癌の位置決定および癌を消滅されるための放射線治療のためのレントゲンデバイス
【課題】悪性新生物の放射線治療法、位置決定法、該装置に関し、組織構造を決定し悪性病巣の位置決定するX線ビームと照射用X線ビームとを同じビームを使用した放射線治療法、位置決定法、該装置を提供する。
【解決手段】X線1からのX線ビームを使用する悪性新生物の放射線治療法であって、第一段階で、測定結果が帰属する点4の空間座標セットの形での情報と、これらの座標に対応する組織の密度の値とを基にして、患者5の身体の悪性新生物7を含む内部構造部分と、その周辺部の器官および組織の画像が入手される。次にあらかじめ実施した診断結果を使用して、決定された点座標のセットによって表される悪性新生物7のさまざまな部分に対して行わなければならない悪性新生物に関係する構造エレメント画像の同定が行われ、照射プログラムがX線線量セットの形で作成され、この手続きのあとは、第二段階に移り、作成された照射プログラムが実行される、方法。
【解決手段】X線1からのX線ビームを使用する悪性新生物の放射線治療法であって、第一段階で、測定結果が帰属する点4の空間座標セットの形での情報と、これらの座標に対応する組織の密度の値とを基にして、患者5の身体の悪性新生物7を含む内部構造部分と、その周辺部の器官および組織の画像が入手される。次にあらかじめ実施した診断結果を使用して、決定された点座標のセットによって表される悪性新生物7のさまざまな部分に対して行わなければならない悪性新生物に関係する構造エレメント画像の同定が行われ、照射プログラムがX線線量セットの形で作成され、この手続きのあとは、第二段階に移り、作成された照射プログラムが実行される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、患者体内の悪性新生物を決定する手段およびX線照射によるその治療に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
公知の方法において、診断を確定し、X線照射による悪性新生物に対する放射線治療を実行するとの決定をした後に、トポメトリ(topometry)を準備することを想定している。トポメトリを準備する過程で、具体的な患者の病巣、器官および解剖学的構造の外郭の大きさ、面積、体積が決定され、かつそれらの相対的な位置関係が定量的に記述される(たとえば、Radiation therarpy of a malignant neoplasm. Physicians guide、E.S.Kiseleva編、Moscow,「Meditsina」、1996[1]、46〜47頁を参照)。トポメトリを準備するときの主な課題は、疾患の診断過程で得られる各種情報を統合し、照射プログラムの作成を可能にする、1:1の縮尺で照射すべき部位に関するあらゆるトポグラフ解剖学的データを、腫瘍放射線専門医に提供することである。照射プログラムの変数およびパラメータを選定するためには、患者の身体の標的病巣の形態およびサイズ、その位置はもちろん、周辺器官および組織の同調(syntopy)、標的と、放射線負荷分布の観点から最も重要な解剖学的構造およびダメージを受けやすい器官との間の距離を知る必要がある。トポメトリの構築および照射プログラムの作成によって、患者体表面の特に特徴的な点および領域が選択され、そのあとで、これらの点および領域に関して、照射中にX線ビームの方向が決定される。
【0003】
照射への患者の準備と照射それ自体との上記の組み合わせの主要な欠点は、時間的にも空間的にも異なる段階、特にそれゆえ異なる手段で行われることである。照射(悪性新生物の細胞病変に対する放射線の作用)には、出力の高い指向性放射線源が使用される。照射に先だって行われる放射線検査に関しては、はるかに低レベルで照射が行われているばかりでなく、複数種類の組み合わせ:血管造影法、排泄尿路造影法、胃腸管、骨格および頭蓋骨、および胸部の検査;骨および肝臓の放射線核種診断;超音波診断法(エコスコピー、音波断層造影法)による腹腔、骨盤、および軟組織器官の画像化処理;コンピュータ化断層法(高性能X線造影法による画像化処理);磁気共鳴断層法などの中から、一つの検査しか行われないのが普通である。そのため、高い精度で放射線の作用を得ることが常に困難である。その結果、一部の悪性病巣の照射が見落とされたり、高レベルのX線が悪性病巣の範囲を超える領域に集中的に照射されたりすることになる。後者の場合、周囲の健常組織は、悪性病巣への放射線の経路の途中で健常組織が不可避的に照射を受ける場合よりも、かなり強い損傷を受けることになる。
【0004】
このような方法を実行する場合、放射線の作用時のX線ビームの方向および「照準」の選択が不正確であることだけでなく、内臓の位置が一定ではないこと、治療クールの違いに起因して放射線の作用時に患者の配置が不正確であることも現出する。健常組織の過剰照射を避けるために行われる分割照射でさえ、不可逆的な病変に対して悪性病巣に単回照射される線量では十分ではなく、悪循環を生み出す(分割照射の場合、合計線量の数分の一の強さであることが公知である)[1(84、91頁)]。
【0005】
このような欠点を克服するための多くの知られた技術的解決法の中で、患者の位置決めの高い正確さと安定性を重視した特別な手段が講じられる(たとえば、1999年11月16日に公開された米国特許第5,983,424号を参照)。
【0006】
幾何学的および動的な可能性の点で遠隔照射装置とよく似たX線診断装置を、いわゆるシミュレータとして使用することは、指摘されている欠陥を克服する方法のうちの別の方法である[1(55頁)]。シミュレータを使うと、患者の位置を変えずに患者を異なる方向で「透過」させることが可能である。患者のトポメトリを準備する場合、シミュレータのテーブルの上で照射時にとるであろう姿勢に患者を寝かせてX線検査を行う。十字線およびX線造影フィラメントの移動によって照射体積の中心と輪郭が選び出され、放射線を作用させるときに放射線ビームの中心軸が通るであろう平面が表示される。
【0007】
しかしこのようなやり方は、いずれも悪性新生物に放射線を作用させる放射線ビームを「照準」に正しく向ける問題の克服にはつながらず、それどころか腫瘍の拡大を招く。照射クールが患者の診断検査の終了から時間的に離れている場合の長期治療のときに、このような課題が重要であることが認められる。
【0008】
想定される発明に最も近い技術的解答は、米国特許第5,207,223号(1993年5月4日に公開)に記載されている。この特許による方法および装置では、患者の組織構造の画像の取得を可能にする指向性放射線ビームを使用し、放射線を作用させる直前にこのような画像を得、これを使用して、あらかじめ行った診断検査の結果と比較することにより、照射プログラムの適正化が行われる。しかしこの場合、この画像の入手と悪性病巣組織への放射線作用とは、互いに異なるビームが使用され、このことは、照射用ビームの方向についての誤差を原理的に回避し得ない。そのうえさらに、コンピュータ支援断層撮影のアルゴリズムを実行しなければ妥当な精度で画像を得ることはできない。このことは、対応する技術的手段が複雑になるばかりでなく、比較的高レベルの照射線量を必要とすることを意味する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によって以下が提供される:
(1) X線ビームを使用する悪性新生物の放射線治療法であって、該方法は、以下:
第一段階であって、患者の身体(5)の悪性新生物とその周辺の器官および組織とを含む部分の内部構造の画像を、測定している結果が帰属する点の空間座標と、患者の身体の生物学的組織の密度値の空間座標とのセットとして得られる情報に基づいて取得し、次に、先の診断結果を使用して悪性新生物に関係する構造要素の画像を同定し、それから、決定された点座標のセットである悪性新生物の各部位に照射すべきX線照射線量をセットとして、照射プログラムを作成し、そのあと第二段階に移る、第一段階、
第二段階であって、集束領域(16)が占める位置と、第一段階で悪性新生物に関係する構造要素の画像を同定することによって決定した座標セットで表される悪性新生物の部分とが一致するように、該第一段階と全く同じ手段を使ってX線の集束させながら悪性新生物に占有される空間領域を走査し、次に、第一段階よりX線の強度を高くし、かつ照射時間を制御しながら、該第一段階で作成した照射プログラムを実行する、第二段階、
の2段階を包含し、
該第一段階で、患者の身体の内部構造に関する情報を得るために、測定している結果が帰属する点を含み、かつ患者の身体の悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)にX線を集束させ、この領域に発生する二次放射線を1つ以上の検出器(6,20)に送達し、放射線集束領域と患者の身体とを相対的に移動させながら患者の身体の悪性新生物を含む部分を走査し、一つ以上の検出器を使って得られる、測定している結果が帰属するX線集束領域の点の座標と、それと同時に決定される二次放射線強度の値との組み合わせセットに基づいて、この点における生物学的組織の密度を判断し、生物学的組成の密度と見なされる量的指標と、それらに対応する座標値とを一緒に使用して、患者の身体の悪性新生物を含む部分の生物学的組織の密度分布の画像を取得すること、
を特徴とする、方法。
(2) 空間に配置された一つ以上のX線源(1,17)を使用し、測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)へのX線の集束は、それに対応する数のコリメータ(13,18)を使って行われ、そして一つ以上の検出器への発生する二次放射線の送達は、同じく、一つ以上のコリメータ(15,19)を使って行われ、その際、すべてのコリメータは、その中心チャネル軸、測定している結果が帰属する点と交差するように、配向されることを特徴とする、項目1に記載の方法。
(3) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)へのX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源(1)から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する一つ以上のX線用半レンズ(21)を使って行われ、そして一つ以上の検出器への発生する二次放射線の送達は、この放射線を検出器(6,20)上に集束させるかあるいは近似的に平行な該放射線を作る、一つ以上のX線用半レンズ(22,23)を使って行われ、その際、すべてのX線用半レンズは、その光学軸が測定している結果が帰属する点と交差するように、配向されることを特徴とする、項目1に記載の方法。
(4) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)に対するX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源(1)から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する一つ以上のX線用半レンズ(21)を使って行われ、そして一つ以上の検出器への発生する二次放射線の送達は、この放射線を検出器(6)上に集束させる一つ以上のX線用レンズ(3)を使って行われ、その際、すべてのX線用半レンズおよびレンズは、それらの光学軸が、測定している結果が帰属する点と交差するように、配向されることを特徴とする、項目1に記載の方法。
(5) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)に対するX線の集束は、空間に配置された複数個のX線源から放射される放射線を変換する、対応する数のX線用半レンズ(21)を使って行われ、かつ一つ以上の検出器への発生する二次放射線の送達は、一つ以上のコリメータ(19,15)を使って行われ、その際、X線用半レンズおよびコリメータは、すべてのX線用半レンズの光学軸およびすべてのコリメータの中心チャネルの光学軸が、測定している結果が帰属する点と交差するように、配向されることを特徴とする、項目1に記載の方法。
(6) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(4)に対するX線の集束が、空間に配置された一つ以上のX線源(1)と、それに対応する数の、各線源から放射されるX線を、測定している結果が帰属する点に集束させるX線用レンズ(3)とを使用して行われ、そして一つ以上の検出器への発生する二次放射線の送達が、この放射線を検出器(6)上に集束させ、かつ前記点の上に第2の焦点を有する、X線用レンズ(3)を使って行われることを特徴とする、項目1に記載の方法。
(7) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)に対するX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源(1)と、それに対応する数の、各線源から放射されるX線を、測定している結果が帰属する点に集束させるX線用レンズ(2)とを使用して行われ、そして一つ以上の検出器(6,20)への発生する二次放射線の送達は、コリメータ(15,19)の中心チャネルが上記の点と交差するように配向された前記コリメータを使って行われることを特徴とする、項目1に記載の方法。
(8) 悪性新生物の位置を決定する方法であって、該方法は、X線ビームを使用して、測定している結果が帰属する点の空間座標と、これらの座標に対応する生物学的組織の密度値のセットとして得られる情報に基づいて、悪性新生物とその周辺の器官および組織とを含む、患者の身体の部分の内部構造の画像を取得し、次に、あらかじめ行った診断結果を使用して、悪性新生物に関係する構造要素の画像を同定することを含み、
ここで、患者の身体の内部構造に関する上記情報を得るために、測定している結果が帰属し、かつ患者の身体の悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域にX線を集束させ、この領域に発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達し、放射線集束領域と患者の身体との相対的な移動を行いながら患者の身体の悪性新生物を含む部分を走査し、そして一つ以上の検出器を使って得られ、かつ測定している結果が帰属するX線集束領域の点の座標でもって決定される二次放射線強度の値のセットに基づいて、この点における生物学的組織の密度を判断し、患者の身体の悪性新生物を含む部分の生物学的組織の密度分布の画像を得るために、生物学的組成の密度と見なされる量的指標と、それらに対応する座標値とを一緒に使用し、次に、点の座標と、それに対応する生物学的組織の密度との組み合わせを決めることを特徴とする、方法。
(9) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体(5)の悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)に対するX線の集束は、一つ以上のコリメータ(13,18)を使用し、空間に配置された対応する数の一つ以上のX線源(1,17)から放射される放射線を使用して行われ、そして一つ以上の検出器への発生する二次放射線の送達は、同じく、一つ以上のコリメータ(15,19)を使って行われ、その際、すべてのコリメータは、その中心チャネル軸が、測定している結果が帰属する点と交差するように、配向されることを特徴とする、項目8に記載の方法。
(10) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)に対するX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する一つ以上のX線用半レンズ(21)を使って行われ、そして一つ以上の検出器への発生する二次放射線の送達は、この放射線を検出器(6,20)上に集束させるかあるいは近似的に平行な前記放射線を作る、一つ以上のX線用半レンズ(22)を使って行われ、その際、すべてのX線用半レンズは、その光学軸が測定している結果が帰属する点と交差するように、配向されることを特徴とする、項目8に記載の方法。
(11) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体(5)の悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)に対するX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源(1)から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する一つ以上のX線用半レンズ(21)を使って行われ、そして一つ以上の検出器(6)への発生する二次放射線の送達は、この放射線を検出器上に集束させる一つ以上のX線用レンズ(22)を使って行われ、その際、すべてのX線用半レンズおよびレンズは、その光学軸が、測定している結果が帰属する点と交差するように、配向されることを特徴とする、項目8に記載の方法。
(12) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)に対するX線の集束は、空間に配置された複数個のX線源(1)から放射される放射線を変換する、対応する数のX線用半レンズ(21)を使って行われ、そして一つ以上の検出器(6,20)への発生する二次放射線の送達は、一つ以上のコリメータ(15,19)を使って行われ、その際、X線用半レンズおよびコリメータは、すべてのX線用半レンズおよびすべてのコリメータの中心チャネルの光学軸が測定している結果が帰属する点と交差するように、配向されることを特徴とする、項目8に記載の方法。
(13) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域に対するX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源(1)と、それに対応する数の各線源から放射されるX線を測定している結果が帰属する点(4)に集束させるX線用レンズ(2)とを使用して行われ、そして一つ以上の検出器への発生する二次放射線の送達は、検出器(6)上に二次放射線を集束させ、かつ前記点の上に第2の焦点を有するX線用レンズ(3)を使って行われることを特徴とする、項目8に記載の方法。
(14) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域に対するX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源(1)と、それに対応する数の、各線源から放射されるX線を、測定している結果が帰属する点に集束させるX線用レンズ(2)とを使用して行われ、そして一つ以上の検出器(6,20)への発生する二次放射線の送達は、その中心チャネルの光学軸が、上記の点と交差するように配向させたコリメータ(15,19)によって行われることを特徴とする、項目8に記載の方法。
(15) 悪性新生物の位置を決定し、その悪性新生物を放射線治療するための装置であって、該装置は、
X線光学系(8)、
患者の身体とX線光学系の相対的な位置を決めるための手段(10)、および
情報を処理し、画像化するための手段(12)を備え、
該光学系(8)が、
一つ以上のX線源(1)、
X線を集束させる手段(2)、および
一つ以上の検出器(6)とを含み、
該検出器の出力が、情報を処理し、画像化するための手段(12)に接続され、
ここで、X線光学系(8)を構成するX線源(1)は、その放射線の強さを変更する能力をもって実現され、X線光学系(8)はX線源(1)の放射線の強度を同時に制御する手段(9)を含み、これらの線源から放射される放射線を集束させるための手段(2)は、同様に、すべての線源の放射線を、測定している結果が帰属し、かつ患者の身体(5)の悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域に、集束させる能力をもって実現され、装置に取り付けられ、
さらに、X線光学系(8)は、集束領域に発生する二次放射線を送達するための一つ以上の手段(3)も備え、二次放射線は、これらの手段に取り付けられて二次放射線に感応するように実現された検出器(6)に送達され、
測定している結果が帰属し、かつ患者(5)の身体の悪性新生物を含む部分の内部にある点の座標を決定するためのセンサ(11)は、患者の身体とX線光学系の相対的な位置を決めるための手段(10)と連結され、かつセンサ自身の出力端子によて、情報を処理し、画像化するための手段(12)に接続され、
該手段(12)は患者の身体とX線光学系の相対的な位置を決めるための手段(10)を使って、患者の身体(5)の悪性新生物を含む部分のX線源の放射線を集束させる領域による走査の結果得られる組織密度分布の形成と画像化能力をもって実現されることを特徴とする、装置。
(16) X線光学系は、
複数個のX線発生源(1,17)、
各放射線を測定している結果が帰属する点を含む領域(16)に集束させるための手段、および
前記領域に発生する二次放射線を検出器(6,20)に送達するための手段
を含み、その送達は、チャネルを備えるコリメータ(13,15,18,19)の形で実現され、そのチャネルは、X線発生源の放射線を集束させる領域に向けられたコリメータの形で実現され、その際、すべてのコリメータの中心チャネルの光学軸は、測定している結果が帰属する点と交差することを特徴とする、項目15に記載の装置。
(17) X線光学系を構成するX線源(1)は近似的に点と見なすことができ、そしてコリメータ(13)は、これらの線源上に集束するチャネルを有し、各線源の出口と対応するコリメータの入口との間には、開口部を有するスクリーン(14)が置かれていることを特徴とする、項目16に記載の装置。
(18) X線光学系を構成するX線源(17)が長さを有し、コリメータ(18)のチャネルがX線源側に向かって広がっていることを特徴とする項目16に記載の装置。
(19) X線光学系を構成するX線源(1)は近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための手段は、それぞれ、線源から放散される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズ(21)の形で実現され、そして発生する二次放射線を検出器に送達するための手段は、それぞれ、この放射線を検出器(6)の上に集束させるX線用半レンズ(22)の形で実現され、その際、すべてのX線用半レンズの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差することを特徴とする、項目15に記載の装置。
(20) X線光学系を構成するX線源(1)は近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための手段は、それぞれ、線源から放散される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズ(21)の形で実現され、そして発生する二次放射線を検出器(20)に送達するための手段は、それぞれ、近似的に平行な放射線を形成し、かつX線を集束させる領域(16)に焦点を有するX線用半レンズ(23)の形で実現され、その際、すべてのX線用半レンズの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差することを特徴とする、項目15に記載の装置。
(21) X線光学系を構成するX線源(1)は近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域(16)にX線を集束させるための手段は、それぞれ、線源から放散される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズ(21)の形で実現され、そして発生する二次放射線を検出器に送達するための手段は、それぞれ、この放射線を検出器(6)の上に集束させ、かつX線集束領域に第2の焦点を有するX線用レンズ(3)で実現され、すべてのX線用半レンズおよびレンズの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差することを特徴とする、項目15に記載の装置。
(22) X線光学系を構成するX線源(1)は近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための手段は、それぞれ、線源から放散される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズ(21)の形で実現され、そして発生する二次放射線を検出器に送達するための手段は、それぞれ、対応する検出器(20)側に向かって広がるチャネルを有するコリメータ(19)の形で実現され、すべてのX線用レンズならびに半レンズの光学軸、およびコリメータ中心チャネルの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差することを特徴とする、項目15に記載の装置。
(23) X線光学系を構成するX線源(1)は近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域(16)にX線を集束させるための手段は、それぞれ、対応するX線源から放散される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズ(21)の形で実現され、そして発生する二次放射線を検出器に送達するための手段は、それぞれ、対応する検出器(6)側に向かって集束するチャネルを有するコリメータ(15)の形で実現され、すべてのX線用半レンズおよびコリメータ中心チャネルの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差することを特徴とする、項目15に記載の装置。
(24) X線光学系を構成するX線源(1)は近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための手段は、それぞれ、線源から放散される放射線を集束させるX線用レンズ(2)の形で実現され、そして発生する二次放射線を検出器に送達するための手段は、それぞれ、この放射線を対応する検出器(6)の上に集束させるX線用レンズ(3)で実現され、すべてのX線用レンズの光学軸は、測定している結果が帰属する点(4)で交差することを特徴とする、項目15に記載の装置。
(25) X線光学系を構成するX線源(1)は近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための手段は、それぞれ、X線源から放散される放射線を集束させるX線用レンズ(2)の形で実現され、そして発生する二次放射線を検出器に送達するための手段は、それぞれ、対応する検出器(6)側に向かって集束するチャネルを有するコリメータ(15)の形で実現され、すべてのX線用レンズおよびコリメータ中心チャネルの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差することを特徴とする、項目15に記載の装置。
(26) X線光学系を構成するX線源(1)は近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域(16)にX線を集束させるための手段は、それぞれ、X線源から放散される放射線を集束させるX線用レンズ(2)の形で実現され、そして発生する二次放射線を検出器に送達するための手段は、それぞれ、対応する検出器(20)側に向かって広がるチャネルを有するコリメータ(19)の形で実現され、すべてのX線用レンズおよびコリメータ中心チャネルの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差することを特徴とする、項目15に記載の装置。
(27) 前記装置は、強度を上げながらX線源を操作しているとき、検出器を隔離するか、または遮蔽するための手段を追加的に装備することを特徴とする、項目15ないし26のいずれか任意の一つに記載の装置。
(発明の開示)
悪性新生物の放射線治療法、悪性新生物の位置決定法、およびその方法を実施するための装置に関する本願発明が提供する技術的成果は、組織構造を決定し悪性病巣の位置を決定するためのX線ビームおよび悪性病巣に対する本来の放射線照射用X線ビームと、全く同じビームを使用して上記の諸要因を解消することにある。達成できる別の技術的成果は、照射プログラムの修正に使用される組織構造の画像を入手する過程で照射する線量を減らせることができるばかりでなく、選定した放射線照射領域の周辺組織の照射線量も減らせることである。
【0010】
本願発明によるX線ビームを使用する悪性新生物の放射線治療法および上で述べてきた公知の方法は2段階で実施される。第一段階では、測定している結果が帰属する点の空間座標セットの形での情報と、これらの座標に対応する組織の密度の値とを基にして、患者の身体の悪性新生物を含む内部構造部分と、その周辺部の器官および組織の画像が入手される。次に、あらかじめ実施した診断結果を使用して、決定された点座標のセットによって表される悪性新生物のさまざまな部分に対して行わなければならない悪性新生物に関係する構造エレメント画像の同定が行われ、照射プログラムがX線線量セットの形で作成される。この手続きのあとは、第二段階に移り、作成された照射プログラムが実行される。
【0011】
公知の方法とは異なり、本願発明の方法により上記の形で技術的結果を得るために、第一段階において、測定している結果が帰属する点であって、患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域にX線を集束させ、患者の身体の一部の内部構造に関する上記の情報を得る。この領域に発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達し、患者の身体の悪性新生物を含む部分を走査する。そのためには、走査中、放射線を集束させる領域と患者の身体とを相互に移動させる。一つ以上の検出器によって得られ、測定している結果が帰属するX線集束領域の点の座標と同時に決定される二次放射線強度値のセットに基づいて、この点の組織の密度が判断される。患者の身体の悪性新生物を含む部分の組織密度分布の画像を描出するには、組織の密度と見なされる量的指標と、それに対応する座標値とが使用される。第二段階では、第一段階で悪性新生物に関係する構造要素を同定した結果、決定された点の座標で表される悪性新生物部分に一致するように、第一段階と同じ手段を使ってX線を集束させ、悪性新生物と考えられる空間領域の走査が行われる。第一段階よりX線強度を高め、照射時間を制御して、第一段階で作成された照射プログラムも実行される。
【0012】
たとえば、測定している結果が帰属する点であって、患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置した対応する数のX線源を使用し、一つ以上のコリメータを使って行うことができる。その際、発生する二次放射線は、一つ以上のコリメータを使って一つ以上の検出器に送達することができる。この場合、すべてのコリメータの向きは、その中心チャネルの軸が、現在の測定の結果が関係する点と交差するように調整される。
【0013】
測定している結果が帰属する点であって、患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源と対応する数のX線用半レンズを使って行うこともできる。このX線用半レンズは、X線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する。その際、発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、この放射線を検出器上に集束させるか、近似的に平行な放射線を形成する一つ以上のX線用半レンズが使用される。この場合、すべてのX線用半レンズは、その光学軸が、現在の測定の結果が関係する点と交差するように配向される。
【0014】
測定している結果が帰属する点であって、患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源と対応する数のX線用半レンズを使って行うこともできる。このX線用半レンズは、X線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する。発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、この放射線を検出器上に集束させる一つ以上の放射線用レンズが使用される。その際、すべてのX線用半レンズおよびレンズは、その光学軸が、測定している結果が帰属する点と交差するように配向される。
【0015】
具体的な実施形態のうちの1つにおいて、本願発明の方法を実施する場合、測定している結果が帰属する点であって、患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された複数個のX線源と対応する数のX線用半レンズを使って行われ、このX線用半レンズは、X線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する。発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、一つ以上のコリメータが使用される。その際、すべてのX線用半レンズおよびすべてのコリメータの中心チャネルの光学軸が、現在の測定の結果が関係する点と交差するように、これらのX線用半レンズおよびコリメータが配向される。
【0016】
別の具体的な実施形態において、本願発明の方法を実施する場合、測定している結果が帰属する点であって患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源と対応する数のX線用レンズとを使用して行われ、このX線用レンズは、各線源から放射されるX線を、測定している結果が帰属する点に集束させる。その際、発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、この放射線を検出器に集束させ、かつ上記の点に第二の焦点を有するX線用レンズが使用される。この実施形態では、健常な組織に対する照射レベルを低く抑え、かつわずかな数(一つの場合さえ可能)のビームの使用によって放射線の作用を非常に小さい領域に局限することができ、その結果、分割照射を避けることができ、多くの症例で小さい腫瘍の放射線治療を1クールで行うことができる、さらなる技術的成果が達成される。
【0017】
さらに別のもう一つの具体的な実施形態によれば、測定している結果が帰属する点であって患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源と対応する数のX線用レンズとを使用して行われ、このX線用レンズは、各線源から放射されるX線を測定している結果が帰属する点に集束させる。その際、発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するにはコリメータが使用され、このコリメータは、その中心チャネル光学軸が、上記の点と交差するように配向される。
【0018】
米国特許第5,207,223号[3]に記載する公知の方法と同様、X線ビームを使用する悪性新生物の位置を決定する本願発明による方法において、測定している結果が帰属する点の空間座標と、これらの座標に対応する組織密度値とのセットの形で与えられる情報に基づいて、患者の身体の悪性新生物を含む部分およびその周辺器官および組織の内部構造の画像が得られる。このあと、あらかじめ得られた診断結果を使用して、悪性新生物に関係する構造要素の画像が同定される。
【0019】
上記公知の方法と異なり、上記技術的成果をあげるための本願発明の方法において、上記患者の身体の一部の内部構造に関する上記情報を入手するため、患者の身体の悪性新生物を含む部分の内部にある領域へのX線の集束が行われる。この領域に発生する二次放射線は一つ以上の検出器に送達され、患者の身体の悪性新生物を含む部分が走査される。走査を行うには、X線集束領域と患者の身体とを相対的に移動させる。一つ以上の検出器を使って得られる二次放射線の強度値と、測定している結果が帰属する、放射線を集束させるべき領域の点の座標とを同時に決定したセットに基づいて、この点における生物学的組織の密度を判断する。生物学的組成の密度と見なされる量的指標およびそれに対応する座標の値は、患者の身体の悪性新生物を含む部分における生物学的組織の密度分布の画像を描出するために使用される。つづいて、点座標と、その点座標に対応し、悪性新生物に属するものと同定された生物学的組織の密度との組み合わせが決定される。
【0020】
悪性新生物の位置を決定する本願発明の方法を実施する具体的実施形態において、測定している結果が帰属する点であって、患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、一つ以上のコリメータを使用して行われる。その際、空間に配置された対応する数のX線源が使用され、発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、一つ以上のコリメータも使用される。すべてのコリメータは、その中心チャネルの軸が、測定している結果が帰属する点と交差するように配向される。
【0021】
別の具体的な実施形態において、測定している結果が帰属する点であって患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源と対応する数のX線用半レンズを使用して行われ、このX線用半レンズは、X線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する。発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、この放射線を検出器に集束させるか、または近似的に平行な放射線を形成する一つ以上のX線用半レンズが使用される。その際、すべてX線用半レンズは、その光学軸が、測定している結果が帰属する点と交差するように、配向される。
【0022】
別のもう一つの具体的実施形態において、測定している結果が帰属する点であって、患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源と対応する数のX線用半レンズを使用して行われ、このX線用半レンズは、X線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する。発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、この放射線を検出器に集束させる一つ以上のX線用レンズが使用される。その際、すべてX線用半レンズおよびレンズは、その光学軸が、測定している結果が帰属する点と交差するように、配向される。
【0023】
次の具体的な実施形態において、測定している結果が帰属する点であって、患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された複数個のX線源と対応する数のX線用半レンズを使って行われ、このX線用半レンズは、X線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する。発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、一つ以上のコリメータが使用される。その際、X線用半レンズおよびコリメータは、すべての放射線用X線用半レンズおよびすべてのコリメータの中心チャネル光学軸が、現在の測定の結果が関係する(帰属する)点と交差するように、配向される。
【0024】
患者の身体の悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源と、対応する数のX線用レンズとを使用して行われ得、このX線用レンズは、各線源から放射されるX線を測定している結果が帰属する点に集束させる。発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、この放射線を検出器の上に集束させ、かつ上記の点に第二の焦点を有するX線用レンズが使用され得る。
【0025】
さらに、測定している結果が帰属する点であって、患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源と、対応する数のX線用レンズとを使って行うこともでき、このX線用レンズは、各線源から放射されるX線を測定している結果が帰属する点に集束させる。その際、発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、コリメータが使用され、このコリメータは、中心チャネルの光学軸が、上記の点と交差するように配向される。
【0026】
本願発明による二つの方法を実施するには、同じ装置を使用することができる。この装置は、悪性新生物の位置の決定およびX線ビームを使用する悪性新生物の放射線治療に対する前述の米国特許第5,207,223号[3]による公知の装置と同様、X線光学系、患者の身体とX線光学系との間の相対的な位置関係を決める手段、および情報処理および画像化するための手段を備える。その際、X線光学系は、放射する放射線を集束させるための手段および一つ以上の検出器を具備し、検出器の出力は情報処理および画像化のための手段に接続される。
【0027】
上記の形態で本願の発明に属する上記技術的成果をあげるためには、公知の装置とは異なり、本願の発明による装置において、X線光学系を構成するX線源は、その放射線強度を変更する能力をもって実現され、そしてそのX線光学系は、X線源の放射線強度を同時制御する手段を含む。これらの線源の放射線を集束させる手段は、測定している結果が帰属する点であって患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域にすべての線源の放射線を集束させる能力をもって実現され、装置に取り付けられる。さらに、X線光学系は、集束領域に発生する二次放射線を検出器に送達するための一つ以上の手段を含み、検出器はこれらの手段の出力に取り付けられて、二次放射線に感応するように実現される。測定している結果が帰属する点であって患者の身体の悪性新生物を含む部分の内部にある点の座標を決定するためのセンサは、患者の身体とX線光学系との間の相対的な位置関係を決める手段と接続され、このセンサは、それ自体の出力端子を通して情報処理および画像化する手段に接続される。その情報処理画像化手段は、患者の身体とX線光学系との間の相対的な位置関係を決めるための手段を使って、患者の身体の悪性新生物を含む部分の、X線源の放射線を集束させる領域による走査の結果、得られる組織密度分布を形成し、画像化する能力をもって実現される。
【0028】
本願発明の装置を実現する具体的な実施形態の一つにおいて、X線光学系は、複数個のX線源を含み、測定している結果が帰属する点を含む領域にその放射線を集束させるための各手段およびそこに発生する二次放射線を検出器に送達するための手段は、X線源のX線集束領域に指向するチャネルを持つコリメータの形で実現され、その際、すべてのコリメータの中心チャネル光学軸が、測定している結果が帰属する点で交差する。
【0029】
この実施形態では、構成要素として、たとえば近似的に点とみなされるX線源のX線光学系と、これらの線源上に集束させるチャネルを持つコリメータとが使用可能であり、各線源の出口と、対応するコリメータの入口との間には、ホール(孔)をあけたスクリーンが配置される。
【0030】
上記実施形態において、構成要素として幅のあるX線光学系と、これらの線源に向かって広がるチャネルを持つコリメータを使用することもできる。
【0031】
別の具体的な実施形態において、X線光学系を構成するX線源は近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための各手段は、対応する線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズの形で実現され、発生する二次放射線を検出器に送達するための各手段は、この放射線を検出器上に集束させるX線用半レンズとして実現される。その際、すべてのX線用半レンズの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差する。
【0032】
もう1つの具体的な実施形態において、X線光学系を構成するX線源は、近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための各手段は、対応する線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズの形で実現され、発生する二次放射線を検出器に送達するための各手段は、近似的に平行な放射線を形成し、かつX線の集束領域に焦点をもつX線用半レンズとして実現される。その際、すべてのX線用半レンズの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差する。
【0033】
次の具体的な実施形態において、X線光学系を構成するX線源は、近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための各手段は、対応する線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズの形で実現され、発生する二次放射線を検出器に送達するための各手段は、この放射線を検出器上に集束させ、かつX線の集束領域に第二の焦点をもつX線用レンズとして実現される。その際、すべてのX線用半レンズおよびレンズの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差する。
【0034】
X線光学系を構成するX線源を近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための各手段は、対応する線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズの形で実現され、発生する二次放射線を検出器に送達するための各手段は、対応する検出器に向かって広がったチャネルを備えたコリメータの形で実現されるような装置も可能である。その際、すべてのX線用レンズおよび半レンズおよびコリメータの中心チャネルの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差する。
【0035】
本願の発明による装置を実現するもう一つの可能性は、X線光学系を構成するX線源が、近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための各手段が、対応するX線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズの形で実現され、発生する二次放射線を検出器に送達するための各手段が、対応する検出器に向かって集束するチャネルを備えたコリメータの形で実現されるという特徴を持つ。その際、すべてのX線用半レンズおよびコリメータの中心チャネルの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差する。
【0036】
装置を実現する別の実施形態は、X線光学系を構成するX線源を近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための各手段は、X線源から放射される放射線を集束させるX線用レンズの形で実現され、発生する二次放射線を検出器に送達するための各手段が、この放射線を対応する検出器上に集束させるX線用レンズの形で実現されることを特徴とする。その際、すべてのX線用レンズの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差する。
【0037】
X線光学系を構成するX線源を近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための各手段は、X線源から放射される放射線を集束させるX線用レンズの形で実現され、発生する二次放射線を検出器に送達するための各手段は、対応する検出器に向かって狭くなるチャネルを備えたコリメータの形で実現され、そしてすべてのX線用レンズおよびコリメータの中心チャネルの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差するという特徴を持つ。
【0038】
本願の発明による装置は、X線光学系を構成するX線源を近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための各手段は、X線源から放射される放射線を集束させるX線用レンズの形で実現されるような方式で具現化することもできる。その際、発生する二次放射線を検出器に送達するための各手段は、対応する検出器上に向かって広がるチャネルを備えたコリメータの形で実現され、すべてのX線用レンズおよびコリメータの中心チャネルの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差する。
【0039】
ここに記載したすべての実施形態において、上記装置には、出力をあげてX線源を操作するとき、検出器を遮断または遮蔽するための手段を追加的に取り付けることができる。
【0040】
(発明実施の形態)
本願の発明による悪性新生物の位置決定法は、そのあとに悪性新生物の治療が行われないか、あるいは第一段階において悪性新生物の放射線治療法の一部を構成しない場合は、独立したものと見なされる。両方の場合、本法自体は、診断方法でもないし治療方法でもない。
【0041】
本願の発明による悪性新生物の放射線治療法は、常に、第一段階に悪性新生物の位置決定法の実施を含む。
【0042】
本願の発明による装置は、両方法について共通している。
【0043】
本願の発明による方法は、本願の発明による装置を使用し、以下のようにして実施される。
【0044】
あらかじめ実施された診断検査によって判断されたところに従い、近似的に点と見なされる線源(擬似点源)1(図1)から放射されるX線を、X線用レンズ2を通して患者の身体5の悪性新生物を含む部分7の所定の点4に集束させる。患者の身体は、患者の身体とX線光学系との間の相対的な位置関係を決めるための手段10によって、必要な位置に置かれる。点4に集束させた放射線は、患者5の生物学的組織に存在する物質の二次散乱放射線(干渉性および非干渉性コンプトン散乱放射線、蛍光放射線)を励起する。二次放射線の励起過程の確率的な性格に起因するゆらぎまで正確に反映する二次放射線の強度は、それが発生する物質の密度に比例する。第2X線用レンズ3の焦点も同じ点4にある。このレンズは、それに当たる散乱二次放射線を検出器6に集束させる。検出器はそれを電気信号に変換し、変換された電気信号は、情報処理および画像化のための手段12の入力に送られる。レンズ1および3の共通の焦点4の位置は、相対的な位置関係を決めるための手段10によって、患者の身体5とX線光学系8との位置関係を動かすことによって選定される。X線光学系8は、放射線強度を変更する能力をもって実現される放射線源1、X線用レンズ2,3、および放射線検出器6を備え、さらに放射線強度によって制御するための手段9も装備する。後者はX線光学系を構成するすべての線源の放射強度を同時変化させることができる。(図1は、本願の方法の基礎にある原理を説明するものであり、そのうちの一例だけを示す)。
【0045】
第二段階の放射線治療では、放射線強度を変化させる能力と、変化を制御するための手段9とが使用される。
【0046】
X線を制御するための手段であるX線用レンズ(分散型放射線の集束、分散型放射線から近似的に平行なビームの形成、近似的に平行なビームの集束など)は、放射線送達装置において湾曲したチャネルの統合体をなしており、放射線はこのチャネル内で表面全反射をくり返し受けることをはっきりさせておきたい(たとえば、V.A.Arkadiev, A.I.Kolomiitsev,M.A.Kumakhovら、Broadband X−ray optics with angular aperture.Uspekhi fizicheskikh nauk,1989,第157巻,第3章,529〜537頁[4](この中には、この種の第1レンズが記載されている)および米国特許第5744813号(1998年4月28日に刊行)[5](この中には、より最新のレンズが記載される))。分散型放射線を集束させるために使用することを想定する場合、レンズはバレル形(樽形)(すなわち両端の面が小さくなっている)をしており、分散型放射線を近似的に平行な放射線に変換する場合や、この種の放射線を集束させることを想定する場合は、半バレル形(半樽形)(すなわち一方の端面だけが小さくなっている)をしているのが普通である。上記二種類のレンズを指すのに「完全レンズ」および「半レンズ」という用語が広く使用されている。
【0047】
図1による装置の作動と使用には二種類の方式が可能である。一つは、固定した患者の身体に対して、X線光学系8は、要素1、2、3、および6の相対的な配置は維持したまま移動させるやり方である(従って、レンズ1および3の焦点は一致する)。もう一つは、逆に、X線光学系8を固定して、患者の身体5を移動させる(このときの動きは、図1の矢印10bで表される)。
【0048】
本発明の装置は、X線光学系8と患者の身体5の相対的な移動に反応する座標センサ11も装備しており、X線光学系8と患者の身体5の相対的な位置関係を決めるための手段10に接続されている。このセンサ11は、その出力信号が、選択された基準点に対する、測定している結果が帰属する点の座標と一致するように、調節する必要がある。
【0049】
図1に示す具体的な実施形態において、X線用レンズ2および3の光学軸が交差する両レンズ共通の焦点4が、測定している結果が帰属する点として浮かび上がる。
【0050】
X線集束領域の輪郭があまりはっきりしない別の実施形態の場合、放射線を集束させる手段および発生する二次放射線を検出器に送達する手段の光学軸(あるいは仮想的に光学軸と見なされる光学軸、たとえばコリメータの中心チャネルの軸)である線が交差する点もそのような点である。X線光学系の相対的な位置関係を決めるための手段10によって、悪性新生物を含む(あるいは悪性新生物を含んでいるのではないかと推定されている)患者の身体における問題部位の領域内にこの点が存在することを確認する必要がある。
【0051】
X線集束領域は、測定している結果が帰属する上記の点を囲む領域で、その大きさは使用される集束手段に依存する(放射線治療を行う第二段階では、集束領域は、放射線集束手段の光学軸および発生する二次放射線を検出器に送達する手段の光学軸である、線の交差点も包含する。もっとも、この段階では測定することもできない)。図1に示した実施形態の集束領域の大きさは最小化されている。
【0052】
検出器6の出力信号と同様、センサ11の出力信号は、情報処理および画像化のための手段12の入力に伝送される。すでに上で述べたように、その際、焦点4は、測定している結果が帰属し、(X線用レンズ2の焦点領域の最終的な大きさを考慮すると)実際に、放射線源1がその周辺に集束されている。情報処理および画像化のための手段12は、スクリーン上に二次元または三次元の画像を描出する何らかのアルゴリズムを実行して、患者5の生物学的組織を構成する物質の密度分布の様子を再現する(たとえば:E.Lapshin,Graphics for IBM PC.Moscow,「Solon」、1995[6]を参照)。たとえば走査(測定している結果が帰属する点4を含むX線集束領域の移動)を患者5の体の平坦な断面で行う最も単純な場合、走査と同時に、手段12のスクリーン上に残光時間の長い画像を展開することができる。所定量の測定結果を記憶し、そのあとで画像を定期的に展開することも可能である。デジタル的な技法が可能であるため、必ずしも問題の断面を直接という訳ではないが、悪性新生物を含む領域の体積を走査する別の実施形態でも平坦な断面における密度分布の画像を得ることができる。このためには、必要な断面を含む体積に関係する、得られた結果(密度値およびそれに対応する座標値のセット)から、患者の身体の問題となる断面に対応する結果を選び出し、その二次元図をこの断面にある座標軸に対して描出し、選び出すだけで十分である。このような種類の必要な変換は、[6]に記載の方法と同様の方法を使用し、プログラムによって行われる。
【0053】
形成された画像の構造的要素を、悪性新生物に関係するものとして同定するためには、走査過程時にリアルタイムで画像分析を行う方式よりも、デジタル形式で記憶させた静的な画像を展開する方式こそがより目的に適っている。
【0054】
本願の発明による動作原理は、コンプトン散乱二次放射線の強度(この放射線の量子生成確率)が、別の等価な条件で(特に、所定の強度の一次X線が物質に作用する場合)物質の密度に比例することに基づいている(たとえば、J.Jackson,Classical electrodynamics,M.,「Mir」、1965[7]を参照)。
【0055】
公知の方法および装置とは異なり、それらが混乱を招くような影響を及ぼす場合に、コンプトン散乱二次放射線の量子を情報因子として使用することが、本願発明の主要な特徴を表している、
【0056】
すでに指摘したように、医療分野に応用する場合、生物学的組織に照射する線量が少なくても、妥当な精度が得られるということが重要な利点である。
【0057】
期待される利得を推定するため、人体の組織および器官の見ることができない内部構造を画像を得る最新の方法であるコンピュータ支援X線断層撮影から得られる最良の精度と比較する。
【0058】
ここで、以下のような仮定を置くことにする:光子エネルギーE=50keV;X線による集束領域は、深さが50mm、大きさが1mm×1mm×1mm(このような値は、たとえば、マンモグラフィ検査における観察条件および精度に対して特徴的な値である)、検出器は5cmの深さで発生する二次放射線の5%を感知する(この仮定は、二次放射線が、それを検出器に送達するための手段の入口に命中する前に、患者の身体を5cmだけ前進し、その際、二次放射を検出器に送達するレンズまたはコリメータの捕捉角が0.05×4πsrであることを意味する)。患者の身体に光子が吸収されるときの線形吸収係数は、水におけるそれに近く、エネルギーE=50keVにおいて、2×10−1/cmのオーダーであることを考慮すると、5cmの深さまで進入した場合、放射線の一次ビームの強度は、exp(2×10−1×5)=e≒2.71倍だけ減少する。患者の身体から放出される二次放射線の強度(その光子エネルギーは50keVに極めて近い)も、同様に、e≒2.71倍だけ減少する。従って、放射線が患者の身体に吸収されたことによる全体の強度損失は、e×e=7.3倍である。本発明者らは、評価される利得を過小評価して、二次放射線のコンプトン成分のみを考慮する。厚さΔxに対して、二次コンプトン放射線の量子生成確率は、ω=σk×Ne×Δxに等しい(ここで、二次コンプトン散乱σk=6.55×10−25cm2;水中における電子の密度Ne=3×1023/cm3である)。従って、Δx=1mm=10−1cmのとき、量子生成確率は、ω=6.55×10−25×3×1023×10−1≒2×10−2である。別の言い方をすれば、長さΔx=1mmにおいて、二次光子一個が生成するためには、平均して1:(2×10−2)=50個の一次放射線光子が必要である。
【0059】
本発明者らは、密度の推定誤差は約1%としたい(すなわち、二次光子の数の決定)。プロセスの無作為な性質に関して、過程の性格が確率論的であることを考えると、相対誤差の二乗平均値の平方根はδ=1/(N)1/2に等しい(ここで、Nは割り当てられた光子の数である)。δ=0.01の値は、N=10000に対応する。
【0060】
かくして、本発明者らは、Nx(5cmの深さまで透過し、この深さで二次コンプトン放射線を発生するために必要な一次光子の数;そして二次コンプトン放射線が5cm進行すると、N=10000の光子が検出器に到達する)に関して、単純な式を立てることができる:
Nx×e−2×5×10−2×2×10−2=104。
【0061】
ここで、係数5×10−2は、生成した全二次光子のうち、検出器まで到達し、記録される光子は、わずか5%=10−2であることを意味する。上式から、Nx=7.3×107を得る。
【0062】
E=50keVのエネルギーを持つ光子は、これらの光子の流れが2.8×1010個/cm2に等しければ、1レントゲンに相当する照射線量を形成する(光子エネルギー、その数、および線量の間の関係に関するデータ表は、たとえばPhysics of image visualization in medicine、S.Webb.M.「Mir」、1991[8]を参照)。患者の身体に進入するときに、一次X線ビームの断面積が1cm2と仮定すると、流束量7.3×107個/cm2は、患者の身体内で2.6×10−3レントゲンに相当する照射線量を形成する。
【0063】
たとえば、骨粗しょう症の検査における従来のX線コンピュータ断層撮影では、照射線量は、通常100〜300ミリレントゲンである(V.I.mazurov、E.G.Zotkin.Topical questions of diagnostics and treatment of osteoporosis.Saint−Petersburg、IKF「Foliant」、1998、p.47[9])。これは上記の照射線量より100倍大きい。
【0064】
照射を複数個の線源を使って行い、放射線ビームが異なる経路で集束領域に達し、患者の身体に蓄積しない場合は、線量を幾分減らせる可能性がある。
【0065】
それゆえ、空間に配置された複数個のX線源および検出器と、放射線を集束させるための対応する数の手段および二次コンプトン放射線を検出器に送達するための対応する数の手段(レンズ、半レンズ、コリメータ)とを使用する本願発明の方法および装置を実行する実施形態が最も有効である。一方で、このことは、放射線のより効果的な集束の実現を可能にし(図1に示されているように、集束手段がただ一つの場合、このようなことはX線用レンズを使用するときにだけ可能である)、検出器の出力における信号/雑音比(S/N比)を高める。他方で、このことは、患者の身体の被照射部分に対してより多くの作用を及ぼし、検査に関係しない部分および器官の過剰被曝を回避する可能性を与える。別の等価な条件で簡単な平均化(あるいは情報処理および画像化のための手段12における異なる検出器の出力信号のより複雑な処理、たとえば互いに近い点における密度の相関性の存在を考慮する処理負荷の平均化)を伴う複数個の検出器を使用すれば、精度を落とすことなくより小さい出力のX線源の使用を可能にする。加えて、平均化では、精度を下げる別の要因(たとえば、密度が異なる種々の点に向かう途中で、線源の放射線の吸収が異なる)の影響が緩和される。
【0066】
以下では、このような実施形態について考察する(図2から図11)。
【0067】
図2および図3に示す実施形態は、技術的実現の観点から最も単純な形態である。
【0068】
概略図2において、近似的に点と見なすことができるX線源1と、放射線を領域16に集束させるための、チャネルが放射線の伝播方向に拡散する(拡大する)コリメータ13とが使用される。コリメータの入り口に向かって放射線を誘導し、放射線が直接目標に当たること(コリメータを素通りすること)を防止するため、孔をあけたスクリーン14が、線源1とコリメータ13との間に設けられる。二次放射線は、放射線が伝播する方向、すなわち検出器6の方向に向かって集束し(狭くなり)、受光面上に焦点を持つことができるチャネルを備えたコリメータ15を使って検出器6に送達される。検出器としては、たとえば、入口開口部が小さい半導体検出器の使用が可能である。
【0069】
図3において、コリメータは、図2に示す向きとは反対向きに配置されている。放射線を領域16に集束させるコリメータ18の入り口の開口部を完全に利用するためには、細長い形をしたX線源17を使用することが目的に適っている。同じ理由で、入口に大きな開口部を持つ検出器(たとえばシンチレータタイプ)を使用することが望ましい。
【0070】
図4において、近似的に点と見なすことができる線源1の放射線を集束させる手段および二次放射線を送達する手段は、それぞれX線用半レンズ21および22の形で実現されている。その際、半レンズ22は散乱した二次放射線を検出器6の上に集束させる。
【0071】
図5において、近似的に点と見なすことができる線源1の放射線を集束させる手段と二次放射線を送達する手段とは、それぞれX線用半レンズ21および23の形で実現されている。その際、半レンズ23は散乱した二次放射線を近似的に平行な放射線に変換し、それを入口に大きな開口部を持つ検出器20に誘導する。
【0072】
図6は組み合わせ実施形態である:近似的に点と見なすことができる線源1の放射線を集束させる手段は、平行ビームを領域16に誘導するX線用半レンズ21の形で実現される。
【0073】
図7および図8は、二次放射線を送達する手段がコリメータの形で実現されることを特徴とする、別の組み合わせ実施形態である。
【0074】
図7において、コリメータ19は、検出器6に向かって広がったチャネルを有し、検出器は入口に大きな開口部を有する。
【0075】
図8において、コリメータ15は、前記とは逆に、検出器6に向かって狭くなったチャネルを有し、検出器は入口に小さな開口部を有する。
【0076】
図9は、精度の観点から最も性能が高く分解能が高い実施形態であり、近似的に点と見なすことができる線源1の放射線を集束させる手段と二次放射線を検出器6に送達する手段とは、それぞれX線用「完全」レンズ2および3の形で実現されている(図1に示すこの実施形態を参照)。
【0077】
図10および11には、さらに2つの組み合わせ実施形態が示してある。近似的に点と見なすことができる線源1の放射線を集束させる手段として、X線用「完全」レンズ2を使用するという点で一つである。
【0078】
図10には、二次放射線を、開口部の狭い検出器6へ送達するための手段として、検出器に向かって細くなったコリメータ15の使用が示してある。
【0079】
図11には、二次コンプトン放射線を開口部の広い検出器20へ送るための手段として、検出器に向かって広がったコリメータ19の使用が示してある。
【0080】
本発明の装置を実現するすべての実施形態において、X線光学系8を構成する要素の配置は、線源(1,17)の放射線が検出器に直接入射すること、あるいは患者(5)の体を通過したあとで検出器(6、20)に入射することは排除しなければならない。その理由は、すでに述べたとおり、集束領域に発生する二次放射線が、検査対象である生物学的組織の密度に関する情報を持つからである。このためには、いかなる検出器も(そして二次放射線を検出器に送達する手段も)、線源の放射線を集束領域に集束させる手段から、これらの手段によって形成されるX線ビームが交差する領域までの、任意の光学軸の延長線上に存在してはならない。
【0081】
本願の発明による悪性新生物の位置決定法と、この方法を実施するために行う本願発明の装置の操作は、点座標と、悪性新生物に属するものと確認された前記点座標に対応する生物学的組織の密度との組み合わせを決定(たとえば、情報を処理し、画像化するための手段に対応するデジタルコード群を保存)することによって終了する。同定は、たとえば公知の方法[3]と同様、発明の方法を実施する過程で得られた画像と、先の診断で得られた画像とを比較することによって行うことができる。その際、同定された構造要素の画像は、この方法の実施に関係するオペレータにより、コンピュータ技術分野で従来型の指示手段、たとえば「マウス」を使って、情報を画像化、処理するための手段であるスクリーン上に表示することができる。
【0082】
悪性新生物の放射線治療を実践する解決策が受け入れられるなら、装置をさらに使用するまえに、決定された点座標のセットで表される悪性新生物の各部分に照射すべきX線照射線量を、セットの形で与える照射プログラムが作成される。照射プログラムは、悪性新生物に冒された器官の特性やその他の要因を考慮して、たとえば[1]に記載されている方法を使用して作成される。
【0083】
治療方法を実行する第一段階(たとえば、悪性新生物の位置決定法を実行する段階)と同じ手段(レンズ2,21;コリメータ13,18)をX線の集束に使って、悪性新生物が占める空間領域を走査する過程で、照射プログラムが実行される。その際、必要照射線量は、X線源の放射線を強度によって統括制御する手段9を使って、悪性新生物組織を放射線で破壊するに十分な強度レベル(たとえば、X線管のアノード電流を上げて供給される)で、X線集束領域の不連続な各位置に照射される。具体的な実施形態において、悪性新生物が小さい場合は、X線照射集束領域の一箇所だけで、すなわち走査しないで、照射を行うことができる。放射線の集束に完全レンズを使用する場合は、微小な腫瘍(たとえば眼)の放射線治療の実施が可能である。
【0084】
作動中に検出器の構造から、X線源が高い放射線強度で漏れる可能性を防ぐために、X線源の出口を遮断するか、機械的に遮蔽することができる(図面にはここで言及する手段は描かれていない)。
【0085】
悪性新生物の位置を正確に把握するとき(第一段階では放射線治療法)および照射プログラムを実施するとき(第二段階)に、同じ一つの手段を使用することは、放射線ビームの照準誤差の最小化につながる。X線光学系は、患者の身体に関して、同定時に悪性新生物に関係があるとして決定された構造要素の画像と一致する位置に配置されるため、X線集束領域への照射は、悪性新生物の位置決定段階の位置と同じ位置で行われる。同定時に決定された座標に対応する位置に相互に配置する、患者の身体に対するX線光学系の精度の再現性は、より完全な相対的な位置関係決定手段、たとえば[2]に記載されている手段と類似の手段を使用することによって高めることができる。
【0086】
本願の発明による方法および装置構成の実施形態のいかなるスキームを使用するかは、X線用レンズまたは半レンズのような有効な放射線集束手段および送達手段を利用できる可能性が存在すること、および要求される分解能とによって決定される。後者の要因は、レンズおよび半レンズのパラメータ(たとえば、焦点の大きさ、レンズの光学軸方向の集束領域の長さなど)の選択にも影響を及ぼす。その際、「完全」レンズを使用する場合、きわめて高い分解能(mmの数分の1程度かそれ以上)を実現するには、悪性新生物を含む領域を走査するためにかかる時間が長くなることが考慮される。適当な出力とサイズのX線源が存在するか否かといった、その他の事情も考慮の対象になる。
【0087】
ここに記載する本願の発明による方法および装置を実現する実施形態に加えて、本願の発明によるその他の多くの実施形態が存在することは、ここに提示する具体的な要求条件を満たす手段を構築するための広い可能性を提供する。
【0088】
(産業上の利用可能性)
本願の発明による悪性新生物の位置決定法およびその放射線治療、ならびにこれらを実施するための装置は、悪性新生物の診断があらかじめ行われることを条件にして、使用され、悪性新生物の位置、形、大きさなどに関する繊細なデータを必要とする。また、対応する解決策が以前にとられたか、あるいは上記の繊細なデータが得られた結果、そのような解決策がとられる場合も直接放射線を作用させる治療を実施することが可能である。
【0089】
(情報源)
【0090】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0091】
本願発明を図面によって説明する:
【図1】図1は、本願の方法の基礎にある原理を説明するものであり、本願の発明による方法を実現するための装置の、基本要素の配置とその接続関係を模式的に示したものである。
【図2】図2は、X線を集束させ、二次放射線を検出器に送達するためにコリメータを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【図3】図3は、X線を集束させ、二次放射線を検出器に送達するためにコリメータを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【図4】図4は、X線用半レンズを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【図5】図5は、X線用半レンズを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【図6】図6は、X線を集束させるためにX線用半レンズを使用し、二次放射線を検出器に送達するためにX線用「完全」レンズを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【図7】図7は、X線を集束させるためにX線用半レンズを使用し、二次放射線を検出器に送達するためにコリメータを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【図8】図8は、X線を集束させるためにX線用半レンズを使用し、二次放射線を検出器に送達するためにコリメータを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【図9】図9は、X線を集束させ、二次放射線を検出器に送達するためにX線用レンズを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【図10】図10は、X線を集束させるためにX線用レンズを使用し、二次放射線を検出器に送達するためにコリメータを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【図11】図11は、X線を集束させるためにX線用レンズを使用し、二次放射線を検出器に送達するためにコリメータを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、患者体内の悪性新生物を決定する手段およびX線照射によるその治療に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
公知の方法において、診断を確定し、X線照射による悪性新生物に対する放射線治療を実行するとの決定をした後に、トポメトリ(topometry)を準備することを想定している。トポメトリを準備する過程で、具体的な患者の病巣、器官および解剖学的構造の外郭の大きさ、面積、体積が決定され、かつそれらの相対的な位置関係が定量的に記述される(たとえば、Radiation therarpy of a malignant neoplasm. Physicians guide、E.S.Kiseleva編、Moscow,「Meditsina」、1996[1]、46〜47頁を参照)。トポメトリを準備するときの主な課題は、疾患の診断過程で得られる各種情報を統合し、照射プログラムの作成を可能にする、1:1の縮尺で照射すべき部位に関するあらゆるトポグラフ解剖学的データを、腫瘍放射線専門医に提供することである。照射プログラムの変数およびパラメータを選定するためには、患者の身体の標的病巣の形態およびサイズ、その位置はもちろん、周辺器官および組織の同調(syntopy)、標的と、放射線負荷分布の観点から最も重要な解剖学的構造およびダメージを受けやすい器官との間の距離を知る必要がある。トポメトリの構築および照射プログラムの作成によって、患者体表面の特に特徴的な点および領域が選択され、そのあとで、これらの点および領域に関して、照射中にX線ビームの方向が決定される。
【0003】
照射への患者の準備と照射それ自体との上記の組み合わせの主要な欠点は、時間的にも空間的にも異なる段階、特にそれゆえ異なる手段で行われることである。照射(悪性新生物の細胞病変に対する放射線の作用)には、出力の高い指向性放射線源が使用される。照射に先だって行われる放射線検査に関しては、はるかに低レベルで照射が行われているばかりでなく、複数種類の組み合わせ:血管造影法、排泄尿路造影法、胃腸管、骨格および頭蓋骨、および胸部の検査;骨および肝臓の放射線核種診断;超音波診断法(エコスコピー、音波断層造影法)による腹腔、骨盤、および軟組織器官の画像化処理;コンピュータ化断層法(高性能X線造影法による画像化処理);磁気共鳴断層法などの中から、一つの検査しか行われないのが普通である。そのため、高い精度で放射線の作用を得ることが常に困難である。その結果、一部の悪性病巣の照射が見落とされたり、高レベルのX線が悪性病巣の範囲を超える領域に集中的に照射されたりすることになる。後者の場合、周囲の健常組織は、悪性病巣への放射線の経路の途中で健常組織が不可避的に照射を受ける場合よりも、かなり強い損傷を受けることになる。
【0004】
このような方法を実行する場合、放射線の作用時のX線ビームの方向および「照準」の選択が不正確であることだけでなく、内臓の位置が一定ではないこと、治療クールの違いに起因して放射線の作用時に患者の配置が不正確であることも現出する。健常組織の過剰照射を避けるために行われる分割照射でさえ、不可逆的な病変に対して悪性病巣に単回照射される線量では十分ではなく、悪循環を生み出す(分割照射の場合、合計線量の数分の一の強さであることが公知である)[1(84、91頁)]。
【0005】
このような欠点を克服するための多くの知られた技術的解決法の中で、患者の位置決めの高い正確さと安定性を重視した特別な手段が講じられる(たとえば、1999年11月16日に公開された米国特許第5,983,424号を参照)。
【0006】
幾何学的および動的な可能性の点で遠隔照射装置とよく似たX線診断装置を、いわゆるシミュレータとして使用することは、指摘されている欠陥を克服する方法のうちの別の方法である[1(55頁)]。シミュレータを使うと、患者の位置を変えずに患者を異なる方向で「透過」させることが可能である。患者のトポメトリを準備する場合、シミュレータのテーブルの上で照射時にとるであろう姿勢に患者を寝かせてX線検査を行う。十字線およびX線造影フィラメントの移動によって照射体積の中心と輪郭が選び出され、放射線を作用させるときに放射線ビームの中心軸が通るであろう平面が表示される。
【0007】
しかしこのようなやり方は、いずれも悪性新生物に放射線を作用させる放射線ビームを「照準」に正しく向ける問題の克服にはつながらず、それどころか腫瘍の拡大を招く。照射クールが患者の診断検査の終了から時間的に離れている場合の長期治療のときに、このような課題が重要であることが認められる。
【0008】
想定される発明に最も近い技術的解答は、米国特許第5,207,223号(1993年5月4日に公開)に記載されている。この特許による方法および装置では、患者の組織構造の画像の取得を可能にする指向性放射線ビームを使用し、放射線を作用させる直前にこのような画像を得、これを使用して、あらかじめ行った診断検査の結果と比較することにより、照射プログラムの適正化が行われる。しかしこの場合、この画像の入手と悪性病巣組織への放射線作用とは、互いに異なるビームが使用され、このことは、照射用ビームの方向についての誤差を原理的に回避し得ない。そのうえさらに、コンピュータ支援断層撮影のアルゴリズムを実行しなければ妥当な精度で画像を得ることはできない。このことは、対応する技術的手段が複雑になるばかりでなく、比較的高レベルの照射線量を必要とすることを意味する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によって以下が提供される:
(1) X線ビームを使用する悪性新生物の放射線治療法であって、該方法は、以下:
第一段階であって、患者の身体(5)の悪性新生物とその周辺の器官および組織とを含む部分の内部構造の画像を、測定している結果が帰属する点の空間座標と、患者の身体の生物学的組織の密度値の空間座標とのセットとして得られる情報に基づいて取得し、次に、先の診断結果を使用して悪性新生物に関係する構造要素の画像を同定し、それから、決定された点座標のセットである悪性新生物の各部位に照射すべきX線照射線量をセットとして、照射プログラムを作成し、そのあと第二段階に移る、第一段階、
第二段階であって、集束領域(16)が占める位置と、第一段階で悪性新生物に関係する構造要素の画像を同定することによって決定した座標セットで表される悪性新生物の部分とが一致するように、該第一段階と全く同じ手段を使ってX線の集束させながら悪性新生物に占有される空間領域を走査し、次に、第一段階よりX線の強度を高くし、かつ照射時間を制御しながら、該第一段階で作成した照射プログラムを実行する、第二段階、
の2段階を包含し、
該第一段階で、患者の身体の内部構造に関する情報を得るために、測定している結果が帰属する点を含み、かつ患者の身体の悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)にX線を集束させ、この領域に発生する二次放射線を1つ以上の検出器(6,20)に送達し、放射線集束領域と患者の身体とを相対的に移動させながら患者の身体の悪性新生物を含む部分を走査し、一つ以上の検出器を使って得られる、測定している結果が帰属するX線集束領域の点の座標と、それと同時に決定される二次放射線強度の値との組み合わせセットに基づいて、この点における生物学的組織の密度を判断し、生物学的組成の密度と見なされる量的指標と、それらに対応する座標値とを一緒に使用して、患者の身体の悪性新生物を含む部分の生物学的組織の密度分布の画像を取得すること、
を特徴とする、方法。
(2) 空間に配置された一つ以上のX線源(1,17)を使用し、測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)へのX線の集束は、それに対応する数のコリメータ(13,18)を使って行われ、そして一つ以上の検出器への発生する二次放射線の送達は、同じく、一つ以上のコリメータ(15,19)を使って行われ、その際、すべてのコリメータは、その中心チャネル軸、測定している結果が帰属する点と交差するように、配向されることを特徴とする、項目1に記載の方法。
(3) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)へのX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源(1)から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する一つ以上のX線用半レンズ(21)を使って行われ、そして一つ以上の検出器への発生する二次放射線の送達は、この放射線を検出器(6,20)上に集束させるかあるいは近似的に平行な該放射線を作る、一つ以上のX線用半レンズ(22,23)を使って行われ、その際、すべてのX線用半レンズは、その光学軸が測定している結果が帰属する点と交差するように、配向されることを特徴とする、項目1に記載の方法。
(4) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)に対するX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源(1)から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する一つ以上のX線用半レンズ(21)を使って行われ、そして一つ以上の検出器への発生する二次放射線の送達は、この放射線を検出器(6)上に集束させる一つ以上のX線用レンズ(3)を使って行われ、その際、すべてのX線用半レンズおよびレンズは、それらの光学軸が、測定している結果が帰属する点と交差するように、配向されることを特徴とする、項目1に記載の方法。
(5) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)に対するX線の集束は、空間に配置された複数個のX線源から放射される放射線を変換する、対応する数のX線用半レンズ(21)を使って行われ、かつ一つ以上の検出器への発生する二次放射線の送達は、一つ以上のコリメータ(19,15)を使って行われ、その際、X線用半レンズおよびコリメータは、すべてのX線用半レンズの光学軸およびすべてのコリメータの中心チャネルの光学軸が、測定している結果が帰属する点と交差するように、配向されることを特徴とする、項目1に記載の方法。
(6) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(4)に対するX線の集束が、空間に配置された一つ以上のX線源(1)と、それに対応する数の、各線源から放射されるX線を、測定している結果が帰属する点に集束させるX線用レンズ(3)とを使用して行われ、そして一つ以上の検出器への発生する二次放射線の送達が、この放射線を検出器(6)上に集束させ、かつ前記点の上に第2の焦点を有する、X線用レンズ(3)を使って行われることを特徴とする、項目1に記載の方法。
(7) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)に対するX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源(1)と、それに対応する数の、各線源から放射されるX線を、測定している結果が帰属する点に集束させるX線用レンズ(2)とを使用して行われ、そして一つ以上の検出器(6,20)への発生する二次放射線の送達は、コリメータ(15,19)の中心チャネルが上記の点と交差するように配向された前記コリメータを使って行われることを特徴とする、項目1に記載の方法。
(8) 悪性新生物の位置を決定する方法であって、該方法は、X線ビームを使用して、測定している結果が帰属する点の空間座標と、これらの座標に対応する生物学的組織の密度値のセットとして得られる情報に基づいて、悪性新生物とその周辺の器官および組織とを含む、患者の身体の部分の内部構造の画像を取得し、次に、あらかじめ行った診断結果を使用して、悪性新生物に関係する構造要素の画像を同定することを含み、
ここで、患者の身体の内部構造に関する上記情報を得るために、測定している結果が帰属し、かつ患者の身体の悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域にX線を集束させ、この領域に発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達し、放射線集束領域と患者の身体との相対的な移動を行いながら患者の身体の悪性新生物を含む部分を走査し、そして一つ以上の検出器を使って得られ、かつ測定している結果が帰属するX線集束領域の点の座標でもって決定される二次放射線強度の値のセットに基づいて、この点における生物学的組織の密度を判断し、患者の身体の悪性新生物を含む部分の生物学的組織の密度分布の画像を得るために、生物学的組成の密度と見なされる量的指標と、それらに対応する座標値とを一緒に使用し、次に、点の座標と、それに対応する生物学的組織の密度との組み合わせを決めることを特徴とする、方法。
(9) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体(5)の悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)に対するX線の集束は、一つ以上のコリメータ(13,18)を使用し、空間に配置された対応する数の一つ以上のX線源(1,17)から放射される放射線を使用して行われ、そして一つ以上の検出器への発生する二次放射線の送達は、同じく、一つ以上のコリメータ(15,19)を使って行われ、その際、すべてのコリメータは、その中心チャネル軸が、測定している結果が帰属する点と交差するように、配向されることを特徴とする、項目8に記載の方法。
(10) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)に対するX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する一つ以上のX線用半レンズ(21)を使って行われ、そして一つ以上の検出器への発生する二次放射線の送達は、この放射線を検出器(6,20)上に集束させるかあるいは近似的に平行な前記放射線を作る、一つ以上のX線用半レンズ(22)を使って行われ、その際、すべてのX線用半レンズは、その光学軸が測定している結果が帰属する点と交差するように、配向されることを特徴とする、項目8に記載の方法。
(11) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体(5)の悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)に対するX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源(1)から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する一つ以上のX線用半レンズ(21)を使って行われ、そして一つ以上の検出器(6)への発生する二次放射線の送達は、この放射線を検出器上に集束させる一つ以上のX線用レンズ(22)を使って行われ、その際、すべてのX線用半レンズおよびレンズは、その光学軸が、測定している結果が帰属する点と交差するように、配向されることを特徴とする、項目8に記載の方法。
(12) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域(16)に対するX線の集束は、空間に配置された複数個のX線源(1)から放射される放射線を変換する、対応する数のX線用半レンズ(21)を使って行われ、そして一つ以上の検出器(6,20)への発生する二次放射線の送達は、一つ以上のコリメータ(15,19)を使って行われ、その際、X線用半レンズおよびコリメータは、すべてのX線用半レンズおよびすべてのコリメータの中心チャネルの光学軸が測定している結果が帰属する点と交差するように、配向されることを特徴とする、項目8に記載の方法。
(13) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域に対するX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源(1)と、それに対応する数の各線源から放射されるX線を測定している結果が帰属する点(4)に集束させるX線用レンズ(2)とを使用して行われ、そして一つ以上の検出器への発生する二次放射線の送達は、検出器(6)上に二次放射線を集束させ、かつ前記点の上に第2の焦点を有するX線用レンズ(3)を使って行われることを特徴とする、項目8に記載の方法。
(14) 測定している結果が帰属し、かつ患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域に対するX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源(1)と、それに対応する数の、各線源から放射されるX線を、測定している結果が帰属する点に集束させるX線用レンズ(2)とを使用して行われ、そして一つ以上の検出器(6,20)への発生する二次放射線の送達は、その中心チャネルの光学軸が、上記の点と交差するように配向させたコリメータ(15,19)によって行われることを特徴とする、項目8に記載の方法。
(15) 悪性新生物の位置を決定し、その悪性新生物を放射線治療するための装置であって、該装置は、
X線光学系(8)、
患者の身体とX線光学系の相対的な位置を決めるための手段(10)、および
情報を処理し、画像化するための手段(12)を備え、
該光学系(8)が、
一つ以上のX線源(1)、
X線を集束させる手段(2)、および
一つ以上の検出器(6)とを含み、
該検出器の出力が、情報を処理し、画像化するための手段(12)に接続され、
ここで、X線光学系(8)を構成するX線源(1)は、その放射線の強さを変更する能力をもって実現され、X線光学系(8)はX線源(1)の放射線の強度を同時に制御する手段(9)を含み、これらの線源から放射される放射線を集束させるための手段(2)は、同様に、すべての線源の放射線を、測定している結果が帰属し、かつ患者の身体(5)の悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域に、集束させる能力をもって実現され、装置に取り付けられ、
さらに、X線光学系(8)は、集束領域に発生する二次放射線を送達するための一つ以上の手段(3)も備え、二次放射線は、これらの手段に取り付けられて二次放射線に感応するように実現された検出器(6)に送達され、
測定している結果が帰属し、かつ患者(5)の身体の悪性新生物を含む部分の内部にある点の座標を決定するためのセンサ(11)は、患者の身体とX線光学系の相対的な位置を決めるための手段(10)と連結され、かつセンサ自身の出力端子によて、情報を処理し、画像化するための手段(12)に接続され、
該手段(12)は患者の身体とX線光学系の相対的な位置を決めるための手段(10)を使って、患者の身体(5)の悪性新生物を含む部分のX線源の放射線を集束させる領域による走査の結果得られる組織密度分布の形成と画像化能力をもって実現されることを特徴とする、装置。
(16) X線光学系は、
複数個のX線発生源(1,17)、
各放射線を測定している結果が帰属する点を含む領域(16)に集束させるための手段、および
前記領域に発生する二次放射線を検出器(6,20)に送達するための手段
を含み、その送達は、チャネルを備えるコリメータ(13,15,18,19)の形で実現され、そのチャネルは、X線発生源の放射線を集束させる領域に向けられたコリメータの形で実現され、その際、すべてのコリメータの中心チャネルの光学軸は、測定している結果が帰属する点と交差することを特徴とする、項目15に記載の装置。
(17) X線光学系を構成するX線源(1)は近似的に点と見なすことができ、そしてコリメータ(13)は、これらの線源上に集束するチャネルを有し、各線源の出口と対応するコリメータの入口との間には、開口部を有するスクリーン(14)が置かれていることを特徴とする、項目16に記載の装置。
(18) X線光学系を構成するX線源(17)が長さを有し、コリメータ(18)のチャネルがX線源側に向かって広がっていることを特徴とする項目16に記載の装置。
(19) X線光学系を構成するX線源(1)は近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための手段は、それぞれ、線源から放散される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズ(21)の形で実現され、そして発生する二次放射線を検出器に送達するための手段は、それぞれ、この放射線を検出器(6)の上に集束させるX線用半レンズ(22)の形で実現され、その際、すべてのX線用半レンズの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差することを特徴とする、項目15に記載の装置。
(20) X線光学系を構成するX線源(1)は近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための手段は、それぞれ、線源から放散される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズ(21)の形で実現され、そして発生する二次放射線を検出器(20)に送達するための手段は、それぞれ、近似的に平行な放射線を形成し、かつX線を集束させる領域(16)に焦点を有するX線用半レンズ(23)の形で実現され、その際、すべてのX線用半レンズの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差することを特徴とする、項目15に記載の装置。
(21) X線光学系を構成するX線源(1)は近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域(16)にX線を集束させるための手段は、それぞれ、線源から放散される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズ(21)の形で実現され、そして発生する二次放射線を検出器に送達するための手段は、それぞれ、この放射線を検出器(6)の上に集束させ、かつX線集束領域に第2の焦点を有するX線用レンズ(3)で実現され、すべてのX線用半レンズおよびレンズの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差することを特徴とする、項目15に記載の装置。
(22) X線光学系を構成するX線源(1)は近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための手段は、それぞれ、線源から放散される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズ(21)の形で実現され、そして発生する二次放射線を検出器に送達するための手段は、それぞれ、対応する検出器(20)側に向かって広がるチャネルを有するコリメータ(19)の形で実現され、すべてのX線用レンズならびに半レンズの光学軸、およびコリメータ中心チャネルの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差することを特徴とする、項目15に記載の装置。
(23) X線光学系を構成するX線源(1)は近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域(16)にX線を集束させるための手段は、それぞれ、対応するX線源から放散される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズ(21)の形で実現され、そして発生する二次放射線を検出器に送達するための手段は、それぞれ、対応する検出器(6)側に向かって集束するチャネルを有するコリメータ(15)の形で実現され、すべてのX線用半レンズおよびコリメータ中心チャネルの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差することを特徴とする、項目15に記載の装置。
(24) X線光学系を構成するX線源(1)は近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための手段は、それぞれ、線源から放散される放射線を集束させるX線用レンズ(2)の形で実現され、そして発生する二次放射線を検出器に送達するための手段は、それぞれ、この放射線を対応する検出器(6)の上に集束させるX線用レンズ(3)で実現され、すべてのX線用レンズの光学軸は、測定している結果が帰属する点(4)で交差することを特徴とする、項目15に記載の装置。
(25) X線光学系を構成するX線源(1)は近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための手段は、それぞれ、X線源から放散される放射線を集束させるX線用レンズ(2)の形で実現され、そして発生する二次放射線を検出器に送達するための手段は、それぞれ、対応する検出器(6)側に向かって集束するチャネルを有するコリメータ(15)の形で実現され、すべてのX線用レンズおよびコリメータ中心チャネルの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差することを特徴とする、項目15に記載の装置。
(26) X線光学系を構成するX線源(1)は近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域(16)にX線を集束させるための手段は、それぞれ、X線源から放散される放射線を集束させるX線用レンズ(2)の形で実現され、そして発生する二次放射線を検出器に送達するための手段は、それぞれ、対応する検出器(20)側に向かって広がるチャネルを有するコリメータ(19)の形で実現され、すべてのX線用レンズおよびコリメータ中心チャネルの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差することを特徴とする、項目15に記載の装置。
(27) 前記装置は、強度を上げながらX線源を操作しているとき、検出器を隔離するか、または遮蔽するための手段を追加的に装備することを特徴とする、項目15ないし26のいずれか任意の一つに記載の装置。
(発明の開示)
悪性新生物の放射線治療法、悪性新生物の位置決定法、およびその方法を実施するための装置に関する本願発明が提供する技術的成果は、組織構造を決定し悪性病巣の位置を決定するためのX線ビームおよび悪性病巣に対する本来の放射線照射用X線ビームと、全く同じビームを使用して上記の諸要因を解消することにある。達成できる別の技術的成果は、照射プログラムの修正に使用される組織構造の画像を入手する過程で照射する線量を減らせることができるばかりでなく、選定した放射線照射領域の周辺組織の照射線量も減らせることである。
【0010】
本願発明によるX線ビームを使用する悪性新生物の放射線治療法および上で述べてきた公知の方法は2段階で実施される。第一段階では、測定している結果が帰属する点の空間座標セットの形での情報と、これらの座標に対応する組織の密度の値とを基にして、患者の身体の悪性新生物を含む内部構造部分と、その周辺部の器官および組織の画像が入手される。次に、あらかじめ実施した診断結果を使用して、決定された点座標のセットによって表される悪性新生物のさまざまな部分に対して行わなければならない悪性新生物に関係する構造エレメント画像の同定が行われ、照射プログラムがX線線量セットの形で作成される。この手続きのあとは、第二段階に移り、作成された照射プログラムが実行される。
【0011】
公知の方法とは異なり、本願発明の方法により上記の形で技術的結果を得るために、第一段階において、測定している結果が帰属する点であって、患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域にX線を集束させ、患者の身体の一部の内部構造に関する上記の情報を得る。この領域に発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達し、患者の身体の悪性新生物を含む部分を走査する。そのためには、走査中、放射線を集束させる領域と患者の身体とを相互に移動させる。一つ以上の検出器によって得られ、測定している結果が帰属するX線集束領域の点の座標と同時に決定される二次放射線強度値のセットに基づいて、この点の組織の密度が判断される。患者の身体の悪性新生物を含む部分の組織密度分布の画像を描出するには、組織の密度と見なされる量的指標と、それに対応する座標値とが使用される。第二段階では、第一段階で悪性新生物に関係する構造要素を同定した結果、決定された点の座標で表される悪性新生物部分に一致するように、第一段階と同じ手段を使ってX線を集束させ、悪性新生物と考えられる空間領域の走査が行われる。第一段階よりX線強度を高め、照射時間を制御して、第一段階で作成された照射プログラムも実行される。
【0012】
たとえば、測定している結果が帰属する点であって、患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置した対応する数のX線源を使用し、一つ以上のコリメータを使って行うことができる。その際、発生する二次放射線は、一つ以上のコリメータを使って一つ以上の検出器に送達することができる。この場合、すべてのコリメータの向きは、その中心チャネルの軸が、現在の測定の結果が関係する点と交差するように調整される。
【0013】
測定している結果が帰属する点であって、患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源と対応する数のX線用半レンズを使って行うこともできる。このX線用半レンズは、X線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する。その際、発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、この放射線を検出器上に集束させるか、近似的に平行な放射線を形成する一つ以上のX線用半レンズが使用される。この場合、すべてのX線用半レンズは、その光学軸が、現在の測定の結果が関係する点と交差するように配向される。
【0014】
測定している結果が帰属する点であって、患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源と対応する数のX線用半レンズを使って行うこともできる。このX線用半レンズは、X線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する。発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、この放射線を検出器上に集束させる一つ以上の放射線用レンズが使用される。その際、すべてのX線用半レンズおよびレンズは、その光学軸が、測定している結果が帰属する点と交差するように配向される。
【0015】
具体的な実施形態のうちの1つにおいて、本願発明の方法を実施する場合、測定している結果が帰属する点であって、患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された複数個のX線源と対応する数のX線用半レンズを使って行われ、このX線用半レンズは、X線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する。発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、一つ以上のコリメータが使用される。その際、すべてのX線用半レンズおよびすべてのコリメータの中心チャネルの光学軸が、現在の測定の結果が関係する点と交差するように、これらのX線用半レンズおよびコリメータが配向される。
【0016】
別の具体的な実施形態において、本願発明の方法を実施する場合、測定している結果が帰属する点であって患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源と対応する数のX線用レンズとを使用して行われ、このX線用レンズは、各線源から放射されるX線を、測定している結果が帰属する点に集束させる。その際、発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、この放射線を検出器に集束させ、かつ上記の点に第二の焦点を有するX線用レンズが使用される。この実施形態では、健常な組織に対する照射レベルを低く抑え、かつわずかな数(一つの場合さえ可能)のビームの使用によって放射線の作用を非常に小さい領域に局限することができ、その結果、分割照射を避けることができ、多くの症例で小さい腫瘍の放射線治療を1クールで行うことができる、さらなる技術的成果が達成される。
【0017】
さらに別のもう一つの具体的な実施形態によれば、測定している結果が帰属する点であって患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源と対応する数のX線用レンズとを使用して行われ、このX線用レンズは、各線源から放射されるX線を測定している結果が帰属する点に集束させる。その際、発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するにはコリメータが使用され、このコリメータは、その中心チャネル光学軸が、上記の点と交差するように配向される。
【0018】
米国特許第5,207,223号[3]に記載する公知の方法と同様、X線ビームを使用する悪性新生物の位置を決定する本願発明による方法において、測定している結果が帰属する点の空間座標と、これらの座標に対応する組織密度値とのセットの形で与えられる情報に基づいて、患者の身体の悪性新生物を含む部分およびその周辺器官および組織の内部構造の画像が得られる。このあと、あらかじめ得られた診断結果を使用して、悪性新生物に関係する構造要素の画像が同定される。
【0019】
上記公知の方法と異なり、上記技術的成果をあげるための本願発明の方法において、上記患者の身体の一部の内部構造に関する上記情報を入手するため、患者の身体の悪性新生物を含む部分の内部にある領域へのX線の集束が行われる。この領域に発生する二次放射線は一つ以上の検出器に送達され、患者の身体の悪性新生物を含む部分が走査される。走査を行うには、X線集束領域と患者の身体とを相対的に移動させる。一つ以上の検出器を使って得られる二次放射線の強度値と、測定している結果が帰属する、放射線を集束させるべき領域の点の座標とを同時に決定したセットに基づいて、この点における生物学的組織の密度を判断する。生物学的組成の密度と見なされる量的指標およびそれに対応する座標の値は、患者の身体の悪性新生物を含む部分における生物学的組織の密度分布の画像を描出するために使用される。つづいて、点座標と、その点座標に対応し、悪性新生物に属するものと同定された生物学的組織の密度との組み合わせが決定される。
【0020】
悪性新生物の位置を決定する本願発明の方法を実施する具体的実施形態において、測定している結果が帰属する点であって、患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、一つ以上のコリメータを使用して行われる。その際、空間に配置された対応する数のX線源が使用され、発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、一つ以上のコリメータも使用される。すべてのコリメータは、その中心チャネルの軸が、測定している結果が帰属する点と交差するように配向される。
【0021】
別の具体的な実施形態において、測定している結果が帰属する点であって患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源と対応する数のX線用半レンズを使用して行われ、このX線用半レンズは、X線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する。発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、この放射線を検出器に集束させるか、または近似的に平行な放射線を形成する一つ以上のX線用半レンズが使用される。その際、すべてX線用半レンズは、その光学軸が、測定している結果が帰属する点と交差するように、配向される。
【0022】
別のもう一つの具体的実施形態において、測定している結果が帰属する点であって、患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源と対応する数のX線用半レンズを使用して行われ、このX線用半レンズは、X線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する。発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、この放射線を検出器に集束させる一つ以上のX線用レンズが使用される。その際、すべてX線用半レンズおよびレンズは、その光学軸が、測定している結果が帰属する点と交差するように、配向される。
【0023】
次の具体的な実施形態において、測定している結果が帰属する点であって、患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された複数個のX線源と対応する数のX線用半レンズを使って行われ、このX線用半レンズは、X線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換する。発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、一つ以上のコリメータが使用される。その際、X線用半レンズおよびコリメータは、すべての放射線用X線用半レンズおよびすべてのコリメータの中心チャネル光学軸が、現在の測定の結果が関係する(帰属する)点と交差するように、配向される。
【0024】
患者の身体の悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源と、対応する数のX線用レンズとを使用して行われ得、このX線用レンズは、各線源から放射されるX線を測定している結果が帰属する点に集束させる。発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、この放射線を検出器の上に集束させ、かつ上記の点に第二の焦点を有するX線用レンズが使用され得る。
【0025】
さらに、測定している結果が帰属する点であって、患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域へのX線の集束は、空間に配置された一つ以上のX線源と、対応する数のX線用レンズとを使って行うこともでき、このX線用レンズは、各線源から放射されるX線を測定している結果が帰属する点に集束させる。その際、発生する二次放射線を一つ以上の検出器に送達するには、コリメータが使用され、このコリメータは、中心チャネルの光学軸が、上記の点と交差するように配向される。
【0026】
本願発明による二つの方法を実施するには、同じ装置を使用することができる。この装置は、悪性新生物の位置の決定およびX線ビームを使用する悪性新生物の放射線治療に対する前述の米国特許第5,207,223号[3]による公知の装置と同様、X線光学系、患者の身体とX線光学系との間の相対的な位置関係を決める手段、および情報処理および画像化するための手段を備える。その際、X線光学系は、放射する放射線を集束させるための手段および一つ以上の検出器を具備し、検出器の出力は情報処理および画像化のための手段に接続される。
【0027】
上記の形態で本願の発明に属する上記技術的成果をあげるためには、公知の装置とは異なり、本願の発明による装置において、X線光学系を構成するX線源は、その放射線強度を変更する能力をもって実現され、そしてそのX線光学系は、X線源の放射線強度を同時制御する手段を含む。これらの線源の放射線を集束させる手段は、測定している結果が帰属する点であって患者の身体において悪性新生物を含む部分の内部にある点を含む領域にすべての線源の放射線を集束させる能力をもって実現され、装置に取り付けられる。さらに、X線光学系は、集束領域に発生する二次放射線を検出器に送達するための一つ以上の手段を含み、検出器はこれらの手段の出力に取り付けられて、二次放射線に感応するように実現される。測定している結果が帰属する点であって患者の身体の悪性新生物を含む部分の内部にある点の座標を決定するためのセンサは、患者の身体とX線光学系との間の相対的な位置関係を決める手段と接続され、このセンサは、それ自体の出力端子を通して情報処理および画像化する手段に接続される。その情報処理画像化手段は、患者の身体とX線光学系との間の相対的な位置関係を決めるための手段を使って、患者の身体の悪性新生物を含む部分の、X線源の放射線を集束させる領域による走査の結果、得られる組織密度分布を形成し、画像化する能力をもって実現される。
【0028】
本願発明の装置を実現する具体的な実施形態の一つにおいて、X線光学系は、複数個のX線源を含み、測定している結果が帰属する点を含む領域にその放射線を集束させるための各手段およびそこに発生する二次放射線を検出器に送達するための手段は、X線源のX線集束領域に指向するチャネルを持つコリメータの形で実現され、その際、すべてのコリメータの中心チャネル光学軸が、測定している結果が帰属する点で交差する。
【0029】
この実施形態では、構成要素として、たとえば近似的に点とみなされるX線源のX線光学系と、これらの線源上に集束させるチャネルを持つコリメータとが使用可能であり、各線源の出口と、対応するコリメータの入口との間には、ホール(孔)をあけたスクリーンが配置される。
【0030】
上記実施形態において、構成要素として幅のあるX線光学系と、これらの線源に向かって広がるチャネルを持つコリメータを使用することもできる。
【0031】
別の具体的な実施形態において、X線光学系を構成するX線源は近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための各手段は、対応する線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズの形で実現され、発生する二次放射線を検出器に送達するための各手段は、この放射線を検出器上に集束させるX線用半レンズとして実現される。その際、すべてのX線用半レンズの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差する。
【0032】
もう1つの具体的な実施形態において、X線光学系を構成するX線源は、近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための各手段は、対応する線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズの形で実現され、発生する二次放射線を検出器に送達するための各手段は、近似的に平行な放射線を形成し、かつX線の集束領域に焦点をもつX線用半レンズとして実現される。その際、すべてのX線用半レンズの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差する。
【0033】
次の具体的な実施形態において、X線光学系を構成するX線源は、近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための各手段は、対応する線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズの形で実現され、発生する二次放射線を検出器に送達するための各手段は、この放射線を検出器上に集束させ、かつX線の集束領域に第二の焦点をもつX線用レンズとして実現される。その際、すべてのX線用半レンズおよびレンズの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差する。
【0034】
X線光学系を構成するX線源を近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための各手段は、対応する線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズの形で実現され、発生する二次放射線を検出器に送達するための各手段は、対応する検出器に向かって広がったチャネルを備えたコリメータの形で実現されるような装置も可能である。その際、すべてのX線用レンズおよび半レンズおよびコリメータの中心チャネルの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差する。
【0035】
本願の発明による装置を実現するもう一つの可能性は、X線光学系を構成するX線源が、近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための各手段が、対応するX線源から放射される放射線を近似的に平行な放射線に変換するX線用半レンズの形で実現され、発生する二次放射線を検出器に送達するための各手段が、対応する検出器に向かって集束するチャネルを備えたコリメータの形で実現されるという特徴を持つ。その際、すべてのX線用半レンズおよびコリメータの中心チャネルの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差する。
【0036】
装置を実現する別の実施形態は、X線光学系を構成するX線源を近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための各手段は、X線源から放射される放射線を集束させるX線用レンズの形で実現され、発生する二次放射線を検出器に送達するための各手段が、この放射線を対応する検出器上に集束させるX線用レンズの形で実現されることを特徴とする。その際、すべてのX線用レンズの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差する。
【0037】
X線光学系を構成するX線源を近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための各手段は、X線源から放射される放射線を集束させるX線用レンズの形で実現され、発生する二次放射線を検出器に送達するための各手段は、対応する検出器に向かって狭くなるチャネルを備えたコリメータの形で実現され、そしてすべてのX線用レンズおよびコリメータの中心チャネルの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差するという特徴を持つ。
【0038】
本願の発明による装置は、X線光学系を構成するX線源を近似的に点と見なすことができ、測定している結果が帰属する点を含む領域にX線を集束させるための各手段は、X線源から放射される放射線を集束させるX線用レンズの形で実現されるような方式で具現化することもできる。その際、発生する二次放射線を検出器に送達するための各手段は、対応する検出器上に向かって広がるチャネルを備えたコリメータの形で実現され、すべてのX線用レンズおよびコリメータの中心チャネルの光学軸は、測定している結果が帰属する点で交差する。
【0039】
ここに記載したすべての実施形態において、上記装置には、出力をあげてX線源を操作するとき、検出器を遮断または遮蔽するための手段を追加的に取り付けることができる。
【0040】
(発明実施の形態)
本願の発明による悪性新生物の位置決定法は、そのあとに悪性新生物の治療が行われないか、あるいは第一段階において悪性新生物の放射線治療法の一部を構成しない場合は、独立したものと見なされる。両方の場合、本法自体は、診断方法でもないし治療方法でもない。
【0041】
本願の発明による悪性新生物の放射線治療法は、常に、第一段階に悪性新生物の位置決定法の実施を含む。
【0042】
本願の発明による装置は、両方法について共通している。
【0043】
本願の発明による方法は、本願の発明による装置を使用し、以下のようにして実施される。
【0044】
あらかじめ実施された診断検査によって判断されたところに従い、近似的に点と見なされる線源(擬似点源)1(図1)から放射されるX線を、X線用レンズ2を通して患者の身体5の悪性新生物を含む部分7の所定の点4に集束させる。患者の身体は、患者の身体とX線光学系との間の相対的な位置関係を決めるための手段10によって、必要な位置に置かれる。点4に集束させた放射線は、患者5の生物学的組織に存在する物質の二次散乱放射線(干渉性および非干渉性コンプトン散乱放射線、蛍光放射線)を励起する。二次放射線の励起過程の確率的な性格に起因するゆらぎまで正確に反映する二次放射線の強度は、それが発生する物質の密度に比例する。第2X線用レンズ3の焦点も同じ点4にある。このレンズは、それに当たる散乱二次放射線を検出器6に集束させる。検出器はそれを電気信号に変換し、変換された電気信号は、情報処理および画像化のための手段12の入力に送られる。レンズ1および3の共通の焦点4の位置は、相対的な位置関係を決めるための手段10によって、患者の身体5とX線光学系8との位置関係を動かすことによって選定される。X線光学系8は、放射線強度を変更する能力をもって実現される放射線源1、X線用レンズ2,3、および放射線検出器6を備え、さらに放射線強度によって制御するための手段9も装備する。後者はX線光学系を構成するすべての線源の放射強度を同時変化させることができる。(図1は、本願の方法の基礎にある原理を説明するものであり、そのうちの一例だけを示す)。
【0045】
第二段階の放射線治療では、放射線強度を変化させる能力と、変化を制御するための手段9とが使用される。
【0046】
X線を制御するための手段であるX線用レンズ(分散型放射線の集束、分散型放射線から近似的に平行なビームの形成、近似的に平行なビームの集束など)は、放射線送達装置において湾曲したチャネルの統合体をなしており、放射線はこのチャネル内で表面全反射をくり返し受けることをはっきりさせておきたい(たとえば、V.A.Arkadiev, A.I.Kolomiitsev,M.A.Kumakhovら、Broadband X−ray optics with angular aperture.Uspekhi fizicheskikh nauk,1989,第157巻,第3章,529〜537頁[4](この中には、この種の第1レンズが記載されている)および米国特許第5744813号(1998年4月28日に刊行)[5](この中には、より最新のレンズが記載される))。分散型放射線を集束させるために使用することを想定する場合、レンズはバレル形(樽形)(すなわち両端の面が小さくなっている)をしており、分散型放射線を近似的に平行な放射線に変換する場合や、この種の放射線を集束させることを想定する場合は、半バレル形(半樽形)(すなわち一方の端面だけが小さくなっている)をしているのが普通である。上記二種類のレンズを指すのに「完全レンズ」および「半レンズ」という用語が広く使用されている。
【0047】
図1による装置の作動と使用には二種類の方式が可能である。一つは、固定した患者の身体に対して、X線光学系8は、要素1、2、3、および6の相対的な配置は維持したまま移動させるやり方である(従って、レンズ1および3の焦点は一致する)。もう一つは、逆に、X線光学系8を固定して、患者の身体5を移動させる(このときの動きは、図1の矢印10bで表される)。
【0048】
本発明の装置は、X線光学系8と患者の身体5の相対的な移動に反応する座標センサ11も装備しており、X線光学系8と患者の身体5の相対的な位置関係を決めるための手段10に接続されている。このセンサ11は、その出力信号が、選択された基準点に対する、測定している結果が帰属する点の座標と一致するように、調節する必要がある。
【0049】
図1に示す具体的な実施形態において、X線用レンズ2および3の光学軸が交差する両レンズ共通の焦点4が、測定している結果が帰属する点として浮かび上がる。
【0050】
X線集束領域の輪郭があまりはっきりしない別の実施形態の場合、放射線を集束させる手段および発生する二次放射線を検出器に送達する手段の光学軸(あるいは仮想的に光学軸と見なされる光学軸、たとえばコリメータの中心チャネルの軸)である線が交差する点もそのような点である。X線光学系の相対的な位置関係を決めるための手段10によって、悪性新生物を含む(あるいは悪性新生物を含んでいるのではないかと推定されている)患者の身体における問題部位の領域内にこの点が存在することを確認する必要がある。
【0051】
X線集束領域は、測定している結果が帰属する上記の点を囲む領域で、その大きさは使用される集束手段に依存する(放射線治療を行う第二段階では、集束領域は、放射線集束手段の光学軸および発生する二次放射線を検出器に送達する手段の光学軸である、線の交差点も包含する。もっとも、この段階では測定することもできない)。図1に示した実施形態の集束領域の大きさは最小化されている。
【0052】
検出器6の出力信号と同様、センサ11の出力信号は、情報処理および画像化のための手段12の入力に伝送される。すでに上で述べたように、その際、焦点4は、測定している結果が帰属し、(X線用レンズ2の焦点領域の最終的な大きさを考慮すると)実際に、放射線源1がその周辺に集束されている。情報処理および画像化のための手段12は、スクリーン上に二次元または三次元の画像を描出する何らかのアルゴリズムを実行して、患者5の生物学的組織を構成する物質の密度分布の様子を再現する(たとえば:E.Lapshin,Graphics for IBM PC.Moscow,「Solon」、1995[6]を参照)。たとえば走査(測定している結果が帰属する点4を含むX線集束領域の移動)を患者5の体の平坦な断面で行う最も単純な場合、走査と同時に、手段12のスクリーン上に残光時間の長い画像を展開することができる。所定量の測定結果を記憶し、そのあとで画像を定期的に展開することも可能である。デジタル的な技法が可能であるため、必ずしも問題の断面を直接という訳ではないが、悪性新生物を含む領域の体積を走査する別の実施形態でも平坦な断面における密度分布の画像を得ることができる。このためには、必要な断面を含む体積に関係する、得られた結果(密度値およびそれに対応する座標値のセット)から、患者の身体の問題となる断面に対応する結果を選び出し、その二次元図をこの断面にある座標軸に対して描出し、選び出すだけで十分である。このような種類の必要な変換は、[6]に記載の方法と同様の方法を使用し、プログラムによって行われる。
【0053】
形成された画像の構造的要素を、悪性新生物に関係するものとして同定するためには、走査過程時にリアルタイムで画像分析を行う方式よりも、デジタル形式で記憶させた静的な画像を展開する方式こそがより目的に適っている。
【0054】
本願の発明による動作原理は、コンプトン散乱二次放射線の強度(この放射線の量子生成確率)が、別の等価な条件で(特に、所定の強度の一次X線が物質に作用する場合)物質の密度に比例することに基づいている(たとえば、J.Jackson,Classical electrodynamics,M.,「Mir」、1965[7]を参照)。
【0055】
公知の方法および装置とは異なり、それらが混乱を招くような影響を及ぼす場合に、コンプトン散乱二次放射線の量子を情報因子として使用することが、本願発明の主要な特徴を表している、
【0056】
すでに指摘したように、医療分野に応用する場合、生物学的組織に照射する線量が少なくても、妥当な精度が得られるということが重要な利点である。
【0057】
期待される利得を推定するため、人体の組織および器官の見ることができない内部構造を画像を得る最新の方法であるコンピュータ支援X線断層撮影から得られる最良の精度と比較する。
【0058】
ここで、以下のような仮定を置くことにする:光子エネルギーE=50keV;X線による集束領域は、深さが50mm、大きさが1mm×1mm×1mm(このような値は、たとえば、マンモグラフィ検査における観察条件および精度に対して特徴的な値である)、検出器は5cmの深さで発生する二次放射線の5%を感知する(この仮定は、二次放射線が、それを検出器に送達するための手段の入口に命中する前に、患者の身体を5cmだけ前進し、その際、二次放射を検出器に送達するレンズまたはコリメータの捕捉角が0.05×4πsrであることを意味する)。患者の身体に光子が吸収されるときの線形吸収係数は、水におけるそれに近く、エネルギーE=50keVにおいて、2×10−1/cmのオーダーであることを考慮すると、5cmの深さまで進入した場合、放射線の一次ビームの強度は、exp(2×10−1×5)=e≒2.71倍だけ減少する。患者の身体から放出される二次放射線の強度(その光子エネルギーは50keVに極めて近い)も、同様に、e≒2.71倍だけ減少する。従って、放射線が患者の身体に吸収されたことによる全体の強度損失は、e×e=7.3倍である。本発明者らは、評価される利得を過小評価して、二次放射線のコンプトン成分のみを考慮する。厚さΔxに対して、二次コンプトン放射線の量子生成確率は、ω=σk×Ne×Δxに等しい(ここで、二次コンプトン散乱σk=6.55×10−25cm2;水中における電子の密度Ne=3×1023/cm3である)。従って、Δx=1mm=10−1cmのとき、量子生成確率は、ω=6.55×10−25×3×1023×10−1≒2×10−2である。別の言い方をすれば、長さΔx=1mmにおいて、二次光子一個が生成するためには、平均して1:(2×10−2)=50個の一次放射線光子が必要である。
【0059】
本発明者らは、密度の推定誤差は約1%としたい(すなわち、二次光子の数の決定)。プロセスの無作為な性質に関して、過程の性格が確率論的であることを考えると、相対誤差の二乗平均値の平方根はδ=1/(N)1/2に等しい(ここで、Nは割り当てられた光子の数である)。δ=0.01の値は、N=10000に対応する。
【0060】
かくして、本発明者らは、Nx(5cmの深さまで透過し、この深さで二次コンプトン放射線を発生するために必要な一次光子の数;そして二次コンプトン放射線が5cm進行すると、N=10000の光子が検出器に到達する)に関して、単純な式を立てることができる:
Nx×e−2×5×10−2×2×10−2=104。
【0061】
ここで、係数5×10−2は、生成した全二次光子のうち、検出器まで到達し、記録される光子は、わずか5%=10−2であることを意味する。上式から、Nx=7.3×107を得る。
【0062】
E=50keVのエネルギーを持つ光子は、これらの光子の流れが2.8×1010個/cm2に等しければ、1レントゲンに相当する照射線量を形成する(光子エネルギー、その数、および線量の間の関係に関するデータ表は、たとえばPhysics of image visualization in medicine、S.Webb.M.「Mir」、1991[8]を参照)。患者の身体に進入するときに、一次X線ビームの断面積が1cm2と仮定すると、流束量7.3×107個/cm2は、患者の身体内で2.6×10−3レントゲンに相当する照射線量を形成する。
【0063】
たとえば、骨粗しょう症の検査における従来のX線コンピュータ断層撮影では、照射線量は、通常100〜300ミリレントゲンである(V.I.mazurov、E.G.Zotkin.Topical questions of diagnostics and treatment of osteoporosis.Saint−Petersburg、IKF「Foliant」、1998、p.47[9])。これは上記の照射線量より100倍大きい。
【0064】
照射を複数個の線源を使って行い、放射線ビームが異なる経路で集束領域に達し、患者の身体に蓄積しない場合は、線量を幾分減らせる可能性がある。
【0065】
それゆえ、空間に配置された複数個のX線源および検出器と、放射線を集束させるための対応する数の手段および二次コンプトン放射線を検出器に送達するための対応する数の手段(レンズ、半レンズ、コリメータ)とを使用する本願発明の方法および装置を実行する実施形態が最も有効である。一方で、このことは、放射線のより効果的な集束の実現を可能にし(図1に示されているように、集束手段がただ一つの場合、このようなことはX線用レンズを使用するときにだけ可能である)、検出器の出力における信号/雑音比(S/N比)を高める。他方で、このことは、患者の身体の被照射部分に対してより多くの作用を及ぼし、検査に関係しない部分および器官の過剰被曝を回避する可能性を与える。別の等価な条件で簡単な平均化(あるいは情報処理および画像化のための手段12における異なる検出器の出力信号のより複雑な処理、たとえば互いに近い点における密度の相関性の存在を考慮する処理負荷の平均化)を伴う複数個の検出器を使用すれば、精度を落とすことなくより小さい出力のX線源の使用を可能にする。加えて、平均化では、精度を下げる別の要因(たとえば、密度が異なる種々の点に向かう途中で、線源の放射線の吸収が異なる)の影響が緩和される。
【0066】
以下では、このような実施形態について考察する(図2から図11)。
【0067】
図2および図3に示す実施形態は、技術的実現の観点から最も単純な形態である。
【0068】
概略図2において、近似的に点と見なすことができるX線源1と、放射線を領域16に集束させるための、チャネルが放射線の伝播方向に拡散する(拡大する)コリメータ13とが使用される。コリメータの入り口に向かって放射線を誘導し、放射線が直接目標に当たること(コリメータを素通りすること)を防止するため、孔をあけたスクリーン14が、線源1とコリメータ13との間に設けられる。二次放射線は、放射線が伝播する方向、すなわち検出器6の方向に向かって集束し(狭くなり)、受光面上に焦点を持つことができるチャネルを備えたコリメータ15を使って検出器6に送達される。検出器としては、たとえば、入口開口部が小さい半導体検出器の使用が可能である。
【0069】
図3において、コリメータは、図2に示す向きとは反対向きに配置されている。放射線を領域16に集束させるコリメータ18の入り口の開口部を完全に利用するためには、細長い形をしたX線源17を使用することが目的に適っている。同じ理由で、入口に大きな開口部を持つ検出器(たとえばシンチレータタイプ)を使用することが望ましい。
【0070】
図4において、近似的に点と見なすことができる線源1の放射線を集束させる手段および二次放射線を送達する手段は、それぞれX線用半レンズ21および22の形で実現されている。その際、半レンズ22は散乱した二次放射線を検出器6の上に集束させる。
【0071】
図5において、近似的に点と見なすことができる線源1の放射線を集束させる手段と二次放射線を送達する手段とは、それぞれX線用半レンズ21および23の形で実現されている。その際、半レンズ23は散乱した二次放射線を近似的に平行な放射線に変換し、それを入口に大きな開口部を持つ検出器20に誘導する。
【0072】
図6は組み合わせ実施形態である:近似的に点と見なすことができる線源1の放射線を集束させる手段は、平行ビームを領域16に誘導するX線用半レンズ21の形で実現される。
【0073】
図7および図8は、二次放射線を送達する手段がコリメータの形で実現されることを特徴とする、別の組み合わせ実施形態である。
【0074】
図7において、コリメータ19は、検出器6に向かって広がったチャネルを有し、検出器は入口に大きな開口部を有する。
【0075】
図8において、コリメータ15は、前記とは逆に、検出器6に向かって狭くなったチャネルを有し、検出器は入口に小さな開口部を有する。
【0076】
図9は、精度の観点から最も性能が高く分解能が高い実施形態であり、近似的に点と見なすことができる線源1の放射線を集束させる手段と二次放射線を検出器6に送達する手段とは、それぞれX線用「完全」レンズ2および3の形で実現されている(図1に示すこの実施形態を参照)。
【0077】
図10および11には、さらに2つの組み合わせ実施形態が示してある。近似的に点と見なすことができる線源1の放射線を集束させる手段として、X線用「完全」レンズ2を使用するという点で一つである。
【0078】
図10には、二次放射線を、開口部の狭い検出器6へ送達するための手段として、検出器に向かって細くなったコリメータ15の使用が示してある。
【0079】
図11には、二次コンプトン放射線を開口部の広い検出器20へ送るための手段として、検出器に向かって広がったコリメータ19の使用が示してある。
【0080】
本発明の装置を実現するすべての実施形態において、X線光学系8を構成する要素の配置は、線源(1,17)の放射線が検出器に直接入射すること、あるいは患者(5)の体を通過したあとで検出器(6、20)に入射することは排除しなければならない。その理由は、すでに述べたとおり、集束領域に発生する二次放射線が、検査対象である生物学的組織の密度に関する情報を持つからである。このためには、いかなる検出器も(そして二次放射線を検出器に送達する手段も)、線源の放射線を集束領域に集束させる手段から、これらの手段によって形成されるX線ビームが交差する領域までの、任意の光学軸の延長線上に存在してはならない。
【0081】
本願の発明による悪性新生物の位置決定法と、この方法を実施するために行う本願発明の装置の操作は、点座標と、悪性新生物に属するものと確認された前記点座標に対応する生物学的組織の密度との組み合わせを決定(たとえば、情報を処理し、画像化するための手段に対応するデジタルコード群を保存)することによって終了する。同定は、たとえば公知の方法[3]と同様、発明の方法を実施する過程で得られた画像と、先の診断で得られた画像とを比較することによって行うことができる。その際、同定された構造要素の画像は、この方法の実施に関係するオペレータにより、コンピュータ技術分野で従来型の指示手段、たとえば「マウス」を使って、情報を画像化、処理するための手段であるスクリーン上に表示することができる。
【0082】
悪性新生物の放射線治療を実践する解決策が受け入れられるなら、装置をさらに使用するまえに、決定された点座標のセットで表される悪性新生物の各部分に照射すべきX線照射線量を、セットの形で与える照射プログラムが作成される。照射プログラムは、悪性新生物に冒された器官の特性やその他の要因を考慮して、たとえば[1]に記載されている方法を使用して作成される。
【0083】
治療方法を実行する第一段階(たとえば、悪性新生物の位置決定法を実行する段階)と同じ手段(レンズ2,21;コリメータ13,18)をX線の集束に使って、悪性新生物が占める空間領域を走査する過程で、照射プログラムが実行される。その際、必要照射線量は、X線源の放射線を強度によって統括制御する手段9を使って、悪性新生物組織を放射線で破壊するに十分な強度レベル(たとえば、X線管のアノード電流を上げて供給される)で、X線集束領域の不連続な各位置に照射される。具体的な実施形態において、悪性新生物が小さい場合は、X線照射集束領域の一箇所だけで、すなわち走査しないで、照射を行うことができる。放射線の集束に完全レンズを使用する場合は、微小な腫瘍(たとえば眼)の放射線治療の実施が可能である。
【0084】
作動中に検出器の構造から、X線源が高い放射線強度で漏れる可能性を防ぐために、X線源の出口を遮断するか、機械的に遮蔽することができる(図面にはここで言及する手段は描かれていない)。
【0085】
悪性新生物の位置を正確に把握するとき(第一段階では放射線治療法)および照射プログラムを実施するとき(第二段階)に、同じ一つの手段を使用することは、放射線ビームの照準誤差の最小化につながる。X線光学系は、患者の身体に関して、同定時に悪性新生物に関係があるとして決定された構造要素の画像と一致する位置に配置されるため、X線集束領域への照射は、悪性新生物の位置決定段階の位置と同じ位置で行われる。同定時に決定された座標に対応する位置に相互に配置する、患者の身体に対するX線光学系の精度の再現性は、より完全な相対的な位置関係決定手段、たとえば[2]に記載されている手段と類似の手段を使用することによって高めることができる。
【0086】
本願の発明による方法および装置構成の実施形態のいかなるスキームを使用するかは、X線用レンズまたは半レンズのような有効な放射線集束手段および送達手段を利用できる可能性が存在すること、および要求される分解能とによって決定される。後者の要因は、レンズおよび半レンズのパラメータ(たとえば、焦点の大きさ、レンズの光学軸方向の集束領域の長さなど)の選択にも影響を及ぼす。その際、「完全」レンズを使用する場合、きわめて高い分解能(mmの数分の1程度かそれ以上)を実現するには、悪性新生物を含む領域を走査するためにかかる時間が長くなることが考慮される。適当な出力とサイズのX線源が存在するか否かといった、その他の事情も考慮の対象になる。
【0087】
ここに記載する本願の発明による方法および装置を実現する実施形態に加えて、本願の発明によるその他の多くの実施形態が存在することは、ここに提示する具体的な要求条件を満たす手段を構築するための広い可能性を提供する。
【0088】
(産業上の利用可能性)
本願の発明による悪性新生物の位置決定法およびその放射線治療、ならびにこれらを実施するための装置は、悪性新生物の診断があらかじめ行われることを条件にして、使用され、悪性新生物の位置、形、大きさなどに関する繊細なデータを必要とする。また、対応する解決策が以前にとられたか、あるいは上記の繊細なデータが得られた結果、そのような解決策がとられる場合も直接放射線を作用させる治療を実施することが可能である。
【0089】
(情報源)
【0090】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0091】
本願発明を図面によって説明する:
【図1】図1は、本願の方法の基礎にある原理を説明するものであり、本願の発明による方法を実現するための装置の、基本要素の配置とその接続関係を模式的に示したものである。
【図2】図2は、X線を集束させ、二次放射線を検出器に送達するためにコリメータを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【図3】図3は、X線を集束させ、二次放射線を検出器に送達するためにコリメータを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【図4】図4は、X線用半レンズを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【図5】図5は、X線用半レンズを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【図6】図6は、X線を集束させるためにX線用半レンズを使用し、二次放射線を検出器に送達するためにX線用「完全」レンズを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【図7】図7は、X線を集束させるためにX線用半レンズを使用し、二次放射線を検出器に送達するためにコリメータを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【図8】図8は、X線を集束させるためにX線用半レンズを使用し、二次放射線を検出器に送達するためにコリメータを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【図9】図9は、X線を集束させ、二次放射線を検出器に送達するためにX線用レンズを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【図10】図10は、X線を集束させるためにX線用レンズを使用し、二次放射線を検出器に送達するためにコリメータを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【図11】図11は、X線を集束させるためにX線用レンズを使用し、二次放射線を検出器に送達するためにコリメータを使用する装置の実現方法を具体化した実施形態である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載されるような、癌の位置決定および癌を消滅されるための放射線治療のためのレントゲンデバイス。
【請求項1】
本明細書に記載されるような、癌の位置決定および癌を消滅されるための放射線治療のためのレントゲンデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−268292(P2007−268292A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138467(P2007−138467)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【分割の表示】特願2002−506809(P2002−506809)の分割
【原出願日】平成12年7月5日(2000.7.5)
【出願人】(501396255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【分割の表示】特願2002−506809(P2002−506809)の分割
【原出願日】平成12年7月5日(2000.7.5)
【出願人】(501396255)
【Fターム(参考)】
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