説明

発光装置の製造方法

【課題】有機EL層に不所望な穴が形成されることを抑制した発光装置の製造方法を提供する。
【解決手段】支持基板と、前記支持基板上において所定の行方向にそれぞれ延在する複数本の隔壁と、前記隔壁間に設けられる複数の有機EL素子とを備える発光装置であり、前記有機EL素子は、第1の電極と、有機EL層と、第2の電極とが前記支持基板寄りからこの順に配置されて構成される、発光装置の製造方法であって、有機EL層となる材料を含むインキを各隔壁間に供給し、これを固化して有機EL層を形成する工程と、第2の電極を形成する工程とを含み、前記有機EL層を形成する工程では、前記行方向に沿って行方向の一端から他端に亘って前記インキを供給するインキ供給を、隔壁間ごとに、インキの列方向の供給位置を異ならせて複数回行う、発光装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置には液晶表示装置やプラズマ表示装置など種々のものがある。そのひとつとして、有機EL(Electro Luminescence)素子を画素の光源に使用した表示装置が現在実用化されつつある。この表示装置は基板上に整列して配置される複数の有機EL素子を備える。基板上には有機EL素子を区分けするための隔壁がストライプ状に配置されており、各有機EL素子は隔壁によってストライプ状に区分けされた領域に配置される。すなわち各有機EL素子は、複数本の隔壁間にそれぞれ配置され、各隔壁間において、それぞれが、隔壁の延在する方向に沿って所定の間隔をあけて配置されている。
【0003】
有機EL素子は、第1の電極、1層以上の有機EL層、および第2の電極が、支持基板寄りからこの順序で積層されて構成される。電極間に設けられる有機EL層は塗布法によって形成することができる。たとえば所定の有機EL層は、この有機EL層となる材料を含むインキを、隔壁によって区分けされた領域に供給し、さらにこれを固化することによって形成することができる。インキの供給はたとえばノズルプリンティング法によって行うことができる。このように有機EL層を第1の電極上に形成し、さらに第2の電極を所定の方法によって形成することで、支持基板上に複数の有機EL素子を形成することができる(たとえば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−218250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
装置の仕様にもよるが、たとえば表示装置を大型化する場合、各画素のサイズが大きくなり、これにともなって、画素の幅を規定する隔壁間の間隔も大きくなる。このような幅広な隔壁間に、ノズルプリンティング法によってインキを供給すると、インキが隔壁間に亘って濡れ広がらないことがあり、一部に塗り残しが発生することがある。この状態でインキが固化すると、有機EL層に穴が形成され、素子不良が発生するという問題がある。
従って本発明の目的は、有機EL層に不所望な穴が形成されることを抑制した発光装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支持基板と、前記支持基板上において所定の行方向にそれぞれ延在し、かつ前記行方向とは方向が異なる列方向に所定の間隔をあけて配置される複数本の隔壁と、前記隔壁間に設けられる複数の有機EL素子とを備える発光装置であり、前記有機EL素子は、第1の電極と、有機EL層と、第2の電極とが前記支持基板寄りからこの順に配置されて構成される、発光装置の製造方法であって、
各有機EL素子の第1の電極と複数本の隔壁とが設けられた前記支持基板を用意する工程と、
有機EL層となる材料を含むインキを各隔壁間に供給し、これを固化して有機EL層を形成する工程と、
第2の電極を形成する工程とを含み、
前記有機EL層を形成する工程では、前記行方向に沿って行方向の一端から他端に亘って前記インキを供給するインキ供給を、隔壁間ごとに、インキの列方向の供給位置を異ならせて複数回行う、発光装置の製造方法に関する。
また本発明は、前記有機EL層を形成する工程では、前記インキ供給における列方向の供給位置の間隔Wを等間隔とし、
前記複数本の隔壁は、当該隔壁の列方向の中心間の間隔がn×W(記号「n」は2以上の自然数を表す。)となるように配置される、前記発光装置の製造方法に関する。
また本発明は、各インキ供給では、隔壁間に広がる量よりも少ない量のインキを供給する、前記発光装置の製造方法に関する。
また本発明は、有機EL層を形成する工程では、複数回行われるインキ供給を、前記インキを吐出する複数本のノズルを用いて同時に行う、前記記載の発光装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発光装置を作製する際に、有機EL層に不所望な穴が形成されることを防ぐことができ、素子不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の発光装置21を模式的に示す平面図である。
【図2】発光装置21を模式的に示す断面図である。
【図3】インキ供給を模式的に示す図である。
【図4】インキ供給を模式的に示す図である。
【図5】インキ供給を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の発光装置の製造方法は、支持基板と、前記支持基板上において所定の行方向にそれぞれ延在し、かつ前記行方向とは方向が異なる列方向に所定の間隔をあけて配置される複数本の隔壁と、前記隔壁間に設けられる複数の有機EL素子とを備える発光装置であり、前記有機EL素子は、第1の電極と、有機EL層と、第2の電極とが前記支持基板寄りからこの順に配置されて構成される、発光装置の製造方法であって、各有機EL素子の第1の電極と複数本の隔壁とが設けられた前記支持基板を用意する工程と、有機EL層となる材料を含むインキを各隔壁間に供給し、これを固化して有機EL層を形成する工程と、第2の電極を形成する工程とを含み、前記有機EL層を形成する工程では、前記行方向に沿って行方向の一端から他端に亘って前記インキを供給するインキ供給を、隔壁間ごとに、インキの列方向の供給位置を異ならせて複数回行う、発光装置の製造方法に関する。
【0010】
発光装置はたとえば表示装置として利用される。表示装置には主にアクティブマトリクス駆動型の装置と、パッシブマトリクス駆動型の装置とがある。本発明は両方の型の表示装置に適用することができるが、本実施形態では一例としてアクティブマトリクス駆動型の表示装置に適用される発光装置について説明する。
【0011】
<発光装置の構成>
まず発光装置の構成について説明する。図1は本実施形態の発光装置21を模式的に示す平面図であり、図2は発光装置21を模式的に示す断面図である。発光装置21は主に支持基板11と、この支持基板11上に形成される複数の有機EL素子22と、支持基板11上において複数の有機EL素子を区分けする複数本の隔壁17とを含んで構成される。
【0012】
複数本の隔壁17は、前記支持基板11上において所定の行方向Xにそれぞれ延在し、かつ行方向Xとは方向が異なる列方向Yに所定の間隔をあけて配置される。すなわち複数本の隔壁17はストライプ状に設けられる。本実施形態では行方向Xおよび列方向Yは、互いに垂直であって、かつそれぞれが支持基板11の厚み方向Zに垂直である。以下、列方向Yに隣り合う一対の隔壁17と支持基板11とによって規定される凹みを凹部18ということがある。支持基板11上には複数本の隔壁17に対応する複数本の凹部18が設定される。この各凹部18がそれぞれ所定の行に対応する。
【0013】
なお本実施形態では支持基板11と隔壁17との間に、絶縁膜15が設けられる。この絶縁膜15はたとえば行方向Xまたは列方向Yに隣り合う有機EL素子間の電気的な絶縁を確保するために設けられる。絶縁膜15は、格子状に形成されており、行方向Xに延在する複数本の帯状の部材と、列方向に延在する複数本の帯状の部材とが一体的に形成されて構成される。絶縁膜15の開口は、平面視で有機EL素子と重なる位置に形成される。絶縁膜15の開口は平面視でたとえば略矩形、小判形、略円形および略楕円形などに形成される。格子状の絶縁膜15は平面視で、後述する第1の電極12を除く領域に主に形成され、その一部が第1の電極12の周縁を覆って形成される。また前述した複数本の隔壁17は、絶縁膜の一部を構成する行方向Xに延在する複数本の帯状の部材上に設けられる。
【0014】
本実施形態では複数の有機EL素子22は、列方向Yに隣り合う隔壁17の間(すなわち凹部18)に設けられ、各隔壁17間において、行方向Xに所定の間隔をあけて配置されている。すなわち本実施形態では複数の有機EL素子22は支持基板11上においてマトリクス状に整列して配置されており、それぞれ行方向Xに所定の間隔をあけるとともに、列方向Yにも所定の間隔をあけて配置される。なお各有機EL素子22は物理的に離間している必要はなく、個別に駆動できるように電気的に絶縁されていればよい。そのため有機EL素子を構成する一部の層(電極や有機EL層)は他の有機EL素子と物理的につながっていてもよい。
【0015】
有機EL素子は、第1の電極と、有機EL層と、第2の電極とが前記支持基板寄りからこの順に配置されて構成される。
【0016】
一対の電極は陽極と陰極とから構成される。すなわち第1および第2の電極のうちの一方が陽極として設けられ、他方が陰極として設けられる。また第1および第2の電極のうちの第1の電極12は支持基板11寄りに配置され、第2の電極16は、第1の電極12よりも支持基板11から離間して配置される。
【0017】
有機EL素子は1層以上の有機EL層を備える。なお有機EL層は第1の電極と第2の電極とに挟持される1層以上の層を意味する。有機EL素子は1層以上の有機EL層として少なくとも1層以上の発光層を備える。また一対の電極間には発光層に限らず、必要に応じて所定の層が設けられる。たとえば陽極と発光層との間には正孔注入層、正孔輸送層、および電子ブロック層などが有機EL層として設けられ、発光層と陰極との間には正孔ブロック層、電子輸送層、および電子注入層などが有機EL層として設けられる。
【0018】
本実施形態の有機EL素子22は第1の電極12と発光層14との間に、有機EL層として正孔注入層13を備える。
【0019】
以下では実施の一形態として、陽極として機能する第1の電極12と、正孔注入層13と、発光層14と、陰極として機能する第2の電極16とが、支持基板11寄りからこの順番で積層されて構成される有機EL素子22について説明する。
【0020】
本実施形態の発光装置21はアクティブマトリクス型の装置なので、第1の電極12は有機EL素子22ごとに個別に設けられる。すなわち有機EL素子22の数と同数の第1の電極12が支持基板11上に設けられる。たとえば第1の電極12は板状であって、平面視で略矩形状に形成される。第1の電極12は支持基板11上において、各有機EL素子が設けられる位置に対応してマトリクス状に設けられる。複数の第1の電極12は、行方向Xに所定の間隔をあけるとともに、列方向Yに所定の間隔をあけて配置される。すなわち第1の電極12は平面視で、列方向Yに隣り合う隔壁17の間に設けられ、各隔壁17間において、行方向Xに所定の間隔をあけて配置されている。
【0021】
前述したように、格子状の絶縁膜15は平面視で、第1の電極12を除く領域に主に形成され、その一部が第1の電極15の周縁を覆って形成される。すなわち絶縁膜15には第1の電極12上に開口が形成され、この開口によって第1の電極12の表面が絶縁膜から露出する。
【0022】
正孔注入層13は隔壁17に挟まれた領域に行方向Xに延在して配置される。すなわち正孔注入層13は、列方向Yに隣り合う隔壁17によって規定される凹部18に、帯状に形成されており、行方向Xに隣り合う有機EL素子に亘って連続して形成されている。
【0023】
発光層14は隔壁17に挟まれた領域に行方向Xに延在して配置される。すなわち発光層14は、列方向Yに隣り合う隔壁17によって規定される凹部18に、帯状に形成されており、行方向Xに隣り合う有機EL素子に亘って連続して形成されている。帯状の発光層14は帯状の正孔注入層13上に積層される。
【0024】
カラー表示装置の場合、赤色、緑色および青色のいずれか1種の光を放つ3種類の有機EL素子が支持基板11上に設けられる。カラー表示装置はたとえば以下の(I)(II)(III)の行を、この順序で、列方向Yに繰り返し配置することにより実現することができる。
(I)赤色の光を放つ複数の有機EL素子22Rが所定の間隔をあけて配置される行。
(II)緑色の光を放つ複数の有機EL素子22Gが所定の間隔をあけて配置される行。(III)青色の光を放つ複数の有機EL素子22Bが所定の間隔をあけて配置される行。
このように発光色の異なる複数種類の有機EL素子を形成する場合、素子の種類ごとに発光色の異なる発光層が設けられる。本実施形態では3種類の発光層14R,14G,14Bがそれぞれ設けられる以下の(i)(ii)(iii)の行を、この順序で、列方向Yに繰り返し配置する。
(i)赤色の光を放つ発光層14Rが設けられる行。
(ii)緑色の光を放つ発光層14Gが設けられる行。
(iii)青色の光を放つ発光層14Bが設けられる行の3種類の行。
すなわち行方向Xに延在する帯状の発光層14R、発光層14G、発光層14Bが、それぞれ列方向Yに2行の間隔をあけて順次正孔注入層13上に積層される。
【0025】
第2の電極16は発光層14上に設けられる。なお本実施形態では第2の電極16は複数の有機EL素子にまたがって連続して形成され、複数の有機EL素子に共通の電極として設けられる。第2の電極16は、発光層14上だけでなく、隔壁17上にも形成され、発光層14上の電極と隔壁17上の電極とが連なるように一面に形成される。
【0026】
<発光装置の製造方法>
次に発光装置の製造方法について説明する。
【0027】
(第1の電極と複数本の隔壁とが設けられた支持基板を用意する工程)
まず支持基板11を用意する。アクティブマトリクス型の表示装置の場合、複数の有機EL素子を個別に駆動するための回路が予め形成された基板を支持基板11として用いることができる。たとえばTFT(Thin Film Transistor)が予め形成された基板を支持基板として用いることができる。
【0028】
次に、用意した支持基板11上に複数の第1の電極12をマトリクス状に形成する。第1の電極12は、たとえば導電性薄膜を支持基板11上の一面に形成し、これをフォトリソグラフィー法によってマトリクス状にパターニングすることにより形成される。また例えば所定の部位に開口が形成されたマスクを支持基板11上に配置し、このマスクを介して支持基板11上の所定の部位に導電性材料を選択的に堆積することにより第1の電極12をパターン形成してもよい。第1の電極12の材料については後述する。なお本工程では第1の電極12が予め形成された支持基板を用意してもよい。
【0029】
次にストライプ状の隔壁17を支持基板11上に形成する。隔壁17は有機物または無機物によって構成される。隔壁17を構成する有機物としてはアクリル樹脂、フェノール樹脂、およびポリイミド樹脂などの樹脂を挙げることができる。また隔壁17を構成する無機物としてはSiOXやSiNなどを挙げることができる。
【0030】
有機物からなる隔壁17を形成する場合、まずたとえばポジ型またはネガ型の感光性樹脂を一面に塗布し、所定の部位を露光、現像する。さらにこれを硬化することによって、ストライプ状の隔壁17が形成される。なお感光性樹脂としてはフォトレジストを用いることができる。また無機物からなる隔壁17を形成する場合、無機物からなる薄膜をプラズマCVD法やスパッタ法などによって一面に形成し、次に所定の部位を除去することによりストライプ状の隔壁17が形成される。所定の部位の除去はたとえばフォトリソグラフィー法によって行われる。
【0031】
なお格子状の絶縁膜を備える発光装置を作製する場合には、隔壁を形成する工程の前に絶縁膜を形成する。絶縁膜はたとえば隔壁の材料として例示した材料を用いて、隔壁を形成する方法と同様にして格子状に形成することができる。
【0032】
隔壁17の形状、並びにその配置は、画素数および解像度などの表示装置の仕様や製造の容易さなどに応じて適宜設定される。たとえば隔壁17の列方向Yの幅L1は、5μm〜50μm程度であり、隔壁17の高さL2は0.5μm〜5μm程度であり、列方向Yに隣り合う隔壁17間の間隔L3、すなわち凹部18の列方向Yの幅L3は、10μm〜200μm程度である。また第1の電極12の行方向Xおよび列方向Yの幅はそれぞれ10μm〜400μm程度である。
【0033】
(有機EL層を形成する工程)
本工程では、有機EL層(本実施形態では正孔注入層)となる材料を含むインキを各隔壁間に供給し、これを固化して有機EL層を形成する。そして本工程では行方向Xに沿って行方向の一端から他端に亘って前記インキを供給するインキ供給を、隔壁間ごとに、インキの列方向Yの供給位置を異ならせて複数回行う。
【0034】
隔壁間にインキを供給する方法としては、隔壁間に選択的にインキを供給することが可能な塗布法であればどのような方法でもよい。このような方法としてはノズルプリンティング法およびインクジェット法などを挙げることができ、これらの中でもノズルプリンティング法が好ましい。インキを断続的に滴下するインクジェット法では、インキは間隔をあけて基板に着弾する。着弾したインキは基板上で広がるために、通常は、連続した塗布膜を得ることができるが、インキが基板上で十分に広がらない場合、塗布膜に穴が形成されるおそれがある。他方、インキを液柱状に連続的に供給するノズルプリンティング法では、基板上にインキが連続して塗布されるため、塗布膜に穴が形成されるおそれが少なく、連続した塗布膜を得ることができるからである。
【0035】
ノズルプリンティング法では一筆書きで各行(凹部18)にインキを供給する。すなわち支持基板11の上方に配置されるノズルから液柱状のインキを吐出したまま、ノズルを行方向Xに往復移動させつつ、ノズルの往復移動の折り返しの際に、支持基板を列方向Yに所定の距離だけ移動させることによって、各行にインキを供給する。
【0036】
図3および図4はインキ供給を模式的に示す図である。図3では支持基板上におけるノズル19の軌跡を二点鎖線で示している。本実施形態では、行方向Xに沿って行方向の一端から他端に亘って前記インキを供給するインキ供給を、隔壁間ごとに、インキの列方向の供給位置を異ならせて2回行う。
前記インキ供給における列方向Yの供給位置の間隔Wは、等間隔である必要はないが、等間隔であることが好ましい。このように列方向Yの供給位置の間隔Wを等間隔にすることによって、ノズルプリンティング法を用いてインキを印刷する装置の設定を容易にすることができる。なお間隔Wを等間隔とした場合には、複数本の隔壁17は、当該隔壁の列方向の中心間の間隔がn×W(記号「n」は2以上の自然数を表す。)となるように配置される。記号nは、隔壁間ごとに、インキ供給を行う回数に一致する。すなわち本実施形態では隔壁間ごとにインキ供給を2回行うため、nは2である。
図3に示すように、本実施形態ではノズル19から液柱状のインキを吐出したまま、以下の(1)〜(4)の工程をこの順序で繰り返すことにより、各隔壁間にインキを供給する。
(1)ノズル19を行方向Xの一端から他端に移動する工程。
(2)支持基板11を列方向Yの一方に間隔Wだけ移動する工程。
(3)ノズル19を行方向Xの他端から一端に移動する工程。
(4)支持基板を列方向Yの一方に間隔Wだけ移動する工程。
このように各隔壁間に複数回にわけてインキを供給することによって、塗り残しを防いで、隔壁間を確実に覆うようにインキを供給することができる。
なお各インキ供給では、隔壁間に広がる量よりも少ない量のインキを供給することが好ましい。複数回にわけてインキを供給する場合、各回で供給されたインキが連なり、結果として隔壁間にインキが広がればよいため、このように隔壁間に広がる量よりも少ない量のインキを各回で供給することによって、インキの使用量を抑制することが可能になる。
【0037】
有機EL層に相当する正孔注入層13は、隔壁間に供給されたインキが固化することによって形成される。インキの固化はたとえば溶媒を除去することによって行うことができる。溶媒の除去は、自然乾燥、加熱乾燥および真空乾燥などによって行うことができる。また使用するインキが、光や熱などのエネルギーを加えることによって重合する材料を含む場合、インキを供給した後に光や熱などのエネルギーを加えることによって正孔注入層13を固化してもよい。
【0038】
(発光層を形成する工程)
次に発光層を形成する。前述したようにカラー表示装置を作製する場合には、3種類の有機EL素子を作製するために、発光層の材料を行ごとに塗りわける必要がある。たとえば3種類の発光層を行ごとに形成する場合、赤色の光を放つ材料を含む赤インキ、緑色の光を放つ材料を含む緑インキ、青色の光を放つ材料を含む青インキを、それぞれ列方向Yに2列の間隔をあけて塗布する必要がある。そして赤インキ、緑インキ、青インキを所定の行に順次塗布することによって各発光層を塗布成膜することができる。赤インキ、緑インキ、青インキを所定の行に順次塗布する方法としては、印刷法、インクジェット法、ノズルプリンティング法などの所定の塗布法が挙げられる。たとえばノズルプリンティング法では前述した正孔注入層を形成する方法と同様にしてインキを塗布することができる。
【0039】
なお赤インキ、緑インキ、青インキを、それぞれ列方向Yに2列の間隔をあけて塗布する際には、列方向の供給位置の間隔Wを等間隔にすることができない。図5は赤インキを供給する工程を模式的に示す図である。赤インキを供給する工程では、たとえば赤インキを供給すべき隔壁間ごとに、複数回インキ供給を行えばよい。このように、隔壁間ごとに複数回インキ供給を行うことによって、塗り残しを防いで、隔壁間を確実に覆うように赤インキを供給することができる。緑インキおよび青インキは赤インキと同様にして所定の隔壁間に供給することができる。なおカラーフィルタを使用してカラー表示を実現する表示装置やモノクロ表示装置のように1種類の発光層を設ける場合、発光層となる材料を含むインキを行ごとに塗り分ける必要がないため、発光層となる材料を含むインキは、正孔注入層となる材料を含むインキを供給する方法として前述した方法と同様にして、各隔壁間に供給することができる。
【0040】
発光層は、隔壁間に供給されたインキが固化することによって形成される。インキの固化はたとえば溶媒を除去することによって行うことができる。溶媒の除去は、自然乾燥、加熱乾燥および真空乾燥などによって行うことができる。また使用するインキが、光や熱などのエネルギーを加えることによって重合する材料を含む場合、インキを供給した後に光や熱などのエネルギーを加えることによって発光層を固化してもよい。
【0041】
発光層を形成した後、必要に応じて所定の有機層や無機層などを所定の方法によって形成する。これらは印刷法、インクジェット法、ノズルプリンティング法などの所定の塗布法、さらには所定の乾式法を用いて形成してもよい。
【0042】
(第2の電極を形成する工程)
次に第2の電極を形成する。前述したように本実施形態では第2の電極を支持基板上の全面に形成する。これによって複数の有機EL素子を基板上に形成することができる。
【0043】
以上説明した発光装置の製造方法では、各隔壁間に複数回にわけてインキを供給するため、たとえ各画素のサイズが大きく、隔壁間の間隔が広い発光装置であっても、インキの塗り残しを防ぐことができ、有機EL層に穴が形成されることを防ぐことができる。これによって素子不良の発生を防ぐことができ、歩留まりの向上を図ることができる。
以上の説明では1本のノズルを使用してインキを供給する方法を説明したが、ノズルは複数本使用してもよい。インキを吐出する複数本のノズルを使用することによって、数回行われるインキ供給を同時に行うことができる。これによってインキ供給に要する時間を短縮することができる。複数本のノズルは、列方向Yに一列に配置される必要はなく、列方向の供給位置の間隔Wに相当する間隔を列方向Yにあけて配置するとともに、設置スペースなどの必要に応じて行方向Xに所定の間隔をあけて配置してもよい。
【0044】
<有機EL素子の構成>
前述したように有機EL素子は種々の層構成をとりうるが、以下では有機EL素子の層構造、各層の構成、および各層の形成方法についてさらに詳しく説明する。
【0045】
前述したように有機EL素子は、一対の電極と、該電極間に設けられる1または複数の有機EL層とを含んで構成され、1または複数の有機EL層として少なくとも1層の発光層を有する。なお有機EL素子は、無機物と有機物とを含む層、および無機層などを含んでいてもよい。有機層を構成する有機物としては、低分子化合物でも高分子化合物でもよく、また低分子化合物と高分子化合物との混合物でもよい。有機層は、高分子化合物を含むことが好ましく、ポリスチレン換算の数平均分子量が10〜10である高分子化合物を含むことが好ましい。
【0046】
陰極と発光層との間に設けられる有機EL層としては、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層などを挙げることができる。陰極と発光層との間に電子注入層と電子輸送層との両方の層が設けられる場合、陰極に近い層を電子注入層といい、発光層に近い層を電子輸送層という。陽極と発光層との間に設けられる有機EL層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層などを挙げることができる。正孔注入層と正孔輸送層との両方の層が設けられる場合、陽極に近い層を正孔注入層といい、発光層に近い層を正孔輸送層という。
【0047】
本実施の形態の有機EL素子のとりうる層構成の一例を以下に示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
e)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
f)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
g)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
h)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
j)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
k)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
l)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
m)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
n)陽極/発光層/電子注入層/陰極
o)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
p)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
本実施の形態の有機EL素子は2層以上の発光層を有していてもよい。上記a)〜p)の層構成のうちのいずれか1つにおいて、陽極と陰極とに挟持された積層体を「構造単位A」とすると、2層の発光層を有する有機EL素子の構成として、下記q)に示す層構成を挙げることができる。なお2つある(構造単位A)の層構成は互いに同じでも、異なっていてもよい。
q)陽極/(構造単位A)/電荷発生層/(構造単位A)/陰極
また「(構造単位A)/電荷発生層」を「構造単位B」とすると、3層以上の発光層を有する有機EL素子の構成として、下記r)に示す層構成を挙げることができる。
r)陽極/(構造単位B)x/(構造単位A)/陰極
なお記号「x」は、2以上の整数を表し、(構造単位B)xは、構造単位Bがx段積層された積層体を表す。また複数ある(構造単位B)の層構成は同じでも、異なっていてもよい。
【0048】
ここで、電荷発生層とは電界を印加することにより正孔と電子を発生する層である。電荷発生層としては、たとえば酸化バナジウム、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、酸化モリブデンなどから成る薄膜を挙げることができる。
【0049】
有機EL素子は、陽極および陰極から構成される一対の電極のうちの陽極を陰極よりも支持基板寄りに配して支持基板に設けてもよく、また陰極を陽極よりも支持基板寄りに配して支持基板に設けてもよい。たとえば上記a)〜r)の構成において、右側から順に支持基板上に各層を積層した構成の有機EL素子でも、左側から順に支持基板上に各層を積層した構成の有機EL素子であってもよい。
【0050】
積層する層の順序、層数、および各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜設定することができる。
【0051】
次に、有機EL素子を構成する各層の材料および形成方法についてより具体的に説明する。
【0052】
<陽極>
発光層から放たれる光が陽極を通って素子外に出射する構成の有機EL素子の場合、陽極には光透過性を示す電極が用いられる。光透過性を示す電極としては、金属酸化物、金属硫化物および金属などの薄膜を用いることができ、電気伝導度および光透過率の高いものが好適に用いられる。具体的には酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、および銅などから成る薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、または酸化スズから成る薄膜が好適に用いられる。陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などを挙げることができる。また、該陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0053】
陽極の膜厚は、求められる特性や成膜工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0054】
<正孔注入層>
正孔注入層を構成する正孔注入材料としては、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、および酸化アルミニウムなどの酸化物や、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、アモルファスカーボン、ポリアニリン、およびポリチオフェン誘導体などを挙げることができる。
【0055】
正孔注入層の成膜方法としては、正孔注入材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。例えば正孔注入材料を含む溶液を所定の塗布法によって塗布成膜し、さらにこれを固化することによって正孔注入層を形成することができる。
【0056】
正孔注入材料を含む溶液の溶媒としては、正孔注入材料を溶解させるものであれば特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒、および水を挙げることができる。
【0057】
塗布法としてはスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法などを挙げることができ、実施の一形態として前述した本発明のノズルプリンティング法が好ましい。
【0058】
正孔注入層の膜厚は、求められる特性および成膜工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0059】
<正孔輸送層>
正孔輸送層を構成する正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0060】
これらの中で正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などの高分子正孔輸送材料が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0061】
正孔輸送層の成膜方法としては、特に制限はないが、低分子の正孔輸送材料では、高分子バインダーと正孔輸送材料とを含む混合液からの成膜を挙げることができ、高分子の正孔輸送材料では、正孔輸送材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。
【0062】
溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであれば特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒などを挙げることができる。
【0063】
溶液からの成膜方法としては、前述した正孔注入層の成膜法と同様の塗布法を挙げることができる。
【0064】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収の弱いものが好適に用いられ、例えばポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンなどを挙げることができる。
【0065】
正孔輸送層の膜厚は、求められる特性および成膜工程の簡易さなどを考慮して設定され、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0066】
<発光層>
発光層は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物、または該有機物とこれを補助するドーパントとから形成される。ドーパントは、例えば発光効率の向上や、発光波長を変化させるために加えられる。なお発光層を構成する有機物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよく、塗布法によって発光層を形成する場合には、発光層は高分子化合物を含むことが好ましい。発光層を構成する高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量はたとえば10〜10程度である。発光層を構成する発光材料としては、例えば以下の色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料、ドーパント材料を挙げることができる。
【0067】
(色素系材料)
色素系材料としては、例えば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体などを挙げることができる。
【0068】
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、例えばTb、Eu、Dyなどの希土類金属、またはAl、Zn、Be、Ir、Ptなどを中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを配位子に有する金属錯体を挙げることができ、例えばイリジウム錯体、白金錯体などの三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体などを挙げることができる。
【0069】
(高分子系材料)
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素系材料や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどを挙げることができる。
【0070】
上記発光性材料のうち、青色に発光する材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、およびそれらの重合体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体やポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0071】
また、緑色に発光する材料としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0072】
また、赤色に発光する材料としては、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
(ドーパント材料)
ドーパント材料としては、例えばペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾンなどを挙げることができる。なお、このような発光層の厚さは、通常約2nm〜200nmである。
【0073】
発光層の成膜方法としては、溶液から成膜する方法、真空蒸着法、転写法などを挙げることができる。溶液からの成膜に用いる溶媒としては、前述の溶液から正孔注入層を成膜する際に用いられる溶媒と同様の溶媒を挙げることができる。
【0074】
溶液からの成膜において溶液を塗布する方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法およびノズルプリンティング法などのコート法、並びにグラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法などの塗布法を挙げることができ、実施の一形態として前述した本発明のノズルプリンティング法が好ましい。
【0075】
<電子輸送層>
電子輸送層を構成する電子輸送材料としては、公知のものを使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0076】
これらのうち、電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
【0077】
電子輸送層の成膜法としては特に制限はないが、低分子の電子輸送材料では、粉末からの真空蒸着法、または溶液若しくは溶融状態からの成膜を挙げることができ、高分子の電子輸送材料では溶液または溶融状態からの成膜を挙げることができる。なお溶液または溶融状態からの成膜する場合には、高分子バインダーを併用してもよい。溶液から電子輸送層を成膜する方法としては、前述の溶液から正孔注入層を成膜する方法と同様の成膜法を挙げることができる。
【0078】
電子輸送層の膜厚は、求められる特性や成膜工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0079】
<電子注入層>
電子注入層を構成する材料としては、発光層の種類に応じて最適な材料が適宜選択され、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの1種類以上を含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、またはこれらの物質の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、および炭酸塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウムなどを挙げることができる。また、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。電子注入層は、2層以上を積層した積層体で構成されてもよく、例えばLiF/Caなどを挙げることができる。電子注入層は、蒸着法、スパッタリング法、印刷法などにより形成される。電子注入層の膜厚としては、1nm〜1μm程度が好ましい。
【0080】
<陰極>
陰極の材料としては、仕事関数が小さく、発光層への電子注入が容易で、電気伝導度の高い材料が好ましい。また陽極側から光を取出す構成の有機EL素子では、発光層から放たれる光を陰極で陽極側に反射するために、陰極の材料としては可視光反射率の高い材料が好ましい。陰極には、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属および周期表の13族金属などを用いることができる。陰極の材料としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、またはグラファイト若しくはグラファイト層間化合物などが用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などを挙げることができる。また、陰極としては導電性金属酸化物および導電性有機物などから成る透明導電性電極を用いることができる。具体的には、導電性金属酸化物として酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、およびIZOを挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などを挙げることができる。なお陰極は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。なお電子注入層が陰極として用いられる場合もある。
【0081】
陰極の膜厚は、求められる特性や成膜工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0082】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法などを挙げることができる。
【符号の説明】
【0083】
11 支持基板
12 第1の電極(陽極)
13 正孔注入層
14 発光層
15 絶縁膜
16 第2の電極(陰極)
17 隔壁
18 凹部
19 ノズル
21 発光装置
22 有機EL素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、前記支持基板上において所定の行方向にそれぞれ延在し、かつ前記行方向とは方向が異なる列方向に所定の間隔をあけて配置される複数本の隔壁と、前記隔壁間に設けられる複数の有機EL素子とを備える発光装置であり、前記有機EL素子は、第1の電極と、有機EL層と、第2の電極とが前記支持基板寄りからこの順に配置されて構成される、発光装置の製造方法であって、
各有機EL素子の第1の電極と複数本の隔壁とが設けられた前記支持基板を用意する工程と、
有機EL層となる材料を含むインキを各隔壁間に供給し、これを固化して有機EL層を形成する工程と、
第2の電極を形成する工程とを含み、
前記有機EL層を形成する工程では、前記行方向に沿って行方向の一端から他端に亘って前記インキを供給するインキ供給を、隔壁間ごとに、インキの列方向の供給位置を異ならせて複数回行う、発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記有機EL層を形成する工程では、前記インキ供給における列方向の供給位置の間隔Wを等間隔とし、
前記複数本の隔壁は、当該隔壁の列方向の中心間の間隔がn×W(記号「n」は2以上の自然数を表す。)となるように配置される、請求項1記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
各インキ供給では、隔壁間に広がる量よりも少ない量のインキを供給する、請求項1または2記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
有機EL層を形成する工程では、複数回行われるインキ供給を、前記インキを吐出する複数本のノズルを用いて同時に行う、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−175910(P2011−175910A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39996(P2010−39996)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】