説明

癌の治療のための放射線、エファプロキシラルナトリウム、及び酸素補給の併用

宿主に放射線を照射すること、宿主にエファプロキシラルナトリウムを投与すること、プラス宿主に酸素補給をすることを含む宿主の中枢神経系転移癌を治療する方法であって、放射線、酸素補給、及びエファプロキシラルナトリウムが、宿主の中枢神経系癌の停止又は退縮をもたらすのに効果的な量で投与される方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は癌の治療に関し、さらに詳細には、癌の治療のためのエファプロキシラルナトリウム、酸素補給及び放射線の併用に関する。
【0002】
発明の背景
脳、脳神経、軟髄膜、脊髄及び眼は中枢神経系(central nervous system: CNS)を構成し、癌からの転移の発症のおそれがある。Chang & Lo, Diagnosis and Management of Central Nervous System Metastases from Breast Cancer, (2003) The Oncologist, 8: 398 - 410。本明細書で言及するChang & Loの開示、及び総ての特許、特許出願、及び刊行物はその全体を参照として本明細書に含める。多数、大解剖系列は、頻度の減少の順に、肺癌、メラノーマ、腎臓、及び結腸癌は脳に転移する最も一般的な原発腫瘍であることを示唆する。慣用的な治療は、症状の一時的な軽減や神経機能の維持を目的とする。慣用の全脳放射線療法が、脳、脳神経、脊髄、及び眼転移の待機的治療の主力であった。
【0003】
低酸素腫瘍は放射線による細胞損傷に対してより抵抗性であり、腫瘍低酸素はRTの臨床予後に悪影響を与える。ヒト腫瘍において12〜16回の酸素測定は、脳転移、多形性膠芽腫(glioblastoma multiforme: GBM)、子宮頸部、頭部及び首部の扁平上皮細胞癌、並びに乳癌を確認した。低酸素腫瘍は、腫瘍中の小低酸素分画がRTに対して全応答に影響を与え、ある腫瘍細胞が生き残る確率を増加させ得ても、酸素化腫瘍よりも放射線に対して実質的に抵抗性である。逆に、少しの低酸素細胞は正常細胞中に存在する。したがって、RTの正常細胞に対する毒性は、低酸素細胞のこの小分画に対するO2送達を増加させる療法によって増加されることを期待されない。
【0004】
脳転移のその他の治療選択には脳転移を切除する手術、及び転移を局部的に照射する定位的放射線治療(stereotactic radiosurgery: SRS)等がある。継続的研究は、脳転移のどの患者が手術やSRSを受けるべきか、これらの局部治療をいかにして全脳放射線療法と最適に一体化すべきかの選択のための基準を精密にする点に目的がある。神経画像、手術、及び放射線療法の発展にかかわらず、CNS転移の治療の有効性を改善するために新しい治療が必要とされる。
【0005】
発明の概要
本発明は、中枢神経系転移癌を有する宿主の、放射線、酸素補給、及びエファプロキシラルナトリウムの組合せに感受性の中枢神経系転移癌を治療する方法を提供する。一実施態様では、前記治療方法は、宿主に放射線を照射すること、宿主にエファプロキシラルナトリウムを投与すること、及び宿主に酸素補給をすることを含み、ここで、放射線、酸素補給、及びエファプロキシラルナトリウムは、宿主の中枢神経系癌の停止又は退縮をもたらすのに効果的な量で投与する。
【0006】
一態様では、エファプロキシラルナトリウムの投与は下記からなる群から選択される投与量である。
i) 条件が下記からなる群から選択される条件の場合、100mg/kg
a)放射線治療日1、宿主は雄性≦95kgであり、SpO2≧93%
b) 放射線治療日1、宿主は雌性≦70kgであり、SpO2≧93%
c) 放射線治療日2〜10、前日の投与日に用量は75mg/kgであった、室内空気を呼吸中のSpO2が現在≧93%であり、前日の投与日に不都合な出来事が起こらなかった;ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が3時間を超えたこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、並びに前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したことからなる群から選択される
d)放射線治療日2〜10、SpO2は>90%、前日の用量は100mg/kgであり、前日の投与日に不都合な出来事が起こらなかった;ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が3時間を超えたこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したこと、並びに室内空気を呼吸中のSpO2が90%〜92%であるが前日の投与日のSpO2が≧93%であったことからなる群から選択される
ii) 条件が下記からなる群から選択される条件の場合、75mg/kg
a)放射線治療日1、宿主は雄性>95kgであり、SpO2≧93%
b)放射線治療日1、宿主は雌性>70kgであり、SpO2≧93%
c)放射線治療日1であり、SpO2は90〜92%
d)放射線治療日2〜10、前日の用量を維持、SpO2は90〜92%であり、そしてエファプロキシラルナトリウム用量を維持に導く投与日にSpO2は90〜92%だった
e)放射線治療日2〜10、前日の用量を維持、そしてSpO2は≧93%である
f)放射線治療日2〜10、前日の用量は100mg/kgで、不都合な出来事が起こる;ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が3時間を超えたこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したこと、並びに室内空気を呼吸中のSpO2が90%〜92%であるが前日の投与日のSpO2が≧93%であったことからなる群から選択される、そして
g)放射線治療日2〜10、SpO2は>90%、前日の用量は75mg/kgであり、前日の投与日に不都合な出来事が起こらなかった;ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が3時間を超えたこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したこと、並びに室内空気を呼吸中のSpO2が90%〜92%であるが前日の投与日のSpO2が≧93%であったことからなる群から選択される
iii) 条件が下記からなる群から選択される条件の場合、0mg/kg
a)SpO2は<90%、
b)放射線治療日2〜10、前日の用量は75mg/kgであり、不都合な出来事が起る;ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が3時間を超えたこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したこと、並びに室内空気を呼吸中のSpO2が90%〜92%であるが前日の投与日のSpO2が≧93%であったことからなる群から選択される、
c)放射線治療日2〜10、前日の用量は0mg/kgであり、SpO2は90〜92%であるが、エファプロキシラルナトリウムを維持に導く前日投与日のSpO2は≧93%であった、
d)放射線治療日2〜10、SpO2は>90%、前日の用量は0mg/kgであり、不都合な出来事が起こる;ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が3時間を超えたこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したこと、並びに室内空気を呼吸中のSpO2が90%〜92%であるが前日の投与日のSpO2が≧93%であったことからなる群から選択される。
【0007】
別の実施態様では、宿主は乳癌及び中枢神経系転移癌であり、エファプロキシラルナトリウムの投与は下記からなる群から選択される用量である:
i) 条件が下記からなる群から選択される条件の場合、75mg/kg:
a)放射線治療日1、SpO2は≧90%、クレアチニン≦2.0mg/dL、
b)放射線治療日4〜10、前日の用量は100mg/kgであり、前日に不都合な出来事が起こった;ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が4時間以上であったこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したこと、並びに室内空気を呼吸中の患者SpO2が90%〜92%であり前日の投与日にSpO2が≧93%のベースラインから減少していることからなる群から選択され、そして
c)放射線治療日2〜10、SpO2は>90%であり、前日の用量は75mg/kgで、前日の投与日に不都合な出来事が起こらなかった;ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が4時間以上であったこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したこと、並びに室内空気を呼吸中の患者SpO2が90%〜92%であり前日の投与日にSpO2が≧93%のベースラインから減少していることからなる群から選択され、
ii) 条件が、放射線治療日3〜10、前2日の用量日がそれぞれ75mg/kgまたは前日の投与日に100mg/kgであり、そして室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%であり、前日の投与日に不都合な出来事が起こらなかった場合、100mg/kgであり、ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が4時間以上であったこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したこと、並びに室内空気を呼吸中の患者SpO2が90%〜92%であり前日の投与日にSpO2が≧93%のベースラインから減少していることからなる群から選択され、そして
iii)条件が下記からなる群から選択される条件の場合、0mg/kg:
a)SpO2は、<90%、
b)クレアチニンが>2.0mg/dL、
c)前日の治療日に治療を必要とした低酸素血症を患者が発症、
d)RT日2〜10、前日の用量は75mg/kgであり、不都合な出来事が起こった、ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が3時間を超えたこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したこと、並びに室内空気を呼吸中のSpO2が90%〜92%であるが前日の投与日のSpO2が≧93%であったことからなる群から選択される。
【0008】
幾つかの実施態様では、放射線は、10日間毎日少なくとも1回治療容積に対して少なくとも約3Gray(Gy)フラクションで投与される。幾つかの実施態様では、放射線はフラクションで投与される、ここで、10フラクションは開始時の治療容積に投与される。幾つかの実施態様では、宿主に対して少なくとも約30Gyの総放射線を投与する。幾つかの実施態様では、放射線を宿主の全脳に投与する。
【0009】
幾つかの実施態様では、エファプロキシラルナトリウムを、中心静脈アクセスデバイス(central venous access device: CVAD)を介する、又は末梢を介する、持続注入を介する経路を含む静脈内、そして動脈内からなる群から選択される経路により投与する。幾つかの実施態様では、エファプロキシラルナトリウムを、少なくとも約75mg/kg/日の開始時の用量レベルで投与する。幾つかの実施態様では、約483μg/mlよりも大きなRBC濃度となるように投与する。幾つかの実施態様では、転移性癌は、肺、乳、メラノーマ、腎臓、及び結腸からなる群から選択される原発性癌から誘導される。
【発明の詳細な記述】
【0010】
中枢神経系癌の治療において、エファプロキシラルナトリウム(しばしば、RSR13と称される)と、放射線及び酸素補給とを併用でき、ここで、酸素補給、放射線及びエファプロキシラルナトリウムを宿主の中枢神経系癌の治療に有効な量で投与することが見出された。概して、有効量は、(1)治療の求められている疾病の症状を軽減するか、(2)治療の求められている疾病を治療するのに関連する薬理学的変化をもたらすかのいずれかに有効な量である。癌に関して、有効量には、腫瘍の寸法を小さくする、腫瘍の増殖を遅らせる、転移を防止するか抑制する、罹患者の生命寿命の延長、又は罹患者の生活の質を安定化若しくは改善等に有効な量である。幾つかの実施態様では、中枢神経系の癌は移転性癌である。幾つかの実施態様では、転移した原発性癌は肺癌、乳癌、メラノーマ、腎臓癌、又は結腸直腸癌である。
【0011】
エファプロキシラルナトリウムは2-[4-(((3,5-ジメチルアミノ)カルボニル)メチル)フェノキシ]2-メチルプロピオン酸
【0012】
【化1】

【0013】
であり、ヘモグロビンのアロステリックエフェクターであり、インビボで組織酸素化を増強することが示されている。しばしば、エファプロキシラルナトリウムは2-[4-[2-[(3,5-ジメチルフェニル)アミノ]-2-オキシエチル]フェノキシ]-2-メチルプロピオン酸名によって表される。一般に、エファプロキシラルナトリウムは、一ナトリウム塩のような生理学的に許容できる塩として投与され、すなわち、X+はNa+である。エファプロキシラルナトリウムはヘモグロビンのアロステリック修飾を引き起こし、その結果、酸素に対するその結合親和性を増加させ、赤血球による組織に対する酸素分配の増加をもたらす。
【0014】
ヘモグロビンをアロステリック的に修飾する能力は、化合物を種々の疾病及び症状を、ヘモグロビンをアロステリック的に修飾し遊離酸素を支持して酸素平衡をシフトすることにより、治療するのに有用にできる。このような病気には、全身若しくは組織低体温症、低酸素若しくは低血圧、創傷、脳損傷、糖尿病潰瘍、慢性下腿潰瘍、褥創、組織移植、卒中若しくは脳虚血、虚血若しくは酸素欠乏、急性呼吸窮迫症候群及び慢性閉塞性肺疾患を含む呼吸器疾患、手術失血、敗血症、多臓器不全、細胞外血液稀釈進行、一酸化炭素中毒、バイパス手術、発癌性腫瘍、胎児の酸素欠乏等があり得るがこれらに限定されない。この化合物は、特許請求した条件を罹患するか受けている患者に、アロステリック効果剤化合物の充分量を投与する段階を含む方法に有用である。発癌性腫瘍の場合、この化合物は電離照射と併用して放射線増強剤として有用である(Teicher, (1966)Drug Dev.Res. 38:1-11; Rockwell 及び Kelley(1998)Rad.Oncol.Invest. 6:199-208; 並びにKhandelwal et al.(1996)Rad. Oncol. Invest. 4:51-59)。アロステリック修飾特性は、一定の画像検査法、特に血中酸素濃度依存MRIにおいて、又は腫瘍酸素、の決定、及び腫瘍酸素に基づく放射線治療の開始のための最適時間の決定を含む診断方法においてもこの化合物を有用にする。2-[4-[2-[(3,5-ジメチルフェニル)アミノ]-2-オキシエチル]フェノキシ]-2-メチルプロピオン酸及びその生理学的に許容できる塩の製造及び使用は、米国特許第5,049,695; 5,122,539; 5,290,803; 5,432,191; 5,525,630; 5,648,375; 5,661,182; 5,677,330; 5,705,521; 5,872,888及び5,927,283号明細書並びに米国特許出願公開第20030017612 A1号明細書に既に記載されている。これらの特許明細書は構造的に類似した化合物の製造及び使用も記載する。密接に関連した化合物を記載するその他の特許には第5,248,785号及び第5,731,454号明細書等がある。これらの特許、出願、並びに本明細書中で言及するすべてのその他の特許、出願、並びに刊行物は、本明細書中に参照として特に含める。
【0015】
概して、本発明は、酸素補給及びエファプロキシラルナトリウムと併用する全脳放射線療法(whole brain radiation therapy: WBRT)の行程を提供する。一実施態様では、このWBRTは、WBRTの複数日の、フラクション行程である。一実施態様では、この行程は10日行程である。一実施態様では、エファプロキシラルナトリウムおよび酸素補給を、毎日のWBRT前約30分以内に受けさせる。この実施態様では、エファプロキシラルナトリウム投与と酸素補給とを放射線治療の1日目(RT1日目)に開始し、WBRTの10日行程間毎RT日に継続する(総量が10用量)。
【0016】
一般に、エファプロキシラルナトリウムは約75〜100mg/kgの開始時用量で投与する。一実施態様では、エファプロキシラルナトリウムの継続投与は75〜100mg/kgである。別の実施態様では、エファプロキシラルナトリウムの継続用量は、標準皮膚パルス酸素濃度計(SpO2)及び血液酸素飽和度における薬理学的影響の存在に関連して決定される。エファプロキシラルナトリウム用量は、許容できない吐き気、嘔吐、低酸素血症、又は低酸素飽和度(SpO2)が観察される場合には0〜75mg/kgに低下させることができる。エファプロキシラルナトリウム用量は、SpO2が、ベースラインか改良される位置にあり、許容できない吐き気、嘔吐、低酸素血症、又は低酸素飽和度が前日に起こらない正常な場合に75〜100mg/kgに増やすことができる。幾つかの実施態様では、エファプロキシラルナトリウム用量をクレアチニンレベルに関連して決定する。エファプロキシラルナトリウム用量は、いずれかの計画されたRT日にクレアチニンが2.0mg/dLを超える場合に0mg/kgに低下させることができる。概して、エファプロキシラルナトリウムは、30〜45分間にわたって中心静脈アクセスデバイスによる静脈注入により投与される。
【0017】
一実施態様では、本発明は酸素補給及びエファプロキシラルナトリウムを併用するWBRTの10日行程を提供し、ここで、エファプロキシラルナトリウムはRT1日目に図1に示したように投与し、RT2日目に図2に示したように投与し、3〜10日に図3に示したように投与する。一実施態様では、患者が乳癌の場合、本発明は酸素補給及びエファプロキシラルナトリウムを併用するWBRTの10日行程を提供し、ここでエファプロキシラルナトリウムはRT1〜2日目に図4に示したように投与し、RT3〜10日目に図5に示したように投与する。
【0018】
エファプロキシラルナトリウムで治療した患者はマスク又は鼻カニューレにより酸素補給を受けた。エファプロキシラルナトリウムはヘモグロビン酸素結合親和性を減少させ、周囲酸素圧力の肺中の酸素負荷を減らす。理論に拘束されるものではないが、酸素補給はヘモグロビン酸素飽和度及び腫瘍酸素添加の双方を最適化し、肺中の酸素摂取を確実にする役割を果たす。一実施態様では、酸素補給は少なくとも約30分間毎日のWBRT前、その間及びその完了後少なくとも15分の間に投与する。別の実施態様では、酸素補給は少なくとも約5分間毎日のWBRT前、その間及びその完了後少なくとも15分の間に投与する。一実施態様では、酸素補給の用量は4L/分である。別の実施態様では、酸素補給の用量は、エファプロキシラルナトリウム投与の間及び投与後90%以上のSpO2量を維持するのに必要なように調節する。酸素は100%酸素、カルボゲン(carbogen)、又はその他の適切な外因性酸素源であることができる。
【0019】
放射線は種々の様式で投与できる。例えば、放射線は事実上電磁気又は微粒子(particles)であることができる。本発明の実際で有用な電磁気放射線にはX線やガンマ線があるがこれらに限定されない。本発明の実際で有用な微粒子放射線には電子ビーム、陽子ビーム、中性子ビーム、α粒子、及び負パイ中間子等があるがこれらに限定されない。放射線は慣用の放射線治療装置及び放射線治療方法を使用して、また術中方法及び定位固定方法により照射できる。本発明の実地に使用するのに適している放射線治療に関する追加の検討は、Steven A. Leibel等, Textbook of Radiation Oncology(1998)(publ. W.B.Saunders Company)を通して, 及び特に13章及び14章に見出すことができる。放射線は、例えば、放射性「シード」による又は目標放射性コンジュゲートの全身照射による、目標照射のようなその他の方法によっても照射できる。J. Padawer等, Combined Treatment with Radioestradiol lucanthone in Mouse C3HBA Mammary Adenocarcinoma and with Estradiol lucanthone in an Estrogen Bioassay, Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phy. 7:347 - 357(1981)。その他の放射線照射方法を本発明の実施に使用できる。
【0020】
所望の治療容積に照射される放射線の量は変動できる。一実施態様では、放射線は、放射線がエファプロキシラルナトリウム及び酸素補給と共に投与するとき、宿主の中枢神経系の癌の進行の停止か退縮をもたらすのに効果的な量である。一実施態様では、約30Gray(GY)までの治療容積に対して、10日にわたって、週当たり5日間日に少なくとも一度、少なくとも3Gray(Gy)フラクションで放射線を投与する。他の実施態様では、2Gyフラクションの15投与又は2.5Gyの12投与のような当業者に公知の異なる超フラクション化スキームが展開される。
【0021】
全脳を照射する時、30Gyの最大投与が推奨される。一実施態様では、放射線は宿主の全脳に照射され、ここで、宿主は転移癌のために治療される。一実施態様では、エファプロキシラルナトリウム投与終了後、放射線はできるだけ速く、すなわち、最大限約30分以内に照射される。
【0022】
本発明の精神及び範囲から逸脱しないで、本発明の方法に種々の修正及び変更を行うことができることは当業者に明らかであろう。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内に入ることを条件に本発明の修正及び変動を包含することが意図されている。さらに、下記の実施例は特許請求した発明を例証する目的のために記載するのであり、特許請求した発明の範囲を限定するように解釈すべきでない。
【実施例】
【0023】
(実施例1)材料及び方法
A エファプロキシラル製剤 エファプロキシラルナトリウムを注射用無菌溶液として製剤化し、500mlの0.225%塩化ナトリウム(NaCl)及び1.0mM燐酸塩バッファー(pH7.5)中に10gのエファプロキシラルを含有する単回使用500mlガラスボトル中に供給する。エファプロキシラル注射(エファプロキシラル)浸透圧重量モル濃度はおおよそ0.45%NaCl(2分の1生理食塩水)である。ストックエファプロキシラル溶液を直接ボトルから最初の濃度の20mg/mL(稀釈なし)で注入する。患者の投与体重は治療前に得られた体重であり得る。注入される容積は下記の計算を基礎とする。
【0024】
【数1】

【0025】
投与前、エファプロキシラルボトルを亀裂、沈殿、結晶、濁り等のような異常性について検査する。エファプロキシラルはCVADによりIV投与され得る。
B 投与方法
酸素補給をする前に安静SpO2を記録する。鼻カニューレ(Nasal Cannula: NC)により4L/分の酸素補給をする。
【0026】
CVAD、好ましくは抹消から中心静脈まで挿入したカテーテル(peripherally inserted cental catheter:PICC)は、エファプロキシラルの投与に有用である。患者が既にCVADを設置している場合、エファプロキシラル投与のために使用の開通性及び妥当性の評価をしなければならない。患者が、長期間カテーテル挿入に関連する血栓症や感染症のようなCVADが原因の不都合な後遺症についてしばしば評価される。エファプロキシラル投与はWBRT日1で始める。エファプロキシラルは、輸液用ポンプにより一定速度で30分間にわたってCVADにより注入する。エファプロキシラルの注入が中断されるか、延長される場合、注入を続けるが、45分を超えるべきではない。エファプロキシラルの注入後、できるだけ速くWBRTを開始すべきであり、30分以内に開始しなければならない。酸素補給及びエファプロキシラルを受ける前、室内空気の呼吸中のSpO2が<90%、またはWBRT日のクレアチニンが>2.0mg/dLの場合、予定治療日のエファプロキシラルを省略する。患者は、エファプロキシラル5分前に開始し、エファプロキシラル中、WBRT中、そしてWBRTの終了後少なくとも15分間、酸素補給を受ける。臨床またはSpO2基準を基礎にしてWBRT日にエファプロキシラルを省略する場合、患者はWBRTをのみを、WBRT35分前、その途中、そしてその後少なくとも15分間酸素補給とともに受けるべきである。省略したエファプロキシラル投与を補充しない。
【0027】
毎WBRT日に下記に示した手順を行う。酸素補給開始前適切な安静SpO2の患者を確保する。エファプロキシラル注入開始前少なくとも5分酸素補給を開始する。輸液ポンプを使用して、CVADにより30分にわたってエファプロキシラルを投与する。臨床観察により患者を監視する。エファプロキシラル注入終了後30分内にWBRTを投与する。酸素補給を少なくとも5分間停止後、室内空気の呼吸中総てのSpO2計測を得るべきである。室内空気の呼吸中(少なくとも5分間)得られた最初のSpO2計測はWBRT終了後20分以内に得られるべきである。室内空気呼吸中のSpO2が90%未満の場合、SpO2計測を得、直ちに追加の30分間再酸素補給をする。少なくとも5分間酸素補給を停止し、室内空気呼吸中の別のSpO2を計測する。
【0028】
開始5分間室内空気呼吸中のSpO2が90%以上の場合、続行する。
第二読みを取ることにより少なくとも追加の15分間室内空気呼吸中のSpO2を90%以上に維持、15分期間の終了時、室内空気呼吸中のSpO2を90%以上に維持することを監視し確実にする。少なくとも15分間室内呼吸中のSpO2を90%以上に維持した場合。
【0029】
(実施例2)体重及び性別に基づいて方法のための用量指針
下記のようにしてエファプロキシラルナトリウム用量を決定した。開始時のエファプロキシラルナトリウムの用量計画を表1に例証する。
【0030】
【表1】

【0031】
エファプロキシラルナトリウムプラスWBRTに続く個々の患者の再飽和時間(室内空気で安定な90%以上のSpO2に回復するのに要する時間)に依存して、補給酸素使用を30分程度から4時間を超える間要求され得る。乳癌から脳移転した患者のエファプロキシラルナトリウム用量の大半はWBRTの完了後1時間以下の酸素補給を必要とした。酸素飽和度が減少したこの期間、患者は係属したSpO2監視を必要とした。室内空気呼吸中のSpO2が90%以上を達成されない場合、酸素補給は、室内空気呼吸中のSpO2の90%以上が安定するまで、必要なら、6〜8L/分のながれに継続増加させるべきである。
【0032】
用量修正−投与量調節は臨床的評価、並びに患者が作用の増大または毒性を経験していることを示すSpO2の監視に基づく。表2は、エファプロキシラルナトリウムの体重及び性別に基づく用量修正計画の概要である。
【0033】
【表2】

【0034】
a呼吸困難、低血圧症/目眩、腎機能障害(ベースラインから≧Grade 2 CTC又は1CTC Gradeの増加);
bベースラインから>Grade 1 CTC又は1CTC Grade 増加;CTCはNational Cancer Institute(NCI) Toxicity Criteria scale Version 2.0 published 30 Apr 1999)に基づく。
【0035】
cベースラインから>Grade 2 CTC又は>1CTC Grade 増加
DL+1 75mg/kgから100mg/kg(最大用量)に用量増大、100mg/kgを超えてさらに上昇しない
DL−1 100mg/kgから75mg/kgに用量減少、現在の用量レベルが75mg/kgの場合、75mg/kgを超えてさらに減少しない、代わりに用量の省略及び治療日(RT-day)+1に75mg/kgの治療を再開
エファプロキシラルナトリウムを中心静脈アクセスデバイスによる、又は末梢による、持続注入による経路を含む静脈内及び動脈内を(これらに限定されない)含む非経口経路により投与するがこれらの経路に限定されない。
【0036】
(実施例3)治療プロトコル
脳転移患者に、上述の詳細な用量指針に基づいて総投与量0−100mg/kg/日でエファプロキシラルナトリウムを投与した。一般に、75又は100mg/kgの用量で30分にわたって中心静脈アクセスデバイスによる静脈注入によりエファプロキシラルナトリウムを酸素補給と同時に投与した。
【0037】
酸素は鼻カニューレ又はフェースマスクにより4L/分で酸素を注入開始時より5分前から始め、注入中及びWBRT中、1日のWBRT完了後少なくとも15分間投与しなければならない。WBRTのフラクション行程の毎日にエファプロキシラルナトリウムを投与する。禁忌の時を除いて、WBRTはエファプロキシラルナトリウム注入終了30分以内に投与しなければならない。
【0038】
患者は1用量分の薬物を与えられた。エファプロキシラルナトリウムを、輸液用ポンプにより制御した流量で、中心静脈アクセスにより30−45分間隔にわたって投与し、最終注入はWBRTの10−日行程の各放射線量前30分よりも長くない。エファプロキシラルナトリウムを無菌注射用溶液として製剤化し、500mlの0.225%NaCl中20mg/mLの濃度で10gのエファプロキシラルナトリウムを含有する一回使用用ガラスボトルで供給した。エファプロキシラルナトリウムを、WBRTの10−日行程の間、10用量の最大限について投与した。対照群は放射線及び酸素供給のみを受けた。
【0039】
補給酸素を鼻カニューレにより約4L/分で、注入の開始前約5分から開始し、注入中及びWBRT中、及び1日のWBRTの終了後少なくとも約15分間投与する。室内空気呼吸中所望のSpO2が90%よりも大きいか等しい値に達しない場合、補給酸素は、室内空気呼吸中のSpO2が90%以上で安定化するまで、必要の場合、6〜8L/分の流量に継続増加させるべきである。
【0040】
制御した研究で得られたデータは、癌患者の治療における放射線療法に単独補助剤としてのエファプロキシラルナトリウムの前述示唆した安全性分析データを確認した。治療中に発現した不都合な出来事の大半は、自発的に又は研究中内に解決される、重篤度グレード1又は2であり、吐き気/嘔吐のための制吐剤、頭痛用の非ステロイド性抗炎症剤、低酸素血症用の補給酸素での併用治療に良く応答した。エファプロキシラルナトリウム治療患者で殆ど共通して報告されるグレード3の不都合な出来事は低酸素血症であるが(患者の11%に報告)、グレード4低酸素血症は報告されなかった。筋力低下及び呼吸困難(患者の3%に報告)は対照患者の殆ど共通して報告されたグレード3の不都合な出来事であり、両方の出来事とも各1患者でグレード4出来事として報告された。治療群及び対照群の双方での最も共通的に報告されたグレード4不都合な出来事は疾患の憎悪だった(双方の群の6%に報告)。
【0041】
(実施例4)薬物動態
血漿及び赤血球(red blood cell: RBC)薬物濃度を、エファプロキシラルナトリウム投与:WBRT日1(注入終了)並びにWBRT日6及び10間(注入前及び注入終了分析)の単一日のコース投与中の2日目に分析した。回帰分析を使用して谷及びピーク間の関係並びに連続的臨床共変量(例えば、年齢、血清アルブミン、ヘマトクリット、血清クレアチニン等)を研究した。臨床的に関連する薬物蓄積は、WBRT週2注入前RBC中エファプロキシラルナトリウム濃度に基づいて起こらなかった。エファプロキシラルナトリウムの用量は、充分なRBC濃度(>483μ8/ml)に達した場合予測的に治療的と考えられ、10mmHgの予測p50シフトに対応した。
【0042】
75又は100mg/kgで投与した患者のRBC中のエファプロキシラルナトリウム濃度の比例的上昇があった。より体重の重い患者は、一定用量の低体重患者よりもRBC中のエファプロキシラルナトリウム濃度より高かった。全エファプロキシラルナトリウム治療患者について、用量変化のそれが、用量変化のな開始時用量100mg/kgの患者よりも開始時の100mg/kgにおけるRBC中のエファプロキシラルナトリウム濃度がより高い。RBC中のエファプロキシラルナトリウム濃度は、NSCLCやその他の原発癌患者よりも乳癌原発患者においてより高かった。高体重乳癌原発患者の比率がより高かったからである。RBC中のエファプロキシラルナトリウム濃度は、100mg/kgのNSCLC患者及び75mg/kgの乳癌患者について匹敵したが、75mg/kgのNSCLC患者についてのRBC中のエファプロキシラルナトリウム濃度は75mg/kgの乳癌患者におけるよりも実質的により低かった。これらの分析は、最適レベルに達したRBC中のエファプロキシラルナトリウム濃度を有する患者はそうでない患者よりもより良好な結果を示したことを明らかにする。RBC濃度、成功したエファプロキシラルナトリウム+WBRT+酸素補給用量、及びMST間の明解な相関が確立された。
【0043】
【表3】

【0044】
(実施例5)効力
A.患者生存 効力の一尺度は、総患者人口中の生存者である。適切な患者について、対照群の観察された平均生存時間は、エファプロキシラルナトリウム治療群についての5.39月に比較して4.37月だった。原発のサイトとして乳癌患者において治療群対対照群において生存分配関数のために検出された統計的に高度に有意な差があった(HR=0.522、p=0.0061)。分析は、乳癌患者について総ての予備適性化共変量にわたって一定の結果を示した。
【0045】
エファプロキシラルナトリウム群に無秩序化された総ての患者における放射線応答率の予測される増加は対照群と比較して7.9%(95%CI:−0.4%−16.3%)だった(p=0.0609)。乳癌原発患者では、ロジスティック重回帰は、エファプロキシラルナトリウム治療効果が予測性応答について統計的に有意であることを示した(p=0.0209)。
【0046】
応答率の増加は延長した生存に解釈した。
B.放射線腫瘍進行 盲検セントラルレビュー(blinded central review)に基づいて、放射線進行を放射線基準のみで定める。脳における放射線腫瘍進行の決定はスクリーニングでとったコントラスト増強MRI又はCTを基準とし、WBRTの終了後1ヶ月、WBRTの終了後3ヶ月、及び死亡までその後3ヶ月毎に取った追加のスキャンと比較した。最大限二次元測定(x=縦軸、y=前後軸)を使用して二次元生成並びに応答及び放射線進行の決定について計算した。脳中の放射線腫瘍進行に対する時間をKaplan-Meier見積もりにより報告された。Gray’s test (Gray R. A class of K-sample tests for comparing the cumulative incidence of a competing risk. Annals of Statistics 1998; 16: 1141 - 1154)を使用して治療群及び対照群間の蓄積事象を比較した。脳中の放射線進行の潜在的競合リスクは進行及び追加に対する損失なしの死を含む。腫瘍進行の日付を、脳中の処置した損傷が二次元生成の25%よりも拡大する放射線文書化の日付として定義する。「処置した損傷」への言及は損傷がRT前に存在したことを意味する。
【0047】
C.生活の質(Quality of Life) Spitzer Questionnaire(SQ) and Karnofsky Performance Status(KPS)評価により生活の質を決定した。ベースライン(WBRT日10)及び総ての追加ビィジット(visits)で試験を行った。60未満にKPSスコアの持続低下を有意な低下と定義した。Spitzer Questionnaireを含む5質問を均等に重み付けをした。答えの得た5質問の内の少なくとも3質問に関する各評価について、平均スコアを各患者についてコンピューター計算した。答えを得た3質問未満の質問表を欠測値として扱った。プロトコルは、2ポイントのSpitzer Questionnaireスコアにおける持続低下を特定し、有意低下を構成した。
【0048】
治療群及び対照群間のQOL測定の比較が1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、及び1年追加時点に焦点を合わせ、WBRT日10を含めなかった。
エファプロキシラルナトリウム群対対照群において経時で安定又は改善KPSスコアの患者の高度に統計的に有意な百分率であった(χ2=9.0096、p=0.0027)。
【0049】
【表4】

【0050】
エファプロキシラルナトリウム群対対照群において経時で安定又は改善SQスコアの患者により高い百分率に向かう傾向があった(χ2=3.4675、p=0.0626)。
【0051】
【表5】

【0052】
6ヶ月及び1年で治療群間でKPSスコアカテゴリーの分布中で検出された統計的に有意差があった(各々、p=0.0046及びP=0.0070)。
(実施例6)均一開始時用量を使用する乳癌から脳転移した患者の治療プロトコル
WBRTは、総照射量が30.0Gyについて1週に5回で各々が3.0Gyの10フラクションから構成される。WBRTは、4〜8メガボルト(MV)(好適には)フォトンエネルギーの超高圧線形加速器で供給した。コバルト60も許容できる。線源皮膚間距離(source skin distance: SSD)技術及び線源軸間距離(source axis distance)技術は少なくとも80cmであるべきである。電子、素粒子、光子、又はインプラントブーストは使用しない。患者は仰向け又はその他の適切位置で処置される。頭保持具を使用して、療法の間の適切な固定性を確保し、再現性を確実にできる。治療容積は全脳を含むべきである。前方、上方及び後方に「フラッシュ(flash)」であり得る。WBRT場の下縁はC1−C2間空である。臨床徴候があった場合、小脳又は脳間下部(橋、延髄)転移の患者ではC2−C3間空に下げてもよい。後方窩の床より下に少なくとも1cm縁あり得る。全期間でレンズは直接ビームから遮蔽されるべきである。WBRT治療場と同時RT治療場とが重なってはならない。二つの対向した同軸等量ビームを使用し得る。目標照射量はビームの中間分離点における中心光線で特定した。総照射量は10日間にわたり週5日の1日当たり3.0Gyフラクションで30.0Gyである。標準全脳場に場が30.0Gy供給される。
【0053】
用量調節指針 次の条件のいずれかがいずれかのWBRT日になった場合、エファプロキシラル投与予定日を省略する。
●室内空気呼吸中の注入前SpO2が90%未満
●クレアチニン>2.0mg/dL(177μモル/L)
●退院後治療を必要とした低酸素血症
●エファプロキシラル用量調節を保証できるエファプロキシラル投与後の下記の不都合な出来事を患者が1以上経験可能:
●注入終了後で室内空気呼吸中のSpO2が90%以上で維持された前に要求される補給酸素投与が4時間以上だった。
【0054】
●エファプロキシラル投与12時間以内にエファプロキシラルに関連する吐き気及び/又は嘔吐(CTCAEグレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症
●注入前室内空気呼吸中のSpO2が一般に90〜92%であり、以前のベースラインSpO2が93%以上から低下した。
【0055】
WBRT日1及び2におけるエファプロキシラル:WBRT日1に75mg/kgエファプロキシラル投与
●WBRT日1にエファプロキシラル後上記不都合な出来事のいずれも患者が経験しなかった場合、WBRT日2に75mg/kgエファプロキシラル投与
●WBRT日1又は2にエファプロキシラル後上記不都合な出来事のいずれかを患者が経験した場合、エファプロキシラル治療予定日のエファプロキシラルを省略
●エファプロキシラル用量を100mg/kgに上げる前に患者は2継続日75mg/kgエファプロキシラル投与に耐えなければならない。
【0056】
WBRT日3〜10におけるエファプロキシラル:
●前述の2継続日75mg/kgエファプロキシラル投与後に患者が上記不都合な出来事のいずれも経験しなかった場合、100mg/kgのエファプロキシラルを投与
●100mg/kgのエファプロキシラル投与を受けた後に患者が上記不都合な出来事のいずれも経験しなかった場合、治療期間この用量を維持する。
【0057】
●100mg/kgのエファプロキシラル投与を受けた後に患者が上記不都合な出来事のいずれかを経験した場合、用量を75mg/kgに減少させ、治療期間この用量を維持する。
【0058】
●75mg/kgエファプロキシラル投与を受けた後に患者が上記不都合な出来事のいずれかを経験した場合、エファプロキシラル予定治療日のエファプロキシラルを省略する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、放射治療1日目のエファプロキシラルナトリウムの投与アルゴリズムを示す。
【図2】図2は、放射治療2日目のエファプロキシラルナトリウムの投与アルゴリズムを示す。
【図3】図3は、放射治療3〜10日目のエファプロキシラルナトリウムの投与アルゴリズムを示す。
【図4】図4は、乳癌から脳転移癌患者の1〜2日目のエファプロキシラルナトリウムの投与アルゴリズムを示す。
【図5】図5は、乳癌から脳転移癌患者の3〜10日目のエファプロキシラルナトリウムの投与アルゴリズムを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中枢神経系転移癌を有する宿主の、放射線、酸素補給、及びエファプロキシラルナトリウムの組合せに感受性の中枢神経系転移癌を治療する方法であって、
宿主に放射線を照射すること、
宿主にエファプロキシラルナトリウムを投与すること、及び
宿主に酸素補給をすること
を含み、ここで、放射線、酸素補給、及びエファプロキシラルナトリウムが、宿主の中枢神経系癌の停止又は退縮をもたらすのに効果的な量で投与される、上記治療方法。
【請求項2】
A)宿主に放射線を照射すること、
B)宿主にエファプロキシラルナトリウムを投与すること、ここで、エファプロキシラルナトリウムを下記からなる群から選択される投与量で投与すること、
C)宿主に酸素補給すること、ここで放射線、酸素補給、及びエファプロキシラルナトリウムを宿主の中枢神経系癌の停止又は退縮をもたらすのに効果的な量で投与することを含む請求項1に記載の方法であり、エファプロキシラルナトリウムの投与量が
i) 条件が下記からなる群から選択される条件の場合、100mg/kg
a)放射線治療日1、宿主は雄性≦95kgであり、SpO2≧93%
b) 放射線治療日1、宿主は雌性≦70kgであり、SpO2≧93%
c) 放射線治療日2〜10、前日の投与日に用量は75mg/kgであった、室内空気を呼吸中のSpO2が現在≧93%であり、前日の投与日に不都合な出来事が起こらなかった;ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が3時間を超えたこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、並びに前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したことからなる群から選択される
d)放射線治療日2〜10、SpO2は>90%、前日の用量は100mg/kgであり、前日の投与日に不都合な出来事が起こらなかった;ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が3時間を超えたこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したこと、並びに室内空気を呼吸中のSpO2が90%〜92%であるが前日の投与日のSpO2が≧93%であったことからなる群から選択される
ii) 条件が下記からなる群から選択される条件の場合、75mg/kg
a)放射線治療日1、宿主は雄性>95kgであり、SpO2≧93%
b)放射線治療日1、宿主は雌性>70kgであり、SpO2≧93%
c)放射線治療日1であり、SpO2は90〜92%
d)放射線治療日2〜10、前日の用量を維持、SpO2は90〜92%であり、そしてエファプロキシラルナトリウム用量を維持に導く投与日にSpO2は90〜92%だった
e)放射線治療日2〜10、前日の用量を維持、そしてSpO2は≧93%である
f)放射線治療日2〜10、前日の用量は100mg/kgで、不都合な出来事が起こる;ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が3時間を超えたこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したこと、並びに室内空気を呼吸中のSpO2が90%〜92%であるが前日の投与日のSpO2が≧93%であったことからなる群から選択される、そして
g)放射線治療日2〜10、SpO2は>90%、前日の用量は75mg/kgであり、前日の投与日に不都合な出来事が起こらなかった;ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が3時間を超えたこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したこと、並びに室内空気を呼吸中のSpO2が90%〜92%であるが前日の投与日のSpO2が≧93%であったことからなる群から選択される
iii) 条件が下記からなる群から選択される条件の場合、0mg/kg
a)SpO2は<90%、
b)放射線治療日2〜10、前日の用量は75mg/kgであり、不都合な出来事が起る;ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が3時間を超えたこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したこと、並びに室内空気を呼吸中のSpO2が90%〜92%であるが前日の投与日のSpO2が≧93%であったことからなる群から選択される、
c)放射線治療日2〜10、前日の用量は0mg/kgであり、SpO2は90〜92%であるが、エファプロキシラルナトリウムを維持に導く前日投与日のSpO2は≧93%であった、
d)放射線治療日2〜10、SpO2は>90%、前日の用量は0mg/kgであり、不都合な出来事が起こる;ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が3時間を超えたこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したこと、並びに室内空気を呼吸中のSpO2が90%〜92%であるが前日の投与日のSpO2が≧93%であったことからなる群から選択される、前記方法。
【請求項3】
A)乳癌及び中枢神経系転移癌を有する宿主に放射線を投与することおよび、
B)宿主にエファプロキシラルナトリウムを投与すること、ここで、エファプロキシラルナトリウムを下記からなる群から選択される投与量で投与すること、
C)宿主に酸素補給すること、ここで放射線、酸素補給、及びエファプロキシラルナトリウムを宿主の中枢神経系癌の停止又は退縮をもたらすのに効果的な量で投与することを含む請求項1に記載の方法であり、エファプロキシラルナトリウムの投与量が
i) 条件が下記からなる群から選択される条件の場合、75mg/kg:
a)放射線治療日1、SpO2は≧90%、クレアチニン≦2.0mg/dL、
b)放射線治療日4〜10、前日の用量は100mg/kgであり、前日に不都合な出来事が起こった;ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が4時間以上であったこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したこと、並びに室内空気を呼吸中の患者SpO2が90%〜92%であり前日の投与日にSpO2が≧93%のベースラインから減少していることからなる群から選択され、そして
c)放射線治療日2〜10、SpO2は>90%であり、前日の用量は75mg/kgで、前日の投与日に不都合な出来事が起こらなかった;ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が4時間以上であったこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したこと、並びに室内空気を呼吸中の患者SpO2が90%〜92%であり前日の投与日にSpO2が≧93%のベースラインから減少していることからなる群から選択され、
ii) 条件が、放射線治療日3〜10、前2日の用量日がそれぞれ75mg/kgまたは前日の投与日に100mg/kgであり、そして室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%であり、前日の投与日に不都合な出来事が起こらなかった場合、100mg/kgであり、ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が4時間以上であったこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したこと、並びに室内空気を呼吸中の患者SpO2が90%〜92%であり前日の投与日にSpO2が≧93%のベースラインから減少していることからなる群から選択され、そして
iii)条件が下記からなる群から選択される条件の場合、0mg/kg:
a)SpO2は、<90%、
b)クレアチニンが>2.0mg/dL、
c)前日の治療日に治療を必要とした低酸素血症を患者が発症、
d)RT日2〜10、前日の用量は75mg/kgであり、不都合な出来事が起こった、ここで、当該不都合な出来事は、エファプロキシラルナトリウム注入終了後で前日の投与日に室内空気を呼吸中のSpO2が≧90%に戻る前に酸素補給が3時間を超えたこと、前日の投与日にエファプロキシラルナトリウム投与後12時間以内にエファプロキシラルナトリウムに関連して吐き気及び/又は嘔吐(グレード2以上)又は臨床的に顕著な低血圧症を患者が経験したこと、前日の投与日に退院後に治療を必要とする低酸素血症を患者が発症したこと、並びに室内空気を呼吸中のSpO2が90%〜92%であるが前日の投与日のSpO2が≧93%であったことからなる群から選択される、前記方法。
【請求項4】
治療容積に対して10日間毎日少なくとも一度放射線を少なくとも約3グレー(Gy)フラクションで照射する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
放射線をフラクションで照射し、ここで、10フラクションを開始治療容積に対して投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
総量少なくとも約30Gyの放射線を宿主に照射する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
放射線を宿主の全脳に照射する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
エファプロキシラルナトリウムを、中心静脈アクセスデバイスを介する、若しくは末梢経路を介する、持続注入を介する経路を含む静脈内及び動脈内からなる群から選択される投与経路により投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
エファプロキシラルナトリウムを少なくとも約75mg/kg/日の開始投与量で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
エファプロキシラルナトリウムを、約483μg/mlを超えるRBC濃度を達成するように投与する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
転移癌が、肺、乳、メラノーマ、腎、及び結腸直腸から選択される原発癌から誘導される、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−534683(P2007−534683A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509652(P2007−509652)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/013708
【国際公開番号】WO2005/102367
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(504380286)アロス・セラピューティクス・インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】