癌化生物標本の検出方法、および、使用する検査試薬
【課題】癌化生物標本の検出方法と使用する検出薬剤を提供する。
【解決手段】癌化生物標本の検出方法は、生物標本を提供するステップと、第一吸着ステップと、第一脱着ステップと、第一判断ステップと、からなる。第一吸着ステップは、生物標本を第一検査試薬に浸して、第一吸着剤を吸着するステップからなり、生物標本に物理的に吸着する。第一脱着ステップは、生物標本を第一脱着試薬に第一期間浸すステップからなる。第一判断ステップは、生物標本上の第一吸着剤の含量を測定し、生物標本内の癌部の分布を判断する。本発明は、癌化生物標本の物理吸着性質の差異を利用し、各種癌検出に幅広く適用される。本発明は、快速、且つ、非侵襲式検出方法であるので、繰り返し使用、比較が可能である。
【解決手段】癌化生物標本の検出方法は、生物標本を提供するステップと、第一吸着ステップと、第一脱着ステップと、第一判断ステップと、からなる。第一吸着ステップは、生物標本を第一検査試薬に浸して、第一吸着剤を吸着するステップからなり、生物標本に物理的に吸着する。第一脱着ステップは、生物標本を第一脱着試薬に第一期間浸すステップからなる。第一判断ステップは、生物標本上の第一吸着剤の含量を測定し、生物標本内の癌部の分布を判断する。本発明は、癌化生物標本の物理吸着性質の差異を利用し、各種癌検出に幅広く適用される。本発明は、快速、且つ、非侵襲式検出方法であるので、繰り返し使用、比較が可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌化生物標本の検出方法と使用する検査試薬に関するものであって、特に、物理吸着性質の差異を利用した癌化生物標本の検出方法と使用する検査試薬に関するものである。
【背景技術】
【0002】
臨床上、癌の早期診断は困難で、一般に、病人が身体に異常を感じて病院に検査に行くときには、既に、癌の進行が中末期であったり、その他の器官に転移していることが多い。よって、簡単、且つ、快速な方法で、癌の早期発見を達成することが、医学研究スタッフの努力目標である。
【0003】
過去に、各種異なる癌に対して、多くの腫瘍バイオマーカー、例えば、癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen, CEA)、或いは、EGTM(European Group on Tumour Marker)等が発展していて、これらのマーカーは敏感性と特異性が悪いという問題があり、且つ、サンプリングから検出まで1〜2週間の時間がかかる。よって、この方法は癌患者の治療後の追従手段として用いられるが、早期発見の根拠にはならない。
【0004】
米国特許第5726061号中、生化学酵素を利用して、二糖類マーカー(Disaccharide marker,-D-Gal(1-3)-D-GalNAc(1-Thr/Ser)、および、単糖類マーカー(D-半乳糖、および、2-アセトアミド-2-デオキシ-D半乳糖(2-acetamido-2-deoxy-D-galactose))を検出するので、特定の抗体を製造して腫瘍抗原検出を実行する必要がある。
【0005】
この他、米国特許第6187591号中、結腸癌細胞表面の炭素鎖長さが12〜20の脂肪族アルデヒド(aliphatic aldehyde)の表面マーカーに対し、シップ試薬 (Schiff's reagent)により化学反応を実行して、結腸粘膜組織に対し結腸癌の早期検出を実行しているが、この検出方法は単一細胞に対してテストできない。
【0006】
この他、口腔癌中、遺伝子により癌を検出するものがあるが、その工程は複雑で、短時間では検出できない。よって、快速で、且つ、単一細胞、或いは、組織検体に対し検出を実行する方法が必要である。
【0007】
上述のように、現在、単一細胞、或いは、組織検体に対する検出方法により、簡単、且つ、快速な各種癌の早期発見が可能な方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、癌化生物標本の検出方法と使用する検査試薬を提供し、検査試薬と癌化生物標本の物理吸着性、および、検査試薬と正常な生物標本の物理吸着性の差異を利用し、各種癌の検出に幅広く応用でき、快速、且つ、非侵襲性の方式で、繰り返し使用、比較できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施例によると、癌化生物標本の検出方法は、生物標本を提供するステップと、第一吸着ステップと、第一脱着ステップと、第一判断ステップと、からなる。第一吸着ステップは、生物標本を、第一吸着剤を含む第一検査試薬に浸し、第一吸着剤は、物理的吸着により生物標本に吸着する。第一脱着ステップは、生物標本を第一脱着試薬に第一所定期間浸す。第一判断ステップは、第一吸着剤が生物標本に吸着する含量を測量して、生物標本が癌化していないか判断する。
【0010】
本発明のもう一つの実施例によると、癌化生物標本を検出する検査試薬は吸着剤を含む。検査試薬により癌化生物標本を検出する方法は、生物標本を提供するステップと、生物標本を検査試薬に浸し、吸着剤が物理的吸着により生物標本に吸着する吸着ステップと、生物標本を脱着試薬に所定期間浸す脱着ステップと、吸着剤が生物標本に吸着する含量を測量し、生物標本が癌化していないか判断する判断ステップと、からなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、癌化生物標本の物理吸着性質の差異を利用し、各種癌検出に幅広く適用され、また、快速、且つ、非侵襲式検出方法であるので、繰り返し使用、比較が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例による癌化生物標本の検出方法のフローチャートである。
【図2】本発明の実施例による癌化生物標本の検出方法のフローチャート図である。
【図3】細胞標本がパラフィン(Paraffin)を吸着する赤外線動力学イメージを示す図である。
【図4】細胞標本が蜜蝋を吸着する赤外線動力学イメージを示す図である。
【図5】細胞標本がパラフィンを吸着する赤外線動力学イメージを示す図である。
【図6】細胞標本が蜜蝋を吸着する赤外線動力学イメージを示す図である。
【図7】細胞標本がトリアコンタン(Triacontane)を吸着する赤外線動力学イメージを示す図である。
【図8】細胞標本がミリスチン酸エチル(ethyl myristate)を吸着する赤外線動力学イメージである。
【図9】細胞標本が3,5,5-トリメチルヘキシル-3,5,5-トリメチルカプロン酸(3,5,5-trimethylhexyl-3,5,5-trimethylcaproate)を吸着する赤外線動力学イメージを示す図である。
【図10】組織標本がパラフィンを吸着する赤外線動力学イメージを示す図である。
【図11】細胞標本が蜜蝋を吸着する赤外線動力学イメージを示す図である。
【図12】細胞標本が蛍光蝋を吸着する赤外線動力学イメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
公知の癌化生物標本の細胞膜脂質組成と正常な生物標本の細胞膜脂質組成は異なるので、癌化生物標本の物理吸着力と正常な生物標本の物理吸着力は差異がある。本発明は、この特性を利用し、癌化生物標本と正常な生物標本が異なる物理吸着力の吸着剤により、癌化の可能性がある生物標本の検出を実行する。
【0014】
上述の原理によると、本発明は、癌化生物標本の検出方法を提供する。図1は、本考案の実施例による癌化生物標本の検出方法を示すフローチャートであって、まず、ステップS11で、生物標本、例えば、一組織や一細胞を提供する。
【0015】
続いて、第一吸着ステップS12を実行し、生物標本を第一検査試薬に浸す。第一検査試薬は第一吸着剤を含み、第一吸着剤は、物理吸着により生物標本に吸着する。第一吸着剤の癌化生物標本に対する物理吸着力は、正常な生物標本に対する物理吸着力より大きい。例えば、第一吸着剤は炭素鎖の長さが16〜46の長鎖エステル化合物(long chain ester)である。
【0016】
或いは、第一吸着剤の正常な生物標本に対する物理吸着力は、癌化生物標本に対する物理吸着力より大きい。例えば、第一吸着剤は炭素鎖の長さが21〜30の長鎖アルカン化合物(long chain alkane)である。
【0017】
第一吸着ステップS12完成後、第一脱着ステップS13を実行し、生物標本を第一脱着試薬に第一所定時間浸す。例えば、第一脱着試薬は有機溶剤であり、生物標本に付着した第一吸着剤を除去する。物理吸着力が生物標本に対して悪い第一吸着剤は脱着試薬により容易に脱着される。
【0018】
生物標本を第一脱着試薬に浸す第一所定時間は多くの要素によって決定され、例えば、第一吸着剤と第一脱着試薬の種類、および、濃度などである。この他、異なる段階の癌化生物標本の物理吸着力が異なるので、第一所定時間を調整して、異なる段階の癌化生物標本の第一吸着剤の付着含量により、生物標本の癌化程度を識別する。
【0019】
最後に、第一判断ステップS14を実行し、第一吸着剤が生物標本に付着する含量を測量して、生物標本が癌化していないか判断する。一実施例中、第一吸着剤が生物標本に付着する含量は、赤外線スペクトルかラマンスペクトルを測量することにより得られ、赤外線スペクトル範囲とラマンスペクトル範囲は3000-2800 cm-1の間である。
【0020】
もう一つの実施例中、第一検出試薬は更に染料を含み、染料の第一吸着剤に対する親和性は、生物標本に対する親和性より高く、生物標本の非専一性結合を回避する。染料は、好ましくは、蛍光染料、例えば、LC6500、アロフィコシアニン (Allophycocyanin, APC)、或いは、APC-Cy7である。よって、第一吸着剤が生物標本に吸着する含量は、蛍光スペクトルを測量することにより得られる。注意すべきことは、染料は蛍光染料に限定されず、適当な可視光染料であれば、本発明に適用できる。
【0021】
第一脱着ステップS13、および、第一判断ステップS14は何度も繰り返し実行でき、互いに比較して、最適な検査結果を得る。詳しくは、前述のように、生物標本を第一脱着試薬に浸す第一所定時間が第一吸着剤が生物標本に吸着する含量に影響するので、第一脱着ステップ13Sと第一判断ステップS14を何度も実行して第一所定時間を変化させ、生物標本中の異なる領域の個別の癌化程度を検出することができる。
【0022】
一実施例中、本発明の検出方法は、更に、第一プレクリーニングステップを含み、第一吸着ステップS12の前、生物標本を第一脱着試薬に浸し、浸す時間は第一所定時間より長く、これにより、雑物を除去して、背景雑音を低下させる。
【0023】
図2を参照すると、本発明のもう一つの好ましい実施例による癌化生物標本の検出方法は、図1で示されるステップ以外に、更に、第二吸着ステップS21、第二脱着ステップS22、および、第二判断ステップS23を含む。第二吸着ステップS21は、生物標本を、第二吸着剤を含む第二検出試薬に浸し、第二吸着剤が物理吸着により生物標本に吸着する。第二脱着ステップS22は、生物標本を第二脱着試薬に第二所定時間浸し、第二脱着試薬が有機溶剤で、生物標本に吸着した第二吸着剤を除去する。第二判断ステップS23は、第二吸着剤が生物標本に吸着した含量を測量して、生物標本が癌化していないか判断する。第二脱着ステップS22、および、第二判断ステップS23は、何度も繰り返し、互いに比較して、最適な検出結果を得る。
【0024】
前述のように、第一吸着剤の癌化生物標本に対する物理吸着力は、正常な生物標本に対する物理吸着力より大きいか、小さい。よって、好ましい実施例中、本発明は、癌化生物標本に対する物理吸着力が、正常な生物標本に対する物理吸着力より、それぞれ、大きい、小さい二種類の吸着剤を使用して、癌化生物標本の吸着状況を比較する。
【0025】
第一吸着剤の癌化生物標本に対する物理吸着力は、正常な生物標本に対する物理吸着力より大きく、第二吸着剤の正常な生物標本に対する物理吸着力は、癌化生物標本に対する物理吸着力より大きい。例えば、第一吸着剤は長鎖エステル化合物で、炭素鎖の長さは16〜46である。第二吸着剤は長鎖アルカン化合物で、炭素鎖の長さが21〜30である。
【0026】
或いは、第一吸着剤の正常な生物標本に対する物理吸着力は、癌化生物標本に対する物理吸着力より大きく、第二吸着剤の癌化生物標本に対する物理吸着力は、正常な生物標本に対する物理吸着力より大きい。例えば、第一吸着剤は長鎖アルカン化合物で、炭素鎖の長さは21〜30である。第二吸着剤は長鎖エステル化合物で、炭素鎖の長さは16〜46である。
【0027】
一実施例中、本発明の検出方法は、更に、第二プレクリーニングステップを含み、第二吸着ステップS21の前、生物標本を第二脱着試薬に浸し、浸す時間は第二所定時間より長く、これにより、雑物を除去して、背景雑音を低下させる。
【0028】
一実施例中、第二判断ステップS23は前述の第一判断ステップS14で使用される方法と同じで、好ましい比較結果を得る。
【0029】
以下では、本発明は、口腔癌や結腸癌の生物標本の検出を開示しているが、注意すべきことは、本発明は癌化生物標本と正常な生物標本の物理吸着性質の差異を利用するので、各種癌に幅広く利用できる。
[実施例1]
【0030】
以下では結腸癌細胞の検出ステップを示す。
1.細胞標本を低輻射スライド(Low-e slide)に固定し、ジメチルベンゼン(キシレン)(Dimethylbenzene, Xylene,C8H10)に20分間浸した後、細胞標本の赤外線吸収スペクトルとイメージを得て、後続の癌検査過程の参考背景とする。本検査プロセスは、25℃のジメチルベンゼン溶剤と検査溶液下で実行し、且つ、標本は室温下に乾燥される。
2.細胞標本のスライドを5 wt%(重量パーセント濃度)の第一吸着剤パラフィン (Paraffin, C25H52)のジメチルベンゼン溶液の試験管に2分浸した後取り出し、室温に10分放置して、標本を乾燥させる。
3.更に、ジメチルベンゼンで標本スライドを5秒脱着させ、室温下に乾燥させた後、スペクトルとイメージを得る。
4.上述のステップ3を二回繰り返して、ジメチルベンゼンがパラフィンを5秒、10秒、および、15秒脱着する三個の脱蝋タイミングを完成する。
【0031】
図3は、細胞標本がパラフィンを吸着する赤外線動力学のイメージである。(a)、(f)、および、(k)はそれぞれ、人類の結腸の正常な細胞CCD-18Co、結腸癌細胞SW-480、および、SW-403等の細胞標本の白光イメージである;(b)、(g)、および、(l)はそれぞれ、CCD-18Co、SW-480、および、SW-403等の細胞標本をジメチルベンゼン溶液に20分浸した後乾燥させ、赤外線波数3000−2800 cm-1で積分した赤外線スペクトルイメージが、パラフィン吸着、および、脱着過程の参考背景イメージとする;(c-e)、(h-j)、および、(m-o)はそれぞれ、CCD-18Co、SW-480、および、SW-403等の細胞標本がそれぞれ、パラフィン脱着5 秒、10 秒、15秒した赤外線スペクトルイメージである。参考背景のスペクトルとイメージ(細胞標本をジメチルベンゼンに20分間浸したスペクトルとそのイメージ)と、細胞標本が異なるタイミングのパラフィン脱着を実行するスペクトルとイメージを比較すると、正常な細胞は3000−2800 cm-1スペクトル領域間で、パラフィンの残留により増加した信号を示し、癌細胞のパラフィン残留量は僅かである。
5.標本を第二吸着剤蜜蝋(Beeswax, C46H92O2)に吸着するプロセスを実行するため、再度、ジメチルベンゼンに標本を20分浸して、残留したパラフィンを除去し、乾燥後、細胞標本のスペクトルを得て、即ち、細胞をジメチルベンゼンに20分浸した後の赤外線吸収スペクトルとイメージである。
6.細胞標本のスライドを2.5 wt%の蜜蝋のジメチルベンゼン溶液の試験管中に2分浸し、取り出した後、室温下に10分間置いて、標本を乾燥させる。
7.ジメチルベンゼンにより標本スライドの蜜蝋を脱着し、室温下に放置して乾燥させた後、スペクトルを得ると共に、背景値を除き、即ち、細胞が吸着した蜜蝋がジメチルベンゼン溶剤により脱蝋後5秒の赤外線吸収スペクトルとイメージである。
8.上述のステップ7を二回繰り返すと、ジメチルベンゼンが蜜蝋を5秒、10秒、15秒脱着する三個の脱蝋タイミングが完成する。
【0032】
図4は、細胞標本が蜜蝋を吸着する赤外線動力学イメージである。(a)、(f)、および、(k)はそれぞれ、CCD-18Co、SW-480、および、SW-403等の細胞標本の白光イメージである;(b)、(g)、および、(l)はそれぞれ、CCD-18Co、SW-480、および、SW-403等の細胞標本をジメチルベンゼン溶液に20分浸して乾燥させた後、赤外線波数3000−2800 cm-1で積分した赤外線スペクトルイメージが、蜜蝋吸着、および、脱着過程の参考背景イメージとする;(c-e)、(h-j)、および、(m-o)は、CCD-18Co、SW-480、および、SW-403等の細胞標本がそれぞれ、蜜蝋を脱着する時間が5秒、10秒、15秒の赤外線スペクトルイメージである。参考背景のスペクトルイメージ(細胞標本をジメチルベンゼンに20分浸したスペクトルイメージ)と、細胞標本が異なるタイミングの蜜蝋脱着を実行するスペクトルイメージを比較し、癌細胞が3000−2800 cm-1スペクトル領域間で、蜜蝋の残留により増加する信号を表示し、正常な細胞の蜜蝋残留は僅かである。よって、上述の方法は、快速、且つ、効果的に、正常細胞と癌細胞を区別し、結腸癌検査に運用することができる。
[実施例2]口腔癌細胞検査(I)
【0033】
口腔癌細胞の検査も上述のステップを使用することができる。但し、この実験中、第一吸着剤、および、第二吸着剤は、それぞれ、パラフィンと蜜蝋で、その濃度は5 wt%である。
【0034】
図5は、細胞標本がパラフィンを吸着する赤外線動力学イメージである。(a)と(f)は、それぞれ、人類の正常な口腔細胞NHOKの細胞標本と口腔癌細胞OECM-1の細胞標本の白光イメージである;(b)、および、(g)は、それぞれ、NHOK、および、OECM-1細胞標本をジメチルベンゼン溶液に20分浸して乾燥させた後、赤外線波数3000−2800 cm-1で積分した赤外線スペクトルイメージが、パラフィンの吸着、および、脱着過程の参考背景イメージとする;(c-e)はNHOK細胞標本、および、(h-j)はOECM-1細胞標本が、それぞれ、パラフィンを脱着する時間が5秒、10秒、15秒の赤外線スペクトルイメージである。図のように、NHOKは明らかなパラフィンの吸着が見られる。
【0035】
図6は、細胞標本が蜜蝋を吸着する赤外線動力学イメージである。(a)、および、(f)は、それぞれ、人類の口腔の正常な黏膜細胞NHOK、および、口腔癌細胞OECM-1の白光イメージ;(b)、および、(g)は細胞標本をジメチルベンゼン溶液に20分浸して乾燥させた後、赤外線波数3000−2800 cm-1で積分した赤外線スペクトルイメージで、蜜蝋の吸着、および、脱着プロセスの參考背景イメージとする;(c-e)はNHOK細胞標本、および、(h-j)はOECM-1細胞標本の蜜蝋脱着時間が5秒、10秒、15 秒の赤外線スペクトルイメージである。図のように、OECM-1は明らかな蜜蝋の吸着が見られる。
[実施例3]口腔癌細胞検査(II)
【0036】
実験ステップは、実施例1のステップ1からステップ8で、第一粘着剤はトリアコンタン(Triacontane, C30H62)で、その濃度は5 wt%である;第二吸着剤はミリスチン酸エチル(ethyl myristate, C16H32O2)でその濃度は7.5 wt%である。
【0037】
図7は、細胞標本がトリアコンタンを吸着する赤外線動力学イメージである。口腔類表皮癌腫株細胞(oral squamous cancercells、OECM-1)はジメチルベンゼンにより5秒脱着され、トリアコンタン残留信号が3000-2800 cm-1の赤外線吸収スペクトルにある。
【0038】
図8は、細胞標本がミリスチン酸エチルを吸着する赤外線動力学イメージである。口腔ケラチノサイト(normal human oral keratinocyte 、NHOK)はジメチルベンゼンにより5秒脱着され、多くのミリスチン酸エチル残留信号が3000-2800 cm-1の赤外線吸収スペクトルにある。
[実施例4]口腔癌細胞検査(III)
【0039】
実施例のステップは、実施例1のステップ1からステップ4で、第一吸着剤は分枝鎖を有する3,5,5-トリメチルヘキシル-3,5,5-トリメチルカプロン酸 (3,5,5-trimethylhexyl-3,5,5-trimethylcaproate, C18H36O2 )で、その濃度は10 wt%である。
図9は細胞標本が3,5,5-トリメチルヘキシル-3,5,5-トリメチルカプロン酸を吸着する赤外線動力学イメージである。正常な口腔ケラチノサイト(NHOK)はジメチルベンゼンにより5秒脱着され、多くの3,5,5-トリメチルヘキシル-3,5,5-トリメチルカプロン酸残留信号が3000-2800 cm-1の赤外線吸収スペクトルにある。
[実施例5]口腔癌化組織検査
【0040】
以下は、口腔癌化組織の検査ステップを示す。
1.組織を低輻射スライド上に固定して、適当な溶剤で、組織標本を包埋したパラフィン、或いは、包埋物質を除去すると共に、赤外線吸収スペクトルにより、包埋物質の残留がないか確認する。標本が乾燥した後、再度、ジメチルベンゼン溶剤に60分浸して、残留した有機物を除去する。最後に、この組織標本の赤外線吸収スペクトルとイメージを得て、後続ステップの参考背景とする。
2.5 wt%の第一吸着剤パラフィンのジメチルベンゼン溶液を組織標本のスライドに垂らし、室温下に2時間置いて、乾燥させる。
3.ジメチルベンゼン溶剤によりパラフィンを30秒脱着し、乾燥させて、赤外線吸収スペクトルとそのイメージを得る。
4.ステップ3を繰り返し、ジメチルベンゼンで30秒、60秒パラフィン脱着するタイミングを完成する。
【0041】
図10は、組織標本がパラフィンを吸着する赤外線動力学イメージである。(a)、および、(e)はそれぞれ、人類の口腔の正常な黏膜組織、および、口腔癌化組織切片(T2N1G1)の白光イメージである;(b)、および、(f)は組織切片をジメチルベンゼン溶剤に60分浸し、乾燥させたあと、赤外線波数3000−2800 cm-1で積分した赤外線スペクトルイメージが、パラフィンの吸着、および、脱着過程の参考背景イメージとする;(c)、および、(g)はそれぞれ、正常、および、口腔癌化組織切片をジメチルベンゼンで30秒パラフィンを脱着した紅外スペクトルイメージである;(d)、および、(h)は、それぞれ、正常な、および、口腔癌化組織切片をジメチルベンゼンで60秒パラフィンを脱着した紅外スペクトルイメージである。
【0042】
参考背景のスペクトルイメージと、細胞標本が異なるタイミングのパラフィン脱着を実行するスペクトルイメージを比較すると、正常組織は3000−2800 cm-1スペクトル領域間で、パラフィン残留により増加する信号を示し、逆に癌化組織のパラフィン残留量は僅かである。
5.標本が第二吸着剤蜜蝋を吸着するプロセスを実行するため、もう一度、ジメチルベンゼンに標本を60分浸して、残留したパラフィンを除去し、乾燥後、細胞標本のスペクトルを得て、即ち、組織をジメチルベンゼンに60分浸した後の赤外線吸収スペクトルイメージである。
6.5 wt%の第二吸着剤蜜蝋のジメチルベンゼン溶液を組織標本のスライドに垂らし、室温下に1時間置いて、乾燥させる。
7.組織標本が乾燥後、ジメチルベンゼン溶剤により脱蝋を30秒実行する。最後に、室温下に乾燥させて、スペクトルイメージを得る。
8.ステップ7を繰り返し、ジメチルベンゼンで蜜蝋を30秒、60秒脱着する二個のタイミングを完成する。
【0043】
図11は、組織標本が蜜蝋を吸着する赤外線動力学イメージである。(a)、および、(e)はそれぞれ、人類の口腔の正常な黏膜組織、および、口腔癌化組織切片(T2N1G1)の白光イメージである;(b)、および、(f)は組織切片をジメチルベンゼン溶剤に20分浸し、乾燥させたあと、赤外線波数3000−2800 cm-1で積分した赤外線スペクトルイメージが、蜜蝋の吸着、および、脱着過程の参考背景イメージとする;(c)、および、(g)はそれぞれ、正常な黏膜組織、および、口腔癌化組織切片をジメチルベンゼン溶剤で30秒蜜蝋を脱着した紅外スペクトルイメージである;(d)、および、(h)は、それぞれ、正常な黏膜組織、および、口腔癌化組織切片をジメチルベンゼン溶剤で60秒蜜蝋を脱着した紅外スペクトルイメージである。
【0044】
参考背景のスペクトルイメージと、細胞標本が異なるタイミングで蜜蝋脱着を実行するスペクトルイメージを比較すると、癌化組織は3000−2800 cm-1スペクトル領域間で、蜜蝋残留により増加する信号があり、逆に正常組織の蜜蝋残留量は僅かである。この方法により、快速、且つ、効果的に正常組織と癌化組織を区分すると共に、口腔癌と結腸癌の検査に運用できる。
[実施例6]蛍光顕微技術により癌細胞検査を実行する
【0045】
以下で検査ステップを示す。
1.細胞標本を低輻射スライドに固定し、ジメチルベンゼン溶剤に20分浸す。
2.染料とパラフィンをジメチルベンゼンで溶解混合後、染料と蜜蝋の濃度は0.01 wt%、および、0.25 wt%で、それぞれ、ジメチルベンゼン溶液に溶解させ、標本スライドをそれぞれ、パラフィン染料、蜜蝋染料に1分浸し、取り出した標本スライドを室温に10分置く。
3.標本を乾燥させた後、ジメチルベンゼン溶剤に標本を5秒浸し、取り出した後乾燥させ、蛍光顕微鏡下で観察する。
4.ステップ3を繰り返し、ジメチルベンゼンで5秒、10秒脱着する二個のタイミングを完成する。
【0046】
図12は、細胞標本が蛍光蝋を吸着する蛍光イメージである。(a)SW-403の白光イメージである;(b)SW-403が蜜蝋対照ユニット、5秒、10秒、15秒、60秒脱蝋するイメージである;(c)SW-403はパラフィン対照ユニット、5秒、10秒、15秒、60秒脱蝋したイメージである。図のように、癌細胞上に蛍光蜜蝋の残留があるので、癌細胞は強い蛍光強度を有する。
【0047】
総合すると、本発明が提供する癌化生物標本の検出方法は、検査試薬と癌化生物標本の物理吸着性質、および、検査試薬と正常な生物標本の物理吸着性質の差異を利用するので、各種癌の検出に幅広く利用される。本発明は、快速な検出が可能であり、非侵襲式検出方法であるので、繰り返し使用、比較が可能である。
【0048】
本発明では好ましい実施例を前述の通り開示したが、これらは決して本発明に限定するものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と領域を脱しない範囲内で各種の変動や潤色を加えることができ、従って本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0049】
S11〜S14 癌化生物標本の検出ステップ
S21〜S23 癌化生物標本の検出ステップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌化生物標本の検出方法と使用する検査試薬に関するものであって、特に、物理吸着性質の差異を利用した癌化生物標本の検出方法と使用する検査試薬に関するものである。
【背景技術】
【0002】
臨床上、癌の早期診断は困難で、一般に、病人が身体に異常を感じて病院に検査に行くときには、既に、癌の進行が中末期であったり、その他の器官に転移していることが多い。よって、簡単、且つ、快速な方法で、癌の早期発見を達成することが、医学研究スタッフの努力目標である。
【0003】
過去に、各種異なる癌に対して、多くの腫瘍バイオマーカー、例えば、癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen, CEA)、或いは、EGTM(European Group on Tumour Marker)等が発展していて、これらのマーカーは敏感性と特異性が悪いという問題があり、且つ、サンプリングから検出まで1〜2週間の時間がかかる。よって、この方法は癌患者の治療後の追従手段として用いられるが、早期発見の根拠にはならない。
【0004】
米国特許第5726061号中、生化学酵素を利用して、二糖類マーカー(Disaccharide marker,-D-Gal(1-3)-D-GalNAc(1-Thr/Ser)、および、単糖類マーカー(D-半乳糖、および、2-アセトアミド-2-デオキシ-D半乳糖(2-acetamido-2-deoxy-D-galactose))を検出するので、特定の抗体を製造して腫瘍抗原検出を実行する必要がある。
【0005】
この他、米国特許第6187591号中、結腸癌細胞表面の炭素鎖長さが12〜20の脂肪族アルデヒド(aliphatic aldehyde)の表面マーカーに対し、シップ試薬 (Schiff's reagent)により化学反応を実行して、結腸粘膜組織に対し結腸癌の早期検出を実行しているが、この検出方法は単一細胞に対してテストできない。
【0006】
この他、口腔癌中、遺伝子により癌を検出するものがあるが、その工程は複雑で、短時間では検出できない。よって、快速で、且つ、単一細胞、或いは、組織検体に対し検出を実行する方法が必要である。
【0007】
上述のように、現在、単一細胞、或いは、組織検体に対する検出方法により、簡単、且つ、快速な各種癌の早期発見が可能な方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、癌化生物標本の検出方法と使用する検査試薬を提供し、検査試薬と癌化生物標本の物理吸着性、および、検査試薬と正常な生物標本の物理吸着性の差異を利用し、各種癌の検出に幅広く応用でき、快速、且つ、非侵襲性の方式で、繰り返し使用、比較できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施例によると、癌化生物標本の検出方法は、生物標本を提供するステップと、第一吸着ステップと、第一脱着ステップと、第一判断ステップと、からなる。第一吸着ステップは、生物標本を、第一吸着剤を含む第一検査試薬に浸し、第一吸着剤は、物理的吸着により生物標本に吸着する。第一脱着ステップは、生物標本を第一脱着試薬に第一所定期間浸す。第一判断ステップは、第一吸着剤が生物標本に吸着する含量を測量して、生物標本が癌化していないか判断する。
【0010】
本発明のもう一つの実施例によると、癌化生物標本を検出する検査試薬は吸着剤を含む。検査試薬により癌化生物標本を検出する方法は、生物標本を提供するステップと、生物標本を検査試薬に浸し、吸着剤が物理的吸着により生物標本に吸着する吸着ステップと、生物標本を脱着試薬に所定期間浸す脱着ステップと、吸着剤が生物標本に吸着する含量を測量し、生物標本が癌化していないか判断する判断ステップと、からなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、癌化生物標本の物理吸着性質の差異を利用し、各種癌検出に幅広く適用され、また、快速、且つ、非侵襲式検出方法であるので、繰り返し使用、比較が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例による癌化生物標本の検出方法のフローチャートである。
【図2】本発明の実施例による癌化生物標本の検出方法のフローチャート図である。
【図3】細胞標本がパラフィン(Paraffin)を吸着する赤外線動力学イメージを示す図である。
【図4】細胞標本が蜜蝋を吸着する赤外線動力学イメージを示す図である。
【図5】細胞標本がパラフィンを吸着する赤外線動力学イメージを示す図である。
【図6】細胞標本が蜜蝋を吸着する赤外線動力学イメージを示す図である。
【図7】細胞標本がトリアコンタン(Triacontane)を吸着する赤外線動力学イメージを示す図である。
【図8】細胞標本がミリスチン酸エチル(ethyl myristate)を吸着する赤外線動力学イメージである。
【図9】細胞標本が3,5,5-トリメチルヘキシル-3,5,5-トリメチルカプロン酸(3,5,5-trimethylhexyl-3,5,5-trimethylcaproate)を吸着する赤外線動力学イメージを示す図である。
【図10】組織標本がパラフィンを吸着する赤外線動力学イメージを示す図である。
【図11】細胞標本が蜜蝋を吸着する赤外線動力学イメージを示す図である。
【図12】細胞標本が蛍光蝋を吸着する赤外線動力学イメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
公知の癌化生物標本の細胞膜脂質組成と正常な生物標本の細胞膜脂質組成は異なるので、癌化生物標本の物理吸着力と正常な生物標本の物理吸着力は差異がある。本発明は、この特性を利用し、癌化生物標本と正常な生物標本が異なる物理吸着力の吸着剤により、癌化の可能性がある生物標本の検出を実行する。
【0014】
上述の原理によると、本発明は、癌化生物標本の検出方法を提供する。図1は、本考案の実施例による癌化生物標本の検出方法を示すフローチャートであって、まず、ステップS11で、生物標本、例えば、一組織や一細胞を提供する。
【0015】
続いて、第一吸着ステップS12を実行し、生物標本を第一検査試薬に浸す。第一検査試薬は第一吸着剤を含み、第一吸着剤は、物理吸着により生物標本に吸着する。第一吸着剤の癌化生物標本に対する物理吸着力は、正常な生物標本に対する物理吸着力より大きい。例えば、第一吸着剤は炭素鎖の長さが16〜46の長鎖エステル化合物(long chain ester)である。
【0016】
或いは、第一吸着剤の正常な生物標本に対する物理吸着力は、癌化生物標本に対する物理吸着力より大きい。例えば、第一吸着剤は炭素鎖の長さが21〜30の長鎖アルカン化合物(long chain alkane)である。
【0017】
第一吸着ステップS12完成後、第一脱着ステップS13を実行し、生物標本を第一脱着試薬に第一所定時間浸す。例えば、第一脱着試薬は有機溶剤であり、生物標本に付着した第一吸着剤を除去する。物理吸着力が生物標本に対して悪い第一吸着剤は脱着試薬により容易に脱着される。
【0018】
生物標本を第一脱着試薬に浸す第一所定時間は多くの要素によって決定され、例えば、第一吸着剤と第一脱着試薬の種類、および、濃度などである。この他、異なる段階の癌化生物標本の物理吸着力が異なるので、第一所定時間を調整して、異なる段階の癌化生物標本の第一吸着剤の付着含量により、生物標本の癌化程度を識別する。
【0019】
最後に、第一判断ステップS14を実行し、第一吸着剤が生物標本に付着する含量を測量して、生物標本が癌化していないか判断する。一実施例中、第一吸着剤が生物標本に付着する含量は、赤外線スペクトルかラマンスペクトルを測量することにより得られ、赤外線スペクトル範囲とラマンスペクトル範囲は3000-2800 cm-1の間である。
【0020】
もう一つの実施例中、第一検出試薬は更に染料を含み、染料の第一吸着剤に対する親和性は、生物標本に対する親和性より高く、生物標本の非専一性結合を回避する。染料は、好ましくは、蛍光染料、例えば、LC6500、アロフィコシアニン (Allophycocyanin, APC)、或いは、APC-Cy7である。よって、第一吸着剤が生物標本に吸着する含量は、蛍光スペクトルを測量することにより得られる。注意すべきことは、染料は蛍光染料に限定されず、適当な可視光染料であれば、本発明に適用できる。
【0021】
第一脱着ステップS13、および、第一判断ステップS14は何度も繰り返し実行でき、互いに比較して、最適な検査結果を得る。詳しくは、前述のように、生物標本を第一脱着試薬に浸す第一所定時間が第一吸着剤が生物標本に吸着する含量に影響するので、第一脱着ステップ13Sと第一判断ステップS14を何度も実行して第一所定時間を変化させ、生物標本中の異なる領域の個別の癌化程度を検出することができる。
【0022】
一実施例中、本発明の検出方法は、更に、第一プレクリーニングステップを含み、第一吸着ステップS12の前、生物標本を第一脱着試薬に浸し、浸す時間は第一所定時間より長く、これにより、雑物を除去して、背景雑音を低下させる。
【0023】
図2を参照すると、本発明のもう一つの好ましい実施例による癌化生物標本の検出方法は、図1で示されるステップ以外に、更に、第二吸着ステップS21、第二脱着ステップS22、および、第二判断ステップS23を含む。第二吸着ステップS21は、生物標本を、第二吸着剤を含む第二検出試薬に浸し、第二吸着剤が物理吸着により生物標本に吸着する。第二脱着ステップS22は、生物標本を第二脱着試薬に第二所定時間浸し、第二脱着試薬が有機溶剤で、生物標本に吸着した第二吸着剤を除去する。第二判断ステップS23は、第二吸着剤が生物標本に吸着した含量を測量して、生物標本が癌化していないか判断する。第二脱着ステップS22、および、第二判断ステップS23は、何度も繰り返し、互いに比較して、最適な検出結果を得る。
【0024】
前述のように、第一吸着剤の癌化生物標本に対する物理吸着力は、正常な生物標本に対する物理吸着力より大きいか、小さい。よって、好ましい実施例中、本発明は、癌化生物標本に対する物理吸着力が、正常な生物標本に対する物理吸着力より、それぞれ、大きい、小さい二種類の吸着剤を使用して、癌化生物標本の吸着状況を比較する。
【0025】
第一吸着剤の癌化生物標本に対する物理吸着力は、正常な生物標本に対する物理吸着力より大きく、第二吸着剤の正常な生物標本に対する物理吸着力は、癌化生物標本に対する物理吸着力より大きい。例えば、第一吸着剤は長鎖エステル化合物で、炭素鎖の長さは16〜46である。第二吸着剤は長鎖アルカン化合物で、炭素鎖の長さが21〜30である。
【0026】
或いは、第一吸着剤の正常な生物標本に対する物理吸着力は、癌化生物標本に対する物理吸着力より大きく、第二吸着剤の癌化生物標本に対する物理吸着力は、正常な生物標本に対する物理吸着力より大きい。例えば、第一吸着剤は長鎖アルカン化合物で、炭素鎖の長さは21〜30である。第二吸着剤は長鎖エステル化合物で、炭素鎖の長さは16〜46である。
【0027】
一実施例中、本発明の検出方法は、更に、第二プレクリーニングステップを含み、第二吸着ステップS21の前、生物標本を第二脱着試薬に浸し、浸す時間は第二所定時間より長く、これにより、雑物を除去して、背景雑音を低下させる。
【0028】
一実施例中、第二判断ステップS23は前述の第一判断ステップS14で使用される方法と同じで、好ましい比較結果を得る。
【0029】
以下では、本発明は、口腔癌や結腸癌の生物標本の検出を開示しているが、注意すべきことは、本発明は癌化生物標本と正常な生物標本の物理吸着性質の差異を利用するので、各種癌に幅広く利用できる。
[実施例1]
【0030】
以下では結腸癌細胞の検出ステップを示す。
1.細胞標本を低輻射スライド(Low-e slide)に固定し、ジメチルベンゼン(キシレン)(Dimethylbenzene, Xylene,C8H10)に20分間浸した後、細胞標本の赤外線吸収スペクトルとイメージを得て、後続の癌検査過程の参考背景とする。本検査プロセスは、25℃のジメチルベンゼン溶剤と検査溶液下で実行し、且つ、標本は室温下に乾燥される。
2.細胞標本のスライドを5 wt%(重量パーセント濃度)の第一吸着剤パラフィン (Paraffin, C25H52)のジメチルベンゼン溶液の試験管に2分浸した後取り出し、室温に10分放置して、標本を乾燥させる。
3.更に、ジメチルベンゼンで標本スライドを5秒脱着させ、室温下に乾燥させた後、スペクトルとイメージを得る。
4.上述のステップ3を二回繰り返して、ジメチルベンゼンがパラフィンを5秒、10秒、および、15秒脱着する三個の脱蝋タイミングを完成する。
【0031】
図3は、細胞標本がパラフィンを吸着する赤外線動力学のイメージである。(a)、(f)、および、(k)はそれぞれ、人類の結腸の正常な細胞CCD-18Co、結腸癌細胞SW-480、および、SW-403等の細胞標本の白光イメージである;(b)、(g)、および、(l)はそれぞれ、CCD-18Co、SW-480、および、SW-403等の細胞標本をジメチルベンゼン溶液に20分浸した後乾燥させ、赤外線波数3000−2800 cm-1で積分した赤外線スペクトルイメージが、パラフィン吸着、および、脱着過程の参考背景イメージとする;(c-e)、(h-j)、および、(m-o)はそれぞれ、CCD-18Co、SW-480、および、SW-403等の細胞標本がそれぞれ、パラフィン脱着5 秒、10 秒、15秒した赤外線スペクトルイメージである。参考背景のスペクトルとイメージ(細胞標本をジメチルベンゼンに20分間浸したスペクトルとそのイメージ)と、細胞標本が異なるタイミングのパラフィン脱着を実行するスペクトルとイメージを比較すると、正常な細胞は3000−2800 cm-1スペクトル領域間で、パラフィンの残留により増加した信号を示し、癌細胞のパラフィン残留量は僅かである。
5.標本を第二吸着剤蜜蝋(Beeswax, C46H92O2)に吸着するプロセスを実行するため、再度、ジメチルベンゼンに標本を20分浸して、残留したパラフィンを除去し、乾燥後、細胞標本のスペクトルを得て、即ち、細胞をジメチルベンゼンに20分浸した後の赤外線吸収スペクトルとイメージである。
6.細胞標本のスライドを2.5 wt%の蜜蝋のジメチルベンゼン溶液の試験管中に2分浸し、取り出した後、室温下に10分間置いて、標本を乾燥させる。
7.ジメチルベンゼンにより標本スライドの蜜蝋を脱着し、室温下に放置して乾燥させた後、スペクトルを得ると共に、背景値を除き、即ち、細胞が吸着した蜜蝋がジメチルベンゼン溶剤により脱蝋後5秒の赤外線吸収スペクトルとイメージである。
8.上述のステップ7を二回繰り返すと、ジメチルベンゼンが蜜蝋を5秒、10秒、15秒脱着する三個の脱蝋タイミングが完成する。
【0032】
図4は、細胞標本が蜜蝋を吸着する赤外線動力学イメージである。(a)、(f)、および、(k)はそれぞれ、CCD-18Co、SW-480、および、SW-403等の細胞標本の白光イメージである;(b)、(g)、および、(l)はそれぞれ、CCD-18Co、SW-480、および、SW-403等の細胞標本をジメチルベンゼン溶液に20分浸して乾燥させた後、赤外線波数3000−2800 cm-1で積分した赤外線スペクトルイメージが、蜜蝋吸着、および、脱着過程の参考背景イメージとする;(c-e)、(h-j)、および、(m-o)は、CCD-18Co、SW-480、および、SW-403等の細胞標本がそれぞれ、蜜蝋を脱着する時間が5秒、10秒、15秒の赤外線スペクトルイメージである。参考背景のスペクトルイメージ(細胞標本をジメチルベンゼンに20分浸したスペクトルイメージ)と、細胞標本が異なるタイミングの蜜蝋脱着を実行するスペクトルイメージを比較し、癌細胞が3000−2800 cm-1スペクトル領域間で、蜜蝋の残留により増加する信号を表示し、正常な細胞の蜜蝋残留は僅かである。よって、上述の方法は、快速、且つ、効果的に、正常細胞と癌細胞を区別し、結腸癌検査に運用することができる。
[実施例2]口腔癌細胞検査(I)
【0033】
口腔癌細胞の検査も上述のステップを使用することができる。但し、この実験中、第一吸着剤、および、第二吸着剤は、それぞれ、パラフィンと蜜蝋で、その濃度は5 wt%である。
【0034】
図5は、細胞標本がパラフィンを吸着する赤外線動力学イメージである。(a)と(f)は、それぞれ、人類の正常な口腔細胞NHOKの細胞標本と口腔癌細胞OECM-1の細胞標本の白光イメージである;(b)、および、(g)は、それぞれ、NHOK、および、OECM-1細胞標本をジメチルベンゼン溶液に20分浸して乾燥させた後、赤外線波数3000−2800 cm-1で積分した赤外線スペクトルイメージが、パラフィンの吸着、および、脱着過程の参考背景イメージとする;(c-e)はNHOK細胞標本、および、(h-j)はOECM-1細胞標本が、それぞれ、パラフィンを脱着する時間が5秒、10秒、15秒の赤外線スペクトルイメージである。図のように、NHOKは明らかなパラフィンの吸着が見られる。
【0035】
図6は、細胞標本が蜜蝋を吸着する赤外線動力学イメージである。(a)、および、(f)は、それぞれ、人類の口腔の正常な黏膜細胞NHOK、および、口腔癌細胞OECM-1の白光イメージ;(b)、および、(g)は細胞標本をジメチルベンゼン溶液に20分浸して乾燥させた後、赤外線波数3000−2800 cm-1で積分した赤外線スペクトルイメージで、蜜蝋の吸着、および、脱着プロセスの參考背景イメージとする;(c-e)はNHOK細胞標本、および、(h-j)はOECM-1細胞標本の蜜蝋脱着時間が5秒、10秒、15 秒の赤外線スペクトルイメージである。図のように、OECM-1は明らかな蜜蝋の吸着が見られる。
[実施例3]口腔癌細胞検査(II)
【0036】
実験ステップは、実施例1のステップ1からステップ8で、第一粘着剤はトリアコンタン(Triacontane, C30H62)で、その濃度は5 wt%である;第二吸着剤はミリスチン酸エチル(ethyl myristate, C16H32O2)でその濃度は7.5 wt%である。
【0037】
図7は、細胞標本がトリアコンタンを吸着する赤外線動力学イメージである。口腔類表皮癌腫株細胞(oral squamous cancercells、OECM-1)はジメチルベンゼンにより5秒脱着され、トリアコンタン残留信号が3000-2800 cm-1の赤外線吸収スペクトルにある。
【0038】
図8は、細胞標本がミリスチン酸エチルを吸着する赤外線動力学イメージである。口腔ケラチノサイト(normal human oral keratinocyte 、NHOK)はジメチルベンゼンにより5秒脱着され、多くのミリスチン酸エチル残留信号が3000-2800 cm-1の赤外線吸収スペクトルにある。
[実施例4]口腔癌細胞検査(III)
【0039】
実施例のステップは、実施例1のステップ1からステップ4で、第一吸着剤は分枝鎖を有する3,5,5-トリメチルヘキシル-3,5,5-トリメチルカプロン酸 (3,5,5-trimethylhexyl-3,5,5-trimethylcaproate, C18H36O2 )で、その濃度は10 wt%である。
図9は細胞標本が3,5,5-トリメチルヘキシル-3,5,5-トリメチルカプロン酸を吸着する赤外線動力学イメージである。正常な口腔ケラチノサイト(NHOK)はジメチルベンゼンにより5秒脱着され、多くの3,5,5-トリメチルヘキシル-3,5,5-トリメチルカプロン酸残留信号が3000-2800 cm-1の赤外線吸収スペクトルにある。
[実施例5]口腔癌化組織検査
【0040】
以下は、口腔癌化組織の検査ステップを示す。
1.組織を低輻射スライド上に固定して、適当な溶剤で、組織標本を包埋したパラフィン、或いは、包埋物質を除去すると共に、赤外線吸収スペクトルにより、包埋物質の残留がないか確認する。標本が乾燥した後、再度、ジメチルベンゼン溶剤に60分浸して、残留した有機物を除去する。最後に、この組織標本の赤外線吸収スペクトルとイメージを得て、後続ステップの参考背景とする。
2.5 wt%の第一吸着剤パラフィンのジメチルベンゼン溶液を組織標本のスライドに垂らし、室温下に2時間置いて、乾燥させる。
3.ジメチルベンゼン溶剤によりパラフィンを30秒脱着し、乾燥させて、赤外線吸収スペクトルとそのイメージを得る。
4.ステップ3を繰り返し、ジメチルベンゼンで30秒、60秒パラフィン脱着するタイミングを完成する。
【0041】
図10は、組織標本がパラフィンを吸着する赤外線動力学イメージである。(a)、および、(e)はそれぞれ、人類の口腔の正常な黏膜組織、および、口腔癌化組織切片(T2N1G1)の白光イメージである;(b)、および、(f)は組織切片をジメチルベンゼン溶剤に60分浸し、乾燥させたあと、赤外線波数3000−2800 cm-1で積分した赤外線スペクトルイメージが、パラフィンの吸着、および、脱着過程の参考背景イメージとする;(c)、および、(g)はそれぞれ、正常、および、口腔癌化組織切片をジメチルベンゼンで30秒パラフィンを脱着した紅外スペクトルイメージである;(d)、および、(h)は、それぞれ、正常な、および、口腔癌化組織切片をジメチルベンゼンで60秒パラフィンを脱着した紅外スペクトルイメージである。
【0042】
参考背景のスペクトルイメージと、細胞標本が異なるタイミングのパラフィン脱着を実行するスペクトルイメージを比較すると、正常組織は3000−2800 cm-1スペクトル領域間で、パラフィン残留により増加する信号を示し、逆に癌化組織のパラフィン残留量は僅かである。
5.標本が第二吸着剤蜜蝋を吸着するプロセスを実行するため、もう一度、ジメチルベンゼンに標本を60分浸して、残留したパラフィンを除去し、乾燥後、細胞標本のスペクトルを得て、即ち、組織をジメチルベンゼンに60分浸した後の赤外線吸収スペクトルイメージである。
6.5 wt%の第二吸着剤蜜蝋のジメチルベンゼン溶液を組織標本のスライドに垂らし、室温下に1時間置いて、乾燥させる。
7.組織標本が乾燥後、ジメチルベンゼン溶剤により脱蝋を30秒実行する。最後に、室温下に乾燥させて、スペクトルイメージを得る。
8.ステップ7を繰り返し、ジメチルベンゼンで蜜蝋を30秒、60秒脱着する二個のタイミングを完成する。
【0043】
図11は、組織標本が蜜蝋を吸着する赤外線動力学イメージである。(a)、および、(e)はそれぞれ、人類の口腔の正常な黏膜組織、および、口腔癌化組織切片(T2N1G1)の白光イメージである;(b)、および、(f)は組織切片をジメチルベンゼン溶剤に20分浸し、乾燥させたあと、赤外線波数3000−2800 cm-1で積分した赤外線スペクトルイメージが、蜜蝋の吸着、および、脱着過程の参考背景イメージとする;(c)、および、(g)はそれぞれ、正常な黏膜組織、および、口腔癌化組織切片をジメチルベンゼン溶剤で30秒蜜蝋を脱着した紅外スペクトルイメージである;(d)、および、(h)は、それぞれ、正常な黏膜組織、および、口腔癌化組織切片をジメチルベンゼン溶剤で60秒蜜蝋を脱着した紅外スペクトルイメージである。
【0044】
参考背景のスペクトルイメージと、細胞標本が異なるタイミングで蜜蝋脱着を実行するスペクトルイメージを比較すると、癌化組織は3000−2800 cm-1スペクトル領域間で、蜜蝋残留により増加する信号があり、逆に正常組織の蜜蝋残留量は僅かである。この方法により、快速、且つ、効果的に正常組織と癌化組織を区分すると共に、口腔癌と結腸癌の検査に運用できる。
[実施例6]蛍光顕微技術により癌細胞検査を実行する
【0045】
以下で検査ステップを示す。
1.細胞標本を低輻射スライドに固定し、ジメチルベンゼン溶剤に20分浸す。
2.染料とパラフィンをジメチルベンゼンで溶解混合後、染料と蜜蝋の濃度は0.01 wt%、および、0.25 wt%で、それぞれ、ジメチルベンゼン溶液に溶解させ、標本スライドをそれぞれ、パラフィン染料、蜜蝋染料に1分浸し、取り出した標本スライドを室温に10分置く。
3.標本を乾燥させた後、ジメチルベンゼン溶剤に標本を5秒浸し、取り出した後乾燥させ、蛍光顕微鏡下で観察する。
4.ステップ3を繰り返し、ジメチルベンゼンで5秒、10秒脱着する二個のタイミングを完成する。
【0046】
図12は、細胞標本が蛍光蝋を吸着する蛍光イメージである。(a)SW-403の白光イメージである;(b)SW-403が蜜蝋対照ユニット、5秒、10秒、15秒、60秒脱蝋するイメージである;(c)SW-403はパラフィン対照ユニット、5秒、10秒、15秒、60秒脱蝋したイメージである。図のように、癌細胞上に蛍光蜜蝋の残留があるので、癌細胞は強い蛍光強度を有する。
【0047】
総合すると、本発明が提供する癌化生物標本の検出方法は、検査試薬と癌化生物標本の物理吸着性質、および、検査試薬と正常な生物標本の物理吸着性質の差異を利用するので、各種癌の検出に幅広く利用される。本発明は、快速な検出が可能であり、非侵襲式検出方法であるので、繰り返し使用、比較が可能である。
【0048】
本発明では好ましい実施例を前述の通り開示したが、これらは決して本発明に限定するものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と領域を脱しない範囲内で各種の変動や潤色を加えることができ、従って本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0049】
S11〜S14 癌化生物標本の検出ステップ
S21〜S23 癌化生物標本の検出ステップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌化生物標本の検出方法であって、
生物標本を提供するステップと、
前記生物標本を、第一吸着剤を含む第一検査試薬に浸し、前記第一吸着剤は、物理的吸着により前記生物標本に吸着する第一吸着ステップと、
前記生物標本を第一脱着試薬に第一所定期間浸す第一脱着ステップと、
前記第一吸着剤が前記生物標本に吸着する含量を測量して、前記生物標本が癌化していないか判断する第一判断ステップと、
を備えることを特徴とする癌化生物標本の検出方法。
【請求項2】
前記第一脱着ステップ、および、前記第一判断ステップは、繰り返し実行することを特徴とする請求項1に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項3】
前記第一吸着ステップの前、前記生物標本を前記第一脱着試薬に浸し、浸す時間は前記第一所定時間より長い第一プレクリーニングステップを更に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項4】
前記第一吸着剤は、炭素鎖の長さが16〜46の長鎖エステル化合物(long chain ester) 又は、炭素鎖の長さが21〜30の長鎖アルカン化合物(long chain alkane)であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項5】
前記第一脱着試薬は有機溶剤であることを特徴とする請求項4に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項6】
前記生物標本を、第二吸着剤を含む第二検出試薬に浸し、前記第二吸着剤は、物理吸着により前記生物標本に吸着する第二吸着ステップと、
前記生物標本を第二脱着試薬に第二所定時間浸す第二脱着ステップと、
前記第二吸着剤が前記生物標本に吸着する含量を測量して、前記生物標本が癌化していないか判断する第二判断ステップと、
を更に備えることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項7】
前記第二脱着ステップ、および、前記第二判断ステップは、繰り返し実行することを特徴とする請求項6に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項8】
前記第一吸着剤の前記癌化生物標本に対する物理吸着力は、前記第一吸着剤の正常な生物標本に対する物理吸着力より大きく、前記第二吸着剤の前記正常な生物標本に対する吸着力は、前記第二吸着剤の前記癌化生物標本に対する吸着力より大きいことを特徴とする請求項6または7に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項9】
前記第一吸着剤の正常な生物標本に対する物理吸着力は、前記第一吸着剤の前記癌化生物標本に対する物理吸着力より大きく、前記第二吸着剤の前記癌化生物標本に対する吸着力は、前記第二吸着剤の前記正常な生物標本に対する物理吸着力より大きいことを特徴とする請求項6から8の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項10】
前記第二吸着ステップの前、前記生物標本を前記第二脱着試薬に浸し、浸す時間は前記第二所定時間より長い第二プレクリーニングステップを更に含むことを特徴とする請求項6から9の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項11】
前記第一吸着剤は、炭素鎖の長さが16〜46の長鎖エステル化合物で、前記第二吸着剤は、炭素鎖の長さが21〜30の長鎖アルカン化合物であることを特徴とする請求項6から10の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項12】
前記第一吸着剤は、炭素鎖の長さが21〜30の長鎖アルカン化合物で、前記第二吸着剤は、炭素鎖の長さが16〜46長鎖エステル化合物であることを特徴とする請求項6から11の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項13】
前記第一脱着試薬、および、前記第二脱着試薬は有機溶剤であることを特徴とする請求項6から12の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項14】
前記第一検査試薬は、更に、染料を含み、前記染料の前記第一吸着剤に対する親和性は、前記染料の前記生物標本に対する親和性より高いことを特徴とする請求項1から13の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項15】
前記染料は蛍光染料であることを特徴とする請求項14に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項16】
前記第一吸着剤の前記生物標本に吸着する含量は、蛍光スペクトルを測量することにより得られることを特徴とする請求項15に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項17】
前記蛍光染料は、LC6500、アロフィコシアニン (Allophycocyanin, APC) 又は、APC-Cy7を含むことを特徴とする請求項15に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項18】
前記第一吸着剤の前記生物標本に吸着する含量は、赤外線スペクトル又は、ラマンスペクトルを測量することにより得られることを特徴とする請求項1から17の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項19】
前記赤外線スペクトルの範囲は3000-2800 cm-1の間であることを特徴とする請求項18に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項20】
前記ラマンスペクトルの範囲は3000-2800 cm-1の間であることを特徴とする請求項18に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項21】
前記生物標本は組織又は細胞であることを特徴とする請求項1から20の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項22】
前記癌化生物標本は口腔癌又は結腸癌であることを特徴とする請求項1から19の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項23】
物理的吸着により生物標本に吸着し、癌化生物標本に対する物理吸着力と、正常な生物標本に対する物理吸着力とが異なる吸着剤
を含む、癌化生物標本を検出する検査試薬。
【請求項24】
前記吸着剤は、炭素鎖の長さが16〜46の長鎖エステル化合物又は、炭素鎖の長さが21〜30の長鎖アルカン化合物であることを特徴とする請求項23に記載の癌化生物標本を検出する検査試薬。
【請求項25】
更に、染料を含み、前記染料の前記吸着剤に対する親和性は、前記染料の前記生物標本に対する親和性より高いことを特徴とする請求項23または24に記載の癌化生物標本を検出する検査試薬。
【請求項26】
前記染料は蛍光染料であることを特徴とする請求項25に記載の癌化生物標本を検出する検査試薬。
【請求項27】
前記生物標本は組織又は細胞であることを特徴とする請求項23から26の何れかに記載の癌化生物標本を検出する検査試薬。
【請求項28】
前記癌化生物標本は、口腔癌若しくは結腸癌の細胞、又は、口腔癌若しくは結腸癌の組織であることを特徴とする請求項23から27の何れかに記載の癌化生物標本を検出する検査試薬。
【請求項1】
癌化生物標本の検出方法であって、
生物標本を提供するステップと、
前記生物標本を、第一吸着剤を含む第一検査試薬に浸し、前記第一吸着剤は、物理的吸着により前記生物標本に吸着する第一吸着ステップと、
前記生物標本を第一脱着試薬に第一所定期間浸す第一脱着ステップと、
前記第一吸着剤が前記生物標本に吸着する含量を測量して、前記生物標本が癌化していないか判断する第一判断ステップと、
を備えることを特徴とする癌化生物標本の検出方法。
【請求項2】
前記第一脱着ステップ、および、前記第一判断ステップは、繰り返し実行することを特徴とする請求項1に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項3】
前記第一吸着ステップの前、前記生物標本を前記第一脱着試薬に浸し、浸す時間は前記第一所定時間より長い第一プレクリーニングステップを更に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項4】
前記第一吸着剤は、炭素鎖の長さが16〜46の長鎖エステル化合物(long chain ester) 又は、炭素鎖の長さが21〜30の長鎖アルカン化合物(long chain alkane)であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項5】
前記第一脱着試薬は有機溶剤であることを特徴とする請求項4に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項6】
前記生物標本を、第二吸着剤を含む第二検出試薬に浸し、前記第二吸着剤は、物理吸着により前記生物標本に吸着する第二吸着ステップと、
前記生物標本を第二脱着試薬に第二所定時間浸す第二脱着ステップと、
前記第二吸着剤が前記生物標本に吸着する含量を測量して、前記生物標本が癌化していないか判断する第二判断ステップと、
を更に備えることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項7】
前記第二脱着ステップ、および、前記第二判断ステップは、繰り返し実行することを特徴とする請求項6に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項8】
前記第一吸着剤の前記癌化生物標本に対する物理吸着力は、前記第一吸着剤の正常な生物標本に対する物理吸着力より大きく、前記第二吸着剤の前記正常な生物標本に対する吸着力は、前記第二吸着剤の前記癌化生物標本に対する吸着力より大きいことを特徴とする請求項6または7に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項9】
前記第一吸着剤の正常な生物標本に対する物理吸着力は、前記第一吸着剤の前記癌化生物標本に対する物理吸着力より大きく、前記第二吸着剤の前記癌化生物標本に対する吸着力は、前記第二吸着剤の前記正常な生物標本に対する物理吸着力より大きいことを特徴とする請求項6から8の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項10】
前記第二吸着ステップの前、前記生物標本を前記第二脱着試薬に浸し、浸す時間は前記第二所定時間より長い第二プレクリーニングステップを更に含むことを特徴とする請求項6から9の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項11】
前記第一吸着剤は、炭素鎖の長さが16〜46の長鎖エステル化合物で、前記第二吸着剤は、炭素鎖の長さが21〜30の長鎖アルカン化合物であることを特徴とする請求項6から10の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項12】
前記第一吸着剤は、炭素鎖の長さが21〜30の長鎖アルカン化合物で、前記第二吸着剤は、炭素鎖の長さが16〜46長鎖エステル化合物であることを特徴とする請求項6から11の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項13】
前記第一脱着試薬、および、前記第二脱着試薬は有機溶剤であることを特徴とする請求項6から12の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項14】
前記第一検査試薬は、更に、染料を含み、前記染料の前記第一吸着剤に対する親和性は、前記染料の前記生物標本に対する親和性より高いことを特徴とする請求項1から13の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項15】
前記染料は蛍光染料であることを特徴とする請求項14に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項16】
前記第一吸着剤の前記生物標本に吸着する含量は、蛍光スペクトルを測量することにより得られることを特徴とする請求項15に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項17】
前記蛍光染料は、LC6500、アロフィコシアニン (Allophycocyanin, APC) 又は、APC-Cy7を含むことを特徴とする請求項15に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項18】
前記第一吸着剤の前記生物標本に吸着する含量は、赤外線スペクトル又は、ラマンスペクトルを測量することにより得られることを特徴とする請求項1から17の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項19】
前記赤外線スペクトルの範囲は3000-2800 cm-1の間であることを特徴とする請求項18に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項20】
前記ラマンスペクトルの範囲は3000-2800 cm-1の間であることを特徴とする請求項18に記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項21】
前記生物標本は組織又は細胞であることを特徴とする請求項1から20の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項22】
前記癌化生物標本は口腔癌又は結腸癌であることを特徴とする請求項1から19の何れかに記載の癌化生物標本の検出方法。
【請求項23】
物理的吸着により生物標本に吸着し、癌化生物標本に対する物理吸着力と、正常な生物標本に対する物理吸着力とが異なる吸着剤
を含む、癌化生物標本を検出する検査試薬。
【請求項24】
前記吸着剤は、炭素鎖の長さが16〜46の長鎖エステル化合物又は、炭素鎖の長さが21〜30の長鎖アルカン化合物であることを特徴とする請求項23に記載の癌化生物標本を検出する検査試薬。
【請求項25】
更に、染料を含み、前記染料の前記吸着剤に対する親和性は、前記染料の前記生物標本に対する親和性より高いことを特徴とする請求項23または24に記載の癌化生物標本を検出する検査試薬。
【請求項26】
前記染料は蛍光染料であることを特徴とする請求項25に記載の癌化生物標本を検出する検査試薬。
【請求項27】
前記生物標本は組織又は細胞であることを特徴とする請求項23から26の何れかに記載の癌化生物標本を検出する検査試薬。
【請求項28】
前記癌化生物標本は、口腔癌若しくは結腸癌の細胞、又は、口腔癌若しくは結腸癌の組織であることを特徴とする請求項23から27の何れかに記載の癌化生物標本を検出する検査試薬。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−193876(P2010−193876A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119309(P2009−119309)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(509078089)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(509078089)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]