説明

癌の処置のための生物学的な標的基の改変

本発明は、ポリマー化学の分野、およびさらに詳細には、クリック官能化標的化合物およびこれを用いる方法に関する。本発明によって提供される標的基は、PEG末端基の反対側に結合されるかまたは薬物担体内にカプセル化されているタンパク質、ウイルス、DNAプラスミド、オリゴヌクレオチド(例えば、siRNA,miRNA、アンチセンス治療剤、アプタマーなど)、薬物、色素、および一次または二次標識の細胞特異的送達のために、PEGの官能化末端基または薬物担体に結合されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2007年4月30日に出願された米国仮特許出願第60/915,070号(この出願の全体は、参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、ポリマー化学の分野に、さらに詳細には、カプセル化造影剤およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
新規な治療剤の開発によって、種々の障害に罹患している患者のクオリティー・オブ・ライフおよび生存率の劇的な改善が得られる。しかし、これらの処置の成功率を改善するためには薬物開発の革新が必要である。詳細には、早期の排出および/または治療剤の代謝を効率的に最小化して、これらの剤を特異的に疾患細胞に送達し、これによって健康な細胞に対するそれらの毒性を軽減する送達システムがやはり必要である。
【0004】
合理的に設計された、ナノスケールの薬物担体、または「ナノベクター」によって、多くの生物学的障壁をそれらが克服する固有の能力に起因して、これらの目標を達成する有望なアプローチが得られる。さらに、それらの多機能性によって、単一の送達系において、細胞標的基、診断剤および多数の薬物の取り込みが可能になる。機能的な両親媒性ブロックコポリマー(共重合体)の分子アセンブリによって形成されるポリマーミセルは、1つの重要なタイプの多機能的なナノベクターである。
【0005】
ポリマーミセルは、それらが種々の薬物(例えば、低分子、タンパク質、およびDNA/RNA治療剤)の大きい最大積載量を送達する能力、他のコロイド状担体(例えば、リポソーム)に比較したインビボの安定性の改善、ならびに強化された浸透および保持(enhanced permeation and retention)(EPR)効果による、固形腫瘍のような疾患組織での受動的な蓄積を可能にするそれらのナノスケールの大きさに起因して特に魅力的である。適切な表面官能性を用いて、ポリマーミセルはさらに、疾患の細胞を能動的に標的し、かつ細胞進入を補助し得、それによって細胞特異的送達の改善をもたらす、細胞標的基および透過促進剤で装飾される。
【0006】
ナノ粒子を標的する能力は、不健康な細胞、例えば、腫瘍の特異的な画像化を可能にするのに重要なものである。これを達成するためには、過剰発現されたレセプターが標的基として用いられ得るということがいくつかのグループで示されている。これらの標的基の例としては、葉酸、Her−2ペプチドなどが挙げられる。代表的には、結合体化反応は、タンパク質上で一級アミン官能基(例えば、リジンまたはタンパク質の末端基)を用いて行う。ほとんどのタンパク質が複数のリジンおよびアルギニンを含むので、このような結合体化は、タンパク質上の複数の部位で制御不能に生じる。これは、リジンおよびアルギニンが酵素または他の生体分子の活性部位の周囲に配置されているときに、特に問題である。さらに、リガンド結合を通じたナノ粒子表面に対する直接の標的単位の結合は、この結合が永遠ではないという事実を包含する。このリガンドは、特にナノ粒子が希釈されないとき、ナノ粒子表面から剥離する傾向を有する。従って、ナノ粒子、または他の生物学的に関連する物質に対して、標的送達に十分に適切な方式で、容易に結合体化する標的基を得ることが有利であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の特定の実施形態の詳細な説明
1.一般的な説明:
一実施形態によれば、本発明は「クリック官能化(click-functionalized)」標的基を提供する。本明細書において用いる場合、「クリック官能化」という用語は、標的基がクリック化学に適切な官能基を含むことを意味する。クリック化学は、生物学的媒体においてさえ、その高い反応性および選択性に起因するポピュラーな方法のバイオ結合体化(生体結合)である。Kolb,H.C.;Finn,M.G.;Sharpless,K.B.Angew.Chem.Int.Ed.2001,40,2004〜2021;およびWang,Q.;Chan,T.R.;Hilgraf,R.;Fokin,V.V.;Sharpless,K.B.;Finn,M.G.J.Am.Chem.Soc.2003,125,3192〜3193を参照のこと。さらに、現在利用可能な組み換え技術によって、アジドおよびアルキン保有非標準アミノ酸を、タンパク質、細胞、ウイルス、細菌およびタンパク質から構成されるかまたはタンパク質を提示する他の生物学的物体に導入することが可能になる。Link,A.J.;Vink,M.K.S.;Tirrell,D.A.J.Am.Chem.Soc.2004,126,10598〜10602;Deiters,A.;Cropp,T.A.;Mukherji,M.;Chin,J.W.;Anderson,C.;Schultz,P.G.J.Am.Chem.Soc.2003,125,11782〜11783を参照のこと。
【0008】
一実施形態では、「クリック官能化」部分とは、相補的アジド−保有分子および生体分子との[3+2]環付加反応を受けることができるアセチレンまたはアセチレン誘導体である。別の実施形態では、「クリック官能化」官能基とは、相補的アルキン−保有分子および生体分子との[3+2]環付加反応を受けることができるアジドまたはアジド誘導体である(すなわち、クリック化学)。
【0009】
別の実施形態では、アジドまたはアセチレン保有ナノベクターおよび相補的アジドまたはアセチレン−保有生体分子の[3+2]環付加反応は、触媒された遷移金属である。「クリック」反応を触媒する銅含有分子としては限定はしないが、銅線、臭化銅(CuBr)、塩化銅(CuCl)、硫酸銅(CuSO)、硫酸銅五水和物(CuSO・5HO)、酢酸銅(Cu(AcO)、ヨウ化銅(CuI)、[Cu(MeCN)](OTf)、[Cu(MeCN)](PF)、コロイド状銅原料および固定化銅原料が挙げられる。還元剤、ならびに有機および無機の金属結合リガンドを、金属触媒と組み合わせて用いてもよく、これには限定はしないが、アスコルビン酸ナトリウム、トリス(トリアゾリル)アミンリガンド、トリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、バソフェナントロリンスルホン酸リガンド、およびベンズイミダゾール系リガンドが挙げられる。
【0010】
2.定義:
本発明の化合物としては、上記に一般的に記載したものが挙げられ、本明細書に開示する実施形態、下位の実施形態および種類によってさらに例示される。本明細書で用いる場合、特に記載のない限り、以下の定義が適用されるものとする。本発明の目的のため、化学元素は、元素周期表,CAS版,Handbook of Chemistry and Physics,第75版に従って特定される。さらに、有機化学の一般原則は、「Organic Chemistry」,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999,ならびに「March’s Advanced Organic Chemistry」,第5版,Smith,M.B.およびMarch,J.編,John Wiley & Sons,New York:2001(その全内容は、参考として本明細書に援用される)に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において用いる場合、「造影剤」(「造影媒体」および「放射性造影剤」としても公知)という用語は、MRI、PET、超音波、X線または蛍光画像化の間の内部身体構造の視認性を向上するために用いられる化合物をいう。このような剤としては半導体材料、例えば、CdSe、CdS、CdTe、PdSe、CdSe/CdS、CdSe/ZnS、CdS/ZnS、およびCdTe/ZnSが挙げられる。造影剤としてはまた、磁性の物質、例えば:Fe、Fe、Fe、MnFe、CoFe、NiFe、Co、Ni、FePt、CoPt、CoO、FePt、FePt、CoPt、CoPt、およびFeOOHが挙げられる。
【0012】
本明細書において用いる場合、「標的基」という用語は、特定の細胞タイプで発現されるかまたは過剰発現されるレセプターに選択的に結合する任意の分子、高分子または生体高分子を指す。このような分子は、PEG末端基(goup)の反対側に結合されるかまたは薬物担体内にカプセル化されているタンパク質、ウイルス、DNAプラスミド、オリゴヌクレオチド(例えば、siRNA,miRNA、アンチセンス治療剤、アプタマーなど)、薬物、色素、および一次または二次標識の細胞特異的送達のために、PEGの官能化末端基または薬物担体に結合されてもよい。このような標的基としては限定はしないが、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE抗体)、糖類(例えば、マンノース、マンノース−6−リン酸、ガラクトース)、タンパク質(例えば、トランスフェリン)、オリゴペプチド(例えば、環状および非環状のRGD含有オリゴペプチド)、オリゴヌクレオチド(例えばアプタマー)およびビタミン(例えば葉酸)が挙げられる。
【0013】
「オリゴペプチド」という用語は本明細書において用いる場合、2〜65アミノ酸残基長という任意のペプチドをいう。ある実施形態では、オリゴペプチドは、天然のアミノ酸側鎖基を有するアミノ酸を含む。ある実施形態では、オリゴペプチドは天然でないアミノ酸側鎖基を有するアミノ酸を含む。特定の実施形態では、オリゴペプチドは2〜50アミノ酸残基長である。特定の実施形態では、オリゴペプチドは2〜40アミノ酸残基長である。ある実施形態では、オリゴペプチドは直線配列の環化されたバリエーションである。
【0014】
「透過性向上剤」という用語は、本明細書で使用する場合、細胞膜および/または細胞内区画(例えば、エンドソーム、リソソームなど)の膜の透過性を助けるか、または促進する任意の分子、高分子または生体分子を指す。このような分子は、PEGの官能基化末端基または薬物担体に結合し、PEG末端基の反対側に結合するかまたは薬物担体内にカプセル化されているタンパク質、ウイルス、DNAプラスミド、オリゴヌクレオチド(例えば、siRNA、miRNA、アンチセンス治療剤、アプタマーなど)、薬物、色素および一次標識または二次標識の細胞内および/または細胞質への送達を助けることができる。このような透過性向上剤としては、限定はしないが、タンパク質導入ドメインを含有するオリゴペプチド、例えば、HIV−1Tatペプチド配列(GRKKRRQRRR)、オリゴアルギニン(RRRRRRRRR)またはアルギニンリッチなオリゴペプチドまたは高分子が挙げられる。pHが変動する環境下で構造的な変化を受けるオリゴペプチド(例えばオリゴヒスチジン(HHHHH))も、細胞への進入およびエンドソームからの流出を促進する。
【0015】
本明細書で用いる場合、「連続重合、逐次重合」という用語およびそのバリエーションは、第1のモノマー(例えば、NCA、ラクタムまたはイミド)がポリマー内に組み込まれ、これによってアミノ酸「ブロック」が形成された後、第2のモノマー(例えば、NCA、ラクタムまたはイミド)を反応物に添加して第2のアミノ酸ブロックを形成する方法をいい、このプロセスを同様にして継続し、得られたマルチブロックコポリマーにさらなるアミノ酸ブロックを導入してもよい。
【0016】
本明細書において用いる場合、「マルチブロックコポリマー」という用語は、1つの合成ポリマー部分および2つ以上のポリ(アミノ酸)部分を含むポリマーをいう。このようなマルチブロックコポリマーとしては、式W−X’−X”を有するものが挙げられ、ここでWは合成のポリマー部分であり、かつXおよびX’はポリ(アミノ酸)鎖または「アミノ酸ブロック」である。特定の実施形態では、本発明のマルチブロックコポリマーは、トリブロックコポリマーである。本明細書において用いる場合、1つ以上のアミノ酸ブロックは、「混合されたブロック」であってもよく、これは、これらのブロックがアミノ酸モノマーの混合物を含んでもよく、それによって本発明のマルチブロックコポリマーが作製されることを意味する。ある実施形態では、本発明のマルチブロックコポリマーは、混合アミノ酸ブロックを含み、かつテトラブロックコポリマーである。
【0017】
本明細書において用いる場合、「トリブロックコポリマー」という用語は、合成ポリマー部分および2つのポリ(アミノ酸)部分を含むポリマーを指す。
【0018】
本明細書において用いる場合、「テトラブロックコポリマー」という用語は、1つの合成ポリマー部分および2つのポリ(アミノ酸)部分のいずれかを含むポリマーを指し、ここで1つのポリ(アミノ酸)部分とは、1つの合成ポリマー部分および3つのポリ(アミノ酸)部分を含む混合ブロックまたはポリマーである。
【0019】
本明細書において用いる場合、「内部コア」という用語は、本発明のミセルに適用する場合、第二(すなわち、末端)ポリ(アミノ酸)ブロックによって形成されるミセルの中心を指す。本発明によれば、この内部コアは、架橋されていない。実例として、上記のような式W−X’−X”のトリブロックポリマーでは、内部コアは、X”ブロックに相当する。X”ブロックは混合されたブロックであってもよいと考えられる。
【0020】
本明細書において用いる場合、「外側コア」という用語は、本発明のミセルに適用される場合、第一のポリ(アミノ酸)ブロックによって形成される層をいう。その外部コアは、内部コアと親水性シェルとの間にある。本発明によれば、その外部コアは、架橋可能であるか、または架橋されている。実例として、上記のような式W−X’−X”のトリブロックポリマーでは、この外部コアは、X’ブロックに相当する。X’ブロックは混合されたブロックであってもよいと考えられる。
【0021】
本明細書において用いる場合、「薬物ロードされた、薬物充填された」および「カプセル化された」という用語、ならびにその派生語は交換可能に用いられる。本発明によれば、「薬物ロードされた」ミセルとは、そのミセルのコア内に配置された、薬物、または治療剤を有するミセルをいう。これはまた、ミセル内に「カプセル化」されている薬物、または治療剤とも呼ばれる。
【0022】
本明細書において用いる場合、「ポリマー親水性ブロック」という用語は、ポリ(アミノ酸)ではなく、かつ天然には親水性であるポリマーを指す。このような親水性ポリマーは当該分野で周知であって、これにはポリエチレンオキシド(PEO、ポリエチレングリコール、またはPEGとも呼ばれる)およびその誘導体、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)およびその誘導体、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、およびその誘導体、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、およびその誘導体、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、およびその誘導体、およびN−(2−ヒドロキシプロポイル)メタクリルアミド(HMPA)のポリマーおよびその誘導体が挙げられる。
【0023】
本明細書で用いる場合、「ポリ(アミノ酸)」または「アミノ酸ブロック」という用語は、各モノマーがアミノ酸単位である共有結合されたアミノ酸鎖をいう。このようなアミノ酸単位としては、天然および非天然のアミノ酸が挙げられる。特定の実施形態において、各アミノ酸単位は、L−配置である。このようなポリ(アミノ酸)としては、適当に保護された官能基を有するものが挙げられる。例えば、アミノ酸モノマーは、必要な場合、適切なヒドロキシル保護基または適切なアミン保護基により必要に応じて保護されているヒドロキシルまたはアミノ部分を有するものであってもよい。このような適切なヒドロキシル保護基および適切なアミン保護基は、本明細書において以下により詳細に記載する。本明細書で用いる場合、アミノ酸ブロックは、1つ以上のモノマーまたは1組の2種類以上のモノマーを含むものである。特定の実施形態において、アミノ酸ブロックは、ブロック全体が親水性となるような1つ以上のモノマーを含む。他の実施形態において、アミノ酸ブロックは、ブロック全体が疎水性となるような1つ以上のモノマーを含む。さらに他の実施形態において、本発明のアミノ酸ブロックは、ランダムアミノ酸ブロック(すなわちアミノ酸残基の混合物を含むブロック)を含む。
【0024】
本明細書で用いる場合、「天然アミノ酸側鎖基」という用語は、タンパク質において天然に存在する任意の20種類のアミノ酸の側鎖基をいう。このような天然アミノ酸としては、無極性または疎水性のアミノ酸であるグリシン、アラニン、バリン、ロイシン イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびプロリンが挙げられる。システインは、ある場合では無極性または疎水性に、また別の場合では極性に分類される。また、天然アミノ酸としては、極性または親水性アミノ酸、例えば、チロシン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸(電荷を有する場合はアスパラギン酸塩としても知られる)、グルタミン酸(電荷を有する場合はグルタミン酸塩としても知られる)、アスパラギンおよびグルタミンも挙げられる。ある種の極性または親水性のアミノ酸は、環境のpH次第で荷電された側鎖を有する。このような荷電されたアミノ酸としては、リジン、アルギニンおよびヒスチジンが挙げられる。当業者には、極性または親水性アミノ酸側鎖の保護により、アミノ酸が無極性となり得ることが認識されよう。例えば、適当に保護されたチロシンのヒドロキシル基により、ヒドロキシル基の保護のおかげでこのチロシン(tyroine)は無極性および疎水性となり得る。
【0025】
本明細書で用いる場合、「非天然アミノ酸側鎖基」という句は、上記のようなタンパク質において天然に存在する20種類のアミノ酸の一覧には含まれないアミノ酸をいう。このようなアミノ酸としては、この20種類の天然に存在するアミノ酸のいずれかのD−異性体が挙げられる。また、非天然アミノ酸としては、ホモセリン、オルニチンおよびチロキシンも挙げられる。他の非天然アミノ酸側鎖は、当業者に周知であり、これには非天然脂肪族側鎖が挙げられる。他の非天然アミノ酸としては、修飾されたアミノ酸、例えば、N−アルキル化、環化、リン酸化、アセチル化、アミド化、アジジル化(azidylated)、標識されたものなどが挙げられる。
【0026】
本明細書で用いる場合、「リビング(living)ポリマー鎖末端」という語句は、重合反応により生じる末端であって、さらなるモノマーまたは重合停止剤(terminator)とさらに反応する能力を維持しているものをいう。
【0027】
本明細書で用いる場合、「停止、終結」という用語は、末端基をポリマー鎖末端に、リビングポリマーと適切な化合物との反応によって結合させることをいう。あるいは、「停止」という用語は、末端基をポリマー鎖のアミンもしくはヒドロキシル末端またはその誘導体に結合させることをいう場合もある。
【0028】
本明細書で用いる場合、「重合停止因子(polymerrization terminator)」という用語は、「重合停止剤(polymerization terminating agent)」という用語と互換的に用いられ、リビングポリマー鎖末端と反応し、末端基を有するポリマーをもたらす化合物をいう。あるいは、「重合停止因子」という用語は、ポリマー鎖のアミンもしくはヒドロキシル末端またはその誘導体と反応し、末端基を有するポリマーをもたらす化合物を指す場合もある。
【0029】
本明細書で用いる場合、「重合開始因子」という用語は、ある化合物であって、それ自体またはそのアニオンもしくは遊離塩基型が所望のモノマーと、そのモノマーの重合をもたらす様式で反応する化合物を指す。ある特定の実施形態において、重合開始因子は、アルキレンオキシドと反応し、ポリアルキレンオキシドブロックをもたらす化合物である。他の実施形態において、重合開始因子は、本明細書に記載のアミン塩である。
【0030】
「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、本明細書で用いる場合、直鎖(すなわち、非分枝鎖)、分枝鎖または環状(縮合型、架橋型およびスピロ縮合多環式が挙げられる)であり得、かつ完全に飽和されたものであり得るか、または1つ以上の不飽和単位を含有するものであり得る炭化水素部分であって、芳香族ではないものを表す。特に記載のない限り、脂肪族基は1〜20個の炭素原子を含む。ある実施形態では、脂肪族基は1〜10個の炭素原子を含む。他の実施形態では、脂肪族基は1〜8個の炭素原子を含む。さらに他の実施形態において、脂肪族基は1〜6個の炭素原子を含み、さらに他の実施形態において、脂肪族基は1〜4個の炭素原子を含む。好適な脂肪族基としては、限定されないが、線状または分枝鎖のアルキル、アルケニルおよびアルキニル基、ならびにそのハイブリッド、例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルもしくは(シクロアルキル)アルケニルが挙げられる。
【0031】
「ヘテロ原子」という用語は、酸素、イオウ、窒素、リンまたはケイ素の1つ以上を意味する。これには、窒素、イオウ、リンもしくはケイ素の任意の酸化された形態;任意の塩基窒素の第4級化型;または複素環の置換可能な窒素、例えば、3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルの場合の=N−、ピロリジニルの場合の−NH−、またはN−置換ピロリジニルの場合の=N(R)−が挙げられる。
【0032】
「不飽和」という用語は、本明細書で用いる場合、ある1部分が1つ以上の不飽和単位を有することを意味する。
【0033】
用語「アリール」は、単独または「アラルキル」、「アラルコキシ」もしくは「アリールオキシアルキル」の場合のようなより大きい部分の一部分として用いられ、合計5〜14個の環内原子を有する単環式、二環式環式および三環式の環系であって、この系内の少なくとも1個の環が芳香族であり、この系内の各環が3〜7個の環員を含むものをいう。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と互換的に使用され得る。
【0034】
本明細書に記載のように、本発明の化合物は、「必要に応じて置換されている」部分を含む場合がある。一般に、「置換された」という用語は、「必要に応じて」という用語が前にあろうとなかろうと、指定された部分の1個以上の水素が適切な置換基で置き換えられていることを意味する。特に記載のない限り、「必要に応じて置換されている」基は、この基の置換可能な各位置に適切な置換基を有するものであってもよく、任意の所与の構造において2つ以上の位置が、特定の基から選択される2つ以上の置換基で置換され得る場合、この置換基は、位置ごとに同じであっても異なっていてもよい。本発明で想定される置換基の組合せは、好ましくは、安定な化合物または化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものである。「安定な」という用語は、本明細書で用いる場合、その生成、検出、特定の実施形態では、その回収、精製および本明細書に開示した目的の1つ以上についての使用を可能にする条件に供した場合、実質的に改変されない化合物をいう。
【0035】
「必要に応じて置換されている」基の置換可能な炭素原子上の好適な1価の置換基は、独立して、ハロゲン;−(CH0〜4;−(CH0〜4OR;−O−(CH0〜4C(O)OR;−(CH0〜4CH(OR;−(CH0〜4SR;−(CH0〜4Ph(これはRで置換されていてもよい);−(CH0〜4O(CH0〜1Ph(これはRで置換されていてもよい);−CH=CHPh(これはRで置換されていてもよい);−NO;−CN;−N;−(CH0〜4N(R;−(CH0〜4N(R)C(O)R;−N(R)C(S)R;−(CH0〜4N(R)C(O)NR;−N(R)C(S)NR;−(CH0〜4N(R)C(O)OR;−N(R)N(R)C(O)R;−N(R)N(R)C(O)NR;−N(R)N(R)C(O)OR;−(CH0〜4C(O)R;−C(S)R;−(CH0〜4C(O)OR;−(CH0〜4C(O)SR;−(CH0〜4C(O)OSiR;−(CH0〜4OC(O)R;−OC(O)(CH0〜4SR−,SC(S)SR;−(CH0〜4SC(O)R;−(CH0〜4C(O)NR;−C(S)NR;−C(S)SR;−SC(S)SR;−(CH0〜4OC(O)NR;−C(O)N(OR)R;−C(O)C(O)R;−C(O)CHC(O)R;−C(NOR)R;−(CH0〜4SSR;−(CH0〜4S(O);−(CH0〜4S(O)OR;−(CH0〜4OS(O);−S(O)NR;−(CH0〜4S(O)R;−N(R)S(O)NR;−N(R)S(O);−N(OR)R;−C(NH)NR;−P(O);−P(O)R;−OP(O)R;−OP(O)(OR;SiR;−(C1〜4直鎖もしくは分枝鎖アルキレン)O−N(R;または−(C1〜4直鎖もしくは分枝鎖アルキレン)C(O)O−N(Rであり、式中、各Rは、以下に規定するように置換されていてもよく、独立して、水素、C1〜6脂肪族、−CHPh、−O(CH0〜1Ph、または独立して窒素、酸素もしくはイオウから選択される0〜4個のヘテロ原子を有する、5〜6員環の飽和、部分不飽和もしくはアリール環であるか、または上記の規定にかかわらず、Rの2つの独立した存在が、一緒になってそれらの介在原子(単数または複数)とともに、独立して窒素、酸素もしくはイオウから選択される0〜4個のヘテロ原子を有する、3〜12員環の飽和、部分不飽和もしくはアリール単環式もしくは二環式環式の環(これらは、以下に規定するように置換されていてもよい)を形成する。
【0036】
(またはRの2つの独立した存在がそれらの介在原子とともに一緒になることによって形成された環)上の好適な1価の置換基は、独立して、ハロゲン、−(CH0〜2、−(ハロR)、−(CH0〜2OH、−(CH0〜2OR、−(CH0〜2CH(OR;−O(ハロR)、−CN、−N、−(CH0〜2C(O)R、−(CH0〜2C(O)OH、−(CH0〜2C(O)OR、−(CH0〜2SR、−(CH)O0〜2SH、−(CH0〜2NH、−(CH0〜2NHR、−(CH0〜2NR、−NO、−SiR、−OSiR、−C(O)SR、−(C1〜4直鎖もしくは分枝鎖アルキレン)C(O)ORまたは−SSRであり、式中、各Rは非置換であるか、または「ハロ」が前置される場合は、1つ以上のハロゲンでのみ置換されており、かつ独立して、C1〜4脂肪族、−CHPh、−O(CH0〜1Ph、または独立して窒素、酸素もしくはイオウから選択される0〜4個のヘテロ原子を有する5〜6員環の飽和、部分不飽和もしくはアリール環から選択される。Rの飽和炭素原子上の好適な2価の置換基としては、=Oおよび=Sが挙げられる。
【0037】
「必要に応じて置換されている」基の飽和炭素原子上の好適な2価の置換基としては、以下:=O、=S、=NNR、=NNHC(O)R、=NNHC(O)OR、=NNHS(O)、=NR、=NOR、−O(C(R))2〜3O−またはS(C(R))2〜3S−が挙げられ、ここで、Rの各々の独立した存在は、水素、C1〜6脂肪族(これらは、以下に規定するように置換されていてもよい)、または独立して窒素、酸素もしくはイオウから選択される0〜4個のヘテロ原子を有する、非置換の5〜6員環の飽和、部分不飽和もしくはアリール環から選択される。「必要に応じて置換されている」基の近傍の置換可能な炭素に結合される好適な2価の置換基としては、以下が挙げられる:−O(CR2〜3O−(式中、Rの各独立した存在は、水素、C1〜6脂肪族(これらは、以下に規定するように置換されていてもよい))、または独立して窒素、酸素もしくはイオウから選択される0〜4個のヘテロ原子を有する、非置換の5〜6員環の飽和、部分不飽和もしくはアリール環。「必要に応じて置換されている」基の近傍の置換可能なメチレン炭素に結合される適切な4価の置換基は、これを保有するメチレンで示す場合
【0038】
【化1】

で表されるヘキサカルボニル・二コバルト・クラスターである。
【0039】
の脂肪族基上の好適な置換基としては、ハロゲン、−R、−(ハロR)、−OH、−OR、−O(ハロR)、−CN、−C(O)OH、−C(O)OR、−NH、−NHR、−NRまたは−NOが挙げられ、式中、各Rは非置換であるか、または「ハロ」が前置される場合は、1つ以上のハロゲンでのみ置換されており、独立して、C1〜4脂肪族、−CHPh、−O(CH0〜1Ph、または独立して窒素、酸素もしくはイオウから選択される0〜4個のヘテロ原子を有する、5〜6員環の飽和、部分不飽和もしくはアリール環である。
【0040】
「必要に応じて置換されている」基の置換可能な窒素上の好適な置換基としては、−R、−NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−S(O)、−S(O)NR、−C(S)NR、−C(NH)NRもしくは−N(R)S(O)が挙げられ;式中、各Rは、独立して、水素、C1〜6脂肪族(これらは、以下に規定するように置換されていてもよい)、非置換の−OPh、または独立して窒素、酸素もしくはイオウから選択される0〜4個のヘテロ原子を有する、非置換の5〜6員環の飽和、部分不飽和もしくはアリール環であるか、または上記の規定にかかわらず、Rの2つの独立した存在が一緒になってそれらの介在原子(単数または複数)とともに独立して窒素、酸素もしくはイオウから選択される0〜4個のヘテロ原子を有する非置換の3〜12員環の飽和、部分不飽和もしくはアリール単環式もしくは二環式環式の環を形成する。
【0041】
の脂肪族基上の好適な置換基は、独立して、ハロゲン、−R、−(ハロR)、−OH、−OR、−O(ハロR)、−CN、−C(O)OH、−C(O)OR、−NH、−NHR、−NRまたはNOであり、式中、各Rは非置換であるか、または「ハロ」が前置される場合は、1つ以上のハロゲンでのみ置換されており、独立して、C1〜4−脂肪族、−CHPh、−O(CH0〜1Ph、または独立して窒素、酸素もしくはイオウから選択される0〜4個のヘテロ原子を有する、5〜6員環の飽和、部分不飽和もしくはアリール環である。
【0042】
保護されたヒドロキシル基は当該分野で周知であり、これには、Protecting Groups in Organic Synthesis,T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts,第3版,John Wiley & Sons,1999(その全体は、参考として本明細書に援用される)に詳細に記載されたものが挙げられる。適当に保護されたヒドロキシル基の例としてはさらに、限定はされないが、エステル、炭酸エステル、スルホン酸エステル・アリルエーテル、エーテル、シリル・エーテル、アルキル・エーテル、アリールアルキル・エーテルおよびアルコキシアルキル・エーテルが挙げられる。好適なエステルの例としては、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、ペンタン酸エステル、クロトン酸エステルおよび安息香酸エステルが挙げられる。好適なエステルの具体例としては、ギ酸エステル、ギ酸ベンゾイル、クロロ酢酸エステル、トリフルオロ酢酸エステル、メトキシ酢酸エステル、トリフェニルメトキシ酢酸エステル、p−クロロフェノキシ酢酸エステル、3−フェニルプロピオン酸、4−オキソペンタン酸エステル、4,4−(エチレンジチオ)ペンタン酸エステル、ピバリン酸エステル(pivaloate)(トリメチル酢酸エステル)、クロトン酸エステル、4−メトキシ−クロトン酸エステル、安息香酸エステル、p−ベニル(beny)安息香酸エステル、2,4,6−トリメチル安息香酸エステルが挙げられる。好適な炭酸エステルの例としては、9−フルオレニルメチル、エチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−(トリメチルシリル)エチル、2−(フェニルスルホニル)エチル、ビニル、アリルおよびp−ニトロベンジルの炭酸エステルが挙げられる。好適なシリルエーテルの例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリイソプロピルシリルエーテルおよび他のトリアルキルシリルエーテルが挙げられる。好適なアルキルエーテルの例としては、メチル、ベンジル、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、トリチル、t−ブチルおよびアリルエーテルまたはその誘導体が挙げられる。アルコキシアルキルエーテルとしては、アセタール、例えば、メトキシメチル、メチルチオメチル、(2−メトキシエトキシ)メチル、ベンジルオキシメチル、β−(トリメチルシリル)エトキシメチルおよびテトラヒドロピラン−2−イルエーテルなどが挙げられる。好適なアリールアルキルエーテルの例としては、ベンジル、p−メトキシベンジル(MPM)、3,4−ジメトキシベンジル、O−ニトロベンジル、p−ニトロベンジル、p−ハロベンジル、2,6−ジクロロベンジル、p−シアノベンジル、2−および4−ピコリルエーテルが挙げられる。
【0043】
保護されたアミンは当該分野で周知であり、これには、Greene(1999)に詳細に記載されたものが挙げられる。好適なモノ保護アミンとしてはさらに、限定されないが、アラルキルアミン、カルバメート、アリルアミン、アミドなどが挙げられる。好適なモノ保護アミノ部分の例としては、t−ブチルオキシカルボニルアミノ(−NHBOC)、エチルオキシカルボニルアミノ、メチルオキシカルボニルアミノ、トリクロロエチルオキシカルボニルアミノ、アリルオキシカルボニルアミノ(−NHAlloc)、ベンジルオキソカルボニルアミノ(−NHCBZ)、アリルアミノ、ベンジルアミノ(−NHBn)、フルオレニルメチルカルボニル(−NHFmoc)、ホルムアミド、アセトアミド、クロロアセトアミド、ジクロロアセトアミド、トリクロロアセトアミド、フェニルアセトアミド、トリフルオロアセトアミド、ベンズアミド、t−ブチルジフェニルシリルなどが挙げられる。好適なジ保護アミンとしては、独立して、モノ保護アミンに関して上記のものから選択される2つの置換基で置換されたアミンが挙げられ、さらに、環状イミド、例えばフタルイミド、マレイミド、スクシンイミドなどが挙げられる。好適なジ保護アミンとしては、ピロールなど、2,2,5,5−テトラメチル−[1,2,5]アザジシロリジンなどおよびアジドも挙げられる。
【0044】
保護されたアルデヒドは当該分野で周知であり、Greene(1999)に詳細に記載されたものが挙げられる。好適な保護されたアルデヒドとしては、さらに、限定されないが、非環状アセタール、環状アセタール、ヒドラゾン、イミンなどが挙げられる。このような基の例としては、ジメチルアセタール、ジエチルアセタール、ジイソプロピルアセタール、ジベンジルアセタール、ビス(2−ニトロベンジル)アセタール、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、セミカルバゾンおよびその誘導体が挙げられる。
【0045】
保護されたカルボン酸は当該分野で周知であり、Greene(1999)に詳細に記載されたものが挙げられる。好適な保護されたカルボン酸としては、さらに、限定されないが、必要に応じて置換されているC1〜6脂肪族エステル、必要に応じて置換されているアリールエステル、シリルエステル、活性化されたエステル、アミド、ヒドラジドなどが挙げられる。このようなエステル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ベンジルおよびフェニルエステル(ここで、各基は必要に応じて置換されている)が挙げられる。さらなる好適な保護されたカルボン酸としては、オキサゾリンおよびオルトエステルが挙げられる。
【0046】
保護されたチオールは当該分野で周知であり、これには、Greene(1999)に詳細に記載されたものが挙げられる。好適な保護されたチオールとしてはさらに、限定されないが、ジスルフィド、チオエーテル、シリルチオエーテル、チオエステル、チオカーボネートおよびチオカルバメートなどが挙げられる。このような基の例としては、限定されないが、2〜3例を挙げると、アルキルチオエーテル、ベンジルおよび置換ベンジルチオエーテル、トリフェニルメチルチオエーテル、ならびにトリクロロエトキシカルボニルチオエステルが挙げられる。
【0047】
「クラウンエーテル部分」とは、クラウンエーテルの遊離基(ラジカル)である。クラウンエーテルは、−CHCHO−の反復単位で構成される単環式ポリエーテルである。クラウンエーテルの例としては、12−クラウン−4,15−クラウン−5および18−クラウン−6が挙げられる。
【0048】
特に記載のない限り、本明細書で示す構造はまた、この構造の全ての異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、ならびに幾何異性体(または配座異性体))型;例えば、各不斉中心に対してRおよびS配置、ZおよびE二重結合異性体、ならびにZおよびE配座異性体を含むことを意図する。したがって、本発明の化合物の単一の立体化学異性体ならびにエナンチオマー、ジアステレオマーおよび幾何異性体(または配座異性体)の混合物は、本発明の範囲内である。特に記載のない限り、本発明の化合物のあらゆる互変異性形態は、本発明の範囲内である。さらに、特に記載のない限り、本明細書で示す構造はまた、1つ以上の同位体濃縮(enriched)原子の存在のみにおいて異なる化合物を含むことを意図する。例えば、重水素もしくは三重水素(トリチウム)による水素の置換え、または13C−もしくは14C濃縮炭素による炭素の置換え以外は、本発明の構造を有する化合物は本発明の範囲内である。このような化合物は、例えば、中性子散乱実験において、生物学的アッセイにおける解析用ツールまたはプローブとして有用である。
【0049】
本明細書で用いる場合、「検出可能な部分」という用語は、「標識」という用語と互換的に用いられ、検出するのが可能な任意の部分(例えば、一次標識および二次標識)に関する。「検出可能な部分」または「標識」とは、検出可能な化合物の遊離基(ラジカル)である。
【0050】
「一次」標識としては、放射性同位体含有部分(例えば、32P、33P、35Sまたは14Cを含有する部分)、質量タグおよび蛍光標識が挙げられ、これは、さらなる修飾なしで検出され得るシグナル生成レポーター基である。
【0051】
他の一次標識としては、放射性同位体(例えば、18F)を含有する分子または結合している放射性金属(例えば、62Cu)伴うリガンドを含むポジトロン放出断層撮影法に有用なものが挙げられる。他の実施形態において、一次標識は、磁気共鳴画像法のための造影剤、例えば、ガドリニウム、ガドリニウムキレートまたは酸化鉄(例えば、FeおよびFe)粒子などである。同様に、半導体ナノ粒子(例えば、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、テルル化カドミウム)は、蛍光標識として有用である。他の金属ナノ粒子(例えば、コロイド状の金)もまた、一次標識としての機能を果たす。
【0052】
「二次」標識としては、ビオチンまたはタンパク質抗原などの、検出可能なシグナルを生じるのに第2の化合物の存在を必要とする部分が挙げられる。例えば、ビオチン標識の場合、第2の化合物としては、ストレプトアビジン−酵素結合体を挙げることができる。抗原標識の場合、第2の化合物としては、抗体−酵素結合体を挙げることができる。さらに、ある種の蛍光基は、非放射性蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)の過程においてエネルギーを別の化合物または基に転移し、次いで、第2の化合物または基に、検出対象のシグナルを生成させることにより、二次標識としての機能を果たし得る。
【0053】
特に記載のない限り、放射性同位体含有部分は、少なくとも1つの放射性同位体を含有する必要に応じて置換されている炭化水素基である。特に記載のない限り、放射性同位体含有部分は、1〜40個の炭素原子および1個の放射性同位体を含有する。ある特定の実施形態において、放射性同位体含有部分は、1〜20個の炭素原子および1つの放射性同位体を含有する。
【0054】
「蛍光標識」、「蛍光基」、「蛍光化合物」、「蛍光色素」および「フルオロフォア」という用語は、本明細書で用いる場合、ある確定された励起波長で光エネルギーを吸収し、異なる波長で光エネルギーを放出する化合物または部分をいう。蛍光化合物の例としては、限定されないが、Alexa Fluor色素(Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 660およびAlexa Fluor 680)、AMCA、AMCA−S、BODIPY 色素(BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY TMR、BODIPY TR、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665)、カルボキシローダミン6G、カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、カスケードブルー、カスケードイエロー、クマリン343、シアニン色素(Cy3、Cy5、Cy3.5、Cy5.5)、ダンシル、ダポキシル、ジアルキルアミノクマリン、4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシ−フルオレセイン、DM−NERF、エオシン、エリトロシン、フルオレセイン、FAM、ヒドロキシクマリン、IRDye(IRD40、IRD 700、IRD 800)、JOE、リサミン・ローダミンB、マリーナブルー、メトキシクマリン、ナフトフルオレセイン、オレゴン・グリーン488、オレゴン・グリーン500、オレゴングリーン514、パシフィックブルー、PyMPO、ピレン、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミングリーン、ローダミンレッド、ロドール(Rhodol)グリーン、2’,4’,5’,7’−テトラ−ブロモスルホン−フルオレセイン、テトラメチル−ローダミン(TMR)、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、テキサスレッド、テキサスレッド−Xが挙げられる。
【0055】
「質量タグ」という用語は、本明細書で用いる場合、その質量のおかげで、質量分析(MS)検出手法を用いて独自に検出できる任意の部分をいう。質量タグの例としては、エレクトロフォア(electrophore)放出タグ、例えば、N−[3−[4’−[(p−メトキシテトラフルオロベンジル)オキシ]フェニル]−3−メチルグリセロニル]イソニペコチン酸、4’−[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(ペンタフルオロフェノキシル)]メチルアセトフェノン、およびこれらの誘導体が挙げられる。これらの質量タグの合成および有用性は、米国特許第4,650,750号、同第4,709,016号、同第5,360,8191号、同第5,516,931号、同第5,602,273号、同第5,604,104号、同第5,610,020号および同第5,650,270号に記載されている。質量タグの他の例としては、限定されないが、種々の長さおよび塩基組成のヌクレオチド、ジデオキシヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、オリゴペプチド、オリゴ糖、ならびに種々の長さおよびモノマー組成の他の合成ポリマーが挙げられる。適切な質量範囲(100〜2000ダルトン)の中性のものおよび電荷を有するもの(生体分子または合成化合物)の両方の多種多様な有機分子もまた、質量タグとして使用され得る。
【0056】
「基質、基材(substrate)」という用語は、本明細書で用いる場合、ブロックコポリマーの官能化末端基が結合し得る任意の物質または高分子複合体をいう。一般に使用される基材の例としては、限定されないが、ガラス表面、シリカ表面、プラスチック表面、金属表面、金属系または化学系コーティングを含む表面、膜(例えば、ナイロン、ポリスルホン、シリカ)、マイクロビーズ(例えば、ラテックス、ポリスチレン、もしくは他のポリマー)、多孔性ポリマーマトリックス(例えば、ポリアクリルアミドゲル、多糖、ポリメタクリレート)、高分子複合体(例えば、タンパク質、多糖)が挙げられる。
【0057】
3.例示的な実施形態の説明:
A.クリック官能化標的基
上記のとおり、本発明は、クリック化学に適切な方式で官能化されている標的基を提供する。特定の実施形態では、本発明は、クリック官能化Her−2結合ペプチドを提供する。Her−2は臨床的に確証されたレセプター標的であり、かつ脳腫瘍の20〜30%で過剰発現される(Stern D.F.,Breast Cancer Res.2000,2(3),176,Fantin V.R.ら、Cancer Res.2005,65(15),6891)。Her−2過剰発現は、細胞シグナル伝達経路の構成的な活性化をもたらし、これが細胞増殖および生存の増大を生じる。トラスツズマブのような全長抗体の力価のほとんどを保持するHer−2−結合ペプチドが開発されている(すなわち、ハーセプチン)(Fantin V.R.et.al.,Cancer Res.2005,65(15),6891,Park B.W.ら、Nat.Biotechnol.2000,18(2),194,Karasseva,N.ら、J.Protein Chem.2002,21(4),287)。
【0058】
特定の実施形態では、本発明は、式I−a、I−bまたはI−c:
【0059】
【化2】

【0060】
【化3】

のいずれか、またはその塩の化合物を提供し、
式中、各々のLは独立して、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であり、ここでLの0〜6個のメチレン単位が独立して、−Cy−、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NHSO−、−SONH−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、または−NHC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
−Cy−は必要に応じて置換されている5〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており;かつ
各々のRは独立してアルキンまたはアジドである。
【0061】
例示的なクリック官能化Her−2結合ペプチドは下に説明される。
【0062】
【化4】

特定の実施形態では、本発明によるクリック官能化Her−2結合ペプチドは、ポリマーに結合体化される。特定の実施形態では、このポリマーはPEGまたは官能化PEGである。他の実施形態では、本発明によるクリック官能化Her−2結合ペプチドは、ガンの腫瘍特異的標的のためにポリマーミセルに結合体化される。さらに他の実施形態では、本発明によるクリック官能化Her−2結合ペプチドは、その中にカプセル化された化学療法剤を有しているミセルに対して結合体化される。
【0063】
特定の実施形態では、本発明は、クリック官能化uPARアンタゴニストを提供する。ウロキナーゼ型のプラスミノーゲン・アクチベータ・レセプター(uPAR)は細胞運動性および侵襲において重要な役割を果たす膜貫通レセプターである(Mazar A.P.,Anticancer Drugs 2001,12(5),387)。uPARはガンの治療における魅力的な標的である。なぜなら、uPARは多くのタイプのガンで過剰発言され、発現は通常、患者の予後が劣ることの指標であるからである(Foekens,J.A.,et.al.Cancer Res.2000,60(3),636)。実際、uPARに対する多くのアンタゴニスト、またはuPAR自体が開発されており、インビトロおよびインビボの両方で腫瘍増殖および転位を抑制することが示されている(Reuning,U.et.al.,Curr.Pharm.Des.2003,9(19),1529,Romer,J.,et.al.Curr.Pharm.Des.2004,10(19),2359)。
【0064】
特定の実施形態では、本発明は、下の式II−a、II−b、II−c、II−d、II−e、II−f、II−g、II−h、II−i、II−j、II−k、II−l、II−m、II−n、およびII−oの化合物:
【0065】
【化5】

【0066】
【化6】

【0067】
【化7】

【0068】
【化8】

またはその塩を提供し、式中、各々のLは独立して、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であり、ここでLの0〜6個のメチレン単位が独立して、−Cy−、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NHSO−、−SONH−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、または−NHC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
−Cy−は必要に応じて置換されている5〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており;かつ
各々のRが独立してアルキンまたはアジドである。
【0069】
当業者は、uPARアンタゴニストがアミン末端で、またはカルボキシレート末端でクリック官能化され得ることを認識するであろう。
【0070】
特定の実施形態では、本発明によるクリック官能化uPARアンタゴニストは、ポリマーに結合体化される。特定の実施形態では、このポリマーはPEGまたは官能化PEGである。他の実施形態では、本発明によるクリック官能化uPARアンタゴニストは、ガンの腫瘍特異的標的のためにポリマーミセルに結合体化される。さらに他の実施形態では、本発明によるクリック官能化uPARアンタゴニストは、その中に化学療法剤をカプセル化しているミセルに結合体化される。
【0071】
特定の実施形態では、本発明は、クリック官能化CXCR4アンタゴニストを提供する。CXCR4はHIV進入のための共同レセプターとして特定されたケモカインレセプターである(De Clercq,E.,Nat.Rev.Drug Discov.2003,2(7),581)。CXCR4はまた、Mullerおよび共同研究者らによって記載されたとおりほとんどの乳癌で過剰発現されることが見出されている(Muller,A.ら、Nature 2001,410(6824),50)。多数の低分子アンタゴニストがまた、CXCR4に対して開発されている(De Clercq,E.,Nat.Rev.Drug Discov.2003,2(7),581,Gerlach,L.O.ら、J.Biol.Chem.2001,276(17),14153,Tamamura,H.ら、Org.Biomol.Chem.2003,1(21),3656,Tamamura,H.ら、Mini Rev.Med.Chem.2006,6(9),989,Tamamura,H.ら、Org.Biomol.Chem.2006,4(12),2354)。CXCR4の他のインヒビター、例えば、短い干渉性RNAはまた、インビボで顕著な抗ガン活性を示しており、これによってCXCR4はガン治療のための前臨床の標的として立証されている(Lapteva,N.ら、Cancer Gene Ther.2005,12(1),84,Liang,Z.ら、Cancer Res.2004,64(12),4302,Liang,Z.et.al.,Cancer Res.2005,65(3),967,Smith,M.C.ら、Cancer Res.2004,64(23),8604)。
【0072】
特定の実施形態では、本発明は、クリック官能化葉酸塩標的基を提供する。この葉酸塩レセプターは、卵巣、結腸直腸および乳癌などの多くの上皮性のガンで過剰発現される(Ross,J.F.ら、Cancer 1994,73(9),2432,Jhaveri,M.S.ら、Mol.Cancer Ther.2004,3(12),1505)。ガン細胞で高度に過剰発現されることに加えて、正常な細胞では発現はほとんどまたはまったく見られない(Elnakat,H.ら、Adv.Drug Deliv.Rev.2004,56(8),1067,Weitman,S.D.ら、Cancer Res.1992,52(12),3396)。葉酸塩に毒性がなく、かつ免疫原性でもないという特性のおかげで、これはガン細胞標的に優れたリガンドとなる。
【0073】
特定の実施形態では、本発明は、式III:
【0074】
【化9】

のクリック官能化化合物、またはその塩を提供し、式中、各々のLは独立して、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であって、ここでLの0〜6個のメチレン単位が独立して、−Cy−、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NHSO−、−SONH−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、または−NHC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
−Cy−は必要に応じて置換されている5〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており;かつ
各々のRが独立してアルキンまたはアジドである。
【0075】
特定の実施形態では、本発明は、式IIIの化合物を提供し、式中Lは、RがNのとき、−(CHCHCH)−以外である。
【0076】
特定の実施形態では、本発明のクリック官能化葉酸は、ポリマーに結合体化される。特定の実施形態では、このポリマーはPEGまたは官能化PEGである。他の実施形態では、本発明によるクリック官能化葉酸は、ガンの腫瘍特異的標的のためにポリマーミセルに結合体化される。さらに他の実施形態では、本発明によるクリック官能化葉酸は、その中に化学療法剤をカプセル化しているミセルに結合体化される。
【0077】
特定の実施形態では、本発明は、クリック官能化GRP78ペプチドアンタゴニストを提供する。GRP78(グルコース調節タンパク質)は、タンパク質折り畳みおよび小胞輸送を調節するように機能する熱ショックタンパク質である(Kim,Y.ら、Biochemistry 2006,45(31),9434)。正常細胞中の小胞体で発現されるが、これは、多くのガン細胞の表面で過剰発現される(Kim,Y.ら、Biochemistry 2006,45(31),9434,Arap,M.A.ら、Cancer Cell 2004,6(3),275,Liu,Y.ら、Mol.Pharm.2007)。2つの群は、インビトロおよびインビボでGRP78を標的する独立して設計されたペプチドを有する(Arap,M.A.ら、Cancer Cell 2004,6(3),275,Liu,Y.ら、Mol.Pharm.2007)。
【0078】
特定の実施形態では、本発明は、式IV−a〜IV−f:
【0079】
【化10】

【0080】
【化11】

【0081】
【化12】

のクリック官能化GRP78標的基またはその塩を提供し、式中、各々のLは独立して、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であり、ここでLの0〜6個のメチレン単位は独立して、−Cy−、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NHSO−、−SONH−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、または−NHC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
−Cy−は必要に応じて置換されている5〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており;かつ
各々のRは独立してアルキンまたはアジドである。
【0082】
特定の実施形態では、本発明によるクリック官能化GRP78ペプチドアンタゴニストは、ポリマーに結合体化される。特定の実施形態では、このポリマーはPEGまたは官能化PEGである。他の実施形態では、本発明によるクリック官能化GRP78ペプチドアンタゴニストは、ガンの腫瘍特異的標的のためにポリマーミセルに結合体化される。さらに他の実施形態では、本発明によるクリック官能化GRP78ペプチドアンタゴニストは、その中に化学療法剤をカプセル化しているミセルに結合体化される。
【0083】
例示的なクリック官能化GRP78ペプチドアンタゴニストを下に示す。
【0084】
【化13】

【0085】
【化14】

ある実施形態では、本発明は、クリック官能化インテグリン結合ペプチドを提供する。他の実施形態では、本発明は、クリック官能化RGDペプチドを提供する。インテグリンは、細胞外基質に対する結合において機能する膜貫通レセプターである。インテグリンを介した基層への細胞の接着によって、細胞生存に必須である細胞シグナル伝達経路が誘導され;従って、インテグリン媒介性の結合の破壊は、ガンの治療のための理論的な診療行為である(Hehlgans,S.ら、Biochim.Biophys.Acta 2007,1775(1),163)。ペプチドモチーフRGDに基づく小型の直鎖または環状のペプチドは、優れたインテグリン結合を示している(Ruoslahti,E.ら、Science 1987,238(4826),491)。一実施形態では、直鎖および環状のRGDペプチドは、ガンの腫瘍特異的標的のためにポリマーミセルに結合体化される。
【0086】
特定の実施形態では、本発明は、式V−a、V−b、V−c、V−d、V−e、およびV−f:
【0087】
【化15】

【0088】
【化16】

の化合物またはその塩を提供し、式中、各々のLは独立して、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であり、ここでLの0〜6個のメチレン単位は独立して、−Cy−、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NHSO−、−SONH−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、または−NHC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
−Cy−は必要に応じて置換されている5〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており;かつ
各々のRは独立してアルキンまたはアジドである。
【0089】
特定の実施形態では、本発明によるクリック官能化RGDペプチドは、ポリマーに結合体化される。特定の実施形態では、このポリマーはPEGまたは官能化PEGである。他の実施形態では、本発明によるクリック官能化RGDペプチドは、ガンの腫瘍特異的標的のためにポリマーミセルに結合体化される。さらに他の実施形態では、本発明によるクリック官能化RGDペプチドは、その中に化学療法剤をカプセル化しているミセルに結合体化される。
【0090】
式V−a、V−b、V−c、V−d、V−e、およびV−fの例示的な化合物は以下に示す。
【0091】
【化17】

【0092】
【化18】

ある実施形態では、本発明は、クリック−官能化黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アンタゴニストペプチドを提供する。この黄体形成ホルモン放出ホルモンレセプター(LHRHR)は、乳癌、卵巣癌および前立腺癌の細胞を含む多数のガンのタイプで過剰発現されることが見出された(Dharap,S.S.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2005,102(36),12962)。LHRHアンタゴニストペプチドは、合成されており、ガン細胞標的化に有効である(Dharap,S.S.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2005,102(36),12962)。一実施形態では、LHRHRに対するペプチドアンタゴニストは、ガンの腫瘍特異的標的のためにポリマーミセルに結合体化される。
【0093】
特定の実施形態では、本発明は、式VI−a、VI−b、VI−c、VI−dおよびVI−e:
【0094】
【化19】

【0095】
【化20】

の化合物、またはその塩を提供し、式中、各々のLは独立して、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であって、ここでLの0〜6個のメチレン単位は独立して、−Cy−、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NHSO−、−SONH−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、または−NHC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
−Cy−は必要に応じて置換されている5〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており;かつ
各々のRは独立してアルキンまたはアジドである。
【0096】
特定の実施形態では、本発明によるクリック官能化LHRHアンタゴニストペプチドは、ポリマーに結合体化される。特定の実施形態では、このポリマーはPEGまたは官能化PEGである。他の実施形態では、本発明によるクリック官能化LHRHアンタゴニストペプチドは、ガンの腫瘍特異的標的のためのポリマーミセルに結合体化される。さらに他の実施形態では、本発明によるクリック官能化LHRHアンタゴニストペプチドは、その中に化学療法剤をカプセル化しているミセルに結合体化される。
【0097】
式VI−a、VI−b、VI−c、VI−d、およびVI−eの例示的な化合物は以下に示す。
【0098】
【化21】

【0099】
【化22】

ある実施形態では、本発明は、クリック官能化アミノペプチダーゼ標的ペプチドを提供する。アミノペプチダーゼN(CD13)は、固形腫瘍の周囲の血管で優先的に発現される腫瘍特異的レセプターである。3つのアミノ酸ペプチド(NGR)は、レセプターアミノペプチダーゼNに結合した細胞結合モチーフであることが特定された(Arap,W.ら、Science 1998,279(5349),377,Pasqualini,R.ら、Cancer Res.2000,60(3),722)。NGRペプチドは、密接に関連するアミノペプチダーゼAを標的する他のペプチドとともに(Marchio,S.ら、Cancer Cell 2004,5(2),151)ガン細胞の標的基である。
【0100】
特定の実施形態では、本発明は、式VII−a、VII−b、VII−c、およびVII−d:
【0101】
【化23】

【0102】
【化24】

の化合物、またはその塩を提供し、式中、各々のLは独立して、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であり、ここでLの0〜6個のメチレン単位は独立して、−Cy−、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NHSO−、−SONH−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、または−NHC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
−Cy−は必要に応じて置換されている5〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており;かつ
各々のRは独立してアルキンまたはアジドである。
【0103】
特定の実施形態では、本発明によるクリック官能化アミノペプチダーゼ標的ペプチドは、ポリマーに結合体化される。特定の実施形態では、このポリマーはPEGまたは官能化PEGである。他の実施形態では、本発明によるクリック官能化アミノペプチダーゼ標的ペプチドは、ガンの腫瘍特異的標的のためにポリマーミセルに結合体化される。さらに他の実施形態では、本発明によるクリック官能化ペプチド標的アミノペプチダーゼNおよびAは、その中に化学療法剤をカプセル化しているミセルに結合体化される。
【0104】
式VII−a、VII−b、VII−c、およびVII−dの例示的な化合物は以下に示す。
【0105】
【化25】

【0106】
【化26】

ある実施形態では、本発明は、クリック官能化細胞浸透性ペプチドを提供する。形質導入ドメインに基づく細胞浸透性ペプチド、例えば、HIV−1Tatタンパク質由来のものは、治療性高分子の細胞内送達および薬物送達系を改善するための有望な候補である。HIV−1Tatおよび他のタンパク質形質導入ドメインは、エネルギー依存性の方式で細胞の原形質膜を効率的に横切り、有効なエンドソーム回避を示し、細胞核に局在する(Lindgren,M.ら、Trends Pharmacol.Sci.2000,21,99,Jeang,K.T.ら、J.Biol.Chem.1999,274,28837,Green,M.ら、Cell 1988,55,1179)。HIV−1 Tatの細胞内取り込みを担うドメインは、極めて塩基性の領域、アミノ酸残基49〜57(RKKRRQRRR)から構成される(Pepinsky,R.B.ら、DNA Cell Biol.1994,13,1011,Vive’s,E.ら、J.Biol.Chem.1997,272,16010,Fawell,S.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1994,91,664)。HIV−1 Tatの細胞内取り込みのための詳細な機構は推測のままであるが、HIV TAT PTDおよび他の陽イオン性PTD類(例えば、オリゴアルギニンおよびペネトラチン)の結合は、インビトロで細胞に対する薬物送達系の透過性を劇的に増大することが示されている(Torchilin,V.P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2001,98,8786,Snyder,E.L.ら、Pharm.Res.2004,21,389,Letoha,T.,et.al.J.Mol.Recognit.2003,16(5),272)。一実施形態では、細胞浸透性ペプチドは、ガン細胞への取り込みを改善するためにポリマーミセルに結合体化される。
【0107】
特定の実施形態では、本発明は、式VIII−a、VIII−b、VIII−c、VIII−d、VIII−e、およびVIII−f:
【0108】
【化27】

【0109】
【化28】

の化合物、またはその塩を提供し、式中、各々のLは独立して、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であり、ここでLの0〜6個のメチレン単位は独立して、−Cy−、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NHSO−、−SONH−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、または−NHC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
−Cy−は必要に応じて置換されている5〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており;かつ
各々のRは独立してアルキンまたはアジドである。
【0110】
特定の実施形態では、本発明によるクリック官能化細胞浸透性ペプチドは、ポリマーに結合体化される。特定の実施形態では、このポリマーはPEGまたは官能化PEGである。他の実施形態では、本発明によるクリック官能化細胞浸透性ペプチドは、ガンの腫瘍特異的標的のためにポリマーミセルに結合体化される。さらに他の実施形態では、本発明によるクリック官能化細胞浸透性ペプチドは、その中に化学療法剤をカプセル化しているミセルに結合体化される。
【0111】
式VIII−a、VIII−b、VIII−c、VIII−d、VIII−eおよびVIII−fの例示的な化合物は以下に示される。
【0112】
【化29】

【0113】
【化30】

本明細書において用いる場合、本発明は、クリック化学のための官能化された標的基を提供する。ある実施形態では、このような官能化は、アジドまたはアルキン部分を含む。上記のとおり、標的基は、特定の細胞型で過剰発現されるレセプターに選択的に結合する能力を有している合成ペプチドを含む。本発明によるクリック官能化標的基として誘導体化に適切な例示的な標的基としては下の表1〜31に示されるものが挙げられる。表1〜31に示されるペプチド配列は、N末端からC末端に左から右に示されていることが理解されるであろう。ある配列が列になって複数のラインとなっている場合、各々のラインは、その上のラインの配列の続きであって、左から右である。ある実施形態では、表1〜31に列挙されるペプチド配列は、直線配列の環化されたバリエーションである。
【0114】
【表1】

【0115】
【表2】

【0116】
【表3】

【0117】
【表4】

【0118】
【表5】

【0119】
【表6】

【0120】
【表7】

【0121】
【表8】

【0122】
【表9】

【0123】
【表10】

【0124】
【表11】

【0125】
【表12】

【0126】
【表13】

【0127】
【表14】

【0128】
【表15−1】

【0129】
【表15−2】

【0130】
【表16】

【0131】
【表17】

【0132】
【表18】

【0133】
【表19】

【0134】
【表20−1】

【0135】
【表20−2】

【0136】
【表21】

【0137】
【表22】

【0138】
【表23】

【0139】
【表24】

【0140】
【表25】

【0141】
【表26】

【0142】
【表27】

【0143】
【表28】

【0144】
【表29】

【0145】
【表30】

【0146】
【表31】

本発明によるクリック官能化標的基として誘導体化に適切なさらなる例示的な標的基としては、下の表32〜38に示されるものが挙げられる。一般にインビボで腫瘍を標的するために有用であることが示されている例示的なペプチドを表32に列挙する。ある場合には、表32〜38に列挙されるペプチド配列は、直鎖配列の環化バリエーションである。
【0147】
【表32−1】

【0148】
【表32−2】

【0149】
【表32−3】

【0150】
【表32−4】

【0151】
【表32−5】

【0152】
【表32−6】

本発明によるクリック官能化標的基として誘導体化に適切なさらなる例示的な標的基としては、下の表33〜38に示されるものが挙げられる。腫瘍細胞上の特定のレセプターまたは特定の腫瘍型を標的するために潜在的に有用であることが示されている例示的なペプチドは表33〜38に列挙される。ある例では、表33〜38に列挙されるペプチド配列は、直鎖の配列の環化バリエーションである。
【0153】
【表33】

Lupold SおよびRodriguez R Mol Cancer Ther 2004;3(5):597〜603
Aggarwal S,Cancer Res 2006,66(18)9171
【0154】
【表34】

【0155】
【表35】

Karasseva N J Protein Chem 2002;21(4):287〜96
【0156】
【表36】

【0157】
【表37】

【0158】
【表38】

Kim S.,Clin.Exp.Met 2008 25,201。
【0159】
当業者は、表1〜38のペプチド配列が、アミノ末端で、またはカルボキシ末端でクリック官能化され得ることを認識する。
【0160】
本明細書において用いる場合、表1〜38は、合成ホーミングペプチド、すなわち、特定の組織、正常およびガンの両方にホーミングするペプチドの列挙を示す。このようなペプチドは、例えば、米国特許第6,576,239号、同第6,306,365号、同第6,303,573号、同第6,296,832号、同第6,232,287号、同第6,180,084号、同第6,174,687号、同第6,068,829号、同第5,622,699号、米国特許出願公開第2001/0046498号、同第2002/0041898号、同第2003/0008819号、同第2003/0077826、PCT出願PCT/GB02/04017(国際公開第03/020751号)において、およびAina,O.et al.,Mol Pharm 2007,4(5),631によって記載されている。
【0161】
当業者は、組織−ホーミングペプチドを特定および特徴付けるための方法を承知するであろう。例えば、Arap,W.,et al.,Science 1998,279(5349),377、Pasqualini R.およびRuoslahti,E.,Nature 1996,380(6572),364、Rajotte,D.et al.,J.Clin Invest 1998,102(2),430、Laakkonen,P.,et al.,Nat Med.2002,8(7),751、Essler,M.およびRuoslahti E.Proc Natl Acad Sci USA 2002,99(4),2252,Joyce J.,et al.,Cancer Cell 2003,4(5),393,Montet X.,et al.,Bioconjug Chem 2006,17(4),905,およびHoffman J.et al.,Cancer Cell 2003,4(5),383を参照のこと。
【0162】
特定の実施形態では、本発明によるクリック官能化標的基は、ポリマーに結合体化される。特定の実施形態では、このポリマーはPEGまたは官能化PEGである。他の実施形態では、本発明によるクリック官能化標的基は、標的基がホーミングする組織の標的のためにポリマーミセルに結合体化される。さらに他の実施形態では、本発明によるクリック官能化標的基は、その中に化学療法剤をカプセル化しているミセルに結合体化される。
【0163】
上記されるとおり、本発明は、クリック化学のために適切な方式で官能化されている標的基を提供する。特定の実施形態では、この標的基は、オリゴペプチドである。ある実施形態では、クリック官能化部分は、あるクリック官能化カルボン酸とあるオリゴペプチドのN末端との反応によってオリゴペプチドに導入される。このようなクリック官能化カルボン酸としては限定はしないが、以下が挙げられる:
【0164】
【化31】

当業者は、このようなカルボン酸が、固相樹脂上でまたはペプチドが樹脂から切断された後、オリゴペプチドに導入されてもよいことを承知するであろう。このようなカップリング方法としては、限定はしないが以下が挙げられる:アミニウム/ホスホニウム系のカップリング試薬(例えば、HATU、HBTU、HCTU、TBTU、BOP、PyBOP、PyAOPまたはHATU/HOBt、HBTU/HOBt、TBTU/HOBt、HCTU/HOBtの組み合わせ)、カルボジイミド系の試薬(例えば、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)、またはDIC/HOBt、DCC/HOBt、EDC/HOBtの組み合わせ)、クリック官能化カルボン酸の対称性無水物(カルボジイミド試薬との反応を通じて調製した)との反応、クリック官能化カルボン酸の活性化エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ペンタフルオロフェニル(OPfp))との反応、クリック官能化カルボン酸の酸塩化物または酸フッ化物誘導体の反応など。
【0165】
別の実施形態では、クリック官能化部分は、オリゴペプチド側鎖上に存在する一級または二級アミンとのクリック官能化カルボン酸の反応によってオリゴペプチドに導入される。共通のアミン官能化アミノ酸としては、天然のアミノ酸、例えば、リジン、アルギニンおよびヒスチジンが挙げられる。
【0166】
一実施形態では、クリック官能化部分を、オリゴペプチドのC末端とのクリック官能化アミンの反応によってオリゴペプチドに導入する。このようなクリック官能化アミンとしては限定はしないが以下が挙げられる:
【0167】
【化32】

当業者は、ペプチドが樹脂から切断された後に、オリゴペプチドのC末端にこのようなアミンが導入され得ることを承知するであろう。このようなカップリング方法としては限定はしないが以下が挙げられる:アミニウム/ホスホニウム系のカップリング試薬(例えば、HATU、HBTU、HCTU、TBTU、BOP、PyBOP、PyAOPまたはHATU/HOBt、HBTU/HOBt、TBTU/HOBt、HCTU/HOBtの組み合わせ)、カルボジイミド系の試薬(例えば、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)、またはDIC/HOBt、DCC/HOBt、EDC/HOBtの組み合わせ)、オリゴペプチドの活性化エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ペンタフルオロフェニル(OPfp))との反応、オリゴペプチドの酸塩化物または酸フッ化物の誘導体の反応など。
【0168】
別の実施形態では、クリック官能化部分は、オリゴペプチド側鎖上に存在するカルボン酸とのクリック官能化アミンの反応によってオリゴペプチドに導入される。共通のカルボン酸官能化アミノ酸としては、天然のアミノ酸、例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。
【0169】
さらに別の実施形態では、クリック準備部分を、オリゴペプチド骨格へのクリック官能化アミノ酸の組み込みを通じて導入する。このようなクリック官能化アミノ酸としては限定はしないが以下が挙げられる:
【0170】
【化33】

式中、R’は天然または天然でないアミノ酸側鎖基である。Lアミノ酸が上記されているが、Dアミノ酸またはラセミ混合物も用いられてもよいことが理解されるであろう。
【0171】
ある実施形態では、固相化学のために安定に保護されるアミノ酸が導入される。このような保護されたアミノ酸としては限定はしないが以下が挙げられる:
【0172】
【化34】

式中、R’は天然または天然でないアミノ酸側鎖基であり、PGは安定な保護基である。Lアミノ酸が上記されているが、Dアミノ酸またはラセミ混合物も用いられてもよいことが理解されるであろう。適切な保護基は、当該分野で公知であり、上記およびGreene(前出)によって記載されるものが挙げられる。ある実施形態では、PGは酸(例えば、Boc)または塩基(例えば、Fmoc)不安定性の保護基である。当業者は、このようなアミノ酸が固相樹脂上の鎖伸長の間オリゴペプチドのN末端に導入され得ることを認識するであろう。このようなカップリング方法としては、限定はしないが以下が挙げられる:アミニウム/ホスホニウム系のカップリング試薬(例えば、HATU、HBTU、HCTU、TBTU、BOP、PyBOP、PyAOPまたはHATU/HOBt、HBTU/HOBt、TBTU/HOBt、HCTU/HOBtの組み合わせ)、カルボジイミド系の試薬(例えば、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)、またはDIC/HOBt、DCC/HOBt、EDC/HOBtの組み合わせ)、クリック官能化アミノ酸の対称性無水物の調製(カルボジイミド試薬との反応を通じて調製された)、クリック官能化アミノ酸の活性化エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ペンタフルオロフェニル(OPfp))との反応、クリック官能化アミノ酸の酸塩化物または酸フッ化物の誘導体の反応など。
【0173】
B.二機能性PEG類
本明細書に記載されるとおり、提供された標的基は、適切に官能化されたPEGに対して結合体化され得る。このような官能化されたPEG類は、米国特許出願公開第2006/0240092号、同第2006/0172914号、同第2006/0142506号、および同第2008/0035243号、国際公開WO07/127473、WO07/127440、およびWO06/86325(各々の全体が参照によって本明細書に援用される)に詳細に記載される。
【0174】
特定の実施形態では、本発明は、提供されたクリック官能化標的基と式Aの化合物:
【0175】
【化35】

またはその塩との結合体化のための方法を提供し、式中:
nは10〜2500であり;
およびRは各々独立して、水素、ハロゲン、NO、CN、N、−N=C=O、−C(R)=NN(R)、−P(O)(OR)、−P(O)(X)、9〜30員のクラウン・エーテル、または必要に応じて置換されている基であって、脂肪族、3〜8員の飽和、部分的不飽和、もしくはアリール環(窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有している)、8〜10員の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環(窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有している)、または検出可能な部分から選択され、ただし、RおよびRは、クリック化学に適切な部分であり;
各々のXは独立してハロゲンであり;
各々のRは独立してハロゲンであるか、あるいは脂肪族、または3〜8員の飽和、部分的不飽和、またはアリール環(窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有している)から選択されて必要に応じて置換され;かつ
およびLは各々独立して、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であり、ここでLおよびLの0〜6個のメチレン単位は独立して、−Cy−、−O−、−NR−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NRSO−、−SONR−、−NRC(O)−、−C(O)NR−、−OC(O)NR−、または−NRC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
各々の−Cy−が独立して、必要に応じて置換されている3〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており、
、この方法は、以下の工程:
(a)式Aの化合物を提供する工程と、
(b)クリック官能化標的化合物を提供する工程と、
(c)この標的化合物に対して式Aの化合物を、クリック化学を介して結合体化する工程と、を包含する。
【0176】
ある実施形態では、前述の工程(a)〜(c)によって、式A−1、A−2、A−3またはA−4:
【0177】
【化36】

の化合物が得られ、式中、この標的化合物は、本明細書に記載のものから選択され、各々のnは10〜2500である。特定の実施形態では、各々のnは独立して約225である。他の実施形態では、nは約270である。他の実施形態では、nは約350である。他の実施形態では、nは約10〜約40である。他の実施形態では、nは約40〜約60である。他の実施形態では、nは約60〜約90である。さらに他の実施形態では、nは約90〜約150である。他の実施形態では、nは約150〜約200である。さらに他の実施形態では、nは約200〜約250である。他の実施形態では、nは約300〜約375である。他の実施形態では、nは約400〜約500である。さらに他の実施形態では、nは約650〜約750である。特定の実施形態では、nは50±10から選択される。他の実施形態では、nは、80±10、115±10、180±10、225±10、275±10、315±10または340±10から選択される。
【0178】
特定の実施形態では、本発明は、クリック官能化標的基を提供し、このクリック官能化標的基は:
【0179】
【化37】

以外であって、式中各々のRは独立して水素またはアセチルである。
【0180】
表39は、式:
【0181】
【化38】

を有する本発明の例示的な化合物を説明しており、
式中n=10〜2500である。
【0182】
【表39】

C.マルチブロックコポリマー
本明細書に記載されるとおり、提供される標的基はポリマーミセルに結合体化されてもよい。このようなポリマーミセルは、その全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許出願公開第2006/0240092号に詳細に記載される。
【0183】
特定の実施形態では、本発明は、本発明のクリック官能化標的基を式B:
【0184】
【化39】

の化合物と結合体化するための方法を提供し、式中:
nは10〜2500であり;
mは0〜1000であり;
m’は1〜1000であり;
は架橋し得る、天然または非天然のアミノ酸側鎖基であり;
は疎水性またはイオン性、天然または非天然のアミノ酸側鎖基であり;
は−Z(CHCHY)(CHであり、式中:
Zは−O−、−S−、−C≡C−、または−CH−であり;
各々のYは独立して−O−または−S−であり;
pは0〜10であり;
tは0〜10であり;かつ
は−Nまたはアルキンであり;
Qは、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であり、ここでQの0〜6個のメチレン単位が独立して、−Cy−、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NHSO−、−SONH−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、または−NHC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
−Cy−は必要に応じて置換されている5〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており;
2aは、モノ保護アミン、ジ保護アミン、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRC(O)OR、または−NRSOであって、ただし、RおよびR2aのうちの1つがクリック化学に適切な部分であり;かつ
各々のRが独立して、水素、脂肪族、5〜8員の飽和、部分的に不飽和、またはアリール環から選択される必要に応じて置換されている基であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有している環、8〜10員の飽和、部分的に不飽和、またはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有している環、あるいは検出可能部分であるか、あるいは:
同じ窒素原子上の2つのRがこの窒素原子と一緒になって、必要に応じて置換されている4〜7員の飽和、部分的に不飽和、またはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有している環を形成し、
この方法は、以下の工程を包含する:
(a)式Bの化合物を提供する工程と、
(b)クリック官能化標的化合物を提供する工程と、
(c)この標的化合物に対して式Bの化合物をクリック化学を介して結合体化する工程と。
【0185】
特定の実施形態では、式Bの化合物はトリブロックコポリマーであって、これは、ポリマーの親水性ブロック、ポリ(アミノ酸)ブロック、および混合されたランダムコポリマーブロックを含む。いくつかの実施形態では、式Bの化合物はさらに、架橋されたブロックまたは架橋可能なブロックを含み、ここでRは架橋し得る天然または非天然のアミノ酸側鎖基である(例えば、アスパラギン酸、ヒスチジン)。ある実施形態では、式Bの化合物は、トリブロックコポリマーを含み、これは、ポリマーの親水性ブロック、架橋されたブロックまたは架橋可能なポリ(アミノ酸)ブロック、および混合されたランダムコポリマーブロックを含む。いくつかの実施形態では、mは0であり、かつ式Bの化合物は、ジブロックコポリマーを含み、これは、親水性ブロック、および混合されたランダムコポリマーブロックを含む。このようなコポリマーおよびそのミセルを作製および用いる方法は、米国特許出願公開第2006/0142506号、同第2006/0172914号、および同第2006/0240092号に記載される。
【0186】
特定の実施形態では、前述の工程(a)〜(c)は、式B−1またはB−2:
【0187】
【化40】

の化合物を提供し、式中、この標的化合物は、本明細書に記載されるものから選択される。
【0188】
表40は、以下の式:
【0189】
【化41】

を有する本発明の例示的な化合物を示しており、式中、w=150〜400、x=3〜30、y=1〜50、z=1〜50であって、かつp=yおよびzの合計である。
【0190】
【表40−1】

【0191】
【表40−2】

表41は、以下の式:
【0192】
【化42】

を有する本発明の例示的な化合物を示しており、式中、w=150〜400、x=3〜30、y=1〜50、z=1〜50であって、かつp=yおよびzの合計である。
【0193】
【表41−1】

【0194】
【表41−2】

表42は、以下の式:
【0195】
【化43】

を有する本発明の例示的な化合物を示しており、式中、w=150〜400、x=3〜30、y=1〜50、z=1〜50であって、かつp=yおよびzの合計である。
【0196】
【表42−1】

【0197】
【表42−2】

表43は、以下の式:
【0198】
【化44】

を有する本発明の例示的な化合物を示しており、式中、w=150〜400、x=3〜30、y=1〜50、z=1〜50であって、かつp=yおよびzの合計である。
【0199】
【表43−1】

【0200】
【表43−2】

表44は、以下の式:
【0201】
【化45】

を有する本発明の例示的な化合物を示しており、式中、w=150〜400、y=1〜50、z=1〜50であって、かつp=yおよびzの合計である。
【0202】
【表44−1】

【0203】
【表44−2】

表45は、以下の式:
【0204】
【化46】

を有する本発明の例示的な化合物を示しており、式中、w=150〜400、y=1〜50、z=1〜50であって、かつp=yおよびzの合計である。
【0205】
【表45−1】

【0206】
【表45−2】

本発明の化合物を提供するための一般的方法
二機能性のPEG類は、米国特許出願公開第2006/0240092号、同第2006/0172914号、同第2006/0142506号、および同第2008/0035243号、ならびに国際公開第WO07/127473号、同第WO07/127440号、および同第WO06/86325号(その各々の全体が参照によって本明細書に援用される)に従って調製される。本発明のマルチブロックコポリマーは、当業者に公知の方法、およびその全体が参照によって本明細書に援用される、2006年1月4日出願の米国特許出願番号11/325,020号に詳細に記載される方法によって調製される。一般には、このようなマルチブロックコポリマーは、末端アミン塩を有する親水性ポリマー上に1つ以上の環状アミノ酸モノマーを連続的に重合化することによって調製され、ここでこの重合化は、このアミン塩によって開始される。特定の実施形態では、この重合化は、環状アミノ酸モノマーの環開口重合化によって生じる。他の実施形態では、この環状アミノ酸モノマーは、アミノ酸NCA、ラクタムまたはイミドである。
【0207】
5.使用、方法および組成物
組成物
別の実施形態によれば、本発明は、本明細書に記載の標的基またはその薬学的に受容可能な誘導体に対して結合体化されたポリマーまたはポリマーミセル、および薬学的に受容可能な担体、アジュバントまたはビヒクルを含む組成物を提供する。特定の実施形態では、このような組成物は、このような組成物の必要な患者に対する投与のために処方される。他の実施形態では、本発明の組成物は、患者に対する経口投与のために処方される。ある実施形態では、本発明の組成物は、非経口投与のために処方される。
【0208】
特定の実施形態では、提供される標的基に対して結合体化されたミセルは薬物をロードされる。本発明のこのような薬物ロードされたミセルは、任意の疾患を処置するために有用であり、ここではこの疾患の組織または細胞に対するこのミセルの標的化は、この薬物の送達のために有益である。特定の実施形態では、本発明の薬物ロードされたミセルは、ガンを処置するために有用である。従って、本発明の別の局面では、患者におけるガンを処置するための方法が提供され、この方法は患者に対して、ポリマーの親水性ブロックを含むマルチブロックコポリマー、必要に応じて架橋可能なまたは架橋されているポリ(アミノ酸ブロック)、および疎水性D,L−混合ポリ(アミノ酸ブロック)を投与する工程を包含し、これは、このミセルが薬物ロードされた内部コア、必要に応じて架橋可能なまたは架橋されている外部コア、および親水性シェルを有し、このミセルが化学療法剤をカプセル化するという点で特徴付けられる。
【0209】
別の実施形態によれば、本発明は、乳癌、卵巣癌、頸癌、前立腺癌、精巣癌、尿生殖器癌、食道癌、喉頭癌、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、胃癌、皮膚癌、ケラトアカントーマ(角化棘細胞腫)、肺癌、類表皮癌腫、大細胞癌腫、小細胞癌腫、肺腺癌、骨癌、結腸癌、アデノーマ、膵臓癌、腺癌、甲状腺癌、濾胞腺癌、未分化癌、乳頭癌、精上皮腫、黒色腫、肉腫、膀胱癌腫、肝臓癌腫および胆汁道癌、腎臓癌、骨髄系障害、リンパ系障害、ホジキン病、毛様細胞癌、頬腔および咽頭(口腔)の癌、口唇癌、舌癌、口腔癌、咽頭癌、小腸癌、結腸−直腸癌、大腸癌、直腸癌、脳および中枢神経系の癌、および白血病から選択される癌を処置する方法に関しており、この方法は、本発明によるミセルを投与する工程であって、このミセルがこのガンを処置するために適切な化学療法剤をカプセル化している工程を包含する。
【0210】
P−糖タンパク質(多薬剤耐性タンパク質とも呼ばれるPgp)は、高等真核生物の原形質膜に見出され、この膜では、そのタンパク質は、疎水性分子のATP加水分解−駆動輸出を担っている。動物においては、Pgpは環境トキシンの分泌、およびこのトキシンからの保護において重要な役割を果たしており;癌細胞の原形質膜で発現された場合、疎水性化学療法薬物が細胞内のそれらの標的に到達するのを妨げることによって、Pgpは化学療法の失敗をもたらしかねない。事実、Pgpは、疎水性化学療法薬物を腫瘍細胞から輸出することが公知である。一局面によれば、本発明は、疎水性化学療法薬物を癌細胞に送達するための方法であって、その化学療法薬物のPgp分泌を妨げるか、または減らしながら送達するための、その疎水性化学療法薬物をロードした本発明のマルチブロックポリマーを含む薬物ロードされたミセルを投与することを包含する方法を提供する。そのような疎水性化学療法薬物は当該分野で周知であり、これには本明細書中に記載されたものを含む。
【0211】
特定の実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるようなミセルであって、アバレリックス(Abarelix)、アルデスロイキン、アルデスロイキン(Aldesleukin)、アレムツズマブ(Alemtuzumab)、アリトレチノイン(Alitretinoin)、アロプリノール(Allopurinol)、アルトレタミン(Altretamine)、アミホスチン(Amifostine)、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アザシチジン(Aazacitidine)、生BCG、ベバクジマブ(Bevacuzimab)、アバスチン(Avastin)、フルオロウラシル、ベキサロテン(Bexarotene)、ブレオマイシン、ボルテゾミブ(Bortezomib)、ブスルファン(Busulfan)、カルステロン(Calusterone)、カペシタビン(Capecitabine)、カンプトテシン、カルボプラチン、カルムスチン、セレコキシブ、セツキシマブ(Cetuximab)、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン(Cladribine)、クロファラビン(Clofarabine)、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)、シタラビン(Cytarabine)、ダクチノマイシン(Dactinomycin)、ダルベポエチンα(Darbepoetin alfa)、ダウノルビシン(Daunorubicin)、デニロイキン(Denileukin)、デクスラゾキサン(Dexrazoxane)、ドセタキセル(Docetaxel)、ドキソルビシン(中性)、塩酸ドキソルビシン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピルビシン、エポエチンα、エルロチニブ、エストラムスチン、リン酸エトポシド、エトポシド、エキセメスタン(Exemestane)、フィルグラスチム(Filgrastim)、フロクスウリジン フルダラビン、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブ、酢酸ゴセレリン、酢酸ヒストレリン、ヒドロキシウレア、イブリツモマブ、イダルビシン、イホスファミド(Ifosfamide)、メシル酸イマチニブ、インターフェロンα2a、インターフェロンα2b、イリノテカン、レナリドマイド、レトロゾール、ロイコボリン、酢酸ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、6−MP、メスナ、メトトレキセート、メトキシサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロン、ネララビン、ノフェツモマブ、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パリフェルミン、パミドロネート、ペガデマーゼ(Pegademase)、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド・二ナトリウム、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポルフィマー・ナトリウム(Porfimer Sodium)、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、マレイン酸スニチニブ、タルク、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、VM−26、テストラクトン、チオグアニン、6−TG、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ATRA、ウラシル・マスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ゾレドロネートまたはゾレドロン酸のいずれか1つから選択される抗増殖性または化学療法剤をロードされたミセルを提供する。
【0212】
応答性ナノベクターを用いてガン細胞に対して特異的に強力な細胞毒性剤の送達を標的することは、ガンの処置のための伝統的な低分子治療剤に依拠する何千人もの人々の幸福に対して明らかな影響を有するであろう。特定の実施形態では、本発明は、一般的な化学療法薬物、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、トポイソメラーゼIIインヒビター、カンプトテシン(CPT)、トポイソメラーゼIインヒビター、またはパクリタキセル(Taxol)(微小管重合のインヒビター)のミセル−カプセル化型を提供する。
【0213】
一局面によれば、本発明は、エキセメスタンス(アロマシン)、カンプトサル(イリノテカン)、エレンス(エピルビシン)、フェマラ(レトロゾール)、グリベック(メシル酸イマチニブ)、レンタロン(フォルメスタン)、シタドレン/オリメテン(アミノグルテチミド)、テモダール、プロスカー(Proscar)(フィナステリド)、ビアドール(ロイプロリド)、ネキサバール(Nexavar)(ソラフェニブ)、カイトリル(グラニセトロン)、タキソテール(ドセタキセル)、タキソール(パクリタキセル)、カイトリル(グラニセトロン)、ベサノイド(トレチノイン)、(レチンA)、XELODA(カペシタビン)、アリミデックス(アナストロゾール)、カソデックス/コスデックス(ビカルタミド)、ファスロデックス(フルベストラント)、イレッサ(ゲフィニチブ)、ノルバデックス、イスツバール、バロデックス(クエン酸タモキシフェン)、トムデックス(ラルチトレキセド)、ゾラデックス(酢酸ゴセレリン)、ロイスタチン(クラドリビン)、ベルケイド(ボルテゾミブ)、マイロターグ(ゲムツズマブ・オゾガマイシン)、アリムタ(ペメトレキセド)、ジェムザール(塩酸ゲムシタビン)、リツキサン(リツキシマブ)、レブリミド(レナリドミド)、サロミド(サリドマイド)、アルケラン(メルファラン)、およびそれらの誘導体のうちのいずれか1つ以上から選択される疎水性薬物をロードされた、本明細書に記載のようなミセルを提供する。
【0214】
本明細書において用いる場合、「患者」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
【0215】
「薬学的に受容可能な担体、アジュバントまたはビヒクル」という用語は、それと共に処方される化合物の薬理学的活性を破壊しない非毒性の担体、アジュバントまたはビヒクルをいう。本発明の組成物中で用いてもよい薬学的に受容可能な担体、アジュバントまはたビヒクルとしては、限定はしないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク質、ホスフェートのような緩衝液物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和された植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩など、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース−系物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂肪が挙げられる。
【0216】
本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩としては、薬学的に受容可能な無機および有機の酸および塩基に由来するものが挙げられる。適切な酸性塩の例としては酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩が挙げられる。他の酸、例えば、シュウ酸は、それ自体は薬学的に受容可能ではないが、本発明の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な酸付加塩を得るのにおける中間体として、有用な塩の調製に使用され得る。
【0217】
適切な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウムおよびカリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウムおよびN+(C1−4アルキル)4塩が挙げられる。本発明はまた、本明細書中に開示された化合物のいずれかの塩基性窒素−含有基の四級化を想定する。水または−油−溶解性または−分散性の産物もそのような四級化によって得ることができる。
【0218】
本発明の組成物は経口、非経口、吸入スプレーによって、局所に、直腸に、鼻に、口腔に、膣に、または移植されたリザーバーを介して投与してもよい。本明細書において用いる場合、「非経口」という用語は皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、クモ膜下腔内、肝臓内、病巣内および頭蓋内の注射または注入技術を包含する。好ましくは、この組成物は経口、腹腔内または静脈内に投与される。本発明の組成物の滅菌注射形態は、水性であってもまたは油性懸濁液であってもよい。これらの懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて当該分野で公知の技術に従って処方してもよい。滅菌注射製剤はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液または懸濁液、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液であってもよい。使用できる許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リングル液および等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌不揮発性油が、慣習的に、溶媒または沈殿防止媒体として使用される。
【0219】
この目的では、合成モノ−グリセリドまたはジ−グリセリドを含めたいずれの無刺激性の(bland)不揮発性油も使用できる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、特にそのポリオキシエチル化バージョンで、オリーブ油またはヒマシ油のような天然の薬学的に受容可能な油がそうであるように、注射剤の調製で有用である。これらの油溶液または懸濁液は、エマルジョンおよび懸濁液を含めた薬学的に受容可能な剤形の処方物中で通常使用されるカルボキシメチルセルロースまたは同様な分散剤のような、長鎖アルコール希釈剤または分散剤も含み得る。Tween、Spanのような他の通常使用されるサーファクタント、および薬学的に受容可能な固体、液体、または他の剤形の製造で通常用いられる他の乳化剤またはバイオアベイラビリティの向上剤も処方の目的で用いてもよい。
【0220】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、限定はしないが、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液または溶液を含めた、いずれかの経口的に許容される剤形で経口投与してもよい。経口使用のための錠剤の場合には、通常用いられる担体としてはラクトースおよびトウモロコシ澱粉が挙げられる。ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤も代表的には加えられる。カプセル型での経口投与では、有用な希釈剤としてはラクトースおよび乾燥したトウモロコシ澱粉が挙げられる。水性懸濁液が経口使用で必要とされる場合、有効成分は乳化および沈殿防止剤と組み合わされる。必要に応じて、ある種の甘味剤、香味料または着色剤も添加してもよい。特定の実施形態において、本発明の薬学的に受容可能な組成物は腸溶コーティングされる。
【0221】
あるいは、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、直腸投与のための座剤の形態で投与してもよい。これらは、この剤を、室温では固体であるが、直腸温度では液体であり、従って、直腸では融解して薬物を放出する適切な非刺激性の賦形剤と混合することによって調製することができる。そのような物質としてはカカオバター、蜜ろうおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0222】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、特に、治療の標的が目、皮膚または下部腸管の病気を含めた、局所適用によって容易に接近可能な領域または器官を含む場合には、局所投与することもできる。適切な局所処方は、これらの領域または器官の各々のために容易に調製される。
【0223】
下部腸管のための局所適用は、直腸座薬処方(前記参照)にて、または適切な浣腸処方にて行うことができる。局所−経皮パッチも用いてもよい。
【0224】
局所適用では、薬学的に受容可能な組成物は、1つ以上の担体に懸濁または溶解させた活性な成分を含有する適切な軟膏中に処方してもよい。本発明の化合物の局所投与のための担体としては、限定されるものではないが、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろうおよび水が挙げられる。別法として、薬学的に受容可能な組成物は、1つ以上の薬学的に受容可能な担体中に懸濁または溶解させた活性成分を含有する適切なローションまたはクリーム中に処方してもよい。適切な担体としては、限定はしないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられる。
【0225】
眼科的使用では、薬学的に受容可能な組成物は、等張のpH調整の滅菌生理食塩水中の微粉化懸濁液として、または好ましくは、塩化ベンジルアルコニウムのような保存剤の有無のいずれかにおける、等張のpH調整の滅菌生理食塩水中の溶液として処方してもよい。別法として、眼科的使用では、薬学的に受容可能な組成物は、ワセリンのような軟膏中に処方してもよい。
【0226】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与することもできる。このような組成物は医薬処方の分野で周知の技術に従って調製して、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを向上させるための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の慣用的な可溶化剤または分散剤を使用して、生理食塩水中の溶液として調製してもよい。
【0227】
特定の実施形態において、本発明の薬学的に受容可能な組成物は経口投与のために処方される。
【0228】
担体物質と組み合わせて、単一剤形の組成物を産生することができる本発明の化合物の量は、処置される宿主、投与の特定の形態に依存して変化するであろう。好ましくは、この組成物は、これらの組成物を与えられている患者に対して、薬物の0.01〜100mg/kg体重/日の間の用量を投与することができるように処方すべきである。
【0229】
カプセル化された薬物で代表的に使用される投薬量が本発明によって考慮されることは認識されるであろう。特定の実施形態において、患者には本発明の薬物ロードされたミセルが投与され、ここでは、この薬物の用量は、代表的にはその薬物のために投与されるものと同等である。他の実施形態において、患者には本発明の薬物ロードされたミセルが投与され、ここでは、薬物の用量は、代表的にはその薬物のために投与されるよりも低い。
【0230】
いずれかの特定の患者のための特別な投薬量および治療レジメンは、使用される具体的な化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、食餌、投与の時間、排出速度、薬物の組み合わせ、および治療する医師の判断、および処置されている特定の病気の重症度を含めた種々の因子に依存するであろう。組成物中の本発明の化合物の量は、この組成物中の特定の化合物にも依存するであろう。
【0231】
本明細書中に記載された発明がより十分に理解され得るように、以下の実施例を記載する。これらの実施例は説明目的のためだけであって、決して本発明を制限するものとして解釈されるべきではないことは理解されるであろう。
【実施例】
【0232】
クリック官能化糖類の一般的合成
【0233】
【化47】

葉酸塩の選択的官能化のためのスキーム
【0234】
【化48】

(実施例1)
【0235】
【化49】

アセチレン末端化GRGDSペプチドの合成−オリゴペプチド配列GRGDSは、バッチ式プロセスおよびペプチドカップリング剤HBTUを用いて標準的なFmoc固相ペプチド合成に従って合成した。Fmoc−Ser(But)を充填したワング樹脂(3.2gであって、0.6mmol/gというローディング密度を有する)を炉乾のガラス・フリット反応管中に秤量して、30mLの乾燥CHClを用いて5〜10分間膨潤させた。Fmoc基をN末端で、25/75溶液のピペリジン/DMF(30mL)の添加によって、続いて3分間の窒素を用いた攪拌によって切断した。この樹脂をろ過して、新鮮なピペリジン/DMF(30mL)を添加した。20分間の攪拌後、その樹脂をろ過して、DMFを用いて6回洗浄した。
【0236】
20mLの無水DMF中のFmoc−Asp(OBut)−OH(3.85g、9.35mmol)、HBTU(3.48g、9.17mmol)、およびHOBt(1.26g、9.35mmol)の溶液を調製した。溶液が均一になったのち、DIPEA(3.28mL、18.70mmol)を添加し、得られた混合物をただちに樹脂に加えた。次いで、この樹脂を1時間攪拌し、ろ過して、DMFを用いて(3回)洗浄した。ピペリジン/DMF(30mL)の25/75溶液を添加し、その樹脂を3分間攪拌した。ろ過後、ピペリジン/DMFを再度、この樹脂に添加し、続いて20分間攪拌した。次いで、その樹脂を、DMFを用いて(6回)洗浄した。上記のアミノ酸追加手順をFmoc−Gly−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、および第二単位のFmoc−Gly−OHについて繰り返した。
【0237】
第二のGly単位の添加後、15mLの乾燥DMF中で、4−ペンチン酸(0.90g、9.0mmol)、HBTU(3.4g、8.8mmol)、およびHOBt(1.4g、9.0mmol)の溶液を調製した。この溶液が均一になった後、DIPEA(3.2mL,18.0mmol)を添加し、得られた混合物を直ちに樹脂に添加した。次いで、その樹脂を1時間攪拌し、ろ過して、DMFを用いて(6回)洗浄した。ろ過後、その樹脂をDMF(6回)、続いてCHCl(4回)を用いて洗浄して、残滓のDMFを除いた。次いで、この樹脂を95/2.5/2.5のTFA/HO/TIPS(30ml)と3時間攪拌することによって、オリゴペプチドを切断した。濾液を清浄なフラスコに収集して、その樹脂を新鮮な切断溶液およびDCMを用いて数回洗浄した。その溶液をロータリーエバポレーター上で濃縮し、最小のMeOHに溶解した。オリゴペプチドをジエチルエーテルから沈殿させて、ろ過によって単離した。
【0238】
(実施例2)
【0239】
【化50】

アセチレン末端化RRRRRRRRペプチドの合成−オリゴペプチド配列RRRRRRRRを、バッチ方式のプロセスおよびペプチドカップリング剤HBTUを用いて標準的なFmoc固相ペプチド合成に従って合成した。Fmoc−Arg(Pbf)ロードされたワング樹脂(3.0gであって、0.6mmol/gというローディング密度を有する)を炉乾のガラス・フリット反応管中に秤量して、30mLの乾燥CHClを用いて5〜10分間膨潤させた。Fmoc基をN末端で、25/75溶液のピペリジン/DMF(30mL)の添加によって、続いて3分間の窒素を用いた攪拌によって切断した。この樹脂をろ過して、新鮮なピペリジン/DMF(30mL)を添加した。20分間の攪拌後、その樹脂をろ過して、DMFを用いて6回洗浄した。
【0240】
20mLの無水DMF中のFmoc−Arg(Pbf)−OH(5.8g、9.0mmol)、HATU(3.3g、8.7mmol)の溶液を調製した。溶液が均一になったのち、DIPEA(3.2mL、18.0mmol)を添加し、得られた混合物をただちに樹脂に加えた。次いで、この樹脂を30分間攪拌し、ろ過して、DMFを用いて(3回)洗浄した。ピペリジン/DMF(30mL)の25/75溶液を添加し、その樹脂を3分間攪拌した。ろ過後、ピペリジン/DMFを再度、この樹脂に添加し、続いて20分間攪拌した。次いで、その樹脂を、DMFを用いて(6回)洗浄した。上記のアミノ酸追加手順をFmoc−Arg(Pbf)−OHの残りの6回のカップリングについて繰り返した。
【0241】
8回目のArg単位の添加後、15mLの乾燥DMF中で、4−ペンチン酸(0.90g、9.0mmol)、およびHATU(3.3g、8.7mmol)の溶液を調製した。この溶液が均一になった後、DIPEA(3.2mL,18.0mmol)を添加し、得られた混合物を直ちに樹脂に添加した。次いで、その樹脂を30分間攪拌し、ろ過して、DMFを用いて(6回)洗浄した。ろ過後、その樹脂をDMF(6回)、続いてCHCl(4回)を用いて洗浄して、残滓のDMFを除いた。次いで、この樹脂を95/2.5/2.5のTFA/HO/TIPS(30ml)と3時間攪拌することによって、オリゴペプチドを切断した。濾液を清浄なフラスコに収集して、その樹脂を新鮮な切断溶液およびDCMを用いて数回洗浄した。その溶液をロータリーエバポレーター上で濃縮し、最小のMeOHに溶解した。オリゴペプチドをジエチルエーテルから沈殿させて、ろ過によって単離して、1.6gのオフホワイトの粉末を得た。
【0242】
(実施例3)
【0243】
【化51】

「クリック」化学を介したN−PEG8K−b−ポリ(Asp10)−b−ポリ(Glu(Bzl)20)へのGRGDSの結合体化。N−PEG8K−b−ポリ(Asp10)−b−ポリ(Glu(Bzl)20)(96.0mg)、アルキン−GRGDS(2.4mg)、CuSO(脱気された脱イオン水中の70μLの10mMのストック溶液)、アスコルビン酸ナトリウム(脱気された脱イオン水中の93μLの150mMのストック溶液)、およびバソフェナントロリンジスルホン酸(脱気された脱イオン水中の70μLの30mMストック溶液)および0.5mLの脱気した、脱イオン水を合わせて(その順序で)、室温でアルゴン下で24時間攪拌した。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物(EDTA,50mg)を、この反応物に添加して、1時間攪拌させた。この反応産物を、脱イオン水に対して2回透析し(10K MWCO膜)、凍結乾燥した。GRGDS−官能化PEG8K−b−ポリ(Asp10)−b−ポリ(Glu(Bzl)20)を、毛羽立った白色粉末として回収した。
【0244】
(実施例4)
【0245】
【化52】

「クリック」化学を介したN−PEG12k−b−ポリ(DGlu(Bzl)15−co−LGlu(Bzl)15)へのオリゴアルギニンの結合体化。N−PEG12k−b−ポリ(DGlu(Bzl)15−co−LGlu(Bzl)15)(33.0mg,1.8μmol)、アルキン−オリゴアルギニン(脱イオン水中8.3mg/mLのストック溶液の0.5mL、1.8μmol)、CuSO(脱イオン水中94.6mg/Lのストック溶液の0.5mL、0.19μmol)、アスコルビン酸ナトリウム(16.2mg、82μmol)、およびイオン性ベンズイミダゾールリガンド(BimC4A)(脱イオン水中1mg/mLのストック水溶液の0.25mL、0.35μmol)および0.5mLの脱イオン水を合わせて(その順序で)、室温で24時間攪拌した。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(EDTA、6.8mg、18.3μmol)を、この反応物に添加して、1時間攪拌させた。この反応産物を、脱イオン水に対して2回透析し(10K MWCO膜)、凍結乾燥した。オリゴヌクレオチド官能化PEG12k−b−ポリ(DGlu(Bzl)15−co−LGlu(Bzl)15)を、毛羽立った白色粉末として回収した(23mg、収率=62%)。(BimC4A)のさらなる詳細については、Rodionovら、J.Am.Chem.Soc.2007,129,12696を参照のこと。
【0246】
(実施例5)
【0247】
【化53】

「クリック」化学を介したN−PEG12k−b−ポリ(DGlu(Bzl)15−co−LGlu(Bzl)15)への4−メチルクマリンの結合体化。N−PEG12k−b−ポリ(DGlu(Bzl)15−co−LGlu(Bzl)15)(33.0mg,1.8μmol)、アルキン−官能化、4−メチルクマリン(BuOH中の0.7mg/mLのストック溶液の0.5mL、1.9μmol)CuSO(脱イオン水中94.6mg/Lのストック溶液の0.5mL、0.19μmol)、アスコルビン酸ナトリウム(16.2mg、82μmol)、(BimC4A)(脱イオン水中1mg/mLのストック水溶液の0.25mL、0.35μmol)および0.5mLの脱イオン水を合わせて(その順序で)、室温で24時間攪拌した。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(EDTA、6.8mg、18.3μmol)を、この反応物に添加して、1時間攪拌させた。この反応産物を、脱イオン水に対して2回透析し(10K MWCO膜)、凍結乾燥した。クマリン官能化PEG12k−b−ポリ(DGlu(Bzl)15−co−LGlu(Bzl)15)を、毛羽立った白色粉末として回収した(23mg、収率=62%)。
【0248】
本発明者らは、本発明の多数の実施形態を記載してきたが、本発明者らの基本的な実験は、本発明の組成物および方法を利用する他の実施形態を提供するように変更してもよい。従って、本発明の範囲は、例として示されている特定の実施形態によってではなく、添付の特許請求の範囲によって規定されることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリック官能化標的基であって、ただし該クリック官能化標的基は:
【化54】

でなく、
式中、各々のRが独立して水素またはアセチルである、クリック官能化標的基。
【請求項2】
前記標的基が、Her−2結合ペプチド、uPARアンタゴニスト、CXCR4アンタゴニスト、GRP78アンタゴニストペプチド、RGDペプチド、LHRHアンタゴニストペプチド、アミノペプチダーゼN(CD13)標的ペプチド、および細胞浸透性ペプチドからなる群より選択される、請求項1に記載のクリック官能化標的基。
【請求項3】
前記標的基が、脳ホーミングペプチド、腎臓ホーミングペプチド、心臓ホーミングペプチド、腸ホーミングペプチド、インテグリンホーミングペプチド、RGD−結合性決定基、血管原性腫瘍内皮ホーミングペプチド、卵巣ホーミングペプチド、子宮ホーミングペプチド、精子ホーミングペプチド、ミクログリアホーミングペプチド、滑膜ホーミングペプチド、尿路上皮ホーミングペプチド、前立腺ホーミングペプチド、肺ホーミングペプチド、皮膚ホーミングペプチド、網膜ホーミングペプチド、膵臓ホーミングペプチド、肝臓ホーミングペプチド、リンパ節ホーミングペプチド、副腎ホーミングペプチド、甲状腺ホーミングペプチド、膀胱ホーミングペプチド、胸部ホーミングペプチド、神経芽細胞腫ホーミングペプチド、リンパ腫ホーミングペプチド、筋肉ホーミングペプチド、創傷脈管構造ホーミングペプチド、脂肪組織ホーミングペプチド、抗ウイルスペプチド、融合性ペプチド、腫瘍ホーミングペプチド、前立腺特異的膜抗原(PSMA)ホーミングペプチド、アミノペプチダーゼNホーミングペプチド、HER−2ホーミングペプチド、大腸癌ホーミングペプチド、VEGFR1ホーミングペプチド、およびCXCR4ホーミングペプチドからなる群より選択される、請求項1に記載のクリック官能化標的基。
【請求項4】
前記標的基が配列番号1〜825からなる群より選択される、請求項3に記載のクリック官能化標的基。
【請求項5】
前記クリック官能化標的基が、式I−a、I−bまたはI−c:
【化55】

【化56】

のいずれか、またはその塩であり、
式中、各々のLが独立して、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であり、ここでLの0〜6個のメチレン単位が独立して、−Cy−、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NHSO−、−SONH−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、または−NHC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
−Cy−が必要に応じて置換されている5〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており;かつ
各々のRが独立してアルキンまたはアジドである、
請求項2に記載のクリック官能化標的基。
【請求項6】
前記クリック官能化標的基が以下:
【化57】

から選択される、請求項5に記載のクリック官能化標的基。
【請求項7】
前記クリック官能化標的基が、式II−a、II−b、II−c、II−d、II−e、II−f、II−g、II−h、II−i、II−j、II−k、II−l、II−m、II−n、またはII−o:
【化58】

【化59】

【化60】

のいずれかまたはその塩であり、
式中、各々のLが独立して、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であり、ここでLの0〜6個のメチレン単位が独立して、−Cy−、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NHSO−、−SONH−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、または−NHC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
−Cy−が必要に応じて置換されている5〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており;かつ
各々のRが独立してアルキンまたはアジドである、
請求項2に記載のクリック官能化標的基。
【請求項8】
前記クリック官能化標的基が、式III:
【化61】

またはその塩であり、
式中、各々のLが独立して、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であり、ここでLの0〜6個のメチレン単位が独立して、−Cy−、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NHSO−、−SONH−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、または−NHC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
−Cy−が必要に応じて置換されている5〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており;かつ
各々のRが独立してアルキンまたはアジドであり、ただしRがNであるとき、Lは−(CHCHCH)−ではない、請求項2に記載のクリック官能化標的基。
【請求項9】
前記クリック官能化標的基が、式IV−a、IV−b、IV−c、IV−d、IV−e、またはIV−f:
【化62】

【化63】

【化64】

のいずれかまたはその塩であり、式中、各々のLが独立して、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であり、ここでLの0〜6個のメチレン単位が独立して、−Cy−、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NHSO−、−SONH−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、または−NHC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
−Cy−が必要に応じて置換されている5〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており;かつ
各々のRが独立してアルキンまたはアジドである、請求項2に記載のクリック官能化標的基。
【請求項10】
前記クリック官能化標的基が:
【化65】

【化66】

から選択される、請求項9に記載のクリック官能化標的基。
【請求項11】
前記クリック官能化標的基が、式V−a、V−b、V−c、V−d、V−e、またはV−f:
【化67】

【化68】

のいずれかまたはその塩であり、式中、各々のLが独立して、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であり、ここでLの0〜6個のメチレン単位が独立して、−Cy−、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NHSO−、−SONH−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、または−NHC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
−Cy−が必要に応じて置換されている5〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており;かつ
各々のRが独立してアルキンまたはアジドである、請求項2に記載のクリック官能化標的基。
【請求項12】
前記クリック官能化標的基が:
【化69】

から選択される、請求項11に記載のクリック官能化標的基。
【請求項13】
前記クリック官能化標的基が、式VI−a、VI−b、VI−c、VI−dまたはVI−e:
【化70】

【化71】

のいずれかまたはその塩であり、式中、各々のLが独立して、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であり、ここでLの0〜6個のメチレン単位が独立して、−Cy−、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NHSO−、−SONH−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、または−NHC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
−Cy−が必要に応じて置換されている5〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており;かつ
各々のRが独立してアルキンまたはアジドである、請求項2に記載のクリック官能化標的基。
【請求項14】
前記クリック官能化標的基が:
【化72】

【化73】

から選択される、請求項13に記載のクリック官能化標的基。
【請求項15】
前記クリック官能化標的基が、式VII−a、VII−b、VII−c、またはVII−d:
【化74】

【化75】

のいずれかまたはその塩であり、式中、各々のLが独立して、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であり、ここでLの0〜6個のメチレン単位が独立して、−Cy−、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NHSO−、−SONH−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、または−NHC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
−Cy−が必要に応じて置換されている5〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており;かつ
各々のRが独立してアルキンまたはアジドである、請求項2に記載のクリック官能化標的基。
【請求項16】
前記クリック官能化標的基が:
【化76】

【化77】

から選択される、請求項15に記載のクリック官能化標的基。
【請求項17】
前記クリック官能化標的基が、式VIII−a、VIII−b、VIII−c、VIII−d、VIII−e、またはVIII−f:
【化78】

【化79】

【化80】

のいずれかまたはその塩であり、式中、各々のLが独立して、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であり、ここでLの0〜6個のメチレン単位が独立して、−Cy−、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NHSO−、−SONH−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、または−NHC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
−Cy−が必要に応じて置換されている5〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており;かつ
各々のRが独立してアルキンまたはアジドである、請求項2に記載のクリック官能化標的基。
【請求項18】
前記クリック官能化標的基が:
【化81】

から選択される、請求項17に記載のクリック官能化標的基。
【請求項19】
前記クリック官能化標的基が、ポリマーに結合体化されている、請求項1に記載のクリック官能化標的基。
【請求項20】
前記ポリマーがPEGまたは官能化PEGである、請求項19に記載のクリック官能化標的基。
【請求項21】
前記クリック官能化標的基がポリマーミセルに結合体化される、請求項1に記載のクリック官能化標的基。
【請求項22】
前記ミセルがその中にカプセル化されている治療剤を有しており、該治療剤がタンパク質、ウイルス、DNAプラスミド、オリゴヌクレオチド、薬物、色素または一次もしくは二次標識から選択される、請求項21に記載のクリック官能化標的基。
【請求項23】
前記薬物が、アバレリックス、アルデスロイキン、Aldesleukin、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アザシチジン、生BCG、ベバクジマブ、アバスチン、フルオロウラシル、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン、カペシタビン、カンプトテシン、カルボプラチン、カルムスチン、セレコキシブ、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンα、ダウノルビシン、デニロイキン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン(中性)、塩酸ドキソルビシン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピルビシン、エポエチンα、エルロチニブ、エストラムスチン、リン酸エトポシド、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブ、酢酸ゴセレリン、酢酸ヒストレリン、ヒドロキシウレア、イブリツモマブ、イダルビシン、イホスファミド、メシル酸イマチニブ、インターフェロンα2a、インターフェロンα2b、イリノテカン、レナリドマイド、レトロゾール、ロイコボリン、酢酸ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、6−MP、メスナ、メトトレキセート、メトキシサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロン、ネララビン、ノフェツモマブ、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パリフェルミン、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド・二ナトリウム、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポルフィマー・ナトリウム、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、マレイン酸スニチニブ、タルク、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、VM−26、テストラクトン、チオグアニン、6−TG、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ATRA、ウラシル・マスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ゾレドロネートおよびゾレドロン酸、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される化学療法剤である、請求項22に記載のクリック官能化標的基。
【請求項24】
前記薬物が、エキセメスタンス(アロマシン)、カンプトサル(イリノテカン)、エレンス(エピルビシン)、フェマラ(レトロゾール)、グリベック(メシル酸イマチニブ)、レンタロン(フォルメスタン)、シタドレン/オリメテン(アミノグルテチミド)、テモダール、プロスカー(フィナステリド)、ビアドール(ロイプロリド)、ネキサバール(ソラフェニブ)、カイトリル(グラニセトロン)、タキソテール(ドセタキセル)、タキソール(パクリタキセル)、カイトリル(グラニセトロン)、ベサノイド(トレチノイン)(レチンA)、XELODA(カペシタビン)、アリミデックス(アナストロゾール)、カソデックス/コスデックス(ビカルタミド)、ファスロデックス(フルベストラント)、イレッサ(ゲフィニチブ)、ノルバデックス、イスツバール、バロデックス(クエン酸タモキシフェン)、トムデックス(ラルチトレキセド)、ゾラデックス(酢酸ゴセレリン)、ロイスタチン(クラドリビン)、ベルケイド(ボルテゾミブ)、マイロターグ(ゲムツズマブ・オゾガマイシン)、アリムタ(ペメトレキセド)、ジェムザール(塩酸ゲムシタビン)、リツキサン(リツキシマブ)、レブリミド(レナリドミド)、サロミド(サリドマイド)、アルケラン(メルファラン)、それらの誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される疎水性の化学療法剤である、請求項22に記載のクリック官能化標的基。
【請求項25】
クリック官能化標的基と式Aの化合物:
【化82】

またはその塩とを結合体化するための方法であって、式中:
nは10〜2500であり;
およびRは各々独立して、水素、ハロゲン、NO、CN、N、−N=C=O、−C(R)=NN(R)、−P(O)(OR)、−P(O)(X)、9〜30員のクラウン・エーテル、または必要に応じて置換されている基であって、脂肪族、3〜8員の飽和、部分的不飽和、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有している環、8〜10員の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有している環、または検出可能な部分から選択され、ただし、RおよびRのうちの1つは、クリック化学に適切な部分であり;
各々のXは独立してハロゲンであり;
各々のRは独立してハロゲンであるか、あるいは必要に応じて置換されている、脂肪族、もしくは3〜8員の飽和、部分的不飽和、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有している環から選択され;かつ
およびLは各々独立して、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であり、ここでLおよびLの0〜6個のメチレン単位が独立して、−Cy−、−O−、−NR−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NRSO−、−SONR−、−NRC(O)−、−C(O)NR−、−OC(O)NR−、または−NRC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
各々の−Cy−が独立して必要に応じて置換されている3〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており、
以下の工程:
(a)式Aの化合物を提供する工程と、
(b)クリック官能化標的化合物を提供する工程と、
(c)該標的化合物に対して式Aの該化合物をクリック化学を介して結合体化して、その結合体を形成する工程と、
を包含する、方法。
【請求項26】
前記結合体が、式A−1、A−2、A−3またはA−4:
【化83】

【化84】

の結合体である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
クリック官能化標的基と式Bの化合物:
【化85】

とを結合体化するための方法であって、式中:
nは10〜2500であり;
mは0〜1000であり;
m’は1〜1000であり;
は架橋し得る、天然または非天然のアミノ酸側鎖基であり;
は疎水性またはイオン性、天然または非天然のアミノ酸側鎖基であり;
は−Z(CHCHY)(CHであり、式中:
Zは−O−、−S−、−C≡C−、または−CH−であり;
各々のYは独立して−O−または−S−であり;
pは0〜10であり;
tは0〜10であり;かつ
は−Nまたはアルキンであり;
Qは、一価の結合または二価、飽和または不飽和、直鎖または分枝のC1-12炭化水素鎖であり、ここでQの0〜6個のメチレン単位が独立して、−Cy−、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−C(O)O−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−NHSO−、−SONH−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、または−NHC(O)O−によって置き換えられ、ここで:
−Cy−が必要に応じて置換されている5〜8員の二価、飽和、部分的に不飽和の、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有しているか、または必要に応じて置換されている8〜10員の二価の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有しており;
2aは、モノ保護アミン、ジ保護アミン、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRC(O)OR、またはNRSOであって、ただし、RおよびR2aのうちの1つがクリック化学に適切な部分であり;かつ
各々のRが独立して、必要に応じて置換されている基であって、水素、脂肪族、5〜8員の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜4個のヘテロ原子を有している環、8〜10員の飽和、部分的に不飽和、もしくはアリール二環式環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される0〜5個のヘテロ原子を有している環、または検出可能部分から選択されるか、あるいは:
同じ窒素原子上の2つのRが該窒素原子と一緒になって、必要に応じて置換されている4〜7員の飽和、部分的に不飽和、またはアリール環であって、窒素、酸素もしくはイオウから独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有している環を形成し
以下の工程:
(a)式Bの化合物を提供する工程と、
(b)クリック官能化標的化合物を提供する工程と、
(c)該標的化合物に対して式Bの化合物をクリック化学を介して結合体化して、その結合体を形成する工程と、
を包含する、方法。
【請求項28】
前記結合体が、式B−1またはB−2:
【化86】

【化87】

である、請求項27に記載の方法。

【公表番号】特表2010−526091(P2010−526091A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506622(P2010−506622)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/062113
【国際公開番号】WO2008/134761
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(508319174)インテザイン テクノロジーズ, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】