説明

発信側認証を含む通信方式およびその方法

【課題】 電話通信網に設置された手段が認証した発信側電話機であることを着信側電話機に伝える。
【解決手段】 電話機に関する所定の認証済情報を、前記電話機の固有識別情報と対応させて保存するデータベースと、発信側電話機から呼設定要求信号を受信すると、前記発信側電話機の固有識別情報に基づいて前記データベースを検索し、当該固有識別情報と対応して記憶されている前記発信側電話機の前記認証済情報を抽出し、抽出した前記認証済情報を前記呼設定要求信号に付加して着信側電話機に向け送信する電話通信網内の通信装置と、を備える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発信側認証を含む通信方式およびその方法に関し、特に、発信側電話機の契約加入者が所属する機関や組織の名称を予め認証し、その認証済情報を着信側電話機に伝える通信方式およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電話は、いつでも、どこでも、誰とでも通話ができる通信システムとして整備され、現代社会では欠くことのできない社会基盤となっている。
【0003】
しかし、電話による社会生活やビジネスでの利便性が向上する反面、各種の電話サービスで使用するユーザ識別情報やパスワードを盗用してそのサービスを不正に使用する者や、電話を使用して詐欺行為を働く者が現れている。
【0004】
例えば、特許文献1や特許文献2には、ユーザ識別情報やパスワードの盗用を防ぐための認証技術が提案されている。
【0005】
特許文献1は、情報提供サービスで使用するユーザ識別情報やパスワードの盗用による「なりすまし」の発生を防ぐ認証技術を開示する。この認証技術は、携帯電話からアクセス要求があると、認証サーバがその携帯電話へプログラムを送信し、携帯電話のROM(Read Only Memory)に改ざん不能に記録された固体番号(製造番号)を読み出す。認証サーバは、その製造番号と、自らが保持している各携帯電話の製造番号についてのデータと比較し、いずれかと一致する場合に、そのアクセスが正当なものであると認証する。
【0006】
また、特許文献2は、コールバック接続サービスの登録や実行に際して使用する受付番号やパスワードの盗用による「なりすまし」の発生を防ぐ認証技術を開示する。この認証技術において、携帯端末は、Web(ウェブ)サーバや音声応答装置を介して認証サーバと通信する。携帯端末の電話番号を事前に登録する最初の段階では、まず、音声応答装置が携帯端末からの登録受付を行う際に、携帯端末の電話番号を自動取得して受付番号とともに認証サーバに登録する。そして、携帯端末のアクセスを受けたWebサーバが携帯端末の個体識別情報(製造番号)を取得し、携帯端末から受信した受付番号とともに認証サーバに送る。認証サーバは、受付番号が事前に登録されている場合にパスワードを生成し、電話番号と個体識別情報とパスワードを対応付けて登録する。そして、電話発信の段階では、電話発信を受け付けた音声応答装置が携帯端末の電話番号を取得し、携帯端末から受信したパスワードとともに認証サーバに送信する。認証サーバは、電話発信の段階で受信した携帯端末の電話番号とパスワードが予め対応付けられて登録されている場合に、その電話発信を認証する。
【0007】
上記の特許文献1および特許文献2は、電話発信を受け付けた際に、発信者が発信に伴うサービスに対する正当な権利を有した者であるか否かを、通信網側(通信事業者またはサービス提供者)が認証する技術である。
【0008】
一方、電話の着信者にとって未知の発信者を識別する手段は、発信者番号通知によって着信時に通知される、発信側の電話機に付与された電話番号のみというのが現状である。なお、発信者番号通知は、携帯電話、ISDN(Integrated Services Digital Network)、VoIP(Voice over Internet Protocol)電話では基本機能となっている。また、アナログ電話を収容するPSTN(Public Switched Telephone Network)では、ナンバー・ディスプレイ(登録商標)のような番号表示サービスを受けることにより、発信側の電話番号を着信電話機に表示することが可能となる。もちろん、この場合は、表示機能が付いている電話機を用いる必要がある。
【0009】
特許文献3は、発信端末が発呼信号を着信端末へ送信する際、表示情報を付加し、着信端末において、受信した表示情報を表示装置に表示する技術を開示する。表示情報は、発信端末のユーザが着信端末のユーザに対して、電話の目的を通知する、あるいは発信者である自分が誰であるかを知らせること等を目的として用いられる。着信端末のユーザは、表示された表示情報を参照して、発呼に対して応答するか否かを判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002-215586号公報
【特許文献2】特開2007-036562号公報
【特許文献3】特開2007-281881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
電話による通信は依然として音声を主体とした通信であり、着信者にとって未知の発信者を識別し得る手段は、発信者番号通知により通知される発信側の電話機に付与された電話番号のみというのが現状である。しかし、着信時に表示された発信側の電話番号と、相手が通話上で名乗る機関や組織との整合性を取ることは困難である。
【0012】
例えば、郵便の場合だと、受け取った封筒や便箋に印刷されたその機関や組織を表す標章から、相手を特定または推測することができる。しかし、電話の場合は、会話の中で発信者が身分を詐称したとしてもそれを即座に確認する手立てが無い。そのため、発信者が身分を詐称して相手をだます、いわゆる振り込め詐欺等の犯罪が後を絶たない。
【0013】
特許文献3は、着信者に対して発信者が通話の目的や自分が誰かであるかを知らせることができる。しかし、この通知は発信者が入力するものである。そのため、発信者が詐称を目的として通知したような場合には、上記の場合と同様に、その真偽を確認する手立てが無い。
【0014】
また、このような身分を詐称する不審な電話が頻発すると、着信者の不信感によって、本来の正規のビジネスや通常の社会生活上の電話までもが一律拒否されてしまい、電話本来の機能が果せなくなってしまうことも懸念される。
【0015】
そこで、本発明の目的は、上記の課題を解決して、着信してきた電話の電話機に関する所定の認証済情報を、着信者に伝える通信方式およびその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を実現するために、本発明の一形態である発信側認証を含む通信方式は、電話機に関する所定の認証済情報を、前記電話機の固有識別情報と対応させて保存するデータベースと、発信側電話機から呼設定要求信号を受信すると、前記発信側電話機の固有識別情報に基づいて前記データベースを検索し、当該固有識別情報と対応して記憶されている前記発信側電話機の前記認証済情報を抽出し、抽出した前記認証済情報を前記呼設定要求信号に付加して着信側電話機に向け送信する電話通信網内の通信装置と、を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の他の形態である発信側認証を含む通信方法は、電話機に関する所定の認証済情報を、前記電話機の固有識別情報と対応させてデータベースに保存し、電話通信網内の通信装置が、発信側電話機から呼設定要求信号を受信すると、前記発信側電話機の固有識別情報に基づいて前記データベースを検索し、当該固有識別情報と対応して記憶されている前記発信側電話機の前記認証済情報を抽出し、抽出した前記認証済情報を前記呼設定要求信号に付加して着信側電話機に向け送信する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、着信してきた電話の電話機に関する所定の認証済情報を、着信者に伝えることで目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態の動作を示すシーケンス図である。
【図3】第2の実施形態のシステム構成とデータベースの内容例を示すブロック図である。
【図4】第2の実施形態の動作を示すシーケンス図である。
【図5】携帯電話、ISDNにおける呼接続処理手順の一例を示したシーケンス図である。
【図6】PSTNにおける呼接続処理手順の一例を示したシーケンス図である。
【図7】VoIP電話における呼接続処理手順の一例を示したシーケンス図である。
【図8】携帯電話システムの呼設定要求メッセージのフォーマット例を示す図である。
【図9】第2の実施形態の交換機の動作を示すフロー図である。
【図10】第2の実施形態の着信側の電話機の動作を示すフロー図である。
【図11】第3の実施形態のシステム構成を示すブロック図である。
【図12】第3の実施形態で使用するデータベースの蓄積情報例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施形態のシステム構成を示すブロック図である。
【0022】
尚、実施の形態は例示であり、開示の装置及びシステムは、以下の実施の形態の構成には限定されない。
【0023】
本発明の第1の実施形態である発信側認証を含む通信方式は、データベース10、通信装置20を主要な構成要素とする。
【0024】
データベース10は、電話機に関する所定の認証済情報を、前記電話機の固有識別情報と対応させて保存している。
【0025】
電話通信網30内の通信装置20は、発信側電話機40から呼設定要求信号を受信すると、発信側電話機40の固有識別情報に基づいてデータベース10を検索する。そして、その固有識別情報と対応して記憶されている発信側電話機40の認証済情報を抽出し、抽出した認証済情報を呼設定要求信号に付加して着信側電話機に向け送信する。
【0026】
図2は、本発明の第1の実施形態の動作を示すシーケンス図である。
【0027】
本発明の他の形態である発信側認証を含む通信方法は、電話機に関する所定の認証済情報を、予めデータベース10に電話機の固有識別情報と対応させて保存している。
【0028】
電話通信網30内の通信装置20が、発信側電話機40から呼設定要求信号を受信すると(S10)、その発信側電話機40の固有識別情報に基づいてデータベース10を検索する(S11)。そして、その固有識別情報と対応して記憶されている認証済情報を抽出(S12)し、抽出した認証済情報を呼設定要求信号に付加して着信側電話機50に向け送信する(S13)。
【0029】
このような構成により、本発明の第1の実施形態は、電話機に関する所定の認証済情報を、電話通信網内を伝達して着信者に伝えることができる。その認証済情報は、電話通信網内の通信装置が呼設定処理の過程で付加するので、発信者がその認証済情報を詐称することはできない。
【0030】
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。
【0031】
図3は、第2の実施形態のシステム構成とデータベース10の内容例を示すブロック図である。
【0032】
第2の実施形態のシステム構成は、データベース10、電話通信網30内の通信装置20、発信側電話機40、着信側電話機50およびデータベース10と接続された管理端末60を含む。
【0033】
管理端末60は、電話機に関する所定の認証済情報を入力する端末である。この認証済情報の具体例としては、通信事業者またはサービス提供者が予め確認した契約加入者が属する機関または組織の存在および事業内容に関する認証済情報である。より具体的に説明すると、この認証済情報は、電話機の契約加入者が属する機関または組織の存在および事業内容に関し、契約加入者から申告された内容と一致していることが予め確認されている情報である。そして、認証済情報は、当該電話機の固有識別情報と対応させてデータベースに保存されている。
【0034】
このデータベース10の登録に当たっては、通信事業者またはサービス提供者との加入契約の際に必要情報を契約加入者側から提示し、通信事業者、サービス提供者または代理の与信機関がその情報内容を確認する。そして、公正な観点で事前に審査して認証済情報をデータベースに登録している。つまり、単に契約加入者側からの一方的な情報ではなく、その存在や事業内容が確認された契約加入者の情報が登録されている。
【0035】
通常、一般個人の加入者は個人情報の開示を嫌う。しかし、電話を用いて社会的にビジネス活動を行う機関や組織にとっては、自機関、自組織の信用性を高める観点から、このようなデータベースに積極的に登録する傾向が高い。つまり、データベース10は、電話通信網として、その存在や事業内容が確認された契約加入者であることを保証するデータを含んでいる。
【0036】
このような情報を入力する管理端末60は、通信事業者またはサービス提供者の管理センターにおいて、厳密なセキュリティのもとに設置、管理、運用される。
【0037】
本実施形態において、電話通信網30は、携帯電話網、ISDN、VoIP電話網およびPSTNのいずれの網であってもかまわない。また、通信装置20は、例えば、交換機やサーバ等の電話通信網内において呼設定処理を司る通信装置である。
【0038】
また、本実施形態において、着信側電話機50は、呼設定要求信号に基づく着信信号を受信し、当該着信信号に認証済情報を含む場合は、その認証済情報で保証された発信側電話機40からの着信であることを表示部に表示する。
【0039】
図3の下部に示した図は、データベースの蓄積情報例100、電話通信網内での認証済情報の伝送形態例および着信側電話機での表示例200を示す。
【0040】
図3のデータベースの蓄積情報例100には、電話機の固有識別情報、契約加入者の所属する機関・組織の名称および識別コードが対応付けられている。
【0041】
まず、電話機の固有識別情報について説明する。
【0042】
電話機の固有識別情報は、その電話機を特定することができる情報である。一番簡単な例は、通信事業者が加入者の電話機に割り当てた電話番号である。また、電話機が携帯電話機であればIMEI(International Mobile Equipment Identifier,国際移動体装置識別番号)を用いることもできる。IP(Internet Protocol)網で使用する電話機であれば、それぞれの機器に付与されたMAC(Media Access Control)アドレスを用いることもできる。また、電話機に付与された製造番号を用いてもよい。
【0043】
従って、電話機の固有識別情報は、発信側電話機が呼設定要求信号に含めて通信装置に伝達することができる情報や、通信装置が呼設定処理の動作で参照する、発信加入者データに予め登録されている情報を、任意に用いることができる。つまり、本実施形態が適用される電話通信網に応じて、上記の情報のいずれか、またはいずれかの組合せを電話機の固有識別情報とすることができる。
【0044】
なお、アナログ電話機を収容するPSTNの場合は、電話機が交換機に接続された収容位置情報から当該電話機に付与された電話番号を識別して、その電話番号に基づいて発信加入者データが参照される。そのため、PSTNの場合は、発信電話機の電話番号または発信加入者データに予め登録されている当該電話機固有情報を固有識別情報として用いる。
【0045】
また、呼設定要求の度にデータベース10を検索することは、システムに負担をかけることになるので、認証済情報がデータベースに登録されている電話機であるか否かを識別する情報を、発信加入者データとして付与してもよい。つまり、認証済情報がデータベースに登録されている電話機に対して、「特定情報提供端末」という識別情報を発信加入者データに付与する。そして、呼設定処理の過程で、呼設定要求を行ってきた電話機の発信加入者データを識別した際に、「特定情報提供端末」の有無でデータベース10の検索要否を判定する。発信加入者データに「特定情報提供端末」という識別情報が付与されている電話機から呼設定要求を受けた場合にのみ、データベース10を検索するようにする。
【0046】
契約加入者の所属する機関・組織の名称は、例えば、公官庁、銀行、会社等の名称、部署等が登録される。
【0047】
図3のデータベースの蓄積情報例100には、機関・組織の名称と対応付けて識別コードが付与されている。この識別コードは、契約加入者の所属する機関・組織の名称および部署を識別することができるコードで、呼設定要求信号に付加されて電話通信網内を伝達され、最終的に着信側電話機50に到達する。従って、着信側電話機50は、この識別コードを対応する機関・組織の名称および部署等の文字列に逆変換する機能を備えている。
【0048】
つまり、図3に示した例では、通信装置20が、文字列として登録されている認証済情報を、対応する識別コードに変換して伝達し、着信側電話機50が、その識別コードを逆変換して文字列を表示するようにしている。これは、文字列を呼設定要求信号に付加して伝達することにより、レイヤ3レベルでの処理負荷が大きくなることが好ましくないような電話通信網を想定している。
【0049】
従って、呼設定要求信号に文字列を含めて伝達することに何ら問題が無いような電話通信網の場合は、識別コードを用いることなく、認証済情報として登録されている公官庁、銀行、会社等の名称、部署等を文字列として送信してもよい。
【0050】
図4は、第2の実施形態の動作を示すシーケンス図である。
【0051】
電話通信網30内の通信装置20が、発信側電話機40から呼設定要求信号を受信すると(S10)、その発信側電話機40の固有識別情報に基づいてデータベース10を検索する(S11)。そして、その固有識別情報と対応して記憶されている認証済情報を抽出(S12)し、抽出した認証済情報を呼設定要求信号に付加して着信側電話機50に向け送信する(S13)。
【0052】
認証済情報を含む呼設定要求信号が電話通信網内を伝達され、着信側電話機50は、その呼設定要求信号に基づく着信信号を受信する(S14)。そして、着信側電話機50は、当該着信信号に認証済情報を含む場合は、その旨を表示部に表示する(S15)。この表示により、着信してきた電話の発信側電話機の契約加入者が、通信事業者またはサービス提供者により予め認証されていることを、着信者に伝える。
【0053】
従って、着信側電話機50で呼の着信を受けた着信者は、この認証済情報の表示の有無により、当該着信に対する応答を行うか否かを判断することができる(S16)。
【0054】
例えば、認証済情報の表示が有る場合には、認証済情報で保証された発信側電話機から着信した呼であると判断して応答(S17)し、発信側電話機40と通話状態になる。また、認証済情報の表示が無い場合には、応答しなければよい。
【0055】
また、着信信号に認証済情報を含まない場合には、着信拒絶(S18)を行う機能を着信側電話機50に備えていてもよい。この場合、着信側電話機50は着信に応答するが、発信側電話機に着信拒絶メッセージを送出する。
【0056】
図5乃至7は、各電話通信網における一般的な呼接続処理手順の一例を示したシーケンス図である。
【0057】
図5は、ISDNや携帯電話網で用いられる呼接続処理手順の一例を示す。発信側電話機と発信側交換機との間および着信側交換機と着信側電話機との間は、Q.931で規定される呼接続処理手順が用いられる。また、交換機間はSS7(Signaling System No.7、No.7信号方式)が用いられる。なお、Q.931は、ITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)が勧告するISDNのユーザ網インタフェースにおける呼設定手順を規定している。
【0058】
図5において、本実施形態は、発信側電話機が送信したSETUP(呼設定)メッセージ(S20)を起因として交換機側の動作が開始される。そして、着信側電話機が受信したSETUP(呼設定)メッセージ(S21)を起因として着信側電話機の動作が開始される。これらの動作については、図8、図10を参照して後述する。
【0059】
図6は、PSTNで用いられる呼接続処理手順の一例を示す。発信側電話機と発信側交換機との間および着信側交換機と着信側電話機との間は、2線ループによる信号手順が用いられ、交換機間はSS7が用いられる。
【0060】
図6において、本実施形態は、発信側電話機のオフ・フックを起因として発信側交換機の動作が開始される(S30)。そして、着信側交換機が、「認証済情報」を有する発信者であることを通知する情報および発信者の電話番号を、2線ループによる信号に適した形態に変換して着信側電話機に伝達する(S31)。
【0061】
アナログ電話機に着信するPSTNでは、呼設定要求信号が到達した着信側の交換機において、番号表示サービスの1形態として、発信者の電話番号とともに「認証済情報」を有する発信者であることを通知する。このとき、着信側交換機は、着信側電話機の着信加入者データを参照して、当該着信側電話機が番号表示サービスを受けていることを確認してから、「認証済情報」を有する発信者であることを通知する情報および発信者の電話番号の伝達を行う。
【0062】
着信側電話機は、「認証済情報」を有する発信者であることを通知する情報および発信者の電話番号を受信すると、発信者の電話番号と、それが「認証済情報」を有する発信者であることを表示する(S32)。なお、着信側交換機は、「認証済情報」を有する発信者であることを通知する情報および発信者の電話番号を、番号表示サービスと同様に、着信側電話機に送信する呼出信号の直前に付加して伝達する。
【0063】
図7は、VoIP電話網で用いられる呼接続処理手順の一例を示す。VoIP電話網ではSIP(Session Initiation Protocol)が用いられ、SIPサーバが交換機相当の機能を司る。
【0064】
図7において、本実施形態は、発信側電話機が送信したINVITE(呼設定)メッセージ(S40)を起因としてSIPサーバ側の動作が開始され、着信側電話機が受信したINVITE(呼設定)メッセージ(S41)を起因として着信側電話機の動作が開始される。
【0065】
図8は、携帯電話網で使用されるSETUPメッセージのフレームフォーマットを示す。これは、3GPP(3rd Generation Partnership Project)が規定するSETUPメッセージのフレームフォーマットである。
【0066】
携帯電話網の場合には、このフレームフォーマットの「Facility」情報要素に認証済情報を付加することを、新たに定義付ければよい。このフレームフォーマットの場合は、文字列をデータ部に付加することができる。もちろん、識別コードとして付加して伝達してもかまわない。
【0067】
Q.931によるSETUPメッセージも類似のフレームフォーマットとなっており、情報要素の「網特有ファッシリティ」を用いて認証済情報を付加することを、新たに定義付ければよい。従って、PSTNにおいても、交換機間でSS7が用いられる限り、電話通信網内における認証済情報の伝達は、ISDNと同様に行うことができる。また、SIPの場合は、INVITEメッセージと共に伝達するSDP(Session Description Protocol)部分に、網側装置が付加することができる情報として、認証済情報を新たに定義付ければよい。SIPの場合は、認証済情報を文字列として伝達することができる。
【0068】
第2の実施形態の通信装置としての交換機の動作と着信側電話機の動作を、それぞれ図9と図10を参照して説明する。
【0069】
図9は、本実施形態における交換機の動作を示すフロー図である。
【0070】
発信側電話機から呼設定要求信号を受信すると(S50)、交換機は、当該呼設定要求信号に含まれる発信電話番号に基づいて発信側電話機に対応する発信加入者データを取得する(S51)。
【0071】
なお、アナログ電話を収容するPSTNの場合、電話機のオフ・フック信号により交換機は、発信要求を検出し、電話機の2線ループが接続された交換機の収容位置情報から当該電話機に付与された電話番号を識別する。そして、その電話番号に基づいて発信加入者データが参照される。
【0072】
発信加入者データには、呼接続処理を実行するのに必要な、当該発信側電話機に付与された各種の属性情報が登録されている。前述したように、着信側に伝達する認証済情報がデータベースに登録されている電話機には、発信加入者データとして「特定情報提供端末」が付与されている。
【0073】
従って、交換機は、発信加入者データに「特定情報提供端末」が含まれているか否かを識別する(S52)。当該発信側電話機の発信加入者データに「特定情報提供端末」が含まれている場合(S52、YES)、交換機はデータベースを検索して認証済情報を取得する(S53)。このとき、交換機はデータベースの検索キーとして、当該発信側電話機の固有識別情報を用いる。電話機の固有識別情報は前述した通りであり、発信側電話機から受信した呼設定要求信号に含まれて伝達された情報であってもよいし、当該電話機の発信加入者データとして登録されている情報であってもよい。
【0074】
データベースから認証済情報を取得した交換機は、その認証済情報を呼設定要求信号に含めて後位装置に送信する。認証済情報を呼設定要求信号に含める方法は前述したように、識別コードに変換してもよいし、文字列そのものを含めてもよい。
【0075】
一方、発信側電話機の発信加入者データに「特定情報提供端末」が含まれていない場合(S52、NO)、交換機は通常の呼設定の動作を行う。つまり、呼設定に必要とされる情報を呼設定要求信号に適宜含めて後位装置に送信する。
【0076】
なお、VoIP電話網においては、上記の交換機はSIPサーバである。
【0077】
このようにして伝達された呼設定要求信号は着信側電話機に達し、呼設定要求信号に含まれる認証済情報が当該電話機において表示される。
【0078】
図10は、本実施形態における着信側電話機の動作を示すフロー図である。
【0079】
着信側電話機は、着信信号を受信し(S60)、当該着信信号に認証済情報が含まれているか否かを識別する(S61)。認証済情報が含まれている場合(S61、YES)、電話機は認証済情報を表示部に表示する(S62)。
【0080】
つまり、PSTN以外では、認証済情報が含まれた呼設定要求信号が着信側電話機にまで伝達される。そして、着信側電話機は呼設定要求信号から認証済情報を読み出して、表示部に表示する。
【0081】
認証済情報が識別コードで伝達される場合、着信側電話機は識別コードを対応する文字列に逆変換する機能を備える。つまり、電話機には、通信事業者またはサービス提供者から予め提供されている識別コードと文字列の変換テーブルを備えている。
【0082】
そして、着信側電話機は着信音を鳴動させて着信側ユーザに着信を知らせる(S63)。
【0083】
着信を知った着信側ユーザは、表示部に表示された認証済情報により、当該着信が正規に認証された電話機から発信されたもので有ることを確認することが出来る。
【0084】
一方、着信信号に認証済情報が含まれていない場合(S61、NO)、電話機は着信音を鳴動させて着信側ユーザに着信を知らせる(S64)。
【0085】
なお、このとき、着信側電話機は、図4にて説明したように、着信信号に認証済情報を含まない場合には、着信拒絶を行う機能を備えていてもよい。この場合は、図示しないが、着信音を鳴動させることなく、着信呼に応答し、当該電話機に予め録音されている着信拒絶メッセージを送信する。
【0086】
また、PSTNの場合、着信側の交換機は、前位装置から認証済情報が付加された呼設定要求信号を受信すると、着信加入者データに基づいて、着信側電話機が番号表示サービスを受けていることを確認する。そして、呼出信号の直前のタイミングで、認証済情報がデータベースに登録されている電話機から発信された呼であることを示す情報と発信電話番号を、着信側電話機に送信する。着信側電話機には、認証済情報の具体的な内容は表示されないが、認証済情報が登録されている電話機から発信された呼であることを示す情報が表示される。
【0087】
このように、本実施形態の構成により、着信してきた呼の発信側電話機の契約加入者が、通信事業者またはサービス提供者により予め認証されていることを、着信者に伝えることができる。また、電話通信網内の通信装置が呼設定処理の過程で認証済情報を付加するので、発信者がその認証済情報を詐称することはできない。
【0088】
また、本実施形態では、既存の呼設定プロトコルのメッセージに付加情報を追加するので、既存網での通信に影響を与えず、新機能対応端末に対して上位互換性を有する。つまり、認証済情報の識別や表示をすることができない既存端末に対しては何ら従来の通信と変わることは無く、新機能対応端末に対してのみ認証済情報を表示することができる上位互換性を有する。
【0089】
上述したデータベース10は、電話通信網30の規模や種類に応じて任意に設定することができる。
【0090】
例えば、携帯電話網であれば、加入者のHLR(Home Location Register)上の加入者情報データベースサーバに構築してもよい。固定電話網であれば、加入者交換機やSIPサーバがその配下の加入者に関する情報をデータベースとして保持してもよい。また、ある程度まとまった地域単位でデータベースを備えるようにしてもよい。
【0091】
ここで、第2の実施形態の変形例を説明する。
【0092】
上記の説明では、着信側の電話機に表示する認証済情報として、つまりデータベースに登録する認証済情報として、発信側電話機の契約加入者が属する組織や機関の名称を例として説明した。この認証済情報として、例えば、企業等において、その企業が加入契約している電話機(この場合は、携帯電話機が望ましい)の全てに、同一の「端末加入者識別情報」を登録してもよい。つまり、当該企業に属している着信者が、発信側から通知された「端末加入者識別情報」を識別して、自分と同じ「特定グループ」内部からの電話と特定でき、企業等において簡易的なセキュリティを実現することができる。
【0093】
次に、第3の実施形態について説明する。
【0094】
図11は、第3の実施形態のシステム構成を示すブロック図である。
【0095】
第3の実施形態は、発信側電話機の契約加入者が属する組織や機関として、着信側の電話機に任意のメッセージを伝達することができる構成を備える。
【0096】
第3の実施形態のシステムは、他の電気通信網90にWebサーバ70を備え、データベース11がそのWebサーバ70と接続される構成となっている。他の電気通信網90は、例えば、インターネットである。そして、データベース11に認証済情報を登録している契約加入者は、入力端末80からWebサーバ70にアクセスして、データベース11の契約加入者任意登録領域に任意のメッセージを登録することができる。
【0097】
図12は、第3の実施形態で使用するデータベース11の蓄積情報例を示す図である。第2の実施形態のデータベースにおける蓄積情報とは、「契約加入者任意登録エリア300」を備える点において異なる。
【0098】
「契約加入者任意登録エリア300」には、データベース11に認証済情報を登録している契約加入者が、入力端末80からWebサーバ70にアクセスして入力した任意のメッセージが登録される。「契約加入者任意登録エリア300」に登録されたメッセージは、認証済情報とともに着信側電話機50に伝送されて、表示される。
【0099】
つまり、通信事業者またはサービス提供者から許可されてWebサーバ70へのアクセス権を付与された契約加入者は、自己が保有するPC(Personal Computer)等の任意の端末を入力端末80として、Webサーバ70に接続する。Webサーバ70から要求されるパスワードや契約加入者識別情報による認証を経て、契約加入者は、「契約加入者任意登録エリア300」に登録する任意のメッセージをWebサーバ70に入力する。Webサーバ70に入力されたメッセージは、契約加入者識別情報とともにデータベース11に転送され、その契約加入者識別情報で特定される契約加入者に対応して用意されている「契約加入者任意登録エリア300」に登録される。
【0100】
このような第3の実施形態の適用例を説明する。
【0101】
まず、公共機関からのお知らせ情報などを着信側電話機に表示することができる。つまり、第3の実施形態では、認証済情報に加えて「契約加入者任意登録エリア300」に登録されている任意のメッセージが呼設定要求信号に付加されて着信側に伝達される。着信側では、発信者電話番号、発信者が所属する機関・組織の名称に加えて、当該機関・組織が設定したメッセージが電話機に表示される。
【0102】
例えば、図12に示すように、「Aa警察署cc係」から電話が着信すると、「Aa警察署cc係」の名称と、「振り込め詐欺が多発しています。注意しましょう。」というメッセージが表示される。また、「Bc市役所mm課ss係」からの電話着信に対しては、「Bc市役所mm課ss係」の名称と、「第2期の住民税の納付期限はxxxxxまでです。」というメッセージが表示される。
【0103】
そして、このメッセージは、入力を許可されている契約加入者が任意に登録できるので、定期的に内容を改定して、公共機関からのお知らせ情報の伝達手段として使うことができる。
【0104】
また、第2の実施形態の変形例で説明したように、ある企業が加入契約している全ての携帯電話機の個々の端末に対して、当該端末の使用者の部署名および氏名を登録してもよい。つまり、認証済情報としては企業名称だけを登録し、任意メッセージとして、端末の使用者の部署名および氏名を登録することで、「特定グループ」内の簡易的なセキュリティを実現することができる。例えば、同一企業内であっても部署が異なり、見知らぬ発信電話番号の相手であっても、着信者は、着信に応答する前に自分と同じ企業内部からの電話と特定でき、相手の電話番号や名前を知らなくても、関係者であることがわかる。また、この任意メッセージ部分は、契約加入者が任意に登録できるので、携帯電話機の使用者の所属が変わった場合や、使用者が変わった場合であっても、即座に更新することができる。
【0105】
もちろん、この場合、第三者に電話をかけた場合も同様で、着信者である第三者は、確実に認証された発信元の企業名、部署および氏名までが表示されるので、安心して応答することができる。
【0106】
このように、第3の実施形態は、通信事業者またはサービス提供者が予め認証した認証済情報に加えて、任意のメッセージを添付して着信側に伝達することができる構成を備える。そのため、着信してきた呼の発信側電話機の契約加入者が、通信事業者またはサービス提供者により予め認証されていることを、着信者に伝えることができ、しかもよりきめ細かい情報を伝えることができる。また、それらの情報は、電話通信網内の通信装置により呼設定処理の過程で付加されるので、発信者が詐称することはできない。
【0107】
以上に説明したように、第3の実施形態は、認証済情報に加えて任意のメッセージを呼設定要求信号に付加するので、文字列を付加することができる呼設定要求信号を用いる電話通信網に適用される実施形態である。
【0108】
なお、この場合、全てのメッセージを文字列として伝送する必要は無い。
【0109】
例えば、固定的な定型文書パターンや頻出単語を識別コードとして予め決めておき、しかも端末側にそれらを辞書登録しておき、そのような識別コードの組合せでメッセージを伝達してもよい。
【0110】
また、別の例としては、固定的な定型文書パターンのみを識別コードとして予め決めておき、しかも端末側にそれらを辞書登録しておく。そして、単語の名詞部分のみを文字列として、識別コードと文字列の組合せでメッセージを伝達してもよい。
【0111】
もちろん、全てのメッセージを文字列で伝達してもかまわない。
【符号の説明】
【0112】
10、11 データベース
20 通信装置
30 電話通信網
40 発信側電話機
50 着信側電話機
60 管理端末
70 Webサーバ
80 入力端末
90 他の電気通信網
100 データベースの蓄積情報例
200 着信側電話機での表示例
300 契約加入者任意登録エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話機に関する所定の認証済情報を、前記電話機の固有識別情報と対応させて保存するデータベースと、
発信側電話機から呼設定要求信号を受信すると、前記発信側電話機の固有識別情報に基づいて前記データベースを検索し、当該固有識別情報と対応して記憶されている前記発信側電話機の前記認証済情報を抽出し、抽出した前記認証済情報を前記呼設定要求信号に付加して着信側電話機に向け送信する電話通信網内の通信装置と
を備えることを特徴とする発信側認証を含む通信方式。
【請求項2】
前記呼設定要求信号に基づく着信信号を受信し、当該着信信号に前記認証済情報を含む場合は、その旨を表示部に表示する着信側電話機をさらに備えることを特徴とする発信側認証を含む請求項1記載の通信方式。
【請求項3】
前記電話機の固有識別情報は、前記発信側電話機から受信する前記呼設定要求信号に含まれる情報または前記発信側の電話機に対応して前記通信装置が備える発信加入者データに含まれる情報が用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発信側認証を含む通信方式。
【請求項4】
前記認証済情報は前記発信側電話機の契約加入者が属する機関または組織の名称をコード変換したコード情報を含み、前記着信側電話機は、当該認証済情報が付与された前記呼設定要求信号を受信し、前記認証済情報のコード情報を逆変換して前記発信側電話機の契約加入者が属する機関または組織の名称を表示部に表示することを特徴とする請求項3に記載の発信側認証を含む通信方式。
【請求項5】
前記データベースと接続されたWebサーバを更に備え、前記認証済情報は、前記電話機の契約加入者が当該Webサーバを介して入力した任意の文字列を含み、前記着信側電話機は、前記認証済情報の前記文字列を表示部に表示することを特徴とする請求項4に記載の発信側認証を含む通信方式。
【請求項6】
電話機に関する所定の認証済情報を、前記電話機の固有識別情報と対応させてデータベースに保存し、
電話通信網内の通信装置が、発信側電話機から呼設定要求信号を受信すると、前記発信側電話機の固有識別情報に基づいて前記データベースを検索し、当該固有識別情報と対応して記憶されている前記発信側電話機の前記認証済情報を抽出し、抽出した前記認証済情報を前記呼設定要求信号に付加して着信側電話機に向け送信する、
ことを特徴とする発信側認証を含む通信方法。
【請求項7】
前記着信側電話機が、前記呼設定要求信号に基づく着信信号を受信し、当該着信信号に前記認証済情報を含む場合は、その旨を表示部に表示することを特徴とする発信側認証を含む請求項6記載の通信方法。
【請求項8】
前記電話機の固有識別情報は、前記発信側電話機から受信する前記呼設定要求信号に含まれる情報または前記発信側電話機に対応して前記通信装置が備える発信加入者データに含まれる情報が用いられることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の発信側認証を含む通信方法。
【請求項9】
前記データベースに保存する前記認証済情報は前記電話機の契約加入者が属する機関または組織の名称をコード変換したコード情報を含み、前記着信側電話機が、当該認証済情報が付与された前記呼設定要求信号を受信し、前記認証済情報のコード情報を逆変換して前記発信側電話機の契約加入者が属する機関または組織の名称を表示部に表示することを特徴とする請求項8に記載の発信側認証を含む通信方法。
示することを特徴とする請求項7に記載の発信側認証を含む通信方法。
【請求項10】
前記データベースがWebサーバと接続され、前記認証済情報は、前記電話機の契約加入者が当該Webサーバを介して入力した任意の文字列を含み、前記着信側電話機が、前記認証済情報の前記文字列を表示部に表示することを特徴とする請求項9に記載の発信側認証を含む通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−60413(P2012−60413A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201591(P2010−201591)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000232254)日本電気通信システム株式会社 (586)
【Fターム(参考)】