説明

癌細胞を破壊する装置及び方法

本発明は、電場をデリバリし、並びに癌細胞及び固形腫瘍の選択的切除を含む、標的組織領域を非熱的又は選択的に切除する装置及びシステム並びにその方法を提供する。本発明の方法は、癌細胞を含む標的組織領域内に電極を位置決めすることを含む組織に電場をデリバリする段階と、交流電流を標的組織に印加して、電極の周りの標的組織領域の癌細胞を非熱的に切除する段階とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2006年9月14日に出願された米国仮特許出願第60/825,660号(代理人整理番号第026533−000100US号)、及び2006年10月30日に出願された米国仮特許出願第60/863,484号(代理人整理番号第026533−000200US号)の利益を主張し、これらの全開示事項は引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、一般に、組織領域への電場のデリバリ(送達)に関する。更に詳細には、本発明は、電場デリバリ、及び癌細胞及び固形腫瘍の選択的切除を含む標的組織領域の非熱切除に関する。
【背景技術】
【0003】
現在の組織切除技術は、望ましくない組織又は病変の除去、止血、又は組織の切断を行う手段として、患者(例えばヒト、動物等)の組織に高周波数の高熱を誘起する電流に依存する。腫瘍組織を熱誘起死滅及び/又は除去することにより癌を治療するためのツールとして高熱切除の分野に関心が高まっており、活発に取り組まれている。
【0004】
高熱腫瘍切除技術では、高周波数RF(例えば「RF熱切除」)又はマイクロ波源を用いて組織を加熱すると、標的組織に組織学的損傷が生じる。RF熱切除技術、例えば、約500kHz及びそれ以上を含む高周波を用いて、位置決めされた電極の周りの組織にイオン攪拌及び摩擦(例えば抵抗)加熱を引き起こす。組織への致死損傷(例えば、組織タンパク質の変性)は、約47°Cを超える温度で起こるが、RF熱切除の電極の近くで発生する熱は、約100°Cまで又はそれを超える温度に達する可能性がある。
【0005】
高熱切除又は熱誘起腫瘍組織破壊に基づく多数の異なる癌切除法及び装置が提案されている。このような1つの実施例には、容積測定組織切除のための装置を教示する米国特許第5,827,276号(特許文献1)が含まれる。該装置は、カテーテルを通って支持された複数のワイヤを有するプローブを含み、近位端が発生器のアクティブ端子に接続され、遠位端がカテーテルの遠位端から突出している。教示事項には、単回の展開で大容積の熱的に切除された組織を生成することになる方法及び経皮的手順で展開可能なプローブが含まれる。
【0006】
米国特許第5,935,123号(特許文献2)は、カテーテル管腔を備えるカテーテルを含むRF治療装置を教示する。取り外し可能針電極は、カテーテルに固定関係でカテーテル管腔内に位置決めされる。治療装置は、限定ではないが腫瘍を含む選択した組織塊を切除するか、或いは高熱により塊を治療するのに使用するものとして教示されている。腫瘍部位は、RFエネルギーを制御してデリバリすることにより選択的に高熱療法又は切除で治療される。
【0007】
高熱又は熱誘起癌組織破壊を用いる多数の他の方法及び装置が教示されている。しかしながら、RF誘起高熱切除の重大な限界は、周囲の健康な非標的組織に対して組織学的損傷及び破壊を制限しながら、熱誘起損傷を標的癌組織に限局化するのが困難であることである。
従って、健康組織への損傷を最低限にしながら、癌細胞を選択的に破壊する侵襲性が最低限の切除技術が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,827,276号公報
【特許文献2】米国特許第5,935,123号公報
【特許文献3】米国特許第5,855,576号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明は、選択的癌細胞破壊及び非熱組織切除のために低強度電場を印加するための装置及び関連する方法を提供する。本発明の装置は、一般に、1つの電極又は複数の電極を標的組織領域に導入して電場を標的組織領域に印加するように設計されることになる。1つの電極又は複数の電極は、典型的には、例えば、標的組織又は該標的組織領域内に位置決めされた電極内の位置から半径方向に複数の方向で外向きに電場が放射される場合を含む、印加電場が標的組織領域全体にわたって放射するように位置決めされる。付加的に、標的組織領域に印加されるエネルギーは、電気的に発生する熱が最小になり且つ組織温度の上昇を避けることができるように選択することができる。特定の実施形態では、印加電場は、一般に、標的細胞を低出力又は非熱切除するのに十分な低強度(例えば約50V/cm未満)且つ中間周波数(例えば、約50kHzと300kHzとの間)の交流電場である。本発明の電極位置決め及び電場印加(例えば、低出力/非熱切除電場)により、熱作用を切除プロセスの因子とすることなく癌細胞を切除するのに驚くほど効果的であることが実際に示された。更に、本発明による切除プロセスは、主に、異常増殖細胞又は無秩序な成長を示す細胞(例えば癌細胞)で行う。従って、本発明は、正常細胞又は組織を実質的に無傷で残しながら、癌細胞を最小の侵襲性で選択的に切除又は破壊する付加的な利点を提供する。
【0010】
従って、1つの態様では、本発明は、電場を組織にデリバリする方法を含む。このような方法は、癌細胞を含む標的組織領域内に電極を位置決めする段階と、交流電場を標的組織に印加して、電極の周りの標的組織領域の癌細胞を非熱的に切除する段階とを含む。
【0011】
1つの実施形態では、標的組織領域は、組織の塊又は固形部分を含む。典型的には、標的組織領域は、例えば、固形腫瘍を含む標的組織領域を有する癌細胞を含む。本発明の方法を受ける組織の容積は変わることができ、少なくとも部分的に癌細胞の塊の大きさに基づくことになる。標的組織領域の周囲寸法は、規則的(例えば、球形、楕円形、その他)とすることもでき、又は不規則であってもよい。標的組織領域は、超音波、コンピュータ断層撮影法(CT)走査、X線イメージング、核医学イメージング、核磁気共鳴画像法(MRI)、電磁波イメージング等のような従来のイメージング方法を用いて識別及び/又は特徴付けることができる。付加的に、種々のイメージングシステムは、患者の組織内或いは標的組織領域又はその内部に本発明の装置又は電極を配置及び/又は位置決めするのに用いることができる。
【0012】
上に記載したように、電極は、標的組織領域内に位置決めされ、交流電場が印加される。本発明による切除技術は、幾つかの実施形態では、局所組織温度を上昇させず、且つエネルギー印加による熱作用を組織切除を行う手段とすることなく達成することができる。典型的には、印加電場は、低強度の中間周波数交流電流を含む。1つの実施形態では、例えば、電流は、約50V/cm未満の電圧場を生成する。別の実施形態では、電流は、約50kHzと約300kHzとの周波数を含む。電圧場及び/又は印加電流の周波数は、エネルギー印加の間一定に保持することもでき、又は変えることもできる。電極は、標的組織内部から電場印加が行われるように標的組織領域内に位置決めすることができる。1つの実施形態では、電極は、標的組織領域(例えば腫瘍)内に位置決めされ、印加電流により、電極から半径方向外向きに延びる電場が形成される。特定の実施形態では、このような位置決めは、例えば、標的組織領域内の細胞を分裂/増殖する向きを含む腫瘍生理機能を利用して、電極により与えられる電場が分裂癌細胞の分裂軸と確実に実質的に位置合わせされるようにすることができる。
【0013】
従って、別の態様では、本発明は、電場を組織にデリバリする方法を含み、本方法は、複数の電極を癌細胞を有する標的組織内に位置決めする段階を含む。この複数の電極は、第1の電極及び複数の第2の電極を含み、切除容積が少なくとも部分的に定められる。本方法は、交流電流を容積に印加し、容積内から半径方向外向きに延びる電場を提供し、標的組織の癌細胞を選択的に破壊するようにする段階を更に含む。
【0014】
本発明は、種々の電極組成、構成、幾何学的形状等を含むことができる。特定の実施形態では、電極は、例えば、標的組織領域内を進むときに組織を穿通する組織穿刺又は尖形遠位端を有する小直径の金属ワイヤを含む組織穿通電極を含むことができる。電極は、非絶縁とすることもでき、絶縁部分を含むこともできる。1つの実施形態では、電極の非絶縁部分は、周囲組織に電流を供給するための電場デリバリ表面を提供する。電極は、例えば、硬化又はより稠密組織を含む組織を通して更に容易に進められるように実質的に硬質とすることもでき、望ましい用途に応じてより可撓性とすることもできる。1つの実施形態では、電極は、針又は針様電極又はほぼ直線部分を有する電極を含む。別の実施形態では、電極は、湾曲しており、湾曲部分又は曲率半径を備えた部分を有することができる。電極組成は変えることができ、特定の実施形態では、形状記憶金属(例えば、市販の形状記憶金属、ニチノール(商標)等)又はスプラング鋼を含むことができる。適切な電極材料には、例えば、ステンレス鋼、プラチナ、金、銀、銅及び他の導電性の材料、金属、ポリマー等を含むことができる。特定の実施形態では、電極は、カテーテル及び/又はマイクロカテーテル又は電極を組織内に導入するための他の部材の管腔内に位置決めし、そこから展開可能とすることができる。
【0015】
1つの実施形態では、本発明は、標的組織領域内に位置決めされる或いは位置決め可能な複数の電極を含む。この複数の電極は、アレイを形成し、例えば、カテーテル管腔から展開可能である。1つの実施形態では、複数の電極には、実質的に切除容積を定める1つ又はそれ以上の外側又は第2の電極と、第1の又は中心に位置決めされた電極とを含み、第1の電極は第2の電極から間隔を置いて配置され、第2の電極により定められる切除容積内に配置される。電極は、単極モード又は双極モードで作動することができる。装置は、電極間で極性がシフトするように構成することができる。例えば、電極が双極性モードで用いられて電流が印加される1つの実施形態では、第1の又は中心に位置決めされた電極から実質的に切除容積を定める周囲に位置決めされた又は第2の電極に向かって半径方向外向きに延びる電場を生成することができる。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、フィードバックを生成し及び/又は切除プロセスを制御する1つ又はそれ以上のセンサ機構を利用することができる。センサ機構は、温度、電流、電圧、インピーダンス、pH等のようなパラメータを検出して測定するセンサ又は検出装置を含むことができる。本発明の特定の実施形態は、少なくとも部分的に検出特性又は検出特性の変化に基づき、印加電流を修正する段階を含むことができる。1つの実施形態では、例えば、印加電流の修正は、測定温度、インピーダンス等に応じて行うことができる。修正は、例えば、印加電流の電圧、周波数等を修正する段階、及び/又は、例えば、切除プロセス又はその段階が完了したと判断された場合に電流の印加を中止する段階を含むことができる。
【0017】
本発明の更に別の態様では、非熱組織切除のシステムが提供される。本システムは、1つ又はそれ以上の電極を有する組織切除プローブを含み、電極は、癌細胞を含む標的組織領域内に位置決め可能である。本システムは、標的組織領域の癌細胞を非熱的に切除する電流(例えば交流)を供給するエネルギー源を更に含む。
【0018】
別の態様では、本発明は、癌細胞を選択的に破壊するためのシステムを提供する。本システムは、標的組織内に位置決め可能な複数の電極を含むプローブを含む。複数の電極は、第1の電極及び1つ又はそれ以上の第2の電極を含み、切除容積は、第2の電極により少なくとも部分的に定めることができる。第1の電極は、切除容積内に位置決めすることができる。本システムは、交流電流、及び標的組織内の癌細胞を選択的に破壊するように第1の電極から容積を通って半径方向に延びる1つ又はそれ以上の電場を生成するためのエネルギー源を更に含む。
【0019】
本発明の性質及び利点をより完全に理解するために、以下の詳細な説明及び添付図面について説明する。本発明の他の態様、目的及び利点は、図面及び以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態による装置を示す図である。
【図2】本発明の別の実施形態による装置を示す図である。
【図3】本発明の実施形態による電極構成を有する装置を示す図である。
【図4】本発明の実施形態による電極配列を示す図である。
【図5】本発明の別の実施形態によるカテーテル及びマイクロカテーテル装置を示す図である。
【図6】本発明の実施形態による方法を示す図である。
【図7】本発明の別の実施形態による方法を示す図である。
【図8】癌細胞の腫瘍又は塊を示す図である。
【図9】本発明の実施形態による装置及び方法を示す図である。
【図10】本発明の実施形態による装置を示す図である。
【図11】本発明の実施形態による切除方法を示す図である。
【図12】本発明の種々の実施形態による例示的な電極を示す図である。
【図13】本発明の実施形態による装置を示す図である。
【図14】本発明の別の実施形態による装置を示す図である。
【図15】本発明の実施形態による装置及び切除方法を示す図である。
【図16】本発明の実施形態によるシステムを示す図である。
【図17】本発明の実施形態によるシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、低出力又は非熱組織切除のためのシステム及び装置、並びに関連する方法を提供する。本発明によれば、電極又は複数の電極を標的組織領域に導入し、標的組織領域に電場を印加することができる。標的組織領域に印加されるエネルギーは、電気的に生成される熱が最小限であり、組織温度の上昇を回避することができるように選択し、これによって標的細胞を低出力又は非熱切除することができる。本発明の装置及び方法は、熱作用を切除プロセスの因子とすることなく癌細胞を切除するのに効果的であることが実証されており、切除は、主に、無秩序な成長を示す異常増殖の1つ又は複数の細胞(例えば癌細胞)の間で行われる。従って、本発明は、正常細胞又は組織を実質的に無傷で残しながら、癌細胞を侵襲性を最小にして選択的に切除又は破壊するのに有利である。
【0022】
図1を参照すると、本発明の実施形態による装置が記載される。装置10は、遠位部分14及び近位部分16を有するデリバリ部材12を含む。装置10は、デリバリ部材12に結合(例えば取り外し可能に結合)することができる装置の近位部分18を更に含む。付加的に、装置10は、エネルギー源(図示せず)に電気的に結合される導電ケーブル20を含むことができる。装置は、デリバリ部材12の遠位部分14に複数の電極22を含む。電極22は、例えば、デリバリ部材12の遠位端部に位置決め又は固定することもでき、デリバリ部材12の管腔から位置決め可能及び展開可能であり、デリバリ部材12の遠位端から伸縮自在とすることもできる。電極22は、デリバリ部材12の管腔内に電極22を位置決めすることができる非展開状態と、デリバリ部材12の遠位端から進んだときの展開状態とを含むことができる。電極22は、遠位端から進めて伸長され、実質的に切除容積を定める展開状態にされる。
【0023】
標的組織領域は、本発明の組織切除法が望ましいか又は有益である身体のどこにでも配置される可能性がある。標的組織は、どのような特定の種類にも限定されず、非限定的な実施例は、例えば、乳房組織、前立腺組織、肝臓、肺、脳組織、筋肉、リンパ管、膵臓組織、結腸、直腸、気管支等を含むことができる。標的組織領域は、典型的には、組織の塊又は固形部分を含むことになる。典型的には、標的組織領域は癌細胞を含み、これには、例えば固形腫瘍を含む標的組織領域が含まれる。本明細書で用いる用語「癌細胞」とは、一般に、例えば、前癌状態の細胞又は癌細胞(例えば、上皮性悪性腫瘍細胞又は非上皮性悪性腫瘍細胞)のような新生細胞を含む無秩序な成長を示すか又はその傾向があり、本明細書に記載する切除方法に適しているあらゆる細胞をいう。本発明の方法を受けることになる組織の容積は、例えば、癌細胞の塊の大きさ及び/又は形状、並びに他の因子に応じて変えることができる。標的組織領域の周囲寸法は、規則的(例えば、球形、楕円形、その他)とすることもでき、不規則とすることもできる。
【0024】
本発明の方法及びシステムには、イメージングシステム及び装置を含むことができる。例えば、標的組織領域は、超音波、コンピュータ断層撮影法(CT)走査、X線イメージング、核医学イメージング、核磁気共鳴画像法(MRI)、電磁波イメージング等のような従来のイメージング方法を用いて識別及び/又は特徴付けることができる。幾つかの実施形態では、エネルギー印加並びに電極形状及び/又は幾何学的配置のような切除パラメータを選択する際に、イメージング手法を用いて識別されたものを含む腫瘍の特徴を用いることもできる。加えて、装置及び/又は電極を患者の組織に位置決め及び配置するために、これら又は他の公知のイメージングシステムを用いることもできる。
【0025】
上述のように、電極は、標的組織領域内に位置決めされ、印加電場は、標的細胞を低出力又は非熱切除するのに十分である。本明細書で用いる用語「非熱切除」とは、一般に、電場を印加することにより組織又は組織の細胞の機能を除去又は破壊することを含む本発明の技術を指し、この場合、エネルギー印加/デリバリプロセスは、局所組織温度を実質的に上昇させることなく、且つエネルギー印加の熱作用が組織切除を行う有意な又は主要な手段ではなく行われる。多くの実施形態では、局所組織温度の上昇も回避することができ、その結果、標的組織領域では温度の上昇は検出されない。しかしながら、幾つかの実施形態では、標的組織領域に僅かな温度変化/上昇が起こることがあるが、典型的には、体温よりも数°Cを超えて高くはなく(例えば、体温よりも高いのが約10°C未満、典型的には約2度を超えない)、熱作用が組織切除を行う主要な手段ではない(例えば、有意な熱を介した致死的タンパク質変性が起こらない)。典型的には、印加電場は、低強度中間周波数交流電流を含む。本発明に従って利用される中間周波数は、例えば、典型的には電極の周りの組織を摩擦/抵抗加熱するのに必要なものより小さいことになる(例えば、約400kHz未満、好ましくは約300kHz又はそれ未満)。1つの実施形態では、例えば、電流は、約50V/cm未満の電圧場を生成する。別の実施形態では、電流は、約50kHzと約300kHzとの間の周波数を含む。
【0026】
電圧場及び/又は印加電流の周波数及び/又は振幅は、エネルギー印加の間に一定に保持することができ、或いは変化させてもよい。幾つかの実施形態では、例えば、最適な切除電圧/周波数/電流が標的組織領域に確実に印加されるようにするために、所与の範囲にわたって「走査」することにより非一定の又は変動する電圧及び/又は周波数及び/又は電流を供給することが望ましい場合がある。別の実施形態では、エネルギーを印加する前に、特定の電圧及び/又は周波数及び/又は電流を選択することができる。更に、電流の印加が標的組織内部から行われて、且つ切除が標的組織の内側から外側になされるように、電極は、標的組織領域内部に位置決めすることができる。1つの実施形態では、電極は、標的組織領域(例えば腫瘍)内に位置決めされ、印加電流は、電極から半径方向外向きに延びる電場を生成する。特定の実施形態では、このような位置決めは、例えば、標的組織領域内の分裂/増殖細胞の向きを含む腫瘍生理機能を利用して、電極により生成される電場が分裂癌細胞の分裂軸線と実質的に位置合わせされるのを確実にすることができる。
【0027】
図2A〜図2Cは、本発明の別の実施形態による複数の電極を有する装置を示す。図示するように、装置30は、装置の遠位部分から延びる複数の電極を含む。図2Aは、複数の電極を有する装置の斜視図(3次元側面図)を示す。図2Bは、電極配列を示す装置の上面図を示す。複数の電極は、中心に位置決めされた電極32と、中心電極32から横方向に間隔を置いて配置された外側電極34、36、38とを含む。図示した電極は、ほぼ直線の針様部分又は針電極を含む。電極は、装置の遠位部分から延びて、装置30の長手方向軸線と実質的に平行な向きにされる。加えて、各電極は、複数の電極の他の電極と実質的に平行である。複数の電極によって実質的に切除容積が定められ、外側電極34、36、38が切除容積の周囲を実質的に定め、電極32は、定められた周囲内に、又はほぼその中心点に位置決めされる。電極の各々は、切除プロセスにおいて異なる役割を果たすことができる。例えば、装置の異なる電極間で極性の変化及び/又は極性のシフトが存在する場合がある。本発明の他の装置と同様に、電極は、電気的に独立し、電気的に個別にアドレス指定可能とすることができ、例えば、2つ又はそれ以上の電極を1つのユニットとして効果的に機能するように電気的に接続することができる。1つの実施形態では、例えば、外側電極34、36、38を電気的に接続し、作動時には、内側電極32と異なる極性を含むことができる。図2Cに示すように、装置の電極32及び34、36は、反対の電荷(例えば、双極性)を含むことができる。このような場合には、印加電流は、矢印で示すように、周囲に位置決めされた又は外側にある電極34、36に向かって中心電極32から半径方向外向きに延びる電場を生成することができる。
【0028】
幾つかの実施形態では、本発明の装置及び/又はシステムは、電気的に浮遊のシステム又は接地無しで作動するように設計されたシステムを含む。場合によっては、このように電気的に浮遊する電極構成により、正確な又は制御可能な電場印加及び/又はデリバリが可能になることが観察された。特定の実施形態によるシステムの低出力要件によって、例えば、熱RF又はマイクロ波切除、或いは高出力エネルギーデリバリ及び対応する電源が必要となる高電圧不可逆電気穿孔のような公知の技術と比較して、上述のように電気的に浮遊する装置及びシステムの構成における設計の選択肢(例えばバッテリ駆動)をより多くすることができる。
【0029】
本発明の装置の別の実施形態を図3A及び図3Bを参照して説明する。装置40は、装置40の遠位端42にあるか又はこれから延びる複数の電極を含む。複数の電極は、外側に位置決めされた電極44を含み、これらは、湾曲し且つ実質的に切除容積を定める。電極46は、外側電極44により定められた容積内に位置決めされ、電極44と間隔を置いて配置される。中心電極46は、ほぼ直線状で、装置40の長手方向軸線に平行に示されているが、他の構成も利用可能である。図3Bは、外側電極44により定められる周囲内の標的組織48を示しており、電流が標的組織48に印加され、湾曲電極44により定められる長方形又は楕円の切除容積を示している。従って、固形腫瘍のような標的組織領域48は基本的に、外側電極44により定められる容積内に包み込むことができる。矢印は、電極46から半径方向外向きに複数の方向に延びる電場を示す。
【0030】
本発明の別の実施形態による装置の電極を図4を参照しながら説明する。装置50は、マイクロカテーテル54から伸縮自在なほぼ直線状の電極52と、湾曲部分を有し且つマイクロカテーテル58から伸縮自在な電極56とを含む。マイクロカテーテル58及び54は、デリバリカテーテルの管腔のような単一のデリバリ部材内に含めることもでき、或いは、例えば標的組織に個々に接近して方向を定めるように独立して配列することもできる。1つの外側電極が示されているが(例えば電極56)、他の実施形態(下を参照)に示すように複数の外側又は第2の電極を設けることもできる。
【0031】
装置は、マイクロカテーテルから各々展開可能又は伸縮可能な複数の電極を含むことができ、各マイクロカテーテル/電極組立体は、任意選択的に、図5A及び図5Bに示されるように大きなデリバリ部材の中心管腔内に位置決めされる。装置60は、管腔64を備えるデリバリ部材62と、管腔内に位置決めされたマイクロカテーテル66、68、70、72とを含む。図5Bは、デリバリ部材60の管腔62内に位置決めされたマイクロカテーテル60、68、70、72を備えた装置の上面図を示す。各々が湾曲部分を有する電極74、76、78は、マイクロカテーテル68、70、72から展開可能であり、展開状態では、実質的に切除容積を定める。電極80は、マイクロカテーテル66から展開可能であり、実質的に電極74、76、78により定められる切除容積内に位置決めされる。
【0032】
使用時には、図6に示すように、本発明の装置82は、患者の組織84を通して進めることができ、装置82の電極86は、標的組織領域88(例えば腫瘍)内に位置決めすることができる。電極が標的組織領域88内に位置決めされると、標的組織領域88に電流が供給される。電極86が標的組織領域88内に位置決めされると、印加電流は、複数の方向で外向きに放射する電場を生成することができる。本発明のシステム又は装置は、単極モード又は双極モードで作動することができる。単極作動の1つの実施形態では、例えば、患者を導電性パッド又はプレート(例えば金属プレート)上に位置決めすることなどにより、患者の身体の外側に第2の電極を配置することができ、更に、患者の皮膚と第2の電極との間に配置した導電性ゲル又は接着剤のような導電性材料を利用することができる。双極モードの実施形態では、実質的に切除容積を定める外側電極は、戻り電極として機能し、又は切除容積内に位置決めされた電極で回路を完成することができ、印加電流が外側電極と切除容積内に位置決めされた電極との間に位置する標的領域の組織を通って流れるようにする。図7は、本発明の別の実施形態による本発明の装置の利用を示す。上に記載するように、装置90は、標的組織領域94に近接して位置決めされた患者の組織及びデリバリ部材92を通って進められる。デリバリ部材92が位置決めされると、複数の電極96、98、100をデリバリ部材92から展開することができる。外側電極96、98は、標的組織領域94の周囲内又はその周り、例えば、ほぼ標的組織領域の縁(例えば腫瘍縁)に展開され、切除容積又は標的領域を実質的に定める。内側電極100は、切除容積内に位置決めされる。
【0033】
本発明は、標的組織に接近又は方向を定め、記載した切除治療をデリバリするための電極/プローブを位置決めする種々の手段を含むことができる。典型的には、本発明の装置の位置決めには、例えば、他の種類の組織切除(例えば、熱RF切除、マイクロ波切除、高電圧電気穿孔等)と共に一般的に用いられる接近技術を含む、侵襲性が最小の接近及び位置決め技術が含まれることになる。例えば、本発明の装置は、皮膚を通して経皮的に導入され、組織を通して進めて、標的組織にて位置決めすることができる。しかしながら、標的組織に方向を定めて装置を位置決め段階は、従来の外科的技術又は腹腔鏡技術と併せて行うこともできる。
【0034】
上述のように、本発明の特定の実施形態は、標的組織領域内に電極を位置決めし、交流電流を印加する段階を含み、この印加電流が、位置決めした電極から外向きに放射する電場を生成する。このように電場を印加すると、熱切除作用が無く低出力切除を介して癌細胞を破裂及び破壊するのに極めて有効であることが見出された。特定の実施形態では、本発明に従って癌細胞を破裂させ、その結果として得られる切除は、本発明の装置の電極により生成される電場が分裂癌細胞又は複数の細胞の分裂軸線と実質的に位置合わせされる場合に、更に効果的に行われた。図8Aは、癌腫瘍又は癌細胞の固形塊の成長パターン及び生理学についての簡易形態を示しており、領域の中心から外向きに分裂する癌細胞による腫瘍の成長を示す。矢印は、中心から外向きに分裂する癌細胞の分裂軸線を示す。図8Bは、図8Aの腫瘍の分裂細胞に焦点を当てた簡略図を示しており、細胞分裂の軸線の概念を更に示す。図示した分裂又は増殖癌細胞(有糸分裂の中期段階を示す)は、中期板軸線112に実質的に直交する細胞分裂110の軸を含み、細胞は、実質的に板軸線112に沿って分裂し、細胞増殖及び成長は、細胞分裂軸線110に沿って起こる。従って、本発明の特定の実施形態では、組織領域内、例えば腫瘍又は癌細胞の塊の中心領域に近接した電極の位置決め及び/又は装置の電極の構成及び配列は、電場がほぼ中心領域から外向きに放射され、且つ成長腫瘍細胞の分裂軸線と実質的に位置合わせされるように選択することができる。
【0035】
更に、記載したように電場を印加すると、無秩序な成長及び増殖を示さない正常細胞に対しては殆ど又は全く影響を及ぼさないようにしながら、分裂癌細胞を選択的に破裂及び破壊するのに特に効果的であることが観察された。特定の理論には縛られないが、記載したような電場印加は、特に、細胞分裂過程(例えば有糸分裂)又は細胞周期の進行、もしくはその段階又は過程(例えば、紡錘体形成、微小管重合、細胞質小器官機能又は配列、細胞質分裂、細胞浸透圧平衡等)を乱し、従って、より詳細には、無秩序な成長を示し(例えば癌細胞)、細胞周期により急速に進行する細胞に作用を及ぼす。
【0036】
本発明によれば、標的組織領域は、全体的又は部分的に切除することができる。一般に、標的領域又は腫瘍はできるだけ多く切除することが望ましいが、幾つかの実施形態では、方法は、標的領域の一部又はその全体未満の切除を含むことができることは理解される。場合によっては、最終的に腫瘍又は癌組織領域全体を破壊又は死滅させるために、部分的に腫瘍切除で十分である可能性がある。
【0037】
図9A〜図9Dを参照しながら、本発明の実施形態による装置(例えば、図2A〜図2Cの装置)の利用を説明する。装置120は、実質的に切除容積を定める外側電極122、124、126を含む複数の電極と、少なくとも1つの内側電極128とを含む。装置は、腫瘍又はその一部を含む標的組織領域に位置決めすることができる。腫瘍130は、実質的に切除容積内に位置決めされて示されており、内側電極128は、腫瘍の中心をほぼ通って位置決めされ、外側電極122、124、126は、内側電極128から横方向に間隔を置いて配置されて、ほぼ腫瘍縁に或いは僅かに内部又は外部に位置決めされる。図9Aは、腫瘍130及び位置決めされた電極122、124、126、128の上部断面図を示し、図9Bは、その側面図を示す。図9Cの矢印で示される電場は、位置決めされた電極及び電流の印加により生成される。ここに見られるように、図9〜図9Cに示される平行な直線状針電極構成では、切除容積の長さに沿った電場は、装置の長手方向軸線に直交する方向に向けられる。中心電極128から外側電極122、124、126に向かって流れる電流は、腫瘍細胞の多く、特に領域132の細胞では腫瘍中心から外向きの方向(例えば図8A及び図8B参照)に分裂する細胞分裂の方向と実質的に位置合わせした電場を生成する。矢印は説明の目的で示しており、本発明の実施形態は、どのような特定の電流及び/又は電場方向にも限定されず、具体的に示された方向以外及び/又はこれに加えた方向も含むことができる点は理解されるであろう。腫瘍は、腫瘍細胞分裂の方向が電場とより近接して位置合わせされると考えられる領域132を含む。図示の構成では、腫瘍は、腫瘍の対向する端部において、生成された電場と位置合わせされていない細胞分裂軸線を有する細胞のより多くの割合を含むことができる、すなわち換言すれば、電場に対してある角度を有し且つ領域132の更に大きな割合の細胞が切除されてもエネルギー印加後に生存したままとすることができる領域134、136を含むことができる。しかしながら、1つの実施例では、このように腫瘍切除を用いて領域132の組織/細胞が切除されると、その後、物質は、治療部位から除去され(例えば圧力を印加することにより絞り出される)及び/又は周囲組織によって吸収されて、領域134及び136が内向きに潰れて平坦な「パンケーキ様」組織残留物(図9D)を形成し、エネルギー印加後に最終的には死滅するのが観察された。注目すべきことには、本発明の記載した切除技術を受けた多数の実験(例えば動物)モデルは、検出可能な腫瘍が完全に寛解していることを示した。これらの結果は、効果的に腫瘍組織を切除する本発明の方法は、腫瘍組織全体より少なく切除された場合でも固形腫瘍を破壊することができることを示し、電場が癌細胞の細胞分裂の方向に位置合わせする場合に組織切除が改良されることを示した。
【0038】
図10には、本発明の装置の別の実施形態が示されている。上述のように、装置構成及び電極配列は、電場が、標的組織領域のほぼ中心から外向きに放射し、成長する腫瘍の特定の細胞の分裂軸線と実質的に位置合わせされるように選択することができる。電気エネルギーの印加及び電場と成長する腫瘍の分裂軸線との位置合わせをより最適にすることは、電極を標的領域に位置決めすること、並びに電極構成及び/又は装置の幾何学的配置を選択することの両方により達成することができる。1つの実施形態では、例えば、装置は、内側電極140と、湾曲する複数の外側電極142、144とを含むことができる。内側電極140は更に、湾曲又は非直線遠位部分を含むことができる。電極が湾曲部を有することは、装置又は内側電極の長手方向軸線に直交する方向以外の方向を含む複数の方向に放射する印加電場を選択するのに役立つことができる。外側湾曲電極は、実質的に切除容積を定め、内側電極は、切除容積内に位置決めされる。矢印は、中心から複数の方向で且つ実質的に標的組織領域の分裂癌細胞と一致して放射する電場を示す。場合によっては、この構成により生成される電場は、例えば、図9A〜図9Dに示される直線状針電極構成に比較して、標的組織領域の癌細胞の多くの部分と位置合わせすることができる。
【0039】
切除プロセスが開始されると、電場強度は、内側又は中心電極にて、或いは中心電極の周り及びこれに近接した組織内で最大になる。切除プロセスが進行すると、内側電極に近接する癌細胞が、最初に破壊又は切除されるのが観察される。切除細胞は、効果的に「液化」するか、或いは低インピーダンスの液体様材料の性質を呈する。「液化」するという用語は、本明細書では便宜上及び説明の目的で用いられ、切除又は細胞死のどのような特定の機序を必ずしも暗示するものではなく、細胞小疱形成、アポトーシス、溶解、又は何らかの他の細胞プロセス、及び/又はその何らかの組み合わせを含むことができる。細胞破壊の別の起こり得る原因には、例えば、1つ又はそれ以上の細胞膜の絶縁破壊(例えば以下を参照)を含む、細胞膜の完全性の破裂を含むことができる。液体様材料が中心電極を囲み、高電場強度切除領域を効果的に拡大し、最高電場強度切除領域は、液体様材料の外周にある。従って、液体様材料は、「仮想電極」になるといわれる。切除プロセスが進行すると、液体様材料の外周又は「仮想電極」が拡大し、本質的に標的組織領域を内側から切除する。幾つかの実施形態では、標的組織領域は、切除プロセス後にはより曲がりやすく柔軟になるか、又はマッシュ状になることが観察された。切除された液体様腫瘍組織は、最終的には治療部位から除去され、及び/又は周囲組織に吸収されて、もはや検出可能でなくなった。
【0040】
仮想電極効果を標的組織領域に位置決めされた電極の断面図を示す図11A〜図11Cを参照しながら例証する。外側電極150、152、154は、腫瘍156のほぼ縁又は外周に位置決めされ、内側電極158は、外側電極150、152、154により定められる容積のほぼ中心点に位置決めされる。切除は、T1すなわち切除プロセスの開始時(図11A)、液体様組織領域160の拡張で切除が開始された後T2(図11B)、液体様組織領域162が内側電極158から外側電極150、152、154に向かって更に外向きに拡張するその後の時間T3(図11C)で示される。
【0041】
切除プロセスは、その進行を含めて、切除組織のインピーダンスの関連する変化を検出することにより監視することができる。切除された液体様組織の外側周囲が、切除容積を定める外側電極に到達すると、インピーダンスが安定又は横ばいになる。従って、切除プロセスの進行は、インピーダンスの変化を測定することにより監視することができ、インピーダンスの変化が観察されなくなると電場の印加は解除した。
【0042】
また、フィードバック測定値を用いて、標的癌細胞の切除が非熱切除により確実に行われるようにすることもできる。特定の実施形態では、高熱作用又は熱切除を引き起こすことなく内側電極でできる限り大きな電場強度を発生させることが望ましいとすることができる。熱切除では、上述の「液化」作用なしに周囲細胞の破壊が引き起こされるので、特定の高熱作用は観察可能であり、本発明の望ましい非熱切除とは区別可能になる。例えば、細胞破壊が熱切除プロセスにより引き起こされる場合には、熱作用により炭化又は壊死した細胞のインピーダンスは通常増大するので、治療組織のインピーダンスが減少しない可能性がある。1つの実施形態では、本発明による非熱切除は、標的組織領域内(例えば、内側電極近傍)に熱電対のようなセンサを配置する段階と、標的細胞に熱作用を引き起こすことになる強度を下回る印加電場強度を選択する段階とを含むことができる。
【0043】
上に述べたように、場合によっては、標的組織領域内の内側電極の位置から出る電場強度を高めることが望ましいことがある。本発明の1つの実施形態では、電場強度は、標的組織領域内に配置された内側電極の表面積を増大させることにより高めることができる。増大させた電極の表面積の種々の実施形態が、図12A〜図12Fに示されているが、他の構成も利用可能になる。1つの実施形態では、電極は、追加として、円形パターン(図12A)、コークスクリュー(図12B)、又は単純なコイル(図12C)の形状にすることができるコイル遠位部分を含む。別の実施形態では、電極遠位端に小さなワイヤメッシュを含み、標的組織領域内に配置されたときに拡張させることができる(図12D)。別の実施形態では、電極は、遠位端がアレイ状に拡張された複数の小さなワイヤを含む、「リッツ」ワイヤ型電極(図12E)を含むことができる。別の実施形態では、遠位部分は、底部と底部とを積み重ねた2つの円錐に似た形状、すなわち側面から見てダイアモンド形の形状(図12F)を含むことができる。二重円錐/ダイアモンド端部の尖った対向する遠位及び近位部分により、組織での電極の挿入及び後退を容易にすることができる。多数の他の構成が利用可能であり、例えば、リング、球、コークスクリュー、螺旋、同心螺旋、又はこれらの複数形、針アレイ、管体を排除して小さな容器内に不規則に積み重なったストリングに類似したワイヤの小球を形成する、ある長さの非弾性ばね様ワイヤ等を含むことができる。
【0044】
図13には、本発明の装置の別の実施形態が示される。装置は、組織穿刺遠位部分172を備えたデリバリ部材170を含む。デリバリ部材は、内腔と、本体の開口部174と、遠位端の開口部176とを含む。部材の管腔内には複数の電極が位置決め可能である。展開された状態では、外側電極178は、部材170の遠位端の開口部176から延びて傘様方向に反転する。展開された外側電極178は、実質的に切除容積を定める。本体の開口部174から延びる電極180は、外側電極178から間隔を置いて配置され、切除容積内に位置決めされる。
【0045】
図14は、図13に示すものと同様の装置を示す。図14を参照すると、装置は、遠位部分、本体上の開口部192、及び遠位端の開口部194を備えるデリバリ部材190を含む。外側電極196は、本体開口部192から遠位方向に展開され、展開されて遠位端開口部194から延びる電極198を囲む容積を定める。
【0046】
本発明の装置の別の実施形態を図15を参照しながら説明する。装置は、複数の電極を含み、各電極はマイクロカテーテル内に位置決めされ、各マイクロカテーテルはデリバリ部材の管腔内に位置決めされる。デリバリ部材又はプローブ300は、患者の組織に更に容易に挿入されるように、尖った鋭い組織穿刺端部を含むことができる。同様に、マイクロカテーテルは、尖った又は鋭い組織穿刺端部を含むことができる。使用時には、デリバリ部材300が、患者の組織を通って進み、遠位端が標的組織領域(例えば腫瘍)に近接して位置決めされ、マイクロカテーテルがデリバリ部材から展開される。フェーズ1展開において示されるように、マイクロカテーテル310は、デリバリ部材の遠位端から標的組織領域内に遠位方向に進められ、そこで、マイクロカテーテルの電極320を展開することができる。マイクロカテーテル330もまた、電極340に向けてデリバリ部材300から展開される。フェーズ2展開では、電極340は、標的組織領域の外周(例えば腫瘍縁)の周りなど、マイクロカテーテル330が向く方向に展開される。マイクロカテーテル及びそこに位置決め可能な電極の両方は、ニチノールのような形状記憶金属で作られ、展開時に予め設定された構成をとるようにすることができる。他の使用フェーズも含むことができる。
【0047】
本発明の実施形態によるシステムを図16を参照しながら説明する。システム200は、患者にエネルギーをデリバリするための本発明のあらゆる装置を組み込むように含むことができ、駆動ユニット220、次いで本発明の装置の電極にエネルギーを供給するパワーユニット210を含む。本システムの構成要素は或いは構成要素の組み合わせは、本発明のシステムのためのエネルギー源を個々に又は集合的に含むことができる。パワーユニット210は、本発明の装置を作動させ、本明細書に記載するように標的組織に電流を印加するのに用いられるあらゆる電力生成手段を含むことができる。パワーユニット210は、例えば、1つ又はそれ以上の発電機、バッテリ(例えば、携帯型バッテリユニット)等を含むことができる。本発明のシステムの利点の1つは、切除プロセスに必要とされる電力が小さいことである。従って、1つの実施形態では、本発明のシステムは、携帯型及び/又はバッテリ駆動型装置を含むことができる。フィードバックユニット230は、
標的組織領域の組織の電場デリバリパラメータ及び/又は特徴、及び限定ではないが、電流、電圧、インピーダンス、温度、pH等を含む、測定されるパラメータ及び/又は特徴を測定する。システムには、1つ又はそれ以上のセンサ(例えば、温度センサ、インピーダンスセンサ、熱電対、その他)を含むことができ、これらは、装置又はシステムと結合することができ、及び/又は患者の組織又はその内部に別個に位置決めすることもできる。これらのセンサ及び/又はフィードバックユニット230を用いて、組織へのエネルギーのデリバリを監視又は制御することができる。パワーユニット210及び/又はシステムの他の構成要素は、制御ユニット240により駆動することができ、該制御ユニットは、例えば技術者又は医師による入力及び/又は制御のためのユーザインタフェース250と結合することができる。制御ユニット240及びシステム200は、イメージングシステム260(上記参照)と結合し、標的組織領域及び/又は場所を位置特定及び/又は特徴付け、或いは使用中の装置を位置決めするようにすることができる。
【0048】
制御ユニットは、例えば、1つ又はそれ以上の処理構造を有する多様な専用又は市販のコンピュータ又はシステム、及びパーソナルコンピュータ等のコンピュータを含むことができ、このようなシステムは、本明細書に記載した方法ステップの何れか(又はその組み合わせ)を実装するように構成されたデータ処理ハードウェア及び/又はソフトウェアを含む場合が多い。何れのソフトウェアも典型的には、メモリ、或いは光、電気、又は無線遠隔測定信号を再生するデジタル又は光学媒体等の有形媒体内に具現化されたプログラム命令の機械可読コードを含むことになり、これらの構造の1つ又はそれ以上を更に用いて、あらゆる種々の分散又は集中信号処理アーキテクチャにおけるシステムの構成要素間でデータ及び情報を送信することができる。
【0049】
コントローラを含むシステムの構成要素を用いて、標的組織にデリバリされる電力又は電気エネルギーの量を制御することができる。エネルギーは、プログラムされた又は予め設定された量で供給することができ、或いは、初期設定で開始して、エネルギーデリバリ及び切除プロセス中に電場に対して修正することもできる。1つの実施形態では、例えば、システムは、印加電圧及び周波数のような電場パラメータが予め設定された範囲にわたるデリバリを含む「走査モード」でエネルギーをデリバリすることができる。フィードバック機構を用いて走査モードで電場デリバリを監視し、標的にされている組織を切除するのに最適なデリバリ範囲パラメータを選択することができる。
【0050】
本発明の方法及び技術は、単一の装置又は複数の装置を用いることができる。1つの実施形態では、例えば、本発明の装置(例えば、図2A〜図2Cに示されるような装置)は、上に記載するように標的組織領域内に位置決めすることができる。次に、第2の装置を標的組織領域内又は同じ腫瘍の一部又は別個の腫瘍の別の標的組織領域に位置決めすることができる。1つの実施形態では、例えば、第1の装置を標的組織領域内に位置決めし、第2の装置を第1の装置に対してある角度(例えば90度の角度)で標的組織領域内に位置決めすることができる。加えて、同じ装置を別個の時点で異なる向き及び/又は場所に位置決めすることもできる。
【0051】
本発明のシステム及び装置は、必須ではないが、薬物デリバリ、局所又は全身デリバリ、放射線医学又は核医学システム等のような他のシステム、切除システム、癌治療システムと連動して用いることができる。同様に、装置は、薬物デリバリ針、電極等を含む薬物デリバリシステムのような他のシステムの構成要素及び/又は態様を組み入れるように修正することもできる。
【0052】
場合によっては、本明細書に記載した切除プロセスのあるステージで標的組織領域から切除組織を除去することが望ましい場合がある。例えば、場合によっては、切除組織の除去により被験者の治療及び/又は回復を改善し、場合によっては、本発明の切除プロセスに伴うストレス及び/又は毒性(例えば、局所組織毒性、全身毒性等)を低減できることが観察されている。
【0053】
切除組織を除去するのに種々の装置及び方法を用いることができる。場合によっては、上に記載するように、切除組織は、効果的に「液化」するか、或いは液体様材料の特性を呈することができる。次いで、液体切除組織は、排液するか標的組織領域から除去することができる。1つの実施形態では、切除組織の除去は、例えば、例えば装置/電極を標的組織領域に導入する入口穴を含む組織内の穴又は穿孔から漏出させることによって、(例えば、標的組織領域又はそれに近接する組織に力又は圧力を印加するか印加せずに)切除組織を標的組織領域から漏出又は滲出させるように単純なものとすることができる。他の実施形態では、切除組織の除去は、より慎重に又はより制御したものにすることができる。除去は、シリンジ又は他の液体除去装置のような切除装置とは別個のデバイス又は装置を用いて達成することもでき、或いは、組織除去のために更に構成された切除装置を用いて達成することもできる。
【0054】
本発明の実施形態は、上述のように癌細胞の非熱切除及び破壊に用いることに関して検討したが、場合によっては、システム及びプローブは、熱RF切除、マイクロ波切除、高圧直流電流を介する不可逆的電気穿孔法等、他の種類の組織切除に十分なエネルギーをデリバリするように構成することができる。例えば、本発明のシステムは、組織切除の1つ又はそれ以上の何れかの種類に適切なエネルギーをデリバリするように構成されたパワーユニットを含むことができる。実際、特定のプローブ構成は、例えば熱RF切除のデリバリの改善等を含む種々の種類の組織切除のデリバリを改善することができる設計(例えば、電極配列)を有する。本発明の方法による治療は、所与の治療に対する組織切除の1つ又はそれ以上の種類のデリバリを含むことができる。場合によっては、例えば、治療は、非熱組織切除がデリバリされるモードのような1つ又はそれ以上の切除デリバリモードを含むことができ、これは、熱RF組織切除のような別の切除モードの前又は後に置くことができる。例えば、1つの実施形態では、治療は、非熱組織切除の後にエネルギーを短時間印加するか、又はエネルギーパルスをデリバリして熱媒介作用を生じること、例えばプローブの1つ又はそれ以上の構成要素の「滅菌」を助けることを含み、侵入した軌跡を通って標的組織から抜き取り、プローブを抜き取る間に潜在的に生存可能なあらゆる癌細胞を組織内に持ち込むリスクを低減するようにすることができる。
【0055】
幾つかの実施形態では、本発明のシステムは、エネルギーデリバリプロセス中にプローブ及び他の構成要素を位置決め及び/又は安定化する特定の構成要素及び態様を更に含むことができる。例えば、エネルギー印加のような治療フェーズが数分間を超えることが予測される場合には、使用者(例えば外科医)がプローブを手で持つことを特に必要とせずにプローブを望ましい位置/場所に維持するように、位置決め又は安定化構造を含むことが望ましい場合がある。従って、システムは、プローブの位置決めを維持するためのハーネス、ベルト、クランプ、又は他の構造を含むことができる。システムは、治療中の患者の移動(例えば、シフト、歩行等)を可能にするように着装携行用途向けに設計することができる。実際に、低出力要件及び対応する設計オプション(例えば、バッテリ駆動システム)により、本システムを着装携行式システムとして用いるのに特に適切にすることができる。
【0056】
特定の実施形態では、本発明は、本明細書に記載した態様又は技術を公知の又は商業的に利用可能な構成要素と併せて使用して、癌細胞を破壊するシステム及び方法を改良することを含むことができる。例えば、熱RF切除、マイクロ波切除、高電圧電気穿孔等のような技術に一般的に使用されるものを含む、切除プローブ又は電極構成を有する特定の利用可能なシステムを修正して、本発明の非熱切除技術に用いることができる。1つの実施例では、本発明の方法は、「LeVeenプローブ」(例えば、米国特許第5,855,576号(特許文献3)参照)のような熱RF切除で一般的に使用されるプローブを用いた癌細胞の非熱切除を含む。図17を参照すると、非熱組織切除を行うためのプローブを用いた本発明の実施形態が記載されている。270は、プローブ272の遠位部分が標的部位又は領域(「TR」)或いはその内部に位置決めされるように、例えば経皮的に(皮膚「S」を通して)導入することができる。個々の電極274は、プローブ272の遠位部分から遠心方向に延びるように示される。電極274は、図17に示すように、最初に互いに半径方向外向きに発散し、最終的に外転して近位方向に戻るように進めることができる。電極274は、例えば、ケーブル278を介してパワーユニット280又は電源に電気的に接続することができ、図示のように、単極モードで作動することができる。電流は、標的組織領域内の癌細胞を非熱的に切除又は破壊するのに十分なレベル及び期間でパワーユニット280から印加することができる。
【0057】
次の実施例は、限定ではなく本発明を例証することを意図している。
[実験例]
一連の試験は、乳癌腫瘍モデルの治療を含んでいた。1つの実施例では、試験は、体重230〜250グラムのメスFisher−344ラット(Charles River)に行った。最初に、ラット乳癌細胞(MTLn−3)を培養液中で成長させ、培養液の細胞を動物の腹部に埋め込むことにより皮下腫瘍を生成した。腫瘍の直径がほぼ1cm又はそれ以上まで成長すると、切除治療を施した。ラットの18の固形乳房腫瘍を治療した。
【0058】
切除治療には、ステンレス鋼針電極アレイを含む切除プローブを経皮的に皮膚を通して直接腫瘍内に挿入する段階と、次いで、腫瘍治療電場を印加する段階とを含んでいた。針アレイは、ほぼ等しい間隔を置いて配置された3つの平行な外側針で囲まれた中心針を含んでいた。針の長さ及び配列を含むプローブ設計は、治療されている腫瘍のほぼ直径を横切るように選択し、針の長さは約1cmであった。外側針は、中心針から約0.5cmの間隔を置いて配置した。中心針は、腫瘍治療電圧で作動され、周囲針は、電流のリターンパスを形成した。プローブが、上述のような「双極モード」で動作する場合にはアースは設けず(例えば、電気的に「浮遊」システム)、装置はバッテリ電源を含んでいた。
【0059】
上述のプローブ及び針構成を用いると、治療電場は、ほぼ直径1cmで長さ1cmのシリンダ内に含まれ、その容積は、実質的に腫瘍を占有するものであった。印加AC電圧は、約20〜30mA(起動電流)で約10〜12ボルトピークであった。周波数は約98Khzであった。
【0060】
治療中に腫瘍に入る全電流を測定するためにフィードバック回路を含んだ。予備実験からの仮説の1つは、腫瘍細胞が印加電場により破壊され始めると(例えば、溶解、砕解、細胞質流出等)、例えば破壊細胞の内容物(例えば細胞質等)の方が実質的に無傷の細胞よりも導電性がより大きいことに起因して腫瘍領域内のコンダクタンスが増大するので、電流が実際に増大することになるというものであった。この結果から、回路が仮説のように働くことが示された。各症例で治療開始後に電流が増大し始め、これは、治療が効果的に起こっていることを示している。また、観察された電流の増大は、このプロセスが実質的に終了段階に達したときの指標となる。例えば、電流がこれ以上増大することが観察されない場合には、治療を中止することができることを示していた。この電流の横這い状態は、ほぼ40mAで起こることが観察され、典型的には、治療に入ってほぼ90分以内であった。
【0061】
腫瘍は、電力を印加したほぼ直後に細胞破壊を示し始めた。有意な破壊は、治療に入って30分以内に起こった。場合によっては、治療は、30分後に終了したが、腫瘍は殆ど検出不可能であった。他の治療群では、治療は、約90分又は3時間以内に完了した。何れの場合でも、治療した腫瘍は、目視検査ではほとんど検出不可能であった。腫瘍破壊が電場を印加した結果であることを確認するために、対照を含んだ。1群では、対照として電力を印加せずに針を挿入した。対照では、連続的な腫瘍の成長が観察された。
【0062】
治療したラットの群は、長期生存度試験のために選択し、治療後に屠殺しなかった。生存率は、治療日から12か月を超えた時点で確認したが、これは、何も治療を受けなかった場合の動物モデルの予想生存率(例えば約3週間)の17倍より大きかった。これらのラットは、現在まだ生きている。生存率観察及び組織学的分析(例えば以下を参照)により、上述のように治療を行った標的組織内の癌細胞の実質的に全てではなくても大部分が破壊されたことが示された。
【0063】
上述のように、治療によって典型的には、癌細胞/組織が幾分液化した。治療後、治療を受けた標的組織領域透明〜ピンクがかった流体が存在することが観察され、これは、針進入場所から漏出し、治療領域が圧縮されるか圧力が印加されると更に排出される可能性がある。組織学的分析は、治療後に液体及び腫瘍領域に対して実施した。組織学的分析では、流体が、主に破壊された癌細胞からなり、破壊された細胞は実質的に壊死して生存不可能であるようにみえることが示された。pH試験では、除去した流体が典型的な生理学的流体よりも高度にアルカリ性(例えば、約7.8又はそれ以上のpH)であることが示された。観察された治療領域は、約80〜90%が壊死又は生存不可能癌細胞であった。壊死していない治療領域(例えば、典型的には標的組織の約10〜20%)は、健康な非癌性組織領域の一部であるように見えた。従って、この結果は、健康な細胞を実質的に無傷又は生存可能のまま残しながら、癌細胞が選択的に破壊されていることを示していた。
【0064】
治療を観察しても、有意な副作用はないようであった。更に分析するために屠殺しなかった生存被検体は、治療後に、衰弱もせず、有害な副作用(生存度、挙動、その他)の顕著な徴候も示さなかった。被験体には、エネルギーを印加したことによる重大な苦痛又は不快、又は治療領域の刺激は観察されなかった。治療中、ラットは、麻酔されていないにも関わらず快適のようであり、すなわち、食べて飲んで眠っている。
【0065】
唯一観察された可能性のある副作用は、治療後に流体又は切除組織が除去されていないことによるものであるようであった。治療後に治療領域から流体が除去されない場合には、被検体は、数時間嗜眠性であるようであり。切除治療後に流体を除去したラット被検体に比較して回復時間が延びた。
【0066】
上述のように、記載したような治療では、定められた標的組織領域内の癌細胞が選択的に破壊されることが観察された。どのような特定の理論にも縛られないが、記載した治療が選択性を有することは、1つ又はそれ以上の理由により説明することができる。選択性が観察される理由の1つは切除プローブの設計であるようであり、すなわち、治療は、電極の位置決めにより定められる治療容積に実質的に限定されていた。デリバリエネルギーを受け取るようである唯一の組織は、プローブの外側電極内にあり、これは、電場がほぼ独占的に覆う領域である。電場は、外側電極により定められた容積の外部には延びないようである。
【0067】
第2に、選択性は、細胞破壊の機序に特有のものである可能性がある。細胞切除は、公知の高周波RF熱切除又はマイクロ波切除技術で行われる主として熱を介した切除から区別され、既に他の箇所で記載したように、高電圧直流電流を印加することによる高電圧不可逆電気穿孔による作用でもない。これらの既に教示した方法の全ては、設計により、癌と同様に正常組織も破壊する。本発明の技術は、熱又は高電圧切除の範囲に含まれない電圧、電力及び周波数範囲を利用する。
【0068】
更に、どのような特定の理論にも縛られないが、本技術の付加的な細胞レベルの作用により、非癌細胞に比較して癌細胞の選択的な破壊が引き起こされる可能性がある。本明細書に記載したようにエネルギーを印加すると、細胞膜の完全性の崩壊を仲介するようである。細胞膜が崩壊され及び/又は癌細胞が破壊される可能性のある理由の1つは、印加電場により細胞周期の進行及び細胞有糸分裂が破綻することを含むことができ、この破綻により、本明細書で観察されたように細胞破壊(例えば、壊死、アポトーシス、崩壊)がトリガされる。腫瘍内の癌細胞は、活発に分裂して増殖し、これによって、速度が数桁遅い非癌性又は健常細胞に比較して、遥かに高速に細胞周期/有糸分裂を通して活発に進行するので、記載したようなこのエネルギー印加は、癌細胞に対して選択性とすることができる。
【0069】
細胞破壊の別の可能性のある原因には、細胞膜の絶縁破壊を含むことができる。細胞膜は、これを上回ると細胞が破壊される絶縁破壊閾値を有することが知られている。正常細胞は典型的には、癌細胞よりも高い閾値を有する。従って、印加エネルギーが癌細胞の絶縁破壊閾値を超えるが正常/健常細胞の閾値を下回る場合には、正常細胞を害することなく癌細胞膜を選択的に破壊することが可能である。本明細書に記載した治療によって生じる膜完全性の破壊は、細胞外膜及び細胞内膜の両方に起こることができ、例えば、リソゾーム含有要素(例えば、分解酵素等)の破裂を引き起こし、これが更に細胞破壊を引き起こす。細胞の破裂及び細胞内容物の溢流は、細胞の近傍に有害な作用を及ぼす可能性があり、細胞破壊の一種のカスケードとなる。また、治療は、治療領域を「清浄化」することができ、更に、破壊又は除去されていないあらゆる残存/生存可能癌細胞を破壊することができる免疫応答も刺激することができる。他の崩壊及び/又は作用機序も起こる可能性がある。どのような特定の作用機序にも関係なく、細胞の崩壊が上述のように起こる場合には、結果として得られる流体は、場合によっては、一種の仮想電極として更に作用するようであり、電極を大きくすると直径が大きくなり、最終的には、全標的組織領域を実質的に覆うようになる。
【0070】
本明細書に記載した実施例及び実施形態は、例証を目的としたものであり、これに照らして当業者であれば種々の変更形態又は変形形態が想起され、本出願の精神及び範囲並びに添付の請求項の範囲に含まれることになる点は理解されたい。多数の異なる組み合わせが可能であるが、このような組み合わせは本発明の一部とみなされる。
【符号の説明】
【0071】
30 装置
32 中心電極
34 外側電極
36 外側電極
38 外側電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電場を組織にデリバリするための方法であって、
癌細胞を含む標的組織領域内に電極を位置決めする段階と、
交流電流を標的組織に印加して、電極の周りの標的組織領域の癌細胞を非熱的に切除する段階と、
を含む方法。
【請求項2】
前記位置決め段階が、前記標的組織領域の中心領域を識別し、前記識別した中心領域又はその近傍に前記電極を配置する段階を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非熱切除が低出力切除を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電流が、低電流中間周波数電流を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電流が、約50V/cm未満の電圧場を生成する、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電流が、約50kHzと約300kHzとの間の周波数を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記電極が、前記電極から半径方向外向きに複数の異なる方向に延びる電場を生成する、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記標的組織領域内に複数の第2の電極を位置決めして切除容積を定める段階を更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記電極が、単極又は双極モードで作動する、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記標的組織領域が腫瘍を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
温度又はインピーダンスを含む前記標的組織領域の組織の特徴を検出する段階を更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
検出した特徴の変化に少なくとも部分的に基づいて、前記印加電流を修正する段階を更に含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
電場を組織にデリバリする方法であって、
第1の電極及び複数の第2の電極を備えた複数の電極を、前記第2の電極が少なくとも部分的に切除容積を定め、前記第1の電極が前記容積内に位置決めされるようにする段階と、
交流電流を前記容積に印加して、前記第1の電極から半径方向外向きに延びる電場を生成し、前記標的組織内の癌細胞を選択的に破壊するようにする段階と、
を含む方法。
【請求項14】
前記電流が、約50V/cm未満で且つ約50kHzと約300kHzとの間の周波数の電圧場を生成する、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の電極が、実質的に前記切除容積の中心に位置決めされる、
請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記印加電場が、低出力の非熱組織切除を可能にする、
請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記印加電圧場が、前記標的組織領域の分裂している癌細胞の分裂軸線に実質的に位置合わせされる、
請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記印加電場が、癌細胞を分裂させる有糸分裂又は細胞周期の進行を破綻させる、
請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記印加電場が、癌細胞の細胞膜の完全性を破綻させる、
請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記印加電場が、前記標的組織領域の癌細胞を液化する、
請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記癌細胞が、前記切除容積内に実質的に配置される、
請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記標的組織領域が腫瘍を含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項23】
標的組織内の癌細胞を破壊する方法であって、
前記標的組織に電流を印加する段階と、
前記標的組織の癌細胞の破壊を示す、前記標的組織を通る電流のインピーダンスの低下を検出する段階と、
を含む方法。
【請求項24】
前記インピーダンスの低下が、電流印加中に検出される、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記印加電流が、前記標的組織領域の癌細胞を液化する、
請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記液化は癌細胞を破裂させることを含む、
請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記標的組織の外側部分から内側部分に向かって進むにつれて電場強度が増大する、
請求項23に記載の方法。
【請求項28】
電場を組織にデリバリして癌細胞を破壊するための装置であって、
癌細胞を含む標的組織領域内に位置決め可能な複数の電極を含み、該複数の電極が第1の電極及び複数の第2の電極を有するプローブと、
前記第2の電極により少なくとも部分的に定められる切除容積と、
を備え、
前記第1の電極が、前記切除容積内に位置決め可能であり、前記第2の電極から間隔を置いて配置されて、前記第1の電極から半径方向外向きに複数の異なる方向に前記容積を通って延びる1つ又はそれ以上の電場を形成するようにする、
ことを特徴とする装置。
【請求項29】
前記電極が、絶縁部分及び/又は非絶縁部分を含む、
請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記電極の前記非絶縁部分が電流デリバリ表面を含む、
請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記電極は、前記印加電場が前記切除容積内の分裂している癌細胞の分裂軸線と実質的に位置合わせされるように位置決め可能である、
請求項28に記載の装置。
【請求項32】
前記第2の電極が、電気的に接続された複数の電極要素を含む、
請求項28に記載の装置。
【請求項33】
前記第1の電極が、実質的に前記切除容積の中心に位置決めされる、
請求項28に記載の装置。
【請求項34】
前記装置が電気的浮遊システムを含む、
請求項28に記載の装置。
【請求項35】
前記電極が形状記憶金属を含む、
請求項28に記載の装置。
【請求項36】
管腔を備えた遠位部分を有し、前記管腔内に前記複数の電極を位置決め可能であるデリバリ部材を含む、
請求項28に記載の装置。
【請求項37】
前記複数の電極は、前記電極が前記デリバリ部材の管腔内に位置決めされている非展開状態と、前記電極が前記デリバリ部材の遠位部分から進められた展開状態とを含む、
請求項36に記載の装置。
【請求項38】
前記切除容積が、前記展開状態の電極により定められる、
請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記プローブが、前記標的組織に経皮的に接近するための組織穿刺遠位部分を含む、
請求項28に記載の装置。
【請求項40】
前記第2の電極が、中心にある第1の針電極から等間隔で配置した複数の直線針電極を含み、円筒形切除容積を定める、
請求項28に記載の装置。
【請求項41】
前記第2の電極が、実質的に球形の切除容積を定めるように湾曲されている、
請求項28に記載の装置。
【請求項42】
非熱組織切除のためのシステムであって、
癌細胞を含む標的組織領域内に位置決め可能な1つ又はそれ以上の電極を有する組織切除プローブと、
前記標的組織領域の癌細胞を非熱的に切除するための交流電流を供給するよう前記プローブに結合されるエネルギー源と、
を備えるシステム。
【請求項43】
前記エネルギー源がバッテリにより給電される、
請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記電極により印加される電場が、前記標的組織の分裂している癌細胞の分裂軸線と実質的に位置合わせされる、
請求項42に記載のシステム。
【請求項45】
前記標的組織領域の組織の特徴を検出するためのフィードバックユニットを更に備える、
請求項42に記載のシステム。
【請求項46】
前記特徴がインピーダンス又は温度を含む、
請求項45に記載のシステム。
【請求項47】
イメージングシステムを更に備える、
請求項42に記載のシステム。
【請求項48】
標的組織に低電圧で中間周波数の電流を供給する信号を前記エネルギー源に出力するように構成されたコンピュータを更に備える、
請求項42に記載のシステム。
【請求項49】
前記標的組織へのエネルギーデリバリ中に前記プローブを治療位置に保持するための位置決めシステムを備える、
請求項42に記載のシステム。
【請求項50】
癌細胞を選択的に破壊するためのシステムであって、
第1の電極及び1つ又はそれ以上の第2の電極を含む標的組織内に位置決め可能な複数の電極と、前記第2の電極により少なくとも部分的に定めることが可能であり且つ前記第1の電極が内部に位置決め可能な切除容積とを有するプローブと、
交流電流と、前記第1の電極から前記容積を通って半径方向に延びる1つ又はそれ以上の電場とを供給し、前記標的組織内の癌細胞を選択的に破壊するようにする、前記プローブに結合されたエネルギー源と、
を備えるシステム。
【請求項51】
前記エネルギー源がバッテリにより給電される、
請求項50に記載のシステム。
【請求項52】
前記印加電場が、低出力の非熱組織切除を可能にする、
請求項50に記載のシステム。
【請求項53】
前記印加電場が、前記標的組織領域の分裂している癌細胞の分裂軸線に実質的に位置合わせされる、
請求項50に記載のシステム。
【請求項54】
前記標的組織に印加する選択治療電流の信号を出力するよう前記エネルギー源に結合されたコンピュータを更に備える、
請求項50に記載のシステム。
【請求項55】
前記コンピュータに結合されたユーザインタフェースを含む、
請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
前記システムが着装携行式システムを備える、
請求項50に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公表番号】特表2010−503496(P2010−503496A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528510(P2009−528510)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/078562
【国際公開番号】WO2008/034103
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(509075066)ラジュール・テクノロジーズ・エルエルシイ (1)
【Fターム(参考)】