説明

疑似体験用環境形成システム

【課題】疑似体験を受ける者の有する機能を生かし、動的かつ変化に富んだ環境を作り出すことを可能とした疑似体験用環境形成システムを提供する。
【解決手段】疑似体験する障害者が会話することができる人工的な疑似体験用環境状態となる空間を形成する本体構造部11Bと、この本体構造部11B内における疑似体験する障害者の話声の大きさに呼応して検出信号を出力する受信部12Bと、この受信部12Bからの検出信号に基づいて、シャボン玉を発生させるための操作信号を出力する信号処理部13Bと、この信号処理部13Bからの操作信号を受けて、話声の大きさに応じてシャボン玉を発生させるシャボン玉発生器34とを備え、疑似体験する障害者の自らの意志による話し声の大きさに応じてシャボン玉を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の感覚に刺激を与え、心身を活性化する人工的環境を作り出すための疑似体験用環境形成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、重度の身体障害や、病気や加齢による寝たきり生活の人、知的障害や痴呆症で意思表示が困難な人、精神的不安定な状態に陥られている人等に対して、より充実した公平な福祉環境を育成しようとする機運が高まりつつある。そして、これまでの単なる治療や介助だけでは不十分で、これらの人に対する自立支援が重要であることが認識されてきており、人が本来具備する感受性を刺激し、向上させることが自立支援に有効であるとされている。
【0003】
そこで、従来、重度の知的障害を有する人との関わり方としてオランダに端を発し、発展してきた“スヌーズレン(snoezelen)”の理念に基づく活動の一環として、スヌーズレンルームの試みがなされている。このスヌーズレンルームは、疑似体験用雰囲気形成システムとも言えるものであり、もともと重度の知的障害を有する人を対象に、心地よい照明、音楽、香り、触れることにより種々の感触を与える物等により障害を有する人が家族や援助者と共に視覚、聴覚、触覚、臭覚等への刺激を感じ取り、それを楽しみ、喜び、くつろげる癒しの環境を形成するものである。(先行技術文献情報なし。)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の疑似体験用雰囲気形成システムは、例えば障害を有する人のような疑似体験を受ける者が、単なる治療や補助ではできなかった、健常者と同様な、何人も願うような体験をしながら障害を改善してゆくという点で注目されている。しかし、この疑似体験用雰囲気形成システムの場合、疑似体験を受ける者は受動的であり、システム側で一方的に作り出された人工的な環境から一方的に刺激を受けるだけであるという点で、静的かつ単調であり、この人工的な環境に対する慣れ、飽きにより、この人工的な環境から受ける刺激が低下し易いという問題がある。
本発明は、斯る従来の問題をなくすことを課題としてなされたもので、疑似体験を受ける者の有する機能を生かし、動的かつ変化に富んだ環境を作り出すことを可能とした疑似体験用環境形成システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、疑似体験する障害者が会話することができる人工的な疑似体験用環境状態となる空間を形成する本体構造部と、この本体構造部内における疑似体験する障害者の話声の大きさに呼応して検出信号を出力する受信部と、この受信部からの検出信号に基づいて、シャボン玉を発生させるための操作信号を出力する信号処理部と、この信号処理部からの操作信号を受けて、話声の大きさに応じてシャボン玉を発生させるシャボン玉発生器とを備え、疑似体験する障害者の自らの意志による話し声の大きさに応じてシャボン玉を発生させる構成とした。
【発明の効果】
【0006】
このように、疑似体験する者の動作に呼応して環境変化が生じるようにし、疑似体験を受ける者に、より積極的な動作を促し、疑似体験を受ける者の有する機能を生かし、動的かつ変化に富んだ快適かつくつろげる環境を作り出し、疑似体験する者の心身に適度な刺激を与え、その者が楽しみながら、その心身の活性化を図ることが可能になる等の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る疑似体験用環境形成システム1Aを示し、この疑似体験用環境形成システム1Aは、本体構造部11A、受信部12A、信号処理部13Aおよび出力機器14Aを備えている。
【0008】
本体構造部11Aは、トンネル形状を有し、この中を疑似体験する者が十分に余裕をもって歩行したり、飛び跳ねながら通り抜けられるようになっており、人工的な疑似体験用環境状態となる空間を形成する。なお、本体構造部11A内には、必要に応じて、照明機器を設置してもよい。また、この本体構造部11Aの断面は、図示する矩形の他、円形、半円形、長円形でもよく、必ずしも一様に形成される必要はなく、変化に富んだ形状を有してもよい。さらに、疑似体験する者としては、例えば、虚弱高齢者、知的或いは身体的に障害を有する者、精神的不安定患者(例:妊産婦)や自宅病気療養者のように周りの環境から、精神的に快適な刺激を受けることにより心身の改善が望まれる者が含まれる。
【0009】
受信部12Aは、床面の各所に埋設された複数の感圧センサ21からなっており、本体構造部11A内における疑似体験する者の動作、即ち疑似体験する者がその位置に来たこと、その者が飛び跳ねたこと等に呼応して検出信号が出力される。
信号処理部13Aは、各種演算・制御機器を内蔵し、受信部12Aからの検出信号に基づいて、信号処理部13Aから、後述するように上記疑似体験する者の感覚、即ち視覚、聴覚、触覚、嗅覚等を刺激する予め定めた種類の環境変化を生じさせるための操作信号が出力される。
【0010】
出力機器14Aは、映写機22、スピーカ23及び温度調節機24からなっている。そして、上記操作信号を受けた映写機22は、例えば山・川の風景、広大な海の風景、田園・山村風景、祭の風景、種々の動物が出てくる風景、種々の天候時の風景、天体風景等、場所に応じて本体構造部11Aの壁面に映し出す。そして、映写機22に対応してスピーカ23に上記操作信号が出力され、これらの風景に応じた音(例:風の音、川のせせらぎ、木の葉の擦れ合う音、鳥や虫の発する声、水滴の音、水たまりを歩く音、音楽等)が、対応する場所のスピーカから出力される。さらに、信号処理部13Aからの操作信号により、温度調節機24の近くに真夏の風景が映し出されると、この近辺は温度調節機24により気温が高い雰囲気が作り出され、逆に真冬の景色が映し出されると気温が低い雰囲気が作り出されるようになっている。この他、一定の場所に、ある香りを出させる機器を設置してもよい。
【0011】
このように、疑似体験用環境形成システム1Aでは、本体構造部11A内を歩いてゆくと、疑似体験する者の動作に対応して種々の疑似体験用環境が生成され、疑似体験する者が自らの意思により、例えば雨が降る中、水溜りの上を歩いている体験や、鳥がさえずる山林を散策している体験や、海岸を散歩している体験等、あたかも本当に体験しているような種々の疑似体験が可能となっている。
【0012】
図2は、本発明の第2実施形態に係る疑似体験用環境形成システム1Bを示し、この疑似体験用環境形成システム1Bは、本体構造部11B、受信部12B、信号処理部13Bおよび出力機器14Bを備えている。
本体構造部11Bは、大きな部屋の形状を有し、この中に疑似体験する者の動作に対応して人工的な疑似体験用環境が形成される。上記同様、本体構造部11B内には、必要に応じて、照明機器を設置してもよい。
【0013】
受信部12Aは、壁面31の各所に埋設された複数の近接センサ32、図示しない感圧センサが埋設された椅子33、後述するシャボン玉発生器34に設けられたマイク35からなっている。そして、疑似体験する者が近付くと近接センサ32から検出信号が出力され、疑似体験する者が椅子33に座ることにより、座ったときの衝撃に対応した強さの検出信号が出力され、シャボン玉発生器34の近くの疑似体験する者の話し声を捉えたマイク35からの音声信号である検出信号が出力される。
【0014】
信号処理部13Bは、上記同様、各種演算・制御機器を内蔵し、受信部12Bからの検出信号に基づいて、信号処理部13Bから、後述するように上記疑似体験する者の感覚を刺激する予め定めた種類の環境変化を生じさせるための操作信号が出力される。
【0015】
出力機器14Bは、映写機36、スピーカ37、シャボン玉発生器34及び色彩変化可能なカラー発光する壁面38や天井39からなっている。そして、疑似体験する者が部屋の中を歩き回るのにしたがって、近くの近接センサ32が疑似体験する者を検出し、この検出信号に基づき壁面38や天井39の色彩が変化させられ、疑似体験する者が椅子33に座ると、上記感圧センサからの検出信号に基づき、そのときの衝撃に応じた音声がスピーカ37から発せられ、マイク35からの検出信号に基づき、マイク35の近くの話し声の大きさに応じてシャボン玉発生器34からシャボン玉が発生させられるようになっている。
【0016】
このように、疑似体験用環境形成システム1Bでは、本体構造部11B内における疑似体験する者の動作、特に複数の疑似体験する者同士の相互の動作に対応して種々の疑似体験用環境が生成され、疑似体験する者が自らの意思により、種々の雰囲気を体感することが可能となっている。
【0017】
本発明は上述した実施形態に限定されるものでなく、本体構造部は、例えば上部が開口したオープンスペースを形成する仕切り壁だけにより構成してもよく、ドーム形のものであってもよい。また、受信部として、上記以外に、例えばタッチセンサ、温度センサや各種スイッチ類を採用してもよく、疑似体験する者の動作を検出し、検出信号を出力し得るものであればよい。さらに、出力機器として、各種発光手段(ライトを反射するミラーボール、発光素子)、液晶等の表示パネル、スクリーン上に画像を映し出すプロジェクタ等が含まれ、上記出力機器は疑似体験する者の視覚を刺激し得るものであればよい。
【0018】
そして、上述した聴覚に関する各種の音、音楽、音声等、視覚に関する光の世界や風景等、触覚に関する微風、涼風、冷風、温風等の空気の流れや振動等、嗅覚に関する種々の芳香等の中から疑似体験する者に適した組合せを選択することにより最適な疑似体験用環境形成システムすればよく、本発明は上述した実施形態に限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態の概略を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1A,1B 疑似体験用環境形成システム
11A,11B 本体構造部
12A,12B 受信部
13A,13B 信号処理部
14A,14B 出力機器
21 感圧センサ
22 映写機
23 スピーカ
24 温度調節機
31 壁面
32 近接センサ
33 椅子
34 シャボン玉発生器
35 マイク
36 映写機
37 スピーカ
38 壁面
39 天井

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疑似体験する障害者が会話することができる人工的な疑似体験用環境状態となる空間を形成する本体構造部と、
この本体構造部内における疑似体験する障害者の話声の大きさに呼応して検出信号を出力する受信部と、
この受信部からの検出信号に基づいて、シャボン玉を発生させるための操作信号を出力する信号処理部と、
この信号処理部からの操作信号を受けて、話声の大きさに応じてシャボン玉を発生させるシャボン玉発生器とを備え、
疑似体験する障害者の自らの意志による話し声の大きさに応じてシャボン玉を発生させる疑似体験用環境形成システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−203083(P2007−203083A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38122(P2007−38122)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【分割の表示】特願2002−339090(P2002−339090)の分割
【原出願日】平成14年11月22日(2002.11.22)
【出願人】(395005491)五大エンボディ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】