説明

発毛調節光照射装置の冷却装置

【課題】高い耐熱性並びに高い熱伝導率を備える光学パネルを発毛調節光照射装置に用いなくとも、光学パネルに接触することによる火傷が防止でき、しかも、光学パネルが熱によって変形等を起こすことも防止できる発毛調節光照射装置の冷却装置を提供する。
【解決手段】処理対象の皮膚の体毛の成長を調節するための光を発する発光部1を内部に備えると共に該発光部1が発する光を透過させて外部に照射する光学パネル2を備える発毛調節光照射装置の冷却装置である。前記光学パネル2を外部から覆い発毛調節光照射装置Sに対して着脱自在に設けられた光学パネル保護部材4と、光学パネル保護部材4に設けられて前記光学パネル2を冷却する冷却部5とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体毛の成長を調節するための光を皮膚に対して照射する発毛調節光照射装置の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、処理対象となる皮膚にレーザー等の光を当て、光の作用により体毛の成長を抑制又は促進することで、脱毛又は育毛を図る発毛調節光照射装置が知られている。例えば、特許文献1に開示される発毛調節光照射装置は、装置本体に備えてある光照射部を処理対象の皮膚に向けてセットし、この状態で装置本体内の発光体を発光させることで、光照射部を通じて処理対象の皮膚に光を照射させる構造になっている。
【特許文献1】特開2005−278724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来の発毛調節光照射装置においては、発光体によって高エネルギーの光が発せられる結果、発光体自身はもちろんのこと反射傘やレンズなどから成る光学パネルまでもが高温となってしまう。そこで、その高温となった部位に接触して火傷等をおこしてしまうのを回避するために、発光体及び反射傘については、外部から直接触れることが出来ないようにハウジング内部に収容することで安全性を確保しているものの、発光体から発せられる光を透過する光学パネルにおいては、透過させた光を肌に直接照射する必要があるため、レンズは外部に対して剥き出しの状態とならざるを得ないという問題があった。
【0004】
さらに、上述のように光学パネルは高温となってしまうため、樹脂から成る光学パネルを使用すれば、該光学パネルは溶融や軟化・変形を起こしてしまい、しかも、一般に樹脂は熱伝導率が高くないため、光学パネルの高熱状態が長時間維持されてしまう。そのため一旦光学パネルが高温となると、安全に使用できる状態となるまでに長時間放置する必要があり、樹脂製の光学パネルを使用した装置は、使用に際して効率が悪いという問題があった。
【0005】
そこで、その点を解決するために従来の発毛調節光照射装置は、耐熱性を備え且つ熱伝導率の高い部材である、例えばサファイアガラスを光学パネルの材料として使用していた。このように耐熱性を備え且つ熱伝導率の高い部材を光学パネルに使用することにより、高温となった光学パネルであっても、溶融や軟化・変形を起こすことなく、しかも短時間で放熱させることができ、これにより、発毛調節光照射装置を使用するに際しての、火傷に対する安全性や効率の良い使用性を確保していた。
【0006】
しかしながらその反面、このサファイアガラスは非常に高価なものであるため、コストが掛かってしまうという問題があった。そのうえ、サファイアガラスは融点が高く、しかも高硬度であるため、加工が困難であり、加工に当たって作業工数も嵩んでしまうという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高い耐熱性並びに高い熱伝導率を備える光学パネルを発毛調節光照射装置に用いなくとも、光学パネルに接触することによる火傷が防止でき、しかも、光学パネルが熱によって変形等を起こすことも防止できる発毛調節光照射装置の冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明にあっては、処理対象の皮膚の体毛の成長を調節するための光を発する発光部1を内部に備えると共に該発光部1が発する光を透過させて外部に照射する光学パネル2を備える発毛調節光照射装置の冷却装置であって、前記光学パネル2を外部から覆い発毛調節光照射装置Sに対して着脱自在に設けられた光学パネル保護部材4と、光学パネル保護部材4に設けられて前記光学パネル2を冷却する冷却部5とを備えて成ることを特徴とするものである。
【0009】
このように構成したことで、発毛調節光照射装置Sのコンパクトさを保持したまま、光学パネル2を冷却することができる。これにより、耐熱性を備え且つ熱伝導率の高い部材によって光学パネル2を形成しなくとも、光学パネル2の温度変形を防止でき、そのうえ、効率よく且つ安全に使用することができる。
【0010】
また、請求項2に係る発明にあっては、請求項1に係る発明において、冷却部5は光学パネル2の温度を測定する温度測定手段と、温度測定手段によって測定された温度が低温であるほど冷却能力を弱くすると共に温度測定手段によって測定された温度が高温であるほど冷却能力を強くする冷却制御部と、を備えて成ることを特徴とするものである。
【0011】
このように構成したことで、請求項1に係る効果に加えて、冷却部5の動作を最小限に抑制することができるので、冷却部5による消費電力を抑制することができる。
【0012】
また、請求項3に係る発明にあっては、請求項1又は請求項2に係る発明において、光学パネル保護部材4と発毛調節光照射装置Sとはコネクタ6により電気的に連結され、前記冷却部5はコネクタ6を介して発毛調節光照射装置Sにより電力を供給されて成ることを特徴とするものである。
【0013】
このように構成したことで、請求項1又は請求項2に係る効果に加えて、冷却装置3に電源を設ける必要がないため、冷却装置3自体をコンパクトにできる。また、冷却部5を作動させるためのスイッチを設ける必要がなくなるため、操作性が向上し、冷却装置3自体のコンパクト化に資する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光学パネルに耐熱性を備え且つ熱伝導率の高い高価な部材を使用する必要がなくなるため、コストを削減できると共に、加工し易い部材を光学パネルに使用することができるため、加工性も向上し、作業工数の低減も図ることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について添付図面に基づいて説明する。なお、説明の便宜上光照射方向を上下方向とし、特にハウジング7の肌接触面を上方として説明する。
【0016】
図1及び図2には、本発明の実施形態における一例の発毛調節光照射装置として、発毛を抑制するための光を発する発光部1を内部に備えて成る光脱毛装置S1を示している。この光脱毛装置S1は、片手で把持可能な有底円筒状のハウジング7の内部に発光部1を収納し、ハウジング7の長手方向の一側端面に形成してある略矩形状の開口部71から、発光部1の発する光を外部に向けて照射するようになっている。
【0017】
この発光部1は、発光体11と集光用の反射傘12とから構成されており、反射傘12の内部に発光体11を収容し、且つ反射傘12の開口がハウジング7に設けられた開口部71に臨むようにして設置されている。さらに、この開口部71には、発光体11が発する光を透過して外部に照射する光学パネル2としてのレンズ21が、その開口を閉塞するようにして設置されている。
【0018】
発光体11は、キセノンランプから成るフラッシュライトで構成されており、この発光体11による光を皮膚面に照射することで、抑毛効果を発揮させることができる。また、発光体11を収容する反射傘12は椀状に形成されており、開口を形成する外縁に近づく程対向する側面間の距離が長くなるように形成されている。このような反射傘12によって、発光体11により発せられる光が反射・集光して、より多くの光量が反射傘12開口方向(すなわち、レンズ21が設置される開口部71の方向)に向けて照射されるようになっている。
【0019】
レンズ21は、ハウジング7の開口部71に嵌まり込むように設置されており、このハウジング7の開口部71の設けられている上面と面一状となるようになっている。
【0020】
開口部71が設けられているハウジング7の一側端面には、この端面の外縁全周に亘って遮光用の筒体部72が上方に向けて突設されている。この筒体部72の先端面は、レンズ21の外側面よりも上方に位置しており、施療時に処理対象の皮膚を筒体部72の先端に押し当てた状態で光照射した場合には、この筒体部72により外部へ光が漏れないようになっている。また、この筒体部72よりもさらに外方には、コネクタ6のメス端子62が設置されている。本実施形態におけるこのメス端子62は、ハウジング7端面の直径線上の2箇所に設置されている。
【0021】
ハウジング7内には、発光体11に接続されて図示しない電源から供給される電圧を昇圧させて成る高電圧を前記発光体に印加する高電圧印加部を備える制御回路を設けてある。ハウジング7の外周面には、光照射用のオンオフを手動操作するための照射スイッチ9を制御回路と接続させて設けおり、さらに、メス端子62もこの制御回路に電気的に接続されて設けてある。なお、図中において配線は省略している。
【0022】
上記光脱毛装置S1を用いて脱毛処理を行うには、まず使用者はハウジング7を片手で把持した状態で、処理対象の皮膚に対して筒体部72の平面視リング状をなす先端面を押し当て、この先端面に囲まれる領域内に処理対象となる皮膚が位置するようにセットする。この状態で照射スイッチ9を操作して光照射をオンにすれば、発光体11からごく短時間に発せられる光が、レンズ21を介して処理対象の皮膚に照射され、該皮膚の体毛に対して抑毛作用を及ぼす。このとき、筒体部72の先端面を全周に亘って皮膚に圧接した状態を維持することで、照射される閃光の外部への漏れは防止される。
【0023】
このような光脱毛装置S1の光照射をした使用後等には、光脱毛装置S1のレンズ21を塵や埃から保護すると共に高温のレンズ21を冷却することができる本発明の冷却装置3が、そのレンズ21の設置してある装置先端部に着脱自在に取り付けられる。
【0024】
この冷却装置3は、光脱毛装置S1の光学パネル2としてのレンズ21を外部から覆った光学パネル保護部材4と、この光学パネル保護部材4に設けられて前記レンズ21を冷却する冷却部5とを備えている。
【0025】
光学パネル保護部材4は、上方程広がる平面視台形形状にて形成されており、円筒筒状に形成されている。光学パネル保護部材4の下端部は、ハウジング7に設けられた筒体部72を内部に挿通できるように形成されており、その下端部の所定の部位には、光脱毛装置S1に設けられたコネクタ6のメス端子62に接続されるオス端子61が設けられている。また、光学パネル保護部材4の上端には、光学パネル保護部材4の内部に塵や埃が侵入するのを防止するフィルター41が設けられており、該フィルター41は光学パネル保護部材4の上端の開口を閉塞するようにして設置されている。
【0026】
冷却部5は、光学パネル2またはその近傍を冷却する冷却ファン51と、光学パネル2の温度を測定する温度測定手段と、その温度測定手段によって測定された温度に応じて冷却部5による冷却能力を変化させる冷却制御部とで構成されている。これらの冷却部5の各構成は、光学パネル保護部材4に設けられたオス端子61に電気的に接続されており、このオス端子61と光脱毛装置S1本体に設けられたメス端子62とを電気的に接続することで、光脱毛装置S1内の電力が供給され、これにより、冷却ファン51、温度測定手段並びに冷却制御部が作動するようになっている。
【0027】
冷却ファン51は、円筒形状で且つ接続側の反対側が末広がり形状を成す前記光学パネル保護部材4の直径の大きい側の端部近傍(すなわち光学パネル保護部材4の上方側)の内部に、吸い込み側を上方側にし、且つ吐き出し側を下方側になるようにして収容されている。つまり、光脱毛装置S1に光学パネル保護部材4(冷却装置3)を設置した状態では、冷却ファン51による送風の下流側に光学パネル2としてのレンズ21が位置するようになっている。
【0028】
温度測定手段は、光学パネル2の表面若しくはその近傍の温度を測定するもので、本実施例においては、非接触式温度計である放射温度計を使用している。
【0029】
冷却制御部は、前記温度測定手段によって測定された温度に応じて冷却ファン51の強弱を制御しており、詳しくは、温度測定手段によって測定された温度が低温であるほど冷却ファン51を弱く駆動させて冷却能力を抑え(すなわち、冷却能力を弱くする)、その一方で、温度測定手段によって測定された温度が高温であるほど冷却ファン51を強く駆動させて冷却能力を高める(すなわち、冷却能力を強くする)ようになっている。要するに、光学パネル2が高温であれば、冷却能力を高めて、短時間で光学パネル2の温度を元の低温の状態に戻すとともに、光学パネル2が低温であれば、冷却能力を弱めて、光学パネル2を元の低温の状態に戻しつつ、冷却ファン51を駆動するのに必要な電力を節約するようになっている。
【0030】
このように構成された光学パネル保護部材4を使用するに当たっては、施療後に光学パネル2としてのレンズ21が高温になった光脱毛装置S1のレンズ21が設置してある端面に、光学パネル保護部材4の下端部を設置する。詳しく説明すると、光学パネル保護部材4の下端部の開口に、ハウジング7の一端面に設けられた筒体部72を挿通して設置する。このとき、ハウジング7の端面及び光学パネル保護部材4にそれぞれ設けられたコネクタ6(オス端子61及びメス端子62)を接続する。
【0031】
このようにコネクタ6により光脱毛装置S1と電気的に接続された冷却装置3においては、コネクタ6が連結するのと同時に冷却ファン51が駆動し始める。このとき、冷却装置3の冷却部5に備わる温度測定手段によって、レンズ21の温度が測定されており、その測定した温度測定値に基づいて、冷却ファン51の送風能力が定まる。例えば光脱毛装置S1使用直後に、本発明の冷却装置3を設置すれば、レンズ21は高温になっているため、冷却ファン51は冷却能力を高めてレンズ21に強風を吹き当てるようにする。冷却ファン51による冷却をし続けると、徐々にレンズ21の温度が低下していくが、そのときのレンズ21の温度変化においても温度測定手段で測定しており、この測定値が低下していくにつれて、冷却ファン51の冷却能力を低下させていく(すなわち、冷却ファン51による送風を弱める)ことになる。そして、いずれレンズ21の温度は使用前の所定の温度となり、温度測定手段がその所定の温度を測定した時点で、冷却ファン51を停止させる。
【0032】
ここで、光学パネル保護部材4の上端部にはフィルター41を設置しているから、冷却ファン51によりレンズ21に強風を吹き当てたとしても、光学パネル保護部材4内部に埃などが侵入することがないから、レンズ21が汚れることもない。また、光学パネル保護部材4によって、レンズ21は保護されているから、塵や埃はもちろんのこと、外力の衝撃による割れなどをも防止できる効果も有している。
【0033】
さらに、冷却制御部による制御とは別に、冷却ファン51の強弱を使用者の手元で操作できるようにしておき、冷却ファン51による送風を強くして光学パネル2に風を強く吹き付けることで、レンズ21に堆積した埃などの汚れを除去するようにしてもよい。もちろん、埃除去用のスイッチとして埃除去スイッチを設け、埃除去スイッチをオンにするだけで冷却ファン51が強風を送風できるように構成してもよい。
【0034】
叙述の通り、本発明の冷却装置3は、光脱毛装置S1と別体にして着脱自在に設けるようにしたから、光脱毛装置S1は従来どおりのコンパクトな形状を保つことができる。さらに、コネクタ6に互換性を備えるようにしておけば、冷却装置1台に対して複数の光脱毛装置S1に対応することも可能であるのはもちろんである。
【0035】
また、本実施例においては、冷却装置3を駆動するに当たり、コネクタ6を接続するのみで冷却装置3の冷却部5を作動させるようにしているが、冷却装置3を動作させる電源スイッチを設けてもよい。
【0036】
以上、キセノンライトを用いた光脱毛装置S1に基づいて本発明の発毛調節光照射装置の冷却装置3を説明したが、発光体11はキセノンライトから成るフラッシュライトに限定されず、他の構成から成るフラッシュライトであってもよいし、或いはレーザーダイオード等を用いてレーザー光を照射するものであってもよい。また、発光体11は脱毛用に限定されず、光の照射により発毛を促進して育毛を図るものであってもよい。
【0037】
また、光学パネル2としてのレンズ21は、導光板であってもよく、上記実施形態に特に限定されない。さらに、本実施形態における温度測定手段には、放射温度計を用いたが、特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例の側面から見た要部概略図である。
【図2】同上の全体斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 発光部
11 発光体
12 反射傘
2 光学パネル
21 レンズ
3 冷却装置
4 光学パネル保護部材
41 フィルター
5 冷却部
51 冷却ファン
6 コネクタ
61 オス端子
62 メス端子
7 ハウジング
71 開口部
72 筒体部
9 照射スイッチ
S 発毛調節光照射装置
S1 光脱毛装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の皮膚の体毛の成長を調節するための光を発する発光部を内部に備えると共に該発光部が発する光を透過させて外部に照射する光学パネルを備える発毛調節光照射装置の冷却装置であって、前記光学パネルを外部から覆い発毛調節光照射装置に対して着脱自在に設けられた光学パネル保護部材と、光学パネル保護部材に設けられて前記光学パネルを冷却する冷却部とを備えて成ることを特徴とする発毛調節光照射装置の冷却装置。
【請求項2】
前記冷却部は光学パネルの温度を測定する温度測定手段と、温度測定手段によって測定された温度が低温であるほど冷却能力を弱くすると共に温度測定手段によって測定された温度が高温であるほど冷却能力を強くする冷却制御部と、を備えて成ることを特徴とする請求項1記載の発毛調節光照射装置の冷却装置。
【請求項3】
前記光学パネル保護部材と発毛調節光照射装置とはコネクタにより電気的に連結され、前記冷却部はコネクタを介して発毛調節光照射装置により電力を供給されて成ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発毛調節光照射装置の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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