアビジンを含み、このストレプトアビジンが、媒体中の免疫抑制薬のビオチン化類似体と組み合わさる。組み合わせは、薬物のための抗体を求めるビオチン化薬物類似体と免疫抑制薬との競合のための条件に付される。上記代替態様のいずれにおいても、光増感剤は光を照射され、化学発光組成物によって生成されるルミネセンスの量が検出される。ルミネセンスの量は試料中の免疫抑制薬の量に相関する。
【実施例】
【0104】
以下の実施例は、本発明の具体的な実施態様を非限定的な例としてさらに説明し、本発明を説明することを意図したものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書に開示される部及び%は、断りない限り、容量部及び容量%である。
【0105】
実施例
材料
断りない限り、すべての薬品は、Sigma-Aldrich Company(St. Louis MO)から購入された。シロリムス粉末及びその代謝産物は、27,39−O−ジデスメチル(又は32,41−O−ジデスメチル)シロリムスを除き、すべてWyeth Pharmaceuticalsから得られた。27,39−O−ジデスメチル(又は32,41−O−ジデスメチル)シロリムスは、Dr. Uwe(Christains laboratory at Department of Anesthesiology, University of Colorado Health Sciences Center, Denver, Colorado)から頂いた。
【0106】
試験は、Dade Behring Inc.(Newark DE)から入手できたDIMENSION(登録商標)RxLアナライザを使用して実施した。ACMIAイムノアッセイ技術を使用してこの計器を使用した。ACMIAアッセイ法は、開示内容すべてが参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,186,518号、第5,147,529号、第5,128,103号、第5,158,871号、第4,661,408号、第5,151,348号、第5,302,532号、第5,422,284号、第5,447,870号に開示されている。本明細書で使用され、以下さらに詳細に説明されるACMIA法の実施態様においては、酵素にコンジュゲートしたシロリムス(コンジュゲート)のための抗体を求めての、クロム粒子上のシロリムス類似体と患者試料中のシロリムス(SIRO)との間の競合を使用して、患者試料中のシロリムスの量を測定した。クロム粒子上のシロリムス類似体に結合するコンジュゲートを磁気分離によって除去した。上澄み中に残留するコンジュゲートからの酵素活性が計測され、患者試料中のシロリムスの量に正比例する。使用されたACMIAアッセイフォーマットにおいて、シロリムスを含有しない試料を試験したときに観察された酵素活性は、活性抗体に結合していなかった(すなわち、クロム粒子上のシロリムスに結合することができない)酵素活性の量を指示するものであった。クロム粒子が存在しないときに観察された酵素活性は、コンジュゲート中の酵素活性の全量を指示する。これらの値を使用して、活性抗体に結合した酵素活性の割合を推測することができる。
【0107】
実施例1
非手作業的前処理を使用する、異なる程度の代謝産物交差反応性を有する疎水性薬物の自動化イムノアッセイ
FK−506カルバメート(FKE)を用いない前処理溶液の調製
この前処理溶液は、pH6.5で6.8mg/mL PIPES(商標)1.5ナトリウム塩、0.3mg/mL EDTA二ナトリウム、1.0mg/mLサポニン、0.09%PLURONIC(登録商標)25R2、0.2%Proclin 300、0.024mg/mL硫酸ネオマイシン及び0.99mg/mL NaN3を含有するように調製した。この溶液には有機溶媒を加えなかった。
【0108】
3.75μg/mL FKEを含有する前処理溶液の調製
この前処理溶液は、pH6.5で3.75μg/mL FK−506カルバメート化合物(又はタクロリムスエステル)、6.8mg/mL PIPES(商標)1.5ナトリウム塩、0.3mg/mL EDTA二ナトリウム、1.0mg/mLサポニン、0.09%PLURONIC(登録商標)25R2、0.2%Proclin 300、0.024mg/mL硫酸ネオマイシン及び0.99mg/mL NaN3を含有するように調製した。この溶液には有機溶媒を加えなかった。最終反応混合物中のFKE濃度は0.86μg/mLであった。
【0109】
15μg/mL FKEを含有する前処理溶液の調製
この前処理溶液は、15μg/mL FK−506カルバメート化合物(又はタクロリムスエステル)、6.8mg/mL PIPES(商標)1.5ナトリウム塩、0.3mg/mL EDTA二ナトリウム、1.0mg/mLサポニン、0.09%PLURONIC(登録商標)25R2、0.2%Proclin 300、0.024mg/mL硫酸ネオマイシン及び0.99mg/mL NaN3を含有するように調製した(pH6.5)。この溶液には有機溶媒を加えなかった。最終反応混合物中のFKE濃度は3.4μg/mLであった。
【0110】
10%ジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する前処理溶液の調製
この前処理溶液は、緩衝剤にDMSOを最終濃度10%(v/v)まで加えることによって調製され、この緩衝剤は、pH6.5で、6.8mg/mL PIPES(商標)1.5ナトリウム塩、0.3mg/mL EDTA二ナトリウム、1.0mg/mLサポニン、15μg/mL FK−506カルバメート化合物(又はタクロリムスエステル)、0.09%PLURONIC(登録商標)25R2、0.2%Proclin 300、0.024mg/mL硫酸ネオマイシン及び0.99mg/mL NaN3を含有した。最終反応混合物中のDMSOの濃度は約2.3%であった。
【0111】
15%DMSOを含有する前処理溶液の調製
この前処理溶液は、緩衝剤にDMSOを最終濃度15%(v/v)まで加えることによって調製され、この緩衝剤は、pH6.5で、6.8mg/mL PIPES(商標)1.5ナトリウム塩、0.3mg/mL EDTA二ナトリウム、1.0mg/mLサポニン、15μg/mL FK−506カルバメート化合物(又はタクロリムスエステル)、0.09%PLURONIC(登録商標)25R2、0.2%Proclin 300、0.024mg/mL硫酸ネオマイシン及び0.99mg/mL NaN3を含有した。最終反応混合物中のDMSOの濃度は約3.4%であった。
【0112】
10%1−メトキシ−2−プロパノールを含有する前処理溶液の調製
この前処理ベース溶液は、緩衝剤に1−メトキシ−2−プロパノール(MP)を最終濃度10%(v/v)まで加えることによって調製され、この緩衝剤は、pH6.5で、6.8mg/mL PIPES(商標)1.5ナトリウム塩、0.3mg/mL EDTA二ナトリウム、1.0mg/mLサポニン、15μg/mL FK−506カルバメート化合物(又はタクロリムスエステル)、0.2%Proclin 300、0.024mg/mL硫酸ネオマイシン及び0.99mg/mL NaN3を含有した。最終ACMIA反応混合物中のMPの濃度は約2.3%であった。
【0113】
表1は、シロリムスを含有する試料を前処理する際に使用するための前処理試薬の組成を示す(AI=前記)。
【0114】
【表1】

【0115】
抗タクロリムス抗体−β−ガラクトシダーゼコンジュゲートの調製
標準的ヘテロ二官能性SMCC(スクシンイミジルトランス−4−(N−マレイミジルメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート)リンカを使用して、公知の技術にしたがってモノクローナル抗シロリムス抗体(Wyeth Pharmaceuticals, Cambridge MA)をβ−ガラクトシダーゼにコンジュゲートした。抗体コンジュゲート溶液は、pH6.5で、約7.5μg/mL抗シロリムス抗体−β−ガラクトシダーゼコンジュゲート、30mg/mLプロテアーゼフリーウシ血清アルブミン、0.126mg/mL MgCl2、0.03mL/mLエチレングリコール、35.14mg/mL PIPES1.5ナトリウム塩、50mg/mL NaCl及びβ−ガラクトシダーゼ突然変異タンパク質(不活性化β−ガラクトシダーゼ)を含有した。
【0116】
磁性クロム粒子調製
N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル及び1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)の化学作用を使用してシロリムス−C26−又は−C32−CMOコンジュゲートをDA10−デキサル−二酸化クロム粒子にコンジュゲートすることにより、シロリムスクロム粒子(イムノアッセイ固相)を調製した。たとえば、関連する開示内容が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,231,982号を参照すること。そして、シロリムスクロム粒子をシロリムスクロム粒子錠剤に成形する。各シロリムス錠剤は、2mgシロリムスクロム粒子スラリー、30.4mgトレハロース二水和物及び3.6mg CARBOWAX(登録商標)100μmを含有する。
【0117】
シロリムスアッセイ
シロリムスのためのACMIAアッセイの原理及び手順は以下のとおりであった。DIMENSION(登録商標)RxLアナライザ上、選択的可溶化剤として有機溶媒を含有し、FKEを含む、又は含まない前処理試薬を反応容器に加えた。次に、シロリムス又はその代謝産物を含有する全血18μLを加えた。全血は、まず血液を超音波試料プローブと混合することにより、標準カップから採取した。全血試料と前処理溶液との混合が、タクロリムスカルバメート分子が存在するときの全血の溶血及びタンパク質結合シロリムス分子の結合部位からの移動を保証した。次に、抗シロリムス抗体−β−ガラクトシダーゼコンジュゲート(50μL)を加え、試料中のシロリムスと反応させた。固定化されたシロリムス−CMO−DA10−デキサルを有するクロム粒子(50μL)を加え、非結合コンジュゲートに結合させた。クロム粒子から溶液を分離するために上記反応混合物に磁場を印加すると、シロリムス結合抗シロリムス抗体−β−ガラクトシダーゼコンジュゲートは、クロム粒子には結合せず、上澄み中に残留した。上澄みを反応容器から測光キュベットに移し、クロロフェノールレッド−β−D−ガラクトピラノシド(CPRG)の存在におけるコンジュゲートの酵素速度を計測することにより、シロリムス結合コンジュゲートを検出した。速度は、577及び700nmで二色的に計測した。
【0118】
異なる前処理試薬の比較
10もしくは15%のDMSO又は10%のMPをFKEとともに使用して、全血試料中のシロリムス及びその代謝産物濃度を計測するためにDIMENSION(登録商標)RxLアナライザ上で実施されるACMIAアッセイのための別々の前処理溶液(上記で詳述したとおり)を製造した。上述の有機溶媒及びFKEなしのもう一つの前処理溶液をアッセイのための対照(「対照」)として製造した。前述の有機溶媒を添加された前処理溶液及び添加されていない前処理溶液を使用して、DIMENSION(登録商標)臨床化学アナライザ上でのシロリムスACMIAアッセイのための試薬カートリッジを調製した。上述の溶媒及びFKEを使用しなかった場合、すべての代謝産物は全血試料中で高い回収率を示した。以下の表には、シロリムス代謝産物の回収率を親薬物シロリムスの回収率に対する割合として報告する。
【0119】
図1は、FKEなしの対照に比べた場合のシグナル分離における大きな増加によって実証されるように、実質的な量のシロリムス薬物がFKEによって遊離したことを示す。上記実験は、有機溶媒を加えずに実施し、反応混合物は基本的に水溶液であった。前処理試薬におけるアルコール又はDMSOのような水混和性有機溶媒の添加は、表に示すように、代謝産物交差反応性を有意に低下させた。有機溶媒を加えなかった場合、代謝産物交差反応性は最高であった(以下の表2の対照)。結果を表2にまとめる。
【0120】
【表2】

【0121】
上記表2で参照した実験においては、27,39ジデスメチルシロリムスを、その比較的高い疎水性のために、有機溶媒スクリーニングに使用した。
【0122】
表3は、シロリムス代謝産物の%交差反応性に対する、FKEとDMSOとによって代表される有機溶媒の効果を示す。
【0123】
【表3】

【0124】
FKE又はDMSOのいずれをも含有しない通常の水性イムノアッセイ試薬においては、11−ヒドロキシシロリムスの場合、その親水性のせいで315%の交差反応性が検出された。FKEの存在かつDMSOなしでは、その交差反応性は78%であり、FKEの存在しない場合におけるよりも有意に低かったが、FKE及びDMSOの両方が存在した場合によりも高かった。FKE及びDMSOの両方が前処理試薬中に配合されているとき、11−ヒドロキシシロリムスの交差反応性は最低(35%)であった。他のシロリムス代謝産物の交差反応性は同じパターンを踏襲した。交差反応性は、前処理試薬がFKE又はDMSOのいずれをも含有しない場合に最高であり、両方が存在する場合に最低である。
【0125】
本明細書で引用されるすべての刊行物と特許出願は、個々の刊行物又は特許出願それぞれが参照によって組み込まれることを特定的かつ個別に指示されるかのごとく、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0126】
前記発明は、理解しやすくするための例としていくらか詳細に説明したが、当業者には、本発明の教示を鑑みて、請求の範囲の真意又は範囲を逸することなく特定の変更及び改変を加えることができることが容易に理解されよう。さらには、前記記載は、説明のために、発明の徹底的な理解を提供するために特有の術語を使用した。しかし、当業者には、本発明を実施するために具体的な詳細が求められないということが明かであろう。したがって、本発明の具体的な実施態様の前記記載は、例示及び説明のために提示されたものであり、網羅的であること、又は本発明を開示されたとおりの形態に限定することを意図したものではない。上記教示の観点から多くの改変及び変形が可能である。実施態様は、本発明の原理及びその実用化を説明し、それにより、当業者が本発明を使用することを可能にするために選択され、記載されたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性薬物の生物学的利用能を前記疎水性薬物の代謝産物の生物学的利用能よりも選択的に高める方法であって、
(a)媒体中に、
(i)前記試料、
(ii)前記疎水性薬物及び前記代謝産物を内在性結合成分から遊離させるための遊離剤、及び
(iii)前記疎水性薬物のための選択的可溶化剤であって、前記選択的可溶化剤が水混和性の不揮発性有機溶媒を含み、前記媒体中の前記選択的可溶化剤の濃度が、前記媒体中、前記疎水性薬物の生物学的利用能を前記代謝産物の生物学的利用能よりも高めるのに十分である選択的可溶化剤
を組み合わせて提供すること、ならびに
(b)前記媒体を、前記媒体中、前記疎水性薬物の生物学的利用能を前記代謝産物の生物学的利用能よりも高めるための条件下で、インキュベートすること
を含む方法。
【請求項2】
疎水性薬物を含有することが疑われる試料中の疎水性薬物を測定するため、前記媒体中の前記組み合わせが、溶血剤をさらに含み、ステップ(b)において、前記試料中の細胞を溶血させるための、及び、前記媒体中、前記疎水性薬物の生物学的利用能を前記代謝産物の生物学的利用能よりも高めるための条件下で、前記媒体をインキュベートし、前記方法がさらに、
(c)前記試料中の前記疎水性薬物の存在及び/又は量を測定するための、前記疎水性薬物のための少なくとも一つの抗体を含む試薬を前記媒体に加えること、ならびに
(d)前記疎水性薬物及び前記疎水性薬物のための抗体を含む複合体の存在に関して前記媒体を試験し、前記複合体の存在及び/又は量が前記試料中の前記疎水性薬物の存在及び/又は量を示すこと
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記疎水性薬物が免疫抑制薬である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記選択的可溶化剤が、2〜3個のヒドロキシ基を含むC2〜C6ポリオール、C2〜C6スルホキシド、C2〜C6スルホン又はC2〜C6アミド、ポリオールのC2〜C6モノ、ジ及びトリエーテル又はポリオールのC2〜C6モノ、ジ及びトリエステルである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記選択的可溶化剤が、エチレングリコール、グリセロール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン又はジメチルホルムアミドである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記遊離剤が前記疎水性薬物の類似体である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
ステップ(c)における前記試薬が前記疎水性薬物の類似体をさらに含み、前記疎水性薬物のための少なくとも一つの前記抗体又は前記類似体が標識を含む、請求項2記載の方法。
【請求項8】
ステップ(c)において、第二の抗体を前記媒体に加え、前記第二の抗体が、前記疎水性薬物と前記疎水性薬物のための前記抗体との複合体に結合する、請求項2記載の方法。
【請求項9】
前記疎水性薬物のための前記抗体及び前記第二の抗体の少なくとも一つが標識を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
免疫抑制薬を含有することが疑われる試料中の免疫抑制薬を測定する方法であって、
(a)媒体中に、
(i)前記試料、
(ii)前記免疫抑制薬及び前記代謝産物を内在性結合成分から遊離させるための遊離剤、及び
(iii)前記免疫抑制薬及び前記代謝産物のための選択的可溶化剤であって、前記選択的可溶化剤が水混和性の不揮発性有機溶媒を含み、前記媒体中の前記選択的可溶化剤の濃度が、前記媒体中、前記疎水性薬物の生物学的利用能を前記代謝産物の生物学的利用能よりも高めるのに十分である前記選択的可溶化剤
を組み合わせて提供すること、
(b)前記媒体中、前記疎水性薬物の生物学的利用能を前記代謝産物の生物学的利用能よりも高めるための条件下で、前記媒体をインキュベートすること、
(c)(i)(I)前記免疫抑制薬のための抗体と(II)酵素を含む試薬、及び(ii)前記免疫抑制薬又はその類似体を含む磁性粒子を前記媒体に加えること、ならびに
(d)前記免疫抑制薬及び前記免疫抑制薬のための抗体を含む複合体の存在に関して前記媒体を試験し、前記複合体の存在及び/又は量が前記試料中の前記免疫抑制薬の存在及び/又は量を示すこと
を含む方法。
【請求項11】
前記免疫抑制薬が、タクロリムス、シクロスポリン、ラパマイシン及びエベロリムスからなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記選択的可溶化剤が、2〜3個のヒドロキシ基を含むC2〜C6ポリオール、C2〜C6スルホキシド、C2〜C6スルホン又はC2〜C6アミド、ポリオールのC2〜C6モノ、ジ及びトリエーテル又はポリオールのC2〜C6モノ、ジ及びトリエステルである、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記選択的可溶化剤が、エチレングリコール、グリセロール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン又はジメチルホルムアミドである、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記遊離剤が前記免疫抑制薬の類似体である、請求項10記載の方法。
【請求項15】
試験することが、前記磁性粒子を前記媒体から分離することを含む、請求項10記載の方法。
【請求項16】
前記磁性粒子が二酸化クロム粒子である、請求項10記載の方法。
【請求項17】
免疫抑制薬を含有することが疑われる媒体中の免疫抑制薬の存在又は量を測定する方法であって、
(a)媒体中に、
(i)前記試料、
(ii)前記免疫抑制薬及び代謝産物を内在性結合成分から遊離させるための遊離剤、及び
(iii)前記免疫抑制薬及び前記代謝産物のための選択的可溶化剤であって、前記選択的可溶化剤が水混和性の不揮発性有機溶媒を含み、前記媒体中の前記選択的可溶化剤の濃度が、前記媒体中、前記疎水性薬物の生物学的利用能を前記代謝産物の生物学的利用能よりも高めるのに十分である選択的可溶化剤
を組み合わせて提供すること、
(b)前記媒体中、前記疎水性薬物の生物学的利用能を前記代謝産物の生物学的利用能よりも高めるための条件下で、前記媒体をインキュベートすること、
(c)(i)第一の粒子と会合しており、一重項酸素を発生させることができる光増感剤、及び(ii)一重項酸素によって活性化されることができ、第二の粒子と会合している化学発光組成物を前記媒体に加え、前記免疫抑制薬のための抗体を、前記第一の粒子又は前記第二の粒子又はそれら両方と会合させること、
(d)前記組み合わせを、前記免疫抑制薬(存在するならば)への前記抗体の結合のための条件に付すこと、ならびに
(e)前記光増感剤に光を照射し、前記化学発光組成物によって生成されるルミネセンスの量を検出し、前記ルミネセンスの量を前記試料中の前記免疫抑制薬の量に相関させること
を含む方法。
【請求項18】
前記免疫抑制薬が、タクロリムス、シクロスポリン、ラパマイシン及びエベロリムスからなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記選択的可溶化剤が、2〜3個のヒドロキシ基を含むC2〜C6ポリオール、C2〜C6スルホキシド、C2〜C6スルホン又はC2〜C6アミド、ポリオールのC2〜C6モノ、ジ及びトリエーテル又はポリオールのC2〜C6モノ、ジ及びトリエステルである、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記選択的可溶化剤が、エチレングリコール、グリセロール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン又はジメチルホルムアミドである、請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記遊離剤が前記免疫抑制薬の類似体である、請求項17記載の方法。
【請求項22】
前記抗体が前記第一の粒子と会合しており、前記第二の粒子が、それに付着した前記免疫抑制薬の類似体を含む、請求項17記載の方法。

【公開番号】特開2012−112971(P2012−112971A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−21160(P2012−21160)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【分割の表示】特願2010−538187(P2010−538187)の分割
【原出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(508147326)シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド (23)