説明

疾患のコンピュータ支援検出(CAD)

本発明は、例えばMRI又はCTのようなイメージングモダリティからの医用画像データセット20において、例えば肺腫瘍のような疾患のコンピュータ支援検出(CAD)を実施する方法に関する。最初に、解剖学的モデルを使用して医用画像データセット20のセグメント化を実施する。第2に、セグメント化されたデータが、疾患の特性に関して解析され、その結果、解析データの組25を生じさせ、最後に、解析データの組25が、疾患に関して評価される。これらのステップのうち少なくとも1つが、入力として、疾患に関する位置依存の蓋然性(P_r)を含む。本発明は、例えば肺のような患者の部分の特定領域における解析の程度が、当該領域における疾患の蓋然性のレベルにあわせて調整され又は適応されることができるので、より効果的な計算が実施可能であるという点で有利である。それによって、計算スピードを高めることが可能であり、ゆえに、癌、特に肺の癌結節のような疾患が、医用画像の解析からより効果的に見つけられることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンピュータトモグラフィ(CT)、磁気共鳴イメージング(MRI)、陽電子電子トモグラフィ(PET)、シングルフォトンエミッションコンピュータトモグラフィ(SPECT)、超音波走査、回転アンギオグラフィ及び他の医用イメージングモダリティのような医用イメージングモダリティから得られる医用画像データセットを解析する方法に関する。本発明は更に、対応するコンピュータシステム及び対応するコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータトモグラフィ(CT)又は磁気共鳴イメージング(MRI)等のモダリティを含む医用イメージングの範囲における進歩が、様々なタイプの疾患、特に癌腫瘍、の改善された検出を提供している。医用イメージングにおけるこの発展は、そこから堅実な診断結果を得るために、注意深く解析され評価されなければならない膨大な量の医用画像データをもたらしている。医用画像のこの解析フェーズは、例えば放射線医のような訓練された人員であっても非常に時間がかかることがありうる。医用イメージングの解析において訓練された専門家は、医用イメージング解析を、診断プロセスの可能性のあるボトルネックにする貴重な資源でもある。
【0003】
従って、放射線医が利用可能な医用画像データにおいて可能性のある疾患を見つけ識別することを支援するコンピュータ支援検出(CAD)の増加するニーズがある。CADシステムは、少なくとも今日、放射線医と置き換わることを意図するものではなく、画像解析の間、放射線医をサポートし又は案内することを意図するものであることが強調されるべきである。更に、CADを使用する利益は、ある疾患については疑問視もされるので、疾患に関してCADシステムを実現する際に大きな注意が払われるべきである。具体的には、CADシステムの適用前に、受信者動作特性(ROC)が良く理解され、好適には制御されるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
米国特許出願公開第2005/0200763号明細書は、CT画像の組の中で肺結節を検出し分類するコンピュータ支援方法を開示している。最初に、肺及び食道のセグメント化が、潜在的な肺結節を捜そうとするCT画像の領域を識別するために実施される。肺は、肺の左側及び右側を識別するように処理され、肺の各側は、上方、中央及び下方の小領域及び中心、中間及び周辺の小領域を含む小領域に分割される。コンピュータは、縦隔における又はその近傍における血管を表現する3次元血管樹を検出し識別するために、肺領域の各々を解析する。コンピュータは、肺壁又は血管樹に付随する対象を検出して、これらの対象が、潜在的な結節としての考慮から排除されないことを確実にする。その後、コンピュータは、潜在的な結節を検出するためにCT画像内の適当な領域においてピクセル類似性解析を実施し、潜在的な結節のフィーチャを使用して1又は複数のエキスパート解析技法を実施することにより、潜在的な結節の各々が肺結節であるか否かを判定する。その後、コンピュータは、各々の検出された結節を良性又は悪性のいずれであるか分類するために、1又は複数のエキスパート解析技法において例えば推測フィーチャ、成長フィーチャ等の他のフィーチャ使用し、可能性として、結節が、良性又は悪性の特定の蓋然性を割り当てられる。コンピュータは、放射線医が患者のCT検査を解釈するのを助けるために、検出及び分類結果を放射線医に表示する。
【0005】
しかしながら、この方法を実施するために、相対的に大きい計算能力が提供されなければならず、これは、開示されるCAD方法の拡張を制限しうる。計算能力は制限されているので、実際に機能するCADシステムを有するために必要な計算を簡略化する方法のニーズがある。
【0006】
米国特許出願公開第2005/0200763号明細書に開示される方法の別の不利益は、検出理論から知られる受信者動作特性(ROC)上の固定の動作ポイントである。更に、感度及び特定性の間の妥協が行われなければならないが、これは、偽陽性(FP)又は更に悪いことには偽陰性の不所望の高い数を生じさせることがある。
【0007】
それゆえ、医用画像データセットを解析する改善された方法が有利であり、特に、より効率的な及び/又は信頼性のある方法が有利である。
【0008】
従って、本発明は、好適には、上述の不利益の1又は複数を、単独で又は任意の組み合わせにおいて軽減し、緩和し又は除去することを追及する。具体的には、疾患の見込みに関する医用画像データセットの一層簡単な及び/又は一層高速な解析方法を提供することが、本発明の目的として理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、上述の目的及びいくつかの他の目的は、本発明の第1の見地において、医用画像データセットを解析する方法であって、
a)解剖学的モデルを使用して医用画像データセットをセグメント化するステップと、
b)疾患の特性に関してセグメント化されたデータを解析して、解析データの組を生じさせるステップと、
c)疾患に関して解析データの組を評価するステップと、を含み、
上述のステップa)、b)及びc)の少なくとも1つが、入力として、疾患に関する位置依存の蓋然性(P_r)を含む、方法を提供することによって達成されることが意図される。
【0010】
例えば肺のような患者の部分の特定領域の解析の程度が、当該領域内の疾患の蓋然性のレベルにあわせて調整され又は適応されることができるので、本発明は特に、これに限らないが、より効果的な計算が実施されることができることを簡便化する改善されたコンピュータ支援検出(CAD)方法を得るために有利である。こうして、本発明のアプリケーションによって、計算スピードを高めることが可能であり、それによって、癌、特に肺の癌結節、のような疾患が、医用画像解析からより効果的に見つけられることができる。
【0011】
本発明は、医用画像内の疾患構造のコンピュータ支援検出の特定部分の入力として、位置又は領域依存の蓋然性を利用する。位置依存の蓋然性は、医学ジャーナル、確立された医用統計、権限認可されたソフトウェア及び他の信頼性のあるソースから得られうる先験的な蓋然性である。1つの例は、J. J. Nigro他による「PREVALENCE AND LOCATION OF NODAL METASTASES IN DISTAL ESOPHAGEAL DENOCARCINOMA CONFINED TO THE WALL: IMPLICATIONS FOR THERAPY」(The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery Volume 117, Number 1)である。領域依存の蓋然性の利用は、あるCAD方法が、例えば肺結節のような医用画像内の疑わしい対象の評価ステップから、疑わしい対象が悪性であるか又は良性であるかの特定の蓋然性を結果又は出力として有するという事実と混同されるべきではない。例えば、米国特許出願公開第2005/0200763号明細書に開示されるCAD方法は、分類子ルーチンを使用して、肺の候補結節に悪性腫瘍の見込みを割り当てることができる。しかしながら、これは、方法の予備的な結果又は最終の結果であり、CADプロセスの間、後続の計算を簡略化するための入力として使用されるものではない。
【0012】
本発明のコンテクストにおいて、「疾患」なる語は、広く解釈すべきものであり、特に、検査された組織の異常な構造が悪性でない、すなわち異常な構造が良性でありうる状況を含むことも理解されるべきである。1つの例は、良性である腫瘍を見つけることでありえ、このような腫瘍もまた、本発明のコンテクストにおける「疾患」である。
【0013】
任意には、解剖学的モデルを使用して医用画像データセットをセグメント化するステップa)は、入力として、疾患に関する位置依存の蓋然性(P_r)を含むことができる。従って、セグメント化の解像度は、位置依存の蓋然性(P_r)のレベルに依存して、細かくてもよく又は粗くてもよい。具体的には、医用画像データセットの1又は複数の領域は、1又は複数の領域における疾患の位置依存の蓋然性(P_d)が予め決められた閾値以下であることにより、セグメント化されなくてよく、それによって、更なる処理及び計算を簡略化するために非常に低い蓋然性を有する領域を除外する。
【0014】
任意には、疾患の特性に関してセグメント化されたデータを解析して、解析データの組を生じさせるステップb)は、入力として、疾患に関する位置依存の蓋然性(P_r)を含むことができる。具体的には、位置依存の蓋然性(P_r)は、コンピュータ支援検出(CAD)方法又はアルゴリズムの受信者動作特性(ROC)の動作ポイントを変更するために利用されることができる。蓋然性(P_r)のレベルは、変更の方向を決定することができる。こうして、一実施例において、例えば特定性が、相対的に高いP_r領域において増大されるべきである場合、実施される解析の特定性が、疾患に関する位置依存の蓋然性(P_r)に依存して増大されることができる。代替例として、実施される解析の感度が、疾患の位置依存の蓋然性(P_r)に依存して増大されることができる。従って、相対的に低いP_r領域について、感度が、増大されることができる。
【0015】
任意には、疾患に関する解析データの組を評価するステップc)は、入力として、疾患に関する位置依存の蓋然性(P_r)を含むことができる。こうして、例えばベイジアンネットワークを使用する例えば結節の統計的な分類が、入力として、当該特定領域のP_rを有することができる。
【0016】
一実施例において、疾患は腫瘍でありえ、その場合、対応する位置依存の蓋然性(P_r)は、当該位置(P_r_tum)に腫瘍を有する蓋然性でありうる。その場合、腫瘍を有する位置依存の蓋然性(P_r_tum)は、腫瘍が悪性である蓋然性(P_r_tum_M)及び/又は良性である蓋然性(P_r_tum_B)と組み合わせられることができる。従って、例えば肺の腫瘍に関して蓋然性の2つのレベルが導入される。同様に、蓋然性の複数のレベルが、本発明の教示の範囲内で導入されることができる。
【0017】
好適には、疾患に関する位置依存の蓋然性(P_r)は、位置依存の蓋然性のリファレンスデータベースから得られることができる。データベースは、文献ソース、標準ワーク等に基づくことができる。データベースは、遠隔ベースであってもよい。可能性として、位置依存の蓋然性のリファレンスデータベースは、内部ファームウェアでありうる。
【0018】
一実施例において、疾患の位置依存の蓋然性(P_r)は、検査されている患者の特性にも依存しうる。従って、P_rは、年齢、性別、習慣(特に喫煙習慣又は他のリスク増加挙動)、及び特定の疾患を招く蓋然性を増大させる又は減少させることが知られている他の特性のような患者フィーチャに依存しうる。
【0019】
別の実施例において、疾患に関する位置依存の蓋然性(P_r)は、利用されているCAD方法に依存して疾患を見つける蓋然性(P_CAD)と組み合わせられることができる。CAD方法についてのこのような知識は、当該CAD方法に関する広範囲なテスト及び/又は経験を必要としうる。しかしながら、このような知識は、それが一旦利用可能になると、本発明のコンテクストにおいて相対的に容易に利用されることができる。
【0020】
更に別の実施例において、疾患に関する位置依存の蓋然性(P_r)は、医用画像データセットを得るために使用されるイメージングモダリティに依存して疾患を見つける蓋然性(P_IM)と組み合わせられることができる。これは、例えばCTにおけるビーム欠乏又は金属アーチファクト、又はMRIにおける動きエラーバンドに関する蓋然性等でありうる。
【0021】
好適な実施例において、疾患に関する1又は複数の位置依存の蓋然性(P_r)は、医用画像と共に、例えば放射線医のようなユーザに表示されることができる。ユーザに対するP_rの値の標示は、画面上で行われることができるが、それと組み合わせられ又はそこから導き出される値であってもよい。
【0022】
第2の見地において、本発明は医用画像データセットを解析するように構成されるコンピュータシステムであって、
解剖学的モデルを使用して医用画像データセットをセグメント化するセグメント化手段と、
疾患の特性に関してセグメント化されたデータを解析して、解析データの組を生じさせる解析手段と、
疾患に関して解析データの組を評価する評価手段と、を有し、
セグメント化手段、解析手段及び評価手段のうち少なくとも1つが、入力として、疾患に関する位置依存の蓋然性(P_r)を受け取るように構成される、コンピュータシステムに関する。
【0023】
第3の見地において、本発明は、データ記憶手段と接続された少なくとも1つのコンピュータを備えるコンピュータシステムが上述の方法を実施することを可能にするように構成されるコンピュータプログラム製品に関する。
【0024】
本発明のこの見地は、排他的ではないが特に、コンピュータシステムにダウンロードされ又はアップロードされるとき、コンピュータシステムが本発明の動作を実施することを可能にするコンピュータプログラム製品によって本発明が達成されることができる点で有利である。このようなコンピュータプログラム製品は、いかなる種類のコンピュータ可読媒体上に又はネットワークを通じて提供されてもよい。
【0025】
本発明の個別の見地は、各々、他の見地の任意のものと組み合わせられることができる。本発明のこれら及び他の見地は、記述される実施例を参照して以下の記述から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例についての組み合わせられたイメージングモダリティ及びコンピュータシステムの概略図。
【図2】本発明の一実施例による方法ステップの概略フローチャート。
【図3】受信者動作特性(ROC)グラフ。
【図4】偽陽性(FP)結節候補を示す患者の断面CT画像を示す図。
【図5】真の結節(TP)を示す患者の断面CT画像を示す図。
【図6】本発明による方法の概略フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のさまざまな見地は、添付の図面を参照してより詳しく記述される。図面は、本発明を実現する1つのやり方を示しており、添付の請求項の範囲内にある他の可能性のある実施例を制限するものとして解釈されるべきでない。
【0028】
図1は、本発明の一実施例についての組み合わせられたイメージングモダリティ及びコンピュータシステム1の概略図である。コンピュータシステム1は、例えばコンピュータトモグラフィ(CT)、磁気共鳴イメージング(MRI)、陽電子電子トモグラフィ(PET)、シングルフォトンエミッションコンピュータトモグラフィ(SPECT)、超音波走査及び回転アンギオグラフィ又は他の医用イメージングモダリティのような、医用イメージングモダリティIMから得られる医用画像データセット20からCADを実施するように構成される。モダリティIMからユニット12への送信は、専用の接続手段11(ショートレンジ又はおそらくインターネットを介するロングレンジ)を介し、又はワイヤレス送信によることができる。
【0029】
コンピュータシステム1のユニット12は、医用画像データセット20に対して疾患のコンピュータ支援検出(CAD)を実施するように構成される。セグメント化手段13は、好適には拡張されたモデルである解剖学的モデルを使用して、医用画像データセット20をセグメント化するために設けられる。医用イメージングのセグメント化に関する一般的な参照として、C. Xu, D. Pham及びJ.L. Princeによる「Medical Image Segmentation Using Deformable Models」(Handbook of Medical Imaging, Volume 2: Medical Image Processing and Analysis, pp. 129-174, edited by J.M. Fitzpatrick and M. Sonka, SPIE Press, May 2000)を参照されたい。その内容は、参照によって全体がここに盛り込まれるものとする。
【0030】
加えて、疾患の特性に関してセグメント化されたデータを解析する解析手段14がユニット12に設けられ、かかる解析は、その結果として、解析データの組25、すなわち疾患の候補、を生じさせる。更に、疾患に関して解析データの組25を評価する評価手段15が設けられる。解析データ25の評価は、ベイジアンネットワーク、人工の神経ネットワーク(ANN)、ファジー理論に基づくネットワーク等の当業者に利用可能な任意の種類のエキスパートアルゴリズムによって実施されることができる。
【0031】
本発明の原理を適用する際、セグメント化手段13、解析手段14及び評価手段15の少なくとも1つが、それらの処理への入力として、ユニット12内に示されるような疾患に関する位置依存の蓋然性P_rを受け取るように構成される。最終の及び/又は予備的な結果は、次いで、専用の接続手段16(ショートレンジ又はおそらくインターネットを介するロングレンジ)を介して又はワイヤレス送信によって、汎用ユーザインタフェース(UI)17に転送され、汎用ユーザインタフェース(UI)17において、放射線医又は同様に訓練された人員が、本発明によって提供される改善されたCADプロセスから利益を得ることができる。
【0032】
さまざまな可能性のあるアプリケーションについて、個別化された汎用患者モデル又はその見地が、レポーティング(例えば病巣ロケーション規定のための自動化された記述又はピクチャ生成)の検証のために又は簡便化のために、医学的に訓練されたユーザに示されることができる。場合によっては、局所的に可変の病巣蓋然性のような付随するメタ情報が、診断サポートのために臨床医に示されることができる。
【0033】
図2は、医用画像データセット20において疾患(悪性でない異常な構造も含む)のコンピュータ支援検出(CAD)を実施するための本発明の一実施例による方法ステップの概略フローチャートであり、データセット20は、上述したようにイメージングモダリティIMから得られる。検査下の患者に関連する解剖学的モデルを使用して医用画像データセット20をセグメント化した後、医用画像データセット20は、各領域が疾患に関連する位置依存の蓋然性P_rを有する該領域に分割されることができる。
【0034】
単に説明的な理由のため、図2における領域の数は4であり、領域20a、20b、20c及び20dはそれぞれ、関連する蓋然性P_a、P_b、P_c及びP_dを有する。当然ながら、領域の数は、利用できる蓋然性の数に適応されることができる;蓋然性の数がより高いほど、データセット20は、より細かく分割される。領域20dにおける蓋然性P_dが、予め決められた限界(例えば1%)以下であるとすると、セグメント化及び/又は任意の更なる解析及び評価に関して、この領域20dを破棄することが可能である。これは、図2の部分bに象徴的に示されており、領域20dに十字が引かれている。
【0035】
疾患の特性に関してセグメント化されたデータを解析する間、領域20dは、研究されず、その結果、CADプロセスの簡略化をもたらす。解析は更に、領域依存の蓋然性P_rに適応されることができる。従って、コンピュータ支援検出の内部パラメータは、一般に、これらの蓋然性に直接的に又は間接的に依存して、生成されることができる。更に、解析のためのメッシュ又はグリッドが、蓋然性に依存してより粗く及びより細かくなりうる。解析は、その結果として、解析データの組25、すなわち疾患の候補、を与える。図2において、これは、例えば腫瘍であり、丸として象徴的に示されているが、解析データ25の外観の形状は、当然ながら、いかなる種類であってもよい。
【0036】
図2の部分cに示される最後のステップにおいて、疾患に関する解析データの組25の評価が実施される。概して、評価は、所与の解析データ25について、疾患に関する陽性POS又は陰性NEGのいずれかでありうる。本発明によれば、候補25が見つけられた領域20b内での疾患に関する蓋然性P_bは、評価プロセスの入力として、能動的に使用される。従って、蓋然性P_bは、例えば、疾患に関する疾患候補25の評価のために使用されるベイジアンネットワークの1又は複数のノードにおいて、入力として使用されることができる。
【0037】
図3は、縦軸に感度SENS、横軸に1から特定性をマイナスしたもの1−SPECを有するバイナリ分類子システムの受信者動作特性(ROC)グラフであり、本発明は、特に、コンピュータ支援検出(CAD)方法の受信者動作特性300(ROC)を変更するのに適している。従って、位置依存の蓋然性P_rは、コンピュータ支援検出(CAD)アルゴリズムの受信者動作特性300(ROC)の現在動作ポイント303aを変更するために利用されることができる。従って、実施される解析の特定性SPECは、矢印302に沿って動作ポイントを移動させ、その結果、新しい動作ポイント303cを生じさせることによって、位置依存の蓋然性P_rに依存して増大されることができる。例えば特定の領域において疾患を見つける蓋然性P_rが高い場合、特定性が増大されることができる。
【0038】
代替例として、実施される解析の感度SENSは、矢印301に沿って動作ポイントを移動させ、その結果、更に別の動作ポイント303bを生じさせることによって、位置依存の蓋然性に依存して増大されることができる。従って、低いP_r領域の場合、感度は、増大されることができる。これは、CADアルゴリズムの内部パラメータを変更することによって実際に実現されうることに注意されたい。一般に、特定のCADアルゴリズムについて全体の曲線300をシフトすることは可能でない。従って、本発明は、ROC曲線300上の動作ポイント303aの変更の方向を提供することができ、本発明は、ROC曲線300自体を変更しない。
【0039】
図4は、偽陽性(FP)結節候補を(実線矢印によって示されるように)示す患者の断面CT画像である。純粋に幾何学的に、この偽陽性候補(縦隔からの肺門血管分岐)は塊のようにみえ、サイズもまた現実的である。これは、純粋な形状特徴によってではなく、例えば領域依存の蓋然性P_rの形の解剖学的な知識によってのみ除外可能であるFPのカテゴリでありうる。一般的な血管の位置及び大きさについての解剖学的な知識を使用して、このFPは、そのようなものとして検出されることができ、本発明の原理を使用して抑制されることができる。
【0040】
図5は、実線矢印によって示されるような真の結節(真陽性TP)を示す患者の断面CT画像であり、すなわち図4と比較して同様の幾何学的外観をもつ縦隔における真の結節/病巣の反例である。解剖学的モデルは、当該領域内の血管の見込みを予測しないので、真の結節の判定は、非疾患構造の蓋然性に関する本発明の変形例を使用して、より可能性が高くなるであろう。
【0041】
図6は、イメージングモダリティIM(図1参照)から得られる医用画像データセット20において疾患のコンピュータ支援検出(CAD)を実施する方法の概略フローチャートである。方法は、a)解剖学的モデルを使用して医用画像データセット20をセグメント化するステップと、b)疾患の特性に関してセグメント化されたデータを解析して、解析データの組25を生じさせるステップと、c)疾患に関して解析データの組25を評価するステップと、を含み、上記ステップa)、b)及びc)のうち少なくとも1つが、入力として、疾患に関する位置依存の蓋然性P_rを含む。
【0042】
本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はこれらの任意の組み合わせによって実現されることができる。本発明又はそのフィーチャのいくつかは、1又は複数のデータプロセッサ及び/又はデジタル信号プロセッサ上でランするソフトウェアとして実現されることもできる。
【0043】
本発明の実施例の個別の構成要素は、任意の適切なやり方で、例えば単一のユニットにおいて、複数のユニットにおいて又は別個の機能ユニットの一部として、物理的に、機能的に及び論理的に実現されることができる。本発明は、単一のユニットにおいて実現されることができ、又は異なるユニット及びプロセッサ間に物理的及び機能的に分布されることができる。
【0044】
本発明は特定の実施例に関連して記述されているが、提示された例に制限される任意のやり方にあるものとして解釈されるべきでない。本発明の範囲は、添付の請求項に照らして解釈されるべきである。請求項のコンテクストにおいて、「含む、有する」なる語は、他の可能性がある構成要素又はステップを除外しない。例えば「a」又は「an」等の言及は、複数性を除外するものとして解釈されるべきでない。図面に示される構成要素に関する請求項における参照符号の使用もまた、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。更に、それぞれ異なる請求項に記載される個別のフィーチャは、可能性として、有利に組み合わせられることができ、それぞれ異なる請求項でのこれらのフィーチャの言及は、フィーチャの組み合わせが可能であり有利であることを排除しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像データセットを解析する方法であって、
a)解剖学的モデルを使用して前記医用画像データセットをセグメント化するステップと、
b)疾患の特性に関して前記セグメント化されたデータを解析して、解析データの組を生じさせるステップと、
c)前記疾患に関して前記解析データの組を評価するステップと、を含み、
前記ステップa)、b)及びc)のうち少なくとも1つが、入力として、前記疾患に関する位置依存の蓋然性を有する、方法。
【請求項2】
前記ステップa)は、入力として、前記疾患に関する前記位置依存の蓋然性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記医用画像データセットの1又は複数の領域は、前記1又は複数の領域における前記疾患の前記位置依存の蓋然性が予め決められた閾値以下であることにより、セグメント化されない、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップb)は、入力として、前記疾患に関する前記位置依存の蓋然性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記位置依存の蓋然性は、コンピュータ支援検出の受信者動作特性の動作ポイントを変更するために利用される、請求4に記載の方法。
【請求項6】
実施される解析の特定性が、前記疾患に関する前記位置依存の蓋然性に依存して増大される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
実施される解析の感度が、前記疾患に関する前記位置依存の蓋然性に依存して増大される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップc)は、入力として、前記疾患に関する前記位置依存の蓋然性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記疾患は腫瘍であり、これに対応する前記位置依存の蓋然性は、当該位置に腫瘍を有する蓋然性である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記腫瘍を有する前記位置依存の蓋然性は、前記腫瘍が悪性である蓋然性及び/又は良性である蓋然性と組み合わせられる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記疾患に関する前記位置依存の蓋然性は、前記位置依存の蓋然性のリファレンスデータベースから得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記疾患に関する前記位置依存の蓋然性は、検査されている患者の特性に更に依存する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記疾患に関する前記位置依存の蓋然性は、適用されるCAD方法に依存して前記疾患を見つける蓋然性と組み合わせられる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記疾患に関する前記位置依存の蓋然性は、前記医用画像データセットを得るために使用されるイメージングモダリティに依存して前記疾患を見つける蓋然性と組み合わせられる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記疾患に関する1又は複数の前記位置依存の蓋然性が、医用画像と共にユーザに表示される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
医用画像データセットを解析するように構成されるコンピュータシステムであって、
解剖学的モデルを使用して医用画像データセットをセグメント化するセグメント化手段と、
前記疾患の特性に関して前記セグメント化されたデータを解析して、解析データの組を生じさせる解析手段と、
前記疾患に関して前記解析データの組を評価する評価手段と、を有し、
前記セグメント化手段、前記解析手段及び前記評価手段のうち少なくとも1つが、入力として、前記疾患に関する位置依存の蓋然性を受け取るように構成される、コンピュータシステム。
【請求項17】
データ記憶手段と接続された少なくとも1つのコンピュータを備えるコンピュータシステムが、請求項1に記載のコンピュータシステムを制御することを可能にする、コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−502682(P2011−502682A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533689(P2010−533689)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際出願番号】PCT/IB2008/054632
【国際公開番号】WO2009/063363
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】