説明

癌の検出と治療における自己抗体

任意に二重特異的抗体であってもよい癌関連自己抗体の免疫反応特性を有する抗体、癌関連自己抗体に対する抗原、又は癌関連自己抗体の免疫反応特性を有する抗体及び癌関連自己抗体に対する抗原の両者、を患者において検出し及び/又は患者に投与することに基づく、癌を検出及び/又は治療するための方法、キット及び組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年5月9日に出願した米国仮特許出願61/127,138、2008年5月23日に出願した米国仮特許出願61/128,717及び2008年8月7日に出願した米国仮特許出願61/188,209に基づく優先権を主張し、本明細書にその全体が取り込まれる。
本研究は、部分的に米国国立保健研究所、国立癌研究所からNCI助成金5RO1−CA109384−03の援助を受けた。従って米国政府は本発明に一定の権利を有する。
この発明は、癌の検出及び治療における自己抗体の使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は世界的公衆衛生上重要な問題である。癌の検出及び治療に対する、より有効な取り組み方が追求され続けている。
肺癌を例に取ると、非侵襲的画像化における進歩により肺癌の検出能は改善されたが、75%以上の肺癌患者は、病期の進展を示す状態にあり、治療上の選択肢が限られている(非特許文献1)。臨床的に第1期肺癌を示す患者は、高々60%の5年生存率を有し、全ての第1期患者の大部分が、診察時に検出できない転移性疾患を有している(非特許文献1)。これらの統計から、初期の検出方法における改善の必要性がはっきり分かる。
さらに、肺癌は、いかなる他の悪性腫瘍よりも多くの癌死の原因となる。診断能力及び治療における進歩にも拘わらず、肺癌死亡率は、過去数十年の間顕著に変化しなかった。化学療法及び放射線療法を含む治療上の選択肢が殆ど治癒的でない場合、多くの患者は、手術不能な疾患を示す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Mountain, C. F. Revisions in the International System for Staging Lung Cancer. Chest, 111: 1710-1717, 1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、肺癌を含むがこれに限られない、癌の検出及び治療を提供する方法は、必要とされながら未達成のままである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも部分的には、患者の癌を検出する方法に関する。幾つかの実施態様において、この方法は、患者から採取した検体中の癌関連自己抗体の有無及び/又は量を検出する工程から成ることができる。
癌の可能性のある患者の治療を管理する方法をもまた開示する。幾つかの実施態様において、この方法は、(1)患者から採取した検体中の癌関連自己抗体の有無及び/又は量を検出する工程、及び(2)この癌関連自己抗体の有無又は量に基づいて、癌の可能性のある患者の治療を管理する工程から成る。
腫瘍又は腫瘍と疑われる病変の分子病期を区分する方法をもまた開示する。幾つかの実施態様において、この方法は、(1)患者から採取した検体中の癌関連自己抗体の有無及び/又は量を検出する工程、及び(2)この癌関連自己抗体の有無又は量に基づいて、腫瘍又は腫瘍と疑われる病変の分子病期区分を決定する工程から成る。
【0006】
患者を癌に対する高リスク群に区分けする方法をもまた開示する。幾つかの実施態様において、この方法は、(1)患者から採取した検体中の癌関連自己抗体の有無及び/又は量を検出する工程、及び(2)この癌関連自己抗体の有無又は量に基づいて、患者を癌に対する高リスク群に区分けする工程から成る。
本願発明の方法において、検体は血清検体又は血液検体であってもよい。また本願発明において、患者はヒト患者であってもよい。
【0007】
幾つかの実施態様において、癌は肺癌である。幾つかの実施態様において、これらの方法は、補体因子H(CFH)に対する自己抗体、アルファ−グルコシダーゼ(GANAB)に対する自己抗体、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)に対する自己抗体、アルファ−エノラーゼに対する自己抗体、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)に対する自己抗体、若しくはHSP60(60kDa熱ショックタンパク質)に対する自己抗体、又はこれらの自己抗体の組合せを検出する工程を含むことができる。幾つかの実施態様において、これら方法は、表4に掲載された1又はそれ以上の物質に対する自己抗体、又はこれらの組合せを検出することから成ることができる。
【0008】
本発明は、また幾つかの実施態様において、患者から採取した検体中の癌関連自己抗体の有無及び/又は量を検出するためのキットを提供する。幾つかの実施態様において、(1)癌関連自己抗体に特異的な結合パートナー、及び(2)患者から採取した検体中の癌関連自己抗体の有無を検出及び/又はその量を測定するための説明書を含むことができる。幾つかの実施態様において、結合パートナーは、補体因子H(CFH)に対する自己抗体に特異的な結合パートナー、アルファ−グルコシダーゼ(GANAB)に対する自己抗体に特異的な結合パートナー、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)に対する自己抗体に特異的な結合パートナー、アルファ−エノラーゼに対する自己抗体に特異的な結合パートナー、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)に対する自己抗体に特異的な結合パートナー、若しくはHSP 60(60kDa熱ショックタンパク質)に対する自己抗体に特異的な結合パートナーであってもよい。幾つかの実施態様において、結合パートナーは、表4に掲載された1又はそれ以上の物質に対する自己抗体に特異的な結合パートナーであってもよい。幾つかの実施態様において、結合パートナーは、これらの結合パートナーの組合せであってもよい。
【0009】
幾つかの実施態様において、結合パートナーは、固体支持台に結合され、前記自己抗体に対する第2の特異的結合パートナーを含むことができる。幾つかの実施態様において、この第2の特異的結合パートナーは、抗体であってもよい。幾つかの実施態様において、この第2の特異的結合パートナーは、検出可能基と結合することができる。放射活性標識、蛍光標識、酵素標識及び蛍光標識を含む、がこれら限らない、群から、この検出可能基を選択することができる。このキットは、1又はそれ以上の緩衝試薬、タンパク質安定化剤、酵素基質、バックグランド低下剤、対照試薬、検出を行う装置、及び解析及び結果発表のためのいずれかの必要なソフトウェアを含むことができる。
【0010】
本発明はまた、幾つかの実施態様において、患者の癌を治療する方法を提供する。幾つかの実施態様において、この方法は、癌に罹った患者に、有効量の(a)任意に二重特異的抗体であってもよい癌関連自己抗体の免疫反応特性を有する抗体、(b)癌関連自己抗体に対する抗原、又は(c)癌関連自己抗体の免疫反応特性を有する抗体及び癌関連自己抗体に対する抗原の両者、を投与することから成る。
【0011】
幾つかの実施態様において、癌は肺癌である。幾つかの実施態様において、投与は、補体因子H(CFH)に対する抗体、α-グルコシダーゼ(GANAB)に対する抗体、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)に対する抗体、α-エノラーゼに対する抗体、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)に対する抗体、又はHSP 60(60kDa熱ショックタンパク質)に対する抗体の投与を含む。幾つかの実施態様において、この方法は、表4に掲載した1又はそれ以上の物質に対する抗体の投与を含む。幾つかの実施態様において、前述の抗体の如何なる組合せも投与することができる。幾つかの実施態様において、この投与は、補体因子H(CFH)抗原、アルファ−グルコシダーゼ(GANAB)抗原、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)抗原、アルファ−エノラーゼ抗原、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)抗原、若しくはHSP 60(60kDa熱ショックタンパク質)抗原の投与を含む。幾つかの実施態様において、この方法は、表4に掲載した1又はそれ以上の物質から調製した抗原の投与を含むことができる。幾つかの実施態様において、前述の抗原の如何なる組合せも投与することができる。幾つかの実施態様において、患者にアジュバント(免疫増強剤)を投与する。
【0012】
有効量の(a)任意に二重特異的抗体であってもよい癌関連自己抗体の免疫反応特性を有する抗体、(b)癌関連自己抗体に対する抗原、又は(c)癌関連自己抗体の免疫反応特性を有する抗体及び癌関連自己抗体に対する抗原の両者、並びに医薬的に許容される担体から成る患者の癌を治療するための組成物もまた、本発明に従い提供される。任意に、癌は肺癌である。
【0013】
幾つかの実施態様において、この組成物は、補体因子H(CFH)に対する抗体、α-グルコシダーゼ(GANAB)に対する抗体、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)に対する抗体、α-エノラーゼに対する抗体、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)に対する自己抗体、又はHSP 60(60kDa熱ショックタンパク質)に対する抗体を含むことができる。幾つかの実施態様において、この組成物は、表4に掲載した1又はそれ以上の物質に対する抗体を含むことができる。幾つかの実施態様において、この組成物は、前述の抗体の如何なる組合せも含むことができる。幾つかの実施態様において、この組成物は、補体因子H(CFH)抗原、α-グルコシダーゼ(GANAB)抗原、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)抗原、α-エノラーゼ抗原、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)抗原、又はHSP 60(60kDa熱ショックタンパク質)抗原を含むことができる。幾つかの実施態様において、この組成物は、表4に掲載した1又はそれ以上の物質から調製した抗原を含むことができる。幾つかの実施態様において、この組成物は、前述の抗原の如何なる組合を含むことができる。幾つかの実施態様において、この組成物は、アジュバントを含むことができる。
【0014】
本発明は、また幾つかの実施態様において、補体因子H(CFH)に対する自己抗体、α-グルコシダーゼ(GANAB)に対する自己抗体、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)に対する自己抗体、α-エノラーゼに対する自己抗体、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)に対する自己抗体、又はHSP 60(60kDa熱ショックタンパク質)に対する自己抗体の免疫反応特性を有する単離及び精製した抗体を提供する。本発明は、また幾つかの実施態様において、表4に掲載した1又はそれ以上の物質に対する自己抗体の免疫反応特性を有する単離及び精製した抗体を提供する。
従って、本発明の目的は、癌を検出し治療するための新規方法及び組成物を提供することである。この目的及び他の目的は、本発明により全体として、又は部分的に達成される。
以上の本発明の目的、他の目的及び利点は、以下の記載、図面及び実施例の吟味により明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1A及び図1Bは、非小細胞肺癌(NSCLC)患者血清をプローブとした2種のイムノブロットである。図1Aはプールした血清ブロットである:病期I非小細胞肺癌(NSCLC)の患者10人からの血清検体をプローブとして、5人の後期NSCLC患者からのプールした血清を含むブロットを探索した。図1Bは補体因子H(CFH)ブロットである:病期I、病期III/IV及び正常の人々からの血清検体をプローブとして用いて、精製補体因子H(CFH)を含むブロットを探索した。ADCはアデノカルシノーマ、SCCは扁平上皮癌を表す。
【図2】図2A,図2B及び図2Cは補体因子H(CFH)の発現、分泌及びCFHのH661細胞への結合に対するA549細胞への結合を表す。図2Aは、CFH RNAのRT-PCRを示す写真である。cDNAはA549又はH661細胞から単離したRNAから合成し、及びCFH特異的プライマーによりRT-PCRにより増幅した。産物をアガローズゲルで分離した。図2Bは、分泌したCFHのイムノブロットである。A549及びH661細胞を75cm2フラスコで80%コンフルエンス(集密状態)まで増殖させた。濃縮した培養上清又は100ngの精製したCFHをSDS-PAGEで分離し、ブロットし、及びヤギ抗ヒトCFH一次抗体で検出した。図2Cは、CFH結合検定からのデータを示す棒グラフである。細胞を125I標識CFHと4℃、30分間、3組インキュベートした。細胞を洗い、ガンマカウンターで結合したカウント数(cpm)を検出した。競合的結合実験のために、125I標識CFHを加える30分前に、10μg非標識CFHをインキュベーションに加えた。CFH*=放射標識CFH。n.s.=有意でない。灰色バー:CFH*; 黒色バー:CFH* + CFH。
【図3】図3は、CFH自己抗体存在下(+;黒色バー)又は非存在下(−;灰色バー)における肺癌細胞によるC3の沈殿を示す棒グラフである。値は3人の患者のIgG検体の各々3組の測定の平均である。
【図4】図4は、CFHに対して免疫染色(倍率200x)した拡散した3+腫瘍細胞を示す中程度に分化した肺腺癌を示す写真である。
【図5】図5は、自己抗体の検出のためのSurf-Blot解析である。
【図6】図6は、プールした腺癌細胞株溶解液の2D-PAGEによる分離物のCoomasie染色を示す。丸いスポットを切り出し、配列決定した。
【図7】図7は、肺腺癌患者からの稀釈血清に対する溶解液のWesternブロットである。シグナルを、図6の対応するスポットに沿って並べた。
【図8.9】図8及び図9は、NSCLC患者の血清(図8、左)及び対照群(図9、右)をプローブとした精製したCFHのSurf-Blotである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に従い、患者の癌の検出、望ましくは早期の検出、のための方法及び組成物を提供する。患者の癌を治療するための方法及び組成物もまた、提供する。
他に定義をしなければ、本明細書で用いた全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の1人により通常理解されると同じ意味を持つ。本明細書で述べた全ての発刊物、特許出願、特許及び他の引例については、その全体を本明細書の引例に取り込む。
【0017】
I.定義
以下の用語は、当業者に良く理解されていると信ずるが、本発明の説明を助けるために以下の定義を示す。
長年の特許法慣習に従い用語"a(1つ、ある)"及び"an(1つ、ある)"は、請求の範囲を含めて本申請で用いる際"1又はそれ以上"を表す。
もし他に指示されなければ、この明細書及び請求の範囲で用いられる、含有物、反応条件、等々の量を表す数字は、全ての場合に用語"約"により修正されたと理解すべきである。従って、これと逆に指示されなければ、この明細書及び添付された請求の範囲において示されたパラメーターの数値範囲は、本発明により求めて得られる好ましい特性に依存して変化することができる近似である。
【0018】
"アミノ酸配列";及び"ペプチド"、"ポリペプチド"及び"タンパク質"の様な用語;は本明細書において互換的に用いられ、及びアミノ酸配列を、列挙されたタンパク質分子と結合した、完全な、天然のアミノ酸配列(即ち、自然界に生ずるタンパク質において見出されるアミノ酸のみを含む配列)に制限することを意味しない。本発明のタンパク質及びタンパク質断片は、組み換え手法により作成することができる、又は天然の発生源から単離することができる。タンパク質断片は、如何なるサイズでもあることができて、及び例えば、4アミノ酸残基から全アミノ酸配列マイナス1アミノ酸のサイズまでの範囲をとることができる。
【0019】
用語"抗体"は、全抗体のみならず、当該のタンパク質又は複数のタンパク質に十分特異的に結合する如何なるものでも抗体断片又は二重特異性抗体を含む。
本明細書に用いるように、用語"検体"は、その最も広い意味で用いられる。ある意味では、生物源からの試料を含むことを意味する。生物的検体は、動物(ヒトを含む)から得ることができて、及び流動体、固体、組織及び気体に及ぶことができる。生物的検体は、血漿、血清等々の様な血液産物を含む。
本明細書で用いるように、用語"患者"は、ヒト、ヒト以外の霊長類、囓歯類等々を含む、がこれらに限らない、如何なる動物(即ち、哺乳動物)をも表し、これは特別な治療の受容者である。用語"患者"及び"病人"は、本明細書において互換的に用いられ、ヒト患者に限らない。
【0020】
本明細書で用いるように、用語"癌の可能性のある患者"癌を示唆する1又はそれ以上の症候を表す、又はスクリーニング(例えば、定期健康診断)で癌とされた患者を表す。癌の可能性のある患者は、また、1又はそれ以上の危険因子を有する。癌を持つと疑われた患者は、一般的に癌の検査を受けていない。しかしながら、"癌を持つと疑われた患者"はまた、最初の診断(例えば、非確定性肺結節を示すCTスキャン)を受けたが、癌の病期は不明の個人に及ぶことができる。この用語はさらに、一度癌に罹った人々(例えば、再発した個人)を含む。
本明細書で用いるように、用語"癌の危険性のある患者"は、癌進行のための1又はそれ以上の危険因子を持つ患者を表す。
【0021】
II.代表的実施態様
II.A.検出方法
幾つかの実施態様において、本発明は、血液検体を含むが、これに限らない、検体から患者の癌を検出する方法を提供する。幾つかの実施態様において、本発明は、患者の血清中に特異的抗体の有無を探索することにより行うことができる。これらの抗体の幾つかが存在したとき、癌の可能性がある。癌のない患者は、彼等の血清中にこれらの抗体を持たなくとも良い。
【0022】
従って、本明細書には、新規血清検査のベースとして"癌関連自己抗体"と呼ばれる患者自身の抗体を用いて、肺癌を含むがこれに限らない、癌を検出する方法が提供されている。現在のところ、他の種類の癌に共通した、肺癌に対する血清検査は存在しない。他の代表的な癌の種類は、メラノーマ、腺癌、悪性神経膠腫、前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌、膵臓癌、甲状腺癌、結腸癌、直腸癌、脳悪性腫瘍、肝臓癌、乳癌、卵巣癌、固形癌、固形癌転移、血管線維腫、後水晶体線維形成症、血管腫及びKaposi肉腫を含む。他の癌の例は、本明細書を一読した当業者には自明であろう。
【0023】
幾つかの実施態様において、本発明は、直接に肺癌検出の問題を扱う。治療選択肢が制限されると、3/4以上の患者は後期肺癌にあるので、早期の検出は、毎年何万人もの生命を救う可能性があるであろう。従って、本発明を、以下の代表的、非限定の臨床的シナリオにおいて用いることができる:(1)癌の危険性の高い個人を割り出す;(2)画像化研究における非特異的損傷を持つ癌を有する患者を、癌を持たない患者から区別する;(3)予後を予想するために、癌を持つ患者を追跡する。
【0024】
単独で、又は組み合わせて、本明細書に開示した癌関連自己抗体マーカーは、癌(肺癌を含むがこれに限らない)の早期の検出、及び腫瘍の分子病期区分に重要な臨床的な有用性を提供する。代表的な自己抗体マーカーとしては、補体因子H(CFH)に対する自己抗体、α-グルコシダーゼ(GANAB)に対する自己抗体、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)に対する自己抗体、α-エノラーゼに対する自己抗体、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)に対する自己抗体、又はHSP 60(60kDa熱ショックタンパク質)に対する自己抗体を含むがこれらに限らない。更なる代表的自己抗体マーカーとしては、本明細書の以下に示す様に、表2−4に掲載した物質それぞれに対する自己抗体物質を含むがこれに限らない。
【0025】
また、ある患者を、肺癌を含むがこれに限らない、癌の高リスク群に区分けする方法を提供する。この方法は、患者から採取した検体中に癌関連自己抗体の有無及び/又は量を検出すること、及び、この患者から採取した検体中の癌関連自己抗体の有無及び/又は量に基づいて、この患者が肺癌の高リスク群に割り当てられるかどうか決定することを含むことができる。
【0026】
幾つかの実施態様において、癌を持つ又は癌の可能性のある患者の治療を管理する方法を提供する。この方法は、患者から採取した検体中に癌関連自己抗体の有無及び/又は量を検出すること、及び、この患者から採取した検体中の癌関連自己抗体の有無及び/又は量に基づいて、癌を持つ又は癌の可能性のある患者の治療を管理することを含む。
【0027】
本明細書に開示した自己抗体の有無又はレベルは、様々な動物組織において測定される。幾つかの実施態様において、この自己抗体は、動物組織又は体液中に検出される。幾つかの実施態様において、この自己抗体は、血漿、血清、全血液、粘液及び/又は尿を含む体液中に検出される。特別な実施態様において、この自己抗体は、血清中に検出される。
【0028】
患者から採取した検体中の癌関連自己抗体の有無及び/又は濃度は、本明細書に開示した方法において測定することができる。代表的な自己抗体マーカーとしては、補体因子H(CFH)に対する自己抗体、α-グルコシダーゼ(GANAB)に対する自己抗体、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)に対する自己抗体、α-エノラーゼに対する自己抗体、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)に対する自己抗体、又はHSP 60(60kDa熱ショックタンパク質)に対する自己抗体を含むがこれらに限らない。更なる、代表的抗体マーカーとしては、本明細書の以下に示す、表2−4に掲載した物質各々に対する自己抗体を含むが、これに限らない。しかしながら、本発明は、これらの自己抗体に限らない。癌又は癌の進行に関わる如何なる自己抗体も、本明細書に提供されたパネルに含めることができて、それは本発明の範囲内である。如何なる方法でも適切な方法を、以下に描写した実施例及び以下の区分II.C.に記載した方法を含むが、これに限らない、本明細書に開示した方法の使用において、適切な更なる癌自己抗体を同定するために用いることができる。
【0029】
前述の実施例から明らかなように、本明細書に開示した方法及び組成物は、癌のために患者をスクリーニングする上で、癌の早期検出の上で、及び癌の可能性がある又は既知の癌を持つ患者の治療を管理する上で有用である。例えば、本明細書に開示した方法及び組成物は、画像化又は腫瘍を検出するための他の方法の前に、患者をスクリーニングする上で有用であり、及び癌の高い危険度の患者又は癌のさらに危険度の高い患者を明確にする上で有用である。例えば、高危険度の臨床的特徴を持ち、及び自己抗体スクリーニングによって高い、又はより高い肺癌の可能性を示す患者をCT走査遂行に送ることができる。検査結果が癌の可能性が低いことを示唆する患者は、通常の追跡検査の間、自己抗体スクリーニングを用いて再評価することができる。
【0030】
本明細書に開示し、提供した方法及び組成物を用いて、非確定性肺結節が画像化研究において検出された場所で、スクリーニング試行で検出されたのか、又は他の兆候のために行われたのか決めることができる。自己抗体スクリーニングから癌の危険性が低いという検査結果を持つ患者は、きちんとした間隔での画像化研究で追跡できる。高危険度の臨床的特徴、及び悪性度の高危険度と関連する自己抗体スクリーン結果の両者を持つ患者には、即時の介入の必要を決定することができる。
本開示を一読した当業者には自明であるように、癌関連自己抗体の有無及び/又はレベルの測定のために適した如何なる方法も用いることができる。例えば、自己抗体を検出する方法は、精製したタンパク質を用いたイムノブロット、ELISA及び/又はタンパク質検定を含むことができる。
【0031】
幾つかの実施態様において、自己抗体は、ゲル電気泳動、及び結合パートナーの使用の様な当業者に既知の技術を用いて測定される。例えば、結合パートナーとして、補体因子H(CFH)、α-グルコシダーゼ(GANAB)、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)、α-エノラーゼ、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)、及び/又はHSP 60(60kDa熱ショックタンパク質)ポリペプチド、又はこの断片を用いることができる。更なる代表的な結合パートナーとして、以下に示す表2−4に掲載した物質を含むが、これらに限らない。
【0032】
さらに、抗体を結合パートナーとして用いることができる。本発明の抗体は、望みの標的分子を適切に認識する限り、如何なる単一クローン又はポリクローン抗体であることもできる。幾つかの実施態様において、抗体は、如何なる従来の抗体又は抗血清作成過程にも従い、ある免疫源に対して作成される。さらに、本明細書において免疫源として用いたタンパク質は、如何なる特別の種類の免疫源に対しても制限されない。例えば、本発明の自己抗体の断片は、免疫源として用いることができる。この断片は、タンパク質をコードする遺伝子断片の発現、タンパク質の酵素による処理、化学合成等々を含むが、これらに限らず、如何なる方法によっても得ることができる。
【0033】
抗体結合は、当分野で既知の技術(例えば、放射免疫検定、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、"サンドイッチ"免疫検定、免疫放射分析、ゲル拡散沈殿反応、免疫拡散検定、in situ免疫検定(例えば、コロイド状の金、酵素又は放射線同位元素標識を用いた)Westernブロット、沈降反応、凝集検定(例えば、ゲル凝集検定、血液凝集検定その他)、補体結合実験、免疫蛍光検定、タンパク質A検定、及び免疫電気泳動検定その他で検出される。代表的、免疫検定は米国特許5,599,677及び5,672,480に記載されており、この各々は、本明細書の引例に取り込まれている。実施例を含め本開示を閲覧して、当業者は、本発明の方法を行う上で有用な無数の特異的免疫検定形式及びこの変更物に通暁しているであろう。
【0034】
幾つかの実施態様において、自己抗体に結合する抗体は、1次抗体上の標識を検出することにより検出される。幾つかの実施態様において、この1次抗体は、1次抗体に対する2次抗体又は試薬の結合を検出することにより検出される。幾つかの実施態様において、2次抗体は標識されている。検出しうるシグナルを産生する方法には、本開示を一覧した当業者には明らかなように、既知の技術に加えて、放射活性標識(例えば、35S,125I,131I),蛍光標識、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、蛍光標識(例えば、フルオレセイン)等々の使用が含まれる。多くの方法が、免疫検定における結合の検出において知られており、本発明の範囲内である。
【0035】
幾つかの実施態様において、ある免疫検定は、自己抗体に対して特異的な抗体及び検知できるシグナルを作成する方法を含む。この抗体を、既知の技術に従い、支持台(ビーズ、板、又はスライド)に埋め込むことができて、液相において、試験検体と接触できる。その後、この支持台を液相から分離し、自己抗体の有無に関係する検知できるシグナルを吟味するために、支持台相又は液相を調べる。
【0036】
本発明は、自己抗体を検出するためのキットを含む。幾つかの実施態様において、このキットは、癌関連自己抗体に特異的抗体、上記のように検出できるシグナルを産生するために必要な試薬及び緩衝液を含む。幾つかの実施態様において、このキットは、全ての対照、検定を行うための指針、及び結果を解析し提示するために必要な如何なるソフトウェアも含む、検出検定を行うに必要な全ての構成要素を含む。
【0037】
本発明の方法を実行するための検出キットは、多くのやり方で製造できる。幾つかの実施態様において、検出キットは、固体支持台に結合した癌関連自己抗体に特異的に結合する抗体又は抗体断片、及び検出可能基と結合したこのような2次抗体又は抗体断片を含む。幾つかの実施態様において、開示を一覧した当業者には明白な様に、このキットはまた、緩衝試薬、及びタンパク質安定化剤のような補助的試薬を含み、及び(必要な場合には)検出可能基が部分(例えば、酵素基質)である検出可能シグナル産生システムの他の構成要素;検査におけるノイズ干渉を減少させるための試薬;対照試薬;検査を行うための装置;等々を含むことができる。
【0038】
幾つかの実施態様において、このキットは、1又はそれ以上の癌関連自己抗体に特異的な抗体又は抗体断片、及び検出可能基と結合した各抗体に対する特異的な結合パートナーを含む。上記の様な補助的試薬も同様に含まれることができる。検査キットは一般的に検査を行うための書面又は印刷した指示と共に1個の容器に全ての必要物を入れて、適切なやり方で包装することができる。
【0039】
幾つかの実施態様において、自己抗体の検出検定は自動化されている。免疫検定の自動化の方法は、米国特許5,885,530, 4,981,785, 6,159,750, 及び5,358,691に記載された方法を含み、これらは本明細書に取り込まれる。幾つかの実施態様において、結果の解析及び提示もまた自動化されている。このようにして、臨床医は、如何なる適切な方法又は装置を用いても、この結果を利用できる。従って、幾つかの実施態様において、データは臨床医に対して最も有用な形式で直接に提示されているので、臨床医は生のデータを理解する必要がない。臨床医は、患者の治療を最適化するために、この情報を直ちに利用することができる。本発明は、検定を行う実験室、情報提供者、医者、及び患者相互間での情報を受けとり、処理し、伝達することができる全ての方法を提供する。
【0040】
II.B. 治療法
本発明に従い、患者の癌を治療するための組成物及び方法を提供する。本発明は、幾つかの実施態様において、癌を有する患者に有効量の、癌関連自己抗体の免疫反応特性を有する抗体(幾つかの症例では、これは二重特異性抗体);癌関連自己抗体に対する抗原;又は癌関連自己抗体の免疫反応特性を有する抗体及び癌関連自己抗体に対する抗原の両者;の投与を含むことができる。
【0041】
幾つかの実施態様において、補体因子H(CFH)に対する抗体、α-グルコシダーゼ(GANAB)に対する抗体、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)に対する抗体、α-エノラーゼに対する抗体、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)に対する抗体、又はHSP60(60kDa熱ショックタンパク質)に対する抗体、又は上記抗体の如何なる組合せでも投与する。幾つかの実施態様において、投与は、補体因子H(CFH)抗原、α-グルコシダーゼ(GANAB)抗原、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)抗原、α-エノラーゼ抗原、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)抗原、又はHSP60(60kDa熱ショックタンパク質)抗原の投与を含むことができる。
【0042】
投与することができる更なる代表的な抗体としては、以下に表示する表2−4に掲載した物質のそれぞれに対する抗体を含むが、これらに限らない。これらの抗体と直ぐ上に掲載した物質との如何なる組合せも可能な様に、これらの抗体の如何なる組合せも投与することができる。更なる代表的な投与できる抗原は、以下に表示する表2−4に掲載した物質から調製した抗原を含むが、これらに限らない。これらの抗原と本明細書において直ぐ上に掲載した抗原との如何なる組合せも投与することができるように、これらの抗原の如何なる組合せも、投与することができる。従って、幾つかの実施態様において、上記の如何なる抗原の組み合わせも投与することができる。
【0043】
幾つかの実施態様において、他の腫瘍タンパク質(例えば、EGFR)及び/又はアジュバントと組み合わせて、1部は補体阻害抗体(CFH, CD46, CD55, CD35及びCD59)を含む、がこれに限らない、二重特異的抗体を患者に投与する。従って、本明細書において、幾つかの実施態様において、腫瘍タンパク質に対する他の抗体と組み合わせることができる補体阻害タンパク質を用いた二重特異的抗体による治療を提供する。
【0044】
幾つかの実施態様において、治療を受ける組織は、固形腫瘍、転移、又は他の種類の癌を有する患者の癌組織である。癌の一例は、肺癌である。他の癌の例として、メラノーマ、腺癌、悪性神経膠腫、前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌、膵臓癌、甲状腺癌、結腸癌、直腸癌、悪性脳腫瘍、肝癌、乳癌、卵巣癌、固形癌、固形癌転移、血管線維腫、後水晶体線維形成症、血管腫及びKaposi肉腫を含む。更なる癌の例は、本開示を一覧した当業者に自明であろう。
【0045】
幾つかの実施態様において、本発明は、固体腫瘍に対する従来の化学療法又は外科手術の様な他の治療と併せた方法、及び転移の確立を調節するための方法の実行に関する。本発明に従う治療上の組成物の投与を、化学療法又は外科手術の前、間、又は後に行うことができる。例えば、本発明を、長期の維持管理のために行うことができる。他の例として、本発明を、腫瘍組織が毒物攻撃に応答する時の化学療法処方計画の後に行うことができる。他の更なる例として、本発明を、転移に対する予防として固形腫瘍を除去する外科手術の後に行うことができる。
【0046】
治療試薬の投与の投薬範囲は、本明細書でさらに記載するように、試薬の形、及びその活性に依存することができて、及び疾患の症候が緩和される望みの効果を生み出すために十分多い量である。この投与量は、過粘着性症候群、肺水腫、鬱血性心不全等々の様な、不都合な副作用を起こすほど多量であるべきではない。一般的に、投与量は、患者の年齢、健康状態、性、及び疾患の程度と共に変化し、及び当業者はこれを決めることができる。また投与量を、如何なる合併症の場合にでも個々の医師が調節することができる。
【0047】
有効量は、癌関連自己抗体の免疫反応特性を有する抗体量及び/又は治療する組織に測定しうる効果を生み出すに充分な(癌関連自己抗体に対する)抗原量であることができる。幾つかの実施態様において、望ましい効果は転移の防止である。従って、治療は必ずしも特定の組織におけるものではなく、むしろ、全身的治療であることができる。従って、幾つかの実施態様において、有効量は、癌関連自己抗体の免疫反応特性を有する抗体量及び/又は全体として患者個人の望ましい状態(転移なしの様な、しかしこれに限らない)を維持するために十分な(癌関連自己抗体に対する)抗原量である。測定を、本明細書の以下に記載した実施例に記載した様に、又は当業者には既知の他の方法により行うことができる。
【0048】
本明細書に開示した治療組成物を、非経口で注射又は時間をかけた全身的注入により投与することができる。治療する組織は、一般的に全身的な投与により体中で組成物と接触することができて、従って、最も多くの場合、治療組成物の静脈投与により治療されるが、標的組織が標的分子を含む可能性があるところで、他の組織及び輸送方法が行われる。従って、治療組成物は、吸入され、又は、さもなければ肺に送られることができて、及び/又は静脈内に、腹腔内に、筋肉内に、皮下に、窩洞内に、経皮的に、投与されることができて、及び蠕動法により輸送できる。
【0049】
本発明の治療組成物は、例えば、単位用量の注射のように、通常静脈内に投与される。本発明の治療組成物に関して用いる用語"単位用量"は、患者に対する単位容量として適切な物理的に離散的単位を表すことができて、各単位は、必要な稀釈剤、即ち、担体又は媒体、と共に望ましい治療効果を生み出すために、規定量の活性物質を含む。
【0050】
この組成物を、投与処方物と両立する方法で、及び有効量を投与する。投与する量は、治療を受ける患者、活性成分を利用する患者の能力、及び期待する治療効果の程度に依存する。投与に必要な活性成分の正確な量は、医者の判断により、及び患者個人に特有である。投与に対する適切な治療計画もまた変わりうるが、最初の投与後、その後の注射又は他の投与による1時間以上の時間間隔での反復投与により類型化される。
【0051】
本明細書で用いるように、用語"医薬的に許容された"、"生理的に耐えられる"及びこの文法的変形は、組成物、担体、稀釈剤、及び試薬を表わす場合、互換的に用いられ、及びこれらの物質が、吐き気、目眩、急性胃蠕動等々の様な好ましくない生理的効果を生み出すことなく、哺乳動物に投与されうることを表す。幾つかの実施態様において、医薬的に許容された担体は、ヒトにおいて医薬的に許容される。
【0052】
その中に溶解した、又は分散した活性成分を含む医薬組成物の調製は、当技術分野に良く理解され、及び処方によって制限する必要がない。一般的にこのような組成物は、液体溶液又は懸濁物として注射可能物質として調製される;しかしながら使用前に、液体中で、溶液、又は懸濁物に適した固体型も調製することができる。また調製物を、乳化することができる。
【0053】
活性成分を、医薬的に許容された、及び活性成分と両立できる、及び本明細書に記載した治療方法における使用に適した量である賦形剤と混合することができる。適切な賦形剤は、例えば、水、塩、デキストロース、グリセロール、エタノール等々及びこの組合せである。さらに、もし望みならば、この組成物は、活性成分の有効性を増強する加湿剤又は乳化剤、pH緩衝剤等々の少量の補助物質を含むことができる。
【0054】
この治療組成物は、この中の成分の医薬的に許容された塩を含むことができる。医薬的に許容された塩としては、酸添加塩(ポリペプチドの自由アミノ基と形成)が含まれ、この酸添加塩は、例えば、塩酸又はリン酸の様な無機酸、又は例えば、酢酸、酒石酸、マンデル酸等々のような有機酸との反応で形成される。自由カルボキシル基との反応で形成される塩もまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、又は水酸化第2鉄のような無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインのような有機塩基に由来することができる。
【0055】
生理的に耐えうる担体は、当技術分野でよく知られている。液性担体の例は、活性成分及び水以外に物質を含まない滅菌した水溶液、又は生理的pH値におけるリン酸ナトリウムのような緩衝液、生理的食塩水、又はリン酸塩緩衝剤食塩水の様な両者を含む。さらに、水溶性担体は、1又はそれ以上の緩衝液塩、及び塩化ナトリウム、塩化カリウム、デキストロース、ポリエチレングリコール、及び他の溶液のような塩を含むことができる。
液体組成物はまた、水に加えて、及び水を除いて、液相を含むことができる。このような付加的な液相の例としては、グリセリン、綿の種子油のような植物油、及び水−油乳濁液がある。
【0056】
II.B.1. 抗原性ポリペプチド
幾つかの実施態様において、本発明は、癌関連自己抗体に対する抗原性ポリペプチドを含む治療組成物を提供する。代表的抗原性ポリペプチドとしては、補体因子H(CFH)、α−グルコシダーゼ(GANAB)、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)、α−エノラーゼ、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)、HSP60(60kDa熱ショックタンパク質)、又はこの断片又は類似体が含まれる。更なる、代表的抗原性ポリペプチドとしては、以下に示す表2〜4に掲載した物質を含むが、これらに限らない。
【0057】
ある実施態様において、本発明のポリペプチドは、約100以下のアミノ酸残基、好ましくは約60以下のアミノ酸残基、より好ましくは、約30以下のアミノ酸残基を含む。ペプチドは、線型又は環状である。従って本ポリペプチドが、免疫応答を生み出すために要求される配列を含む限り、本ポリペプチドは、抗原性ポリペプチドの天然のアミノ酸残基配列に同一である必要はないと言うことは理解すべきである。
【0058】
本ポリペプチドは、癌関連自己抗体に対する抗原性ポリペプチドの如何なる類似物、断片又は化学誘導体を含む。このようなポリペプチドは、使用上ある種の利点を有する限り、様々な変化、置換、挿入、及び欠失を受けることができる。この点において、癌関連自己抗体に対する抗原性ポリペプチドは、1又はそれ以上の変化がある天然の抗原の配列と、同一というよりむしろ、対応し、及び本明細書において定義する1又はそれ以上の検定において、癌関連自己抗体に対する抗原性ポリペプチドとして機能する活性を保持する。従って、ポリペプチドはペプチド誘導体の如何なる変異型でもあることができて、これはアミド、タンパク質との結合、環状化したペプチド、重合したペプチド、類似体、断片、化学変化したペプチド、等々の誘導体を含む。
【0059】
用語"類似体"は、癌関連自己抗体に対する抗原性ポリペプチドの配列に実質的に同一なアミノ酸残基配列を有する如何なるポリペプチドも含み、このポリペプチドの1又はそれ以上の残基は、機能的に類似した残基と保存的に置換され、及び本明細書に記載した抗原活性を示すポリペプチドである。保存的置換の例としては、イソロイシン、バリン、ロイシン又はメチオニンの様な1個の非極性(疎水性)残基の他の残基との置換;アルギニンとリジン、グルタミンとアスパラギン、グリシンとセリン間の様な1個の極性(親水性)残基と他の残基との置換;リジン、アルギニン又はヒスチジンのような1個の塩基性残基と他の残基の置換;又はアスパラギン酸又はグルタミン酸の様な1個の酸残基と他の残基との置換が含まれる。
ポリペプチドが必要な阻害活性を示すならば、成句"保存的置換"はまた、ペプチドの非誘導残基の代わりに化学的に誘導された残基の使用を含む。
【0060】
"化学的誘導体"とは、活性のある側鎖基の反応により化学的に誘導された1又はそれ以上残基を持つ本ポリペプチドを表す。このように誘導された分子としては、例えば、自由アミノ基が誘導されて、アミン塩酸塩、p−トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t−ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基、又はホルミル基を形成する分子が含まれる。自由カルボキシル基は、誘導化されて、塩、メチル及びエチルエステル、又は他の種類のエステル又はヒドラジドを形成することができる。自由ヒドロキシル基は、誘導化されて、O−アシル又はO−アルキル誘導体を形成することができる。ヒスチジンのイミダゾール窒素は、誘導化されてN-im-ベンジルヒスチジンを形成することができる。また化学的誘導体として、20種の標準アミノ酸の中1又はそれ以上の天然に生ずるアミノ酸誘導体を含むペプチドも含まれる。例えば:4−ヒドロキシプロリンは、プロリンと置換することができて;5−ヒドロキシリジンは、リジンと置換することが可能であり;3−メチルヒスチジンはヒスチンと置換することができ;ホモセリンはセリンと置換することができて;及びオルニチンはリジンと置換することができる。必要な活性が維持される限り、本発明のポリペプチドはまた、その配列が本明細書に示されたポリペプチド配列と比較して、1又はそれ以上の残基の付加、及び/又は残基の欠失を持つ如何なるポリペプチドをも含む。用語"断片"は、本明細書に開示したポリペプチドより短いアミノ酸残基の配列を有する如何なる本ペプチドをも表す。
【0061】
本発明のポリペプチドが、癌関連自己抗体に対する抗原性ポリペプチドの配列と同一でない配列を有する場合、一般的に、1又はそれ以上の保存性の又は非保存性の置換が行われたためであり、通常約30数%以下の、及び好ましくは約10数%以下のアミノ酸が置換される。本発明のポリペプチドを標識又は固体マトリクス又は担体に都合良く結合することができる"リンカー(連結子)"を提供する目的で、さらなる残基をポリペプチドのどちらかの末端に付加することができる。
【0062】
アミノ酸残基リンカーは、通常、少なくとも1残基であり、及び40又は40以上の残基、よりしばしば1から10残基であることができるが、抗原性エピトープを形成することはできない。リンキング(連結)に用いられる一般的なアミノ酸残基は、チロシン、システイン、リジン、グルタミン酸及びアスパラギン酸などである。さらに、本ポリペプチドは、もし他に明記しなければ、末端−NH2アシル化、例えば、アセチル化又はチオグルコール酸アミド化;末端−カルボキシルアミド化、例えば、アンモニア、メチルアミン及び類似の末端修飾;により修飾された配列により、癌関連自己抗体に対する抗原性ポリペプチドと異なることができる。よく知られているように、プロテイナーゼ消化による感受性を減少させるために、末端修飾は有用であり、従って溶液中、特にプロテアーゼが存在できる生体体液中におけるポリペプチドの半減期を延ばす。この点で、ポリペプチド環状化もまた、有用な末端修飾であり、及び環状化により作られた安定した構造のために役に立つことができる。
【0063】
本発明の如何なるペプチドも、医薬的に許容された塩の形で用いることができる。本発明のペプチドと反応しうる適切な酸としては、3フッ化酢酸(TFA)、塩酸(HCl)、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、リン酸、酢酸、などの無機酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アントラニル酸、ケイ皮酸、ナフタレンスルホン酸、スルファニル酸が含まれる。
【0064】
本発明のペプチドと塩を形成することができる適切な塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、等々の様な無機塩基;モノ−、ジ−、及びトリ−アルキル及びアリールアミン(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン等々)、及び任意に置換したエタノールアミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、等々)の様な有機塩基が含まれる。
【0065】
本明細書において、また本ペプチドと表わす、本発明のペプチドは、組み換えDNA技術を含む、ポリペプチド技術の分野で既知の如何なる技術によっても合成することができる。固相Merrifield型合成の様な、合成化学技術は純度、抗原特異性、好ましくない副産物の無い、容易な産生などの理由で、使うことができる。入手可能な多くの技術のまとめは、以下の引例に見出される:Steward 他、 "Solid Phase Peptide Synthesis", W. H. Freeman Co., San Francisco, 1969; Bodanszky, 他., "Peptide Synthesis", John Wiley & Sons, Second Edition, 1976; J. Meienhofer, "Hormonal Proteins and Peptides", Vol. 2, p. 46, Academic Press (New York), 1983; Merrifield, Adv Enzymol, 32:221-96, 1969; Fields 他., Int. J. Peptide Protein Res., 35:161-214, 1990;及び固相ペプチド合成に対する 米国特許4,244,946、及び古典的溶液合成に対して、Schroder 他., "The Peptides", Vol. 1, Academic Press (New York), 1965、これらの各々は、本明細書の引例に取り込まれている。このような合成に利用できる適切な保護基は上記のテキスト及びJ. F. W. McOmie, "Protective Groups in Organic Chemistry", Plenum Press, New York, 1973に記載されており、後者は本明細書の引例に取り込まれている。
【0066】
一般的に、固相合成法は、成長するペプチド鎖への1又はそれ以上のアミノ酸残基又は適切な保護されたアミノ酸残基の遂次的付加を含む。通常、第1のアミノ酸残基のアミノ基又はカルボキシル基は、適切な、選択的に除去できる保護基により保護されている。異なる、選択的に除去できる保護基が、リジンの様な反応性のある側鎖基を含むアミノ酸のために用いられる。
【0067】
見本として、固相合成を用いると、保護されてないアミノ基又はカルボキシル基を介して、保護された又は誘導されたアミノ酸を不活性な固体支持台に結合させる。その後、アミノ基又はカルボキシル基の保護基を選択的に除き、及び(適切に保護されたアミノ基又はカルボキシル基を有する)次ぎに配列されるアミノ酸を混合し、既に固体支持台に付加する残基とアミド結合を作るために適切な条件で反応させる。その後、新たに付加したアミノ酸残基からアミノ基又はカルボキシル基の保護基を取り除き、及び次のアミノ酸(適切に保護した)を付加し、等々である。全ての望みのアミノ酸が適切な配列で連結した後、あらゆる残存する末端及び側鎖基の保護基(及び固体支持台)を順番に又は同時に取り除き、最終的線型のポリペプチドを得る。
【0068】
上記の様な例のために作成して得られた線型のポリペプチドは、反応して、対応する環状のペプチドを作ることができる。ペプチドを環状化する方法の例は、Zimmer 他., Peptides 1992, pp. 393-394, ESCOM Science Publishers, B. V., 1993に記載されている。一般的に、tert-ブトキシカルボニルが保護するペプチドメチルエステルを、メタノールに溶解し、水酸化ナトリウム溶液を加え、この混合物を20℃で反応させ、メチルエステル保護基を加水分解により取り除く。溶媒を蒸発させた後、tert-ブトキシカルボニルが保護するペプチドを、酸性にした水溶媒から酢酸エチルで抽出する。次ぎにtert−ブトキシカルボニル保護基をジオキサン共溶媒中で穏和な酸性条件で除く。ジクロロメタン及びジメチルホルムアミド混合液中において、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール及びN−メチルモルホリンの存在下で、線型ペプチドの希薄溶液をジシクロヘキシルカルボジイミドと反応させることにより、得られた自由アミノ末端及び自由カルボキシ末端を持つ保護されてない線型ペプチドを、対応する環状ペプチドに変換する。得られた環状ペプチドは、その後、クロマトグラフィーにより精製される。
【0069】
II.B.2. 抗体
本発明はまた、幾つかの実施態様において、癌関連自己抗体及び自己抗体を単離する方法及び/又は自己抗体と同じ免疫反応特性(例えば、抗原認識特性)を有する抗体を作成する方法を提供する。このような特性を有する抗体は、"自己抗体類似体"と表すことができる。
従って、成句"癌関連自己抗体の免疫反応特性を有する抗体"は、本明細書に開示した癌関連自己抗体それ自体又は自己抗体類似体を含むことができるが、これらに限らない。さらに、癌関連自己抗体の免疫反応特性を有する抗体は、本明細書において前述のように二重特異的抗体であることができる。
【0070】
自己抗体類似体を作成し、及び自己抗体を単離する代表的方法は、本明細書に含まれ、実施例に含まれる。代表的抗体としては、それぞれ、補体因子H(CFH)、α-グルコシダーゼ(GANAB)、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)、α-エノラーゼ、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)、及び/又はHSP 60(60kDa熱ショックタンパク質)に対する抗体が含まれるが、これらに限らない。更なる代表的抗体としては、それぞれ、本明細書の以下に示す表2〜4に掲載する物質に対する抗体が含まれるが、これらに限らない。
【0071】
本明細書で集合名詞として種々の文法形態で用いる、用語"抗体又は抗体分子"は、免疫グロブリン分子及び/又は免疫グロブリン分子の免疫的に活性部分、即ち、抗体結合部位又はパラトープ(抗原結合部位)を含む分子、の集団を表わす。"抗体結合部位"は、抗原と特異的に結合する重鎖及び軽鎖変異及び超変異領域を含む抗体分子のその構造部分である。キャメリド(ラクダ科の動物、例えば、ラマ)から得られる重鎖のみの抗体及び抗体断片もまた含まれる。このような抗体及び抗体断片を作成する一般的方法は、その全体が本明細書の引例に取り込まれている、Frenken, Leon G.J., 他, Journal of Biotechnology 78 (2000) 11-21に提供される。
【0072】
本発明に従う使用のための抗体の例は、免疫グロブリン分子のFab, Fab', F(ab')2 及び F(v)のような当技術分野で既知の部分、及び抗体断片と呼ばれる部分をはじめ、完全な免疫グロブリン分子、実質的に完全な免疫グロブリン分子、1本鎖免疫グロブリン、又は抗体、パラトープを含む部分である。
種々の文法形態で用いる、成句"モノクローナル抗体"は、特定のエピトープとの免疫反応できる1種類の抗体結合部位を含む抗体分子の集合を表す。従って、モノクローナル抗体は、一般的に如何なる免疫反応を行うエピトープに対しても単一の結合親和性を示す。従って、モノクローナル抗体は、各々は異なるエピトープに対して免疫特異的である複数の抗体結合部位を持つ抗体分子、例えば、二重特異的モノクローナル抗体、を含むことができる。
【0073】
モノクローナル抗体は、一般的に、唯1種類の抗体分子のみを分泌(産生)するハイブリドーマと呼ばれる単一細胞のクローンから産生される抗体から構成される。このハイブリドーマ細胞は、抗体産生細胞とミエローマ又は他の自立増殖能を持つ細胞株との融合により形成される。このような抗体の調製は最初に、その記載が引例に取り込まれている、Kohler and Milstein, Nature 256:495-497 (1975)により記載された。更なる方法は、Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, CRC Press, Inc. (1987)に記載されている。このように調製されたハイブリドーマの上清を、癌関連自己抗体に対する抗原と免疫反応する抗体分子(即ち、自己抗体類似物)を求めてスクリーニングすることができる。
簡単に述べると、モノクローナル抗体組成物を調製するためのハイブリドーマを作成するために、Cheresh 他., J. Biol Chem, 262:17703-17711 (1987)に記載されているように、ミエローマ又は他の自立増殖能のある細胞株は、抗原により高度免疫化された哺乳動物の脾臓から得たリンパ球と融合する。
【0074】
ハイブリドーマ作製のために用いるミエローマ細胞株は、リンパ球と同じ動物種から作られると言うことが示唆されている。一般的に、マウス系統129 GIX+が典型的哺乳動物である。本発明に用いられる代表的マウスミエローマとしては、ATCCから入手可能な、ヒポキサンチンアミノプテリンチミジン感受性(HAT)細胞株P3X63-Ag8.653及びSp2/0-Ag14及びそれぞれCRL 1580及びCRL 1581と表されるManassas及びVirginiaがある。
脾細胞は一般的に、ポリエチレングリコール(PEG)1500を用いて、ミエローマ細胞と融合される。融合したハイブリッドは、HATに対する感受性により選択される。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、実施例に記載する酵素結合免疫吸着検定(ELISA)を用いて同定される。
【0075】
本発明のモノクローナル抗体をまた、適切な特異性を持つ抗体分子を分泌するハイブリドーマが在る栄養培地を含むモノクローナルハイブリドーマ培養を開始することにより作製することができる。ハイブリドーマが抗体分子を培地中に分泌するに十分な条件及び時間、培養は維持される。その後抗体を含む培地を集める。その後抗体分子を、既知の技術によりさらに単離することができる。これらの組成物を調製するに有用な培地は、当技術分野で有名であり、市場で入手可能であり、及び合成培地、近交系マウス等々を含む。合成培地の例は、4.5gm/lグルコース、20mMグルタミン、及び20%仔牛血清を補強したDulbeccoの最小必須培地(DMEM-Dulbecco他、Virol 8:396(1959))である。近交系マウス系統の例は、Balb/Cである。
モノクローナル抗体、ハイブリドーマ細胞、又はハイブリドーマ細胞培養を産生する他の方法も既知である。例えば、Sastry, 他, Proc Natl Acad Sci USA 86:5728-5732 (1989); 及び Huse他, Science 246:1275-1281 (1989)に記載された様な、免疫学的レパートリーからモノクローナル抗体を単離する方法を参照のこと。
【0076】
ハイブリドーマ細胞、及び本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を含む培養もまた、本発明に提供した。従って、本発明は、幾つかの実施態様において、実施例に記載するように癌関連自己抗体の免疫反応特性を有するモノクローナル抗体(即ち、自己抗体類似体)を提供する。
もしあるモノクローナル抗体が、前もって選択した標的分子と本発明のモノクローナル抗体が結合することを妨げるかどうか確認することにより、前者が後者と同じ(即ち、等価な)特異性(免疫反応特性)を持つかどうかについて、必要以上の実験無しに、また決定することが可能である。固相に存在する標的分子との結合に対する標準的競合検定において、本発明のモノクローナル抗体による結合の減少により示されるように、もし検定するモノクローナル抗体が、本発明のモノクローナル抗体と競合するならば、2種のモノクローナル抗体は、同一の、又は密接に関係した、エピトープと結合する可能性がある。
【0077】
あるモノクローナル抗体が、本発明のモノクローナル抗体の特異性を有するかどうか決定する更なる他の方法は、本発明のモノクローナル抗体を通常反応性のある標的分子とプレインキュベートし、その後検定するモノクローナル抗体を加えて、検定するモノクローナル抗体が標的分子に結合する活性が阻害されるかどうか決定することである。もし、検定するモノクローナル抗体が阻害されるならば、これは、本発明のモノクローナル抗体と同じ、又は等価な、エピトープ特異性を持つ可能性がある。
あるモノクローナル抗体が、本発明のモノクローナル抗体の特異性を有するかどうか決定する他の方法は、問題となる抗体のCDR(complementarity determining region, 相補性決定領域)領域のアミノ酸残基配列を決定することである。そのCDR領域に同一の、又は機能的に等価なアミノ酸残基配列を有する抗体分子は、同じ結合特異性を有する。ポリペプチドの配列決定の方法は、当技術分野において既知である。
【0078】
抗体の免疫特異性、その標的分子結合能、及び抗体がエピトープに対して示す結果としての親和性は、抗体が免疫反応するエピトープにより定義される。このエピトープ特異性は、少なくとも部分的には、抗体を構成する免疫グロブリンの重鎖の可変領域のアミノ酸残基配列、及び部分的には、軽鎖可変領域アミノ酸残基配列により定義される。用語"結合特異性を有する"又は"結合優先性を有する"の使用は、等価なモノクローナル抗体が、同一又は類似の免疫反応(結合を含め)特性を示し、及びあらかじめ選択した標的分子への結合に対して競合することを示す。
【0079】
特に抗体をヒトの治療に用いることができるので、ヒト型化モノクローナル抗体は、囓歯類モノクローナル抗体より特に利点を提供する。特に、ヒト抗体は、"外来の"抗原と同じ程急速に循環から除去されず、及び外来の抗原及び外来の抗体のようには免疫系を活性化しない。"ヒト型化"抗体を作成する方法は、一般的に当技術分野では既知であり、本発明の抗体に直ちに適用することができる。従って、本発明は、幾つかの実施態様において、抗体の抗原との結合能を実質的に干渉することなく、ヒト免疫系の構成要素を導入するために、グラフト化(接ぎ木)によりヒト型化した本発明のモノクローナル抗体を提供する。ヒト型化抗体はまた、Medarex of Annandale, New Jersey, United States of America (マウス) 及びAbgenix, Inc., of Fremont, California, United States of America (マウス)から得られるように、ヒト型化抗体を作製するために、動物工学を用いて作製することができる。
【0080】
抗体、特にモノクローナル抗体、及びより特別に1本鎖モノクローナル抗体、を作製するための分子クローニング法の使用をもまた、本明細書において提供する。1本鎖抗体の作製は、当該技術分野で記載されており、その内容が引例に取り込まれている米国特許5,260,203を参照のこと。このために組合せ免疫グロブリンファージミド又はファージディスプレイライブラリを、免疫化した動物の脾臓から分離したRNAから作製し、及び適切な抗体を発現するファージミドを内皮組織上にパンニングして選択する。この方法はまた、ヒト型化抗体作製のために使用することができる。従来のハイブリドーマ技法に優るこの方法の長所は、約10倍の抗体が作製できること及び1回でスクリーンできること、及び新しい特異性が、1本鎖上のH及びL鎖の組合せにより生まれ、これはさらに適切な抗体を見出す機会を増す。従って、本発明の抗体、又は本発明の抗体の"誘導体"は、本明細書に記載した抗体の軽鎖及び重鎖の集まった可変領域の結合特異性及び親和性に実質的に類似した結合特異性及び親和性を持つ1本鎖ポリペプチド鎖結合分子に関する。
【0081】
"Fv"は、完全な抗原認識部位及び抗原結合部位を含む最小の抗体断片である。2本鎖Fv種においてこの領域は、1本重鎖及び1本軽鎖可変領域の2量体を堅い非共有結合の会合状態で含む。1本鎖Fv種(scFv)において、2本鎖Fv種の2量体に類似した"2量体"構造で軽及び重鎖が連結することができるように、可変性のあるペプチドリンカーにより、1本重鎖及び1本軽鎖可変領域を、共有結合により連結することができる。各可変領域の3個のCDRが相互作用して、VH-VL2量体表面の抗原結合部位を定義するのはこの配置においてである。集合的に、6個のCDRは、抗体に対する抗原結合特異性を与える。しかしながら、単一可変領域(又は抗原に特異的な唯3個のCDRを含むFvの半分)でさえ全結合部位より低い親和性であるが、抗原を認識及び結合する活性を有する。ScFvの総説のために、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照。
【0082】
幾つかの実施態様において、本明細書に、新規自己抗体抗原を発見するための道具として、抗体ファージディスプレイライブラリの作製を提供する。様々な病期及び様々な組織像の腫瘍を持つプールした肺癌患者からの末梢血リンパ球又はリンパ節からのmRNAを用いて、抗体ファージディスプレイライブラリを作製し、これはその後、腫瘍タンパク質に結合するファージ抗体を同定する目的で腫瘍(例えば、肺腫瘍タンパク質)に対してスクリーニングする。その後、ファージ発現の抗体を用いて、アフィニティーキャプチャー又はイムノブロット法を用いて、抗原タンパク質を同定する。これらの癌抗体ファージライブラリの作製及び利用は、補充可能な供給源を提供する。
【0083】
その後、癌患者及び非癌対照群の集団の血清中のこれらの抗原に対する自己抗体の広がりを測定して、同定した抗原ポリペプチドを確認する。この確認工程は、次の血清自己抗体検査に用いられる全ての抗原は、ライブラリにおけるファージ抗体により偶然結合したタンパク質とは反対に、真に癌(肺癌に限らない)自己抗体であることを保証するであろう。この方法は、確認した腫瘍自己抗原のパネルを含む抗原マイクロアレイ上で患者の血清をインキュベートし、その後結合したヒト免疫グロブリンを検出する様々な方法の1つを用いて免疫反応のパターンを決定することにより、行うことができる。免疫反応のパターンは、肺癌に限らない、癌の存在を示すことができる自己抗体署名として用いることができる。
【0084】
III. 実施例
本発明は、本明細書において実施例を参照してより詳細に開示される。以下代表的実施態様を示す。しかし本発明はこれらと異なる形で具体化可能であり、本明細書に示した実施態様に制限されるように解釈すべきではない。むしろこれらの実施態様は、開示が十分かつ完全であるように提供され、当業者には実施態様の範囲を完全に伝達するであろう。
以下の実施例は、病期初期の肺癌患者における機能的自己抗体の発見に関する。
【0085】
肺癌は最も普通の癌であり、患者の大多数は疾患が進行した状態にあるので、全体としての5年生存率は僅か15%である。本実施例は、早期検出方法として、病期初期を検出しうる分子マーカーの発見、及び新しい治療標的の追求に関する。進行した状態の患者に存在せず病期I肺癌患者に存在する自己抗体について研究を行った。実施例1〜4において、28人の病期I非再発性非小細胞肺癌(NSCLC, non-small cell lung carcinoma)患者の14人(50%)は、補体因子H(CFH)に対する自己抗体に対して陽性であったが、28人の後期NSCLC患者の中3人のみが自己抗体陽性(p=0.003)であった。C3b因子の沈殿は細胞溶解性攻撃複合体の形成をもたらすが、補体因子H(CFH)は、このC3b因子を不活性化する補体防御性タンパク質である。A549肺腺癌細胞に抗CFH抗体陽性患者からのIgGを添加すると、抗CFH抗体を欠く患者からのIgGと比較して、細胞表面上の補体活性化を導く(p=0.01)。これらの発見より初めて、CFH自己抗体が初期の肺癌の分子マーカーであること、及びCFH自己抗体が腫瘍細胞の補体活性化を増すことにより腫瘍増殖を抑える役を果たし得るだろうことが示唆された。
実施例5は、癌患者におけるα-グルコシダーゼ(GANAB)自己抗体の発見に関し、癌に対する分子マーカーの他の例を提供する。
実施例6及び7は、更なる自己抗体の発見に関し、癌に対するさらなる分子マーカーの例を提供する。
【0086】
実施例1
モノクローナル抗体は、多くの悪性腫瘍において、治療試薬として用いられているが、腫瘍に対する宿主免疫応答は、主に細胞免疫によると考えられる(O. J. Finn, J Immunol 178, 2615 (Mar 1, 2007))。非小細胞肺癌(NSCLC)及び大部分の腫瘍における体液性免疫は、良く特徴付けられて居らず、自己抗体は、一般的に、特徴的な臨床的表現形質と関連づけられてない。初期の肺癌患者は、進行した状態の患者が持たない腫瘍細胞タンパク質に対する自己抗体を有するかも知れないこと、及びこれらの自己抗体が、転移を制限する上で機能的働きをするかも知れないことが、仮定された。
この問題に取り組む第1段階として、進行した状態の非小細胞肺癌(NSCLC)の5人の患者のプールした血清を含むイムノブロットを作製した。このブロットを、少なくとも2年間再発のない10人の初期の非小細胞肺癌(NSCLC)患者からの個人個人の血清検体をプローブとして探索した。抗体抗原複合体を検出するために、2次抗ヒトIgG西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)結合物をプローブとしてイムノブロットを探索した。幾つかの異なる免疫反応性バンドが検出されたが、初期疾患の10人の患者中4人に150kDaバンドが見られた(図1A)。
【0087】
ブロット上の免役反応性150kDaバンドはCoomasie blueで染色した隣のゲルレーンのバンドを示すイムノブロットとの位置合わせにより同定し、バンドを切り出し、及びこのタンパク質を、ゲル内トリプシン消化、MALDI-TOFペプチド指紋解析、及びMS/MS配列決定で調べた。配列解析により、このバンドが、セルロプラスミン及び補体因子3,4A及びHの混合と同定された。精製したセルロプラスミン、及び補体因子3及びHに対するイムノブロット解析が用いられ、免疫反応性タンパク質として補体因子H(CFH)が同定された。補体因子H(CFH)は、補体カスケードにおいて、C3コンベルターゼ(転化酵素)の形成及び活性を阻害するヒト血漿タンパク質である。S. Rodriguez de Cordoba, J. Esparza-Gordillo, E. Goicoechea de Jorge, M. Lopez-Trascasa, P. Sanchez-Corral, Mol Immunol 41, 355 (Jun, 2004)。以前の研究により、補体因子H(CFH)が幾つかのNSCLC細胞株から分泌され、膜に結合し、補体を介する細胞毒性から腫瘍細胞を守る防御タンパク質の1つとして機能することが示された。D. Ajona他, Cancer Res 64, 6310 (Sep 1, 2004); D. Ajona, Y. F. Hsu, L. Corrales, L. M. Montuenga, R. Pio, J Immunol 178, 5991 (May 1, 2007)。これは、初期のNSCLCにおける補体因子H(CFH)に対する自己抗体の最初の報告である。
【0088】
実施例2
補体因子H(CFH)自己抗体が後期の患者から初期の患者を識別するために用いることができるかどうか決めるために、精製した補体因子H(CFH)をゲルに流し、膜にブロットし、膜を28人の病期Iの患者、28人の病期III/IVの患者からの血清、及び12人の癌のない対照群からの血清をプローブとして探索した。図1Bに代表的検体の結果を示す。全体として、17人のアデノカルシノーマ(ADC)患者の中10人、及び11人の扁平上皮癌(SCC)患者の中4人を含め、28人の非再発病期I非小細胞肺癌(NSCLC)患者の14人(50%)は、CFH自己抗体に対して陽性であり、他方16人のADC患者中2人、及び12人のSCC患者中1人を含め、28人の後期NSCLC患者の3人(10.7%)がこの自己抗体陽性であった。初期と後期のNSCLCにおけるCFH自己抗体の発生率の差異は、統計的に有意であった(p=0.003)。癌のない12人中、誰もCFH自己抗体を持たなかった。
【0089】
実施例3
補体因子H(CFH)は、肝臓、単球及びマクロファージにより産生され、分泌する補体阻害タンパク質である。またこれは、肺、結腸、卵巣、膀胱、及び神経膠細胞起源の癌を含め癌細胞と関係することが見出された。 D. Ajona et al., Cancer Res 64, 6310 (Sep 1, 2004); D. Ajona, Y. F. Hsu, L. Corrales, L. M. Montuenga, R. Pio, J Immunol 178, 5991 (May 1, 2007); E. Wilczek et al., Int J Cancer 122, 2030 (May 1, 2008); S. Junnikkala et al., Br J Cancer 87, 1119 (Nov 4, 2002); Z. Z. Cheng et al., Clin Chem 51, 856 (May, 2005); P. Gasque, A. Thomas, M. Fontaine, B. P. Morgan, J Neuroimmunol 66, 29 (May, 1996); S. Junnikkala et al., J Immunol 164, 6075 (Jun 1, 2000)。CD35 (CR1), CD46 (MCP), CD55 (DAF), 及びCD59 (プロテクチン)を含め、CFH及び他の補体調節タンパク質は、補体系による攻撃から腫瘍細胞を防御する。K. Jurianz 他, Mol Immunol 36, 929 (Sep-Oct, 1999)。CFHは、液相において及び膜上で、重要な補体成分C3bに結合することにより補助的な補体経路を阻害する。S. Rodriguez de Cordoba, J. Esparza-Gordillo, E. Goicoechea de Jorge, M. Lopez-Trascasa, P. Sanchez-Corral, Mol Immunol 41, 355 (Jun, 2004)。これは、因子Iを介するタンパク質分解及びC3b不活性化のコファクターとして働き、及び膜上にC3bを産生するC3bBbコンベルターゼの崩壊を加速する。S. Rodriguez de Cordoba, J. Esparza-Gordillo, E. Goicoechea de Jorge, M. Lopez-Trascasa, P. Sanchez-Corral, Mol Immunol 41, 355 (Jun, 2004). C3bの沈殿は細胞溶解性膜攻撃複合体の形成を開始する。K. M. Murphy, P. Travers, M. Walport, Janeway's Immunobiology (Garland Science, London, England, ed. 7th, 2007)
【0090】
非小細胞肺癌(NSCLC)患者に見出されるCFH自己抗体が細胞膜上のC3b沈殿を増加することができるかどうか調べるために、2種類の肺癌細胞株(A549細胞株とH661細胞株)を用いて、C3沈殿検定を行った。D. Ajona 他., Cancer Res 64, 6310 (Sep 1, 2004)。この検定は、C3,C3b及びC3bの分割産物であるiC3bを認識する放射標識したモノクローナル抗体を用いる。この実験の前提条件としてA549細胞株はCFHを発現し(図2A)、分泌し(図2B)、及びCFHを結合する(図2C)が、H661細胞株は、これらを行わず陰性対照として用いることができるという、以前の観察(D. Ajona et al., Cancer Res 64, 6310 (Sep 1, 2004))を確認した。
【0091】
その後、CFH自己抗体を有する初期疾患の患者3人(2患者はアデノカルシノーマ(ADC)であり、及び1患者は扁平上皮癌(SCC)である)及びこの自己抗体を持たない進行した状態の疾患の患者3人(2患者はADCであり、1患者はSCCである)を選択した。IgG分画を各患者の血清から抽出し、正常、対照(補体源として用いた)血清の稀釈物に別々に入れた。各検体の半分をA549細胞に加え、あとの半分をH661細胞に加えた。CFH自己抗体を持つ患者からのIgGは、CFH自己抗体を持たない患者からのIgGと比較して、A549細胞表面上のC3の沈殿を有意に増加させた(p=0.01)。H661陰性対照細胞株において、CFH自己抗体存在下のC3沈殿はCFH自己抗体非存在下のC3沈殿と区別が付かなかった(p=0.19)。(図3)
【0092】
実施例4
補体因子H(CFH)の主要な機能は、C3bの除去及びC3コンベルターゼC3bBbの不活性化を加速することによる、補体を介した溶解を阻害することである。S. Rodriguez de Cordoba, J. Esparza-Gordillo, E. Goicoechea de Jorge, M. Lopez-Trascasa, P. Sanchez-Corral, Mol Immunol 41, 355 (Jun, 2004)。補体阻害タンパク質に対する抗体の中和は、C3b沈殿を増加させ、他の補体防御タンパク質に対する抗体と共同して、このタンパク質を発現し結合する細胞株における細胞毒性を増加させることが示されてきた。K. Jurianz et al., Mol Immunol 36, 929 (Sep-Oct, 1999)。幾人かの患者が抗CFH抗体を生み出し、及び幾人かは生み出さない理由は、未解決のままである。以前の研究は、溶血性尿毒症症候群(HUS)の患者におけるCFH自己抗体を記載した。M. A. Dragon-Durey et al., J Am Soc Nephrol 16, 555 (Feb, 2005)。この研究におけるどの患者もどんな腎臓疾患を持たないことは、肺癌患者におけるCFH自己抗体は、溶血性尿毒症症候群(HUS)で認識されるエピトープとは異なるエピトープを認識することを示唆する。半数はCFH自己抗体を持つ患者、及び半数は持たない患者由来の、8個の腫瘍の免疫組織化学により、全ての検体において、腫瘍細胞染色が拡散することが分かった。CFHに対して免疫染色した肺腺癌の代表的切片を図4に示す。全ての腫瘍は、CFHを発現するが、全ての患者が抗体を生み出さないという事実は、単なるCFH発現は、患者に抗体応答を生み出すために十分ではないこと、及び抗原がどのように免疫系に提示されているかが重要であることを示唆する。
【0093】
実施例1〜4の考察
肺癌の様な、癌の早期検出は、困難な問題として残る。疾患を検出し表現型分けするだけではなく、適切な標的を持つ治療を決めることができる可能性のある新規分子マーカーは莫大な臨床上の恩恵をもたらすであろう。我々は、2つの理由でNSCLC患者における自己抗体を観察することを選択した。第1に、モノクローナル抗体が腫瘍治療に用いられる、及び我々は何人かの患者は、腫瘍の挙動を変えるために自己抗体を利用しているかも知れないと仮定した。第2に、自己抗体は、理論的には、特異的、異常な標的を同定することができて、従って、診断上用いることができるかも知れない。本研究は、腫瘍阻害の可能性のあるメカニズムに注意を向ける自己抗体を発見するための最初の研究である。
【0094】
実施例1〜4において、初期肺癌の患者の半数は、補体因子H(CFH)自己抗体を持っていた。CFH自己抗体を示唆する発見は、初期疾患のためのマーカーとして用いることができる。このデータはまた、CFH自己抗体は、腫瘍細胞上にC3関連タンパク質の沈殿を増加させたことを示す、が以前の報告では、1個の補体阻害タンパク質の不活性化は、細胞毒性を起こすために十分ではないことを示唆する。D. Ajona, Y. F. Hsu, L. Corrales, L. M. Montuenga, R. Pio, J Immunol 178, 5991 (May 1, 2007); S. Junnikkala et al., J Immunol 164, 6075 (Jun 1, 2000); S. Varsano, L. Rashkovsky, H. Shapiro, D. Ophir, T. Mark-Bentankur, Clin Exp Immunol 113, 173 (Aug, 1998)。従って、CFH自己抗体は、宿主防御メカニズムにおいて一役果たし、腫瘍増殖の制限、及び転移の抑制をもたらすと信じられる。
【0095】
実施例1〜4に用いられる材料及び方法
患者:
最初の自己抗体スクリーンにおいて、病期III又はIVの非小細胞肺癌(NSCLC)患者5人の血清検体をプールした、及びこのプールを以下の記載のようにイムノブロットした。他の、4人の男性及び6人の女性で、平均年齢66.6歳(年齢範囲57〜72歳)を含む、初期NSCLC患者10人からの血清を別々にブロットに対するプローブとして用いた。肺癌患者の補体因子H(CFH)免疫ブロット測定に対して、28人の患者:病期IのNSCLCを持つ14人の男性及び14人の女性で、平均年齢65.5歳(年齢範囲51〜78歳);及び28人の患者:病期III又はIVのNSCLCを持つ16人の男性及び12人の女性で、平均年齢64歳(年齢範囲41〜83歳);の個人個人の血清検体を用いた。他の、癌を持たない12人の対照患者もまた登録した。本研究にエントリーするために選んだ全ての癌患者は、以下の基準を満たした:1)組織標本からNSCLCと確認した;2)肺癌のために前もって化学療法又は放射線を受けてない;及び3)初期患者に対して、診断後少なくとも2年間再発の証拠がない。全ての血清は、Duke University Medical Center, Durham, North Carolina, USA、での治療前に得た。施設の審査委員会は、医学研究に対する生物試料の採取前に、患者からインフォームドコンセントを得た。血清は、液体窒素で凍結し、−80℃で保存した。
【0096】
免疫ブロット解析:
後期NSCLC患者からのヒト血清の解析のために、血清プールの15μl部分を、製造者の指示に従い、最初、アルブミン及びIgG除去キット(GE Healthcare, Piscataway, New Jersey, USA)で処理した。除去した血清中のタンパク質(400μg)を、単一調整用ウェルを備えた10%ポリアクリルアミドゲル中でSDS-PAGEの還元状態で分離し、その後ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜に移した。このPVDF膜を、多数の検体のためにブロット上のチャンネルを作り出す、Surf-Blot装置(Idea Scientific Company, Minneapolis, Minnesota, USA)中に置いた。精製したタンパク質の解析のために、精製したヒトCFH(Complement Technology Inc., Tyler, Texas, USA)の0.5μg部分をゲルの多数のウェル中で泳動させ、PVDF膜に移した。ブロットをプローブで検出するために、患者血清を50 mM Tris-HCl, 137 mM NaCl, pH 7.6 and 5% (w/v) 無脂肪ドライミルク (MTBS)で1:1000に稀釈した。ヤギ抗ヒトIgGγ鎖−HRP(Santa Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz, California, USA)を第2抗体として用い、及びMTBS中に1:40,000に稀釈した。結合した抗体をSuperSignal West Femto 化学発光検出システム (Pierce, Rockford, Illinois, USA)を用いて検出した。
【0097】
免疫反応性タンパク質の同定:
アルブミン及びIgGを除去した、プールした後期血清の小部分2つを非還元状態で、SDS-PAGEゲルの隣のレーンに泳動させた。多量の血清タンパク質α-2マクログロブリンが、還元状態で、興味の対象のバンドとほぼ同じ分子量で泳動するが、非還元状態では〜320kDaで泳動するので、非還元状態は必要であった。R. Sayegh, J. T. Awwad, C. Maxwell, B. Lessey, K. Isaacson, J Clin Endocrinol Metab 80, 1021 (Mar, 1995)。1方のレーンのタンパク質は、イノブロット解析のためにPVDFに移され、他方のレーンのタンパク質は、Coomassie blueで染色した。イムノブロット解析は、1:1000稀釈した図1Aの血清#5、及び1:40、000稀釈したヤギ抗ヒトγ鎖IgG-HRPを用いて行った。免疫複合体の検出は、Luminol Western Blot HRP Substrate (Boston Bioproducts, Worcester, Massachusetts, USA)で行った。イムノブロットを用いて、同一分子量で泳動したCoomassie染色ゲルのバンドを同定した。その後、このバンド中のタンパク質にゲル内トリプシン消化を行い、MALDI-TOFペプチドフィンガープリント解析及びMS/MS配列決定により同定した。セルロプラスミン及び補体因子3,4A及びHが、切り出したバンドから同定された。血清#5をプローブとして用いて、精製したセルロプラスミン及び補体因子3及びHを含むイムノブロットを探索し、補体因子H(CFH)が免疫反応性タンパク質と同定された。
【0098】
癌細胞株:
A549(肺腺癌)及びH661(肺大細胞癌)細胞株をAmerican Type Culture Collectionより得た。A549細胞株は10%FBSを補強したF-12K培地中で維持し、及びH661細胞株は、10%FBS(Invitrogen, Carlsbad, California、USA)を補強したGlutamaxを伴うRPMI1640培地中で維持した。両細胞株は、37℃、5%CO/95%空気中で維持される。
【0099】
細胞株によるCFH mRNA発現:
全RNAはA549及びH661細胞より、High Pure RNA Isolation Kit (Roche Applied Science, Indianapolis, Indiana, USA)を用いて単離され、及びcDNAは、1μg RNAより、Transcriptor reverse transcriptase (Roche Applied Science)を用いて、合成した。PCRは、全容積50μl中に、0.5μlのcDNA(20μlのcDNA反応容積の中)又は0.5μl水、CFH特異的プライマー及びApex Taq MasterMix (Genesee Scientific, San Diego, California, USA)を用いて行った。順方向プライマーの塩基配列は、5(-GGAACCACCTCAATGCAAAG-3( (配列番号1)であり、逆方向プライマーの塩基配列は、5(-AAGCTTCTGTTTGGCTGTCC-3( (配列番号2)であった。サイクル条件は以下の様であった:最初の変性94℃で2分間;その後94℃で15秒間;52℃で30秒間; 及び72℃で45秒間;の反応を30 サイクル。反応液の一部を1.7%(w/v)TAE−アガロースゲルで泳動し、GelStar (Lonza, Rockland, Maine, USA)で可視化した。予想されるアンプリコン(増幅産物)のサイズは、277bpであり、この産物は、配列解析により、CFH DNAとして確認された。
【0100】
培養液上清中の補体因子H(CFH):
A549及びH661細胞を80%コンフルエンスまで増殖させ、培地を吸引し、細胞を3回PBSで洗浄し、2回血清の無い培地で洗浄した。血清の無い培地(10ml)を各75cm2フラスコに加え、細胞を37℃/5%COで、26.5時間インキュベートした。培地を集め、残った細胞を遠心で除き、培地を10,000MWCO遠心濃縮器(Sartorius, Goettingen, 独)を用いて10倍に濃縮し、さらに30,000MWCO遠心濃縮器(Sartorius, Goettingen, 独)を用いて5倍濃縮した。全タンパク質濃度を測定して、各細胞株から12μgタンパク質を、100ng精製ヒト補体因子H(CFH)と並べて、SDS-PAGEにより分離した。このタンパク質をPVDFにブロットして、MTBS中0.2μg/mlで、ヤギ抗ヒトCFH(Santa Cruz)をプローブとして検出した。2次抗体は、1:20,000稀釈で、ロバ抗ヤギIgG-HRP(Santa Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz, California、USA)であった。検出は、SuperSignal West Femto substrate (Pierce)で行った。
【0101】
補体因子H(CFH)細胞結合検定:
A549及びH661細胞を75cm2フラスコ中で80%コンフルエンスまで増殖させ、0.25%Trypsin-EDTA (Sigma-Aldrich, St. Louis, Missouri, USA)を用いて剥がした。細胞を集め、50μl結合緩衝液(PBS中1% BSA, 0.1% アジ化ナトリウム)に2x106/mlの濃度で再懸濁した。精製した補体因子H(CFH)(Complement Technology, Inc.)をヨードビーズ(Pierce, Rockford, Illinois、USA)を用いて、製造者の指針に従い125Iで標識した。非結合のヨウ素を、Micro Bio-Spin 6 クロマトグラフィーカラム(Bio-Rad, Hercules, California, USA)を用いて除いた。細胞(50μl)に、125I標識したCFH(50μl中1μgタンパク質)を加え、混合物を22℃で、30分間インキュベートした。競合的結合のために、細胞を最初10μg非標識CFHと30分間インキュベートし、その後125I標識CFHを加えた。細胞を3回PBSで洗浄し、結合CPM(カウント数/分)をガンマカウンター(Packard)中で検出した。各試験を3回繰り返した。
【0102】
血清IgGの調製:
3人の患者の血清のプールした各検体(500μl)に等量の0.9%NaClを加えた。4℃で、飽和硫酸アンモニウム(1000μl)を、常に攪拌しながら、この溶液に滴下しつつ加えた。4℃で、混合を続け、2時間にわたり沈殿を形成させた。この沈殿を、4℃、15分間、12,000xgで遠心して集めた。沈殿物を冷PBS緩衝液に溶かした。このIgG溶液を、4リットルのPBSに対して、4℃で一晩中透析した。沈殿したIgG濃度は、Bradfordタンパク質検定(Bio-Rad)により計算した。最終的IgG濃度を6mg/mlに合わせた。
【0103】
C3関連断片の沈殿:
以前記載した(E. Wagner, H. Jiang, M. M. Frank, in Clinical Diagnosis and Management by Laboratory Methods J. B. Henry, Ed. (W. B. Saunders Company, Philadelphia, PA, 2001) pp. 892-913)様に、我々は、Veronal塩緩衝液(VBS)、pH7.4を、0.1% (w/v) ゼラチン及び1 mM MgCl2 (GVBS)を加えて、しかしながら古典的経路の活性化を避けるために、CaCl2を除いて調製した。A549及びH661細胞を、75cm2フラスコ中に80%コンフルエンスまで増殖させ、トリプシン−EDTAにより剥がした。細胞を集め、GVBS中に、2x106/mlの濃度に再懸濁した。患者IgG(最終濃度1.5mg/ml)及び正常ヒト血清(最終稀釈1:8)を全容積100μlになるようにGVBSに加えた。平行反応は、データ規格化のために、GVBS中に正常ヒト血清のみを含めた。これらの混合物を4℃、30分間インキュベートし、細胞(100μl)に加え、37℃、30分間インキュベートした。反応を終結させるために、1mlの氷冷GVBSを加え、この混合物を遠心し、上清を吸引した。バックグランド対照として、正常ヒト血清を最初56℃、30分間インキュベートし、補体成分を不活性化した。ヤギ抗ヒトC3抗体((Complement Technology, Inc.)を上記のように125I標識ヨードビーズを用いて標識した。細胞をPBSで洗浄し、125I-標識抗C3抗体と22℃で、30分間インキュベートした。細胞を3回PBSで洗浄し、結合cpmをガンマカウンター中で検出した。各検査を3回繰り返した。データを集め、バックグランド(加熱した正常血清によるカウント数(cpm))を差し引き、結果得られた値は、非加熱正常血清からのカウント数(cpm)で規格化した。
【0104】
免疫組織化学:
標準的脱パラフィンの後、ヤギ抗ヒトCFH抗血清(Quidel, San Diego, California, USA)を用いて、免疫組織化学を各切片(厚さ5〜7μm)について行った。稀釈なしのロバ血清を用いて、室温で、10分間、内因性ペルオキシダーゼ活性及び非特異的タンパク質結合部位をブロックした後、1次抗体を1:1000稀釈で適用し、室温で、1時間スライドとインキュベートした。免疫複合体の検出は、ヤギHRPポリマーキット(BioCare Medical, Concord, California、USA)により、製造者の指針の下に行った。結合抗体は、クロモゲン3,3’−ジアミノベンジジンを用いて検出し、対比染色はHarrisヘマトキシリンを用いた。スライドは乾燥させ、カバースリップを載せるまえに汚れを除いた。
統計解析:
統計的有意性を計算するために、Fisherの正確確立検定を行った。
【0105】
実施例5
α-グルコシダーゼ(GANAB)に対する自己抗体もまた、何人かの患者に発見された。これらの自己抗体を、実施例1〜4のために本明細書に記載した方法に従い同定した。また、これらの自己抗体は、本明細書に記載した方法により、治療及び/又は診断試薬としても用いることができる。
【0106】
実施例6
材料及び方法:
非小細胞肺癌(NSCLC)と診断された患者から血清検体を採取した。3種の肺腺癌細胞株からの溶解液プールを用いてWesternブロットを行った(図5)。その後、これらの患者らの血清をプローブとして用いて、このブロットを探索した。多くの離散的バンド(タンパク質及び自己抗体に対応する)を含む検体を、さらに2D-PAGE及びWesternブロッティングを用いて解析した(図6及び図7)。溶解液タンパク質を患者の血清をプローブとして用いて探索した時に作られたシグナルを、染色ゲルと並べた。ゲル上の対応するスポットを切り出して、Duke Proteomics Core Facility (Duke University, Durham, North Carolina, USA)に送り、タンパク質を消化し、得られたペプチドをナノスケール液体クロマトグラフィー−直列質量分析器で解析した。同定後、精製タンパク質を購入した。これらのタンパク質、及び補体因子H(CFH)及びα−グルコシダーゼに対する自己抗体の有無を、非小細胞肺癌(NSCLC)を持つ20人の患者及び20人の整合対照群の血清を用いて、Westernブロッティングを用いて決定した(図8及び図9)。
【0107】
非小細胞肺癌(NSCLC)患者コホート(集団)と整合対照群の特性
【表1】

*パック年:1日にタバコ1箱(パック)として換算した喫煙年数
【0108】
スポット#1に対するプロテオミクスの結果
【表2】

【0109】
各標的タンパク質に対する自己抗体を持つ患者数
【表3】

【0110】
考察:
2D-PAGE及びWesternブロッティングから切り出されたスポットから同定したタンパク質は、ストレス誘発性リンタンパク質1(STI1)、α−エノラーゼ、HSP-60及び14-3-3εが含まれる。これらのタンパク質に向けられた自己抗体を有するNSCLC患者の数は、対照群から有意に違わない様である。この発見に対して、多くの可能な説明がある。第1に、NSCLC患者の全集合について、この結論を一般化するには、検体のサイズが非常に小さい。また、検定に用いるタンパク質濃度の測定は困難である。濃度の増加は、低濃度で血清中に存在する自己抗体の検出を可能にすることができるが、これはまた、他の自己抗体と非特異的に結合する可能性を導くことができる。さらに、何人かの患者は、突然変異した又は二者択一的にスプライスしたタンパク質の領域に向けられた自己抗体を持つ可能性がある。このような検体は、精製したタンパク質を認識せず、またこの検定ではフォールス陰性(誤陰性)として読まれるであろう。しかしながら、この方法は、NSCLC患者の自己抗体の標的の同定に対して成功した手順を決定し、既にその様なタンパク質を同定した。もっと多くのNSCLC患者の自己抗体状態をテストするために、これらのタンパク質を、マイクロアレイ上で使うことができる。
【0111】
実施例7
表2〜4に掲載した物質に対する自己抗体を、また何人かの患者に発見した。これらの自己抗体を、実施例1〜6のために、本明細書に記載した方法に従い同定した。これらの自己抗体はまた、本明細書に記載した方法に従い、治療及び/又は診断試薬として使用することができる。
【0112】
【表4】

【0113】
参考文献
本明細書に掲載した、特許、特許出願、データベースの引用(Swiss Prot Accession Numberを含むがこれに限らない)及び科学文献を含む全ての引例は、これらが、補充し、説明し、背景を提供し、又は、方法、技術及び/又は本明細書で使った組成物を教えるという点で、本明細書の参考文献にその全体が組み込まれている。
1. O. J. Finn, J Immunol 178, 2615 (Mar 1, 2007).
2. S. Rodriguez de Cordoba, J. Esparza-Gordillo, E. Goicoechea de Jorge, M. Lopez-Trascasa, P. Sanchez-Corral, Mol Immunol 41, 355 (Jun, 2004).
3. D. Ajona et al., Cancer Res 64, 6310 (Sep 1, 2004).
4. D. Ajona, Y. F. Hsu, L. Corrales, L. M. Montuenga, R. Pio, J Immunol 178, 5991 (May 1, 2007).
5. E. Wilczek et al., Int J Cancer 122, 2030 (May 1, 2008).
6. S. Junnikkala et al., Br J Cancer 87, 1119 (Nov 4, 2002).
7. Z. Z. Cheng et al., Clin Chem 51, 856 (May, 2005).
8. P. Gasque, A. Thomas, M. Fontaine, B. P. Morgan, J Neuroimmunol 66, 29 (May, 1996).
9. S. Junnikkala et al., J Immunol 164, 6075 (Jun 1, 2000).
10. K. Jurianz et al., Mol Immunol 36, 929 (Sep-Oct, 1999).
11. K. M. Murphy, P. Travers, M. Walport, Janeway's Immunobiology (Garland Science, London, England, ed. 7th, 2007), pp.
12. M. A. Dragon-Durey et al., J Am Soc Nephrol 16, 555 (Feb, 2005).
13. E. Gumus et al., Int J Urol 11, 1070 (Dec, 2004).
14. P. J. Mintz et al., Nat Biotechnol 21, 57 (Jan, 2003).
15. S. Varsano, L. Rashkovsky, H. Shapiro, D. Ophir, T. Mark-Bentankur, Clin Exp Immunol 113, 173 (Aug, 1998).
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17.E. Wagner, H. Jiang, M. M. Frank, in Clinical Diagnosis and Management by Laboratory Methods J. B. Henry, Ed. (W. B. Saunders Company, Philadelphia, PA, 2001) pp. 892-913.
【0114】
本発明を開示した様々な詳細を本発明の範囲から離れることなく変更することが可能であることは理解されるであろう。さらに、前述の記載は、本発明を説明することのみを目的とするものであり、本発明を制限することを目的とするものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者から採取した検体中の癌関連自己抗体の有無及び/又は量を検出する工程から成る患者の癌を検知する方法。
【請求項2】
(1)患者から採取した検体中の癌関連自己抗体の有無及び/又は量を検出する工程、及び(2)この癌関連自己抗体の有無又は量に基づいて、癌の可能性のある患者の治療を管理する工程から成る癌の可能性のある患者の治療を管理する方法。
【請求項3】
(1)患者から採取した検体中の癌関連自己抗体の有無及び/又は量を検出する工程、及び(2)この癌関連自己抗体の有無又は量に基づいて、腫瘍又は腫瘍と疑われる病変の分子病期区分を決定する工程から成る腫瘍又は腫瘍と疑われる病変の分子病期を区分する方法。
【請求項4】
(1)患者から採取した検体中の癌関連自己抗体の有無及び/又は量を検出する工程、及び(2)この癌関連自己抗体の有無又は量に基づいて、患者を癌に対する高リスク群に区分けする工程から成る患者を癌に対する高リスク群に区分けする方法。
【請求項5】
前記検体が血清検体又は血漿検体である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記患者がヒトである請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記癌が肺癌である請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
補体因子H(CFH)に対する自己抗体、α-グルコシダーゼ(GANAB)に対する自己抗体、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)に対する自己抗体、α-エノラーゼに対する自己抗体、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)に対する自己抗体、若しくはHSP60(60kDa熱ショックタンパク質)に対する自己抗体、又はこれらの自己抗体の組合せを検出する工程から成る請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
表4に掲載された1又はそれ以上の物質に対する自己抗体、又はこれらの組合せを検出することから成る請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
患者から採取した検体中の癌関連自己抗体の有無及び/又は量を検出するためのキットであって、(1)癌関連自己抗体に特異的な結合パートナー、及び(2)患者から採取した検体中の癌関連自己抗体の有無を検出及び/又はその量を測定するための説明書から成るキット。
【請求項11】
補体因子H(CFH)に対する自己抗体に特異的な結合パートナー、α-グルコシダーゼ(GANAB)に対する自己抗体に特異的な結合パートナー、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)に対する自己抗体に特異的な結合パートナー、α-エノラーゼに対する自己抗体に特異的な結合パートナー、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)に対する自己抗体に特異的な結合パートナー、若しくはHSP 60(60kDa熱ショックタンパク質)に対する自己抗体に特異的な結合パートナー、又はこれらの結合パートナーの組合せを検出する工程から成る請求項10に記載のキット。
【請求項12】
表4に掲載された1又はそれ以上の物質に対する自己抗体に特異的な結合パートナー、又はこれらの組合せから成る請求項10に記載のキット。
【請求項13】
前記結合パートナーが、固体支持台に結合され、前記自己抗体に対する第2の特異的結合パートナーを含む請求項10に記載のキット。
【請求項14】
前記第2の特異的結合パートナーが抗体である請求項13に記載のキット。
【請求項15】
前記第2の特異的結合パートナーが検出可能基と結合する請求項12又は13に記載のキット。
【請求項16】
前記検出可能基が、放射活性標識、蛍光標識、酵素標識及び蛍光標識から成る群から選択される請求項15に記載のキット。
【請求項17】
更に、1又はそれ以上の緩衝試薬、タンパク質安定化剤、酵素基質、バックグランド低下剤、対照試薬、検出を行う装置、並びに解析及び結果発表のために必要なソフトウェアを含む請求項10に記載のキット。
【請求項18】
癌に罹った患者に、有効量の(a)任意に二重特異的抗体であってもよい癌関連自己抗体の免疫反応特性を有する抗体、(b)癌関連自己抗体に対する抗原、又は(c)癌関連自己抗体の免疫反応特性を有する抗体及び癌関連自己抗体に対する抗原の両者、を投与することから成る患者の癌を治療する方法。
【請求項19】
前記癌が肺癌である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
補体因子H(CFH)に対する抗体、α-グルコシダーゼ(GANAB)に対する抗体、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)に対する抗体、α-エノラーゼに対する抗体、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)に対する抗体、若しくはHSP 60(60kDa熱ショックタンパク質)に対する抗体、又はこれらの抗体の組合せを投与することから成る請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
表4に掲載した1又はそれ以上の物質に対する抗体の投与、又はこれら組合せを投与することから成る請求項18又は19に記載の方法。
【請求項22】
補体因子H(CFH)抗原、α-グルコシダーゼ(GANAB)抗原、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)抗原、α-エノラーゼ抗原、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)抗原、若しくはHSP 60(60kDa熱ショックタンパク質)抗原、又はこれらの抗原の組合せを投与することから成る請求項18又は19に記載の方法。
【請求項23】
表4に掲載した1又はそれ以上の物質から調製した抗原、又はこれらの組合せを投与することから成る請求項18又は19に記載の方法。
【請求項24】
患者へアジュバントの投与することを含む請求項18〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
(A)有効量の(a)任意に二重特異的抗体であってもよい癌関連自己抗体の免疫反応特性を有する抗体、(b)癌関連自己抗体に対する抗原、又は(c)癌関連自己抗体の免疫反応特性を有する抗体及び癌関連自己抗体に対する抗原の両者、並びに(B)医薬的に許容される担体から成る患者の癌を治療するための組成物。
【請求項26】
前記癌が肺癌である請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
補体因子H(CFH)に対する抗体、α-グルコシダーゼ(GANAB)に対する抗体、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)に対する抗体、α-エノラーゼに対する抗体、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)に対する抗体、若しくはHSP60(60kDa熱ショックタンパク質)に対する抗体、又はこれらの抗体の組合せから成る請求項25又は26に記載の組成物。
【請求項28】
表4に掲載した1又はそれ以上の物質に対する抗体、又はこれらの組合せから成る請求項25又は26に記載の組成物。
【請求項29】
補体因子H(CFH)抗原、α-グルコシダーゼ(GANAB)抗原、STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)抗原、α-エノラーゼ抗原、14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)抗原、若しくはHSP60(60kDa熱ショックタンパク質)抗原、又はこれらの抗原の組合せから成る請求項25又は26に記載の組成物。
【請求項30】
表4に掲載した1又はそれ以上の物質から調製した抗原、又はこれらの組合せから成る請求項25又は26に記載の組成物。
【請求項31】
更にアジュバントを含む請求項25〜30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
補体因子H(CFH)に対する自己抗体の免疫反応特性を有する単離されかつ精製された抗体。
【請求項33】
α-グルコシダーゼ(GANAB)に対する自己抗体の免疫反応特性を有する単離されかつ精製された抗体。
【請求項34】
STIP1(ストレス誘発性リンタンパク質1)に対する自己抗体の免疫反応特性を有する単離されかつ精製された抗体。
【請求項35】
α-エノラーゼに対する自己抗体の免疫反応特性を有する単離されかつ精製された抗体。
【請求項36】
14−3−3(14−3−3タンパク質エプシロン)に対する自己抗体の免疫反応特性を有する単離されかつ精製された抗体。
【請求項37】
HSP60(60kDa熱ショックタンパク質)に対する自己抗体の免疫反応特性を有する単離されかつ精製された抗体。
【請求項38】
表4に掲載した1又はそれ以上の物質に対する自己抗体の免疫反応特性を有する単離されかつ精製された抗体。

【図1】
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【図2AB】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−500964(P2012−500964A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508722(P2011−508722)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/043460
【国際公開番号】WO2009/137832
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(507189666)デューク ユニバーシティ (25)
【Fターム(参考)】