説明

病原性単球の標的化

本発明は、インターロイキン−1アルファ(IL−1アルファ)が、炎症促進性CD14+CD16+単球サブセット上で発現されるという発見に基づく。重要なことには、IL−1アルファは、ほとんど排他的にこの単球サブセット上で発現され、他の白血球では発現されないと考えられるため、CD14+CD16+単球サブセットを標的とするための理想的なマーカーである。そのような病原性細胞を枯渇させるか、又はそのような細胞タイプに対するIL−1アルファの機能を調節する作用剤の有効性は、CD14+CD16+単球のレベル又は機能性を評価することによりモニターすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年9月12日に出願された米国特許仮出願第61/096,563号の優先権を請求するものである。
【0002】
連邦支援研究に関する記載
該当しない。
【0003】
技術分野
本発明は、一般的に、免疫学、白血球生物学、炎症、癌、血管障害、及び医学の分野に関する。より詳しくは、本発明は、著しい病的状態又は全身性免疫抑制を引き起こさずに、治療選択を決定する方法、治療効能を評価する方法、及び疾患関連白血球を標的とする方法に関する。
【背景技術】
【0004】
白血球、又は白血球細胞は、感染症及び毒素から身体を防御する免疫系の細胞である。ヒトには幾つかの異なる機能的に多様な種類の白血球があるが、全ては共通の多能性骨髄由来幹細胞に由来する。健康な人には、血液1ミリリットル当たり約8×10個の白血球が存在する。これら白血球は、好塩基球、リンパ球、好中球、好酸球、マクロファージ、及び単球で構成される。単球画分は、全白血球の約2〜8%を占めるに過ぎない。
【0005】
マクロファージは、19世紀中頃に医師により最初に観察されており、その際これら細胞は、戦場創傷において及び慢性炎症の区域と関連して記述されていた。これら細胞に関する広範な研究により、単球−マクロファージ系は、組織維持及び修復、免疫調節、並びに病原体の制御及び排除において幾つかの重大な機能を果たしていることが明らかになった。
【0006】
単球は、血液中に一時的に留まっているに過ぎない。骨髄で発生した後、単球は血流中に循環し、その血中半減期は数日である。急性炎症反応中は、半減期は数時間に過ぎない場合がある。血液から組織への単球放出は、細胞サイズが増大し、それと共に核がより大きくなり染色が薄くなり、著しいRNA発現を示すことと関連している。これら組織浸透細胞は、マクロファージ(又は組織球)と名付けられている。これらの細胞は、食作用性であり移動性である。
【0007】
単球は、種々の組織に定植すると、数年間そこに留まり続ける場合がある。脾臓では、マクロファージは、古い赤血球細胞の再利用に関与しており;皮膚(ランゲルハンス細胞)では、表皮の角質化にに関与しており;肝臓(クッパー細胞(Kupfer cell))では、毒素の分解を管理し;動脈の内膜(泡沫細胞)では、アテローム斑の形成に関与しており;関節では、関節の維持に関与する細胞(A型滑膜細胞)へと分化し;リンパ節では、抗原提示細胞(樹状細胞)として機能して適応免疫応答を刺激し;硬骨では、骨量の再吸収を制御し(破骨細胞);中枢神経系(膠細胞)に存在する間は、センチネル細胞として作用し、神経内分泌恒常性に関与している。単球、及びそれらが分化する細胞は、かつては細網内皮系と一般的に呼ばれていた。もはやそのように呼ばれるのは一般的ではないが、この命名は、単球が組織及び器官系の恒常性に複数の役割を果たすことを表していた。
【0008】
単球は、組織中で様々な機能を果たすためには、まず血管を出て、組織に進入しなければならない。これを達成するために、単球は、活性化されると、血管壁の内皮細胞に接着し、血管外に遊出するか、又は血管壁を形成する細胞マトリックスを透過する。この血管外遊出プロセスは、単球に固有ではない。接着の分子的機序には、実質的に全ての単球、並びにリンパ球及び好中球に共通している接着分子CD11a、CD11b、CD11c/CD18が関与している。組織への白血球の血管外遊出は、多くの疾患プロセスの第一歩であるため、抗体を用いてこのプロセスを遮断する試みがなされてきた。しかしながら、このプロセスが全身で遮断されないように、細心の注意を払わなければならない。白血球接着不全(LAD)、CD11/CD18系の欠損として知られているヒト遺伝病は、その結果として重篤な免疫抑制をもたらす。病原体に無防備のままにされると、LADを罹患している個体は日和見感染で死亡する。従って、このプロセスを高度に選択的に遮断することだけが許容される。1つのそのような治療には、Tリンパ球等のある種の白血球サブセット上でCD11c/CD18として発現されるCD11cを標的とする抗体エファリズマブの使用が含まれる。しかしながら、単球機能を選択的に遮断するための手段は考案されていない。
【0009】
他の白血球とは異なり、単球には、固有の細胞内区画がある。更に、単球それ自体は、機能的に異種性の細胞集団である。ヒトでは、これら集団は、一般的に、細胞表面マーカーの発現に基づいて2つの群に分割することができる:(1)CD14高発現性と定義される主要な集団(CD14++)及び(2)CD14及びCD16同時発現性と定義される少数の集団(CD14+CD16+)。後者は、炎症促進性の単球サブセットとして知られており、アテローム性動脈硬化、癌、関節リウマチ、及びアルツハイマー病を含む多数の炎症関連疾患と関連している。
【0010】
患者から炎症促進性CD14+CD16+単球を除去する白血球除去療法(leukocytopheresis)を伴う治療戦略が試みられている。例えば、CD14+CD16+単球の体外除去は、潰瘍性大腸炎の治療に成功した(Kanai et al.Inflamm.Bowel Dis.2007 Mar;13(3):284−90)。しかしながら、この手法は、その結果として著しい病的状態及びリスクを患者にもたらし、慢性疾患の治療には適していない。更に、白血球除去療法は、CD14+CD16+単球に対して高度に選択的ではなく、むしろほとんどの単球集団を枯渇させる。従って、白血球除去療法は、危険な免疫抑制を引き起こすことが予想されるため、持続して長期的に枯渇させることが必要である疾患の治療には適していない。むしろ、CD14+CD16+を標的とする高度に選択的な手段が必要である。
【0011】
好ましい手法は、CD14+CD16+炎症促進性単球サブセットを、特異的にそのサブセットの機能を下方制御する作用剤を用いて選択的に標的とすることであろう。これまで、これら細胞を正確に標的とする実際的な手段は特定されていない。これら細胞は、CD14及びCD16表面タンパク質の発現を特徴とするが、標的療法には適切ではない。CD14は、全ての単球並びに好中球等の他の細胞集団によっても発現されるため、適切な標的ではないだろう。CD14発現細胞の集団全体の機能を調節することは、その結果として重篤な免疫抑制の許容し難いリスクをもたらすだろう。CD16(FcgRIII)を標的とすることも、CD16が、単球上での発現に加えて、Bリンパ球及びTリンパ球を含む多数の他の重要な免疫細胞上で発現されるため、適切ではないだろう。従って、それらCD14+CD16+単球を標的とするための良好なマーカーは、欠乏している。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、インターロイキン−1アルファ(IL−1アルファ)が、ヒトの炎症促進性疾患関連CD14+CD16+単球サブセット上で発現されるという発見に基づく。重要なことには、IL−1アルファは、ほとんど排他的にこの単球サブセット上で発現されると考えられるため、CD14+CD16+単球サブセットを標的とするための理想的なマーカーである。更に、この発見は、そのような病原性細胞を枯渇させるか、又はそのような細胞タイプに対するIL−1アルファの機能を調節する作用剤の有効性を、CD14+CD16+単球のレベル又は機能性を評価することによりモニターすることを可能にする。
【0013】
従って、本発明は、(a)IL−1アルファの機能又は発現を調節する作用剤をヒト対象体に投与するステップと、(b)そのような投与が、対象体のCD14+/CD16+の量又は機能を調節するかどうかを決定するステップとを含む方法を特色とする。本方法は、対象体が、疾患又は病理学的障害に寄与する量のCD14+/CD16+単球を有するかどうか、及び/又は対象体のCD14+/CD16+単球の機能的属性が、疾患又は病理学的障害に寄与するかどうかを最初に決定するステップを含むこともできる。
【0014】
また、本発明は、(a)ヒト対象体が、疾患又は病理学的障害に寄与する量のCD14+/CD16+単球を有するかどうかを決定するステップと、(b)IL−1アルファの機能又は発現を調節する作用剤をヒト対象体に投与するステップとを含む方法を特色とする。この方法は、(c)そのような投与が、対象体のCD14+CD16+単球の量を調節するかどうかを決定するステップを含むこともできる。
【0015】
(a)ヒト対象体のCD14+/CD16+単球の機能的属性が、疾患又は病理学的障害に寄与するかどうかを決定するステップと、(b)IL−1アルファの機能又は発現を調節する作用剤をヒト対象体に投与するステップとを含む方法も本発明内にある。この方法は、(c)そのような投与が、対象体のCD14+CD16+単球の量を調節するかどうかを決定するステップを含むこともできる。
【0016】
これらの方法では、IL−1アルファの機能又は発現を調節する作用剤は、IL−1アルファ受容体に対するIL−1アルファの結合を妨害する作用剤、又はIL−1アルファをコードする核酸の転写又は翻訳のレベルを調節する作用剤であってもよい。例えば、作用剤は、IL−1アルファ又はIL−1アルファ受容体と特異的に結合する抗体(Ab)であってもよい。Abは、対象体に投与した際に、対象体のCD14+CD16+単球の量又は機能を低減するAbであってもよい。
【0017】
Abは、モノクローナル抗体(mAb)、例えばIL−1アルファと特異的に結合するmAbであってもよい。抗体は、IL−1アルファと特異的に結合するモノクローナルヒトIgG等のヒトAb(例えば、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖とを有する抗体、又は配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖とを有する抗体)であってもよい。
【0018】
また、本方法では、IL−1アルファの機能又は発現を調節する作用剤は、対象体のIL−1アルファ又はIL−1アルファ受容体と特異的に結合するAbの濃度を増加させるワクチン、又は対象体のIL−1アルファ発現を低減若しくは調節する核酸であってもよい。
【0019】
ヒト対象体は、CD14+CD16+単球の機能異常又はレベル異常と関連する病態を示す個人であってもよい。例えば、病態は、癌、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、又は炎症性腸疾患等の炎症性状態又は自己免疫状態であってもよい。また、ヒト対象体は、作用剤の投与前に異常に高いレベルの、CD14+CD16+単球である末梢血白血球(例えば、全血球百分率数で少なくとも1.5%の総白血球細胞)を有する個人、又は作用剤の投与後に正常レベル若しくは正常レベル未満の、CD14+CD16+単球である末梢血白血球(例えば、全血球百分率数で1.5%未満の総白血球細胞)を有する個人であってもよい。また、ヒト対象体は、作用剤の投与前に異常に高いレベルの、CD14+CD16+単球である末梢血白血球(例えば、少なくとも10%の単球がCD14+CD16+である)を有する個人であってもよい。
【0020】
これらの方法では、そのような投与が対象体のCD14+CD16+単球の量又は機能を調節するかどうかを決定するステップは、投与前後の対象体のCD14+CD16+単球の量(例えば、数、全血球百分率数での総白血球細胞のパーセント、濃度、及び/又はCD14++単球等の他の血球に対する比率)を決定すること、及び/又は投与前後の対象体のCD14+CD16+単球の機能を評価すること(例えば、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)等の内皮細胞への結合を評価すること)を含んでいてもよい。
【0021】
別様に定義されていない限り、本明細書に使用されている技術用語は全て、本発明が属する分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。生物学的用語の一般的に了解されている定義は、Rieger et al.,Glossary of Genetics:Classical and Molecular,5th edition,Springer−Verlag:New York,1991;及びLewin,Genes V,Oxford University Press:New York,1994に見出すことができる。
【0022】
「抗体」という用語は、免疫グロブリン、並びに完全な免疫グロブリンの酵素消化又は分子生物学の技術のいずれで製作されてもよい免疫グロブリンの任意の部分又は断片を意味している。この用語は、抗血清等の、免疫グロブリン(又はその部分若しくは断片)を含有する混合物も指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」又は「ヒトAb」という用語は、一般的に、ヒトにおいて実質的に非免疫原性である免疫グロブリン(Ig)を指す。
【0024】
「特異的に結合する」という用語は、本明細書中で使用される場合、ポリペプチド(Abを含む)又は受容体を参照する際に、タンパク質及び他の生体物質の異種性集団中で、タンパク質又はポリペプチド又は受容体の存在を決定する結合反応を指す。従って、指定された条件(例えば、抗体の場合はイムノアッセイ条件)下で、指定されたリガンド又はAbは、その特定の「標的」と結合し、試料中に存在する他のタンパク質、又は生物中でそのリガンド若しくはAbが接触するに至る他のタンパク質とは著しい量では結合しない。一般的に、第2の分子と「特異的に結合する」第1の分子は、その第2の分子に対して、約10リットル/モルより大きな(例えば、10、10、10、10、1010、1011、及び1012以上)平衡結合定数を有する。
【0025】
Ab等のタンパク質分子を参照する場合、「精製された」とは、自然の状態ではそのような分子に伴っている成分から分離されていることを意味する。典型的には、Ab又はタンパク質は、少なくとも約10重量%(例えば、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.9%、及び100%)が、自然の状態ではそのAb又はタンパク質に伴っている非Abタンパク質又は他の天然に存在する有機分子を含んでいない場合に、精製されているという。純度は、任意の適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフイー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法、HPLC分析、又は他の好適な方法で測定することができる。化学合成タンパク質、又は自然の状態で生じる細胞タイプ以外の細胞タイプ中で産生される他の組換えタンパク質は、「精製されている」。
【0026】
好適な方法及び物質が下記に記述されているが、本発明の実施又は試験には、本明細書に記述されているものに類似するか又は等価である方法及び物質を使用することができる。本明細書で言及されている出版物は全て、参照によりそれらの全体が組み込まれる。矛盾が生じる場合、定義を含む本明細書が優先することになる。加えて、下記で考察されている特定の実施形態は、例示に過ぎず、限定を意図していない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、IL−1アルファ標的作用剤のヒト対象体への投与が、対象体のCD14+CD16+単球の機能又は量を調節するかどうかを評価するための方法を包含する。下記に記述されている好ましい実施形態は、これら方法の応用を例示する。それにもかかわらず、これら実施形態の説明から、本発明の他の態様は、下記に提供されている説明に基づいて製作及び/又は実施することができる。
【0028】
一般的方法
従来の免疫学的技術及び分子生物学的技術が関与する方法が、本明細書に記述されている。免疫学的方法(例えば、抗原−Ab複合体を検出及び所在確認するためのアッセイ、免疫沈降、及び免疫ブロット等)は、当技術分野で一般的に知られており、Current Protocols in Immunology,Coligan et al.,ed.,John Wiley&Sons,New York等の方法論文書に記述されている。分子生物学的技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1−3,Sambrook et al.,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2001;及びCurrent Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,ed.,Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York等の文書で詳細に記述されている。Ab法は、Handbook of Therapeutic Antibodies,Dubel,S.,ed.,Wiley−VCH,2007に記述されている。血球分析法は、Flow Cytometry,David Keren,American Society for Clinical Pathology;4th edition,2007及びLichtman et al.,Williams Hematology,McGraw−Hill Professional;7th edition,2005に記述されている。
【0029】
IL−1アルファの機能及び/又は発現を調節する作用剤
本発明の種々の方法は、IL−1アルファの機能又は発現を調節する作用剤を、ヒト対象体に投与するステップを特色とする。IL−1アルファの機能又は発現を調節する任意の好適な作用剤を使用することができる。例えば、作用剤は、IL−1アルファ受容体に対するIL−1アルファの結合を妨害する作用剤、又はIL−1アルファをコードする核酸の転写又は翻訳のレベルを調節する作用剤であってもよい。多数のそのような作用剤は、公知であるか、又は当業者であれば、本明細書の教示若しくは当技術分野の知識を使用して製作することができる。これらには、IL−1アルファ又はIL−1アルファ受容体と特異的に結合する抗体(そのためIL−1アルファに対する結合が遮断される)、対象体においてそのような抗体の濃度を増加させるワクチン、IL−1アルファ受容体等のIL−1アルファ結合タンパク質及びそれらの変異体(例えば、断片又はアミノ酸置換突然変異体)、IL−1アルファに結合する核酸(例えば、アプタマー)、IL−1アルファと特異的に結合する有機低分子、IL−1アルファ発現を低減又は調節する核酸、及び前述したものの2つ以上(例えば、2、3、4、又は5つ以上)の組合せが含まれる。
【0030】
抗体
本発明の方法に有用な抗体には、対象体に投与した際に、対象体のCD14+CD16+単球の量又は機能を調節する(例えば、低減する)抗体が含まれる。CD14+CD16+単球はIL−1アルファも発現するため、IL−1アルファ又はIL−1アルファ受容体と特異的に結合するAbを、そのような単球の機能又は量を調節するために使用することができる。抗IL−1アルファ又は抗IL−1アルファ受容体Abは、ポリクローナルであってもよく又はモノクローナルであってもよい。望ましくない反応を防止するために、本発明の方法で使用されるAbは、好ましくはヒト化されているか、又はより好ましくはヒトである。
【0031】
本発明の方法では、好ましくは、(i)ヒトIL−1アルファに対して非常に高い結合親和性を示す抗原結合可変領域、並びに(ii)C1q結合による補体系の活性化及び幾つかの異なるFc受容体に対する結合の両方に効果的な定常領域を含むヒトmAbが使用される。ヒトAbは、好ましくはIgG1である。抗体のKaは、好ましくは、少なくとも1×10−1以上(例えば、1×1010−1より大きい)である。ヒトAbは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含んでいてもよく、又は配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖とを有するAbを含んでいてもよい。
【0032】
一般的にあまり好ましくないが、異なる動物種に由来する異なる部分(例えば、ヒトIgの定常領域に融合されたマウスIgの可変領域)を有する抗原結合分子であるキメラ抗IL−1アルファmAb(例えば、「ヒト化」mAb)も、本発明で使用することができる。そのようなキメラ抗体は、当技術分野で公知の方法により調製することができる。例えば、Morrison et al,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,81:6851,1984;Neuberger et al.,Nature,312:604,1984;Takeda et al.,Nature,314:452,1984。同様に、抗体は、当技術分野で公知の方法によりヒト化することができる。例えば、所望の結合特異性を有するモノクローナル抗体は、商業的に、又は米国特許第5,693,762号;第5,530,101号;若しくは第5,585,089号に記述されているようにヒト化することができる。
【0033】
好ましくは、力価の高いAbを投与して対象体に対する副作用を最低限にすることができるのを保証するために、本発明で使用してもよいmAb組成物は、少なくとも0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99、又は99.9重量パーセント以上の純度である(任意の賦形剤を除く)。Ab組成物は、単一タイプのmAb(つまり、単一クローンのBリンパ球系統から産生されたmAb)のみを含んでいてもよく、又は2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10以上)の異なるタイプのmAbsの混合物を含んでいてもよい。
【0034】
Abの機能を修飾又は増強するために、Abは、細胞毒素等の別の分子に結合されていてもよい。IL−1アルファに特異的なAbは、IL−1アルファを発現する細胞をより有効に死滅させるために、1つ又は複数の細胞毒素と結合されていてもよい。本発明で使用するための細胞毒素は、mAbに結合させることができる任意の細胞毒性剤(例えば、接触後に細胞を死滅させることができる分子)であってもよい。細胞毒素の例には、限定はしないが、放射性核種(例えば、35S、14C、32P、125I、131I、90Y、89Zr、201Tl、186Re、188Re、57Cu、213Bi、及び211At)、複合放射性核種、及び化学療法剤が含まれる。細胞毒素の更なる例には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:代謝拮抗剤(例えば、5−フルオロウラシル(5−flourouricil)(5−FU)、メトトレキサート(MTX)、フルダラビン等)、抗微小管剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、タキサン等(パクリタキセル及びドセタキセル等))、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド(cyclophasphamide)、メルファラン、ビスクロロエチルニトロソウレア(bischloroethylnitrosurea)(BCNU)等)、白金剤(例えば、シスプラチン(cDDPとも呼ばれる)、カルボプラチン、オキサリプラチン、JM−216、CI−973等)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン等)、抗生物質(例えば、マイトマイシンC)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシド、テニポシド(tenoposide)、及びカンプトテシン)、又はリシン、ジフテリア毒素(DT)、シュードモナス(Pseudomonas)菌体外毒素(PE)A、PE40、アブリン、サポリン、アメリカヤマゴボウ(pokeweed)ウイルスタンパク質、臭化エチジウム、グルココルチコイド、炭疸毒素、及びその他等の他の細胞毒性剤。例えば、米国特許第5,932,188号を参照されたい。
【0035】
ワクチン
また、本方法では、IL−1アルファの機能又は発現を調節(例えば、阻害)する作用剤は、対象体のIL−1アルファと特異的に結合する抗体の濃度を増加させるワクチンであってもよい。好適なワクチンは、薬学的に許容される担体中に免疫原性形態のIL−1アルファを含むことができる。アルミニウム塩等のアジュバントが、同様に含まれていてもよい。免疫原性形態のIL−1アルファは、完全なタンパク質又はそのようなタンパク質のペプチド断片を含んでいてもよい。免疫応答を増強するために、免疫原性形態のIL−1アルファは、キーホールリンペットヘモシニアン又はシュードモナス菌体外毒素等の担体タンパク質と結合されていてもよい。ワクチン投与の結果として産生されるAbは、上述のように収集及び使用することができる。
【0036】
IL−1アルファを調節するタンパク質及び模倣体
直接標的化によりIL−1アルファの発現及び/又は機能を調節するタンパク質の例には、IL−1RI、IL−1RII、及びそのIL−1アルファ結合変異体(例えば、組換え形態、断片、模倣体、突然変異体、及びそれらの結合体)等のIL−I受容体(IL−1R)が含まれる。可溶性形態のIL−1Rは、投与が容易であるため好ましい。IL−1アルファの発現及び/又は機能を間接的に調節することができるタンパク質の例には、IL−1R等のリガンド結合を単球関連IL−1アルファと競合することができるタンパク質(例えば、活性化シグナルを伝達しないタンパク質)が含まれる。これらには、修飾された非活性化IL−1アルファ(前駆IL−1アルファ、膜結合型IL−1アルファ、及び組換えIL−1アルファを含む)、修飾された非活性化IL−1ベータ(前駆IL−1ベータ及び成熟IL−1ベータを含む)、IL−I受容体拮抗剤(IL−1Ra;可溶性IL−1Ra、icIL−1RaI、及びicIL−1RaIIを含む)、及びそれらの変異体が含まれていてもよい。
【0037】
タンパク質(Abを含む)変異体は、当技術分野で公知の種々の技術により生成することができる。例えば、IL−1アルファ、IL−1ベータ、IL−1Ra、及びIL−1R変異体は、別個の点突然変異(複数可)の導入等の突然変異誘発により、又は切断により製作することができる。突然変異は、それを実質的に有するタンパク質変異体を生じさせることができるか、又は単にこれらタンパク質の機能的活性のサブセットを生じさせることができる。生成することができる他のタンパク質変異体には、例えば、プロテアーゼ標的配列を変更する突然変異によりタンパク質分解性切断に耐性であるタンパク質変異体が含まれる。ペプチドのアミノ酸配列の変化が、その結果として天然タンパク質の1つ又は複数の機能的活性を有するタンパク質変異体をもたらすかどうかは、天然タンパク質の能的活性について変異体を試験することにより容易に決定することができる。IL−1アルファの発現又は機能を調節する前述のものの非ペプチド模倣体又は化学的修飾形態を使用することもできる。例えば、Freidinger et al.in Peptides:Chemistry and Biology,G.R.Marshall ed.,ESCOM Publisher:Leiden,Netherlands,1988);Ewenson et al.(1986)J.Med.Chem.29:295;Ewenson et al.in Peptides:Structure and Function(Proceedings of the 9th American Peptide Symposium);Nagai et al.(1985)Tetrahedron Lett 26:647;Sato et al.(1986)J.Chem.Soc.Perkin.Trans.1:1231);Gordon et al.(1985)Biochem.Biophys.Res.Commun.126:419;及びDann et al.(1986)Biochem.Biophys.Res.Commun.134:71)を参照されたい。前述のものを化学的に修飾して、グリコシル基、脂質、ホスフェート、及びアセチル基等の他の化学部分と、共有結合による結合体又は凝集による結合体を形成することにより誘導体を生成することもできる。タンパク質の共有結合誘導体は、化学部分を、タンパク質のアミノ酸側鎖の官能基に、又はポリペプチドのN末端若しくはC末端に結合することにより調製することができる。それらの機能を修飾又は増強するために、前述の作用剤を、上記に列挙されている細胞毒素の1つ又は複数等の別の分子に結合させることができる。
【0038】
IL−1アルファを調節する核酸
また、IL−1アルファの発現/活性を調節する作用剤は、核酸であってもよい。例えば、核酸は、IL−1アルファタンパク質をコードするセンス核酸であってもよい(例えば、細胞に導入することにより、細胞のIL−1アルファ活性を増加させることができる)。また、核酸は、IL−1アルファをコードするmRNAにハイブリダイズして、翻訳を阻害し、タンパク質の発現を減少させるアンチセンス核酸であってもよい。本発明で使用するためのアンチセンス核酸分子は、例えば転写及び/又は翻訳を阻害することによりIL−1アルファタンパク質の発現を阻害するように、IL−1アルファタンパク質をコードする細胞性mRNA及び/又はゲノムDNAと、細胞性条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば、結合する)アンチセンス核酸分子である。結合は、従来の塩基対相補性によるものであってもよく、又は例えばDNA二本鎖に結合する場合は、二重らせんの主溝における特異的相互作用によるものであってもよい。
【0039】
アンチセンス構築体は、細胞中で転写された際に、IL−1アルファタンパク質をコードする細胞性mRNAの少なくとも固有部分に相補的なRNAを産生する発現プラスミドとして送達することができる。或いは、アンチセンス構築体は、IL−1アルファタンパク質発現細胞に導入された際に、IL−1アルファタンパク質をコードするmRNA及び/又はゲノム配列とハイブリダイズすることによりIL−1アルファタンパク質の発現阻害を引き起こす、ex vivoで生成されたオリゴヌクレオチドプローブの形態をとることができる。そのようなオリゴヌクレオチドプローブは、好ましくは、内因性ヌクレアーゼ、例えばエキソヌクレアーゼ及び/又はエンドヌクレアーゼに耐性であり、従ってin vivoで安定している修飾オリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドとして使用される例示的な核酸分子は、DNAのホスホロアミド酸、ホスホチオ酸、及びメチルホスホン酸類似体である(例えば米国特許第5,176,996号;第5,264,564号;及び第5,256,775号を参照)。
【0040】
核酸分子は、in vivoでIL−1アルファを発現する細胞に送達することができる。DNA又はRNAを細胞に送達するための多数の方法が、開発されている。例えば、そのような分子は、エレクトロポレーション、リポソーム媒介性形質移入、CaCl媒介性形質移入、又は遺伝子銃の使用等の標準的技術により、標的部位に直接導入することができる。或いは、所望の細胞を標的とするように設計された修飾アンチセンス分子(例えば、標的細胞表面上で発現される受容体又は抗原と特異的に結合するペプチド又は抗体に結合されたアンチセンス)を使用することができる。内因性mRNAの翻訳を抑制するのに十分なアンチセンスの細胞内濃度を達成することは困難であることが多いため、好ましい手法では、アンチセンスオリゴヌクレオチドが、強力なプロモーター(例えば、CMVプロモーター)の制御下に配置されている組換えDNA構築体が使用される。細胞を形質転換するためにそのような構築体を使用することにより、その結果として、内因性IL−1アルファ転写物と相補的塩基対を形成し、それによりIL−1アルファmRNAの翻訳を防止するのに十分な量の一本鎖RNAの転写がもたらされるだろう。
【0041】
IL−1アルファmRNA転写物を触媒的に切断するように設計されたリボザイム分子を使用して、IL−1アルファmRNAの翻訳及びIL−1アルファタンパク質の発現を防止することもできる(例えば、1990年10月4日に公開された国際公開第90/11364号;Sarver et al,Science 247:1222−1225,1990、及び米国特許第5,093,246号を参照)。好ましくは、リボザイムは、切断認識部位がIL−1アルファmRNAの5’末端付近に位置するように、つまり効率を増加させ、非機能的なmRNA転写物の細胞内蓄積を最小限に抑えるように、遺伝子操作される。本発明内のリボザイムは、ベクターを使用して細胞に送達することができる。
【0042】
内因性IL−1アルファ遺伝子発現は、標的化相同組換えを使用して、IL−1アルファ遺伝子又はそのプロモーターを不活化又は「ノックアウト」することにより低減することもできる。例えば、Kempin et al.,Nature 389:802(1997);Smithies et al.,Nature 317:230−234,1985;Thomas and Capecchi,Cell 51:503−512,1987;及びThompson et al.,Cell 5:313−321,1989を参照されたい。例えば、内因性IL−1アルファ遺伝子(IL−1アルファ遺伝子のコード領域又は調節領域のいずれか)に相補的なDNAにより隣接された突然変異非機能性IL−1アルファ遺伝子変異体(又は全く無関係なDNA配列)を使用して、選択可能なマーカー及び/又は陰性選択可能なマーカーを用いて又は用いずに、in vivoでIL−1アルファタンパク質を発現する細胞を形質移入することができる。
【0043】
或いは、内因性IL−1アルファ遺伝子発現は、IL−1アルファ遺伝子の調節領域(つまり、IL−1アルファプロモーター及び/又はエンハンサー)に相補的なデオキシリボヌクレオチド配列を標的として、標的細胞におけるIL−1アルファ遺伝子の転写を防止する3重らせん構造を形成することにより低減することができる。(一般的に、Helene,C,Anticancer Drug Des.6(6):569−84,1991;Helene,C.,et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.660:27−36,1992;及びMaher,L.J.,Bioassays 14(12):807−15,1992を参照。)IL−1アルファ遺伝子発現の阻害は、RNA干渉(RNAi)技術を使用して実施することもできる。
【0044】
IL−1アルファに結合する核酸(アプタマー)
一連の選択(例えば、SELEXによる;指数関数的な濃縮によるリガンドの系統的進化)を繰り返すことによりIL−1アルファに結合するように遺伝子操作されたアプタマー又は核酸種を、IL−1アルファの機能を調節するために、本発明で使用することもできる。特定のマーカーに対するアプタマーを製作及び使用する方法は、例えば、米国特許第5,670,637号;第6,331,398号;及び第5,270,163号;第5,567,588号に記述されている。
【0045】
IL−1アルファの発現/機能を調節する低分子
低分子(一般的には有機)も、IL−1アルファの発現又は機能を調節することができる。コルチコステロイド、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、リノミド(ロキニメックス)、サリドマイド、ペントキシフィリン、及びゲニステイン等の、抗炎症作用を有する公知の低分子を使用することができる。低分子のライブラリーをスクリーニングして、単球中でIL−1アルファの発現を調節する(上方制御又は下方制御する)分子を特定することにより、他の分子を特定することができる。
【0046】
作用剤の投与が、対象体のCD14+CD16+単球の量を調節するかどうかの決定
本発明の1つの方法は、IL−1アルファの発現及び/又は機能を調節する作用剤の投与が、対象体のCD14+CD16+単球の量を調節するかどうかを決定するステップが、投与前後の対象体のCD14+CD16+単球の量(例えば、数、全血球百分率数での白血球のパーセント、濃度、CD14++単球等の他の血球に対する比率)を決定することを含むことができることを特色とする。投与前後の対象体のCD14+CD16+単球の量を決定することは、任意の好適な方法により実施することができる。例えば、末梢血単核細胞(PBMC)をヒト対象体から単離し、その後CD14及びCD16に特異的な抗体を使用して、フローサイトメトリーにかけることができる。末梢血細胞を遠心分離して細胞を濃縮し、免疫組織化学的技術を使用してCD14+CD16+集団を特定及び定量化することもできる。
【0047】
作用剤の投与が、対象体のCD14+CD16+単球の機能を調節するかどうかの決定
本発明の1つの方法は、IL−1アルファを標的とする作用剤の投与が対象体のCD14+CD16+単球の機能を調節するかどうかを決定するステップが、投与前後の対象体のCD14+CD16+単球の機能を評価することを含むことができることを特色とする。投与前後の対象体のCD14+CD16+単球の機能を決定することは、任意の好適な方法により実施することができる。例えば、CD14+CD16+単球は、ヒト対象体から収集された末梢血単核細胞から単離することができる。その後、単離された単球を、人工膜基材に接着したヒト臍帯静脈内皮細胞を使用するin vitro結合及び経内皮遊走アッセイにかけることができる。例えば、Etingin et al.(1991)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,88:7200−7203を参照されたい。
【0048】
多数の異なるアッセイを実施して、CD14+CD16+単球の機能的特徴を決定することができる。患者から単離された白血球は、炎症促進性カスケードを誘導するそれらの能力をin vitroで試験することができる。滑膜細胞を刺激してMCP−1の発現を上方制御する能力、又はEL−4Tリンパ球細胞系統からのIL−2産生を刺激する能力は、2つのそのようなアッセイである。これらサイトカインの誘導は、CD14+CD16+単球依存性であり、従って、これら方法は、末梢血中のこれら細胞の炎症促進性活性を低減することを目的とする治療の有効性を決定する手段を提供する。
【0049】
単球の循環及び血液から組織への遊走に関する生物学的特徴をモデル化するために、ポリカーボネートフィルターアッセイ(トランスウエルアッセイ)の使用を伴う確立された細胞培養技術を使用して、この遊出をin vitroで研究することは、当分野の標準的技術である。初代内皮細胞(例えば、HUVEC)の供給源を、ポリカーボネートフィルター(支持マトリックス)に播種し、コンフルエント単層を形成するまで増殖させる。そのため、これは、血管脈管構造の内皮を模倣する。目的の入力細胞(白血球)をヒト血液から単離し、その後トランスウエルデバイスの上部チャンバーにアプライする。インキュベーション期間後、トランスウエルの差込片を取り除き、遊出した細胞を底部チャンバーから収集して分析する。フローサイトメトリー分析を使用して、遊出した細胞のパーセントを計算し、細胞表面タンパク質マーカーにより、それらの分化表現型を決定することができる。HUVECなどの内皮障壁を越える白血球のin vitro遊走は、細胞分化を開始させるのに十分であり得る。白血球の中でも、内皮細胞単層を通り抜ける単球遊出は、マクロファージ又は未熟樹状細胞のいずれかへとそれ自体の分化を誘導するのに十分であることが示されている。
【0050】
培地200(Cascade Biologics社製)で維持された初代ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC;BD Biosciences社製)を、フィブロネクチンで予めコーティングされた微孔性ポリカーボネート膜(細孔径5μm)を含有するトランスウエルデバイス(コーニング社製)の上部チャンバーに播種する。多孔性膜の上部にあるHUVEC内皮細胞を、コンフルエントになるまで増殖させ(位相差光顕微鏡検査法により決定される)、緊密なギャップ結合の形成、従って生理学的障壁の形成について分析する(染料の受動拡散により決定される)。種々の種類の入力細胞を上部チャンバーに添加する。入力細胞は、赤血球細胞の単純溶解により正常末梢血から単離された全白血球(リンパ球、単球、顆粒球、及び好中球);又はHistopaque−1077を使用して単一段階の密度遠心分離により単離された末梢血単核細胞(PBMC;リンパ球及び単球);又は46%パーコールを使用する2段階の密度遠心分離、若しくはその代わりに、当技術に従って免疫磁気ビーズ(MiltenyiBiotec社製)で非単球細胞を枯渇させることにより排他的に単離された単球であってもよい。手短に言えば、単核細胞の場合、1.0×10細胞のPBMCを、トランスウエルデバイスの上部チャンバーにあるHUVEC単層に播種し、37℃の標準的COインキュベーターで1〜2時間結合を可能にさせる。PBSで穏やかに洗浄することにより、未結合PBMCを除去する。トランスウエルの上部チャンバー(HUVEC単層及び未遊出細胞を含有する)を取り外した後、残りの細胞の遊出を2〜3日間可能にさせておき、下部チャンバーの遊出細胞を、分析のために収集する。細胞を遠心分離によりペレット化し、この時点でモノクローナル抗体を用いて染色して、細胞表現型及びサブタイプを決定することができる(例えば、CD14+CD16+単球/マクロファージ対CD19+Bリンパ球)。細胞を、2%加熱不活化ウシ胎仔血清で補完された500μlのPBSに再懸濁し、FACSCaliburフローサイトメーターを使用して分析する。表現型の分析に加えて、フローサイトメトリーは、1分間、高流速で各試料からデータを収集することにより、HUVEC単層に播種された入力PBMCの数のパーセントとして表される遊走細胞の数を決定することができる。このプロトコールの変法には、入力細胞をX92抗−IL−1アルファAbと共に事前インキュベーションして、膜を保持するIL−1アルファ白血球の遊出に対する、その潜在的な中和効果を決定することが含まれる。膜結合型IL−1アルファに陽性の白血球は、静止HUVEC細胞上に発現されたIL−1R1受容体と結合すると予測されるだろう。実験的には、IL−1アルファ単独で、又はX92 Abと共に事前インキュベートされたIL−1アルファで刺激した後、接着HUVECを、非酵素的試薬(例えば、EDTA又はCellstripper[Cellgro社製])を使用して培養ウエルから取り出し、PBSで洗浄し、その後CD54、CD62E、及びCD106接着分子の発現をフローサイトメトリーで分析することになる。
【0051】
トランスウエルデバイスの下部チャンバーに、単球走化性タンパク質1(MCP−1)等のケモカインを添加することを用いて、X92 Abの存在下又は非存在下における白血球の自然遊出と走化性遊出との違いを研究することができる。
【0052】
ヒト対象体
本発明の方法は、任意の好適なヒト対象体に対して実施することができる。しかしながら、好ましくは、対象体は、CD14+CD16+単球のレベル異常又は機能異常に関連する状態を罹患している対象体だろう。そのような対象体の例には、炎症状態、自己免疫状態、癌(例えば、乳癌、結腸直腸癌、前立腺癌、卵巣癌、白血病、肺癌、子宮内膜癌、又は肝臓癌)、アテローム性動脈硬化、関節炎(例えば、骨関節炎又は関節リウマチ)、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎又はクローン病)、末梢血管疾患、脳血管発作(脳卒中)、慢性炎症が存在する病態、単球/マクロファージ浸潤を示す病変を特徴とする病態、アミロイド斑が脳に存在する病態(例えば、アルツハイマー病)、骨粗しょう症、筋萎縮性側索硬化症、又は多発性硬化症等の、CD14+CD16+単球の機能異常又はレベル異常に関連する病態を示す対象体が含まれる。
【実施例】
【0053】
実施例1 フローサイトメトリー実験
方法:健常ドナーから全血を無菌条件下で収集した。2.5mlの全血を、溶解緩衝液(150mM酢酸アンモニウム 0.1mM EDTA)で10倍に希釈した。細胞を、氷上で10分間緩衝液中で維持し、その後1000Gで5分間遠心沈降した。細胞を、氷冷FACS緩衝液(1%粉乳で補完されたPBS、0.2μmフィルターでろ過されている)に再懸濁した。細胞を、FACS緩衝液で2回洗浄した。ペレット化した細胞を、2.8mlのFACS緩衝液に再懸濁し、血球計を使用して計数し、以下のスキームに従って蛍光性標識抗体を薄明りの下で添加した:
1)PerCP−Cy5.5結合抗CD14(eBioscience(商標)親和性精製、マウス抗ヒトIgG、カッパ、45−109番)
2)PE結合抗CD16(eBioscience(商標)親和性精製、マウス抗ヒトIgG1、12−0168番)
3)FITC結合抗IL−1a(eBioscience(商標)親和性精製、マウスIgG1、抗ヒトIL−1a、11−718番)
4)FITC結合抗KLH(eBioscience(商標)親和性精製、マウスIgG1、カッパ、11−4714番)
5)抗CD14、抗CD16
6)抗CD14、抗CD16、抗IL−1a
7)抗CD14、抗CD16、抗IL−1a、抗KLH
【0054】
400μlのFACS緩衝液に懸濁した細胞(およそ1.5×10個)を、1.5mlのエッペンドルフチューブに移し、光から遮蔽して氷上で維持した。抗体を添加し(50μl)、45分間細胞と反応させた。その後、細胞を、1000Gで5分間の遠心分離を3回繰り返すことにより洗浄し、1.5mLのFACS緩衝液に再懸濁し、BD FACSアナライザーを使用して分析するまで氷上で維持した。
【0055】
結果:単核細胞の小サブセットを特定するために、全末梢血細胞(WPBC)を抗CD14及び抗CD16で染色した。フローサイトメトリー(FACS)を使用して、インターロイキン−1アルファの発現について、CD14+CD16+WPBCを、FITC標識抗IL−1アルファ特異的モノクローナル抗体を使用して更に分析した。驚くべきことに、三色FACS分析により、実質的に全てのIL−1アルファ+染色が、実際にCD14+CD16+集団と関連していたことが明らかになった。結果的に、血液中のCD14+CD16+細胞及びIL−1アルファ+細胞集団は、大部分が同じ集団だったことが決定された。
【0056】
実施例2 細胞結合IL1Aの中和:MABP1は、IL1で刺激したHUVEC細胞上でのE−セレクチン発現を阻止する
MABp1は、内皮細胞の表面における細胞接着分子の発現誘導を阻害することができる。2つの重要な接着分子CD54(ICAM−1)及びCD62E(E−セレクチン)のMABP1媒介性阻害を、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をモデル系として使用して観察した。MABp1効果は、HUVECが、可溶性組換えヒトIL1アルファによってではなく、遺伝子操作されたDG44 CHO細胞(GPI−IL1A細胞)の表面にグリコシル−ホスファチジルイノシトール(GPI)により係留された膜性IL1アルファによって刺激される場合に、最も著しい。代表的な実験では、6ウエルプレート中のHUVEC細胞のコンフルエント培養を、M−200培地中で5×10個のGPI−IL1A DG44細胞と共に、単独で、10μg/mL MABP1の存在下で、又は10μg/mL D5ヒトIgG1アイソタイプ対照抗体の存在下で、終夜共培養した。17〜20時間後、HUVEC単層を、ダルベッコPBSでよく洗浄し、その後CellStripper試薬(Cellgro Mediatech社製)を用いた20分間の非酵素処理により取り上げた。標準的フローサイトメトリープロトコールを使用して、CD62E(E−セレクチン)発現について、細胞を直ちに分析した。染色緩衝液は、2%加熱不活性化ウシ胎仔血清で補完されたダルベッコPBSを含んでいた。PE結合マウス抗ヒトCD62Eモノクローナル抗体(eBioscience社製、クローンP2H3)又はPE結合マウスIgG1kアイソタイプ対照(eBioscience社製、クローンP3)を、製造業者の説明書に従って使用して、室温、暗所で20分間100マイクロリットルの染色容積中でHUVEC細胞を染色した。その後、染色緩衝液で2回の洗浄を実施し、次にFACSCaliburフローサイトメーター(BD Biosciences社製)で試料を取得した。n=3の実験で、膜性GPI−IL1Aにより誘導されたHUVEC細胞表面上にあるE−セレクチンの上方制御は、MABP1により、未刺激HUVEC細胞が示すような基線レベルに中和された。
【0057】
他の実施形態
本発明は、その詳細な説明と共に記述されているが、前述の説明は例示を目的としており、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定しないことが理解されるべきである。他の態様、利点、及び改変は、添付の請求項の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)IL−1アルファの機能又は発現を調節する作用剤を、ヒト対象体に投与するステップと、
(b)そのような作用剤の投与が、前記対象体のCD14+CD16+単球の量又は機能を調節するかどうかを決定するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記IL−1アルファの機能又は発現を調節する作用剤が、IL−1アルファ受容体に対するIL−1アルファの結合を妨害する作用剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作用剤が、IL−1アルファと特異的に結合する抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体が、IL−1アルファと特異的に結合するモノクローナル抗体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記モノクローナル抗体がヒト抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒト抗体がIgG1である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒト抗体が、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖とを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒト対象体が、CD14+CD16+単球の機能異常又はレベル異常に関連する病態を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記病態が炎症状態である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記病態が自己免疫状態である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記作用剤の投与前には、前記ヒト対象体の末梢血白血球の少なくとも1.5%がCD14+CD16+単球であり、前記作用剤の投与後には、前記ヒト対象体の末梢血白血球細胞の1.5%未満がCD14+CD16+単球である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記作用剤の投与が、その結果として、全血球百分率数で少なくとも10%のCD14+CD16+単球パーセントの低減をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
そのような投与が前記対象体のCD14+CD16+単球の量又は機能を調節するかどうかを決定するステップが、前記作用剤の投与前後の前記対象体のCD14+CD16+単球の機能を評価することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記作用剤の投与が、その結果として、少なくとも10%のCD14+CD16+単球機能の低減をもたらす、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(a)疾患又は病理学的障害を有するヒト対象体が、前記疾患又は病理学的障害に寄与するCD14+/CD16+単球を有することを決定するステップと、
(b)IL−1アルファの機能又は発現を調節する作用剤を、前記ヒト対象体に投与するステップと、
(c)そのような作用剤の投与が、前記対象体のCD14+CD16+単球の量を調節するかどうかを決定するステップとを含む方法。
【請求項16】
対象体のCD14+CD16+単球の量又は機能を調節する薬剤を調製するための、IL−1アルファと特異的に結合する抗体の使用。

【公表番号】特表2012−502113(P2012−502113A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527020(P2011−527020)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/056809
【国際公開番号】WO2010/030979
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(510312617)エックスバイオテク,インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】XBIOTECH,INC.
【Fターム(参考)】