説明

発泡体

【課題】 自動車用ランプの止水シール材に用いて好適な発泡体を提供する。
【解決手段】 本発明の発泡体は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)が15〜70重量部、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)が85〜30重量部からなる混和物(I)100重量部に、あるいはこの混和物(I)100重量部に有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を混和した混和物(II)に、50重量部以下の有機過酸化物(D)を添加、混練してなる樹脂混練物に、前記有機過酸化物(D)より分解温度の高い熱分解型発泡剤(E)が該発泡剤(E)の発泡温度以下で混練りされてなる発泡体用樹脂組成物(F1あるいはF2)を発泡して得られた部分架橋型の発泡体であって、その組成中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積分率が、15〜85%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ランプ用の止水シール材に用いて好適な発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のランプ、特にテールランプは、取り付けられる部位がトランクリッドの様に薄い場合が多く、車体鋼板に深絞りプレスを施す事ができない為、貫通タイプと言われる構造のランプユニットを車体鋼板側に組み付けている。
【0003】
前記貫通タイプと呼称される構造のランプユニットとしては、例えば、特許文献1に開示の構造が知られている。この特許文献1に開示のランプユニットは、図1、図2および図3に示すような構造となっている。
【0004】
これらの図において、前記複合型灯具CLは、一体に樹脂成形された灯具ボディ1の内部を隔壁1aによって4つの灯室2a〜2dに区画するとともに、各灯室2〜2d内には所要のバルブ(電球)3a〜3dを配置している。前記灯具ボディ1の前面開口には、各ランプに対応する色のレンズを一体化したレンズ4を、その周縁4aにおいて溶着により気密状態を保って取着している。図2に示されるように、前記各ランプのバルブは、前記灯具ボディ1の背面側から前記各灯室に挿通支持させた電球ソケット5a〜5dにより支持されており、各電球ソケット5a〜5dの背面部は、不図示の自動車の車体電源に接続される電気コードに設けられている外部コネクタが嵌合可能なコネクタとして構成され、前記灯具ボディ1の背面側に露出されている。
【0005】
また、前記灯具ボディ1の背面には、前記各ランプの各電球ソケット5a〜5dを包囲するように、背面方向から見て無端状をしたシールリブ6が一体に立設されている。前記灯具ボディ1の背面の、前記シールリブ6の内側領域及び外側領域には、前記複合型灯具CLを車体パネル10に取着するための3本の埋め込みボルト7a〜7cが立設されている。
【0006】
一方、図2に示すように、前記複合型灯具CLが取着される自動車の車体パネル10には、前記複数の電球ソケット5a〜5dの背面部が挿通される取付用開口11が形成されている。この取付用開口11は、例えば乗用車のトランクルームに臨んで形成されており、その開口寸法は前記複合型灯具CLに設けた前記シールリブ6よりも小さい外形寸法に形成されている。また、前記車体パネル10には、前記複合型灯具CLの背面に設けた埋め込みボルト7a〜7cに対応する位置にボルト挿通穴12a〜12cが空けられるとともに、前記取付用開口11の周囲にわたって防水用のパッキン(止水シール材)13が貼り付けてある。前記パッキン13はゴムあるいは柔軟な樹脂からなる板材で構成されており、少なくとも前記取付用開口11よりも大きく形成されるとともに、前記取付用開口11に対応する部分に挿通穴13aが開口されている。また、この実施形態では、一部には前記埋め込みボルト7cが挿通されるボルト挿通穴13bが開口されている。
【0007】
前記車体パネル10に前記複合型灯具CLを取着する際には、図3に示すように、複合型灯具CLに設けられている複数のランプの各電球ソケット5a〜5dが車体パネル10の取付用開口11内に位置されるように複合型灯具CLを車体パネル10に対して位置合わせを行った上で、複合型灯具CLをパッキン13の表面側に当接させながら埋め込みボルト7a〜7cをボルト挿通穴12a〜12cに挿通し、さらに車体パネル10の内面側から各埋め込みボルト7a〜7cに対してナット14a,14b(14cは図示されない)を締結することにより行う。そして、取付用開口11を通して車室内側に露出された各電球ソケット5a〜5cに対して、それぞれ図外の外部コネクタを接続することで各ランプに対する通電が可能になる。
【0008】
上記特許文献1に開示されている貫通タイプと呼称される構造のランプユニットの場合、ランプ周縁部から車体内に水が浸入する恐れと、また最近ではランプシャードの内面に湿分が凝結して曇り、照度が落ちる等の問題が大きく取り沙汰されてきている。それは、止水シール材である前記パッキン13が弾性によりシールが可能な発泡体から構成されているものの、この発泡体は親水性であり、しかも内部構造が連通気泡の多い構造となっているからである。このパッキン13では、止水を可能とすることはできても、湿分の浸入を防ぐことができない。湿分がランプ構造内部に浸入した場合、この湿分がランプのレンズの内壁に曇りとなって付着し、ランプの照度を低下させることになり、好ましくない。
【0009】
従来より、自動車ランプには、独立気泡構造系の発泡ゴムシール材や連通気泡構造系の発泡ウレタンシール材(特許文献2)が用いられ、これらをランプ周縁部に設置して、その反発応力により被着体(車体鋼板)界面との隙間を塞ぎ、車体内への水の浸入を防止している。
【0010】
発泡シール材は、一般的にそのシール材の材質と気泡構造の観点から止水性や耐透湿性が決まってくる。連続気泡の発泡構造体(気泡間が立体格子状に隔壁で仕切られた構造体)では、気泡サイズや材質(親水性、疎水性)を制御することで、止水作用を発現しなければならない難しさがある。シール材質が親水性であると、材料中を湿分が透過してしまうと言う難しさも重複する。
【0011】
独立気泡の発泡構造体では、疎水性材料がベースであれば、発泡体内を湿気が通過することがなく、発泡体そのものの止水性、耐透湿性を有するものである。しかし、発泡体が接面するランプユニット周縁部と車体鋼板との界面部分の構造に複雑な表面凹凸がある場合、独立気泡系の発泡シール材では、一つ一つの気泡の変形の自由度が、連続気泡に比べて小さく、これが複数集まった発泡体になると、独立気泡による反発力が全体的な硬さとなって現れ、その硬さにより前記シール部位の凹凸に追従しきれない場合が多い。従がって、このような界面においては独立気泡系の発泡シール材では、隙間ができて止水性、耐透湿性が保てない。
【0012】
このような背景から、最近では独立気泡と連続気泡との両気泡を有する発泡構造体(以下、半独泡という)の使用が望まれ、増えてきている。これは、疎水性の独立気泡体の発泡ゴムを後加工(せん断)をかけることで独立気泡の一部を破泡させ、連続気泡化させることで半独泡の発泡シール材にすることで得られている。これらの半独泡気泡の発泡シール材は連続気泡に基づく易変形性による複雑な間隙への充填作業の容易性と、独立気泡に基づく止水性をともに期待できることになる。
【0013】
また、上記のような発泡構造体を止水シール材として使用する場合、時間の経過により、発泡構造としての反発応力が緩和され、これに伴って発泡構造体と被着体界面との接触面圧が低下して、この界面沿いに水漏れが発生することがあるが、発泡構造体の一方の面または両面に粘着剤層を設けて被着体界面を接着シールすることにより、上記問題を解決できることが知られており(特許文献3)、このような使用形態が特に好まれている。
【0014】
しかし、上記のような半独泡構造の発泡体の片面あるいは両面に粘着層を設けた止水シール材は、独立気泡から半独泡への気泡構造の加工や、更にその後、表面に粘着剤の塗工等の加工が必要となり、その結果、シール材として、コスト高となり、またランプ周縁部への取り付けも人手作業のため、人件費が高くつくなど、コスト上の問題が大きかった。
【0015】
【特許文献1】特開2002−144954号公報
【特許文献2】特開昭61−94836号公報
【特許文献3】特開平11−236552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前記従来の事情に鑑みてなされたもので、その課題は、自動車用ランプの止水シール材に使用可能な、独立気泡系でありながらランプユニット周縁部と車体鋼板との界面部分に複雑な凹凸表面があっても、凹凸追従に優れる柔軟性を持ち、かつ付け外しが容易な適度の自己粘着性(自着性)有し、それにより、シール部位の両界面で止水性(水密性)を有するとともに、耐透湿性に優れ、かつリサイクル可能で、制振性、低揮発性にも優れる発泡体用樹脂組成物とそれから得られる発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するために、本発明にかかる発泡体は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)が15〜70重量部、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)が85〜30重量部からなる混和物(I)100重量部に対し、有機過酸化物(D)が10重量部以下、該有機過酸化物(D)より反応・分解温度の高い熱分解型発泡剤(E)が50重量部以下添加され、前記有機過酸化物(D)の反応・分解温度以下で混練りされてなる発泡体用樹脂組成物(F1)を発泡して得られた部分架橋型の発泡体であって、その組成中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積分率が、15〜85%であり、その発泡倍率が3倍以上であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかる発泡体の他の構成は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)が15〜70重量部、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)が85〜30重量部からなる混和物(I)の100重量部に、有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を50重量部以下配合して得られた混和物(II)100重量部に対し、有機過酸化物(D)が10重量部以下、該有機過酸化物(D)より反応・分解温度の高い熱分解型発泡剤(E)が50重量部以下添加され、前記有機過酸化物(D)の反応・分解温度以下で混練りされてなる発泡体用樹脂組成物(F2)を発泡して得られた部分架橋型の発泡体であって、その組成中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積分率が、15〜85%であり、その発泡倍率が3倍以上であることを特徴とする。
【0019】
上記構成において、部分架橋発泡の具体的方法としては、加熱加圧法、射出発泡法、前記発泡体用樹脂組成物(F1,F2)を押出した後に加熱発泡させる方法が可能である。
【0020】
本発明において、「発泡体の耐透湿性、柔軟性、圧縮復元性などのシール特性を高めるために寄与する物性値として特定したプロトンパルス核磁気共鳴によるT2時間30〜300μ秒の範囲の運動性」については、以下に本発明の発泡体用樹脂組成物の構成成分を説明した後、詳しく説明する。
【0021】
(有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A))
本発明で用いられる有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)は、炭素原子数2〜20のα−オレフィン含有量が50モル%以上の無定形ランダムな弾性共重合体または結晶化度が50%以下の弾性共重合体であって、2種類以上のα−オレフィンからなる非結晶性α−オレフィン、あるいは2種類以上のα−オレフィンと非共役ジエン共重合体である。
【0022】
このようなオレフィン系共重合体ゴムの具体的な例としては、以下のようなゴムが挙げられる。
(a)エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム
[エチレン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
(b)エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム
[エチレン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
(c)プロピレン・α−オレフィン共重合体ゴム
[プロピレン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
(d)ブテン・α−オレフィン共重合体ゴム
[ブテン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
【0023】
上記、α−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0024】
また、上記非共役ジエンとしては、具体的には、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネンなどが挙げられる。
【0025】
これらの共重合体ゴムのムーニー粘度[ML1.4(100℃)]は10〜250、特に40〜150が好ましい。
【0026】
また、上記(b)のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムは、ヨウ素価が25以下であることが好ましい。
【0027】
(有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B))
本発明に用いられる有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)とは、オレフィン系共重合ゴム(B)が、有機化酸化物と混合し、加熱下に置かれた状態において、共重合体を有機化酸化物と熱反応させた際に生じる分解反応と架橋反応の競争反応で、分解反応が多い結果、見かけ上の分子量が減少する反応現象が見られるオレフィン系共重合体ゴムを言う。
【0028】
かかる有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)としては、具体的には、ブチルゴム(IIR)、ポリイソブチレン、プロピレン含量が70%モル以上のプロピレン・エチイレン共重合体ゴム、プロピレン・1−ブテン共重合体ゴムなどが上げられる。これらの内ではブチルゴム、ポリイソブチレンが発泡時の流動性で好ましく、配合前のムーニー粘度[ML1.4(100℃)]が60以下のものが適当である。
【0029】
本発明で用いられる有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)との混和物(I)において、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)との合計100重量部に対して、好ましくは30〜85重量部、さらに好ましくは50〜80重量部で用いられる。この範囲の好ましさは、目的とする発泡体の発泡倍率、発泡状態の外観等のバランスと柔軟性、適度な自己粘着性、独立発泡性と止水性、耐透湿性およびリサイクル性から特定される。
【0030】
(有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(C))
本発明の発泡体に用いられる発泡体用樹脂組成物において任意に添加される有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(C)とは、結晶性オレフィン樹脂が、有機過酸化物と混合し、加熱下に置かれた状態において、樹脂を有機過酸化物と熱反応させた際に生じる分解反応と架橋反応の競争反応で、分解反応が多い結果、見かけ上の分子量が減少する反応現象が見られる結晶性オレフィン樹脂を言う。
【0031】
本発明で必要に応じて用いられる有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(C)としては、炭素原子数2〜20のα−オレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。
【0032】
かかる有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(C)の具体的な例としては、以下のような重合体あるいは共重合体が挙げられる。
(i)プロピレン単独重合体
(ii)プロピレンと10モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重
合体
(iii)プロピレンと30モル%以下の他のα−オレフィンとのブロック共重
合体
(iv)1−ブテン単独重合体
(v)1−ブテン単独重合体10モル%以下の他のα−オレフィンとのラン
ダム共重合体
(vi)4−メチル−1−ペンテン単独重合体
(vii)4−メチル−1−ペンテンと20モル%以下のαーオレフィンとのラ
ンダム共重合体
【0033】
上記α−オレフィンとしては、具体的には、上述したオレフィン共重合体ゴム(A)(B)を構成するα−オレフィンの具体例と同様のα−オレフィンが挙げられる。
【0034】
本発明の発泡体に用いられる発泡体用樹脂組成物に有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を含有させる場合の配合量は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)との混和物(I)100重量部に対して、50重量部以下、好ましくは30重量部以下、さらに好ましくは20重量部以下である。
この範囲の好ましさは、目的とする発泡体の発泡倍率、発泡状態の外観等のバランスと柔軟性、適度な自己粘着性、止水性、耐透湿性およびリサイクル性から特定される。
【0035】
上記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)との混合物の改質剤として、スチレン・ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、またこれらの各種水添系ゴム、および塩素化ポリエチレン等を用いることができる。前記有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を含まない場合では、(A)+(B)成分(混和物(I))の合計量100重量部に対して10重量部以下の量を添加しても良く、(C)成分を含有する場合では、(A)+(B)+(C)成分(混和物(II))の合計量100重量部に対して10重量部以下の量で、添加してもよい。
【0036】
また、前記(A)+(B)の混合物の軟化剤として、パラフィン系、ナフテン系、あるいはアロマチック系の軟化剤またはエステル系可塑剤等を用いることができる。前記有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を含まない場合では、(A)+(B)成分(混和物(I))の合計量100重量部に対して10重量部以下の量を添加しても良く、(C)成分を含有する場合では、(A)+(B)+(C)成分(混和物(II))の合計量100重量部に対して10重量部以下の量で、添加してもよい。
【0037】
上記のような改質材と配合範囲であれば、本発明の発泡体用樹脂組成物の流動性と発泡性に支障を来さず、所望の柔軟性と適度な自己粘着性、止水性、耐透湿性、およびリサイクル性のバランスのとれた発泡体が維持できる。
【0038】
(有機過酸化物(D))
本発明で用いられる有機過酸化物(D)の好ましく用いられる具体例としては、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,−トリメチルシ5クロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレ−ト、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエ−ト、tert−ブチルペルベンゾエ−ト、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカ−ボネ−ト、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシドなどが挙げられる。
【0039】
これらの内では、臭気性、スコーチ安定性の点で、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブリル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレ−トが 好ましく、なかでも1,3ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが最も好ましい。
【0040】
(有機過酸化物(D)の反応・分解温度)
本発明で言う有機過酸化物(D)の反応・分解温度とは、各々の有機過酸化物の1分間半減期温度を指す。例えば、2,5−ジメチル−2.5−ジ(tert−ブチルペルオキシ9ヘキサンでは190℃であり、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシドイソプロピル)ベンゼンでは180℃である。
【0041】
(有機過酸化物(D)の配合量)
有機過酸化物(D)は、本発明の樹脂組成物基材(オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(E))100重量部に対して、通常0.05〜6.0重量部程度の配合が好ましく、実際的な配合量は発泡体の気泡径やT2緩和時間の成分分率を考慮して調整される。
【0042】
本発明においては、上記有機過酸化物(D)による分岐および部分架橋処理に際し、その助剤として、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p’−ベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N−4−ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパンN,N’−m−フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ架橋用助剤、あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコ−ルジメタクリレート、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレート、アクリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマーを配合することができる。
これら助剤の配合量によっても、射出時の発泡基材樹脂の流動性の調整を適宜行うことができる。
【0043】
ただし、部分架橋を電子線、中性子線、α線、β線、γ線、X線、紫外線等の電離性放射線の照射により行う場合は、架橋剤を配合しなくともよいが、電離性放射線の照射による分岐および部分架橋処理に際し、その助剤として、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチプロパントリメタクリレート、アクリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマーを配合することができる。
【0044】
(本発明の発泡体における、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2時間(スピン−スピン緩和時間)に基づく運動性)
本発明の発泡体の組成分中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴(NMR)により求められるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性をもつ成分が容積分率で15〜85%であるミクロ分子凝集構造を有する。
【0045】
かかるパラメータ限定は、以下のようにして設定されたものである。
すなわち、止水性、柔軟性、密着性などのシール特性に優れた発泡体を形成することのできるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物としては、適度な粘度が必要であり、この粘度はオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物中の分岐の程度に比例することが分かっている。この分岐の先端部分と基端部分とでは、分子力学的に、明らかに「運動性」が異なる。本発明者らの研究によれば、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴下における前記分岐の基端部分と先端部分とでは、T2(スピン−スピン緩和)時間が異なり、分岐基端部分では、運動性が高く、T2時間が400μ秒以上であり、分岐先端部分では、運動性が低く、T2時間が400μ秒未満となることが判明した。このT2時間を用いて本発明の目的である止水性、耐透湿性、柔軟性などのシール性の良好な発泡体を得るに好適な樹脂組成物の好適な粘度範囲に相当する分岐割合を求めたところ、樹脂組成物中の「T2時間が30〜300μ秒の範囲の運動性を持つ成分の容積分率が15〜85%となれば良いことが確認された。
【0046】
このH+パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間の測定方法は、例えば、日本電子(株)製「JNM−MU25A(商品名)」により、パルスモードにソリッドエコー法を用い、室温(20〜25℃)で測定され、T2スピン−スピン緩和時間(それぞれの分子運動状態)毎にサンプル中の体積分率を層別分析される方法である。
【0047】
本発明の発泡体に用いられる樹脂組成物の基材(混練物)は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合ゴム(A)と有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)の混和物(I)を、あるいは有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合ゴム(A)と有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)と有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)とを混和させてなる混和物(II)を、有機過酸化物(D)の存在下で非架橋状態で混練りすることにより得られる。この混練物中に熱分解型発泡剤(E)を混練りして得た発泡体用樹脂組成物(F1,F2)を発泡させることにより本発明の発泡体が得られる。得られた発泡体の組成分中のH+パルス核磁気共鳴によるT2(スピンースピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性をもつ成分の容積分率が15〜85%であるという特徴を有する。
【0048】
本発明においては、前記混和物(I)あるいは混和物(II)に有機過酸化物(D)を混練りして得た混練物に熱分解型発泡剤(E)が混練りされて得られた発泡体用樹脂組成物(F1,F2)が、前記の発泡剤(E)の分解温度以上で加熱されることにより、発泡体の形成と同時にエラストマー組成物が架橋される。すなわち、前記(A)(B)(D)の3成分系からなる混練物または前記(A)(B)(C)(D)の4成分系からなる混練物に熱分解型発泡剤(E)が混練りされてなる発泡体用樹脂組成物(F1またはF2)を発泡させることにより、樹脂混練物を部分架橋してオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物にすると同時に発泡させて発泡体を得る工程を用いる。この場合においても、発泡体の本体部分を構成しているオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の組成分中のH+パルス核磁気共鳴によるT2(スピンースピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性をもつ成分の容積分率が15〜85%であるという特徴を有する。また、得られた発泡体の発泡倍率は、3倍以上となる。
【0049】
かかる30〜300μ秒のT2(スピンースピン緩和)時間で特定される組成分が15〜85容積%であるミクロ構造を有することにより、止水性、耐透湿性、柔軟性に優れ、発泡倍率が3倍以上の発泡体を形成することのできる組成系が得られる。
【0050】
前記T2(スピンースピン緩和)時間で30〜300μ秒の範囲の運動性を持った成分の容積分率が15〜85容積%となる分子運動性を有するオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を得る方法としては、過酸化物を用いる方法、電子線照射、硫黄加硫、シラン架橋等の公知の方法を用い、樹脂組成物に適当な分岐を施すことに依る。これらの方法の中でも、過酸化物、および電子線照射が簡易に制御し易いので望ましい方法である。
【0051】
(発泡剤(E))
前述した発泡体用樹脂組成物の基材(混練物)に配合される発泡剤(E)としては、熱分解してガスを発生する熱分解型発泡剤が好ましく、具体的には、アゾジカーボンアミド(ADCA)、ジエチルアゾカルボキレート、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、3,3−ジスルホンヒドラシドフェニルスルホン酸、N,N’−ジニトロソペンタメテトラミン、p−トルエンスルホニルヒドラジド、トリヒドラジノトリアジンなどの有機発泡剤、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムなどの無機発泡剤等が挙げられる。特に有機発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、N,N’−ジニトロソペンタメテトラミン、トリヒドラジノトリアジンが好ましく、無機発泡剤としては、炭酸水素ナトリウムが好ましい。また、炭酸水素ナトリウムとクエン酸モノナトリウムおよびグリセリン脂肪酸エステルを混合させて用いてもよい。
【0052】
(発泡剤(E)の分解温度)
本発明で言う発泡剤(E)の分解温度とは、発泡剤(E)を含有する樹脂混練物を加熱した際に、発泡剤(E)が分解したことでガスが発生する分解ピーク温度のことを指す。例えば、一般的には、アゾジカーボンアミドでは210℃であり、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)では164℃である。発泡剤(E)として分解温度の異なる発泡剤を選択的に含有させることにより、発泡剤(E)の分解温度の調整が可能である。
【0053】
これらの発泡剤(E)の選択で、発泡剤の分解ピーク温度は、組み合わせて使用する有機過酸化物(D)の分解ピーク温度に対して、分解ピーク温度の高いものを選択する。また、これらの発泡剤(E)は、単独または複数の組合せ、またいわゆる分解助剤を併用して用いることができる。
【0054】
また、発泡助剤、湿潤剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、老化防止剤、着色剤などの添加剤および充填剤は、上記混練のいずれかの段階において配合する。
【0055】
(その他の添加成分)
また、本発明の発泡体に用いられる樹脂組成物(混練物)中に必要に応じて、その他の成分として、各種耐候安定剤、耐熱安定剤、可塑剤、難燃剤、増粘剤、滑剤、着色剤、湿潤剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、老化防止剤、着色剤などの添加剤および充填剤を、上記混練のいずれかの段階において、本発明の目的を損なわない範囲において、添加することができる。
【0056】
前記充填剤としては、具体的には、カーボンブラック、ニトロソ顔料、ベンガラ、フタロシアニン顔料、パルプ、繊維状チップ、カンテン等の有機充填材料、クレー、カオリン、シリカ、ケイソウ土、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、マイカ、ヴェントナイト、シラスバル−ン、ゼオライト、珪酸白土、セメント、シリカフュ−ム等の無機充填剤を挙げることができる。
【0057】
(混和物(I)あるいは混和物(II)の混練り方法)
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合ゴム(A)と有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)との混和物(I)は、あるいはこの混和物(I)にさらに有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を混和させてなる混和物(II)は、有機過酸化物(D)の存在下で非架橋状態で混練りされるが、その場合、何回かの分割混練りか、または段階混練りを踏んで、最終的に樹脂混練物とされる。その混練手段としては、V型ブラベンダー、タンブルブラベンダー、リボンブラベンダー、ヘンシェルブラベンダー、バンバリーミキサー、ミクシングロール、ニーダーなどや、押出し機、などの公知の混練機を用いることができる。
【0058】
(発泡体)
本発明の発泡体は、所定の混和物(I)または(II)に有機過酸化物(D)と熱分解型発泡剤(E)を有機過酸化物(D)の反応・分解温度以下で混練りされ、かつローラまたは押出機でシート状に成形された発泡体用樹脂組成物(F1またはF2)が、熱風循環炉、赤外線加熱、高周波加熱、ソルト浴上加熱による常圧発泡法、加熱プレスによる加圧発泡法、また射出成形機で金型中での射出発泡、押し出し発泡等によって、前記発泡体用樹脂組成物(F1またはF2)が発泡されることで得られる。また、射出成形機による金型中での射出発泡は、アウトサート成形やインサート成形により、フィルム一体で射出発泡成形して、発泡成形品をフィルムに仮留めする方法も応用できる。
【発明の効果】
【0059】
本発明の発泡体は、自動車用ランプの止水パッキンに使用可能な、独立気泡系でありながらランプユニット周縁部と車体鋼板との界面部位に複雑な凹凸表面があっても、凹凸追従に優れる柔軟性を持ち、かつ付け外しが容易な適度の自己粘着性(自着性)で、被着体の両界面で止水性(水密性)を有するとともに、耐透湿性に優れ、かつリサイクル可能で、制振性、低揮発性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下、本発明にかかる発泡体の実施例を説明する。なお、以下に示す実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0061】
後述する各実施例および各比較例にて得られた発泡体サンプルに対して、以下に示す実験方法により、自動車用ランプの止水シール材として有用な特性の評価を行った。
【0062】
(評価実験1:NMRによるT2(スピン−スピン緩和)時間)
室温(20〜30℃)でのH+(プロトン)パルス核磁気共鳴によるT2(スピンースピン緩和)時間で30〜300μ秒の運動性を持った成分の容積分率により評価した。ここで、H+パルス核磁気共鳴によるT2(スピンースピン緩和)時間は、日本電子(株)製「JNM−MU25A(商品名)」により、パルスモードにソリッドエコー法を用いて求めた。
【0063】
(成型状態)
後述の各実施例および比較例において熱プレスによる加熱加圧から除圧して得られた発泡体の全体の形状外観(裂、ウネリ、表面膨れ(ボイド))を確認した。裂け、うねり、ボイドのあるものは×とし、無かったものは○とした。
【0064】
(スライス性)
後述の各実施例および比較例において熱プレスによる加熱加圧から除圧して得られた発泡体を、ナイフソーでカット、スライス性を確認した。スライス、カットがスムーズに可能であったものを○とし、不可能であったものを×とした。
【0065】
(比重)
後述の各実施例および比較例において得られた発泡体サンプルを電子比重計にて測定して比重を求めた。
【0066】
(50%圧縮硬さ)
JIS K 6767準じ、後述の各実施例および比較例において得られた発泡体のカット試料(50mm×50×20mm(厚))につき、クロスヘットスピード200mm/sで、厚みの50%まで圧縮したときの硬さを評価した。0.045MPa未満を○とし、0.045MPa以上のものを×とした。
【0067】
(粘着性)
鋼板(140mm×140mm×3mm(厚))2枚の間に、後述の各実施例および比較例において得られた発泡体を50mm(角)×5mm(厚)に裁断したサンプルの片面に離型フィルムを付けて、室温雰囲気で4隅に設けられたネジ締め穴を用いて締め付けし、30%圧縮して5分間押し付けし、圧縮開放後、離型フィルム面側の鋼板をフィルムごと外し、サンプルが載った鋼板をそのまま逆さにして固定し、放置する。1時間以上落ちなければ○とし、1時間未満で落ちたら×とした。
【0068】
(耐透湿性)
60℃×80%RHの雰囲気下、後述の各実施例および比較例において得られた発泡体を1mm(厚み)、2mm(幅)の35mm角に裁断して得たサンプルを、50mm(角)×5mm(厚)のアルミ板に設けられた4隅で、0.3mm厚スペーサーを介して、アルミ板4隅に設けられた孔を用いてネジ締めし、30%に圧縮セットし、発泡体の内側の雰囲気が300時間で、80%RHに到達するか否かを測定し、到達したものを×とし、到達しないものを○とした。
【0069】
(止水性)
後述の各実施例および比較例において得られた発泡体を5mm(厚み)×80mmφ(内径)×100mmφ(外径)のドナッツ状に成形したサンプルを30%圧縮で、鋼板(140mm×140mm×3mm(厚))とアクリル板(140mm×140mm×5mm(厚)で、89mmφ(内径)×90mmφ(外径)で2mm(高さ)のリブ付きで中央に10mmφの貫通孔が切削加工が施された)の間に、アクリル板を上面にして4隅に設けられた4点孔でネジ締めで挟みこみ、挟み込まれたドーナッツ状の発泡体サンプルに、アクリル板中央の貫通孔に接続して立てた10mmφ(外径)×200mm(長)のアクリルパイプに上から水を注いで、底から100mmの高さまで満たし、1週間放置して、漏れの有無を評価した。漏れないものは○とし、漏れたものは×とした。
【0070】
(実施例1)
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)としてエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム50.0重量部と、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)としてブチルゴム60.0重量部とを混和して得た混和物(I)に、有機過酸化物(D)である1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン[有機過酸化物架橋剤]0.2重量部と、トリメチロールプロパントリメタクリレート[助剤]0.1重量部と、更に熱分解型発泡剤(E)であるアゾジカーボンアミド[発泡剤]8.0重量部と、酸化亜鉛[発泡助剤]1.5重量部を、前記有機過酸化物(D)の分解温度以下の130℃で加圧ニーダーにより混練り分散した。
得られた混練物をオープンロール(110℃)でシート状に取り出し、放冷し、発泡体用樹脂組成物(F1)を得た。
【0071】
このシート状の樹脂組成物(F1)を金型内に詰め、熱プレス機を用いて前記発泡剤(E)の分解温度以上(165℃)で、所定の時間(15分)、加熱加圧を行って発泡させ、除圧してブロック状の発泡体を得た。
この発泡体をサンプルとして、前記評価実験(1〜8)のそれぞれを行った。得られた結果を下記(表1)に示した。
【0072】
(実施例2)
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)としてエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム50.0重量部と、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)としてブチルゴム60.0重量部とを混和して得た混和物(I)に対し、有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)であるポリプロピレン10重量部を混和し、200℃で混練りし、放冷して得た混和物(II)に、有機過酸化物(D)である1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン[有機過酸化物架橋剤]0.2重量部と、トリメチロールプロパントリメタクリレート[助剤]0.1重量部と、更に熱分解型発泡剤(E)であるアゾジカーボンアミド[発泡剤]8.0重量部と、酸化亜鉛[発泡助剤]1.5重量部を、前記有機過酸化物(D)の分解温度以下の130℃で加圧ニーダーにより混練分散させた。得られた混練物をオープンロール(110℃)でシート状に取り出し、放冷し、発泡体用樹脂組成物(F2)を得た。
【0073】
このシート状の樹脂組成物を金型内に詰め、熱プレス機を用いて、前記発泡剤(E)の分解温度以上(165℃)で、所定の時間(15分)加熱加圧を行って発泡させ、除圧してブロック状の発泡体を得た。
この発泡体をサンプルとして、前記評価実験(1〜8)のそれぞれを行った。得られた結果を下記(表1)に示した。
【0074】
(実施例3)
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)としてエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム66.6重量部と、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)としてブチルゴム33.3重量部との混和物(I)に、有機過酸化物(D)である1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(有機過酸化物架橋剤)0.2重量部、およびトリメチロールプロパントリメタクリレート[助剤]0.1重量部を添加し、前記有機過酸化物(D)の分解温度よりも充分低い温度(130℃)で加圧ニーダーにより混練り分散した。
得られた混練物に、更にアゾジカーボンアミド(熱分解型発泡剤(E))8.0重量部と、酸化亜鉛(発泡助剤)1.5重量部を、前記発泡剤(E)の分解温度以下(130℃)で再度加圧ニーダーで混練分散させた。この混練物をオープンロール(110℃)でシート状に取り出し、シート状の発泡体用樹脂組成物(F1)を得た。
【0075】
このシート状樹脂組成物(F1)を金型内に詰め、熱プレス機を用いて、前記発泡剤(E)の分解温度以上(165℃)で、所定の時間(15分)加熱加圧を行って発泡させ、除圧してブロック状の発泡体を得た。
この発泡体のサンプルとして、前記評価実験(1〜8)のそれぞれを行った。得られた結果を下記(表1)に示した。
【0076】
(実施例4)
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)としてエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム20重量部と、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)としてブチルゴム80重量部とを混和して得た混和物(I)に、有機過酸化物(D)である1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン[有機過酸化物架橋剤]0.7重量部と、トリメチロールプロパントリメタクリレート[助剤]0.35重量部と、更に熱分解型発泡剤(E)であるアゾジカーボンアミド[発泡剤]8.0重量部と、酸化亜鉛[発泡助剤]1.5重量部を、前記有機過酸化物(D)の分解温度(130℃)以下で加圧ニーダーにより混練り分散した。
【0077】
得られた混練物を、オープンロール(110℃)でシート状に取り出し、放冷し、発泡体用樹脂組成物(F1)を得た。
このシート状の樹脂組成物(F1)を金型内に詰め、熱プレス機を用いて前記発泡剤(E)の分解温度以上(165℃)で、所定の時間(15分)、加熱加圧を行って発泡させ、除圧してブロック状の発泡体を得た。
この発泡体をサンプルとして、前記評価実験(1〜8)のそれぞれを行った。得られた結果を下記(表1)に示した。
【0078】
(実施例5)
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)としてエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム20.0重量部と、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)としてブチルゴム80.0重量部とを混和して得た混和物(I)に対し、有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)であるポリプロピレン10重量部を混和し、200℃で混練りし、放冷して得た混和物(II)に、有機過酸化物(D)である1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン[有機過酸化物架橋剤]0.2重量部と、トリメチロールプロパントリメタクリレート[助剤]0.1重量部と、更に熱分解型発泡剤(E)であるアゾジカーボンアミド[発泡剤]8.0重量部と、酸化亜鉛[発泡助剤]1.5重量部を、前記有機過酸化物(D)の分解温度以下の130℃で加圧ニーダーにより混練分散させた。得られた混練物をオープンロール(110℃)でシート状に取り出し、放冷し、さらに3mm角のペレットとし、ペレット状の発泡体用樹脂組成物(F2)を得た。
【0079】
このペレット状の樹脂組成物を、射出成形機のホッパーに投入し、シリンダー温度200℃、射出スピード200mm/s、金型温度30℃で射出成形を行って発泡(射出発泡)させ、発泡体を得た。
この発泡体をサンプルとして、前記評価実験(1〜8)のそれぞれを行った。得られた結果を下記(表1)に示した。
【0080】
(実施例6)
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)としてエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム20.0重量部と、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)としてブチルゴム80.0重量部とを混和して得た混和物(I)に、有機過酸化物(D)である1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン[有機過酸化物架橋剤]0.2重量部と、トリメチロールプロパントリメタクリレート[助剤]0.1重量部と、更に熱分解型発泡剤(E)であるアゾジカーボンアミド[発泡剤]8.0重量部と、酸化亜鉛[発泡助剤]1.5重量部を、前記有機過酸化物(D)の分解温度以下の130℃で加圧ニーダーにより混練り分散した。
【0081】
得られた混練物を押し出し機(110℃)でシート状(2mm厚み)に取り出し、放冷
放冷し、発泡体用樹脂組成物(F1)を得た。
得られたシート状の樹脂組成物(F1)をカットし、ホットエアーオーン中で200℃で、15分加熱して発泡体を得た。
この発泡体をサンプルとして、前記評価実験(1〜8)のそれぞれを行った。得られた結果を下記(表1)に示した。
【0082】
【表1】

【0083】
(比較例1)
ポリエステル系ポリオールとTDI(トリレンジイソシアナート)系原料からなる市販ウレタン系発泡シール材を発泡体サンプルとした。この発泡体サンプルにつき、前記評価実験(1〜8)のそれぞれを行った。得られた結果を下記(表2)に示した。
【0084】
(比較例2)
市販天然ゴム発泡体を発泡体サンプルとした。この発泡体サンプルにつき、前記評価実験(1〜8)のそれぞれを行った。得られた結果を下記(表2)に示した。
【0085】
(比較例3)
エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム3重量部と、ブチルゴム97重量部との混和物に、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン[有機過酸化物架橋剤]0.2重量部と、トリメチロールプロパントリメタクリレート[助剤]0.1重量部と、アゾジカーボンアミド[発泡剤]8.0重量部と、酸化亜鉛[発泡助剤]1.5重量部とを、前記有機過酸化物架橋剤の分解温度以下(130℃)で加圧ニーダーにより混練りした。得られた混練物をオープンロール(110℃)でシート状に取り出し、発泡体用樹脂組成物を得た。
【0086】
このシート状の樹脂組成物を金型内に詰め、熱プレス機を用いて、前記発泡剤の分解温度以上(165℃)で、所定の時間(15分)加熱加圧を行って発泡させ、除圧してブロック状の発泡体を得た。
この発泡体をサンプルとして、前記評価実験(1〜8)のそれぞれを行った。得られた結果を下記(表2)に示した。
【0087】
(比較例4)
エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム97重量部と、ブチルゴム3重量部とを混和して得た混和物に、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン[過酸化物架橋剤]0.2重量部と、トリメチロールプロパントリメタクリレート[助剤]0.1重量部と、アゾジカーボンアミド[発泡剤]8.0重量部と、酸化亜鉛[発泡助剤]1.5重量部とを、前記有機過酸化物架橋剤の分解温度以下(130℃)で加圧ニーダーにより混練りした。この混練物をオープンロール(110℃)でシート状に取り出し、シート状の発泡体用樹脂組成物を得た。
【0088】
このシート状の樹脂組成物を金型内に詰め、熱プレス機を用いて、前記発泡剤(E)の分解温度以上(165℃)で、所定の時間(15分)加熱加圧を行って発泡させ、除圧してブロック状の発泡体を得た。
この発泡体のサンプルとして、前記評価実験(1〜8)のそれぞれを行った。得られた結果を下記(表2)に示した。
【0089】
【表2】

【0090】
前記実施例および比較例から明らかなように、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)と、有機過酸化物(D)とを必須構成要素成分として含有し、必要に応じて有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を含有する組成を有する混練物に、発泡剤を混合して得られた発泡体用樹脂組成物を発泡させて得られた発泡体は、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す組成分の容積分率が15〜85%であり、評価実験1〜8の全てにおいて良好な特性を得ていることが、分かる。これによって、本発明にかかる発泡体の優れた特徴が確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上のように、本発明の発泡体は、自動車用ランプの止水パッキンに使用可能な、独立気泡系でありながらランプユニット周縁部と車体鋼板との界面部位に複雑な凹凸表面があっても、凹凸追従に優れる柔軟性を持ち、かつ付け外しが容易な適度の自己粘着性(自着性)で、被着体の両界面で止水性(水密性)を有するとともに、耐透湿性に優れ、かつリサイクル可能で、制振性、低揮発性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】自動車用ランプの従来の一例を示す要部の斜視図である。
【図2】自動車用ランプの取り付け構造の従来の一例を示す分解斜視図である。
【図3】自動車用ランプの取り付け構造の従来の一例を示す断面構成図である。
【符号の説明】
【0093】
1 灯具ボディ
3a、3b、3c、3d 電球
5a、5b、5c、5d ソケット
6 シールリブ
10 車体パネル
11 取り付け用開口
13 パッキン(止水シール材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)が15〜70重量部、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)が85〜30重量部からなる混和物(I)100重量部に対し、有機過酸化物(D)が10重量部以下、該有機過酸化物(D)より反応・分解温度の高い熱分解型発泡剤(E)が50重量部以下添加され、前記有機過酸化物(D)の反応・分解温度以下で混練りされてなる発泡体用樹脂組成物(F1)を発泡して得られた部分架橋型の発泡体であって、
その組成中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積分率が、15〜85%であり、その発泡倍率が3倍以上であることを特徴とする発泡体。
【請求項2】
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)が15〜70重量部、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)が85〜30重量部からなる混和物(I)の100重量部に、有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を50重量部以下配合して得られた混和物(II)100重量部に対し、有機過酸化物(D)が10重量部以下、該有機過酸化物(D)より反応・分解温度の高い熱分解型発泡剤(E)が50重量部以下添加され、前記有機過酸化物(D)の反応・分解温度以下で混練りされてなる発泡体用樹脂組成物(F2)を発泡して得られた部分架橋型の発泡体であって、
その組成中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積分率が、15〜85%であり、その発泡倍率が3倍以上であることを特徴とする発泡体。
【請求項3】
前記部分架橋発泡が加熱加圧によるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡体。
【請求項4】
前記部分架橋発泡が射出発泡によるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡体。
【請求項5】
前記部分架橋発泡が前記発泡体用樹脂組成物(F1,F2)の押出後の加熱発泡によるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−260866(P2008−260866A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105077(P2007−105077)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】