説明

発光表示装置

【課題】高コントラストの画像を発光表示可能な応力発光体利用の発光表示装置を提供する。
【解決手段】発光表示装置1Aを、配線基板2と、この配線基板2の片面の長辺に沿う方向(X方向)及びこれと直交する短辺に沿う方向(Y方向)とにそれぞれ等間隔に配置された多数の円柱状のアクチュエータ3と、各アクチュエータ3の一部に設けられた応力発光体4と、アクチュエータ3の表面を覆う保護フィルム5と、配線基板2に実装された制御回路(制御手段)6及びドライバ回路7とから構成する。アクチュエータ3としては、形状記憶樹脂、形状記憶合金、圧電素子(電歪素子)、イオン伝導性高分子アクチュエータ、導電性高分子アクチュエータなどからなるものを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ及び応力発光体を用いた発光表示装置に係り、特に、発光表示装置に発光表示させる画像のコントラストを高める手段に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、常温において機械的外力を受けたときに弾性変形領域で可逆的に発光する応力発光体が開発されている(例えば、非特許文献1参照)。また、近年、数V程度の低電圧を加えることにより、空気中において変形するアクチュエータも開発されている(例えば、非特許文献2参照)。更には、これらの応力発光体及びアクチュエータを用いた発光表示装置の開発も進められている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、図10に示すように、フィルム状に形成された応力発光体100の片面に、複数の電歪棒(アクチュエータ)101を配列した発光表示装置が開示されている。かかる構成の発光表示装置は、複数の電歪棒101のうちのいずれかに電圧を印加することにより、応力発光体100の一部に機械的外力を与えることができるので、応力発光体100における所望の箇所を選択的に発光させることが可能で、フィルム状の応力発光体100に任意の画像を表示することができる。
【非特許文献1】「応力発光材料とその応用」、徐 超男、九州工業技術研究所([現]産業技術総合研究所九州センター)平成11年度研究講演会 講演要旨集(1999)
【非特許文献2】「ポリマー系アクチュエータ」、安積欣志、「未来型アクチュエータ材料・デバイス」、シーエムシー出版、2006年発行、pp.232−240
【特許文献1】特再2003−078889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の任意の画像を表示可能な発光表示装置には、言うまでもなく、コントラストが高く、視認しやすい画像を表示できることが求められる。しかしながら、図10に示した従来の発光表示装置は、フィルム状に形成された応力発光体100の片面に複数の電歪棒101を配列してなるので、1つの電歪棒101に電圧を印加して応力発光体100の一部に機械的外力を付与したとき、その機械的外力が、応力発光体100の弾性により、機械的外力を受けた部分の周辺にまで伝搬され、機械的外力を受けた部分のみならず、その周辺部分も発光する。このため、表示される画像では充分なコントラストが得られなかった。
【0005】
本発明は、かかる従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高コントラストの画像を発光表示可能な応力発光体利用の発光表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の課題を解決するため、第1に、発光表示装置を、面方向に配列された複数のアクチュエータと、前記アクチュエータ毎に設けられ、前記アクチュエータの駆動に伴う機械的外力を受けたときに弾性変形領域で可逆的に発光する応力発光体と、前記複数のアクチュエータを個別に駆動する駆動手段とを備えるという構成にした。
【0007】
かかる構成によると、各アクチュエータ毎に応力発光体を設けるので、1のアクチュエータを駆動したときに、その変形に伴う機械的外力が他のアクチュエータに設けられた応力発光体に伝搬するということが構造的にあり得ず、高コントラストの画像を表示することができる。なお、この構成の発光表示装置は、外部からアクチュエータに機械的外力が付与された場合にも、その機械的外力がアクチュエータを介して応力発光体に伝達され、応力発光体が発光されるので、表示面上に手書きの画像を表示することもできる。
【0008】
本発明は第2に、前記第1の発光表示装置において、前記複数のアクチュエータが、柔軟性の連結部材を介して互いに連結されているという構成にした。
【0009】
かかる構成によると、複数のアクチュエータを連結部材を介して互いに連結するので、個々のアクチュエータ及び応力発光体を個別に取り扱う場合に比べて、発光表示装置の組み立て時等におけるアクチュエータ及び応力発光体の取り扱いを容易なものにすることができる。また、連結部材は、柔軟性の材料をもって形成するので、1のアクチュエータを駆動することにより発生する機械的外力が連結部材によって吸収され、周辺に及ぶことがない。よって、発光表示のコントラストが害されることもない。
【0010】
本発明は第3に、前記第1の発光表示装置において、前記各アクチュエータの周囲を、遮光部材にて覆うという構成にした。
【0011】
かかる構成によると、各アクチュエータの周囲に遮光部材を設けるので、1のアクチュエータを駆動して、当該1のアクチュエータに設けられた応力発光体を発光させたとき、アクチュエータの周辺方向に放射される光を遮光部材にて遮光することができる。よって、発光の滲みを防止又は抑制できて、発光表示のコントラストをより高めることができる。
【0012】
本発明は第4に、前記第1の発光表示装置において、前記複数のアクチュエータを配線基板上に設定すると共に、前記アクチュエータの端部に設けられた前記応力発光体の表面を保護フィルムにて覆うという構成にした。
【0013】
かかる構成によると、アクチュエータを配線基板上に設定するので、アクチュエータに対する電気配線を容易化することができる。また、応力発光体の表面を保護フィルムにて覆うので、応力発光体の摩耗や汚損を防止でき、発光表示装置の耐久性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、発光表示装置を、面方向に配列された複数のアクチュエータと、前記アクチュエータ毎に設けられ、前記アクチュエータの駆動に伴う機械的外力を受けたときに弾性変形領域で可逆的に発光する応力発光体と、前記複数のアクチュエータを個別に駆動する駆動手段を備える構成とするので、1のアクチュエータを駆動したときに、その変形に伴う機械的外力が他のアクチュエータに設けられた応力発光体に伝搬せず、高コントラストの画像を表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る発光表示装置の実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、第1実施形態に係る発光表示装置1Aは、配線基板2と、この配線基板2の片面の長辺に沿う方向(X方向)及びこれと直交する短辺に沿う方向(Y方向)とにそれぞれ等間隔に配置された多数の円柱状のアクチュエータ3と、各アクチュエータ3の一部(図1及び図2の例では、アクチュエータ3の上端)に設けられた応力発光体4と、アクチュエータ3の表面を覆う保護フィルム5と、配線基板2に実装された制御回路(制御手段)6及びドライバ回路7とを備えてなる。
【0017】
配線基板2には、図3(a),(b)に示すように、アクチュエータ3の取付孔21が所定の配列で開設されている。そして、その表面側には、図3(a)に示すように、各取付孔21内に設定されるアクチュエータ3の一方の電極を個別に接続するための個別配線22が施され、その裏面側には、図3(b)に示すように、各取付孔21内に設定されるアクチュエータ3の他方の電極を共通に接続するための共通配線23が施されている。
【0018】
アクチュエータ3としては、形状記憶樹脂、形状記憶合金、圧電素子(電歪素子)、イオン伝導性高分子アクチュエータ、導電性高分子アクチュエータなどからなるものを用いることができる。
【0019】
形状記憶樹脂及び形状記憶合金からなるアクチュエータ3は、図4に示すように、取付孔21内に設定し、表面の2箇所に個別配線22及び共通配線23を接続することにより、駆動可能となる。
【0020】
圧電素子からなるアクチュエータ3には、図5に示すように、胴部に上部電極31及び下部電極32が延長して配置される。このように構成することにより、取付孔21内に設定したときに、上部電極31と個別配線22との接続、及び下部電極32と共通配線23との接続が可能になり、アクチュエータ3として機能させることができる。
【0021】
イオン伝導性高分子アクチュエータ3は、イオン伝導性高分子33の表裏両面に上部電極31及び下部電極32を設けたものであって、そのまま用いることもできるし、図6に示すように、所要の樹脂34内に封入して用いることもできる。イオン伝導性高分子アクチュエータ3を樹脂34内に封入して用いる場合には、図6に示すように、樹脂34の表面に、上部電極31と電気的に接続された外付け上部電極35及び下部電極32と電気的に接続された外付け下部電極36が形成される。このように構成することにより、取付孔21内に設定したときに、外付け上部電極35と個別配線22との接続、及び外付け下部電極36と共通配線23との接続が可能になり、アクチュエータ3として機能させることができる。
【0022】
導電性高分子アクチュエータ3は、導電性高分子37の表裏両面に上部電極31及び下部電極32を設けたものであって、図7に示すように、筒状に巻回すると共に、その外端を反対側に折り返すことによって、胴部に上部電極31及び下部電極32を露出させることができる。このように構成することにより、取付孔21内に設定したときに、上部電極31と個別配線22との接続、及び下部電極32と共通配線23との接続が可能になり、アクチュエータ3として機能させることができる。
【0023】
なお、図1、図4〜図7の例では、アクチュエータ3が円柱状に形成されているが、本願発明の要旨はこれに限定されるものではなく、三角柱状、四角柱状、五角柱状、六角柱状など、任意の形状に形成することができる。
【0024】
応力発光体4は、ZnS:Mn粉末などの応力発光粉末を高純度の樹脂母体に分散したものなどを用いることができる。なお、図1及び図2の例では、応力発光体4がアクチュエータ3の下端部に設けられているが、本願発明の要旨はこれに限定されるものではなく、アクチュエータ3の上端部に設ける、アクチュエータ3の上下両端部に設ける、柱状に形成されたアクチュエータ3の同部に設ける、筒状に形成されたアクチュエータ3の内部空間内に封入するなどの手段を採ることもできる。
【0025】
保護フィルム5は、応力発光体4を機械的又は化学的な悪影響から保護するもので、可撓性を有する透明プラスチックをもって形成される。
【0026】
制御回路6は、配線基板2に形成された個別配線22及び共通配線23を通じて各アクチュエータ3の駆動を制御するものであり、ドライバ回路7を通して多数のアクチュエータ3の中から所要のアクチュエータ3のみを選択的に駆動することにより、そのアクチュエータ3に設けられた応力発光体4を発光させて、所要の画像を発光表示させる。
【0027】
本例の発光表示装置1Aは、各アクチュエータ3毎に応力発光体4を設けるので、1のアクチュエータ3を駆動したときに、その変形に伴う機械的外力が他のアクチュエータに設けられた応力発光体4に伝搬するということがなく、高コントラストの画像を表示することができる。また、保護フィルム5の外側から応力発光体4に機械的外力を付与することによっても、応力発光体4を発光させることができ、この場合にも、手書きの画像を高コントラストで表示することができる。さらに、本例の発光表示装置1Aは、アクチュエータ3を配線基板2上に設定するので、アクチュエータ3に対する電気配線を容易化できると共に、アクチュエータ3の端部に設けられた応力発光体4の表面を保護フィルム5にて覆うので、応力発光体4の摩耗や汚損を防止できて、発光表示装置の耐久性を高めることができる。加えて、本例の発光表示装置1Aは、アクチュエータ3の駆動を制御する制御回路6及びドライバ回路7を備えるので、制御回路6から各アクチュエータ3に供給される信号を変更することにより、発光表示装置に任意の画像を所要のタイミングで表示することができる。
【0028】
次に、第2実施形態に係る発光表示装置1Bを、図8に基づいて説明する。図8に示すように、本例の発光表示装置1Bは、隣接して配置される各アクチュエータ3を、柔軟性の連結部材8を介して互いに連結したことを特徴とする。
【0029】
連結部材8は、例えばシリコンゲル又はアクリルゲルなどのゲル化材や、発砲プラスチック等の発泡材をもって形成される。その他については、第1実施形態に係る発光表示装置1Aと同じであるので、対応する部分に同一の符号を付して説明を省略する。
【0030】
このように、隣接して配置される各アクチュエータ3を、柔軟性の連結部材8を介して互いに連結すると、個々のアクチュエータ3及びこれに設けられた応力発光体4を個別に取り扱う場合に比べて、搬送時又は発光表示装置の組み立て時等におけるアクチュエータ3及び応力発光体4の取り扱いを容易なものにすることができ、発光表示装置の低コスト化を図ることができる。なお、連結部材8は、ゲル化材や発泡材等の柔軟性材料をもって形成するので、1のアクチュエータ3を駆動することにより発生する機械的外力が連結部材8によって吸収され、周辺に及ぶことがない。よって、発光表示のコントラストが害されることもない。
【0031】
次に、第3実施形態に係る発光表示装置1Cを、図9に基づいて説明する。図9に示すように、本例の発光表示装置1Cは、各アクチュエータ3の周囲を、遮光部材9にて覆うことを特徴とする。
【0032】
遮光部材9は、黒色に着色されたシリコンゲル又はアクリルゲルなどのゲル化材や、発砲プラスチック等の発泡材をもって形成される。その他については、第1実施形態に係る発光表示装置1Aと同じであるので、対応する部分に同一の符号を付して説明を省略する。
【0033】
このように、各アクチュエータ3の周囲に遮光部材9を設けると、1のアクチュエータ3を駆動して、当該1のアクチュエータ3に設けられた応力発光体4を発光させたとき、アクチュエータ3の周辺方向に放射される光を遮光部材9にて遮光できるので、発光の滲みを防止又は抑制できて、発光表示のコントラストをより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態に係る発光表示装置の分解斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る発光表示装置の要部断面図である。
【図3】配線基板の要部平面図及び裏面図である。
【図4】形状記憶樹脂又は形状記憶合金からなるアクチュエータの構成図である。
【図5】圧電素子からなるアクチュエータの構成図である。
【図6】イオン伝導性高分子アクチュエータの構成図である。
【図7】導電性高分子アクチュエータの構成図である。
【図8】第2実施形態に係る発光表示装置の要部断面図である。
【図9】第3実施形態に係る発光表示装置の要部断面図である。
【図10】公知例に係る発光表示装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1A,1B,1C 発光表示装置
2 配線基板
3 アクチュエータ
4 応力発光体
5 保護フィルム
6 制御回路(制御手段)
7 ドライバ回路
21 取付孔
22 個別配線
23 共通配線
31 上部電極
32 下部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面方向に配列された複数のアクチュエータと、前記アクチュエータ毎に設けられ、前記アクチュエータの駆動に伴う機械的外力を受けたときに弾性変形領域で可逆的に発光する応力発光体と、前記複数のアクチュエータを個別に駆動する駆動手段とを備えたことを特徴とする発光表示装置。
【請求項2】
前記複数のアクチュエータが、柔軟性の連結部材を介して互いに連結されていることを特徴とする請求項1に記載の発光表示装置。
【請求項3】
前記各アクチュエータの周囲を、遮光部材にて覆ったことを特徴とする請求項1に記載の発光表示装置。
【請求項4】
前記複数のアクチュエータを配線基板上に設定すると共に、前記アクチュエータの端部に設けられた前記応力発光体の表面を保護フィルムにて覆ったことを特徴とする請求項1に記載の発光表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−8488(P2010−8488A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164597(P2008−164597)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】