説明

癒着防止スプレー

【課題】 水和ジェルを最初に形成することなく、癒着を減らすために、生体吸収可能ヒアルロン酸(「HA」)を含む乾燥粉末が患者の創傷部の望みの部位に直接塗布される。
【解決手段】 HAは、他の物質で改質、架橋、化合されたヒアルロン酸を含む。粉末中の粒子の大きさを制御することは重要である。粉末は基本的に乾燥したブロー可能な粉末である。粉末粒子の少なくとも90%は30マイクロメートル乃至1ミリメートルの最大寸法をもつ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は癒着、特に外科的創傷の治癒中に形成される癒着を防ぐことに関する。
【背景技術】
【0002】
望ましくない組織瘢痕によって、結合されてはならない隣接する身体組織層、あるいは組織と内部器官とを結合してしまうことがよくある。このような内部瘢痕は、癒着と呼ばれるものであるが、外科的処置に続く治癒中に形成され、隣接構造に対するこれらの組織や器官の正常な動きを妨げる。
【0003】
隣接した構造間の癒着が形成されないように、治癒中に組織を互いから分離するための物理的障壁を形成する高分子量カルボキシル基含有生体高分子の水和ジェルといった種々の癒着防止成分が提案されている。障壁は好適には生体吸収可能であり、これにより、必要とされなくなった後で徐々になくなる。
【0004】
発明者らは、ヒアルロン酸(「HA」)を含む乾燥粉末が、癒着を減らすために患者の創傷の望ましい部位に直接塗布されることがあることを見いだした。体液や液体の存在下で粉末を塗布すると乾燥粉末が水和してゲルを形成するが、このゲルが癒着障壁として機能する。HAは、他の物質で改質、架橋、化合されたヒアルロン酸を含む。
【0005】
HAは、例えば、関節液、硝子体液、血管壁および臍帯、結合組織で見られる自然で発生するムコ多糖類である。多糖類は、交互N−アセチル−D−グルコサミンとD−グルクロン酸残渣を交互β−1−3グルクロン酸とβ−1−4グルコサミン結合によって接合したもので構成されるため、繰り返し単位は、−(1→4)−β−D−GlcA−(1→3)−β−D−GlcNAc−になる。水中では、無改質のヒアルロン酸が溶解して高粘着性の流体を形成する。天然源から分離されたヒアルロン酸の分子量は一般に、5×10から1×10ダルトンの範囲になる。
【0006】
発明者らは、HAという用語を、上で説明したとおりヒアルロン酸、および、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム(ナトリウム塩)、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸カルシウムを含む任意のヒアルロン酸塩を含むものとして用いる。発明者らはまた、化学的に改質(「誘導体化された」)形態のHAを含むことを意味する。特に、発明者らは、ジェンザイム社(Genzyme)のSeprafilm(商標)およびSepramesh(商標)製品で用いられるHA/CMC物質を用いることを好む。適した物質の一般的な開示は、特許文献1、特許文献2、特許文献3で見出せるが、これらはそれぞれ、本文において引用によって組み込まれている。「HA」は、他の物質で改質、架橋、化合されたヒアルロン酸を含むヒアルロン酸含有物質を意味する。
【0007】
誘導体化されたHAに関するさらなる背景、非特許文献1では、水溶液中における1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩化水素酸塩(「EDC」)の存在下でアミノ酸エステルとムコ多糖類を反応させることでムコ多糖類のカルボキシル基グループを置換アミドに変換してムコ多糖類を改質するステップを説明している。このカルボキシル基グループはグリシンメチルエステルがHAを含む種々の多糖類と反応したものである。得られる生成物は水溶性、すなわち、体組織間で見られるような水性環境下で水に対して急速に拡散する。
【0008】
低水溶性のHA組成を与えるための提案にはHAを架橋するものが含まれる。非特許文献2、非特許文献3では、アミド結合を通してシステイン残渣をHAに結合させることで
HAを改質し、その後、結合されたシステイン残渣間にジスルフィド結合を形成することでシステイン改質されたHAを架橋することでHAを改質するステップを説明している。システイン改質されたHAそのものは水溶性であり、ジスルフィド形態に対する酸化によって架橋した場合のみ水不溶性になった。
【0009】
特許文献4は、カルボキシル含有多糖類を二官能価または多官能価エポキシドと架橋することで作製される、手術後の組織癒着を防ぐための遅分解性ゲルについて説明している。低水溶性のHAの架橋ゲルを作製するために提案された他の反応性二官能価または多官能価反応物としては、50℃でのアルカリ媒体中1,2,3,4−ジエポキシブタン(非特許文献4)、アルカリ媒体中ジビニルスルホン(特許文献5)、ホルムアルデヒド、ジメチロール尿素、ジメチロールエチレン尿素、酸化エチレン、ポリアジリジン、ポリイソシアネートを含む種々の他の反応物(特許文献6)がある。特許文献7は、HAを、二官能価または多官能価エポキシドといった二官能価または多官能価架橋反応物と反応させることで硝子体液代替物として用いるためのHAの架橋ゲルを作製するステップを説明している。特許文献8は架橋HAゲルを真空乾燥または圧縮することで造形品を作成するステップを説明している。
【0010】
上述の参考文献は、一般に、ゲル生成のための水和に適した粒子形状で物質を得る方法について開示している。一般に、本発明による利用に適した粉末を生成するために、化学処理で得られた原材料が上述の種々の文献で説明されたとおり析出され、乾燥され、凝集塊をなくして粒径を小さくするための標準的な粉砕技術を用いて粉砕される。
【特許文献1】米国特許第6,235,726号
【特許文献2】米国特許第6,030,958号
【特許文献3】米国特許第5,760,200号
【特許文献4】PCT公開第WO86/00912号
【特許文献5】米国特許第4,582,856号
【特許文献6】英国特許出願第8420560号
【特許文献7】PCT公開第WO86/00079号
【特許文献8】EPO0193510、T.マルソン(Malson)等(1986年)
【非特許文献1】ダニシェフスキー(Danishefsky)等、Carbohydrate Res.、第16巻、199〜205ページ(1971年)
【非特許文献2】R.V.スパレー(Sparer)等、第6章、107〜119ページ(1983年)
【非特許文献3】T.J.ローズマン(Roseman)等、Controlled Release Delivery Systems、マーセル・デッカー社(Marcel Dekker Inc.)[米国ニューヨーク州]
【非特許文献4】T.C.ローレント(Laurent)等、Acta.Chem.Scand.、第18巻、274ページ(1964年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
粉末中の粒子の大きさを制御することは重要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一般に、本発明の一実施形態は、生体吸収可能HAを含む基本的に乾燥したブロー可能粉末を特徴としている。「乾燥」とは、ガス流れ中の粒子の効果的な混入を可能にする上で十分低い水含有率、例えば重量比25%水分より低いことを意味する。「ブロー可能」とは、ガス流中に混入された粒子の効果的な制御可能な方向付けを可能にする大きさ、含水率、形状を有することを意味する。粉末粒子の少なくとも90%は5マイクロメートル
から1ミリメートルの最大寸法を有する。本発明のこの観点の好ましい実施例において、粉末がさらにカルボキシメチルセルロース(CMC)を含み、溶解度を減らすように、あるいは前記粉末の癒着防止特性を高めるように、またはその両方を行うように、HAまたはCMC、あるいはその両方が改質される。この改質は、粉末が、HAまたはCMC、あるいはその両方のカルボジイミドまたはジビニルスルホンとの反応生成物を含むことができるものである。好ましくは、粉末粒子の少なくとも90%が、特に粉末がスプレーで塗布される場合に、70マイクロメートルから600マイクロメートルの間の最大寸法を有する。
【0013】
本発明の他の実施形態において、生体吸収可能HA、CMC、あるいはその両方を含む粉末が、癒着減少が望まれる創傷の部位に、創傷の治癒に伴い癒着を減少させるのに十分な濃度で塗布される。好ましくは、粉末粒子の少なくとも90%は、5マイクロメートルから1ミリメートルの最大寸法を有する。
【0014】
本発明のこの形態の好適実施例において、粉末が、2ミリグラム/平方センチメートルより大きい面積当たり質量で塗布される。典型的には、創傷は外科的創傷である。例えば、癒着が問題になる外科的フィールド内の部位に対して、切開部を通して粉末が直接塗布される。散粉器により、あるいは粉末だめと、シェーカーが攪拌されると粉末を放出する大きさをもつオリフィスとをもつシェーカーから粉末が塗布される。本発明は、患者に対する腹腔鏡処置により生成された外科的創傷の治癒中に癒着を防ぐためにも用いられる。この場合、粉末は、患者体外の第1部位から患者体内の第2部位に連通する導管(トロカール・カニューレ)を介して創傷に塗布される。本発明はこれにより、腹腔鏡装置を介して、癒着障壁で乾燥したメッシュ組織補填体を被覆するための改良された方法を提供する。メッシュが創傷の必要場所に設けられると、粉末は、次に出導管を介してメッシュ表面に塗布される。
【0015】
さらに一般的には、上記方法は、創傷にすでに置かれた組織補填体(例えば、メッシュ)を被覆するために用いることができる。例えば、補填体のエッジの周りにできる癒着は、現位置の補填体のエッジの被覆によって制御される。補填体のタックまたはステッチも同様に、それらの部位での癒着を減らすために被覆される。その他の場合、補填体がいかなる障壁層もなく創傷に置かれ、その後粉末で覆われる。好ましくは、粉末が塗布される前に、補填体が水溶液で飽和される。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、粉末は、粉末を含むチェンバを通過する気流に混入される。混入された粉末をもつ結果的に生じる気流は部位に向けられる。気流は手動空気ポンプまたは絞り球、あるいは病院手術室の加圧ガス源により提供される。混入された粉末は、粉末だめから創傷の部位まで粉末を運ぶように位置決めされた管状導管を経由して供給される。導管は、気流に対して径方向成分を与えるよう導管に位置決めされた旋回インデューサーといった気流調整器を含む。
【0017】
粉末をゲルに水和するための液体を提供するよう粉末を塗布する前に、創傷部位を灌注することが好ましい。
本発明の他の実施形態は、創傷に対して(上で説明された粉末のような)粉末を送出するための装置を特徴とする。本装置は、入気流導管と出気流導管とに接続された粉末だめを含む。本導管は、入導管を通って入り、出気流導管を通って出る気流に粉末を混入するための粉末だめに接続される。気流は、入気流導管に接続された手動空気ポンプまたは絞り球によって供給され、ポンプまたは絞り球は、利用者が装置を片手で保持して、保持しながらポンプまたは球を絞り、出気流導管から粉末を送出できるようにするように取っ手内に位置決めされる。その他の場合、入気流導管は病院手術室のガス供給口に取り付けるためのコネクタを含む。出導管は、気流速度に対して径方向成分を追加する旋回インデュ
ーサーを含む。本装置はまた、粉末だめからの逆流を防ぐために粉末だめの上流側に置かれた弁を含む。粉末だめは取り外し可能であるため、使用後に、使用済み粉末だめを新たな粉末チャージを含む粉末だめと置き換えることができる。好ましくは、少なくとも出導管は、流体蓄積を防ぐために疎水性である、例えば、疎水性物質で被覆される、あるいは疎水性プラスチックといった疎水性物質から作製される。
【0018】
1つの実施例において、粉末はHAまたはCMC、あるいはその両方である。
本発明のさらに他の実施形態は、HAを含む固体物質を供給し、HAを含む固体物質を粉砕し、粉末粒子の少なくとも90%が5マイクロメートルから1ミリメートルの間の最大寸法をもつことを特徴とする物質を選択するためにHAを含む固体物質のふるい分けを行うことによって、前記説明の粉末を作製する方法を提供することを特徴とする。
【0019】
本発明の1つ以上の実施例の詳細については、添付図画および以下の説明によって示される。本発明の他の特性、目的、利点については、説明および図面、さらに請求項から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(粉末配合)
本発明は、ヒアルロン酸(「HA」)を含む粉末、その製造法および使用法を特徴とする。まず、物質自体を説明し、その後、粉末配合を説明する。
【0021】
粒度制御は粉砕された粒子をふるい分けすることで達成される。粉末は大小さまざまなふるい目で多様なふるいにかけられる。粉末はその後、粉末がふるい目で捕獲される、あるいは通過されるかのいずれかまで手動または機械的に攪拌される。さまざまな範囲の粒径を集めることができる。粒径分布は、ふるい分けされた部分すべての重さを量る、あるいはレーザ回折粒子選別機といった粒子選別機器により測定できる。
【0022】
粉末粒子の最大寸法の分布は、ふるい分け、あるいはレーザ回折粒子選別機といった粒子選別機器によって得ることができる。
一般に、発明者らは、70マイクロメートルから600マイクロメートルの間の粒径範囲を好むが、この範囲外の粒子の試験を行ったところ、ある状況、特にシェーカーあるいは比較的短いスプレーチューブから開放操作フィールドに直接塗布された場合にも作動した。仮に粒子が小さすぎる場合、例えば、60マイクロメートル未満の場合、効果的に散粉を行うことのできる制御可能気流中に混入されるよりも、「雲」を作る傾向がある。雲は流れるよりも拡散してしまうため、創傷、例えば、腹部で位置を制御することが困難になる。他方、粒子が大きすぎる場合、効果的に気流に混入されない。散粉のためには、最大粒子寸法を1ミリメートル未満、好ましくは600マイクロメートル未満に維持することが好ましい。望ましい最大粒子は約35マイクロメートルから425マイクロメートルの大きさの間である。基準として用いることのできる1つの特定の粒径としては、425マイクロメートル超の粒子の約15%より少なく、約425マイクロメートル未満の粒径の約30%であり、38マイクロメートル未満の粒径の約10%である。比較的狭い導管を通して粒子を散粉することに関わる応用例、例えば腹腔鏡処理については、目詰まりが問題になりうる。これは特に、導管が、旋回インデューサーといった気流制御構造体を含む場合に問題である。これらの適用例について、緊密な製造制御がなされる。また、創傷部位に均一な被覆を形成し難いような、大きすぎて粒体を形成してしまう(例えば、1ミリメートルより大きな寸法)粒子を避けることが望ましい。
【0023】
例として、ただし限定としてではなく、図8の手順は、粉末を作製、包装、滅菌するために用いられる。HA−CMT粉末は425ミクロンから約100ミクロンのふるい分けサイズの間に粉末を維持するためにふるい分けされる。例えば、ふるい分けされた200
グラムのアリコットは、HA−CMCの合計ふるい分け量458グラムが得られるまで機械シェーカーで混合される。粉末は機械的加振装置を用いて攪拌される。粉末の物理特性に関してさらに均一な粉末を得るために、望みの粒径範囲から粉末が収集・混合される。この混合ステップは、示されたようなふるい分け後に直接行われる、または充填操作が行われる直前に移される。混合されると、粉末は透湿性袋(例えば、ポリエチレン)内に分注されるが、この袋は粉末を保持するものの、その後の(DHT)ステップ中に粉末が湿気を放出できるようにする。この脱熱水処理(DHT)ステップは、最低6時間、100℃±5℃で粉末を加熱するよう設計されている。DHTステップ後、粉末は、温度および湿度について制御されたエリア内で平衡になる。この平衡ステップの長さは、充填操作中に最小(1%未満)の重量変化をもたらす湿気に対する安定した状態条件を得るように選定される。例えば、周囲湿度(例えば、40%相対湿度)での平衡は32時間継続する。HA−CMC粉末は、例えば、公称充填サイズとして0.5グラム、1.0グラム、2.0グラムをもち、ここの他の場所で説明された装置を充填するために用いられるバイアル内に分注される。粉末の含水量を補うために、追加粉末が加えられ、すべての粉末を分注するための許容度が満たされ、分注ができない点が改善される。バイアルはその後、湿気障壁および無菌障壁、物質をもたらす容器内に梱包されるが、これは次に大量滅菌のために梱包される。生成物は25から40キログレイでガンマ照射され、適切な品質管理が実施される。
【0024】
(粉末を塗布するための方法および装置)
粉末を塗布する最も直接的な方法は、粉末を放出する大きさのオリフィスをもつシェーカーからのものである。この方法は、比較的開放的な操作フィールドが外科医にとって利用可能な場合に適している。この方法は、このような創傷でメッシュ補填体を植設する前に下層の内臓を被覆するために用いることができる。
【0025】
その他の場合、粉末は、癒着防止が望まれる創傷部位に向けられた気流内で混入される。図1〜7は、この目的のために用いることのできる種々のスプレー装置を示す。図1において、取っ手散粉器10は、取っ手13内に設けられた絞り球12を含む。絞り球は入口弁14と、粉末だめ16に結合された導管15とをもつ。逆流防止弁17、例えばフラッパ弁は粉末を絞り球内に吸引することを防ぐ。粉末20は粉末だめ16の底部にたまる。絞り球12が絞られると、空気が弁17を介して導管15を通って粉末だめ16内に流れ込む。空気は粉末を通って流れ、導管22を経由して出る気流に粉末を混入する。粉末だめ16内の導管22の開始点は、粉末から離間した粉末だめの最上部で導管15の端部に置かれる。導管22内に置かれた螺旋ディフューザ24は気流に対して径方向成分を与えるため、気流および混入された粉末が創傷部位で導管22を離れると拡散する。
【0026】
その他の送出方法については図2〜7で示される。図2は、加圧ガス源(例えば、COキャニスタ)と、キャニスタからの気流を混入するための粉末を含む(図示されていない)内部粉末だめとを含む標準エアゾールキャニスタ30を示す。圧力は弁31を作動させることで放出されるが、この弁は、出導管29を通して加圧ガス流内で混入された粉末を放出する。
【0027】
図3は、ストッパ/キャップ35の穴を通して粉末だめ34の最上部に入り底部まで延伸する導管32を介して入気流がもたらされる他の粉末だめ構成を示す。混入された粉末をもつ気流は、粉末だめの最上部で第2の導管36を介して出る。気流は、図6で示すような加圧ガスキャニスタ39により、あるいは図7で示されるような絞り球41によりそのような粉末だめに供給される。
【0028】
図4は、絞り球49/取っ手51の装置40が、装置を反転することなく挿入、取り出しできるように、粉末だめ42をもつ他の絞り球49/取っ手51の装置40を示す。入
空気導管44は、気流が導管46を通して出ると気流中に混入される粉末まで延伸する。
【0029】
図5は、一体型絞り球60/粉末だめ62であり、気流に混入された粉末が絞り球を通して送出導管まで押し出される様子を示す。粉末だめ50は絞り球52の後ろの凹部に対して取り外し可能に挿入される。絞り球52は空気をオリフィス54経由で送り出し、粉末は、送出導管58と連通する導管56を通して出る気流内に混入される。
【0030】
有利な点として、外科医としては取っ手を保持して球を絞るのに片手だけしか必要としない。
散粉された粉末の被覆は2ミリグラム/平方センチメートルより大きな密度をもたねばならない。好ましくは、被覆密度は少なくとも2.5ミリグラム/平方センチメートル以上、例えば、5ミリグラム/平方センチメートルでなければならない。被覆が厚すぎる場合、操作フィールドを覆い隠してしまい、他の複雑な問題が起こる。被覆が薄すぎると、効果が小さくなる。
【0031】
本発明の多数の実施例が説明された。しかしながら、本発明の精神と範囲を逸脱することなく種々の改造が行われることが理解されるであろう。例えば、市販の散粉装置がリヒャルト・ヴォルフ社(Richard Wolf GmbH)、私書箱1164号、クニットリンゲン、ドイツ 75434によって販売されている。したがって、他の実施例は本請求項の適用範囲内にある。
【0032】
出願者は、ここで開示された散粉装置の一部の請求されていない観点について、粉末送出装置の件名において上で参照した出願の発明者といった他の個人からの貢献があったことを注記する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】癒着防止粉末を送出するための手持式ピストル型グリップ散粉器の1つの実施例を示す側面図。
【図2】スプレー弁をもつ加圧キャニスタを用いて、癒着防止粉末を送出するための散粉器の第2の実施例を示す側面図。
【図3】粉末粒子の混入を部分的に断面で示す線図。
【図4】もう1つの手持式ピストル型グリップ散粉器の他の実施例を示す斜視図。
【図5】球型散粉器の他の実施例を示す斜視図。
【図6】加圧ガス源を用いた散粉器を部分的に断面で示す線図。
【図7】バルブ型散粉器の他の実施例を部分的に断面で示す線図。
【図8】粉末を作製する方法に対するプロセスフロー図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体吸収可能HAを備える基本的に乾燥したブロー可能粉末であって、前記粉末が、粉末粒子の少なくとも90%が5マイクロメートルから1ミリメートルの間の最大寸法を有する粉末。
【請求項2】
前記粉末がさらにCMCを含む、請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
溶解度を低下させるため、または前記粉末の癒着防止特性を向上させるため、もしくはその両方を行うために、前記HAまたはCMC、もしくはその両方が改質される、請求項1または請求項2に記載の粉末。
【請求項4】
前記粉末が、HAまたはCMC、あるいはその両方のカルボジイミドとの反応生成物を含む、請求項3に記載の粉末。
【請求項5】
前記粉末が、HAのジビニルスルホンまたはジエポキシドとの反応生成物を含む、請求項3に記載の粉末。
【請求項6】
前記粉末が、粉末粒子の少なくとも90%が70マイクロメートルから600マイクロメートルの間の最大寸法をもつ、請求項1に記載の粉末。
【請求項7】
創傷の治癒中における望ましくない癒着を減少させる方法であって、請求項1の粉末を癒着減少が望まれる創傷の部位に塗布するステップを含み、創傷の治癒に伴い癒着を減少させるのに十分な面積当たり質量になるよう前記粉末が塗布される方法。
【請求項8】
創傷における望ましくない癒着を減少させる方法であって、乾燥したブロー可能粉末を癒着減少が望まれる前記創傷の部位に塗布するステップを含み、癒着が減少する上で十分な面積当たり質量になるよう前記粉末が塗布され、前記粉末が生体吸収可能HA,CMC、またはその両方を含む方法。
【請求項9】
前記質量/面積が2ミリグラム/平方センチメートルより大きい、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記創傷が外科的創傷である、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記粉末が開放創に対して直接塗布される、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項12】
粉末だめと、シェーカーが攪拌されると粉末を放出する大きさをもつオリフィスとを備えるシェーカーから前記粉末が前記創傷に塗布される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記外科的創傷が患者に対する腹腔鏡処置により生成され、前記粉末が、前記創傷の前記部位に対する送出のために患者体外の第1部位から患者体内の第2部位まで連通する導管を介して前記創傷に塗布される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
a.腹腔鏡検査装置を介して前記創傷にメッシュ材料を送出するステップと、
b.その後に、前記出口導管を介して前記メッシュ表面に前記粉末を塗布するステップとをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記部位が組織補填体の表面である、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記部位が前記補填体のエッジを含む、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項17】
a.前記粉末を前記気流内に混入するために前記粉末を含むチェンバを通して気流をもたらすステップと、
b.混入された粉末をもつ気流を前記部位に向けるステップとを含む、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記気流が手動空気ポンプまたは絞り球によってもたらされる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記気流が病院手術室内の加圧ガス源によりもたらされる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記粉末を前記粉末だめから前記創傷の前記部位まで搬送するよう位置決めされた管状導管を介して前記粉末が供給される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項21】
前記導管が気流調整器を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記気流調整器が、前記気流に対して径方向成分を付与するよう前記導管に位置決めされた旋回インデューサーを備える、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
粉末を塗布する前に部位を灌注するステップを含む、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項24】
粉末を導入する前に水溶液で前記補填体を飽和させるステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
創傷に粉末を送出するために記載の前記装置が、入気流導管と出気流導管とに接続された粉末だめを備え、前記導管が、前記入気流導管を通って入り、前記出気流導管を通って出る気流中に粉末を混入するよう前記導管が前記粉末だめに接続され、前記粉末だめが請求項1の粉末を含む装置。
【請求項26】
前記入気流導管が絞り球に接続される、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
取っ手を備え、前記絞り球が、利用者が装置を片手で保持でき、その間に球を絞って出気流導管から粉末を送出するよう装置を保持するように、前記取っ手内に位置決めされる、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記入気流導管が、病院手術室ガス供給口に取り付けるためのコネクタを含む、請求項25に記載の装置。
【請求項29】
径方向成分を気流速度に加える旋回インデューサーを出導管が備える、請求項25に記載の装置。
【請求項30】
粉末だめが取り外し可能であり、このため使用後に使用済み粉末だめを、新しい粉末チャージを含む粉末だめと取り替えることができる、請求項25に記載の装置。
【請求項31】
少なくとも出導管が疎水性である、請求項25に記載の装置。
【請求項32】
出導管が疎水性材料で被覆される、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
出導管が疎水性材料で作製される、請求項31に記載の装置。
【請求項34】
疎水性材料が疎水性プラスチックである、請求項32または請求項33に記載の装置。
【請求項35】
癒着減少が望まれる前記創傷の部位に導入される乾燥したブロー可能粉末を含む装置であって、前記粉末がHAまたはCMCを備え、前記装置が、さらに、前記粉末を含むための粉末だめと、粉末を前記部位に塗布するための出オリフィスとを備える装置。
【請求項36】
請求項1の粉末を作製する方法であって、いかなるシーケンスにおいても、HAを含む固体物質を供給するステップと、HAを含む固体物質を粉砕するステップと、物質を選択するためにHAを含む固体物質をふるい分けするステップとを含み、粉末粒子の少なくとも90%が5マイクロメートルから1ミリメートルの間の最大寸法をもつ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−529280(P2007−529280A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504136(P2007−504136)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/009050
【国際公開番号】WO2005/089472
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(500579888)ジェンザイム・コーポレーション (34)
【Fターム(参考)】