説明

発光測定方法

【課題】基板表面へ供給する発光反応試薬溶液を十分に展開させ、かつ揮発を防止する。
【解決手段】被検物質が表面に固定化され、前記被検物質の固定化領域を囲む堰30が配置されたマイクロアレイ基板1上に予め、発光反応試薬溶液と混和せず前記発光反応試薬溶液を覆う液層を形成する光透過性の保護液50を供給し、その後に発光反応試薬溶液51を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面に固定化あるいは定着された被検物質を発光法で測定する発光測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体分子、特に遺伝子の解析に、マイクロアレイが広く利用されている。マイクロアレイの作成はたとえば、1×3インチ大のガラス基板上に、検査対象の遺伝子(群)と相補性のある配列の一部を含んだ遺伝子溶液の液滴をナノリットル単位で点着してマイクロメートル単位の微小なスポットを形成し、このスポットされたアレイ上に試料の遺伝子断片を固定化する方法がとられている。スポットされたアレイに対して2種類の試料より抽出した遺伝子を混合し、それぞれの試料、すなわち、細胞、組織、あるいは個体中での遺伝子の発現比のプロファイリングを網羅的に解析することも可能となっている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
マイクロアレイの解析には、蛍光分光を利用した測定方法が採用されてきたが、蛍光分光法よりも高感度な発光法も採用されてきており、近年では、CCD(Charge Coupled Device)の性能向上に伴って、CCDを発光検出器としてシグナルの有無・増減を検出する方法がとられている。
【0004】
ここで、蛍光分光法を利用する場合はマイクロアレイは湿潤した状態である必要はないのに対して、発光法を利用する場合は、発光基質を含んだ発光反応試薬溶液を供給(滴下)して発光基質との反応により生じる発光量を測定するので、基板上の少なくとも測定領域は前記試薬溶液で湿潤した状態となる。
【0005】
このため発光法を利用する測定では、発光反応試薬溶液の漏れを防止するために基板表面上に堰を設けるほか、基板を前記試薬溶液に浸漬させることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。その他、前記試薬溶液の漏れおよび蒸発を防止するために、多孔性基板の表面に前記試薬溶液を送液できる流路を設け、当該基板をカートリッジに挟み込むこと(例えば、特許文献4参照)や、非多孔性の基板の表面に前記試薬溶液の展開を容易にする僅かな凹部を有するカバータイルを設け、このカバータイルを前記試薬溶液の滴下後に基板表面を覆うようにスライドさせること(例えば、特許文献5参照)も提案されている。
【特許文献1】特表平10−503841号公報
【特許文献2】特開平11−342000号公報
【特許文献3】特開2003−227799号公報
【特許文献4】特開2005−172706号公報
【特許文献5】特表2000−508423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した各種のマイクロアレイ基板でも、発光反応試薬溶液が揮発や表面張力等により展開不十分となったり、反応中に揮発してしまうという問題があった。
本発明は上記問題を解決するもので、基板表面へ供給する発光反応試薬溶液を十分に展開させ、かつ、揮発を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、被検物質が表面に固定化あるいは定着されており、その固定化あるいは定着された領域を囲む堰が配置された基板上に、前記被検物質を認識する分子を発光酵素で標識した標識分子を定着させ、次いで発光基質を含んだ発光反応試薬溶液を供給して、前記発光酵素と発光基質との反応により生じる発光を測定する発光測定方法において、前記発光反応試薬溶液の供給に先立って、前記発光反応試薬溶液と混和せず前記発光反応試薬溶液を覆う液層を形成する光透過性の保護液を前記基板上に供給することを特徴とする。これによれば、発光反応試薬溶液は保護液の下層となって基板表面で容易に展開して被検物質と接触することとなり、それによる発光の測定は保護液を通して直ちに行うことができ、その間の発光反応試薬溶液の揮発は保護液によって防止することができる。
【0008】
発光反応試薬溶液が水性溶液であり、保護液が水よりも比重が小さいことを特徴とする。保護液は、基板上に1mmの液層厚となるように供給することが好ましい。保護液は、発光反応試薬溶液の成分に作用せず、沸点が100℃以上であることが好ましい。
【0009】
保護液としては、たとえば、流動パラフィン、イソパラフィン、シリコンオイル、水添ポリオレフィン、大豆メチルエステルから選ばれる1種あるいは複数種の混合物を使用することができる。
【0010】
基板はマイクロアレイ基板であって基板表面に固定化された試薬で被検物質を捕捉しており、発光の測定は、被検物質の種別を判別するべくマイクロアレイ領域を撮像にて経時的に行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発光反応試薬溶液は保護液の下層となって基板表面で容易に展開して被検物質と接触することとなり、それによる発光の測定は保護液を通して直ちに行うことができ、その間の発光反応試薬溶液の揮発は保護液によって防止することができる。よって、発光反応速度が大きくなり、検出感度が大幅に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
まず、図1から図3を参照して、従来より行われているマイクロアレイ解析方法の原理を説明する。被検物質を検出するために抗原−抗体反応を利用すること、またその抗体を発光酵素で標識して、抗原と結合した抗体を発光酵素の発光により検出することとする。
【0013】
図1に示すように、マイクロアレイ基板1には、被検物質を検出するための第一の抗体を固定化した複数のスポット20からなるマイクロアレイ10が形成されている。スポット20の数は理解しやすいように便宜的に示したもので、図示した個数に限られない。スポット20の形成後の基板表面は、後続の処理で非特異的な反応が生じないように、牛血清アルブミン、スキムミルク、ゼラチン等の溶液を供給するブロッキング処理が施されている。
【0014】
被検物質はたとえば、血液中の癌マーカーであり、その例に、α−フィトプロテイン、癌胎児性抗原、CA19−9、KL−6、PIVKA−II、前立腺特異抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、γ―セミノプロテイン、免疫抑制酸性タンパク質などがある。第一の抗体は、対象とする被検物質と特異的に結合するものが選ばれる。つまり第一の抗体は、被検物質を基板表面の目的とするスポット20に定着させるために利用されるものであり、各スポット20は、第一の抗体が何を認識し結合するのかによって、何を検出するものであるかが特徴付けられることになる。
【0015】
このマイクロアレイ基板1は、図示したように、マイクロアレイ10領域を囲む枠状の堰30(透視して図示している)を基板表面に載置し、適当な方法により圧着して使用される。
【0016】
図2(a)はスポット20部分を拡大して示している。21は第一の抗体である。上述の基板1上、堰30の内側に検体(液)を滴下して展開させると、図2(b)に示すように、検体中に含まれる特定の被検物質22は各スポットにおいて第一の抗体21と特異的に結合し、この第一の抗体21を介して基板表面に定着する。検体中の多くの夾雑物質は、第一の抗体21に結合せず、基板表面より排除されることとなる。
【0017】
その後に、基板1上、堰30の内側に試薬溶液を滴下して展開させる。この試薬溶液は、第二の抗体23を発光酵素24で標識したものを含むものとする。第二の抗体23としては、第一の抗体21と同様に被検物質22を特異的に認識し結合するが、被検物質22における結合部位が第一の抗体21とは異なるものが使用される。このことにより、図2(c)に示すように、第二の抗体23が被検物質22に結合し、被検物質22は第一の抗体21と第二の抗体23とでサンドイッチ状に挟まれた状態を呈する。
【0018】
その後に発光基質を含んだ発光反応試薬溶液(図示せず)を基板表面に供給する。このことにより、第二の抗体23を標識している発光酵素24による発光が生じることとなる。この発光の強度は、スポット20に定着している第二の抗体23の量に依存し、この第二の抗体23の量は被検物質22の量に依存するため、発光強度を測定することによって被検物質22の量が測定可能となる。図3に、発光反応試薬溶液を滴下した後の発光輝度の経時的変化を示す。
【0019】
この方法では、基板1上に検体、試薬溶液、発光反応試薬溶液という異なる液滴を順次に滴下しているが、堰30によって基板1上にリザーバーが形成され、必要な液滴がスポット20上に貯留されるため、一連の処理を効率よく実施することができる。検体および各試薬溶液を滴下する各時に液滴が基板1外へ流れ出る危険を防止することもできる。しかしその一方で、検体および各試薬溶液は一般に水性溶液であり、また一連の処理は空気中で実施するため、滴下した液滴の基板1からの揮発を回避することは困難である。
【0020】
以下、本発明に係る発光測定方法を用いるマイクロアレイ解析方法について図4を参照して説明する。基板1の構成および解析原理は従来と同様であるため図1および図2をも参照する。
【0021】
図4(a)は上述の図2(c)までの処理を終えた基板1を示す。検体中に含まれていた被検物質22が第一の抗体21を介してスポット20部分に定着し、この被検物質22に第二の抗体23が結合していて、被検物質22は第一の抗体21と第二の抗体23とでサンドイッチ状に挟まれた状態を呈している。
【0022】
この基板1に対して、図4(b)(c)に示すように、保護液50をノズル40から吐出させて、堰30の内側の基板表面全面に展開させる。この保護液50は、無色透明で、水と混和せず、比重が水より軽く、沸点が100℃以上で、且つ発光反応を実施する温度条件下で液状のものが使用される。
【0023】
次に、図4(d)(e)に示すように、発光反応試薬溶液51をノズル41から吐出させて、堰30内側で展開させる。このことにより、堰30に囲まれた基板表面上に保護液50と発光反応試薬溶液51との2層の液層が形成され、発光反応試薬溶液51の液層は比重差によって保護液50の液層の下層となり、発光反応試薬溶液51が基板表面に接触する。そして、発光反応試薬溶液51中に含まれている発光基質が、第二の抗体23を標識している発光酵素24と反応し、発光酵素24による発光が発生する。
【0024】
この際に、発光反応試薬溶液51は上述の比重差によって基板1の表面と保護液50の間に流れ込むため、堰30で囲った基板1の表面全面に容易に展開することとなる。そしてその発光反応試薬溶液51の液層の上層に保護液50の液層が存在することとなるため、発光酵素24の至適反応温度が室温より高い場合、たとえば40℃以上である場合も、発光反応試薬溶液51の揮発が防止されて一定条件に維持することが可能となり、至適温度条件下での発光反応が実現可能となる。結果として、反応速度が大きくなり、マイクロアレイ10の検出感度が大幅に向上する。
【0025】
表1に、発光酵素として繁用される西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ、牛小腸由来アルカリホスファターゼ、細菌由来アルカリホスファターゼの反応至適温度を示す。いずれも40℃以上と比較的高い。至適温度40℃の2つのペルオキシダーゼは入手源が異なる。
【0026】
【表1】

このような温度条件では、上述した従来法であれば、発光反応を継続する間に発光反応試薬溶液の液体成分が揮発して枯渇し、発光試薬の濃度が当初と比べて高濃度となり、望ましい試薬濃度に対して乖離が生じるだけでなく、発光試薬が不溶化すること等の不都合が生じ、発光反応が途中で進行しなくなる。
【0027】
以下、本発明に係る発光測定方法を用いるマイクロアレイ解析方法について、図5を参照して更に説明する。
図5(a)は、基板1を、堰30を載置した状態で示すとともに、スポット20部分を拡大して示している。各スポット20には、濃度既知のヒトIgE(免疫グロブリンE)24を次の量ずつ固定化した:0.5fmol,0.1fmol、0.05fmol、0.01fmol、0.005fmol、0.001fmol、0.0005fmol。スポット20の形成後の基板表面はブロッキング処理した。この際には、堰30で囲まれた基板表面に、3%スキムミルクを含有するTBST(137mM塩化ナトリウム、3mM塩化カリウム、0.1%Tween20、25mMトリス−塩酸(pH7.4))溶液を液層厚1mmになるように滴下し、室温で30分間、振盪した。
【0028】
次に、図5(b)に示すように、ビオチン25で標識した抗ヒトIgE抗体26をヒトIgE26を介してスポット20部分に定着させた。この際には、堰30で囲まれた基板表面に、3.3μMのビオチン25を標識した抗ヒトIgE抗体26を液層厚1mmになるように滴下し、室温で60分間、振盪し、その後にTBSTにて1分間の洗浄処理を3回繰り返して余剰の抗ヒトIgE抗体26を除去した。
【0029】
次に、図5(c)に示すように、ビオチン29で標識したルシフェラーゼ28を結合させたストレプトアビジン27を、先のビオチン25標識した抗ヒトIgE抗体26、ヒトIgE26を介してスポット20部分に定着させた。この際には、堰30で囲まれた基板表面に、1nMのストレプトアビジン27とビオチン29標識したルシフェラーゼ28の複合体(キッコーマン社製)を滴下し、室温で60分間、振盪し、その後にTBSTにて1分間の洗浄処理を3回繰り返して、余剰のストレプトアビジン27/ビオチン29標識したルシフェラーゼ28の複合体を除去した。これにより、基板1のスポット20上に、ビオチン29標識したルシフェラーゼ28がヒトIgEの量に応じて定着した状態となる。
【0030】
ここで、ヒトIgE24は被検物質として使用したもので、濃度が決定されているものを用いて、各スポット20に固定化されるヒトIgE濃度(量)を既知とすることで、図2でいう「第一の抗体21」を省略している。このように濃度既知のスポット20を基板1上に幾つか設けることは、検体中に含まれる特定の被検物質濃度を決定するために利用されている。一方、抗IgE抗体26は図2でいう「第二の抗体23」に相当する。抗IgE抗体26を標識したビオチン25とビオチン標識したルシフェラーゼ28のビオチン29とがストレプトアビジン27に結合していることにより、抗ヒトIgE抗体26(つまり第二の抗体)はルシフェラーゼ28(つまり発光酵素)で標識されている。ビオチン25−ストレプトアビジン27−ビオチン29はリンカーの役割を担っている。かかる抗体と酵素とを結合させるリンカーは、図2には示していないが、ビオチン−ストレプトアビジンに限らず介在させることが一般的である。なおリンカーを介した結合は通常は共有結合であるが、ビオチン−ストレプトアビジンを介した結合は親和性結合である。
【0031】
以上の処理を終えた各基板1を図6に示した発光測定装置に設置して発光測定を行った。発光測定装置は、暗箱となる本体60と、発光測定可能なCCD61と、本体60内に配置されたレンズ群62およびステージ63を有している。
【0032】
まず、堰30を備えた基板1をステージ63上にセットし、レンズ群62により焦点を合わせた後、基板1の堰30に囲まれた領域に、保護液50としてのミネラルオイルを所望の液厚になるよう吐出させ、堰30の内側の基板表面全面に展開させた(先の図4(b)(c)参照)。
【0033】
次に、基板1の堰30に囲まれた領域に、発光反応試薬溶液51を液厚1mmになるように滴下し、展開させ(先の図4(d)(e)参照)、CCD61を5分間露光させて輝度を測定した。発光反応試薬溶液51の組成は、1mMアデノシン5´―三リン酸、1mMルシフェリン、1mM補酵素A、0.15mMエチレンジアミン四酢酸、10mM塩化マグネシウム、35mMジチオスレイトール、1mg/ml牛血清アルブミン、25mMトリシン−水酸化ナトリウム(pH7.8)とした。発光反応試薬溶液51の液厚1mmは、基板表面を覆う程度の厚みとして規定した。発光反応は、ルシフェラーゼの反応活性条件を同一にするため、25℃で実施した。結果を図7および表2に示す。
【0034】
図7は、IgE量と発光輝度値との関係を示している。黒丸は、被検物質の展開後の基板表面に発光反応試薬溶液のみを展開したときの結果である。黒三角、黒四角、黒菱形はそれぞれ、基板表面にミネラルオイルを液厚1mm、2mm、3mmになるように展開した後に発光反応試薬溶液を展開したときの結果であり、いずれも発光反応試薬溶液層の上層にミネラルオイル層がある。
【0035】
図7の結果によれば、ミネラルオイル層厚が2mmまでは、発光反応試薬溶液のみ(ミネラルオイル層なし)の場合と同等の発光輝度値を示している。ミネラルオイル層厚を3mmにすると、発光輝度値は5%程度低下している。これは、ミネラルオイル層の液厚の上昇に伴い、同層を透過する発光光量の減衰が生じたためであると考えられる。
【0036】
表2は、基板表面のミネラルオイルの液厚が0mm、1mm、2mm、3mmのときの変動係数(%)を示している。
【0037】
【表2】

表2の結果によれば、若干のバラツキはあるものの、ミネラルオイル層厚が高くなるに従い、スポット毎の発光再現性の指標である変動係数値は良化傾向にあった。発光反応試薬溶液層の上層にミネラルオイル層を形成することで、液面乱れが防止されたためと考えられる。
【0038】
以上のことから、発光反応により測定を実施するマイクロアレイにおいて、ミネラルオイルを保護液として用いると、液厚が大きくなるにしたがって発光再現性がよくなるが、その一方で発光輝度値が低下するので、基板表面を覆う程度の液厚1mmでよいと言うことができる。
【0039】
上記の実施形態では、保護液としてミネラルオイルを例示したが、これに限られるものではない。ミネラルオイル等の、無色透明で、水と混和せず、水よりも比重が小さく、水よりも揮発しにくいよう沸点が100℃以上で、発光反応を実施する温度条件下で液体である保護液を予め展開させればよい。このことにより、後続の発光反応試薬溶液を該保護液と該基板との間に配置して基板表面への展開を容易にできると共に、35℃以上のある程度の高温条件下で(ルシフェラーゼなどの酵素反応は通常25℃、場合によって37℃(ヒトの体温付近)の温度条件が設定される)、発光反応を実施する場合の発光反応試薬溶液の揮発を防止することができ、該基板に形成したスポットより生じる発光輝度の再現性を向上させることが可能となる。
【0040】
ノズルからの吐出を容易にするためには保護液は絶対粘度が30cP(センチポイズ)以下であることが好ましい。ノズルから液漏れし難い絶対粘度を有することも必要である。0.8〜25cPの物質がより好適である。本発明において使用可能な保護液を表3に例示する。
【0041】
【表3】

表中に示した、ミネラルオイル(流動パラフィン)、イソパラフィン、ジメチルポリシロキサン、水添ポリオレフィン、大豆油メチルエステルは、水と混和せず、比重が水よりも小さい。ミネラルオイルは、流動パラフィン、ヌジョール、石油スピリット、ホワイトオイルなどと呼ばれているが、本発明においては同一に扱われる。これらの他に、ポリブテン、ポリイソブテン、シリコン等も使用可能である。
【0042】
これらを混合して使用してもよく、粘度の異なる保護液を混合することにより所望の粘度を得ることが可能である。30cPを超える保護液でも、低粘度の保護液を混合することで30cP以下として使用することが可能である。表中に示した保護液でも等級によっては30cPを超えるが、低粘度の等級のものと混合することで使用可能となる。
【0043】
保護液の色相は、目視観察により決定も可能であるが、無色透明度の指標であるSaybolt数で+30あるいはHazen数で0〜10の物質がより好ましい。
上述のマイクロアレイでの測定に限らず、マイクロプレート、メンブレン(膜)を利用した測定でも同様に実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の発光測定方法は、生体情報解析装置などに用いる測定方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の発光測定方法の対象であるマイクロアレイ基板の概念図
【図2】従来より行われているマイクロアレイ解析方法の原理を説明する概念図
【図3】図2の方法で得られる発光輝度と反応時間との相関図
【図4】本発明の発光測定方法の要部工程を示す概念図
【図5】本発明の発光測定方法における発光準備を示す概念図
【図6】本発明の発光測定方法に用いる発光測定装置の概念図
【図7】本発明の発光測定方法における保護液の液層厚の影響を示すグラフ
【符号の説明】
【0046】
1 基板
10 マイクロアレイ
20 スポット
21 第一の抗体
22 被検物質
23 第二の抗体
30 堰
40 ノズル
50 保護液
51 発光反応試薬溶液
60 発光測定装置
61 CCD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物質が表面に固定化あるいは定着されており、その固定化あるいは定着された領域を囲む堰が配置された基板上に、前記被検物質を認識する分子を発光酵素で標識した標識分子を定着させ、次いで発光基質を含んだ発光反応試薬溶液を供給して、前記発光酵素と発光基質との反応により生じる発光を測定する発光測定方法において、
前記発光反応試薬溶液の供給に先立って、前記発光反応試薬溶液と混和せず前記発光反応試薬溶液を覆う液層を形成する光透過性の保護液を前記基板上に供給することを特徴とする発光測定方法。
【請求項2】
発光反応試薬溶液は水性溶液であり、保護液は水よりも比重が小さいことを特徴とする請求項1記載の発光測定方法。
【請求項3】
保護液は、基板上に1mmの液層厚となるように供給することを特徴とする請求項1記載の発光測定方法。
【請求項4】
保護液は、発光反応試薬溶液の成分に作用せず、沸点が100℃以上であることを特徴とする請求項1記載の発光測定方法。
【請求項5】
保護液は、流動パラフィン、イソパラフィン、シリコンオイル、水添ポリオレフィン、大豆メチルエステルから選ばれる1種あるいは複数種の混合物であることを特徴とする請求項1記載の発光測定方法。
【請求項6】
基板はマイクロアレイ基板であって基板表面に固定化された試薬で被検物質を捕捉しており、発光の測定は、被検物質の種別を判別するべくマイクロアレイ領域を撮像にて経時的に行うことを特徴とする請求項1記載の発光測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−43882(P2010−43882A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206492(P2008−206492)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】