瘻孔治療のための自家及び同種異系の脂肪由来間質幹細胞組成物
【課題】本発明は、瘻孔治療のためにヒトの脂肪組織由来の間質幹細胞を臨床的に有効な量で製造する方法及び組成物を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、従来の標準的培養法を改善することによって、臨床的に有効な数の脂肪組織由来間質細胞を短期間に効率よく製造できる。本発明の方法により得られる脂肪組織由来間質細胞を含む脂肪幹細胞組成物は、従来の方法により製造された細胞組成物を越える優れた多分化能及び免疫調節活性を示すので、瘻孔治療にさらに適している。特に同種異系の脂肪由来幹細胞においては免疫応答が抑制されるので、本発明の細胞組成物は優れた臨床的用途を有している。
【解決手段】本発明の方法は、従来の標準的培養法を改善することによって、臨床的に有効な数の脂肪組織由来間質細胞を短期間に効率よく製造できる。本発明の方法により得られる脂肪組織由来間質細胞を含む脂肪幹細胞組成物は、従来の方法により製造された細胞組成物を越える優れた多分化能及び免疫調節活性を示すので、瘻孔治療にさらに適している。特に同種異系の脂肪由来幹細胞においては免疫応答が抑制されるので、本発明の細胞組成物は優れた臨床的用途を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は瘻孔を治療するためにヒト脂肪組織由来の間質幹細胞(stromal stem cell)の臨床的有効量を製造する方法及びこれによって製造される組成物に係り、この間質幹細胞は自家及び同種異系の脂肪組織から得られる。
【背景技術】
【0002】
再生医療は損傷したり機能が低下した組織及び/又は器官を治療するための方法であって、通常は多分化能幹細胞を用いる細胞に基づく治療法(cell-based therapy)に関連している。再生医療に用いられる成体幹細胞の主な種類の一つである、骨髓由来幹細胞はインビトロで増殖が可能であり、例えば、筋肉細胞、心筋細胞、骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、神経細胞などを含む多様な細胞へ分化が可能である。また、骨髄由来幹細胞は、免疫調節活性を有するので、同種異系の骨髓移植に適用可能であり、また自家免疫疾患に免疫抑制剤として使用可能である。
【0003】
脂肪組織も幹細胞を多量に含んでおり、脂肪幹細胞を移植材料として利用しようとする広範囲にわたる研究が近年行われている。脂肪組織は他の組織型と比較してかなり大量の幹細胞を有していて(すなわち、脂肪組織と同量の骨髓から単離された幹細胞より約1,000倍多い量)、この脂肪由来幹細胞は骨髓由来幹細胞と同様に、軟骨細胞、骨細胞、脂肪細胞、筋細胞などに分化する多分化能を有している。また、脂肪由来間質幹細胞は骨髓由来幹細胞と同様に細胞表面マーカーの発現を示し、そして自家または同種異系の免疫応答に対するインビボ並びにインビトロの免役調節活性を有している。
【0004】
瘻孔(fistula)は体内に異常形成された管状の穴(channel)であって、色々の原因によって体の多部位に発生する場合がある。最も頻繁に発生する瘻孔は肛門と直腸を含む腸管系に主に存在している。痔瘻は通常、肛門腺にできた炎症が皮膚の外側に広がって行きながら膿のような分泌物がにじみ出る、炎症障害に起因していて、痔疾患の約20%を占める。
【0005】
痔瘻は実質上、直腸管と肛門周辺の皮膚の間の異常な管状の穴を示し、肛門ではなく開口部を介する異常な大便排出をもたらす。これが肛門直腸膿瘍(anorectal abscess)の発生、それに続く排膿瘻孔形成の主な原因である。このように形成された瘻孔を痔瘻(fistula in ano)と称する。すなわち、痔瘻は、肛門直腸膿瘍が破れたときに直腸や肛門管の内側から肛門周辺の皮膚まで形成された長い孔である。痔瘻は肛門機能に重要な役割を果たす外肛門括約筋との関係によって次の4種類に分類される。
【0006】
(1)内肛門括約筋と外肛門括約筋との間に形成された瘻管を有している括約筋間タイプの痔瘻(inter-sphincteric type);
(2)外肛門括約筋を貫通して形成された瘻管を有している括約筋貫通タイプの痔瘻(trans-sphincteric type);
(3)外肛門括約筋の上部に形成された瘻管を有している括約筋上部タイプの痔瘻(supra-sphincteric type);及び
(4)肛門腺窩に形成されず、直腸上部付近に形成された1次瘻孔を有している括約筋外部タイプの痔瘻(extra-sphincteric type)。
【0007】
痔瘻の主な原因は肛門周囲腺の感染であること、更に、痔瘻が結核、クローン病、癌、白血病、白血球減少症などによって発生する場合もあるということが知られている。クローン病は腸の慢性且つ再発性炎症によって特徴付けられて、希少・難治性疾患に指定されている。クローン病による瘻孔は痔瘻だけではなく、膣と連結する直腸膣瘻、腸管付近に形成される腸管瘻などがある。
【0008】
大部分の瘻孔は外科手術によって治療されている。直腸肛門の周辺に発生した瘻孔治療の最も重要な目的は肛門括約筋の正常機能を維持させつつ、完全に治癒することである。しかし、瘻孔は外科手術後にも再発しやすく、例えば、肛門の機能障害による大便失禁などが発生する。従って、現在の手術法は満足な治療効果をもたらさない。
【0009】
瘻孔の手術法としては、例えば、瘻孔切開術、セトン(seton)法、高機能移植片(advanced flap)の使用、筋肉充填術(muscle filling procedure)、フィブリン糊(fibrin glue)の使用などがある。このうち、フィブリン糊はフィブリノゲンとトロンビンとを混ぜ合わせて纖維素塊(fibrin clot)を作って、一般的な外科における外科用充填剤として使用されている。痔瘻では、フィブリン糊を外開口部を通じて瘻孔内に注射して、痔瘻の瘻孔と内開口部を満たしている。
【0010】
最近、幹細胞に関して広範な研究が実施されるにつれ、幹細胞を瘻孔部位に移植して痔瘻を治療する方法が行われてきた。例えば、Mizuno et al.(Plast.Reconstr.Surg.2002,109:199-209)は脂肪組織から分離した成体幹細胞が筋肉細胞に分化するということを立証し、一方、Damian et al.(Dis Colon Rectum 2005,48:1416-1423)は第1相臨床試験において脂肪組織由来幹細胞がクローン病患者の痔瘻を治療するのに安全に使用できることを示した。また、クローン病患者に直腸瘻を治療するために成体幹細胞を移植した結果、幹細胞移植後3ヶ月経過した後にも大便失禁がなかったことが報告された。
【0011】
脂肪由来間質幹細胞はインビトロの培養が容易であることが知られている。しかし、臨床的に有効な細胞数を得るためには、通常比較的多量の脂肪組織及び長期間の細胞培養時間が必要である。特に、クローン病のように慢性的かつ/又は再発性の疾患を患っている患者の瘻孔の治療には多量の細胞、さらに改善された細胞培養法が必要である。また、同種異系の脂肪由来間質細胞を使用することが可能ならば、、これらは臨床的に極めて有用であろう。
【0012】
国際公開第2006/136244号(2006年12月28日) には、脂肪由来間質幹細胞を用いる瘻孔の治療及びその使用が開示されている。しかし、治療に用いられる脂肪由来幹細胞は患者自身から得るので、患者が十分な脂肪組織を有していない場合、脂肪組織に含まれる幹細胞の量が著しく少ない場合、或いは患者自身の幹細胞を培養するのに失敗した場合は、臨床的に適した治療を提供することができない。特に、クローン病によって瘻孔ができた患者の場合、患者の体重減少及び低い肥満度指数をもたらす、深刻な腸管炎症を引き起こしている。このような患者に対しては、十分な量の脂肪由来間質細胞の確保が困難である。また、疾患が長期間持続し、患者に多数個の瘻孔が発生するまで悪化して、瘻孔のサイズも相当に大きくなるので、これら患者の治療のためには多量の幹細胞が必要である。
【0013】
一方、脂肪由来間質細胞のインビトロの培養に関して、既存の特許文献(国際公開第2007/011797号、米国特許第6,777,231号明細書など)や刊行文書(Tissue Engineering 7(2), 211-228, 2001)などに開示された標準的細胞培養法を使用する場合、インビトロの細胞培養に長時間を要し、臨床的に有効な細胞数が得難くなる。従って、臨床適用における実際効率が低下してしまう。未だ明確な原因は明らかに究明されていないが、脂肪幹細胞の増殖率は個人差があって、インビトロ培養中の脂肪間質細胞の増殖が活発に行われずに、細胞培養に失敗する場合があり得る。さらに、例えば、多分化能、免疫調節活性等を含む、脂肪幹細胞の生物学的機能はそのドナーによって異なる場合がある。従って、臨床的に有効な特性を有する同種異系の脂肪幹細胞を利用することによって、瘻孔の治療効果を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2006/136244号
【特許文献2】国際公開第2007/011797号
【特許文献3】米国特許第6,777,231号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Plast. Reconstr. Surg. 2002, 109:199-209
【非特許文献2】Dis Colon Rectum 2005, 48:1416-1423
【非特許文献3】Tissue Engineering 7(2), 211-228, 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、ヒトの脂肪組織から分離した間質幹細胞を瘻孔の治療に利用することに関連して、本発明の1つの目的は、臨床的に有効な数の間質幹細胞を製造するためのさらに改善された方法、及びこの方法により製造された脂肪幹細胞組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述した目的を達成するために本発明では、同種異系の脂肪組織由来間質幹細胞を含む、瘻孔治療のための脂肪幹細胞組成物を提供する。
【0018】
前述した他の目的を達成するために本発明では、次の工程を含む、脂肪由来間質幹細胞を含む脂肪幹細胞組成物の製造方法を提供する。
(a) 対象から脂肪組織を採取すること;
(b) 脂肪組織から間質血管分画(stromal vascular fraction、SVF)を単離すること;
(c) SVFを間質培地で培養すること;
(d) SVFを成長因子であるEGFまたはbFGFを含む増殖培地で培養して、脂肪由来間質幹細胞を培養すること;及び
(e) 脂肪由来間質幹細胞を少なくとも1継代培養すること。
【0019】
本発明により、前記方法に基づき製造された脂肪幹細胞組成物、及び前記組成物を患者の瘻孔に投与する工程を含む瘻孔の治療方法もさらに提供される。
【0020】
本発明は実質的に、瘻孔を治療するために、ヒト脂肪組織由来間質幹細胞の臨床的有効量を製造する方法、及び当該方法により製造した組成物に関する。移植に使用する脂肪由来間質細胞は自家及び/または同種異系の脂肪組織から単離できる。より特定には、本発明に係る同種異系の脂肪由来間質細胞は対象患者から脂肪組織を単離せずに治療に利用でき、より優れた治療効果を有する同種異系脂肪幹細胞を選択して治療に利用できるので、臨床適合性を有している。
【0021】
また、自家または同種異系の脂肪組織から単離した間質血管分画(以降、しばしば「SVF」と呼す)の培養に関して、本発明は、培養を行うために間質培地及び増殖培地を適宜使用することによって、臨床的に有効な数の間質幹細胞を短期間に効果的に製造できる。より詳細には、本発明は、塩基性線維芽細胞成長因子(以降、しばしばbFGFと呼す)または上皮細胞増殖因子(以降、しばしばEGFと呼す)のような特異的成長因子を含む増殖培地を利用することによって、幹細胞の培養時間を画期的に短縮することができ、個体差によって変化するそれらの増殖率を容易に制御することができる。さらに、本発明の方法によって製造された脂肪幹細胞は、従来の細胞培養法で製造された細胞に比べて、優れた分化速度と免疫調節活性を示す。
【0022】
脂肪吸引術によって患者から十分な脂肪組織が提供される場合は、脂肪由来幹細胞を精製して使用できる。しかし、殆どの場合、移植に十分な量の脂肪由来幹細胞を得るためには、増殖過程が必要である。すなわち、脂肪吸引術で得た脂肪組織の量、脂肪組織から単離した脂肪組織由来間質幹細胞の数、及び移植に必要な幹細胞数を計算した後、臨床的に有効な数の幹細胞を得るために、細胞培養及び継代培養を施すべきである。同種異系移植のために、免疫細胞、線維芽細胞など免疫応答を誘発しうる細胞群を十分に除去して、間質幹細胞の均質集団(homogenous population)を生成するために継代培養を施すことが望ましい。継代培養は少なくとも1継代施すのが望ましい。
【0023】
本明細書において「間質培地」は、SVFを培養するための培地を示し、DMEMまたはDMEM/F12などの適宜な細胞培養培地に10%FBS及び1%抗生剤を加えて調製できる。一方、「増殖培地」は、脂肪由来幹細胞の増殖のために使われる培地を示し、間質培地にbFGFまたはEGFをさらに含むことができる。
【0024】
本発明に係る培養方法によれば、脂肪由来幹細胞の平均倍加時間(doubling time)は約48時間であって、約72〜120時間の平均倍加時間を必要とする従来の培養方法(国際公開第2007/011797号)に比べて、著しく増強された効果を奏する。図1に示したように、各継代における平均培養期間は本発明による所定条件下で4日であり、これに対して、従来の方法による各継代についての平均期間は7日であることから、本発明は、細胞産生日数、すなわち、十分な数の細胞を産生するのに必要な期間、を画期的に短縮することができる。例えば、供与された吸引脂肪組織50mlを用いて1×108個の脂肪幹細胞を得るためには、既存の培養法では少なくとも30日を必要とする。これに対して、典型的な間質培地にbFGFまたはEGFを含有する本発明の増殖培地中で供与された吸引脂肪組織を培養する場合は、約15日で所望の産物が得られる。他の実施例によれば、、供与された吸引脂肪組織の量が50ml未満の場合、既存の培養法では臨床的に有効な数の脂肪幹細胞を産生することが難しいが、本発明はこのような難点を克服するための改善された培養法を提供する。
【0025】
間質幹細胞の培養には、脂肪組織のドナーによって倍加時間がかなり変わるが、本発明は、ドナー間の個人差による培養時間の差異を最小化することができる。従って、本発明に係る細胞培養方法は瘻孔治療のための臨床的に有効な細胞数を確保するのに適している。
【0026】
一般的に、インビトロ培養によって継代数が増えるほど、幹細胞の多分化能は減少することが知られている。よって、幹細胞の所望の多分化能を維持できる培養法が必要である。本発明に係る培養方法を用いる場合、幹細胞は、既存の培養法に比べて、筋細胞、骨細胞などに分化する優れた多分化能を示す。また、本発明に係る培養方法で得られた脂肪由来間質幹細胞は固有の免疫調節活性を有利に維持しているのみならず、一層優れた効果を示す。すなわち、本発明に従って、bFGFまたはEGFを含む増殖培地で培養する場合、幹細胞の固有な性質である多分化能および免疫調節活性がよりよく維持されるので、臨床的に優れた効果を達成する。
【0027】
脂肪由来間質幹細胞は同種異系の細胞に対して免疫応答を引き起こさず、かえって誘導された免疫応答を阻害する免疫調節機能があることが知られている。本発明は瘻孔治療のために同種異系の脂肪幹細胞を使用できることを提示している。一例として、クローン病患者の抹消血単核球細胞を活性化させる条件下で脂肪幹細胞を添加する場合、免疫応答を抑制(又は制御)することができる。この場合、同種異系の幹細胞は自家幹細胞と同等であるか、またはより優れた機能を有する。従って、同種異系の脂肪幹細胞はクローン病による瘻孔又はその他のタイプの瘻孔の治療のために効果的に使用できる。
【0028】
本発明において移植に用いられる間質幹細胞は1〜10継代培養を通じて得られ、望ましくは少なくとも50%、さらに望ましくは少なくとも80%のそのような幹細胞がCD10、CD13、CD29、CD44、CD59、CD71、CD90、CD105、及びOct4に対して陽性であり、CD34、CD45、CD104、CD106、及びStro-1には陰性である。
【0029】
以下の詳細な説明から、本発明の詳細がより明確になるだろう。
【0030】
本明細書において、「間質血管分画」(stromal vascular fraction;SVF)とは、脂肪組織から単離された細胞を示し、脂肪組織をコラゲナーゼで処理及び遠心分離処理によって、殆どの成熟脂肪細胞を除去した後に残っている細胞群を意味する。
【0031】
「脂肪由来間質幹細胞」(adipose-derived stromal stem cells)は、SVFから得られる中間葉幹細胞を意味して、脂肪由来幹細胞(adipose-derived stem cells;ASC)、脂肪由来成体幹細胞(adipose-derived adult stem cells;ADAS)、脂肪幹細胞等とも表される。
【0032】
本発明で用いられる「瘻孔」は体内にできた異常な管状の穴(channel)を示す。瘻孔の例としては、痔瘻、肛門直腸瘻、直腸膣瘻、膀胱瘻、腸管瘻、糞瘻などを含み、これに特に限定されない。
【0033】
「同種異系移植」は同一種の他からのまたは他の個体からの特定組織、臓器、又は細胞の移植、特に自己組織、臓器、又は細胞が使用できない場合の、他人や他の動物からの特定の組織、臓器又は細胞の移植を意味する。
【0034】
本発明は、主として、自家又は同種異系の脂肪組織からSVFを採取すること、及びSVFから脂肪由来間質幹細胞を培養することを含み、これに関連する方法は既に報告されている。本発明は、米国特許第6,777,231号明細書に開示されている従来の方法を改善することによる、瘻孔治療のため臨床的に有効な数の細胞の製造方法を提示する。より具体的には、米国特許第6,777,231号明細書は、脂肪吸引術によって得られた脂肪組織を処理してSVFを調製するためにコラゲナーゼを用いること、得られた細胞群、すなわち、SVFを10%ウシ血清を含有するDMEM又はDMEM/F12(Dulbecco's Modified Eagle Medium/Ham's F-12 Nutrient Broth)で構成される間質培地で培養すること、及び細胞が(培養容器の)80-90%をカバーする程生育したら、少なくとも一継代、培養した細胞を培養することを包含している方法を開示している。一方、本発明は、SVFを間質培地で24時間培養して、次いでbFGFまたはEGFを含有している間質培地である増殖培地に培養した細胞を付加することを包含している。本発明によれば、増殖培地は、0.1〜100ng/ml、そして望ましくは1〜10ng/mlのbFGF又はEGFを間質培地に添加することによって調製でき、それによって多分化能及び免疫調節活性を維持しつつ細胞増殖率を増大する。従って、本発明は改善された細胞製造方法を提供する。
【0035】
本発明における脂肪由来間質幹細胞は、ヒトの皮下脂肪組織から脂肪吸引術又は外科的切除手術によって得られるが、これに特に限定されない。
【0036】
本発明における移植に使用するための自家及び/又は同種異系の脂肪由来間質幹細胞は次の方法によって得られるが、細胞培養に使われる基本培地は以下の記載に特に限定されない。
【0037】
(1) 脂肪吸引術により得られた脂肪組織からのSVFの分離
脂肪組織をKRB溶液で洗浄して、コラゲナーゼで処理した後、遠心分離を行う。脂肪の上層を除去し、下層に生理学的に適した食塩水溶液(すなわち、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加えて懸濁液を形成する。続いて、遠心分離によってSVFを含有している下層を回収する。
【0038】
(2) SVFの間質培地での培養
SVFを間質培地に懸濁させた後、懸濁液を10,000〜40,000cells/cm2の濃度で培養容器に接種して、そこで培養する。間質培地は10%ウシ胎仔血清を含んでいるDMEM又はDMEM/F12(Dulbecco's Modified Eagle Medium/Ham's F-12 Nutrient Broth)を含有する培地であって、、SVFを約24時間培養するために用いる。
【0039】
(3) 増殖培地での培養
間質培地を除去した後、増殖培地を加えて接着(又は付着)細胞を増殖する。増殖培地は10%ウシ胎仔血清、及び0.1〜100ng/ml濃度のEGF又は0.1〜100ng/ml濃度のbFGFを含むDMEM又はDMEM/F12であって、脂肪由来の(接着性又は付着性)間質幹細胞を迅速に増殖させて、それによって細胞の数を短期間に大幅に増加させるように機能する。
【0040】
(4) 継代培養
細胞が培養容器の底部の80〜90%を満たしたら、増殖培地を除去して、トリプシン処理を行って、細胞を培養容器から採取する。継代培養のために、細胞を1:3〜1:4の比で希釈し、次いで新たな培養容器において増殖培地を用いて培養する。上記と同様の方法により、さらに継代培養を実施できる。
【0041】
(5) 免疫調節活性の確認
同種異系の脂肪由来間質幹細胞はそのタイプ(個体)によって異なった免疫調節活性を有しているので、少なくとも1継代の継代培養後に得られた脂肪由来間質幹細胞の免疫調節活性を観察して確認した後、優れた免疫抑制能を有する同種異系の脂肪由来間質幹細胞を選択して使用することができ、それによって自家細胞を越える優れた臨床効果が実現する。
【発明の効果】
【0042】
以上説明したように本発明によれば、既存の標準培養法を改善したもので、臨床的に有效な数の脂肪組織由来間質幹細胞を短期間に効率よく製造できる。また、本発明に係る方法により得られる脂肪組織由来間質幹細胞を含む脂肪幹細胞組成物は、従来の方法により製造された細胞組成物に比べて分化能と免疫調節活性に優れて、瘻孔治療にさらに適している。特に、同種異系の脂肪由来幹細胞は臨床的用途において優れている。
【0043】
本発明の上記及びその他の目的、特徴及びその他の利点は、添付した図面を併用して、以下の詳細な説明からより明確に理解できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、間質培地または増殖培地で培養した脂肪幹細胞の累積集団倍加レベル(Cumulative Population Doubling Level:CPDL)を示したグラフである。
【図2】図2は、間質培地または増殖培地で20日間培養した脂肪幹細胞の収量を示したグラフである。
【図3】図3は、間質培地または増殖培地で培養した脂肪幹細胞の筋細胞分化を示す写真である(X40)。
【図4】図4は、間質培地または増殖培地で培養した脂肪幹細胞の骨細胞分化を示す写真(X40)である。
【図5】図5は、脂肪幹細胞の免疫原性を示す図である。
【図6】図6は、MLRにおいて脂肪幹細胞の免疫抑制活性を示す図である。
【図7】図7は、PHAで刺激された免疫応答に対する自家及び同種異系の脂肪幹細胞のIFN−γ分泌抑制活性を示す図である。
【図8】図8は、PHAで刺激された免疫応答に対する自家及び同種異系の脂肪幹細胞のTNF−α分泌抑制活性を示す図である。
【図9】図9は、PHAで刺激された免疫応答に対する間質培地及び増殖培地で培養した脂肪幹細胞のIFN−γ及びTNF−α分泌抑制活性(n=9)を示す図である。
【図10】図10は、脂肪幹細胞の細胞外マトリクスタンパク質の分泌活性を示す写真(X40)である。
【図11】図11は、脂肪幹細胞移植前及び後の痔瘻を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の好ましい実施態様及び実施例をさらに詳述する。但し、これらの実施例は本発明の例示に過ぎず、本発明を限定することを意図していない。
【実施例】
【0046】
実施例1: ヒト脂肪由来間質幹細胞の培養方法
脂肪組織は通常脂肪吸引術により得られるが、これに特に限定されない。
【0047】
脂肪吸引物から次のようにして脂肪由来間質細胞を単離した:脂肪組織から血液を除去するために、得られた脂肪組織を等容量のKRB溶液を用いて3〜4回洗浄した。等容量のコラゲナーゼ溶液を脂肪組織に加えて、37℃水浴中で反応させた。反応生成物を遠心分離用チューブに移し入れて、20℃、1200rpmで10分間遠心分離した。上澄液である脂肪層を除去した後、下層として残留するコラゲナーゼ溶液を撹拌せず徐々に分離した。間質培地をコラゲナーゼ溶液に加えて懸濁液を調製した後、20℃、1200rpmで5分間遠心分離した。この際、下に沈むものが間質血管分画、すなわち、SVFであって、上澄液を除去した。
【0048】
SVFを間質培地に懸濁して、培養容器に接種し、37℃、5%CO2インキュベータで24時間培養した。培養培地を除去し、SVFをリン酸緩衝生理食塩水(以後、PBS)で洗浄した後、SVFを、間質培地、1ng/ml濃度のbFGFを含有している間質培地、又は5ng/ml濃度のEGFを含有している間質培地中で増殖した。脂肪由来間質幹細胞が培養容器の80〜90%をカバーするまでに生育したら、細胞をトリプシン処理して単離し、単一タイプの細胞を得た。得られた単一細胞を増殖培地を用いて1:3〜1:4の比で希釈して継代培養を行った。
【0049】
図1は間質培地又は増殖培地で培養した脂肪幹細胞のCPDLを示したグラフであり、図2は間質培地又は増殖培地で20日間培養した脂肪幹細胞の収量を示したグラフである。これらの図に示したように、脂肪幹細胞を間質培地にbFGF又はEGFを添加した増殖培地で培養する場合は、細胞の成長速度が標準培地即ち間質培地のみを用いた場合より約3倍速いことが分かった。1.5×106個の細胞を前述のそれぞれの培地で20日間培養すると、平均細胞収量は間質培地では9.7×106個、増殖培地では1.9×108個であった。従って、増殖培地においては、間質培地におけるよりも約20倍多い細胞を採取できることが分かる。
次の表1は培養培地による倍加時間(doubling time)及び細胞収量を示す。
【0050】
【表1】
【0051】
脂肪幹細胞は10又はそれ以上の継代まで増殖率及び表現型(phenotype)の変化なしで継代培養が可能であると知られている。間質培地を用いる標準培養法で1×106個の脂肪幹細胞を継代培養すると、得られる細胞数は約3.8×109個である。一方、本発明による増殖培地を用いると、約1.5×1013個の細胞が得られ、これは前記の間質培地を用いて得られた細胞数の約4000倍である。
【0052】
脂肪吸引術によって得られた脂肪組織50ml及び100mlをそれぞれの培地を用いて培養する場合に、1×108個の細胞を産生するのに必要な培養時間は下記の表2の通りである。
【0053】
【表2】
【0054】
未だその正確な原因及び/または理由は明らかにされていないが、脂肪幹細胞の増殖率は個体により異なり、インビトロ培養において脂肪由来間質細胞の増殖が活発に行われないので、細胞培養に失敗する場合がありうる。
【0055】
下記の表3は、50mLの脂肪組織を相異なる7名のドナーから得て、脂肪幹細胞をその脂肪組織から調製して及びそれぞれの培地で培養した、脂肪幹細胞の培養結果を示す。本発明に係る増殖培地を用いて培養した場合、1×108個の細胞を得るのに必要な培養時間は13〜18日の範囲であった。一方、標準培養法による間質培地を用いると、培養時間は4つのロットで約25〜35日であった。更に、3つのロットでは、細胞増殖が十分でなかったので、細胞の産生が不可能であった。
【0056】
【表3】
【0057】
実施例2: ヒト脂肪由来間質幹細胞の細胞表面マーカー
前記実施例1と同様な方法で取得した脂肪由来間質細胞を1.5mlの遠心分離用チューブに移し入れた。FACS染色溶液(1%ウシ胎仔血清を含むPBS)1mlをそこに加えて、均一になるまでよく混ぜ合わせて、10,000rpmで5秒間遠心分離した。上澄液を除去した後、残留する生成物をFACS染色溶液1mlに懸濁して、10,000rpmで5秒間遠心分離した。上澄液を除去した後、残留する生成物をFACS染色溶液300μlに再懸濁した。サンプルの数を考慮して、得られたサンプルをそれぞれの遠心分離用チューブに約0.5〜1.0×106個の細胞が含まれるように、新たな遠心分離用チューブに分注した。そこに抗体を添加した後、チューブの内容物を4℃で30分間反応させた。次いで、反応生成物をFACS染色溶液1mlに再懸濁して、10,000rpmで5秒間遠心分離した後、上澄液を除去した。そこにFACS固定液400〜500μlを添加して残留生成物を再懸濁した。得られた懸濁液をフローサイトメータを用いる分析に付した。
【0058】
その分析の結果、下記の表4に示したように、本発明によって増殖させた脂肪幹細胞の少なくとも95%がCD10、CD13、CD29、CD44、CD59、CD71、CD90、CD105及びOct4に対して陽性応答を示し、STRO−1、CD34、CD45、CD104及びCD106に陰性応答を示した。ただし、CD34では、所定の脂肪組織ロットによって、p0において約5〜10%の脂肪幹細胞が陽性反応を示す場合もあった。培養条件による差異は観察されなかった。
【0059】
【表4】
【0060】
実施例3: ヒト脂肪由来間質幹細胞の分化能
実施例2と同様な方法で培養した脂肪由来間質幹細胞が、培養容器の80〜90%に生育したときに、培養した細胞をトリプシン処理して単離し、単一細胞を取得した。
【0061】
それぞれ異なる培養培地を用いて培養した脂肪由来間質幹細胞の筋細胞分化能を確認するために、4つのウェルに各ウェルが約5,000細胞/cm2を含有するように細胞を接種した。接種した細胞が培養容器の80%を満たすまで培地を交換しつつ培養した。脂肪由来間質幹細胞が培養容器の100%を満たしたとき、用いた培地を排出してプロモセル社製の筋細胞分化培地と交換し、2週間幹細胞の筋細胞への分化を誘導した。筋細胞への分化率を測定するために、次の方法によって免疫蛍光染色を行った:PBSを用いて幹細胞を3回洗浄し、4%のフォルムアルデヒドを含むPBSを30分間用いて固定した。次いで、固定した細胞をPBSで3回洗浄した後、5%正常山羊血清(normal goat serum)と0.1%トリトンX−100を含むPBSを30分間用いて、洗浄した生成物を透化処理及びブロッキングした。筋細胞に特異的なデスミンとミオシンの1次抗体を含むPBSを細胞に添加した後、これらを37℃で1時間反応させて、反応生成物をPBSで3回洗浄し、2次抗体を用いて30分間反応させた。生成物をPBSを用いて再び3回洗浄した後、それにマウント溶液を適用して、蛍光顕微鏡で観察した。
【0062】
図3は間質培地又は増殖培地で培養した脂肪幹細胞の筋細胞分化を示す写真である(X40)。 図3に示したように、間質培地で培養したものより、間質培地にbFGFを添加した増殖培地で培養した脂肪由来間質幹細胞でデスミンとミオシンに陽性である細胞がさらに多く観察された。すなわち、本発明によって間質培地にbFGFを添加して調製した培地で脂肪由来間質幹細胞を培養した時、筋細胞への分化率が向上されたことを確かめることができた。
【0063】
相異なる培養培地で培養した脂肪由来間質幹細胞の骨細胞分化能を確認するため、12のウェルに各ウェルが約20,000細胞/cm2を含有するように細胞を接種した。接種した細胞が培養容器の約100%を満たすまで培地を交換しながら培養した。脂肪由来間質幹細胞が培養容器の100%を満たしたら、用いた培地を排出して、100μg/mlアスコルビン酸、10nMグリセロリン酸塩、100nMデキサメタソン及び10nMビタミンD3が含まれた骨細胞分化培地と交換して、4週間幹細胞の骨細胞への分化を誘導した。骨細胞への分化率を測定するために、以下の方法によってvon−Kossa染色を行った:PBSを用いて、幹細胞を3回洗浄し、4%のフォルムアルデヒドを含むPBSを20分間用いて固定した。次いで固定した細胞を蒸留水で3回洗浄した後、5%硝酸銀溶液をこれに添加して、UV照射に1時間露出した。蒸留水を用いて暴露した物質を3回洗浄して、5%チオ硫酸ナトリウム溶液をそこに添加した後、2分間反応させた。蒸留水を用いて反応生成物を3回洗浄し、マウント液をそこに適用して、顕微鏡を用いて細胞を観察した。
【0064】
図4は間質培地又は増殖培地で培養した脂肪幹細胞の骨細胞分化を示す写真である(X40)。図4に示したように、間質培地で培養したものより、EGF又はbFGFを含有している増殖培地で培養した脂肪由来間質幹細胞が大幅に増大したvon−Kossa染色を示した。すなわち、本発明によると、間質培地にbFGF又はEGFを添加して調製した増殖培地で脂肪由来間質幹細胞を培養した時、幹細胞の分化が向上したことが分かる。
【0065】
実施例4: ヒト脂肪由来間質細胞の免疫調節活性
ヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigen;HLA)の分析結果に従って、HLAタイプI及びIIの多様な組み合わせを有する7種類のヒト抹消血単核細胞(Peripheral Blood Mononuclear Cell; PBMC)と脂肪由来間質幹細胞を選択し、次いで混合リンパ球反応(Mixture Lymphocyte Reaction; MLR)を行った。U底96ウェルプレートの各ウェルに、キラー細胞(responder cell)として、各ロットのPBMCを2×105細胞/ウェルになるように添加した。次いで刺激細胞(stimulator)として、各ロットの脂肪由来間質幹細胞を各ウェルに2×104 細胞の量で添加した。陽性対照として、PBMC2×104個をマイトマイシンCを用いて処理してウェルに添加した。反応後3日目に、上澄液を収集して、分泌されたIFN−γの量をELISA法を用いて測定した。
【0066】
図5は脂肪幹細胞の免疫原性を示す。この図に示したように、陽性対照であるPBMCの場合、これらは同種異系のPBMCと反応して多量のIFN−γを分泌をもたらした。一方、実施例1に従って培養した脂肪由来間質幹細胞と反応した前記PBMCはIFN−γの分泌を示さないか、自家のPBMCと実質的に同程度のIFN−γを示した。すなわち、脂肪由来間質幹細胞は同種異系のPBMCに対して免疫応多分化能答を誘発しないことが分かる。
【0067】
他の実施態様によると、相異なるPBMCを含む2つのロットをU底96ウェルプレートの各ウェルに2×105細胞/ウェルの量で接種して免疫応答を誘発して、次いで実施例1に従って培養した同種異系の脂肪由来間質幹細胞をそれぞれ5,000、10,000、及び20,000個でウェルに添加した。72時間培養した後、それぞれのウェルから上澄液を採取して、IFN−γ分泌量を測定した。
【0068】
図6はMLRにおける脂肪幹細胞の免疫抑制活性を示す。この図に示したように、実施例1に従って培養した脂肪由来間質幹細胞をウェルに添加した時、添加した細胞数に比例して免疫応答が抑制(または制御)されることが分かる。すなわち、脂肪由来間質幹細胞は同種異系のT細胞による免疫応答を誘発せず、免疫応答の発生時に免疫細胞によって多量分泌されて免疫活性を増加させるIFN−γの分泌を著しく減少させるので、免疫抑制活性を有する。
【0069】
実施例5: 同種異系のヒト脂肪由来間質細胞の免疫調節活性
同種異系及び自家の脂肪由来間質幹細胞の免疫抑制活性を確認するため、相異なる4名のドナーから得たPBMCを植物性血球凝集素(PHA)で活性化して、IFN−γ又はTNF−α分泌の量を測定した。96ウェルプレートのそれぞれに自家又は同種異系の脂肪由来間質幹細胞を10,000細胞の量で接種した後、1×105細胞/ウェルのPBMCをウェルに添加して、次いでPHAを用いて免疫応答を誘発した。72時間後に、上澄液を採取して、IFN−γ又はTNF−α分泌の量を測定した。
【0070】
図7はPHAで刺激された免疫応答に対する自家及び同種異系の脂肪幹細胞のIFN−γ分泌抑制活性を示し、図8はPHAで刺激された免疫応答に対する自家及び同種異系の脂肪幹細胞のTNF−α分泌抑制活性を示す。図7及び図8に示したように、実施例1に従って培養した脂肪由来間質幹細胞をウェルに添加した時、自家及び同種異系の脂肪由来間質幹細胞の両方でIFN−γ又はTNF−α分泌の量が著しく減少した。特に、同種異系の脂肪由来間質幹細胞はそのタイプ(個体)によって実質的に異なる免疫調節活性を示すので、優れた免疫抑制活性を有する脂肪由来間質細胞をスクリーニングして使用する場合、自家間質細胞に比べて、臨床的に優れて効果的である。
【0071】
すなわち、同種異系の脂肪由来幹細胞は免疫細胞を活性化するマイトゲン(mitogen)により誘発される免疫応答を制御できるので、免疫抑制活性を有し、このような活性は自家脂肪由来幹細胞のそれと実質的に同等であるか、あるいはそれより優れている増殖。
【0072】
実施例6: 間質培地又は増殖培地で産生したヒト脂肪由来間質細胞の免疫調節活性
間質培地または増殖培地で産生したヒト脂肪由来間質幹細胞の免疫調節活性を比較するために、相異なる3名のドナーから得た脂肪幹細胞をそれぞれに間質培地または本発明で開示した増殖培地で培養した。3名の別々のドナーから得たPBMCをPHAを用いて活性化した後、前記の脂肪幹細胞を活性化したPBMCに添加して、IFN−γ及びTNF−αの分泌量を測定した。96ウェルプレートの各ウェルに脂肪由来間質幹細胞を10,000細胞の量で接種した後、1×105細胞/ウェルのPBMC(抹消血単核球)をウェルに添加して、次いでPHAを用いて免疫応答を誘発した。72時間後に、上澄液を採取して、IFN−γ又はTNF−αの分泌量を測定した。
【0073】
図9はPHAで刺激した免疫応答に対する、間質培地及び増殖培地で培養した脂肪幹細胞のIFN−γ及びTNF−αの両方の分泌抑制活性(n=9)を示す。図9に示したように、実施例1に従って増殖培地で培養した脂肪由来間質幹細胞を添加した時、間質培地を用いて産生した幹細胞に比べて、IFN−γ及びTNF−α分泌抑制活性が著しく増加したことが分る。すなわち、本発明に従って産生された脂肪由来幹細胞は既存の標準培養法に比べて、マイトゲンによって誘発された免疫応答を一層効率よく抑制(又は制御)した。
【0074】
実施例7: ヒト脂肪由来間質幹細胞のECMタンパク質の分泌活性
実施例1において培養した脂肪由来間質細胞を4ウェルプレートの各ウェルに接種して培養容器に入れた。細胞をPBSで3回洗浄して、4%のフォルムアルデヒドを含むPBSを30分間用いて固定した。次いで、固定した細胞をPBSで3回洗浄した後、洗浄した生成物を5%正常山羊血清及び0.1%トリトンX−100を含むPBSを30分間用いて透化処理及びブロッキングした。処理した物質に1次抗体を含むPBSを添加して37℃で1時間反応させた後、反応生成物をPBSで3回洗浄し、2次抗体で30分間反応させた。生成物をPBS(リン酸塩緩衝溶液)で再度3回洗浄した後、洗浄した生成物はマウント溶液をそれに適用してマウントし、蛍光顕微鏡で観察した。
【0075】
図10は脂肪幹細胞の細胞外マトリクス(ECM)蛋白質分泌活性を示す写真(X40)である。写真に示したように、本発明に従って培養した脂肪幹細胞はコラーゲンタイプI、タイプIII、タイプIV、タイプV、フィブロネクチン及びラミニンに陽性応答を示した。すなわち、本発明に従って培養した脂肪由来間質細胞はコラーゲンタイプI、タイプIII、タイプIV、タイプV、フイブロネクチン及びラミニンなど多種のECMを発現できるので、体内に前記細胞を移植した時、細胞の生着及び/または新たな組織の形成を容易にすることができる。
【0076】
実施例8: 脂肪由来間質細胞を用いるクローン性瘻孔治療例
実施例1に記載と同様の方法により培養した脂肪由来間質細胞の臨床的適用のため、クローン性瘻孔患者を対象にして臨床試験を施した。調製した細胞を1〜3継代培養した。1〜2×107細胞/ml濃度の細胞を瘻孔のサイズによって4〜14ml容量で瘻孔壁に沿って移植した。細胞移植後に、瘻孔をフィブリン糊で充填した。
【0077】
(移植例1)
本患者は24歳の女性患者であって、10年前にクローン病の診断を受け、2年前に瘻孔切除術を受けた。しかし、術後1年6ヶ月に、患者は疾患の再発により、外科的切除手術を受けた。アザチオプリン(Azathioprine)、レミケード(Remicade)などを投与されたが、病状は改善しなかった。痔瘻の継続的な再発とその炎症によって、対象である痔瘻サイズが5.5cm(深さ)×2cm(直径)で、膿瘍の排出が多く、相当に悪化していた(図11のAを参照されたい)。患者の腹部から約50mlの脂肪組織を採取し、脂肪組織を3継代まで培養して、総数2.8×108個の細胞を得た。総産生期間は21日であった。細胞移植前に、掻爬を施して炎症組織を除去して、2×107細胞/ml濃度で細胞を瘻孔管の最深部から瘻孔管に沿って移植した。移植後に、フィブリン糊を利用して瘻孔管を充填した。細胞移植後2週間の追跡観察から、瘻孔管が殆ど閉鎖して、外部開口の殆どに上皮化が起こったことが分かった。8週間追跡観察の結果、痔瘻部位が完全に閉鎖して、外部開口が完全に上皮化されたことが観察された(上皮化した部分を少し擦って内部瘻孔管が完全に閉鎖したことを確認した)。
【0078】
(移植例2)
本患者は24歳の男性患者であって、10年前にクローン病と診断されて、過去3年の間に3回瘻孔切除術を受けた。しかし、病気の継続的な再発と外科的切除手術を繰り返した。ステロイド、レミケードなどを投与されたが、病状は改善しなかった。痔瘻の継続的な再発とその炎症によって、対象である痔瘻は肛門から1cmの距離の10時の方向に位置し、サイズが7cm(深さ)×1cm(直径)で、膿瘍の排出が多く、相当に悪化していた(図11のBを参照されたい)。患者の腹部から約70mlの脂肪組織を採取し、脂肪組織を3継代まで培養して、総数3×108個の細胞を得た。総培養期間は20日であった。細胞移植の前に、掻爬を施して炎症組織を除去し、2×107細胞/ml濃度で細胞を瘻孔管の最深部から瘻孔管に沿って移植した。移植後に、フィブリン糊を利用して瘻孔管を充填した。細胞移植後、2週間の追跡観察から、細胞移植前に元々約7cmの深さであった瘻孔管の少なくとも半分が閉鎖して、約3cmの深さになっていた。8週間の追跡観察の結果、痔瘻部位が完全に閉鎖し、その外部開口が完全に上皮化されたことが観察された(上皮化した部分を少し擦って内部瘻孔管が完全に閉鎖したことを確認した)。
図11は脂肪幹細胞移植の前及び後の痔瘻を示す写真である。
【0079】
以上の臨床例が示すように、薬物に応答せず、継続的に再発して、従来の方法では治療し難かった痔瘻を、本発明の方法に従って培養した脂肪幹細胞を用いて効率よく治療できることが分る。特に、移植例1及び2に記載のように、重篤な痔瘻、例えば、1cm以上の直径及び/又は5cm以上の深さを有する大きいサイズの瘻孔管を治療する方法は今まで開示されていなかった。痔瘻に移植する細胞の製造のため、実施例1に提示する改善された培養方法を適用して、多量の脂肪幹細胞を培養することができた。本発明の培養方法は、国際公開第2006/136244号(2006年12月28日)に開示されている従来方法に比べて、2〜3継代の培養により10倍以上の脂肪組織由来間質細胞の供給を可能にした。さらに、治療結果も優れて、向上した臨床効果を達成する。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明による培養方法は、従来の標準的な培養方法を改善することにより、臨床的に有效な数の脂肪組織由来間質幹細胞を短期間に効率よく製造できる。
【0081】
本発明の方法で得られる脂肪組織由来間質幹細胞を含有している脂肪幹細胞組成物は、従来の方法で製造された細胞組成物と比べて、優れた多分化能及び免疫調節活性を示すので、瘻孔の治療により適している。特に、臨床適用を考慮すると同種異系の脂肪由来幹細胞は優れている。
【技術分野】
【0001】
本発明は瘻孔を治療するためにヒト脂肪組織由来の間質幹細胞(stromal stem cell)の臨床的有効量を製造する方法及びこれによって製造される組成物に係り、この間質幹細胞は自家及び同種異系の脂肪組織から得られる。
【背景技術】
【0002】
再生医療は損傷したり機能が低下した組織及び/又は器官を治療するための方法であって、通常は多分化能幹細胞を用いる細胞に基づく治療法(cell-based therapy)に関連している。再生医療に用いられる成体幹細胞の主な種類の一つである、骨髓由来幹細胞はインビトロで増殖が可能であり、例えば、筋肉細胞、心筋細胞、骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、神経細胞などを含む多様な細胞へ分化が可能である。また、骨髄由来幹細胞は、免疫調節活性を有するので、同種異系の骨髓移植に適用可能であり、また自家免疫疾患に免疫抑制剤として使用可能である。
【0003】
脂肪組織も幹細胞を多量に含んでおり、脂肪幹細胞を移植材料として利用しようとする広範囲にわたる研究が近年行われている。脂肪組織は他の組織型と比較してかなり大量の幹細胞を有していて(すなわち、脂肪組織と同量の骨髓から単離された幹細胞より約1,000倍多い量)、この脂肪由来幹細胞は骨髓由来幹細胞と同様に、軟骨細胞、骨細胞、脂肪細胞、筋細胞などに分化する多分化能を有している。また、脂肪由来間質幹細胞は骨髓由来幹細胞と同様に細胞表面マーカーの発現を示し、そして自家または同種異系の免疫応答に対するインビボ並びにインビトロの免役調節活性を有している。
【0004】
瘻孔(fistula)は体内に異常形成された管状の穴(channel)であって、色々の原因によって体の多部位に発生する場合がある。最も頻繁に発生する瘻孔は肛門と直腸を含む腸管系に主に存在している。痔瘻は通常、肛門腺にできた炎症が皮膚の外側に広がって行きながら膿のような分泌物がにじみ出る、炎症障害に起因していて、痔疾患の約20%を占める。
【0005】
痔瘻は実質上、直腸管と肛門周辺の皮膚の間の異常な管状の穴を示し、肛門ではなく開口部を介する異常な大便排出をもたらす。これが肛門直腸膿瘍(anorectal abscess)の発生、それに続く排膿瘻孔形成の主な原因である。このように形成された瘻孔を痔瘻(fistula in ano)と称する。すなわち、痔瘻は、肛門直腸膿瘍が破れたときに直腸や肛門管の内側から肛門周辺の皮膚まで形成された長い孔である。痔瘻は肛門機能に重要な役割を果たす外肛門括約筋との関係によって次の4種類に分類される。
【0006】
(1)内肛門括約筋と外肛門括約筋との間に形成された瘻管を有している括約筋間タイプの痔瘻(inter-sphincteric type);
(2)外肛門括約筋を貫通して形成された瘻管を有している括約筋貫通タイプの痔瘻(trans-sphincteric type);
(3)外肛門括約筋の上部に形成された瘻管を有している括約筋上部タイプの痔瘻(supra-sphincteric type);及び
(4)肛門腺窩に形成されず、直腸上部付近に形成された1次瘻孔を有している括約筋外部タイプの痔瘻(extra-sphincteric type)。
【0007】
痔瘻の主な原因は肛門周囲腺の感染であること、更に、痔瘻が結核、クローン病、癌、白血病、白血球減少症などによって発生する場合もあるということが知られている。クローン病は腸の慢性且つ再発性炎症によって特徴付けられて、希少・難治性疾患に指定されている。クローン病による瘻孔は痔瘻だけではなく、膣と連結する直腸膣瘻、腸管付近に形成される腸管瘻などがある。
【0008】
大部分の瘻孔は外科手術によって治療されている。直腸肛門の周辺に発生した瘻孔治療の最も重要な目的は肛門括約筋の正常機能を維持させつつ、完全に治癒することである。しかし、瘻孔は外科手術後にも再発しやすく、例えば、肛門の機能障害による大便失禁などが発生する。従って、現在の手術法は満足な治療効果をもたらさない。
【0009】
瘻孔の手術法としては、例えば、瘻孔切開術、セトン(seton)法、高機能移植片(advanced flap)の使用、筋肉充填術(muscle filling procedure)、フィブリン糊(fibrin glue)の使用などがある。このうち、フィブリン糊はフィブリノゲンとトロンビンとを混ぜ合わせて纖維素塊(fibrin clot)を作って、一般的な外科における外科用充填剤として使用されている。痔瘻では、フィブリン糊を外開口部を通じて瘻孔内に注射して、痔瘻の瘻孔と内開口部を満たしている。
【0010】
最近、幹細胞に関して広範な研究が実施されるにつれ、幹細胞を瘻孔部位に移植して痔瘻を治療する方法が行われてきた。例えば、Mizuno et al.(Plast.Reconstr.Surg.2002,109:199-209)は脂肪組織から分離した成体幹細胞が筋肉細胞に分化するということを立証し、一方、Damian et al.(Dis Colon Rectum 2005,48:1416-1423)は第1相臨床試験において脂肪組織由来幹細胞がクローン病患者の痔瘻を治療するのに安全に使用できることを示した。また、クローン病患者に直腸瘻を治療するために成体幹細胞を移植した結果、幹細胞移植後3ヶ月経過した後にも大便失禁がなかったことが報告された。
【0011】
脂肪由来間質幹細胞はインビトロの培養が容易であることが知られている。しかし、臨床的に有効な細胞数を得るためには、通常比較的多量の脂肪組織及び長期間の細胞培養時間が必要である。特に、クローン病のように慢性的かつ/又は再発性の疾患を患っている患者の瘻孔の治療には多量の細胞、さらに改善された細胞培養法が必要である。また、同種異系の脂肪由来間質細胞を使用することが可能ならば、、これらは臨床的に極めて有用であろう。
【0012】
国際公開第2006/136244号(2006年12月28日) には、脂肪由来間質幹細胞を用いる瘻孔の治療及びその使用が開示されている。しかし、治療に用いられる脂肪由来幹細胞は患者自身から得るので、患者が十分な脂肪組織を有していない場合、脂肪組織に含まれる幹細胞の量が著しく少ない場合、或いは患者自身の幹細胞を培養するのに失敗した場合は、臨床的に適した治療を提供することができない。特に、クローン病によって瘻孔ができた患者の場合、患者の体重減少及び低い肥満度指数をもたらす、深刻な腸管炎症を引き起こしている。このような患者に対しては、十分な量の脂肪由来間質細胞の確保が困難である。また、疾患が長期間持続し、患者に多数個の瘻孔が発生するまで悪化して、瘻孔のサイズも相当に大きくなるので、これら患者の治療のためには多量の幹細胞が必要である。
【0013】
一方、脂肪由来間質細胞のインビトロの培養に関して、既存の特許文献(国際公開第2007/011797号、米国特許第6,777,231号明細書など)や刊行文書(Tissue Engineering 7(2), 211-228, 2001)などに開示された標準的細胞培養法を使用する場合、インビトロの細胞培養に長時間を要し、臨床的に有効な細胞数が得難くなる。従って、臨床適用における実際効率が低下してしまう。未だ明確な原因は明らかに究明されていないが、脂肪幹細胞の増殖率は個人差があって、インビトロ培養中の脂肪間質細胞の増殖が活発に行われずに、細胞培養に失敗する場合があり得る。さらに、例えば、多分化能、免疫調節活性等を含む、脂肪幹細胞の生物学的機能はそのドナーによって異なる場合がある。従って、臨床的に有効な特性を有する同種異系の脂肪幹細胞を利用することによって、瘻孔の治療効果を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2006/136244号
【特許文献2】国際公開第2007/011797号
【特許文献3】米国特許第6,777,231号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Plast. Reconstr. Surg. 2002, 109:199-209
【非特許文献2】Dis Colon Rectum 2005, 48:1416-1423
【非特許文献3】Tissue Engineering 7(2), 211-228, 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、ヒトの脂肪組織から分離した間質幹細胞を瘻孔の治療に利用することに関連して、本発明の1つの目的は、臨床的に有効な数の間質幹細胞を製造するためのさらに改善された方法、及びこの方法により製造された脂肪幹細胞組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述した目的を達成するために本発明では、同種異系の脂肪組織由来間質幹細胞を含む、瘻孔治療のための脂肪幹細胞組成物を提供する。
【0018】
前述した他の目的を達成するために本発明では、次の工程を含む、脂肪由来間質幹細胞を含む脂肪幹細胞組成物の製造方法を提供する。
(a) 対象から脂肪組織を採取すること;
(b) 脂肪組織から間質血管分画(stromal vascular fraction、SVF)を単離すること;
(c) SVFを間質培地で培養すること;
(d) SVFを成長因子であるEGFまたはbFGFを含む増殖培地で培養して、脂肪由来間質幹細胞を培養すること;及び
(e) 脂肪由来間質幹細胞を少なくとも1継代培養すること。
【0019】
本発明により、前記方法に基づき製造された脂肪幹細胞組成物、及び前記組成物を患者の瘻孔に投与する工程を含む瘻孔の治療方法もさらに提供される。
【0020】
本発明は実質的に、瘻孔を治療するために、ヒト脂肪組織由来間質幹細胞の臨床的有効量を製造する方法、及び当該方法により製造した組成物に関する。移植に使用する脂肪由来間質細胞は自家及び/または同種異系の脂肪組織から単離できる。より特定には、本発明に係る同種異系の脂肪由来間質細胞は対象患者から脂肪組織を単離せずに治療に利用でき、より優れた治療効果を有する同種異系脂肪幹細胞を選択して治療に利用できるので、臨床適合性を有している。
【0021】
また、自家または同種異系の脂肪組織から単離した間質血管分画(以降、しばしば「SVF」と呼す)の培養に関して、本発明は、培養を行うために間質培地及び増殖培地を適宜使用することによって、臨床的に有効な数の間質幹細胞を短期間に効果的に製造できる。より詳細には、本発明は、塩基性線維芽細胞成長因子(以降、しばしばbFGFと呼す)または上皮細胞増殖因子(以降、しばしばEGFと呼す)のような特異的成長因子を含む増殖培地を利用することによって、幹細胞の培養時間を画期的に短縮することができ、個体差によって変化するそれらの増殖率を容易に制御することができる。さらに、本発明の方法によって製造された脂肪幹細胞は、従来の細胞培養法で製造された細胞に比べて、優れた分化速度と免疫調節活性を示す。
【0022】
脂肪吸引術によって患者から十分な脂肪組織が提供される場合は、脂肪由来幹細胞を精製して使用できる。しかし、殆どの場合、移植に十分な量の脂肪由来幹細胞を得るためには、増殖過程が必要である。すなわち、脂肪吸引術で得た脂肪組織の量、脂肪組織から単離した脂肪組織由来間質幹細胞の数、及び移植に必要な幹細胞数を計算した後、臨床的に有効な数の幹細胞を得るために、細胞培養及び継代培養を施すべきである。同種異系移植のために、免疫細胞、線維芽細胞など免疫応答を誘発しうる細胞群を十分に除去して、間質幹細胞の均質集団(homogenous population)を生成するために継代培養を施すことが望ましい。継代培養は少なくとも1継代施すのが望ましい。
【0023】
本明細書において「間質培地」は、SVFを培養するための培地を示し、DMEMまたはDMEM/F12などの適宜な細胞培養培地に10%FBS及び1%抗生剤を加えて調製できる。一方、「増殖培地」は、脂肪由来幹細胞の増殖のために使われる培地を示し、間質培地にbFGFまたはEGFをさらに含むことができる。
【0024】
本発明に係る培養方法によれば、脂肪由来幹細胞の平均倍加時間(doubling time)は約48時間であって、約72〜120時間の平均倍加時間を必要とする従来の培養方法(国際公開第2007/011797号)に比べて、著しく増強された効果を奏する。図1に示したように、各継代における平均培養期間は本発明による所定条件下で4日であり、これに対して、従来の方法による各継代についての平均期間は7日であることから、本発明は、細胞産生日数、すなわち、十分な数の細胞を産生するのに必要な期間、を画期的に短縮することができる。例えば、供与された吸引脂肪組織50mlを用いて1×108個の脂肪幹細胞を得るためには、既存の培養法では少なくとも30日を必要とする。これに対して、典型的な間質培地にbFGFまたはEGFを含有する本発明の増殖培地中で供与された吸引脂肪組織を培養する場合は、約15日で所望の産物が得られる。他の実施例によれば、、供与された吸引脂肪組織の量が50ml未満の場合、既存の培養法では臨床的に有効な数の脂肪幹細胞を産生することが難しいが、本発明はこのような難点を克服するための改善された培養法を提供する。
【0025】
間質幹細胞の培養には、脂肪組織のドナーによって倍加時間がかなり変わるが、本発明は、ドナー間の個人差による培養時間の差異を最小化することができる。従って、本発明に係る細胞培養方法は瘻孔治療のための臨床的に有効な細胞数を確保するのに適している。
【0026】
一般的に、インビトロ培養によって継代数が増えるほど、幹細胞の多分化能は減少することが知られている。よって、幹細胞の所望の多分化能を維持できる培養法が必要である。本発明に係る培養方法を用いる場合、幹細胞は、既存の培養法に比べて、筋細胞、骨細胞などに分化する優れた多分化能を示す。また、本発明に係る培養方法で得られた脂肪由来間質幹細胞は固有の免疫調節活性を有利に維持しているのみならず、一層優れた効果を示す。すなわち、本発明に従って、bFGFまたはEGFを含む増殖培地で培養する場合、幹細胞の固有な性質である多分化能および免疫調節活性がよりよく維持されるので、臨床的に優れた効果を達成する。
【0027】
脂肪由来間質幹細胞は同種異系の細胞に対して免疫応答を引き起こさず、かえって誘導された免疫応答を阻害する免疫調節機能があることが知られている。本発明は瘻孔治療のために同種異系の脂肪幹細胞を使用できることを提示している。一例として、クローン病患者の抹消血単核球細胞を活性化させる条件下で脂肪幹細胞を添加する場合、免疫応答を抑制(又は制御)することができる。この場合、同種異系の幹細胞は自家幹細胞と同等であるか、またはより優れた機能を有する。従って、同種異系の脂肪幹細胞はクローン病による瘻孔又はその他のタイプの瘻孔の治療のために効果的に使用できる。
【0028】
本発明において移植に用いられる間質幹細胞は1〜10継代培養を通じて得られ、望ましくは少なくとも50%、さらに望ましくは少なくとも80%のそのような幹細胞がCD10、CD13、CD29、CD44、CD59、CD71、CD90、CD105、及びOct4に対して陽性であり、CD34、CD45、CD104、CD106、及びStro-1には陰性である。
【0029】
以下の詳細な説明から、本発明の詳細がより明確になるだろう。
【0030】
本明細書において、「間質血管分画」(stromal vascular fraction;SVF)とは、脂肪組織から単離された細胞を示し、脂肪組織をコラゲナーゼで処理及び遠心分離処理によって、殆どの成熟脂肪細胞を除去した後に残っている細胞群を意味する。
【0031】
「脂肪由来間質幹細胞」(adipose-derived stromal stem cells)は、SVFから得られる中間葉幹細胞を意味して、脂肪由来幹細胞(adipose-derived stem cells;ASC)、脂肪由来成体幹細胞(adipose-derived adult stem cells;ADAS)、脂肪幹細胞等とも表される。
【0032】
本発明で用いられる「瘻孔」は体内にできた異常な管状の穴(channel)を示す。瘻孔の例としては、痔瘻、肛門直腸瘻、直腸膣瘻、膀胱瘻、腸管瘻、糞瘻などを含み、これに特に限定されない。
【0033】
「同種異系移植」は同一種の他からのまたは他の個体からの特定組織、臓器、又は細胞の移植、特に自己組織、臓器、又は細胞が使用できない場合の、他人や他の動物からの特定の組織、臓器又は細胞の移植を意味する。
【0034】
本発明は、主として、自家又は同種異系の脂肪組織からSVFを採取すること、及びSVFから脂肪由来間質幹細胞を培養することを含み、これに関連する方法は既に報告されている。本発明は、米国特許第6,777,231号明細書に開示されている従来の方法を改善することによる、瘻孔治療のため臨床的に有効な数の細胞の製造方法を提示する。より具体的には、米国特許第6,777,231号明細書は、脂肪吸引術によって得られた脂肪組織を処理してSVFを調製するためにコラゲナーゼを用いること、得られた細胞群、すなわち、SVFを10%ウシ血清を含有するDMEM又はDMEM/F12(Dulbecco's Modified Eagle Medium/Ham's F-12 Nutrient Broth)で構成される間質培地で培養すること、及び細胞が(培養容器の)80-90%をカバーする程生育したら、少なくとも一継代、培養した細胞を培養することを包含している方法を開示している。一方、本発明は、SVFを間質培地で24時間培養して、次いでbFGFまたはEGFを含有している間質培地である増殖培地に培養した細胞を付加することを包含している。本発明によれば、増殖培地は、0.1〜100ng/ml、そして望ましくは1〜10ng/mlのbFGF又はEGFを間質培地に添加することによって調製でき、それによって多分化能及び免疫調節活性を維持しつつ細胞増殖率を増大する。従って、本発明は改善された細胞製造方法を提供する。
【0035】
本発明における脂肪由来間質幹細胞は、ヒトの皮下脂肪組織から脂肪吸引術又は外科的切除手術によって得られるが、これに特に限定されない。
【0036】
本発明における移植に使用するための自家及び/又は同種異系の脂肪由来間質幹細胞は次の方法によって得られるが、細胞培養に使われる基本培地は以下の記載に特に限定されない。
【0037】
(1) 脂肪吸引術により得られた脂肪組織からのSVFの分離
脂肪組織をKRB溶液で洗浄して、コラゲナーゼで処理した後、遠心分離を行う。脂肪の上層を除去し、下層に生理学的に適した食塩水溶液(すなわち、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加えて懸濁液を形成する。続いて、遠心分離によってSVFを含有している下層を回収する。
【0038】
(2) SVFの間質培地での培養
SVFを間質培地に懸濁させた後、懸濁液を10,000〜40,000cells/cm2の濃度で培養容器に接種して、そこで培養する。間質培地は10%ウシ胎仔血清を含んでいるDMEM又はDMEM/F12(Dulbecco's Modified Eagle Medium/Ham's F-12 Nutrient Broth)を含有する培地であって、、SVFを約24時間培養するために用いる。
【0039】
(3) 増殖培地での培養
間質培地を除去した後、増殖培地を加えて接着(又は付着)細胞を増殖する。増殖培地は10%ウシ胎仔血清、及び0.1〜100ng/ml濃度のEGF又は0.1〜100ng/ml濃度のbFGFを含むDMEM又はDMEM/F12であって、脂肪由来の(接着性又は付着性)間質幹細胞を迅速に増殖させて、それによって細胞の数を短期間に大幅に増加させるように機能する。
【0040】
(4) 継代培養
細胞が培養容器の底部の80〜90%を満たしたら、増殖培地を除去して、トリプシン処理を行って、細胞を培養容器から採取する。継代培養のために、細胞を1:3〜1:4の比で希釈し、次いで新たな培養容器において増殖培地を用いて培養する。上記と同様の方法により、さらに継代培養を実施できる。
【0041】
(5) 免疫調節活性の確認
同種異系の脂肪由来間質幹細胞はそのタイプ(個体)によって異なった免疫調節活性を有しているので、少なくとも1継代の継代培養後に得られた脂肪由来間質幹細胞の免疫調節活性を観察して確認した後、優れた免疫抑制能を有する同種異系の脂肪由来間質幹細胞を選択して使用することができ、それによって自家細胞を越える優れた臨床効果が実現する。
【発明の効果】
【0042】
以上説明したように本発明によれば、既存の標準培養法を改善したもので、臨床的に有效な数の脂肪組織由来間質幹細胞を短期間に効率よく製造できる。また、本発明に係る方法により得られる脂肪組織由来間質幹細胞を含む脂肪幹細胞組成物は、従来の方法により製造された細胞組成物に比べて分化能と免疫調節活性に優れて、瘻孔治療にさらに適している。特に、同種異系の脂肪由来幹細胞は臨床的用途において優れている。
【0043】
本発明の上記及びその他の目的、特徴及びその他の利点は、添付した図面を併用して、以下の詳細な説明からより明確に理解できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、間質培地または増殖培地で培養した脂肪幹細胞の累積集団倍加レベル(Cumulative Population Doubling Level:CPDL)を示したグラフである。
【図2】図2は、間質培地または増殖培地で20日間培養した脂肪幹細胞の収量を示したグラフである。
【図3】図3は、間質培地または増殖培地で培養した脂肪幹細胞の筋細胞分化を示す写真である(X40)。
【図4】図4は、間質培地または増殖培地で培養した脂肪幹細胞の骨細胞分化を示す写真(X40)である。
【図5】図5は、脂肪幹細胞の免疫原性を示す図である。
【図6】図6は、MLRにおいて脂肪幹細胞の免疫抑制活性を示す図である。
【図7】図7は、PHAで刺激された免疫応答に対する自家及び同種異系の脂肪幹細胞のIFN−γ分泌抑制活性を示す図である。
【図8】図8は、PHAで刺激された免疫応答に対する自家及び同種異系の脂肪幹細胞のTNF−α分泌抑制活性を示す図である。
【図9】図9は、PHAで刺激された免疫応答に対する間質培地及び増殖培地で培養した脂肪幹細胞のIFN−γ及びTNF−α分泌抑制活性(n=9)を示す図である。
【図10】図10は、脂肪幹細胞の細胞外マトリクスタンパク質の分泌活性を示す写真(X40)である。
【図11】図11は、脂肪幹細胞移植前及び後の痔瘻を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の好ましい実施態様及び実施例をさらに詳述する。但し、これらの実施例は本発明の例示に過ぎず、本発明を限定することを意図していない。
【実施例】
【0046】
実施例1: ヒト脂肪由来間質幹細胞の培養方法
脂肪組織は通常脂肪吸引術により得られるが、これに特に限定されない。
【0047】
脂肪吸引物から次のようにして脂肪由来間質細胞を単離した:脂肪組織から血液を除去するために、得られた脂肪組織を等容量のKRB溶液を用いて3〜4回洗浄した。等容量のコラゲナーゼ溶液を脂肪組織に加えて、37℃水浴中で反応させた。反応生成物を遠心分離用チューブに移し入れて、20℃、1200rpmで10分間遠心分離した。上澄液である脂肪層を除去した後、下層として残留するコラゲナーゼ溶液を撹拌せず徐々に分離した。間質培地をコラゲナーゼ溶液に加えて懸濁液を調製した後、20℃、1200rpmで5分間遠心分離した。この際、下に沈むものが間質血管分画、すなわち、SVFであって、上澄液を除去した。
【0048】
SVFを間質培地に懸濁して、培養容器に接種し、37℃、5%CO2インキュベータで24時間培養した。培養培地を除去し、SVFをリン酸緩衝生理食塩水(以後、PBS)で洗浄した後、SVFを、間質培地、1ng/ml濃度のbFGFを含有している間質培地、又は5ng/ml濃度のEGFを含有している間質培地中で増殖した。脂肪由来間質幹細胞が培養容器の80〜90%をカバーするまでに生育したら、細胞をトリプシン処理して単離し、単一タイプの細胞を得た。得られた単一細胞を増殖培地を用いて1:3〜1:4の比で希釈して継代培養を行った。
【0049】
図1は間質培地又は増殖培地で培養した脂肪幹細胞のCPDLを示したグラフであり、図2は間質培地又は増殖培地で20日間培養した脂肪幹細胞の収量を示したグラフである。これらの図に示したように、脂肪幹細胞を間質培地にbFGF又はEGFを添加した増殖培地で培養する場合は、細胞の成長速度が標準培地即ち間質培地のみを用いた場合より約3倍速いことが分かった。1.5×106個の細胞を前述のそれぞれの培地で20日間培養すると、平均細胞収量は間質培地では9.7×106個、増殖培地では1.9×108個であった。従って、増殖培地においては、間質培地におけるよりも約20倍多い細胞を採取できることが分かる。
次の表1は培養培地による倍加時間(doubling time)及び細胞収量を示す。
【0050】
【表1】
【0051】
脂肪幹細胞は10又はそれ以上の継代まで増殖率及び表現型(phenotype)の変化なしで継代培養が可能であると知られている。間質培地を用いる標準培養法で1×106個の脂肪幹細胞を継代培養すると、得られる細胞数は約3.8×109個である。一方、本発明による増殖培地を用いると、約1.5×1013個の細胞が得られ、これは前記の間質培地を用いて得られた細胞数の約4000倍である。
【0052】
脂肪吸引術によって得られた脂肪組織50ml及び100mlをそれぞれの培地を用いて培養する場合に、1×108個の細胞を産生するのに必要な培養時間は下記の表2の通りである。
【0053】
【表2】
【0054】
未だその正確な原因及び/または理由は明らかにされていないが、脂肪幹細胞の増殖率は個体により異なり、インビトロ培養において脂肪由来間質細胞の増殖が活発に行われないので、細胞培養に失敗する場合がありうる。
【0055】
下記の表3は、50mLの脂肪組織を相異なる7名のドナーから得て、脂肪幹細胞をその脂肪組織から調製して及びそれぞれの培地で培養した、脂肪幹細胞の培養結果を示す。本発明に係る増殖培地を用いて培養した場合、1×108個の細胞を得るのに必要な培養時間は13〜18日の範囲であった。一方、標準培養法による間質培地を用いると、培養時間は4つのロットで約25〜35日であった。更に、3つのロットでは、細胞増殖が十分でなかったので、細胞の産生が不可能であった。
【0056】
【表3】
【0057】
実施例2: ヒト脂肪由来間質幹細胞の細胞表面マーカー
前記実施例1と同様な方法で取得した脂肪由来間質細胞を1.5mlの遠心分離用チューブに移し入れた。FACS染色溶液(1%ウシ胎仔血清を含むPBS)1mlをそこに加えて、均一になるまでよく混ぜ合わせて、10,000rpmで5秒間遠心分離した。上澄液を除去した後、残留する生成物をFACS染色溶液1mlに懸濁して、10,000rpmで5秒間遠心分離した。上澄液を除去した後、残留する生成物をFACS染色溶液300μlに再懸濁した。サンプルの数を考慮して、得られたサンプルをそれぞれの遠心分離用チューブに約0.5〜1.0×106個の細胞が含まれるように、新たな遠心分離用チューブに分注した。そこに抗体を添加した後、チューブの内容物を4℃で30分間反応させた。次いで、反応生成物をFACS染色溶液1mlに再懸濁して、10,000rpmで5秒間遠心分離した後、上澄液を除去した。そこにFACS固定液400〜500μlを添加して残留生成物を再懸濁した。得られた懸濁液をフローサイトメータを用いる分析に付した。
【0058】
その分析の結果、下記の表4に示したように、本発明によって増殖させた脂肪幹細胞の少なくとも95%がCD10、CD13、CD29、CD44、CD59、CD71、CD90、CD105及びOct4に対して陽性応答を示し、STRO−1、CD34、CD45、CD104及びCD106に陰性応答を示した。ただし、CD34では、所定の脂肪組織ロットによって、p0において約5〜10%の脂肪幹細胞が陽性反応を示す場合もあった。培養条件による差異は観察されなかった。
【0059】
【表4】
【0060】
実施例3: ヒト脂肪由来間質幹細胞の分化能
実施例2と同様な方法で培養した脂肪由来間質幹細胞が、培養容器の80〜90%に生育したときに、培養した細胞をトリプシン処理して単離し、単一細胞を取得した。
【0061】
それぞれ異なる培養培地を用いて培養した脂肪由来間質幹細胞の筋細胞分化能を確認するために、4つのウェルに各ウェルが約5,000細胞/cm2を含有するように細胞を接種した。接種した細胞が培養容器の80%を満たすまで培地を交換しつつ培養した。脂肪由来間質幹細胞が培養容器の100%を満たしたとき、用いた培地を排出してプロモセル社製の筋細胞分化培地と交換し、2週間幹細胞の筋細胞への分化を誘導した。筋細胞への分化率を測定するために、次の方法によって免疫蛍光染色を行った:PBSを用いて幹細胞を3回洗浄し、4%のフォルムアルデヒドを含むPBSを30分間用いて固定した。次いで、固定した細胞をPBSで3回洗浄した後、5%正常山羊血清(normal goat serum)と0.1%トリトンX−100を含むPBSを30分間用いて、洗浄した生成物を透化処理及びブロッキングした。筋細胞に特異的なデスミンとミオシンの1次抗体を含むPBSを細胞に添加した後、これらを37℃で1時間反応させて、反応生成物をPBSで3回洗浄し、2次抗体を用いて30分間反応させた。生成物をPBSを用いて再び3回洗浄した後、それにマウント溶液を適用して、蛍光顕微鏡で観察した。
【0062】
図3は間質培地又は増殖培地で培養した脂肪幹細胞の筋細胞分化を示す写真である(X40)。 図3に示したように、間質培地で培養したものより、間質培地にbFGFを添加した増殖培地で培養した脂肪由来間質幹細胞でデスミンとミオシンに陽性である細胞がさらに多く観察された。すなわち、本発明によって間質培地にbFGFを添加して調製した培地で脂肪由来間質幹細胞を培養した時、筋細胞への分化率が向上されたことを確かめることができた。
【0063】
相異なる培養培地で培養した脂肪由来間質幹細胞の骨細胞分化能を確認するため、12のウェルに各ウェルが約20,000細胞/cm2を含有するように細胞を接種した。接種した細胞が培養容器の約100%を満たすまで培地を交換しながら培養した。脂肪由来間質幹細胞が培養容器の100%を満たしたら、用いた培地を排出して、100μg/mlアスコルビン酸、10nMグリセロリン酸塩、100nMデキサメタソン及び10nMビタミンD3が含まれた骨細胞分化培地と交換して、4週間幹細胞の骨細胞への分化を誘導した。骨細胞への分化率を測定するために、以下の方法によってvon−Kossa染色を行った:PBSを用いて、幹細胞を3回洗浄し、4%のフォルムアルデヒドを含むPBSを20分間用いて固定した。次いで固定した細胞を蒸留水で3回洗浄した後、5%硝酸銀溶液をこれに添加して、UV照射に1時間露出した。蒸留水を用いて暴露した物質を3回洗浄して、5%チオ硫酸ナトリウム溶液をそこに添加した後、2分間反応させた。蒸留水を用いて反応生成物を3回洗浄し、マウント液をそこに適用して、顕微鏡を用いて細胞を観察した。
【0064】
図4は間質培地又は増殖培地で培養した脂肪幹細胞の骨細胞分化を示す写真である(X40)。図4に示したように、間質培地で培養したものより、EGF又はbFGFを含有している増殖培地で培養した脂肪由来間質幹細胞が大幅に増大したvon−Kossa染色を示した。すなわち、本発明によると、間質培地にbFGF又はEGFを添加して調製した増殖培地で脂肪由来間質幹細胞を培養した時、幹細胞の分化が向上したことが分かる。
【0065】
実施例4: ヒト脂肪由来間質細胞の免疫調節活性
ヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigen;HLA)の分析結果に従って、HLAタイプI及びIIの多様な組み合わせを有する7種類のヒト抹消血単核細胞(Peripheral Blood Mononuclear Cell; PBMC)と脂肪由来間質幹細胞を選択し、次いで混合リンパ球反応(Mixture Lymphocyte Reaction; MLR)を行った。U底96ウェルプレートの各ウェルに、キラー細胞(responder cell)として、各ロットのPBMCを2×105細胞/ウェルになるように添加した。次いで刺激細胞(stimulator)として、各ロットの脂肪由来間質幹細胞を各ウェルに2×104 細胞の量で添加した。陽性対照として、PBMC2×104個をマイトマイシンCを用いて処理してウェルに添加した。反応後3日目に、上澄液を収集して、分泌されたIFN−γの量をELISA法を用いて測定した。
【0066】
図5は脂肪幹細胞の免疫原性を示す。この図に示したように、陽性対照であるPBMCの場合、これらは同種異系のPBMCと反応して多量のIFN−γを分泌をもたらした。一方、実施例1に従って培養した脂肪由来間質幹細胞と反応した前記PBMCはIFN−γの分泌を示さないか、自家のPBMCと実質的に同程度のIFN−γを示した。すなわち、脂肪由来間質幹細胞は同種異系のPBMCに対して免疫応多分化能答を誘発しないことが分かる。
【0067】
他の実施態様によると、相異なるPBMCを含む2つのロットをU底96ウェルプレートの各ウェルに2×105細胞/ウェルの量で接種して免疫応答を誘発して、次いで実施例1に従って培養した同種異系の脂肪由来間質幹細胞をそれぞれ5,000、10,000、及び20,000個でウェルに添加した。72時間培養した後、それぞれのウェルから上澄液を採取して、IFN−γ分泌量を測定した。
【0068】
図6はMLRにおける脂肪幹細胞の免疫抑制活性を示す。この図に示したように、実施例1に従って培養した脂肪由来間質幹細胞をウェルに添加した時、添加した細胞数に比例して免疫応答が抑制(または制御)されることが分かる。すなわち、脂肪由来間質幹細胞は同種異系のT細胞による免疫応答を誘発せず、免疫応答の発生時に免疫細胞によって多量分泌されて免疫活性を増加させるIFN−γの分泌を著しく減少させるので、免疫抑制活性を有する。
【0069】
実施例5: 同種異系のヒト脂肪由来間質細胞の免疫調節活性
同種異系及び自家の脂肪由来間質幹細胞の免疫抑制活性を確認するため、相異なる4名のドナーから得たPBMCを植物性血球凝集素(PHA)で活性化して、IFN−γ又はTNF−α分泌の量を測定した。96ウェルプレートのそれぞれに自家又は同種異系の脂肪由来間質幹細胞を10,000細胞の量で接種した後、1×105細胞/ウェルのPBMCをウェルに添加して、次いでPHAを用いて免疫応答を誘発した。72時間後に、上澄液を採取して、IFN−γ又はTNF−α分泌の量を測定した。
【0070】
図7はPHAで刺激された免疫応答に対する自家及び同種異系の脂肪幹細胞のIFN−γ分泌抑制活性を示し、図8はPHAで刺激された免疫応答に対する自家及び同種異系の脂肪幹細胞のTNF−α分泌抑制活性を示す。図7及び図8に示したように、実施例1に従って培養した脂肪由来間質幹細胞をウェルに添加した時、自家及び同種異系の脂肪由来間質幹細胞の両方でIFN−γ又はTNF−α分泌の量が著しく減少した。特に、同種異系の脂肪由来間質幹細胞はそのタイプ(個体)によって実質的に異なる免疫調節活性を示すので、優れた免疫抑制活性を有する脂肪由来間質細胞をスクリーニングして使用する場合、自家間質細胞に比べて、臨床的に優れて効果的である。
【0071】
すなわち、同種異系の脂肪由来幹細胞は免疫細胞を活性化するマイトゲン(mitogen)により誘発される免疫応答を制御できるので、免疫抑制活性を有し、このような活性は自家脂肪由来幹細胞のそれと実質的に同等であるか、あるいはそれより優れている増殖。
【0072】
実施例6: 間質培地又は増殖培地で産生したヒト脂肪由来間質細胞の免疫調節活性
間質培地または増殖培地で産生したヒト脂肪由来間質幹細胞の免疫調節活性を比較するために、相異なる3名のドナーから得た脂肪幹細胞をそれぞれに間質培地または本発明で開示した増殖培地で培養した。3名の別々のドナーから得たPBMCをPHAを用いて活性化した後、前記の脂肪幹細胞を活性化したPBMCに添加して、IFN−γ及びTNF−αの分泌量を測定した。96ウェルプレートの各ウェルに脂肪由来間質幹細胞を10,000細胞の量で接種した後、1×105細胞/ウェルのPBMC(抹消血単核球)をウェルに添加して、次いでPHAを用いて免疫応答を誘発した。72時間後に、上澄液を採取して、IFN−γ又はTNF−αの分泌量を測定した。
【0073】
図9はPHAで刺激した免疫応答に対する、間質培地及び増殖培地で培養した脂肪幹細胞のIFN−γ及びTNF−αの両方の分泌抑制活性(n=9)を示す。図9に示したように、実施例1に従って増殖培地で培養した脂肪由来間質幹細胞を添加した時、間質培地を用いて産生した幹細胞に比べて、IFN−γ及びTNF−α分泌抑制活性が著しく増加したことが分る。すなわち、本発明に従って産生された脂肪由来幹細胞は既存の標準培養法に比べて、マイトゲンによって誘発された免疫応答を一層効率よく抑制(又は制御)した。
【0074】
実施例7: ヒト脂肪由来間質幹細胞のECMタンパク質の分泌活性
実施例1において培養した脂肪由来間質細胞を4ウェルプレートの各ウェルに接種して培養容器に入れた。細胞をPBSで3回洗浄して、4%のフォルムアルデヒドを含むPBSを30分間用いて固定した。次いで、固定した細胞をPBSで3回洗浄した後、洗浄した生成物を5%正常山羊血清及び0.1%トリトンX−100を含むPBSを30分間用いて透化処理及びブロッキングした。処理した物質に1次抗体を含むPBSを添加して37℃で1時間反応させた後、反応生成物をPBSで3回洗浄し、2次抗体で30分間反応させた。生成物をPBS(リン酸塩緩衝溶液)で再度3回洗浄した後、洗浄した生成物はマウント溶液をそれに適用してマウントし、蛍光顕微鏡で観察した。
【0075】
図10は脂肪幹細胞の細胞外マトリクス(ECM)蛋白質分泌活性を示す写真(X40)である。写真に示したように、本発明に従って培養した脂肪幹細胞はコラーゲンタイプI、タイプIII、タイプIV、タイプV、フィブロネクチン及びラミニンに陽性応答を示した。すなわち、本発明に従って培養した脂肪由来間質細胞はコラーゲンタイプI、タイプIII、タイプIV、タイプV、フイブロネクチン及びラミニンなど多種のECMを発現できるので、体内に前記細胞を移植した時、細胞の生着及び/または新たな組織の形成を容易にすることができる。
【0076】
実施例8: 脂肪由来間質細胞を用いるクローン性瘻孔治療例
実施例1に記載と同様の方法により培養した脂肪由来間質細胞の臨床的適用のため、クローン性瘻孔患者を対象にして臨床試験を施した。調製した細胞を1〜3継代培養した。1〜2×107細胞/ml濃度の細胞を瘻孔のサイズによって4〜14ml容量で瘻孔壁に沿って移植した。細胞移植後に、瘻孔をフィブリン糊で充填した。
【0077】
(移植例1)
本患者は24歳の女性患者であって、10年前にクローン病の診断を受け、2年前に瘻孔切除術を受けた。しかし、術後1年6ヶ月に、患者は疾患の再発により、外科的切除手術を受けた。アザチオプリン(Azathioprine)、レミケード(Remicade)などを投与されたが、病状は改善しなかった。痔瘻の継続的な再発とその炎症によって、対象である痔瘻サイズが5.5cm(深さ)×2cm(直径)で、膿瘍の排出が多く、相当に悪化していた(図11のAを参照されたい)。患者の腹部から約50mlの脂肪組織を採取し、脂肪組織を3継代まで培養して、総数2.8×108個の細胞を得た。総産生期間は21日であった。細胞移植前に、掻爬を施して炎症組織を除去して、2×107細胞/ml濃度で細胞を瘻孔管の最深部から瘻孔管に沿って移植した。移植後に、フィブリン糊を利用して瘻孔管を充填した。細胞移植後2週間の追跡観察から、瘻孔管が殆ど閉鎖して、外部開口の殆どに上皮化が起こったことが分かった。8週間追跡観察の結果、痔瘻部位が完全に閉鎖して、外部開口が完全に上皮化されたことが観察された(上皮化した部分を少し擦って内部瘻孔管が完全に閉鎖したことを確認した)。
【0078】
(移植例2)
本患者は24歳の男性患者であって、10年前にクローン病と診断されて、過去3年の間に3回瘻孔切除術を受けた。しかし、病気の継続的な再発と外科的切除手術を繰り返した。ステロイド、レミケードなどを投与されたが、病状は改善しなかった。痔瘻の継続的な再発とその炎症によって、対象である痔瘻は肛門から1cmの距離の10時の方向に位置し、サイズが7cm(深さ)×1cm(直径)で、膿瘍の排出が多く、相当に悪化していた(図11のBを参照されたい)。患者の腹部から約70mlの脂肪組織を採取し、脂肪組織を3継代まで培養して、総数3×108個の細胞を得た。総培養期間は20日であった。細胞移植の前に、掻爬を施して炎症組織を除去し、2×107細胞/ml濃度で細胞を瘻孔管の最深部から瘻孔管に沿って移植した。移植後に、フィブリン糊を利用して瘻孔管を充填した。細胞移植後、2週間の追跡観察から、細胞移植前に元々約7cmの深さであった瘻孔管の少なくとも半分が閉鎖して、約3cmの深さになっていた。8週間の追跡観察の結果、痔瘻部位が完全に閉鎖し、その外部開口が完全に上皮化されたことが観察された(上皮化した部分を少し擦って内部瘻孔管が完全に閉鎖したことを確認した)。
図11は脂肪幹細胞移植の前及び後の痔瘻を示す写真である。
【0079】
以上の臨床例が示すように、薬物に応答せず、継続的に再発して、従来の方法では治療し難かった痔瘻を、本発明の方法に従って培養した脂肪幹細胞を用いて効率よく治療できることが分る。特に、移植例1及び2に記載のように、重篤な痔瘻、例えば、1cm以上の直径及び/又は5cm以上の深さを有する大きいサイズの瘻孔管を治療する方法は今まで開示されていなかった。痔瘻に移植する細胞の製造のため、実施例1に提示する改善された培養方法を適用して、多量の脂肪幹細胞を培養することができた。本発明の培養方法は、国際公開第2006/136244号(2006年12月28日)に開示されている従来方法に比べて、2〜3継代の培養により10倍以上の脂肪組織由来間質細胞の供給を可能にした。さらに、治療結果も優れて、向上した臨床効果を達成する。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明による培養方法は、従来の標準的な培養方法を改善することにより、臨床的に有效な数の脂肪組織由来間質幹細胞を短期間に効率よく製造できる。
【0081】
本発明の方法で得られる脂肪組織由来間質幹細胞を含有している脂肪幹細胞組成物は、従来の方法で製造された細胞組成物と比べて、優れた多分化能及び免疫調節活性を示すので、瘻孔の治療により適している。特に、臨床適用を考慮すると同種異系の脂肪由来幹細胞は優れている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同種異系の脂肪由来間質幹細胞を含有してなる、瘻孔治療のための脂肪幹細胞組成物。
【請求項2】
前記幹細胞が、少なくとも1継代培養して製造される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記脂肪幹細胞組成物の少なくとも50%が、CD10、CD13、CD29、CD44、CD59、CD71、CD90、CD105及びOct4に対して陽性であるが、CD34、CD45、CD104、CD106及びStro−1には陰性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記脂肪幹細胞組成物の少なくとも80%が、CD10、CD13、CD29、CD44、CD59、CD71、CD90、CD105及びOct4に対して陽性であるが、CD34、CD45、CD104、CD106及びStro-1には陰性である、請求項1に記載の組成物.
【請求項5】
方法が次の工程:
(a)対象から脂肪組織を採取すること;
(b)脂肪組織から間質血管分画(SVF)を単離すること;
(c)SVFを間質培地で培養すること;
(d)SVFを、成長因子としてEGF又はbFGFを含む増殖培地で培養して、脂肪由来間質幹細胞を培養すること;及び
(e)脂肪由来間質幹細胞を少なくとも1継代培養すること;
を含有してなる、脂肪由来間質幹細胞を含む脂肪幹細胞組成物を製造する方法。
【請求項6】
工程(d)の増殖培地が、0.1〜100ng/mlの濃度でEGF又はbFGFを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
増殖培地が、1〜10ng/mlの濃度でEGF又はbFGFを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
脂肪組織を同種異系の対象から採取する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1継代培養して得た脂肪由来間質幹細胞の免疫調節活性を確認して、優れた免疫抑制活性を有する同種異系の脂肪由来間質幹細胞を選択する工程をさらに含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか1項に記載の方法によって製造した、脂肪幹細胞組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の脂肪幹細胞組成物を患者の瘻孔に投与する工程を含有してなる、瘻孔を治療する方法。
【請求項1】
同種異系の脂肪由来間質幹細胞を含有してなる、瘻孔治療のための脂肪幹細胞組成物。
【請求項2】
前記幹細胞が、少なくとも1継代培養して製造される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記脂肪幹細胞組成物の少なくとも50%が、CD10、CD13、CD29、CD44、CD59、CD71、CD90、CD105及びOct4に対して陽性であるが、CD34、CD45、CD104、CD106及びStro−1には陰性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記脂肪幹細胞組成物の少なくとも80%が、CD10、CD13、CD29、CD44、CD59、CD71、CD90、CD105及びOct4に対して陽性であるが、CD34、CD45、CD104、CD106及びStro-1には陰性である、請求項1に記載の組成物.
【請求項5】
方法が次の工程:
(a)対象から脂肪組織を採取すること;
(b)脂肪組織から間質血管分画(SVF)を単離すること;
(c)SVFを間質培地で培養すること;
(d)SVFを、成長因子としてEGF又はbFGFを含む増殖培地で培養して、脂肪由来間質幹細胞を培養すること;及び
(e)脂肪由来間質幹細胞を少なくとも1継代培養すること;
を含有してなる、脂肪由来間質幹細胞を含む脂肪幹細胞組成物を製造する方法。
【請求項6】
工程(d)の増殖培地が、0.1〜100ng/mlの濃度でEGF又はbFGFを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
増殖培地が、1〜10ng/mlの濃度でEGF又はbFGFを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
脂肪組織を同種異系の対象から採取する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1継代培養して得た脂肪由来間質幹細胞の免疫調節活性を確認して、優れた免疫抑制活性を有する同種異系の脂肪由来間質幹細胞を選択する工程をさらに含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか1項に記載の方法によって製造した、脂肪幹細胞組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の脂肪幹細胞組成物を患者の瘻孔に投与する工程を含有してなる、瘻孔を治療する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−525377(P2012−525377A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508375(P2012−508375)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【国際出願番号】PCT/KR2009/003078
【国際公開番号】WO2010/126194
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(511260595)アントロジェン カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ANTEROGEN CO., LTD.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【国際出願番号】PCT/KR2009/003078
【国際公開番号】WO2010/126194
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(511260595)アントロジェン カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ANTEROGEN CO., LTD.
【Fターム(参考)】
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