説明

発泡ポリエステル類及びその製造方法

ポリエステル発泡体が、例えば発泡体の重量の0.5乃至15.0重量パーセントの量の熱可塑性コポリエステルエラストマーのような熱可塑性エラストマーを少なくとも一つ含み、均質性が高く、連続気泡性が低く、せん断応力下の破断点伸び率が高い、熱可塑性ポリエステルから構成された発泡体である。この発泡体は、極限粘度が低い出発ポリエステルを、テトラカルボン酸の二無水物及び熱可塑性コポリエステルエラストマーを含有するプレミックスの形の改質手段と混合し、発泡させることにより得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均質性が高く、連続気泡率が低く、せん断応力の下における破断点伸び率が高く、改質手段としてテトラカルボン酸の二無水物を包含する、熱可塑性ポリエステルで構成された発泡体と、これらの発泡体の製造手段及び発泡ポリエステル類の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気泡ポリエステルフォーム及びその製造方法は、例えば、WO 93/12164から既知である。押出し発泡に適する熱可塑性ポリエステルは、例えば、0.8dl/gより大きな極限粘度数を有すると記述されている。この値の極限粘度数を得るために、二段法が記述されており、この二段法に従って、0.52dl/gより大きな極限粘度数を有するポリエステルを有機テトラカルボン酸の二無水物に混合させ、0.85乃至1.95dl/gの極限粘度数を有するポリエステルを得るために反応させられる。次に、このようにして準備されたポリエステルを用いて、前述の押出し発泡による発泡工程を開始することができる。個々の場合に応じて、押出し発泡を行なっている間に、有機テトラカルボン酸の二無水物を更に加えることができる。
【0003】
この方法の欠点は、先ず、ポリエステルの全量をテトラカルボン酸の二無水物と混合し、次いで、この混合物を固相リアクターの中で反応温度にして、反応が終わるまでの数時間はその温度を保つという、2つの骨の折れる処理工程を必要とすることである。実際の発泡工程は、この後にのみ続くのである。
【0004】
US 5,288,764によれば、発泡ポリエステルは溶融混合物を形成し、そして、この混合物を押出すことによって得ることができる。この混合物は、ポリエステルからなる主たる部分と、連鎖延長又は枝分かれを引き起こす物質とポリエステルとの混合物で構成されたより少量の部分とから形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 93/12164
【特許文献2】US 5,288,764
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ポリエステルで構成された発泡体と、これらの発泡体を製造する手段と、有利な特性を備えた熱可塑性ポリエステルで構成されたフォーム又は発泡体に単純な方法で到達するように、これらの発泡体を製造する方法とを提案することに基づく。特に、ポリエステルで構成された発泡体には、例えば、低密度であることに加えて、均質性が高く、連続気泡率が低く、強度が高く、そして、特に、剪断応力の作用下における破断点伸び率が高いことが求められる。ポリエステルを発泡させて発泡体にするのは、ひたすらに困難と取り組むのみの方法である。特に、極限粘度(極限粘度、IV)の低いポリエステルは、全く発泡させることができないか、あるいは、かろうじて発泡させることができる場合でも、発泡材料は、変動する高い密度や、高い連続気泡率や、不規則な気孔分布や、せん断応力の作用下における低い破断点伸び率などの貧弱な特性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、発泡体のポリエステルフォームが少なくとも1つの熱可塑性エラストマーを含むことによって達成される。
【0008】
例えば、本発明に従ってポリエステルで構成された発泡体は、この発泡体の重量の0.5乃至15.0重量パーセントの熱可塑性エラストマーを含む。発泡体の重量に対して、それぞれ、0.5乃至12重量パーセント、好ましくは1.5乃至12重量パーセントの量の熱可塑性エラストマーが適切である。
【0009】
本発明に従ってポリエステルで構成された発泡体は、熱可塑性エラストマーとして、ポリマーブレンド又は熱可塑性コポリエステルエラストマーを含有すると有利である。
【0010】
熱可塑性エラストマーは、使用温度で加硫ゴムに類似する特性を有するが、熱可塑性プラスチック材料のように高温で加工処理可能なポリマー類又はポリマーブレンドで構成されるか、あるいは、これらのポリマー類又はポリマーブレンドを含有する。これらのポリマーブレンドは、硬質の熱可塑性プラスチックで構成されたポリマーマトリックスを有し、この硬質の熱可塑性プラスチック中には、軟質の、架橋された又は架橋されていないエラストマーの粒子が組み込まれている。熱可塑性のコポリエステルエラストマーは、硬質の熱可塑性序列及び軟質の弾性序列を包含する。熱可塑性のコポリエステルエラストマーはポリエステルブロックを含み、便宜上、このポリエステルブロックは、ジオール、好ましくは、1,4-ブタンジオール又は1,2-エタンジオールと、及び、ジカルボン酸、好ましくは、ヒドロキシル末端基を担持するポリエーテルとの縮合反応でエステル化されるテレフタル酸とで構成される。
【0011】
熱可塑性エラストマー(例えば、prEN ISO 18064によれば)はTPEという略語でも知られており、そして、そのサブグループは、TPO(熱可塑性オレフィンエラストマー)、TPS(熱可塑性スチレンエラストマー)、TPV(熱可塑性加硫ゴム)、TPU(熱可塑性ウレタンエラストマー)、TPA(熱可塑性ポリアミドエラストマー)、TPC(熱可塑性コポリエステルエラストマー)及びTPZ(他の、非分類エラストマー)で知られている。TPEには、例えば、熱可塑性スチレンブロックポリマー、熱可塑性コポリエステル、ポリエーテルエステル、熱可塑性ポリウレタン又はポリエーテル-ポリアミドブロックコポリマーのような、ブロックポリマー又はセグメントポリマーが属する。TPEは、硬質又は軟質ブロックの共重合により、又は、熱可塑性マトリックスをブレンドすることにより、そのゴム状弾性を得る。グラフト共重合の場合、硬質セグメントがいわゆるドメインを形成し、物理的架橋点として機能する。TPEは、繰り返し溶融し、加工することができる。熱可塑性コポリエステルエラストマーとして記述され、あるいはTPCとも呼ばれるTPEは、エーテル及びエステル結合を有する軟質セグメントを有するTPC-EEと、軟質ポリエステルセグメントあるいはポリエーテルセグメントを有するTPC-ES/-ETとに分けられる。ここでは、TPC-EEが特に重要である。
【0012】
熱可塑性のコポリエステルエラストマー、あるいは、熱可塑性のコポリエステル又は熱可塑性のポリエーテルエステル、あるいは、ゴム状弾性コポリエーテルエステルは、硬質のポリエステルセグメントと軟質のポリエーテルセグメントから交互に合成される。硬質及び軟質セグメントの種類及び長さによって、広い強度領域を調節することができる。熱可塑性コポリエステルは、一方では、ポリアルキレンエーテルジオール及び/又は長鎖脂肪族ジカルボン酸エステルの非晶質軟質セグメントから、他方では、結晶質ポリブチレンテレフタレートの硬質セグメントから構成される、ブロックコポリマーである。ゴム状弾性コポリエーテルエステルの製造は、テレフタレートエステル、ポリアルキレンエーテルグリコール(例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンオキシドグリコール又はポリプロピレンオキシドグリコール)と、例えば、1,4−ブタンジオール又は1,2−エタンジオールのような短鎖ジオールとの間のリエステル化反応によるメルトで行なわれる。
【0013】
ポリエステルの分子量を上げるために、ポリエステルに改質剤を添加することができる。改質剤は、例えば、有機テトラカルボン酸の二無水物(テトラカルボン酸二無水物)である。好ましい二無水物は、以下のテトラカルボン酸の二無水物である。
【0014】
ベンゾール−1,2,4,5−テトラカルボン酸(ピロメリット酸)、
3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸、
3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、
2,2−ビス−(3,4ジカルボキシフェニル)−プロパン、
ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)−エーテル、
ビス−(3,4−ジカルボキシルフェニル)−チオエーテル、
ナフタリン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、
ビス−(3,4−ジカルボキシルフェニル)−スルホン、
テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、
2,2−ビス−(3,4ジカルボキシルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、
1,2,5,6−ナフタリンテトラカルボン酸、
ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)−スルホン
及びその混合物。
【0015】
好ましい二無水物は、ピロメリット酸二無水物(ベンゾール−1,2,4,5−テトラカルボン酸−1,2:4,5−二無水物)である。
【0016】
発泡ポリエステルを製造するために使用することができる出発材料は、芳香族ジカルボン酸とジオールの重縮合によって得ることができる熱可塑性ポリエステルのようなポリエステルである。芳香族酸の例は、テレフタル酸及びイソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸及びジフェニルエーテルジカルボン酸である。ジオールの例は、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール及び1,2−エタンジオールのようなグリコールである。
【0017】
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びイソフタル酸を20%迄含むポリエチレンテレフタレート−コポリマーから構成されるか又はそれらを含有するポリエステルが好ましい。
【0018】
出発材料として投入され、かつ、本発明により改質されて本発明による発泡体へと発泡される、ポリエステルの、特に重要な特徴は、極限粘度である。これまで極限粘度が約0.4dl/gのポリエステルから出発して気泡材料を作ることは不可能であった。本発明によれば、極限粘度が約0.4dl/g以上のポリエステル、及び、特に極限粘度が0.6乃至0.7dl/g及びそれ以上のポリエステルのような出発材料から、求められる特性を有する信頼できる気泡材料を作ることができる。低い極限粘度を上げるためには、使用されるポリエステルに対する改質剤、特にテトラカルボン酸二無水物の比率を相応に上げなければならない。プレミックス中の改質剤濃度の選択及びポリエステルに関連した使用されるプレミックスの量によって、加工されるポリエステルの極限粘度−及びそれに付随する発泡性能−を容易にコントロールすることができる。例えば、0.6乃至0.7dl/gの極限粘度は、改質により、1.0dl/g以上又は1.2dl/g以上に上げることができる。
【0019】
本発明は、均質性が高く、連続気泡性が低く、せん断応力の作用下における破断点伸び率が高く、改質剤としてテトラカルボン酸の二無水物を含む、ポリエステルから構成された発泡体の製造手段にも関する。この手段は、熱可塑性コポリエステルエラストマーのような熱可塑性エラストマーを、この手段の重量に対して25乃至95重量パーセント、及び、テトラカルボン酸の二無水物を、この手段の重量に対して5乃至30重量パーセント含有するプレミックスである。
【0020】
ポリエステルで構成された発泡体の製造手段は、手段重量に対して25乃至95重量パーセントの熱可塑性コポリエステルエラストマー、及び、この手段の重量に対して5乃至30重量パーセントのテトラカルボン酸の二無水物、並びに、この手段の重量の0乃至70重量パーセント、好ましくは1乃至50重量パーセントの安定剤、核剤、火炎防護剤、及び/又はポリエステル、適切には改質されるべき出発ポリエステルと同質のポリエステルを含有するプレミックスであることが好ましい。
【0021】
この手段すなわちプレミックスは、予め作り上げられ、場合に応じて貯蔵可能である。その後、プレミックスと発泡されるべきポリエステルは、予定された量だけ混合可能である。プレミックスとポリエステルの混合物は、更に発泡工程に送られ、発泡体に加工可能である。
【0022】
本発明は、均質性が高く、せん断応力の作用下における破断点伸び率が高く、改質剤としてテトラカルボン酸の二無水物を含むポリエステルから構成された発泡体の製造方法にも関する。
【0023】
本発明の発泡体の製造方法によれば、ポリエステル樹脂は、熱可塑性コポリエステルエラストマーのような熱可塑性エラストマー及びテトラカルボン酸の二無水物から構成されたプレミックスと混合され、熱可塑性コポリエステルエラストマーが発泡体重量に対して0.5乃至15重量パーセント含む発泡体になるように発泡させる。
【0024】
熱可塑性コポリエステルエラストマーのような熱可塑性エラストマー及びテトラカルボン酸の二無水物から構成されたプレミックスは、先駆物質として、配合剤の混合により製造される。プレミックスは、プレミックスに対して25乃至95重量パーセントのコポリエステルエラストマー及びプレミックスに対して5乃至30重量パーセントのテトラカルボン酸二無水物を含有することができる。適切には、プレミックスは、プレミックスに対して50乃至90重量パーセント、好ましくは80乃至90重量パーセントのコポリエステルエラストマー及びプレミックスに対して10乃至25重量パーセント、好ましくは10乃至15重量パーセントのテトラカルボン酸二無水物を含む。
【0025】
プレミックスは、更なる配合剤として、例えば全部あわせて0乃至70パーセント、好ましくは0.1乃至70重量パーセント、特に1乃至50重量パーセントの、例えばポリエステル、安定剤、核剤、充填剤、火炎防護剤を含むことができる。更なる配合剤に挙げられたポリエステルは、改質されるべきポリエステル、すなわち例えば極限粘度が0.4dl/g以上の出発ポリエステル及び特に極限粘度が約0.6乃至0.7dl/g以上のポリエステルと同質であることができる。
【0026】
プレミックスの調達は、配合剤を、ミキサー、例えば、一軸又は二軸スクリュー押出し機又は多軸押出し機等のスクリュー押出し機に供給し、10乃至120秒間200乃至260℃で完全混和することにより行なうことができる。プレミックスは、ミキサーから取出され、更に加工性のある形に、例えば粒状にすることができる。
【0027】
ポリエステルからの発泡体の製造は、混合プロセス及び発泡プロセスを通して行なわれる。このため、例えば極限粘度が少なくとも0.4dl/gのポリエステルが用意され、プレミックスを混合される。プレミックスは、ポリエステルに対して1.0乃至20.0重量パーセント投入可能である。ポリエステルに対して2.0乃至4.0重量パーセントの量が有利である。
【0028】
個別の事案により、ポリエステル及びプレミックスに加えて更に別の配合剤を混合及び発泡プロセスに供給可能である。これらの配合剤は、既に述べた安定剤、充填剤、火炎防護剤で、代わりに又は既にプレミックス中に含まれていない限り、供給可能である。この更なる配合剤の量は、例えばポリエステル及びプレミックスの総和に対して15重量パーセント迄、適切には0.1乃至15重量パーセントである。更に別の配合剤が、例えば発泡体中の気泡サイズ及び気泡分布をコントロールするために、同様に混合及び発泡プロセスに供給され得る。これは、例えば(ポリエステル及びプレミックスの総和に対して)5重量パーセント迄の、適切には0.1乃至5重量パーセントの、周期表の第1乃至3族の金属化合物、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム又はステアリン酸マグネシウム、アルミニウムミリサート(Aluminiummyrisat)又はマグネシウムミリサート(Magnesiummyrisat)、又はテレフタル酸ナトリウム及び更に別の適当な、例えばタルクや二酸化チタンのような化合物である。
【0029】
配合剤は、反応器(リアクター)又はミキサー、例えば、一軸又は二軸スクリュー押出し機又は多軸押出し機又は、2つの一軸スクリュー押出し機を互いに組み合わせるか又は二軸スクリュー押出し機と一軸スクリュー押出し機を互いに組み合わせたタンデムシステムに供給することができる。反応器又はミキサー中の配合剤の滞留時間は、例えば8乃至40分であることができる。滞留時間中の温度は240乃至320℃であることができる。
【0030】
リアクター又はミキサー、例えば列挙された押出し機には又、発泡剤も供給される。適当な発泡剤は、例えば揮発性液体、ガスを放出する熱分解性物質又は不活性ガス、並びにそれら薬剤の混合物又は併用である。揮発性液体には、脂肪族飽和炭化水素、脂環式飽和炭化水素、芳香族炭化水素及びハロゲン化炭化水素がある。例は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、エタノール、アセトン及びHFC 152aである。不活性ガスとしては、二酸化炭素及び窒素が挙げられる。発泡剤は、通例配合剤供給領域に従って押出し機に供給される。
【0031】
押出し機の型付け放出開口部で、例えば円形の、円形にされた、長方形の又は多角形の横断面を有しうる、実質的に最大限の独立気泡フォームから構成された発泡体が連続的して生まれる。その後、発泡体は運ばれ、用途に応じて成形され、切断され及び/又は接合可能である。発泡体が産出されると、発泡体は、相互に隣合って及び/又は相互に上下に積み重ねられ、発泡体ブロックへ、特に、粘着又は特に溶接のような相互耐分離性結合下にある均質な発泡体ブロックへと加工可能である。発泡体は、シート状及び積み重ねることができる。相互に触れ合う面は、溶接等で、全面にわたり相互に結合され得る。これにより、押出し方向に伸びる溶接継目を有する発泡体ブロックが生まれる。個々の発泡シートは、特に押出し方向又は溶接継目方向を横切る方向に、発泡体ブロックから分離可能である。
【0032】
本発明による発泡体は、特に以下の特徴を示す。
−タイプの純度、ポリエステルのみで、他の異なるタイプのポリマーは存在しない。
―規則的な独立気泡孔。
【0033】
本発明による発泡体は、約120kg/mの嵩密度において、特に以下の特徴を示す。
−ISO 1922によるせん断応力下のせん断強さ、例えば1.0N/mmより大であり、
−ASTM C393によるせん断弾性率(G−モジュラス)、例えば20N/mmより大であり、
−ISO 1922によるせん断応力下の破断点伸び、例えば12%より大、適切には16%より大、好ましくは50%より大であり、
−ISO 844による圧縮強さ、例えば1.7N/mmより大であり、
−DIN 53421による圧縮弾性率(E−モジュラス)、例えば90N/mmより大である。
−ASTM D1056−07に基づくAirex method AM−19による連続気泡率、例えば8%未満、特に4%未満である。Airex method AM−19による開放気孔率測定は、ASTM D1056に記述されているように実施されるが、異なった公式で計算される:ASTM D1059:W=[(A−B)/B]×100、ここではW=質量の変化[%];A=検体の最終質量;及びB=検体の最初の質量である。
Airex AM―19:OZ=[(A-B)/(L×B×D)]×100、ここで、OZ=連続気泡率[Vol-%]であり;A=状態調節後の試料の重量[g]であり;B=状態調節前の試料の重量[g]であり;L,B,D=試料の長さ、幅、厚さ[cm]である。水の密度1g/cmは公式には明示されていない。本発明によると、例えば、吸水試験における数値は40重量パーセント未満、適切には35重量パーセント未満、好ましくは30重量パーセント未満の数値が達成されている。
―結果の発泡体の粘度数はISO 1628/5により規定され、例えば、150ml/gより大きく、ほぼ1.2dl/gより大きい極限粘度数に相応する値であり得る。結果の発泡体のISO 1628/5により規定された粘度数は、例えば、ほぼ1.30dl/gより大きい極限粘度数に相応する、160ml/gより大きいのが好ましい。
【0034】
本発明による方法は、例えば、押出しの際にゲル生成が起こらないという点でも傑出している。プレミックスは、ポリエステルと完全に混合されうるので、望まれない二次相は発生しない。プレミックスは、工程が容易に制御可能な、それ自体で知られる装置、いわゆる配合装置で製造可能である。発生する発泡体の特性は、熱可塑性コポリエステルエラストマー(TPC)の選択及びそこに含有される軟質エラストマー及び硬質熱可塑性序列によっても簡単にコントロール可能である。
【実施例】
【0035】
(プレミックス実施例1)
ショアー硬度が55Dの粒状の熱可塑性コポリエステルエラストマー(TPC)を4時間100℃で熱風により乾燥させる。同一方向に回転する、シリンダー直径が27mm、L/D比が40の二軸スクリュー押出機で、85重量パーセントのTPCと15重量パーセントのピロメリット酸二無水物(PMDA)をシリンダー温度200及び210℃の間で200rpmの速度で保護ガス雰囲気下で混合し、ストランド状に排出する。ストランドを、水槽で冷却し送風機で乾燥した後、粗砕装置の中で回転羽根により円筒形粒質物に加工する。このようにして得たプレミックスを、最後に3時間70℃で乾燥する。
【0036】
(プレミックス実施例2)
ショアー硬度が33Dの粒状の熱可塑性コポリエステルエラストマー(TPC)を4時間100℃で熱風により乾燥させる。同一方向に回転する、シリンダー直径が27mm、L/D比が40の二軸スクリュー押出機で、85重量パーセントのTPCと15重量パーセントのピロメリット酸二無水物(PMDA)をシリンダー温度200及び210℃の間で200rpmの速度で保護ガス雰囲気下で混合し、ストランド状に排出する。ストランドを、水槽で冷却し送風機で乾燥した後、粗砕装置の中で回転羽根により円筒形粒質物に加工する。このようにして得たプレミックスを、最後に3時間70℃で乾燥する。
【0037】
(プレミックスの比較例)
極限粘度数が0.81dl/gのポリエステル粒質物(PET)を8時間150℃で熱風で乾燥させる。実施例1と同様の設備で、85重量パーセントのPET粒質物と15重量パーセントのピロメリット酸二無水物(PMDA)をシリンダー温度240及び250℃の間で200rpmの速度で保護ガス雰囲気下で混合し、ストランド状に排出する。ストランドを、水槽で冷却し送風機で乾燥した後、粗砕装置の中で回転羽根により円筒形粒質物に加工する。このようにして得たプレミックスを、最後に3時間70℃で乾燥する。
【0038】
【表1】

【0039】
(発泡例1)
出発材料である極限粘度数が0.81dl/gのPET粒質物96.3重量パーセントを、約5時間170℃で乾燥空気で乾燥させ、実施例1から得られた(約11時間、60度の乾燥空気で乾燥させた)プレミックス2.7重量パーセント及び(PET中30%のタルク;約11時間60度の乾燥空気で乾燥させた)核剤1.0%と一緒に、二軸スクリュウ押出機を持った押出発泡設備の第1押出機の中に投入し、溶融させ、混錬し、COで発泡させる。押出具の流出口付近の溶融温度は248℃であり、処理量(押出し量)は約290kg/hであり、押出機中の滞留時間は約17minである。例えばほぼ直方体状断面を持つ発泡体を連続して作り出し、シート状発泡体の長さに切断する。シート状発泡体を積み重ね、互いに接する面を溶接して、発泡体ブロックを作る。実施例に挙げられた測定値は、発泡体ブロックから押出し方向を横切るように分離した発泡体シートに関して算出している。結果発泡体の粘度数はISO 1628/5により測定され、極限粘度数1.32dl/gに相応する164.0ml/gである。
【0040】
(発泡例2)
極限粘度数が0.81dl/gのPET粒質物96.3重量パーセントを、約5時間170℃で乾燥空気で乾燥させ、実施例2から得られた(約11時間、60度の乾燥空気で乾燥させた)プレミックス2.7重量パーセント及び(PET中30%のタルク;約11時間60度の乾燥空気で乾燥させた)核剤1.0%と一緒に、二軸スクリュウ押出機を持った押出発泡設備の第1押出機の中に投入し、溶融させ、混錬し、COで発泡させる。押出具の流出口付近の溶融温度は249℃であり、処理量(押出し量)は約290kg/hであり、押出機中の滞留時間は約17minである。結果発泡体の粘度数はISO 1628/5により測定され、極限粘度数1.33dl/gに相応する165.6ml/gである。
【0041】
(発泡例3)
極限粘度数が0.81dl/gのPET粒質物86.7重量パーセントを、約5時間170℃で乾燥空気で乾燥させ、実施例2から得られた(約11時間、60度の乾燥空気で乾燥させた)プレミックス2.3重量パーセント、(PET中30%のタルク;約11時間60度の乾燥空気で乾燥させた)核剤1.0%及び(約12時間100℃の乾燥空気で乾燥させた)ショアー硬度が33Dの熱可塑性コポリエステルエラストマー(TPC)10重量パーセントと一緒に、二軸スクリュウ押出機を持った押出発泡設備の第1押出機の中に投入し、溶融させ、混錬し、COで発泡させる。押出具の流出口付近の溶融温度は248℃であり、処理量(押出し量)は約270kg/hであり、押出機中の滞留時間は約18minである。結果発泡体の粘度数はISO 1628/5により測定され、極限粘度数1.30dl/gに相応する162.2ml/gである。
【0042】
(発泡比較例)
極限粘度数が0.81dl/gのPET粒質物96.3重量パーセントを、約5時間170℃で乾燥空気で乾燥させ、比較例から得られた(約11時間、60度の乾燥空気で乾燥させた)プレミックス2.7重量パーセント及び(PET中30%のタルク;約11時間60度の乾燥空気で乾燥させた)核剤1.0%と一緒に、二軸スクリュウ押出機を持った押出発泡設備の第1押出機の中に投入し、溶融させ、混錬し、COで発泡させる。押出具の流出口付近の溶融温度は247℃である。処理量(押出し量)は、要求される連続気泡率8%未満を実現するために、約200kg/hにまで削減しなければならない。このため、押出機中の滞留時間は約24minに増える。ISO 1628/5により測定した、結果発泡体の粘度数は、長い滞留時間にもかかわらず、実施例1及び2よりも低い157.8ml/gであり、それにともなって相応する極限粘度数も低い(1.27dl/g)。
【0043】
得られた発泡体の機械的性質を表2に記載する。
【0044】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
均質性が高く、連続気泡性が低く、せん断応力下の破断点伸び率が高く、改質剤としてテトラカルボン酸の二無水物を含む、熱可塑性ポリエステルから構成された発泡体において、前記発泡体が熱可塑性エラストマーを含有することを特徴とする、熱可塑性ポリエステルから構成された発泡体。
【請求項2】
請求項1に記載されたポリエステルから構成された発泡体において、前記発泡体に、発泡体重量に対して0.5乃至15重量パーセントの熱可塑性エラストマーが含有されていることを特徴とする、前記発泡体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたポリエステルから構成された発泡体において、前記発泡体に、熱可塑性エラストマーとして熱可塑性コポリエステルエラストマーが含有されていることを特徴とする、前記発泡体。
【請求項4】
請求項3に記載されたポリエステルから構成された発泡体において、前記発泡体に、発泡体重量に対して0.5乃至15重量パーセントの熱可塑性コポリエステルエラストマーが含有されていることを特徴とする、前記発泡体。
【請求項5】
請求項3又は4のいずれか一項に記載されたポリエステルから構成された発泡体において、前記熱可塑性コポリエステルエラストマーはポリエステルブロックを含有し、前記ポリエステルブロックは、ジオール、特に1,4-ブタンジオール又は1,2-エタンジオールと、ジカルボン酸、特にヒドロキシル末端基を担持するポリエーテルとの縮合反応でエステル化されるテレフタル酸とで構成されていることを特徴とする、前記発泡体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載されたポリエステルから構成された発泡体において、前記発泡体の連続気泡率は、8%よりも小さく、特に4%よりも小さいことを特徴とする、前記発泡体。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載されたポリエステルから構成された発泡体において、前記発泡体のせん断応力の作用下における破断点伸び率は、12%よりも大きく、適切には16%よりも大きく、好ましくは50%よりも大きいことを特徴とする、前記発泡体。
【請求項8】
均質性が高く、連続気泡性が低く、せん断応力下の破断点伸び率が高く、改質剤としてテトラカルボン酸の二無水物を含む、熱可塑性ポリエステルで構成された発泡体の製造方法において、ポリエステル樹脂に、熱可塑性エラストマー、好ましくは熱可塑性コポリエステルエラストマー、及び、テトラカルボン酸の二無水物から構成されたプレミックスを混合し、かつ、混錬し、熱可塑性エラストマー又は熱可塑性コポリエステルエラストマーが発泡体重量に対して0.5乃至15重量パーセント含む発泡体になるように発泡させることを特徴とする、熱可塑性ポリエステルで構成された発泡体の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載されたポリエステルで構成された発泡体の製造方法において、ポリエステルを、熱可塑性コポリエステルエラストマー及びテトラカルボン酸の二無水物から構成されたプレミックスと共に、配合剤として、反応器(リアクター)又はミキサー、特に、一軸又は二軸スクリュー押出し機又は多軸押出し機、又は、2つの一軸スクリュー押出し機を互いに組み合わせるか又は二軸スクリュー押出し機及び一軸スクリュー押出し機で構成されたタンデムシステムに供給し、その中で混錬することを特徴とする、前記製造方法。。
【請求項10】
均質性が高く、連続気泡性が低く、せん断応力下の破断点伸び率が高く、改質剤としてテトラカルボン酸の二無水物を含む、ポリエステルで構成された発泡体の製造手段において、前記手段は、熱可塑性エラストマー、好ましくは熱可塑性コポリエステルエラストマーを前記手段の重量に対して25乃至95重量パーセント含有し、かつ、テトラカルボン酸の二無水物を前記手段の重量に対して5乃至30重量パーセント含有する、プレミックスであることを特徴とする、ポリエステルで構成された発泡体の製造手段。
【請求項11】
請求項10に記載されたポリエステルで構成された発泡体の製造手段において、前記製造手段は、前記手段の重量に対して50乃至90重量パーセントの、適切には80乃至90重量パーセントのコポリエステルエラストマーと、前記手段に対して10乃至25重量パーセントの、適切には10乃至15重量パーセントのテトラカルボン酸の二無水物とを含む、プレミックスであることを特徴とする、前記製造手段。
【請求項12】
請求項10又は11のいずれか一項に記載されたポリエステルから構成された発泡体の製造手段において、前記製造手段は、前記手段の重量に対して0乃至70重量パーセントの、好ましくは1乃至50重量パーセントの安定剤、核剤、火炎防護剤、及び/又は、ポリエステル、適切には改質されるべき出発ポリエステルと同質のポリエステルを含有する、プレミックスであることを特徴とする、前記製造手段。

【公表番号】特表2011−522932(P2011−522932A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512864(P2011−512864)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003911
【国際公開番号】WO2009/149845
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(504313044)3A テヒノロギー ウント メーニッジメント リミテッド (24)
【住所又は居所原語表記】Badische Bahnhofstrasse 16, CH−8212 Neuhausen am Rheinfall, Switzerland
【Fターム(参考)】