説明

発光装置

【課題】発光装置の配光特性に影響を与えることなく高輝度・高出力を実現しつつ、発光素子の発熱に起因する各部材の密着性の低下を防止して、発光装置の特性、信頼性及び寿命を向上させることができる発光装置を提供することを目的とする。
【解決手段】表面に、内壁と底面とを有する凹部を備えるパッケージと、前記凹部底面及び前記表面と反対側のパッケージ裏面において、その一部表裏面を露出して前記パッケージに埋設された金属部材と、該金属部材の凹部内の露出表面に配置された半導体発光素子とを有する発光装置であって、前記金属部材は、該パッケージと接する周縁の一部であって、かつその裏面に段差が形成され、かつ前記半導体発光素子を載置する領域において露出しており、該露出領域の外縁が、前記パッケージの凹部底面において、該パッケージ内壁下端から離間して配置されてなることを特徴とする発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関し、より詳細には、表示装置、照明器具、液晶ディスプレイ等のバックライト光源等に利用可能な発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高輝度・高出力の発光素子を搭載し、樹脂製パッケージによって固定した発光装置の研究が盛んに進められており、実用化されている。
しかし、発光素子の高出力に伴う発熱に起因して、材料固有の熱膨張係数の差異に基づく不具合、つまり、発光素子と金属部材との密着性及び電気的接続、金属部材とパッケージ材料との密着性、金属部材又はパッケージ材料とそれらを被覆する被覆樹脂との密着性等に関する不具合が生じており、発光装置の特性及び寿命に重大な問題を与えている。
【0003】
これに対して、発光素子の放熱性を向上させ、各部材の密着性を図る工夫が種々提案されている。
例えば、リードフレームや放熱部材上に発光装置を直接載置し、このリードフレーム又は放熱部材をパッケージ裏面に露出させることにより効率的に発光素子から発生する熱を放出する方法が提案されている。そして、このようにパッケージ裏面から露出させたリードフレーム又は放熱部材とパッケージとの密着性を確保するために、リードフレーム裏面の外周に段差を設け、その段差にパッケージの一部を回りこませる方法などが提案されている(特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特開2006−49442号公報
【特許文献2】特開2005−183993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、発光素子を載置するためのリードフレーム等の外周又は側面に段差を設けるために、裏面側からの衝撃によってその全周に段差を形成すると、リードフレーム内に歪が生じるとともに、その歪によってリードフレーム等に若干の変形が生じることがある。その結果、リードフレーム等を金型内に設置して射出成形を行う際に、リードフレーム等を金型に適切に固定できずに隙間が生じてしまい、パッケージ材料が意図しない部位に流れ込んでパッケージ自体に不具合を生じることがある。また、これによって、発光装置の実装のみならず、発光装置の配光にもに悪影響を及ぼすことがある。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みなされたものであり、発光装置の実装、配光特性に影響を与えることなく高輝度・高出力を実現しつつ、発光素子から発生する熱を効率的に放出させながら、各部材の密着性の低下を防止して、発光装置の特性、信頼性及び寿命を向上させることができる発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発光装置は、
表面に、内壁と底面とを有する凹部を備えるパッケージと、
前記凹部底面及び前記表面と反対側のパッケージ裏面において、その一部表裏面を露出して前記パッケージに埋設された金属部材と、
該金属部材の凹部内の露出表面に配置された半導体発光素子とを有する発光装置であって、
前記金属部材は、該パッケージと接する周縁の一部であって、かつその裏面に段差が形成されてなることを特徴とする。
このような発光装置では、前記金属部材は、前記パッケージと接する周縁の一部に少なくとも1つの切欠部を有しており、該切欠部を除く周縁の一部に段差が形成されてなることが好ましい。
また、前記金属部材の裏面の段差が、前記切欠部よりも発光装置の内側の周縁に形成されてなることが好ましい。
さらに、前記金属部材は、略平面を構成する板状であることが好ましい。
また、前記金属部材が前記半導体発光素子を載置する領域において露出しており、該露出領域の外周が、前記パッケージの凹部底面において、該パッケージ内壁下端から離間して配置されてなることが好ましい。
さらに、前記金属部材は、前記半導体発光素子と電気的に接続され、外部接続用の端子として機能するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発光装置によれば、発光装置の実装、配光特性に影響を与えることなく高輝度・高出力を実現しつつ、発光素子から発生する熱を効率的に放出させながら、各部材の密着性の低下を防止して、発光装置の特性、信頼性及び寿命を向上させることができる発光装置を提供することを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を実施するための最良の形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置を例示するものであって、本発明は、発光装置を以下に限定されるものではない。
また、本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものではない。特に、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定する記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、一の部材の機能を複数の部材で分担して実現してもよい。
【0009】
本発明の発光装置は、例えば、図1Aに示すように、中央部分に半導体発光素子14(以下、単に「発光素子14」と記す)を搭載するための凹部11aを備えるパッケージ11と、パッケージ11の凹部11a底面及び裏面にその一部を露出して、パッケージ11に埋設された金属部材12、13と、金属部材12、13の凹部11a内の露出表面に配置された発光素子14とを有して構成される。
【0010】
(半導体発光素子)
発光素子は、半導体からなるものであればよい。発光素子は、任意の波長のものを選択することができる。例えば、青色、緑色の発光素子としては、ZnSeや窒化物系半導体(InAlGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いたものを用いることができる。また、赤色の発光素子としては、GaAs、InPなどを用いることができる。さらに、これ以外の材料からなる半導体発光素子を用いてもよい。具体的には、基板上に、InN、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等の窒化物半導体、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体等、種々の半導体によって、活性層を含む積層構造が形成され、少なくとも一対の電極を有するものが挙げられる。
本発明の発光装置では、搭載される発光素子の数は、1つであってもよいが、2以上であることが好ましい。また、用いる発光素子の組成、発光色、大きさ等は目的に応じて適宜選択することができる。
【0011】
発光素子は、後述する金属部材に搭載される。発光素子を金属部材に搭載するためには、接合部材が用いられる。接合部材としては、用いる発光素子に応じて、導電性材料及び絶縁性材料のいずれを用いてもよい。例えば、絶縁性材料として、エポキシ樹脂、シリコーン等を用いることができる。これらは後述の導電性材料などを混合させて導電性材料として用いることもできる。導電性材料としては、Au−Sn共晶などの半田、低融点金属等のろう材、銀、金、パラジウムなどの導電性ペースト等を用いることができる。なお、発光素子からの光や熱による劣化を考慮して、発光素子裏面にAlメッキをしてもよい。
【0012】
この発光素子は、フェイスアップ及びフェイスダウン等の態様に応じて、通常、後述する金属部材と、ワイヤ等によって電気的に接続されている。例えば、ワイヤは、発光素子の電極とのオーミック性が良好であるか、機械的接続性が良好であるか、電気伝導性及び熱伝導性が良好なものであることが好ましい。熱伝導率としては、0.01cal/S・cm・℃/cm程度以上が好ましい。作業性などを考慮すると、ワイヤの直径は、10μm〜45μm程度が適当である。このようなワイヤの材料としては、例えば、金、銅、白金、アルミニウム等の金属及びそれらの合金が挙げられる。
【0013】
なお、本発明の発光装置には、発光素子のみならず、1つ又は複数の保護素子、受光素子等が搭載されていてもよい。保護素子は特に限定されるものではなく、例えば、過熱、過電圧、過電流、保護回路、静電保護素子等、具体的には、ツェナーダイオード、トランジスタのダイオード等が挙げられる。
【0014】
(金属部材)
金属部材は、少なくともその1つは、後述するパッケージにその表裏面の一部が露出し、一部が埋設されて配置される部材であり、少なくとも発光素子を載置するものであればよい。この場合、金属部材は、発光素子の載置領域を有し、放熱部材としての役割のみを果たすもの(例えば、図2Bの22参照)であってもよいし、発光素子と電気的に接続され、外部接続用の端子としての役割をも果たすもの(図1Bの12参照)であってもよい。なお、発光素子の載置領域の大きさは、金属部材に載置される発光素子の数(例えば、1つのみ又は2以上)に伴って適宜調整することができる。また、発光素子が載置される金属部材は、1つの発光装置において少なくとも1つ存在すればよいが、2以上存在してもよい。
【0015】
金属部材が発光素子の載置及び放熱の役割のみを果たすものであれば、これ以外に、発光素子と電気的に接続され、外部接続用の端子としての役割を果たす一対の金属部材を別途、少なくとも1対備えることが必要である(例えば、図2Bの23参照)。また、発光素子の載置又は放熱及び端子の双方として機能するもの(例えば、図1Bの12参照)であれば、この金属部材と対をなす、少なくとも1つの金属部材をさらに備えることが必要である。なお、発光装置内に一対の金属部材が存在するのであれば、発光素子の載置用、端子用、放熱用等の別の機能のために、さらに1以上の金属部材を備えていてもよい。
【0016】
金属部材の材料は特に限定されず、熱伝導率の比較的大きな材料(例えば、200W/(m・K)程度以上)、比較的大きい機械的強度を有するもの、あるいは打ち抜きプレス加工又はエッチング加工等が容易な材料で形成することが好ましい。このような材料で形成することにより、半導体素子で発生する熱を効率的に逃がすことができる。具体的には、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、鉄、ニッケル等の金属又は鉄−ニッケル合金、燐青銅等の合金等が挙げられる。また、金属部材の表面には、搭載される半導体素子からの光を効率よく取り出すためにメッキが施されていることが好ましい。
【0017】
金属部材は、実質的に板状、つまり、略平面を構成する板状であることが好ましく、発光装置内において、発光面から見て、1つの金属部材が屈曲又は湾曲してそれ自体が重なり合うものでなく、また、複数の金属部材が備えられている場合、金属部材同士が重なり合わず、略平面構成するものが適している。
【0018】
金属部材は、パッケージと接する周縁の一部であってその裏面に段差が形成されているが、その段差を除いて、実質的に均一な膜厚であることが好ましい。ただし、段差は表面にも形成されていてもよい。その膜厚は特に限定されるものではないが、例えば、最も厚膜部分(中央部)で0.3mm〜2mm程度、最も薄膜部分(周縁の段差部分)で0.05mm〜0.2mm程度が例示される。この範囲の薄さとすることにより、発光素子における十分な強度、十分な放熱効果を確保することができる。
【0019】
段差部の幅及び高さ(図1C中、W及びH参照)は、特に限定されるものではないが、例えば、厚膜部分が2mm程度の厚さの場合は、厚膜部分に対して1/20〜1/2程度の高さが好ましく、幅Wは0.1mm〜1mm程度、高さHは0.1mm〜1mm程度であることが適している。幅Wと高さHとの比率は、特に限定されるものではないが、例えば、幅W:高さH=1:1となるように調整するのが好ましい。厚膜部分が0.3mm程度の比較的薄い場合などは、厚膜部分に対して1/3〜1/2程度とするなど、金属部材の厚さに応じて、適宜調整することができる。金属部材の周縁の段差は、その全てが同じ膜厚及び/又は幅でなくてもよく、膜厚及び/又は幅が異なっていてもよい。このような膜厚及び/又は幅が異なる部位は、段階的であってもよいし、傾斜的であってもよい。このように周縁の段差を有していることにより、金属部材の表面積を確保することにより、放熱効果を十分に向上させることができる。また、平面方向に対するアンカー効果を得る、つまり、パッケージに対する金属部材のずれを防止することができ、発光装置を精度よく製造することが可能となる。さらに、パッケージを構成する樹脂の金属部材側面から裏面(段差部分)への回り込みを適切に調整することができ、パッケージと金属部材との密着性を確保して、パッケージの剥がれを防止することができる。
【0020】
金属部材における段差は、例えば、金属部材の形成と同時に形成してもよいし、その前後に別途形成してもよい。段差の形成は、例えば、金属部材が所定の外形形状となるよう打ち抜き加工を施した後、適当なマスクを用いて又は用いないで、裏面の周縁に対応する部分をエッチングする方法、裏面から適当な加工器具を用いて押圧/衝撃を加える(叩く)方法、研磨、切削する方法、レーザ光等を照射する方法等が挙げられる。なかでも、最も確実で簡便である裏面から押圧/衝撃を加える方法が好ましい。押圧/衝撃の加重、回数等は任意に選択することができ、角度なども任意に選択することができる。また、加工器具の先端形状を変更することで、段差の形状等を変更することができる。例えば、図1Cの断面図においては、段差は、丸みを帯びた形状であるが、2段以上の階段状等の種々の形状とすることができる。
【0021】
なお、段差は、パッケージと接する周縁の全部ではなく、パッケージと接する周縁の一部に形成されていることが好ましい。周縁の一部に段差を設けることにより、上述した段差の形成方法、特に裏面から圧力/衝撃を加える方法によっては、段差の形成による金属部材における歪、この歪による金属部材の変形等を吸収/緩和することができ、パッケージ成型時に生じる成形不良等を抑え、精密で歩留まりの高い発光装置を製造することが可能となる。
【0022】
また、段差は、金属部材の周縁のみならず、金属部材の内側に形成されていてもよい。さらに、この貫通孔に段差が設けられることにより、パッケージを構成する樹脂の金属部材の裏面(段差部分)へ回り込みを可能にし、パッケージと金属部材との密着性をより強固にすることができる。なお、貫通孔における段差も、貫通孔の全周のみならず、一部周囲に設けることが適している。
【0023】
金属部材は、パッケージと接する周縁の一部に少なくとも1つの切欠部(例えば、図1Bの12c参照)を有していることが好ましい。また、切欠部を除く周縁の一部に段差が形成されていることが好ましい。切欠部を設けることにより、金属部材のパッケージと接する周縁の長さを確保することができるために、パッケージと金属部材との接触面積をより増大させ、両者の密着性をより確保することができる。また、段差が切欠部に形成されていないことにより、上述したような段差の形成による金属部材における歪、歪による変形を切欠部で効果的に吸収/緩和することができるからである。
切欠部は、1つのみでもよく、金属部材の形状によって、周縁のラインが一定の方向を示す部位のいずれかに形成されていてもよいが、周縁のライン方向が変更する部位(例えば、角又はそれに対応する部位)の2以上、さらに全ての部位に形成されることが好ましい。
【0024】
切欠部の形状は特に限定されるものではないが、例えば、平面視において、周縁のライン方向が変更する部位に窪みが形成されるように形成されることが好ましい。また、切欠部は、平面視において、段階的に切欠かれた形状、直線的に切欠かれた形状であってもよいが、円、楕円、放物線の一部で丸取りしたような傾斜的な形状であることが好ましい(図1Bの12c参照)。このような切欠部は、金属部材をパッケージに埋設する際に、金属部材のパッケージ内でのずれを防止するために利用することができる。
【0025】
また、金属部材の裏面の周縁に形成される段差は、切欠部よりも発光装置の内側に形成されていることが好ましい。ここで内側とは、通常、金属部材の発光素子の搭載領域が発光装置の中央に配置されるため、この領域に向う側を内側と称し、パッケージ外部に延長する金属部材の末端側を外側と称する。なお、切欠部が複数存在する場合には、段差は、パッケージ内であって、最も外側に配置する切欠部よりも内側に形成されることが好ましい。
【0026】
なお、金属部材の表面は、例えば、発光素子又は保護素子を載置する領域の近傍、電気的接続をとるための接続点の近傍、パッケージからの露出部分の外周近傍において、凹部又は溝(図1A中の18参照)が形成されていることが好ましい。この凹部又は溝は、発光素子又は保護素子と金属部材との接合用部材が金属部材表面に広がることによる電気的接続を取る際の不具体を防止する機能を有する。また、凹部又は溝を設けることにより、封止/被覆樹脂との接触面積を増大させることができるために、金属部材と封止/被覆樹脂との密着性を向上させることができる。
【0027】
(パッケージ)
本発明の発光装置は、パッケージを備えている。つまり、パッケージは、複数の金属部材を一体的に又は塊状に、成形、固定、封止又は被覆するものであればよく、一般に、金属部材を固定する成形/固定樹脂によって構成される。なお、発光素子及びワイヤ等を被覆する封止/被覆樹脂がさらに形成されていてもよい。いずれの場合においても、材料としての樹脂は、発光素子等に対して絶縁性を確保することができるものであれば、どのような材料でもよい。また、発光素子からの光、外光などが透過しにくい部材、ある程度の強度を有するものを用いてもよい。例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等、より具体的には、ポリフタルアミド(PPA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ABS樹脂、ガラスエポキシ樹脂、BTレジン、フェノール樹脂、アクリル樹脂、PBT樹脂等の樹脂、セラミック、硝子等が挙げられる。また、上記に加え、シリコーン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂等の耐候性に優れた透光性の樹脂を用いてもよい。ここで、透光性とは、半導体素子から出射された光を70%程度以上、80%程度以上、90%程度以上、95%程度以上透過させる性質を意味する。なお、封止/被覆樹脂を用いる場合は、成形/固定樹脂との熱膨張係数の差が小さいものを選択することが好ましい。これにより、発光素子から発生する熱によるパッケージの剥がれ、被覆樹脂の剥がれ等を防止することができる。
【0028】
また、これらの材料には、着色剤として、種々の染料又は顔料等を混合して用いてもよい。例えば、Cr、MnO、Fe、カーボンブラック等が挙げられる。
さらに、これらの材料には、拡散剤、波長変換部材(蛍光物質)、フィラー等を含有させてもよい。拡散剤は、光を拡散させるものであり、発光素子からの指向性を緩和させ、視野角を増大させることができる。波長変換部材は、発光素子からの光を変換させるものであり、発光素子から樹脂パッケージの外部へ出射される光の波長を変換することができる。発光素子からの光がエネルギーの高い短波長の可視光の場合、有機蛍光物質であるペリレン系誘導体、ZnCdS:Cu、YAG:Ce、Eu及び/又はCrで賦活された窒素含有CaO−Al−SiOなどの無機蛍光物質など、種々好適に用いられる。フィラーとしては、特に限定されるものではなく、例えば、シリカ等公知のものを用いることができる。
【0029】
成形、固定又は封止のための樹脂の大きさ及び形状は特に限定されるものではなく、例えば、円柱、楕円柱、球、卵形、三角柱、四角柱、多角柱又はこれらに近似する形状等どのような形状でもよいが、発光素子を配置するために、その一面(つまり、表面)側に凹部を備えているものが好ましい。この凹部の形状は、特に限定されるものではないが、少なくとも、内壁と底面とを有する、例えば、円錐台、楕円錐台、多角形錐台形状等が挙げられ、凹部の大きさは、発光素子の合計の占有面積よりも大きいことが適している。なお、凹部の内壁の角度は特に限定されず、用いる発光素子の性能、得ようとする発光装置の特性等によって適宜調整することができる。また、図3に示したように、凹部31a、41a、51a、61a上面(金属部材32と一体化したパッケージ31、41、51、61表面)における外周の形状は、例えば、段差のない形状(図3A)、1段の段差がある形状((図3B)2段の段差がある形状(図3C及び3D)等のいずれであってもよい。
【0030】
パッケージは、凹部の底面と、凹部が形成されている側の反対側のパッケージ面(つまり、裏面)とにおいて、金属部材の一部表裏面を露出している。これによって、発光素子から発生する熱を効率的に発光装置の外部に逃がすことができる。
なお、金属部材の表面の一部としては、発光素子が載置される領域及びその周辺に配置する端子として機能する領域が挙げられる。電気的な接続を確保するためである。この場合、発光素子が載置する領域の金属部材の外周は、パッケージの凹部底面において、パッケージ内壁下端から離間して配置されていることが好ましい。これにより、金属部材とパッケージ材料との接触領域を大きくすることができるため、例えば、パッケージ材料と金属部材との密着性が低く、成型後に隙間が存在するような場合であっても、その隙間を介して封止樹脂が外部に漏れだしたり、あるいは外部から水分などが侵入することを抑制することが可能となる。離間の距離D(図1A参照)は特に限定されるものではなく、必ずしも一定である必要はない。ただし、金属部材を被覆するように設けられるパッケージ材料の厚みが薄い場合は、成型時に用いる金型内に樹脂が流れ込みにくくなる可能性がある。そのため、パッケージ材料として用いる樹脂の粘度などを考慮して、適宜調整することが好ましい。
裏面の一部としては、略全裏面が露出していることが好ましいが、少なくとも段差の裏面側の一部が露出しておらず、パッケージによって被覆されていることが好ましい。これにより、放熱性を最大限に確保することができるとともに、パッケージを構成する樹脂の一部が段差に回り込んで金属部材との密着性を確保することが可能となる。
【0031】
このパッケージは、通常、金属部材(好ましくは、複数)がインサートされて閉じられた金型内に、所定の箇所に形成されたゲートから、溶融した上記材料を流し込み、硬化させることにより、金属部材と一体的に形成される。従って、上述したように、金属部材の周縁への段差の一部配置によって、金属部材の歪及び変形を最小限にとどめることができるために、金属部材とパッケージとの一体化を、パッケージの変形等を伴うことなく、精密に行うことが可能となる。
【0032】
封止/被覆樹脂は、発光素子等を被覆するのみならず、集光のためのレンズとして機能するものであってもよい。
【0033】
さらに、本発明の発光装置は、発光装置の一部として又はパッケージ表面に付属するように、例えば、発光素子の光の出射部(例えば、発光素子の上方)に、プラスチック又は硝子からなるレンズ等が備えられていてもよい。また、発光素子からの光の取り出しを効率的に行うために、反射部材、反射防止部材、光拡散部材等、種々の部品が備えられていてもよい。
【0034】
以下に、本発明の発光装置の具体的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
実施形態1
図1A〜図1Dは、この実施形態における発光装置を示す。図1Aは発光装置の平面図、図1Bは発光装置の底面図、図1Cは図1BにおけるA−A’線断面図、図1Dは斜視図である。
【0035】
発光装置10は、発光素子14と、金属部材12、13と、パッケージ11とから、主として形成されている。
【0036】
発光素子14は、主波長が約455nmの青色発光を有するGaN系半導体によって形成されており、2列にわたって合計8個載置されている。この発光素子14は、互いに直径10μm程度の金線からなるワイヤ16によって接続されるとともに、例えば、銀ペーストによって金属部材12上にダイボンディングされ、金属部材12、13とそれぞれワイヤ16によって電気的に接続されている。
【0037】
金属部材12は、発光素子14を載置する領域12aと、端子12bとして機能する領域とを有し、その一端が外部に突出している。また、金属部材13は、金属部材12とともに一対の電極を構成し、その一端を外部に突出している。これらの金属部材12、13は、銀メッキ銅板を、プレスを用いた打ち抜き加工により形成された、略平面を構成する板状であり、その厚みは略0.5mm程度である。
【0038】
金属部材12は、パッケージと接する周縁の一部において、ライン方向が変更する点において、切欠部12cが形成されている。この切欠部12cは、例えば、図1Bにおいては4つ形成されている。切欠部を設けることにより、金属部材のパッケージと接する周縁の長さを確保することができるために、パッケージと金属部材との接触面積をより増大させ、両者の密着性をより確保することができる。
【0039】
また、金属部材12は、図1B及び1Cに示すように、切欠部12c以外の裏面の周縁に段差12d(点線で示す)を有する。なお、金属部材12における段差12dは、最も外側にある切欠部12cよりも発光装置の内側の周縁に形成されている。この段差12dの高さHは0.15mm程度、幅Wは0.15mm程度で形成されている。さらに、金属部材12は、貫通孔12eを有しており、貫通孔12eの周縁においても、段差12dを有している。貫通孔を設けることにより、金属部材とパッケージとの接触面積を増加させ、両者の密着性をより確保することができる。また、この貫通孔に段差が設けられることにより、パッケージを構成する樹脂の金属部材の裏面(段差部分)へ回り込ませることができ、パッケージと金属部材との密着性をより強固にすることができる。
【0040】
金属部材12には、発光素子14の載置領域12aの近傍及びワイヤが接続される点の近傍に、溝18が形成されている。このような溝18を有することにより、後述する透光性被覆材を入り込ませて、接触面積を稼ぎ、透光性被覆材の剥離を防止することができる。
【0041】
金属部材13は、発光素子14の載置領域12aを有していないため、その平面形状は若干異なるが、金属部材12と同様に、切欠部13c、段差13dは、貫通孔13eを有している。なお、この金属部材13においては、保護素子15の近傍に溝18が形成されている。この溝18は保護素子15の接合に用いられるダイボンド材が、金属部材13上に広がるのを防止し、発効素子14と金属部材13との電気的な接続を確実に行わせることができる。
【0042】
パッケージ11は、その一面の中央に凹部11aを有する。凹部11aは、略逆円錐台の形状をしており、そのテーパー角が、例えば、40°程度の内壁11bを有している。凹部11aの底面においては、金属部材12、13の一部表面を露出させている。なお、この凹部11aの底面において、金属部材12の発光素子14を載置する領域12aの外周は、パッケージ11aの内壁11bの下端から離間して配置されている。
【0043】
また、図1Dに示すように、パッケージ11の裏面においては、金属部材12、13の段差12d、13d以外の略全面が露出するように、金属部材12、13が埋設されている。このように金属部材12、13が露出していることにより、より放熱効果を向上させることができる。
【0044】
この発光装置は、金属部材13上に保護素子15が搭載されており、金属部材12とワイヤによって電気的に接続されている。
また、発光素子14が搭載されたパッケージ11の凹部11a内には、エポキシ樹脂からなる透光性被覆材(図示せず)が充填され、硬化されている。
【0045】
このような構成の発光装置によれば、金属部材が、裏面の周縁の一部に段差を有しているために、金属部材自体の表面積を確保することができ、より放熱効果を向上させることができる。また、平面方向に対するアンカー効果を得る、つまり、金属部材のずれを防止することができ、発光装置を精度よく製造することが可能となる。さらに、パッケージを構成する樹脂の金属部材側面から裏面(段差部分)への回り込みを可能にして、この段差によって、パッケージと金属部材との密着性を確保し、パッケージの剥がれを防止することができる。
【0046】
実施形態2
この実施形態の発光装置20を図2A、図2Bに示す。図2Aは発光装置の平面図、図2Bは発光装置の底面図である。
この発光装置20は、発光素子14の載置用の金属部材22が、端子として機能する金属部材23と、別個に設けられ、端子として機能する金属部材23が、金属部材22を挟んで対向するように2対設けられているとともに、パッケージ21の外形が若干異なる以外、実質的に実施形態1の発光装置10と同様の構成である。なお、金属部材22の発光素子の載置領域の両側に、溝27が形成されている。
【0047】
このような発光装置においても、実施形態1と同様の効果を有する。
また、溝27によって、パッケージ材料と金属部材との密着性を確保することができるとともに、封止材料の外部への漏れや、外部から水分などが侵入することなどを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の発光装置は、各種表示装置、照明器具、ディスプレイ、液晶ディスプレイのバックライト光源、さらには、ファクシミリ、コピー機、スキャナ等における画像読取装置、プロジェクタ装置等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1A】本発明の発光装置の実施の形態を示す平面図である。
【図1B】図1Aの発光装置の底面図である。
【図1C】図1BのA−A’線断面図である。
【図1D】図1の発光装置の裏面斜視図である。
【図2A】本発明の発光装置の別の実施の形態を示す平面図である。
【図2B】図2Aの発光装置の底面図である。
【図3】本発明の発光装置のパッケージ凹部の上面形状を説明するための概略断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10、20 発光装置
11 パッケージ
11a 凹部
11b 内壁
12、13、22、23 金属部材
12a 発光素子の載置領域
12b 端子
12c、13c、22c、23c 切欠部
12d、13d、22d、23d 段差
12e、13e、22e、23e 貫通孔
14 発光素子
15 保護素子
16 ワイヤ
18、27、28 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に、内壁と底面とを有する凹部を備えるパッケージと、
前記凹部底面及び前記表面と反対側のパッケージ裏面において、その一部表裏面を露出して前記パッケージに埋設された金属部材と、
該金属部材の凹部内の露出表面に配置された半導体発光素子とを有する発光装置であって、
前記金属部材は、該パッケージと接する周縁の一部であって、かつその裏面に段差が形成され、かつ前記半導体発光素子を載置する領域において露出しており、該露出領域の外縁が、前記パッケージの凹部底面において、該パッケージ内壁下端から離間して配置されてなることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記金属部材は、周縁のライン方向が変更した複数の部位において、その裏面に段差を有する請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記金属部材は、前記パッケージと接する周縁の一部に少なくとも1つの切欠部を有しており、該切欠部を除く周縁の一部に段差が形成されてなる請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記金属部材の裏面の段差が、前記切欠部よりも発光装置の内側の周縁に形成されてなる請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記金属部材は、略平面を構成する板状である請求項1〜4のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項6】
前記金属部材は、前記半導体発光素子と電気的に接続され、外部接続用の端子として機能する請求項1〜5のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項7】
前記金属部材は、前記段差を除いて、実質的に均一な膜厚である請求項1〜6のいずれか1つに記載の発光装置。


【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−58782(P2013−58782A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−248137(P2012−248137)
【出願日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【分割の表示】特願2007−232282(P2007−232282)の分割
【原出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】