説明

発光装置

【課題】発光部を含み、透過画像の視認性に優れた発光装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る発光装置WMは、第1及び第2領域とそれらの間に介在した第3領域とを含んだ光透過層1と、前記第2領域と又は前記第2及び第3領域と重なり合った発光部2とを具備する。前記発光装置WMのうち前記第1領域に対応した第1部分A1は、可視域内の或る波長の光を第1透過率で透過させる。前記発光装置WMのうち前記第2領域に対応した第2部分A2は、前記発光部2による発光を生じ且つ前記波長の光を前記第1透過率よりも低い第2透過率で透過させる。前記発光装置WMのうち前記第3領域に対応した第3部分A3は、前記波長の光に対する透過率が前記第1乃至第2透過率の範囲内で前記第1部分側の端から前記第2部分側の端へ向けて減少する透過率分布を有するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置又は照明装置として、有機エレクトロルミネッセンス(以下、ELという)装置が注目されている。
【0003】
有機EL装置を表示装置に適用した場合、表示素子として発光素子を使用することができる。それ故、そのような表示装置には、液晶表示装置と比較して視野角が広い、薄型且つ軽量である、低消費電力である、応答速度が速いなどの特徴がある。また、有機EL装置は、表示装置又は照明装置であるため、様々な場所に設置することができる。加えて、有機EL装置は、陰極及び陽極の双方に光透過性電極を使用すれば、それ自体を光透過性とすることができる。従って、有機EL装置について様々な応用が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−155090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、発光部を含み、透過画像の視認性に優れた発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る発光装置は、第1及び第2領域とそれらの間に介在した第3領域とを含んだ光透過層と、第2領域と又は第2及び第3領域と重なり合った発光部とを具備している。発光装置のうち第1領域に対応した第1部分は、可視域内の或る波長の光を第1透過率で透過させる。発光装置のうち第2領域に対応した第2部分は、発光部による発光を生じ且つ上記波長の光を第1透過率よりも低い第2透過率で透過させる。発光装置のうち第3領域に対応した第3部分は、上記波長の光に対する透過率が第1乃至第2透過率の範囲内で第1部分側の端から第2部分側の端へ向けて減少する透過率分布を有するように構成される。
【0007】
他の実施形態に係る発光装置は、第1領域とこれに囲まれた第2領域とを含み、第1領域の面積は第2領域の面積と比較してより大きい光透過層と、第2領域に接着された発光部とを具備している。光透過層は、互いに向き合った第1及び第2基板と、第1及び第2基板間に介在し、印加する電圧の大きさに応じて光学特性が変化する光学可変層と、第1及び第2基板間に介在した1つ以上の第1電極と、第1及び第2基板間に介在し、1つ以上の第1電極と共に光学可変層に電圧を印加する第2電極とを備えている。光透過層は、その少なくとも一部において、可視域内の或る波長の光に対する透過率が、1つ以上の第1電極の各々と第2電極との間に印加する電圧の大きさ及び/又は向きに応じて変化するように構成されている。発光部は、上記波長の光を透過させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態に係る発光装置を概略的に示す平面図。
【図2】図1の発光装置において使用可能な光透過層の一例を概略的に示す断面図。
【図3】図1の発光装置において使用可能な発光部の一例を概略的に示す断面図。
【図4】図1の発光装置の断面図。
【図5】図1の発光装置が表示する透過画像の一例を概略的に示す図。
【図6】比較例に係る発光装置が表示する透過画像の一例を概略的に示す図。
【図7】図1の発光装置において使用可能な光透過層の他の例を概略的に示す断面図。
【図8】図1の発光装置において使用可能な光透過層の更に他の例を概略的に示す断面図。
【図9】第2実施形態に係る発光装置を概略的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
第1実施形態に係る発光装置は、例えば、スマートウィンドウとして又はその一部として使用され得る。具体的には、第1実施形態に係る発光装置は、例えば、窓部材として使用されるか、又は、窓ガラスなどの窓部材に貼り付けられる。或いは、第1実施形態に係る発光装置は、窓部材と窓枠とを含み、壁の開口に直接に取り付けることが可能な構造体である。第1実施形態に係る発光装置について、図1乃至図4を参照しながら説明する。
【0011】
図1及び図4に示す発光装置WMは、光透過層1と、発光部2と、光学調整層3と、フレーム4と、図示しないコントローラとを含んでいる。
【0012】
光透過層1は、可視域内の或る波長の光、典型的には可視域内の全波長の光に対する透過率を電気的に制御することが可能な調光装置、ここでは、透明な状態と着色した状態との間で可逆的に変化し得るエレクトロクロミック調光装置である。なお、ここでは、光に関する用語のうち、「光透過性」、「透明」及び「透過率」などの波長を特定すべきものについては、断り書きがない限り、可視域内の特定の波長の光、例えば、人間の視感度が高い波長550nmの光について使用することとする。
【0013】
光透過層1は、図2に示すように、第1基板111と、第2基板121と、第1電極112と第2電極122と、電解質層130と、エレクトロクロミック層140とを含んでいる。
【0014】
基板111及び121は、互いに向き合うように配置されている。
基板111及び121は、光透過性基板、例えば透明基板である。基板111及び121は、典型的には、可視域内の全波長の光に対して光透過性を示す。例えば、基板111及び121は、可視域内の全波長の光に対して透明である。基板111及び121は、無色であってもよく、着色していてもよい。
【0015】
基板111及び121は、例えば、ガラス、石英及び樹脂などの絶縁体からなる。基板111及び121は、硬質であってもよく、フレキシブルであってもよい。また、基板111及び121の各々は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0016】
基板111及び121の対向面には、電極112及び122がそれぞれ設けられている。電極112及び122は、光透過性電極、例えば透明電極である。電極112及び122は、典型的には、可視域内の全波長の光に対して光透過性を示す。例えば、電極112及び122は、可視域内の全波長の光に対して透明である。電極112及び122は、無色であってもよく、着色していてもよい。
【0017】
電極112及び122は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、窒素若しくは硼素置換グラフェン又は無置換グラフェンからなる。置換又は無置換グラフェンからなる層は、フレキシブルであり、また、水分や酸素を透過させにくい。従って、例えば、基板111及び121として樹脂製の基板を使用した場合、電極112及び122の材料として、置換又は無置換グラフェンを使用することが好ましい。
【0018】
電解質層130は、電極112及び122間に介在している。電解質層130は、例えば、極性溶媒とこれに溶解した支持電解質とを含んだ組成物からなる。電解質層130の材料としては、固体電解質を使用してもよい。
【0019】
エレクトロクロミック層140は、電極122と電解質層130との間に介在している。エレクトロクロミック層140は、電解質層130と共に、印加する電圧の大きさに応じて光学特性が変化する光学可変層を構成している。エレクトロクロミック層140の材料としては、例えば、V25、Nb25、TiO2及びWO3等の還元発色型材料、又は、NiO、Cr23、MnO2及びCoO等の酸化発色型材料を用いることができる。
【0020】
この光透過層1は、電極112及び122間に印加する電圧の向きに応じて透過率が変化する。例えば、エレクトロクロミック層140の材料として還元発色型材料を使用した場合、光透過層1は、電極112及び122がそれぞれ負極及び正極となるように電圧を印加すると透明になる。そして、この場合、光透過層1は、電極112及び122がそれぞれ正極及び負極となるように電圧を印加すると濃く着色する。
【0021】
発光部2は、ここでは、1つ以上の光源を内蔵し、表示画像を変化させることが可能な平面表示装置、具体的には、アクティブマトリクス駆動方式を採用した有機EL表示装置である。発光部2は、フルカラー画像を表示し得るものであってもよく、モノクロ画像を表示するものであってもよい。また、発光部2は、照明装置であってもよい。
【0022】
発光部2は、図1及び図4に示すように、光透過層1の一部と重なり合っている。発光部2は、光透過層1に対して位置を固定されている。例えば、発光部2は、光透過層1の一方の主面に接着されている。
【0023】
なお、上記の第1領域は、光透過層1のうち、発光部2と重なり合っていない領域又はその一部である。第2領域は、光透過層1のうち、発光部2と重なり合った領域又はその一部である。そして、第3領域は、光透過層1のうち、第1及び第2領域間に位置した領域である。また、発光装置WMのうち第1乃至第3領域に対応した部分A1乃至A3は、それぞれ第1乃至第3部分である。
【0024】
発光部2は、図3及び図4に示すように、アレイ基板21と、封止基板22と、それらの間に介在したシール層23とを含んでいる。発光部2は、図4に示すように、アレイ基板21側の面が光透過層1と向き合うように設置されている。発光部2は、封止基板22側の面が光透過層1と向き合うように設置してもよい。
【0025】
アレイ基板21は、図3に示すように、第3基板211と、陽極212と、隔壁絶縁層213と、活性層214と、陰極215とを含んでいる。
【0026】
アレイ基板21は、絶縁基板211と、その一方の主面上に形成された回路とを含んでいる。
絶縁基板211は、光透過性基板、例えば透明基板である。絶縁基板は、典型的には、可視域内の全波長の光に対して光透過性を示す。例えば、絶縁基板は、可視域内の全波長の光に対して透明である。絶縁基板211は、無色であってもよく、着色していてもよい。絶縁基板211は、例えば、ガラス、石英及び樹脂などの絶縁体からなる。通常、樹脂からなる絶縁基板は、ガラス又は石英からなる絶縁基板と比較して軽量である。また、樹脂を使用すると、絶縁基板をフレキシブルにすることができる。絶縁基板は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0027】
回路は、マトリクス状に配置された画素回路、走査線、信号線、電源線、及び、任意の周辺回路とを含んでいる。発光部2が照明装置である場合、これら回路は省略することができる。
【0028】
陽極212は、絶縁基板211上で、画素回路に対応して配列している。陽極212は、光透過性電極、例えば透明電極である。陽極212は、典型的には、可視域内の全波長の光に対して光透過性を示す。例えば、陽極212は、可視域内の全波長の光に対して透明である。陽極212は、無色であってもよく、着色していてもよい。
【0029】
陽極212は、例えば、ITO、亜鉛酸化物(ZnO)、硼素置換グラフェン又は酸性物質をドープした無置換グラフェンからなる。
【0030】
硼素置換グラフェン及び酸性物質をドープした無置換グラフェンは、p型であり、仕事関数が大きい。それ故、これらを陽極212の材料として使用すると、高い正孔注入効率を達成できる。そして、硼素置換グラフェン及び酸性物質をドープした無置換グラフェンは、高い透明性を示すのに加え、しかも資源的な制約が少ない。従って、陽極212の材料としては、硼素置換グラフェン又は酸性物質をドープした無置換グラフェンを使用することが好ましい。
【0031】
また、硼素置換グラフェン及び酸性物質をドープした無置換グラフェンは、フレキシブルであり、水分や酸素に対して安定である。それ故、従って、例えば、絶縁基板211及び封止基板22として樹脂製の基板を使用した場合、この点においても、陽極212の材料として、上記の無置換又は置換グラフェンを使用することが好ましい。
【0032】
上記の無置換又は置換グラフェンとしては、平面状のグラフェンを使用してもよく、円筒状のカーボンナノチューブを使用してもよく、それらの混合物を使用してもよい。上記の無置換又は置換グラフェンを使用する場合、陽極212は、金属ナノ粒子、ナノワイヤーやナノロッドなどの導電性を向上させる添加物を更に含んでいてもよい。
【0033】
陽極212の材料として、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、金(Au)及び錫(Sn)などの金属を使用してもよい。金属を使用する場合には、発光部2が十分に高い透過率を有するように、陽極212を薄く形成するか、又は、各陽極212の面積を小さくすることが好ましい。
【0034】
隔壁絶縁層213は、絶縁基板211上に形成されている。隔壁絶縁層213には、陽極212に対応した位置に貫通孔が設けられている。即ち、ここでは、隔壁絶縁層213は格子状である。隔壁絶縁層213には、貫通孔を設ける代わりに、陽極212の列に対応した位置に溝を設けてもよい。即ち、隔壁絶縁層213はストライプ状であってもよい。隔壁絶縁層213は、例えば、樹脂層をパターニングすることによって形成することができる。
【0035】
活性層214は、陽極212の上面を被覆している。ここでは、活性層214は、隔壁絶縁層213の上面と、それに設けられた貫通孔の側壁とを更に被覆している。
【0036】
活性層214は、有機物又は有機金属錯体からなる発光層214Aを含んでいる。発光部2にカラー画像を表示可能な構成を採用する場合、例えば、陽極212の列に平行な方向に各々が延び、青、緑及び赤色に発光する発光層を、陽極212の行に平行な方向に配列させる。
【0037】
活性層214は、層214H及び214Eを更に含んでいる。層214Hは、例えば、正孔注入層と正孔輸送層との積層体である。層214Eは、例えば、電子輸送層と電子注入層との積層体である。層214H及び214Eは、ブロッキング層及びバッファ層などの他の層を更に含むことができる。また、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層の1つ以上を省略してもよい。なお、活性層214において、発光層214A以外の層の材料は、有機材料であっても、無機材料であってもよい。
【0038】
陰極215は、活性層214を被覆している。陰極215は、光透過性電極、例えば透明電極である。陰極215は、典型的には、可視域内の全波長の光に対して光透過性を示す。例えば、陰極215は、可視域内の全波長の光に対して透明である。陰極215は、無色であってもよく、着色していてもよい。
【0039】
陰極215は、例えば、ITO、亜鉛酸化物(ZnO)、窒素置換グラフェン又は塩基性物質をドープした無置換グラフェンからなる。
【0040】
窒素置換グラフェン及び塩基性物質をドープした無置換グラフェンは、n型であり、仕事関数が小さい。それ故、これらを陰極215の材料として使用すると、高い電子注入効率を達成できる。そして、窒素置換グラフェン及び塩基性物質をドープした無置換グラフェンは、高い透明性を示すのに加え、しかも資源的な制約が少ない。従って、陰極215の材料としては、窒素置換グラフェン又は塩基性物質をドープした無置換グラフェンを使用することが好ましい。
【0041】
また、窒素置換グラフェン及び塩基性物質をドープした無置換グラフェンは、フレキシブルであり、水分や酸素に対して安定である。それ故、従って、例えば、絶縁基板211及び封止基板22として樹脂製の基板を使用した場合、この点においても、陰極215の材料として、上記の無置換又は置換グラフェンを使用することが好ましい。
【0042】
上記の無置換又は置換グラフェンとしては、平面状のグラフェンを使用してもよく、円筒状のカーボンナノチューブを使用してもよく、それらの混合物を使用してもよい。上記の無置換又は置換グラフェンを使用する場合、陰極215は、金属ナノ粒子、ナノワイヤーやナノロッドなどの導電性を向上させる添加物を更に含んでいてもよい。
【0043】
陰極215の材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)又は銅(Cu)を使用してもよく、これらの金属とマグネシウム(Mg)及び/又はカルシウム(Ca)とを含んだ合金を使用してもよい。金属を使用する場合には、発光部2が十分に高い透過率を有するように、陰極215を薄く形成するか、又は、陰極215の面積を小さくすることが好ましい。
【0044】
なお、陽極212と活性層214と陰極215との積層体のうち、陽極212に対応した各部分は、発光素子である有機EL素子(OLED:Organic Light-Emitting Diode)を構成している。
【0045】
封止基板22は、第4基板である。封止基板22は、アレイ基板21の陰極215側の面と向き合っている。封止基板22の中央部は、アレイ基板21から離間している。
【0046】
封止基板22は、光透過性基板、例えば透明基板である。封止基板22は、典型的には、可視域内の全波長の光に対して光透過性を示す。例えば、封止基板22は、可視域内の全波長の光に対して透明である。封止基板22は、無色であってもよく、着色していてもよい。
【0047】
封止基板22は、例えば、ガラス、石英及び樹脂などの絶縁体からなる。通常、樹脂からなる基板は、ガラス又は石英からなる基板と比較して軽量である。また、樹脂を使用すると、基板をフレキシブルにすることができる。封止基板22は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0048】
シール層23は、アレイ基板21と封止基板22との間に介在している。シール層23は、枠形状を有しており、有機EL素子OLEDを取り囲んでいる。
【0049】
シール層23は、光透過性、例えば透明である。シール層23は、典型的には、可視域内の全波長の光に対して光透過性を示す。例えば、シール層23は、可視域内の全波長の光に対して透明である。シール層23は、無色であってもよく、着色していてもよい。
【0050】
シール層23の材料としては、例えば、紫外線効果型樹脂などの感光性樹脂を使用することができる。シール層23の材料としては、フリットなどの他の材料を使用してもよい。
【0051】
光学調整層3は、図1及び図4に示すように、発光部2の周縁部と光透過層1の一部とを、発光部2の縁に沿って被覆した薄層である。上記の第3部分A3は、この発光装置WMのうち光学調整層3に対応した部分である。第1部分A1及び第2部分A2の透過率をそれぞれ第1及び第2透過率とした場合、光学調整層3は、第3部分A3に、第1乃至第2透過率の範囲内で、第1部分A1側の端から第2部分A2側の端へ向けて段階的に減少する透過率分布を、又は、第1部分A1側の端から第2部分A2側の端へ向けて連続的に減少する透過率分布を生じさせる。
【0052】
光学調整層3は、高分子フィルムと、印刷層と、粘着層とを含んでいる。
高分子フィルムは、光透過性フィルム、例えば透明フィルムである。高分子フィルムは、典型的には、可視域内の全波長の光に対して光透過性を示す。例えば、高分子フィルムは、可視域内の全波長の光に対して透明である。高分子フィルムは、無色であってもよく、着色していてもよい。
【0053】
高分子フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、環状ポリオレフィン、アラミド樹脂及びポリスチレンなどの樹脂からなる。高分子フィルムは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0054】
印刷層は、高分子フィルムの一方の主面上に設けられている。高分子フィルムが多層構造を有している場合、印刷層は、高分子フィルムの層間に設けてもよい。
【0055】
印刷層は、例えば、黒色の網点を、その単位面積当たりの密度が第1部分A1側と比較して第2部分A2側においてより高くなるように配置してなる印刷パターンである。印刷パターンは、光吸収性を有していれば、黒色以外の色に着色しているものであってもよい。また、印刷パターンは、光反射性を有していれば、着色していなくてもよい。このような印刷層は、第1部分A1側と第2部分A2側とで異なる透過率を示す。
【0056】
粘着層は、高分子フィルムの一方の主面を被覆している。粘着層は、高分子フィルムと、光透過層1及び発光部2との間に介在している。
【0057】
粘着層は、光透過性、例えば透明である。粘着層は、典型的には、可視域内の全波長の光に対して光透過性を示す。例えば、粘着層は、可視域内の全波長の光に対して透明である。粘着層は、無色であってもよく、着色していてもよい。
【0058】
フレーム4は、例えば、嵌め合わされた表フレーム及び裏フレームを含んでいる。表フレーム及び裏フレームには、それらを嵌め合わせたときに同じ位置になるように開口部が設けられている。フレーム4は、光透過層1の中央部が先の開口部に位置するように、光透過層1の周縁部を表フレームと裏フレームとで挟んでいる。
【0059】
また、フレーム4は、発光部2の縁の1つを表フレームと裏フレームとで挟んでいる。この構成を採用すると、フレーム4が不透明である場合、発光部2の周辺回路及びOLB(Outer Lead Bonding)パッド並びにOLBパッドに接続されたフレキシブル回路基板などをフレーム4で隠すことができる。
【0060】
フレーム4は、発光部2の縁の2つ又は3つを表フレームと裏フレームとで挟んでいてもよい。或いは、フレーム4は、発光部2の縁の何れも表フレームと裏フレームとで挟んでいなくてもよい。
【0061】
コントローラは、フレーム4内に設置されている。コントローラは、光透過層1及び発光部2の少なくとも一方の動作を制御する。コントローラは、フレーム4の外側に設置してもよい。また、この発光装置WMは、コントローラを含んでいなくてもよい。
【0062】
この発光装置WMは、透過画像の視認性に優れている。これについて、図5及び図6を参照しながら説明する。
【0063】
発光部2は陽極212及び陰極215などを含んでいるため、第2部分A2では、無視できない程度の光吸収を生じる。それ故、例えば、光透過層1の透過率が約80%であり、発光部2の表示領域、即ち、陽極212及び陰極215が配置された領域における透過率が約50%であるとすると、第1部分A1の透過率は約80%となり、第2部分A2の透過率は約40%となる。
【0064】
このため、図6に示すように、光学調整層3を省略した発光装置WMを介して観察される画像IMG2では、明るさが大きく異なる領域が、第1部分A1と第2部分A2とに対応して隣接することとなる。その結果、発光装置WMの背後に位置した物体の像と、先の領域間の境界線とが重なって見える。この境界線は、発光装置WMの背後に位置した物体の視認を妨げる。
【0065】
図1乃至図4を参照しながら説明した発光装置WMは、光学調整層3を含んでいる。このため、図5に示すように、この発光装置WMを介して観察される画像IMG1では、明るい領域と暗い領域との間に、明るい領域から暗い領域へ向けて明るさが徐々に減少する領域が存在することとなる。即ち、光学調整層3は、発光装置WMを介して観察される画像に先の境界線が生じるのを防止するか、又は、発光装置WMを介して観察される画像における先の境界線を目立たなくする。それ故、観察者は、透過画像を優れた視認性で観察することができる。
【0066】
また、この発光装置WMでは、光透過層1として、透過率を電気的に制御することが可能な調光装置を使用している。そのような光透過層1を使用すると、発光装置WMの背後に位置した物体の像は見え難くなり、その結果、発光部2が表示する画像は見え易くなる。
【0067】
この発光装置WMには、様々な変形が可能である。
例えば、この発光装置WMは、タッチパネルを更に含んでいてもよい。タッチパネルは、例えば、光透過層1及び発光部2の一方又は双方を少なくとも部分的に覆うように設置する。
【0068】
光透過層1として、図2を参照しながら説明したエレクトロクロミック調光装置の代わりに、透明な状態と光反射性の状態との間で可逆的に変化し得る調光ミラー装置を使用してもよい。
【0069】
調光ミラー装置では、例えば、イットリウムやランタンなどの希土類金属の水素化物、希土類金属とマグネシウム又はガドリニウムとの合金の水素化物、又はマグネシウムニッケル合金の水素化物を使用する。水素化物を脱水素化すると、金属の状態が変化する。この脱水素化と水素化とを利用して、透明な状態と光反射性の状態との間での変化を生じさせる。
【0070】
脱水素化及び水素化には、電圧印加によって水素イオンを移動させるエレクトロクロミック方式と、先の材料を水素ガスと酸素ガスとに交互に曝すガスクロミック方式との2方式がある。エレクトロクロミック方式の調光ミラー装置の例として、マグネシウムニッケル合金薄膜を用いた全固体型調光ミラー装置について説明する。
【0071】
図7に示す調光ミラー装置1’は、全固体型調光ミラー装置である。この調光ミラー装置1’は、基板111及び121と、電極112及び122と、イオン貯蔵層141と、固体電解質層142と、バッファ層143と、触媒層144と、エレクトロクロミック層145とを含んでいる。
【0072】
基板111及び121は、例えば、ガラス、石英又は樹脂からなる透明基板である。電極112及び122は、例えば、ITOからなる透明電極である。
【0073】
電極112及び122間には、光学可変層が介在している。光学可変層は、イオン貯蔵層141、固体電解質層142、バッファ層143、触媒層144及びエレクトロクロミック層145を含んでいる。イオン貯蔵層141、固体電解質層142、バッファ層143、触媒層144及びエレクトロクロミック層145は、電極112側からこの順に積層されている。イオン貯蔵層141は、例えば、HxWO3を含んでいる。エレクトロクロミック層145は、例えば、マグネシウムニッケル合金からなる。
【0074】
この調光ミラー装置1’は、初期において、鏡面反射性を有している。電極112及び122間に5V程度の電圧を印加すると、イオン貯蔵層141中に蓄えられている水素イオン(H+)が、エレクトロクロミック層145中へと移動し、マグネシウムニッケル合金が水素化されて非金属状態になる。これにより、調光ミラー装置1’は、鏡面反射性の状態から、透明な状態へと変化する。
【0075】
次に、電圧の極性を反転させて電極112及び122間に5V程度の電圧を印加すると、水素イオンが、エレクトロクロミック層145からイオン貯蔵層(WO3)中へと戻る。これにより、調光ミラー装置1’は、透明な状態から、鏡面反射性の状態へと戻る。
なお、透明な状態及び鏡面反射性の状態は、電圧印加を停止しても保たれる。
【0076】
この調光ミラー装置1’を、図2を参照しながら説明したエレクトロクロミック装置の代わりに使用した場合、調光ミラー装置1’を鏡面反射性の状態として、発光部2を駆動すると、発光部2が背面側に放出する光も表示に利用することが可能となる。即ち、より明るい表示が可能となる。
【0077】
光透過層1として、図2を参照しながら説明したエレクトロクロミック調光装置の代わりに、高分子分散型液晶を利用した調光ガラスを使用してもよい。
【0078】
図8に示す調光ガラス1''は、基板111及び121と、電極112及び122と、液晶層151とを含んでいる。
【0079】
基板111及び121は、例えば、ガラス、石英又は樹脂からなる透明基板である。電極112及び122は、例えば、ITOからなる透明電極である。
【0080】
液晶層151は、電極112及び122間に介在している。液晶層151は、印加する電圧の大きさに応じて光学特性が変化する光学可変層である。液晶層151は、高分子材料からなるマトリクスと、その中に分散させた液晶材料とを含んでいる。高分子材料と液晶材料とは、電極112及び122間に電圧を印加したときに、基板111及び121の主面に対して垂直な方向に進行する光についてほぼ等しい屈折率を有するように選ばれている。
【0081】
この調光ガラス1''は、電極112及び122間に電圧を印加していない状態においては、高分子材料からなる領域と液晶材料からなる領域との界面において屈折及び反射を生じる。それ故、この状態では、調光ガラス1''は、光散乱に起因して白色に見える。
【0082】
電極112及び122間に電圧を印加すると、高分子材料からなる領域と液晶材料からなる領域との界面における屈折及び反射が減少する。それ故、この状態において、調光ガラス1''は透明である。
【0083】
なお、液晶材料に二色性色素を混合すると、着色した光散乱状態と透明な状態との間での可逆的な変化を生じさせることができる。
【0084】
この調光ガラス1''を、図2を参照しながら説明したエレクトロクロミック調光装置の代わりに使用した場合、透過率をより速やかに変化させることができる。また、この場合、調光ガラス1''を光散乱状態とすると、発光装置WMの背後に位置した物体の像はほぼ完全に見えなくなる。
【0085】
調光機能を有している上記の光透過層1は、第1部分A1、第2部分A2及び第3部分A3に対応した領域の全体に亘って調光機能を有していてもよく、その領域の一部においてのみ調光機能を有していてもよい。発光部2が表示する画像の視認性の観点では、光透過層1は、少なくとも第2部分A2に対応した領域において調光機能を有していることが好ましい。
【0086】
光透過層1としては、透過率を電気的に制御することが不可能なものを使用してもよい。そのような光透過層1としては、例えば、ガラス板、石英板、樹脂板又は樹脂フィルムを使用することができる。この光透過層1は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0087】
発光部2として、有機EL装置を使用する代わりに、他の発光部を使用してもよい。例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)をバックライトの光源として含んだ液晶表示装置を使用してもよい。或いは、光源としてのLEDと、LEDが放出する光を導く導波路とを含んだ装置を使用してよい。或いは、LEDをマトリクス状に並べてなる装置を使用してもよい。但し、透過率及び解像度の観点では、有機EL装置を使用することが好ましい。
【0088】
上記の発光装置WMでは、第3部分A3における透過率分布を、光学調整層3によって生じさせている。この透過率分布は、他の方法で生じさせることも可能である。
【0089】
例えば、光透過層1として、図2、図7及び図8を参照しながらそれぞれ説明した調光装置1、1’及び1''の何れを使用すると共に、発光装置WMから光学調整層3を省略する。そして、電極112及び122の少なくとも一方を、第2部分A2の輪郭に沿って各々が延び、第3部分A3内に位置した複数の溝によって分割する。ここでは、一例として、電極112を、第3部分A3内に位置した複数の溝によって分割することとする。このようにして第3部分内に複数の帯状電極を形成し、これら帯状電極の各々の電位を、電極112の残りの部分から独立して設定できるようにする。この構造を採用すると共に、第3部分A3における電極112及び122間への電圧の印加を適宜設定すること、例えば、帯状電極の電位を適宜設定することにより、光学調整層3を用いた場合と同様の透過率分布を第3部分A3に生じさせることができる。
【0090】
光学調整層3を省略し、その機能をシール層23に付与してもよい。例えば、シール層23に光吸収又は反射性の粒子を含有させ、その密度を、第2部分A2側から第1部分A1側へ向けて減少させてもよい。
【0091】
光透過層1の主面に対して垂直な方向から見た場合に、発光部2の表示領域は、光学調整層3と隣接していてもよく、光学調整層3から離間していてもよい。光透過層1の主面に対して垂直な方向から見たときの表示領域と光学調整層3との距離は、好ましくは1cm以下であり、より好ましくは0.5cm以下である。
【0092】
第3部分A3の適切な幅、即ち、第1部分A1と第2部分A2との適切な距離は、発光装置WMと観察者との距離に応じて異なる。例えば、発光装置WMと観察者との距離が50cm以下である状況においては、第3部分A3の幅は1乃至3cmの範囲内にあることが好ましい。発光装置WMと観察者との距離が50cm乃至2mの範囲内にある状況においては、第3部分A3の幅は2乃至5cmの範囲内にあることが好ましい。発光装置WMと観察者との距離が2乃至5mである状況においては、第3部分A3の幅は4乃至10cmの範囲内にあることが好ましい。
【0093】
なお、発光装置WMと観察者との距離として想定すべき値は、発光装置WMの寸法や使用環境に応じて異なる。例えば、発光装置WMをビルディングや個人住宅の壁に設置される窓において使用する場合、発光装置WMと観察者との距離として想定すべき値は2乃至5mである。発光装置WMをビルディングや個人住宅の仕切り又は扉に設置される窓において使用する場合、発光装置WMと観察者との距離として想定すべき値は50cm乃至2mである。そして、列車や自動車用の窓において使用する場合、発光装置WMと観察者との距離として想定すべき値は50cm以下である。
【0094】
第3部分A3は、第1部分A1側の端から第2部分A2側の端へ向けて連続的に減少する透過率分布を有していてもよく、第1部分A1側の端から第2部分A2側の端へ向けて段階的に減少する透過率分布を有していてもよい。後者の場合、第3部分A3は、第1部分A1の透過率未満、第2部分A2の透過率超であり、互いに異なっている透過率を有している領域を3つ以上含んでいることが好ましく、そのような領域を5つ以上含んでいることがより好ましい。
【0095】
光透過層1及び発光部2を互いから分離した状態において、それらの各々の一方の主面を第1温度とし、他方の主面を第1温度とは異なる第2温度とした場合に、光透過層1は発光部2と比較して単位長さ当たりの反り量がより小さいことが好ましい。例えば、光透過層1の2つの主面のうち、発光部2と向き合うべき主面の温度を第1温度とし、反対側の主面の温度を第2温度とする。そして、発光部2の2つの主面のうち、光透過層1と向き合うべき主面の温度を第2温度とし、反対側の主面の温度を第1温度とする。この場合、光透過層1は発光部2と比較して単位長さ当たりの反り量がより小さいことが好ましい。この条件は、第2温度が第1温度と比較してより低い場合及び第2温度が第1温度と比較してより高い場合の少なくとも一方において満たされることが好ましく、それらの双方において満たされることがより好ましい。なお、第1及び第2温度は、例えば、第1の温度を25℃とし、第2の温度を5℃とする。
【0096】
発光装置WMを車両又は建築物の窓において使用する場合、発光装置WMは、屋内と屋外との温度差に晒される。光透過層1を屋外に用いる方が好ましいため、光透過層1はより大きな温度差に晒される。従って、上記の構成を採用した発光装置WMは、屋内と屋外との温度差が大きい場合であっても大きく反ることはなく、それ故、長い寿命を達成できる。
【0097】
光透過層1及び発光部2を互いから分離した状態において、それらの各々を、発光部2と比較してより小さな枠の上に載置し、枠の開口の中心の位置で下方に押圧した場合に、光透過層1は発光部2と比較して単位長さ当たりの反り量がより小さいことが好ましい。
【0098】
発光装置WMを車両又は建築物の窓において使用する場合、発光装置WMは、風などに起因した屋内と屋外との圧力差に晒される。光透過層1を屋外に用いる方が好ましいため、光透過層1はより圧力に晒される。従って、上記の構成を採用した発光装置WMは、屋内と屋外との圧力差が大きい場合であっても大きく反ることはなく、それ故、長い寿命を達成できる。
【0099】
発光部2を光透過層1に接着する場合、それらの間に介在させる接着層としては、ゴム状弾性及び光透過性を有している弾性層を使用することが好ましい。このような弾性層は、光透過層1と発光部2との界面における応力を緩和し得る。
【0100】
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る発光装置は、以下の構成を採用したこと以外は、第1実施形態に係る発光装置と同様である。以下、図9を参照しながら説明する。
【0101】
図9に示す発光装置WMにおいて、光透過層1は、その透過率を電気的に制御可能なものである。この光透過層1は、例えば、図2、図7及び図8を参照しながらそれぞれ説明した調光装置1、1’及び1''の何れかである。
【0102】
光透過層1は、第1領域とこれに囲まれた第2領域とを含んでいる。第1及び第2領域は隣接している。第1領域の面積は、第2領域の面積と比較してより大きい。発光部2は、第2領域に接着されている。
【0103】
なお、上記の第1領域は、光透過層1のうち、発光部2と重なり合っていない領域である。第2領域は、光透過層1のうち、発光部2と重なり合った領域である。また、第1部分A1は、発光装置WMのうち第1領域に対応した部分又はその一部である。第2部分A2は、発光装置WMのうち第2領域の中央部に対応した部分である。第3部分A3は、発光装置WMのうち、第2領域の周縁部に対応した部分である。第3部分A2と第3部分A3とは、それぞれ、発光部2の表示領域又は発光領域と発光部2の周辺領域とに対応している。第3部分A3は、第1実施形態において説明した透過率分布を有していてもよく、そのような透過率分布を有していなくてもよい。
【0104】
発光部2は、光透過層1のうち調光機能を発揮する領域、即ち調光領域のみと重なり合っていてもよい。或いは、発光部2は、調光領域及びこれを取り囲んだ領域である周辺領域と重なり合っていてもよい。
【0105】
なお、この発光装置WMには、光透過層1上に、発光部2とコントローラとを接続する配線(図示せず)が設けられている。
【0106】
この発光装置WMを車両又は建築物の窓において使用する場合、発光装置WMは、屋内と屋外との温度差や、風などに起因した屋内と屋外との圧力差に晒される。例えば、発光部2の縁を表フレームと裏フレームとで挟んだ場合、上記の温度差又は圧力差に起因して発光装置WMが変形すると、発光部2が損傷する可能性がある。
【0107】
上記の配置を採用した場合、例えば、発光部2をフレーム4から離間させることができる。従って、長寿命を達成できる。
【0108】
以下に、上述した構造のより具体的な例を記載する。
(例1)
図1乃至図4を参照しながら説明したのとほぼ同様の発光装置WMの作成を示す。なお、ここでは、フレーム4は省略する。
【0109】
具体的には、エレクトロクロミック調光装置1の製造においては、基板111及び121としてガラス基板を使用し、電極112及び122としてITO層を形成する。エレクトロクロミック層140としては、RF(Radio Frequency)マグトロンスパッタリングにより、WO3からなるアモルファス膜を形成する。
【0110】
電解質層130は、以下の方法で形成する。まず、基板111の電極112を形成した面に、枠形状の接着剤層を形成する。次いで、基板111及び121を電極112とエレクトロクロミック層140とが向き合うように重ね合わせ、接着剤を硬化させる。これにより、空セルを得る。その後、空セルに、塩化リチウム水溶液を注入し、注入口を封止する。以上のようにして、塩化リチウム水溶液からなる電解質層130を得る。
【0111】
このようにして得られるエレクトロクロミック調光装置1は、透明な状態において、70乃至80%の透過率を示す。
【0112】
発光部2としては、有機EL表示装置を用いる。
基板211としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、基板211上に、薄膜トランジスタなどを含んだ回路とITOからなる陽極212とを形成し、更に、樹脂からなる隔壁絶縁層213を形成する。次いで、陽極212上に、インクジェット法により、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))とPSS(ポリエチレンスルフォン酸)との混合物からなる正孔注入層214Hと、青、緑及び赤色の発光層214Aとを順次形成する。正孔注入層214Hと発光層214Aとからなる活性層214上に、銀とマグネシウムの合金を蒸着して陰極215を得る。陰極215は、発光部2が透明になるように、陽極212の列に対応してストライプ状に形成し、次いで、その上に、一方の主面にガスバリア膜を形成したポリエチレンテレフタレートフィルムをラミネートし、これによって得られた構造の周囲を透明なエポキシ樹脂で封止する。
【0113】
このようにして得られる有機EL表示装置2の表示領域は、非発光状態において、25乃至30%の透過率を示す。
【0114】
この有機EL表示装置2は、弾力性のある透明なゴムシートを介して、エレクトロクロミック調光装置1に貼り付ける。
【0115】
光学調整層3としては、電子写真法によりポリエチレンテレフタレートリボン上に黒色のトナーを分布させてなるものを準備し、光学調整層3は、透明な粘着剤を介して、エレクトロクロミック調光装置1及び有機EL表示装置2に貼り付ける。
【0116】
このようにして得られる発光装置WMについて、エレクトロクロミック調光装置1を透明な状態とし、有機EL表示装置2を非発光状態として、透過画像を観察する。その結果、透過画像を優れた視認性で観察することができる。
【0117】
(比較例1)
光学調整層3を省略したこと以外は、例1において示したのと同様の発光装置を製造する。このようにして得られた発光装置について、エレクトロクロミック調光装置1を透明な状態とし、有機EL表示装置2を非発光状態として、透過画像を観察する。その結果、明るさが大きく異なる領域の境界線が透過画像と重なり合い、透過画像を優れた視認性で観察することはできない。
【0118】
(例2)
光透過層1として、エレクトロクロミック調光装置1を使用する代わりに、透過率が50%のスモークガラスを使用する。これ以外は、例1と同様の発光装置WMを製造する。このようにして得られる発光装置WMについて、有機EL表示装置2を非発光状態として、透過画像を観察する。その結果、透過画像を優れた視認性で観察することができる。
【0119】
(比較例2)
光学調整層3を省略すること以外は、例2と同様の発光装置を製造する。このようにして得られた発光装置について、有機EL表示装置2を非発光状態として、透過画像を観察する。その結果、明るさが大きく異なる領域の境界線が透過画像と重なり合い、透過画像を優れた視認性で観察することはできない。
【0120】
(例3)
図1乃至図4を参照しながら説明したのとほぼ同様の発光装置WMを製造した。ここでは、フレーム4は省略し、また、エレクトロクロミック調光装置1の代わりに、図8に示す調光ガラス1''を使用する。
【0121】
具体的には、調光ガラス1''の製造においては、基板111及び121としてガラス基板を使用し、電極112及び122としてITO層を形成する。
【0122】
液晶層151は、以下の方法で形成する。
【0123】
まず、基板111の電極112を形成した面に、枠形状の接着剤層を形成し、次いで、基板111及び121を電極112及び122が向き合うように重ね合わせ、接着剤を硬化させる。これにより、空セルを作製し、その後、空セルに、フッ素系液晶材料とアクリル系モノマーと重合開始剤との混合物を注入し、注入口を封止する。この状態で重合を生じさせることにより、高分子分散液晶層151を得る。
【0124】
このようにして得られる調光ガラス1''は、電圧印加時、即ち透明な状態において、60乃至70%の透過率を示す。
【0125】
発光部2としては、有機EL表示装置を製造する。
基板211としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、基板211上に、薄膜トランジスタなどを含んだ回路とITOからなる陽極212とを形成し、更に、樹脂からなる隔壁絶縁層213を形成する。次いで、陽極212上に、インクジェット法により、PEDOTとPSSとの混合物からなる正孔注入層214Hと、青、緑及び赤色の発光層214Aとを順次形成する。
【0126】
正孔注入層214Hと発光層214Aとからなる活性層214上には、窒素原子で置換したグラフェン薄膜が陰極215として一方の主面に設けられたポリエチレンテレフタレートフィルムを、そのグラフェン薄膜が活性層214と接触するようにラミネートする。なお、この窒素置換グラフェン薄膜は、アンモニア、メタン及び水素を原料とした熱CVD(Chemical Vapor Deposition)により、銅箔上にグラフェン薄膜を形成し、これを銅箔からポリエチレンテレフタレートフィルム上へと転写し、更に銀ナノ粒子もしくは銀ナノワイヤーを付着させることにより得る。
その後、これによって得られる構造の周囲を透明なエポキシ樹脂で封止する。
【0127】
このようにして得られる有機EL表示装置2の表示領域は、非発光状態において、40乃至50%の透過率を示す。
【0128】
以上のようにして得られる調光ガラス1''をエレクトロクロミック調光装置1の代わりに使用し、発光部2として、この有機EL表示装置2を使用する。これ以外は、例1において製造したのと同様の発光装置WMを製造する。
【0129】
このようにして得られる発光装置WMについて、調光ガラス1''を透明な状態とし、有機EL表示装置2を非発光状態として、透過画像を観察する。その結果、透過画像を優れた視認性で観察することができる。
【0130】
(比較例3)
光学調整層3を省略したこと以外は、例3と同様の発光装置を製造する。このようにして得られた発光装置について、調光ガラス1''を透明な状態とし、有機EL表示装置2を非発光状態として、透過画像を観察する。その結果、明るさが大きく異なる領域の境界線が透過画像と重なり合い、透過画像を優れた視認性で観察することはできない。
【0131】
(例4)
調光ガラス1''に対する有機EL表示装置2の相対位置を、図9を参照しながら説明したように変更し、光学調整層3を省略すること以外は、例3とほぼ同様の発光装置WMを製造する。ここでは、調光ガラス1''と有機EL表示装置2とを貼り合わせてなる構造は、金属製のフレーム4に支持させる。
【0132】
このようにして得られる発光装置WMは、軽量であり、両主面間に温度差及び圧力差を与えた場合であっても、変形を生じ難い。
【0133】
(比較例4)
調光ガラス1''及び有機EL表示装置2の寸法を同一とすること以外は、例4と同様の発光装置を製造する。このようにして得られる発光装置の両主面間に温度差を与えたところ、有機EL表示装置2は、その縁の近傍において、表示不良を比較的短い期間内に高い頻度で生じる。
【0134】
(例5)
封止に透明なエポキシ樹脂を使用する代わりに、エポキシ樹脂と黒色顔料との混合物を使用すること以外は、例1と同様の有機EL表示装置2を製造する。この混合物に占める黒色顔料の割合は、有機EL表示装置2の中央から端へ向けて減少させる。
【0135】
この有機EL表示装置2を発光部2として使用し、光学調整層3を省略し、ゴムシートの代わりに透明な粘着剤層を介してエレクトロクロミック調光装置1と有機EL表示装置2とを貼り合わせること以外は、例1と同様の発光装置WMを製造する。
【0136】
このようにして得られる発光装置WMについて、エレクトロクロミック調光装置1を透明な状態とし、有機EL表示装置2を非発光状態として、透過画像を観察する。その結果、透過画像を優れた視認性で観察することができる。
【0137】
(比較例5)
封止にエポキシ樹脂と黒色顔料との混合物を使用する代わりに、透明なエポキシ樹脂を使用すること以外は、例5と同様の発光装置を製造した。このようにして得られる発光装置について、エレクトロクロミック調光装置1を透明な状態とし、有機EL表示装置2を非発光状態として、透過画像を観察する。その結果、明るさが大きく異なる領域の境界線が透過画像と重なり合い、透過画像を優れた視認性で観察することはできない。
【0138】
(例6)
光学調整層3を省略し、エレクトロクロミック調光装置1に以下の構成を採用すること以外は、例1と同様の発光装置を製造する。即ち、ここでは、エレクトロクロミック調光装置1の電極112を、第3部分A3において、第2部分A2の輪郭に沿った形状を各々が有している5つの帯状電極へとパターニングする。
【0139】
このようにして得られる発光装置WMについて、エレクトロクロミック調光装置1を、第1部分A1及び第2部分A2において高い透過率を示し、第3部分において透過率が第1領域A1側から第2領域A2側へ減少するように駆動すると共に、有機EL表示装置2を非発光状態として、透過画像を観察する。その結果、透過画像を優れた視認性で観察することができる。
【0140】
(比較例6)
電極112をパターニングしないこと以外は、例6と同様の発光装置を製造した。即ち、比較例1と同様の発光装置を製造した。
【0141】
このようにして得られる発光装置について、エレクトロクロミック調光装置1を透明な状態とし、有機EL表示装置2を非発光状態として、透過画像を観察する。その結果、明るさが大きく異なる領域の境界線が透過画像と重なり合い、透過画像を優れた視認性で観察することはできない。
【0142】
(例7)
図1乃至図4を参照しながら説明したのとほぼ同様の発光装置WMを製造する。ここでは、フレーム4は省略する。また、ここでは、エレクトロクロミック調光装置1の代わりに、図7に示す調光ミラー装置1’を使用する
具体的には、調光ミラー装置1’の製造においては、まず、基板111してガラス基板を準備し、その上に電極112としてITO層を形成する。次いで、電極112上に、室温のもと、マグネトロンスパッタ装置を用いて、イオン貯蔵層141、固体電解質層142、バッファ層143、触媒層144、エレクトロクロミック層145及び電極122をこの順に形成する。イオン貯蔵層141としてはWO3層を形成し、固体電解質層142としてはTa23層を形成し、バッファ層143としてはアルミニウム層を形成し、触媒層144としてパラジウム層を形成し、エレクトロクロミック層145としてはマグネシウムニッケル合金層を形成し、電極122としてはITOを形成する。その後、これらを間に挟んで基板111とガラスからなる基板121と重ね、この構造を封止する。
【0143】
このようにして得られる調光ミラー装置1’は、透明な状態において、50乃至60%の透過率を示す。
【0144】
発光部2としては、有機EL表示装置を製造する。
基板211としては、ポリカーボネートフィルムを使用し、基板211上に、薄膜トランジスタなどを含んだ回路とITOからなる陽極212とを形成し、更に、樹脂からなる隔壁絶縁層213を形成する。次いで、陽極212上に、インクジェット法により、PEDOTとPSSとの混合物からなる正孔注入層214Hと、青、緑及び赤色の発光層214Aとを順次形成する。
【0145】
正孔注入層214Hと発光層214Aとからなる活性層214上には、ポリエチレンイミンをドープした無置換グラフェン薄膜が陰極215として一方の主面に設けられたポリカーボネートフィルムを、そのグラフェン薄膜が活性層214と接触するようにラミネートした。なお、無置換グラフェン薄膜は、メタン及び水素を原料とした熱CVDにより、銅箔上にグラフェン薄膜を形成し、これを銅箔からポリエチレンイミン薄膜が形成されたポリカーボネートフィルム上へと転写することにより得る。
その後、これによって得られる構造の周囲を透明なエポキシ樹脂で封止する。
【0146】
このようにして得られR有機EL表示装置2の表示領域は、非発光状態において、40乃至50%の透過率を示す。
【0147】
以上のようにして得られる調光ミラー装置1’をエレクトロクロミック調光装置1の代わりに使用し、発光部2として、この有機EL表示装置2を使用する。これ以外は、例1と同様の発光装置WMを製造する。
【0148】
このようにして得られる発光装置WMについて、調光ミラー装置1’を透明な状態とし、有機EL表示装置2を非発光状態として、透過画像を観察する。その結果、透過画像を優れた視認性で観察することができる。
【0149】
(比較例7)
光学調整層3を省略すること以外は、例7と同様の発光装置を製造する。このようにして得られる発光装置について、調光ミラー装置1’を透明な状態とし、有機EL表示装置2を非発光状態として、透過画像を観察する。その結果、明るさが大きく異なる領域の境界線が透過画像と重なり合い、透過画像を優れた視認性で観察することはできない。
【0150】
(例8)
以下の有機EL表示装置2を使用すること以外は、例7と同様の発光装置WMを製造する。
【0151】
有機EL表示装置2の製造においては、基板211として、ポリエチレンテレフタレートフィルムを準備し、基板211上に、薄膜トランジスタなどを含んだ回路と硼素で置換したグラフェンからなる陽極212とを形成し、更に、樹脂からなる隔壁絶縁層213を形成する。硼素置換グラフェンからなる陽極212は、ジボラン、メタン及び水素を原料とした熱CVDにより、銅箔上にグラフェン薄膜を形成し、これを銅箔からポリエチレンテレフタレートフィルム上へと転写することにより得る。。次に、光レジストをグラフェン上に塗布した後に、パターンを露光、現像する。グラフェン膜は酸素プラズマでエッチングして不良な部分を除去し、さらに残存レジストを溶媒除去して陽極画素電極212を得る。隔壁絶縁層213は感光樹脂を塗布し、露光、現像してグラフェン上部の樹脂を除去した後、加熱硬化して作製する。次いで、陽極212上に、インクジェット法により、PEDOTとPSSとの混合物からなる正孔注入層214Hと、青、緑及び赤色の発光層214Aとを順次形成する。
【0152】
正孔注入層214Hと発光層214Aとからなる活性層214上には、ポリエチレンイミンをドープした無置換グラフェン薄膜が陰極215として一方の主面に設けられたポリエチレンテレフタレートフィルムを、そのグラフェン薄膜が活性層214と接触するようにラミネートする。
その後、これによって得られる構造の周囲を透明なエポキシ樹脂で封止する。
【0153】
このようにして得られる有機EL表示装置2の表示領域は、非発光状態において、40乃至50%の透過率を示す。
【0154】
以上のようにして得られる有機EL表示装置2を使用すること以外は、例7と同様の発光装置WMを製造する。
【0155】
このようにして得られる発光装置WMについて、調光ミラー装置1’を透明な状態とし、有機EL表示装置2を非発光状態として、透過画像を観察する。その結果、透過画像を優れた視認性で観察することができる。
【0156】
(比較例8)
光学調整層3を省略したこと以外は、例8と同様の発光装置を製造する。このようにして得られる発光装置について、調光ミラー装置1’を透明な状態とし、有機EL表示装置2を非発光状態として、透過画像を観察する。その結果、明るさが大きく異なる領域の境界線が透過画像と重なり合い、透過画像を優れた視認性で観察することはできない。
【0157】
(例9)
以下のエレクトロクロミック調光装置1を使用すること以外は、例1と同様の発光装置WMを製造する。
【0158】
エレクトロクロミック調光装置1の製造においては、基板111及び121としてガラス基板を使用し、電極112及び122として無置換グラフェン層を形成する。エレクトロクロミック層140としては、RFマグトロンスパッタリングにより、WO3からなるアモルファス膜を形成する。
【0159】
電解質層130は、以下の方法で形成する。
【0160】
まず、基板111の電極112を形成した面に、枠形状の接着剤層を形成した。次いで、基板111及び121を電極112とエレクトロクロミック層140とが向き合うように重ね合わせ、接着剤を硬化させる。これにより、空セルを得、その後、空セルに、塩化リチウム水溶液を注入し、注入口を封止する。以上のようにして、塩化リチウム水溶液からなる電解質層130を得る。
【0161】
このようにして得られるエレクトロクロミック調光装置1は、透明な状態において、70乃至80%の透過率を示す。
【0162】
以上のようにして得られるエレクトロクロミック調光装置1を使用すること以外は、例1と同様の発光装置WMを製造する。
【0163】
このようにして得られる発光装置WMについて、エレクトロクロミック調光装置1を透明な状態とし、有機EL表示装置2を非発光状態として、透過画像を観察する。その結果、透過画像を優れた視認性で観察することができる。
【0164】
(比較例9)
光学調整層3を省略すること以外は、例9と同様の発光装置を製造する。このようにして得られる発光装置について、エレクトロクロミック調光装置1を透明な状態とし、有機EL表示装置2を非発光状態として、透過画像を観察する。その結果、明るさが大きく異なる領域の境界線が透過画像と重なり合い、透過画像を優れた視認性で観察することはできない。
【0165】
(例10)
有機EL表示装置2の代わりに、以下の有機EL装置2を使用すること以外は、例7と同様の発光装置WMを製造する。
【0166】
有機EL装置2の製造においては、基板211として、ポリエチレンテレフタレートフィルムを準備し、基板211上に、配線と硼素置換グラフェンからなる陽極212とを形成する。次いで、陽極212上に、PEDOTとPSSとの混合物を塗布して正孔注入層214Hを形成し、その上に、白色の発光層214Aを更に形成する。
【0167】
正孔注入層214Hと発光層214Aとからなる活性層214上には、ポリエチレンイミンをドープした無置換グラフェン薄膜が陰極215として一方の主面に設けられるポリエチレンテレフタレートフィルムを、そのグラフェン薄膜が活性層214と接触するようにラミネートする。
その後、これによって得られる構造の周囲を透明なエポキシ樹脂で封止する。
【0168】
このようにして得られる有機EL表示装置2の表示領域は、非発光状態において、60乃至70%の透過率を示す。
【0169】
以上のようにして得られる有機EL表示装置2を使用すること以外は、例7と同様の発光装置WMを製造する。
【0170】
このようにして得られる発光装置WMについて、調光ミラー装置1’を透明な状態とし、有機EL表示装置2を非発光状態として、透過画像を観察した。その結果、透過画像を優れた視認性で観察することができる。
【0171】
(比較例10)
光学調整層3を省略すること以外は、例10と同様の発光装置を製造した。このようにして得られる発光装置について、調光ミラー装置1’を透明な状態とし、有機EL表示装置2を非発光状態として、透過画像を観察する。その結果、明るさが大きく異なる領域の境界線が透過画像と重なり合い、透過画像を優れた視認性で観察することはできない。
【0172】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0173】
1…光透過層(エレクトロクロミック調光装置)、1’…光透過層(調光ミラー装置)、1''…光透過層(調光ガラス)、2…発光部、3…光学調整層、4…フレーム、21…アレイ基板、22…封止基板、23…シール層、111…第1基板、121…第2基板、112…第1電極、122…第2電極、130…電解質層、140…エレクトロクロミック層、141…イオン貯蔵層、142…固体電解質層、143…バッファ層、144…触媒層、145…エレクトロクロミック層、151…液晶層、211…第3基板、212…陽極、213…隔壁絶縁層、214…活性層、214A…発光層、214E…層、214H…層、215…陰極、A1…第1部分、A2…第2部分、A3…第3部分、IMG1…画像、IMG2…画像、WM…発光装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2領域とそれらの間に介在した第3領域とを含んだ光透過層と、
前記第2領域と又は前記第2及び第3領域と重なり合った発光部と
を具備した発光装置であって、
前記発光装置のうち前記第1領域に対応した第1部分は、可視域内の或る波長の光を第1透過率で透過させ、
前記発光装置のうち前記第2領域に対応した第2部分は、前記発光部による発光を生じ且つ前記波長の光を前記第1透過率よりも低い第2透過率で透過させ、
前記発光装置のうち前記第3領域に対応した第3部分は、前記波長の光に対する透過率が前記第1乃至第2透過率の範囲内で前記第1部分側の端から前記第2部分側の端へ向けて減少する透過率分布を有するように構成された発光装置。
【請求項2】
前記光透過層は、
互いに向き合った第1及び第2基板と、
前記第1及び第2基板間に介在し、印加する電圧の大きさに応じて光学特性が変化する光学可変層と、
前記第1及び第2基板間に介在した1つ以上の第1電極と、
前記第1及び第2基板間に介在し、前記1つ以上の第1電極と共に前記光学可変層に前記電圧を印加する第2電極と
を備え、前記光透過層の少なくとも一部において、可視域内の或る波長の光に対する透過率が、前記1つ以上の第1電極の各々と前記第2電極との間に印加する電圧の大きさ及び/又は向きに応じて変化するように構成された請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記光透過層は、前記波長の光に対する前記第3領域の透過率が、前記第1電極の少なくとも1つと前記第2電極との間に印加する電圧の大きさ及び/又は向きに応じて変化するように構成され、
前記発光装置は、前記波長の光に対する前記第3部分の透過率が、前記第1乃至第2透過率の範囲内で前記第1部分側の端から前記第2部分側の端へ向けて減少するように、前記第1電極の少なくとも1つと前記第2電極との間への電圧の印加を制御する請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第3部分に位置し、前記波長の光に対する透過率が前記第1乃至第2透過率の範囲内で前記第1部分側の端から前記第2部分側の端へ向けて減少する透過率分布を有している光学調整層を更に具備した請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光部は、
互いに向き合った第3及び第4基板と、
前記第3及び第4基板間に介在し、枠形状を有しているシール層と、
前記第3及び第4基板と前記シール層とによって囲まれた空間内に位置した1つ以上の発光素子と
を備え、
前記1つ以上の発光素子は前記第2部分内に位置し、前記シール層は前記第3部分内に位置している請求項1乃至4の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
第1領域とこれに囲まれた第2領域とを含み、前記第1領域の面積は前記第2領域の面積と比較してより大きい光透過層であって、互いに向き合った第1及び第2基板と、前記第1及び第2基板間に介在し、印加する電圧の大きさに応じて光学特性が変化する光学可変層と、前記第1及び第2基板間に介在した1つ以上の第1電極と、前記第1及び第2基板間に介在し、前記1つ以上の第1電極と共に前記光学可変層に前記電圧を印加する第2電極とを備え、前記光透過層の少なくとも一部において、可視域内の或る波長の光に対する透過率が、前記1つ以上の第1電極の各々と前記第2電極との間に印加する電圧の大きさ及び/又は向きに応じて変化するように構成された光透過層と、
前記第2領域に接着され、前記波長の光を透過させる発光部と
を具備した発光装置。
【請求項7】
前記光透過層は、前記第1及び第2領域間に介在した第3領域を更に含み、
前記発光装置のうち前記第1領域に対応した第1部分は、可視域内の或る波長の光を第1透過率で透過させ、
前記発光装置のうち前記第2領域に対応した第2部分は、前記発光部による発光を生じ且つ前記波長の光を前記第1透過率よりも低い第2透過率で透過させ、
前記発光装置のうち前記第3領域に対応した第3部分は、前記波長の光に対する透過率が前記第1乃至第2透過率の範囲内で前記第1部分側の端から前記第2部分側の端へ向けて減少する透過率分布を有するように構成された請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記光透過層及び前記発光部を互いから分離した状態において、それらの各々の一方の主面を第1温度とし、他方の主面を第1温度とは異なる第2温度とした場合に、前記光透過層は前記発光部と比較して単位長さ当たりの反り量がより小さい請求項1乃至7の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記光透過層及び前記発光部の少なくとも一方は、窒素若しくは硼素置換グラフェン又は無置換グラフェンからなる透明電極を備えた請求項1乃至8の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
ゴム状弾性を有し、前記波長の光を透過させる弾性層を、前記第2領域と前記発光部との間に更に具備した請求項1乃至9の何れか1項に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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