説明

発光装置

【課題】眼に対する安全性を向上させることが可能な発光装置を提供する。
【解決手段】この照明装置1(発光装置)は、励起光であるレーザ光が照射されることにより蛍光を出射する蛍光部材4と、励起光を蛍光に変換せずレイリー散乱させる散乱部材6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光装置に関し、特に、レーザ光が照射されることにより蛍光を出射する蛍光部材を備えた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光が照射される蛍光部材を備えた発光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。上記特許文献1には、赤外光(レーザ光)を出射する赤外線発生装置(レーザ発生器)と、赤外線発生装置から出射された赤外光が照射されると、その赤外光を可視光(蛍光)に変換し出射する光変換材料粉末(蛍光体粒子)と、光変換材料粉末から出射した光を反射する凹面鏡(反射部材)とを備えた可視光光源装置(発光装置)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−318998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のようにレーザ光を光変換材料粉末(蛍光体粒子)に照射し蛍光を得る構造では、レーザ光の一部が、蛍光に変換されずに光変換材料粉末を透過し、外部に出射する場合がある。レーザ光はコヒーレントな光であるため、レーザ光が蛍光に変換されずに外部に出射した場合、人間の眼に害を及ぼす場合があるという問題点がある。励起光としてレーザ光を使用する場合、国際安全規格IEC60825−1や、日本国内においてはJIS C6802等で定められたアイセーフティが満足されなければならない。特に照明装置のような民生機器に用いる場合は、光が何らかの光学系(レンズなど)を介して直接眼に入射する場合にも失明するおそれのないクラス1レベルのアイセーフティが望まれる。
【0005】
なお、ここでいう「コヒーレントな光」とは、空間的に位相がそろったコヒーレンス(可干渉性)の高い光のことである。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、眼に対する安全性を向上させることが可能な発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の発光装置は、励起光であるレーザ光が照射されることにより蛍光を出射する蛍光部材と、励起光の通過領域内に配置され、励起光を蛍光に変換せずレイリー散乱させる複数の散乱体粒子と、を備える。
【0008】
この発明の発光装置では、上記のように、励起光を蛍光に変換せずレイリー散乱させる複数の散乱体粒子を設ける。これにより、励起光であるレーザ光の一部が蛍光に変換されずに蛍光部材を透過する場合であっても、レーザ光(励起光)は散乱体粒子により散乱される。このため、散乱体粒子を含有する散乱部材や蛍光部材から出射する励起光の出射領域の面積を、散乱体粒子を設けない場合に蛍光部材から出射する励起光の出射領域の面積に比べて、大きくすることができる。すなわち、励起光の発光点を大きくすることができる。これにより、発光装置から外部に出射する励起光が人間の眼に害を及ぼすのを抑制することができる。その結果、眼に対する安全性を向上させることができる。
【0009】
ここで、レイリー散乱は以下の式(1)で表す特性を有しており、散乱係数kは照射される光の波長の4乗に反比例する。このため、例えば、450nmの青色光(励起光)は710nmの赤色光(蛍光)に比べて約6.2倍強く散乱される。これにより、励起光を強く散乱させながら、蛍光が散乱するのを抑制することができる。このため、蛍光が散乱体粒子により無駄に散乱されて光損失が生じるのを抑制することができる。なお、蛍光が散乱体粒子により無用に散乱されると、散乱体粒子を含有する散乱部材などの内部で蛍光が熱エネルギーに変換される確率が高くなり、光損失が生じる。
=(2π/3)n×((m−1)/(m+2))×d/λ・・・(1)
上記式(1)において、nは粒子数、mは反射係数、dは粒子径、λは波長である。
【0010】
また、励起光を蛍光に変換せずレイリー散乱させる散乱体粒子は、蛍光部材からの蛍光を吸収して別の波長の蛍光に波長変換することがない。そのため、蛍光部材からの蛍光の強度が減じたり、発光装置から出射する光の色度が変わるといったことがない。
【0011】
上記発光装置において、好ましくは、複数の散乱体粒子が分散された透明部材を含む散乱部材を備える。このように構成すれば、複数の散乱体粒子を容易に均一に分散させることができる。また、複数の散乱体粒子を透明な部材(透明部材)に分散させることによって、複数の散乱体粒子が均一に分散されているか否かを容易に確認することができる。
【0012】
上記散乱部材を備える発光装置において、好ましくは、散乱部材は蛍光部材に接触している。このように構成すれば、蛍光部材で発生する熱を散乱部材を介して放熱させることができるので、蛍光部材が高温になるのを抑制することができる。蛍光部材が高温になると、励起光を蛍光に変換する効率が低下するので、蛍光部材が高温になるのを抑制することにより、蛍光部材の変換効率が低下するのを抑制することができる。
【0013】
上記散乱部材が蛍光部材に接触している発光装置において、好ましくは、蛍光部材を保持する保持部材をさらに備え、散乱部材は保持部材に接触している。このように構成すれば、蛍光部材で発生する熱を散乱部材および保持部材を介して放熱させることができるので、蛍光部材が高温になるのをより抑制することができる。
【0014】
上記散乱部材を備える発光装置において、好ましくは、散乱部材は、蛍光部材の励起光が照射される照射面とは反対側に配置されている。このように構成すれば、レーザ光の一部が蛍光に変換されずに蛍光部材を透過した場合であっても、レーザ光(励起光)を散乱体粒子により、容易に散乱させることができる。また、蛍光部材を透過した励起光を、散乱させ、励起光の一部を、蛍光部材に戻すことができる。これにより、蛍光部材の変換効率を向上させることができる。
【0015】
上記散乱部材を備える発光装置において、好ましくは、散乱部材は、蛍光部材の励起光が照射される照射面側に配置されている。このように構成すれば、励起光であるレーザ光を散乱体粒子により、容易に散乱させることができる。また、励起光をある程度散乱させた状態で蛍光部材に照射させることができるので、蛍光部材が局所的に発熱して劣化するのを抑制することができる。
【0016】
この場合、好ましくは、蛍光部材により変換された蛍光と、蛍光部材により変換されなかった励起光とを照明光として利用する。
【0017】
上記散乱部材を備える発光装置において、好ましくは、散乱部材は蛍光を実質的にミー散乱させない。このように構成すれば、蛍光が散乱部材により無駄に散乱されて光損失が生じるのをより抑制することができる。
【0018】
上記発光装置において、好ましくは、散乱体粒子は1nm以上20nm以下の粒子径を有する。このように構成すれば、励起光を容易にレイリー散乱させることができる。
【0019】
上記発光装置において、好ましくは、励起光は380nm以上470nm以下の中心波長を有する。
【0020】
上記発光装置において、好ましくは、蛍光部材から出射した蛍光を外部に向かって反射する反射部材をさらに備える。
【0021】
上記反射部材を備える発光装置において、好ましくは、反射部材は、焦点を有する形状に形成された反射面を含み、蛍光部材は、反射面の焦点を含む領域、または、反射面の焦点の近傍に配置されている。このように構成すれば、発光装置から外部に出射する光(照明光)を、容易に、例えば平行光にしたり集光させたりすることができる。
【0022】
上記発光装置において、好ましくは、レーザ光を出射するレーザ発生器をさらに備える。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、眼に対する安全性を向上させることが可能な発光装置を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態の照明装置の構造を示した断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の保持部材の構造を示した正面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の散乱部材の構造を示した拡大図である。
【図4】本発明の第1実施形態の蛍光部材から出射する励起光の出射領域を説明するための断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の照明装置の構造を示した断面図である。
【図6】本発明の変形例による照明装置の構造を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、理解を容易にするために、断面図であってもハッチングを施さない場合がある。
【0026】
(第1実施形態)
図1〜図4を参照して、本発明の第1実施形態による照明装置1(発光装置)の構造について説明する。
【0027】
本発明の第1実施形態による照明装置1は、例えば自動車などの前方を照明する前照灯として用いられるものである。照明装置1は図1に示すように、レーザ光源(励起光源)として機能する半導体レーザ2(レーザ発生器)と、半導体レーザ2の前方に配置された導光部材3と、励起光であるレーザ光が照射される蛍光部材4と、蛍光部材4を保持する保持部材5と、蛍光部材4の前方を覆う散乱部材6と、蛍光部材4から出射した蛍光を外部に向かって反射する反射部材7とを備える。
【0028】
半導体レーザ2は半導体レーザ素子(図示せず)と半導体レーザ素子が搭載されるパッケージとによって構成されている。半導体レーザ2は例えば約380nm以上約470nm以下の中心波長を有するレーザ光を出射するように構成されている。例えば本実施形態では、半導体レーザ2は約405nmの中心波長を有する青紫色のレーザ光を出射するように構成されている。なお、レーザ光はコヒーレントな光である。
【0029】
導光部材3は半導体レーザ2から出射したレーザ光を蛍光部材4まで導光する機能を有する。導光部材3としては、光ファイバ、レンズ、反射鏡、周囲との屈折率差を利用して内部で光を反射させることにより導光する部材などを用いることができ、これらを複数組み合わせて用いてもよい。なお、導光部材3は必要に応じて設けられるものであり、例えば半導体レーザ2を蛍光部材4の近傍に配置する場合は無くてもよい。
【0030】
蛍光部材4は励起光(レーザ光)が照射される照射面4aと、非照射面4b(照射面4aとは反対側の面)と、照射面4aおよび被照射面4bを連結する側面4cとを含んでいる。蛍光部材4は励起光であるレーザ光が照射されることにより蛍光を出射する機能を有する。また、蛍光部材4は励起光よりも大きい中心波長を有する蛍光を出射する。蛍光部材4は、例えば青紫色のレーザ光を赤色光、緑色光および青色光にそれぞれ変換する3種類の蛍光体粒子(図示せず)を含んでいる。そして、蛍光部材4から出射する赤色光、緑色光および青色光の蛍光が混色されることによって、白色の照明光が得られる。蛍光部材4は、蛍光体粒子をガラスや樹脂などに混ぜて固めたものや、蛍光体粒子を加圧または焼結したものなどを用いることが可能である。蛍光体粒子は約1μm以上約30μm以下の粒子径を有する。なお、蛍光体粒子の粒子径とは、蛍光体粒子を横切る最も長い直線の長さを言う。このことは、後述する散乱体粒子6aの粒子径についても同様である。
【0031】
保持部材5は、金属やグラファイトなどの熱伝導率の高い材料により形成されている。保持部材5は図1および図2に示すように、蛍光部材4の側面4c(図1参照)を保持する保持部5aと、反射部材7(図1参照)に取り付けられる取付部5bと、保持部5aおよび取付部5bを連結する棒状の複数の連結部5cとを含んでいる。保持部5aは蛍光部材4の側面4cを直接保持してもよいし、接着層などを介して保持してもよい。取付部5bは図1に示すように、ボルト11やネジ(図示せず)などを用いて反射部材7の端部に固定されている。
【0032】
散乱部材6は図3に示すように、複数の散乱体粒子6aが内部に均一に分散された透明部材6bを含んでいる。この透明部材6bは、シリコーン樹脂または有機無機ハイブリッドガラス(HBG)のような樹脂ベースの封止材や、無機ガラスなどにより形成されている。透明部材6bを無機ガラスにより形成する場合、特に低融点ガラスと呼ばれる融点が600度以下の無機ガラスを用いれば、複数の散乱体粒子6aが内部に均一に分散されるように、散乱部材6を容易に製造することが可能である。
【0033】
散乱体粒子6aは約1nm以上約20nm以下の粒子径を有する。このため、散乱体粒子6a(散乱部材6)は励起光をレイリー散乱させる機能を有する。散乱体粒子6aとしては、Y(酸化イットリウム)、ダイヤモンド、Al(酸化アルミニウム)等を用いることができ、散乱体粒子6aは励起光を蛍光に変換する機能を有していない。また、散乱体粒子6aは、散乱部材6に0.1重量%以上10重量%以下含有されている。散乱体粒子6aが少なすぎると励起光をレイリー散乱させる効果が低くなり、多すぎると散乱部材6中での屈折率差が逆に小さくなって、励起光を分散させる(発光点を大きくする)ことが困難になる。
【0034】
散乱部材6(透明部材6b)には散乱体粒子6a以外の粒子は含有されていないので、散乱部材6は蛍光および励起光をミー散乱させない。なお、散乱部材6の製造時に、蛍光や励起光の波長の大きさと同程度の粒子径を有する粒子が僅かに混入する場合も考えられるが、この場合でも、散乱部材6は蛍光および励起光を実質的にミー散乱させないと言える。
【0035】
散乱部材6は図1に示すように、蛍光部材4の非照射面4b側を覆うように形成されており、励起光の通過領域内に配置されている。具体的には、散乱部材6は蛍光部材4の非照射面4bと側面4cの一部とに接触するように設けられており、励起光の一部は蛍光部材4を透過し散乱部材6に到達する。また、散乱部材6は保持部材5にも接触している。
【0036】
散乱部材6は0.1mm以上2.0mm以下程度の厚みに形成されている。なお、散乱部材6の前面6cは、平坦面である必要はなく、凸状(凸レンズ状)、凹状(凹レンズ状)、多面体状、その他の形状に形成されていてもよい。前面6cを凸状、凹状または多面体状などに形成すれば、照明光(蛍光)が出射する方向や量を制御することが可能である。
【0037】
散乱部材6は、散乱体粒子6aを含有する樹脂等を蛍光部材4の表面上に塗布して硬化することによって形成されていてもよい。また、散乱部材6は、散乱体粒子6aを含有する透明部材6bに凹部を設けることにより形成されていてもよく、その凹部に蛍光部材4が嵌め込まれていてもよい。
【0038】
反射部材7は、例えば金属により形成されており、保持部材5からの熱を放熱する機能を有する。また、反射部材7は凹状に形成された反射面7aを有する。この反射面7aは蛍光部材4から出射した蛍光を外部に向かって反射する機能を有する。反射面7aは例えば放物面の一部を含むように形成されている。また、反射面7aの焦点F1を含む領域に、蛍光部材4が配置されていている。反射部材7の反射面7aの頂点には、導光部材3を挿入するための挿入穴7bが形成されている。
【0039】
本実施形態の照明装置1では、半導体レーザ2から出射した励起光(レーザ光)は導光部材3に導光されて蛍光部材4の照射面4aに照射される。蛍光部材4に入射した励起光は蛍光体粒子により蛍光(例えば赤色光、緑色光および青色光)に変換される。そして、蛍光は蛍光部材4(照射面4a、非照射面4bおよび側面4c)から全方向に出射する。このとき、蛍光部材4の非照射面4bおよび側面4cから出射し散乱部材6に入射した赤色光および緑色光は、散乱部材6によりほとんど散乱されることなく外部に出射する。
【0040】
その一方、蛍光に変換されなかった一部の励起光は、蛍光部材4を透過する。このとき、蛍光部材4から出射する励起光の出射領域S(図4参照)の面積は、蛍光部材4から出射する蛍光の出射領域(蛍光部材4の全表面)の面積に比べて非常に小さい。そして、蛍光部材4を透過し散乱部材6に入射した励起光は、散乱部材6により散乱され、散乱部材6の広い領域(前面6cおよび側面6d)から外部に出射する。すなわち、散乱部材6を設けない場合に比べて、発光点(励起光の出射領域の面積)が大きくなる。このため、照明装置1は、国際安全規格IEC60825−1や、JIS C6802等のクラス1を満たす。なお、散乱部材6により散乱された励起光の一部は、蛍光部材4に戻り(再び入射し)、蛍光部材4により蛍光に変換される。
【0041】
本実施形態では、上記のように、励起光を蛍光に変換せずレイリー散乱させる複数の散乱体粒子6aを設ける。これにより、励起光であるレーザ光の一部が蛍光に変換されずに蛍光部材4を透過した場合であっても、レーザ光(励起光)は散乱体粒子6aにより散乱される。このため、散乱部材6から出射する励起光の出射領域の面積を、散乱部材6を設けない場合に蛍光部材4から出射する励起光の出射領域Sの面積に比べて、大きくすることができる。すなわち、励起光の発光点を大きくすることができる。これにより、照明装置1から外部に出射する励起光が人間の眼に害を及ぼすのを抑制することができる。その結果、眼に対する安全性を向上させることができる。
【0042】
ここで、レイリー散乱は上記式(1)で表した特性を有しており、散乱係数kは照射される光の波長の4乗に反比例する。これにより、励起光を強く散乱させながら、蛍光が散乱するのを抑制することができる。このため、蛍光が散乱体粒子6aにより無駄に散乱されて光損失が生じるのを抑制することができる。なお、蛍光が散乱体粒子6aにより無用に散乱されると、散乱部材6の内部で蛍光が熱エネルギーに変換される確率が高くなり、光損失が生じる。
【0043】
また、励起光を蛍光に変換せずレイリー散乱させる散乱体粒子6aは、蛍光部材4からの蛍光を吸収して別の波長の蛍光に波長変換することがない。そのため、蛍光部材4からの蛍光の強度が減じたり、照明装置1から出射する蛍光の色度が変わるといったことがない。なお、散乱体粒子が蛍光体である場合は、蛍光部材4から出射される蛍光を散乱体粒子が再吸収して蛍光を発する、所謂自己吸収と呼ばれる現象が発生する。このため、照明装置1から出射する蛍光が所望の色度からずれてしまったり、蛍光部材4からの蛍光の取り出し効率が低下する場合がある。
【0044】
また、上記のように、複数の散乱体粒子6aが分散された透明部材6bを含む散乱部材6を設ける。これにより、複数の散乱体粒子6aを容易に均一に分散させることができる。また、複数の散乱体粒子6aを透明な部材(透明部材6b)に分散させることによって、複数の散乱体粒子6aが均一に分散されているか否かを容易に確認することができる。また、散乱体粒子6aが分散される透明部材6bを、蛍光部材4を構成するガラスや樹脂などとは異なる材料により形成することができる。これにより、例えば熱伝導率の高い材料を用いて透明部材6bを形成することができるので、放熱性を向上させることができる。
【0045】
また、上記のように、散乱部材6を蛍光部材4に接触させる。これにより、蛍光部材4で発生する熱を散乱部材6を介して放熱させることができるので、蛍光部材4が高温になるのを抑制することができる。蛍光部材4が高温になると、励起光を蛍光に変換する効率が低下するので、蛍光部材4が高温になるのを抑制することにより、蛍光部材4の変換効率が低下するのを抑制することができる。なお、散乱部材6の透明部材6bとして、樹脂に比べて数倍〜数十倍程度熱伝導率の高い無機ガラスを用いれば、放熱性をより向上させることができる。また、散乱部材6を蛍光部材4に接触させることによって、散乱部材6を蛍光部材4から離れて配置する場合と異なり、散乱部材6を大型化する必要がない。これにより、散乱部材6と蛍光部材4とを同程度の大きさにすることができる。このため、青色光の発光点(青色光の出射領域)と赤色光および緑色光の発光点(赤色光および緑色光の出射領域)とを同程度の大きさにすることができ、照明光に色ムラが発生するのを抑制することができる。
【0046】
また、上記のように、散乱部材6を保持部材5に接触させる。これにより、蛍光部材4で発生する熱を散乱部材6および保持部材5を介して放熱させることができるので、蛍光部材4が高温になるのをより抑制することができる。
【0047】
また、上記のように、散乱部材6を、蛍光部材4の非照射面4b側に配置する。これにより、蛍光部材4を透過した励起光を、散乱させ、励起光の一部を、蛍光部材4に戻すことができる。これにより、蛍光部材4の変換効率を向上させることができる。
【0048】
また、上記のように、散乱体粒子6aは蛍光を実質的にミー散乱させない。これにより、蛍光が散乱部材6により無駄に散乱されて光損失が生じるのをより抑制することができる。
【0049】
また、上記のように、散乱体粒子6aの粒子径を1nm以上20nm以下にすることによって、励起光を容易にレイリー散乱させることができる。
【0050】
また、上記のように、蛍光部材4を、反射面7aの焦点F1を含む領域に配置する。これにより、照明装置1から外部に出射する光(照明光)を、容易に平行光に近づけることができる。
【0051】
(第2実施形態)
この第2実施形態では、図5を参照して、上記第1実施形態と異なり、蛍光部材4の照射面4a側を散乱部材6が覆っている場合について説明する。
【0052】
本発明の第2実施形態による照明装置では図3に示すように、半導体レーザ2は例えば約450nmの中心波長を有する青色のレーザ光を出射するように構成されている。
【0053】
蛍光部材4は金属ブロックなどから保持部材15に固定されている。この保持部材15の保持面15aは光反射機能を有する反射面により形成されていてもよい。蛍光部材4は、青色の励起光の一部を黄色光に変換する蛍光体粒子を含んでいる。そして、蛍光部材4により変換されなかった青色光と変換された黄色光とが混色されることによって、白色の照明光が得られる。すなわち、蛍光部材4により変換されなかった励起光(青色光)と蛍光部材4により変換された蛍光(黄色光)とが照明光として利用される。なお、蛍光部材4は青色の励起光の一部を赤色光および緑色光にそれぞれ変換する2種類の蛍光体粒子を含んでいてもよい。
【0054】
散乱部材6は蛍光部材4の照射面4a側を覆うように形成されており、励起光の通過領域内に配置されている。具体的には、散乱部材6は蛍光部材4の照射面4aと側面4cとに接触するように設けられている。また、散乱部材6は保持部材15にも接触している。
【0055】
なお、散乱部材6の前面6cを所謂モスアイ状(複数の微細突起(例えばピラミッド型の突起)が形成されたもの)に形成したり、前面6cに反射防止膜(図示せず)を設けてもよい。このように構成すれば、励起光が散乱部材6の前面6cで表面反射するのを抑制することが可能であり、励起光が散乱されていない状態で外部に出射するのを抑制することが可能である。
【0056】
散乱体粒子6aは、散乱部材6に5重量%以上50重量%以下程度含有されている。
【0057】
本実施形態の照明装置では、半導体レーザ2から出射した励起光(レーザ光)は導光部材3に導光されて散乱部材6の前面6cに照射される。散乱部材6に入射した励起光の一部は散乱体粒子6aにより散乱され、残りの励起光は散乱部材6を透過する。
【0058】
散乱部材6を透過し蛍光部材4に入射した励起光は蛍光体粒子により蛍光(例えば黄色光)に変換される。そして、蛍光は蛍光部材4(照射面4aおよび側面4c)から出射する。このとき、蛍光部材4の照射面4aおよび側面4cから出射し散乱部材6に入射した蛍光は、散乱部材6によりほとんど散乱されることなく外部に出射する。
【0059】
その一方、蛍光部材4に入射し蛍光に変換されなかった一部の励起光は、保持部材15の保持面15aや蛍光部材4の蛍光体粒子により進行方向が変更され、散乱部材6に戻る。散乱部材6に戻った励起光と、上記導光部材3に導光されて散乱部材6に入射した励起光の一部とは、散乱体粒子6aにより散乱され散乱部材6の表面(前面6cおよび側面6d)から外部に出射する。
【0060】
第2実施形態のその他の構造は、上記第1実施形態と同様である。
【0061】
本実施形態では、上記のように、散乱部材6を、蛍光部材4の照射面4a側に配置する。これにより、励起光をある程度散乱させた状態で蛍光部材4に照射させることができるので、蛍光部材4が局所的に発熱して劣化するのを抑制することができる。
【0062】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0063】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0064】
例えば、上記実施形態では、本発明の発光装置を自動車の前照灯に用いた例について示したが、本発明はこれに限らない。本発明の発光装置を、飛行機、船舶、ロボット、バイクまたは自転車や、その他の移動体の前照灯に用いてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、本発明の発光装置を前照灯(照明装置)に適用した例について示したが、本発明はこれに限らない。本発明の発光装置をダウンライトまたはスポットライトや、その他の照明装置に適用してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、励起光を可視光に変換した例について示したが、本発明はこれに限らず、励起光を可視光以外の光に変換してもよい。例えば、励起光を赤外光に変換する場合には、セキュリティ用CCDカメラの夜間照明装置や、赤外線暖房機の赤外線発光装置などにも適用可能である。
【0067】
また、上記実施形態では、白色の照明光が得られるように、励起光源(半導体レーザ)および蛍光部材を構成した例について示したが、本発明はこれに限らない。白色以外の照明光が得られるように、励起光源および蛍光部材を構成してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、レーザ光を出射するレーザ発生器として、半導体レーザを用いた例について示したが、本発明はこれに限らず、半導体レーザ以外のレーザ発生器を用いてもよい。
【0069】
また、上記実施形態で示した数値は一例であり、各数値は限定されない。
【0070】
また、上記実施形態では、反射部材の反射面を放物面の一部により形成した例について示したが、本発明はこれに限らず、反射面を例えば楕円面の一部により形成してもよい。この場合、蛍光部材を反射面の焦点に位置させることにより、照明装置から出射する光を容易に集光することができる。また、反射面を多数の曲面(例えば放物面)からなるマルチリフレクタや、多数の微細な平面が連続して設けられた自由曲面リフレクタなどにより形成してもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、複数の散乱体粒子を透明部材に含有させ、散乱部材(散乱体粒子および透明部材)を蛍光部材とは別に設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、複数の散乱体粒子を蛍光部材に含有させてもよい。すなわち、蛍光部材を構成するガラスや樹脂などに蛍光体粒子および散乱体粒子を含有させてもよい。このように構成すれば、蛍光部材の内部で励起光が散乱されるので、励起光が蛍光体粒子により蛍光に変換される確率が高くなる。これにより、蛍光部材の変換効率を向上させることができる。
【0072】
また、上記実施形態では、散乱部材が蛍光部材に接触している例について示したが、本発明はこれに限らず、散乱部材を蛍光部材から所定の距離を隔てて配置してもよい。例えば上記第1実施形態において、保持部材の前方(図1の左側)を覆うように散乱部材を設けることも可能である。
【0073】
また、上記実施形態では、蛍光部材の照射面または非照射面を覆うように散乱部材を設けた例について示したが、本発明はこれに限らない。蛍光部材の照射面と非照射面との両方を覆うように散乱部材を設けてもよい。この場合、蛍光部材の表面全面を覆うように散乱部材を設けてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、蛍光部材の側面の少なくとも一部を覆うように散乱部材を設けた例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば図6に示した本発明の変形例による照明装置のように、蛍光部材の側面を覆わないように散乱部材を設けてもよい。すなわち、蛍光部材の照射面(または非照射面)と同じ大きさに散乱部材を形成してもよい。このように構成すれば、蛍光の発光点(蛍光の出射領域)と励起光の発光点(励起光の出射領域)とを同じ大きさにすることができる。
【0075】
また、上記実施形態では、蛍光部材を、反射面の焦点を含む領域に配置した例について示したが、本発明はこれに限らず、蛍光部材を、反射面の焦点の近傍に配置してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、蛍光を外部に向かって反射する反射部材を設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、反射部材を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 照明装置(発光装置)
2 半導体レーザ(レーザ発生器)
4 蛍光部材
4a 照射面
5、15 保持部材
6 散乱部材
6a 散乱体粒子
6b 透明部材
7 反射部材
7a 反射面
F1 焦点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光であるレーザ光が照射されることにより蛍光を出射する蛍光部材と、
前記励起光の通過領域内に配置され、前記励起光を蛍光に変換せずレイリー散乱させる複数の散乱体粒子と、
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記複数の散乱体粒子が分散された透明部材を含む散乱部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記散乱部材は前記蛍光部材に接触していることを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記蛍光部材を保持する保持部材をさらに備え、
前記散乱部材は前記保持部材に接触していることを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記散乱部材は、前記蛍光部材の前記励起光が照射される照射面とは反対側に配置されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記散乱部材は、前記蛍光部材の前記励起光が照射される照射面側に配置されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記蛍光部材により変換された蛍光と、前記蛍光部材により変換されなかった励起光とを照明光として利用することを特徴とする請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記散乱部材は前記蛍光を実質的にミー散乱させないことを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記散乱体粒子は1nm以上20nm以下の粒子径を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記励起光は380nm以上470nm以下の中心波長を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記蛍光部材から出射した蛍光を外部に向かって反射する反射部材をさらに備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項12】
前記反射部材は、焦点を有する形状に形成された反射面を含み、
前記蛍光部材は、前記反射面の焦点を含む領域、または、前記反射面の焦点の近傍に配置されていることを特徴とする請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
前記レーザ光を出射するレーザ発生器をさらに備えることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−30380(P2013−30380A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166265(P2011−166265)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】