説明

癌を治療するために有用なピラゾリン誘導体

本発明は、癌を治療するための、詳細には脳腫瘍、骨肉腫、口唇癌、口腔癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、膀胱癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮頸癌、肺癌、乳癌、皮膚癌を治療するための、特に大腸癌および/または腸癌および/または前立腺癌を治療するための、新規な置換ピラゾリン化合物、そのような化合物を含有する医薬組成物およびこれらの化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌を治療するための、詳細には脳腫瘍、骨肉腫、口唇癌、口腔癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、膀胱癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮頸癌、肺癌、乳癌、皮膚癌を治療するための、特には大腸癌および/または腸癌および/または前立腺癌を治療するための、新規の置換ピラゾリン化合物、そのような化合物を含有する医薬組成物、およびこれらの化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第00/76503号パンフレットは、炎症および炎症関連障害を治療するためのシクロオキシゲナーゼ−2の阻害剤としての、ならびに細胞の悪性形質転換および転移性腫瘍増殖の阻害剤としての1−(4−アミノスルホニルアリール)−3−置換5−アリール−4,5−ジヒドロ−ピラゾールを開示している。
【0003】
癌は、今もなお地球上で最も恐ろしい疾患の1つである。有効な治療方法および治療のための薬剤を見つけることは目下進行中の研究の対象であり、ヒトの余命および健康に大きな影響を及ぼすであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、癌の治療において改善された活性を示す新規な化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、式Iおよび式I’の置換ピラゾリン化合物は、癌、特には大腸癌および/または前立腺癌の治療において向上した抗腫瘍活性を示すが、これらの化合物はシクロオキシゲナーゼ−1および/またはシクロオキシゲナーゼ−2を阻害しないことが見いだされている。
【0006】
したがって、本発明の1つの態様は、式Iおよび式I’の化合物、およびそれらのジアステレオマーおよび/またはエナンチオマー、またはそれらのラセミ化合物を含むそれらの混合物、および医薬上許容されるそれらの塩を提供することである。
【化1】

式中、
1およびR2は、メチル基であり、
3およびR4は、同一または異なって、C1-6アルキル基であり、そのうちの少なくとも1つは少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている。
【0007】
好ましいのは、式I’(R3およびR4は、同一または異なって、C1-3アルキル基であり、そのうちの少なくとも1つは少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている)の化合物、およびそれらのジアステレオマーおよび/またはエナンチオマー、またはそれらのラセミ化合物を含むそれらの混合物、および医薬上許容されるそれらの塩である。
【0008】
同様に好ましいのは、式I’(R3およびR4は、メチル基であり、そのうちの少なくとも1つは少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている)の化合物、およびそれらのジアステレオマーおよび/またはエナンチオマー、またはそれらのラセミ化合物を含むそれらの混合物、および医薬上許容されるそれらの塩である。
【0009】
さらに好ましいのは、式I’(R3およびR4は、そのうちの少なくとも1つが少なくとも1つのフッ素および/または塩素原子で置換されているメチル基である)の化合物、およびそれらのジアステレオマーおよび/またはエナンチオマー、またはそれらのラセミ化合物を含むそれらの混合物、および医薬上許容されるそれらの塩である。
【0010】
いっそうより好ましいのは、式I’(R3およびR4はメチル基であり、少なくとも1つのフッ素および/または塩素原子で置換されている)の化合物、およびそれらのジアステレオマーおよび/またはエナンチオマー、またはそれらのラセミ化合物を含むそれらの混合物、および医薬上許容されるそれらの塩である。
【0011】
同様に好ましいのは、式I’(R3およびR4はCF3基である)の化合物、およびそれらのジアステレオマーおよび/またはエナンチオマー、またはそれらのラセミ化合物を含むそれらの混合物、および医薬上許容されるそれらの塩である。
【0012】
最も好ましいのは、式Iによる1−(4−アミノスルホニルフェニル)−3−トリフルオロメチル−5−(2,5−ジメチルフェニル)−4,5−ジヒドロ−ピラゾール、および式I’による1−(4−アミノスルホニルフェニル)−3−トリフルオロメチル−5−[3,5−ジ−(トリフルオロメチル)−フェニル]−4,5−ジヒドロ−ピラゾール、およびそのジアステレオマーおよび/またはエナンチオマー、またはそれらの各ラセミ化合物を含むそれらの混合物、および医薬上許容されるそれらの塩である。
【0013】
本発明の式Iの化合物は、以下の反応スキームによる一般的経路によって調製できる。
【化2】

式中、R1およびR2は上述した意味を有する。
【0014】
本発明の式Iの化合物は、式IIの化合物と、式IIIの化合物との反応によって得られる。
【化3】

式中、R1およびR2は上述した意味を有する。
【化4】

【0015】
この反応は、好ましくはアルコール、メタノールもしくはエタノール、またはエーテル、ジオキサンもしくはテトラヒドロフランのような有機溶媒中で実施される。この反応は、好ましくは酸性媒質中で発生する。酢酸のような有機酸または塩酸のような無機酸を加えるのが好ましい。この反応は塩基性媒質中でも発生することができる。ピペリジン、ピペラジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、またはナトリウムエトキシドのような塩基を加えるのが好ましい。反応温度は、周囲温度から有機溶媒の環流温度までの範囲内であってよく、反応時間は数時間から数日間まで持続することがある。
【0016】
本発明による式I’の化合物は、以下のスキームによる一般的経路によって調製できる。
【化5】

式中、R3およびR4は上述した意味を有する。
【0017】
本発明の一般式I’の化合物は、一般式II’の化合物を式IIIの化合物と反応させる工程によって得ることができる。
【化6】

式中、R3およびR4は上述した意味を有する。
【0018】
この反応は、例えばメタノールもしくはエタノールなどのアルコール、または例えばジオキサンもしくはテトラヒドロフランなどのエーテルのような有機溶媒中で実施できる。この反応は、酸性媒質中で発生することができる。酢酸のような有機酸または塩酸のような無機酸を加えるのが好ましい。この反応は塩基性媒質中でも発生することができる。この場合はピペリジン、ピペラジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、またはナトリウムエトキシドのような塩基を加えるのが好ましい。反応温度は、周囲温度から有機溶媒の環流温度までの範囲内であってよく、反応時間は数時間から数日間まで持続することがある。
【0019】
本発明の式Iの化合物を得るための合成経路の中間体である式IIの化合物は、式IV
【化7】

(式中、R1およびR2は上述した意味を有する)による置換ベンズアルデヒドをジエチルメチルホスホネートのようなジアルキルホスホネートおよび強塩基、好ましくはLDAのような有機塩基の存在下でN−フェニル−1−クロロ−トリフルオロアセチミドと反応させる工程によって、またはモノ−、ジ−、もしくはトリフルオロアセチルメチレントリフェニルホスホランおよび炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウムのような塩基とのウィッティヒ(Wittig)反応によるどちらかの周知の経路を介して調製できる。この反応は、ジクロロメタン、クロロホルムのような溶媒、またはテトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジメトキシエタンもしくはジオキサンのようなエーテル中で実施できる。反応温度は、−70℃から有機溶媒の環流温度の範囲内であってよい。反応時間は、数分間から数時間にまで及ぶことがある。
【0020】
式IIの化合物は、一般式IV(式中、R1およびR2は上記の意味を有する)のアルデヒドおよび1,1,1−トリフルオロアセトンのアルドール縮合によって調製することもできる。この反応は、例えば水酸化リチウム、ナトリウム、もしくはカリウムなどのアルカリ金属の水酸化物のような無機塩基、またはテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノールのような有機溶媒中のピペリジンなどの有機塩基の存在下、任意で水の存在下で実施できる。縮合反応温度は、−20℃から室温の範囲内であってよく、反応時間は数時間から数日間に及ぶことがある。
【0021】
式II’の化合物は、式IV’
【化8】

(式中、R3およびR4は上述した意味を有する)による置換ベンズアルデヒドをジエチルメチルホスホネートのようなジアルキルホスホネートおよび強塩基、好ましくはLDAのような有機塩基の存在下でN−フェニル−1−クロル−トリフルオロアセチミドと反応させる工程によって、またはモノ−、ジ−、もしくはトリフルオロアセチルメチレントリフェニルホスホランおよび炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウムのような塩基とのウィッティヒ反応によるどちらかの一般的経路を介して調製できる。この反応は、ジクロロメタン、クロロホルムのような有機溶媒、またはテトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジメトキシエタンもしくはジオキサンのようなエーテル中で実施できる。反応温度は、−70℃から有機溶媒の環流温度の範囲内であってよい。反応時間は、数分間から数時間にまで及ぶことがある。
【0022】
式IIの化合物は、一般式IV(式中、R3およびR4は上記の意味を有する)のアルデヒドおよび1,1,1−トリフルオロアセトンのアルドール縮合によって調製することもできる。この反応は、例えば水酸化リチウム、ナトリウム、もしくはカリウムなどのアルカリ金属の水酸化物のような無機塩基、またはテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノールのような溶媒中のピペリジンなどの有機塩基の存在下、任意で水の存在下で実施できる。縮合反応温度は、−20℃から室温の範囲内であってよく、反応時間は数時間から数日間に及ぶ。
【0023】
本発明の式IおよびI’の化合物は、それらの塩基形で、またはそれらの医薬上許容される任意の塩の形状で単離できる。
【0024】
本発明は、癌を治療するための、詳細には脳腫瘍、骨肉腫、口唇癌、口腔癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、膀胱癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮頸癌、肺癌、乳癌、皮膚癌、前立腺癌、大腸癌および/または腸癌を治療する目的で、特に大腸癌および/または腸癌および/または前立腺癌を治療する目的で薬剤を製造するために、一般式Iおよび/または式I’の少なくとも1つの置換ピラゾリン化合物の使用にさらに関する。
【0025】
本発明は、ヒトまたは動物、好ましくは幼児、小児および成人を含むヒトへ投与するための、一般式Iおよび/または式I’の少なくとも1つの化合物を含む医薬組成物にさらに関する。本発明の組成物は、当業者には既知の標準製法によって製造できる。本薬剤の組成は、周知の添加物の添加によって、投与経路に依存して変動してよい。
【0026】
本発明の医薬組成物は、例えば水または適切なアルコールなどの従来型注射用液状担体と組み合わせて非経口投与することができる。そのような注射用組成物には、安定剤、溶解補助剤、および緩衝液などの従来型の注射用医薬品賦形剤を含めることができる。これらの医薬組成物は、好ましくは、筋肉内、腹腔内、または静脈内注射することができる。
【0027】
本発明の医薬製剤は、固形もしくは液状形にある1つまたは複数の生理的適合性の担体もしくは賦形剤を含有する経口投与可能な製剤として調製することもできる。これらの製剤は、結合剤、充填剤、潤滑剤、および許容される湿潤化剤などの従来型成分を含有していてよい。本製剤は、例えば錠剤、ペレット剤、カプセル剤、トローチ錠、水性もしくは油性溶液、懸濁剤、エマルジョン、または即時放出もしくは遅延性放出させるために使用前に水もしくはその他の適切な液状媒体を用いて復元するために適する乾燥粉末形などの任意の便宜的形状を取ることができる。本発明の組成物は、多微粒子状に調製することもできる。
【0028】
経口投与用の液体は、甘味料、矯味剤、保存料、および乳化剤などの所定の添加剤を含有することもできる。植物油を含有する、経口投与用の非水性液体組成物もまた調製できる。そのような液体組成物は、単位用量で例えばゼラチンカプセル剤に便宜的にカプセル充填されてよい。
【0029】
本発明の医薬組成物の各製剤は、局所的に、または坐剤として投与することもできる。
【0030】
ヒトおよび動物のための1日量は、各動物種に基づく因子、または例えば年齢、性別、体重もしくは疾患の程度などの他の因子に依存して変動することがある。ヒトの1日量は、1日当たり1回または数回摂取するように投与する場合に活性物質の量で1〜2,000mg、好ましくは1〜1,500mg、より好ましくは1〜1,000mgであってよい。
【実施例】
【0031】
表1には実施例の化合物名、そして表2にはそれらの物理的データおよび分光分析データをまとめた。
【0032】
(実施例1)
4−[5−(2,5−ジメチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロピラゾール−1−イル]−ベンゼンスルホンアミドの調製
(工程1)
(E)−4−(2,5−ジメチル−フェニル)−1,1,1−トリフルオル−ブト−3−エン−2−オンの調製
【化9】

【0033】
丸底フラスコ内で5g(37mmol)の2,5−ジメチルベンズアルデヒド、3ml(53mmol)の氷酢酸および3.6ml(37.3mmol)のピペリジンを70mlのTHFと混合した。この溶液を5〜10℃へ冷却し、4.7g(41.4mmol)のCF3COCH3を入れて溶液中で泡立たせた。この反応混合液を2時間にわたり攪拌しながら室温へ加温するに任せた。追加して2.1g(19mmol)のCF3COCH3を加え、この混合液を2時間攪拌した。最後に第3部分の2gのCF3COCH3を加え、これを2時間攪拌した。引き続き、13mlの20%塩化アンモニウム溶液を加え、減圧下で溶媒を除去した。水を加えて、この混合液をジクロロメタンで抽出した。有機相を水、5%H2SO4、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムの上方に通して乾燥させた。この混合液を濾過し、溶媒を除去した。8.5gの粗生成物が得られたので、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、石油エーテルで溶出した。2.1gの4−(2,5−ジメチルフェニル)−1,1,1−トリフルオロ−3−ブテン−2−オンが油の形状で得られた。
IR(film,cm-1):1718,1595.7,1200.7,1145.8,1058.4。
1H−NMR(CDCl3,δ):2.36(s,3H),2.45(s,3H),6.94(d,J=15.8Hz,1H),7.15(m,2H),7.49(s,1H),8.28(d,J=15.8Hz,1H)。
【0034】
(工程2)
4−[5−(2,5−ジメチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル]−ベンゼンスルホンアミドの調製
【化10】

【0035】
不活性雰囲気を含む容量100mlの丸底フラスコ内で40mlの無水エタノール中で1.47g(6,48mmol)の(E)−4−(2,5−ジメチルフェニル)−1,1,1−トリフルオロ−3−ブテン−2−オン、1.49g(7.13mmol)の4−アミノスルホニルフェニルヒドラジン塩酸塩および0.77mlのピペリジンを混合し、20時間にわたり攪拌しながら還流させた。溶媒を減圧下で除去し、残留物へ水を加え、フラスコを数分間振とうし、混合液を濾過して固体を収集した。2.6gの粗固体物質が得られたので、これをエタノールから再結晶化させると、200〜202℃の融点を備える1.75gの1−(4−アミノスルホニル)−4,5−ジヒドロ−5−(2,5−ジメチルフェニル)−3−トリフルオロメチル−1H−ピラゾールが得られた。
IR(KBr,cm-1):3385.5,3274.7,1594.3,1327.8,1149.1。
1H−NMR(d6−DMSO,δ):2.1(s,3H),2.3(s,3H),2.84(dd,J=6.8y 12.8Hz,1H),3.9(dd,12.8y 13.2Hz,1H),5.8(dd,J=6.8y 13.2Hz,1H),6.7(s,1H),6.9(m,3H),7.1(m,1H),7.6(d,J=8.9Hz)。
【0036】
(実施例2)
4−[5−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロピラゾール−1−イル]−ベンゼンスルホンアミドの調製
(工程1)
(E)−4−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−1,1,1−トリフルオロ−ブト−3−エン−2−オンの調製
【化11】

【0037】
丸底フラスコ内で20mlの無水THFを不活性雰囲気下で−70℃へ冷却した。THF/ヘキサン中の8ml(16mmol)の2M LDA溶液および5mlのTHF中に溶解させた1.17ml(8mmol)のジエチルメチルホスホネートを加え、30分間攪拌した。1.66g(8mmol)のN−フェニル−1−クロロ−トリフルオロアセチミド(Tamura,K.;Mizukami,H.et al.;J.Org.Chem.,1993,58,32−35にしたがって調製した)を滴加し、1時間にわたり攪拌し続けた。1.93g(8mmol)の3,5−ビストリフルオロメチルベンズアルデヒドを加え、この反応混合液を16時間にわたり室温となるように攪拌した。20mlの2N HClを加え、さらに4時間攪拌し続けた。回転式蒸発によってTHFを除去し、エチルエーテルを用いて残留物を抽出し(3×30ml)、結合した有機相を重炭酸ナトリウム溶液(5%)および飽和塩化ナトリウム溶液(pH約6)で洗浄した。無水硫酸ナトリウムの上方に通して乾燥させ、溶媒を蒸発させた後に、2.66gの直ちに固化する油性粗生成物が得られたので、これをそれ以上精製せずに次の工程で使用した。
IR(KBr,cm-1):1731,1614,1382,1280,1135,1056。
1H−RMN(CDCl3,δ):7.1(d,J=16Hz,1H);7.9(m,4H)。
【0038】
(工程2)
4−[5−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル]−ベンゼンスルホンアミドの調製
【化12】

【0039】
不活性ガス雰囲気下の丸底フラスコ内で0.336g(1mmol)の(E)−4−(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)−1,1,1−トリフルオル−3−ブテン−2−オン、0.25g(1.1mmol)の4−アミノスルホニルフェニル)−ヒドラジン塩酸塩および0.12ml(1.2mmol)のピペリジンを10mlのエタノール中に溶解させた。この混合液を12時間にわたり還流させた。回転式蒸発によって溶媒を除去した後、残留物へ水を加え、濾過によって固体を収集した。粗固体をエタノール/水混合液から再結晶化させた。0.37g(収率73%)の白色固体の4−[5−(3,5−ビス−トリフルオルメチルフェニル)−3−トリフルオルメチル−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル]−ベンゼンスルホンアミドが得られた。融点:195〜197℃。
IR(KBr,cm-1):3362,3264,1597,1509,1334,1279,1136,903。
1H−RMN(CDCl3,δ):1.8(bs,2H),3.0(dd,J=7.1y 17.8Hz,1H),3.8(dd,J=12.9y 17.8Hz,1H),5.5(dd,J=7.1y 12.7Hz,1H),6.95(d,J=8.8Hz,2H),7.65(s,2H),7.7(d,J=8.8Hz,2H),7.8(s,1H)。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
化合物の名称
・4−[5−(2,5−ジメチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル]−ベンゼンスルホンアミド。
・4−[5−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−3−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル]−ベンゼンスルホンアミド。
【0043】
(生物学的評価)
(抗腫瘍活性)
本発明の化合物の抗腫瘍活性は、XTTキットを製造業者(Roche Diagnostics社)の勧告にしたがって使用して、細胞代謝能力(生育度)を測定することで評価した。このアッセイは、非曝露細胞を含有する対照、ビヒクル、または培地に化合物を加えたものを含む細胞を用いて、少なくとも5回実施した。細胞は、96ウェルプレート内の100μlの培地中へ播種し、24時間にわたりインキュベートした。その後、本発明の化合物を様々な濃度の組み合わせ(1μM〜80μM)で、4時間(短期間XTT)または60時間(長期間XTT)にわたり加えた。インキュベーション期間の終了時に、XTTを含有する50μlの混合液および電子カップリング試薬を各ウェルに加えた。37℃で4時間にわたりインキュベートした後、490nmでの吸光度を記録した。各化合物の増殖阻害活性は、ブランクの吸光度を減じることによって入手し、未処置対照と比較した細胞増殖阻害のパーセンテージとして表示した。阻害濃度50(IC50)は、Sigmaplot 5.0ソフトウエアを使用してヒル(Hill)のS字状方程式(3種のパラメータ)を用いて、化合物濃度対細胞生育度(%)の用量反応曲線から決定した。
【0044】
【表3】

【0045】
実施例1および2の化合物は、酵素COX−1およびCOX−2に対する阻害活性を全く示さなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IおよびI’
【化1】

(式中、
1およびR2は、メチル基であり、
3およびR4は、同一または異なって、C1-6アルキル基であって、そのうちの少なくとも1つは少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている)の化合物、
そのジアステレオマーおよび/またはエナンチオマーまたはそのラセミ化合物を含むそれらの混合物、または医薬上許容されるそれらの塩。
【請求項2】
3およびR4は、同一または異なって、C1-3アルキル基であって、そのうちの少なくとも1つは少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている請求項1の式I’に記載の化合物。
【請求項3】
3およびR4は、同一または異なって、メチル基であって、そのうちの少なくとも1つは少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている請求項1の式I’に記載の化合物。
【請求項4】
3およびR4は、メチル基であって、そのうちの少なくとも1つは少なくとも1つのフッ素および/または塩素原子で置換されている請求項1の式I’に記載の化合物。
【請求項5】
3およびR4は、少なくとも1つのフッ素および/または塩素原子で置換されているメチル基である請求項1の式I’に記載の化合物。
【請求項6】
3およびR4はCF3基である請求項1の式I’に記載の化合物。
【請求項7】
1−(4−アミノスルホニルフェニル)−3−トリフルオロメチル−5−(2,5−ジメチルフェニル)−4,5−ジヒドロ−ピラゾールである請求項1の式I’に記載の化合物。
【請求項8】
1−(4−アミノスルホニルフェニル)−3−トリフルオロメチル−5−[3,5−ジ−(トリフルオロメチル)−フェニル]−4,5−ジヒドロ−ピラゾールである請求項6の式I’に記載の化合物。
【請求項9】
医薬上許容される担体と、請求項1〜8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物とを含む医薬組成物。
【請求項10】
癌治療用の医薬組成物を調製するための請求項1〜8のいずれか一項に記載の式Iおよび/または式I’の少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項11】
脳腫瘍、骨肉腫、口唇癌、口腔癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、膀胱癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮頸癌、肺癌、乳癌、皮膚癌、および/または前立腺癌の治療用の医薬組成物を調製するための請求項10に記載の式Iおよび/またはI’の少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項12】
大腸癌、腸癌および/または前立腺癌の治療用の医薬組成物を調製するための請求項10に記載の式Iおよび/または式I’の少なくとも1つの化合物の使用。

【公表番号】特表2007−522180(P2007−522180A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552580(P2006−552580)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001656
【国際公開番号】WO2005/077910
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(500031124)ラボラトリオス・デル・ドクトル・エステベ・ソシエダッド・アノニマ (55)
【Fターム(参考)】