説明

発射物などの銃口速度を測定する測定装置および測定方法

本発明は、発射物(6)などの銃口速度(V0)を測定する測定デバイスおよび該測定デバイスを実装可能な測定方法に関する。測定デバイスは、導波管(1)として武器の銃身または充填銃身(1)と、信号供給部により少なくとも1つの放出カプラ(2)に電気的に接続された、武器の銃身または充填銃身(1)を励起する信号生成器(4)と、少なくとも1つの受信カプラ(3)の測定された信号を評価デバイス(5)に伝送する受信ラインとを具備する。放出カプラ(2)と受信カプラ(3)との間の距離は可変であり、導波管(1)のモード選択によって個々に選定可能である。放出カプラ(2)に対する受信カプラ(3)の位置は好適な測定方法に応じて定まる。発射物(6)の通過後に速度が測定される場合、受信カプラ(3)は発射物の基部と放出カプラ(2)との間に配置される。放射物(6)の通過前に速度(V0)が測定される場合、受信カプラ(3)は発射物の先端と放出カプラ(2)との間に配置される。両方の測定方法を組み合わせた場合、少なくとも2つの受信カプラ(3)が組み込まれて、放出カプラ(2)が2つの受信カプラ(3)の間に配置される。空の武器の銃身または充填銃身(1)の電磁場は、発射物(6)が存在しない状態で発射物(6)の前方または後方あるいはこれらの組合せにより測定される。銃口速度(V0)が測定された信号から決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特許文献1は、発射物の初速度を制御する制御手段を開示している。したがって、銃口速度に関連するパラメータを測定できるセンサ手段が提供されている。このことは、少なくとも武器の銃身内または武器の銃身に対して取り付けられたセンサによってなされ、このセンサは、武器の銃身に隣接する推進ガスが加熱された結果として生じる武器の銃身内の高い圧力を記録できる。センサとして歪ゲージが提案されており、これらは武器の銃身と接触するようになっている。この場合、武器の銃身の歪みが測定される。発射物の動き、すなわち発射物の速度が、2つの個別のセンサによる発射物の通過記録の時間差から決定される。
【背景技術】
【0002】
特許文献2は、その時点での銃口速度を直接的に測定していない。なぜなら実際の銃口速度は、発射物のその時点での飛翔速度に関連する情報により決定される、つまり銃口速度は前記情報から逆算されるからである。その時点での銃口速度は、標準的な銃身速度を利用して発射物の始動時間用の既定の始動時間を修正するために用いられ、これはその時点での信管の設定時間として用いられる。マイクロ波伝送器、好ましくはギガヘルツ(GHz)帯のマイクロ波伝送器がこの情報を発射物に伝送するために使用され、例えば発火制御部によって定義されるその時点での信管設定を弾薬または発射物に伝送する。
【0003】
銃身を円形状の導波管として作動させて銃身内の発射物のドップラー速度を測定するさらなる測定方法が特許文献3に開示されている。この場合、信号の周波数は関連の導波モードのカットオフ周波数よりも高い。この場合に集められた電磁波は、銃身内を伝搬して発射物によって反射される。さらに、これは瞬時の速度に応じて定まるドップラー周波数シフトの結果をもたらす。
【0004】
特許文献4は、電磁波を利用して銃身における速度を測定する測定機器を開示している。ここでは、銃身の導波波長が、銃身における発射物の移動変化の尺度として用いられている。伝送器および受信検出器は、この目的のために銃身から同じ距離に配列されている。この場合、発射物は電磁波の反射体として使用されている。回転方向に対照なタイプのホーン形エミッタが銃身の銃口に取り付けられている。ミラーが発射方向に対して傾斜して配列されており、矩形のホーン形エミッタから銃身へと移動する電磁波を適切に屈折させる。銃身の導波波長は、特別な試験において、発射物の代わりに電磁波用のミラーを銃身内において所与の態様でゆっくりと変位させて、2つの最大値の間の距離を測定して記録するようにして定められる。
【0005】
特許文献5は、管状の武器における内部の弾道学的特性変数を決定するための決定方法および決定デバイスを開示している。この場合、電磁波が武器の銃身側部に形成された導波接点を介して供給されるとともに、武器の銃身内において発射物によって反射された後に再び放出されるので、実弾を用いてもなお意義のある測定ができる。これは、発射の方向に電磁波を供給するのではなく、武器の銃口から電磁波のエネルギの少なくとも半分を放出するという基本的な考えに基づいている。電磁波を供給するために、導波管接点において互いに離間された少なくとも2箇所から電磁波を分割して武器の銃身に供給する。この結果、発射の方向に伝搬する電磁波の成分が付加されて、反対方向に伝搬する波を補償するようになっている。
【0006】
本願の後に公開される特許文献6は、武器の銃身または発射銃身および/またはマズルブレーキの部品を導波管として利用する(導波管は、非常に高い導電性を有する壁面を備えた特徴的な断面形状を有する管体である。特に、矩形の導波管および円形の導波管は技術的に広く使用されている。)。しかしながら、これらの導波管は、関連の導波モードのカットオフ周波数を下回って作動される。この場合、伝送カプラと受信カプラとの間の距離は一定である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ国特許明細書第69709291号明細書(欧州特許第0840087号明細書)
【特許文献2】ドイツ国特許出願公開第102005024179号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0023365号明細書
【特許文献4】ドイツ国特許出願公開第2717949号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0331670号明細書
【特許文献6】ドイツ国特許出願公開第102006058375.2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
同様の考えに則って、本発明の目的は、発射物などの銃口速度を良好かつ正確に決定できるさらなる測定方法を特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、特許請求の範囲の請求項1に記載の特徴によって達成される。有利な実施形態は従属項によって特定される。
【0010】
本発明は、好ましくは発射前または発射後の銃口速度それ自体を測定若しくは決定するという考えに基づくものであり、この場合、発射前と発射後とを組み合わせると顕著に測定の正確さが増す。発射前の測定に際して、発射物が導波管を通過するときに発射物の先端部が電磁場に影響を与えるという事実が考慮される。この影響は、兵器のタイプが一般に知られているという事実によって補償されるもので、その結果として発射物を特徴付ける数値が用いられて、測定時の先端部の影響を補償できるようになっている。発射後に測定される場合においては円柱形状の基部が用いられ、その結果として発射物の先端部の形状とは無関係に測定される。この場合、基部が電磁場に影響を与える。多くのタイプの発射物は平坦な円柱状の基部を有するので、発射物が通過した後の測定方法が用いられうる。これらのそれぞれの変化は、受信カプラによって検出され、評価デバイスに供給される。
【0011】
本願の後に公開される特許文献(前記参照)において外形が定められた導波管が導波管として使用されるのとは対照的に、任意の所望の断面を有する円滑な銃身が導波管として好適に用いられうる。さらに、少なくとも1つの伝送カプラおよび1つの受信カプラの助勢を受けて発射物が存在しない、すなわち発射物が導波管を通過する前の電磁場が検出される。各発射物が通過する前の最後のサンプル値が測定値を較正するために用いられる。したがって、この較正は、すべての温度依存性の影響その他の影響を対象にしている。発射物が通過するときに電磁場の変化量が検出され、較正されて正常化される。したがって、銃口速度は温度変化その他の影響から無関係に測定される。
【0012】
信号生成器(例えば発振器)が、導波管の下限のカットオフ周波数より低い周波数に操作される一定の中周波数帯の信号を生成する。伝送カプラ(コイル、ダイポールなど)の幾何学的特徴およびその特性の結果として、複数の導波モード(TEmn ここで、m=0,1,2,...であり、n=1,2,3,...である)が励起される。信号生成器は、連続波モード(CWモード)のキャリアか、または変調された信号を生成する。
【0013】
自身で発振器から信号を受信する伝送カプラと受信カプラとの距離は可変であり、導波管のモード選択に応じて個別に選定されうるが、口径、導波管の内部寸法および周波数に応じて定まる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】発射前における発射体の銃口速度を測定する測定配列体を示す図である。
【図2】発射後における発射体の銃口速度を測定する測定配列体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
符号1は円滑な導波管(銃身)を示しており、導波管1には(少なくとも)1つの伝送カプラ2および(少なくとも)1つの受信カプラ3が含まれている。発振器4が伝送カプラ2に接続されていて、評価デバイス5が受信カプラ3に接続されている。発射物6の銃口速度は前述した要素を利用して定められうる。符号7は、武器の銃身または発射銃身1の銃口を示している。
【0016】
発振器4は、伝送カプラ2を介して導波モードを励起する(横断電気モード(TE)と横断磁気モード(TM)。所望の導波モードは機械的および電磁的なモード選択によって励起される。)。第1の工程において、発射物6が存在しない状態の電磁場が測定される。「銃身」系1(導波管1)によって信号強度が得られ、これが受信カプラ3、例えばピックアップセンサによって受信され、評価ユニット5に送られる。そして、発射物6の通過前(図1)および/または発射物6の通過後(図2)の測定が実行される。
【0017】
伝送カプラ2と受信カプラ3との間の距離は可変であり、導波管1のモード選択に応じて個々に選定されうるが、口径、導波管1内部の寸法および周波数に応じて定まる。
【0018】
導波モードが伝送カプラ2によって励起されるとき、受信カプラ3において受信される信号(たとえば誘導電圧)は下記の形態をなしうる。
【数1】

ここで、aは導波管1の内部半径であり、AnはPnと同様にnに応じて定まる。この場合、p1<p2<p3・・・である。
【0019】
kそれ自体は、受信信号が例えば条件n=1(シングルモード動作)のみから主として定まるように選定される。
【数2】

【0020】
これが可能になるのは、条件n=2,3,4のときのzkが条件n=1のときに比べて非常に小さくなるためである。このことは、特に条件n=1が発射物が通過する際に発射物の信頼できる速度測定を保証するので特に重要である。
【0021】
数式中の項
【数3】

は主としてaに応じて定まり、a自体は主として口径から定まる。伝送された信号の周波数はカットオフ周波数より低いので、これにより受信信号が指数関数的なプロフィールを有するようになっている。
【0022】
発射物6が通過した後に測定が実行される場合、受信カプラ3は、発射物基部と伝送カプラ2との間に配置される必要がある。発射物6が通過する前に速度V0の測定が実行される場合、受信カプラ3は、発射物の先端部と伝送カプラ2との間に配置されるべきである。これら両方の測定方法が組み合わされる場合、2つの受信カプラ3がそれぞれ対応するように具備される必要がある。そして伝送カプラ2は、2つの受信カプラ3の間に配置される必要があろう。
【0023】
信号処理は次のようにして実行されるべきである。
公知であるように、発射物6が受信カプラ3を越えて飛翔する際に、発射物6は特徴的な信号を生成する。受信信号の時間プロフィールはV0に関する情報を提供する。
【0024】
ここで受信信号からV0を得るために、信号が評価デバイス5において同じ周期で連続してサンプリングされ、これらのサンプル値が記憶される。このことは、発射物6が存在しないときにおいても行われる。発射物6が導波管1を通過するとき、評価ユニット5は、受信信号の特徴的プロフィールに基づいてその存在を感知する。これらの値は、V0を決定するために評価される。
【0025】
評価アルゴリズムは導波管1の内部半径aを用いるので、内部半径aの温度依存の変化によって測定が不正確になりうる。例えばこれらの影響を補償するために、各発射物が通過する前の空の導波管が測定される。このときの数値は関連のサンプル値を増減させるために使用されるものであり、記録されて評価ユニットによって測定値の評価(較正)のために呼び出される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発射物(6)などの銃口速度(V0)を測定する測定装置であって、
導波管としての円滑な武器の銃身または発射銃身(1)と、
信号供給部を介して少なくとも1つの伝送カプラ(2)に電気的に接続されており、前記武器の銃身または発射銃身(1)を励起する信号生成器(4)と、
少なくとも1つの受信カプラ(3)において測定された信号を評価デバイス(5)に伝達する受信ラインとを具備し、
前記伝送カプラ(2)と単数または複数の前記受信カプラ(3)との間の距離が可変であって、前記導波管(1)のモード選択に応じて個別に選択されうるものであり、
前記発射物(6)の通過後に測定されるときに、前記受信カプラ(3)が発射物基部と伝送カプラ(2)との間に配置され、
前記発射物(6)の通過前に前記銃口速度(V0)が測定されるときに、前記受信カプラ(3)が前記発射物の先端部と前記伝送カプラ(2)との間に配置され、
前記測定方法を組み合わせる際には、少なくとも2つの受信カプラ(3)が対応して含まれていて、前記伝送カプラ(2)が2つの前記受信カプラ(3)の間に配置される、測定装置。
【請求項2】
前記信号生成器(4)が連続波モード(CWモード)におけるキャリアを生成することを特徴とする、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記信号生成器(4)が変調された信号を生成することを特徴とする、請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
発射物(6)などの銃口速度(V0)を測定する測定方法であって、
前記発射物(6)が存在しない空の武器の銃身または発射銃身(1)の電磁場を測定し、
前記発射体(6)の発射物(6)の通過前または発射物(6)の通過後、或いはこれらを組み合わせて電磁場を測定し、
測定した信号から銃口速度(V0)を決定する、測定方法。
【請求項5】
前記信号を同じ周期で連続してサンプリングするとともに、サンプル値を記憶することを特徴とする、請求項4に記載の測定方法。
【請求項6】
温度依存性の変化その他の影響を記録して較正処理においてこれらを考慮するとともに、このために各発射物の通過前に空の武器の銃身(1)を測定することを特徴とする、請求項4または5に記載の測定方法。
【請求項7】
発射物(6)の弾薬のタイプを知得して定まる数値を用いて、前記発射物(6)前方の電磁場を測定するときに先端部の影響を補償することを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−523050(P2011−523050A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509874(P2011−509874)
【出願日】平成21年5月6日(2009.5.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003224
【国際公開番号】WO2009/141055
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(506170476)ラインメタル エア ディフェンス アクチェンゲゼルシャフト (9)
【Fターム(参考)】