説明

発光装置及び電子機器

【課題】狭額縁でも高い封止性能を得られ、小型で長寿命化した発光装置が提供する。
【解決手段】発光装置10は、少なくとも発光層を含む発光素子14と、発光素子14を駆動するためのスイッチング素子18と、少なくとも発光素子14とスイッチング素子18とを接続する積層された配線20と、発光素子14とスイッチング素子18と積層された配線20とを配設する基板12と、基板12上に複数の封止部材を介し配設され、発光素子14を覆う封止基板16と、を含み、複数の封止部材は、第1及び第2の封止部材26,28を含み、第1の封止部材26は、発光素子14の外周を取り囲み、発光素子14、スイッチング素子18、及び積層された配線20が配設される各配設面の少なくとも一部の配設面とオーバーラップするように配設され、第2の封止部材28は、第1の封止部材26の外周を取り囲んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上に有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)等の発光素子を備えた発光装置が、表示装置や電子写真方式の画像形成装置の露光装置等として広く利用されている。
【0003】
かかる発光装置には長期間の発光に耐える耐久性が求められるが、有機EL素子の発光特性を劣化させる原因の一つとして、ダークスポットの発生が上げられる。ダークスポットは、有機EL素子の構成部品の表面に付着している水分や有機EL素子内に侵入した水分(湿気)や酸素等の雰囲気ガスが、透明電極と発光層(有機層)と背面電極とを順次積層して形成される積層体内に背面電極表面の欠陥等から侵入し、有機層と背面電極との間に乖離を生じさせることで発生する。
【0004】
このような発光装置では、有機EL素子の信頼性向上や長寿命化を図るため、有機EL素子を構成する発光層や各電極を雰囲気ガスから確実に遮断することが重要とされている。この目的から、有機EL素子部を形成した基板(透明基板)と封止部材とを接着剤を介して一体化することにより、これらの間に封止した有機EL素子を雰囲気ガス等から保護する技術が知られている。水分の侵入をできるだけ抑え、発光素子の劣化を防ぐ(封止性能)には、接着剤の幅(シールエリア)が広い方が有利であり、封止性能は接着剤の幅に比例して高くなることが知られている。
【0005】
例えば、特許文献1に開示されるような、ガラス材料からなる透光性の基板上に、陽極となるITO等の透明電極と、有機化合物からなる少なくとも発光層を有する有機層と、陰極となるアルミニウム(Al)等の非透光性の背面電極とを順次積層して積層体を形成し、この積層体を覆うガラス材料からなる凹部形状の封止部材を基板上に接着剤を介して気密的に配設し、封止部材の積層体と対向する面に、化学的に水分を吸着すると共に吸着しても固体状態を維持する化合物により形成される吸湿剤を配設する発光装置が知られている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−8855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、図15に示すように、近年、携帯電話の表示パネルに代表されるように、額縁領域300(発光素子303の配設面の領域である表示領域302の外周の領域)ができるだけ狭いことが要求されている。しかし、狭額縁化するためには封止部材304を配設するシール領域306を狭くする必要があり、シール領域306を狭くすると封止性能を損なうことになり、狭額縁化と封止性能確保の両立が難しい。又、封止部材304には、封止基板308と基板310の間隙312を一定に保つため、ギャップ材(シリカ、プラスチック等)314が入っている。更に、防湿性を高めるため、或いは封止部材304の弾性率を制御することで作業性を高めるために、フィラー(シリカ等)316が入っている。これにより、封止基板308と基板310を張り合わせるとき圧力を加えるが、配線320が複数積層される多層配線領域322に封止部材304が被った場合には、ギャップ材314やフィラー316により配線320間で、リークやショートが発生する場合がある。又、スイッチング素子324が配設されるスイッチング素子領域326に封止部材304が被った場合には、スイッチング素子324が機能しなくなったり、特性が悪くなったりする場合がある。そのため、シール領域306は表示領域302、多層配線領域322、及びスイッチング素子領域326と重ねず、別々に配置する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]少なくとも発光層を含む発光素子と、前記発光素子を駆動するためのスイッチング素子と、少なくとも前記発光素子と前記スイッチング素子とを接続する積層された配線と、前記発光素子と前記スイッチング素子と前記積層された配線とを配設する基板と、前記基板上に複数の封止部材を介し配設され、前記発光素子を覆う封止基板と、を含み、前記複数の封止部材は、第1及び第2の封止部材を含み、前記第1の封止部材は、前記発光素子の外周を取り囲み、前記発光素子、前記スイッチング素子、及び前記積層された配線が配設される各配設面の少なくとも一部の配設面とオーバーラップするように配設され、前記第2の封止部材は、前記第1の封止部材の外周を取り囲んでいることを特徴とする発光装置。
【0010】
これによれば、第1の封止部材を発光素子、スイッチング素子、及び積層された配線が配設される各配設面の少なくとも一部の配設面とオーバーラップするように配設することができ、従来と比べると接着剤幅を同じにした場合には、額縁幅を小さくすることができるので、小型化が可能な発光装置が提供できる。又、従来と額縁幅を同じにした場合には、シール幅を大きくすることができるので、封止性能向上により素子の劣化防止が可能となり長寿命化した発光装置が提供できる。更に、狭額縁でも高い封止性能を得られ、小型で長寿命化した発光装置が提供できる。
【0011】
[適用例2]上記発光装置であって、前記第2の封止部材は、粒状物を含み、前記第1の封止部材は、粒状物を含まないことを特徴とする発光装置。
【0012】
これによれば、第1の封止部材による発光素子、スイッチング素子、及び積層された配線の破損を効果的に防止することが容易になる。又、第2の封止部材により基板と封止基板とのギャップを効果的に設定することが容易になる。
【0013】
[適用例3]上記発光装置であって、前記第1の封止部材は、第1の粒状物を含み、前記第2の封止部材は、第2の粒状物を含み、前記第1の粒状物の体積は、前記第2の粒状物の体積より小さいことを特徴とする発光装置。
【0014】
これによれば、第1の封止部材による発光素子、スイッチング素子、及び積層された配線の破損を効果的に防止することが容易になる。又、第2の封止部材により基板と封止基板とのギャップを効果的に設定することが容易になる。
【0015】
[適用例4]上記のいずれかに記載の発光装置と、前記発光装置を制御するための制御部と、を含むことを特徴とする電子機器。
【0016】
これによれば、上記のいずれかに記載の発光装置を用いることにより、小型で長寿命化した電子機器が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本実施形態について図面を参照して以下に説明する。尚、説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0018】
(第1の実施形態)
(有機EL装置)
図1(A)は、第1の実施形態に係る発光装置としての有機EL装置(有機エレクトロルミネッセンス装置)10の平面構成図であり、図1(B)は、図1(A)のI−I線に沿う断面構成図である。
本実施形態に係る有機EL装置10は、図1(A)及び図1(B)に示すように、基板12と、基板12上に設けられた発光素子14と、発光素子14を挟持して基板12と対向する封止基板16と、を主体としてなる。基板12上には、発光素子14の他に、発光素子14を駆動するためのスイッチング素子(薄膜トランジスタ)18と、少なくとも発光素子14とスイッチング素子18とを接続する積層された配線20と、発光素子14とスイッチング素子18と積層された配線20とを覆っている層間絶縁層22と、が設けられている。基板12と封止基板16との間には、上記の他に、発光素子14と対向して設けられた吸着剤24と、発光素子14を取り囲んで設けられた第1の封止部材26と、第1の封止部材26を取り囲んで設けられた第2の封止部材28と、が設けられている。尚、図1(A)では図面を見易くするために封止基板16の図示を省略している。
【0019】
本実施形態の有機EL装置10は、発光素子14からの発光を基板12側から装置外部に取り出す形態(ボトムエミッション型)、封止基板16側から取り出す形態(トップエミッション型)のいずれも採用することができる。ボトムエミッション型とする場合には、基板12は、光を透過可能な透明或いは半透明材料、例えば、透明なガラス、石英、サファイア、或いはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン等の透明な合成樹脂等を用いて形成される。トップエミッション型の場合には、層間絶縁層22、吸着剤24、及び封止基板16について透明ないし透光性の材質が用いられる。
【0020】
図2は、第1の実施形態に係る発光装置としての有機EL装置(有機エレクトロルミネッセンス装置)10の一部拡大した断面構成図である。図2に示すように、有機EL装置10は、表示領域30、額縁領域32、多層配線領域34、スイッチング素子領域36、及びシール領域38を有している。
【0021】
表示領域30は、基板12上に配設された発光素子14の配設面の領域である。額縁領域32は、基板12上の表示領域30の外周の領域である。多層配線領域34は、基板12上に配設積層された配線20の配設面の領域である。スイッチング素子領域36は、基板12上に配設されたスイッチング素子18の配設面の領域である。シール領域38は、基板12上に配設された第1及び第2の封止部材26,28の配設面の領域である。
【0022】
シール領域38に配設される第1の封止部材26は、発光素子14の外周を取り囲むように配設されている。又、第1の封止部材26は、発光素子14、スイッチング素子18、及び積層された配線20が配設される各配設面の少なくとも一部の配設面とオーバーラップするように配設されている。言い換えると、シール領域38は、表示領域30、多層配線領域34、及びスイッチング素子領域36の少なくとも一部とオーバーラップするように配設されている。又、第2の封止部材28は、第1の封止部材26の外周を取り囲むように配設されている。
【0023】
図1に戻り、封止基板16は、基板12上に複数の封止部材を介し配設され、発光素子14を覆っている。封止基板16は、第1の封止部材26と、第1の封止部材26の外周を取り囲むように設けられた第2の封止部材28と、を介して基板12に接着され発光素子14を封止している。封止基板16としては、発光素子14を良好に保護できる機能を有していればよく、例えばガラスや石英、合成樹脂、或いは金属等水分透過率の小さい材料を用いることができる。ガラスとしては、例えばソーダ石灰ガラス、鉛アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、シリカガラス等を用いることができる。合成樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン等の透明な合成樹脂等を用いることができる。金属としては、アルミニウムやステンレス等を用いることができる。封止基板16としてガラス基板を用い、発光素子14を覆うことにより、発光素子14への水分(湿気)や酸素等の浸入を良好に防止することができる。
【0024】
発光素子14は、基板12上に電気光学的物質としての有機発光層を含む有機機能層を第1の電極と第2の電極としての2枚の電極膜により挟持した有機EL素子であり、例えば図3に示すように、陽極40と、正孔輸送層42と、発光層44と、陰極46と、を積層した構造を備えている。発光素子14は、有機EL装置10の用途に応じて種々の態様に構成され、例えば、照明用途であれば発光素子14は平面形状に形成される。又、電子機器の表示手段としての用途であれば複数の発光素子14が平面視略マトリクス状に配列される。更に、プリンタの露光手段としての用途であれば、複数の発光素子14が一列又は複数列に配列された形態となる。
【0025】
図1に戻り、層間絶縁層22は、無機絶縁材料の薄膜であり、発光素子14に対して水分等が浸入するのを抑制する機能を有する。層間絶縁層22を形成するための形成材料としては、酸窒化珪素(SiON)、二酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(SiN)等を挙げることができる。
【0026】
吸着剤24は、封止基板16に設けられている。平面視略矩形状に形成された層間絶縁層22と対向して平面視略矩形状に吸着剤24が設けられている。尚、本実施形態では、吸着剤24は平面視略矩形形状に形成しているが、例えば、発光素子14や層間絶縁層22等の形状に応じた枠に形成してもよいし、発光素子14を囲んだ任意の枠に形成してもよい。本実施形態の場合、図1(B)に示すように、吸着剤24はその対向する層間絶縁層22と間隙48が設けられ、更に当該吸着剤24を挟持する基板12及び封止基板16の封止基板16に当接して配置されている。すなわち、吸着剤24は所定の平面形状と断面形状とを保持し得るものであることが好ましく、例えば、水分(湿気)や酸素等の吸着作用を奏する吸着材料(脱水材及び脱酸素剤)を、樹脂やワックス、油脂等のバインダ中に分散させたものを用いることで、吸着剤に良好な成形性を付与することができる。
【0027】
上記吸着材料としては、バインダを構成する有機化合物と反応しにくいものが用いられ、例えば水素化カルシウム、水素化ストロンチウム、水素化バリウム、水素化アルミニウムリチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム等を挙げることができる。
【0028】
バインダとしては、樹脂、ワックス、油脂等を用いることができ、具体例を挙げるならば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の樹脂材料、パラフィンワックス、マイクロリスタリンワックス等の石油系ワックス、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪族アミン等を挙げることができる。
【0029】
尚、吸着剤24についてバインダと吸着材料との混合材料を用いない場合には、基板12と封止基板16との間の間隙48を含む封止空間において所望の吸着機能を有していれば、吸着材料に上記のような限定は無く種々のものを用いることが可能である。例えば、シリカゲル、ゼオライト、活性炭、酸化カルシウム、酸化ゲルマニウム、五酸化リン、塩化カルシウム等を単独又は複数で用いることができる。又、このような間隙48が設けられていれば、第1の封止部材26を通過して水分(湿気)や酸素等が間隙48に侵入した場合にも、間隙48に水分(湿気)や酸素等が拡散し、吸着剤24への負荷をその周面で均一化することができる。従って係る構成によれば、良好な吸着効果を長期間に渡り得ることができ、有機EL装置の信頼性、耐久性を向上させることができる。
【0030】
第1の封止部材26は、封止基板16に設けられている。第1の封止部材26は、発光素子14の外周を取り囲む平面視矩形枠状に形成され、基板12と封止基板16との間に挟持されている。本実施形態の場合、第1の封止部材26は、基板12と封止基板16とを接着する接着剤としても機能する。第1の封止部材26を形成するための材料としては、安定した接着強度を維持することができ、気密性が良好なものであれば特に限定されず用いることができる。例えば、紫外光(UV)の照射により硬化する光硬化性エポキシ樹脂が用いられ、エポキシ、ビニルエーテル等のカチオン系材料の他にも、エステルアクリレート、ウレタンアクリレート等のアクリレート、ウレタンポリエステル等のラジカル系材料を用いることができる。
【0031】
第1の封止部材26は、弾性率の小さい材料を用いて形成することが好ましく、後述する第2の封止部材28より弾性率の小さい材料を用いて形成することが好ましい。第2の封止部材28より小さい弾性率としておくことで、封止基板16が第2の封止部材28により支持される構造とすることができるので、形成が容易になる。
【0032】
又、第1の封止部材26は、その内部に基板12と封止基板16とを所定間隔に離間する粒状物(スペーサ等のギャップ材)50が混入されていない構成である。このような構成とすることで、封止基板16を被着する際の押圧力により発光素子14、スイッチング素子18及び積層された配線20が破損するのを防止することができる。尚、第1の封止部材26は、その内部に防湿性を高めるため、或いは第1の封止部材26の弾性率を制御することで作業性を高めるために、フィラー(シリカ等)52が混入された構成としてもよい。
【0033】
第2の封止部材28は、封止基板16に設けられている。第2の封止部材28は、第1の封止部材26の外周を取り囲む平面視矩形枠状に形成され、基板12と封止基板16との間に挟持されている。本実施形態の場合、第2の封止部材28は、基板12と封止基板16とを接着する接着剤としても機能する。第2の封止部材28の形成材料としては、第1の封止部材26と同様に安定した接着強度を維持することができ、気密性が良好なものであれば特に限定されないが、例えば熱硬化性樹脂材料を用いることができる。第2の封止部材28を形成する材料としては、紫外光(UV)の照射により硬化する光硬化性エポキシ樹脂等を用いることもできる。
【0034】
第2の封止部材28は、第1の封止部材26に比して水分(湿気)や酸素等の透過率の低い材料を用いて形成することが好ましい。このように装置の最外周部で水分(湿気)や酸素等の透過率の低い材料で遮断する構成とすることで、内側に配された吸着剤24への水分(湿気)や酸素等の到達量を低減することができ、発光素子14に達する水分量を低減すると共に、水分(湿気)や酸素等が発光素子14に達するまでの時間を延ばすことができ、発光素子14の長寿命化を実現することができる。
【0035】
又、第2の封止部材28は、第1の封止部材26と異なりその内部に基板12と封止基板16とを所定間隔に離間する粒状物50が混入された構成である。このような構成とすることで、封止基板16を被着する際の押圧力により発光素子14が破損するのを防止することができる。尚、第2の封止部材28は、第1の封止部材26と同様にその内部にフィラー52が混入された構成としてもよい。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の有機EL装置10は、第1及び第2の封止部材26,28の二重封止構造によって、発光素子14に対する良好な封止性能を実現することができる。これにより、第1の封止部材26を発光素子14、スイッチング素子18、及び積層された配線20が配設される各配設面の少なくとも一部の配設面とオーバーラップするように配設することができ、従来と比べると接着剤幅を同じにした場合には、額縁幅を小さくすることができるので、小型化が可能な有機EL装置が提供できる。又、従来と額縁幅を同じにした場合には、シール幅を大きくすることができるので、封止性能向上により素子の劣化防止が可能となり長寿命化した有機EL装置が提供できる。更に、狭額縁でも高い封止性能を得られ、小型で長寿命化した有機EL装置が提供できる。
【0037】
(有機EL装置の製造方法)
次に、上述した構成を有する有機EL装置10を製造する方法について、図3〜図6に示す模式図を参照しながら説明する。図4〜図6において、(A)図は各工程における平面工程図、(B)図は(A)図の各断面線に沿う位置に対応する断面工程図である。尚、図6(A)では図面を見易くするために封止基板16の図示を省略している。
【0038】
先ず、図3に示すように、基板12上に発光素子14を形成する。図3には示していないが、発光素子14が形成される基板12上には、既に発光素子14を駆動制御するスイッチング素子18(図4(B)参照)等が形成されているものとする。
発光素子14は、基板12上の所定領域に、陽極40と、正孔輸送層42と、発光層44と、陰極46と、を順次積層することで形成できる。このような積層構造を具備した発光素子14は、スイッチング素子18から駆動信号を供給されると、陽極40と陰極46との間に電流が流れて発光層44が発光し、ボトムエミッション型の場合には、透明な基板12の外面側に光が射出される。
【0039】
図3に示す積層構造において、陽極40は図示しないスイッチング素子18に接続され、スイッチング素子18から印加された電圧によって正孔を正孔輸送層42に注入するものであり、その形成材料には、例えば、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等の透明導電材料、或いはアルミニウムや銀等の金属材料を用いることができる。
【0040】
正孔輸送層42は、陽極40の正孔を発光層44に輸送・注入するためのものであり、公知の材料を用いることができる。例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等を用いることができる。更に具体的には、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)等を用いることができる。
【0041】
発光層44は、正孔輸送層42から注入される正孔と、陰極46から注入される電子との再結合により発光する層である。発光層44を形成する材料としては、蛍光或いは燐光を発光することが可能な公知の発光材料を用いることができる。例えば、ポリフルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)等のポリシラン系等を用いることができる。
【0042】
又、発光層44と陰極46との間に電子輸送層を設けてもよい。電子輸送層を設けることで陰極46から発光層44への電子の注入効率を向上させることができる。電子輸送層の形成材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体等を用いることができる。
【0043】
陰極46は、発光層44へ効率的に電子注入を行うことができる仕事関数の低い金属、例えば、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、金(Au)、銀(Ag)、又はカルシウム(Ca)等の金属材料から形成され、かかる金属膜にITO等の透明導電膜を積層した構造であってもよい。
【0044】
発光素子14を構成する上記各層を設けるに際しては、例えば、フォトリソグラフィ法や液滴吐出法等、公知のパターニング手法を用いることができ、これにより基板12上の所定領域に各層を積層してなる構造の発光素子14を設けることができる。
金属材料や透明導電材料からなる陽極40、陰極46の形成には、スパッタ法や真空蒸着法と、フォトリソグラフィ法と、を好適に用いることができ、又、高分子材料からなる正孔輸送層42及び発光層44の形成には、液滴吐出法を好適に用いることができる。
【0045】
液滴吐出法とは、形成しようとする機能層の形成材料を液状体にし、その液状体をディスペンサやインクジェット装置等の液滴吐出装置を用いて定量的に吐出することによって、所望領域に前記形成材料を塗布する方法である。具体的には、液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)に設けられたノズルと基板12とを対向させた状態でノズルと基板12とを相対移動させつつ、ノズルから1滴あたりの液量が制御された液状体の液滴を吐出することによって、基板12上に液状体による所望形状の膜パターンを形成する技術である。
【0046】
正孔輸送層42や発光層44を液滴吐出法を用いて成膜することにより、製造コストを低減することができる。すなわち、液滴吐出法では、基板12上の所望の局所領域に材料を配置することが可能であるから、フォトリソグラフィ法等に比べて膜形成のプロセスが簡素であると共に使用材料に無駄が少ない。
【0047】
発光素子14を基板12上に形成したならば、次に、図4に示すように、所定の手法によって、発光素子14、スイッチング素子18及び積層された配線20に層間絶縁層22を被覆する。本実施形態においては、層間絶縁層22は、イオンプレーティング法、或いはスパッタ法等の成膜法を用いて発光素子14の表面に被覆される。これにより、発光素子14を覆うように、発光素子14の表面に層間絶縁層22が接続される。発光素子14の表面に所定の厚さを有する層間絶縁層22が被覆されることにより、有機EL装置10の製造工程中においても、発光素子14と水分等との接触を防止でき、発光素子14は良好に封止される。
【0048】
次に、図5に示すように、発光素子14が配設された側の基板面周縁に沿って平面視矩形枠状の第1及び第2の封止部材26,28を形成する。例えば、ディスペンサやインクジェット装置を用いて、エポキシ樹脂等の樹脂材料を図示の平面形状に塗布する。このとき、第2の封止部材28の前記樹脂材料には、基板12と封止基板16との間隔を調整するためのスペーサ(粒状物50)を混入されたものを用いる。スペーサとしてはガラスビーズ、樹脂ビーズ等を用いることができる。又、第1の封止部材26の前記樹脂材料には、基板12と封止基板16との間隔を調整するためのスペーサ(粒状物50)を混入されたものを用いない。尚、各製造工程は、発光素子14の劣化を防ぐために窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0049】
基板12上に配置した前記樹脂材料は、後段の工程で封止基板16を配置したとき、封止基板16に密着して封止性を得られるものであることが好ましい。そのため、以降の工程では封止基板16に対し接着可能な状態に保持されるが、基板12上に配置した後、接着性を損なわない程度の硬化(仮硬化)を行ってもよい。仮硬化を行うことで第1及び第2の封止部材26,28を構成する樹脂材料の粘度を高め、基板12上にて形状を良好に保持することができるので、第1及び第2の封止部材26,28の形状不良による歩留まり低下を防止でき、又後続の工程における基板のハンドリング性も向上させることができる。
【0050】
次に、図6に示すように、第1の封止部材26の内側の封止基板16上に、層間絶縁層22と対向する平面視略矩形状に乾燥剤形成材料を配置して、吸着剤24を形成する。乾燥剤形成材料としては、先の記載のように、吸着材料とバインダとを混合してなるものを用いることが好ましい。このような乾燥剤形成材料を、ディスペンサやインクジェット装置を用いて塗布することで、図6に示すような平面形状の吸着剤24を容易に形成することができる。
【0051】
上記乾燥剤形成材料は、封止基板16上に配置する際の粘度を20Pa・s以上とすることが好ましい。このような比較的高粘度の材料を配置することで、封止基板16上に配置した後の乾燥剤形成材料の形状を良好に保持することができる。又、乾燥剤形成材料は、後段の工程で吸着剤24に囲まれる領域に配置される、第1の封止部材26を形成するための樹脂材料より大きい粘度を有するものであることが好ましい。
【0052】
又、乾燥剤形成材料を封止基板16上に塗布した後、先の第1及び第2の封止部材26,28を形成する工程と同様に乾燥剤形成材料の仮硬化を行ってもよい。仮硬化を行うことで、乾燥剤形成材料が経時的に封止基板16上で過度に濡れ広がることを防止することができ、有機EL装置の歩留まり向上、基板のハンドリング性の向上に寄与する。
【0053】
本実施形態において、吸着剤24は、層間絶縁層22との間に間隙48(図1(B)参照)を有する位置に配置されるようになっている。このような間隙48を形成しておくことで、封止基板16を基板12上に被着した際の緩衝領域として間隙48を利用することができ、又封止基板16の被着後にも間隙48が保持されるようにしておけば、第1の封止部材26を通過して装置内部に侵入した水分や酸素等を保持する領域としても機能させることができ、層間絶縁層22より内側への水分等の侵入を緩和することができる。
【0054】
そして、封止基板16上に吸着剤24が形成された後、基板12上に封止基板16が被着される(図1参照)。本実施形態の有機EL装置10の製造工程では、この封止基板16を配置する工程は、封止基板16と第1の封止部材26との間に気泡等が混入するのを防止するため、減圧環境下で実施され、封止基板16を被着した後に大気圧下に戻すことで、大気圧により封止基板16を発光素子14側へ押しつけるようになっている。その後、第1の封止部材26を形成するための樹脂材料として熱硬化性樹脂材料が用いられている場合には、所定の熱が基板12上の樹脂材料に付与される。
以上の工程により、樹脂材料を硬化させて第1及び第2の封止部材26,28を形成し、第1及び第2の封止部材26,28を介して封止基板16が接着された有機EL装置10を製造することができる。
【0055】
本実施形態では、上記樹脂材料を基板12上に配置した際、基板12上に既設の吸着剤24が、基板12上で樹脂材料が広がる領域を規定するようになっており、樹脂材料が必要以上に広がることで第1の封止部材26の層厚が設計値よりも薄くなってしまうのを防止することができ、又封止基板16と第1の封止部材26との間に空隙が生じるのを防止することができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の製造方法によれば、発光素子14上に層間絶縁層22を設けた後に樹脂材料や乾燥剤形成材料の配置を行うようになっているので、封止工程中に樹脂材料や乾燥剤形成材料に含まれる溶剤等が発光素子14と接触して発光素子14を劣化させるのを防止でき、高歩留まりで有機EL装置10を製造することができる。
【0057】
(第2の実施形態)
続いて、第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1及び第2の封止部材に混入するそれぞれの粒状物の大きさが上記の実施形態と異なり、その他の点は上記の実施形態と同様である。
【0058】
図7は、本実施形態に係る発光装置としての有機EL装置(有機エレクトロルミネッセンス装置)54の一部拡大した断面構成図である。本実施形態に係る有機EL装置54は、図7に示すように、第1の封止部材26は、その内部に基板12と封止基板16とを所定間隔に離間する第1の粒状物(スペーサ等のギャップ材)56が混入された構成である。第2の封止部材28は、その内部に基板12と封止基板16とを所定間隔に離間する第2の粒状物(スペーサ等のギャップ材)58が混入された構成である。第1の粒状物56の体積は、第2の粒状物58の体積より小さいものが配設されている。このような構成とすることで、封止基板16を被着する際の押圧力によりスイッチング素子18、及び積層された配線20が破損するのを防止することができる。
【0059】
(実施例)
(有機EL表示装置)
次に、図8〜図11を参照して、有機EL装置の一実施例である有機EL表示装置100について説明する。
図8は、本実施例に係る有機EL表示装置100の回路構成図であり、図9は、同表示装置の平面構成図である。図10は、同表示装置の画素102の平面構造を示す図であって、(A)図は画素102のうち主にTFT(薄膜トランジスタ)等の画素駆動部分を示す図であり、(B)図は画素間を区画するバンク(隔壁部材)等を示す図である。図11は、図10のXI−XI線に沿う断面構成図である。
【0060】
図8に示す回路構成において、有機EL表示装置100は、複数の走査線104と、これら走査線104に対して交差する方向に延びる複数の信号線106と、これら信号線106に並列に延びる複数の共通給電線108と、がそれぞれ配線されたもので、走査線104及び信号線106の各交点に、画素102が設けられて構成されたものである。
【0061】
信号線106に対しては、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、及びアナログスイッチ等を備えるデータ側駆動回路110が設けられている。一方、走査線104に対しては、シフトレジスタ及びレベルシフタ等を備える走査側駆動回路112が設けられている。画素102の各々には、走査線104を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング素子(薄膜トランジスタ)18と、このスイッチング素子18を介して信号線106から供給される画像信号を保持する保持容量CAPと、保持容量CAPによって保持された画像信号がゲート電極に供給される駆動用TFT116と、この駆動用TFT116を介して共通給電線108に電気的に接続したときに共通給電線108から駆動電流が流れ込む画素電極118と、この画素電極118と共通電極120との間に挟み込まれる発光部122と、が設けられている。画素電極118と、共通電極120と、発光部122と、によって構成される素子が有機EL素子(発光素子)である。
【0062】
このような構成のもとに、走査線104が駆動されてスイッチング素子18がオンとなると、そのときの信号線106の電位が保持容量CAPに保持され、保持容量CAPの状態に応じて、駆動用TFT116のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT116のチャネルを介して共通給電線108から画素電極118に電流が流れ、更に発光部122を通じて共通電極120に電流が流れることにより、発光部122は、これを流れる電流量に応じて発光する。
【0063】
次に、図9の平面構成に示すように、有機EL表示装置100は、矩形状の基板12の略中央部に、複数の画素102が平面視マトリクス状に配列された表示領域30を備えており、表示領域30を覆って吸着剤24が形成されている。表示領域30及び吸着剤24を取り囲んで平面視矩形枠状の第1の封止部材26が設けられており、第1の封止部材26を取り囲んで平面視矩形枠状の第2の封止部材28が設けられている。そして、封止基板16が、表示領域30、吸着剤24、第1の封止部材26、及び第2の封止部材28を平面的に覆うように配置されている。
【0064】
すなわち、有機EL表示装置100は、先の実施形態の有機EL装置10と同様の基本構成を具備した表示装置であり、有機EL装置10の発光素子14に対応する有機EL素子を有する画素102を配列してなる表示領域30を、第1の封止部材26と第2の封止部材28とによって二重に封止する構成を具備したものとなっている。
【0065】
又、吸着剤24と表示領域30との間には、間隙48(図1(B)参照)が設けられており、先の実施形態と同様、第1の封止部材26を通過して内部に侵入した水分等を拡散させ、吸着剤24への負荷をその周面で均一化し、吸着剤24の局所的な劣化を抑え、信頼性を向上させることができるようになっている。
【0066】
次に、図10(A)に示す画素102の平面構造をみると、画素102は、平面視略矩形状の画素電極118の四辺が、信号線106、共通給電線108、走査線104、及び図示しない他の画素電極用の走査線によって囲まれた配置となっている。画素電極118の近傍にはスイッチング素子18と、駆動用TFT116とが設けられている。
【0067】
スイッチング素子18は、矩形の島状の半導体層138を主体としてなるトップゲート型の薄膜トランジスタであり、半導体層138と交差する走査線104が、当該交差部分でスイッチング素子18のゲート電極となっている。又、半導体層138には、図示上下方向に延在する信号線106から走査線104に沿う方向に延びた分岐配線106AがコンタクトホールC1を介して電気的に接続されている。更に、半導体層138には、画素電極118の図示右側に配された平面視矩形状の中継電極140が、コンタクトホールC2を介して電気的に接続されている。
【0068】
駆動用TFT116は、矩形の島状の半導体層142を主体としてなるトップゲート型の薄膜トランジスタであり、ゲート電極144Gと、ソース電極146(電源線108の一部)と、ドレイン電極148と、を備えている。ドレイン電極148は、図示しないコンタクトホール(図11参照)を介して画素電極118と電気的に接続されている。ゲート電極144Gは、半導体層142と重なる位置から図示下側へ延びて保持容量CAPの電極150と一体に形成されている。更に、電極150は、図示下側へ延びており、それと平面的に重なって配置された中継電極140とコンタクトホールC3を介して電気的に接続されている。従って、中継電極140を介して駆動用TFT116のゲートと、スイッチング素子18のドレインと、が電気的に接続されている。
【0069】
又、図11に示す画素102の断面構造をみると、基板12上に、駆動用TFT116が設けられており、駆動用TFT116を覆って形成された複数の絶縁膜を介した基板12上に、有機EL素子152が形成されている。有機EL素子152は、基板12上に立設されたバンク(無機バンク154及び有機バンク156)に囲まれる領域内に設けられた有機機能層(発光部)122を主体として構成され、この有機機能層122を、画素電極118と共通電極120との間に挟持した構成を備えている。ここで、図10(B)に示す平面構造をみると、有機バンク156は、画素電極118の形成領域に対応した平面視略矩形状の開口部158を有しており、この開口部158に先の有機機能層122が形成されるようになっている。
【0070】
図11に示すように、駆動用TFT116は、半導体層142に形成されたソース領域144A、ドレイン領域144B、及びチャネル領域144Cと、半導体層表面に形成されたゲート絶縁膜160を介してチャネル領域144Cに対向するゲート電極144Gと、を主体として構成されている。半導体層142及びゲート絶縁膜160を覆う第1の層間絶縁膜162が形成されており、この第1の層間絶縁膜162を貫通して半導体層142に達するコンタクトホール164,166内に、それぞれドレイン電極148、ソース電極146が埋設され、各々の電極はドレイン領域144B及びソース領域144Aに導電接続されている。第1の層間絶縁膜162上には、第2の層間絶縁膜168が形成されており、この第2の層間絶縁膜168に貫設されたコンタクトホールに画素電極118の一部が埋設されている。そして画素電極118とドレイン電極148とが導電接続されることで、駆動用TFT116と画素電極118(有機EL素子152)とが電気的に接続されている。
【0071】
第2の層間絶縁膜168上には、無機絶縁材料からなる無機バンク(第1の隔壁層)154が形成されており、無機バンク154は、画素電極118の周縁部に一部乗り上げるように配置されている。無機バンク154上には、有機材料からなる有機バンク(第2の隔壁層)156が積層され、この有機EL装置における隔壁部材を成している。
【0072】
有機EL素子152は、画素電極118上に、正孔輸送層122Aと発光層122Bとを積層し、この発光層122Bと有機バンク156とを覆う共通電極120を形成することにより構成されている。すなわち、本実施例に係る有機EL素子152が、先の実施形態に係る発光素子14に対応するものであり、画素電極118、正孔輸送層122A、発光層122B、及び共通電極120は、それぞれ発光素子14の陽極40、正孔輸送層42、発光層44、及び陰極46に相当する構成要素である。
正孔輸送層122Aは、画素電極118の表面を覆って形成されており、その周縁部は、有機バンク156の下端側から画素電極118中央側に延出された無機バンク154の端縁部を覆っている。
【0073】
共通電極120上には、先の実施形態の層間絶縁層22に対応する層間絶縁層170が形成され、かかる層間絶縁層170を覆って吸着剤24が形成されている。
【0074】
以上の構成を具備した有機EL表示装置100は、先の実施形態に係る有機EL装置10と同様に、吸着剤24と、第1及び第2の封止部材26,28と、を設けた構成とされている。これにより、第1の封止部材26と第2の封止部材28との二重封止構造によって有機EL素子152に対する良好な封止性能を実現で、狭額縁でも高い封止性能を得られ、小型で長寿命化した有機EL表示装置が提供できる。
【0075】
(光書き込みヘッド)
次に、他の実施例として、有機EL装置を用いた光書き込みヘッドについて図12及び図13を参照して説明する。
図12は、本実施例に係る光書き込みヘッド用途に好適な構成を具備した有機EL装置の平面構成図である。
【0076】
図12に示すように、有機EL装置172を構成する基板12上には、図示しない有機EL素子が配列形成された発光素子領域174が基板12の長さ方向に沿って長手に設けられており、発光素子領域174に沿って複数の駆動素子176が配列されている。詳細は省略しているが、発光素子領域174に設けられた各有機EL素子は、各駆動素子176から延びる接続配線178と電気的に接続され、駆動素子176から供給される電気信号により駆動されるようになっている。
【0077】
本実施例の有機EL装置172も、先の実施形態の有機EL装置10と同様の封止構造を具備したものとなっている。すなわち、発光素子領域174に設けられた有機EL素子の表面には図示しない保護層が形成され、発光素子領域174を覆って吸着剤24が形成されており、吸着剤24を取り囲む第1の封止部材26と、第1の封止部材26を取り囲む第2の封止部材28と、が形成されている。そして、吸着剤24、第1の封止部材26、及び第2の封止部材28を覆うようにして封止基板16が被着されている。
【0078】
上記構成を具備した有機EL装置172は、先の実施形態に係る有機EL装置10と同様に、吸着剤24と、第1及び第2の封止部材26,28と、を設けた構成とされている。これにより、第1の封止部材26と第2の封止部材28との二重封止構造によって発光素子領域174に対する良好な封止性能を実現で、狭額縁でも高い封止性能を得られ、小型で長寿命化した光書き込みヘッドが提供できる。
【0079】
図13は、上述の有機EL装置172を、電子写真方式プリンタの光書き込みヘッド(プリンタヘッド)に適用した場合の一例を示す図である。図13において、有機EL装置172の光射出方向(図示上方)には光学系190が設けられており、光学系190の上方には感光ドラム(感光体)192が設けられている。有機EL装置172は、光学系190に対して光を射出し、光学系190に入射した光は光学系190により集光されて感光ドラム192に入射する。本例では、発光素子14に対する良好な封止性能を実現することが可能であり、電子写真方式プリンタ全体の信頼性を向上することができる。
【0080】
(電子機器)
次に、上記実施例の有機EL表示装置100を備えた電子機器の例について説明する。
図14は、本実施例に係る携帯電話の一例を示した斜視図である。図14に示す携帯電話200は、上記実施例の有機EL表示装置100を用いた表示部202と、表示部202を制御するための制御部204と、操作ボタン部206と、受話部208と、送話部210と、を備えて構成されている。図14に示す電子機器は、上記実施例の有機EL表示装置100を備えているので、第1の封止部材26と第2の封止部材28との二重封止構造によって有機EL素子に対する良好な封止性能が図られ、狭額縁でも高い封止性能を得られ、小型で長寿命化した電子機器が提供できる。尚、本実施例に係る発光装置が適用される電子機器は携帯電話に限定されない。例えば、各種の電子機器における表示デバイスとして各実施例に係る発光装置を利用してもよい。このような電子機器としては、パーソナルコンピュータ、携帯型情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】第1の実施形態に係る有機EL装置の平面構成図及び断面構成図。
【図2】第1の実施形態に係る有機EL装置の一部拡大した断面構成図。
【図3】第1の実施形態に係る有機EL装置の製造工程を説明するための断面工程図。
【図4】第1の実施形態に係る有機EL装置の製造工程を説明するための平面工程図及び断面工程図。
【図5】第1の実施形態に係る有機EL装置の製造工程を説明するための平面工程図及び断面工程図。
【図6】第1の実施形態に係る有機EL装置の製造工程を説明するための平面工程図及び断面工程図。
【図7】第2の実施形態に係る有機EL装置の一部拡大した断面構成図。
【図8】本実施例に係る有機EL表示装置の回路構成図。
【図9】本実施例に係る有機EL表示装置の平面構成図。
【図10】本実施例に係る有機EL表示装置の1画素領域を示す平面構成図。
【図11】本実施例に係る有機EL表示装置の1画素領域の断面構成図。
【図12】本実施例に係る光書き込みヘッド用有機EL装置の平面構成図。
【図13】本実施例に係る光書き込みヘッドの概略構成図。
【図14】本実施例に係る電子機器の一例を示す斜視構成図。
【図15】従来の有機EL装置の一部拡大した断面構成図。
【符号の説明】
【0082】
10…有機EL装置(発光装置) 12…基板 14…発光素子(積層体) 16…封止基板 18…スイッチング素子(薄膜トランジスタ) 20…配線 22…層間絶縁層 24…吸着剤 26…第1の封止部材 28…第2の封止部材 30…表示領域 32…額縁領域 34…多層配線領域 36…スイッチング素子領域 38…シール領域 40…陽極 42…正孔輸送層 44…発光層 46…陰極 48…間隙 50…粒状物 52…フィラー 54…有機EL装置(発光装置) 56…第1の粒状物 58…第2の粒状物 100…有機EL表示装置 102…画素 104…走査線 106…信号線 108…共通給電線(電源線) 110…データ側駆動回路 112…走査側駆動回路 116…駆動用TFT 118…画素電極 120…共通電極 122…発光部(有機機能層) 122A…正孔輸送層 122B…発光層 138…半導体層 140…中継電極 142…半導体層 144A…ソース領域 144B…ドレイン領域 144C…チャネル領域 144G…ゲート電極 146…ソース電極 148…ドレイン電極 150…電極 152…有機EL素子 154…無機バンク(第1の隔壁層) 156…有機バンク(第2の隔壁層) 158…開口部 160…ゲート絶縁膜 162…第1の層間絶縁膜 164,166…コンタクトホール 168…第2の層間絶縁膜 170…層間絶縁層 172…有機EL装置 174…発光素子領域 176…駆動素子 178…接続配線 190…光学系 192…感光ドラム(感光体) 200…携帯電話 202…表示部 204…制御部 206…操作ボタン部 208…受話部 210…送話部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも発光層を含む発光素子と、
前記発光素子を駆動するためのスイッチング素子と、
少なくとも前記発光素子と前記スイッチング素子とを接続する積層された配線と、
前記発光素子と前記スイッチング素子と前記積層された配線とを配設する基板と、
前記基板上に複数の封止部材を介し配設され、前記発光素子を覆う封止基板と、
を含み、
前記複数の封止部材は、第1及び第2の封止部材を含み、
前記第1の封止部材は、前記発光素子の外周を取り囲み、前記発光素子、前記スイッチング素子、及び前記積層された配線が配設される各配設面の少なくとも一部の配設面とオーバーラップするように配設され、
前記第2の封止部材は、前記第1の封止部材の外周を取り囲んでいることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
前記第2の封止部材は、粒状物を含み、
前記第1の封止部材は、粒状物を含まないことを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1に記載の発光装置において、
前記第1の封止部材は、第1の粒状物を含み、
前記第2の封止部材は、第2の粒状物を含み、
前記第1の粒状物の体積は、前記第2の粒状物の体積より小さいことを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光装置と、
前記発光装置を制御するための制御部と、
を含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−123640(P2009−123640A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298923(P2007−298923)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】