説明

疾病の治療方法及び疾病治療用組成物

本発明は、対象中の疾患細胞を破壊するステップを具える対象を治療する方法及び組成物に関する。この方法は、対象から細胞集団を得るステップと、及び得られた細胞集団内で少なくとも1つの疾患マーカ遺伝子の活性を測定するステップとを含む。致死的ポリペプチドの発現が、予め確認された少なくとも1つの疾患マーカ遺伝子により調整されている場合に、細胞に致死的であるポリペプチドをコード化するポリヌクレオチド分子をこの細胞内に導入する。このポリヌクレオチドの導入後、この細胞を、疾患マーカ遺伝子を発現している細胞を破壊する致死的ポリペプチドの発現を誘発する条件で処理する。疾患細胞の破壊後、細胞を殺すに程度に致死的ポリペプチドを発現しない、残りの生きている細胞を死細胞から分離し、この生細胞を対象へ戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの疾病のマーカ遺伝子を発現している細胞中の致死ペプタイドの選択的発現をもたらすことによって対象中の疾患細胞を破壊するステップ含む対象を治療する方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、制御できない細胞増殖から生じる1群の疾病であり、難治性の痛みを引き起こし、米国だけで年に30万人以上の死をもたらしている。癌遺伝子(oncogene)は、一般的に言えば、癌細胞の増殖を促進する遺伝子である。癌の発生は、癌遺伝子の活性化と同時に増殖抑制遺伝子の不活性化に依存していると考えられている(非特許文献1)。癌遺伝子は、細胞増殖を促進する細胞性の癌原遺伝子(protooncogene)の変異した優性型であり、一方、腫瘍抑制遺伝子(suppressor gene)は、劣性であり、細胞増殖を正常に抑制する。
【0003】
化学療法剤での癌患者の治療が、依然として全身性疾患を治療する主たる方法であり、化学療法剤の用量強度と臨床応答率の間には、直接の関連がある。しかしながら、化学療法剤の用量の増加は、末梢骨随とリンパ系細胞性の同時破壊を伴う骨髄性造血前駆細胞の幅広い破壊を含む重大な副作用を示す。幹細胞の移植は、化学療法に続く造血系の回復を促進するために高用量化学療法剤と併わせて、しばしば用いられる。
【0004】
患者以外のドナーから幹細胞の移植である、同種の幹細胞移植が、しばしば用いられる。同種間での移植のプロトコールは、しかしながら、移植された細胞が患者自身の組織を攻撃するという、移植片対宿主病(GVD)に主として起因する高い死亡率を伴う。
【0005】
自己の幹細胞移植は、高用量化学療法の前に患者の幹細胞を単離し、引き続いて再注入するプロトコールである。自家移植は、GVDに伴う合併症を避けるが、幹細胞産物の中から腫瘍細胞の再注入をもたらすことがある。遺伝子マーキングの研究は、再注入した腫瘍細胞は、疾病の再発と乏しい臨床転帰の直接の原因となることがわかったので、腫瘍細胞の再注入は重要である。例えば、リンホーマ、白血病(リュウケミア)、乳癌、及び神経芽腫では、末梢血幹細胞トランスフォーメーションプロトコールにおいて、混入している腫瘍細胞の少なくともいくつかは、インビトロでコロニ形成して増殖する能力をもつ(非特許文献2)。
【0006】
自己幹細胞移植を行うときに、癌細胞の患者への再注入を避けるために、術者は、腫瘍細胞の混入した骨髄細胞を「一掃する」試みをする。腫瘍細胞混入幹細胞集団をエクスビボで一掃するための様々なアプローチが開発されている。例えば、細胞毒性薬剤、毒素、光線治療及び生物学的修飾因子を伴って、膜抗原に対するモノクローナル抗体の使用、或いは、細胞毒性薬剤の使用は、1〜3桁の割で腫瘍細胞の混入を減らすことができる(非特許文献3)。別のプロトコールでは、腫瘍細胞に向けられ、さらに放射性同位元素を結合した抗体を、腫瘍細胞を一掃する試みに使用している。細胞毒薬剤や放射能の使用は、前駆細胞が、しばしば、細胞表面タンパク質の同じ表現型を示すことがあるので、腫瘍細胞に特異的とは言えず、このような技術を用いることは、移植を遅らせることがある。一掃する効率は、はるかに低いが、CD34造血前駆細胞の選択は、腫瘍細胞の再注入を減少させるために用いられている。CD34ベースの選択のこのような方法は、腫瘍細胞がCD34抗原をしばしば発現するので十分な特異性がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許公開2004/185556
【特許文献2】米国特許出願第11/233,246
【特許文献3】国際公開WO2005/040336
【特許文献4】国際公開WO2005/116231
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Park,M.,“Oncogenes”in The Genetic Basis of Human Cancer(B.Vogelsteinら、編)pp.205−228(1998))
【非特許文献2】Rossら、Blood 82:2605−2610(1993)。
【非特許文献3】Seidenら、J.Infusional Chemotherapy6:17−22(1996)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
自家移植の対象とされた細胞集団から疾患細胞を特異性をもって除去する新しい方法の技術が求めれられている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、対象の疾患細胞を破壊することを含む対象を治療する方法及び組成物に関する。1つの態様では、その方法は、対象から細胞集団を得て、得られた細胞集団内で、少なくとも1つの疾病マーカ遺伝子の活性を測定することを含む。次いで、選択可能なマーカ及び致死ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子を、細胞内に導入する、ここで、致死ポリヌクレオチドの発現は、以前に同定された少なくとも1つの疾病マーカ遺伝子のプロモータにより調節されている。致死ペプチドは、細胞に対してそれ自身が致死であるか、又は細胞に対して致死である産物を産生するポリペプチドとして定義されている。ポリヌクレオチドの導入後、このポリヌクレオチドを含む細胞を得るための選択条件にこの細胞をさらし、次いで疾病マーカ遺伝子を発現している細胞を破壊する致死ポリペプチドの発現を誘導する条件でこの細胞を処理する。疾患細胞を破壊した後、この細胞を殺すに要する十分な致死ポリペプチドを発現していない残りの生きている細胞を死細胞から分離して、この生きた細胞を元の対象に戻す。
【0011】
本発明の1つの態様では、この細胞内へ導入されたこのポリヌクレオチドは、その細胞を対象に戻す前に除去される。別の態様では、対象へ細胞を戻す前に、ポリペプチドをこの細胞から除かない。これによって、疾病の再発の出現において戻された細胞の破壊がインビボでできる。
【0012】
本発明の別の態様は、異常状態の治療が求められている対象の治療を特徴づける方法に関し、その方法が、対象から細胞集団を得て、この細胞集団内で少なくとも1つのマーカ遺伝子の活性を測定するステップと、この疾病マーカ遺伝子の少なくとも1つのプロモータを単離するステップと、及び前記細胞に致死であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにプロモータを直接又は間接的に結合させることにより治療用ポリポリヌクレオチドを作り、選択的なマーカを更に含むベクタ中にそれを入れるステップと、を含む。この治療用ポリヌクレオチドが、細胞内に導入され、その細胞がこのポリペプチドを含む細胞を得るための選択的な条件にさらされ、致死ポリペプチドの発現を誘導する条件で処理(治療)され、それにより、疾病マーカ遺伝子を発現する細胞を破壊する。残っている生きた非疾患細胞は、次いで対象に戻す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の方法を用いた代表的な治療プロセスの作業フローの概略を示す図である。図1に示した方法は、ゲノムの組込、選択、及び殺細胞を含む。この構築物は、選択的にゲノムから切り離される。この図は、本発明の範囲内である、限定されない改良方法をも挙げている。ゲノムの組込の方法は(G1,G2又はG3)は、選択方法(S1、S2,S3)及び殺細胞(K1、K2、K3又はK4)の方法を組み合わせることができる。同様に、切除ができる成分がゲノム中に存在すれば、ゲノム切除の方法(E1、E2、E3)を選択することができる。
【0014】
【図2】図2は、本発明の治療用ポリヌクレオチドの1態様を示す図である。図2では、PE3−1遺伝子プログラムは、ゲノムの組込の選択/レポータ遺伝子である。PE3−2遺伝子プログラムは、例えば、DTAなどの致死遺伝子の発現を推進する疾病マーカ遺伝子プロモータである。PE3−3遺伝子プログラムは、Creなどのリコンビナーゼ等の発現の推進するTetOなどの誘導性プロモータである。PE3−4遺伝子プログラムは、rTTAなどのcDNAインデューサの発現を促進する恒常的プロモータである。PE3−ns遺伝子プログラムは、ターゲッティング効率を改良するために用いることができる負の選択/レポータ遺伝子である。矢頭シンボルは、Creなどのリコンビナーゼ酵素により認識されるloxPなどのcis制御配列を表す。円は、クロマチン修飾ドメイン(CMD)を含むポリヌクレオチド中の領域を示す。GIS−1及びGIS−2は、ゲノムの組込部位である。
【0015】
【図3】図3は、本発明の治療用ポリヌクレオチドの別の態様を示す図である。図3では、PE3−1遺伝子プログラムは、ゲノム組込選択/レポータ遺伝子である。PE−2及びPE−3遺伝子プログラムは、Rheo転写因子の2等分の1つの発現を推進する各疾病マーカ遺伝子プロモータである。PE3−4遺伝子プログラムは、DTAなどの致死ポリヌクレオチドの発現を推進するプロモータRheoである。Rheoプロモータは、リガンドの存在下で互いに結合する2つのサブユニットを含むRheo転写因子の存在を必要とする。Rheo転写因子のサブユニットの各々は、PE3−2及びPE3−3遺伝子プログラムの各々において発現している。PE3−5は、rTTAなどのcDNAインデューサの発現を推進する恒常的プロモータである。PE3−6遺伝子プログラムは、Creなどのリコンビナーゼの発現を推進するTetOなどの誘導性プロモータである。PE3−ns遺伝子プログラムは、標的効率を改善するために用いる負の選択/レポータ遺伝子である。矢頭シンボルは、Creなどのリコンビナーゼ酵素により認識されるloxPなどのcis制御配列を表す。円は、クロマチン修飾ドメイン(CMD)を含むことがあるポリヌクレオチド配列中の領域である。GIS−1とGIS−2は、ゲノムの組込部位である。
【0016】
【図4】図4は、本発明の治療用ポリヌクレオチドの別の態様を示す図である。図4では、PE3−1遺伝子プログラムは、ゲノム組込選択/レポータ遺伝子である。PE3−2遺伝子プログラムは、DTAなどの致死ポリペプチド発現を推進する疾病マーカ遺伝子プロモータである。PE3−3遺伝子プログラムは、致死遺伝子の発現を促進する疾病マーカ遺伝子プロモータである。このプロモータと致死ポリペプチドは、PE3−2遺伝子プログラム中のプロモータ及び致死ポリペプチドとは、同一であるか又は異なっている。PE3−4遺伝子プログラムは、rTTAなどのcDNAインデューサの発現を推進する恒常的プロモータである。PE3−5遺伝子プログラムは、Creなどのリコンビナーゼの発現を推進する、TetOなどの誘導性プロモータである。PE3−ns遺伝子プログラムは、標的効率を改良するために用いることのできる負の選択/レポータ遺伝子である。矢頭シンボルは、Creなどのリコンビナーゼ酵素により認識されるloxPなどのcis制御配列を表す。円は、クロマチン修飾ドメイン(CMD)を含むことがあるポリヌクレオチド配列中の領域を表す。GIS−1とGIS−2はゲノムの組込部位である。
【0017】
【図5】図5は、本発明の治療用ポリヌクレオチドの1態様を示す図である。図5において、PE3−1遺伝子プログラムは、ゲノム組込選択/レポータ遺伝子である。PE−3−2遺伝子プログラムは、DTAなどの致死ポリペプチドの発現を推進する疾患マーカ遺伝子プロモータである。PE3−3遺伝子プログラムは、rTTAなどのインデューサcDNAの発現を推進する恒常的プロモータである。PE3−4遺伝子プログラムは、リコンビナーゼの発現を推進するTetOなどの誘導性プロモータである。PE3−5遺伝子プロモータは、前駆細胞の脱分化を促進する因子の発現を推進する恒常的プロモータである。PE3−ns遺伝子プログラムは、標的効率を改善するために用いることができる負の選択/レポータ遺伝子である。矢頭シンボルは、Creなどのリコンビナーゼ酵素により認識されるloxPのなどのcis−制御配列を表す。円は、クロマチン修飾ドメイン(CMD)を含むことができるポリヌクレオチド配列中の領域を示す。GIS−1とGIS−2はゲノムの組込部位である。
【0018】
【図6】図6は、本発明の治療用ポリヌクレオチドの1態様を示す図である。図6では、PE3−1遺伝子プログラムは、恒常プロモータの制御下の、neo選択遺伝子である。PE3−2遺伝子プログラムは、rTTAなどのインデューサcDNAの発現を推進する疾病マーカ遺伝子プロモータである。PE3−3遺伝子プログラムは、DTAなどの致死ポリペプチドの発現を推進するTetOなどの誘導性プロモータである。円は、クロマチン修飾ドメイン(CMD)の存在を含むことができるポリヌクレオチド配列中の領域を示す。
【0019】
【図7】図7は、本発明の治療用ポリヌクレオチドの1態様を示す図である。図7では、PE3−1遺伝子プログラムは、前駆細胞−特異的プロモータにより推進された、neoなどのゲノム組替セレクタである。PE3−2プログラム遺伝子は、rTTAなどのインデューサcDNAの発現を推進する疾患マーカ遺伝子プロモータである。PE3−3遺伝子プログラムは、DTAなどのキラー遺伝子の発現を推進する、TetOなどの誘導性プロモータである。PE3−4遺伝子プログラムは、RheoCept(登録商標)などのcDNAの第二インデューサの発現を推進する恒常的プロモータである。PE3−5遺伝子プログラムは、この構築物を削除するための、Creなどのリコンビナーゼの発現を推進するRheoSwitch(登録商標)などの誘導性プロモータである。矢頭シンボルは、loxP部位などのリコンビナーゼ酵素により認識されるcis制御配列を示す。円は、クロマチン修飾ドメイン(CMD)の存在を含むことができるポリヌクレオチド配列中の領域を示す。
【0020】
【図8】図8は、本発明の治療用ポリヌクレオチドの1態様を示す図である。図8では、PE3−1遺伝子プログラムは、幹細胞プロモータにより推進されるゲノム組込選択遺伝子である。PE3−2遺伝子プログラムは、rTTAなどのcDNAインデューサの発現を促進する疾患マーカ遺伝子プロモータである。PE3−3遺伝子プログラムは、酵素ベースの基質のチミジンキナーゼなどのキラー遺伝子の致死転換(lethal conversion)を推進するTetOなどの誘導性プロモータである。PE3−ns遺伝子プログラムは、標的効率を改善するためにサイトシンデアミナーゼ(CDA)又はジフテリア(DTA)の発現を推進する恒常的プロモータなどの負の選択(セレクタ)遺伝子である。円は、クロマチン修飾ドメインの存在を含むことができるポリヌクレオチド配列中の領域を示す。GIS−1とGIS−2はゲノムの組込部位である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、対象における疾患細胞を破壊するステップを含む対象を治療する方法及び組成物に関する。この方法は、対象から細胞の集団を得て、得られた細胞集団内で少なくとも1つの疾患マーカ遺伝子の活性を測定するステップを含む。この細胞にとって致死的であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子が、次いで細胞に導入される。ここでは、致死ポリペプチドの発現が、以前に同定された疾患マーカ遺伝子の少なくとも1のプロモータにより制御されている。ポリヌクレオチドの導入後、この細胞を、致死ポリペプチドの発現を誘導する条件で処理し、この疾患マーカ遺伝子(単数/複数)を発現している細胞を破壊する。疾患細胞の破壊後、細胞を殺すのに必要な程度の致死ポリペプチドを発現しないで残っている生細胞を死細胞から分離し、この生細胞をこの対象に戻す。
【0022】
本発明の1態様では、細胞に導入したポリヌクレオチドは、対象に細胞を戻す前に除かれる。別の態様では、対象に細胞を戻す前に、ポリヌクレオチドを細胞から除かない。これによって、この疾患の再発が出現したインビボで再導入した細胞の破壊が可能となる。
【0023】
本明細書で用いたように、「疾患細胞」は、代謝、組織学、増殖速度、有糸分裂速度、又は表現型のいずれかで異常である1つの細胞又は複数の細胞を意味する。本明細書で用いたように、細胞との関連での用語「表現型」は、特定の組織又は器官からの細胞が正常に発現するタンパク質の集合を意味する。例えば、個々に単離された細胞の表現型は、細胞表面抗原である、分化の集団(CD因子)などの表面マーカの存在又は不存在に基づいて評価し分類することができる。細胞の表現型は、一般的には、細胞が発現するか又は含むタンパク質の集合体であると考えられているが、所定の集団又はサブ集団中に細胞を適宜分類するか、又はその表現型を評価するためには、1つのタンパク質の存在又は非存在を単に決定すれば十分である。したがって、本明細書で用いたように、用語「表現型」は、少なくとも1つのタンパク質又はその部分の存在又は不存在に基づいて、細胞が属する特定の集団又はサブ集団を意味するために用いられる。例えば、本発明の特定の態様は、末梢血及び骨髄中に正常に見られるCD34細胞を単離することを含む。この例に続いて、単離した所定の細胞の集団又はサブ集団の表現型は、CD34陽性(CD34)又はCD34陰性(CD34)として単に提示することができる。もちろん、本発明の方法は、所与の細胞の集団又はサブ集団に細胞を分類するための1つ以上のタンパク質の存在又は非存在を決定することも意図する。細胞の表現型を分類するために用いられるCDタンパク質の例としては、限定されないが、CD3、CD38、CD59、CD49、CD54、CD61(ビトロネクチン受容体)、CD71、CD73(SH3)、CD90(Thy−1)、CD105(SH2)、CD117、CD133、CD144及びCD166などを挙げることができる。その他のタンパク質も所与の細胞又は細胞集団の表現型を決定するために用いることができる。細胞の表現型を分類に用いられるその他のタンパク質の例には、限定されるものではないが、OCT4、cdx2及びSox2などの転写因子;胎盤ABCトランスポータ(ABC−p)などのトランスポータタンパク質;ケラチン硫酸関連抗原などの他の細胞表面抗原;TRA−1−60,TRA−1−81,Thy−1;SSEA−1、SSEA−2、SSEA−3及びSSEA−4などのステージ特異的胚性抗原(SSEAs)などを挙げることができる。細胞の表現型を分類するために用いるタンパク質のさらなる例としては、線維芽細胞成長因子(FGF)、形質転換成長因子−α(TGFα)、形質転換成長因子−β(TGFβ)、アクチビンIIa、及び骨形成タンパク質(BMP)、並びに、クラスI、クラスIIMHCタンパク質などの主要組織適合性複合体タンパク質を挙げることができる。細胞の表現型を同定するために用いることができるさらなるマーカの例としては、CK(サイトケラチン)9、CK19、pdx−1、ネスチン、Pax−6、Nkx2.2、神経フィラメント、タウ、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、神経フィラメントタンパク質(NF)、微小管付随タンパク質2(MAP2)、MAP2キナーゼ、神経膠線維酸性蛋白(GFAP)、及びサイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼなどを挙げることができる。加えて、細胞の表現型を評価又は分類するためにタンパク質全体ではなく、タンパク質の部分又はドメインの存在又は非存在を検出することもできる。例えば、あるタンパク質は、その存在又は不存在がSH2又はSH2などの細胞の表現型を評価又は分類が十分にできる、SH1、SH2、SH3,SH4などのsrc−相同ドメイン(SH)を含むことがある。上記に開示したように、細胞の表現型は、特定のタンパク質の欠如により評価又は分類することもできる。
【0024】
細胞の表現型を同定する方法は、限定されないが、抗CD34抗体などの抗原特異的抗体を用いた標準的な免疫組織学的技術を含む。細胞の表現型を評価又は分類するその他の方法は、限定されないが、ウエスタンブロッティング、ノザンブロッティング等の標準的なブロッティング技術、及び、逆転写−PCR(RT−PCR)などのポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を含む。事実、RT−PCRなどのmRNAを測定又は検出する評価などの間接法を用いて、細胞の表現型評価又は分類を行うことができる。細胞の表現型を評価又は分類するさらなるその他の方法には、マイクロアレイ技術及びフローサイトメトリ技術が含まれる。表現型に基づいて細胞を選別するために有用なフローサイトメトリー技術の例が、Practical Flow Cytometry,3rd Edition,Wiley−Liss,Inc.(1995)に開示されており、それは、参照により本明細書に取り込まれている。
【0025】
疾患細胞は、例えば、同じ源(ソース)又は組織から取り出した他の細胞に比べて異常な表現型である。例えば、造血幹細胞は、CD34及びCD59を正常に発現するが、胸腺細胞、ヘルパーT細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞、樹状細胞、又は顆粒球では正常に発現されるCD4を発現しない。CD34、CD59及びCD4を発現する造血幹細胞は、本発明の目的のためには、例えば、細胞が患っているなどの異常な表現型をもつと考えられる。1つの態様では、この細胞は、造血幹細胞を含んでおり、ここではこの造血幹細胞の少なくとも一部が疾患細胞である。
【0026】
幹細胞のその他の例は、限定されないが、肝幹細胞、乳腺幹細胞、膵臓幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、及び胚性幹細胞を含む。幹細胞は、多能性であることもあるが、多能性でないこともある。「多能性細胞(pluripotent)」は、多能性細胞、多分化能細胞(multipotent)、オリゴポテント(oligopotent)細胞、及びユニポテント(unipotent;分化単能)細胞に分化することができ、又は、それらを生じることができる、細胞及びそれらの子孫を含む。多分化能細胞に由来する成熟細胞型又は部分的に成熟した細胞型が、特定の組織、器官又は器官系に限定されている場合を除き、「多分化能細胞」は、多分化能細胞、オリゴポテント細胞、ユニポテント(分化単能)細胞、及び/又は1又はそれ以上の成熟細胞型又は部分的な成熟細胞型に分化することができ、又は、それらの細胞を生じることができる、細胞又はそれらの子孫を含む。本明細書で用いたように、「部分成熟細胞」は、同一の器官又は組織からの成熟細胞の、形態又はタンパク質発現などの表現型の少なくとも1つの特徴を発現する細胞である。例えば、多分化能造血前駆細胞及び/又はその子孫は、1又はそれ以上のタイプの骨髄性前駆細胞及びリンパ性前駆細胞などのオリゴポテント細胞に分化することができ、又はそれらを生じ、また、血液中で正常に見られる他の成熟した細胞性成分をも生じる能力をもつ。「オリゴポテント細胞」は、成熟細胞又は部分成熟細胞に分化する能力が、多分化能細胞より、より制限されている細胞とその子孫を含む。オリゴポテント細胞は、しかしながら、オリゴポテント、及びユニポテント細胞、及び/又は所与の組織、器官、又は器官系の1又はそれ以上の成熟細胞又は部分成熟細胞へ分化する能力を有する。オリゴポテント細胞の1例は、成熟した又は部分的に成熟した、赤血球、血小板、好塩基球、好酸球、好中球及び単核球を最終的に生じる骨随性前駆細胞である。「分化単能(ユニポテント)細胞」は、その他の分化単能(ユニポテント)細胞、及び/又は、成熟細胞又は部分成熟細胞型のうちの1つの型に、分化し又はこれを生じる能力を有する細胞及びそれらの子孫を含む。本明細書で用いているように、用語「前駆細胞」は、少なくとも部分成熟細胞に分化することができるが、培地中で無限の自己複製能力を欠く細胞又はそれらの子孫の意味に用いられる。本明細書で用いたように、「前駆細胞」は、多能性細胞、多分化能細胞、オリゴポテント細胞、又は分化単能(ユニポテント)細胞であってもよい。
【0027】
本発明の方法は、治療を必要としている対象から細胞集団を得るステップを含む。本明細書で用いられているように、用語「対象」は、用語「患者」と区別なく用いられ、動物を意味するために用いられ、特に、哺乳類及びより特別には、ヒト以外の又はヒト霊長類を意味する。
【0028】
本明細書に用いているように、細胞との関連で用いるときは、用語「得る」は、対象から細胞を取り出すあらゆるプロセスを意味している。細胞は、細胞を対象から得るとき、単離又は精製する必要はない。細胞は、対象の体液(例えば、血液、血清、尿、唾液、脳脊髄液)又は、対象の組織サンプルから(例えば、ビオプシー、骨髄穿刺液)から得ることができる。細胞を得ると、次いで、所望の細胞を単離することができる。
【0029】
本明細書で用いているように、用語「単離された」または「単離されている」またはその変形は、細胞又は細胞集団との関連で用いる場合、細胞又は細胞の集団が、周囲の分子の大多数から分離され、及び/又は、この細胞又は複数の細胞が生物学的系(例えば、骨髄)に関連する場合、この細胞又は複数の細胞を取り巻き、存在している物質から分離されることを意味する。水、塩、及び緩衝液などの物質の濃度は、細胞が「単離」されたかどうかを決めるとき、考慮されない。したがって、用語「単離される」は、特定の表現型の精製された細胞集団を意図するものでも、指摘するものでなく、また、残骸、生きていない細胞、又は異なる表現型の細胞を全体的に除いた細胞の集団を意味するものでもない。細胞を単離する方法は、本明細書に記載された発明の範囲を限定するべきではない。例えば、細胞は、フローサイトメトリまたは細胞の表現型を引き出すその他の方法などの周知の方法を用いて単離することができる。細胞を単離するその他の方法は、治療用構築物が含むことがあるポジティブまたはネガティブセレクタの使用を含み、この細胞は、治療用ポリヌクレオチドを細胞内へ導入する前又は後に細胞を単離することができる。したがって、1つの態様では、構築物は、当初得られたその他の細胞から所望の細胞を「単離する」ために用いることができるポジティブセレクタを含むことができる。本明細書で用いているように、用語「精製した」は、細胞又は細胞の集団との関連で用いるときは、この細胞又は複数の細胞が、生物学的システムと関連している場合、この細胞又は複数の細胞を正常に取りまく実質的にすべての物質から分離されることを意味する。「精製された」は、精製されている単離された細胞に近接している細胞及び/又は物質に関する状態の変化に基づいた相対的な用語である。したがって、少なくとも細胞破片、生育できない細胞、異なる表現型の細胞、又は細胞、又は、タンパク質及び/又は炭水化物などの分子が、単離後に洗浄又はさらなる処理により除去されていても、単離された造血細胞は、精製されていると考えている。用語「精製された」は、除去するべきことを意図している全ての物が、精製されている細胞から除去されていることを意味するために使用していない。したがって、いくらかの混入物が、精製されている細胞に存在することもある。
【0030】
1つの態様では、少なくとも1つの疾患マーカ遺伝子の活性は、細胞を得た後に決定する。別の態様では、少なくとも1つの疾患マーカ遺伝子の活性を、細胞を得る前に決定する。したがって、一組の疾患マーカの遺伝子の活性が、既に確立している場合、この疾患または異常状態が典型的な兆候又は疾患のマーカ又は異常状態を対象が示すときは、1又はそれ以上の疾患マーカ遺伝子の活性を仮定するか又は推測することができる。本明細書で用いているように、疾患マーカ遺伝子は、その遺伝子発現レベルを、疾患又は異常状態の評価、診断または診断の補助をするために用いることができる遺伝子を意味することを意図している。疾患マーカ遺伝子は、疾患細胞でのみ発現する遺伝子及び正常細胞で発現するが、疾患細胞では異常レべルで発現する遺伝子を含む。疾患マーカ遺伝子の最もよく知られている例は、癌遺伝子であるが、しかし本発明の方法は、癌遺伝子に限定されない。癌遺伝子の種類の例としては、限定されないが、成長因子、成長因子受容体、プロテインキナーゼ、プログラム化された細胞死制御因子及び転写因子を含む。癌遺伝子の特別な例としては、限定されないが、sis、erb B、erb B−2、ras、abl、mycおよび、bcl−2およびTERTをあげることができる。他の疾患マーカ遺伝子の例としては、腫瘍関連抗原遺伝子及び疾患細胞(例えば、MAGE−I、癌胎児性抗原、 チロシナーゼ、前立腺特異抗原、前立腺特異的膜抗原、ρ53、MUC−I、MUC−2、MUC−4、HER−2/neu、T/Tn、MART−I、gpl00、 GM2、Tn、sTn、及びトムソンフレンデンリッヒ(Thompson−Friedenreich)抗原(TF))で過剰発現している他の遺伝子をあげることができる。
【0031】
一度、疾患マーカ遺伝子が決定されると、これらの疾患マーカ遺伝子のプロモータは、治療用ポリヌクレオチドに分類される。本明細書で用いているように、用語「治療用ポリヌクレオチド」は、疾患細胞を破壊する目的で細胞集団に導入されるポリヌクレオチドを意味する。1つの態様では、細胞にとって致死的であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの部分に、操作可能に結合するように、このプロモータをこのポリヌクレオチドに挿入している。それゆえ、この方法は、この疾患細胞が最終的に自身で破壊するように、この疾患細胞の異常活性を活用している。本明細書で用いた「操作可能に結合した」は、核酸発現制御配列(プロモータ、又は転写因子結合部位など)と第二の核酸配列の間の機能的な結合を意味し、この発現制御配列は、第二配列に対応する核酸の転写を指示する。別の態様では、このプロモータは、致死ポリペプチドの発現に間接的にリンクしている。例えば、この疾患マーカプロモータは、この致死ポリペプチドをコード化しているポリヌクレオチドに操作可能に結合している第二プロモータを活性化する転写因子に操作可能に結合することができる。
【0032】
用語「プロモータ」は、ここでは、この技術分野で用いているままに用いている。すなわち、遺伝子配列の転写を開始するRNAポリメラーゼを結合させるDNA領域をいう。プロモータ領域を含む、多くの疾患マーカ遺伝子の配列が、この技術分野で公知であり、GenbBankなどの公のデータベースで入手できる。したがって、得られた細胞中で、又は単離された細胞中で疾病マーカ遺伝子が同定されると、このプロモータ配列を容易に同定して、得ることができる。本発明の別の態様は、そのプロモータが単離され治療用ポリヌクレオチドに分類することができる疾患マーカ遺伝子を同定することに向けられている。このプロモータが単離され、引き続いてその周辺又は環境で用いることができるという条件ならば、疾患マーカ遺伝子の同定は、本発明の特別な態様に対して不可欠ではない。本発明は、未だ同定されていない疾患マーカ遺伝子からのプロモータの使用を含む。一度、新規な疾患マーカ遺伝子が同定されると、プロモータ機能に必要な遺伝子配列を決定するためのルーチン技術又は試験の問題となり得る。事実、対象遺伝子のプロモータ領域の決定を補助するいくつかの商業上入手できるプロトコールがある。一例として、Dingらは、最近、新規なSprouty4遺伝子のプロモータ配列を(Am.J.Physiol.Lung Cell.MoI.Physiol.,287:L52−L59(2004)これは、参照により本明細書に取り込まれている。)、Sprouty4遺伝子の5’隣接配列を徐々に削除することにより解明した。簡潔にいえば、一度、転写開始部位が決定すると、一方向性手法により5’隣接セグメントに接近するセグメントに対し共通するPCRプライマを用いて、PCRフラグメントが生じる。生成したセグメントは、ルシフェラーゼレポータベクタ内でクローン化し、ルシフェラーゼ活性を測定して、ヒトSprouty4遺伝子のプロモータ領域を決定した。
【0033】
疾患マーカ遺伝子プロモータを獲得し、確認するプロトコールの別の例は、次のステップを含む:(1)同様の/同一の組織タイプの癌性及び非癌性細胞を得るステップ;(2)このサンプルからの全RNA又はmRNAを単離するステップ;(3)癌性及び非癌性RNAの様々なマイクロアレイ分析を行うステップ;(4)癌‐特異的な転写候補を同定するステップ;(5)癌‐特異的な転写に関連するゲノム配列を同定するステップ;(6)癌特異的転写の予期される転写開始部位の上流又は下流のDNA配列を獲得するか又は合成するステップ;(7)ステップ6からの様々の長さのDNAを用いて、プロモータレポータベクタをデザインし、作製するステップ;(8)癌性及び非癌性細胞/組織、並びに、無関係の細胞/組織でプロモータレポータベクタを試験するステップ。
【0034】
治療用ポリヌクレオチドへ挿入されるプロモータの源は、天然又は合成であることができ、このプロモータの源は、本明細書に記載した発明の範囲を限定しない。言い換えれば、このプロモータは、得られた又は単離された細胞から直接クローン化することができ、又はこのプロモータは、予めクローン化されたものでもよく、又はこのプロモータは、様々な源からクローン化されたものでもよく、又は合成されたものでもよい。
【0035】
1つの態様では、そのポリペプチド自体が致命的であるため又はそのポリペプチドが致命的な化合物を産生するために、このプロモーターは、発現するときに、そのポリペプチドを発現する細胞に対し致命的であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに操作可能に結合する。本明細書で使用したように、細胞に致命的であるポリペプチドは、限定するものではないが、壊死、アポトーシス、及び細胞毒を含むあらゆる形で、細胞死を誘発するポリペプチドも含む。細胞にとって致命的であるポリペプチドの例は、限定されないが、p53、Rb及びBRCA−1などの癌抑制遺伝子を含むアポトーシス、数例を挙げると、ジフテリア毒素(DTA)、シゲラ神経毒素、ボツリヌス毒素、テタヌス毒素、コレラ毒素、CSE−V2及びサソリタンパク毒素のその他の変異体などの毒素、及び、サイトシンデアミナーゼや、チミジンキナーゼなどの自殺遺伝子、及び腫瘍壊死因子、インターフェロン−αなどの細胞毒遺伝子を含む。このたんぱく質が発現した細胞に致死的であり得るという条件ならば、本発明は、致死タンパク質の同定に限られるものではない。
【0036】
別の態様では、疾患マーカ遺伝子プロモータは、致死ポリペプチドの発現に間接的に関連している。1つの態様では、疾患マーカ遺伝子プロモータが、転写因子をコードするポリヌクレオチドに操作可能に結合しており、かつ、致死ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、転写因子により活性化されるプロモータに操作可能に結合している。この転写因子は、各々のリガンド(グルココルチコイド、エストローゲン、プロゲスチン、レチノイド、エクジソン、及び、それらのアナログ及び類似体)により活性化されるステロイド受容体スーパファミリーの員、又は、テトラサイクリンにより活性化されるrTTA、などのリガンドの存在下でのみ転写を活性化するリガンド−依存性転写因子であり得る。転写因子は、自然に生じるポリペプチド又は、2つ以上の異なる転写因子からのドメインを含むキメラポリペプチドである。例えば、リガンド結合ドメイン、転写促進ドメイン、及びDNA結合ドメインが、2又はそれ以上の異なる転写因子から得た各々であり得る。1つの態様では、転写因子は、存在するリガンドの量により厳しく制御されている。別の態様では、転写因子のドメインは、別々のポリペプチドを発現し、この2つのポリペプチドが互いに2量体になるとき(リガンドが存在する)にのみ、転写の活性化が起こる。このようなシステムの1例は、キメラエクジソン受容体システムであり、米国特許第7,091,038号、米国出願公開2002/0110861、2002/0119521、2004/0033600、2004/0096942、2005/0266457、及び、2006/0100416、及び、国際公開WO01/70816、WO02/066612、WO02/066613、WO02/066614、WO02/066615、WO02/29075、及び、WO2005/108617、に記載されており、各々参照により全内容が本明細書に取り込まれている。非ステロイド性エジクソンアゴニスト制御システムの例は、レオスイッチ(登録商標)誘導性哺乳類発現システム(RheoSwitch(登録商標)Mammalian Inducible Expression System(New England Biolabs,Ipswich,MA)である。
【0037】
治療用ポリペプチドを細胞に導入するために、選択したプロモータと、致死ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクタを使用することができる。このベクタは、例えば、プラスミドベクタ、シングル又はダブルストランドファージベクタ、又はシングル又はダブルストランドRNA又はDNAウイルスベクタであり得る。このようなベクタは、周知の技術によりDNA及びRNAを細胞内へ導入することができる。ウイルスベクタは、複製可能であるか又は複製能が欠損したものでもよい。後者の場合では、ウイルス増殖は、一般的には補完宿主細胞でのみ生じる。本明細書で用いるように、「宿主細胞」又は「宿主」は、1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドを抱えもつ本発明の細胞を意味する。
【0038】
したがって、このベクタは、疾患マーカ遺伝子からのプロモータ及び致死ポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドを含んでいなければならない。ベクターのその他の構成要素は、限定されないが、選択可能なマーカ、クロマチン修飾ドメイン、及び、ベクタ、ゲノム組込部位、組換部位、及び分子挿入中心点(molecular insertion pivot)上に存在し得るその他のポリペプチドの発現を推進する更なるプロモータを含むことができる。ベクタは、構築物を、所望の治療方法の特定の目的に仕立てることができるように、これらの追加の要素をいくつ含んでいてもよい。
【0039】
本発明の1つの態様は、細胞に導入するベクタは、本発明の治療用構築物が宿主細胞のゲノムへ組み込まれたことを、発現時に示す、選択可能なマーカ遺伝子をさらに含む。このように、選択遺伝子は、ゲノムへの組込にポジテイブマーカであり得る。本発明の方法に不可欠ではないが、 選択遺伝子の存在により、医療実務家は、ベクタ構築物が細胞のゲノムへ組込まれている生きている細胞集団を選択できる。したがって、本発明のある態様では、ベクタがうまく組み込まれている細胞を選択するステップを含む。本明細書で用いたように、用語「選択」またはその変形は、細胞との関連で用いるときは、特定の遺伝子の作製又は表現型をもつ細胞を選択する標準的で周知の方法を意味することを意図する。典型的な方法は、限定されないが、G418、ネオマイシン、アンピシリンなどの抗生物質の存在下で細胞を培養するステップを含む。選択できるマーカ遺伝子その他の例は、限定されないが、ジハイドロフォレイトレダクターゼ、ハイグロマイシン、又はミコフェノール酸に対する耐性を付与する遺伝子を含む。その他の選択方法は、限定されないが、選択剤として、チミジンキナーゼ、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ及びアデニンスホリボシルトランスフェラーゼの使用が可能な選択可能なマーカ遺伝子を含む。抗生物質耐性遺伝子(単数又は複数)を含むベクタ構築物を含む細胞は、培養において抗生物質耐性であり得るであろう。同様に、抗生物質耐性遺伝子を含むベクタ構築物を含まない細胞は、培養で抗生物質耐性になり得ないであろう。
【0040】
本明細書で用いたように、「クロマチン修飾ドメイン」(CMD)は、限定されないが、DNAインシュレータなどのクロマチン構造の維持及び/又は改変に関する様々なタンパク質と相互作用するヌクレオチド配列を意味する。Ciavatta,D.,らの文献、Proc.Nat‘I Acad.Sci.U.S.A.,103(26):9958−9963(2006)を参照されたい。これは参照により本明細書に取り込まれている。CMDの例は、限定されないが、チキンβグロブリンインシュレータ、及び、チキン高感受性領域4(cHS4)を挙げることができる。1以上の遺伝子プログラム間での様々なCMD配列の使用は、例えば、様々な微生物、又は多重遺伝子及び一遺伝子シャトルベクタ間で「SWAP(交換)」遺伝子プログラムのインビトロ組換え技術との組み合わせた「ミニホモロジーアーム」としての様々のCMD DNA配列の使用を促進することができる。クロマチン修飾ドメインのその他の例は、この技術分野で公知であるか、又は容易に確認することができる。
【0041】
本発明で用いる特定のベクタは、タンパク質又はその一部をコードする発現ベクタである。一般的には、このようなベクタは、発現すべきポリヌクレオチドに操作可能に結合している宿主で有効に発現するシス作用制御領域を含む。適切なトランス作用因子は、宿主により供給されるか、相補するベクターにより供給されるか、宿主への導入時にベクタ自身により供給される。
【0042】
多種多様の発現ベクタをタンパク質の発現に用いることができる。このようなベクタは、細菌性プラスミドに由来する、バクテリオファージに由来する、酵母エピゾームに由来する、酵母クロモゾーム因子に由来する、アデノ関連ウイルス、レンチウイルス、バキュロウイルス、SV40などのパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、レトロウイルス、などのウイルスに由来するベクタ、及び、コスミド及びファージミドなどのプラスミドやバクテリオファージ遺伝因子に由来するベクタの組合わせに由来するベクタなどの、クロモゾーム性、エピゾーム性、及び、ウイルス由来のベクターを含む。すべてを本発明の態様による発現に用いることができる。一般的に、宿主でポリヌクレオチド又はタンパク質を維持、複製、発現するのに適しているどのようなベクタもこれに関する発現に用いることができる。
【0043】
発現ベクター中のDNA配列は、mRNA転写を指示するプロモータなどを含む適切な発現制御配列に操作可能に結合している。さらなるプロモータの代表的なものは、限定されないが、恒常的プロモータ及び組織特異的又は誘導性プロモータである。恒常的真核生物プロモータの例は、限定されないが、マウスメタロチオネインI遺伝子プロモータ((Hamerら、J.MoI.Appl.Gen.1:273−288(1982));ヘルペスウイルスのTKプロモータ(McKnight,Cell 31:355−365(1982);SV40初期プロモタ(Benoistら,Nature(London)290:304−310(1981));及びワクシニアウイルスプロモータを含む。上記に挙げた参考文献の全てが、参照により本明細書に取り込まれている。タンパク質の発現を推進するために用いることのできるプロモータのさらなる例は、限定されないが、組織特異的プロモータ及びアルブミンプロモータ(肝細胞)、プロインシュリンプロモータ(膵臓β細胞)及びその同類のものなどのタンパク質に特異的なその他の内在性プロモータを含む。一般的には、発現構築物は、転写開始及び転写停止の部位、転写された領域では翻訳用リボソーム結合部位を含む。構築物により発現した成熟転写物のコード化部分は、開始部分に翻訳開始AUGを、翻訳されるポリペプチドの末端に適切に配置された終止コドン(UAA、UGA、又はUAG)を含む。
【0044】
加えて、この構築物は、制御する調節領域、並びに、発現を生じる調節領域を含むことができる。一般的には、このような領域は、とりわけ制御体結合部位及びエンハンサなどの転写を調節することにより機能する。
【0045】
適当なヌクレオチド配列、並びに適当なプロモータ、及び適当な制御配列を含むベクタは、所望のポリペプチドの発現に適した周知の様々な技術を用いて本発明の細胞へ導入することができる。
【0046】
真核生物のベクタの例には、限定されないが、ストラタジーン社(Stratagene)から入手できるpW−LNEO、pSV2CAT、pOG44、pXTl及びpSG;アマーシャムファルマビオテク社(Amersham Pharmacia Biotech)から入手できるpSVK3、pBPV、pMSG及びpSVL;クロンテック社(Clontech)から入手できるpCMVDsRed2−express、pIRES2−DsRed2、pDsRed2−Mito、pCMV−EGFPが含まれる。その他の多くのベクタが周知であり、商業的に入手できる。
【0047】
遺伝子プログラムの因子の迅速な挿入と除去のための分子挿入中心点(insertion pivot)を含む特に有用なベクタが、特許文献1〜4に記載されており、全ては参照により本明細書に取り込まれている。このベクタの例は、ウルトラベクタ(商標)生産システム(the Ultra Vector(商標)Production System)(Intrexon Corp.,Blacksburg,VA)である。本明細書で用いたように、「遺伝子プログラム」は、プロモータ(P)、発現配列(E)、及び3’制御配列(3)、を含む遺伝子要素の組み合わせであり、したがって、図中に示した「PE3」は、遺伝子プログラムである。遺伝子プログラム内での要素(エレメント)は、遺伝子プログラムの要素(エレメント)の各々に隣接する分子ピボット間で容易に交換することができる。本明細書で用いた、分子ピボットは、少なくとも2つの変動しない希な、又は、珍しい直線に並んだ制限部位を含むポリヌクレオチドとして定義される。1つの態様では、分子ピボットは、少なくとも3つの変動しない、希で、珍しい直線に並んだ制限部位を含む。典型的には、分子ピボットいずれもは、同一の遺伝子プログラム内で、いずれかの他の分子ピボットの、希で又は珍しい制限部位を含まない。所与の制限酵素が作用する6ヌクレオチド以上の同族配列は、「まれな」制限部位と称する。しかしながら、統計的に予想されるより、希に起こる6bpの制限部位が存在し、これらの部位とそれらを切断するエンドヌクレアーゼを「珍しい」制限部位と称する。希な又は珍しい制限酵素の例としては、限定されないが、AsiS I、Pac I、Sbf I、Fse I、 Asc I、 MIu I、SnaB I、 Not I、 Sal I、 Swa I、 Rsr II、 BSiW I、 Sfo I、 Sgr AI、 AfIIII、Pvu I、 Ngo MIV、 Ase I、 FIp I、 Pme I、 Sda I、 Sgf I、 Srf I、及びSse8781 Iを挙げることができる。
【0048】
このベクタは、ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)と呼ばれる第二群制限酵素用の制限(酵素)部位を含む。HE酵素は、大きな非対称の制限(酵素)部位(12〜40bp)をもつが、このような制限酵素部位は、実際は、まれである。例えば、I−SSScelとして知られているHEは、18bpの制限(酵素)部位(5’TAGGGATAACAGGGTAAT3’(SEQ ID NO:I))をもち、ランダム配列の7x1010塩基対毎に一度生じると予測されている。この出現率は、ほ乳類ゲノムサイズの20倍であるゲノム中のほんの1部位に等しい。このHE部位の希な特性は、もし、HE部位がクローニングプラスミド中の適切な部位に含まれていれば、遺伝子プログラムの完全性を崩壊させることなく、遺伝子技術が遺伝子プログラムを切断できるという可能性を、大きく増大させる。
【0049】
宿主細胞内で発現用の適切なベクタとプロモータの選択は、周知の方法であり、宿主でのその発現がこの分野ではルーチン技術であると共に、ベクタ構築、宿主細胞内への導入に必須の技術である。
【0050】
構築物の細胞内への導入は、一過性の形質移入(トランスフェクション)、安定な形質移入、又はベクタの部位特異的な挿入であることができる。宿主細胞への一過性及び安定な形質移入は、リン酸カルシウム形質移入、DEAE−デキストラン仲介形質移入、カチオン性脂質仲介形質移入、電気穿孔法、形質導入、感染、又はその他の方法によりもたらされる。このような方法は、下記の多くの標準研究室試験手順書;DavisらのBasic Methods in Molecular Biology(1986);Keownらの1990,Methods Enzymol.185:527−37;Sambrookらの2001,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,N.Y.,により記載されており、これらは参照により本明細書に取り込まれている。これらの安定なトランスフェクションにより、細胞内のゲノムへのベクタのランダムな挿入が生じる。さらに、ベクタのコピー数と配向性も、一般的にランダムである。
【0051】
本発明の1態様では、ベクタを、ゲノム中のバイオ−ニュートラルサイトへ挿入する。バイオ−ニュートラルサイトは、構築物の挿入がほとんど障害を与えず、もしあっても、細胞の正常機能を維持しているゲノム中の部位である。バイオ−ニュートラルサイトは、入手可能なバイオインフォーマティックスを用いて分析することができる。ROSA−等価ローカスなどの多くのバイオ−ニュートラルサイトがこの分野では公知である。その他のバイオニュートラルサイトは、この分野の公知の技術を用いて同定することができる。ゲノム挿入部位(単数/複数)の特徴付けは、この分野の公知の方法を用いて行うことができる。ベクタが細胞へ導入されたときの構築物の、(挿入)部位、コピー数、及び配向性を調整するために、ローカス特異的挿入法を用いることができる。ローカス特異的挿入の方法は、この分野で周知であり、限定されないが、相同組換え、及びリコンビナーゼ仲介ゲノム挿入法を含む。もちろん、本発明の方法においてローカス特異的挿入法を用いるときは、ベクタは、限定されないが、相同組換えなどの、このローカス特異的挿入に役立つ要素を含むことができる。例えば、このベクタは、1、2、3、4、又はそれ以上のゲノム組込部位(GISs)を含むことができる。本明細書で用いたように、「ゲノム組込部位」は、ヌクレオチド配列がゲノムへのベクターの挿入が可能である細胞内でのゲノムの一部と同一であるか又はほとんど同一である、ベクタ配列の一部と定義する。特に、ベクタは、少なくとも、疾患マーカ遺伝子プロモータ及び致死的ポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドに隣接する2つのゲノム挿入部位を含むことができる。もちろん、GISsは、更なるエレメント又はこのベクタ上に存する全てのエレメントに隣接することもできる。
【0052】
別の態様では、ローカス特異的挿入は、組換え−部位特異的遺伝子挿入により実行することができる。簡潔に言えば、限定されないが、PhiC31インテグラーゼ(組込酵素)などの細菌のリコンビナーゼ酵素が、ヒトゲノム内の「偽性」組込部位に作用することができる。これらの偽性組換え部位は、リコンビナーゼを用いたローカス特異的挿入用の標的であり得る。リコンビナーゼ部位特異的遺伝子挿入は、Thyagarajan,B.ら、MoI.Cell Biol.21(12):3926−34(2001)に記載されており、これは、参照により本明細書に取り込まれている。 リコンビナーゼ部位特異的遺伝子挿入に用いられる、リコンビナーゼと各々の部位のその他の例は、限定されないが、R4及びTP901−1などのセリンリコンビナーゼを含む。
【0053】
本発明のさらなる態様は、限定されないが、遺伝子型同定を含む。用語遺伝子型同定は、この分野で用いられているように本明細書で用いる。特に、本発明の方法の特別の態様は、疾患細胞の殺細胞を誘導する前と後のどちらでも細胞の遺伝子型同定を提供する。さらに、この方法は、品質管理の目的で1又はそれ以上回数、細胞を遺伝子型同定することを意図する。遺伝子型同定は、細胞のゲノムの全部又は一部について遺伝子配列情報の提供を、どのような方法でも行うことができる。例えば、遺伝子型同定は、DNAを単離し、続いて配列決定により行うことができ、又は、PCR法により、又は制限酵素解析又はそれらの組合わせにより行うすることができる。
【0054】
対象の細胞の遺伝子型同定を行って、対象のゲノムプロフィールを決定することができる。この情報を用いて、対象に戻された非疾患細胞の続く世代で、対象に疾患が再発がし易くする変異事象の傾向に対象がもつか否かを決定することができる。変異事象に対する傾向は、DNA合成をコードしている遺伝子の改変や変異、及び対象の変異事象に関連する修復遺伝子、又はその他の遺伝子の検出により同定することができる。特異な疾患型の傾向は、その疾患に関連する遺伝子の改変又は変異の検出により同定できる。対象の遺伝子型の情報を用いて、各対象の適切な治療用ポリヌクレオチドをデザインすることができる。例えば、対象が、特定の疾患の傾向があるときは、特定の疾患に特異的なプロモータ又は致死ポリヌクレオチドが最も適していることがある。仮に、対象が疾患の再発に傾向があるときは、必要な場合疾患細胞を、後にインビボで一掃することができるように、治療用ポリヌクレオチドを除かない方が好ましい。別の例では、対象の遺伝子型を用いて、ゲノムの特定の挿入部位を決定することができ、これは、多かれ少かれ適切である。対象の遺伝子プロフィールに基づいた個人に合わせた治療用ポリヌクレオチドのデザインは、図1に示すように、ポリヌクレオチドの各パラメータの選択に基づくことができる。部分が容易に交換できるベクタシステムは、上記のように理想的には、対象の遺伝子型に基づいた治療用ポリヌクレオチドの組み立てに適している。
【0055】
加えて、本発明の特定の態様は治療用ポリヌクレオチドの切除を含む。一般的には、本発明の方法は、細胞の疾患の状態にかかわらず、全ての又はほとんどの細胞に治療用ポリヌクレオチドの導入を生じる。したがって、非疾患細胞から治療用ポリヌクレオチドを取り外すことが望ましい。自身の切除を促すため、この構築物は、リコンビナーゼ部位などのさらなる要素を含むことができる。リコンビナーゼ部位の1例としては、限定されないが、周知のcre−lox中のloxP部位、又は、Int、IHF、Xis、FIp、Fis、Hin、Gin、Cin、Tn3リゾルバーゼ、ΦC31、TndX、XerC、及び XerDリコンビナーゼに関連するコンビナーゼ部位を含む。適当なリコンビナーゼ酵素がコンビナーゼ部位に作用できるのであれば、その他のリコンビナーゼ部位を用いることもできる。この構築物は、1以上のリコンビナーゼをコードする遺伝子をも含む。リコンビナーゼの発現は、切除を希望する時間に誘導することができるような誘導可能なプロモータの制御下で生じる。
【0056】
本発明の一態様では、治療用ポリヌクレオチドは、疾患細胞が破壊された後、生存細胞が対象に戻される前に、生存している細胞から削除することができる。別の態様では、生存している細胞は治療用ポリヌクレオチドを切除しないで対象に戻すことができる。この態様では、致死ポリペプチドの発現は、細胞が対象に戻した後いつでもインビボで誘発することができる。この態様は、対象が疾患の再発があるときに用いることができる。再発は、対象に戻された非疾患細胞の次の世代において疾患の再発を導く変異事象に対する対象の傾向を含めてどのような理由によっても生じる。再発は、対象に細胞を戻す前に疾患細胞の全ての一掃が不完全であることによっても起こる。インビボで疾患細胞を破壊する能力(例えば、誘導性プロモータの存在下で致死的ポリペプチドをもち、対象に誘導剤を提供することによるなど)により、対象がエクスビボでの移植サイクルやそのサイクルに伴うリスク(例えば、移植前に骨随を除去するために必要な照射/化学療法など)を回避できるようになる。この態様によって、臨床医は、致死的ポリペプチドのインビボ発現、量及び期間の調整をすることができる。
【0057】
さらなる態様では、治療用ポリヌクレオチドは、多剤耐性遺伝子mdrlなどの化学耐性遺伝子を含む。化学耐性遺伝子は、恒常的プロモータ(CMVなど)又は誘導プロモータ(RheoSwitch(登録商標)など)の調整下にある。この態様では、対象に疾患の再発があるとき、臨床医は、疾患細胞を破壊するためにより強い量の化学療法剤を適用でき、一方、戻された細胞はこの薬剤から保護される。誘導性プロモータの下に化学耐性遺伝子を置くことにより、化学耐性遺伝子の不要な発現を避けることができ、疾患の再発の場合に利用できる。戻された細胞自体が疾患になるときは、上記のように致死ポリペプチドの発現を誘導して破壊できる。
【0058】
さらに多くの態様は、対象に細胞を再導入する前に、生きている細胞集団を分析し、及び/又は拡大することを意図している。例えば、生きている細胞は、この細胞を対象に戻す前に、本明細書で記載した又は述べたいずれかの方法、又はプロトコールを用いて、遺伝子型及び/又は表現型を同定することができる。
【0059】
別の態様では、本発明は、本発明の方法との関連で用いることのできるキットを提供する。本発明のこの態様によるキットは、1以上の核酸分子、制限酵素、及びこのような核酸分子を含む1以上の細胞からなる群から選択される1以上の成分を含む、1以上の収容器を具えることができる。本発明のキットは、さらに、本発明の培養細胞に適する細胞培養培地を含む1以上の収容器、本発明の培養細胞用に適した抗生物質を含む1以上の収容器、緩衝液を含む1以上の収容器、形質移入剤を含む1以上の収容器、及び/又は酵素反応用の基質を含む1以上の収容器をさらに含むことができる。
【0060】
本発明のキットは、本発明で用いることのできる様々な核酸分子を含むことができる。本発明のキットで供給できる核酸分子の例としては、プロモータ、致死ポリペプチドをコード化する配列、エンハンサ、レプレサ、選択マーカ、転写シグナル、翻訳シグナル、プライマーのハイブリダイゼーション部位(例えば、配列決定又はPCR用)、組換え部位、制限(酵素)部位、ポリリンカ、サプレッサtRNA分子の存在下で翻訳の終末を抑制する部位、サプレッサtRNAをコードする配列、ドメイン及び/又は領域をコード化した配列、複製の開始点、テロメア、セントロメア、及びその同等物を含む。本発明の核酸分子は上記の転写制御配列に加えて、1以上のこれらの特徴のいずれかを含むことができる。
【0061】
本発明のキットは、1以上の組換えタンパク質を含む収容器を含むことができる。適した組換えタンパク質は、限定されないが、Cre、Int、IHF、Xis、FIp、Fis、Hin、Gin、Cin、Tn3レゾルバーゼ、ΦC31、TndX、XerC、及び XerDを挙げることができる。その他の適した組換え部位及びタンパク質は、インビトロゲン社(Invitrogen Corp.,CA)からのゲートウェイ(商標)クローニングテクノロジに関連しており、ゲートウェイ(商標)クローニングテクノロジの製品情報文献に記載されており、全内容が、参照により本明細書に取り込まれている。
【0062】
使用において、本発明のキットに設けられた1以上の疾患マーカ遺伝子プロモータを含む核酸分子を、致死ポリペプチド(E)の発現用ポリヌクレオチド、及び、3’制御配列(3)と組み合わせて、PE3遺伝子プログラムを調製することができる。1以上の3’制御配列を含む核酸分子には、例えば、3’制御配列の5’と3’末端上に分子ピボット(pivot)を設けてもよい。
【0063】
本発明のキットには、プライマを供給することもできる。これらのプライマは、一般的には、特定のヌクレオチド配列をもつ分子をアニールするようデザインされている。例えば、これらのプライマは、特定の核酸分子を増複するためにPCR用にデザインすることができる。配列決定用プライマを、このキットと共に提供することもできる。
【0064】
1以上の緩衝液(例えば、1、2、3、4、5、6、8、9、10、15)を本発明のキットで供給することができる。これらの緩衝液は、作業濃度で提供することができ、又は、濃縮した形で提供して作業濃度に希釈することもできる。これらの緩衝液は、活性の増強のために、又は、緩衝液自体又は緩衝液中の分子を安定化するために、しばしば、塩、金属イオン、co−ファクタ、金属イオンキレート剤などを含有する。さらに、これらの緩衝液は、乾燥した形で、又は水性の形で提供することができる。乾燥型で提供された緩衝液は、通常、使用前に水に溶かす。
【0065】
本発明のキットは、実質的に、上記の又は本明細書のどこかに記載した成分のあらゆる組み合わせを含む。当業者は、本発明のキットで提供される成分は、キットを意図した使用に変更できることを認識するであろう。したがって、キットは、この出願で説明した様々な機能を行うようにデザインすることができ、たがって、このようなキットの構成要素は、変わってくる。
【0066】
本発明は、さらに、1以上の本発明の方法を実行する使用説明書に関する。このような使用説明書は、本発明の方法を実行するのに適した条件を使用者に指示することができる。本発明の指示は、例えば、書面での指示(例えば、紙面にタイプされた)などの有形の形式、又は例えば、コンピュータディスク又はインターネット上でアクセスできるものなどの無形の形であり得る。
【0067】
キットを使用するためにこの使用説明書がキットに含まれる場合は、本発明の方法を実行するための使用説明書のフルテキストを提供する必要はないと考えられる。本発明のキットが、例えば、このような全範囲の使用説明書を含まない状況の一例は、提供した指示が、キットの使用者に、どこでこのキットを使用できる方法を行う使用説明書を得るのかを知らせる場合である。したがって、本発明の方法を実行するための使用説明書は、インターネットのウエブページから得られ、それとは別に、販売又は配布したマニュアル、又はその他の製品情報などから得ることができる。本発明は、したがって、キットと共に使用説明書が直接梱包されていないか、及び/又は配布されていない場合に1以上の地域をキット使用者に対して指示するキットをも含んでいる。このような使用説明書は、限定されないが、電子的形態、又は印刷された形態を含めて、どのような形態でもよい。
【0068】
以下の実施例は、例示であり、本発明の方法を限定するものではない。他の適切な変更及び応用は、医療治療及び遺伝子発現系の分野において、当業者にとって自明の範囲内であり、本発明の技術的思想及び範囲内に属するものである。
【0069】
実施例1
CD34細胞を、骨髄性白血病患者の血液から得て、単離した。単離された細胞は、恒常的遍在性のサイトメガロウイルス(CMV)プロモータの制御下のネオマイシン(neo)選択遺伝子、及びTERTプロモータの制御下の誘導性トランス活性化因子(アクチベータ)rTTAを含む、本発明の治療用ポリヌクレオチド構築物を用いてエクスビボで処理する。ジフテリア(DTA)毒素をコードする配列は、TetO誘導性プロモータの制御下である。細胞のトランスフォーメーション(形質転換)は、ゲノムへの治療用構築物のランダムな組込みを促進する条件下で行われる。安定なトランスフォーメーションがG418の添加で選択される。生きているコロニを、テトラサイクリン又はドキシサイクリンで処理して、これらの細胞内でDTA致死遺伝子産物の発現を活性化させる、ここで、TERTプロモータがrTTAタンパク質産物の発現を推進する。テトラサイクリン又はドキシサイクリンの添加とrTTAの発現は、TERTプロモータが活性である疾患細胞死させる。
【0070】
図6に示すベクタは、本実施例の方法に有用なベクタデザインの1例である。ゲノム挿入部位(単数/複数)の特徴付けは、この分野で公知方法を用いて行われる。1つの態様では、この構築物がバイオニュートラルな部位に挿入された細胞は、構築物を含む細胞に選択的に圧をかける条件下で、生育し、増殖する。
【0071】
これらの増殖したコロニは、疾患マーカ遺伝子の存在又は非存在を示す表現型が同定される。限定されないが、CD34バイオマーカを含む公知の前駆細胞のバイオマーカで表現型が評価されているように、表現型を評価して、前駆細胞の柔軟性を維持する細胞の能力について表現型を決定する。この最終表現型分析に合格した細胞集団は、次いでドナー患者に移入される。移入する前に、患者は、化学的又は放射線的手法で、血液細胞/骨髄は除去されることがある。
【0072】
実施例2
血液細胞癌が原発である患者の血液を得て、末梢血細胞を単離する。単離した細胞は、アルデヒドデヒドロゲナーゼプロモータ制御下のネオマイシン(neo)選択枝遺伝子、及びTERTプロモータ制御下の誘導性トランスアクティベータ(活性化因子)であるrTTAを含む本発明の治療用ポリヌクレオチド構築物を用いてエクスビボで処理する。ジフテリア(DTA)毒素コードする配列は、TetO誘導性プロモータの制御下であり、CMV恒常的プロモータは、RheoCept(登録商標)トランスアクチベータ(活性化因子)の発現を制御する。順に、RheoSwitch(登録商標)誘導性プロモータは、Creリコンビナーゼの発現を制御する。LoxP部位は、構築物の5’と3’末端で構築物の遺伝子プログラムの各々に隣接する。細胞のトランスフォーメーションは、ゲノムへ異種性(ヘテロローガス)DNAのランダムな組込みを促進する条件下で行われる。構築物を含む前駆細胞中にアルデヒドデヒドロゲナーゼプロモータが高レベルで発現するので、前駆細胞表現型を示す安定なトランスフォーマントを選択するために、G418を細胞培養へ添加する。次いで、TERTプロモータがrTTA致死タンパク質産物の発現を推進する細胞で、DTA致死遺伝子産物の発現を活性化させるために、生きているコロニを、テトラサイクリン又はドキシサイクリンで処理する。
【0073】
図7に示すベクタは、この実施例の方法に有用なベクタデザインの一例である。ゲノムの挿入部位の特徴付けは、この分野の公知の方法を用いて行う。1つの態様では、構築物がバイオニュートラル部位へ挿入された細胞が、構築物を含む細胞に選択圧をかけた状態で成長し、増殖している。
【0074】
このような拡大したコロニは、疾患マーカ遺伝子の存在又は不存在を示す表現型を同定する。限定されないが、CD34、及びアルデヒドデヒドロゲナーゼなどを含む公知の前駆細胞のバイオマーカで、評価されているように、表現型を前駆細胞の柔軟性を維持する細胞の能力について評価し、決定する。最終の表現型分析に合格した細胞集団は、次いでドナーの患者に移植される。患者は、移植前に化学的又は放射線的手法により血液細胞/骨随を除去することがある。エクジソン受容体アゴニストに細胞を曝すことにより、いつでも、Creリコンビナーゼの発現を誘導して、このベクタの切除を誘導できる。
【0075】
実施例3
術後の癌患者における転移を防ぎ、乳癌細胞などの循環している癌細胞を減少させるため、乳癌患者又は乳癌であった患者から末梢血液細胞を得て、単離する。単離した細胞を、遍在性で恒常的に発現するホスホルリセレートキナーゼ(PGK)プロモータの制御下のサイトシンデアミナーゼ(CDA)遺伝子、及びバイオニュートラルなROSA−等価なローカスに相同性であるDNAの一部を含む治療用構築物を用いてエクスビボで処理する。この構築物中で、ネオ選択遺伝子は、アルデヒドデヒドロゲナーゼのプロモータの制御下にあり、誘導性トランス(活性化因子)アクチベータrTTAはTERTプロモータの制御下にある。加えて、ヘルペスシンプレックスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)のコード配列は、TetO誘導性プロモータの制御下であり、バイオニュートラルなROSA−等価ローカスに相同性であるDNAの追加領域は、最初のDNA領域の3’に位置する。ジフテリア(DTA)毒素遺伝子は、恒常的に発現するCMVプロモータの制御下にある。細胞のトランスフォーメーションは、相同組換えによりローカス特異的挿入を促進する条件下で行う。前駆細胞では、アルデヒドデヒドロゲナーゼプロモータが高レベルで発現するので、前駆細胞の表現型を示す安定なトランスフォマント(形質転換体)は、G418の添加により選択される。
【0076】
図8に示すベクタは、この実施例の方法に有用なベクタの一例である。特に、この構築物は、バイオニュートラルなROSA−等価ローカスでゲノムへ挿入されている。構築物からのDTAセレクタの喪失は、相同組換えが成功したことを示している。5−フルオロサイトシンの処理は、CDA選択遺伝子の喪失にとって負のセレクタとして働く。ゲノムへの挿入部位の特徴付けは、この分野で公知の方法を用いて行う。
【0077】
相同組換え領域の内の構築物の部分が、バイオニュートラルのROSA−等価ローカスでゲノムへの組込まれたコロニが選択され、拡大する。これらの増殖した細胞は、ガンシクロビルに加えて、テトラサイクリン又はドキシサイクリンで処理する。テトラサイクリン又はドキシサイクリンを用いた処理は、選択した疾患マーカ遺伝子を発現している細胞内でTetOプロモータの活性化をもたらし、順に、TK遺伝子産物の発現を活性化する。ガンシクロビル処理は、高レベルでチミジンキナーゼを発現している細胞を選択的に殺す。
【0078】
これらの拡大したコロニは、疾患マーカ遺伝子の存在又は非存在を指示する表現型分析される。限定されないが、CD34、及びアルデヒドデヒドロゲナーゼを含む公知の前駆細胞のバイオマーカで評価されているように、表現型を、前駆細胞の柔軟性を維持する細胞の能力について評価し、決定する。最終の表現型分析に合格した細胞集団は、次いでドナー患者に移入される。移植前に患者は、化学的な又は放射性的手法により、血液細胞/骨随を除去されることがある。
【0079】
実施例4
血液細胞が原発である癌患者から、末梢血液細胞を得て、単離する。単離された細胞は、アルデヒドデヒドロゲナーゼプロモータの制御下でネオマイシン(neo)選択遺伝子、及びTERTプロモータの制御下でジフテリア(DTA)毒素をコードする配列を含む本発明の治療用構築物を用いてエクスビボで処理する。細胞のトランスフォーメーションは、ゲノムへの非相同DNAのランダムな組込みを促進する条件下で行われる。構築物を含む前駆細胞中にアルデヒドデヒドロゲナーゼプロモータが高レベルで発現するので、前駆細胞表現型を示す安定なトランスフォーマントを選択するために、G418を細胞培養へ添加する。
【0080】
ゲノム挿入部位の特徴付けは、この分野で公知の方法を用いて行う。1つの態様では、この構築物がバイオニュートラルな部位に挿入された細胞が、この構築物を含む細胞への選択圧がかった条件下で、生育し、増殖する。
【0081】
これらの拡大したコロニは、疾患マーカ遺伝子の存在又は非存在を示す表現型を同定する。限定されないが、CD34、及びアルデヒドデヒドロゲナーゼなどを含む公知の前駆細胞のバイオマーカで、評価されているように、表現型を前駆細胞の柔軟性を維持する細胞の能力について評価し、決定する。最終の表現型分析に合格した細胞集団は、治療用ポリヌクレオチドを除かないで、次いでドナーの患者に移植される。移植前に、患者は、化学的な又は放射性的手法により、血液細胞/骨随を除去されることがある。
【0082】
患者に血液細胞癌が再発すると、TERTプロモータからのDTAの発現が、移入された細胞で活性化され、これらの細胞は破壊される。
【0083】
実施例5
血液細胞癌が原発である患者の血液を得て、末梢血細胞を単離する。単離された細胞は、アルデヒドデヒドロゲナーゼプロモータの制御下でネオマイシン(neo)選択遺伝子、及びTERTプロモータの制御下で誘導性トランス(活性化因子)アクチベータRheoCept(登録商標)トランスアクチベータを含む、本発明の治療用ポリヌクレオチド構築物を用いてエクスビボで処理する。順に、RheoSwitch(登録商標)誘導性プロモータは、DTAの発現を制御する。細胞のトランスフォーメーションは、ゲノムへ異種性(ヘテロローガス)DNAのランダムな組込みを促進する条件下で行われる。構築物を含む前駆細胞中にアルデヒドデヒドロゲナーゼプロモータが高レベルで発現するので、前駆細胞表現型を示す安定なトランスフォーマントを選択するために、G418を細胞培養へ添加する。次いで、生きているコロニを、 RheoCept(登録商標)アゴニストで処理して、TERTプロモータがRheoCept(登録商標)タンパク質生産物の発現を推進する細胞で、DTA致死遺伝子産物の発現を活性化させる。
【0084】
ゲノム挿入部位の特徴付けは、この分野の公知の方法を用いて行うことができる。1つの態様では、この構築物がバイオニュートラルな部位に挿入された細胞は、構築物を含む細胞に選択圧をかかる条件下で、生育し、増殖する。
【0085】
これらの拡大したコロニは、疾患マーカ遺伝子の存在又は非存在を示す表現型が同定される。限定されないが、CD34バイオマーカを含む公知の前駆細胞のバイオマーカで表現型が評価されているように、前駆細胞の柔軟性を維持する細胞の能力について表現型を評価し決定する。この最終表現型分析に合格した細胞集団は、次いでドナー患者に移入される。移入する前に、患者は、化学的又は放射線的手法で、血液細胞/骨髄は除去されることがある。
【0086】
患者に血液細胞癌が再発すると、RheoCept(登録商標)アゴニストを患者に投与し、TERTプロモータがRheoCept(登録商標)タンパク質産物の発現を推進している移植した細胞又はそれらの子孫中でDTAの遺伝子産物の発現を誘導する。
【0087】
本発明をここで十分に記載してきたが、本発明が、本発明または本発明の任意の実施形態の範囲に影響することなく、広くかつ等価的範囲の状態、処方物および他のパラメーター内で実施され得ることが、当業者に理解される。本明細書中に引用される全ての特許、特許出願および刊行物は、それらの全体が本明細書中に参考として十分に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の疾患細胞を破壊することによって疾患を治療する方法において、当該方法が:
(a)前記対象から細胞の集団を得るステップと;
(b)前記細胞の集団内の少なくとも1つの疾患マーカ遺伝子の活性を測定するステップと;
(c)前記細胞内へ選択できるマーカ及び前記細胞に致死的であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入するステップであって、当該致死的ポリペプチドの発現が少なくとも1つの疾患マーカ遺伝子のプロモータにより直接的に又は間接的に制御されているステップと;
(d)前記ポリヌクレオチドを含む細胞を得るために選択的な条件に前記細胞をさらすステップと;
(e)前記致死的ポリペプチドの発現を誘導する条件で細胞を処理するステップであって、前記致死的ポリペプチドの前記発現が、前記少なくとも1つの疾患マーカ細胞遺伝子を発現する前記細胞を殺すものであるステップと;
(f)残りの生きている非疾患細胞から前記殺された細胞を分離するステップであって、前記生きている細胞が前記非疾患細胞を殺すのに十分な程度に前記致死的ポリペプチドを発現していないステップと;及び、
(g)前記生きている、非疾患細胞を前記対象に戻すステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記プロモータが、前記致死的ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドに操作可能に結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)の後に、前記細胞を単離するステップを更に具える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞が、造血幹細胞、肝幹細胞、乳腺幹細胞、膵幹細胞、及び神経幹細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞が、造血幹細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドを前記導入するステップが、前記細胞内へ前記ポリヌクレオチドの一過性の形質移入を具える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドを導入するステップが、前記細胞内へ前記ポリヌクレオチドの安定な形質移入を具える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリヌクレオチドが少なくとも2つの遺伝子プログラムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記疾患マーカ遺伝子の前記プロモータが、第一及び第二の分子挿入ピボット間で連結されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記致死的ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドが、第二と第三の分子挿入ピボット間で連結されている、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記分子挿入ピボットが、近接して配置されてしている3又は4の稀な又は珍しい制限部位を含み、前記稀な又は珍しい制限部位が、Asi I、Pac I、Sbf I、Fse I、Asc I、Mlu I、SnaB I、Not I、Sal I、Swa I、Rsr II、BSiW I、Sfo I、Sgr AI、Afl III、Pvu I、 Ngo MIV、 Ase I、Flp I、Pme I、Sda I、Sgf I、Srf I及びSse878 Iの制限酵素に相互関連する制限部位からなる群から選択される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
ポリヌクレオチドが、少なくとも1つのクロマチン修飾ドメインをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリヌクレオチドを導入するステップが、前記ポリヌクレオチドのローカス特異的挿入を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ローカス特異的挿入が、相同組換え及びリコンビナーゼ介在ゲノム挿入からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリヌクレオチドが少なくとも2つのゲノム取込み部位を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリヌクレオチドが少なくとも2つのゲノム取込み部位を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリヌクレオチドがゲノム中のバイオニュートラル部位に挿入されたか否かを測定するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記対象に前記細胞を戻す前に、前記細胞のゲノムから前記ポリヌクレオチドを切除するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記切除するステップ、部位特異的リコンビナーゼ活性を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリヌクレオチドが、少なくとも2つのコンビナーゼ部位を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記対象に戻す前に、前記ポリヌクレオチドが、前記残りの生きている非疾患細胞から切除されない、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞を前記対象に戻した後に、前記致死的ポリペプチドの発現を誘発するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記対象での前記疾患の再発後に、前記さらなるステップが実行される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
疾患の治療を必要としている対象の個別治療方法において、前記方法が、
(a)前記対象から細胞集団を得るステップと;
(b)前記細胞の前記集団内での少なくとも1つの疾患マーカ遺伝子の活性を測定するステップと;
(c)前記少なくとも1つの疾患マーカ遺伝子の少なくとも1つのプロモータを単離するステップと;
(d)前記細胞に致死的であるポリペプチドをコード化しているポリヌクレオチドに前記プロモータを直接的に又は間接的に結合させるステップと;
(e)選択可能なマーカを含むベクタ内に前記結合させたポリヌクレオチドを入れるステップと;
(f)前記細胞内に前記ポリヌクレオチドを導入するステップと;
(g)前記ポリヌクレオチドを含む細胞を得るために前記細胞を選択条件にさらすステップと;
(h)前記致死的ポリペプチドの発現を誘発する条件で前記細胞を処理するステップであって、 前記致死ポリペプチドの前記発現が前記少なくとも1つの疾患マーカ遺伝子を発現している前記細胞を殺すステップと;
(i)残りの生きている非疾患細胞から前記殺された細胞を分離するステップであって、
前記生きている細胞が、前記非疾患細胞を殺すのに十分な程度に前記致死ポリペプチドを発現しないステップと;
(j)前記生きている非疾患細胞を前記対象に戻すステップと;
を具える方法。
【請求項25】
前記プロモータが、前記致死的ポリペプチドをコード化している前記ポリヌクレオチドに操作可能に結合している、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(a)の後、前記細胞を単離するステップをさらに具える、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞が、造血幹細胞、肝幹細胞、乳腺幹細胞、膵幹細胞、及び神経幹細胞からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞が、造血幹細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ポリヌクレオチドが、前記ゲノム中のバイオ−ニュートラルな部位に挿入されたか否かを測定するステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記プロモータが、第一及び第二の分子挿入ピボットの間に前記プロモータを連結することにより、前記致死的ポリペプチドをコード化している前記ポリヌクレオチドに操作可能に結合されており、前記第二の分子挿入ピボットが、前記プロモータの3’末端に位置している、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記分子挿入ピボットが、近接して配置されている3又は4の、稀な又は珍しい制限部位を含み、前記稀な又は珍しい制限部位が、Asi I、Pac I、Sbf I、Fse I、Asc I、Mlu I、SnaB I、Not I、Sal I、Swa I、Rsr II、BSiW I、Sfo I、Sgr AI、Afl III、Pvu I、 Ngo MIV、 Ase I、Flp I、Pme I、Sda I、Sgf I、Srf I及びSse878 I制限酵素に相互関連する制限部位からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
対象中の疾患細胞を破壊することにより疾患を治療する方法において、前記方法が;
(a)前記対象から細胞集団を得るステップと;
(b)前記細胞の前記集団内の少なくとも1つの疾患マーカ遺伝子の活性を測定するステップと;
(c)前記細胞に致死的であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子を前記細胞に導入するステップであって、前記致死的ポリペプチドの発現が、前記少なくとも1つの疾患マーカ遺伝子の前記プロモータにより調整されており、前記プロモータが、前記致死的ポリペプチドをコード化している前記ポリヌクレオチドに操作可能に結合するステップと;
(d)前記致死的ポリペプチドの発現を誘発する条件で前記細胞を処理するステップであって、前記致死的ポリペプチドの前記発現が前記少なくとも1つの疾患マーカ遺伝子を発現している前記細胞を殺すステップと;
(e)残りの生きている非疾患細胞から、前記殺された細胞を分離するステップであって、前記生きている細胞が、前記非疾患細胞を殺すのに十分な程度に前記致死ポリペプチドを発現しないステップと;及び、
(f)前記生きている非疾患細胞を前記対象に戻すステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項33】
前記細胞を単離するステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞が、造血幹細胞、肝幹細胞、乳腺幹細胞、膵幹細胞、及び神経幹細胞からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞が、造血幹細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリヌクレオチドを導入するステップが、前記細胞内への前記ポリヌクレオチドの一過性の形質移入を具える、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリヌクレオチドを導入するステップが、前記細胞内への前記ポリヌクレオチドの安定した形質移入を具える、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記ポリヌクレオチドが、少なくとも2つの遺伝子プログラムを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記疾患マーカ遺伝子の前記プロモータが、第一及び第二の分子挿入ピボット間で連結されている、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記致死的ポリペプチドをコード化している前記ポリヌクレオチドが第二の分子挿入ピボットと第三の分子挿入ポイント間で連結されている、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ポリヌクレオチドが、少なくとも1つの選択可能なマーカをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ポリヌクレオチドが、少なくとも1つのクロマチン修飾ドメインをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ポリヌクレオチドを導入するステップが、前記ポリヌクレオチドのローカス特異的挿入を具える、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ローカス特異的挿入が、相同組換え及びリコンビナーゼ介在ゲノム挿入からなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記ポリヌクレオチドが、少なくとも2つのゲノム取込み部位を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ポリヌクレオチドが、少なくとも2つのゲノム取込み部位を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記細胞を前記対象に戻す前に、前記細胞のゲノムから前記ポリヌクレオチドを切除するステップをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記切除が、部位特異的リコンビナーゼ活性を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記ポリヌクレオチドが、少なくとも2つのリコンビナーゼ部位をさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
異常な状態からの治療が必要としている対象の個別治療方法において、前記方法が、
(a)前記対象から細胞集団を得るステップと;
(b)前記細胞の前記集団内で少なくとも1つの疾患マーカ遺伝子の活性を測定するステップと;
(c)前記少なくとも1つの疾患マーカ遺伝子の少なくとも1つのプロモータを単離するステップと;
(d)前記細胞に致死的であるポリペプチドをコード化しているポリヌクレオチドに前記プロモータを操作可能に結合させることにより、治療用ポリヌクレオチドを作製するステップと;
(e)前記細胞に前記治療用ポリヌクレオチドを導入するステップと;
(f)前記致死ポリペプチドの発現を誘発する条件で前記細胞を処理するステップであって、前記致死的ポリペプチドの前記発現が前記少なくとも1つの疾患マーカ遺伝子を発現している前記細胞を殺すステップと;
(g)残りの生きている非疾患細胞から、前記殺された細胞を分離するステップであって、前記生きている細胞が、前記非疾患細胞を殺すのに十分な程度に前記致死的ポリペプチドを発現しないステップと;
(h)前記生きている非疾患細胞を前記対象に戻すステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項51】
前記細胞を単離することをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞が、造血幹細胞、肝幹細胞、乳腺幹細胞、膵幹細胞、及び神経幹細胞からなる群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記幹細胞が、造血幹細胞である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記致死的ポリペプチドをコード化している前記ポリヌクレオチドへ前記プロモータを操作可能に結合させるステップが、第一と第二の分子挿入ピボットの間で前記プロモータを連結させるステップを具え、前記第二の分子挿入ピボットが前記プロモータの3’末端に位置する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記分子挿入ピボットが、近接して配置されている3又は4の、稀な又は珍しい制限部位を含み、前記稀な又は珍しい制限部位が、Asi I、Pac I、Sbf I、Fse I、Asc I、Mlu I、SnaB I、Not I、Sal I、Swa I、Rsr II、BSiW I、Sfo I、Sgr AI、Afl III、Pvu I、 Ngo MIV、 Ase I、Flp I、Pme I、Sda I、Sgf I、Srf I及びSse878 I制限酵素に対応する制限部位からなる群から選択される、請求項54に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2009−544711(P2009−544711A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521823(P2009−521823)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/016747
【国際公開番号】WO2008/073154
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(509019819)イントレクソン コーポレイション (4)
【Fターム(参考)】