説明

発光体、照明器具、照明システム

【課題】 レーザー光を利用した照明を行うことが可能な発光体と、その発光体を備える照明器具と、この照明器具を用いた照明システムを提供する。
【解決手段】 この照明システム1で用いられる発光体11は、ガラス製の中空状の発光体であって、内側側面全体にレーザー光を散乱する散乱部11aが形成されている。この発光体11にレーザー光を入射すると、入射した時に散乱部11aによってレーザー光が散乱され、中空になった発光体11の内部を通って、その先の散乱部11aにレーザー光が当たって散乱を繰り返す。このように、レーザー光が発光体11の内部全体で散乱が繰り返えされると、発光体11全体が光るようになり、照明用の光として利用することができるようになる。そのため、この発光体11を用いるとレーザー光を利用した照明を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を利用した発光体と、この発光体を備える照明器具と、この照明器具を用いた照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光を利用して、ある特定の部位を発光させる技術には種々のものがあり、例えば、スピードメータの針先を光らせる発明がある(特許文献1)。
この発明は、通過する光を散乱させる透光体を針先に取り付け、この透光体にレーザー光を当て、この透光体内でレーザー光を散乱させながら通過させることによって透光体を発光させるものである。
【特許文献1】特開平7−280600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車両室内には、複数の照明用の器具が備え付けられている。そして、これらの照明用の器具に電力を送るため、車両の内壁と外壁との間などには、複数の電線が配線されている。
【0004】
一方、車両の多機能化に伴い、車両内に張られる電力線その他の配線は増加の一途をたどっている。
そのため、この配線を減らすため、前述したスピードメータの針先に用いた透光体を車両内に設置し、離れた位置からレーザー光を各透光体に当てて発光させ、照明を行うことが考えられた。
【0005】
しかし、前述した透光体のように、レーザー光を散乱させる物質を詰めたような、いわゆる肉の詰まったものの場合、入射した方向に光が収束して分散し難い傾向があって、電球のように透光体全体を光らせることが難しかった。
【0006】
そこで本発明では、レーザー光を利用した照明を行うことが可能な発光体と、その発光体を備える照明器具と、この照明器具を用いた照明システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した問題を解決するためになされた発明である請求項1に記載の発光体は、光を透過する透過性材料で形成された中空状の発光体であって、中空を形成する発光体の内側側面全体にレーザー光を散乱する散乱部が形成されている。
【0008】
この発光体にレーザー光を入射すると、入射した時に散乱部によってレーザー光が散乱され、中空になった発光体の内部を通って、その先の散乱部にレーザー光が当たり、一部は透過し、一部は散乱によって反射され、さらに、その反射されたレーザー光がさらに発光体の内部を通って、散乱部に当たり、一部は透過し、一部は散乱によって反射される。
【0009】
このように、レーザー光が発光体の内部全体で反射を繰り返すと、発光体全体が光るようになり、照明用の光として利用することができるようになる。
従って、この発光体を用いるとレーザー光を利用した照明を行うことができる。
【0010】
尚、発光体の形状として最も好ましい形状は球状で、楕円形状でもよい。
また、発光体の散乱部としては、発光体の内部に散乱材を混入して構成してもよいが、請求項2に記載したように、発光体の散乱部は、発光体の内側側面全体に凹凸を付けて形成されたものであることが好ましい。
【0011】
次に、上述した発光体を用いた照明器具について説明する。
請求項3に記載した照明器具は、請求項1,2のいずれかに記載の発光体と、入射されるレーザー光を発光体に向けて反射する反射部と、を備える照明器具であって、反射部は、照明器具から離れた位置に設置されたレーザー光を照射するレーザー光照射手段から入射されるレーザー光、及び、発光体から入射されるレーザー光を発光体に向けて反射するものである。
【0012】
このように構成された照明器具では、レーザー照射手段から入射したレーザー光を反射部に当てると、そのレーザー光が反射して発光体に当たり、その一部が発光体内に入って発光体を光らせる。また他の一部は発光体の外側表面で反射して再び反射部に当たって反射され、その反射されたレーザー光の一部が発光体内に入って発光体を光らせ、他の一部が再び反射部に向かって反射される。
【0013】
つまり、本願発明の照明器具では、レーザー照射手段から入射したレーザー光を反射部に当てると、反射部と発光体との間でレーザー光が繰り返し反射され、その繰り返しのうちに、すべてのレーザー光が発光体内に効率良く入射して発光体を光らせるのである。
【0014】
従って、本発明の照明器具を用いると、レーザー光を発光体内に効率よく入射させることで、発光体を明るく発光させることができる。
尚、反射部と発光体との間でレーザーを繰り返し反射させる場合、反射部は、請求項4に記載したように、凹面鏡状に形成されていることが好ましい。
【0015】
また、レーザー光照射手段と照明器具との位置関係から、レーザー光照射手段から照射されたレーザー光を直接反射部に当てることができないときは、請求項5に記載したように、導光手段を用いて、レーザー光照射手段から入射したレーザー光を、反射部に導くとよい。この導光手段としては、プリズムなどを用いても良い。
【0016】
ところで、レーザー光は、直進性に優れているので、発光体内から発せられる光束の多くは、発光体内へのレーザー光の入射方向に集まる傾向にある。
そのため、請求項6に記載したように、本願発明の照明器具を用いた照明を行う場合、反射部については、レーザー光照射手段から入射したレーザー光を、照明器具の照明方向に向かって反射するように配置することが好ましい。
【0017】
このようにすると、照明方向に効率よく光束が照射されるので、本願発明の照明器具を用いて、照明方向を明るく照らすことができる。
次に、上述した照明装置を車両用の照明に適用した場合の照明システムについて説明する。
【0018】
請求項7に記載した照明システムでは、請求項3〜6のいずれかに記載の複数の照明器具が、車両室内に車内用の照明器具として設置している。そして、レーザー光照射手段は、車両室内に設置されるとともに各照明器具から離れた位置に設置し、各照明器具に対しレーザー光を順次照射するよう構成している。また、この照明システムでは、車両室内に点灯操作手段を設置し、各照明器具の点灯指示を受け付けるよう構成している。
【0019】
そして、この照明システムでは、レーザー光照射手段が、点灯操作手段によって点灯指示があった各照明器具に対してレーザー光を順次照射し、点灯指示があった照明器具だけ点灯するようにしている。
【0020】
この照明システムを用いると、車両内の複数箇所に各照明器具を設置し、各照明器具に対して離れた位置からレーザー光を照射することで、各照明器具を点灯させることができるので、各照明器具に点灯用の電力を送る配線を行うことなく、各照明器具を点灯させることができる。
【0021】
そのため、この照明システムを用いると、各照明器具を点灯させるために電気を配るための配線が不要となるので、車両内の配線の量を大幅に減らすことができる。
尚、レーザー光照射手段が、各照明器具に向かってレーザー光を順次照射する間隔は、このように各照明装置にレーザー光を入射することによって点滅する発光体のこの点滅を、人間が認識できない間隔であることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。
1.全体構成
本実施形態の照明システム1は、車両に適用されたものである。
【0023】
ここで、図1は、本実施形態の照明システム1が適用された車両を、この車両の進行方向左側面から見た模式図であり、この車両の室内空間を構成する屋根と、この屋根に取り付けられた本実施形態の照明システム1を構成する照明器具10及びレーザー光照射機20とを透過させ、このうち屋根については断面で示したものである。
【0024】
また、図2は、本実施形態の照明システム1を構成する照明器具10及びレーザー光照射機20の配置関係を説明するための模式図であり、車両の室内空間を構成する屋根を車内から見上げてこれらを見た場合の配置関係を示したものである。
【0025】
尚、図1及び図2中の矢印で示した方向が、車両の進行方向前方である。また、図中の点線はレーザー光である。
本実施形態の照明システム1は、3つの照明器具10(10a、10b、10c)及びレーザー光照射機20を備えている。
【0026】
このうち照明器具10aは、図1に示すように、車両の室内空間を構成する屋根2aの中央部分に取り付けられ、照明器具10b、10cは、屋根2aの前方部分に取り付けられている。また、各照明器具10は、図2に示すように、屋根2aの天井面2bに沿った平面上で、レーザー光照射機20を中心に120度ずつ回転した位置に配置されている。
【0027】
これらの照明器具10のうち、照明器具10aは、車両室内全体を照明する室内灯として用いられる。また、照明器具10bは、図2に示すように、車両の進行方向に対して右側に設置され、運転席の手元を照明する運転者用読書灯として用いられ、照明器具10cは、車両の進行方向に対して左側に設置され、助手席の手元を照明する助手席用読書灯として用いられる。
【0028】
次に、レーザー光照射機20は、図1に示すように、進行方向に対して照明器具10aと照明器具10b、10cとの中間位置付近の屋根2aに取り付けられ、このレーザー光照射機20から照射されるレーザー光が、屋根2aの天井面2bに沿って進むように設置される。
2.内部構成
次に、本実施形態の照明システム1の内部構成について説明する。
【0029】
ここで図3は、本実施形態の照明システム1の内部構成を示すブロック図である。尚、図中の点線はレーザー光である。
本実施形態の照明システム1は、図3に示すように、上述した照明器具10及びレーザー光照射機20の他に、各照明器具10を点灯するためのスイッチ30を備えている。
【0030】
レーザー光照射機20は、中央制御装置21と、レーザー光発生装置22と、配光装置23、回転センサ24とを備え、車両のバッテリーから電源の供給を受けて動作する。
中央制御装置21は、CPU、ROM、RAM、及びメモリ210等を備えるコンピュータ装置からなり、後述する点灯処理を実行する。
【0031】
レーザー光発生装置22は、中央制御装置21の制御により、レーザー光を発生させて配光装置23に向けてレーザーを発射する装置である。
配光装置23は、レーザー光発生装置22から発射されたレーザー光を、各照明器具10に向けてレーザー光を配光する装置である。
【0032】
回転センサ24は、配光装置23がレーザー光を配光する方向を検出するためのセンサである。
スイッチ30は、室内灯スイッチ30a、運転者用読書灯スイッチ30b、及び、助手席用読書灯スイッチ30cとを備えている。
【0033】
このうち、室内灯スイッチ30aは、照明器具10aの点灯を指示するスイッチで、室内灯10c近傍の屋根2aの天井面2bに取り付けられている。
また、運転者用読書灯スイッチ30b、及び、助手席用読書灯スイッチ30cは、それぞれ照明器具10b、10cの点灯を指示するスイッチで、図示しない車両のインパネに取り付けられている。
3.レーザー光照射機20
次に、レーザー光照射機20について、詳細に説明する。
【0034】
ここで図4は、レーザー光照射機20の内部構造を示した模式図で、(a)は屋根2aの天井面2bに取り付けられたレーザー光照射機20を、車両の進行方向左側面から見た図であり、(b)は(a)のA−A’断面図である。
【0035】
尚、以下の説明では、図4中に示したように、車両の進行方向前方側を前方、車両の進行方向の左側を左方、右側を右方、後方側を後方と呼び、重力方向上方側を上方、下方側を下方と呼ぶ。また、図中の点線はレーザー光である。
【0036】
このレーザー光照射機20は、図4(a)及び(b)に示すように、上下面が正方形状に形成された箱状の筐体20a内に、レーザー光発生装置22と、配光装置23、回転センサ24とを備えたものである。
【0037】
筐体20aは、図4(b)に示すように、後方側側面の左右方向の中央部分と、右側側面と前方側側面とが交わる角部分と、左側側面と前方側側面とが交わる角部分とに、レーザー光を通すための光路用孔20b〜20dが形成されている。すなわち、光路用孔20b〜20dは、筐体20aの下面の中心部から見て120度ずつ回転した位置に形成されている。
【0038】
レーザー光発生装置22は、レーザー光照射機20の筐体20a内の上方前方側に、後方に向かってレーザー光を照射するように取り付けられている。
配光装置23は、導光板23a、23bと、モータ23cとを備えている。
【0039】
このうち導光板23aは、レーザー光照射機20から発射されたレーザー光を下方に向かって導くもので、レーザー光照射機20内に固定して設置されている。
導光板23bは、導光板23aによって下方に導かれたレーザー光を、屋根2aの天井面2bに沿って照射し、各照明器具10に導くもので、レーザー光照射機20内に回転可能に固定して設置されている。
【0040】
モータ23cは、導光板23bを回転軸23dを介して回転可能に支持するとともに、中央制御装置21の制御を受けて導光板23bを回転させるものである。
このモータ23cは、回転軸23dが、筐体20aの下面の中心部を通って上下方向に沿って配置されるように、筐体20aの下面上に設置されている。
【0041】
回転センサ24は、配光装置23がレーザー光を配光する方向を検出するためのセンサである。この回転センサ24は、具体的には、回転軸23dの回転角度を検出して導光板23bの回転角度を検出するセンサである。
【0042】
以上のように構成されたレーザー光照射機20では、レーザー光発生装置22からレーザー光を照射すると、導光板23aによって導光板23bに導かれ、モータ23cを駆動して導光板23bを光路用孔20b〜20dに向けると、導光板23bに導かれたレーザー光が、各光路用孔20b〜20dから、屋根2aの天井面2bに沿って外部に照射される。
【0043】
本実施形態の照明システム1では、このレーザー光照射機20の後方側に照明器具10a、このレーザー光照射機20を中心として照明器具10aから右側に120度回転した右側前方に照明器具10b、レーザー光照射機20を中心として照明器具10aから左側に120度回転した左側前方に照明器具10cが配置されているので(図2参照)、導光板23bを各光路用孔20b〜20dに向けると、レーザー光発生装置22から照射されたレーダー光を各照明器具10a〜10cに照射することができる。
【0044】
また、本実施形態では、導光板23bが光路用孔20bを通って後方にレーザー光を導く回転位置を0°とし、光路用孔20cを通って右前方にレーザー光を導く回転位置を120°、光路用孔20dを通って右前方にレーザー光を導く回転位置を240°としてメモリ210(図3参照)に記憶している。
【0045】
そのため、回転センサ24を用いてモータ23cと導光板23bとを接続する回転軸23dの回転角度を検出すれば、中央制御装置21は、レーザー光発生装置22から照射されたレーザー光を導光板23bがどちらの方向に導いているかを認識することができる。すなわち、本実施形態の照明システム1では、レーザー光照射機20がレーザー光をいずれの照明器具10a〜10cに向けて照射しているかを中央制御装置21で認識することができるよう構成されている。
4.照明器具10
次に、照明器具10について説明する。
【0046】
ここで、図5(a)は、照明器具10aを車両の進行方向右側側面から見た模式図で、屋根2aについては断面で示した図である。図5(b)は、照明器具10aを車両の進行方向右側側面から見た模式図で、屋根2aについては断面で示し、発光体11については、発光体11の中心を通る重力方向に垂直な断面図で示した図である。
【0047】
照明器具10は、図5(a)に示すように、球状に形成された発光体11と、プリズム12と、凹面鏡状に形成された反射部13aとからなる。
この照明器具10が設置される部分の屋根2aの天井面2b上には、凹部13が形成されている。この凹部13は、発光体11より径の大きい球の一部を、その球の半径に垂直な面で切断したときにできる曲面状に形成されている。
【0048】
発光体11は、屋根2aに取り付けるためのネジ11aを備えており、凹部13の底部分にネジ11aをねじ込むことにより屋根2aに取り付けられるとともに、この凹部13内に発光体11の一部が位置するように配置される。
【0049】
また、凹部13の発光体11に対向する面には、反射部13aを構成するアルミ薄膜層が積層されている。反射部13aは、このようにアルミ薄膜層が凹部13内に積層されることで、凹面鏡状に形成される。
【0050】
プリズム12は、凹部13に設置された発光体11から見てレーザー光照射機20側であって、凹部13の端部の屋根2aに固定して設置される。
このプリズム12は、図5(b)に示すように、レーザー光照射機20から照射されたレーザー光を反射部13aに向かって導くように形成及び配置されている。
【0051】
発光体11は、電球と同様、内部が空洞のガラスで形成され、この発光体の内側側面全体には、レーザー光を散乱可能な凹凸が形成されている。
この発光体11にレーザー光を入射すると、入射した時に発光体11の内側側面全体に形成された凹凸(以下「散乱部11b」という)によってレーザー光が散乱され、中空になった発光体11の内部を通って、その先の散乱部11bにレーザー光が当たり、一部は透過し、一部は散乱によって反射され、さらに、その反射されたレーザー光がさらに発光体11の内部を通って、散乱部11bに当たり、一部は透過し、一部は散乱によって反射される。
【0052】
このように、レーザー光が発光体11の内部全体で反射を繰り返すと、発光体11全体が光るようになり、照明用の光として利用することができるようになる。
また、本実施形態では、発光体11にレーザー光を入射させる際、レーザー光照射機20から照射されたレーザー光を、プリズム12を用いて反射部13aに導いて反射させ、その反射したレーザー光を入射させている。
【0053】
このようにすると、発光体11に向かったレーザー光は発光体11に当たり、その一部が発光体11内に入って発光体11を光らせる。また他の一部は発光体11の外側表面で反射して再び反射部13aに当たって反射され、その反射されたレーザー光の一部が発光体11内に入って発光体11を光らせ、他の一部が再び反射部13aに向かって反射される。
【0054】
つまり、本願実施形態の照明器具10では、レーザー光を反射部13aに当てると、反射部13aと発光体11との間でレーザー光が繰り返し反射され、その繰り返しのうちに、すべてのレーザー光を発光体11内に効率良く入射させて発光体11を光らせているのである。
【0055】
従って、本実施形態の照明器具10は、レーザー光を発光体11内に効率よく入射させることができるので、発光体11を明るく発光させることができる。
5.点灯処理
次に、中央制御装置21で実行される点灯処理について説明する。
【0056】
ここで、図6は、点灯処理のフローチャートである。
この点灯処理は、S10〜S16のステップからなる処理であり、各照明器具10にレーザー光を照射して、各照明器具10での照明を行わせる処理である。
【0057】
この点灯処理は、車両のアクセサリー電源がONされるか、エンジンがONされると開始される。
この点灯処理がスタートすると、まず、S10の処理が実行される。
【0058】
S10では、3つのスイッチ30のうち、いずれかのスイッチ30がON操作されているか調べる処理が実行される。
この処理(S10)で、いずれのスイッチ30もON操作されていないと判定されたら(S10:NO)、一旦本点灯処理を終了して、再びS10の処理が実行され、一方、いずれかのスイッチ30がON操作されていると判定されたら、S11の処理が実行される。
【0059】
S11では、いずれのスイッチ30がON操作されているか判定する処理が実行される。
S12では、ON操作されているスイッチ30に対応する照明器具10を点灯するため、この点灯する照明器具10に対応する回転角度を、メモリ210から読み出す処理が実行され、その読み出された回転角度が保持される。
【0060】
S13では、モータ23cが始動され、回転センサ24で導光板23bの回転角度を検出しながら、S12で保持された回転角度になったらレーザー光発生装置22からレーザー光を発射する処理を実行する。このS13を実行すると、スイッチ30が操作された照明器具10にのみレーザー光照射機20からレーザー光が発射され、レーザー光を受光した照明器具10の発光体11が発光する。
【0061】
ところでこのとき、導光板23bが回転しているので、各照明装置10には、この回転に伴ってレーザー光が順次照射されるので、各照明装置10の発光体11は点滅することとなるが、本実施形態では、この点滅の速さが人間の目では識別できない速さ(50回転/秒)となるよう、導光板23bを高速で回転させている。また、このようにすることで、照明に耐えうるチラつかない照明用の光が発光体11から照射されることとなる。
【0062】
S14では、すべてのスイッチ30がOFFにされたか否かが判定され、全てのスイッチがOFFにされていなかったら(S14:NO)、再びS10の処理が実行され、一方、全てのスイッチがOFFされていたら(S14:YES)、S15の処理を実行する。
【0063】
S15では、反射鏡が予め定めた初期位置(0°位置)にするように角度センサで監視してモータ23cを駆動させ、初期位置になったらモータ23cを止めて、本点灯処理を終了し、再びS10の処理が実行される。
6.実施形態に係る照明システムの特徴
本実施形態の照明システム1を用いると、車両内の複数箇所に各照明器具10を設置し、各照明器具10に対して離れた位置からレーザー光を照射することで、各照明器具10を点灯させることができるので、各照明器具10に点灯用の電力を送る配線を行うことなく、各照明器具10を点灯させることができる。
【0064】
そのため、この照明システム1を用いると、各照明器具10を点灯させるために電気を配るための配線が不要となるので、車両内の配線の量を大幅に減らすことができる。
7.実施形態と発明特定事項との対応関係
本実施形態のプリズム12は、本発明の導光手段に相当する。
【0065】
本実施形態のスイッチ30は、本発明の点灯操作手段に相当する。
(その他の実施形態)
上記実施形態では、各照明器具10が照明する方向とレーザー光が発光体11に入射する方向との関係について特に説明しなかったが、本実施形態の照明器具10を用いて照明を行う場合、プリズム12を用いて、反射部13aにレーザー光を導いたとき、レーザー光が反射部13aで第1反射し、この第1反射したレーザー光が、照明器具10の照明方向に向かうように、照明器具10を構成するとよい。
【0066】
レーザー光は、直進性に優れているので、発光体11内から発せられる光束の多くは、発光体11内へのレーザー光の入射方向に集まる傾向にある。そのため、このようにすると、照明方向に効率よく光束が照射されるので、上記実施形態で説明した照明器具10を用いて、照明方向を明るく照らすことができる。
【0067】
上記実施形態では、発光体11をガラス材で形成したが、この発光体11を構成するものとしては透明なものであればどのようなものでもよく、透明な合成樹脂でもよい。
上記実施形態では、凹部13にアルミ薄膜層を積層して反射部13aを形成したが、この薄膜層はアルミでなくてもよく、例えば白等の明色の塗装層でも、また素材自体が白等の明色のものでもよい。
【0068】
また、本実施形態では、屋根2aの車両室内側にレーザー光照射機20を設置したが、例えば、図7(a)に示すように、屋根を構成する外側屋根材と内側屋根材との間に空間がある場合、その空間に配置してもよい。
【0069】
この場合、発光体11に対してレーザー光を入射させるには、レーザー光照射機20から発光体11に直接レーザー光を発射すると、レーザー光が反射部13aが配置された部分と交差するが、その交差する位置にレーザー光が通る穴13bを開けて(あるいはその穴にレーザー光を透過する透明な材料を埋め込んでもよい)、レーザー光が発光体11に入射するようにしてもよい。
【0070】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施形態の照明システム1が適用された車両を、この車両の進行方向左側面から見た模式図であり、この車両の室内空間を構成する屋根と、この屋根に取り付けられた本実施形態の照明システム1を構成する照明器具10及びレーザー光照射機20とを透過させ、このうち屋根については断面で示したものである。
【図2】本実施形態の照明システム1を構成する照明器具10及びレーザー光照射機20の配置関係を説明するための模式図であり、車両の室内空間を構成する屋根を車内から見上げてこれらを見た場合の配置関係を示したものである。
【図3】本実施形態の照明システム1の内部構成を示すブロック図である。
【図4】レーザー光照射機20の内部構造を示した模式図で、(a)は屋根2aの天井面2bに取り付けられたレーザー光照射機20を、車両の進行方向左側面から見た図であり、(b)は(a)のA−A’断面図である。
【図5】(a)は、照明器具10aを車両の進行方向右側側面から見た模式図で、屋根2aについては断面で示した図である。図5(b)は、照明器具10aを車両の進行方向右側側面から見た模式図で、屋根2aについては断面で示し、発光体11については、発光体11の中心を通る重力方向に垂直な断面図で示した図である。
【図6】点灯処理のフローチャートである。
【図7】レーザー光照射機20を、外側屋根材と内側屋根材との間に配置した場合の実施形態を説明するための説明図で、(a)は、車両の屋根の模式図、(b)は(a)の一部拡大図である。
【符号の説明】
【0072】
1…照明システム、2a…屋根、2b…天井面、10…照明器具、11…発光体、11a…ネジ、11b…散乱部、12…プリズム、13…凹部、13a…反射部、13b…穴、20…レーザー光照射機、20a…筐体、20b〜d…光路用孔、21…中央制御装置、22…レーザー光発生装置、23…配光装置、23a…導光板、23b…導光板、23c…モータ、23d…回転軸、24…回転センサ、30…スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過する透過性材料で形成された中空状の発光体であって、
前記中空を形成する当該発光体の内側側面全体にレーザー光を散乱する散乱部が形成されていることを特徴とする発光体。
【請求項2】
前記散乱部は、当該発光体の内側側面全体に凹凸を付けて形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の発光体。
【請求項3】
請求項1,2のいずれかに記載の発光体と、
入射されるレーザー光を前記発光体に向けて反射する反射部と、
を備える照明器具であって、
前記反射部は、
当該照明器具から離れた位置に設置されたレーザー光を照射するレーザー光照射手段から入射されるレーザー光、及び、前記発光体から入射されるレーザー光を前記発光体に向けて反射することを特徴とする照明器具。
【請求項4】
請求項3記載の照明器具において、
前記反射部は、凹面鏡状に形成されていることを特徴とする照明器具。
【請求項5】
請求項3,4のいずれかに記載の照明器具において、
前記レーザー光照射手段から入射したレーザー光を、前記反射部に導く導光手段を備えることを特徴とする照明器具。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載の照明器具において、
前記反射部は、
前記レーザー光照射手段から入射したレーザー光を、当該照明器具の照明方向に向かって反射するように配置されたことを特徴とする照明器具。
【請求項7】
車両室内に車内用の照明器具として設置された複数の請求項3〜6のいずれかに記載の照明器具と、
前記車両室内に設置されるとともに前記各照明器具から離れた位置に設置され、前記各照明器具に対しレーザー光を順次照射する前記レーザー光照射手段と
前記車両室内に設置され、前記各照明器具の点灯指示を受け付ける点灯操作手段と、
を備え、
前記レーザー光照射手段は、
前記点灯操作手段によって前記点灯指示があった前記各照明器具に対して前記レーザー光を順次照射することを特徴とする照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−252647(P2009−252647A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101677(P2008−101677)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】